説明

飲料用ボトルのコップセット

【課題】市販されている、口部の外側形状が相違する複数の種類の飲料用ボトルに対して、複数個のコップの積み重ね順を変えることで、この飲料用ボトルの口部に装着できるコップセットの提供を目的とする。また、複数個のコップ間の積み重ね及び分離が容易なコップセットの提供も目的とする。
【解決手段】飲料用ボトル1の口部2に装着可能なキャップ部13を内側底部に有するコップを複数個備え、それぞれのコップは順序不同に積み重ね可能であり、複数個のコップのうち、少なくとも2つ以上のコップにおいて、キャップ部の内側形状が相違することを特徴とし、市販されている飲料用ボトルの口部の外側形状に対応したキャップ部を有するコップを最下段にし、その上に他のコップを嵌合により積み重ねる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市販されているボトル飲料の既存のキャップを取り外し、その代わりにこの飲料用ボトルの口部に装着できるコップセットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ペットボトルと称されているPET(ポリエチレンテレフタレート)製の容器にミネラル水、お茶類、ジュース類、清涼飲料水等を充填したものが市販されている。
近年は、PET以外にもアルミ缶製やスチール缶製のボトル飲料も市販されている。
これらのボトル飲料のボトルの容量は小さいもので250ml,大きいもので1000ml,2000mlとさまざまである。
その中でも容量250ml〜1000ml前後のものは、携帯に手頃であることから、ボトル飲料を購入し、既存のキャップを取り外して代わりに内側にキャップ部を形成したコップを取り付けるものが提案されている(特許文献1,2)。
これはボトルの口部に直接口を付けることなく飲むことができ、いわば水筒に近い使用方法を可能にしたものである。
また、飲料用ボトルの口部にアダプタキャップを螺着し、このアダプタキャップに複数個のコップを取り付けることで複数人で衛生的に飲用できるようにしたものが提案されている(特許文献3)。
また、市販されている飲料用ボトルのコップセットには、2つのコップを螺合により重ね合せて下段側のコップの内側に設けたキャップ部を飲料用ボトルの口部に螺着したものがある。
しかし、これら従来のペットボトル用のコップセットは、ボトルの口部の高さに合せて調整可能な延長部材を有していてもキャップ部の内側形状がどのコップも同じであり、近年市販されている飲料用ボトルが多様化し、飲料用ボトルの口部の外側形状が異なると、もはや取り付けることができなかった。
本出願人の市場調査によれば、日本国内にて生産された飲料用ボトルは図8(b)に示すように、一本の連続した、ねじ山3を口部の外周部に2〜3廻り形成した一条ねじ形態のものが多く、その外径は概ね28mmであった。
これに対して、海外から輸入された飲料用ボトルは、図8(a)に示すように、三本のねじ山3aを不連続に口部の外周部に形成した三条ねじ形態のものが多く、その外径が概ね31mmであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3163596号公報
【特許文献2】特開2003−81303号公報
【特許文献3】実用新案登録第3113634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、市販されている、口部の外側形状が相違する複数の種類の飲料用ボトルに対して、複数個のコップの積み重ね順を変えることで、この飲料用ボトルの口部に装着できるコップセットの提供を目的とする。
また、複数個のコップ間の積み重ね及び分離が容易なコップセットの提供も目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
現在市販されているボトル飲料のボトルの口部の外形形状には、複数の種類が存在する。
そこで、本発明は飲料用ボトルの口部の外径形状の種類毎に対応させたキャップの内側形状を有するコップを複数個積み重ねた点に特徴がある。
即ち、本発明に係る飲料用ボトルのコップセットは、飲料用ボトルの口部に装着可能なキャップ部を内側底部に有するコップを複数個備え、それぞれのコップは順序不同に積み重ね可能であり、前記複数個のコップのうち、少なくとも2つ以上のコップにおいて、前記キャップ部の内側形状が相違することを特徴とする。
ここで、キャップ部の内側形状が相違するとは、その内径寸法が相違する場合や、内側に形成した、ねじ山の形状が相違する等、キャップ部の内側形状が相違することをいう。
また、装着可能なキャップ部と表現したのは、ねじ込みにてキャップ部を飲料用ボトルの口部に螺着する構造に限定するもので無く、市販されているあるいは今後市販される飲料用ボトルの口部のキャップ装着構造に合せてコップの内側底部のキャップ部の内側形状を合せる趣旨である。
このように、それぞれのコップに、相互に内側形状が相違するキャップ部を形成すると共にそれぞれのコップを順序不同に積み重ね可能にしたので、市販されている飲料用ボトルの口部の外側形状の種類が異なる場合に、その口部に対応した内側形状のキャップ部を有するコップを最下段にし、その上に他のコップを積み重ねることができる。
即ち、口部の外側形状が異なる市販の飲料用ボトルに合せて、コップの積み重ねの順序を変えることで複数個のコップを装着できるようになった。
ここで、コップの内側底部に形成するキャップ部は、コップ本体に一体成形してもよく、別体のキャップ部を、共通するコップ本体成形後に取り付けてもよい。
また、積み重ね可能なコップが2つ以上であれば、3段、4段・・・・と積み重ね数に制限がなく、それら複数個のコップの内側底部にそれぞれ設けたキャップ部の内側形状が全て相違することも必ずしも必要ではない。
一部同じ内側形状のキャップ部を有するコップが含まれていても、購入したボトル飲料のボトルの口部に合ったキャップ部を有するコップを最下段にすることで、複数個のコップを積み重ねて飲料用ボトルの口部に装着できる。
それぞれのコップは、積み重ねが容易になるように、コップの底部から開口端側に向けて内径寸法が大きくなるテーパー形状の側壁を有し、可撓性のある材質からなる。
可撓性のある材質としては薄い肉厚の金属製でもよいが、キャップ部を一体成形しやすい点からは樹脂製が好ましい。
また、コップ同士を開口部が下になるように積み重ねた場合に、上段側のコップ内側底部のキャップ部が下段側のコップ外側底部に干渉しない積み重ね寸法に設定するのが好ましい。
【0006】
本発明は、複数個のコップが順序不同に積み重ね可能であれば、その積み重ね構造に限定はないが、複数個のコップは一方のコップの内周部と他方のコップの外周部との嵌合により積み重ね可能であってよい。
ここで、コップ同士の嵌合による嵌合接触部は周方向において一方のコップが全周にわたって接触可能であり、他方のコップが部分的に接触する構造であってもよい。
市販されている従来の螺合構造からなる複数個のコップセットでは、コップ同士の螺合とボトルの口部の螺合とが共廻りして、コップ同士が外れないことがあるが、上記のように複数個のコップを嵌合構造にて積み重ねると、コップ同士の嵌合と飲料用ボトルの口部の螺合とが共廻りすることを防止できる。
さらにコップ同士の嵌合接触部が周方向において部分接触になっていると、嵌合力の調整が容易で、嵌め外しも容易になる。
コップ同士の間の嵌合部が部分接触になる構造例としては、一方のコップが開口部の内側全周に亘って接触可能なリング状の突部を有し、他方のコップが外側周方向に複数の突起部を有し、前記一方のコップの内側方向リング状の突部が他方のコップの外側方向突起部を乗り越えて嵌合する構造例が挙げられる。
また、それとは逆に、一方のコップの外側に周廻り連続の嵌合用のリング状の突部を形成し、他方のコップの内側周廻りに突起部を複数設けて、この内側方向の突起部が外側方向のリング状の突部を乗り越えて嵌合するようにしてもよい。
【0007】
複数個のコップを順序不同積み重ね可能にした場合に、複数個のコップは、キャップ部が相違することを示す識別手段を有すると、購入したボトル飲料のボトルの口部に合ったコップの選定や、複数個のコップを嵌め外して使用した後に、飲料用ボトルの口部に積み重ねる際に最下段にするコップの選定が容易になる。
また、複数個のコップを識別する識別手段としてはコップ毎に色を変えたり、コップの外側に識別マークを附する等、その手段に制限はない。
【0008】
購入したボトル飲料を水筒替わりに使用する場合には、吊り下げて携帯しやすいように飲料用ボトルの口部の首部等に装着できる弾性材からなる吊り下げ部材をコップセットに組み合せるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る飲料用ボトルのコップセットは、コップの内側底部に形成したキャップ部の内側形状を、市販の異なる種類の飲料用ボトルの外側形状に対応するように、それぞれ相違させたコップを複数個積み重ねたので、購入したボトル飲料の口部が相違するボトルに対してもコップの積み重ね順序を変えることで、装着が可能になり便利である。
従来から市販されている飲料用ボトルのコップセットでは、キャップ部の内側形状がどのコップも同じであったために、せっかくボトル飲料を購入し、既存のキャップを取り外し、代わりにコップを取り付けようとしても口部の外側形状が異なり、装着できないケースがあった。
これに対して、本発明はこのようなトラブルを未然に防ぐことができる。
また、本発明で複数個のコップ同士を嵌合により積み重ね可能にすると、コップ同士の嵌合とボトルの口部との螺合との共廻りを防止できる。
さらに、コップ同士の嵌合部を部分接触にすると嵌め外しや積み重ねが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明に係るコップセットを飲料用ボトルの口部に装着した状態の断面図を示す。(b)は嵌合部の部分拡大図を示す。
【図2】(a)はA部拡大図、(b)はB部拡大図を示す。
【図3】コップセットの構成例を示す。
【図4】(a)は吊り下げ部材の平面図を示し、(b)は飲料用ボトルの口部の外側の首部に装着した状態を示す。
【図5】2種類のコップの組み合せ例を示し、(a)〜(c)は第一コップの平面図、側面図、側面断面図をそれぞれ示し、(d)〜(f)は第二コップの平面図、側面図、側面断面図をそれぞれ示す。
【図6】ペットボトルに装着した外観図を示す。
【図7】3つのコップを積み重ねた例を示す。
【図8】市販飲料用ボトルの口部の外側形状例を示し、(a)は、ねじ山三条形態、(b)は、ねじ山一条形態の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るコップセットの例を図1に示し、本実施例は2個のコップを積み重ねた例で、コップの数や積み重ね構造に制限はない。
図1に示したコップセット100は、第二コップ20に第一コップ10を積み重ねてあるが、逆に第二コップ20を第一コップ10に積み重ねることもできる。
従って、第一コップ10と第二コップ20は、順序不同に積み重ね可能な構造になっている。
図1及び図3に示すように、第一コップ10は、相対的にめねじ部14の谷径Dが大きい三条ねじ山からなるキャップ部13を内側11の底部12に形成してある。
第二コップ20は、第一コップ10より谷径Dが小さい一条ねじ山からなるめねじ部24を有するキャップ部23を内側21の底部22に形成してある。
第一コップ10と第二コップ20とはキャップ部の形状以外は基本的に同じ構造及び寸法になっている。
第二コップ20の外周部であって、積み重ねた場合の積み重ね寸法H(図1参照)を考慮し、図1,2に示すように、第二コップ20は開口端部から所定の距離だけ離れた周廻りに複数の突起部26を有する。
一方、第一コップ10の開口部の内側全周に亘ってアンダーカット部15を形成することで、開口端側にリング状の突部15aを設けた。
これにより、第一コップ10の内側のリング状の突部15aが、第二コップ20の外側の突起部26を乗り越えて、この突起部の開口側端部26aに嵌合することで部分的に接触する。
従って、逆に、第二コップ20を第一コップ10に積み重ねる場合は、第二コップ20のリング状の突部25aの底部側が、第一コップ10の突起部16の開口側端部16aに嵌合接触することになる。
なお、第一コップ10と第二コップ20とは積み重ね寸法Hの部分を考慮し、開口部の内径が底部側の内径よりも大きい段差状の開口形状となっている。
その段差形状について、図1、図2のA部拡大図及びB部拡大図に基づいて説明する。
第一コップ10は、テーパー形状の側壁部17とそれよりも内径が大きい拡径側壁部18との段差形状になっている。
一方、第二コップ20もテーパー形状の側壁部27とそれよりも内径が大きい拡径側壁部28との段差形状になっている。
第一コップ10を第2コップ20に積み重ねると、リング状の突部15aが第二コップ20の突起部26を乗り越えて嵌合するが、第一コップ10のリング状の突部15aは、第二コップ20の拡径側壁部28の外周側で根元側の斜面部28aに当接し、第一コップ10が第二コップ20に対して位置決めされる。
即ち、第一コップ10のキャップ部13の先端が第二コップ20の外側底部と干渉しないように積み重ね寸法Hが設定される。
また、第二コップ20を第一コップ10に積み重ねると第二コップのリング状の突部25aが、第一コップの拡径側壁部18の外周側で根元側の斜面部18aに当接する。
【0012】
本実施例では、図5に示すように第一コップ10の外側底面に、二重まる19を付け、第二コップ20の外側底面に、一重まる29を付けることで2つのコップを識別した例となっている。
【0013】
本実施例は、図4に示すように伸びのある弾性材からなる吊り下げ部材30を有する。 この吊り下げ部材30は、バンド状になっていてその中央部に、取付孔31と、両端側に吊り下げ孔32を有する。
取付孔31は、飲料用ボトル1の口部2の外側に有する首部2bの環状つば部2aに、係止するようになっている。
これにより、図4(b)に示すように、吊り下げ部材30の弾性を利用して取付孔31が環状つば部2aを乗り越えるように押し込むことで、この吊り下げ部材30を首部2bに取り付け、図6に示すようにベルト40の両端部を両側の吊り下げ孔32に連結すると、ショルダーベルトとなる。
吊り下げ部材30を飲料用ボトルの首部2bに取り付けた後に、第二コップ20のキャップ部23をこのボトルの口部のおねじ部3に螺合すると、口部の上端部2cがキャップ部23の底面23aに当接し、密封状態になる。
なお、第一コップ10にも同様のシール用の底面13aを有する。
【0014】
図7には3つのコップ10,20,20aを積み重ねた例を示す。
このようにコップの数には制限なく、その内、例えばコップ20と20aとはキャップ部の内側形状が同じであってもよい。
また3つのコップのキャップの内側形状がそれぞれ異なっていてもよい。
本実施例ではコップ本体にキャップ部を一体的に成形した例を示したが、異なるキャップ部のみを共通のコップ本体に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0015】
1 飲料用ボトル
2 口部
3 おねじ部
10 第一コップ
13 キャップ部
14 めねじ部
20 第二コップ
23 キャップ部
24 めねじ部
30 吊り下げ部材
100 コップセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料用ボトルの口部に装着可能なキャップ部を内側底部に有するコップを複数個備え、
それぞれのコップは順序不同に積み重ね可能であり、
前記複数個のコップのうち、少なくとも2つ以上のコップにおいて、前記キャップ部の内側形状が相違することを特徴とする飲料用ボトルのコップセット。
【請求項2】
前記複数個のコップは一方のコップの内周部と他方のコップの外周部との嵌合により積み重ね可能であることを特徴とする請求項1記載の飲料用ボトルのコップセット。
【請求項3】
前記嵌合による嵌合接触部は周方向において一方のコップが全周にわたって接触可能で他方のコップが部分的に接触することを特徴とする請求項2記載の飲料用ボトルのコップセット。
【請求項4】
前記一方のコップが開口部の内側全周に亘って接触可能なリング状の突部を有し、他方のコップが外側周方向に複数の突起部を有し、前記一方のコップの内側方向リング状の突部が他方のコップの外側方向突起部を乗り越えて嵌合することで部分的に接触することを特徴とする請求項3記載の飲料用ボトルのコップセット。
【請求項5】
前記複数個のコップはキャップ部が相違することを示す識別手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の飲料用ボトルのコップセット。
【請求項6】
前記コップセットは、前記複数個のコップの他に飲料用ボトルを吊り下げるための弾性材からなる吊り下げ部材を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の飲料用ボトルのコップセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−236643(P2012−236643A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108531(P2011−108531)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000107066)株式会社リッチェル (77)
【Fターム(参考)】