説明

養鶏生産物中のγ−リノレン酸の蓄積率向上のための飼料添加剤及びこれを含む飼料組成物

【課題】高価の月見草種子油の使用を最小化して畜産農家の費用負担を軽減し、家畜中のγ−リノレン酸の蓄積率を向上させて家畜の生産性を高めることができる飼料添加剤及びこれを含む飼料組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係るγ−リノレン酸強化飼料添加剤は、月見草種子油を水で希釈した後に濃縮して得られる液状または粉末状の乳化月見草種子油と、乳化月見草種子油と混合して粉末化するために添加する籾殻粉末と、乳化月見草種子油及び籾殻粉末と混合して粉末剤形化するために添加する賦形剤と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏生産物中のγ−リノレン酸の蓄積率を向上させるための飼料添加剤に関するもので、より詳しくは、家畜の生産性を向上させるために、γ−リノレン酸の蓄積率を高めることができる乳化月見草種子油の粉末を含む飼料添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
γ−リノレン酸(18:3n−6、γ−linolenic acid)は、皮膚老化防止、アトピー性皮膚炎の改善、血行改善、高血圧防止、及び骨粗鬆症の防止などに様々な効果を有する機能性物質としてよく知られている。γ−リノレン酸はオメガ6脂肪酸の一種であって、生体内で合成できない。したがって、γ−リノレン酸は必ず食品から摂取しなければならない必須脂肪酸である。
【0003】
上述したように、γ−リノレン酸の様々な機能が明らかになり、γ−リノレン酸は人体に必要な健康補助剤として常用されている。一方、家畜の場合、家畜の生産性を高めるために、家畜にγ−リノレン酸を含む月見草種子油を直接給与したり、レシチンのような乳化剤を用いて飼料添加剤の形態に加工して給与したりしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
γ−リノレン酸を含有する原料はほとんどを輸入に依存しており、高価である。さらに月見草種子油を家畜へ直接給与し、または乳化して飼料に添加する方法は、γ−リノレン酸の実際の給与量対比家畜中の蓄積率が非常に低いという問題点がある。
【0005】
こうした従来技術の問題点に鑑み、本発明者らは家畜中のγ−リノレン酸の蓄積率を効率的に高めることができる飼料を開発するための鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、月見草種子油を含有するγ−リノレン酸強化飼料添加剤を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、飼料添加剤を含む飼料組成物を提供することにある。
【0008】
本発明のまた他の目的は、飼料添加剤を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、月見草種子油が水で希釈した後に濃縮して得られる液状または粉末状の乳化月見草種子油と、乳化月見草種子油と混合して粉末化するための籾殻粉末と、乳化月見草種子油及び籾殻粉末と混合して粉末剤形化するための賦形剤と、を含むγ−リノレン酸強化飼料添加剤が提供される。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、飼料添加剤は、家禽類の給与用飼料に添加することができる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、乳化月見草種子油は、全飼料添加剤の総質量に対して20〜40質量%含まれることが好ましい。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、本発明による飼料添加剤を含有するγ−リノレン酸強化飼料組成物が提供される。
【0013】
本発明のまた他の実施形態によれば、月見草種子油を乳化剤及び水と混合して月見草種子油の希釈液を製造するステップと、月見草種子油の希釈液を濃縮して液状または粉末状の乳化月見草種子油を得るステップと、液状または粉末状の乳化月見草種子油を籾殻粉末及び粉末剤形のための賦形剤と混合して粉末化するステップと、を含むγ−リノレン酸強化飼料添加剤の製造方法が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、乳化月見草種子油は、全飼料添加剤の総質量に対して20〜40質量%含まれることが好ましい。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、籾殻粉末は、全飼料添加剤の総質量に対して30〜35質量%含まれることが好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、月見草種子油、水、及び乳化剤の質量%比は、50〜60%:40〜70%:0.1〜10%であることが好ましい。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、乳化剤は、全飼料添加剤の総質量に対して0.1〜5質量%のソルビタン脂肪酸エステル、0.1〜5質量%のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び0.1〜1質量%のポリオキシエチレングリセリンモノオレエートを含むことが好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、乳化月見草種子油を得るステップは、月見草種子油の希釈液を高濃度に濃縮する濃縮ステップと、濃縮された希釈液を撹拌して液状または粉末状の乳化月見草種子油を得るステップと、を含むことができる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、飼料添加剤は、養鶏生産物を生産するための家禽類の給与用飼料に添加することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態によれば、高価の月見草種子油の使用を最小化しながらも、給与対象である家畜中のγ−リノレン酸の蓄積率を向上できるため、畜産農家の費用負担を軽減し、家畜の生産性を高めることができる。
【0021】
なお、この発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例に係るγ−リノレン酸強化飼料添加剤の製造方法を示す工程図である。
【図2】図1の方法により製造されたγ−リノレン酸強化飼料添加剤を剤形化したイメージである。
【図3】表1、2の給与条件による鶏卵中のγ−リノレン酸の蓄積効果を示すグラフである。
【図4】表3、4の鶏肉の手羽肉中のγ−リノレン酸の蓄積効果を示すグラフである。
【図5】表3、4の鶏肉のもも肉中のγ−リノレン酸の蓄積効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるため、本願では特定実施例を図面に例示し、詳細に説明する。しかし、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物及び代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0024】
本願で用いた用語は、単に特定の実施例を説明するために用いたものであって、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文の中で明らかに表現しない限り、複数の表現を含む。本願において、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組合せたものの存在を指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組合せたものの存在または付加可能性を予め排除するものではないと理解しなくてはならない。
【0025】
他に定義しない限り、技術的または科学的用語を含んで、ここで用いられる全ての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
【0026】
一般的に用いられる予め定義しているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈すべきで、本願で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的意味に解釈しない。
【0027】
以下、添付した図面に基づいて、本発明の一実施例である家畜中のγ−リノレン酸の蓄積率を向上させる飼料添加剤、これを含む飼料組成物、及びその製造方法について詳細に説明する。
【0028】
まず、本実施例において家畜用飼料は飼料内容物と飼料添加剤とを含む。飼料内容物とは、家畜の餌として提供される一般的なものをいう。
【0029】
飼料添加剤は、液状または粉末状の乳化月見草種子油、籾殻粉末、及び添加剤を含む。
【0030】
乳化月見草種子油は、月見草種子油を高濃度に濃縮して液状または粉末状にしたものである。また、乳化月見草種子油は、γ−リノレン酸(18:3n−6、γ−linolenic acid)を含む。
【0031】
籾殻粉末は、通常、飼料に含まれるもので、稲の実の外皮を指す。籾殻粉末は、液状または粉末状の乳化月見草種子油と混合されて粉末形態に剤形化するためのものである。
【0032】
粉末剤形のための賦形剤としてはシリカを用いることができる。本発明による飼料添加剤は、給与対象の家畜に必要とされるミネラル、栄養素などを含むことができる。
【0033】
また、本発明によるγ−リノレン酸強化飼料添加剤は、鶏肉、鶏卵などを生産する家禽類の給与用飼料に混合することができる。
【0034】
次に本発明を実施例を通して詳しく説明するが、これら実施例はただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例により制限されるものではない。
【0035】
飼料添加剤の製造方法
図1は、本発明の一実施例による飼料添加剤の製造方法を示す工程図である。
【0036】
図1を参照すると、本実施例による飼料添加剤の製造方法では、先ず、月見草種子油を水と混合して月見草種子油の希釈液を製造する。月見草種子油は家畜に蓄積しようとするγ−リノレン酸を含む。月見草種子油に含まれているγ−リノレン酸の含量は約8〜10%であると報告されている(Journal of Korean Society of Crop Science 352 176−178)。具体的に、γ−リノレン酸の含量が約8〜10%である液状の月見草種子油と水を混合して月見草種子油の希釈液を製造する。
【0037】
月見草種子油の希釈液を製造するステップにおいて、月見草種子油を水で効果的に希釈するために乳化剤を用いてもよい。乳化剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセリンモノオレエートを含むことができる。
【0038】
また、乳化剤は、水と効果的に希釈されるように、月見草種子油の含量に応じて様々な濃度比率で適用することができる。月見草種子油:水:乳化剤の好ましい質量%濃度比率は50〜60%:40〜70%:0.1〜10%である。
【0039】
また、乳化剤は0.1〜5質量%のソルビタン脂肪酸エステル、0.1〜5質量%のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び0.1〜1質量%のポリオキシエチレングリセリンモノオレエートを含むことができる。
【0040】
月見草種子油が水で均一に希釈されたか否かを確認するために、多数回の中間テストを行うことができる。中間テストは肉眼でも行うことができる。
【0041】
次に、月見草種子油の希釈液を濃縮して乳化月見草種子油を得るステップを行う。乳化月見草種子油を得るステップは濃縮ステップ及び撹拌ステップを含むことができる。
【0042】
濃縮ステップにおいて、月見草種子油の希釈液を高濃度に濃縮するために濃縮器を用いてもよい。ここで、濃縮器は、月見草種子油の希釈液の特性に応じて、様々に適用することができる。例えば、濃縮器として周辺電動式濃縮器、中央電動式濃縮器などが挙げられる。
【0043】
濃縮された月見草種子油の希釈液に再び4〜9質量%の水を添加し、その後10,000rpmに設定した撹拌器で処理可能である。使用可能な撹拌器は、プロペラ型、アンカー型、タービン型、螺旋軸型など様々であり、rpmも様々に設定できる。月見草種子油の希釈液は、撹拌器の種類に応じて液状または粉末状の乳化月見草種子油となる。
【0044】
次に、液状の乳化月見草種子油を粉末化する。粉末化のために乳化月見草種子油、籾殻粉末、及びその他の添加物を混合して粉砕する。ここで、その他の添加物は、賦形剤、ミネラル、栄養素などが挙げられる。
【0045】
乳化月見草種子油が液状である場合は、籾殻粉末及びその他の添加物と混合して粉砕することができる。乳化月見草種子油が水分を含んだ固状である場合は、粉砕して籾殻粉末及び賦形剤と混合してもよく、籾殻粉末及び賦形剤と混合した後に粉砕してもよい。
【0046】
乳化月見草種子油、籾殻粉末、及び賦形剤の濃度は様々に設定できる。賦形剤としてシリカを用いてもよく、給与対象の家畜に応じて必要とされるミネラル、栄養素などを添加することができる。
【0047】
例えば、籾殻粉末は、乳化月見草種子油及びその他の添加物を含む全飼料添加剤の総質量に対して、30〜35質量%含まれることができる。
【0048】
ただし、粉末化ステップにおける乳化月見草種子油は、全飼料添加剤に対して20〜40質量%含まれることが好ましい。これは、乳化月見草種子油の添加が40質量%を超過すると、飼料添加剤内の水分含量が高くなって粉末状に剤形化することが困難であり、乳化月見草種子油の添加が20質量%未満であると、γ−リノレン酸の含量が低くて家畜中に所定水準以上のγ−リノレン酸を蓄積することができないからである。
【0049】
本発明の一実施例によるγ−リノレン酸強化飼料添加剤の効果を検証するために、産卵鶏及び肉鶏を対象として試験を行った。試験条件は、月見草種子油を直接給与する方式と本発明の実施例により飼料添加剤を含む飼料を給与する方式に分けられる。また、飼料添加剤を含む飼料を給与する方式においては、産卵鶏及び肉鶏にそれぞれ異なる添加量の乳化月見草種子油を給与した後に、産卵鶏及び肉鶏中のγ−リノレン酸の蓄積率を比較した。
【0050】
<乳化月見草種子油を含有する粉末飼料の製造方法>
目的を達成するために、本発明による飼料組成物は、液状のγ−リノレン酸が8〜10%含まれた月見草種子油(γ−リノレン酸の濃度が8.05%と公示された月見草種子油を購買(www.62mart.co.kr参照))を用いて乳化した後に剤形化するステップを経て得られる。これを、図1を参照して説明する。
【0051】
本発明は、月見草種子油を60質量%、ソルビタン脂肪酸エステルを5質量%以下、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを5質量%以下、及びポリオキシエチレングリセリンモノオレエートを0.5〜1質量%混合した混合物に、水30〜40質量%を添加することにより、一次的に液状の乳化月見草種子油を得る。また、最終生産物であるγ−リノレン酸強化飼料組成物を得るために、製造された乳化月見草種子油40質量%を25〜30質量%のシリカと混合し、その後、再び35〜40質量%の籾殻を添加して混合した後、粉砕して粉末化したγ−リノレン酸強化養鶏飼料組成物を得る。
【0052】
<飼料添加剤の効果試験>
[試験例1]産卵鶏に対する給与試験
濃縮された乳化月見草種子油が、籾殻粉末及びその他の添加物の総質量対比24質量%の濃度を有するように製造されたγ−リノレン酸強化飼料添加剤を産卵鶏に給与した後、仕様試験を行った。
【0053】
産卵鶏への給与条件は、無添加(比較例1)、月見草種子油を直接給与(γ−リノレン酸含量120mg/飼料100g、比較例2)、γ−リノレン酸飼料添加剤を給与(γ−リノレン酸含量20mg/飼料100g、実施例1)、γ−リノレン酸飼料添加剤を給与(γ−リノレン酸60mg/飼料100g、実施例2)することであった。給与するγ−リノレン酸の濃度は、購買した月見草種子油に含まれているγ−リノレン酸の濃度が8.05%であることを考慮し、最終濃度に合わせて希釈して製造したことを表示したものである。
【0054】
比較例2において、γ−リノレン酸含量120mgは、実施例1と2の飼料添加剤に含まれたγ−リノレン酸含量20mgと60mgの相対値である。具体的に、飼料添加剤(実施例1、2)に含まれたγ−リノレン酸含量の6倍及び2倍に該当するγ−リノレン酸が月見草種子油(比較例2)に含まれていることを示す。以下に、試験例を説明する。
【0055】
【表1】

【0056】
表1は給与条件による12週間の産卵鶏の生産性を示す。表1を参照すると、産卵鶏の産卵率は、実施例1と2が比較例1に比べてそれぞれ2%、6%向上された。卵重(鶏卵の質量)は、実施例2が比較例1及び2に比べて重く、飼料要求率は、実施例2が比較例1、2に比べて改善されたことが分かる。
【0057】
したがって、結果から、乳化月見草種子油が産卵鶏の生産性を向上させる効果を有し、特に本発明によるγ−リノレン酸強化飼料添加剤が含まれた飼料を給与する方法が、月見草種子油を直接給与する方法よりも原料対比生産性をさらに向上することが分かった。
【0058】
【表2】

【0059】
表2は、表1における比較例2と実施例1及び2とを、鶏卵中のγ−リノレン酸の蓄積量について比較したものである。比較例1では全期間に亘って鶏卵中にγ−リノレン酸が検出されなかった。
【0060】
実施例1の場合、γ−リノレン酸含量が比較例2に比べて6分の1に減少したが、鶏卵中のγ−リノレン酸含量は50%以上に維持された。これに対して、γ−リノレン酸含量を比較例2に対し50%減少させた実施例2では、月見草種子油の90%以上のγ−リノレン酸の蓄積効果を示した。
【0061】
図3は、表1、2の給与条件による鶏卵中のγ−リノレン酸の蓄積効果を示す。
【0062】
図3を参照すると、γ−リノレン酸の実際給与量に対する卵中の蓄積比率は、実施例1と実施例2において比較例2よりも249%、83%も向上したことが分かる。
【0063】
[試験例2]肉鶏に対する給与試験
濃縮された乳化月見草種子油が籾殻粉末及びその他の添加物の総質量に対して24質量%の濃度で含まれるγ−リノレン酸強化飼料添加剤を肉鶏に給与した後、仕様試験を行った。
【0064】
給与方法は、月見草種子油と開発飼料の効果を比較するために、γ−リノレン酸の含量を月見草種子油に対し1/2及び同等とした。肉鶏への給与条件は、無添加(比較例1)、月見草種子油を直接給与(γ−リノレン酸含量80mg/飼料100g、比較例2)、γ−リノレン酸飼料添加剤を給与(γ−リノレン酸含量40mg/飼料100g、実施例1)、γ−リノレン酸飼料添加剤を給与(γ−リノレン酸含量80mg/飼料100g、実施例2)することとした。
【0065】
【表3】

【0066】
表3は給与条件による5週間の肉鶏の生産性を示すものである。終了体重は、実施例1と2において比較例1に比べてそれぞれ6%、8%増加し、比較例2と比較しても5%、7%増加した。また、増体量及び飼料要求率は、実施例1と2において、比較例1と2よりも改善した。
【0067】
したがって、乳化月見草種子油が肉鶏の生産性を向上する効果があり、特に本発明によるγ−リノレン酸強化飼料添加剤が含まれた飼料を給与する方法が、月見草種子油を直接給与する方法よりも原料対比肉鶏の生産性をさらに向上することが分かった。
【0068】
【表4】

【0069】
表4は肉鶏(もも肉、手羽肉)中のγ−リノレン酸の含量を示す(mg/飼料100g単位)。実施例1では、月見草種子油対比γ−リノレン酸含量が比較例2の50%以下であるが、手羽肉及びもも肉中のγ−リノレン酸の蓄積量は70%以上である。
【0070】
実施例2では、同一水準の比較例2に比べて、γ−リノレン酸の蓄積率が手羽部位で137%を示し、もも部位で131%を示した。すなわち、本発明によるγ−リノレン酸強化飼料添加剤が肉鶏中のγ−リノレン酸の蓄積率に効果を有することを確認できた。これにより、月見草種子油を直接給与する方法よりも、γ−リノレン酸強化飼料添加剤を給与する方法がより効果的に肉鶏にγ−リノレン酸を蓄積させることが分かった。
【0071】
図4及び5は、表3及び4の肉鶏部位(手羽肉及びもも肉)別のγ−リノレン酸の蓄積効果を説明するグラフである。
【0072】
図4は、月見草種子油対比肉鶏(手羽肉)中のγ−リノレン酸の蓄積効果を示すグラフである。図4を参照すると、肉鶏の手羽肉では、実施例1及び実施例2におけるγ−リノレン酸の蓄積率が、比較例2に対しそれぞれ37%向上したことが分かる。
【0073】
図5は、月見草種子油対比肉鶏(もも肉)中のγ−リノレン酸の蓄積効果を示すグラフである。図5を参照すると、肉鶏のもも肉では、実施例1及び実施例2におけるγ−リノレン酸の蓄積率が、比較例2に対しそれぞれ50%、31%向上したことが分かる。月見草種子油とγ−リノレン酸強化飼料添加剤を比較すると、肉鶏中のγ−リノレン酸の蓄積率はγ−リノレン酸強化飼料添加剤が著しく高いことが分かった。
【0074】
結果的に、γ−リノレン酸強化飼料添加剤を給与することにより、産卵鶏の産卵率及び卵重を向上させ、飼料要求率を改善するだけでなく、肉鶏の生産性を向上させる。さらに、γ−リノレン酸強化卵及び肉鶏を生産するに当たって、γ−リノレン酸強化飼料添加剤を用いることにより、月見草種子油対比30%以上のγ−リノレン酸含量の蓄積効果があり、かつ原料使用量を70%以上低減することができる。
【0075】
図2は、図1の方法により製造された飼料添加剤を剤形化した図である。
【0076】
剤形化とは、飼料添加剤の形態を使用目的や用途に適した形態にすることである。例えば、飼料添加剤を用いた家畜用飼料は様々な家畜に適用できるため、家畜用飼料の大きさ、水分含量、形態などを考慮して製品化することになり、このような製品化するステップを剤形化ステップという。
【0077】
本発明の一実施例において、飼料添加剤は乳化月見草種子油の粉末を籾殻粉末及びその他の添加物と混合して、液状ではなく、粉末形態に剤形化することができる。
【0078】
したがって、本発明による家畜中のγ−リノレン酸の蓄積率を向上させることができる飼料添加剤、これを含む飼料組成物、及びその製造方法は、高価の月見草種子油の使用を最小化して畜産農家の費用負担を軽減し、家畜中の月見草種子油に含まれているγ−リノレン酸の蓄積率を向上させて家畜の生産性を高めることができる。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は実施の形態に記載の範囲には限定されない。実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
月見草種子油を水で希釈した後に濃縮して得られた液状または粉末状の乳化月見草種子油と、
前記乳化月見草種子油と混合して粉末化するための籾殻粉末と、
前記乳化月見草種子油及び籾殻粉末と混合して粉末剤形化のための賦形剤と、
を含むγ−リノレン酸強化飼料添加剤。
【請求項2】
家禽類の給与用飼料に添加される請求項1に記載のγ−リノレン酸強化飼料添加剤。
【請求項3】
前記乳化月見草種子油は、全飼料添加剤の総質量に対して20〜40質量%含まれる請求項1に記載のγ−リノレン酸強化飼料添加剤。
【請求項4】
請求項1から3いずれか記載の飼料添加剤を含有するγ−リノレン酸強化飼料組成物。
【請求項5】
月見草種子油を乳化剤及び水と混合して月見草種子油の希釈液を製造するステップと、
前記月見草種子油の希釈液を濃縮して液状または粉末状の乳化月見草種子油を得るステップと、
前記液状または粉末状の乳化月見草種子油を籾殻粉末及び粉末剤形化のための賦形剤と混合して粉末化するステップと、
を含むγ−リノレン酸強化飼料添加剤の製造方法。
【請求項6】
前記乳化月見草種子油を、全飼料添加剤の総質量に対して20〜40質量%含まれるように混合する請求項5に記載のγ−リノレン酸強化飼料添加剤の製造方法。
【請求項7】
前記籾殻粉末を、全飼料添加剤の総質量に対して30〜35質量%含まれるように混合する請求項5に記載のγ−リノレン酸強化飼料添加剤の製造方法。
【請求項8】
前記月見草種子油の希釈液を製造するステップにおいて、月見草種子油、水、及び乳化剤の質量%比が50〜60%:40〜70%:0.1〜10%である請求項5に記載のγ−リノレン酸強化飼料添加剤の製造方法。
【請求項9】
前記乳化剤が、全飼料添加剤の総質量に対して0.1〜5質量%のソルビタン脂肪酸エステル、0.1〜5質量%のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び0.1〜1質量%のポリオキシエチレングリセリンモノオレエートを含む請求項8に記載のγ−リノレン酸強化飼料添加剤の製造方法。
【請求項10】
前記乳化月見草種子油を得るステップが、
前記月見草種子油の希釈液を高濃度に濃縮する濃縮ステップと、
前記濃縮された希釈液を撹拌して液状または粉末状の乳化月見草種子油を得るステップと、を含む請求項5に記載のγ−リノレン酸強化飼料添加剤の製造方法。
【請求項11】
前記飼料添加剤が、養鶏生産物を生産するための家禽類の給与用飼料に添加される請求項5に記載のγ−リノレン酸強化飼料添加剤の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−154854(P2010−154854A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280287(P2009−280287)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(305039161)大韓民国農村振興庁 (1)
【Fターム(参考)】