説明

飲料缶

【課題】内容物を缶内部にほとんど残すことなく飲み口から流出させることが可能な飲料缶を提供すること。
【解決手段】円筒状の缶胴部2と、その開口端を閉塞するように配設された缶蓋部3とよりなる飲料缶1である。缶蓋部3は、缶胴部2との接合部4よりも軸方向外側に突出した突出部31を有する。突出部31は、接合部4から軸方向外側に行くに連れて缶中心軸5に近づくよう傾斜した傾斜面部311と、傾斜面部311の先端に連なり缶中心軸に直交する平坦な面よりなる先端平面部312とを有してなる。先端平面部312には、傾斜面部311との境界部313に及ぶように開口可能な飲み口32が形成されている。傾斜面部311は、突出部31の全周にテーパ状に設けられていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お茶、ジュース、コーヒー等の飲料を詰めて密閉してなる飲料缶に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲料缶は、アルミニウム製又はスチール製である。そして、飲料缶は、一端を開口した円筒状の缶胴部内に飲料を注入し、その後、缶胴部の開口端を閉塞するように缶蓋部を配設して密閉されてなる。
【0003】
そして、飲料缶には、缶蓋部の上面に取り付けられたタブを手で引っ張って開口部を設ける方式の飲料缶がある。
この方式の飲料缶は、缶蓋部の開口部となる部分に略楕円形状の切り込み線(スコア)を形成してあると共に、缶蓋中心部のリベットを介して開口用タブを取り付けてある。そして、タブの外端部を指でつまんで起こすと、リベット部よりなる支点の反対側に位置する押圧部が缶蓋部の切込み線内の部分を押圧し、切込み線の内側が切り離されて缶内に没入して、開口部が形成される構成となっている。
なお、このような飲料缶に関する先行技術としては、例えば特許文献1がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−40264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の飲料缶において、上記開口部となる切り込み線は、上記缶蓋部と缶胴部との接合部から内方に数mmの間隔を設けて形成されている。そのため、その飲料缶を傾けて缶蓋部に設けられた飲み口から内容物をすべて流出させたつもりでも、飲料缶内部に内容物が必ず残存してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、内容物を缶内部にほとんど残すことなく飲み口から流出させることが可能な飲料缶を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円筒状の缶胴部と、その開口端を閉塞するように配設された缶蓋部とよりなる飲料缶において、
上記缶蓋部は、上記缶胴部との接合部よりも軸方向外側に突出した突出部を有し、
該突出部は、上記接合部から軸方向外側に行くに連れて缶中心軸に近づくよう傾斜した傾斜面部と、該傾斜面部の先端に連なり上記缶中心軸に直交する平坦な面よりなる先端平面部とを有してなり、
該先端平面部には、上記傾斜面部との境界部に及ぶように開口可能な飲み口が形成されていることを特徴とする飲料缶にある(請求項1)。
【0008】
本発明の飲料缶の注目すべき点は、上記缶蓋部に上記特定の形状を有する突出部を設け、飲み口の形成位置を、上記缶蓋部と上記缶胴部との接合部よりも上方に設け、さらに、上記突出部の上記境界部に及ぶように設ける点にある。
【0009】
すなわち、上記突出部に上記傾斜面部を設けることにより、缶全体を傾けて飲み口から内容物を流出させる際に、内容物を上記飲み口に向けてスムーズに流すことができる。また、上記先端平面部に形成された上記飲み口を上記境界部に及ぶように設けることにより、傾斜面を伝わってきた内容物が溜まる部分をなくすことができ、飲料缶内に内容物が残存することを防止することができる。
【0010】
このように、本発明によれば、内容物を缶内部にほとんど残すことなく飲み口から流出させることが可能な飲料缶を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の飲料缶は、上述したように、円筒状の缶胴部と、その開口端に配設された缶蓋部とよりなる。
上記飲料缶は、アルミニウム材、スチール材等からなる金属製の飲料缶であることが好ましい。
【0012】
また、缶蓋部の強度や、飲み易さの観点から、上記缶蓋部における上記突出部の高さは、上記缶蓋部と缶胴部との接合部から10〜30mmであることが好ましい。また、上記傾斜面部と上記先端平面部とのなす角度は、95〜135°であることが好ましい。
【0013】
また、上記先端平面部には、上記傾斜面部との境界部に及ぶように開口可能な飲み口が形成されている。上記飲み口が、上記境界部に及ばない場合には、内容物が缶内部に残存するおそれがある。
なお、上記飲み口は、上記境界部に及んでいればよく、さらに上記傾斜面部まで及んでいても良い。
【0014】
また、上記飲料缶において、上記傾斜面部は、上記突出部の全周にテーパ状に設けられていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、強度、及び安定性を得ることができ、加工も容易である。
【0015】
そして、上記飲料缶において、上記飲み口は略楕円形状に形成してあることが好ましく、上記缶蓋中心部のリベット部を介して、開口用のタブが取り付けてあることが好ましい。この場合には、上記タブは上記リベット部を支点とするてこの働きをし、タブの外端部を指でつまんで起こすと、上記リベット部よりなる支点の反対側に位置する押圧部が缶蓋部の上記飲み口内の部分を押圧し、飲み口部分が缶蓋部から切り離されるとともにリベット部の近傍が折り曲げられ、切り離された部分が飲料缶内に没入して、開口部が形成される構成とすることができる。
【0016】
また、上記構成の飲料缶を製造するには公知の方法を適用することができる。
例えば、上記缶胴部は、アルミニウム板材あるいはスチール板材を円盤状に打ち抜き、深絞り加工、DI成形、開口端トリミング、洗浄、塗装・焼付け、開口部のネッキング・フランジ加工を行うこと等により形成することができる。
【0017】
また、上記缶蓋部を形成する際は、アルミニウム板材あるいはスチール板材を丸く打ち抜くと同時に、上記突出部、及び缶胴部にかぶせるための段、カール等を形成する成型加工(シェルプレス)を行う。そして、カール内部に、コンパウンドを塗布し、その後、引き金であるタブをつけるためのリベット成形を行う。そして、プレス加工によって切り込み線(スコア)を形成することにより開口可能な飲み口を形成し、そして、タブを一体化することにより缶蓋部を得ることができる。
【0018】
また、上記缶蓋部と上記缶胴部との接合は、上記缶蓋部の外周を所定の形態に屈曲させたカールを、上記缶胴部の開口端に形成されたフランジの外方から抱き合わせるように巻き込んで、さらに、外方から圧着する2重巻締めにより行うことができる。また、缶蓋部のカール部内部に塗布されているコンパウンドの介在によって、飲料缶に密封性を保たせることができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
本例は、本発明の実施例にかかる飲料缶について、図1〜図3を用いて説明する。
図1〜図3に示すように、本例の飲料缶1は、円筒状の缶胴部2と、その開口端を閉塞するように配設された缶蓋部3とよりなる。
【0020】
飲料缶1において、上記缶蓋部3は、上記缶胴部2との接合部4よりも軸方向外側に突出した突出部31を有する。また、上記突出部31は、上記接合部4から軸方向外側に行くに連れて缶中心軸5に近づくよう傾斜した傾斜面部311と、該傾斜面部311の先端に連なり上記缶中心軸5に直交する平坦な面よりなる先端平面部312とを有してなる。
また、上記先端平面部312には、上記傾斜面部311との境界部313に及ぶように開口可能な、略楕円形状の飲み口32が形成されている。
【0021】
また、上記飲み口32の輪郭部分は、切り込み線321(スコア)により区画してある。また、缶蓋3の中心部のリベット部34を介して、開口用タブ33が取り付けてある。そして、上記タブ33の外端部331を指でつまんで起こすと、リベット部34よりなる支点の反対側に位置する押圧部332が缶蓋部3の上記飲み口32内の部分を押圧し、飲み口32部分が缶蓋部3から切り離されて、飲料缶1内に没入して開口部が形成される構成となっている。
【0022】
また、上記傾斜面部311は、上記突出部31の全周に、上記傾斜面部311と上記先端平面部312とのなす角度θが95〜135°(本例では、110°)となるようにテーパ状に設けられている。
また、上記突出部31の高さHは、上記缶蓋部3と缶胴部2との接合部から10〜30mm(本例では15mm)である。
【0023】
また、本例の飲料缶1の製造方法は、缶蓋部3の突出形状を変える以外は従来と同じ方法を適用することができる。
【0024】
以上のように、本例の飲料缶1は、上記缶蓋部3に上記特定の形状を有する突出部31を設け、飲み口32の形成位置を、上記缶蓋部3と上記缶胴部2との接合部4よりも上方に設け、さらに、上記突出部31の上記境界部313に及ぶように設けてある。そのため、飲料缶1を傾けて内容物を飲み口から流出させる際には、上記突出部31に設けた上記傾斜面部311の存在により、内容物を飲み口32に向けてスムーズに流すことができる。また、上記飲み口32を上記境界部313に及ぶように設けることにより、内容物が溜まる部分をなくすことができ、飲料缶1内に内容物が残存することを防止することができる。
【0025】
このように、本発明によれば、内容物を缶内部にほとんど残すことなく飲み口から流出させることが可能な飲料缶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1における、飲料缶を示す説明図。
【図2】実施例1における、飲料缶を示す断面図。
【図3】実施例1における、飲料缶を示す上面図。
【符号の説明】
【0027】
1 飲料缶
2 缶胴部
3 缶蓋部
31 突出部
311 傾斜面部
312 先端平面部
313 境界部
32 飲み口
4 接合部
5 缶中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の缶胴部と、その開口端を閉塞するように配設された缶蓋部とよりなる飲料缶において、
上記缶蓋部は、上記缶胴部との接合部よりも軸方向外側に突出した突出部を有し、
該突出部は、上記接合部から軸方向外側に行くに連れて缶中心軸に近づくよう傾斜した傾斜面部と、該傾斜面部の先端に連なり上記缶中心軸に直交する平坦な面よりなる先端平面部とを有してなり、
該先端平面部には、上記傾斜面部との境界部に及ぶように開口可能な飲み口が形成されていることを特徴とする飲料缶。
【請求項2】
請求項1において、上記傾斜面部は、上記突出部の全周にテーパ状に設けられていることを特徴とする飲料缶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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