説明

香気組成物の製造方法

【課題】香料から天然に近い香気組成物を製造する方法、および得られた香気組成物を使用した香水などの香料組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】2価以上の金属イオン含有液16を添加した香料(香料成分)に高電圧処理18を行い、次いでこの香料に2価以上の金属イオン含有液を添加しかつ高電圧処理を行ったエチルアルコール20を加えて香気組成物を抽出製造する。またこのようにして得られた多種類の香気組成物28を混合して閉鎖空間26に静置するとともに、この静置時に高電圧処理を行うことにより香料組成物を製造する。
【効果】香料から天然に近い香気成分(香気組成物)を短時日で簡単に製造することができ、また、得られた天然に近い香気組成物を使用することにより、香水など香料組成物の開発期間を大幅に短縮することが可能となり、自然熟成と同等の効果を香料組成物に対して簡便に付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、香気組成物の製造方法に関し、一層詳細には、香料から天然に近い香気を製造する方法に関するものであり、さらに得られた香気組成物を使用して自然熟成と同等の効果を迅速に得ることのできる香水などの香料組成物の製造方法をも含むものである。
なお、ここで述べる香料組成物とは、香水をはじめとしてオードパルファン、オードトワレ、オーデコロン、コロン、デオドラントコロン、コロンスプレー、コロンローション、室内芳香剤、室内芳香エアゾールなどを包含する。
【背景技術】
【0002】
一般に、香料(天然香料)から香気成分を得る手段としては、加水分解あるいは蒸留による香気成分の分離抽出、アルコールを含む有機溶媒による希釈抽出などの種々の方法が採用されており、また、合成香料の場合はアルコールで希釈する方法が広範に採用されている。
しかしながら、いずれの方法も天然物の分解もしくは抽出、合成物の希釈などの操作を行っているため、得られる香気成分は天然自然の香気からはなれてしまうことは否めなかった。
一方、香水などの香料組成物の開発にあたっては、まず、数十種類から数百種類という多種類の香料の配合について試行し、選択した試行成分(香料組成物試料)の香気を専門の調香師が評価し、その結果をもとにさらに新たな配合について試行するという操作を繰り返し行い、香気がカオス状態となっている所望の香料組成物(香水試料)を所定期間寝かせて熟成し、これにアルコール類などの有機溶媒を加えて抽出希釈することにより製造されている。
【0003】
しかるに、有機溶媒により抽出希釈した香水は、商品としてすぐに出荷されるのではなく、通常は数ヶ月、長いものでは半年から1年以上のあいだ静置して自然熟成させたのち出荷されている。
これは、有機溶媒の刺激臭を飛散させて多数の香気成分をバランスの取れた良い香りを放つ状態に安定化させるために行われるものであり、この自然熟成工程を経ることによって香水の高品質性が担保されている。
【0004】
つまり、抽出直後の香水の香りは、一般的に配合比率が多い香料成分の香気ばかりが際立ち、スパイス系やその他微量香料成分の香気があまり感じられないなど、香気自体がバラバラで尖った印象を与える傾向にあるが、上述した自然熟成工程を経ることによって、香料組成物に含まれる全ての香気成分がバランス良く感じられ香りの安定状態に達するのである。
【0005】
しかし、自然熟成させる工程ではその保管場所を常に必要とするだけでなく、その保管場所の環境を維持するためのエネルギーも必要とするため、経済コストが過大となり、さらには商品開発において多大な時間コストの問題を生じさせていた。
【0006】
このような事情から、香水の製造工程中に脱水剤の存在下に加熱処理または超音波照射処理を施して熟成を促進する方法(特許文献1)、あるいは、ローズ、ジャスミン、ラベンダーなどの花精油の残渣を使用してアルコール類などの有機溶媒の刺激臭を緩和する方法(特許文献2)などが提案され、実施化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開平 8− 92589号公報
【特許文献2】 特開昭61−204116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、加熱処理または超音波照射処理を施す方法は、脱水剤の種類によっては香調が大きく変化することもあり、調香師や開発者などからは目的とする充分な効果を得ることは難しいなどの指摘がなされていた。
また、花精油の残渣を使用する方法は、原料となる花精油残渣の生産量が限られるだけでなく微妙な香気に影響を及ぼすこともあり、稀には沈殿の原因にもなるなどの問題があるため必ずしも満足できるものではなかった。
【0009】
そこで、本発明では、香料から天然に近い香気組成物を製造する方法を提供するとともに得られた天然に近い香気組成物を使用して、自然熟成と同等の効果を迅速に得ることのできる香水などの香料組成物の製造方法、さらにはこれらの香気組成物または香料組成物を添着したカードをも提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、2価以上の金属イオン含有液を添加した香料(香料成分)に高電圧処理を行い、次いでこの香料に2価以上の金属イオン含有液を添加しかつ高電圧処理を行ったエチルアルコールを加えて香気組成物を抽出製造するものである。
【0011】
この場合、2価以上の金属イオン含有液は、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを2.5:3.0:0.5の重量比で含む粉砕混合物を醗酵タンクに投入し、この混合原料1に対し水3を加え、攪拌しながら50〜100℃に加熱して澱粉をα化したのち30〜40℃に保温して粘稠な混合液とし、次いでこの混合液に麹菌などを加えて複合醗酵させ、さらにこの複合醗酵させた混合液を1〜2ケ月程度熟成させることにより製造された水溶性ミネラル含有液を使用する。
【0012】
また、香料およびエチルアルコールの夫々に添加する2価以上の金属イオン含有液は、0.05重量%〜3.0重量%の範囲に設定するとともに高電圧処理は5000V〜10000V、120Hz〜360Hzの範囲で3時間〜6時間程度行うのが好適であり、さらにはこのようにして得られた香気組成物自体も包含する。
【0013】
一方、2価以上の金属イオン含有液を添加し高電圧処理を行った多種類の香料(香料成分)の夫々に2価以上の金属イオン含有液を添加しかつ高電圧処理を行ったエチルアルコールを加えて香気組成物を夫々抽出し、次いで得られた香気組成物を混合して閉鎖空間に静置するとともにこの静置時に高電圧処理を行うことにより香料組成物を製造する。
【0014】
この場合も、2価以上の金属イオン含有液は、上述の香気組成物の製造と同様に澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを2.5:3.0:0.5の重量比で含む粉砕混合物を醗酵タンクに投入し、この混合原料1に対し水3を加え、攪拌しながら50〜100℃に加熱して澱粉をα化したのち30〜40℃に保温して粘稠な混合液とし、次いでこの混合液に麹菌などを加えて複合醗酵させ、さらにこの複合醗酵させた混合液を1〜2ケ月程度熟成させることにより製造された水溶性ミネラル含有液を使用するのが好適である。
【0015】
また、香料およびエチルアルコールの夫々に添加する2価以上の金属イオン含有液は、0.05重量%〜3.0重量%の範囲に設定するとともに高電圧処理は5000V〜10000V、120Hz〜360Hzの範囲で3時間〜6時間程度行うのが好適であり、さらに、香気組成物の混合液はガラス容器に収容して静置するとともに5000V〜10000V、120Hz〜360Hzの範囲で3時間〜6時間程度高電圧処理を行い、さらにはこの香気組成物混合液の静置温度を20℃〜40℃の範囲に保持するのが好ましい。
なお、本発明は前述の方法により得られた香料組成物自体をも包含するものである。
【0016】
さらにまた、本発明は裏面に接着剤を塗布した樹脂製透明シートをカード状台紙に貼着するとともにこの樹脂製透明シートの表面に前述の香気組成物または香料組成物をシルク印刷し、このシルク印刷面に剥離性の樹脂製透明シートを貼着し、さらにこの剥離性透明シートに所望の印刷表示を施した表面シートを貼着することにより構成してなる香気組成物添着カードまたは香料組成物添着カードも提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、香料から天然に近い香気成分(香気組成物)を短時日で簡単に製造することができるだけでなく、得られた天然に近い香気組成物を使用することにより香水など香料組成物の開発期間を大幅に短縮することが可能となるだけでなく、自然熟成と同等の効果を香水などを含む香料組成物に対して簡便に付与することができる。
また、高品質な香水をより安価な価格で提供することを可能にし、さらには、オーダーメイド香水という新たなビジネスモデルの実現化に大きく寄与することができるものである。
【0018】
さらに香気組成物または香料組成物を添着したカードは、カードの素材や粘着剤などの成分に影響されることもなく各組成物の自然に近い香気を長時日に亘って保持できるので、各組成物の香気サンプルあるいは簡便な香気組成物または香料組成物カードとして好適に使用することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る香気組成物の製造方法の好適な実施の形態を示す概略工程説明図である。
【図2】本発明に係る香料組成物の製造方法の好適な実施の形態を示す概略工程説明図である。
【図3】本発明に係る香気組成物あるいは香料組成物を使用した添着カードの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る香気組成物の製造方法の好適な実施の形態を例示し、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0021】
図1において、本発明に係る香気組成物の製造方法は、香料成分(香料)10にアルコール類12を加えてその香気成分を香気組成物14として抽出することを基本とするものである。
この場合、香料成分(香料)10には、予め、2価以上の金属イオン含有液16を添加するとともに高電圧処理18を行った香料10aを使用し、また、アルコール類12として2価以上の金属イオン含有液16を添加しかつ高電圧処理18を行ったエチルアルコール(エタノール)20を使用することを特徴とするものである。
【0022】
なお、2価以上の金属イオン含有液16としては、例えば、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを2.5:3.0:0.5の重量比で含む粉砕混合物を醗酵タンクに投入し、この混合原料1に対し水3を加え、攪拌しながら50〜100℃に加熱して澱粉をα化したのち30〜40℃に保温して粘稠な混合液とし、次いでこの混合液に麹菌などを加えて複合醗酵させ、さらにこの複合醗酵させた混合液を1〜2ケ月程度熟成させることにより原料としての種子や卵殻に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどを解離(醗酵抽出)した水溶性ミネラル含有液を使用する。
なお、このようにして得られた水溶性ミネラル含有液(金属イオン含有液)16の香料10およびエチルアルコール20への添加量は0.05重量%〜3.0重量%の範囲に設定するが、その添加量が0.05重量%以下になると香気成分のミネラル中和およびエチルアルコールの電子還元が充分に行えず、また3.0重量%を超えると原料臭による不都合が生じてしまうことになる。
また高電圧処理は5000V〜10000V、120Hz〜360Hzの範囲で3時間〜6時間程度行うのが好適である。
【0023】
このように、2価以上の金属イオン含有液16を添加するとともに高電圧処理18を行った香料成分(香料)10aは、金属イオン含有液16による香気成分としての精油のミネラル中和およびエチルアルコールの電子還元の相乗作用により天然に近い香気組成物14を得ることができる。
また、金属イオン含有液16が添加されたエチルアルコール20自体は、この金属イオン含有液16中の2価以上のイオン(ミネラル)がアルコールの水分子集団を細分化するとともにアルコキシド(アルコラート=アルコールとアルカリ金属の結合塩)をつくり、さらにはアルコール分解物である有機酸とも同居するので水分子だけでなくカルシウム、マグネシウムなどの活性化が促進され、その結果、夫々の分子集団の動きが活発化して香料成分(香料)10a中に速やかに浸透してその香気成分を迅速に溶出させるものである。
なお、カルシウムなどの2価のイオンは、1つのカルシウムが2個のアルコールを結びつけ、水の分子集団を最小集団にすると同時にアルコール分子の集団も最小にしておたがいの融和と水和を短時間で行うのでアルコールの刺激臭も和らげる作用を呈する。
さらにこのような状態の香料成分に高電圧処理18を施すと、充分な電子還元が行われ、さらに天然に近い香気組成物14を得ることができるものである。
この場合、高電圧処理が5000V以下であると充分な電子還元が期待できず、また10000Vで6時間を超える処理を行うと温度上昇による不都合が生じることになる。
【0024】
本発明によれば、原料としての香料から天然に近い香気成分(香気組成物)を短時日で簡単に製造することができるものである。
【0025】
図2は、図1に示す本発明に係る香気製造方法を利用して香水などの香料組成物を製造する手順を説明するものである。
【0026】
すなわち、図2において、本発明に係る香水の製造方法は、調香師などの専門家により選択された多数の香料成分(香料)10の夫々に金属イオン含有液16を添加してこれらの香料成分10に高電圧処理18を施すことにより香気成分のミネラル中和と電子還元を行い、得られた各香料10aに、これも金属イオン含有液16を添加して高電圧処理18を施すことによりアルコラート化するるとともに2価値のイオンで電子還元したエタノール20を夫々加えてその香気成分を香気組成物14として抽出し、次いでこれらの香気組成物14を所望の配合比率に沿って混合した香気組成物混合液22をガラス瓶などの容器24に仕分け、さらにこの香気組成物混合液22を適宜の閉鎖空間26に静置するとともにこの閉鎖空間26において高電圧処理18で電子還元を施し、調香師などの専門家により香りをデザインされた香料組成物(香水)28を製造するものである。
この場合、水溶性ミネラル含有液(金属イオン含有液)16の香料10およびエチルアルコール20への添加量は0.05重量%〜3.0重量%の範囲に設定し、また高電圧処理18は5000V〜10000V、120Hz〜360Hzの範囲で3時間〜6時間程度とするが、これは前述の香気組成物の製造と同様である。
【0027】
なお、図1も含め、本製造方法において香料成分(香料)10の種類は限定されるものではなく、シトラス系、フローラル系、グリーン系、スパイス系、ヨノン系、オリス系、フルーティ系、脂肪族アルデハイド系、ハーバル系、ラスティック系、バルサム系、スィート系、ミルキー系、マリンオゾン系、レザー系、シンナム系、ウッディ系、アニマル系、レザー系、タバック系、アンバー系、ムスク系など、従来の香気あるいは香水の製造に用いられている香料を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。
【0028】
また、アルコール類12としては、基本的にはエチルアルコール20(エタノール)を使用しているが、目的とする香料組成物に応じ、通常の香料組成物に添加されている公知のもの、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、トランスー2−ヘキサノールなども使用することができる。
さらに、本発明方法で用いられるエチルアルコール20(エタノール)は、例えば95°未変性エタノール、種々の変性エタノール等の市販されているものでよく、本実施の形態で用いられるエタノール中の水分含有量は、一般に0.5重量%〜20重量%である。
【0029】
なお、図2において、ガラス瓶などの容器24に仕分けた抽出香気混合液22に高電圧処理18を施しながら静置する際、この抽出香気混合液22の温度を公知の加熱ないしは保温手段30を使用して20℃〜40℃の範囲に保持することにより熟成反応を促進させるように構成するのが好ましい。
この場合、20℃以下であると熟成反応が充分行われず、また40℃以上になると好ましくない副反応が生じてしまう。
【0030】
以上、説明してきたように、本発明に係る香料組成物(香水)の製造方法によれば、従来の方法に比較して短時間で香水の香りの安定状態を実現することができる。このことは、香水の熟成のための保管コストを不要にするため、香水の製造原価を低減することが可能になり、高品質な香水をより安価な価格で提供することが可能になるものである。
【0031】
次に、本発明方法により得られた香料組成物の官能試験を行った。
【官能試験】
(香料組成物の調製)
香料(香料成分)10として合成ローズ、合成ミュゲ、合成ジャスミン、天然ローズ、天然ジャスミンを夫々所定量ずつ秤量して容器に取り分け、3組のグループを作った。
そして、第一グループの各香料10には、市販のエチルアルコールを加えて各香料の香気成分を含む10%溶液(香気組成物抽出液)を調製してガラス壜に取り分け、冷暗所空間において静置することにより、従来方法による香料組成物(=従来の試料、5種類、A1〜A5)を得た。
一方、第二、第三グループの各香料10の夫々には2価以上の金属イオン含有液16を0.05重量%(第二グループ)と0.1重量%(第三グループ)添加して高電圧処理18(7500V、240Hzで5時間)を施すとともにに市販のエチルアルコールに2価以上の金属イオン含有液16を0.05重量%(第二グループ)と0.1重量%(第三グループ)添加して同様に高電圧処理18((7500V、240Hzで5時間)を施したエチルアルコール20を加えて各香料の香気成分を含む10%溶液(香気成分抽出液)をガラス壜に収容し、さらにこの香気成分抽出液を閉鎖空間おいて高電圧処理18(7500V、240Hzで5時間)するとともに所定時間静置することにより、金属イオン含有液16が総量で0.1重量%と0.2重量%添加された本発明に係る香料組成物(=処理済み試料、5種類×2組、B1〜B5、C1〜C5)を得た。
【0032】
(官能テスト▲1▼)
上記のようにして得られた香料組成物試料(従来の試料)および本発明方法による香料組成物試料(処理済み試料)の両方に関して官能テストを実施した。
官能テストは、調香師10人と一般人10人の合計20人のパネラーを対象にして行った。本テストにおいては、各パネラーに試料の内容を秘匿した状態で質問を行い、評価(回答)をしてもらった。
以下の質問を各パネラーに行い、該当する組成物試料の数をカウントしたところ表1の結果を得た(但し、質問5は最長距離、単位cm)。
質問1:最も質の高い(調和の取れた)香りと低い香りは?
質問2:最も天然香料に近い香りと遠い香りは?
質問3:香りの力価が最も高いものと、低いものは?
▲1▼付けたて、▲2▼1時間後、▲3▼3時間後
質問4:自然の状態(天然)の香りに最も近いものと遠いものは?
質問5:香りの感じる最長距離は?
【0033】
【表1】


【0034】
(官能テスト▲1▼の分析)
質問1;合成香料⇒ミュゲはやや評価が分かれるが、ジャスミンでは処理済試料が圧倒的 に調和がとれている。
天然香料⇒従来試料に比べて処理済試料は質の高い香りと評価されている。
質問2;合成香料⇒従来試料はいずれも天然に近いとは評価されていない。処理済試料は 添加量により差はあるが概ね天然に近いと評価されている。
質問3;合成香料⇒従来試料は付けたて時に香りは立つが時間の経過とともに半減する。 処理済試料は時間の経過とともに香りが強いと評価されている。
天然香料⇒従来試料は付けたて、時間経過ともに力価が低いと明確に評価されて れているが、処理済試料は全体を通じて力価が高いと評価されている。
質問4;合成香料⇒従来試料はいずれも自然の状態に遠いと評価されている。ジャスミン は従来試料と処理済試料との差が少なかったが、処理済試料は香りが自然に近づ くと評価されている。
天然香料⇒処理済試料は天然にも係らずより天然に近いと評価されている。
質問5;合成香料⇒従来試料はいずれも距離が短く、処理済試料は従来試料の2倍〜10 倍で遠くからでも香ると評価されている。
天然香料⇒ローズにおいては差がなかったが、ジャスミンの処理済試料は従来試 料の8倍となり遠くからでも香ると評価されている。
【0035】
(官能テスト▲2▼)
次に、前記の香料組成物の調製で得られた合成ローズ、合成ミュゲ、合成ジャスミンをグループ毎(A1+A2+A3、B1+B2+B3、C1+C2+C3)に同割合で混ぜ合わせ、時間の経過とともに卓越する香りについて前記の調香師10人と一般人10人の合計20人のパネラーに回答してもらったところ表2の結果を得た。
【表2】


【0036】
(官能テスト▲2▼の分析)
グループA;付けたてはローズがトップノートとして突出するが、1時間後にはジャスミ ンが勝ち、3時間後には再びローズが香り、ジャスミンは弱くなり、ミュゲは引き立 ちたちがない。
グループB;付けたてでジャスミン、ローズ、ミュゲの三香が香り、中でもジャスミンが トップの香りとなる。時間が経過するとローズが引き立ち、ジャスミンがセカンドノ ートとして残り、ミュゲは引き立ちが付けたてだけである。
グループC;付けたてでジャスミン、ローズが同等に近く、ミュゲが少し香るが、時間の 経過にしたがって香り立ちの少ないミュゲが香り、3種の香りが順番に香って平均的 にまとまりがよい。
【0037】
(官能テスト▲3▼)
また、前記の香料組成物の調製で得られた天然工ローズと天然ジャスミンをグループ毎(A4+A5、B4+B5、C4+C5)に等量で混ぜ合わせ、時間の経過とともに卓越する香りについて前記の調香師10人と一般人10人の合計20人のパネラーに回答してもらったところ表3の結果を得た。
【表3】

【0038】
(官能テスト▲3▼の分析)
グループA;ローズは中間で香るがトップノートのジャスミンの香りが終始強く出ている 。
グループB;トップノートのローズにジャスミンが抑えられている。従来であれば、ジャ スミンが強く香るのに、弱いローズが強く感じられ、そこにジャスミンも香るため巾 広く香りを感じることができる。
グループC;ローズもジャスミンも同等に香りが立ち、時間が経過しても大きく変わらな い。香りの持続力がローズもジャスミンも同等の力価となり、バランスが崩れないま ま香り続ける。
【0039】
(官能テスト全体の解析と総合評価)、
合成香料の場合は、Aグループ(従来方法による香料組成物)のそのままの香りより、B、Cグループ(0.1%、0.2%添加した本発明に係る香料組成物)は調和の取れた高い香りとなり天然に近づいた香りに変化し、力価も高く香りを感じる距離も長くなっている。
また、ブレンド(官能試験▲2▼)も同様でAグループに比べて、B、Cグループでは時間が経過しても香りの纏まり、巾、強さが平均的となり安定状態を実現できている。
一方、天然香料の場合は、天然にもかかわらず、Aグループに比べてB、Cグループ(0.1%、0.2%添加した本発明に係る香料組成物)のほうが、より天然に近く、質としての高さと力価、香りの持続性が向上している。また、ブレンド(官能試験▲3▼)のAグループはジャスミンの香りを強く感じる傾向であるが、Bグループはローズの香りが引き立ちジャスミンも香るため香りの巾が広がっており、Cグループではローズもジャスミンも同等に香りそのバランスがくずれないまま維持されており、香り、力価、持続力の向上が認められる。
【0040】
これは、金属イオン含有液を添加するとともに高電圧処理を行った香料成分(香料)は、金属イオンによる香気成分としての精油のミネラル中和とエチルアルコールの電子還元の相乗作用のためより天然に近いものとなり、その結果、酸化も遅く、香りの刺激が少なく、広い範囲にわたって甘さのある香りを発散するからである。従って、金属イオン含有液の添加量および高電圧処理条件を適宜調整することにより所望の香りをデザインすることが可能となるものである。
【0041】
図3は、裏面にアクリル系接着剤を塗布したPET製透明シート32をカード状台紙34に貼着するとともにこの透明シート32の表面に前述の方法により得られた香気組成物14または香料組成物28と水性メジウムを配合したインクによりシルク印刷を施し、このシルク印刷面36にシリコンコートを施した剥離性のPET透明シート38を貼着し、さらにこの剥離性透明シート38に所望の印刷表示を施した表面シート40を貼着することにより構成した香気組成物添着カードまたは香料組成物添着カード42である。
【0042】
この添着カード42は、カード状台紙34から表面シート40および剥離性透明シート38を剥がし、透明シート32表面に施したシルク印刷面36に含まれる香気組成物14または香料組成物28から醸し出される香りをテスティングもしくは楽しむものであるが、香気組成物14または香料組成物28は、接着剤やインク配合物などを含む構成素材自体の臭いにも影響されることなく自然に近い香気そのものなので的確なテスティングを行えるだけでなくその香りも満喫することができ、さらには香気自体も従来に比べて持続するので長期間に亘って使用することが可能となるものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明方法によれば、香水の開発期間を大幅に短縮すること、すなわち、香水の香りの安定状態を短期間に達成することが可能になり、開発期間の短縮化によって、個々の消費者が希望する香りのイメージを試供品としてリアルタイムに提示することができるようになり、消費者単位にオンデマンドで所望の香りの香水を提供するという新たなビジネスモデルを構築することが可能となるものである。
【符号の説明】
【0044】
10 ・・香料(香料成分)
12 ・・アルコール類
14 ・・香気組成物(香気成分抽出液)
16 ・・金属イオン含有液
18 ・・高電圧処理
20 ・・エチルアルコール(エタノール)
22 ・・香気組成物混合液
24 ・・容器(ガラス瓶)
26 ・・閉鎖空間
28 ・・香料組成物(香水)
30 ・・保温手段
32 ・・PET製透明シート
34 ・・カード状台紙
36 ・・シルク印刷面
38 ・・剥離性PET透明シート
40 ・・表面シート
42 ・・香気組成物添着カードまたは香料組成物添着カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価以上の金属イオン含有液を添加した香料(香料成分)を高電圧処理し、次いでこの香料に2価以上の金属イオン含有液を添加しかつ高電圧処理を行ったエチルアルコールを加えて抽出することを特徴とする香気組成物の製造方法。
【請求項2】
2価以上の金属イオン含有液は、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを2.5:3.0:0.5の重量比で含む粉砕混合物を醗酵タンクに投入し、この混合原料1に対し水3を加え、攪拌しながら50〜100℃に加熱して澱粉をα化したのち30〜40℃に保温して粘稠な混合液とし、次いでこの混合液に麹菌などを加えて複合醗酵させ、さらにこの複合醗酵させた混合液を1〜2ケ月程度熟成させることにより製造された水溶性ミネラル含有液である請求項1に記載の香気組成物の製造方法。
【請求項3】
香料およびエチルアルコールの夫々に添加する2価以上の金属イオン含有液は、0.05重量%〜3.0重量%の範囲に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の香気組成物の製造方法。
【請求項4】
高電圧処理は5000V〜10000V、120Hz〜360Hzの範囲で行うことからなる請求項1〜3のいずれかに記載の香気組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により製造された香気組成物。
【請求項6】
2価以上の金属イオン含有液を添加し高電圧処理を行った多種類の香料(香料成分)の夫々に2価以上の金属イオン含有液を添加しかつ高電圧処理を行ったエチルアルコールを加えて香気組成物を夫々抽出し、次いで得られた香気組成物を混合して閉鎖空間に静置するとともにこの静置時に高電圧処理を行うことを特徴とする香料組成物の製造方法。
【請求項7】
2価以上の金属イオン含有液は、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを2.5:3.0:0.5の重量比で含む粉砕混合物を醗酵タンクに投入し、この混合原料1に対し水3を加え、攪拌しながら50〜100℃に加熱して澱粉をα化したのち30〜40℃に保温して粘稠な混合液とし、次いでこの混合液に麹菌などを加えて複合醗酵させ、さらにこの複合醗酵させた混合液を1〜2ケ月程度熟成させることにより製造された水溶性ミネラル含有液である請求項6に記載の香料組成物の製造方法。
【請求項8】
香料およびエチルアルコールの夫々に添加する2価以上の金属イオン含有液は、0.05重量%〜3.0重量%の範囲に設定することを特徴とする請求項6または7に記載の香料組成物の製造方法。
【請求項9】
高電圧処理は5000V〜10000V、120Hz〜360Hzの範囲で行うことからなる請求項6〜8のいずれかに記載の香料組成物の製造方法。
【請求項10】
香気組成物の混合液をガラス容器に収容して静置処理することからなる請求項6〜9のいずれかに記載の香料組成物の製造方法。
【請求項11】
香気組成物の混合液の静置温度を20℃〜40℃の範囲に保持することからなる請求項6〜10のいずれかに記載の香料組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれかに記載の方法により製造された香料組成物
【請求項13】
裏面に接着剤を塗布した樹脂製透明シートをカード状台紙に貼着するとともにこの樹脂製透明シートの表面に請求項5に記載の香気組成物または請求項12に記載の香料組成物をシルク印刷し、このシルク印刷面に剥離性の樹脂製透明シートを貼着し、さらにこの剥離性透明シートに所望の印刷表示を施した表面シートを貼着することを特徴とする香気成分組成物または香料組成物添着カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−57140(P2012−57140A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217826(P2010−217826)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(591135200)
【出願人】(510258773)
【出願人】(510258795)
【出願人】(510258809)
【出願人】(508328165)
【出願人】(510258810)
【Fターム(参考)】