説明

飲料濃縮物

【課題】向上した感覚刺激特性をもたらす増粘剤の混合物を有する飲料濃縮物を提供するものである。
【解決手段】飲料調製システム用のカートリッジであって、水性媒体をカートリッジ中へ導入するための注入口と、注入口の下流にあり、カートリッジから飲料を放出するための出口と、注入口から出口をつなぐ流路とを備え、流路はその中に合計で約0.01から約5重量%の1つ又は複数の増粘剤を含有する非ゲル状飲料液体濃縮物を含むカートリッジである。カートリッジは、飲料液体濃縮物が充填されるチャンバーの下流に2mm2以下の断面積を有する開口部を備えてもよい。飲料濃縮物は、口当たりなどの向上した感覚刺激特性をもたらすために、メチルセルロース及び少なくとも1つのアルギン酸塩を1:5から5:1の重量比で含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増粘剤を含む飲料濃縮物に関する。より具体的には、本発明は、飲料調製システムにおいて使用するための増粘剤を含む飲料濃縮物、及び向上した感覚刺激特性をもたらす増粘剤の混合物を有する飲料濃縮物に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料分配システムは、飲料を提供するための飲料濃縮物の使用に依存する。飲料分配システムは、飲料ディスペンサと飲料濃縮物を含むカートリッジとを備えるか又はそれらから構成されてもよい。使用する際、飲料濃縮物は通常、飲料分配システム内で0.1重量部及び10重量部の間の水性媒体により希釈されて飲料を提供し、次いでこの飲料は飲料分配システムから出口より分配される。時にはこの飲料はさらなる水性の液体、例えばミルクによりさらに希釈されてもよい。このように飲料濃縮物は、消費者に飲料を提供する便利かつ効率的な方法を提供する。
【0003】
飲料分配システムにおいて使用するためのカートリッジは通常、飲料濃縮物を収容する1つ又は複数のチャンバーを備える。カートリッジ及び飲料分配システムは、カートリッジ内で飲料濃縮物が水性媒体と混合されるように、あるいは(又はさらに)、水性媒体との混合がカートリッジの外側で飲料ディスペンサ自体の内部で行われるように設計されてもよい。いずれの場合も、飲料分配システムは、飲料濃縮物を収容するチャンバー(1つ又は複数)の下流にある、飲料を放出するための出口、及び濃縮物チャンバー(1つ又は複数)から出口までをつなぐ流路を備える。このシステムは、カートリッジ自体の中又は飲料調製システム中のどこか他の場所に、飲料濃縮物を水性媒体と混合して飲料を作るための手段をさらに備えていてもよい。水性媒体は典型的には、水又はミルクなどの、流体又は液体であってもよい。
【0004】
1つの種類の飲料分配システムは、飲料濃縮物を供給するための一回使用(single−serving)のカートリッジを利用する。カートリッジは封止され、実質的に空気及び水を通さない材料で形成されていてもよい。カートリッジ内で飲料が抽出される及び/又は希釈されるのを可能にするために、カートリッジは、水性媒体をカートリッジ中へ導入するための注入口と、注入口の下流にある、カートリッジから飲料を放出するための出口と、及び注入口から出口までをつなぐ流路とを備えていてもよい。カートリッジの注入口及び出口をつなぐ流路内、例えばチャンバー内で飲料濃縮物を供給することにより、カートリッジは飲料濃縮物を水性流体と混合するための一体型の手段を好都合に提供する。
【0005】
以前は、特定の増粘剤が飲料分配装置用の飲料濃縮物において使用されてきた。例えば、特許文献1は、飲料抽出装置におけるいくつかのガム及びデンプンの使用を記載している。これらのガム及びデンプンは固形濃縮物中、例えば異なる成分を共に凝集させてあるような固形濃縮物中に含有されると思われる。他には、特許文献2に、乳製品組成物及び親水コロイド組成物を含む泡立て組成物、香味料、及び甘味料を含むファウンテンシロップが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第02/074143号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0014315号明細書
【特許文献3】欧州特許第1,440.910号明細書
【特許文献4】欧州特許第1,440,908号明細書
【特許文献5】PCT/GB2005/004113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、飲料調製システムにおいて使用するための増粘剤を含む飲料濃縮物、及び向上した感覚刺激特性をもたらす増粘剤の混合物を有する飲料濃縮物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、飲料調製システム用のカートリッジであって、水性媒体をカートリッジ中へ導入するための注入口と、注入口の下流にある、飲料をカートリッジから放出するための出口と、注入口から出口までをつなぐ流路とを備え、流路はその内部に合計で約0.01から約5重量%の1つ又は複数の増粘剤を含有する非ゲル状飲料液体濃縮物を含むカートリッジを提供する。
【0009】
本発明はさらに、濃縮物中に溶解したアルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤を含む飲料液体濃縮物を収容するカートリッジから飲料を分配する方法であって、水性媒体をカートリッジに通して、前記飲料濃縮物を希釈することにより飲料を作るステップと、飲料を容器中に分配するステップとを含み、水性媒体に対する飲料濃縮物の総重量比は約10:1から約1:10である方法を提供する。
【0010】
本発明はさらに、飲料濃縮物を含む濃縮物チャンバーを収容したカートリッジと、濃縮物チャンバーの下流にある、飲料を放出するための出口と、濃縮物チャンバー及び出口をつなぐ流路であって、飲料濃縮物を水性媒体と混合するための手段を含む流路とを備え、流路の最大断面積はXであり、最小断面積はYであり、X対Yの比は約20以上であり、飲料濃縮物はアルギン酸塩及び/若しくは熱可逆性ゲル化増粘剤を含む非ゲル状飲料液体濃縮物又は固形飲料濃縮物である飲料分配システムを提供する。
【0011】
本発明はさらに、増粘剤を含む飲料濃縮物であって、メチルセルロース及び少なくとも1つのアルギン酸塩を1:5から5:1の重量比で含み、メチルセルロース及び少なくとも1つのアルギン酸塩は合わせて約0.01から約5重量%の量で存在する増粘剤を提供する。本発明はさらに、飲料濃縮物から調製される飲料の感覚刺激特性(好ましくは口当たり)を改善するためのアルギン酸ナトリウム及びメチルセルロースの使用であって、メチルセルロース及び少なくとも1つのアルギン酸塩は1:5から5:1の重量比であるアルギン酸ナトリウム及びメチルセルロースの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】熱可逆性ゲル化増粘剤(メチルセルロース)における粘度/温度の関係を示す図である。
【図2】特定の増粘剤の組み合わせの口当たりを調査する試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで本発明をさらに説明することにする。下記の節では、本発明の様々な態様をより詳細に定義する。そのように定義されるそれぞれの態様は、明確に反対の指示がない限り、任意の他の態様(1つ又は複数)と組み合わせてもよい。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴を、好ましい又は有利であると示される任意の他の特徴(1つ又は複数)と組み合わせてもよい。
【0014】
本発明の発明者らは、飲料濃縮物における増粘剤の使用について検討してきた。これらの検討の間に、発明者らは、特定の増粘剤又は増粘剤の混合物を選択することで、飲料濃縮物の有利な特性に寄与することができることを認識した。
【0015】
特に、発明者らは、増粘剤が最終の調製済み飲料の濃密さ及び質感に寄与するのが有利であるが、あるシステムでは、増粘剤が飲料濃縮物において及び/又は飲料が飲料分配システムから分配される前において同じ増粘効果を持たないことが望ましいということを見いだした。発明者らはまた、増粘剤の組み合わせがこれらの有利な粘度特性を実現し、同時に最終の調整済み飲料の驚くべき口当たりに寄与することも見いだした。
【0016】
ここで本発明のこれらの利点を、3つの態様に関連して説明することにする。これらのそれぞれの態様の特徴は、明記されない限り、任意の他の態様と自由に組み合わせてもよい。
【0017】
第1の態様において、発明者らは、飲料液体濃縮物のゲル形成を引き起こす及び/又は飲料液体濃縮物に過度の粘性をもたらす増粘剤は、飲料濃縮物が抽出される及び/又は希釈されるのを不可能にする恐れがあることを見いだした。このことは、薄く水っぽい飲料が分配機から分配されるのを引き起こす可能性があるが、この飲料は増粘剤を飲料濃縮物へ加える本来の理由であった有利な口当たりに欠ける。発明者らはまた、飲料液体濃縮物がゲルの形態をとっている及び/又は過度の粘性を有する場合、飲料濃縮物を一回使用のカートリッジ中へ充填するのが困難であることも見いだした。
【0018】
第2の態様において、発明者らは、増粘剤が飲料液体濃縮物のゲル形成をもたらす及び/又は飲料液体濃縮物に過度の粘性をもたらす場合、飲料濃縮物が水性媒体と混ざる際にゲルの小片が形成される恐れがあることを見いだした。これらのゲルの小片は、流路中の狭いくびれ部分をふさぐ可能性があり、これにより飲料システムから飲料を分配するのに必要な圧力の増加が引き起こされる。発明者らはさらに、飲料分配システムから分配されるとすぐに増粘化する固体飲料濃縮物を提供することが可能であり、これにより水性流体及び飲料濃縮物を混合する地点と飲料分配システムの出口との間で、調製済み飲料が流路中の狭いくびれ部分を通って流れるのに必要な圧力が低減されることを見いだした。
【0019】
第3の態様において、発明者らは、本発明の最初の2態様の利点をすべて有し、さらに調製された飲料に驚くべき口当たりをもたらす2つの増粘剤の組み合わせを見いだした。
【0020】
ここでこれらの態様の各々をより詳細に説明することにする。
【0021】
本発明の第1の態様において、発明者らは、カートリッジ中に飲料濃縮物を提供し、カートリッジにおいて飲料が希釈される及び/又は抽出されるのが消費者にとって便利であることを認識した。使用の際、これらのカートリッジは飲料調製機の内部に設置してもよい。次いで水性媒体(例えば水及び/又は蒸気)を飲料調製機からカートリッジ中へ導入する。水性媒体はカートリッジ内で飲料濃縮物と混ざり、次いで混合された飲料がカートリッジから分配される。場合により、ミルクなどの他の成分を加えて最終飲料を作ってもよい。カートリッジ及び飲料調製機の組み合わせを、飲料調製システムと呼ぶことができる。
【0022】
このようにして調製される飲料としては、コーヒー、紅茶、及びホットチョコレートが挙げられるが、それらに限定されない。「抽出される」及び「希釈される」という用語は、例えばコーヒー及び紅茶の抽出、並びに例えばチョコレート濃縮物の希釈の両方を表すために、本明細書において互換的に用いられることに注意するべきである。
【0023】
発明者らは、一部の飲料が増粘剤をそれらに加えることによって恩恵を受けることができることを認識した。例えば、一部のフレーバーコーヒーは飲料に増粘剤を加えることによって恩恵を受けることができる。コーヒーに加えられる香味料の例としては、ココア(チョコレートを含める)、バニラ、アルコール(リキュール香味料を含める)、キャラメル、ミント、乳製品、ハーブ、香辛料(シナモンを含める)、ナッツ、及び/又はベリーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0024】
発明者らは次に、飲料調製システムを用いてより濃密で高級感のある口当たりを有する飲料を容易にかつ確実に調製できるように、カートリッジに収容される飲料濃縮物において増粘剤を使用することの実現可能性を検討してきた。
【0025】
本発明の第1の態様において、発明者らは飲料分配装置用のカートリッジ中の飲料液体濃縮物において増粘剤を使用することを検討してきた。しかし発明者らは、大部分の増粘剤が液体成分を含む飲料濃縮物と共に使用するのに適さないことを見いだした。
【0026】
理論に束縛されることを望まないが、発明者らは食品の増粘剤が飲料濃縮物中に含有される液体成分に溶解する傾向があることを見いだした。増粘剤は溶解すると、組成物を増粘化させるように作用し、ゲルを形成する傾向がある。発明者らは、水性媒体を粘性の濃縮物又はゲル状の飲料濃縮物に加えると、水性媒体が飲料濃縮物と混ざるのに相当な時間を要することを見いだした。例えば、水性媒体の飲料濃縮物との拡散混合が妨げられるか又は著しく遅くなる可能性があり、代わりに、飲料濃縮物の粘度を下げるために水性媒体から飲料濃縮物への熱移動によって混合を進行させることが必要とされる場合もある。このことは、飲料をあらかじめ定められた濃度まで抽出/希釈するのにかかる時間を増大させるだけでなく、すべての飲料濃縮物が水性媒体と混合するとは限らない結果をももたらし、分配されたときにすべての飲料濃縮物が容器に移されるとは限らない結果をもたらすことがある。この問題は、飲料濃縮物が何らかの固形を含有する場合、不適切な混合によってすべての固形物が溶解するとは限らない(固形物が溶解性の固形である場合)、又はすべての固形物が最終の飲料の味に寄与するとは限らない結果となりえるならば、さらに悪化する。
【0027】
発明者らは次に、驚くことに増粘剤を含む飲料液体濃縮物を非ゲル形態で提供できることを見いだした。発明者らはこのことが有利であると分かったが、これは飲料液体濃縮物がカートリッジ中に導入された水性流体と容易に混ざることが可能となり、それにより飲料をあらかじめ定められた濃度まで抽出/希釈するのにかかる時間が減少し、抽出の信頼性が増すためである。
【0028】
したがって、第1の態様において、本発明は飲料調製システムにおける使用に適合したカートリッジを提供し、このカートリッジは飲料濃縮物を収容し、またこのカートリッジは、使用の際に飲料濃縮物が水性媒体と混ざって飲料を抽出するように設計されている。カートリッジは、飲料調製機と共に使用するために設計されてもよい。飲料濃縮物は、最終飲料にあらかじめ定められた増粘効果をもたらすのに十分な量で増粘剤を含有する、非ゲル状飲料液体濃縮物である。
【0029】
上記に示したように、本発明の第1の態様における飲料濃縮物は液体飲料濃縮物である。「液体濃縮物」とは、1つ又は複数の液体成分を含む濃縮物のことを言う。「液体成分」とは、周囲温度(例えば20℃などの室温)で液体である1つの成分のことを言う。飲料濃縮物に含有される液体成分は例えば水を含んでもよく、その代わりに、又はそれに加えて、液体成分は例えばコーンシロップ(例えばグルコースシロップ)及び/又は単糖、二糖、若しくは多糖を含有する他のシロップを含んでもよい。チョコレートベースの飲料の調製に使用される液体成分の例は、特許文献3(参照により本明細書にその全体が組み込まれる)に記載される液体チョコレートなどの、液体チョコレートである。好ましくは、飲料濃縮物に含有される液体成分の総量は、約40から約100重量%、例えば約60から約99重量%、例えば約80から約97重量%など、例えば約90から約95%である。これらの重量百分率は、飲料濃縮物の総重量の百分率として、すなわち液体及び固形成分を合わせた重量の百分率として与えられる。特に、抽出/希釈の時間及び抽出の信頼性は、液体成分の量が多いほど増大する可能性がある。しかし一部の成分は、その風味を抽出/希釈まで保つために、固体として提供されるのが好ましいことがある。例えばコーヒー抽出物は、固体形態、例えば溶解性のコーヒーとして提供されてもよい。焙煎して挽いたコーヒーなどの、抽出の風味を向上させるために、部分的に不溶解性の固体もまた提供してもよい。このように、飲料液体濃縮物は、例えば約0から約60重量%の固体含量、例えば約2から約40重量%、例えば約3から約20重量%など、例えば約5から約10重量%を含んでいてもよい。
【0030】
飲料液体濃縮物は非ゲル状である。「ゲル」及び「ゲル状」という用語は、20℃の定常状態下で流動を示さない系を指すものとして当業者に周知である。より好ましくは、飲料液体濃縮物の粘度は、約4000 mPa.s以下、より好ましくは約1000mPa.s以下、より好ましくは約500mPa.s以下、例えば約200mPa.s以下などである。発明者らは、これらの粘度が飲料濃縮物と水性流体との容易な混合に寄与することを見いだした。一方で、飲料液体濃縮物の粘度は、約1mPa.s以上、より好ましくは約10mPa.s以上、より好ましくは約50mPa.s以上であってもよい。発明者らは、これらの最小の粘度が増粘剤を除いた飲料濃縮物中の成分の濃度に起因する傾向にあり、これによって飲料濃縮物が希釈されうることが可能になり、さらになお所望の抽出濃度の最終飲料が提供されることを見いだした。
【0031】
したがって、20℃及び100rpmにおける好ましい粘度の範囲には、約1から約4000mPa.s、例えば約10から約1000mPa.s、例えば約10mPa.sから500mPa.sなどが含まれる。
【0032】
粘度はBrookfield DVII粘度計により測定する。増粘剤は、飲料濃縮物が20℃においてこれらの粘度を有するように選択することができる。例えば、下記で論じる好ましい増粘剤(アルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤)の濃度は、これらの粘度を実現するように選択することができる。粘度は100rpmにてスピンドル3を使用して測定することができる。
【0033】
好ましくは、増粘剤は液体成分に部分的又は完全に溶解してもよく、及び/又は液体成分中にコロイド形態で含有されてもよい。例えば、飲料濃縮物が固体及び液体成分の両方を含有する場合、これは連続相(液体成分(1つ又は複数))及び不連続相(固体成分(1つ又は複数))を有すると説明することができ、増粘剤は完全に溶解するか又はコロイドとして、連続相中に部分的又は完全に含有される。増粘剤がコロイド形態で含有される場合、時間とともに飲料濃縮物から分離しないこともある(例えば、液体成分からの増粘剤の分離が全く起きない、若しくは、ほとんど起きない、及び/又は、封止した容器中に20℃で7日間放置したときに、容器の底への増粘剤の沈降が起きない場合)。
【0034】
好ましくは、約50重量%から約100重量%、より好ましくは、約80重量%から約100重量%、例えば約100重量%の増粘剤が、溶解した状態又はコロイド形態のいずれかで、液体成分(1つ又は複数)/連続相中に含有されてもよい。特に、液体成分中に溶解した増粘剤がより多量であるほど、より迅速でより確実な飲料の抽出をもたらすことができる。飲料濃縮物の成分を、カートリッジに加える前に例えば真空ミキサーなどのミキサー中で混合することにより、増粘剤を飲料濃縮物中に溶解させてもよい。
【0035】
増粘剤は、当技術分野で公知のいくつかの方法で、液体濃縮物の連続相中に提供してもよい。例えば、増粘剤は実質的に又は完全に水和した形態で提供してもよい。特に、増粘剤は糖の水和などの水和技術に供してもよい。増粘剤及び濃縮物の液体成分はまた、高剪断混合に供してもよい。発明者らは、増粘剤を前もって水和させることにより、抽出された飲料が飲料カートリッジから分配される前の時間に、すべての増粘剤がより溶解しやすいことを見いだした。
【0036】
好ましくは、飲料濃縮物は約0.01から約5重量%の増粘剤を含む。これらの重量パーセントは、増粘剤の総濃度及び/又は2つの好ましい増粘剤の総濃度(下記でより詳細に論じる、アルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤)を表す。より好ましくは、飲料濃縮物は約0.01重量%から約2重量%の増粘剤、より好ましくは約0.1から約1重量%の増粘剤、例えば約0.2重量%から約0.8重量%、さらにより好ましくは約0.5重量%を含む。発明者らは、濃度が低すぎると増粘剤の増粘効果が低下し、一方高濃度では、増粘剤が液体成分に容易に溶解しなくなる傾向があることを見いだした。
【0037】
「増粘剤」は当技術分野で周知である。それらは飲料の粘性を増加させる増粘薬剤である。それらは固体形態(20℃で)で提供され、次いで液体中に溶解若しくは分散させてもよく、又は液体中にあらかじめ溶解若しくはあらかじめ分散させた固体の増粘剤を提供してもよい。それらは例えば、飲料のこく及び口当たりの特性を向上させるために使用されてもよい。
【0038】
発明者らはさらに、特定の増粘剤が、飲料液体濃縮物の過度の増粘化という問題を克服するための好ましい特性を有することを見いだした。これらの増粘剤には、アルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤が含まれる。例えば、飲料液体濃縮物はアルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤のうちの1つ又は両方を含んでもよい。発明者らは、飲料濃縮物がカートリッジ中へ導入されたときに水性媒体と容易に混合しない結果を生じさせることなく、これらの増粘剤をカートリッジ中へ組み込むことができることを見いだした。
【0039】
増粘剤はアルギン酸塩であるか、又はアルギン酸塩を含んでいてもよい。理論に束縛されることを望まないが、発明者らは、アルギン酸塩がカルシウムイオン(Ca2+)と混合されると粘性が高くなることを見いだした。したがって、非ゲル状の濃縮物を得るために、アルギン酸塩を結合していない状態で飲料液体濃縮物中に溶解させてもよい。その後、カルシウムイオンを含む水性流体を加えると、水性流体は飲料濃縮物と混ざり、そのとき初めて粘性が高くなる。例えば、カルシウムイオンを意図的に水性流体に加えてもよく、又はカルシウムイオンは、例えば水道水中の「硬水」の不純物として水性流体中に既に存在していてもよい。あるいは、アルギン酸塩はカルシウムイオンを含まない水性流体中に溶解させてもよい。次にカートリッジから分配される飲料は、容器中のカルシウムイオン源と混合されてもよく、容器中には例えばミルクが供給されている。
【0040】
用語「アルギン酸塩」は当技術分野で周知である。市販のアルギン酸塩は様々な海草源に由来する。異なる海草は異なるモノマー組成及びブロック構造のアルギン酸塩を産生し、したがってアルギン酸塩のカルシウム反応性はその産生源によって決まることがある。特に、アルギン酸塩はD−マンヌロン酸及びL−グルロン酸のモノマー単位を含む直線状のコポリマーを含むことがある。これらのモノマーは単一のモノマー単位のブロック(Mブロック又はGブロック)として、又はモノマーが交互の配列に近似している領域として、アルギン酸塩分子中に存在してもよい。アルギン酸塩は、それらが含有するマンヌロン酸及びグルロン酸の比率に応じて、「高M」又は「高G」と表すことができる。高Mアルギン酸塩の例は、カリフォルニアの海岸から刈り取られたジャイアントケルプ、マクロキュスティスピュリフェラ(Macrocystis pyrifera)から得られたものである。アルギン酸塩の増粘化の1つのメカニズムは、2つの曲がった(buckled)Gブロック領域が整列するとによって、カルシウムイオンなどの2価イオンの協同的結合に理想的な大きさを持つ菱形の穴が生じることであると考えられる。本発明において、高Mアルギン酸塩(例えば、M及びG単位の総数の50%を超える比率としてM含量を有するもの)を使用することができるが、これはそれらの増粘化特性が制御しやすいためである。
【0041】
アルギン酸塩は溶解性のアルギン酸塩であってもよく、そのようなものとしては、20℃で水に溶解性であるのが好ましい。そのようなものとしては、アルギン酸塩は20℃で水に完全に溶解するのが好ましい。溶解性のアルギン酸塩の例は当技術分野で周知である。それらには、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、及びアルギン酸アンモニウムが含まれる。しかし、先にゲル化したアルギン酸カルシウムは水に溶解性でないことがある。特に好ましいアルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムであり、発明者らは、アルギン酸ナトリウムがその特性及びその増粘化の確実性の点で特に用途が広いことを見いだした。
【0042】
発明者らは、アルギン酸塩がその増粘化特性のために他の増粘剤よりも使用に好ましいことを見いだした。特に、アルギン酸塩はカルシウムイオンの存在下で迅速かつ制御可能な増粘化をすることが見いだされた。対照的に、発明者らは、他の増粘剤(例えばカラギーナン増粘剤)は飲料が冷えるにつれてゆっくり増粘化するだけであることを見いだした。したがって、アルギン酸塩を使用することにより、最終飲料は時間と共にその粘度が実質的に変化しない可能性があり、これは消費者にとって有利である。
【0043】
アルギン酸塩は、2価カチオン(例えばカルシウム(Ca2+))に実質的に結合していないが2化カチオンに結合することができる状態で提供されてもよい。例えば、アルギン酸塩は約70重量%から約100重量%、例えば90重量%から100重量%、例えば約100重量%が2化カチオン(例えばカルシウム)に結合していない状態で提供されてもよい。2価カチオン(例えばカルシウム)に結合していない量は、例えば、室温でカルシウムイオン溶液(例えば1モル濃度のカルシウムイオンを有するもの)により滴定し、新たにカルシウムイオンを加えてももう組成物の粘度が上昇しない点を記録し、次いでこの量を、その濃度の対照アルギン酸ナトリウム溶液を粘度がもう上昇しない点まで増粘化させるのに必要なカルシウムイオン溶液の量の分率として表すことにより、測定することができる。
【0044】
増粘剤は熱可逆性ゲル化増粘剤であるか、又はそれを含んでいてもよい。これらの増粘剤はより高温になると上昇する粘度の特性を示す。この特性は可逆性熱ゲル化と呼ばれる。例えば、これらの増粘剤は飲料濃縮物に溶解させた場合、先に記載した粘度を測定するための条件(ただし温度を変える)を用いると、80℃において20℃よりも高い粘度、例えば2倍の粘性、例えば3倍の粘性などを示すことがある。
【0045】
発明者らは、これらの増粘剤が室温において濃縮した形態でゲル又は非常に粘性の高い組成物を形成する傾向がないが、より高温ではその粘性が高くなるため、有利であることを見いだした。そのようなものとしては、カートリッジに加えられる水性流体が「高温」で、すなわち約50℃から約100℃、例えば約70℃から約90℃、例えば約80℃などで提供される場合に、これらの増粘剤は特に有利である。あるいは、水性流体は「低温」で(すなわち5から50℃、例えば約20℃で)カートリッジへ導入されてもよく、次いで例えば高温の液体(例えばミルク)を加えることにより、カートリッジから分配される飲料が後で加熱される。このように、水性流体が飲料濃縮物と接触する時点で、濃縮物はゲル又は高粘性ではない。飲料濃縮物は急速に温まるが、高温における熱可逆性増粘剤の増粘化効果が飲料濃縮物と水性流体との混合を妨げる時間ができる前に、飲料濃縮物が水性流体と完全に混合する時間がある。
【0046】
2つの熱可逆性増粘剤の例は、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。これらはMethoCelという商標名でDow Chemicalsより入手可能である。メチルセルロースは、その口当たり特性のために、特に好ましい熱可逆性ゲル化増粘剤である。その熱/粘度プロファイルを図1に示す。
【0047】
好ましい実施形態において、飲料液体濃縮物はメチルセルロース及びアルギン酸塩の両方を含む。本明細書で説明するように、発明者らは、この増粘剤の組み合わせが最終の調製済み飲料に有利な口当たりをもたらすことを見いだした。
【0048】
飲料濃縮物がアルギン酸塩を含有する場合、濃縮物にカルシウムイオン封鎖剤を提供してもよい。カルシウムイオン封鎖剤はカルシウムイオンと錯形成し、それによりアルギン酸塩と錯形成するのに利用できるカルシウムイオンの濃度を低下させる。例えば、カルシウムイオン封鎖剤は、水性流体中に例えば水中の「硬水」の不純物として存在するカルシウムイオンと錯形成させるのに使用してもよい。
【0049】
カルシウムイオン封鎖剤の例としては、クエン酸三ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、及びヘキサメタリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0050】
好ましくはカルシウムイオン封鎖剤はアルギン酸塩に対して1:10から10:1、例えば1:5から5:1、例えば1:2から2:1などの比で存在する。発明者らは、カルシウムイオン封鎖剤がこれらの範囲内で有効に機能できることを見いだした。濃度が低い場合、封鎖剤の作用の有効性は低減される可能性がある。濃度が高すぎる場合、アルギン酸塩の増粘化効果を引き起こすのに必要なカルシウムの量が著しく増加する可能性がある。
【0051】
飲料濃縮物に含まれてもよいさらなる追加の成分の例としては、挽いたコーヒー、コーヒー抽出物(インスタントコーヒーを含める)、茶葉、茶抽出物、チョコレート固形物、及び香味料が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、飲料濃縮物はさらに、フレーバーシロップ、ココア(カカオマス、カカオニブ、粉末ココアなどの、カカオ豆に由来する任意の部分を含める)、ハーブ、香辛料、並びにバニラ、イチゴ、ラズベリー、オレンジ、メロン、キャラメル、クリーム、及びビスケットなどの香味料を含んでいてもよい。
【0052】
好ましくは、飲料濃縮物中の液体成分の1つは、1つ又は複数の糖類(単糖、二糖、多糖)を含む液体である。例えば、好適な液体成分は、単糖シロップ又は二糖シロップであってもよい。例えば、液体成分はコーンシロップ(例えばグルコースシロップ)であってもよい。好ましくは、この液体成分は約10重量%から約90重量%、例えば約30重量%から約75重量%、例えば約60重量%の量で提供される。特に、発明者らは、増粘剤を1つ又は複数の糖類を含む液体とあらかじめ混合することにより、増粘剤を液体中に有利に分散及び/又は溶解させることができることを見いだした。言い換えれば、水性媒体を粉末粒子に加えたときに粉末粒子が互いに凝集しないように、液体は粉末粒子をバラバラにする。
【0053】
好ましい実施形態において、飲料濃縮物増粘剤は80から99重量%の液体成分及び1から20重量%の固体成分を含んでいてもよい。液体成分は0.01から5重量%の溶解した増粘剤を含んでいてもよい。この増粘剤はアルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤を含んでいてもよく、又はそれらであってもよい。アルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤は、単独で又は組み合わせで、0.01から5重量%の濃度であってもよい。液体成分及び/又は固体成分は、ココア(チョコレートを含める)、バニラ、アルコール(リキュールの香味料を含める)、キャラメル、ミント、シナモン、ナッツ、及び/又はベリーなどの、1つ又は複数の香味料をさらに含んでいてもよい。固体成分は、溶解性のコーヒーなどのコーヒー抽出物であってもよく、又はそれを含んでいてもよい。
【0054】
本発明の第1の態様において使用することができる実際のカートリッジに目を向けると、カートリッジは、水性媒体をカートリッジへ中へ導入するための注入口と、注入口の下流にある、飲料をカートリッジから放出するための出口と、注入口から出口をつなぐ飲料の流路とを備える。本明細書で用いられる「カートリッジ」という用語は、任意のパッケージ、入れ物、小袋、容器、又は本明細書に記載されるような飲料濃縮物を収容する抽出装置若しくは希釈装置を意味することが理解されるであろう。カートリッジは剛性、半剛性、又は可撓性であってもよい。カートリッジは、実質的に空気及び水を通さない材料から形成してもよい。カートリッジに封止を施してもよい。例えば、注入口及び出口を膜(例えば、ラミネート)で覆ってもよく、使用の際にこの膜に穴を開けて水性流体の導入及び飲料の分配ができるようにしてもよい。例えば、飲料濃縮物は流路内に収容されるチャンバー内に備えられてもよい。場合により、フィルターなどの他の部材がカートリッジに含まれていてもよい。本発明において使用するのに適したカートリッジは特許文献4に記載され、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
1つの実施形態において、本発明のカートリッジは好ましくは一回使用のカートリッジである。特に、発明者らはさらに、飲料濃縮物を加熱してその粘度を調節することをせずに、先にゲル化した又は非常に粘性の高い飲料濃縮物をカートリッジ中へ充填するのが困難であることを見いだした。専門の加熱機器を充填装置中に組み込むことを必要とせずに、より単純な充填装置を使うことができるように、約0℃から約50℃、例えば約10℃から約35℃で飲料濃縮物をカートリッジに充填するのが好ましい。発明者らは、本発明の飲料濃縮物が、その特別な増粘化特性のためにこの問題を克服することを見いだした。
【0056】
したがって、好ましくは、飲料濃縮物を収容する飲料流路は約5mLから約500mL、より好ましくは約10mLから約100mLの容積を有する。このように、消費者は、飲料の一回使用を提供され、カートリッジを一回使用した後で廃棄できるという利便性を享受することができる。さらに、好ましくはカートリッジに備えられる飲料濃縮物の量は約1gから約50gの間、より好ましくは約5gから25gの間である。
【0057】
好ましくは、飲料濃縮物を収容する飲料流路の容積に対する飲料濃縮物の容積の比は約1:1から約1:100、例えば約1:2から約1:40など、より好ましくは約2:5から約1:20、例えば約1:3から約1:10などである。このようにして、飲料を抽出するためのカートリッジ中へ水性流体を好都合に導入することができる。
【0058】
使用の際には、増粘剤を含む非ゲル状飲料液体濃縮物を収容したカートリッジから、以下のステップを含む方法により飲料を分配する。すなわち、
水性媒体をカートリッジに通して、前記飲料濃縮物を希釈することにより飲料を作るステップと、
飲料を容器中へ分配するステップと
を含む方法であって、カートリッジ中へ導入される水性媒体に対する飲料濃縮物の全体の重量比が、約10:1から約1:10である。
【0059】
具体的には、発明者らは、約10:1から約1:10、例えば約5:1から約1:10、例えば約1:1又は約1:2から約1:8の希釈の範囲が、消費者にとって小型で便利なカートリッジ中の飲料を消費者に提供する、便利で確実な方法を実現することを見いだした。
【0060】
使用の際には、水性媒体をカートリッジ中へ室温を超える温度で導入することができる。例えば、水性媒体の温度は、カートリッジ中へ導入される時に約50℃から約100℃、例えば約70℃から約95℃、例えば約85℃などであってもよい。水性媒体は飲料ディスペンサに備えられるヒーターによりこの温度まで加熱してもよい。
【0061】
この方法は、飲料濃縮物及び水性媒体の混合物をミルクなどの他の水性媒体と混合する、さらなるステップを含んでもよい。例えば、これはあるいは容器中で行われてもよい。水性媒体がカートリッジへ高温で加えられない場合、この方法は、飲料濃縮物及び水性媒体の混合物をくびれ部分を通過した後で50℃から約100℃、例えば約70℃から約95℃、例えば約85℃などの温度まで加熱することも含んでもよい。これは例えば、飲料ディスペンサ自体において、又は例えば飲料濃縮物及び水性媒体の混合物をミルクなどの加熱された流体へ加えることにより容器において実現してもよい。
【0062】
本発明の第1の態様で使用される飲料ディスペンサは、温水器、送水ポンプ、場合により空気圧縮機、制御プロセッサ、ユーザーインターフェース、及びヘッドを収容する筐体を含んでいてもよい。ヘッドは、使用の際にカートリッジを保持するホルダーを含んでいてもよい。飲料調製機には水タンクを備えてもよい。
【0063】
飲料ディスペンサの筐体は、飲料の分配が行われる分配ステーションを含んでいてもよい。分配ステーションは、雫受けを形成する中空の内部を有する容器スタンドを含んでいてもよい。
【0064】
飲料ディスペンサのヘッドは、筐体の最上部に向けて容器スタンドの上に設置することができる。ヘッドのホルダーは、第1の態様のカートリッジを受けるように、また水がカートリッジを通過できるような正しい方向でカートリッジを保持するように形作ることができる。ホルダー及びヘッドには、使用の際に迂回の水流を防ぐために、カートリッジの外周のまわりを封止するための封止手段を備えてもよい。ヘッドは、飲料がカートリッジの最低面を通ってカートリッジから出るように、水流がカートリッジを通って下方へ向けられるように設計してもよい。あるいはヘッドは、飲料が最終的に下方へ容器に対して向けられる前に、最初にカートリッジの最上面を通ってカートリッジから出るように、水流がカートリッジを通って上方へ向けられるように設計してもよい。
【0065】
ユーザーインターフェースは筐体の前面に設置してもよく、スタート/ストップボタン及び複数の状態表示器を含む。水タンクは筐体の背面に設置してもよく、筐体の後ろ半分に設置される水タンクステーションに使用時に接続される。送水ポンプは水タンク及び温水器の間に動作可能な状態で接続され、制御プロセッサにより制御されてもよい。
【0066】
温水器は筐体の内部に設置してもよい。ヒーターは、送水ポンプから受け入れた水をおよそ20℃の開始温度から85℃前後の動作温度まで1分足らずで加熱できるのが好ましい。
【0067】
飲料調製機の制御プロセッサは、処理モジュール及びメモリを含んでいてもよい。制御プロセッサは、温水器、送水ポンプ、空気圧縮機、及びユーザーインターフェースに動作可能な状態で接続され、それらの動作を制御する。
【0068】
本発明で使用することができる飲料ディスペンサの例は特許文献5に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
これらの研究の間に、発明者らは、増粘剤を含む飲料濃縮物を飲料ディスペンサにおいて使用することに付随するさらなる問題を認識した。具体的には発明者らは、一部の飲料ディスペンサが、液体飲料濃縮物が水性流体と混合される地点と飲料ディスペンサの出口との間の流路にくびれ部分を含むことを認識した。使用の際、発明者らは、ゲル状の濃縮物が水性流体に完全に溶解しておらず一部のゲルが残っている場合、ゲルが流路中のくびれ部分に引っかかり飲料ディスペンサを詰まらせる恐れがあることを見いだした。それに加えて、又はその代わりに、飲料が高粘性すぎる場合、くびれ部分を通して飲料濃縮物及び水性流体の混合物を押し出すのに必要な圧力があまりにも大きくなる。
【0070】
したがって第2の態様では、本発明は、
飲料濃縮物を含む濃縮物チャンバーを収容するカートリッジと、
濃縮物チャンバーの下流にある、飲料の放出のための出口と、
濃縮物チャンバーと出口とをつなぐ流路であって、飲料濃縮物を水性媒体と混合して飲料を作るための手段を含む流路と
を備え、
流路の最大断面積がXであり、最小断面積がYであり、X対Yの比が約20以上であり、飲料濃縮物がアルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤を含む非ゲル状の飲料液体濃縮物又は固体の飲料濃縮物である、飲料分配システムを提供する。
【0071】
この第2の態様の非ゲル状濃縮物の好ましい特徴は、本発明の第1の態様で先に記載されるものと同じである。
【0072】
この第2の態様で使用されるカートリッジは、例えば飲料の流路に接続された出口を設けることによって、流路に接続した状態で備えられてもよい。カートリッジは一回使用又は多回使用の形態で提供してもよい。しかし、この第2の態様の好ましい実施形態において、飲料濃縮物は第1の態様によるカートリッジ中に提供される。言い換えれば、カートリッジに入口及び出口並びに濃縮物を水性流体と混合するための手段を備えてもよく、そのようなものとして、カートリッジは第1の態様で規定されるカートリッジであってもよい。この場合、上記で規定されるX対Yの比を有するくびれ部分又は開口部をカートリッジに設けてもよい。このようにして、(抽出前/希釈前の)飲料濃縮物を含み、カートリッジの入口及び出口の間で流路中に収容されるチャンバーの下流に、くびれ部分又は開口部を設けてもよい。
【0073】
非ゲル状飲料液体濃縮物に加え、本発明の第2の態様は、アルギン酸塩を含む固体の飲料濃縮物(先に定義される)を収容するカートリッジを提供することができる。固体濃縮物の使用は、抽出/希釈時間が増えること及び抽出の信頼性がより低いことなど、液体濃縮物よりも不利な点を有する場合があるが、発明者らは、固体のアルギン酸塩及び/又は固体の熱可逆性ゲル化増粘剤を使用して飲料が飲料ディスペンサから分配される後まで飲料の増粘化を遅らせることを実現できることを見いだした。
【0074】
具体的には、アルギン酸塩はカルシウムイオンの存在下で増粘化することができる。このように、アルギン酸塩が固体濃縮物中に提供される場合、アルギン酸塩を水性流体に溶解させ、容器中に分配することができる。次いで、カルシウムイオンを含む液体、例えばミルクを容器に加えてもよい。その後初めてアルギン酸塩はカルシウムイオンと錯形成することにより増粘化する。したがって、飲料の増粘化は、飲料が飲料ディスペンサから容器中へ分配されるまで遅らせることができる。このようにして、飲料は流路内のくびれ部分を通る前に増粘化せず、その後初めて増粘化する。したがって、飲料をくびれ部分に通すのに必要な圧力が低減され、飲料が飲料ディスペンサを通過するのを容易にする。
【0075】
さらに、発明者らは、熱可逆性ゲル化増粘剤が上昇した温度でその粘度を増すことを認識した。したがって、増粘剤は固体形態で提供される場合、例えば低温の流体(例えば5℃から50℃の温度を有するもの)に溶解させ(例えばコロイド形態になるように)、くびれ部分を通過させ、次いで高温の流体と混合させて(飲料調製システム内又は容器自体の中のいずれかにおいて)、溶解させた増粘剤がくびれ部分を通ってしまった後で粘性が得られる。
【0076】
本明細書で用いる場合、用語「固体濃縮物」は液体成分(すなわち20℃で液体)を実質的に含有しない濃縮物のことを言う。例えば、固体含量は約95重量%以上、例えば約98重量%以上など、例えば99重量%以上、例えば約100重量%などであってもよい。抽出/希釈にはあまり好都合でないが、液体濃縮物が適切に包装されない限り、固体濃縮物は液体濃縮物よりも長い保存期限を有する傾向がある。
【0077】
固体濃縮物の好ましい特徴(例えば、アルギン酸塩の重量%、好ましい追加の成分、及びカルシウムイオン封鎖剤の含有)は、第1の態様の飲料液体濃縮物について先に記載したものと同じである。
【0078】
このようにして、第2の態様はさらに、第1の態様の液体飲料濃縮物の代わりにアルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤を含む固体濃縮物を備えた、本発明の第1の態様によるカートリッジを提供することができる。
【0079】
濃縮物がどのような形態をとろうとも、好ましくは飲料濃縮物は約0.01から約5重量%の増粘剤を含む。より好ましくは、飲料濃縮物は約0.01重量%から約2重量%の増粘剤、より好ましくは約0.1から約1重量%、例えば約0.2重量%から約0.8重量%、さらにより好ましくは約0.5重量%の増粘剤を含む。発明者らは、濃度が低すぎると増粘剤の増粘化効果が低下し、一方高濃度では、増粘剤が液体成分中に溶解しにくくなる傾向があることを見いだした。好ましくは、アルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤が提供される場合、それらは上記の重量の範囲を有するように提供される。
【0080】
この第2の態様のカートリッジは、剛性、半剛性、又は可撓性であってもよい。カートリッジは実質的に空気及び水を通さない材料から形成してもよい。カートリッジは、その飲料調製システムへの接続部を除いて封止を施してもよい。例えば、カートリッジの注入口及び出口(存在する場合)を膜(例えばラミネート)で覆ってもよく、使用の際にこの膜に穴を開けて水性流体の導入及び飲料の分配ができるようにしてもよい。
【0081】
カートリッジは、飲料濃縮物を水性流体と混合するための手段から分離してもよい。このようにして、飲料濃縮物は一回使用の量よりも多い量で好都合に提供することができる。例えば、多回使用の飲料濃縮物を収容するカートリッジと、計測した量の飲料濃縮物を水性流体と混合させるために流路へ供給するための計量装置とを飲料ディスペンサに備えてもよい。
【0082】
X対Yの比は流路内のくびれ部分を測定する。流路の断面は流路自体に対して垂直に測定されることに注意されたい。流路が一連の平行な流路に分かれ、使用時に飲料濃縮物/調製済み飲料がすべての平行な流路を通るように流路が設計されている場合、流路の総断面積は個々の平行な流路の断面積の総和と見なされる。
【0083】
好ましくは、X対Yの比は約50以上、例えば約100以上など、例えば約150以上である。特に、くびれ部がより顕著になると、第2の態様による増粘剤を使用することの恩恵がより大きくなる。しかし、好ましくはX対Yの比は約2000以下、例えば1000以下など、例えば約500以下、例えば約350以下である。これは、飲料ディスペンサを通して液体を押し流すのに過度の圧力を必要としないようにするためである。このように、X対Yの比の好ましい範囲は約20から約2000、例えば約50から約500、より好ましくは150から350、例えば約250などである。
【0084】
第2の態様はまた、実際の断面積のくびれに関して表すこともできる。このように、発明者らは、約2mm2以下の断面積の開口部を流路内に有する飲料システムにおいて他の増粘剤を用いる場合、ゲルの小片が開口部に詰まる可能性がある、及び/又は液体を開口部に通して押し出すのにより大きい圧力を必要とする場合があることを見いだした。しかし、この第2の態様の増粘剤はそのような開口部の使用を容易にする。
【0085】
したがって、第2の態様は、
飲料濃縮物のカートリッジ、
飲料濃縮物のカートリッジの下流にある、飲料の放出のための出口と、
飲料濃縮物のカートリッジから出口までをつなぐ流路と、
飲料を作るために飲料濃縮物を水性媒体と混合する手段であって、飲料濃縮物のカートリッジに一体化されるか又は流路内に収容される手段と
を備え、
流路が2mm2以下の断面積を有する開口部を備え、飲料濃縮物が非ゲル状の飲料液体濃縮物であるか、又はアルギン酸塩及び/若しくは熱可逆性ゲル化増粘剤を含む飲料濃縮物である、
飲料分配システムを提供することができる。
【0086】
好ましくは、開口部は約1mm2以下、例えば約0.5mm2以下の断面積(X)を有する。特に、開口部がより小さくなると、第2の態様による増粘剤を使用することの恩恵がより大きくなる。しかし、飲料ディスペンサを通して液体を押し流すのに過度の圧力を必要としないように、開口部は約0.05mm2以上の断面積を有するのが好ましい。例えば、開口部は約0.1mm2以上、例えば約0.2mm2以上などの断面積を有してもよい。このように、最小断面積の好ましい範囲は、約0.05mm2から約2mm2、例えば約0.1mm2から約0.5mm2などである。
【0087】
例えば、開口部は0.36mm2の断面積を有してもよい(例えば0.6mmの辺を有する正方形の開口部)。開口部はまた、0.24mm2の断面積を有してもよい(例えば0.6mm及び0.4mmの辺を有する長方形の開口部)。例えば、そのような開口部は、エダクターなどの発泡手段であってもよい。開口部は正方形及び長方形以外の他の形をとってもよいことが理解されるであろう。
【0088】
好ましくは、流路の最大断面積(Y)は1000mm2以下、例えば500mm2以下など、例えば200mm2以下など、より好ましくは100mm2以下である。例えば、流路は87.8mm2の最大断面積を有してもよい。しかし、流路5mm2以上、例えば10mm2以上など、好ましくは20mm2以上、例えば50mm2以上の最大断面積(Y)を有してもよい。これらの制限内では、発明者らは飲料調製システムを動作させる、例えば飲料調製システムを介して液体の輸送を容易にするのが好都合であることを見いだした。例えば、最大断面積(Y)は5から1000mm2、例えば10から500mm2などであってもよい。
【0089】
開口部又はくびれ部は、飲料ディスペンサから分配される飲料の任意の発泡を提供するための、エダクターなどの発泡手段であってもよい。例えば、エダクターなどの発泡手段は本明細書に記載されるような飲料ディスペンサ用のカートリッジ中(例えばカートリッジの流路内)に、例えば(抽出前/希釈前の)飲料濃縮物を収容するチャンバーの下流に設けてもよい。
【0090】
例えば、本発明の第2の態様は、
飲料濃縮物のカートリッジと、
飲料濃縮物のカートリッジの下流にある、飲料を放出するための出口と、
飲料濃縮物のカートリッジから出口までをつなぐ流路と、
飲料を作るために飲料濃縮物を水性媒体と混合する手段であって、飲料濃縮物のカートリッジに一体化されているか、又は流路内に収容されている手段と
を備え、
流路がエダクターを備え、飲料濃縮物がアルギン酸塩及び/若しくは熱可逆性ゲル化増粘剤を含む非ゲル状液体濃縮物又は飲料濃縮物である、飲料分配システムを提供することができる。
【0091】
本発明の第2の態様はまた、飲料システムから飲料を分配する方法にも及び、
飲料システムはカートリッジを収容し、カートリッジは増粘剤を含む非ゲル状飲料液体濃縮物を収容する1つ又は複数のチャンバーを備え、チャンバーは流路によって飲料システムの出口まで接続され、
この方法は
カートリッジのチャンバー(複数可)又はチャンバー(複数可)から出口までをつなぐ飲料システムの流路のいずれかにおいて、飲料濃縮物を水性媒体と混合するステップと、
飲料濃縮物及び水性媒体の混合物を、先に規定したような開口部又はくびれ部(エダクターなど)に通すステップと、
飲料を容器中に分配するステップと
を含み、カートリッジに導入される水性媒体に対する飲料濃縮物の総重量比は約10:1から約1:10である。
【0092】
この方法は、カルシウムを含有する液体(例えばミルクをベースとする液体)を容器へ提供する若しくは添加する、及び/又は飲料調製システム内でそれを飲料濃縮物及び水性媒体の混合物と混合するさらなるステップを含んでもよい。この方法はまた、飲料濃縮物及び水性媒体の混合物を、それがくびれ部分を通った後に、50℃から約100℃、例えば約70℃から約95℃、例えば約85℃などの温度まで加熱することを含んでもよい。これは例えば、飲料ディスペンサ自体又は容器において、例えば飲料濃縮物及び水性媒体の混合物をミルクなどの加熱した流体へ加えることにより実現することができる。
【0093】
発明者らはさらに、飲料濃縮物から調製される飲料に有利な口当たりをもたらす増粘剤の組み合わせを検討した。単独及び組み合わせで試験したすべての増粘剤のうち、発明者らはメチルセルロース及びアルギン酸塩の組み合わせが驚くほど有利な口当たりを消費者にもたらすことを見いだした。
【0094】
したがって、本発明は第3の態様において増粘剤を含む飲料濃縮物を提供し、増粘剤はメチルセルロース及び少なくとも1つのアルギン酸塩を1:5から5:1の重量比で含み、メチルセルロース及び少なくとも1つのアルギン酸塩は合わせて約0.01から約5重量%の量で存在する。
【0095】
この第3の態様の好ましい飲料濃縮物の特徴(例えば、アルギン酸塩の重量%、好ましい追加の成分、及びカルシウムイオン封鎖剤の含有)は、第1の態様の液体飲料濃縮物のものと同じである。第3の態様の飲料濃縮物は第1の態様で規定される液体濃縮物であってもよいが、固体濃縮物であってもよいことに注目するべきである。
【実施例1】
【0096】
下記の実施例は、2つのカプセルによって調製されるオンデマンドの飲料における本発明の利益を実証する。1つのカプセルは50mLの94℃の温水で抽出される21.5gのミルクが入っており、1つのカプセルには94℃の50mLの温水で抽出される20gの濃縮液体ベースの処方物が入っており、最終的に100〜150mLの飲料を作り出す。
【0097】
参照の濃縮液体ベースの処方は以下を含む。
約63%のイソグルコース
約30%の水
約5.%の100%溶解性コーヒー
約1.2%の香味料
【0098】
実施例1:アルギン酸ナトリウム及びメチルセルロースを上記の処方に加えることにより、本発明の液体飲料濃縮物を調製した。アルギン酸ナトリウム及び第2リン酸ナトリウムの混合物から成る0.25%の市販のアルギン酸塩、0.25%の市販のメチルセルロース、2.02%の極微細糖を含む0.20%のクエン酸三ナトリウムを、それらの分散及び溶解を助けるための均一な混合物を得るように、別の容器においてあらかじめ混合することにより、本発明の濃縮した液体濃縮物を調製した。水を真空ミキサーに供給した。ミキサー内の圧力が約160mPaに達したらすぐに、混合物を真空下で導管を介してミキサー中へ供給した。この圧力で混合することにより混合物中に空気が取り込まれるのを防ぐが、そうしない場合は混合物がムースを形成することになる。粘性物質の溶解を助け、塊の形成を避けるために、撹拌及び再循環をプログラムした。次いでイソグルコースを加える前に圧力を約500mPaまで上昇させた。次いで同じ圧力、撹拌、及び再循環の条件で溶解性コーヒーを真空ミキサー中に供給した。次いで香味料を加える前に再循環及び真空を停止させた。生成物を次の工程段階へ送る前に、500mPaで撹拌及び再循環させながらすべての成分での最終の混合を行った。混合の質を制御するために、Brookefield DVII粘度計により、20℃にてスピンドルS3を用い、100rpmのスピード及び30〜70%のトルクで粘度を測定した。
【0099】
抽出した後に飲んだところ、参照の濃縮液体ベース処方と比較して本発明の液体飲料濃縮物では、全体として飲料はより濃密であり、よりクリーミーな口当たりを伴い質感がなめらかであり、向上した感覚刺激特性を提供した。
【0100】
4つの異なるサンプル間のばらつきを、DOD(差違度(Degree of Difference)法、この方法では参照からのDODを1〜11のスケールで評価し、1は対照と同じであり、11は対照と非常に異なる)を用いて評価した。異なるサンプルは以下を含有していた。
1.アルギン酸ナトリウム(0.25%)及びメチルセルロース(0.25%)の混合(対照、実施例1に記載される本発明の処方)
2.増粘剤なし
3.メチルセルロースのみ(0.25%)、及び
4.アルギン酸ナトリウムのみ(0.25%)
【0101】
盲検対照及びサンプルのランダムな提示を取り入れてDOD試験を行った。盲検対照は2つの増粘剤の混合である。5人の訓練したパネリスト及び2回の繰り返しにより試験を行った。繰り返しのある2元配置の分散分析及び10%リスクレベルでのダネット検定により、有意水準の計算を10測定の平均について行った。
【0102】
DOD試験の結果を図2及び表1に示す。
表1:
【0103】
【表1】

【0104】
結果は以下のことを示す。
・増粘剤を含まないサンプルは、全体のDODにおいて有意に異なると認識され、方向的には濃密さがより少なく口及びのどのコーティングがより少ない。
・メチルセルロースのみを含むサンプルは、2つの増粘剤の組み合わせを含有する参照サンプルよりも有意に濃密さが少なく口のコーティングが少ないため、有意に異なっている。及び
・アルギン酸のみを含むサンプルは全体のDODにおいて有意に異なると認識され、方向的には2つの増粘剤の組み合わせを含有する参照サンプルよりも濃密さが少なく、口のコーティングが少なく、質感においてわずかにクリーミーさが大きい。
【実施例2】
【0105】
下記の実施例は、カートリッジ内で飲料濃縮物を水性媒体と効率的に混合させるのを可能にするためにどのように増粘剤を使用することができるかを説明する。この実施例はまた、増粘剤を含む濃縮物及び流路から飲料システムの出口までのくびれ部の使用において、特定の増粘剤がいかに困難を生じさせる可能性があるかも示している。
【0106】
約50mLの容量のカートリッジを準備した。これに下記の増粘剤を含有する実施例1に記載した飲料液体濃縮物を満たすことを試みた。
1.1 キサンタンガム(CP Kelcoより) 飲料全体の0.05〜0.2%の重量
1.2 低メトキシルペクチン(CP Kelcoより) 0.05〜0.5%
1.3 カッパ−カラギーナンガム(CP Kelcoより) 0.05〜0.35%
1.4 イオタカラギーナン(CP Kelcoより) 0.05〜0.35%
1.5 ラムダカラギーナン(CP Kelcoより) 0.05〜0.6%
1.6 アルギン酸ナトリウム(Grinsteadより) 0.045〜0.5%
1.7 メチルセルロース(Dowより)0.045〜0.25%
1.8 ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Dowより)0.1〜0.5%
【0107】
キサンタンガムは濃縮物を相当に増粘化させ、飲料カートリッジを満たすことを困難にし、カプセル残渣を多く生じさせることが分かった。さらに、抽出した飲料をカプセルの出口に設けられたエダクターに押し通すのが困難になったことが分かった。
【0108】
低メトキシルペクチンはゲルを形成し、飲料カートリッジを満たすことを困難にし、抽出プロセスを遅くさせることが分かった。さらに、抽出した飲料をカプセルの出口に設けられたエダクターに押し通すのが困難になったことが分かった。
【0109】
カッパ−カラギーナン及びイオタ−カラギーナンは濃縮物を相当に増粘化し飲料カートリッジを満たすのを困難にし、抽出プロセスを遅くさせることが分かった。さらに、抽出した飲料をカプセルの出口に設けられたエダクターに押し通すのが困難になったことが分かった。
【0110】
ラムダカラギーナンはゲル化しないことが分かった。しかし、単独若しくは組み合わせでのアルギン酸塩又はメチルセルロースと同じ質感を飲料に与えないことが分かった。
【0111】
アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを首尾良くカートリッジに充填し、カートリッジにおいて抽出することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料調製システム用のカートリッジであって、
水性媒体を前記カートリッジ中に導入するための注入口と、前記注入口の下流にあり、前記カートリッジから飲料を放出するための出口と、前記注入口から前記出口までをつなぐ流路とを備え、
前記流路はその内部に合計で約0.01から約5重量%の1つ又は複数の増粘剤を含有する非ゲル状飲料液体濃縮物を含む、
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
飲料調製システム用のカートリッジであって、
水性媒体を前記カートリッジ中に導入するための注入口と、前記注入口の下流にあり、前記カートリッジから飲料を放出するための出口と、前記注入口から前記出口までをつなぐ流路とを備え、
前記流路はその内部にアルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤を含む飲料液体濃縮物を含み、
前記濃縮物中の前記増粘剤の総濃度は約0.01から約5重量%である、
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項3】
前記熱可逆性ゲル化増粘剤はメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうち1つ又は複数から選択されることを特徴とする請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記アルギン酸塩は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、及びアルギン酸アンモニウムのうち1つ又は複数から選択されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記飲料液体濃縮物はアルギン酸塩及びメチルセルロースを約1:5から約5:1の重量比で含み、前記メチルセルロース及び前記少なくとも1つのアルギン酸塩は合わせて約0.01から約5重量%の量で存在することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記流路は前記飲料液体濃縮物を充填したチャンバーを収容し、前記流路は前記飲料液体濃縮物が充填された前記チャンバーの下流に2mm2以下の断面積を有する開口部をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記飲料濃縮物はコーヒー抽出物、好ましくは溶解性コーヒーを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記飲料濃縮物はアルギン酸塩を含み、カルシウムイオン封鎖剤をさらに含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記飲料濃縮物中の前記増粘剤は、好ましくは糖の水和及び/又は高剪断混合などの水和技術により、液体成分中で水和されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記濃縮物中に溶解したアルギン酸塩及び/又は熱可逆性ゲル化増粘剤を含む飲料液体濃縮物を収容するカートリッジから飲料を分配する方法であって、
水性媒体を前記カートリッジに通して、前記飲料濃縮物を希釈することにより飲料を作るステップと、
前記飲料を容器中に分配するステップと、
を含み、
前記水性媒体に対する前記飲料濃縮物の総重量比は約10:1から約1:10である、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
約50℃から約100℃の温度で前記水性媒体を前記カートリッジ中へ導入することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
飲料濃縮物を含む濃縮物チャンバーを収容するカートリッジと、
前記濃縮物チャンバーの下流にある、飲料を放出するための出口と、
前記濃縮物チャンバー及び前記出口をつなぐ流路であって、前記飲料濃縮物を水性媒体と混合するための手段を含む流路と、
を備え、
前記流路は前記濃縮物チャンバーの下流に2mm2以下の断面積を有する開口部を備え、
前記飲料濃縮物は合計で約0.01から約5重量%の1つ若しくは複数の増粘剤を含有する非ゲル状飲料液体濃縮物であるか、又は合計で約0.01から約5重量%のアルギン酸及び/若しくは熱可逆性ゲル化増粘剤を含有する固体濃縮物である、
ことを特徴とする飲料分配システム。
【請求項13】
飲料濃縮物を含む濃縮物チャンバーを収容するカートリッジと、
前記濃縮物チャンバーの下流にある、飲料を放出するための出口と、
前記濃縮物チャンバー及び前記出口をつなぐ流路であって、前記飲料濃縮物を水性媒体と混合する手段を含む流路と、
を備え、
前記流路の最大断面積はXであり、最小断面積はYであり、X対Yの比は約20以上であり、前記飲料濃縮物はアルギン酸塩及び/若しくは熱可逆性ゲル化増粘剤を含む非ゲル状飲料液体濃縮物又は固体飲料濃縮物である、
ことを特徴とする飲料分配システム。
【請求項14】
増粘剤を含む飲料濃縮物であって、
前記増粘剤はメチルセルロース及び少なくとも1つのアルギン酸塩を1:5から5:1の重量比で含み、
前記メチルセルロース及び前記少なくとも1つのアルギン酸塩は合わせて約0.01から約5重量%の量で存在する、
ことを特徴とする飲料濃縮物。
【請求項15】
飲料濃縮物から調製される飲料の感覚刺激特性(好ましくは口当たり)を改善するためのアルギン酸ナトリウム及びメチルセルロースの使用であって、
前記メチルセルロース及び少なくとも1つのアルギン酸塩は重量比が1:5から5:1であることを特徴とするアルギン酸ナトリウム及びメチルセルロースの使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−228812(P2010−228812A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−70102(P2010−70102)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(501175214)クラフト・フーヅ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・インコーポレイテッド (56)
【氏名又は名称原語表記】KRAFT FOODS R & D, INC.
【Fターム(参考)】