説明

養液栽培システム

【課題】優れた浄化作用を常に発揮させながら養液を循環させて、オゾンによる養液の酸性化を防ぎながら植物の効果的な生育促進を図ることができる養液栽培システムであり、簡単な配管系統により様々な規模の設備にも容易に対応できる養液栽培システムを提供する。
【解決手段】液肥である培養液Wを入れる養液タンク1と栽培ベッド2との間を循環させる養液栽培システムであって、養液タンク1内の培養液Wを除菌浄化ユニット3で除菌浄化する。除菌浄化ユニット3は、培養液Wに紫外線を照射する紫外線照射機能と、紫外線が照射されない部分を含む培養液W全体にオゾンを供給するオゾン供給機能と、オゾンよりも強い除菌能力と有機物の分解能力とを有する光触媒を培養液Wに作用させる光触媒作用機能とを有するユニットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を養液栽培するための養液栽培システムに関し、特に、水耕栽培に適した養液栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の養液栽培システムとして、例えば、特許文献1に養液栽培方法がある。同文献の養液栽培方法は、脱塩処理した原水から養液を得て、この養液を栽培床に供給した後に、栽培床から排出される養液排水を除菌して養液中に戻すことにより、養液を栽培床に対して循環させる方法である。この養液栽培方法は、循環流路内の養液の戻り側に中空糸膜モジュールやオゾン殺菌装置が設けられ、この中空糸膜モジュールやオゾン殺菌装置により養液を除菌している。また、これらを含んだ一体型のラインにおいて養液が循環処理されるようになっている。
【0003】
一方、特許文献2は、植物の栽培チャンネルに循環供給するための培養液を貯留する培養液タンクと、栽培チャンネルに供給するオゾン水を製造するオゾン水製造タンクとを備えた水耕栽培用殺菌装置である。この水耕栽培用殺菌装置は、培養液の栽培チャンネルへの供給を所定時間毎に一時的に停止させ、この培養液にオゾンを供給して殺菌し、かつ、この培養液の一時的な停止時にオゾン水を栽培チャンネルに供給するようになっている。これにより、この水耕栽培用殺菌装置では、培養液とオゾン水とを栽培植物に対して交互に与えるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−299116号公報
【特許文献2】特開2002−191244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、養液中の除菌や不純物を除去するために中空糸膜フィルタが利用されているが、この中空糸膜フィルタは、使用するに従って有機物のぬめり等により目詰まりを起こすため、頻繁に清掃を行なう必要があった。また、この養液栽培方法は、夜間の時間帯にオゾン殺菌装置を作動させて処理液の循環量を少なくしようとしているが、このようなオゾン殺菌装置のみであると循環液が酸性化しやすくなる。そのため、pH調整が難しくなり、植物に対してオゾン障害が発生しやすくなっていた。また、循環液の酸性化により、配管系統の腐食が発生したり、植物の育成不良が発生することがあった。
【0006】
更に、この栽培方法は、除菌装置が栽培システムの一部として組み込まれたインライン型であるため、栽培の規模によってその都度サイズや処理量の異なる除菌装置が必要になる。これにより、養液の循環量の違いによって除菌装置のサイズが細分化され、循環させる規模に対応させるために様々な種類の除菌装置が必要になっていた。
【0007】
一方、特許文献2の殺菌装置は、培養液タンクとオゾン水製造タンクとを必要とする構成であるため、システム全体が複雑化していた。また、この殺菌装置では、オゾンの供給のみで殺菌をおこなっているため、培養液が酸性化しやすくなってpH管理が難しくなっていた。このため、特許文献1と同様に、オゾン障害が発生することがあった。
【0008】
ところで、養液栽培では、養液中に溶存酸素を含有させることが有効であることが知られている。しかし、単に養液に溶存酸素を付加するだけではこの溶存酸素により好気性の菌の繁殖も促すことになり、却って養液の腐食を促したり、栽培植物の根に付いている雑菌を繁殖させる等の逆効果が生じることになる。
【0009】
本発明は、上記した実情に鑑み、鋭意検討の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、優れた浄化作用を常に発揮させながら養液を循環させて、オゾンによる養液の酸性化を防ぎながら植物の効果的な生育促進を図ることができる養液栽培システムであり、簡単な配管系統により様々な規模の設備にも容易に対応できる養液栽培システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、液肥である培養液を入れる養液タンクと栽培ベッドとの間を循環させる養液栽培システムであって、養液タンク内の培養液を除菌浄化ユニットで除菌浄化し、この除菌浄化ユニットは、培養液に紫外線を照射する紫外線照射機能と、紫外線が照射されない部分を含む培養液全体にオゾンを供給するオゾン供給機能と、オゾンよりも強い除菌能力と有機物の分解能力とを有する光触媒を培養液に作用させる光触媒作用機能とを有するユニットである養液栽培システムである。
【0011】
請求項2記載の発明は、除菌浄化ユニットは、空気、又は、空気よりも酸素濃度の高い気体を原料としてオゾンを生成し、このオゾンを溶存酸素とともに培養液に気泡状態で混合させる機能を有するユニットである養液栽培システムである。
これにより、オゾンとともに多くの酸素を養液中に付加させることができ、酸素で栽培植物の育成促進を図りながら好気性菌の繁殖を抑えて養液の腐食を防ぎ、また、栽培植物の根に付いている雑菌の繁殖を防いで根の活性化を図ることができる。この場合、例えば、常温(20℃)において、オゾンガスの養液中への溶解率(19.1mg/L)よりも溶解率の小さくなっている酸素の溶解率(8.84mg/L)が向上する。
【0012】
請求項3記載の発明は、養液タンクと栽培ベッドとを供給ラインと戻りラインとにより接続して循環ラインを構成し、この循環ライン内の養液タンクに除菌浄化ユニットを接続した養液栽培システムである。
【0013】
請求項4記載の発明は、栽培ベッドの植物の葉・茎に送風可能な送風機を設け、この送風機に除菌浄化ユニットから排出する排オゾンを供給した養液栽培システムである。
【0014】
請求項5記載の発明は、栽培ベッドと養液タンクとを供給ラインと戻りラインとにより接続して循環ラインを構成し、供給ラインから分岐して浄化養液タンクと浄化栽培ベッドとを有する分岐循環ラインを設け、この分岐循環ライン内の浄化養液タンクに除菌浄化ユニットを接続した養液栽培システムである。
【0015】
請求項6記載の発明は、栽培ベッド・浄化栽培ベッドの植物の葉・茎に送風可能な送風機を設け、この送風機に除菌浄化ユニットから排出する排オゾンを供給した養液栽培システムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、オゾンと紫外線と光触媒とを併用した除菌浄化により、機能性に優れた培養液を常に循環してオゾンによる養液の酸性化を防ぎつつ植物の効果的な生育促進を図ることができる養液栽培システムを提供でき、しかも、簡単な配管系統により全体を構成でき、様々な規模の設備にも容易に対応できる養液栽培システムである。
【0017】
請求項2に係る発明によると、オゾンとともに好気性や雑菌の繁殖を抑えられた酸素を培養液に供給し、オゾンのみを供給する場合と比較して栽培植物の育成促進をより向上することができる養液栽培システムである。
【0018】
請求項3に係る発明によると、除菌浄化ユニットをシステムの構築と同時に設置するか、或は、既存のシステムに対しても後付けにより設置でき、しかも、システム全体の循環量に関係なく一定量の培養液を継続して除菌浄化すればよいため、規模の大きい設備にも対応できる養液培養システムである。また、コンパクト性やコストの点でも有利であり、養液タンク内を効果的に除菌浄化して病原菌の蔓延を防ぎつつ培養液を再利用でき、環境にも配慮した養液培養システムである。
【0019】
請求項4に係る発明によると、植物の葉や茎に付着した病気の原因となる胞子を不活性化し、植物がうどんこ病等の病気になることを防ぎ、しかも、排オゾンを利用できるため、エコロジー性にも優れた養液栽培システムである。
【0020】
請求項5に係る発明によると、1つのシステムで植物の種類等に応じた異なる培養液の循環ラインを設けることができ、コスト削減の点においても優れた養液培養システムである。また、既存の循環ラインを利用して培養液を除菌浄化でき、この培養液であらたに植物を生育することのできる養液栽培システムである。
【0021】
請求項6に係る発明によると、栽培ベッド・浄化栽培ベッドの植物に対して必要に応じて葉や茎に付着した胞子を不活性化し、植物がうどんこ病等の病気になることを防ぎ、しかも、排オゾンを利用することでエコロジー性にも優れた養液栽培システムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明における養液栽培システムの実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1ないし図3においては、本発明における養液栽培システムの第1実施形態の概念図を示している。本実施形態の養液栽培システムは、栄養分を溶かした液肥である培養液Wを入れる養液タンク1と栽培ベッド2との間を循環させるものであり、養液タンク1内の培養液Wを除菌浄化ユニット3で除菌浄化するものである。
【0023】
この養液栽培システムにおいて、養液タンク1と栽培ベッド2とは、供給ライン4と戻りライン5とにより接続されて循環ライン6が構成され、この循環ライン6内の養液タンク1に対して除菌浄化ユニット3が接続されている。
供給ライン4は、養液タンク1から栽培ベッド2まで培養液Wを供給するためのラインである。この供給ライン4は、流路が途中で分岐されて養液投入口4aが設けられ、この養液投入口4aから栽培ベッド2の植物Vに培養液Wを供給できるようになっている。
一方、戻りライン5は、栽培ベッド2から養液タンク1まで培養液Wを戻すためのラインであり、栽培ベッド2の出口側から1本の流路に集束された状態で養液タンク1に接続される。
【0024】
栽培ベッド2には、例えば、イチゴ等の植物Vが培養液Wにより栽培可能な状態で植えられている。また、栽培ベッド2には送風機7を設けており、この送風機7から植物Vの図示しない葉・茎に送風可能になっている。送風機7には除菌浄化ユニット3から排出される排オゾンが供給され、送風機7は、この排オゾンを含んだ空気を植物に送ることができるようになっている。
【0025】
除菌浄化ユニット3は、循環ライン6に対して予め取付けられるか、又は後付けにより取付けられる。この除菌浄化ユニット3は、紫外線照射機能と、オゾン供給機能と光触媒作用機能とを備えている。紫外線照射機能は、培養液Wに対して紫外線を照射する機能であり、オゾン供給機能は、紫外線照射機能による紫外線が照射されない部分を含む培養液W全体にオゾンを供給する機能である。また、光触媒作用機能は、オゾンよりも強い除菌能力と有機物の分解能力とを有する光触媒を培養液Wに作用させる機能である。
【0026】
除菌浄化ユニット3には図示しないタイマーが内蔵され、このタイマーにより除菌浄化ユニット3のオゾン発生をオンオフし、この除菌浄化ユニット3からのオゾンの供給量を制御している。これにより、適量のオゾンを供給することができ、過剰なオゾンの供給による培養液Wの酸性化を防いで配管系統が腐食したり植物が生育不良になったりすることを防止している。
【0027】
図2に示すように、除菌浄化ユニット3は、ケース10と、筒状体11、12と、高圧電源13と、オゾン供給流路14とを有している。更に、オゾン供給流路14には、逆止弁15とエジェクター16とが設けられている。
【0028】
図3に示すように、ケース10は、内部に内筒17と外筒18とを有している。この内筒17と外筒18は、非導電性であり、紫外線を透過する透明或は半透明の材料であるガラス材料によって形成される。ガラス材料としては、石英ガラスやホウ珪酸ガラス、高珪酸ガラスなどを用いている。このうち、特に、ホウ珪酸ガラス、高珪酸ガラスは比較的安価であり、通常の材料をそのまま使用することができるが、紫外線透過率、耐熱性、強度等の点を考慮した場合、石英ガラスを材料とすることが最も好ましい。
【0029】
内筒17の内側には、流体流路19が設けられ、この流体流路19内を培養液Wが流れるようになっている。また、この内側には、網やチタン線、繊維状チタン材料の集合体、その他多孔性チタン材料等からなるチタン又はチタン合金製の大表面積材料20が収納される。大表面積材料20の表面側には予め二酸化チタンからなる光触媒が形成されている。大表面積材料20は、細状に形成することにより反応面積が多くなり、オゾンとの反応性が高くなる。また、大表面積材料20の基材は、チタンやチタン合金以外を材料としてもよく、例えば、ガラスやシリカゲル等を材料として用いてもよい。
【0030】
外筒18は、内筒17から所定の間隔の空間Sを空けるように配設される。この空間Sの間隔としては、例えば、0.5〜2mm程度とするのがよい。更には、図5に示すように、空間Sの間隔は0.6〜1.5mmまでとすることが最も望ましく、後述するオゾンの発生時において、異なる電圧に対しても収率比が高まってオゾンの発生量がより多くなる。また、外筒18は、内筒17に対して同芯上に設けられ、空間Sの間隔が円周方向において均一になっている。
【0031】
外筒18の内側には導電性部材21が高圧帯電用の電極として設けられている。電極21は、外筒18の外部に設けられた高圧電源13の図示しない高圧側に接続される。高圧電源13から電極21に電圧が加わると、電極21が帯電して内筒17側にプラス電圧を放電するようになっている。電極21は、帯状の単純な形状に設ければよく、本実施形態においては、外筒18の長さ方向において概ね10〜50mmの幅で断面略C字状に形成される。電極21は、断面C字状以外にも、環状に形成してもよく、この電極21を外筒18の内周面18aに沿ってほぼ1周(全周)に亘って配設してもよい。
【0032】
電極21は、例えば、ステンレス材料からなり、薄膜状に形成されるが、更に、ステンレス以外にも、ニッケルクロムを真空蒸着にて装着することで放電にもオゾンにも強い薄膜として設けることが可能になる。また、電極21をこれら以外の材料で形成する場合には、アルミや銅、或はチタン等を使用することもできるが、アルミや銅を使用する場合には耐オゾン用として、塗装等による表面処理を行うことが必要になる。ただし、空気や酸素の水分含有率が低ければ問題なく使用できる。
【0033】
また、外筒18の外側には紫外線光源22が設けられ、この紫外線光源22より紫外線を照射可能になっている。紫外線光源22は、光触媒から正孔および電子を効率良く生じさせるために例えば、波長が410nm以下の紫外光を多く含むことが望ましく、このため、例えば、紫外線ランプや低圧または高圧水銀ランプを用いることが望ましい。更に、紫外線光源22は、300〜400nmの波長を有する蛍光ランプや、紫外光を照射するLEDを複数個並べたものであってもよい。紫外線光源22がLEDランプであると寿命を延ばすことができ、小型化も可能となる。更に、発熱量も抑えられるため効率のよい浄化が可能となる。
【0034】
更に、紫外線光源22は、直線(ストレート)形、円筒(サークル)形、螺旋形、波形などの各種の形状に形成してもよく、これにより、大表面積材料20による光触媒作用をより効果的に機能できる。本実施形態の紫外線光源22は、無電極によって放電可能な無電極放電管を採用しており、この無電極放電管22を電極21に近接させるように配置することで、オゾン生成時における放電時に発光できるようにしている。無電極放電管22を明るく点灯させるためには、高電圧で高周波の電極21を用いるようにするのがよい。更に、紫外線光源22は、無電極放電管以外にも、通常の電極を設けて発光させるタイプを用いるようにしてもよい。何れの紫外線光源を設ける場合においても、前述した電極21の間隔を調整し、培養液Wや大表面積材料20まで紫外線が到達できるようにする。
【0035】
紫外線光源22の外周側には、保護筒23が設けられている。この保護筒23は、断熱性を有し、この保護筒23と外筒18との間に断熱空間Rが形成される。上記の紫外線光源22は断熱空間Rに収納される。保護筒23の内面側には図示しないアルミなどを蒸着等の手段で貼り付けるようにしてもよく、この場合、紫外光を反射してより高効率で照射できる。
【0036】
内筒17と外筒18と保護筒23とは、取付筒24、25により一体化される。このとき、内筒17、外筒18と、取付筒24、25との間には、例えば、EPDM(エチレンとプロピレン及び架橋用ジェンモノマーとの三元共重合体)製によるOリング26、27が装着され、外部へのオゾンや培養液Wの漏れが防がれている。取付筒24、25は、メンテナンス等の分解時において、容易に取り外し可能になっている。
【0037】
また、取付筒24、25の内部には、それぞれエア流路24a、25aが形成されている。更に、エア流路24aの一次側にはミキシングポンプ31が接続され、このミキシングポンプよりエア流路24aに空気等の気体を供給可能に設けている。取付筒24、25により内筒17、外筒18、保護筒23を一体化すると、エア流路24a、25aと空間Sとが連通する。これにより、エア流路24aの入口側に設けたエア導入口24bを介してミキシングポンプ31より気体を導入させると、この気体は、エア流路24aを通って空間Sを通過し、続いて取付筒25内のエア流路25aを通ってこのエア流路25aの吐出側である吐出口25bより吐出される。この吐出口25bはオゾン供給流路14に接続されている。
【0038】
ここで、除菌浄化ユニット3は、空気、又は、空気よりも酸素濃度の高い気体を原料としてオゾンを生成し、このオゾンを溶存酸素とともに培養液Wに気泡状態で混合させる機能を有している。
【0039】
オゾン供給流路14の逆止弁15は、除菌浄化ユニット3より供給するオゾンや溶存酸素の逆流を防ぐために設けられる。また、この逆止弁15に続けて設けられているエジェクター16の二次側は、筒状体12のオゾン供給口12aに接続されている。
【0040】
エジェクター16は、例えば、セラミックや金属を材料として図示しないリング状に形成され、このエジェクター16に接続された枝管28とによりオゾンと培養液Wを混合させて微細気泡状の混合液(又は液体)をつくる。すなわち、吐出口25bからオゾンが吐出されたときには、オゾンが逆止弁15を経てエジェクター16の内部の図示しない隘路により枝管28からの流体の流速が早められて混合された状態でオゾン供給口12aから供給される。
除菌浄化ユニット3は、エジェクター16や、図示しないミキシングポンプ等により、オゾンと培養液Wの一部と混合しオゾン水としてから、再び培養液Wに混合させる。オゾンと溶存酸素は、オゾン供給口12aより培養液Wに気泡状態で混合させることが可能になっている。ただし、溶存オゾン及び溶存酸素は水に溶け込んだ状態をいうため、気泡状である必要はない。
【0041】
筒状体11、12は、取付筒24、25にそれぞれ取付けられる。この筒状体11、12は、内部にそれぞれ流路29、30を有し、取付筒24、25への取付け後には、この流路29、30と流体流路19とが連通するようになっている。除菌浄化ユニット3に流路30より培養液Wが流入すると、この培養液Wは、流体流路19を通過し、流路29を通って外部に流出する。このとき、前述したオゾン供給口12aよりオゾンが供給されるようになっている。
【0042】
次に、循環ライン6において、養液タンク1は、内部に培養液Wが蓄積され、養液供給管35と養液戻り管36とにより除菌浄化ユニット3に接続される。更に、養液供給管35には、養液タンク1から養液を汲み上げ可能な浄化用ポンプ37が設けられている。この浄化用ポンプ37の作動により、培養液Wが養液タンク1から養液供給管35を介して除菌浄化ユニット3に供給され、この除菌浄化ユニット3により浄化された後に、養液戻り管36を介して再び養液タンク1内に戻るようになっている。また、養液供給管35の一次側にはフィルタ38と逆止弁39とが設けられている。フィルタ38は、養液に混ざった石や土、ゴミなどの比較的大きな混入物を回収可能に設けられている。また、逆止弁39は、フィルタ38と養液供給管35との間に設けられ、逆流を防ぎつつ養液タンク1から除菌浄化ユニット3に培養液Wを供給できるようになっている。
【0043】
バイパスライン40は、養液供給管35における浄化用ポンプ37の上流側と養液タンク2とをバイパスするように設けられている。養液タンク1から浄化用ポンプ37により培養液Wが吸い上げられると、この培養液Wの一部がバイパスライン40に設けられた調整バルブ41の開度調整によりこのバイパスライン40を介して養液タンク1に戻すことが可能になっており、これにより、除菌浄化ユニット3への培養液Wの供給量の調整が可能になっている。
【0044】
本実施形態における養液栽培システムは、循環ライン6上において、養液タンク1、栽培ベッド2、除菌浄化ユニット3以外にも、循環ポンプ42、pH調整器43、EC調整器44、補給水ライン45が設けられている。
循環ポンプ42は、養液タンク1内の培養液Wを汲み上げて栽培ベッド2に供給可能になっている。
【0045】
pH調整器43は、養液タンク1中のpHを調整するために設置され、一般に使用されているものを利用できる。本実施形態では、このpH調整器43により、養液タンク1内の培養液WのpHを、例えば、pH6〜6.5程度に調整する。また、EC調整器44は、養液タンク1中のEC(電気伝導度)を調整するために設置され、pH調整器43と同様に、一般に使用されているものを利用できる。このEC調整器44により培養液W中のECを調整する場合、例えば、イチゴではEC=0.5、トマトではEC=1.0を限界とし、適宜の値に調整すればよい。
【0046】
補給水ライン45は、養液タンク1に水を補給するために設けられ、栽培ベッド2への供給により培養液Wが減少したときに、この補給水ライン45を介して適宜量の水が補給される。これにより、植物Vに対して常に培養液Wを供給することができるようになり、養液タンク1内の培養液Wが不足することがないようにしている。
【0047】
養液混合機46は、図示しないポンプを介して養液タンク1に接続され、この養液混合機46の内部には図示しない液状の肥料が蓄積されている。養液タンク1内の培養液Wが減少し、補給水ライン45から水が補給される場合、pH調整器43とEC調整器44とによりpHとECが測定されつつ、このpHとECとが適正値になるように養液混合機46から適切な量の肥料が補給されて培養液Wがつくられるようになっている。
【0048】
続いて、本発明の養液栽培システムの上記実施形態における動作を説明する。養液栽培システムを作動させると、養液タンク1内の培養液Wが循環ポンプ42により加圧されて供給ライン4に圧送され、それぞれの溶液投入口4aから栽培ベッド2に供給される。この培養液Wの供給により、栽培ベッド2の植物Vの育成が促進される。続いて、この培養液Wは、戻りライン5を通じて養液タンク1に戻される。
【0049】
養液タンク1に戻された培養液Wは、浄化用ポンプ37により汲み上げられて除菌浄化ユニット3に送られる。このとき、培養液Wは、逆止弁39を介してフィルタ38を通過し、このフィルタ38により不純物などの混入物が回収された後に除菌浄化ユニット3の内部に流入する。この培養液Wは、更に、内筒17の流体流路19内に流れ込む。
【0050】
一方、除菌浄化ユニット3にはエア導入口24bより外部の気体が導入され、エア流路24aを通って空間Sまで導かれる。この状態で高圧電源13によって電極21を高圧に帯電させると、この高圧の帯電に対して、内筒17内に満たされた培養液Wがアース電極の働きをして空間Sで放電が行なわれる。この放電は、電極21と誘電体である内筒17を介しているため無声放電となる。なお、流体流路19内に培養液Wが流れていないときには、アース電極が存在しないため放電は行なわれない。
【0051】
電極21が放電すると、この放電により紫外光が発生し、紫外光が培養液Wに照射されることでこの培養液Wの浄化が行なわれる。このとき、内筒17が紫外線透過型の材料により形成されていることにより、この内筒17を介して培養液Wに効率的に紫外線が照射される。
【0052】
更に、放電時には、その放電エネルギーによって紫外線光源22が発光して紫外線が照射される。この紫外線は、内筒17と外筒18を透過して電極21の無い部分から培養液Wに照射される。このように、電極21からの紫外線と紫外線光源22からの紫外線とが組み合わさることで紫外線による浄化効果が一層向上する。また、この紫外線光源22は、一般的な紫外線ランプを使用することで、より強力な光を培養液Wに照射させることができる。
【0053】
また、放電時には、この放電区間を気体が通過することで除菌浄化ユニット3内でオゾンが生成される。このオゾンは、溶存酸素とともに内筒17と外筒18との間の空間Sを通って吐出口25bより吐出され、逆止弁15を経てエジェクター16によりオゾン供給口12aから微細気泡の状態で流体流路19内の培養液Wに対して直接供給される。これにより、紫外線が照射されない(届かない)部分を含む培養液W全体にオゾンと溶存酸素とが供給され、このオゾンと溶存酸素とにより、紫外線で浄化されない培養液Wが浄化される。
【0054】
更に、この培養液Wは、大表面積材料20の隙間を通過する。このとき、上述したように、電極21からの紫外光が大表面積材料20まで達するため、大表面積材料20が光触媒作用を発揮し、この大表面積材料20によるオゾンよりも強い除菌能力と有機物の分解能力とを有する光触媒作用が培養液Wを浄化する。
【0055】
このときの光触媒による除菌浄化作用の原理を説明する。光触媒である二酸化チタン等に波長が400nm以下の紫外光が照射されると、価電子帯に正孔が発生するとともに伝導帯に電子が生じる。この正孔の酸化電位は、フッ素、オゾン、過酸化水素等の酸化電位よりも高いため、有機物は光触媒作用により完全に酸化分解され、最終的には二酸化炭素と水に完全分解される。光触媒は、紫外光が照射された際に生じる正孔またはこの正孔と水が反応して生じる極めて反応活性に富むヒドロオキシルラジカル(OHラジカル)により酸化反応が起こる。このとき、紫外光が照射された際に生じる正孔と同時に発生する電子と酸素ガス等との還元反応が平行して進行する。
【0056】
光触媒は、このような強力な酸化反応によって従来のオゾンや過酸化水素、塩素等の除菌剤よりも強い除菌能力を発揮でき、また、有機物の分解能力も備えている。更に、光照射により生じた正孔やOHラジカルの寿命はミリ秒以下と短いので、オゾンや過酸化水素等の酸化剤のように処理後に残留することがなく、残留酸化剤を処理する装置が不要であるという利点がある。以上により、大表面積材料20を用いて光触媒作用を発揮させて培養液Wに残存しているオゾンにより浄化のできなかった混入物を効果的に浄化できる。
【0057】
しかも、前述のように内筒17を紫外線透過型の材料により設けているので、電極21からの紫外線を大表面積材料20に高効率により照射でき、光触媒作用による浄化機能を向上させている。また、電極21を外筒18の長さ方向に任意の幅で配設しているので、大表面積材料20全体に紫外光を照射でき、それ以外の範囲は、外部の紫外光を照射することで、大表面積材料20の深部まで紫外線を照射することができる。
【0058】
なお、紫外線光源22からの紫外線は、電極21が影となることでその一部が遮られるが、電極21からの紫外線が放射されることで、前述のように大表面積材料20の全体に照射できる。
また、紫外線光源22は、外筒18の外側に設けられているので、培養液Wがこの紫外線光源22に対して直接接触することがなく、培養液Wの汚れ等の付着が抑えられる。これにより、紫外線光源22は、常に一定の紫外線照射量を維持している。
【0059】
このように、本発明の養液栽培システムは、培養液Wに対して、紫外線照射機能と、オゾン及び溶存酸素供給機能と、光触媒作用機能とによる複合的な除菌浄化を施し、これらの相乗効果により、各種の培養液Wの除菌浄化が可能となる。例えば、補給水として河川水や農業用水等を被処理水として利用することもでき、従来では養液栽培を行なうことが難しかった地域や、水道水を利用して養液栽培を行なっていた地域でも容易にあらたにシステムを構築できる。
【0060】
また、除菌浄化ユニット3は、オゾンの発生量を少なく抑えることができるため、オゾンを常時供給しながら培養液Wを浄化して酸性化を防ぐことができる。これにより、pH調整も容易になり、植物のオゾン障害も防ぐことができる。更に、配管系統の腐食や植物の育成不良を防止でき、定期的な養分補給を行なうだけで多くの植物の収穫を得ることができる。しかも、微量のオゾンを常時供給できることにより、配管系の内壁の菌類の成長を抑制でき、バイオフィルムの発生も防がれる。
【0061】
更に、除菌浄化ユニット3は、有機物の処理を常時行うことができるため、栽培ベッド2の有機物による詰まり、腐食、ぬめり等が防がれ、根の成長が促されることで植物の生育が向上する。例えば、植物Vがイチゴである場合、このイチゴは根が腐食すると収穫回数が減少するが、このような根腐れが防止されることにより長期に渡る安定した収穫が可能となる。また、有機物の発生が少なくなることで、収穫後における栽培ベッド2の清掃も容易になる。
【0062】
続いて、本発明の養液栽培システムの第2実施形態を説明する。なお、以降において、上記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
図4において、この養液栽培システムは、養液タンク1と栽培ベッド2とを供給ライン4と戻りライン5とにより接続して循環ライン50を構成し、供給ライン4から分岐路51を分岐して浄化養液タンク52と浄化栽培ベッド53とを有する分岐循環ライン54を設けている。更に、分岐循環ライン54内の浄化養液タンク52には、除菌浄化ユニット3が接続されている。
【0063】
除菌養液タンク52は、分岐路51から分岐した二次側に設けられ、分岐路51を介して供給ライン4を流れる培養液Wの一部が流入して蓄積している。この浄化養液タンク52内には、ボールタップ56が設けられ、このボールタップ56は、浄化養液タンク52内の培養液Wが不足したときにオンの状態になり、培養液Wが所定量蓄積するとオフの状態になる。これにより、浄化養液タンク52内には、常に一定量の培養液Wが蓄積されている。
【0064】
浄化養液タンク52には、フィルタ38と逆止弁39とが設けられ、また、浄化養液タンク52に対して浄化用ポンプ37を介して養液供給管57により除菌浄化ユニット3が接続されている。更に、この除菌浄化ユニット3の二次側に、例えば、トマトを植物Vとして栽培する浄化栽培ベッド53が供給ライン61により接続され、浄化栽培ベッド53は、供給ライン61を介して浄化養液タンク52からの培養液Wが供給される。また、浄化栽培ベッド53の二次側には戻りライン63が設けられ、この戻りライン63を介して培養液Wが浄化養液タンク52に戻るようになっている。
【0065】
パイパスライン64は、供給ライン61から浄化養液タンク52にバイパスするように設けられ、このバイパスライン64の途中に調整バルブ65が設けられている。除菌浄化ユニット3により除菌浄化処理された培養液Wは、その一部を調整バルブ65の開度調整によりバイパスライン64を介して浄化養液タンク52に戻すことが可能になっており、これにより、浄化栽培ベッド53への培養液Wの供給量の調整が可能になっている。
【0066】
この実施形態における養液栽培システムを動作させると、一方において、養液タンク1からの培養液Wが供給ライン4からイチゴの栽培される栽培ベッド2に供給され、その後、戻りライン4を介して養液タンク1に戻るようになっている。他方、培養液Wは、分岐路51を通じて浄化養液タンク52内に蓄積され、除菌浄化ユニット3によって除菌浄化処理された後に、供給ライン61からトマトの栽培される浄化栽培ベッド53に供給され、その後、戻りライン63を介して浄化養液タンク52内に戻るようになっている。
このように、この実施形態においては、除菌浄化処理された培養液Wが供給される浄化栽培ベッド53の植物Vと除菌浄化処理のされない培養液Wが供給される栽培ベッド2の植物Vとを一つの養液栽培システムにより栽培している。
【0067】
この実施形態によると、循環ライン6上の別の分岐循環ライン54に除菌浄化ユニット3により浄化処理した養液を供給することができる。これにより、植物(野菜や果物)Vの種類に応じて1つのシステムで異なる循環ラインを設けることができ、コストを削減しつつ植物の生育促進を図ることが可能となる。
【0068】
特に、この分岐循環ライン54では、浄化養液タンク52に養液供給管57を接続し、この養液供給管57から供給される培養液Wを除菌浄化ユニット3で浄化処理した後に、浄化養液タンク52に戻すことなく直接浄化栽培ベッド53に供給している。このため、戻りライン63から浄化養液タンク52に戻される混入物の混ざった培養液Wが使用されることがなく、より浄化効率の高くなっている培養液Wを植物Vに与えて育成効果を向上させることが可能である。
【0069】
また、循環ライン50の一部に閉回路による分岐循環ライン54を設けているため、既存の循環ラインをそのまま利用して除菌浄化処理した培養液Wの必要な植物Vをあらたに栽培できる循環ラインを設けることができる。
なお、この実施形態においても、前記実施形態と同様に栽培ベッド2・浄化栽培ベッド53に必要に応じて送風機7を設け、この送風機7に除菌浄化ユニット3から排出する排オゾンを供給するようにしてもよい。
【0070】
図6においては、除菌浄化ユニットの他例を示している。この例における除菌浄化ユニット70は、オゾン発生部71を有するオゾン発生ユニット72と、紫外線・光触媒ユニット73とが別体に設けられ、オゾン発生部71の下流側に紫外線・光触媒ユニット73を接続することにより、オゾン供給機能と、紫外線照射機能及び光触媒作用機能とを別々のユニットで機能させたものである。
【0071】
図7は、図6のオゾン発生部71を簡略化した模式図である。図において、オゾン発生部71は、中央部に金属棒74を有し、この金属棒74の外周側には、約0.5mm程度の隙間Sが形成されるように略円筒状の誘電体75が配設されている。誘電体75は、例えば、ガラス、セラミック、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等からなり、この誘電体75の入口側、出口側にそれぞれ、供給口76、吐出口77が形成される。また、誘電体75の外周側には、この誘電体75と接地した状態で接地体78が設けられる。接地体78は、例えば、金属或は水等の液体であればよく、本例においては、円筒状の金属とした。
【0072】
オゾン発生部71は、収納容器79に収納されることでオゾン発生ユニット72が形成される。この収納容器79には、乾燥空気の入口である空気入口ポート80と、オゾンガスの出口であるガス出口ポート81と、高圧の培養液Wの入口である培養液入口ポート82と、高圧の培養液Wの出口である培養液出口ポート83とが形成されている。このうち、空気入口ポート80は供給口76と、ガス出口ポート81は吐出口77と連通し、空気入口ポート80は、オゾン発生部71の内部を介してガス出口ポート81と連通している。一方、培養液入口ポート82と培養液出口ポート83は、収納容器79とオゾン発生ユニット72との空間を介して連通している。
【0073】
一方、図8の模式図に示した紫外線・光触媒ユニット73は、中央部に紫外線光源(紫外線ランプ)85を有し、この紫外線光源85の外周側には、例えば、石英ガラスからなり、この紫外線光源85を保護するための保護筒86が設けられている。更に、保護筒86の外周側には所定の内径を有する外筒87が設けられ、この外筒87と保護筒86との間に培養液Wの流れる流路88が形成されている。更に、流路88内には、光触媒89が配設されている。
【0074】
図6において、紫外線・光触媒ユニット73には、入口側接続口90、出口側接続口91が設けられ、この接続口90、91にはそれぞれ養液供給管92、養液戻り管93が接続されている。このうち、養液供給管92には分岐流路95が設けられている。
分岐流路95は、二次側が培養液入口ポート82に接続されている。また、この分岐流路95の途中には加圧ポンプ96が設けられ、加圧ポンプ96により分岐流路95からオゾン発生ユニット72に養液供給管92を流れる培養液Wの一部を供給できるようになっている。
【0075】
また、養液供給管92において、分岐流路95よりも二次側には戻り流路97が設けられている。この戻り流路97は、養液供給管92と培養液出口ポート83とを接続している。戻り流路97の途中にはエジェクター16が設けられ、このエジェクター16は、逆止弁15を介してガス供給路94によりガス出口ポート81と繋がっている。
【0076】
この養液栽培システムを作動させると、養液供給管92を介して入口側接続口90から紫外線・光触媒ユニット73内に培養液Wが供給される。このとき、培養液Wの一部は、分岐流路95を介してオゾン発生ユニット72の培養液入口ポート82より流入される。
【0077】
一方、オゾン発生ユニット72のオゾン発生部71においては、図示しない高圧電源から電圧を印加して金属棒74を高圧に帯電させた状態で、空気入口ポート80より空気、又は、空気よりも酸素濃度の高い気体を原料として供給すると、この気体は隙間Sを流れる。このとき、金属棒74と誘電体75・接地体78とにより隙間Sは放電空間となり、この隙間S内においてオゾンが生成される。このオゾンは、エジェクター16の働きにより吐出口77を介してガス出口ポート81から吐出され、溶存酸素とともに戻り流路97から養液供給管92を流れる培養液Wに混入される。
【0078】
この培養液Wは、分岐流路95に流れない培養液とともに紫外線・光触媒ユニット73内に流入する。紫外線・光触媒ユニット73内に流入した培養液Wは、流路88内の紫外線光源85と光触媒89とを通過して、紫外線照射機能と光触媒作用機能とによって除菌浄化される。更に、この下流側に、図示しない溶存酸素を増やす装置を設けてもよい。
【0079】
このように、本例では、除菌浄化ユニット70において、オゾン発生部71(オゾン発生ユニット72)と、紫外線・光触媒ユニット73が別体に形成され、この場合にも、前記実施形態と同様に、オゾンとともに溶存酸素が培養液Wに供給されることで、植物Vの育成促進が図られる。
しかも、この除菌浄化ユニット70は、オゾン発生部71と紫外線・光触媒ユニット73とを個別に作動させることができることにより、オゾン供給機能、又は、紫外線照射機能及び光触媒作用機能の何れかを必要に応じて単独で働かせることもでき、これにより、例えば、一方側の機能の作動中に停止側のメンテナンス等を行なうこともできる。更に、このように別体のユニットとしていることで、各ユニットの内部構造を簡略化できる。
【0080】
本例においては、紫外線・光触媒ユニット73の中央部に紫外線光源85を配置した構造としているが、この紫外線・光触媒ユニットは、図示しないが、保護筒の外側に紫外線光源、内側に光触媒をそれぞれ設けた構造としてもよい。この場合には、培養液Wは保護筒の内部を流れることになる。
【0081】
図9においては、オゾン発生部の他例を示したものであり、図6におけるオゾン発生部71と内部構造の異なるオゾン発生部100としたものである。オゾン発生部100は、金属製からなる接地電極101を有し、この接地電極101内に放電空間である隙間Sが設けられている。更に、この隙間Sには、気体が流れる空気入口ポート102とガス出口ポート103とが形成されている。
【0082】
また、接地電極101の空気入口ポート102とガス出口ポートの他面側には、誘電体104が配設され、この誘電体104には高圧電極板105が埋め込まれている。更に、この上には絶縁・放熱板106が設けられ、この絶縁・放熱板106の上には放熱板107が設けられている。
【0083】
オゾン発生部100は、養液供給管92から分岐されたバイパス流路108に接続される。このとき、ガス出口ポート103は、ガス供給路109により逆止弁15とエジェクター16とを介してバイパス流路108に接続され、ガス出口ポート103よりオゾン及び溶存酸素をバイパス流路108に供給できるようになっている。
【0084】
オゾン発生部100の動作時には、図示しない高圧電源により電圧を印加させ、高圧電極板105を高圧に帯電させた状態にし、空気入口ポート102より気体を供給する。このとき、誘電体104と接地電極101との間の隙間Sにオゾンが生成され、このオゾンと溶存酸素とがガス出口ポート103から吐出される。このオゾンと空気は、エジェクター16により培養液Wに混合される。
【0085】
更に、図示しないが、養液供給管92の下流側に前記例と同様に紫外線・光触媒ユニットを接続して除菌浄化ユニットを構成し、オゾン発生部100におけるオゾンと溶存酸素の供給後に紫外線・光触媒ユニットで除菌浄化することもできる。
この例におけるオゾン発生部100は、アース電極として培養液Wを本体内に流す必要が無いため、内部構造を簡略化できる。
【0086】
また、本発明の養液栽培システムは、除菌浄化ユニットの上流側に図示しないコンプレッサ(圧縮機)やフィルタ材、流体制御機を設けるようにしてもよい。この場合、コンプレッサによって0.2〜1MPa程度に空気を加圧したのちに流量制御機に送り、この空気を流体制御機によって1〜20L/minに流量調節して空間S等に流すようにする。これにより、エアポンプやエジェクターによる通常の吸い込みのみを行う場合に比較して1.3〜1.5倍程度のオゾンの発生量が得られる。
【0087】
更に、コンプレッサ等の機器と、フィルタ材、流体制御機に加えて、図示しないエアドライヤを設けるようにしてもよい。この場合、コンプレッサにより0.2〜1MPa程度に空気を加圧したのちに、エアドライヤを経由させて流量制御機にこの空気を送り、流体制御機により1〜20L/minに流量調節した後に空間S等に流すようにする。これにより、コンプレッサによる加圧に加えてより乾燥した空気を得ることができ、オゾンの発生量をより飛躍的に向上させることができる。
【0088】
ここで、図10のグラフにおいては、除菌浄化ユニット3に対してエアを流量5L/minにより供給したときの電圧とオゾン発生量の関係を示している。このグラフより、エアポンプのみの場合のオゾン発生量と、コンプレッサとエアドライヤを組合わせた場合のオゾンの発生量には約2.4倍の開きがある。また、コンプレッサを使用した場合、エアポンプ使用時と比較すると、1.4倍の効果が認められる(80Vにおいて)。
また、図のグラフは、コンプレッサの圧力を0.5MPaとした場合であるが、この圧力をより高くすることにより、オゾン発生量を更に増加させることもできる。
【0089】
なお、エアドライヤの代わりとして、図示しないシリカゲル等の乾燥剤、或は、冷凍式ドライヤを用いるようにしてもよく、この場合においても、エアドライヤを使用した場合と同等の効果が得られる。更には、図示しない酸素ボンベや酸素発生器(一般的には、PSA装置)を用いてオゾンの発生を増やすこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明における養液栽培システムの第1実施形態を示した概念図である。
【図2】除菌浄化ユニットの一例を示した正面図である。
【図3】除菌浄化ユニットの要部を示した拡大断面図である。
【図4】本発明における養液栽培システムの第2実施形態を示した概念図である。
【図5】外筒と内筒の隙間幅の違いによるオゾンの発生効率を示したグラフである。
【図6】除菌浄化ユニットの他例を示した概略図である。
【図7】図6におけるオゾン発生部の模式図である。
【図8】図6における紫外線・光触媒ユニットの模式図である。
【図9】オゾン発生部の他例を示した概略図である。
【図10】放電時における電圧とオゾンの発生量の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0091】
1 養液タンク
2 栽培ベッド
3 除菌浄化ユニット
4 供給ライン
5 戻りライン
6 循環ライン
7 送風機
52 浄化養液タンク
53 浄化栽培ベッド
54 分岐循環ライン
W 培養液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液肥である培養液を入れる養液タンクと栽培ベッドとの間を循環させる養液栽培システムであって、前記養液タンク内の培養液を除菌浄化ユニットで除菌浄化し、この除菌浄化ユニットは、前記培養液に紫外線を照射する紫外線照射機能と、紫外線が照射されない部分を含む前記培養液全体にオゾンを供給するオゾン供給機能と、オゾンよりも強い除菌能力と有機物の分解能力とを有する光触媒を前記培養液に作用させる光触媒作用機能とを有するユニットであることを特徴とする養液栽培システム。
【請求項2】
前記除菌浄化ユニットは、空気、又は、空気よりも酸素濃度の高い気体を原料としてオゾンを生成し、このオゾンを溶存酸素とともに前記培養液に気泡状態で混合させる機能を有するユニットである請求項1に記載の養液栽培システム。
【請求項3】
前記養液タンクと栽培ベッドとを供給ラインと戻りラインとにより接続して循環ラインを構成し、この循環ライン内の前記養液タンクに前記除菌浄化ユニットを接続した請求項1又は2に記載の養液栽培システム。
【請求項4】
前記栽培ベッドの植物の葉・茎に送風可能な送風機を設け、この送風機に前記除菌浄化ユニットから排出する排オゾンを供給した請求項3に記載の養液栽培システム。
【請求項5】
前記栽培ベッドと養液タンクとを供給ラインと戻りラインとにより接続して循環ラインを構成し、前記供給ラインから分岐して浄化養液タンクと浄化栽培ベッドとを有する分岐循環ラインを設け、この分岐循環ライン内の前記浄化養液タンクに前記除菌浄化ユニットを接続した請求項1又は2に記載の養液栽培システム。
【請求項6】
前記栽培ベッド・浄化栽培ベッドの植物の葉・茎に送風可能な送風機を設け、この送風機に前記除菌浄化ユニットから排出する排オゾンを供給した請求項5に記載の養液栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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