説明

養殖池の水処理装置

【課題】 魚類を養殖する養殖池の汚れを防止する処理装置のランニングコストを安価にする。
【解決手段】浮力を有して放射方向に配した複数の回転アーム10を具えて養殖池の水面に回転可能に設置する耕水機36と、前記養殖池の壁面部2の内面に装着した濾過マット17と、池の底部3に設置するヘドロ収集器4と集水槽22と該集水槽の下方内部に設けて堆積したヘドロを感知するセンサー27に電気的に接続した電動弁6とを連結した連結パイプ7と、先端を前記水面に位置した循環パイプ24の下端を前記集水槽の内部中間に位置させ、該循環パイプの下方に、エアー源25に接続して設けたエア―噴出口25aと、前記エアー源25に接続した酸素エアー噴出器26と、前記養殖池内に設置して水中のDO値を測定するセンサー31に接続すると共に、前記酸素エアー噴出器26に接続した酸素発生機30とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚や鰻や海老などを養殖する養殖場の水の汚れを処理する水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の養殖池は一般に換水率が低く、ヘドロの原因となる残餌や糞が養殖池の底部に堆積しやすい。そのため、養殖池の水面に水面攪拌用のモータに連結した水車を設置し、この水車を回転させて大気中の空気を水中に取り込んで水中のDO(溶存酸素)値を一定値以上に維持する方法が一般的に行われている。
【0003】
図6に示すように、従来の養殖池40内に設置した水車41は、モータ42に連結した羽根車43,43を水面と平行に配して軸着したモータ軸を回転させることにより水面を波立たせ、池の水面に同一円周方向に連続して波立部45,45を形成しながら、空気中の酸素を取り込む。この羽根車43,43は水面に対して垂直方向に回転して池の水を水面から上方に掻き上げるためモータは大きな力が要求され、モータ音や水を攪拌する騒音を発生し、消費電力コストが高くなるという欠点がある。さらに、汚れた水を綺麗にするため養殖池30とは別に汚水を処理する処理槽46を必要とし、養殖場を運営するための当初設備投資費用が高くなり、その上、ランニングコストが高価になるという問題点を有していた。
【0004】
養殖池内には水底に残餌や糞などのヘドロが経時的に堆積するが、このヘドロは養殖池内で処理することができない構成のため、池の底部に堆積したヘドロは定期的に養殖池の外部に取り出して池の内部を清掃する必要がある。水底に堆積したヘドロの除去及び清掃作業には多くの人手と多大な費用および時間がかかり大変である。また、養殖池の水底に堆積したヘドロを含む汚水を外部に取り出して処理し、その処理水を再び養殖池に送り込むには強力なポンプが必要となり、消費電力が大きくなるため必然的にランニングコストが高くなると共に、ポンプが強力な力をだすため大きな騒音を発生するという欠点を有していた。
【0005】
養殖池の水中に含まれる溶存酸素(DO)値を高める装置として、羽根車を回転して水を空中に拡散させて空気を混入するものがある(特許文献1、参照)。さらに、羽根材を池の水面部分に沿って水平方向に回転させて水面の水を池の中心から遠心方向に押し出し、この水流が濾過材を通過する際に、水中に含まれる酸素が該濾過材に付着している好気性菌に酸素を供給して該菌を活性化して水中の汚れを分解するものがある(特許文献2、参照)。しかし、従来の水車などは、池の表面部分の水中に対流を起こせても、底部分に対流を起こして底水を流動させることは困難であった。そのためヘドロが水底に溜まりやすかった。
【特許文献1】特公昭51―46986号公報
【特許文献2】特許第3360075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の水処理装置は、養殖池の水面に対して直角方向に位置させた回転軸に取り付けた回転羽根を回転して水面を波立たせることにより水面に対して水平方向に水の対流を起こしても、水面に対して縦方向に水の対流を池の中間部分や底部に発生させることは困難であった。そして、池の外部に設けた処理槽にポンプで汚水を送って処理した後、綺麗になった水を再びポンプで池に戻すため強力なポンプが必要となり、その結果、消費電力が大きくなって必然的にランニングコストが高くなるという問題点を有していた。
【0007】
之に対し、本発明は回転アームを回転させて池中央の水面の水を遠心方向に押し出し、その分、池の底部中央部分の酸素が不足して澱んだ水を上昇させて池の内部に縦方向の対流を発生させ、かつ、水面部分において太陽の光を浴びて水中の微生物を活性化させて光合成により大氣中の酸素を水中に取り入れると共に紫外線によって汚れ物質中の雑菌を殺菌する。また、池の底部から酸素エアーを強制的に供給して、池内に設置した濾過マットに付着したり、水中に浮遊する好気性菌に酸素を含む水を供給して水中の微生物、特に好気性菌を活性化させることにより水の汚れを分解する。他方、池の底部に堆積した有機物、一般に謙気性のヘドロと呼ばれるものの分解には、多くの微生物、即ち好気性菌が関与する。
【0008】
酸素が多く存在する環境下で活性化する好気性バクテリアは、酸素の少ない環境で活性化する嫌気性バクテリアの100倍以上の分解効率を持っているといわれている。そのため、酸素があれば1日で分解できるヘドロ量も、酸素が足りない場合にはその分解に100日もかかるといわれている。
【0009】
本発明は水面に浮上して設置した回転アームをゆっくり回転させるためモータの力は小さくてよく、水面を波立たせて大気中の空気を取り込み、この養殖池の水面及び底部の両方からエアーを多く含んだ水を供給して池全体に縦横方向に水の対流を発生させ、好気性菌を活性化して嫌気性菌の増殖を抑え、それによってヘドロの発生を抑制すると共に、ランニングコストを安価にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために本発明は、周面に壁面部2を具えて中心方向に下り勾配を備えた底部3を有した養殖池1において、浮力を有して放射方向に配した複数の脚部11の下部に羽根板16を設けた回転アーム10を具えて水面に回転可能に浮かべた耕水機36と、前記壁面部2の内面に着脱可能に装着した網目状素材からなる濾過マット17と、周面に多数の小孔5を有して前記底部3に設置したヘドロ収集器4と集水槽22と該集水槽の下方内部に設けて堆積した、ヘドロを感知するセンサー27と電気的に接続した電動弁6とを連結した連結パイプ7と、先端を前記水面に位置した循環パイプ24の下端を前記集水槽の内部中間に位置し、該循環パイプの下方にエアー源25に接続して設けたエア―噴出口25aと、前記エアー源25に接続して前記ヘドロ収集器4上に設置させた酸素エアー噴出器26と、前記養殖池内に設置して水中のDO値を測定するセンサー31に接続すると共に、前記酸素エアー噴出口26に接続した酸素発生機30とからなることを特徴とする。また、前記集水槽22は、その内部に位置した循環パイプ24下端の下方に前記エアー噴出口25aを位置させ、該循環パイプの先端に設けた先端口24aを養殖池の水面に位置し、該エアー噴出口25aからエアーを噴出させて集水槽内の水を、循環パイプ24を介して養殖池に流動させて池内の底部付近のヘドロを含む水を、前記連結パイプ7を介して集水槽22内に吸い込んで該集水槽内にヘドロを堆積させることを特徴とする。さらに、前記センサー27,31の代わりにタイマー28,28aを接続してなることを特徴とする。さらにまた、前記電動弁6は、その下流側にフィルタ手段と圧縮手段と乾燥手段を具えてなる汚泥処理装置34を介して排水口35を設けてなることを特徴とするものである。
【0011】
以上の如く、本発明は、池の壁面部内側に濾過マットを装着し、水面に浮上させた耕水機の回転アームを回転させることにより池表面の中心から遠心方向に水を押し出しながら波立部を設け、その分、池の底部から酸素不足の水を上昇させ、水面において大氣中の酸素を取り込み、紫外線によって汚染物質中の雑菌を滅菌する。さらに、酸素を多く含む水を放射状に押し出して池の壁面部に設置した濾過マットに付着した微生物である好気性菌に酸素を供給し活性化して水の汚れを分解する。また、残餌や魚の糞などの嫌気性ヘドロが底部に堆積しないよう池の底部からエアーを供給して酸素不足の水に酸素を供給すると共に、池の中に上下方向の対流を発生させる。回転アームはゆっくり回転するので、力の小さいモータを使用でき消費電力量が少ないためコストダウンを図ることができ、また、ゆっくり回転するので大きな騒音を発生することなく静かに運転することができる。
【0012】
池の底部に設置した酸素エアー噴出器26から通常はエアーを噴出すると共に、養殖池と別体に設けた集水槽22とを循環パイプ24及び連結パイプ7で連結し、集水槽内の循環パイプ下方にエアー源25に接続しte
設置したエアー噴出口25aから噴出させるエアーにより循環パイプ24を介して集水槽内の水を養殖池1に戻すと共に、養殖池内の底部近辺のヘドロを含む水を集水槽内に吸い込んで流動させ、水より大きい比重を利用して該集水槽内の底部にヘドロを堆積させることにより養殖池の底部にヘドロが堆積するのを防止する。そして、集水槽内に堆積したヘドロが一定の高さに達すると第1のセンサー27が作動して電動弁6を開弁し、ヘドロを含む水は汚泥処理装置34を介して排水口35から養殖池の外部、例えば下水道などに排水することができる。さらに、エアー源からのエアーを取り込んだ水を養殖池の上下から強制的に供給して底部に澱む酸素不足の水を上昇させて池の中に大きな対流を起こし、酸素を含む新鮮な水に変えて水中のDO値を向上させることによりヘドロの発生を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を図面に基づいて説明すると、図1は本発明に係る実施の形態における養殖池に設置した水処理装置を中央から縦断面にした模式図、図2は耕水機の斜視図、図3は養殖池の周縁部を示した拡大断面図、図4は養殖池内部の壁面部の一部を破断した斜視図、図5は養殖池の水面に回転アームを設置した状態の平面図である。
1は円形又は略方形など任意の形状をした養殖池で、該養殖池の周囲に設けた壁面部2の下部に連続して底部3を設け、この底部3の任意箇所、即ち、底部の最も深い部分に形成した収容部3a内にヘドロ収集器4を設置してある。このヘドロ収集器4は、通常、養殖池に1個設けてあるが、該養殖池が大きかったり、池の形によっては複数のヘドロ収集器4を設けてもよい。
【0014】
養殖池の底部3は、中心方向に下り勾配の傾斜を付し、水底付近に漂う残餌や魚の糞などのヘドロが水の移動と共に徐々に傾斜下部のヘドロ収集器4に集まるようにしてある。この底部3の中心に設置したヘドロ収集器4の周面には、ヘドロ取込用の多数の小孔5を形成し、池内の魚などが侵入できない大きさに形成して魚が池の外に逃げ出さないようにしてある。
【0015】
10は養殖池1の水面1aに浮かべて設置する回転アームで、水面に浮上させるために浮力を有した3本の脚部11を放射状に等間隔に配して中心部を一体に連結し、モータ12の上方外側を合成樹脂材からなる半球状のカバー体13で水密に覆ってモータ部14を有した耕水機36を形成してある。モータ12のモータ軸に連結した回転アーム10は、例えば1分間に3〜10回、好ましくは6回位の速さで回転し、池の水を水面中心から周縁部に向かって押し出して形成された波立部15は、図5に示すように水面を放射方向に移動すると共に、太陽からの光を受けて水中に存する微生物の光合成を活発化させて空気中の酸素を水中に取り込む。
【0016】
回転アーム10を構成する複数の脚部11の各先端下部には、それぞれ下方に垂設した羽根板16の下端に回転アームの回転方向に略直角に折り曲げた折返片16aを形成し、該折返片16aは羽根板16の強度を補強する機能を有すると共に、回転する羽根板16による水の保持力を高めて効果的に水を押し出す機能を具えている。
【0017】
内部にモータを収容して半球状のカバー体13で覆ってなる耕水機36のモータ部14は、壁面部2に一端を止着したロープ等で養殖池1内の所定位置に係留させてして使用するが、必要に応じてその位置は自由に変更することができる。
【0018】
17は養殖池1の壁面部2の内側に設置した濾過マットで、通水性を有した網目状部材で形成してあり、水中に存する各種バクテリア、特に空気を好む好気性菌を多数繁殖させて活性化させるため、空気中の酸素を取り込んだ新鮮な水の供給を受けやすくするように養殖池の比較的浅い箇所に設置してある。この濾過マット17は、フィルタ機能を具えているので水中に混入した塵芥などを除去し、また、壁面部2の上端に着脱可能に掛止して吊り下げた吊り金具18の下部に取付け、濾過作用が低下したら池の外に取り出して洗浄するか、新しいものと交換できるように構成してある。
【0019】
この濾過マット17は前記壁面部2の内側全面に設置し、さらに、該濾過マット17と養殖池の壁面部2との間に任意の間隙部19を設け、それによって濾過マット17の裏面側への水の流れを良好にし、水中に含まれる微生物中の好気性菌の繁殖および活性化を一層高めるようにしてある。図中、20は、井戸水などの水を養殖池1内に補水するための蛇口である。
【0020】
ヘドロ収集器4の下部と、養殖池1とは別体に設けた集水槽22の下部と、電動弁6とを連結パイプ7で接続し、集水槽内に配した循環パイプ24の下部を該集水槽内の中間部に位置させてある。この循環パイプ24の上部をL字型に折り曲げその先端の先端部24aを前記養殖池の水面1a上に位置すると共に、該循環パイプの下端に下向きに拡径したエアー誘導口23を設けてある。該エアー誘導口23の下方に、コンプレッサーなどのエアー源25に接続した第1のホース25bの先端に連結したエアー噴出口25aを設置してある。さらに、該エアー源25は、前記ヘドロ収集器4の上部に設置した酸素エアー噴出器26と柔軟な第2のホース25cで接続してある。
【0021】
集水槽22の内部下方に、ヘドロ感知用の第1のセンサー27を設置し、該センサー27は電動弁6と電気的に接続し、集水槽内の底部に堆積したヘドロの位置を感知して作動する。即ち、養殖池の底部3内に堆積したヘドロは、連結パイプ7を流れる水と共に集水槽22内に移動して順次集水槽内に堆積される。この電動弁6は、第1のセンサー27が感知すると自動的に作動するが、タイマー28を取付けて一定時間毎または所定時間経過後に自動的に作動するように構成することも可能であり、さらに、必要に応じて手動で操作することも可能である。
【0022】
養殖池の外部に設置した酸素発生機30と、該養殖池の底部、例えば、前記ヘドロ収集器4の上面に設置してある前記酸素エアー噴出器26とを柔軟な第3のホース29で接続し、さらに、養殖池内部の任意位置に設置して水中のDO(溶存酸素)値を測定する第2のセンサー31を前記酸素発生機30に電気的に接続してある。該センサー31は、水中のDO値が一定値以上に達すると該酸素発生機30が作動し、第2のホース29を介して酸素エアー噴出器26から酸素を噴出する。このセンサー31の代わりにタイマー(図示せず)を設け、池内の魚類に餌を与えた後、例えば20分または30分後など一定時間後に自動的に酸素発生機30を作動して酸素エアー噴出器31から酸素を噴出させるようにしてもよい。
【0023】
電動弁6の下流側に設けた排水パイプ33に汚泥処理装置34を設けた排水口35から一般の下水道に排水することもできる。第1のセンサー27が感知して電動弁6を開弁すると、集水槽22内及び養殖池の底部の堆積したヘドロは連結パイプ7、排水パイプ33を通って汚泥処理装置34に送られ、該汚泥処理装置内に装着したフィルタ(図示せず)で水に含まれたヘドロを除去する。ヘドロが汚泥処理装置34内に一定量溜まったら絞り装置で搾って圧縮して乾燥させて粉状、顆粒状に形成し、クレソン、バジルなどの肥料に使用することができる。また、汚泥処理装置内のフィルタでヘドロを濾過した処理水は、排水口35から一般の下水道に排水することも可能である。
【0024】
次に、本装置の作用について説明すると、多数の魚類を収容した養殖池の水面に浮上した耕水機36とコンプレッサーなどのエアー源25と酸素発生機30とに外部電力を通電して耕水機の回転アーム10を回転させ、コンプレッサー25を作動するとエアー源25で発生したエアーは、酸素エアー噴出器26及び集水槽22内に設置した循環パイプの下方に配したエアー噴出口25aからそれぞれ水中に噴出する。
【0025】
水面に浮上させた耕水機の回転アーム10がモータにより回転すると、水面の水をを放射方向に押し出して波立部15を発生させて大気中の酸素を水中に取り込む。回転アームが回転すると中心の水は遠心方向に押し出され、その分、池の底部から酸素不足の水は上方に流動して池の内部に対流を発生させる。さらに、酸素エアー噴出器26の上面全体に設けた多数の小孔からエアーを噴出させると、底部近辺の酸素が不足した水に酸素を供給して水中の微生物である好気性菌を活性化させると共に、池中心の上方への水流が発生し、養殖池内に大きな水の対流が発生する。
【0026】
エアー源25からのエアーは、集水槽22内の循環パイプの下方に設けたエアー噴出口25aからエアーが噴出し、エアーバブルは循環パイプ24内に設置した循環パイプ24内の水を押し上げて先端部25aから養殖池に戻す。さらに、養殖池内の水はヘドロ収集器4の小孔5から吸い込まれ、連結パイプ7を介して集水槽22内に流入する。即ち、エアー噴出口25aからエアーを噴出すると、養殖池及び集水槽内の水は循環パイプ24及び連結パイプ7を介して循環する。そして、養殖池の底部に堆積するヘドロは底部3に設けた下り勾配に沿って最も深いヘドロ収集器4に集められる。
【0027】
ヘドロ収集器4の小孔5から取り込まれた池の底部内のヘドロは、養殖池と集水槽と連結パイプ7と循環パイプ24とで形成した循環路内を流れて循環する水流にのって集水槽内に移動し、水に比べて比重が大きいため集水槽22の底部に堆積する。この集水槽22内に堆積したヘドロが一定の高さに達すると、第1のセンサー27が作動して電動弁6が開弁し、集水槽内の水及び連結パイプ7内の水は電動弁6から流出し、排水パイプ33を介して汚泥処理装置34内に流入し、水中のヘドロをフィルタ(図示せず)で除去した処理水を排水口35から養殖池の外部の下水道などに排水する。
【0028】
汚泥処理器34内には、水中に含まれるゴミを取り除くフィルタ手段34とヘドロを絞って水分を除去し、該水分を除去したヘドロが一定量になると圧縮手段により圧縮させて水分を搾り出して乾燥させた後、粉状、顆粒状など任意の形状に形成し、バジル、クレソンなどの植物の肥料として利用することができる。また、耕水機の回転アーム10の回転によって大気中の空気を水中に取り込み、放射方向に押し出して壁面部2の内側に設置した濾過マット17にエアーを含む水を供給させることにより、該濾過マットに繁殖している微生物、特に好気性菌を活性化してヘドロの発生を防止する。
【0029】
また、酸素エアー噴出器26からは、前記エアー源25からのエアーを噴出させるだけでは酸素が不足して水中のDO値が低下して酸素不足が生じるため、第2のセンサー31がそれを感知して酸素発生機30を作動させてホース29を介して酸素エアー噴出器26から前記エアーと共に酸素を噴出する。即ち、通常は酸素エアー噴出器26からはエアー源からのエアーがホースを介して底部の水中にエアーを噴出しているが、水中の酸素が不足すると酸素発生機30で発生した酸素はホースを介して該酸素エアー噴出器26からエアーと共に水中に噴出するもので、酸素を多量に水中に噴出することにより一時的に低下した水中のDO値を上昇させて一定値以上に達したら酸素発生機30は停止するが、エアー源25からのエアーは噴出し続ける。このように、水中のDO値をセンサーで測定するため、水中の好気性菌に酸素を供給して一層活性化させてヘドロの発生を防止する。
【0030】
第1のエアー供給手段について説明すると、集水槽22内に設けた循環パイプ24の下方に設置したエアー噴出口25aから噴出したエアーは該集水槽内を上昇しながら水中に酸素を取り込み、エアーバブル又はエアーバブルからの酸素を取り込んだ水は前記循環パイプの下端に設けたエアー誘導口23から循環パイプ24内に送り込んで水面1aに設置した先端部24aから養殖池内に酸素を多く含んだ水を戻す。
【0031】
養殖池の中心に位置した回転アーム10は、ゆっくり回転しながら水面の水を放射方向に押し出すことにより水面に複数の波立部15を設けて空気中の酸素を取り込み、酸素が不足して水面に上昇した水は酸素を取り込んで新鮮な水に変えることができる。即ち、池の底部の酸素が不足した水はエアー噴出器26から噴出するエアーバブルと共に順次上昇し、耕水機36を起点として大きくゆっくりと遠心方向に押し出されて大きな循環流を作りだし、新鮮な水を池の周縁部分に強制的に流動させて池の水のDO値を高めて第2のエアー供給手段とし、好気性菌を活性化してヘドロの発生を防止する。
【0032】
養殖池の周縁部分には、特に好気性菌が多量に繁殖する濾過マット17を設置してあり、酸素を多く含む水が常時供給されているので好気性菌を常に活性化することにより水中の汚れ、即ち嫌気性菌がつくるヘドロを分解し、ヘドロの発生を防止する作用を有するものである。
【0033】
第3のエアー供給手段、即ち、酸素供給手段について説明すると、連結パイプ7の先端に設けた酸素エアー噴出器26の表面から噴出した酸素は池の底部から上方に多数の酸素を噴出して上方への水流を発生すると共に、底部近辺に漂う酸素不足の水を上昇させると共に酸素を取り込んで新鮮な水に変え、酸素不足の水に浮遊する嫌気性菌の繁殖を抑制して好気性菌を活性化し、残餌や魚の糞などからヘドロ化するのを抑制する。
【0034】
モータにより回転アーム10がゆっくり回転すると、水面近くの水、即ち表層水は脚部によって回転アームの中心から放射方向に弧状に押し出されながら水面部分に波立部28を形成し、この波立部近辺の水に空気中の酸素が取り込んでDO(溶存酸素)量を高めると共に、太陽光線によって光合成を促進させ、紫外線により水中に含まれるヘドロに含まれる雑菌を滅菌するように作用する。さらに、水中に含まれる微生物の好気性バクテリアを活性化して増加させ、ヘドロの原因となる残餌や糞を好む嫌気性バクテリアを、好気性バクテリアの作用により減少させる。
【0035】
池の底部から上昇してきた酸素の不足した水は、水中でエアーバブルから酸素を取り込み、また、水面で酸素を取り込むと同時に太陽光線により水中のプランクトンの光合成が活性化し、さらに紫外線による殺菌効果が得られる。溶存酸素(DO)を十分に含んだ水は池底の嫌気性ヘドロに接触し、これに代わって好気性の分解微生物を増殖させて水質は改善される。このように溶存酸素の豊富な表層水は、酸素不足にあえぐ水底に送り込まれて池の中の水が循環し、酸素を含んだ水を底部にも供給して好気性菌の活性化によりヘドロの発生を防ぐと共に、本装置のランニングコストを安価にし、且つ静かに駆動させることができるので、住宅地の近くでも安心して養殖業を行うことができる。
【0036】
一日の内、数回餌を魚類に与えると、魚類は急激に活動して水中の酸素を消費してDO値を低下するため、水中のDO値を第2のセンサー31で測定し、一定値以下になったら酸素発生機30を作動させてホース29を介して酸素エアー噴出器26からエアーと共に酸素を噴出させることにより水中のDO値を短時間に上昇させる。このように、エアー源25は、回転アーム10と共に一日中作動している。これに対し、酸素発生機30はDO値が一定値以下の場合だけ作動するように設定してある。尚。第2センサー31の代わりにタイマー28aを設け、餌を与えた後、一定時間後にタイマーが作動してその間のみ酸素発生機30を作動させるようにしても良いことはもちろんである。
【0037】
本発明の実施例と従来装置について図7、8に基づいて比較すると、本発明で回転アーム1基を回転するモータの出力は25wであり、従来装置のモータは750wの水車が2基であるから1ケ月の電気代は前者が432円であるのに対し、後者は15444円であって、月々のランニングコストは著しく相違する。しかも、モータの出力が小さいため回転力は弱く且つ回転速度も遅いが、その反面騒音の発生は少なく静かに駆動させることができる。しかも図8に示したようにそれぞれの装置による汚水処理効果は、本発明の装置が明らかに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る実施の形態における養殖池に設置した水処理装置を中央から縦断面にした模式図である。
【図2】耕水機の斜視図である。
【図3】養殖池の周縁部を示した拡大断面図である。
【図4】養殖池内部の壁面部の一部を破断した斜視図である。
【図5】養殖池の水面に回転アームを設置した状態の平面図である。
【図6】従来の水車2基を養殖池内に設置した状態の平面図である。
【図7】本発明の耕水機の使様を示す説明図である。
【図8】従来の水車2基と本発明の耕水機1基との比較を示した説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 養殖池
1a 水面
2 壁面部
3 底部
4 ヘドロ収集器
5 小孔
6 電動弁
7 連結パイプ
10 回転アーム
11 脚部
16 羽根板
17 濾過マット
22 集水槽
24 循環パイプ
24a 先端口
25 エアー源
25a エアー噴出口
26 酸素エアー噴出器
27 第1のセンサー
28 タイマー
30 酸素発生機
31 第2のセンサー
34 汚泥処理装置
35 排水口
36 耕水機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に壁面部(2)を具えて中心方向に下り勾配を備えた底部(3)を有した養殖池(1)において、
浮力を有して放射方向に配した複数の脚部(11)の下部に羽根板(16)を設けた回転アーム(10)を具えて水面に回転可能に浮かせた耕水機(36)と、
前記壁面部(2)の内面に装着した網目状素材からなる濾過マット(17)と、
周面に多数の小孔(5)を有して前記底部(3)に設置したヘドロ収集器(4)と集水槽(22)と該集水槽の下方内部に設けて堆積したヘドロを感知するセンサー(27)と電気的に接続した電動弁(6)とを連結した連結パイプ(7)と、
先端を前記水面に位置した循環パイプ(24)の下端を前記集水槽の内部中間に位置し、該循環パイプの下方にエアー源(25)に接続して設けたエア―噴出口(25a)と、
前記エアー源(25)に接続して前記ヘドロ収集器(4)上に設置させた酸素エアー噴出器(26)と、
前記養殖池内に設置して水中のDO値を測定するセンサー(31)に接続すると共に、前記酸素エアー噴出器(26)に接続した酸素発生機(30)とからなることを特徴とする養殖池の水処理装置。
【請求項2】
前記集水槽(22)は、その内部に位置した循環パイプ(24)の下方に前記エアー噴出口(25a)を位置させ、該循環パイプの先端に設けた先端口(24a)を養殖池の水面に位置し、該エアー噴出口(25a)からエアーを噴出させて集水槽内の水を循環パイプ(24)を介して養殖池に流動させて池の底部付近のヘドロを含む水を、前記連結パイプ(7)を介して集水槽(22)内に吸い込んで該集水槽内の底部にヘドロを堆積させることを特徴とする請求項1記載の養殖池の水処理装置。
【請求項3】
前記センサー(27,31)の代わりに、タイマー(28,28a)を接続してなることを特徴とする請求項1記載の養殖池の水処理装置。
【請求項4】
前記電動弁(6)は、その下流側にフィルタ手段と圧縮手段と乾燥手段を具えてなる汚泥処理装置(34)を介して排水口(35)を設けてなることを特徴とする請求項1記載の養殖池の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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