飼料添加剤としてのジペプチド
本発明は、ジペプチド又はその塩を含有する飼料添加剤、この添加剤を含有する飼料混合物及びジペプチドの製法に関し、この際、ジペプチドの1個のアミノ酸残基は、DL‐メチオニル基であり、かつジペプチドの他のアミノ酸残基は、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択されるL‐立体配置のアミノ酸である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のメチオニン結合した非天然及び天然の、必須制限アミノ酸、例えば、リジン、スレオニン及びトリプトファン、硫黄含有アミノ酸、システイン及びシスチンのジペプチド、及びその合成及び有用動物、例えば、鶏、豚、反芻動物の、しかし殊にまた、水産養殖からの魚及び甲殻類の飼育用の飼料添加剤としての使用に関する。
【0002】
公知技術水準
必須アミノ酸(EAA)メチオニン、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及びアルギニン、及び2種の硫黄含有アミノ酸システイン及びシスチンは、飼料における極めて重要な成分であり、有用動物、例えば、鶏、豚及び反芻動物の経済的飼育で重要な役割を果たす。この際、特に、EAAsの最適分配及び十分な供給が決定的である。天然たんぱく質給源、例えば、大豆、トウモロコシ及び小麦からの飼料は、大抵、一定のEAAsが欠失しているので、一方で、動物のより早い成長又は高生産乳牛におけるより高い乳生産のために、しかしまた他方で全飼料のより有効な利用のために、合成のEAAs、例えば、DL‐メチオニン、L‐リジン、L‐スレオニン又はL‐トリプトファンを照準的に補充することが可能である。このことは極めて大きな経済的利点である。飼料添加剤の市場は、大きな工業的及び経済的な重要性を有する。更にこれは、特に、例えば、中国及びインドのような国の増大する重要性に帰し得る強力な成長市場である。
【0003】
多種動物にとって、L‐メチオニン((S)‐2‐アミノ‐4‐メチルチオ酪酸)は、全てのEAAsの第一制限アミノ酸であり、従って、動物栄養において及び飼料添加剤として重要な役割を果たす(Rosenberg et al., J. Agr. Food Chem. 1957, 5, 694-700)。しかしメチオニンは、古典的な化学合成では、ラセミ化合物、D‐メチオニン及びL‐メチオニンからの50:50混合物として生じる。このラセミ化合物のDL‐メチオニンを、飼料添加剤として直接使用することができるが、それというのも、数種の動物では、生体内(in vivo)条件下にメチオニンの非天然のD‐エナンチオマーを天然L‐エナンチオマーに転換させる転換機構が成り立つからである。この際、D‐メチオニンは、非特異的D‐オキシダーゼによって、先ずα‐ケト‐メチオニンに脱アミン化され、引き続いて更にL‐トランスアミナーゼでL‐メチオニンに転換される(Baker, D. H. "Amino acids in farm animal nutrition"中, D' Mello, J. P. F. (ed.), Wallingford (UK), CAB‐International, 1994, 37-61)。それによって、成長のために動物が有効に利用し得るL‐メチオニンの有効量が生物体中で高められる。D‐メチオニンからL‐メチオニンへの酵素的転換は、鶏、豚及び乳牛で、しかし殊に魚、小エビ及び車エビでも確認された。即ち、例えば、Sveier et al. (Aquacult. Nutr. 2001, 7(3), 169-181)及びKim et al. (Aquaculture 1992, 101(1-2), 95-103)は、D‐メチオニンからL‐メチオニンへの転換が肉食性タイセイヨウサケ及びニジマスで可能であることを示し得た。同様のことが、Robinson et al. (J. Nutr. 1978, 108(12), 1932-1936)及びSchwarz et al. (Aquaculture 1998, 161, 121-129)によって、雑食種の魚、例えば、ナマズ及びコイについて示され得た。更に、Forster及びDominy(J. World Aquacult. Soc. 2006, 37(4), 474-480)は、Litopenaeus vannamei種の雑食性小エビの飼育試験で、DL‐メチオニンが、L‐メチオニンと同様の有効性を有することを示し得た。2007年には、世界的に、結晶性DL‐メチオニン又はラセミ化合物の液体のメチオニン‐ヒドロキシ同族体(MHA、rac‐2‐ヒドロキシ‐4‐(メチルチオ)ブタン酸(HMB))及び固体のカルシウム‐MHA70000トン(t)以上が生産され、単一胃動物、例えば、鶏及び豚において飼料添加剤として直接有効に使用された。
【0004】
メチオニンに対して、リジン、スレオニン及びトリプトファンについては、各々の場合に、L‐エナンチオマーのみを飼料添加剤として使用することができ、それというのも、これらの3種の必須及び制限アミノ酸の各D‐エナンチオマーは、生物体によって生理学的条件下に、相応するL‐エナンチオマーに転換され得ないからである。即ち、L‐リジン、第一制限アミノ酸の世界市場だけは、例えば、豚においては、2007年には100万トン以上であった。他の2種の制限必須アミノ酸、L‐スレオニン及びL‐トリプトファンについては、世界市場は、2007年では、100000t以上又は僅かに3000t以下であった。
【0005】
単胃動物、例えば、家禽及び豚では、通常、DL‐メチオニン、MHAが、しかしL‐リジン、L‐スレオニン及びL‐トリプトファンも、飼料添加剤として直接使用される。これに対して、反芻動物におけるEAAs、例えば、メチオニン、リジン、スレオニン又は同様にMHAの飼料の補充は、その主要量が反芻動物の第一胃中で微生物によって分解されるので有効ではない。従って、この分解に基づき、補充EAAsの断片のみが動物の小腸に到達し、そこで一般に血液中への吸収が行なわれる。反芻動物では、EAAsの内で、特にメチオニンが決定的な役割を果たし、それというのも、高い乳生産は最適な供給でのみ保証されるからである。反芻動物に、メチオニンを高効率で利用させ得るためには、第一胃耐性保護の形態が使用されるべきである。この際、この特性をDL‐メチオニン又はrac‐MHAに与える幾つかの可能性がある。1つの可能性は、好適な保護層の塗布又は保護マトリックス中のメチオニンの分配によって高い第一胃耐性を達成することにある。それによって、メチオニンは実際に損失なしに第一胃を通過することができる。次いで更に経過して、例えば、反芻動物の第四胃で、保護層は酸性加水分解によって除去され、更に遊離メチオニンは小腸で吸収され得る。商業的に得られる製品は、例えば、Firma Evonik DegussaのMepron(R)及びFirma AdisseoのSmartamine(TM)である。メチオニンの製造又は被覆は、技術的に複雑でかつ経費のかかる方法であり、従って、高価である。更に、完成ペレットの表面被覆は、飼料を加工する間に、機械的負荷及び磨耗によって容易に損傷され、このことは保護被覆の減少又は完全な損失にまで成り得る。従って、保護メチオニンペレットをより大きな混合飼料ペレットに加工することも、それによって再び保護層が機械的応力によって崩壊されるので同様に不可能である。このことはそのような生成物の使用を制限する。第一胃耐性の向上のためのもう1つの可能性は、メチオニン又はMHAの化学的誘導体化である。この際、分子の官能基を好適な保護基で誘導体化させる。これは、例えば、カルボン酸官能基とアルコールとのエステル化によって行われ得る。それによって、第一胃中の微生物による分解が減少され得る。商業的に得られる化学的保護製品は、例えば、Metasmart(TM)、MHAのラセミ化合物イソ‐プロピルエステル(HMBi)である。WO00/28835に、反芻動物において、HMBiについて少なくとも50%の生物有効性が公開された。メチオニン又はMHAの化学的誘導体化の欠点は、しばしば、より悪化された生物有効性及び比較的低い作用物質含量にある。
【0006】
しかし、反芻動物における補充EAAs、例えば、メチオニン、リジン又はスレオニンの、第一胃中での分解の問題の他に、魚及び甲殻類においても、飼料へのEAAsの補充の際に様々な問題が生じ得る。近年この分野において、高工業化水産養殖での魚養殖及び甲殻類養殖の急激な経済的発展により、必須かつ制限アミノ酸の最適で、経済的かつ有効的な補充可能性が益々重要な役割を果たしている(Food and Agriculture Organization of the United Nation (FAO) Fisheries Department "State of World Aquaculture 2006", 2006, Rome. international Food Policy Research institute (IFPRI) "Fish 2020: Supply and Demand Changing Markets", 2003, Washington, D. C.)。しかしこの際、飼料添加剤として結晶性EAAsの使用で、鶏及び豚に対して、一定の魚種及び甲殻類種で様々な問題が生じ得る。即ち、Rumsey及びKetola (J. Fish. Res. Bd. Can. 1975, 32, 422-426)は、個々の補充された結晶性アミノ酸と関連した大豆粉の使用が、ニジマスでは成長上昇を導かないことを報告している。Murai et al. (Bull. Japan. Soc. Sci. Fish. 1984, 50 (11), 1957)は、コイにおいて、補充された結晶性アミノ酸を毎日高い割当量で魚餌飼育するにより、遊離アミノ酸の40%以上がエラ及び腎臓を介して排泄されることを示した。飼料摂取直後に、補充アミノ酸の急速な吸収に基づき、魚の血漿中でアミノ酸濃度の極めて急速な上昇が起きる(高速応答(Fast-Response))。しかしこの時点で、天然たんぱく質給源、例えば、大豆粉からの他のアミノ酸は未だ血漿中に存在せず、これは重要な全アミノ酸の同時取得の非同時性に成り得る。従って、高濃度のアミノ酸の一部は急速に排泄され、又は生物体中で急速に代謝され、かつ、例えば、純粋なエネルギー源として利用される。それによって、コイの場合には、飼料添加剤として結晶性アミノ酸を使用した場合に、成長上昇が低くなり、又は成長上昇がないことになるだけである(Aoe et al., Bull. Jap. Soc. Sci. Fish. 1970, 36, 407-413)。甲殻類では、結晶性EAAsの補充は更に他の問題を生じさせ得る。一定の甲殻類、例えば、Litopenaeus Vannamei種の小エビの遅速な食い特性によって、飼料が水下で長時間滞留することにより、補充された水溶性EAAsの溶出(Leaching)が起こり、このことは海洋の富栄養化を導き、かつ動物の成長上昇に結びつかない(Alam et al., Aquaculture 2005, 248, 13-16)。従って、水産養殖で保持される魚及び甲殻類の有効な養殖は、一定の方法及び適用について、EAAsの特殊な生産形態、例えば、相応する化学的又は物理的に保護された形態を要求する。この際、目的は、一方で、生成物が水性環境での飼育中に十分に安定したままで、飼料から溶出しないことである。他方で、最終的に動物によって摂取されたアミノ酸生成物が動物の生体で最適かつ高い効率で使用され得ることである。
【0007】
過去に、魚及び甲殻類用の、特に必須アミノ酸メチオニン及びリジンをベースとする好適な飼料添加剤を開発するために多くの努力が行なわれた。即ち、例えば、WO8906497に、魚及び甲殻類用の飼料添加剤として、ジペプチド及びトリペプチドの使用が記載されている。それによって、動物の成長が促進されるとのことである。しかしこの場合には、多くの植物性たんぱく質給源中に十二分に存在している、非必須及び同様に非制限のアミノ酸、例えば、グリシン、アラニン及びセリンからのジペプチド及びトリペプチドが有利に使用された。メチオニン含有ジペプチドとして、DL‐アラニル‐DL‐メチオニン及びDL‐メチオニル‐DL‐グリシンが記載されただけである。しかしそれにより、ジペプチド中に作用物質50%(モル/モル)だけが有効に含有されていて、このことは、経済的観点下では、極めて不利であると見なすべきである。WO02088667に、特に同様に魚及び甲殻類の飼料添加剤として、MHA及びアミノ酸、例えば、メチオニンからのオリゴマーのエナンチオ選択的合成及び使用が記載されている。それによって、より急速な成長が達成され得るとのことである。記載されたオリゴマーは、酵素触媒反応によって構成され、かつ個々のオリゴマーの極めて広範な鎖長分布を有する。それによって、この方法は、実施及び精製において、非選択的で、高価でかつ経費がかかる。Dabrowski et al.は、US20030099689に、水生動物の成長促進のための飼料添加剤として、合成ペプチドの使用を記載している。この場合には、ペプチドは、全飼料組成物の6〜50%の質量割合になり得る。合成ペプチドは、有利にEAAsから成る。しかし、そのような合成オリゴペプチド及びポリペプチドのエナンチオ選択的合成は極めて経費がかかり、高価でかつ大工業的に反応が困難である。更に、個々のアミノ酸のポリペプチドの有効性は異論があり、それというのも、これは、生理学的条件下にしばしば極めて徐々にしか遊離アミノ酸に変換しない又は全く変換しないからである。即ち、例えば、Baker et al. (J. Nutr. 1982, 112, 1130-1132)は、ポリ‐L‐メチオニンが、絶対的な水不溶性であることに基づき、生物体の吸収が不可能であるので、鶏の場合には、生物学的価値を示さないことを記載している。
【0008】
新規のEAAs化学的誘導体、例えば、メチオニン含有ペプチド及びオリゴマーの使用のほかに、様々な物理的保護可能性、例えば、コーティング又は保護マトリックス中へのEAAの埋床も調査された。即ち、例えばAlam et al. (Aquacult. Nutr. 2004, 10, 309-316及びAquaculture 2005, 248, 13-19)は、被覆メチオニン及びリジンが、非被覆に比べて、幼クルマエビの成長への極めて陽性の影響を有することを示すことができた。特殊な被覆が、飼料ペレットからのメチオニン及びリジンの溶出を抑制し得たとしても、若干の深刻な欠点がある。アミノ酸の製造又は被覆は、大抵は技術的に煩雑で経費のかかる方法であり、従って高価である。更に、仕上げ被覆されたアミノ酸の表面被覆は、飼料を加工する間に、機械的負荷及び磨耗によって容易に損傷され、このことは物理的保護被覆の減少又は完全な損失にまで成り得る。更に、コーティング又はマトリックス物質の使用によって、アミノ酸含量は減少し、従ってしばしば不経済となる。
【0009】
発明の課題
一般的課題は、新規のメチオニン含有補充物質をベースとする、動物飼育用の飼料又は飼料添加剤を製造することであり、この際、メチオニンは、必須及び制限アミノ酸、例えば、L‐リジン、L‐スレオニン及びL‐トリプトファンに結合していて、かつこの物質は、有用動物、例えば、鶏、豚、反芻動物、しかし殊にまた水産養殖の魚及び甲殻類の飼育用の飼料添加剤として使用され得る。
【0010】
公知技術水準の欠点の背景に対して、特に、様々な有用動物、例えば、鶏、豚及び反芻動物用の、しかし又、塩水又は淡水中に生息している多くの雑食性、草食性及び肉食性の魚類及び甲殻類用の、DL‐メチオニン+EAA、例えば、L‐リジン、L‐スレオニン又はL‐トリプトファンからの共有結合組成物を含む化学的に保護された生成物を製造することが課題であった。この生成物は、メチオニン給源としての機能のほかに、他の全てのEAAs給源としても作用すべきである。殊に、この生成物は、"徐放(Slow Release)"機構、要するに、生理学的な条件下に遊離メチオニン及びEAAのゆっくりした連続的な放出を有するべきである。更に、メチオニン及びEAAの化学的に保護された生成物形態は第一胃耐性であり、従って全ての反芻動物に好適であるべきである。魚及び甲殻類用の飼料添加剤として使用するために、生成物形態は、水中における全飼料ペレット又は全飼料押出物からの低い溶解特性(Leaching)を有するべきである。
【0011】
もう1つの課題は、混合飼料加工、殊にペレット化及び押出の通常の条件下で、良好な取扱可能性及び貯蔵性及び安定性を有するべきである、極めて高い生物学的価値を有する飼料又は飼料添加剤としての結晶性EAAsの補充物質を見出すことであった。
【0012】
この方法で、例えば、鶏、豚、反芻動物、魚及び甲殻類は、結晶性EAAsのほかに、できるだけ公知製品の欠点を示さない又は減らされた範囲でしか示さない、他の有効な必須アミノ酸給源を得るべきである。
【0013】
更に、1個だけのメチオニン基を含有するジペプチド、殊にL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)の、様々な新規で融通の利く合成法を開発すべきである。この際、技術的DL‐メチオニン製法からの典型的な前駆生成物及び副生成物が、1合成法のために出発物質として使用されるべきである。
【0014】
発明の説明
この課題は、ジペプチド又はその塩を含有する飼料添加剤によって解明され、この際、ジペプチドの1個のアミノ酸残基は、DL‐メチオニル基であり、かつジペプチドの他のアミノ酸残基は、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択されるL‐立体配置のアミノ酸である。
【0015】
有利な方法で、飼料添加剤は、一般式 DL‐メチオニル‐L‐EAA(=D‐メチオニル‐L‐EAA及びL‐メチオニル‐L‐EAAを含む混合物)及び/又はL‐EAA‐DL‐メチオニン(=L‐EAA‐D‐メチオニン及びL‐EAA‐L‐メチオニンを含む混合物)のジペプチドを含有し、この際、L‐EAAは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択されるL‐立体配置のアミノ酸である。
【0016】
更に、本発明の目的は、前記の飼料添加剤を含有する飼料混合物である。
【0017】
L‐EAA‐DL‐メチオニン及び/又はDL‐メチオニル‐L‐EAA及びその塩を含有する飼料添加剤は、家禽、豚、反芻動物用、しかし殊にまた水産養殖の魚及び甲殻類用の飼料混合物中の飼料添加剤として好適である。
【0018】
有利な方法で、飼料混合物は、L‐EAA‐DL‐メチオニン及び/又はDL‐メチオニル‐L‐EAA0.01〜5質量%、有利に0.05〜0.5質量%を含有する。
【0019】
この際、L‐EAA‐DL‐メチオニン及びDL‐メチオニル‐L‐EAAの使用は、これらのジペプチドが低い溶解性に基づく良好な溶出特性を有するので、特に有利であると実証された。
【0020】
更に、この化合物は、飼料製造の際に良好なペレット化安定性及び押出安定性を示す。ジペプチドL‐EAA‐DL‐メチオニン及びDL‐メチオニル‐L‐EAAは、通常の成分及び飼料、例えば、穀物(例えば、トウモロコシ、小麦、ライ小麦、大麦、キビ等)、植物性又は動物性たんぱく質担体(例えば、大豆及び菜種及びその更に処理した生成物、豆類(例えば、エンドウ豆、インゲン豆、ルピナス等)、魚粉等)と混合して、及び補充必須アミノ酸、たんぱく質、ペプチド、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪及び油と混合して安定している。
【0021】
更に、DL‐メチオニン及びL‐EAAに比較して、物質1kg当たりのL‐EAA‐DL‐メチオニン及びDL‐メチオニル‐L‐EAAの作用物質の高い割合によって、L‐EAA‐DL‐メチオニン及びDL‐メチオニル‐L‐EAA1モル当たり水1モルが節約されることが有利である。
【0022】
有利な1使用で、飼料混合物は、有利に魚粉、大豆粉又はトウモロコシ粉をベースとするたんぱく質及び炭水化物を含有し、かつ必須アミノ酸、たんぱく質、ペプチド、ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪及び油で補充されていてよい。
【0023】
殊に、飼料混合物中に、DL‐メチオニル‐L‐EAA及びL‐EAA‐DL‐メチオニンが、単独でD‐メチオニル‐L‐EAA、L‐メチオニル‐L‐EAA、L‐EAA‐D‐メチオニン又はL‐EAA‐L‐メチオニンとして、相互に混合物として、又は同様にD‐メチオニル‐D‐EAA、L‐メチオニル‐D‐EAA、D‐EAA‐D‐メチオニン又はD‐EAA‐L‐メチオニンとの混合物として、有利に各々付加的に、DL‐メチオニンと、有利に、DL‐メチオニン0.01〜90質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に1〜30質量%の割合と混合して、有利に各々付加的に、L‐EAA、例えば、L‐リジンと、有利に、L‐EAA0.01〜90質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に1〜30質量%の割合と混合して存在することが有利である。
【0024】
有利な1使用で、水産養殖で保持される動物は、コイ、マス、サケ、ナマズ、スズキ、ヒラメ、チョウザメ、マグロ、ウナギ、ブリーム、タラ、小エビ、オキアミ及び車エビ、極めて特に、ハクレン(Hypophthalmichthys molitrix)、ソウギョ(Ctenopharyngoden‐Idella)、有鱗のコイ(Cyprinus carpio)及びビッグヘッドカープ(Aristichthys nobilis)、フナ(Carassius carassius)、カトラ(Catla Catla)、ロホラベロ(Labeo rohita)、太平洋サケ及び大西洋サケ(Salmon salar及びOncorhynchus kisutch)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、アメリカナマズ(Ictalurus punctatus)、アフリカナマズ(Clar Ias gariepinus)、バサ(Pangasius bocourti及びPangasius hypothalamus)、ナイルティラピア(Oreochromis niloticus)、ミルクフィッシュ(Chanos chanos)、スギ(Rachycentron canadum)、バナメイ(Litopenaeus vannamei)、ブラックタイガー小エビ(Penaeus monodon)及びオニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)を含む群から選択される、淡水魚及び塩水魚及び淡水甲殻類及び塩水甲殻類である。
【0025】
本発明により、L‐EAA‐DL‐メチオニン(L‐EAA‐DL‐Met)(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐Met‐L‐EAA)(II)又はそのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えば、難溶性カルシウム塩又は亜鉛塩は、飼料混合物中の添加剤として、D‐メチオニル‐L‐EAA、L‐メチオニル‐L‐EAA、L‐EAA‐D‐メチオニン又はL‐EAA‐L‐メチオニンとして、又は各々のジアステレオマー混合物中で、単独で又はDL‐メチオニンと混合して、単独で又はL‐EAAと混合して、有利に家禽、豚、反芻動物用に、及び特に有利に魚及び甲殻類用に使用される:
【化1】
【0026】
この際、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)から、2種のジアステレオマー、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)が存在する。同様に、ジペプチド、DL‐メチオニル‐L‐EAA(II)から、各々2種の異なった立体異性体、D‐Met‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)が生じる。この際、2種のジアステレオマー、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)だけが天然であるが、2種の他のL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)は非天然である(図式1参照)。
【0027】
【化2】
【0028】
この際、EAAの基Rは、次のものを表わす:
Ia又はIIa:R=1‐メチルエチル‐ (バリン)
Ib又はIIb:R=2‐メチルプロピル‐ (ロイシン)
Ic又はIIc:R=(1S)‐1‐メチルプロピル‐ (イソロイシン)
Id又はIId:R=(1R)‐1‐ヒドロキシエチル‐ (スレオニン)
Ie又はIIe:R=4‐アミノブチル‐ (リジン)
If又はIIf:R=3‐[(アミノイミノメチル)‐アミノ]プロピル‐
(アルギニン)
Ig又はIIg:R=ベンジル‐ (フェニルアラニン)
Ih又はIIh:R=(1H‐イミダゾル‐4‐イル)メチル‐ (ヒスチジン)
Ij又はIIj:R=(1H‐インドル‐3‐イル)メチル‐ (トリプトファン)。
【0029】
この際、立体異性体L‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)、L‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)は、単独で又は相互に混合して、有利に家禽、豚、反芻動物、魚、甲殻類及び家畜用に、飼料添加剤として使用され得る。
【0030】
本発明の主要目的は、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)の新規合成製法の開発の他に、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)を含む混合物又はL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)及びL‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)の混合物からのジアステレオマー混合物として、又は個々のジアステレオマーD‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)、L‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)、L‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)又はL‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)として、家禽、豚、反芻動物用の、しかし同様に水産養殖における雑食性、肉食性及び草食性の魚及び甲殻類用のI及びIIの使用である。更に、飼料添加剤として、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)又はDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)の使用によって、高生産率乳牛での乳生産を上昇させることができる。
【0031】
即ち、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)又はDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)が、L‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)及び L‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)の50:50混合物からの、又はD‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)の50:50混合物からのジアステレオマー混合物として、又は各々、単独のジアステレオマーとして、生理学的条件下に酵素的に、鶏、豚、乳牛、魚、例えば、コイ及びマスから、しかし甲殻類、例えば、Litopenaeus vannamei(バナメイ)及びMacrobrachium Rosenbergii(オニテナガエビ)からも、遊離のD‐メチオニン又はL‐メチオニン及び各々L‐EAAに分解され得ることを発明的に示すことができた(図式2参照)。
【0032】
そのために、相応する消化酵素を、例えば、鶏、雑食性コイ、肉食性マス及び雑食性バナメイ(Litopenaeus vannamei)から分離し、かつ最適化試験管内(in vitro)試験で、生理学的に比較可能な条件下に、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)の50:50混合物からのジアステレオマー混合物として、DL‐メチオニル‐L‐EAA(II)と、又はL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)及びL‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)の50:50混合物からのL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)又は各々単独のジアステレオマーとして、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)、L‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)、L‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)又はL‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)と反応させる。L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)又はDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)の分解の本発明による特殊性は、2種の天然ジアステレオマーL‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)のほかに、2種の非天然ジアステレオマー、L‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)及びD‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)を生理学的条件下に分解させることもできることにある(図1〜17参照)。このことは、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)の混合物、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)の混合物(図12参照)又はL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)及びL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)の混合物(図12参照)、しかし又全ジアステレオマーの全混合物の使用にも、各々単一のジアステレオマーにも当てはまる(図1〜11及び13〜17参照)。
【0033】
【化3】
【0034】
天然ジペプチドL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)を、肉食性ニジマス、雑食性カガミゴイ、雑食性バナメイ及び鶏からの消化酵素で消化した(表1参照)。
【0035】
【表1】
【0036】
そのために、魚及び小エビの消化管から酵素を分離した。引き続いて、ジペプチド、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)を、取得した酵素溶液で消化した。様々な種類のジペプチドの消化性のより良好な比較可能性のために、試験管内消化検査について同一条件を選択した(37℃、pH9)。
【0037】
全ての天然ジペプチドを、肉食性ニジマス(図3及び4参照)、雑食性カガミゴイ(図1及び2参照)、雑食性バナメイ(図5及び6参照)及び鶏(図16参照)の消化酵素によって分解した。L‐Met‐L‐EAA(LL‐II)の分解は、類似のL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)ジペプチドの分解よりも、通常はやや遅く経過する。
【0038】
様々な種類の魚の消化酵素による、非天然のペプチドL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の酵素分解を、できるだけ包括して示すために、実験マトリックスを試験した(表2参照)。
【0039】
【表2】
【0040】
そのために、魚及び小エビの消化管から酵素を分離した。引き続いて、化学的合成ジペプチドL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)を、取得した酵素溶液と反応させた。様々な種類のジペプチドの消化性のより良好な比較可能性のために、試験管内消化検査について同一条件を選択した(37℃、pH9)。
【0041】
全ての非天然ジペプチドL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)を、雑食性カガミゴイ(図7参照)、草食性ソウギョ(図8参照)、肉食性ニジマス(図11参照)、雑食性バナメイ(図10参照)及び鶏(図17参照)の消化酵素により分解した。D‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の分解は、類似のL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)ジペプチドの分解よりもやや遅く経過した。それに対して、ティラピア(図9参照)の消化酵素では、D‐Met‐L‐EAA(DL‐II)は、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)ジペプチドよりも早く分解される。ジペプチドD‐Met‐L‐Lys(DL‐IIe)及びL‐Lys‐D‐Met(LD‐Ie)が特に速く消化される。5時間後に既に、試験管内反応条件下に、リジンを含むジペプチドの大部分が使用された全消化酵素によって分解された。
【0042】
得られた結果から、各々使用された非天然ジペプチド(図7〜11及び17参照)が、様々な種類の魚、小エビ及び鶏の消化酵素によって分解され得ることが明らかである。この際、肉食性ニジマス、雑食性カガミゴイ、ティラピア、バナメイ、草食性ソウギョ及び鶏からの酵素の使用によって、非天然ジペプチドL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)が、試験管内で、明らかに異なった消化系が賦与されている全ての動物によって分解され得ることが実証された。飼料へのL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及び/又はD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの添加によって、欠失した必須アミノ酸(DL‐Met及びL‐EAA)を同様に照準的に供給することができる。
【0043】
アミノ酸L‐トリプトファン及びDL‐メチオニンからのジペプチドの例で、天然及び非天然ジペプチドを含むジペプチド混合物の分解を試験した。2種の非天然ジペプチドL‐Trp‐D‐Met(LD‐Ij)及びD‐Met‐L‐Trp(DL‐IIj)を含むジアステレオマー混合物は、天然ジペプチドL‐Met‐L‐Trp(LL‐IIj)及び非天然ジペプチドL‐Trp‐D‐Met(LD‐Ij)を含む混合物と全く同様に完全に分解され得た。"徐放"効果は、LD‐Ij/DL‐IIj混合物では、LD‐Ij/LL‐IIj混合物におけるよりももっと明らかに顕著であり、即ち、アミノ酸トリプトファン及びメチオニンは、ジペプチドの酵素的消化によって、比較的に相互により遅く、かつより長い時間に渡って遊離される。
【0044】
更に課題は、一般式 DL‐メチオニル‐DL‐EAA又はDL‐EAA‐DL‐メチオニンのジペプチド又はその塩によって解明され、この際、EAAは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択される、有利にL‐立体配置のアミノ酸である。この際、D‐立体配置又はL‐立体配置のメチオニル基が同様に有利である。これには、各々立体配置DD、LD、DL及びLLのジペプチドMet‐Lys、Met‐Thr、Met‐Trp、Met‐His、Met‐Val、Met‐Leu、Met‐Ile、Met‐Phe、Met‐Arg、Met‐Cys及びMet‐Cystin、及び各々立体配置DD、LD、DL及びLLのLys‐Met、Thr‐Met、Trp‐Met、His‐Met、Val‐Met、Leu‐Met、Ile‐Met、Phe‐Met、Arg‐Met、Cys‐Met及びCystin‐Metが属する。
【0045】
更に課題は、式 DD/LL/DL/LD‐I又はDD/LL/DL/LD‐II:
【化4】
による1個だけのメチオニル基を含有するジペプチドを、アミノ酸と一般式III〜V:
【化5】
の尿素誘導体との反応によって製造する方法によって解明される[式中、Rは、次のように定義される:
Ia〜Va: R=1‐メチルエチル‐ (バリン)
Ib〜Vb: R=2‐メチルプロピル‐ (ロイシン)
Ic〜Vc: R=(1S)‐1‐メチルプロピル‐ (イソロイシン)
Id〜Vd: R=(1R)‐1‐ヒドロキシエチル‐ (スレオニン)
Ie〜Ve: R=4‐アミノブチル‐ (リジン)
If〜Vf: R=3‐[(アミノイミノメチル)‐アミノ]プロピル‐
(アルギニン)
Ig〜Vg: R=ベンジル‐ (フェニルアラニン)
Ih〜Vh: R=(1H‐イミダゾル‐4‐イル)メチル‐ (ヒスチジン)
Ij〜Vj: R=(1H‐インドル‐3‐イル)メチル‐ (トリプトファン)
Ik〜Vk: R=‐CH2‐SH (システイン)
Im〜Vm: R=‐CH2‐S‐S‐CH2‐CNH2‐COOH (シスチン)
IIIn〜Vn: R=‐CH2‐CH2‐S‐CH3 (メチオニン)、
この際、尿素誘導体III、IV及びV中の基R1及びR2は、次のように定義される:
IIIa‐n:R1=COOH、R2=NHCONH2
IVa‐n:R1=CONH2、R2=NHCONH2
Va‐n:R1‐R2=‐CONHCONH‐
及び
この際、Rはメチオニル基を表わし、かつ添加されるアミノ酸は、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるか、又は、
添加されるアミノ酸はメチオニンであり、かつRは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸残基である]。
【0046】
有利な1実施態様で、メチオニンヒダントイン又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントインが、出発生成物として使用される又は中間生成物として中間的に生成される。
【0047】
本発明による方法の1実施態様で、メチオニンヒダントイン(Vn)及び水を含む溶液をアミノ酸と塩基性条件下に反応させる、又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントイン及び水を含有する溶液をメチオニンと塩基性条件下に反応させることが有利である。
【0048】
この際、本発明による方法のもう1つの実施態様で、メチオニンヒダントイン(Vn)を出発生成物として使用する、又は中間生成物として中間的に生成させることが有利である。図式3に、メチオニンヒダントイン(Vn)、N‐カルバモイルメチオニン(IIIn)又はN‐カルバモイルメチオニンアミド(IVn)から直接、DL‐メチオニル‐L‐EAA(II)の有利な製造が示されていて、かつ方法Aが包含されている。
【0049】
【化6】
【0050】
更に、尿素誘導体を含有する溶液のpH値を、7〜14、有利に8〜13及び極めて特に有利に9〜12に調整することが有利である。
【0051】
有利な方法で、反応は、30〜200℃の温度で、有利に80〜170℃の温度で及び特に有利に120〜160℃の温度で行なわれる。
【0052】
更に、反応は、圧力下に、有利に2〜100バールの圧力で、特に有利に4〜60バールの圧力で、極めて特に有利に8〜40バールの圧力で実施されることが有利である。
【0053】
もう1つの有利な方法で、メチオニンヒダントイン及び水を含有する溶液又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントイン及び水を含有する溶液を、1種以上の化合物IIIa‐n、IVa‐n及びVa‐nから前以て生成させておく。
【0054】
選択的に、相応するアミノニトリル、シアンヒドリン又は相応するアルデヒド、青酸及びアンモニアを含む混合物又は相応するアルデヒド、アンモニウム塩及びシアニド塩を含む混合物を同様にヒダントイン前駆体として使用することもできる。
【0055】
本発明による方法のもう1つの有利な実施態様は、次の段階を包含する:
a)式IIIa‐n、IVa‐n又はVa‐nによる尿素誘導体とアミノ酸との、式:
【化7】
[式中、Rは前記と同様に定義される]のジケトピペラジンVIa‐mへの反応;
b)ジケトピペラジンVIの、式 DD/LL/DL/LD‐I及びDD/LL/DL/LD‐II:
【化8】
[式中、Rは前記と同様に定義される]を有するジペプチドを含む混合物への反応。
【0056】
式IIIn、IVn及びVnによる尿素誘導体の、ジケトピペラジンVIa‐mへの反応及びジケトピペラジンの、有利なジペプチドL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を有するジアステレオマー混合物への更なる反応は、図式4に記載されている:
【化9】
【0057】
ジケトピペラジンVIa‐mの、有利なジペプチドL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を含む混合物への反応。この方法は、図式4に示された方法B、C及びDを包含する。これらの方法で、各々ジケトピペラジンVIa‐mは、中間生成物として生成される。
【0058】
尿素誘導体とアミノ酸とのジケトピペラジンへの反応は、20℃〜200℃、有利に40℃〜180℃及び特に有利に100℃〜170℃で実施されることが有利である。
【0059】
有利な1方法で、尿素誘導体とアミノ酸とのジケトピペラジンへの反応は、圧力下に、有利に2〜90バールの圧力で、特に有利に4〜70バールの圧力で、極めて特に有利に5〜50バールの圧力で行なわれる。
【0060】
尿素誘導体とアミノ酸とのジケトピペラジンへの反応は、有利に塩基が存在して行なわれる。この際、塩基は、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、KHCO3、K2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバメート塩、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群から選択されることが有利である。
【0061】
もう1つの有利な方法で、ジケトピペラジンへの反応は、式:
【化10】
[式中、Rは、メチオニル基を表わす]の尿素誘導体と、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸との反応によって、又は式:
【化11】
[式中、Rは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸残基である]の尿素誘導体とアミノ酸メチオニンとの反応によって行なわれる。
【0062】
尿素誘導体のジケトピペラジンへの変換がメチオニンとの反応によって行なわれる有利な方法で、尿度誘導体対メチオニンの1:100〜1:0.5の比率が特に有利である。
【0063】
もう1つの有利な方法で、ジケトピペラジンの、式I及びIIのジペプチドを含む混合物への変換は、酸性加水分解によって行なわれる。ジケトピペラジンの、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を含む混合物への変換は、酸性加水分解によって有利に行なわれる。
【0064】
この際、酸性加水分解は、鉱酸、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、燐酸、カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の群から有利に選択される酸が存在して実施される。
【0065】
本発明による方法の他の1実施態様で、ジケトピペラジンの、式(I)及び(II)のジペプチドを含む混合物への変換は、塩基性加水分解によって行なわれる。ジケトピペラジンから、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を含む混合物への変換は、塩基性加水分解によって有利に行なわれる。
【0066】
塩基性加水分解は、有利にpH7〜14、特に有利にpH8〜13、極めて特に有利にpH9〜12で実施される。この際、完全なラセミ化が起こり得る。塩基性条件は、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバメート塩、KHCO3、K2CO3、カルボネート、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群から有利に選択される物質の使用下に調整され得る。
【0067】
酸性又は塩基性加水分解は、50℃〜200℃、有利に80℃〜180℃及び特に有利に90°〜160℃の温度で有利に実施される。
【0068】
有利な1方法で、尿素誘導体III〜Vのアミノ酸残基は、D‐立体配置又はL‐立体配置で、又はD‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物で存在し、尿素誘導体がメチオニンから誘導されている場合には、D‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物で有利に存在する。
【0069】
もう1つの有利な方法で、尿素誘導体III〜Vのアミノ酸残基は、D‐立体配置又はL‐立体配置で、又はD‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物であり、尿素誘導体が、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸から誘導されている場合には、有利にL‐立体配置である。
【0070】
もう1つの有利な方法で、LL、DL、LD及びDDの混合物として、有利にLL、LD、DLの混合物として存在するジペプチドが得られる。
【0071】
有利な1方法で、ジケトピペラジンを加水分解の前に分離させる。この際、ジケトピペラジンを、有利に−30〜120℃の温度で、特に有利に10〜70℃の温度で反応溶液から結晶化によって分離させることが有利である。
【0072】
塩基性反応溶液から、式 DD/LL/DL/LD‐(I)及びDD/LL/DL/LD‐(II)のジペプチドのジアステレオマー混合物、有利にL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を含むジアステレオマー混合物を分離させるために、これを酸性化させ、かつ結晶化又は沈殿によって取得する。この際、2〜10のpH値が有利であり、3〜9のpH値が特に有利であり、式I及びIIの各ジペプチドの相応する等電点が極めて特に有利である。この際、有利に、鉱酸、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、燐酸、カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の群からの酸を酸性化のために使用することができる。
【0073】
酸性反応溶液から、式 DD/LL/DL/LD‐(I)及びDD/LL/DL/LD‐(II)のジペプチドのジアステレオマー混合物、有利にL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を含むジアステレオマー混合物を分離させるために、塩基の添加によって中和させ、かつ結晶化又は沈殿によって取得する。この際、2〜10のpH値が有利であり、3〜9のpH値が特に有利であり、式I及びIIの各ジペプチドの相応する等電点が極めて特に有利である。この際、中和のために、NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基、NH4OH、カルバメート塩、KHCO3、K2CO3、カルボネート、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群からの塩基が有利に使用される。
【0074】
本発明による方法のもう1つの択一的実施態様は、保護基技法の使用下に、非天然ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニンIa‐Ij又はD‐メチオニル‐L‐EAAIIa‐IIjの合成を包含する。即ち、ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)の合成のために、遊離L‐EAAのアミノ基を、先ずBOC‐保護基(t‐ブトキシカルボニル‐)で保護した。択一的に、Z‐保護基(ベンゾキシカルボニル‐)を効果的に使用することもできた。D‐メチオニンをメタノールでエステル化させ、それによって、酸官能基を保護した。引き続いて、BOC‐保護又はZ‐保護のL‐EAAと、D‐メチオニンメチルエステルとのカップリング反応を、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)の使用下に実施した(図式5参照)。
【0075】
【化12】
【0076】
BOC‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMe又はZ‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMeの精製後に、緩和な塩基性条件下に、先ずメチルエステルを分離させた。最後に、BOC‐保護基又はZ‐保護基を氷酢酸中のHBrで酸性的に離脱させ、遊離ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)を再沈殿及び再結晶によって精製した(図式6)。
【0077】
【化13】
【0078】
択一的に、BOC‐保護のジペプチドメチルエステルBOC‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMeを、同様に先ず氷酢酸中のHBrと反応させ、そうしてBOC‐保護基を除去することもできた。蒸発後に、引き続いて、メチルエステルを希塩酸溶液の添加によって分離させることができた。次いで、遊離ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)を再び再沈殿及び再結晶によって精製することができた(図式6参照)。
【0079】
全工程をジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニンIa‐Ijにも応用することができた。この際、L‐EAA及びBOC‐保護又はZ‐保護のD‐メチオニンのメチルエステルを使用した。
【0080】
挙げられた全ての本発明の方法は、有利に水性媒体中で実施される。
【0081】
更に、本発明の方法は、当業者に公知のバッチ法で、又は連続法で実施され得る。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】カガミゴイからの酵素を用いたL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)ジペプチドの分解を示す。
【図2】カガミゴイからの酵素を用いたL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図3】ニジマスの酵素を用いたL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)ジペプチドの分解を示す。
【図4】ニジマスの酵素を用いたL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図5】バナメイの酵素を用いたL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)ジペプチドの分解を示す。
【図6】バナメイの酵素を用いたL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図7】カガミゴイの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図8】ソウギョの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図9】ティラピアの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図10】バナメイの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図11】ニジマスの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図12】カガミゴイの酵素を用いたL‐Trp‐D‐Met/D‐Met‐L‐Trp(LD‐Ij/DL‐IIj)及びL‐Trp‐D‐Met/L‐Met‐L‐Trp(LD‐Ij/LL‐IIj)を含む混合物の分解を示す。
【図13】カガミゴイからの1%の酵素溶液での天然L‐Ile‐L‐Met(LL‐Ic)又はL‐Met‐L‐Ile(LL‐IIc)ジペプチドの、及び10%の酵素溶液での非天然L‐Ile‐D‐Met(LD‐Ic)又はD‐Met‐L‐Ile(DL‐IIc)ジペプチドの試験管内分解を示す。
【図14】カガミゴイからの1%の酵素溶液での天然L‐Thr‐L‐Met(LL‐Id)又はL‐Met‐L‐Thr(LL‐IId)ジペプチドの、及び10%の酵素溶液での非天然L‐Thr‐D‐Met(LD‐Id)又はD‐Met‐L‐Thr(DL‐IId)ジペプチドの試験管内分解を示す。
【図15】カガミゴイからの1%の酵素溶液での天然L‐Lys‐L‐Met(LL‐Ie)又はL‐Met‐L‐Lys(LL‐IIe)ジペプチドの、及び10%の酵素溶液での非天然L‐Lys‐D‐Met(LD‐Ie)又はD‐Met‐L‐Lys(DL‐IIe)ジペプチドの試験管内分解を示す。
【図16】鶏からの酵素を用いたL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図17】鶏からの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【実施例】
【0083】
例1:
保護基技法の使用下での、非天然ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニンIa‐Ij又はD‐メチオニル‐L‐EAAIIa‐IIjの一般的合成法
この際、ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)の合成のために、遊離L‐EAAのアミノ基を先ずBOC‐保護基(t‐ブトキシカルボニル‐)で保護した。択一的に、Z‐保護基(ベンゾキシカルボニル‐)も効果的に使用することができた。D‐メチオニンをメタノールでエステル化させ、それによって、酸官能基を保護した。続いて、BOC‐保護又はZ‐保護のL‐EAAとD‐メチオニンメチルエステルとのカップリング反応を、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)の使用下に実施した(図式5参照)。
【0084】
【化14】
【0085】
BOC‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMe又はZ‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMeの精製後に、緩和な塩基性条件下に、先ずメチルエステルを分離した。最終的にBOC‐保護基又はZ‐保護基を、氷酢酸中のHBrで酸性的に離脱させ、遊離ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)を再沈殿及び再結晶によって精製した(図式6参照)。
【0086】
【化15】
【0087】
択一的に、BOC‐保護のジペプチドメチルエステルBOC‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMeを同様に先ず氷酢酸中のHBrと反応させ、そうしてBOC‐保護基を除去することができた。蒸発後に、引き続き、メチルエステルを希塩酸溶液の添加によって分離することができた。次いで、遊離ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)を再び再沈殿及び再結晶によって精製することができた(図式6参照)。
【0088】
全工程をジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニンIa‐Ijにも応用することができた。この際、L‐EAA及びBOC‐保護又はZ‐保護のD‐メチオニンのメチルエステルを使用した。
【0089】
例2:
a)Z‐D‐Metの合成法
D‐メチオニン30.0g(0.201モル)及びNa2CO3 42.4g(0.4モル)を、水200ml中に前以て入れ、氷浴中0℃に冷却した。その後に、カルボキシベンジルオキシクロリド(Cbz‐Cl)51.2g(0.3モル)を徐々に添加し、反応混合物を室温で3時間攪拌した。引き続き、希塩酸で酸性化させ、反応溶液を各々MTBE50mlで3回抽出した。合一した有機相をMgSO4上で乾燥させ、回転蒸発器で濃縮させた。取得した残渣をジエチルエーテル/エチルアセテートから再結晶させ、真空中30℃で乾燥させた。カルボキシベンジルオキシ‐D‐メチオニン(Z‐D‐Met)36.4g(64%)を、白色結晶性固体として単離した。
【0090】
b)Z‐L‐EAAの一般的合成法
L‐EAA50ミリモル及びNa2CO3 10.6g(100ミリモル)を、水50ml中に前以て入れ、氷浴中0℃に冷却した。その後に、カルボキシベンジルオキシクロリド(Cbz‐Cl)12.8g(75ミリモル)を徐々に添加し、反応混合物を室温で3時間攪拌した。引き続き、希塩酸で酸性化させ、反応溶液を各々MTBE25mlで3回抽出した。合一した有機相をMgSO4上で乾燥させ、回転蒸発器で濃縮させた。取得した残渣を再結晶させ、真空中30℃で乾燥させた。
【0091】
例3:
D‐Met‐OMe x HClの合成法
D‐メチオニン50.0g(0.335モル)を、メタノール500ml中に懸濁させ、適度な速度のHClガスを飽和まで流通させた。この際、メチオニンが溶解し、溶液は55℃に発熱した。引き続き、反応混合物を1晩室温で攪拌した。翌朝に、混合物を回転蒸発器上40℃で濃縮乾固させ、取得した残渣をジエチルエーテルから2回再結晶させた。D‐メチオニンメチルエステル塩酸塩47.1g(86%)を白色結晶性固体として単離した。
【0092】
例4:
L‐EAA‐OMe x HClの一般的合成法
L‐EAA0.3モルを、メタノール500ml中に懸濁させ、適度な速度のHClガスを飽和まで流通させた。この際、アミノ酸が溶解し、溶液は50〜60℃に発熱した。引き続き、反応混合物を1晩室温で攪拌した。翌朝に、混合物を回転蒸発器上40℃で濃縮乾固させ、取得した残渣をジエチルエーテル又はジエチルエーテル/メタノール混合物から2回再結晶させた。
【0093】
例5:
PG‐D‐Met‐L−EAA‐OMe(PG‐DL‐II‐OMe)群の化合物の一般的合成法(カップリング反応)
L‐EAA‐OMe塩酸塩20.0ミリモルを、クロロホルム30ml及びメタノール5mlを含む混合物中に懸濁させ、K2CO3 4.15g(30ミリモル)を加え、室温で1時間攪拌した。引き続いて、塩を濾過し、少量のクロロホルムで洗浄した。濾液の濃縮後に、取得した残渣をテトラヒドロフラン50ml中に入れ、DCC4.37g(21.0ミリモル;1.05当量(eq.))及びZ‐D‐メチオニン5.66g(20.0ミリモル)を加え、室温で16時間(h)に渡り攪拌した。その後に、反応混合物に氷酢酸3mlを加え、30分間攪拌し、生じた白色固体(N,N’‐ジシクロヘキシル尿素)を濾過した。濾液を回転蒸発器で濃縮させ、場合により生じるN,N’‐ジシクロヘキシル尿素を濾過した。引き続いて、油状残渣をクロロホルム/n‐ヘキサンから再結晶させ、油ポンプ真空中で乾燥させた。
【0094】
PG:保護基(Z‐保護基又はBOC‐保護基)
5a)Z‐D‐Met‐L‐Val‐OMe(Z‐DL‐IIa‐OMe)
【化16】
【0095】
実験式:C19H28N2O5S(396.50g/モル)、収量:4.60g(58%)、純度:97%、白色固体。
【0096】
【0097】
5b)Z‐D‐Met‐L‐Leu‐OMe(Z‐DL‐IIb‐OMe)
【化17】
【0098】
実験式:C20H30N2O5S(410.53g/モル)、収量:5.40g(66%)、純度:97%、白色固体。
【0099】
【0100】
5c)Z‐D‐Met‐L‐Ile‐OMe(Z‐DL‐IIc‐OMe)
【化18】
【0101】
実験式:C20H30N2O5S(410.53g/モル)、収量:5.09g(62%)、純度:97%、白色固体。
【0102】
【0103】
5d)Z‐D‐Met‐L‐Thr‐OMe(Z‐DL‐IId‐OMe)
【化19】
【0104】
実験式:C18H26N2O6S(398.47g/モル)、収量:2.14g(36%)、純度:98%、やや帯黄色の固体。
【0105】
【0106】
5e)Z‐D‐Met‐L‐Lys(Boc)‐OMe(Z‐DL‐IIe(Boc‐OMe)
【化20】
【0107】
実験式:C25H39N3O7S(525.66g/モル)、収量:10.86g(33%)、純度:95%、やや帯黄色の固体。
【0108】
【0109】
5f)Z‐D‐Met‐L‐Phe‐OMe(Z‐DL‐IIg‐OMe)
【化21】
【0110】
実験式:C23H28N2O5S(444.54g/モル)、収量:3.73g(42%)、純度:95%(HPLC)、白色固体。
【0111】
【0112】
5g)Z‐D‐Met‐L‐His‐OMe(Z‐DL‐IIh‐OMe)
【化22】
【0113】
実験式:C20H26N4O5S(434.51g/モル)、収量:2.35g(27%)、純度:95%(HPLC)、やや帯黄色の固体。
【0114】
【0115】
5h)Z‐D‐Met‐L‐Trp‐OMe(Z‐DL‐IIj‐OMe)
【化23】
【0116】
実験式:C25H29N3O5S(483.58g/モル)、収量:5.71g(59%)、純度:98%(HPLC)、やや帯黄色の固体。
【0117】
【0118】
例6:
PG‐L‐EAA‐D‐Met‐OMe(PG‐LD‐I‐OMe)群の化合物の一般的合成法(カップリング反応)
D‐メチオニンメチルエステル塩酸塩3.99g(20.0ミリモル)を、クロロホルム30ml及びメタノール5mlを含む混合物中で懸濁させ、K2CO3 4.15g(30ミリモル)を加え、室温で1時間攪拌した。引き続いて、塩を濾過し、少量のクロロホルムで洗浄した。濾液の濃縮後に、取得した残渣をテトラヒドロフラン50ml中に入れ、DCC4.37g(21.0ミリモル;1.05当量)及び相応するPG‐L‐EAA(PG‐L‐アミノ酸)20.0ミリモルを加え、室温で16時間に渡り攪拌した。その後に、反応混合物に氷酢酸3mlを加え、30分間攪拌し、生じた白色固体(N,N’‐ジシクロヘキシル尿素)を濾過した。濾液を回転蒸発器で濃縮させ、場合により生じるN,N’‐ジシクロヘキシル尿素を濾過した。引き続いて、油状残渣をクロロホルム/n‐ヘキサンから2回再結晶させ、油ポンプ真空中で乾燥させた。
【0119】
PG:保護基(Z‐保護基又はBOC‐保護基)
6a)Z‐L‐Val‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ia‐OMe)
【化24】
【0120】
実験式:C19H28N2O5S(396.50g/モル)、収量:3.01g(38%)、純度:95%(HPLC)、白色固体。
【0121】
【0122】
6b)Z‐L‐Leu‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ib‐OMe)
【化25】
【0123】
実験式:C20H30N2O5S(410.53g/モル)、収量:4.48g(55%)、純度:96%(HPLC)、白色固体。
【0124】
【0125】
6c)Z‐L‐Ile‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ic‐OMe)
【化26】
【0126】
実験式:C20H30N2O5S(410.53g/モル)、収量:3.89g(47%)、純度:97%(HPLC)、白色固体。
【0127】
【0128】
6d)Z‐L‐Thr‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Id‐OMe)
【化27】
【0129】
実験式:C18H26N2O6S(398.47g/モル)、収量:2.47g(31%)、純度:99%(HPLC)、やや帯黄色の固体。
【0130】
【0131】
6e)BOC‐L‐Lys(BOC)‐D‐Met‐OMe(BOC‐LD‐Ie(BOC)‐OMe)
【化28】
【0132】
実験式:C22H41N3O7S(491.64g/モル)、収量:5.22g(53.1%)、純度:97%(HPLC)、白色無定形固体。
【0133】
【0134】
6f)Z‐L‐Phe‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ig‐OMe)
【化29】
【0135】
実験式:C23H28N2O5S(444.54g/モル)、収量:3.51g(40%)、純度:99%(HPLC)、白色固体。
【0136】
【0137】
6g)BOC‐L‐Phe‐D‐Met‐OMe(BOC‐LD‐Ig‐OMe)
【化30】
【0138】
実験式:C20H30N2O5S(410.53g/モル)、収量:4.03g(49%)、純度:98%(HPLC)、白色固体。
【0139】
【0140】
6h)Z‐L‐His‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ih‐OMe)
【化31】
【0141】
実験式:C20H26N4O5S(434.51g/モル)、収量:1.65g(19%)、純度:95%(HPLC)、やや帯黄色の固体。
【0142】
【0143】
6i)Z‐L‐Trp‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ij‐OMe)
【化32】
【0144】
実験式:C25H29N3O5S(483.58g/モル)、収量:5.50g(57%)、純度:99%(HPLC)、やや帯黄色の固体。
【0145】
【0146】
6j)BOC‐L‐Trp‐D‐Met‐OMe(BOC‐LD‐Ij‐OMe)
【化33】
【0147】
実験式:C22H31N3O5S(449.56g/モル)、収量:5.91g(66%)、純度:99%(HPLC)、白色固体。
【0148】
【0149】
例7:
PG‐L‐EAA‐D‐Met(PG‐LD‐I)及びPG‐D‐Met‐L‐EAA(PG‐DL‐II)群の化合物の一般的合成法(メチルエステル分離)
PG‐L‐EAA‐D‐Met‐OMe(PG‐LD‐I‐OMe)又はPG‐D‐Met‐L‐EAA‐OMe(PG‐DL‐II‐OMe)10.0ミリモルを、水15ml及びメタノール200ml中で懸濁させ、NaOH1.2当量(12.0ミリモル)を加える(1N NaOH12.0ml)。2時間の攪拌後に、均質の反応溶液を希塩酸で酸性化させ、メタノールを回転蒸発器で溜去させる。ここで晶出する白色固体を濾過し、水20mlで洗浄しかつ再結晶させる。
【0150】
PG:保護基(Z‐保護基又はBOC‐保護基)
例8:
L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)群の化合物の一般的合成法(N‐末端のZ‐保護基分離)
Z‐L‐EAA‐D‐Met(Z‐LD‐I)又はZ‐D‐Met‐L‐EAA(Z‐LD‐II)5.0ミリモルを、氷酢酸50ml中に溶かし、ジメチルスルフィド18.5ml(15.6g;250ミリモル;50当量)及び酢酸中33%のHBr(1.65g;4.0当量)5.0g(3.6ml)を加えた。反応の終了後に、反応溶液を回転蒸発器で濃縮させた。残渣をメタノール約50ml中に溶かし、ナトリウムメタンチオレート3.5g(50ミリモル;10当量)を加えた。室温で20分間攪拌後に、溶液を濃塩酸で中和させ、溶液を回転蒸発器で濃縮させた。残渣を水40ml中に入れ、各ジエチルエーテル40mlで3回抽出した。水相を回転蒸発器で濃縮させ、この際、嵩張った白色固体が生じた。ジペプチドを吸引濾過し、少量の水で洗浄しかつ真空で乾燥させた。
【0151】
例9:
L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)群の化合物の一般的合成法(N‐末端のBOC‐保護基分離)
BOC‐L‐EAA‐D‐Met(BOC‐LD‐I)又はBOC‐D‐Met‐L‐EAA(BOC‐LD‐II)5.0ミリモルを、氷酢酸50ml中に溶かし、酢酸中33%のHBr(1.65g;4.0当量)5.0g(3.6ml)を加えた。反応の終了後に、反応溶液を回転蒸発器で濃縮させた。残渣を水40ml中に入れ、各ジエチルエーテル40mlで3回抽出した。水相を氷浴中での連続冷却中に徐々に20%のNaOH溶液で中和した。溶液を各ジエチルエーテル40mlで3回洗浄し、水相を回転蒸発器で濃縮させ、この際、嵩張った白色固体が生じた。ジペプチドを吸引濾過し、少量の水で洗浄しかつ真空で乾燥させた。
【0152】
9a)D‐Met‐L‐Leu(DL‐IIb)
【化34】
【0153】
収量:860mg(66%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体。
【0154】
【0155】
9b)D‐Met‐L‐Ile(DL‐IIc)
【化35】
【0156】
収量:900mg(69%)。純度:99%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0157】
9c)D‐Met‐L‐Thr(DL‐IId)
【化36】
【0158】
収量:640mg(51%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0159】
9d)D‐Met‐L‐Lys x 2HCl(DL‐IIe‐2HCl)
【化37】
【0160】
収量:613mg(49%)、純度:97%(HPLC)、帯黄色固体
【0161】
9e)D‐Met‐L‐Phe(DL‐IIg)
【化38】
【0162】
収量:930mg(63%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0163】
9f)D‐Met‐L‐Trp(DL‐IIj)
【化39】
【0164】
収量:1.38g(82%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0165】
9g)L‐Leu‐D‐Met(LD‐Ib)
【化40】
【0166】
収量:710mg(54%)、純度:99%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0167】
9h)L‐Ile‐D‐Met(LD‐Ic)
【化41】
【0168】
収量:790mg(59%)、純度:97%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0169】
9i)L‐Thr‐D‐Met(LD‐Id)
【化42】
【0170】
収量:690mg(55%)、純度:99%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0171】
9j)L‐Lys‐D‐Met x 2HCl(LD‐Ie‐2HCl)
【化43】
【0172】
収量:676mg(54%)、純度:96%(HPLC)、無色結晶
【0173】
9k)L‐Phe‐D‐Met(LD‐Ig)
【化44】
【0174】
収量:880mg(59%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0175】
9l)L‐Trp‐D‐Met(LD‐Ij)
【化45】
【0176】
収量:1.40g(83%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0177】
例10:
KOHを用いた、5‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐2,4‐イミダゾリジンジオン(メチオニンヒダントイン)(Vn)及びL‐イソロイシンからMet‐Ile(IIc)のジアステレオマー混合物の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、5‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐2,4‐イミダゾリジンジオン(Vn)17.2g(0.09モル、純度:91%)及び85%のKOH11.9g(0.8モル)を水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は8バールに上昇した。反応の終了後に、オートクレーブを冷却し、生じた固体を濾過し、少量の水で洗浄した。濾液に、適度なCO2流を流通させた。ここで生じる固体を再び吸引濾過し、少量の冷水で洗浄し、油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体7.3g(理論値の31%)。1H‐NMRは、L‐Met‐L‐Ile(LL‐IIc)及びD‐Met‐L‐Ile(DL‐IIc)の重層した1H‐NMRスペクトルと一致した。(例9b参照)。
【0178】
例11:
KOHを用いた、N‐カルバモイルメチオニン(IIIn)及びL‐イソロイシンから、Met‐Ile(IIc)のジアステレオマー混合物の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、N‐カルバモイルメチオニン(IIIn)17.5g(0.09モル、純度:99%)及び85%のKOH11.9g(0.18モル)を水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は7バールに上昇した。反応の終了後に、オートクレーブを冷却し、生じた固体を濾過し、少量の水で洗浄した。濾液を10%の硫酸で中和し、ここで生じる固体を吸引濾過し、少量の冷水で洗浄しかつ油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体6.4g(理論値の27%)。1H‐NMRは、L‐Met‐L‐Ile(LL‐IIc)及びD‐Met‐L‐Ile(DL‐IIc)の重層した1H‐NMRスペクトルと一致した。(例9b参照)。
【0179】
例12:
KOHを用いた、2‐[(アミノカルボニル)アミノ]‐4‐(メチルチオ)ブタン酸アミド(N‐カルバモイルメチオニンアミド)(IVn)及びL‐イソロイシンから、Met‐Ile(IIc)のジアステレオマー混合物の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、2‐[(アミノカルボニル)アミノ]‐4‐(メチルチオ)ブタン酸アミド(IVn)17.4g(90ミリモル、純度:98.5%)及び85%のKOH11.9g(0.8モル)を水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は7バールに上昇した。反応の終了後に、オートクレーブを冷却し、生じた固体を濾過し、少量の水で洗浄した。濾液を半濃塩酸で中和し、ここで生じる固体を吸引濾過し、少量の冷水で洗浄し、油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体8.0g(理論値の34%)。1H‐NMRは、L‐Met‐L‐Ile(LL‐IIc)及びD‐Met‐L‐Ile(DL‐IIc)の重層した1H‐NMRスペクトルと一致した。(例9b参照)。
【0180】
例13:
5‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐2,4‐イミダゾリジンジオン(メチオニンヒダントイン)(Vn)及びL‐イソロイシンから、3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、5‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐2,4‐イミダゾリジンジオン(Vn)17.2g(0.09モル、純度:91%)及び(NH4)HCO3 7.1g(0.9モル)を、水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は上昇した。時折、ガスを放出させることによって、圧力を8バールに一定保持した。反応の終了後に、オートクレーブを氷浴中で冷却した。得られる懸濁液を引き続いて濾過し、濾過した固体を水で数回洗浄し、油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体としてVIc9.9g(理論値の45%)。
【0181】
【化46】
【0182】
【0183】
例14:
N‐カルバモイルメチオニン(IIIn)及びL‐イソロイシンから、3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、N‐カルバモイルメチオニン(IIIn)17.5g(0.09モル、純度:99%)及び(NH4)HCO3 7.1g(0.9モル)を、水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は上昇した。時折、ガスを放出させることによって、圧力を8バールに一定保持した。反応の終了後に、オートクレーブを氷浴中で冷却した。得られる懸濁液を引き続いて濾過し、濾過した固体を水で数回洗浄し、油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体として化合物VIc9.1g(理論値の41.3%)。NMRは、例13からのNMRと一致した。
【0184】
例15:
2‐[(アミノカルボニル)アミノ]‐4‐(メチルチオ)ブタン酸アミド(N‐カルバモイルメチオニンアミド)(IVn)及びL‐イソロイシンから、3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、2‐[(アミノカルボニル)アミノ]‐4‐(メチルチオ)ブタン酸アミド(IVn)17.4g(90ミリモル、純度:98.5%)及び(NH4)HCO3 7.1g(0.9モル)を、水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は上昇した。時折、ガスを放出させることによって、圧力を8バールに一定保持した。反応の終了後に、オートクレーブを氷浴中で冷却した。得られる懸濁液を引き続いて濾過し、濾過した固体を水で数回洗浄し、油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体IVc10.3g(理論値の47%)。NMRは、例13からのNMRと一致した。
【0185】
例16:
濃塩酸を用いた、3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)から、Ile‐Met(Ic)Met‐Ile(IIc)のジアステレオマー混合物の合成
3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)24.4g(100ミリモル)を、水66gと懸濁させる。攪拌下に濃塩酸11gを徐々に滴加して、引き続いて慎重に、強力な攪拌下に還流加熱した。反応混合物を8時間還流加熱し、それによって全ての固体は溶解した。引き続いて冷却する間に、少量の未反応のジケトピペラジンが生じ、それを濾過した。引き続いて、濾液を、氷浴を備えたフラスコ中で32%のアンモニア水でpH5〜6に調整した。この際、DL‐Met‐DL‐Ile(IIcのジアステレオマー混合物)及びDL‐Ile‐DL‐Met(Icのジアステレオマー混合物)の混合物が嵩張った白色固体として生じた。固体を乾燥箱中水流ポンプ真空で40℃で乾燥させた。収量21.5g(82.0%)。
【0186】
例17:
アンモニアを用いたアルカリ条件で、3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)から、Ile‐Met(Ic)及びMet‐Ile(IIc)のジアステレオマー混合物の合成
3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)19.6g(0.8モル)、25%のアンモニア溶液22.4ml及び水160mlを、オートクレーブ中150℃に2時間加熱する。冷却後に、未反応のジケトピペラジンを濾過する。これを次の成分に再び使用することができる。濾液を回転蒸発器中水温80℃で、最初の結晶が生じるまで濃縮させた。冷却及び1晩放置後に、濾過及び乾燥後に、DL‐Met‐DL‐Ile(IIcのジアステレオマー混合物)及びDL‐Ile‐DL‐Met(Icのジアステレオマー混合物)の混合物を、嵩張った白色固体として分離することができた。収量:12.2g(58%)。
【0187】
例18:
雑食性コイからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)又はL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)の試験管内消化試験
a)カガミゴイ(Cyprinus carpio morpha noblis)から消化酵素の分離
消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、一年生のカガミゴイ(Cyprinus carpio morpha noblis)5匹の腸を取り出し、水で洗浄し、縦に切開し、かつ各々腸粘膜をかき取った。これを砕氷と一緒に混合機で砕細した。未だ完全な細胞を砕解するために、得られた懸濁液を超音波棒で処理した。細胞成分及び脂肪の分離のために、懸濁液を4℃で30分間遠心分離にかけ、均質液をデカントし、チメロサールの痕跡量で滅菌した。カガミゴイ5匹から腸粘膜の酵素溶液296.3mlを取得した。溶液を4℃の暗所で貯蔵した。
【0188】
b)試験管内消化試験の実施
L‐Met‐L‐EAA(LL‐II)又はL‐EAA‐L‐Mt(LL‐I)を、TRIS/HCl緩衝液に入れ、酵素溶液を加えた。比較として、及び純化学的分離速度の評価のために、各々酵素溶液を含まない盲値を設定した(表3参照)。時折、試料を取り出し、その組成を目盛付きHPLCで検定し、かつ量定した。変換率を、メチオニンの含量及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)又はL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)の含量の商として測定した(図1及び2参照)。
【0189】
【表3】
【0190】
例19
雑食性コイからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)又はD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の試験管内消化試験
a)カガミゴイ(Cyprinus carpio morpha noblis)から消化酵素の分離
消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、一年生のカガミゴイ(Cyprinus carpio morpha noblis)5匹の腸を取り出し、例18に記載したように処理した。
【0191】
b)試験管内消化試験の実施
D‐Met‐L‐EAA(DL‐II)又はL‐EAA‐D‐Mt(LD‐I)を、TRIS/HCl緩衝液に入れ、酵素溶液を加えた。比較として、及び純化学的分離速度の評価のために、各々酵素溶液を含まない盲値を設定した(表4参照)。時折、試料を取り出し、その組成を目盛付きHPLCで検定し、かつ量定した。変換率を、メチオニンの面積及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)又はL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)の面積の商として測定した(図7参照)。
【0192】
【表4】
【0193】
例20:
肉食性マスからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)又はL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)の試験管内消化試験
a)ニジマス(Oncorhynchus mykiss)からの消化酵素の分離
消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、一年生のニジマス(Oncorhynchus mykiss)6匹の腸を取り出し、例18に記載したように処理した。
【0194】
b)試験管内消化試験の実施
試験管内試験を、例18と同様に実施した(表5、図3及び4参照)。
【0195】
【表5】
【0196】
例21:
肉食性マスからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)又はD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の試験管内消化試験
a)ニジマス(Oncorhynchus mykiss)からの消化酵素の分離
消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、一年生のニジマス(Oncorhynchus mykiss)6匹の腸を取り出し、例18に記載したように処理した。
【0197】
b)試験管内消化試験の実施
試験管内試験を、例19と同様に実施した(表6、図11参照)。
【0198】
【表6】
【0199】
例22:
雑食性の小エビからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)又はL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)の試験管内消化試験
a)バナメイ(Litopenaeus Vannamei)からの消化酵素の分離
消化酵素の分離は、Ezquerra及びGarcia-Carrenoの方法(J. Food Biochem. 1999, 23, 59-74)により実施した。そのために、バナメイ(Litopenaeus Vannamei)5kgから肝膵臓を取り出し、砕氷と一緒に混合機で砕細した。更なる処理は、例18と同様に実施した。
【0200】
b)試験管内消化試験の実施
試験管内試験を、例18と同様に実施した(表7、図5及び6参照)。
【0201】
【表7】
【0202】
例23:
雑食性小エビからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)又はD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の試験管内消化試験
a)バナメイ(Litopenaeus Vannamei)からの消化酵素の分離
消化酵素の分離は、Ezquerra及びGarcia-Carrenoの方法(J. Food Biochem. 1999, 23, 59-74)により実施した。そのために、バナメイ(Litopenaeus Vannamei)5kgから肝膵臓を取り出し、砕氷と一緒に混合機で砕細した。更なる処理は例18と同様に実施した。
【0203】
b)試験管内消化試験の実施
試験管内試験を、例19と同様に実施した(表8、図10参照)。
【0204】
【表8】
【0205】
例24:
鶏からの消化酵素を用いた、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)又はL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)の試験管内消化試験
a)消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、鶏の腸を取り出し、水で洗浄し、縦に切開し、かつ各々腸粘膜をかき取った。これを砕氷と一緒に混合機で砕細した。未だ完全な細胞を砕解するために、得られた懸濁液を超音波棒で処理した。細胞成分及び脂肪の分離のために、懸濁液を4℃で30分間遠心分離にかけ、均質液をデカントし、チメロサールの痕跡量で滅菌した。鶏から腸粘膜の酵素溶液118.9mlを取得し、溶液を4℃の暗所で貯蔵した。
【0206】
b)試験管内消化試験の実施
L‐Met‐L‐EAA(LL‐II)又はL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)を、TRIS/HCl緩衝液に入れ、酵素溶液を加えた。比較として、及び純化学的分離速度の評価のために、各々酵素溶液を含まない盲値を設定した。時折、試料を取り出し、その組成を目盛付きHPLCで検定し、かつ量定した。変換率を、メチオニンの含量及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)又はL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)の含量の商として測定した(図9、図16参照)。
【0207】
【表9】
【0208】
例25:
鶏からの消化酵素を用いた、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)又はD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の試験管内消化試験
a)鶏からの消化酵素の分離
消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、鶏の腸を取り出し、例24に記載したように処理した。
【0209】
b)試験管内消化試験の実施
D‐Met‐L‐EAA(DL‐II)又はL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)を、TRIS/HCl緩衝液に入れ、酵素溶液を加えた。比較として、及び純化学的分離速度の評価のために、各々酵素溶液を含まない盲値を設定した。時折、試料を取り出し、その組成を目盛付きHPLCで検定し、かつ量定した。変換率を、メチオニンの面積及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)又はL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)の面積の商として測定した(表10、図17参照)。
【0210】
【表10】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のメチオニン結合した非天然及び天然の、必須制限アミノ酸、例えば、リジン、スレオニン及びトリプトファン、硫黄含有アミノ酸、システイン及びシスチンのジペプチド、及びその合成及び有用動物、例えば、鶏、豚、反芻動物の、しかし殊にまた、水産養殖からの魚及び甲殻類の飼育用の飼料添加剤としての使用に関する。
【0002】
公知技術水準
必須アミノ酸(EAA)メチオニン、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及びアルギニン、及び2種の硫黄含有アミノ酸システイン及びシスチンは、飼料における極めて重要な成分であり、有用動物、例えば、鶏、豚及び反芻動物の経済的飼育で重要な役割を果たす。この際、特に、EAAsの最適分配及び十分な供給が決定的である。天然たんぱく質給源、例えば、大豆、トウモロコシ及び小麦からの飼料は、大抵、一定のEAAsが欠失しているので、一方で、動物のより早い成長又は高生産乳牛におけるより高い乳生産のために、しかしまた他方で全飼料のより有効な利用のために、合成のEAAs、例えば、DL‐メチオニン、L‐リジン、L‐スレオニン又はL‐トリプトファンを照準的に補充することが可能である。このことは極めて大きな経済的利点である。飼料添加剤の市場は、大きな工業的及び経済的な重要性を有する。更にこれは、特に、例えば、中国及びインドのような国の増大する重要性に帰し得る強力な成長市場である。
【0003】
多種動物にとって、L‐メチオニン((S)‐2‐アミノ‐4‐メチルチオ酪酸)は、全てのEAAsの第一制限アミノ酸であり、従って、動物栄養において及び飼料添加剤として重要な役割を果たす(Rosenberg et al., J. Agr. Food Chem. 1957, 5, 694-700)。しかしメチオニンは、古典的な化学合成では、ラセミ化合物、D‐メチオニン及びL‐メチオニンからの50:50混合物として生じる。このラセミ化合物のDL‐メチオニンを、飼料添加剤として直接使用することができるが、それというのも、数種の動物では、生体内(in vivo)条件下にメチオニンの非天然のD‐エナンチオマーを天然L‐エナンチオマーに転換させる転換機構が成り立つからである。この際、D‐メチオニンは、非特異的D‐オキシダーゼによって、先ずα‐ケト‐メチオニンに脱アミン化され、引き続いて更にL‐トランスアミナーゼでL‐メチオニンに転換される(Baker, D. H. "Amino acids in farm animal nutrition"中, D' Mello, J. P. F. (ed.), Wallingford (UK), CAB‐International, 1994, 37-61)。それによって、成長のために動物が有効に利用し得るL‐メチオニンの有効量が生物体中で高められる。D‐メチオニンからL‐メチオニンへの酵素的転換は、鶏、豚及び乳牛で、しかし殊に魚、小エビ及び車エビでも確認された。即ち、例えば、Sveier et al. (Aquacult. Nutr. 2001, 7(3), 169-181)及びKim et al. (Aquaculture 1992, 101(1-2), 95-103)は、D‐メチオニンからL‐メチオニンへの転換が肉食性タイセイヨウサケ及びニジマスで可能であることを示し得た。同様のことが、Robinson et al. (J. Nutr. 1978, 108(12), 1932-1936)及びSchwarz et al. (Aquaculture 1998, 161, 121-129)によって、雑食種の魚、例えば、ナマズ及びコイについて示され得た。更に、Forster及びDominy(J. World Aquacult. Soc. 2006, 37(4), 474-480)は、Litopenaeus vannamei種の雑食性小エビの飼育試験で、DL‐メチオニンが、L‐メチオニンと同様の有効性を有することを示し得た。2007年には、世界的に、結晶性DL‐メチオニン又はラセミ化合物の液体のメチオニン‐ヒドロキシ同族体(MHA、rac‐2‐ヒドロキシ‐4‐(メチルチオ)ブタン酸(HMB))及び固体のカルシウム‐MHA70000トン(t)以上が生産され、単一胃動物、例えば、鶏及び豚において飼料添加剤として直接有効に使用された。
【0004】
メチオニンに対して、リジン、スレオニン及びトリプトファンについては、各々の場合に、L‐エナンチオマーのみを飼料添加剤として使用することができ、それというのも、これらの3種の必須及び制限アミノ酸の各D‐エナンチオマーは、生物体によって生理学的条件下に、相応するL‐エナンチオマーに転換され得ないからである。即ち、L‐リジン、第一制限アミノ酸の世界市場だけは、例えば、豚においては、2007年には100万トン以上であった。他の2種の制限必須アミノ酸、L‐スレオニン及びL‐トリプトファンについては、世界市場は、2007年では、100000t以上又は僅かに3000t以下であった。
【0005】
単胃動物、例えば、家禽及び豚では、通常、DL‐メチオニン、MHAが、しかしL‐リジン、L‐スレオニン及びL‐トリプトファンも、飼料添加剤として直接使用される。これに対して、反芻動物におけるEAAs、例えば、メチオニン、リジン、スレオニン又は同様にMHAの飼料の補充は、その主要量が反芻動物の第一胃中で微生物によって分解されるので有効ではない。従って、この分解に基づき、補充EAAsの断片のみが動物の小腸に到達し、そこで一般に血液中への吸収が行なわれる。反芻動物では、EAAsの内で、特にメチオニンが決定的な役割を果たし、それというのも、高い乳生産は最適な供給でのみ保証されるからである。反芻動物に、メチオニンを高効率で利用させ得るためには、第一胃耐性保護の形態が使用されるべきである。この際、この特性をDL‐メチオニン又はrac‐MHAに与える幾つかの可能性がある。1つの可能性は、好適な保護層の塗布又は保護マトリックス中のメチオニンの分配によって高い第一胃耐性を達成することにある。それによって、メチオニンは実際に損失なしに第一胃を通過することができる。次いで更に経過して、例えば、反芻動物の第四胃で、保護層は酸性加水分解によって除去され、更に遊離メチオニンは小腸で吸収され得る。商業的に得られる製品は、例えば、Firma Evonik DegussaのMepron(R)及びFirma AdisseoのSmartamine(TM)である。メチオニンの製造又は被覆は、技術的に複雑でかつ経費のかかる方法であり、従って、高価である。更に、完成ペレットの表面被覆は、飼料を加工する間に、機械的負荷及び磨耗によって容易に損傷され、このことは保護被覆の減少又は完全な損失にまで成り得る。従って、保護メチオニンペレットをより大きな混合飼料ペレットに加工することも、それによって再び保護層が機械的応力によって崩壊されるので同様に不可能である。このことはそのような生成物の使用を制限する。第一胃耐性の向上のためのもう1つの可能性は、メチオニン又はMHAの化学的誘導体化である。この際、分子の官能基を好適な保護基で誘導体化させる。これは、例えば、カルボン酸官能基とアルコールとのエステル化によって行われ得る。それによって、第一胃中の微生物による分解が減少され得る。商業的に得られる化学的保護製品は、例えば、Metasmart(TM)、MHAのラセミ化合物イソ‐プロピルエステル(HMBi)である。WO00/28835に、反芻動物において、HMBiについて少なくとも50%の生物有効性が公開された。メチオニン又はMHAの化学的誘導体化の欠点は、しばしば、より悪化された生物有効性及び比較的低い作用物質含量にある。
【0006】
しかし、反芻動物における補充EAAs、例えば、メチオニン、リジン又はスレオニンの、第一胃中での分解の問題の他に、魚及び甲殻類においても、飼料へのEAAsの補充の際に様々な問題が生じ得る。近年この分野において、高工業化水産養殖での魚養殖及び甲殻類養殖の急激な経済的発展により、必須かつ制限アミノ酸の最適で、経済的かつ有効的な補充可能性が益々重要な役割を果たしている(Food and Agriculture Organization of the United Nation (FAO) Fisheries Department "State of World Aquaculture 2006", 2006, Rome. international Food Policy Research institute (IFPRI) "Fish 2020: Supply and Demand Changing Markets", 2003, Washington, D. C.)。しかしこの際、飼料添加剤として結晶性EAAsの使用で、鶏及び豚に対して、一定の魚種及び甲殻類種で様々な問題が生じ得る。即ち、Rumsey及びKetola (J. Fish. Res. Bd. Can. 1975, 32, 422-426)は、個々の補充された結晶性アミノ酸と関連した大豆粉の使用が、ニジマスでは成長上昇を導かないことを報告している。Murai et al. (Bull. Japan. Soc. Sci. Fish. 1984, 50 (11), 1957)は、コイにおいて、補充された結晶性アミノ酸を毎日高い割当量で魚餌飼育するにより、遊離アミノ酸の40%以上がエラ及び腎臓を介して排泄されることを示した。飼料摂取直後に、補充アミノ酸の急速な吸収に基づき、魚の血漿中でアミノ酸濃度の極めて急速な上昇が起きる(高速応答(Fast-Response))。しかしこの時点で、天然たんぱく質給源、例えば、大豆粉からの他のアミノ酸は未だ血漿中に存在せず、これは重要な全アミノ酸の同時取得の非同時性に成り得る。従って、高濃度のアミノ酸の一部は急速に排泄され、又は生物体中で急速に代謝され、かつ、例えば、純粋なエネルギー源として利用される。それによって、コイの場合には、飼料添加剤として結晶性アミノ酸を使用した場合に、成長上昇が低くなり、又は成長上昇がないことになるだけである(Aoe et al., Bull. Jap. Soc. Sci. Fish. 1970, 36, 407-413)。甲殻類では、結晶性EAAsの補充は更に他の問題を生じさせ得る。一定の甲殻類、例えば、Litopenaeus Vannamei種の小エビの遅速な食い特性によって、飼料が水下で長時間滞留することにより、補充された水溶性EAAsの溶出(Leaching)が起こり、このことは海洋の富栄養化を導き、かつ動物の成長上昇に結びつかない(Alam et al., Aquaculture 2005, 248, 13-16)。従って、水産養殖で保持される魚及び甲殻類の有効な養殖は、一定の方法及び適用について、EAAsの特殊な生産形態、例えば、相応する化学的又は物理的に保護された形態を要求する。この際、目的は、一方で、生成物が水性環境での飼育中に十分に安定したままで、飼料から溶出しないことである。他方で、最終的に動物によって摂取されたアミノ酸生成物が動物の生体で最適かつ高い効率で使用され得ることである。
【0007】
過去に、魚及び甲殻類用の、特に必須アミノ酸メチオニン及びリジンをベースとする好適な飼料添加剤を開発するために多くの努力が行なわれた。即ち、例えば、WO8906497に、魚及び甲殻類用の飼料添加剤として、ジペプチド及びトリペプチドの使用が記載されている。それによって、動物の成長が促進されるとのことである。しかしこの場合には、多くの植物性たんぱく質給源中に十二分に存在している、非必須及び同様に非制限のアミノ酸、例えば、グリシン、アラニン及びセリンからのジペプチド及びトリペプチドが有利に使用された。メチオニン含有ジペプチドとして、DL‐アラニル‐DL‐メチオニン及びDL‐メチオニル‐DL‐グリシンが記載されただけである。しかしそれにより、ジペプチド中に作用物質50%(モル/モル)だけが有効に含有されていて、このことは、経済的観点下では、極めて不利であると見なすべきである。WO02088667に、特に同様に魚及び甲殻類の飼料添加剤として、MHA及びアミノ酸、例えば、メチオニンからのオリゴマーのエナンチオ選択的合成及び使用が記載されている。それによって、より急速な成長が達成され得るとのことである。記載されたオリゴマーは、酵素触媒反応によって構成され、かつ個々のオリゴマーの極めて広範な鎖長分布を有する。それによって、この方法は、実施及び精製において、非選択的で、高価でかつ経費がかかる。Dabrowski et al.は、US20030099689に、水生動物の成長促進のための飼料添加剤として、合成ペプチドの使用を記載している。この場合には、ペプチドは、全飼料組成物の6〜50%の質量割合になり得る。合成ペプチドは、有利にEAAsから成る。しかし、そのような合成オリゴペプチド及びポリペプチドのエナンチオ選択的合成は極めて経費がかかり、高価でかつ大工業的に反応が困難である。更に、個々のアミノ酸のポリペプチドの有効性は異論があり、それというのも、これは、生理学的条件下にしばしば極めて徐々にしか遊離アミノ酸に変換しない又は全く変換しないからである。即ち、例えば、Baker et al. (J. Nutr. 1982, 112, 1130-1132)は、ポリ‐L‐メチオニンが、絶対的な水不溶性であることに基づき、生物体の吸収が不可能であるので、鶏の場合には、生物学的価値を示さないことを記載している。
【0008】
新規のEAAs化学的誘導体、例えば、メチオニン含有ペプチド及びオリゴマーの使用のほかに、様々な物理的保護可能性、例えば、コーティング又は保護マトリックス中へのEAAの埋床も調査された。即ち、例えばAlam et al. (Aquacult. Nutr. 2004, 10, 309-316及びAquaculture 2005, 248, 13-19)は、被覆メチオニン及びリジンが、非被覆に比べて、幼クルマエビの成長への極めて陽性の影響を有することを示すことができた。特殊な被覆が、飼料ペレットからのメチオニン及びリジンの溶出を抑制し得たとしても、若干の深刻な欠点がある。アミノ酸の製造又は被覆は、大抵は技術的に煩雑で経費のかかる方法であり、従って高価である。更に、仕上げ被覆されたアミノ酸の表面被覆は、飼料を加工する間に、機械的負荷及び磨耗によって容易に損傷され、このことは物理的保護被覆の減少又は完全な損失にまで成り得る。更に、コーティング又はマトリックス物質の使用によって、アミノ酸含量は減少し、従ってしばしば不経済となる。
【0009】
発明の課題
一般的課題は、新規のメチオニン含有補充物質をベースとする、動物飼育用の飼料又は飼料添加剤を製造することであり、この際、メチオニンは、必須及び制限アミノ酸、例えば、L‐リジン、L‐スレオニン及びL‐トリプトファンに結合していて、かつこの物質は、有用動物、例えば、鶏、豚、反芻動物、しかし殊にまた水産養殖の魚及び甲殻類の飼育用の飼料添加剤として使用され得る。
【0010】
公知技術水準の欠点の背景に対して、特に、様々な有用動物、例えば、鶏、豚及び反芻動物用の、しかし又、塩水又は淡水中に生息している多くの雑食性、草食性及び肉食性の魚類及び甲殻類用の、DL‐メチオニン+EAA、例えば、L‐リジン、L‐スレオニン又はL‐トリプトファンからの共有結合組成物を含む化学的に保護された生成物を製造することが課題であった。この生成物は、メチオニン給源としての機能のほかに、他の全てのEAAs給源としても作用すべきである。殊に、この生成物は、"徐放(Slow Release)"機構、要するに、生理学的な条件下に遊離メチオニン及びEAAのゆっくりした連続的な放出を有するべきである。更に、メチオニン及びEAAの化学的に保護された生成物形態は第一胃耐性であり、従って全ての反芻動物に好適であるべきである。魚及び甲殻類用の飼料添加剤として使用するために、生成物形態は、水中における全飼料ペレット又は全飼料押出物からの低い溶解特性(Leaching)を有するべきである。
【0011】
もう1つの課題は、混合飼料加工、殊にペレット化及び押出の通常の条件下で、良好な取扱可能性及び貯蔵性及び安定性を有するべきである、極めて高い生物学的価値を有する飼料又は飼料添加剤としての結晶性EAAsの補充物質を見出すことであった。
【0012】
この方法で、例えば、鶏、豚、反芻動物、魚及び甲殻類は、結晶性EAAsのほかに、できるだけ公知製品の欠点を示さない又は減らされた範囲でしか示さない、他の有効な必須アミノ酸給源を得るべきである。
【0013】
更に、1個だけのメチオニン基を含有するジペプチド、殊にL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)の、様々な新規で融通の利く合成法を開発すべきである。この際、技術的DL‐メチオニン製法からの典型的な前駆生成物及び副生成物が、1合成法のために出発物質として使用されるべきである。
【0014】
発明の説明
この課題は、ジペプチド又はその塩を含有する飼料添加剤によって解明され、この際、ジペプチドの1個のアミノ酸残基は、DL‐メチオニル基であり、かつジペプチドの他のアミノ酸残基は、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択されるL‐立体配置のアミノ酸である。
【0015】
有利な方法で、飼料添加剤は、一般式 DL‐メチオニル‐L‐EAA(=D‐メチオニル‐L‐EAA及びL‐メチオニル‐L‐EAAを含む混合物)及び/又はL‐EAA‐DL‐メチオニン(=L‐EAA‐D‐メチオニン及びL‐EAA‐L‐メチオニンを含む混合物)のジペプチドを含有し、この際、L‐EAAは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択されるL‐立体配置のアミノ酸である。
【0016】
更に、本発明の目的は、前記の飼料添加剤を含有する飼料混合物である。
【0017】
L‐EAA‐DL‐メチオニン及び/又はDL‐メチオニル‐L‐EAA及びその塩を含有する飼料添加剤は、家禽、豚、反芻動物用、しかし殊にまた水産養殖の魚及び甲殻類用の飼料混合物中の飼料添加剤として好適である。
【0018】
有利な方法で、飼料混合物は、L‐EAA‐DL‐メチオニン及び/又はDL‐メチオニル‐L‐EAA0.01〜5質量%、有利に0.05〜0.5質量%を含有する。
【0019】
この際、L‐EAA‐DL‐メチオニン及びDL‐メチオニル‐L‐EAAの使用は、これらのジペプチドが低い溶解性に基づく良好な溶出特性を有するので、特に有利であると実証された。
【0020】
更に、この化合物は、飼料製造の際に良好なペレット化安定性及び押出安定性を示す。ジペプチドL‐EAA‐DL‐メチオニン及びDL‐メチオニル‐L‐EAAは、通常の成分及び飼料、例えば、穀物(例えば、トウモロコシ、小麦、ライ小麦、大麦、キビ等)、植物性又は動物性たんぱく質担体(例えば、大豆及び菜種及びその更に処理した生成物、豆類(例えば、エンドウ豆、インゲン豆、ルピナス等)、魚粉等)と混合して、及び補充必須アミノ酸、たんぱく質、ペプチド、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪及び油と混合して安定している。
【0021】
更に、DL‐メチオニン及びL‐EAAに比較して、物質1kg当たりのL‐EAA‐DL‐メチオニン及びDL‐メチオニル‐L‐EAAの作用物質の高い割合によって、L‐EAA‐DL‐メチオニン及びDL‐メチオニル‐L‐EAA1モル当たり水1モルが節約されることが有利である。
【0022】
有利な1使用で、飼料混合物は、有利に魚粉、大豆粉又はトウモロコシ粉をベースとするたんぱく質及び炭水化物を含有し、かつ必須アミノ酸、たんぱく質、ペプチド、ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪及び油で補充されていてよい。
【0023】
殊に、飼料混合物中に、DL‐メチオニル‐L‐EAA及びL‐EAA‐DL‐メチオニンが、単独でD‐メチオニル‐L‐EAA、L‐メチオニル‐L‐EAA、L‐EAA‐D‐メチオニン又はL‐EAA‐L‐メチオニンとして、相互に混合物として、又は同様にD‐メチオニル‐D‐EAA、L‐メチオニル‐D‐EAA、D‐EAA‐D‐メチオニン又はD‐EAA‐L‐メチオニンとの混合物として、有利に各々付加的に、DL‐メチオニンと、有利に、DL‐メチオニン0.01〜90質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に1〜30質量%の割合と混合して、有利に各々付加的に、L‐EAA、例えば、L‐リジンと、有利に、L‐EAA0.01〜90質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に1〜30質量%の割合と混合して存在することが有利である。
【0024】
有利な1使用で、水産養殖で保持される動物は、コイ、マス、サケ、ナマズ、スズキ、ヒラメ、チョウザメ、マグロ、ウナギ、ブリーム、タラ、小エビ、オキアミ及び車エビ、極めて特に、ハクレン(Hypophthalmichthys molitrix)、ソウギョ(Ctenopharyngoden‐Idella)、有鱗のコイ(Cyprinus carpio)及びビッグヘッドカープ(Aristichthys nobilis)、フナ(Carassius carassius)、カトラ(Catla Catla)、ロホラベロ(Labeo rohita)、太平洋サケ及び大西洋サケ(Salmon salar及びOncorhynchus kisutch)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、アメリカナマズ(Ictalurus punctatus)、アフリカナマズ(Clar Ias gariepinus)、バサ(Pangasius bocourti及びPangasius hypothalamus)、ナイルティラピア(Oreochromis niloticus)、ミルクフィッシュ(Chanos chanos)、スギ(Rachycentron canadum)、バナメイ(Litopenaeus vannamei)、ブラックタイガー小エビ(Penaeus monodon)及びオニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)を含む群から選択される、淡水魚及び塩水魚及び淡水甲殻類及び塩水甲殻類である。
【0025】
本発明により、L‐EAA‐DL‐メチオニン(L‐EAA‐DL‐Met)(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐Met‐L‐EAA)(II)又はそのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えば、難溶性カルシウム塩又は亜鉛塩は、飼料混合物中の添加剤として、D‐メチオニル‐L‐EAA、L‐メチオニル‐L‐EAA、L‐EAA‐D‐メチオニン又はL‐EAA‐L‐メチオニンとして、又は各々のジアステレオマー混合物中で、単独で又はDL‐メチオニンと混合して、単独で又はL‐EAAと混合して、有利に家禽、豚、反芻動物用に、及び特に有利に魚及び甲殻類用に使用される:
【化1】
【0026】
この際、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)から、2種のジアステレオマー、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)が存在する。同様に、ジペプチド、DL‐メチオニル‐L‐EAA(II)から、各々2種の異なった立体異性体、D‐Met‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)が生じる。この際、2種のジアステレオマー、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)だけが天然であるが、2種の他のL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)は非天然である(図式1参照)。
【0027】
【化2】
【0028】
この際、EAAの基Rは、次のものを表わす:
Ia又はIIa:R=1‐メチルエチル‐ (バリン)
Ib又はIIb:R=2‐メチルプロピル‐ (ロイシン)
Ic又はIIc:R=(1S)‐1‐メチルプロピル‐ (イソロイシン)
Id又はIId:R=(1R)‐1‐ヒドロキシエチル‐ (スレオニン)
Ie又はIIe:R=4‐アミノブチル‐ (リジン)
If又はIIf:R=3‐[(アミノイミノメチル)‐アミノ]プロピル‐
(アルギニン)
Ig又はIIg:R=ベンジル‐ (フェニルアラニン)
Ih又はIIh:R=(1H‐イミダゾル‐4‐イル)メチル‐ (ヒスチジン)
Ij又はIIj:R=(1H‐インドル‐3‐イル)メチル‐ (トリプトファン)。
【0029】
この際、立体異性体L‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)、L‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)は、単独で又は相互に混合して、有利に家禽、豚、反芻動物、魚、甲殻類及び家畜用に、飼料添加剤として使用され得る。
【0030】
本発明の主要目的は、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)の新規合成製法の開発の他に、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)を含む混合物又はL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)及びL‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)の混合物からのジアステレオマー混合物として、又は個々のジアステレオマーD‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)、L‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)、L‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)又はL‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)として、家禽、豚、反芻動物用の、しかし同様に水産養殖における雑食性、肉食性及び草食性の魚及び甲殻類用のI及びIIの使用である。更に、飼料添加剤として、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)又はDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)の使用によって、高生産率乳牛での乳生産を上昇させることができる。
【0031】
即ち、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)又はDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)が、L‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)及び L‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)の50:50混合物からの、又はD‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)の50:50混合物からのジアステレオマー混合物として、又は各々、単独のジアステレオマーとして、生理学的条件下に酵素的に、鶏、豚、乳牛、魚、例えば、コイ及びマスから、しかし甲殻類、例えば、Litopenaeus vannamei(バナメイ)及びMacrobrachium Rosenbergii(オニテナガエビ)からも、遊離のD‐メチオニン又はL‐メチオニン及び各々L‐EAAに分解され得ることを発明的に示すことができた(図式2参照)。
【0032】
そのために、相応する消化酵素を、例えば、鶏、雑食性コイ、肉食性マス及び雑食性バナメイ(Litopenaeus vannamei)から分離し、かつ最適化試験管内(in vitro)試験で、生理学的に比較可能な条件下に、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)の50:50混合物からのジアステレオマー混合物として、DL‐メチオニル‐L‐EAA(II)と、又はL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)及びL‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)の50:50混合物からのL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)又は各々単独のジアステレオマーとして、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)、L‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)、L‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)又はL‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)と反応させる。L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)又はDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)の分解の本発明による特殊性は、2種の天然ジアステレオマーL‐EAA‐L‐メチオニン(LL‐I)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)のほかに、2種の非天然ジアステレオマー、L‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)及びD‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)を生理学的条件下に分解させることもできることにある(図1〜17参照)。このことは、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)の混合物、D‐メチオニル‐L‐EAA(DL‐II)及びL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)の混合物(図12参照)又はL‐メチオニル‐L‐EAA(LL‐II)及びL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)の混合物(図12参照)、しかし又全ジアステレオマーの全混合物の使用にも、各々単一のジアステレオマーにも当てはまる(図1〜11及び13〜17参照)。
【0033】
【化3】
【0034】
天然ジペプチドL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)を、肉食性ニジマス、雑食性カガミゴイ、雑食性バナメイ及び鶏からの消化酵素で消化した(表1参照)。
【0035】
【表1】
【0036】
そのために、魚及び小エビの消化管から酵素を分離した。引き続いて、ジペプチド、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)を、取得した酵素溶液で消化した。様々な種類のジペプチドの消化性のより良好な比較可能性のために、試験管内消化検査について同一条件を選択した(37℃、pH9)。
【0037】
全ての天然ジペプチドを、肉食性ニジマス(図3及び4参照)、雑食性カガミゴイ(図1及び2参照)、雑食性バナメイ(図5及び6参照)及び鶏(図16参照)の消化酵素によって分解した。L‐Met‐L‐EAA(LL‐II)の分解は、類似のL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)ジペプチドの分解よりも、通常はやや遅く経過する。
【0038】
様々な種類の魚の消化酵素による、非天然のペプチドL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の酵素分解を、できるだけ包括して示すために、実験マトリックスを試験した(表2参照)。
【0039】
【表2】
【0040】
そのために、魚及び小エビの消化管から酵素を分離した。引き続いて、化学的合成ジペプチドL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)を、取得した酵素溶液と反応させた。様々な種類のジペプチドの消化性のより良好な比較可能性のために、試験管内消化検査について同一条件を選択した(37℃、pH9)。
【0041】
全ての非天然ジペプチドL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)を、雑食性カガミゴイ(図7参照)、草食性ソウギョ(図8参照)、肉食性ニジマス(図11参照)、雑食性バナメイ(図10参照)及び鶏(図17参照)の消化酵素により分解した。D‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の分解は、類似のL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)ジペプチドの分解よりもやや遅く経過した。それに対して、ティラピア(図9参照)の消化酵素では、D‐Met‐L‐EAA(DL‐II)は、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)ジペプチドよりも早く分解される。ジペプチドD‐Met‐L‐Lys(DL‐IIe)及びL‐Lys‐D‐Met(LD‐Ie)が特に速く消化される。5時間後に既に、試験管内反応条件下に、リジンを含むジペプチドの大部分が使用された全消化酵素によって分解された。
【0042】
得られた結果から、各々使用された非天然ジペプチド(図7〜11及び17参照)が、様々な種類の魚、小エビ及び鶏の消化酵素によって分解され得ることが明らかである。この際、肉食性ニジマス、雑食性カガミゴイ、ティラピア、バナメイ、草食性ソウギョ及び鶏からの酵素の使用によって、非天然ジペプチドL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)が、試験管内で、明らかに異なった消化系が賦与されている全ての動物によって分解され得ることが実証された。飼料へのL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及び/又はD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの添加によって、欠失した必須アミノ酸(DL‐Met及びL‐EAA)を同様に照準的に供給することができる。
【0043】
アミノ酸L‐トリプトファン及びDL‐メチオニンからのジペプチドの例で、天然及び非天然ジペプチドを含むジペプチド混合物の分解を試験した。2種の非天然ジペプチドL‐Trp‐D‐Met(LD‐Ij)及びD‐Met‐L‐Trp(DL‐IIj)を含むジアステレオマー混合物は、天然ジペプチドL‐Met‐L‐Trp(LL‐IIj)及び非天然ジペプチドL‐Trp‐D‐Met(LD‐Ij)を含む混合物と全く同様に完全に分解され得た。"徐放"効果は、LD‐Ij/DL‐IIj混合物では、LD‐Ij/LL‐IIj混合物におけるよりももっと明らかに顕著であり、即ち、アミノ酸トリプトファン及びメチオニンは、ジペプチドの酵素的消化によって、比較的に相互により遅く、かつより長い時間に渡って遊離される。
【0044】
更に課題は、一般式 DL‐メチオニル‐DL‐EAA又はDL‐EAA‐DL‐メチオニンのジペプチド又はその塩によって解明され、この際、EAAは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択される、有利にL‐立体配置のアミノ酸である。この際、D‐立体配置又はL‐立体配置のメチオニル基が同様に有利である。これには、各々立体配置DD、LD、DL及びLLのジペプチドMet‐Lys、Met‐Thr、Met‐Trp、Met‐His、Met‐Val、Met‐Leu、Met‐Ile、Met‐Phe、Met‐Arg、Met‐Cys及びMet‐Cystin、及び各々立体配置DD、LD、DL及びLLのLys‐Met、Thr‐Met、Trp‐Met、His‐Met、Val‐Met、Leu‐Met、Ile‐Met、Phe‐Met、Arg‐Met、Cys‐Met及びCystin‐Metが属する。
【0045】
更に課題は、式 DD/LL/DL/LD‐I又はDD/LL/DL/LD‐II:
【化4】
による1個だけのメチオニル基を含有するジペプチドを、アミノ酸と一般式III〜V:
【化5】
の尿素誘導体との反応によって製造する方法によって解明される[式中、Rは、次のように定義される:
Ia〜Va: R=1‐メチルエチル‐ (バリン)
Ib〜Vb: R=2‐メチルプロピル‐ (ロイシン)
Ic〜Vc: R=(1S)‐1‐メチルプロピル‐ (イソロイシン)
Id〜Vd: R=(1R)‐1‐ヒドロキシエチル‐ (スレオニン)
Ie〜Ve: R=4‐アミノブチル‐ (リジン)
If〜Vf: R=3‐[(アミノイミノメチル)‐アミノ]プロピル‐
(アルギニン)
Ig〜Vg: R=ベンジル‐ (フェニルアラニン)
Ih〜Vh: R=(1H‐イミダゾル‐4‐イル)メチル‐ (ヒスチジン)
Ij〜Vj: R=(1H‐インドル‐3‐イル)メチル‐ (トリプトファン)
Ik〜Vk: R=‐CH2‐SH (システイン)
Im〜Vm: R=‐CH2‐S‐S‐CH2‐CNH2‐COOH (シスチン)
IIIn〜Vn: R=‐CH2‐CH2‐S‐CH3 (メチオニン)、
この際、尿素誘導体III、IV及びV中の基R1及びR2は、次のように定義される:
IIIa‐n:R1=COOH、R2=NHCONH2
IVa‐n:R1=CONH2、R2=NHCONH2
Va‐n:R1‐R2=‐CONHCONH‐
及び
この際、Rはメチオニル基を表わし、かつ添加されるアミノ酸は、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるか、又は、
添加されるアミノ酸はメチオニンであり、かつRは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸残基である]。
【0046】
有利な1実施態様で、メチオニンヒダントイン又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントインが、出発生成物として使用される又は中間生成物として中間的に生成される。
【0047】
本発明による方法の1実施態様で、メチオニンヒダントイン(Vn)及び水を含む溶液をアミノ酸と塩基性条件下に反応させる、又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントイン及び水を含有する溶液をメチオニンと塩基性条件下に反応させることが有利である。
【0048】
この際、本発明による方法のもう1つの実施態様で、メチオニンヒダントイン(Vn)を出発生成物として使用する、又は中間生成物として中間的に生成させることが有利である。図式3に、メチオニンヒダントイン(Vn)、N‐カルバモイルメチオニン(IIIn)又はN‐カルバモイルメチオニンアミド(IVn)から直接、DL‐メチオニル‐L‐EAA(II)の有利な製造が示されていて、かつ方法Aが包含されている。
【0049】
【化6】
【0050】
更に、尿素誘導体を含有する溶液のpH値を、7〜14、有利に8〜13及び極めて特に有利に9〜12に調整することが有利である。
【0051】
有利な方法で、反応は、30〜200℃の温度で、有利に80〜170℃の温度で及び特に有利に120〜160℃の温度で行なわれる。
【0052】
更に、反応は、圧力下に、有利に2〜100バールの圧力で、特に有利に4〜60バールの圧力で、極めて特に有利に8〜40バールの圧力で実施されることが有利である。
【0053】
もう1つの有利な方法で、メチオニンヒダントイン及び水を含有する溶液又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントイン及び水を含有する溶液を、1種以上の化合物IIIa‐n、IVa‐n及びVa‐nから前以て生成させておく。
【0054】
選択的に、相応するアミノニトリル、シアンヒドリン又は相応するアルデヒド、青酸及びアンモニアを含む混合物又は相応するアルデヒド、アンモニウム塩及びシアニド塩を含む混合物を同様にヒダントイン前駆体として使用することもできる。
【0055】
本発明による方法のもう1つの有利な実施態様は、次の段階を包含する:
a)式IIIa‐n、IVa‐n又はVa‐nによる尿素誘導体とアミノ酸との、式:
【化7】
[式中、Rは前記と同様に定義される]のジケトピペラジンVIa‐mへの反応;
b)ジケトピペラジンVIの、式 DD/LL/DL/LD‐I及びDD/LL/DL/LD‐II:
【化8】
[式中、Rは前記と同様に定義される]を有するジペプチドを含む混合物への反応。
【0056】
式IIIn、IVn及びVnによる尿素誘導体の、ジケトピペラジンVIa‐mへの反応及びジケトピペラジンの、有利なジペプチドL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を有するジアステレオマー混合物への更なる反応は、図式4に記載されている:
【化9】
【0057】
ジケトピペラジンVIa‐mの、有利なジペプチドL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を含む混合物への反応。この方法は、図式4に示された方法B、C及びDを包含する。これらの方法で、各々ジケトピペラジンVIa‐mは、中間生成物として生成される。
【0058】
尿素誘導体とアミノ酸とのジケトピペラジンへの反応は、20℃〜200℃、有利に40℃〜180℃及び特に有利に100℃〜170℃で実施されることが有利である。
【0059】
有利な1方法で、尿素誘導体とアミノ酸とのジケトピペラジンへの反応は、圧力下に、有利に2〜90バールの圧力で、特に有利に4〜70バールの圧力で、極めて特に有利に5〜50バールの圧力で行なわれる。
【0060】
尿素誘導体とアミノ酸とのジケトピペラジンへの反応は、有利に塩基が存在して行なわれる。この際、塩基は、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、KHCO3、K2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバメート塩、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群から選択されることが有利である。
【0061】
もう1つの有利な方法で、ジケトピペラジンへの反応は、式:
【化10】
[式中、Rは、メチオニル基を表わす]の尿素誘導体と、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸との反応によって、又は式:
【化11】
[式中、Rは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸残基である]の尿素誘導体とアミノ酸メチオニンとの反応によって行なわれる。
【0062】
尿素誘導体のジケトピペラジンへの変換がメチオニンとの反応によって行なわれる有利な方法で、尿度誘導体対メチオニンの1:100〜1:0.5の比率が特に有利である。
【0063】
もう1つの有利な方法で、ジケトピペラジンの、式I及びIIのジペプチドを含む混合物への変換は、酸性加水分解によって行なわれる。ジケトピペラジンの、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を含む混合物への変換は、酸性加水分解によって有利に行なわれる。
【0064】
この際、酸性加水分解は、鉱酸、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、燐酸、カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の群から有利に選択される酸が存在して実施される。
【0065】
本発明による方法の他の1実施態様で、ジケトピペラジンの、式(I)及び(II)のジペプチドを含む混合物への変換は、塩基性加水分解によって行なわれる。ジケトピペラジンから、L‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を含む混合物への変換は、塩基性加水分解によって有利に行なわれる。
【0066】
塩基性加水分解は、有利にpH7〜14、特に有利にpH8〜13、極めて特に有利にpH9〜12で実施される。この際、完全なラセミ化が起こり得る。塩基性条件は、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバメート塩、KHCO3、K2CO3、カルボネート、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群から有利に選択される物質の使用下に調整され得る。
【0067】
酸性又は塩基性加水分解は、50℃〜200℃、有利に80℃〜180℃及び特に有利に90°〜160℃の温度で有利に実施される。
【0068】
有利な1方法で、尿素誘導体III〜Vのアミノ酸残基は、D‐立体配置又はL‐立体配置で、又はD‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物で存在し、尿素誘導体がメチオニンから誘導されている場合には、D‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物で有利に存在する。
【0069】
もう1つの有利な方法で、尿素誘導体III〜Vのアミノ酸残基は、D‐立体配置又はL‐立体配置で、又はD‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物であり、尿素誘導体が、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸から誘導されている場合には、有利にL‐立体配置である。
【0070】
もう1つの有利な方法で、LL、DL、LD及びDDの混合物として、有利にLL、LD、DLの混合物として存在するジペプチドが得られる。
【0071】
有利な1方法で、ジケトピペラジンを加水分解の前に分離させる。この際、ジケトピペラジンを、有利に−30〜120℃の温度で、特に有利に10〜70℃の温度で反応溶液から結晶化によって分離させることが有利である。
【0072】
塩基性反応溶液から、式 DD/LL/DL/LD‐(I)及びDD/LL/DL/LD‐(II)のジペプチドのジアステレオマー混合物、有利にL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を含むジアステレオマー混合物を分離させるために、これを酸性化させ、かつ結晶化又は沈殿によって取得する。この際、2〜10のpH値が有利であり、3〜9のpH値が特に有利であり、式I及びIIの各ジペプチドの相応する等電点が極めて特に有利である。この際、有利に、鉱酸、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、燐酸、カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の群からの酸を酸性化のために使用することができる。
【0073】
酸性反応溶液から、式 DD/LL/DL/LD‐(I)及びDD/LL/DL/LD‐(II)のジペプチドのジアステレオマー混合物、有利にL‐EAA‐DL‐メチオニン(I)及びDL‐メチオニル‐L‐EAA(II)を含むジアステレオマー混合物を分離させるために、塩基の添加によって中和させ、かつ結晶化又は沈殿によって取得する。この際、2〜10のpH値が有利であり、3〜9のpH値が特に有利であり、式I及びIIの各ジペプチドの相応する等電点が極めて特に有利である。この際、中和のために、NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基、NH4OH、カルバメート塩、KHCO3、K2CO3、カルボネート、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群からの塩基が有利に使用される。
【0074】
本発明による方法のもう1つの択一的実施態様は、保護基技法の使用下に、非天然ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニンIa‐Ij又はD‐メチオニル‐L‐EAAIIa‐IIjの合成を包含する。即ち、ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)の合成のために、遊離L‐EAAのアミノ基を、先ずBOC‐保護基(t‐ブトキシカルボニル‐)で保護した。択一的に、Z‐保護基(ベンゾキシカルボニル‐)を効果的に使用することもできた。D‐メチオニンをメタノールでエステル化させ、それによって、酸官能基を保護した。引き続いて、BOC‐保護又はZ‐保護のL‐EAAと、D‐メチオニンメチルエステルとのカップリング反応を、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)の使用下に実施した(図式5参照)。
【0075】
【化12】
【0076】
BOC‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMe又はZ‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMeの精製後に、緩和な塩基性条件下に、先ずメチルエステルを分離させた。最後に、BOC‐保護基又はZ‐保護基を氷酢酸中のHBrで酸性的に離脱させ、遊離ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)を再沈殿及び再結晶によって精製した(図式6)。
【0077】
【化13】
【0078】
択一的に、BOC‐保護のジペプチドメチルエステルBOC‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMeを、同様に先ず氷酢酸中のHBrと反応させ、そうしてBOC‐保護基を除去することもできた。蒸発後に、引き続いて、メチルエステルを希塩酸溶液の添加によって分離させることができた。次いで、遊離ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)を再び再沈殿及び再結晶によって精製することができた(図式6参照)。
【0079】
全工程をジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニンIa‐Ijにも応用することができた。この際、L‐EAA及びBOC‐保護又はZ‐保護のD‐メチオニンのメチルエステルを使用した。
【0080】
挙げられた全ての本発明の方法は、有利に水性媒体中で実施される。
【0081】
更に、本発明の方法は、当業者に公知のバッチ法で、又は連続法で実施され得る。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】カガミゴイからの酵素を用いたL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)ジペプチドの分解を示す。
【図2】カガミゴイからの酵素を用いたL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図3】ニジマスの酵素を用いたL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)ジペプチドの分解を示す。
【図4】ニジマスの酵素を用いたL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図5】バナメイの酵素を用いたL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)ジペプチドの分解を示す。
【図6】バナメイの酵素を用いたL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図7】カガミゴイの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図8】ソウギョの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図9】ティラピアの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図10】バナメイの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図11】ニジマスの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図12】カガミゴイの酵素を用いたL‐Trp‐D‐Met/D‐Met‐L‐Trp(LD‐Ij/DL‐IIj)及びL‐Trp‐D‐Met/L‐Met‐L‐Trp(LD‐Ij/LL‐IIj)を含む混合物の分解を示す。
【図13】カガミゴイからの1%の酵素溶液での天然L‐Ile‐L‐Met(LL‐Ic)又はL‐Met‐L‐Ile(LL‐IIc)ジペプチドの、及び10%の酵素溶液での非天然L‐Ile‐D‐Met(LD‐Ic)又はD‐Met‐L‐Ile(DL‐IIc)ジペプチドの試験管内分解を示す。
【図14】カガミゴイからの1%の酵素溶液での天然L‐Thr‐L‐Met(LL‐Id)又はL‐Met‐L‐Thr(LL‐IId)ジペプチドの、及び10%の酵素溶液での非天然L‐Thr‐D‐Met(LD‐Id)又はD‐Met‐L‐Thr(DL‐IId)ジペプチドの試験管内分解を示す。
【図15】カガミゴイからの1%の酵素溶液での天然L‐Lys‐L‐Met(LL‐Ie)又はL‐Met‐L‐Lys(LL‐IIe)ジペプチドの、及び10%の酵素溶液での非天然L‐Lys‐D‐Met(LD‐Ie)又はD‐Met‐L‐Lys(DL‐IIe)ジペプチドの試験管内分解を示す。
【図16】鶏からの酵素を用いたL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【図17】鶏からの酵素を用いたL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)ジペプチドの分解を示す。
【実施例】
【0083】
例1:
保護基技法の使用下での、非天然ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニンIa‐Ij又はD‐メチオニル‐L‐EAAIIa‐IIjの一般的合成法
この際、ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)の合成のために、遊離L‐EAAのアミノ基を先ずBOC‐保護基(t‐ブトキシカルボニル‐)で保護した。択一的に、Z‐保護基(ベンゾキシカルボニル‐)も効果的に使用することができた。D‐メチオニンをメタノールでエステル化させ、それによって、酸官能基を保護した。続いて、BOC‐保護又はZ‐保護のL‐EAAとD‐メチオニンメチルエステルとのカップリング反応を、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)の使用下に実施した(図式5参照)。
【0084】
【化14】
【0085】
BOC‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMe又はZ‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMeの精製後に、緩和な塩基性条件下に、先ずメチルエステルを分離した。最終的にBOC‐保護基又はZ‐保護基を、氷酢酸中のHBrで酸性的に離脱させ、遊離ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)を再沈殿及び再結晶によって精製した(図式6参照)。
【0086】
【化15】
【0087】
択一的に、BOC‐保護のジペプチドメチルエステルBOC‐L‐EAA‐D‐メチオニン‐OMeを同様に先ず氷酢酸中のHBrと反応させ、そうしてBOC‐保護基を除去することができた。蒸発後に、引き続き、メチルエステルを希塩酸溶液の添加によって分離することができた。次いで、遊離ジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニン(LD‐I)を再び再沈殿及び再結晶によって精製することができた(図式6参照)。
【0088】
全工程をジペプチドL‐EAA‐D‐メチオニンIa‐Ijにも応用することができた。この際、L‐EAA及びBOC‐保護又はZ‐保護のD‐メチオニンのメチルエステルを使用した。
【0089】
例2:
a)Z‐D‐Metの合成法
D‐メチオニン30.0g(0.201モル)及びNa2CO3 42.4g(0.4モル)を、水200ml中に前以て入れ、氷浴中0℃に冷却した。その後に、カルボキシベンジルオキシクロリド(Cbz‐Cl)51.2g(0.3モル)を徐々に添加し、反応混合物を室温で3時間攪拌した。引き続き、希塩酸で酸性化させ、反応溶液を各々MTBE50mlで3回抽出した。合一した有機相をMgSO4上で乾燥させ、回転蒸発器で濃縮させた。取得した残渣をジエチルエーテル/エチルアセテートから再結晶させ、真空中30℃で乾燥させた。カルボキシベンジルオキシ‐D‐メチオニン(Z‐D‐Met)36.4g(64%)を、白色結晶性固体として単離した。
【0090】
b)Z‐L‐EAAの一般的合成法
L‐EAA50ミリモル及びNa2CO3 10.6g(100ミリモル)を、水50ml中に前以て入れ、氷浴中0℃に冷却した。その後に、カルボキシベンジルオキシクロリド(Cbz‐Cl)12.8g(75ミリモル)を徐々に添加し、反応混合物を室温で3時間攪拌した。引き続き、希塩酸で酸性化させ、反応溶液を各々MTBE25mlで3回抽出した。合一した有機相をMgSO4上で乾燥させ、回転蒸発器で濃縮させた。取得した残渣を再結晶させ、真空中30℃で乾燥させた。
【0091】
例3:
D‐Met‐OMe x HClの合成法
D‐メチオニン50.0g(0.335モル)を、メタノール500ml中に懸濁させ、適度な速度のHClガスを飽和まで流通させた。この際、メチオニンが溶解し、溶液は55℃に発熱した。引き続き、反応混合物を1晩室温で攪拌した。翌朝に、混合物を回転蒸発器上40℃で濃縮乾固させ、取得した残渣をジエチルエーテルから2回再結晶させた。D‐メチオニンメチルエステル塩酸塩47.1g(86%)を白色結晶性固体として単離した。
【0092】
例4:
L‐EAA‐OMe x HClの一般的合成法
L‐EAA0.3モルを、メタノール500ml中に懸濁させ、適度な速度のHClガスを飽和まで流通させた。この際、アミノ酸が溶解し、溶液は50〜60℃に発熱した。引き続き、反応混合物を1晩室温で攪拌した。翌朝に、混合物を回転蒸発器上40℃で濃縮乾固させ、取得した残渣をジエチルエーテル又はジエチルエーテル/メタノール混合物から2回再結晶させた。
【0093】
例5:
PG‐D‐Met‐L−EAA‐OMe(PG‐DL‐II‐OMe)群の化合物の一般的合成法(カップリング反応)
L‐EAA‐OMe塩酸塩20.0ミリモルを、クロロホルム30ml及びメタノール5mlを含む混合物中に懸濁させ、K2CO3 4.15g(30ミリモル)を加え、室温で1時間攪拌した。引き続いて、塩を濾過し、少量のクロロホルムで洗浄した。濾液の濃縮後に、取得した残渣をテトラヒドロフラン50ml中に入れ、DCC4.37g(21.0ミリモル;1.05当量(eq.))及びZ‐D‐メチオニン5.66g(20.0ミリモル)を加え、室温で16時間(h)に渡り攪拌した。その後に、反応混合物に氷酢酸3mlを加え、30分間攪拌し、生じた白色固体(N,N’‐ジシクロヘキシル尿素)を濾過した。濾液を回転蒸発器で濃縮させ、場合により生じるN,N’‐ジシクロヘキシル尿素を濾過した。引き続いて、油状残渣をクロロホルム/n‐ヘキサンから再結晶させ、油ポンプ真空中で乾燥させた。
【0094】
PG:保護基(Z‐保護基又はBOC‐保護基)
5a)Z‐D‐Met‐L‐Val‐OMe(Z‐DL‐IIa‐OMe)
【化16】
【0095】
実験式:C19H28N2O5S(396.50g/モル)、収量:4.60g(58%)、純度:97%、白色固体。
【0096】
【0097】
5b)Z‐D‐Met‐L‐Leu‐OMe(Z‐DL‐IIb‐OMe)
【化17】
【0098】
実験式:C20H30N2O5S(410.53g/モル)、収量:5.40g(66%)、純度:97%、白色固体。
【0099】
【0100】
5c)Z‐D‐Met‐L‐Ile‐OMe(Z‐DL‐IIc‐OMe)
【化18】
【0101】
実験式:C20H30N2O5S(410.53g/モル)、収量:5.09g(62%)、純度:97%、白色固体。
【0102】
【0103】
5d)Z‐D‐Met‐L‐Thr‐OMe(Z‐DL‐IId‐OMe)
【化19】
【0104】
実験式:C18H26N2O6S(398.47g/モル)、収量:2.14g(36%)、純度:98%、やや帯黄色の固体。
【0105】
【0106】
5e)Z‐D‐Met‐L‐Lys(Boc)‐OMe(Z‐DL‐IIe(Boc‐OMe)
【化20】
【0107】
実験式:C25H39N3O7S(525.66g/モル)、収量:10.86g(33%)、純度:95%、やや帯黄色の固体。
【0108】
【0109】
5f)Z‐D‐Met‐L‐Phe‐OMe(Z‐DL‐IIg‐OMe)
【化21】
【0110】
実験式:C23H28N2O5S(444.54g/モル)、収量:3.73g(42%)、純度:95%(HPLC)、白色固体。
【0111】
【0112】
5g)Z‐D‐Met‐L‐His‐OMe(Z‐DL‐IIh‐OMe)
【化22】
【0113】
実験式:C20H26N4O5S(434.51g/モル)、収量:2.35g(27%)、純度:95%(HPLC)、やや帯黄色の固体。
【0114】
【0115】
5h)Z‐D‐Met‐L‐Trp‐OMe(Z‐DL‐IIj‐OMe)
【化23】
【0116】
実験式:C25H29N3O5S(483.58g/モル)、収量:5.71g(59%)、純度:98%(HPLC)、やや帯黄色の固体。
【0117】
【0118】
例6:
PG‐L‐EAA‐D‐Met‐OMe(PG‐LD‐I‐OMe)群の化合物の一般的合成法(カップリング反応)
D‐メチオニンメチルエステル塩酸塩3.99g(20.0ミリモル)を、クロロホルム30ml及びメタノール5mlを含む混合物中で懸濁させ、K2CO3 4.15g(30ミリモル)を加え、室温で1時間攪拌した。引き続いて、塩を濾過し、少量のクロロホルムで洗浄した。濾液の濃縮後に、取得した残渣をテトラヒドロフラン50ml中に入れ、DCC4.37g(21.0ミリモル;1.05当量)及び相応するPG‐L‐EAA(PG‐L‐アミノ酸)20.0ミリモルを加え、室温で16時間に渡り攪拌した。その後に、反応混合物に氷酢酸3mlを加え、30分間攪拌し、生じた白色固体(N,N’‐ジシクロヘキシル尿素)を濾過した。濾液を回転蒸発器で濃縮させ、場合により生じるN,N’‐ジシクロヘキシル尿素を濾過した。引き続いて、油状残渣をクロロホルム/n‐ヘキサンから2回再結晶させ、油ポンプ真空中で乾燥させた。
【0119】
PG:保護基(Z‐保護基又はBOC‐保護基)
6a)Z‐L‐Val‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ia‐OMe)
【化24】
【0120】
実験式:C19H28N2O5S(396.50g/モル)、収量:3.01g(38%)、純度:95%(HPLC)、白色固体。
【0121】
【0122】
6b)Z‐L‐Leu‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ib‐OMe)
【化25】
【0123】
実験式:C20H30N2O5S(410.53g/モル)、収量:4.48g(55%)、純度:96%(HPLC)、白色固体。
【0124】
【0125】
6c)Z‐L‐Ile‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ic‐OMe)
【化26】
【0126】
実験式:C20H30N2O5S(410.53g/モル)、収量:3.89g(47%)、純度:97%(HPLC)、白色固体。
【0127】
【0128】
6d)Z‐L‐Thr‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Id‐OMe)
【化27】
【0129】
実験式:C18H26N2O6S(398.47g/モル)、収量:2.47g(31%)、純度:99%(HPLC)、やや帯黄色の固体。
【0130】
【0131】
6e)BOC‐L‐Lys(BOC)‐D‐Met‐OMe(BOC‐LD‐Ie(BOC)‐OMe)
【化28】
【0132】
実験式:C22H41N3O7S(491.64g/モル)、収量:5.22g(53.1%)、純度:97%(HPLC)、白色無定形固体。
【0133】
【0134】
6f)Z‐L‐Phe‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ig‐OMe)
【化29】
【0135】
実験式:C23H28N2O5S(444.54g/モル)、収量:3.51g(40%)、純度:99%(HPLC)、白色固体。
【0136】
【0137】
6g)BOC‐L‐Phe‐D‐Met‐OMe(BOC‐LD‐Ig‐OMe)
【化30】
【0138】
実験式:C20H30N2O5S(410.53g/モル)、収量:4.03g(49%)、純度:98%(HPLC)、白色固体。
【0139】
【0140】
6h)Z‐L‐His‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ih‐OMe)
【化31】
【0141】
実験式:C20H26N4O5S(434.51g/モル)、収量:1.65g(19%)、純度:95%(HPLC)、やや帯黄色の固体。
【0142】
【0143】
6i)Z‐L‐Trp‐D‐Met‐OMe(Z‐LD‐Ij‐OMe)
【化32】
【0144】
実験式:C25H29N3O5S(483.58g/モル)、収量:5.50g(57%)、純度:99%(HPLC)、やや帯黄色の固体。
【0145】
【0146】
6j)BOC‐L‐Trp‐D‐Met‐OMe(BOC‐LD‐Ij‐OMe)
【化33】
【0147】
実験式:C22H31N3O5S(449.56g/モル)、収量:5.91g(66%)、純度:99%(HPLC)、白色固体。
【0148】
【0149】
例7:
PG‐L‐EAA‐D‐Met(PG‐LD‐I)及びPG‐D‐Met‐L‐EAA(PG‐DL‐II)群の化合物の一般的合成法(メチルエステル分離)
PG‐L‐EAA‐D‐Met‐OMe(PG‐LD‐I‐OMe)又はPG‐D‐Met‐L‐EAA‐OMe(PG‐DL‐II‐OMe)10.0ミリモルを、水15ml及びメタノール200ml中で懸濁させ、NaOH1.2当量(12.0ミリモル)を加える(1N NaOH12.0ml)。2時間の攪拌後に、均質の反応溶液を希塩酸で酸性化させ、メタノールを回転蒸発器で溜去させる。ここで晶出する白色固体を濾過し、水20mlで洗浄しかつ再結晶させる。
【0150】
PG:保護基(Z‐保護基又はBOC‐保護基)
例8:
L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)群の化合物の一般的合成法(N‐末端のZ‐保護基分離)
Z‐L‐EAA‐D‐Met(Z‐LD‐I)又はZ‐D‐Met‐L‐EAA(Z‐LD‐II)5.0ミリモルを、氷酢酸50ml中に溶かし、ジメチルスルフィド18.5ml(15.6g;250ミリモル;50当量)及び酢酸中33%のHBr(1.65g;4.0当量)5.0g(3.6ml)を加えた。反応の終了後に、反応溶液を回転蒸発器で濃縮させた。残渣をメタノール約50ml中に溶かし、ナトリウムメタンチオレート3.5g(50ミリモル;10当量)を加えた。室温で20分間攪拌後に、溶液を濃塩酸で中和させ、溶液を回転蒸発器で濃縮させた。残渣を水40ml中に入れ、各ジエチルエーテル40mlで3回抽出した。水相を回転蒸発器で濃縮させ、この際、嵩張った白色固体が生じた。ジペプチドを吸引濾過し、少量の水で洗浄しかつ真空で乾燥させた。
【0151】
例9:
L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)群の化合物の一般的合成法(N‐末端のBOC‐保護基分離)
BOC‐L‐EAA‐D‐Met(BOC‐LD‐I)又はBOC‐D‐Met‐L‐EAA(BOC‐LD‐II)5.0ミリモルを、氷酢酸50ml中に溶かし、酢酸中33%のHBr(1.65g;4.0当量)5.0g(3.6ml)を加えた。反応の終了後に、反応溶液を回転蒸発器で濃縮させた。残渣を水40ml中に入れ、各ジエチルエーテル40mlで3回抽出した。水相を氷浴中での連続冷却中に徐々に20%のNaOH溶液で中和した。溶液を各ジエチルエーテル40mlで3回洗浄し、水相を回転蒸発器で濃縮させ、この際、嵩張った白色固体が生じた。ジペプチドを吸引濾過し、少量の水で洗浄しかつ真空で乾燥させた。
【0152】
9a)D‐Met‐L‐Leu(DL‐IIb)
【化34】
【0153】
収量:860mg(66%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体。
【0154】
【0155】
9b)D‐Met‐L‐Ile(DL‐IIc)
【化35】
【0156】
収量:900mg(69%)。純度:99%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0157】
9c)D‐Met‐L‐Thr(DL‐IId)
【化36】
【0158】
収量:640mg(51%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0159】
9d)D‐Met‐L‐Lys x 2HCl(DL‐IIe‐2HCl)
【化37】
【0160】
収量:613mg(49%)、純度:97%(HPLC)、帯黄色固体
【0161】
9e)D‐Met‐L‐Phe(DL‐IIg)
【化38】
【0162】
収量:930mg(63%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0163】
9f)D‐Met‐L‐Trp(DL‐IIj)
【化39】
【0164】
収量:1.38g(82%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0165】
9g)L‐Leu‐D‐Met(LD‐Ib)
【化40】
【0166】
収量:710mg(54%)、純度:99%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0167】
9h)L‐Ile‐D‐Met(LD‐Ic)
【化41】
【0168】
収量:790mg(59%)、純度:97%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0169】
9i)L‐Thr‐D‐Met(LD‐Id)
【化42】
【0170】
収量:690mg(55%)、純度:99%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0171】
9j)L‐Lys‐D‐Met x 2HCl(LD‐Ie‐2HCl)
【化43】
【0172】
収量:676mg(54%)、純度:96%(HPLC)、無色結晶
【0173】
9k)L‐Phe‐D‐Met(LD‐Ig)
【化44】
【0174】
収量:880mg(59%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0175】
9l)L‐Trp‐D‐Met(LD‐Ij)
【化45】
【0176】
収量:1.40g(83%)、純度:98%(HPLC)、嵩張った白色固体
【0177】
例10:
KOHを用いた、5‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐2,4‐イミダゾリジンジオン(メチオニンヒダントイン)(Vn)及びL‐イソロイシンからMet‐Ile(IIc)のジアステレオマー混合物の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、5‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐2,4‐イミダゾリジンジオン(Vn)17.2g(0.09モル、純度:91%)及び85%のKOH11.9g(0.8モル)を水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は8バールに上昇した。反応の終了後に、オートクレーブを冷却し、生じた固体を濾過し、少量の水で洗浄した。濾液に、適度なCO2流を流通させた。ここで生じる固体を再び吸引濾過し、少量の冷水で洗浄し、油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体7.3g(理論値の31%)。1H‐NMRは、L‐Met‐L‐Ile(LL‐IIc)及びD‐Met‐L‐Ile(DL‐IIc)の重層した1H‐NMRスペクトルと一致した。(例9b参照)。
【0178】
例11:
KOHを用いた、N‐カルバモイルメチオニン(IIIn)及びL‐イソロイシンから、Met‐Ile(IIc)のジアステレオマー混合物の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、N‐カルバモイルメチオニン(IIIn)17.5g(0.09モル、純度:99%)及び85%のKOH11.9g(0.18モル)を水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は7バールに上昇した。反応の終了後に、オートクレーブを冷却し、生じた固体を濾過し、少量の水で洗浄した。濾液を10%の硫酸で中和し、ここで生じる固体を吸引濾過し、少量の冷水で洗浄しかつ油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体6.4g(理論値の27%)。1H‐NMRは、L‐Met‐L‐Ile(LL‐IIc)及びD‐Met‐L‐Ile(DL‐IIc)の重層した1H‐NMRスペクトルと一致した。(例9b参照)。
【0179】
例12:
KOHを用いた、2‐[(アミノカルボニル)アミノ]‐4‐(メチルチオ)ブタン酸アミド(N‐カルバモイルメチオニンアミド)(IVn)及びL‐イソロイシンから、Met‐Ile(IIc)のジアステレオマー混合物の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、2‐[(アミノカルボニル)アミノ]‐4‐(メチルチオ)ブタン酸アミド(IVn)17.4g(90ミリモル、純度:98.5%)及び85%のKOH11.9g(0.8モル)を水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は7バールに上昇した。反応の終了後に、オートクレーブを冷却し、生じた固体を濾過し、少量の水で洗浄した。濾液を半濃塩酸で中和し、ここで生じる固体を吸引濾過し、少量の冷水で洗浄し、油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体8.0g(理論値の34%)。1H‐NMRは、L‐Met‐L‐Ile(LL‐IIc)及びD‐Met‐L‐Ile(DL‐IIc)の重層した1H‐NMRスペクトルと一致した。(例9b参照)。
【0180】
例13:
5‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐2,4‐イミダゾリジンジオン(メチオニンヒダントイン)(Vn)及びL‐イソロイシンから、3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、5‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐2,4‐イミダゾリジンジオン(Vn)17.2g(0.09モル、純度:91%)及び(NH4)HCO3 7.1g(0.9モル)を、水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は上昇した。時折、ガスを放出させることによって、圧力を8バールに一定保持した。反応の終了後に、オートクレーブを氷浴中で冷却した。得られる懸濁液を引き続いて濾過し、濾過した固体を水で数回洗浄し、油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体としてVIc9.9g(理論値の45%)。
【0181】
【化46】
【0182】
【0183】
例14:
N‐カルバモイルメチオニン(IIIn)及びL‐イソロイシンから、3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、N‐カルバモイルメチオニン(IIIn)17.5g(0.09モル、純度:99%)及び(NH4)HCO3 7.1g(0.9モル)を、水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は上昇した。時折、ガスを放出させることによって、圧力を8バールに一定保持した。反応の終了後に、オートクレーブを氷浴中で冷却した。得られる懸濁液を引き続いて濾過し、濾過した固体を水で数回洗浄し、油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体として化合物VIc9.1g(理論値の41.3%)。NMRは、例13からのNMRと一致した。
【0184】
例15:
2‐[(アミノカルボニル)アミノ]‐4‐(メチルチオ)ブタン酸アミド(N‐カルバモイルメチオニンアミド)(IVn)及びL‐イソロイシンから、3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)の化学合成
L‐イソロイシン11.8g(0.09モル)、2‐[(アミノカルボニル)アミノ]‐4‐(メチルチオ)ブタン酸アミド(IVn)17.4g(90ミリモル、純度:98.5%)及び(NH4)HCO3 7.1g(0.9モル)を、水150ml中に溶かし、磁気攪拌を伴うRoth社の200ml入り鋼製オートクレーブ中150℃で5時間攪拌し、この際、圧力は上昇した。時折、ガスを放出させることによって、圧力を8バールに一定保持した。反応の終了後に、オートクレーブを氷浴中で冷却した。得られる懸濁液を引き続いて濾過し、濾過した固体を水で数回洗浄し、油ポンプ真空中30℃で数時間乾燥させた。秤量:白色固体IVc10.3g(理論値の47%)。NMRは、例13からのNMRと一致した。
【0185】
例16:
濃塩酸を用いた、3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)から、Ile‐Met(Ic)Met‐Ile(IIc)のジアステレオマー混合物の合成
3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)24.4g(100ミリモル)を、水66gと懸濁させる。攪拌下に濃塩酸11gを徐々に滴加して、引き続いて慎重に、強力な攪拌下に還流加熱した。反応混合物を8時間還流加熱し、それによって全ての固体は溶解した。引き続いて冷却する間に、少量の未反応のジケトピペラジンが生じ、それを濾過した。引き続いて、濾液を、氷浴を備えたフラスコ中で32%のアンモニア水でpH5〜6に調整した。この際、DL‐Met‐DL‐Ile(IIcのジアステレオマー混合物)及びDL‐Ile‐DL‐Met(Icのジアステレオマー混合物)の混合物が嵩張った白色固体として生じた。固体を乾燥箱中水流ポンプ真空で40℃で乾燥させた。収量21.5g(82.0%)。
【0186】
例17:
アンモニアを用いたアルカリ条件で、3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)から、Ile‐Met(Ic)及びMet‐Ile(IIc)のジアステレオマー混合物の合成
3‐[2‐(メチルチオ)エチル]‐6‐(1‐メチル)プロピル)‐2,5‐ピペラジンジオン(VIc)19.6g(0.8モル)、25%のアンモニア溶液22.4ml及び水160mlを、オートクレーブ中150℃に2時間加熱する。冷却後に、未反応のジケトピペラジンを濾過する。これを次の成分に再び使用することができる。濾液を回転蒸発器中水温80℃で、最初の結晶が生じるまで濃縮させた。冷却及び1晩放置後に、濾過及び乾燥後に、DL‐Met‐DL‐Ile(IIcのジアステレオマー混合物)及びDL‐Ile‐DL‐Met(Icのジアステレオマー混合物)の混合物を、嵩張った白色固体として分離することができた。収量:12.2g(58%)。
【0187】
例18:
雑食性コイからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)又はL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)の試験管内消化試験
a)カガミゴイ(Cyprinus carpio morpha noblis)から消化酵素の分離
消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、一年生のカガミゴイ(Cyprinus carpio morpha noblis)5匹の腸を取り出し、水で洗浄し、縦に切開し、かつ各々腸粘膜をかき取った。これを砕氷と一緒に混合機で砕細した。未だ完全な細胞を砕解するために、得られた懸濁液を超音波棒で処理した。細胞成分及び脂肪の分離のために、懸濁液を4℃で30分間遠心分離にかけ、均質液をデカントし、チメロサールの痕跡量で滅菌した。カガミゴイ5匹から腸粘膜の酵素溶液296.3mlを取得した。溶液を4℃の暗所で貯蔵した。
【0188】
b)試験管内消化試験の実施
L‐Met‐L‐EAA(LL‐II)又はL‐EAA‐L‐Mt(LL‐I)を、TRIS/HCl緩衝液に入れ、酵素溶液を加えた。比較として、及び純化学的分離速度の評価のために、各々酵素溶液を含まない盲値を設定した(表3参照)。時折、試料を取り出し、その組成を目盛付きHPLCで検定し、かつ量定した。変換率を、メチオニンの含量及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)又はL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)の含量の商として測定した(図1及び2参照)。
【0189】
【表3】
【0190】
例19
雑食性コイからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)又はD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の試験管内消化試験
a)カガミゴイ(Cyprinus carpio morpha noblis)から消化酵素の分離
消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、一年生のカガミゴイ(Cyprinus carpio morpha noblis)5匹の腸を取り出し、例18に記載したように処理した。
【0191】
b)試験管内消化試験の実施
D‐Met‐L‐EAA(DL‐II)又はL‐EAA‐D‐Mt(LD‐I)を、TRIS/HCl緩衝液に入れ、酵素溶液を加えた。比較として、及び純化学的分離速度の評価のために、各々酵素溶液を含まない盲値を設定した(表4参照)。時折、試料を取り出し、その組成を目盛付きHPLCで検定し、かつ量定した。変換率を、メチオニンの面積及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)又はL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)の面積の商として測定した(図7参照)。
【0192】
【表4】
【0193】
例20:
肉食性マスからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)又はL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)の試験管内消化試験
a)ニジマス(Oncorhynchus mykiss)からの消化酵素の分離
消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、一年生のニジマス(Oncorhynchus mykiss)6匹の腸を取り出し、例18に記載したように処理した。
【0194】
b)試験管内消化試験の実施
試験管内試験を、例18と同様に実施した(表5、図3及び4参照)。
【0195】
【表5】
【0196】
例21:
肉食性マスからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)又はD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の試験管内消化試験
a)ニジマス(Oncorhynchus mykiss)からの消化酵素の分離
消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、一年生のニジマス(Oncorhynchus mykiss)6匹の腸を取り出し、例18に記載したように処理した。
【0197】
b)試験管内消化試験の実施
試験管内試験を、例19と同様に実施した(表6、図11参照)。
【0198】
【表6】
【0199】
例22:
雑食性の小エビからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)又はL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)の試験管内消化試験
a)バナメイ(Litopenaeus Vannamei)からの消化酵素の分離
消化酵素の分離は、Ezquerra及びGarcia-Carrenoの方法(J. Food Biochem. 1999, 23, 59-74)により実施した。そのために、バナメイ(Litopenaeus Vannamei)5kgから肝膵臓を取り出し、砕氷と一緒に混合機で砕細した。更なる処理は、例18と同様に実施した。
【0200】
b)試験管内消化試験の実施
試験管内試験を、例18と同様に実施した(表7、図5及び6参照)。
【0201】
【表7】
【0202】
例23:
雑食性小エビからの消化酵素を用いた、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)又はD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の試験管内消化試験
a)バナメイ(Litopenaeus Vannamei)からの消化酵素の分離
消化酵素の分離は、Ezquerra及びGarcia-Carrenoの方法(J. Food Biochem. 1999, 23, 59-74)により実施した。そのために、バナメイ(Litopenaeus Vannamei)5kgから肝膵臓を取り出し、砕氷と一緒に混合機で砕細した。更なる処理は例18と同様に実施した。
【0203】
b)試験管内消化試験の実施
試験管内試験を、例19と同様に実施した(表8、図10参照)。
【0204】
【表8】
【0205】
例24:
鶏からの消化酵素を用いた、L‐EAA‐L‐Met(LL‐I)又はL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)の試験管内消化試験
a)消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、鶏の腸を取り出し、水で洗浄し、縦に切開し、かつ各々腸粘膜をかき取った。これを砕氷と一緒に混合機で砕細した。未だ完全な細胞を砕解するために、得られた懸濁液を超音波棒で処理した。細胞成分及び脂肪の分離のために、懸濁液を4℃で30分間遠心分離にかけ、均質液をデカントし、チメロサールの痕跡量で滅菌した。鶏から腸粘膜の酵素溶液118.9mlを取得し、溶液を4℃の暗所で貯蔵した。
【0206】
b)試験管内消化試験の実施
L‐Met‐L‐EAA(LL‐II)又はL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)を、TRIS/HCl緩衝液に入れ、酵素溶液を加えた。比較として、及び純化学的分離速度の評価のために、各々酵素溶液を含まない盲値を設定した。時折、試料を取り出し、その組成を目盛付きHPLCで検定し、かつ量定した。変換率を、メチオニンの含量及びL‐Met‐L‐EAA(LL‐II)又はL‐EAA‐L‐Met(LL‐I)の含量の商として測定した(図9、図16参照)。
【0207】
【表9】
【0208】
例25:
鶏からの消化酵素を用いた、L‐EAA‐D‐Met(LD‐I)又はD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)の試験管内消化試験
a)鶏からの消化酵素の分離
消化酵素の分離は、EID及びMATTYの方法(Aquaculture 1989, 79, 111-119)により実施した。そのために、鶏の腸を取り出し、例24に記載したように処理した。
【0209】
b)試験管内消化試験の実施
D‐Met‐L‐EAA(DL‐II)又はL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)を、TRIS/HCl緩衝液に入れ、酵素溶液を加えた。比較として、及び純化学的分離速度の評価のために、各々酵素溶液を含まない盲値を設定した。時折、試料を取り出し、その組成を目盛付きHPLCで検定し、かつ量定した。変換率を、メチオニンの面積及びD‐Met‐L‐EAA(DL‐II)又はL‐EAA‐D‐Met(LD‐I)の面積の商として測定した(表10、図17参照)。
【0210】
【表10】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジペプチド又はその塩を含有する飼料添加剤において、ジペプチドの1個のアミノ酸残基はDL‐メチオニル基であり、かつジペプチドの他のアミノ酸残基は、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択される、L‐立体配置のアミノ酸である飼料添加剤。
【請求項2】
一般式 DL‐メチオニル‐L‐EAA及び/又はL‐EAA‐DL‐メチオニン のジペプチドを含有する飼料添加剤において、L‐EAAは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択される、L‐立体配置のアミノ酸である、請求項1に記載の飼料添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の飼料添加剤を含有する飼料混合物。
【請求項4】
DL‐メチオニル‐L‐EAA及び/又はL‐EAA‐DL‐メチオニンを、単独でD‐メチオニル‐L‐EAA、L‐メチオニル‐L‐EAA、L‐EAA‐D‐メチオニン又はL‐EAA‐L‐メチオニンとして、相互の混合物として又は同様にD‐メチオニル‐D‐EAA、L‐メチオニル‐D‐EAA、D‐EAA‐D‐メチオニン又はD‐EAA‐L‐メチオニンとの混合物として、有利に各々付加的に、DL‐メチオニンと、有利に、DL‐メチオニン0.01〜90質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に1〜30質量%の割合と混合して、有利に各々付加的に、L‐EAA、例えば、L‐リジンと、有利に、L‐EAA0.01〜90質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に1〜30質量%の割合と混合して含有する、請求項3に記載の飼料混合物。
【請求項5】
一般式 DL‐メチオニル‐DL‐EAA又はDL‐EAA‐DL‐メチオニン [式中、EAAは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択される、有利にL‐立体配置のアミノ酸である]のジペプチド又はその塩。
【請求項6】
式 DD/LL/DL/LD‐I又はDD/LL/DL/LD‐II:
【化1】
による1個だけのメチオニル基を含有するジペプチドを、アミノ酸と、一般式III〜V:
【化2】
[式中、Rは、次のように定義される:
Ia〜Va: R=1‐メチルエチル‐ (バリン)
Ib〜Vb: R=2‐メチルプロピル‐ (ロイシン)
Ic〜Vc: R=(1S)‐1‐メチルプロピル‐ (イソロイシン)
Id〜Vd: R=(1R)‐1‐ヒドロキシエチル‐ (スレオニン)
Ie〜Ve: R=4‐アミノブチル‐ (リジン)
If〜Vf: R=3‐[(アミノイミノメチル)‐アミノ]プロピル‐
(アルギニン)
Ig〜Vg: R=ベンジル‐ (フェニルアラニン)
Ih〜Vh: R=(1H‐イミダゾル‐4‐イル)メチル‐ (ヒスチジン)
Ij〜Vj: R=(1H‐インドル‐3‐イル)メチル‐ (トリプトファン)
Ik〜Vk: R=‐CH2‐SH (システイン)
Im〜Vm: R=‐CH2‐S‐S‐CH2‐CNH2‐COOH (シスチン)
IIIn〜Vn: R=‐CH2‐CH2‐S‐CH3 (メチオニン)、
この際、尿素誘導体III、IV及びV中のR1及びR2は、次のように定義される:
IIIa‐n:R1〜COOH、R2=NHCONH2
IVa‐n:R1=CONH2、R2=NHCONH2
Va‐n:R1‐R2=‐CONHCONH‐
及び
この際、Rはメチオニル基を表わし、かつ添加されるアミノ酸は、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるか、又は、
添加されるアミノ酸はメチオニンであり、かつRは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸残基である]の尿素誘導体との反応によって製造するための方法。
【請求項7】
出発生成物として、メチオニンヒダントイン又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントインを使用する又は中間生成物として中間的に生成させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
メチオニンヒダントイン及び水を含有する溶液を、アミノ酸と、塩基性条件下に反応させる、又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントイン及び水を含有する溶液を、メチオニンと、塩基性条件下に反応させる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
尿素誘導体を含有する溶液のpH値を、7〜14に調整し、及び/又は反応を30〜200℃の温度で実施し、及び/又は反応を2〜100バールの圧力で実施する、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
メチオニンヒダントイン及び水を含有する溶液又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントイン及び水を含有する溶液を、前以て、1種以上の化合物III、IV及びVから生成させる、請求項6から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
次の段階を包含する、請求項6に記載の方法:
a)式III、IV又はVによる尿素誘導体と、アミノ酸との、式:
【化3】
[式中、Rは、請求項6に記載したように定義される]のジケトピペラジンVIへの反応、
b)ジケトピペラジンVIの、式 DD/LL/DL/LD‐I及びDD/LL/DL/LD‐II:
【化4】
[式中、Rは請求項6に記載したように定義される]を有するジペプチドを含む混合物への反応。
【請求項12】
尿素誘導体とアミノ酸とのジケトピペラジンへの反応は、20℃〜200℃の温度で及び/又は加圧下に、有利に2〜90バールの圧力で行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
尿素誘導体とアミノ酸とのジケトピペラジンへの反応は、塩基、有利に、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、KHCO3、K2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバメート塩、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群から選択される塩基が存在して行なわれる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
ジケトピペラジンへの反応は、式:
【化5】
[式中、Rは、メチオニル基を表わす]の尿素誘導体と、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸との反応によって、又は
式:
【化6】
[式中、Rは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸残基である]の尿素誘導体とアミノ酸メチオニンとの反応によって行なわれる、請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ジケトピペラジンの、式I及びIIのジペプチドを含む混合物への反応は、酸性加水分解によって、有利に、鉱酸、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、燐酸、カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の群から選択される酸が存在して行なわれる、請求項11から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ジケトピペラジンの、式I及びIIのジペプチドを含む混合物への反応は、塩基性加水分解によって行われ、有利にpH7〜14で、有利に窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバメート塩、KHCO3、K2CO3、カルボネート、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群からの塩基を使用して実施される、請求項11から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
尿素誘導体III〜Vは、D‐立体配置で、L‐立体配置で又はD‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物で存在し、尿素誘導体がメチオニン(IIIn〜Vn)から誘導されている場合には、有利にD‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物で存在し、又は
この際、尿素誘導体III〜Vは、D‐立体配置で、L‐立体配置で又はD‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物で存在し、尿素誘導体III〜Vが、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸から誘導されている場合には、有利にL‐立体配置で存在する、請求項6から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法により取得した塩基性反応溶液から、結晶化によって、式I及びIIのジペプチドのジアステレオマー混合物を分離するために、溶液を、酸で、有利にpH値2〜10、特に有利にpH値3〜9、極めて特に有利に式I又はIIの各ジペプチドの相応する等電点に調整し、かつpH調整を、有利に、鉱酸、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、燐酸、カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の群から選択される酸で行なうことによる方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法により取得した酸性反応溶液から、結晶化によって、式I及びIIのジペプチドのジアステレオマー混合物を分離するために、溶液を塩基の添加により、有利にpH値2〜10、特に有利にpH値3〜9、極めて特に有利に式I及びIIの各ジペプチドの相応する等電点に調整し、この際、塩基は、有利に、NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基、NH4OH、カルバメート塩、KHCO3、K2CO3、カルボネート、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群から選択されることによる方法。
【請求項20】
有用動物用の、有利に家禽、豚、反芻動物、淡水魚又は海水魚、甲殻類又は家畜用の飼料添加剤としての、請求項6に記載の化合物I及びIIの使用。
【請求項1】
ジペプチド又はその塩を含有する飼料添加剤において、ジペプチドの1個のアミノ酸残基はDL‐メチオニル基であり、かつジペプチドの他のアミノ酸残基は、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択される、L‐立体配置のアミノ酸である飼料添加剤。
【請求項2】
一般式 DL‐メチオニル‐L‐EAA及び/又はL‐EAA‐DL‐メチオニン のジペプチドを含有する飼料添加剤において、L‐EAAは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択される、L‐立体配置のアミノ酸である、請求項1に記載の飼料添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の飼料添加剤を含有する飼料混合物。
【請求項4】
DL‐メチオニル‐L‐EAA及び/又はL‐EAA‐DL‐メチオニンを、単独でD‐メチオニル‐L‐EAA、L‐メチオニル‐L‐EAA、L‐EAA‐D‐メチオニン又はL‐EAA‐L‐メチオニンとして、相互の混合物として又は同様にD‐メチオニル‐D‐EAA、L‐メチオニル‐D‐EAA、D‐EAA‐D‐メチオニン又はD‐EAA‐L‐メチオニンとの混合物として、有利に各々付加的に、DL‐メチオニンと、有利に、DL‐メチオニン0.01〜90質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に1〜30質量%の割合と混合して、有利に各々付加的に、L‐EAA、例えば、L‐リジンと、有利に、L‐EAA0.01〜90質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に1〜30質量%の割合と混合して含有する、請求項3に記載の飼料混合物。
【請求項5】
一般式 DL‐メチオニル‐DL‐EAA又はDL‐EAA‐DL‐メチオニン [式中、EAAは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン及びシスチンの群から選択される、有利にL‐立体配置のアミノ酸である]のジペプチド又はその塩。
【請求項6】
式 DD/LL/DL/LD‐I又はDD/LL/DL/LD‐II:
【化1】
による1個だけのメチオニル基を含有するジペプチドを、アミノ酸と、一般式III〜V:
【化2】
[式中、Rは、次のように定義される:
Ia〜Va: R=1‐メチルエチル‐ (バリン)
Ib〜Vb: R=2‐メチルプロピル‐ (ロイシン)
Ic〜Vc: R=(1S)‐1‐メチルプロピル‐ (イソロイシン)
Id〜Vd: R=(1R)‐1‐ヒドロキシエチル‐ (スレオニン)
Ie〜Ve: R=4‐アミノブチル‐ (リジン)
If〜Vf: R=3‐[(アミノイミノメチル)‐アミノ]プロピル‐
(アルギニン)
Ig〜Vg: R=ベンジル‐ (フェニルアラニン)
Ih〜Vh: R=(1H‐イミダゾル‐4‐イル)メチル‐ (ヒスチジン)
Ij〜Vj: R=(1H‐インドル‐3‐イル)メチル‐ (トリプトファン)
Ik〜Vk: R=‐CH2‐SH (システイン)
Im〜Vm: R=‐CH2‐S‐S‐CH2‐CNH2‐COOH (シスチン)
IIIn〜Vn: R=‐CH2‐CH2‐S‐CH3 (メチオニン)、
この際、尿素誘導体III、IV及びV中のR1及びR2は、次のように定義される:
IIIa‐n:R1〜COOH、R2=NHCONH2
IVa‐n:R1=CONH2、R2=NHCONH2
Va‐n:R1‐R2=‐CONHCONH‐
及び
この際、Rはメチオニル基を表わし、かつ添加されるアミノ酸は、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるか、又は、
添加されるアミノ酸はメチオニンであり、かつRは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸残基である]の尿素誘導体との反応によって製造するための方法。
【請求項7】
出発生成物として、メチオニンヒダントイン又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントインを使用する又は中間生成物として中間的に生成させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
メチオニンヒダントイン及び水を含有する溶液を、アミノ酸と、塩基性条件下に反応させる、又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントイン及び水を含有する溶液を、メチオニンと、塩基性条件下に反応させる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
尿素誘導体を含有する溶液のpH値を、7〜14に調整し、及び/又は反応を30〜200℃の温度で実施し、及び/又は反応を2〜100バールの圧力で実施する、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
メチオニンヒダントイン及び水を含有する溶液又はリジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸のヒダントイン及び水を含有する溶液を、前以て、1種以上の化合物III、IV及びVから生成させる、請求項6から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
次の段階を包含する、請求項6に記載の方法:
a)式III、IV又はVによる尿素誘導体と、アミノ酸との、式:
【化3】
[式中、Rは、請求項6に記載したように定義される]のジケトピペラジンVIへの反応、
b)ジケトピペラジンVIの、式 DD/LL/DL/LD‐I及びDD/LL/DL/LD‐II:
【化4】
[式中、Rは請求項6に記載したように定義される]を有するジペプチドを含む混合物への反応。
【請求項12】
尿素誘導体とアミノ酸とのジケトピペラジンへの反応は、20℃〜200℃の温度で及び/又は加圧下に、有利に2〜90バールの圧力で行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
尿素誘導体とアミノ酸とのジケトピペラジンへの反応は、塩基、有利に、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、KHCO3、K2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバメート塩、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群から選択される塩基が存在して行なわれる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
ジケトピペラジンへの反応は、式:
【化5】
[式中、Rは、メチオニル基を表わす]の尿素誘導体と、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸との反応によって、又は
式:
【化6】
[式中、Rは、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン又はシスチンの群から選択されるアミノ酸残基である]の尿素誘導体とアミノ酸メチオニンとの反応によって行なわれる、請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ジケトピペラジンの、式I及びIIのジペプチドを含む混合物への反応は、酸性加水分解によって、有利に、鉱酸、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、燐酸、カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の群から選択される酸が存在して行なわれる、請求項11から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ジケトピペラジンの、式I及びIIのジペプチドを含む混合物への反応は、塩基性加水分解によって行われ、有利にpH7〜14で、有利に窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバメート塩、KHCO3、K2CO3、カルボネート、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群からの塩基を使用して実施される、請求項11から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
尿素誘導体III〜Vは、D‐立体配置で、L‐立体配置で又はD‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物で存在し、尿素誘導体がメチオニン(IIIn〜Vn)から誘導されている場合には、有利にD‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物で存在し、又は
この際、尿素誘導体III〜Vは、D‐立体配置で、L‐立体配置で又はD‐立体配置及びL‐立体配置を含む混合物で存在し、尿素誘導体III〜Vが、リジン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、システイン、シスチンの群から選択されるアミノ酸から誘導されている場合には、有利にL‐立体配置で存在する、請求項6から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法により取得した塩基性反応溶液から、結晶化によって、式I及びIIのジペプチドのジアステレオマー混合物を分離するために、溶液を、酸で、有利にpH値2〜10、特に有利にpH値3〜9、極めて特に有利に式I又はIIの各ジペプチドの相応する等電点に調整し、かつpH調整を、有利に、鉱酸、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、燐酸、カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の群から選択される酸で行なうことによる方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法により取得した酸性反応溶液から、結晶化によって、式I及びIIのジペプチドのジアステレオマー混合物を分離するために、溶液を塩基の添加により、有利にpH値2〜10、特に有利にpH値3〜9、極めて特に有利に式I及びIIの各ジペプチドの相応する等電点に調整し、この際、塩基は、有利に、NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基、NH4OH、カルバメート塩、KHCO3、K2CO3、カルボネート、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基の群から選択されることによる方法。
【請求項20】
有用動物用の、有利に家禽、豚、反芻動物、淡水魚又は海水魚、甲殻類又は家畜用の飼料添加剤としての、請求項6に記載の化合物I及びIIの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−521773(P2012−521773A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502571(P2012−502571)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053722
【国際公開番号】WO2010/112365
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053722
【国際公開番号】WO2010/112365
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]