説明

飼料米破砕装置

【課題】品質のよい破砕米を効率よく生成できるとともに、比較的コンパクトで且つ安価に構成することが可能な飼料米破砕装置を提供する。
【解決手段】飼料米が籾の状態で投入される投入口3と、内部に破砕機本体6を有する破砕室4と、破砕された飼料米を排出する排出部7とを具備する。破砕機本体6は、回転軸12と、回転軸12の周りを旋回する複数の旋回軸18と、夫々の旋回軸18に軸支され、旋回軸18とともに回転軸12の周りを旋回し、破砕室4に供給された飼料米を突出部10と協働して叩き砕き排出部7に送り込む複数のハンマー19とを備える。排出部7は、破砕された飼料米のみを通過可能とする大きさの複数の排出用開口部26と、排出用開口部26を通過しない飼料米を破砕室4側に送り返す案内部25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料米を破砕する飼料米破砕装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本人の主食として利用される米の消費量は減少傾向にあり、価格は下落を続けている。また、今後も人口の減少と一人当たりの消費量の減少は必至であり、稲作農家による稲作の維持は困難な情勢となっている。一方、日本国内で利用される飼料は、配合飼料が主流となっているが、配合飼料の原料であるトウモロコシ等の飼料穀物は国際相場が高騰しているため、畜産農家では飼料にかかる金銭的な負担が大きくなっている。
【0003】
その対策として、稲作の一部を主食用米から飼料米の生産に置き換えることが試みられている。稲作農家にとっては、栽培体系が同じであり設備投資も不要なことから取り組みやすく、また、畜産農家にとっては、従来の配合飼料よりも安価であり、しかも籾の状態で長期の保存も可能になるため、両者にとって好適な施策として注目されている。
【0004】
ところで、飼料米(籾)は、籾殻で覆われ、また玄米の表面も硬いため、粒のまま家畜に与えると消化率が悪くなるという問題がある。例えば、乳牛へ玄米を粒のまま与えた場合、破砕処理したものよりも消化率が3割程度落ち、乳量が大幅に低下すると言われている。
【0005】
一方、飼料米(籾)を破砕する装置として、特許文献1に示すものが提案されている。この破砕装置は、籾に圧縮力を加えて破砕するものであり、互いに逆方向に回転する一対の破砕ローラと、破砕ローラの上部に配置された投入用ホッパとを備えている。また、この破砕装置は、破砕ローラの一方が水平方向に移動可能に支持されており、一対の破砕ローラの間を通過する籾に圧縮力を加えるための圧縮用バネをさらに備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の破砕装置は、回転する一対の破砕ローラ間で籾を押し潰す方式であるため、一粒一粒の籾に大きな圧縮力を加えることができず、破砕されないまま排出される可能があった。つまり、破砕されない籾が、破砕された飼料米(以下、「破砕米」という)と一緒に破砕ローラから排出されることとなり、破砕率を低下させていた。
【0007】
なお、破砕ローラ間に極めて大きな圧縮力を加えるようにすれば、破砕率をある程度高めることが可能になるが、これによれば、破砕ローラの回転負荷が極めて大きくなり、モータ等における動力を大幅に増大させる必要があることから、装置全体が大型化したり、製造コストが増加したりすることとなる。
【0008】
また、破砕米の生産性を高めるには、一定時間当りの破砕処理量(すなわち破砕ローラ間を通過する籾の通過量)を増加させる必要があるが、これによれば一粒当りの籾に加わる圧縮力がさらに小さくなるため、生成される破砕米の品質(すなわち破砕率)をさらに低下させることとなる。
【0009】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、品質のよい破砕米を効率よく生成できるとともに、比較的コンパクトで且つ安価に構成することが可能な飼料米破砕装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる飼料米破砕装置は、
「飼料米が籾の状態で投入される投入口と、
内部に破砕機本体を有し、投入された飼料米を破砕する破砕室と、
破砕された飼料米を排出する排出部と、を具備し、
前記破砕機本体は、
前記破砕室の底面から内側に突出して形成され、投入された飼料米の流れを遮り止める突出部と、
回転可能に支持された回転軸と、
該回転軸に回転力を付与する駆動機構と、
前記回転軸と平行に配設され、前記回転軸の回転に伴って前記回転軸の周りを旋回する複数の旋回軸と、
夫々の前記旋回軸に軸支されるとともに、前記旋回軸の軸方向に所定の間隔で配置され、前記旋回軸とともに前記回転軸の周りを旋回し、前記破砕室に供給された飼料米を前記突出部と協働して叩き砕き前記排出部に送り込む複数のハンマーと、を備え、
前記排出部は、
前記籾を通過させず且つ破砕された飼料米を通過可能とする大きさの複数の排出用開口部と、
該排出用開口部を通過しない飼料米を前記破砕室側に送り返す案内部と、を備える」
ことを特徴とするものである。
【0011】
ここで、「駆動機構」は、例えばモータと、モータの回転力を回転軸に伝達する伝達機構(ベルト等)とから構成することができる。また、「排出用開口部」の形状は特に限定されるものではないが、例えば溝状または網目状とすることができる。なお、「排出用開口部」を溝状とした場合には、溝の幅が「破砕された飼料米のみを通過可能とする大きさ」となり、一方「排出用開口部」を網状とした場合には、網目の大きさが「破砕された飼料米のみを通過可能とする大きさ」となる。なお、この大きさは、籾の中央部分の厚みよりも小さく、且つ玄米の中央部分の厚みよりも大きくなる寸法(飼料米の種類によっても異なるが、約2.7mm〜3.5mm)とすることが好ましい。
【0012】
また、「排出部」は、破砕室の出口に固定状態で取付けるようにしてもよいが、着脱可能に取付けるようにしてもよい。特に、着脱可能とする場合、排出用開口部の大きさが互いに異なる複数種類の排出部を用意することが好ましく、これによれば飼料米の大きさに対応した排出部を選択して取付けることが可能になり、ひいては飼料米の大きさが変わっても、破砕率を低下させることなく、しかも効率的に排出することが可能になる。
【0013】
本発明の飼料米破砕装置によれば、投入口から投入された飼料米は、破砕室に送られ、破砕機本体によって破砕される。詳しく説明すると、破砕機本体には、回転軸と、その回転軸に回転力を付与する駆動機構と、回転軸と平行に配設された複数の旋回軸とが備えられており、回転軸が回転すると、それに伴って複数の旋回軸が回転軸の周りを旋回する。また、夫々の旋回軸には、軸方向に所定の間隔で複数のハンマーが軸支されており、これらのハンマーは旋回軸と一緒に回転軸の周りを旋回する。これにより、破砕室に送られた飼料米は、複数のハンマーによって叩き砕かれ、その後、排出部側に送り込まれる。
【0014】
特に、破砕室の底面には、内側に向かって突出した一つまたは複数の突出部が形成されており、投入された飼料米の流れを遮り止める(せき止める)ようになっている。このため、飼料米は、突出部に引っ掛かりながらハンマーによって打撃されるので、大きな打撃力が加えられるとともに捻り作用も生じ、容易に破砕される。
【0015】
なお、複数のハンマーはに対して軸支(回動可能に支持)されているため、ハンマーに加わる負荷が比較的大きい場合には、ハンマーを後退方向に回動させる(すなわち逃す)ことが可能である。このためハンマーの負荷を軽減し、ハンマーの破損等を防止することが可能になる。
【0016】
ところで、排出部に送り込まれた飼料米には、適度の大きさに破砕されたものばかりではなく、まだ破砕されていないものや破砕が不十分なものも含まれているため、このまま排出すると、破砕率が低くなり家畜の消化を悪化させるおそれがある。
【0017】
これに対し、本発明では、排出部に案内部が設けられているため、破砕されていないものや破砕が不十分なものは破砕室側に送り返され、再びハンマー及び突出部の協働によって叩き砕かれる。したがって、投入された全ての飼料米を確実に破砕することが可能になる。一方、排出部には、破砕された飼料米のみを通過可能とする大きさの複数の排出用開口部が設けられているため、破砕された飼料米(以下「破砕米」と称す)はこれらの排出用開口部を通して排出される。すなわち、破砕米のみが排出されるようになり、品質のよい破砕米を生成することが可能になる。
【0018】
また、本発明の飼料米破砕装置において、
「前記案内部は、前記回転軸を中心とする円弧に沿うように湾曲して形成されている」
構成とすることができる。
【0019】
本発明の飼料米破砕装置によれば、案内部は、回転軸を中心とする円弧、すなわちハンマーの軌跡に沿うように湾曲して形成されているため、ハンマーによって送り込まれた飼料米を、案内部の内面に沿って送るとともに、排出されなかった飼料米を慣性によって破砕室側へ送り返すことが可能になる。したがって、飼料米を円滑に循環させることが可能となり、ハンマーに加わる負荷を一層小さくすることが可能となる。
【0020】
また、本発明の飼料米破砕装置において、
「前記案内部は、
前記排出用開口部よりも面積の大きな開口を複数有する湾曲した板状の湾曲板と、
該湾曲板の外面において前記開口を横切るように所定の間隔で平行に配置された複数の丸棒材と、を備え、
前記丸棒材同士の間に前記排出用開口部が形成されている」
構成とすることができる。
【0021】
本発明の飼料米破砕装置によれば、湾曲板には、複数の開口が形成されているが、開口以外の湾曲板内面は、凹凸のない平坦な湾曲面となっているため、ハンマーによって送り込まれた飼料米を、湾曲面の内面に沿って円滑に案内することができる。また、湾曲板の外面には複数の丸棒材が、湾曲板の開口を横切るように平行に配設されており、丸棒材同士の間に排出用開口部が形成されている。このため、湾曲板の開口部分に送り込まれた飼料米のうち、破砕米のみが、丸棒材同士の間を通過して排出されるようになる。特に、丸棒材を用いることにより、排出用開口部は入口(間口)及び出口が最も広く、中央に向かって次第に狭くなる。このため、排出用開口部の中央部分は、玄米を通過させることのない比較的狭い大きさであっても、広い入口から中央部分に向かって破砕米を誘導することで、中央部分を円滑に通過させることができ、しかも中央部分を通過した後は摩擦抵抗を減らし容易に排出することができる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明によれば、飼料米をハンマー及び突出部の協働によって叩き砕くとともに、破砕されるまで破砕処理が繰り返されるため、品質のよい破砕米を効率よく生成することができる。また、比較的簡単な機構であるため、コンパクトで且つ安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本実施形態の飼料米破砕装置の斜視図であり、(b)は飼料米破砕装置の縦断面図である。
【図2】(a)は飼料米破砕装置における破砕機本体の斜視図であり、(b)は破砕機本体の横断面図である。
【図3】(a)は飼料米破砕装置における排出部を外側から見た斜視図であり、(b)は排出部を内側(破砕室側)から見た斜視図である。
【図4】飼料米破砕装置を用いた破砕システムの斜視図である。
【図5】破砕システムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態である飼料米破砕装置1について、図1乃至図3に基づき説明する。飼料米破砕装置1は、家畜用の飼料米を破砕するものであり、主に、筐体2と、投入口3及び破砕室4を有し筐体2内において飼料米の通路を形成するケーシング5と、破砕室4に配置され飼料米を破砕する破砕機本体6と、ケーシング5の出口側に配置され破砕された飼料米を排出する排出部7とを備えて構成されている。また、投入口3及び破砕室4の間には、投入された飼料米を破砕室4に送る送りロール8が配設され、筐体2の出口側には、排出部7から排出された飼料米の飛散を防止する排出ダクト9が形成されている。さらに、ケーシング5の内底面には、投入された飼料米の流れを遮り止めるように、破砕室4を横切る棒状の突出部10が複数形成されており、後述するハンマー19との協働により破砕米に大きな打撃力を加えることが可能になっている。なお、突出部10はタングステンなど硬度の高い鋼材から形成されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、破砕機本体6は、破砕室4を貫通して配置された回転軸12と、破砕室4の外部で回転軸12の両端を回転可能に支持する一対の軸受13と、回転軸12の一端側に接続されたプーリ14と、ベルト(図示しない)及びプーリ14を介して連結され回転軸12に回転力を付与するモータ15とを備えている。なお、モータ15は、筐体2の外部に配設されており、送りロール8の動力源としても用いられている。ここで、プーリ14、ベルト、及びモータ15を組合わせたものが本発明の駆動機構に相当する。
【0026】
ところで、破砕された飼料米が破砕室4内で飛散すると、その飼料米が回転軸12と軸受13との間に侵入する可能性があり、この場合には、回転軸12の回転負荷が大きくなり、回転軸12を円滑に回転させることが困難となる。そこで本例では、回転軸12の両端部に直径の大きな径大部12aを形成するとともに、破砕室4の内面に閉塞板20を備えている。これによれば、破砕室4に形成された回転軸12用の貫通孔4aは、径大部12aの直径に合わせた大きさとなるが、この貫通孔4aを閉塞板20によって塞ぐことにより、閉塞板20に形成された透孔の内径が径大部12aの直径よりも小さくなり、飛散した飼料米が径大部12aと軸受13との間に侵入することが防止される。
【0027】
また、破砕機本体6は、回転軸12の軸方向に所定の間隔で配置された三枚の支持板17と、各支持板17の四隅を夫々貫通するとともに回転軸12に対して平行に配置された四本の旋回軸18と、夫々の旋回軸18の軸方向に所定の間隔で配置された複数のハンマー19とを備えている。支持板17は略正方形の板材からなり、回転軸12に固定されている。つまり、支持板17は回転軸12とともに回転するようになっている。また、旋回軸18は、支持板17を介して回転軸12に連結されており、回転軸12の回転に伴って回転軸12の周りを旋回するようになっている。ハンマー19は、硬度の高い鋼材からなり、旋回軸18とともに回転軸12の周りを旋回することで、破砕室4に供給された飼料米を突出部10と協働して叩き砕き排出部7側に送り込むようになっている。なお、ハンマー19は旋回軸18に対して回転可能に支持されており、回転軸12が回転していない状態では、重力によって先端側が下方を向いた状態(垂れ下がった状態)となるが、図面では便宜上、遠心力によってハンマー19が遠心方向に展開した状態を表している。
【0028】
一方、排出部7は、図1及び図3に示すように、ケーシング5における破砕室4の出口側に配設され、ハンマー19によって送り込まれた飼料米を破砕室4側に送り返す案内部25と、破砕された飼料米(破砕米)のみを通過可能とする排出用開口部26とを備えている。さらに詳しく説明すると、案内部25は、回転軸12を中心とする円弧、すなわちハンマー19の軌跡に沿うように湾曲して形成された板状の湾曲板27と、湾曲板27の外面に溶着された複数の丸棒材29とから構成されている。湾曲板27は、破砕室4の出口側全体を覆うように配置され、筐体2に対して着脱可能に取着されている。詳しくは、湾曲板27の上端部及び下端部に、円筒状の取付用筒部30が横設されており、ボルト状の支持棒31を、排出ダクト9の一方の側面に形成された貫通孔(図示しない)を通して取付用筒部30に挿通させ、さらに排出ダクト9の他方の側面から突出した支持棒31の先端にナット(図示しない)を螺合させることにより装着されている。なお、図1(b)に示すように、湾曲板27は、内面上端部分がケーシング5の天井面に対して滑らかに連続し、内面下端部分がケーシング5の底面に対して滑らかに連続するようになっている。
【0029】
また、湾曲板27には、内外を貫通する円形の開口28が複数個(本例では八個)形成されている。具体的に、湾曲板27の上部及び下部には、三個の開口28が所定の間隔で形成され、中央の高さには、上部及び下部の開口28に対し互い違いになるように二個の開口28が形成されている。夫々の開口28の面積は、排出用開口部26よりもかなり大きく、多量の飼料米を同時に挿入させることが可能な大きさとなっている。
【0030】
丸棒材29は、湾曲板27の横幅と略等しい長さであり、長手方向を水平方向として互いに平行に配置されている。複数の丸棒材29は、湾曲板27の外側から夫々の開口28を横切るように配置されており、丸棒材29同士の間に排出用開口部26が形成されている。つまり、湾曲板27の開口28に対応する部分では、複数の丸棒材29によって溝状の排出用開口部26が形成されており、丸棒材29同士の隙間(最も狭い部分の隙間)が、籾を通過させず破砕米のみを通過可能とする大きさとなっている。具体的に、丸棒材29同士の隙間は、籾(籾殻が付いたもの)の中央部分の厚みと、玄米(籾殻を除いたもの)の中央部分の厚みとの中間の大きさ(例えば3.0mm)となっている。
【0031】
ところで、飼料米は、品種によって大きさが異なる場合もあり、例えば所定の品種の飼料米に対して、籾の通過を確実に阻止し、且つ破砕米を効率よく通過させることが可能であっても、他の品種の飼料米を使用した場合には、籾も破砕米と一緒に通過したり、あるいは破砕されているにも拘らず通過しなくなったりする可能性がある。そこで、本例では、丸棒材29同士の隙間(すなわち排出用開口部26の大きさ)が互いに異なるように設定された複数種類の排出部7を備えており、その中から飼料米の大きさに対応した排出部7を選択して装着することが可能になっている。
【0032】
次に、本実施形態の飼料米破砕装置1の作用について説明する。投入口3に籾の状態の飼料米が投入されると、投入された飼料米は、ケーシング5の斜面に沿って、また送りロール8で付勢されて、破砕室4に送られる。破砕室4には破砕機本体6が配設されており、破砕室4に送られた破砕米は、破砕機本体6によって破砕される。詳しく説明すると、破砕機本体6では、モータ15の回転力が回転軸12に伝わると、回転軸12及び支持板17が所定方向(図1(b)では時計方向)に回転し、支持板17に固定された旋回軸18、及び旋回軸18に軸支された複数のハンマー19が、回転軸12の周りを旋回する。これにより、破砕室4に送られた飼料米は、複数のハンマー19及び突出部10の間で叩き砕かれ、その後、排出部7側に送り込まれる。特に、突出部10は、投入された飼料米の流れを遮り止めるように形成されているため、飼料米は、突出部10に引っ掛かりながらハンマー19によって打撃されることとなり、大きな打撃力が加えられるとともに捻り作用も生じ、容易に破砕される。
【0033】
ところで、排出部7に送り込まれた飼料米には、破砕されていないものや破砕が不十分なものも含まれている。しかし、排出部7には案内部25が設けられているため、これらの未破砕米は、案内部25によって破砕室4側に送り返され、再びハンマー19及び突出部10による破砕処理が行われる。
【0034】
特に、案内部25は、回転軸12を中心とする円弧、すなわちハンマー19の軌跡に沿うように湾曲して形成された湾曲板27を有するため、ハンマー19によって送り込まれた飼料米は、湾曲板27の内面に沿って送られるとともに、慣性によって破砕室4側へ送り返される。
【0035】
一方、湾曲板27には、複数の開口28が形成され、さらに湾曲板27の外面には開口28を横切るように複数の丸棒材29が配設されているため、破砕米は、丸棒材29同士の間、すなわち排出用開口部26を通して排出される。すなわち、破砕された飼料米のみが排出される。特に、丸棒材29を用いることにより、排出用開口部26は入口(間口)及び出口が最も広く、中央に向かって次第に狭くなっているため、排出用開口部26の中央部分が玄米を通過させることのない比較的狭い大きさであっても、破砕米は、広い入口から中央部分に向かって誘導されることで、中央部分を円滑に通過することができ、しかも中央部分を通過した後は摩擦抵抗の減少により容易に排出される。
【0036】
次に、本例の飼料米破砕装置1を用いた破砕システム51について簡単に説明する。図4及び図5に示すように、破砕システム51は、収容袋Fに収容された飼料米を取り出して破砕するものであり、主に、収容袋Fを載置するとともにフォークリフト(図示しない)によって運搬されるパレット52と、上面にパレット52を載置することが可能な架台53と、架台53の上部に配設されたホッパー54と、ホッパー54の下方に配設された飼料米破砕装置1と、飼料米破砕装置1の下方に配設され台車57を出し入れ可能に収容する台車収容部58と、台車収容部58の上側に配設された噴霧装置59と、架台53の一端側に立て掛けられた梯子60と、を備えて構成されている。
【0037】
収容袋Fは、図5に示すように、可撓性及び柔軟性を有する合成樹脂製の袋状容器であり、飼料米Kを収容する大型の袋本体61を備えている。袋本体61の上面には、飼料米を袋本体61内に注入するための筒状注入部62が上面中央から上方に突設されるとともに、その筒状注入部62を折畳んだ状態で上方から押える注入部押え片63が備えられている。袋本体61の底面には、袋本体61に収容されている飼料米を排出するための筒状排出部67が底面中央から下方に突設されるとともに、その筒状排出部67を折畳んだ状態で下方から押える排出部押え片68が備えられている。そして、筒状排出部67には排出部縛り紐69が取着されており、排出部縛り紐69を縛ることで筒状排出部67が閉止されるようになっている。また、排出部押え片68には排出部押え紐70が取着されており、排出部押え紐70によって排出部押え片68を閉じ状態に保持することが可能になっている。
【0038】
架台53は、上面を形成する天板75と、高さ方向の略中央に配設された仕切板76と、天板75及び仕切板76を支持する四本の支柱77とを備えて構成されており、天板75及び仕切板76の間に上部収容空間79が形成され、仕切板76の下方に下部収容空間80が形成されている。なお、架台53は鋼材からなり、天板75上に約700Kg以上の収容袋F及びパレット52を載せることが可能である。また、天板75には、上下方向に貫通する平面視正方形状の天板開口部81が形成されている。この天板開口部81は、ホッパー54の上面開放部分に相当する大きさであり、本例では約90cm四方である。
【0039】
ホッパー54は、略四角錐形状の周壁83からなる漏斗状の部材であり、下端には送出口85が形成されている。つまり、収容袋Fの筒状排出部67から排出された飼料米を受け中央の送出口85から送出させることが可能になっている。
【0040】
また、ホッパー54の周壁83の一部(詳しくは四角錐形状を形成する四つの斜面のうちの一面)には、ホッパー54の内外を連通する開閉窓86が形成されており、扉体87によって開閉させることが可能になっている。扉体87は、引き戸のように上端及び下端がスライド支持部材(図示しない)によって摺動可能に支持されており、周壁83に沿って摺動させることにより、開閉窓86を開放させた状態と閉鎖した状態とに切替えることが可能である。開閉窓86は、作業者の手をホッパー54内に挿入させ、筒状排出部67を引張り出したり、排出部縛り紐69を解いて筒状排出部67を開口したりすることが可能な大きさ(例えば20cm四方)に形成されている。
【0041】
一方、架台53の下部収容空間80には、市販の台車57が出し入れできるように台車収容部58が形成されている。台車57は、運搬用手押し車であり、飼料米破砕装置1の排出部7から排出された破砕米を受止めるとともに、その飼料米を貯留し、家畜の食餌場所へ運搬させることを可能にしている。
【0042】
噴霧装置59は、水(乳酸菌等を含む)を貯留するタンク98と、排出部7から落下する破砕米に向って霧状の水を吐出させることが可能な複数のノズル99と、タンク98に貯留された水を圧縮するとともにホース(図示しない)を介してノズル99に圧送するコンプレッサー100と、から構成されている。
【0043】
この破砕システム51によれば、筒状排出部67を引張り出したり排出部縛り紐69を解いたりする作業を、天板75及びパレット52上に載置された収容袋Fに対して行うことから、飼料米を収容袋Fから取出し飼料米破砕装置1で破砕する一連の処理を、作業者に不安感を喚起させることなく、簡単に且つ安全に行わせることができる。また、破砕システム51によれば、架台53の下部収容空間80には、台車57を出し入れ可能に収容する台車収容部58が形成されているため、飼料米破砕装置1の排出部7から排出された破砕米を、台車57で受止めることができ、破砕米を積替えることなく運搬することができる。
【0044】
続いて、本実施形態の飼料米破砕装置1の効果について説明する。
本例の飼料米破砕装置1によれば、飼料米を複数のハンマー19及び突出部10の協働によって叩き砕くことから、飼料米に大きな打撃力を与えるとともに捻り作用も生じさせ、極めて容易に破砕することができ、ひいては破砕米の生産性を高めることができる。また、ハンマー19に大きな負荷がかからないため、モータ15等の駆動機構をコンパクトに、且つ安価に構成することができる。
【0045】
また、本例の飼料米破砕装置1によれば、破砕米のみが排出部7から排出されるため、破砕率を大幅に高め、品質のよい破砕米を効率よく生成することができる。
【0046】
また、本例の飼料米破砕装置1によれば、排出部7に送り込まれた飼料米のうち、破砕されていない飼料米は、破砕室4に送り返され、繰り返し破砕処理が行われるため、投入されたすべての飼料米を確実に破砕することができる。
【0047】
また、本例の飼料米破砕装置1によれば、湾曲板27は、ハンマー19の軌跡に沿うように湾曲して形成されているため、ハンマー19によって送り込まれた飼料米を、湾曲板27の内面に沿って送るとともに、排出されなかった飼料米を慣性によって破砕室4側へ送り返すことができる。したがって、飼料米を円滑に循環させることができ、ハンマー19に加わる負荷を小さくすることができる。
【0048】
また、本例の飼料米破砕装置1によれば、丸棒材29を用いることにより、破砕米を容易に通過させることが可能となり、効率よく排出することができる。
【0049】
さらに、本例の飼料米破砕装置1によれば、複数のハンマー19を旋回軸18に対して回動可能に支持することにより、ハンマー19に加わる負荷を軽減し、ハンマー19の破損等を防止することができる。
【0050】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0051】
すなわち、上記実施形態では、本例の飼料米破砕装置1を、破砕システム51における破砕装置として用いる場合を示したが、パレット52、架台53、及びホッパー54等を備えることなく、飼料米破砕装置1を単独で用いることも可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、飼料米破砕装置1の駆動機構としてモータを使用するものを示したが、エンジンを使用することも可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、湾曲板27における開口28の形状を円形とするものを示したが、楕円形、長孔、または矩形とすることも可能である。また、上記実施形態では、複数個の開口28を全て同じ大きさに形成するものを示したが、例えば、下部側の開口28を上部側の開口28よりも大きくなるように形成してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、排出部7の案内部25を、湾曲板27及び複数の丸棒材29から構成するものを示したが、湾曲板のみで構成し、湾曲板に複数の排出用開口部を直接穿設するようにしてもよい。また、湾曲板を備えることなく複数の丸棒材29のみによって案内面を形成するようにしてもよい。ただし、本例のように湾曲板27及び複数の丸棒材29を組合わせることにより、破砕米の円滑な循環及び円滑な排出が可能となり、生産性を大幅に高めることが可能になる。
【0055】
さらに、上記実施形態では、突出部10をケーシング5の内底面に固定するものを示したが、着脱可能に取着させるようにしてもよい。これによれば、突出部10が磨耗した際、容易に交換することが可能になる。
【符号の説明】
【0056】
1 飼料米破砕装置
3 投入口
4 破砕室
6 破砕機本体
7 排出部
10 突出部
12 回転軸
14 プーリ(駆動機構)
15 モータ(駆動機構)
18 旋回軸
19 ハンマー
25 案内部
26 排出用開口部
27 湾曲板
28 開口
29 丸棒材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2007−68499号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料米が籾の状態で投入される投入口と、
内部に破砕機本体を有し、投入された飼料米を破砕する破砕室と、
破砕された飼料米を排出する排出部と、を具備し、
前記破砕機本体は、
前記破砕室の底面から内側に突出して形成され、投入された飼料米の流れを遮り止める突出部と、
回転可能に支持された回転軸と、
該回転軸に回転力を付与する駆動機構と、
前記回転軸と平行に配設され、前記回転軸の回転に伴って前記回転軸の周りを旋回する複数の旋回軸と、
夫々の前記旋回軸に軸支されるとともに、前記旋回軸の軸方向に所定の間隔で配置され、前記旋回軸とともに前記回転軸の周りを旋回し、前記破砕室に供給された飼料米を前記突出部と協働して叩き砕き前記排出部に送り込む複数のハンマーと、を備え、
前記排出部は、
前記籾を通過させず且つ破砕された飼料米を通過可能とする大きさの複数の排出用開口部と、
該排出用開口部を通過しない飼料米を前記破砕室側に送り返す案内部と、を備える
ことを特徴とする飼料米破砕装置。
【請求項2】
前記案内部は、前記回転軸を中心とする円弧に沿うように湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の飼料米破砕装置。
【請求項3】
前記案内部は、
前記排出用開口部よりも面積の大きな開口を複数有する湾曲した板状の湾曲板と、
該湾曲板の外面において前記開口を横切るように所定の間隔で平行に配置された複数の丸棒材と、を備え、
前記丸棒材同士の間に前記排出用開口部が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の飼料米破砕装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−250178(P2012−250178A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124851(P2011−124851)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(311003374)
【Fターム(参考)】