説明

香料および芳香組成物を生成するための方法および装置

本発明は、塩基組成物のグループと関連付けられるレシピベクトルと属性ベクトルを含む組成物データベースを使用して香料および/または芳香組成物を生成するための方法に関する。本発明の方法に従ってターゲット属性ベクトルが定義され、該ターゲット属性ベクトルの少なくとも1つの環境の中でのレシピベクトルの属性ベクトルへの変換を達成する作用子が決定される。また、ターゲットレシピベクトルは、前記作用子を使用してターゲット属性因子に変換され、定義された物質成分が該ターゲットレシピベクトルに従って互いに比例して混合されるという条件の下で決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方法を実行するための装置に関するだけではなく、香料および/または芳香組成物を生成するための方法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
香水および香りの製造の分野では、絶えず、それぞれ最も多様な要望を満たさなければならない新しくまたは改質された香料および芳香に対するニーズがある。この関連の一般的な問題は、例えば、ドイツ特許出願公開公報第10144816A1号に説明されている。適切な香料と芳香の探求は、特にそれぞれ香料と芳香の認知と、においと着香物質の化学的な構造の関係が十分に知られていないという事実のために特に難しくなっている。さらに、公知のにおいと着香物質の構造組成におけるマイナーな変化がそれぞれの嗅覚特性と香りの特性の強力な変化を生じさせることがあることが判明している。複数のにおいと着香物質の混合物からなる一般的に使用されている香料と芳香組成物の関係はなおさらに複雑である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
欧州特許出願公開公報第1271140A1号は、分散した液相で食品の感覚属性を決定するための方法を説明している。食品のサンプルがそれによって、可能な範囲まで食品の摂取中に口の中の条件に一致する環境に入れられる。その結果、感覚属性の予測が、これらの条件下での液相の空間的な分布に基づいて行われる。
【0004】
しかしながら、香料および芳香組成物の感覚属性の一般的な予測を行うことは可能ではない。加えて、欧州特許出願公開公報第1271140A1号は、特に香料と香りの製造の分野で提起されている所定の感覚プロファイルに可能な限り近づく新しい生成物(creations)の製造のために、公知の感覚属性をそれらの実用化を鑑みて取り扱うという問題に取り組んでいない。
【0005】
しばらく前には感覚特性を定量化する上で使用される、複雑な印象と関係を可能な限り客観化するために、さまざまな評価計器が開発された。さらに、1974年頃に導入された定量記述分析(QDA)は、例えばいわゆるQFP法(「定量香りプロファイリング(「Quantitative Flavor Profiling」)へと開発された。XP008033289(C.R.Stampanoni、定量香りプロファイリング。香り認知の効果的なツール。食品マーケティングと技術(Quantitative flavor profiling. An effective tool in flavor perception. Food Marketing and Technology)、1993、感覚部門(Sensory Dep.)、Glvaudan-Roure Flavor Ltd.、スイス、ジューベンドルフ(Dubendorf、Switzerland)、第7巻、第1号、1993年2月、4〜8ページ)を参照すること。このような方法は、使用されている被験者により、香料および/または芳香組成物のほぼ独立した評価および説明を可能にする。しかしながら、本方法論を、新しい香料および/または芳香組成物(これ以降ともに「組成物」と呼ばれる)の開発と生成のため操作上明確に定められた概念に変換することは、これまで説明されてこなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、前記の不利な点および制限が回避されるように、香料および/または芳香組成物を生成するための方法を指定することである。この課題は請求項1に定められる方法によって、および本発明による請求項9に定められる装置によって解決される。
【0007】
本発明の方法に従って、塩基組成物のグループと関連付けられている多くのレシピベクトルと属性ベクトルから構成される組成物データベースで開始する。前記塩基組成物のそれぞれ1つは、所定の物質成分を混合することにより製造することができ、個々の物質成分の割合は、対応するレシピベクトルによって表される。さらに、塩基組成物の選択された感覚属性の特徴に関する評価結果が入手可能であり、塩基組成物のそれぞれ1つに関連付けられた属性ベクトルの形で表現される。本発明による方法は以下の、
a)ターゲット属性ベクトルを指定するステップと、
b)少なくとも該ターゲット属性ベクトルの環境の中でレシピベクトルから属性ベクトルへの変換を達成する作用子を決定するステップと、
c)前記作用子を使用することによってターゲット属性ベクトルに変換されるという条件で、ターゲットレシピベクトルを確立するステップと、
d)該ターゲットレシピベクトルに従った割合で該指定された物質成分を混合するステップと、
からなる。
【0008】
この文脈では、その用途に応じて必要とされる溶剤、担体物質等も多様な香料および/または芳香物質に加えて「物質成分」と見なすことができる。
【0009】
香料および/または芳香組成物を作り出すために使用される物質成分の割合を指定する、数値の順序付けられた級数は、「レシピベクトル」と見なされる。n番目の組成物の該レシピベクトルの(代数的な意味で)m番目の成分は、該物質成分「m」が前記組成物「n」の中でどのような比率を示すのかを示している。
【0010】
「属性ベクトル」は、該レシピベクトルと同様に、個々の感覚属性の数値評価結果を指定する数値の順序付けられた級数として表現することができる。
【0011】
本発明による方法は、塩基組成物のグループに関する情報を備える組成物データベースを使用し、それによって一方では―該レシピベクトルの形で表される―該組成物、および他方では―該属性ベクトルの形で表される―感覚属性が塩基組成物ごとに記憶される。
【0012】
香料および/または芳香組成物は、この組成物データベースに基づいた所望される属性特性をもって生成できる。該所望される感覚属性と意図される感覚属性は、それにより「ターゲット属性ベクトル」として示され、個々の感覚属性の所望される数値を示す数値の順序付けられた級数の形をとって表現される。その結果、求められている組成物のための混合物支持と見なされるべき「ターゲットレシピベクトル」が決定される。このために、既に該組成物データベースに記憶されており、該改質された属性ベクトルに最も近く、その結果、関連付けられたレシピベクトルが公知である属性ベクトルは、少なくとも参考にされる。これらの属性ベクトルとレシピベクトル間の該公知の関係に基づいて、作用子は確立され、少なくとも該改質された属性ベクトルの環境において、レシピベクトルから属性ベクトルへの変換を達成する。以後、該ターゲットレシピベクトルは追求され、そのために、前記に確立された作用子を使用することによって該所望されるターゲット属性ベクトルへと変換され得る特徴を有する必要がある。最後に該追加有された組成物は、該指定された物質成分を該ターゲットレシピベクトルによる割合で混合することにより作り出される。
【0013】
本文脈では、新しいが、まだ公知ではない組成物の作成のため、特に使用できる組成物の生成のための方法に取り組んでいる。しかしながら、該方法は多くの塩基組成物に関する情報を含んだ組成物データベースに基づいている、つまり該塩基組成物の内の1つの属性ベクトルは多くの場合、該ターゲット属性ベクトルを指定するときに所望される使用法(direction)で使用され、改質されるため、「生成」は既に特徴付けられた組成物の「改質」と見なすこともできる。用語「生成」および「改質」は、以後これを背景にして同等物として使用される。
【0014】
本発明の追加の目的は、本発明による該方法を実行するための装置を指定することである。この課題は、請求項9に定められる装置によって達成される。本発明による該装置は、データ処理装置だけではなく、それにより制御される混合装置も特色とし、該データ処理装置は、イメージング作用子の決定のための手段、属性ベクトルの入力のための手段、改質されたレシピベクトルの計算のための手段、および該レシピベクトルに従って整形される制御信号の該混合装置への転送のための手段だけではなく、少なくとも1つの組成物データベースの入力、記憶および取り出しのための手段も備える。
【0015】
該混合装置は以下の構成要素、
a)個々の物質構成要素で充填できる複数の保管容器と、
b)複数のレセプタクルと、
c)香料および/または芳香組成物を作り出すために該対応する保管容器から該レセプタクルへ指定された量の個々の物質成分をもたらすための制御自在な供給装置と、
を特色とする。
【0016】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項で定められる。
【0017】
組成物データベースを作り出すための好ましい方法は、請求項2に定められ、以下の手順ステップ、
a)塩基組成物に関連付けられる各レシピベクトルに従った割合で該物質成分を混合することにより、塩基組成物のグループを作成するステップと、
b)該選択された感覚属性と、該関連付けられた属性ベクトルの作成に関して各塩基組成物を定量的に評価するステップと、
c)各塩基組成物に関連付けられるベクトルが互いに関して、および該塩基組成物に関して使用可能であるように該レシピベクトルと属性ベクトルを記憶することにより該組成物データベースを作成するステップと、
を備える。
【0018】
各組成物に関連付けられている該ベクトルが互いに関して、および該組成物に関して使用可能であるという事実のため、該組成物と香料および/または芳香組成物の該感覚属性の間のきわめて複雑な関係を体系的に測定でき、追加の分析のために使用できる。
【0019】
一般的に知られているように、香料および/または芳香組成物のための感覚属性の該評価は、個人による感覚評価が、多くの場合、対象となる影響を与える要因に基づいてかなりの変則性を示すという事実のために難しくなる。したがって、限定可能な(qualifiable)手順を使用することが好ましい。これは、請求項3に記載の定量記述分析によって実施できる。
【0020】
有利なことに、定量評価から生じる属性の選択された部分だけが、属性ベクトルの作成に使用される。これらの属性は、請求項4に記載の要因分析によって有利に選択される。
【0021】
レシピベクトルから属性ベクトルへの変換を達成する作用子の設定は、複数の非常に異なるレシピが非常に類似する感覚属性の組成物につながることがあるという事実のために難しくなることがある。したがって、請求項5に記載の方法が有利に使用され、該組成物データベースの属性ベクトルとレシピベクトル間の全単射関係が、改質された属性ベクトルの環境における局所的な状況に基づいて該求められている作用子を設定するために、多数の回帰ネットワークおよび/または神経回路網、および/または専門家システムによって使用される。
【0022】
香料および芳香組成物のグループを調製するときには、素晴らしい香料と香りの調子(flavor note)を定めるような、基礎として役立ついくつかの物質成分に基づいて物質成分を選択的に添加することにより、感覚属性がわずかに異なる一連の組成物を構築することが適切である。基本的に、これには異なる手順を適用できる。また、請求項6に記載される統計試験計画によって有利に実行できる。この目的のために設計された装置は、請求項9に定められている。それによりレシピベクトルの生成のために提供される手段は、記憶、つまり該組成物データベースの範囲内で該生成されたレシピベクトルを記憶するための手段だけではなく、データ入力、データ処理、およびデータ出力のための手段も備える、プログラム可能なレシピモジュール内で特に作成できる。
【0023】
所望される感覚属性の組成物を探求するために、特に該組成物ベクトルで既に使用可能である属性ベクトルの改質と見なすことができる対応する属性ベクトルが有利に指定される。該改質は特に、特定の属性が強化または弱体化されなければならない、という事実から構成できる。有利なことに、このような改質は、例えばモニタまたはコンピュータマウス等を介して適切な視覚化および入力手段に基づいて対話的に実施される。未知の組成物の所定の香料および/または芳香組成物を複製するという要望が存在するのではあるが、改質された属性ベクトルは、例えば請求項3に記載の定量記述分析による属性分析が、前記組成物のために実施できる、という事実により請求項7に従って決定できる。
【0024】
属性ベクトルを視覚化し、処理するためには、最も多様な種類のグラフィック表現が可能である。属性ベクトルは、特に請求項8に記載の、極図表、いわゆる「クモの巣」の形で有利に表現される。相互の中心から発する、長さが問題の属性の指定の測定値であるビームセクションが各属性に関連付けられる。有利なことに、ビームは等距離角度で配列される。
【0025】
本発明の実施例は、図面に基づいてさらに詳しく以下に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
香料および/または芳香組成物の生成のために図1に表示されている装置は、データ処理装置2と、それにより制御される混合装置4とを備える。混合装置4は、香料および/または芳香組成物のための複数のレセプタクル8、8a、8b、8c等−例えば試薬ガラス―だけではなく、個々の物質成分で充填できる複数の保管容器6、6a、等−例えば小さなガラス瓶等−も特色とする。
【0027】
制御自在の供給装置10は、圧力ガス源によって供給され、図示されておらず、そこから供給管14、14a等が分岐して、該個々の保管容器6、6a等につながる、圧力ガス管12を備える。さらに、各保管容器6、6a等は、本来、関係している該保管コンテナの底部にまで及ぶ立上りダクト18、18a等を備えている。該個々の立上りダクト18、18a等は、該保管容器から、充填ステーション24に属する充填アーム22に向かって離れて位置するそれらの末端20、20a等で束ねられている。加えて、各立上りダクト18、18a等は、制御自在な弁16、16a等を含む。これらの保管容器6、6a等のそれぞれの供給管14、14a等および立上りダクト18、18a等は、加圧シールを生じさせる容器蓋26、26aを通っている。立上りダクト18の中で対応する弁16は、保管容器6の中に入れられている特定の量の物質成分をレセプタクル8に移動させるために開かれる。保管容器6の中の過剰圧力により、該物質成分は弁16を通って、充填アーム22までずっと立上り管18内で加圧される。
【0028】
さらに、混合装置4は、周辺に、その範囲全体に分散する複数の開口部30が備えられる、本来水平に装置されるターンテーブル28を備える。図1から明らかであるように、個々のレセプタクル8、8a、8bおよび8cが個々の開口部30の中のターンテーブル28の上に掛けられる。この目的のために、該レセプタクル8、8a、8b、8c等は開口部30の幅を凌ぐ上部カラーを特徴とし、それはレセプタクル8、8a、8b、8c等の吊り下げられた保管のために、支持表面が作り出されている。ターンテーブル28は、その中心軸Aの上で回転でき、加えて、ここに表示されている軸に沿った方向の下部位置によって上部位置に動かすことができる。ターンテーブル28の上に本来同軸で位置するカバーディスク32は、ターンテーブル28の中で垂れ下がるレセプタクル8、8a、8b、8c等のための上部カバーを作り出す。しかしながら、カバーディスク32は、明確化のため、ターンテーブル28に比べて幾分持ち上げられて図1に表している。
【0029】
さらに、充填ステーション24は、その上部に配置されるレセプタクル8に送られる異なる物質成分の量をそれによって正確に決定できる計量装置34を含む。図1から明らかであるように、充填アーム22、充填されるレセプタクル8、および計量装置34は本来、互いに上下に垂直に設置されている。カバーディスク32の隙間36は計量装置34の上に設置されるレセプタクル8のために自由な通路を残す。
【0030】
レセプタクル8が無事に充填された後に、カバーディスク32と充填アーム22は、レセプタクル8が解放されるまで最初に持ち上げられる。加えて、ターンテーブル28は、レセプタクル8がそこから離れて垂れ下がるまで、持ち上げられる。以後、ターンテーブル28は、充填される次のレセプタクル8aが計量装置24の上に設置される範囲まで中心軸Aの回りで回転される。
【0031】
その後ターンテーブル28は引き下げられ、その結果レセプタクル8aは計量装置24上に直立するようになる。最後に、カバーディスク32がターンテーブル28で垂れ下がるレセプタクル8、8b、8c等の上部まで引き下げられる。さらに、充填アーム22は、立上りダクト18、18a等の末端部20、20a等が、これから充填可能なレセプタクル8aの口かねの内部に、またはほぼ内部に位置する範囲まで、再び引き下げられる。
【0032】
ターンテーブル28、充填アーム22およびカバーディスク32の前述された運動は、データ処理装置2によって制御される、簡略な概略で表現されている牽引グループ38に影響される。
【0033】
さまざまな交換可能なターンテーブルを設けることが適切である。第1のターンテーブルは、例えば、最高20gまで充填できる64の小さい方の容器のために、また第2のターンテーブルは、最高100gまで充填できる28の大きい方の容器のために、設けることができる。
【0034】
装置は、有利なことに複数の、例えば4つの充填ステーション、および対応する数の計量装置、充填アーム、弁グループ等から構成され、その結果として多数のレセプタクルの充填が相応して加速可能になる。
【0035】
データ処理装置2は、データの入力、記憶、処理および取り出しのために使用されるコンピュータ、記憶媒体、モニタ、コンピュータマウス等の公知の機能グループを特色とする。
【0036】
関連する手順ステップに基づいて以後にさらに明確にされるように、データ処理装置2は、イメージング作用子を決定するための手段、属性ベクトルの入力のための手段、改質されたレシピベクトルの計算のための手段、および該レシピベクトルに従って整形される制御信号の混合装置4への転送のための手段だけではなく、特に、少なくとも1つの組成物データベースを入力、記憶、および取り出すための手段をも備える。
【0037】
香料および/または芳香組成物のレシピおよび感覚データ―以後「組成物」と云う―は、前述された装置を用いて管理される。ユーザは、感覚特徴に従って使用可能なデータベースを意図的に通過し、表示されている組成物のレシピを有することができる。該レシピは、それらが必要とされる感覚特徴を有していないときには、改質手順を活用して改質できる。該所望される感覚特徴に十分でなければならない複数の新しいレシピは、それにより作成される。過去に存在している塩基組成物およびそれらの感覚評価は、改質手順の基礎をなす。該改質手順の運転モードだけではなく、これらのデータの調査と分析もさらに後述される。
【0038】
実用化において、組成物のグループをいわゆる「モジュール」として見なし、それにより該各モジュールが所望される香料または芳香使用法(direction)に関連付けられることの大切さを証明している。このようなモジュールの開発は図2に描かれている。例えば、マンゴーの芳香のモジュールを作り出すためには、最初に、すでにマンゴーの芳香で使用されていた、あるいは該果物の中に自然に存在する成分について、技術文献とデータベースを検討する。このような物質成分の例えば10から20を無事に選択してから、毎回、数個の物質成分が互いに混合される組成物のグループが作成される。
【0039】
応用例の分野に応じて、通常の溶剤、担体物質等も、該芳香成分に加えてその中でやはり混合される。物質成分は、8から15グラムが入る試薬ガラスの中で、ここに説明されるように装置を用いて投与され、それにより最高64個の組成物を同時に製造できる。このようにして製造される各組成物は、該組成物を作り出すために使用される該物質成分の比率を示すレシピベクトルによって特徴付けられる。
【0040】
例えば14個の組成物K−K14を、33個の物質成分S−S33から作り出すことが以下の代数標記に表現され、
(K)=R(S) (1)
それにより該組成物ベクトル(K)は、寸法4の列ベクトルであり、該物質成分(S)は寸法33の列ベクトルであり、レシピ行列Rは14行と33列の行列である。該行列要素Rijは、組成物Kの中の物質成分Sの割合を表す。該レシピ行列Rのi番目の行も、組成物Kの組成、なぜ(Rが組成物Kのレシピベクトルとしても指定されるのかを表現する行ベクトル(Rとして解釈できる(行ベクトルは、ここで使用される通知で「トランスポートされる」ために指数Tと表現される)。
【0041】
重量パーセントでの割合とのレシピ行列のセクションが、以後表1に表示される。
【0042】
表1:レシピ行列の抽出物
【表1】

【0043】
このようにして調製される組成物は、以後、それらの感覚属性に関して評価される。適切と考えられる組成物の精製だけではなく、不適切と考えられる組成物の初期の廃棄も初期段階で有利に実施できる。このために、該組成物はそれらの芳香特徴に関してにおいがかがれる。明確に認識できるマンゴーの芳香のレシピは精製され、生成され、再び試験される。以後、優れたマンゴー芳香は、砂糖水溶液で味見される。いい香りの芳香が相応しておいしくはないため、排除されなければならないこともある。
【0044】
感覚属性の定量評価は、前記の方法で「最良の」マンゴー芳香について実施され、そのためにこれは専門のセンサ技術実験室で有利に実現される。関連付けられる属性ベクトルは組成物ごとに作成され、該個々の感覚属性の評価結果に対応する。前記に紹介されたレシピベクトル(Rと同様に、組成物Kの属性ベクトルは、行ベクトル(Aとして作成することができ、組成物のグループの該属性ベクトルは、属性行列Aとして表現することができ、そのために該行列要素Aimは、該組成物Kの中の属性mの特性を表現する。0から15のノルムスケール(norm scale)での特徴的な仕様のある属性行列の抽出物が以後表2に表現されている。
【0045】
表2:属性行列の抽出物
【表2】

【0046】
(英語では「主成分分析(PCA)」とも呼ばれる)要因分析が、データ削減の意味で有利に実施される。属性はそれによって該属性行列の中のその構造における類似性について調べられる。抽出された各因子について、一方では高い因子負荷量を有し、他方では該芳香使用法に最も意味を成す1つの属性が選択される。後に改質プロセスの枠組みの中で、該選択された属性だけを、意図的に変更することができる。したがって、おもにそれぞれ検討されている芳香と香料に肯定的な影響を及ぼす属性が選択される。例えば、後に存在するマンゴーの芳香をさらに強いかび臭さ(moldiness)や、木臭さ(woodiness)へ改質することは望ましくないと考えられる。約10の感覚属性が、実際にモジュールごとに選択される。したがって、属性ベクトル(Aの次元数は削減され、ベクトル成分の数は例えば50から10に削減される。
【0047】
選択される属性ベクトルだけではなく、使用されているレシピベクトルも、各組成物に関連付けられる該ベクトルが互いに、および該組成物に関して取り出すことができるように組成物データベースの中に記憶される。
【0048】
個々のポイントは、前述された該データ収集によって多次元的な「属性空間」内で決定され、そのためにモジュールの各組成物は前記属性空間内の点に相当する。これは、2つの属性によって固定されているレベルでの組成物について図3に概略で表現されている。それらの個々の属性に関して該調製された組成物の該感覚属性は、該属性を意図的に改質するために考えられる最大の分散を特色とする必要がある。
【0049】
属性レシピ行列Mは、既存の組成物の改質を鑑みて関連するモジュールについて作成される。行列要素Mmjは、該属性kの特徴がどの程度強力に該物質成分Sの該割合によって指定されているのかを示す。これらの関係は、例えば、多重線形回帰および/または神経回路網によって、および/または専門家システムによって確立される。さまざまな方法によって取得された結果は互いに比較され、必要な場合は調整されることが有利である。このプロセスは図4に概略で表現されている。加えて、行列要素Mを決定するための原則が図5に描かれている。該属性「芳香の中で花のようである」という特徴がモジュールの該14個の成分のそれぞれについて該物質成分「ブチルアセテート」の該割合に対照して適用されなければならない。線形回帰を通して確立される傾向線は、桃の芳香がブチルアセテートの割合を増加させた形でさらに強くなることを示している。
【0050】
前述された手順の目的は、関心のある属性に正のまたは負のレバレッジ効果を有する物質成分を導き出すことである。正のレバレッジ効果とは、芳香レシピに関連する該物質成分の割合が増加すると、該関心のある属性の感覚知覚が強化されることになることを意味する。他方、負のレバレッジ効果は、関係する該物質成分の該割合が、該関心のある属性の該感覚知覚を強化するために引き下げられなければならないことを意味する。
【0051】
属性レシピ行列Mは、少なくとも該属性空間の1つの局所的な領域内でレシピベクトルから属性ベクトルへの変換を達成する作用子の行列表現として見なすことができる。これは正式には以下の方程式で表すことができ、
(A)=M(R) (2)
ここでは(A)と(R)は、列表現の中の属性ベクトルとレシピベクトルである。方程式(2)は、関連性のあるレシピベクトル(R)で、すでに特徴付けられた組成物Kのために関連する属性ベクトル(A)を生成する。前記変換の必要とされる局所性は、方程式(2)が優れた近似として組成物Kに比較して、わずかに改質される組成物K’にも適用することを意味する。別の言い方をすると、これは、(R)に比べてわずかに改質されているレシピベクトル(R)’への計算規則(2)の適用により、優れた近似として改質された組成物K’の属性ベクトル(A)’に相当する、計算済みの改質された属性ベクトルが生成されることを意味する。指定された属性特性のある新しい組成物が求められる場合には、原則的に、ちょうど説明された手順と逆である問題を解決する必要がある。それは、事前に指定される所望される属性ベクトル(Asoll)であり、該求められている組成物のための製造仕様として見なすことができる、関連付けられるレシピベクトル(Rsoll)が求められる。その属性特性が可能な限り所望されるものに近い前記に特徴付けられた組成物が、この探求に使用されるのは有利である。言い換えると、レシピべクトルRistと属性ベクトルAistで既に特徴付けられた組成物Kistの改質が実施される。
【0052】
該改質プロセスは、最も簡略なケースでの、いわゆる「試行錯誤」手順として実現できる。つまり例えば複数の新しいレシピベクトルが、(Rist)の環境の中でランダムジェネレータを活用して生成でき、方程式(2)を使用することによってその関連属性ベクトルを計算できる。これは、所望される属性ベクトル(Asoll)に十分に近くにある属性ベクトルが発見されるまで繰り返されなければならないであろう。しかしながら、統計試験計画を使用する方が該改質手順にはさらに有用であろう。考えられる手順はさらに以下に明確にされる。
【0053】
通例、4個から10個の関連する物質成分が属性ごとに決定される。それらは、その正のレバレッジ効果と負のレバレッジ効果に従ってカテゴリ1から3に分割され、そのためにカテゴリ1は最大レバレッジ効果に相当し、カテゴリ3は最小のレバレッジ効果に相当する。複数の物質成分をカテゴリ3に割り当てることができる一方、ただ1つの正の物質成分と1つの負の物質成分が、毎回、カテゴリ1と2に割り当てられる。
【0054】
表3は、例えば、りんご芳香のためのモジュールからのデータ評価結果の抽出物を示している。「味が新鮮」および「芳香が花のようである」という属性、およびこの目的のために導き出された該物質成分は、一覧表示され、そのために該物質成分がコードで一覧表示されている。
【0055】
該物質成分C335が例えばりんごのレシピに追加される、あるいは物質成分C8がその中で減少される場合、このレシピは基本的なレシピにおいてよりも、においがさらに花のようであるはずである。
【0056】
表3:りんご芳香のためのモジュールのデータ評価の抽出物
【表3】

【0057】
前述されたように、既定のレシピを選択し、後にその改質によって意図的に特定の属性の特徴を強化することができる。それによって例えば最高14の新しいレシピが、特別に開発された試験計画に従って生成される。該試験計画は基本レシピに割り当てられる、あるいは削減されるデータ評価から発する物質成分に対処する。試験計画のプロセスは表4に描かれている。正のレバレッジ効果のある物質成分の濃度は、最初の4つのレシピで増加され、負のレバレッジ効果の物質成分の濃度は、レシピ5から8で削減される。基本レシピに含まれている物質成分だけが削減できる。
【0058】
言い換えると、カテゴリ2の負のレバレッジ効果のある物質成分が基本の処方に含まれていない場合、レシピ番号6は生成されない。他方、正のレバレッジ効果のある物質成分は常に添加される。レシピ9から14は、最初の8つの作用の組み合わせによって作成される。
【0059】
表4:統計試験計画
【表4】

【0060】
これに従って、該試験計画は、どの物質成分を増加または削減しなければならないのかを示している。しかしながら、これらの変化の絶対的な測度は、物質成分ごとに個別に計算しなければならず、以下のように実現される。
【0061】
第1に、最大使用割合Rmaxと最小使用割合Rminの間の差異は、検討されているモジュールのすべてのレシピ全体で物質成分ごとに決定される。
【0062】
結果は、検討されているモジュールのすべてのレシピを介して、属性の最大特徴Amaxと最小特徴Aminの差異で除算される。
=(Rmax−Rmin)/(Amax−Amin)(3)
【0063】
基本レシピで使用される該物質成分の該割合Ristは、追加ステップでの該選択されたレシピの該属性の感覚評価によって除算される。
=Rist/Aist(4)
【0064】
istはその場合ゼロに等しいので、物質成分が基本レシピでは使用できないときに
この計算は実施されない。
【0065】
前記に計算された両方の値の平均値は、以下のステップで求められる。
X=(X+X)/2(5)
【0066】
この計算は、第2の計算が省略されるときには実施されない。この場合、x=xである。
【0067】
最後のステップは、方程式(5)の結果で、該選択されたレシピの該属性の該所望される属性特性Asollと該感覚評価Aistの間の差異を乗算することからなる。
ΔR=X(Asoll−Aist)(6)
【0068】
結果ΔRは、ここでは、基本レシピに添加される、あるいは基本レシピで削減される該検討される物質成分の割合である。ΔRが負であり、ΔRの量が基本レシピの中の該物質成分の割合Ristを上回る場合には、この物質成分はレシピから取り除かれる。
【0069】
前記計算は、属性の強化のために設計されているが、同様に属性を弱めるためにも使用できる。
【0070】
個々の組成物の属性ベクトルの視覚的な例として、極図表(「クモの巣」とも呼ばれる)の形で図6に描かれている。各属性には、相互中心から発し、長さが関係する属性の特徴の測度であるビームセクションが関連付けられている。ビームはそれにより等しい距離に、斜めに設置される。属性「かんきつ類」は最も弱い印象を有し、属性「バニラ」と「新鮮」は示されている組成物の中で最も強力な印象を有する。このような表現は、組成物の相互作用的な改質によく適している。モニタ上に表示される極図表は、コンピュータマウスによって例えば意図的に変更し、このようにして所望される新しい組成物に改質された属性ベクトルを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】香料および/または芳香組成物を生成するための装置の概略図である。
【図2】モジュールを開発する際の手順の概略図である。
【図3】2つの属性aとbが及ぶ平面における6個の組成物の概略図である。
【図4】物質成分の割合と組成物の属性特性の間の関係を決定することの概略図である。
【図5】「桃の芳香」の仕様と、物質成分「ブチルアセテート」の割合の関係と、関連する回帰直線のグラフィック図である。
【図6】極図表としての組成物の属性ベクトルの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物質成分を混合することにより製造できる塩基組成物のグループと関連付けられるレシピベクトルおよび属性ベクトルから構成される組成物データベースを使用することによって特徴付けられる香料および/または芳香組成物を生成するための方法であって、それにより各レシピベクトルが該関連付けられる塩基組成物の作成に必要とされる該物質成分の割合を指定し、それにより各属性ベクトルが該関連付けられる塩基組成物の選択された感覚属性に関して評価結果を指定し、
a)ターゲット属性ベクトルを指定するステップと、
b)少なくとも該ターゲット属性ベクトルの環境でレシピベクトルから属性ベクトルへの変換を達成する作用子を決定するステップと、
c)前記作用子を使用することによってそれが該ターゲット属性ベクトルに変換されるという条件でターゲットレシピベクトルを確立するステップと、
d)該ターゲットレシピベクトルによる割合で該所定の物質成分を混合するステップと、
からなる香料および/または芳香組成物を生成するための方法。
【請求項2】
該組成物データベースが、
a)各塩基組成物に関連付けられるレシピベクトルによる割合で該物質成分を混合することにより塩基組成物の該グループを作成するステップと、
b)該選択された感覚属性および該関連付けられる属性ベクトルの作成に関して該塩基組成物の内のそれぞれ1つを定量的に評価するステップと、
c)各塩基組成物に関連付けられる該ベクトルが互いに関して、および該塩基組成物に関して取り出すことができるように該レシピベクトルと属性ベクトルを記憶することによって該組成物データベースを作成するステップと、
によって作成されるという事実により特徴付けられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該感覚属性の該評価が、定量記述分析に基づくという事実により特徴付けられる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該属性ベクトルを作成するために使用される該属性が、要因分析によって選択されるという事実により特徴付けられる請求項1乃至3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
該作用子が多重回帰および/または神経回路網および/または専門家システムによって確立されるという事実により特徴付けられる請求項1乃至4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
該ターゲットレシピベクトルが統計試験計画によって決定されるという事実により特徴付けられる請求項1乃至5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
該ターゲット属性ベクトルが所定の組成物の該属性評価を通して決定されるという事実により特徴付けられる請求項1乃至6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
属性ベクトルが極図表の形で表現されるという事実により特徴付けられる請求項1乃至7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
データ処理装置(2)だけではなく、それにより制御される混合装置(4)も備え、そのために該データ処理装置(2)が、属性ベクトルの入力のための手段や、ターゲットレシピベクトルの該計算のための手段や、該レシピベクトルに従って整形される制御信号の混合装置(4)への転送のための手段だけではなく、少なくとも1つの組成物データベースの入力、記憶および取り出しのための手段も備え、そのために混合装置(4)が以下の構成要素、
a)個々の物質成分で充填できる複数の保管容器(6、6a)と、
b)複数のレセプタクル(8、8a、8b、8c)と、
c)香料および/または芳香組成物の作成のために、該対応する保管容器(6、6a)からレセプタクル(8、8a、8b、8c)へ所定量の個々の物質成分をもたらすための制御自在な供給装置(10)と、
を特色とする方法を実行するための請求項1乃至8のいずれか1つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−527456(P2007−527456A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552447(P2006−552447)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000081
【国際公開番号】WO2005/078433
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506278484)ノヴァブレント・アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】