駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法
【課題】環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなるのを防止することを目的とする。
【解決手段】駆動モジュールの駆動モードとして、形状記憶合金体に対して通電してその温度を漸次上昇させることでレンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査した後、形状記憶合金体の温度を低下させて合焦位置までレンズ枠を移動させる第一駆動モードと、形状記憶合金体に対して通電してその温度を漸次低下させることでレンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査した後、形状記憶合金体の温度を上昇させて合焦位置までレンズ枠を移動させる第二駆動モードと、を有し、制御手段が、環境温度を検出し、環境温度が閾値温度よりも低い場合に第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に第二駆動モードを選択し、選択された駆動モードに従い形状記憶合金体に対する通電を制御して駆動手段を駆動させる。
【解決手段】駆動モジュールの駆動モードとして、形状記憶合金体に対して通電してその温度を漸次上昇させることでレンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査した後、形状記憶合金体の温度を低下させて合焦位置までレンズ枠を移動させる第一駆動モードと、形状記憶合金体に対して通電してその温度を漸次低下させることでレンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査した後、形状記憶合金体の温度を上昇させて合焦位置までレンズ枠を移動させる第二駆動モードと、を有し、制御手段が、環境温度を検出し、環境温度が閾値温度よりも低い場合に第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に第二駆動モードを選択し、選択された駆動モードに従い形状記憶合金体に対する通電を制御して駆動手段を駆動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを保持するレンズ枠を駆動して自動で焦点を合わせるオートフォーカスを行う駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばカメラ等のようなレンズを有する撮像装置では、撮影時に図12に示すように映像の高調波成分がピークとなる位置(フォーカスポイント)にレンズを移動させる動作を行う必要であり、この動作(フォーカス)を自動で行うオートフォーカス機能を有する撮像装置が数多く提供されている。
【0003】
上記したオートフォーカスを実現する駆動モジュールとして、従来、例えば下記特許文献1に記載されているような、形状記憶合金の温度変化に伴う変形特性を利用してレンズ枠を駆動する駆動モジュールが提案されている。この駆動モジュールには、支持体と、その支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能なレンズ枠と、そのレンズ枠を弾性保持するばね部材と、レンズ枠をばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、が備えられている。前記した駆動手段には、レンズ枠に係合した回動可能なアーム部と、アーム部に巻き掛けられていると共に両端がそれぞれ固定された形状記憶合金ワイヤと、が備えられている。
【0004】
上記した従来の駆動モジュールによれば、形状記憶合金ワイヤに通電することで、その通電に伴う発熱によって形状記憶合金ワイヤが縮み変形する。そして、形状記憶合金ワイヤが縮み変形することでアーム部が回動し、そのアーム部によってレンズ枠が押圧され、レンズ枠が一定方向に沿って一方側に移動する。また、上記した通電を停止することで、形状記憶合金ワイヤの温度が低下して形状記憶合金ワイヤが伸び変形する。そして、形状記憶合金ワイヤが伸び変形することでアーム部が戻り方向に回動し、レンズ枠がばね部材の付勢力によってレンズ枠が一定方向に沿って他方側に移動する。また、従来より、形状記憶合金の電気抵抗値に基いて形状記憶合金の温度をモニタリングする技術が知られている(例えば、下記特許文献2参照。)。したがって、上記した形状記憶合金ワイヤの電気抵抗値に基いて形状記憶合金ワイヤの温度をモニタリングしながら形状記憶合金ワイヤに対する通電を制御することで、レンズ枠を合焦位置まで移動させることができる。
【0005】
また、上記した従来の駆動モジュールは、例えば、図13(a)、(b)に示すように動作させる。すなわち、まず、形状記憶合金ワイヤに対して通電して形状記憶合金ワイヤの温度を漸次上昇させることで、形状記憶合金ワイヤを徐々に縮み変形させてレンズ枠を全移動範囲に亘って移動させる。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査する。続いて、形状記憶合金ワイヤの温度を前記した焦点の温度まで低下させて形状記憶合金ワイヤを伸び変形させる。これにより、レンズ枠が合焦位置まで移動し、レンズの焦点が合わせられる。
【0006】
また、上記した従来の駆動モジュールの動作として、例えば、図14(a)、(b)に示すような動作も考えられる。すなわち、まず、形状記憶合金ワイヤに対して通電して形状記憶合金ワイヤを限界付近まで縮み変形させる。続いて、形状記憶合金ワイヤの温度を漸次低下させることで、形状記憶合金ワイヤを徐々に伸び変形させてレンズ枠を全移動範囲に亘って移動させる。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査する。続いて、形状記憶合金ワイヤの温度を前記した焦点の温度まで上昇させて形状記憶合金ワイヤを縮み変形させる。これにより、レンズ枠が合焦位置まで移動し、レンズの焦点が合わせられる。
【0007】
ところで、上記した形状記憶合金の電気抵抗値は、温度変化に対して図15に示すような曲線で変化する。詳しく説明すると、初期温度T0から温度が上昇するのに伴い電気抵抗値が漸次上昇していく。そして、形状記憶合金の変形が開始された時点(温度T1)で電気抵抗値が下降に転じて漸次低下していき、形状記憶合金の変形が限界に達して形状記憶合金の変形が収まった時点(温度T2)で電気抵抗値が再び上昇に転じて漸次上昇する。つまり、形状記憶合金の変形が開始された時点の電気抵抗値Rmaxが最大値となり、形状記憶合金の変形が収まった時点の電気抵抗値Rminが最小値となる。
【0008】
そして、上記した従来の駆動モジュールでは、図13、図14に示すように、撮像装置の電源を入れるたびに、形状記憶合金ワイヤに通電して当該形状記憶合金ワイヤを限界まで縮み変形させる。これにより、最大電気抵抗値Rmaxと最小電気抵抗値Rminを検出して駆動モジュールによる動作可能範囲を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−58075号公報
【特許文献2】特開2006−183564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した形状記憶合金ワイヤは温度変化によって伸縮するため、環境温度が高い場合、冷却に時間がかかり、形状記憶合金ワイヤが伸び方向に変形する際の収束時間が長くなり、環境温度が低い場合、加熱に時間がかかり、形状記憶合金ワイヤが縮み方向に変形する際の収束時間が長くなる。したがって、上記した従来の技術では、環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなる場合があるという問題が存在する。
【0011】
具体的に説明すると、例えば駆動モジュールを図13(a)、(b)に示すように動作させる場合、上述したように焦点の探査後に形状記憶合金ワイヤの温度を低下させることでレンズ枠を合焦位置まで移動させる。よって、環境温度が低い場合には、図13(a)に示すように、形状記憶合金ワイヤの温度が合焦位置の温度まで短時間で低下し、オートフォーカスの作動時間が比較的短時間になるが、環境温度が高い場合には、図13(b)に示すように、形状記憶合金ワイヤの温度を合焦位置の温度まで低下させるのに時間がかかり、その分だけオートフォーカスの作動時間が長くなる。
【0012】
また、例えば駆動モジュールを図14(a)、(b)に示すように動作させる場合、上述したように焦点の探査後に形状記憶合金ワイヤの温度を上昇させることでレンズ枠を合焦位置まで移動させる。よって、環境温度が高い場合には、図14(b)に示すように、形状記憶合金ワイヤの温度が合焦位置の温度まで短時間で上昇し、オートフォーカスの作動時間が比較的短時間になるが、環境温度が低い場合には、図14(a)に示すように、形状記憶合金ワイヤの温度を合焦位置の温度まで上昇させるのに時間がかかり、その分だけオートフォーカスの作動時間が長くなる。
【0013】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなるのを防止することができる駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る駆動モジュールは、支持体と、該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御する制御手段と、を備える駆動モジュールであって、該駆動モジュールの駆動モードとして、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次上昇させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を低下させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第一駆動モードと、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次低下させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を上昇させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第二駆動モードと、を有しており、前記制御手段が、環境温度を検出し、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択し、選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る駆動モジュールは、支持体と、該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御する制御手段と、を備える駆動モジュールであって、該駆動モジュールの駆動モードとして、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を低下させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第一駆動モードと、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を上昇させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第二駆動モードと、を有しており、前記制御手段が、環境温度を検出し、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択し、選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させるものであってもよい。
【0016】
上述した駆動モジュールによれば、環境温度に応じて駆動モードが選択され、その駆動モードに従い駆動手段が駆動してレンズ枠が合焦位置まで移動して焦点が合わせられるので、形状記憶合金体に対して通電したり通電を停止したりしてから形状記憶合金体が所望の形状に伸縮変形するまでの時間(変形収束時間)が環境温度の影響で長くなることがない。すなわち、環境温度が低い場合には、形状記憶合金体の温度を低下させる第一駆動モードで駆動手段が駆動する。このとき、環境温度が低くて形状記憶合金体の温度が低下しやすいので、形状記憶合金体に対する通電を停止してから短時間で形状記憶合金体が所望の形状に伸長変形する。また、環境温度が高い場合には、形状記憶合金体の温度を上昇させる第二駆動モードで駆動手段が駆動する。このとき、環境温度が高くて形状記憶合金体の温度が上昇しやすいので、形状記憶合金体に通電してから短時間で形状記憶合金体が所望の形状に収縮変形する。したがって、レンズ枠が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられる。
【0017】
また、本発明に係る駆動モジュールは、前記制御手段が、前記形状記憶合金体の昇温時における環境温度と該形状記憶合金体の変形収束時間との関数のグラフと、前記形状記憶合金体の降温時における環境温度と該形状記憶合金体の変形収束時間との関数のグラフと、の交点における温度を前記閾値温度とすることが好ましい。
これにより、時間的に効率の良い駆動モードが確実に選択されるので、レンズ枠が合焦位置まで移動する時間が長くなることが確実に防止される。
【0018】
また、本発明に係る電子機器は、上記した駆動モジュールを備えたことを特徴としている。
このような特徴により、レンズ枠が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられるので、電子機器のオートフォーカス動作の応答性が高くなる。
【0019】
また、本発明に係る駆動モジュールの制御方法は、支持体と、該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御して前記レンズ枠を合焦位置まで移動させる制御手段と、を備える駆動モジュールの制御方法であって、該駆動モジュールの駆動モードとして、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次上昇させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を低下させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第一駆動モードと、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次低下させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を上昇させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第二駆動モードと、を有しており、環境温度を検出する温度検出ステップと、該温度検出ステップで検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択するモード選択ステップと、該モード選択ステップで選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させる駆動ステップと、を備えることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る駆動モジュールの制御方法は、支持体と、該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御して前記レンズ枠を合焦位置まで移動させる制御手段と、を備える駆動モジュールの制御方法であって、該駆動モジュールの駆動モードとして、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を低下させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第一駆動モードと、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を上昇させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第二駆動モードと、を有しており、環境温度を検出する温度検出ステップと、該温度検出ステップで検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択するモード選択ステップと、該モード選択ステップで選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させる駆動ステップと、を備えるものであってもよい。
【0021】
上述した駆動モジュールの制御方法によれば、形状記憶合金体の変形収束時間が環境温度の影響で長くなることがなく、レンズ枠が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法によれば、環境温度に応じた駆動モードが選択され、レンズ枠が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられるので、環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態における駆動モジュールの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における駆動モジュールの構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における駆動ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における駆動ユニットを示す斜視図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】本発明の実施形態における駆動モジュールの制御方法を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の実施形態における駆動モジュールの駆動モードを示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態における駆動モジュールの閾値温度を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態における駆動モジュールの制御方法を示すフローチャート図である。
【図10】本発明の実施形態における駆動モジュールの駆動モードを示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態における電子機器の図面であり、(a)表面斜視図、(b)裏面斜視図、(c)(b)のF−F線に沿う断面図である。
【図12】レンズの焦点位置を示すグラフである。
【図13】従来の駆動モジュールの駆動モードを示すグラフである。
【図14】従来の駆動モジュールの駆動モードを示すグラフである。
【図15】形状記憶合金体の温度変化に対する電気抵抗値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、一部の図面では見易さのため、例えば図5に示すレンズユニット12などの構成部材を適宜省略して図示している。
また、図中の符号Mは、図5に示すレンズ50の光軸に一致する駆動モジュール1の仮想的な軸線であり、後述するレンズ枠4の駆動方向を示している。以下では、説明を簡単にするため、分解された各構成部材の説明においても、組立時の軸線Mとの位置関係に基づいて、位置や方向を参照する場合がある。例えば、構成部材に明確な円、円筒面が存在しない場合でも、誤解のおそれのない限り、軸線Mに沿う方向を単に「軸方向」と称し、軸線Mに直交する方向を単に「径方向」と称し、軸線M回りの方向を単に「周方向」と称する場合がある。また、軸方向のうちの後述する制御基板32側を「下方」とし、その反対側を「上方」とする。
【0025】
まず、本実施形態における駆動モジュール1の構成について説明する。
図1、2に示すように、本実施形態の駆動モジュール1は、図5に示すレンズ12(レンズユニット12)を軸方向に沿って往復移動させるための駆動モジュールであり、電子機器などに搭載されるものである。この駆動モジュール1は、制御手段となる制御基板32と、制御基板32上に位置するアダプタ30と、アダプタ30上に配設される駆動ユニット31と、駆動ユニット31を覆うように配設されたカバー11と、を備えている。
【0026】
図3に示すように、駆動ユニット31は、被駆動体となるレンズ枠4、支持体となるモジュール枠5、ばね部材となる上板ばね6と下板ばね7、モジュール下板8、給電部材9、及び形状記憶合金体となる形状記憶合金(Shape Memory Alloy、以下、SMAと略称する)ワイヤ10を主な構成部材とするものであって、これら構成部材が一体に組み立てられることで1つのアクチュエータを構成する。
【0027】
図3〜5に示すように、上記したレンズ枠4はモジュール枠5の内側に軸方向に移動可能に挿入されており、これらレンズ枠4とモジュール枠5の上端部に上板ばね6が配設されていると共にレンズ枠4とモジュール枠5の下端部に下板ばね7が配設されており、これらの上板ばね6及び下板ばね7によってレンズ枠4及びモジュール枠5が挟持されている。上板ばね6はレンズ枠4及びモジュール枠5の各上端部にそれぞれ加締めにより固定されている。また、下板ばね7の下方にはモジュール下板8が積層されており、そのモジュール下板8の下方には給電部材9が積層されており、これら下板ばね7、モジュール下板8及び給電部材9はモジュール枠5の下端部に加締めによりそれぞれ共に固定され、さらに、下板ばね7はレンズ枠4の下端部に加締めにより固定されている。また、上記したモジュール下板8の上面に上記したカバー11が載置されて固定されている。
【0028】
上記したレンズ枠4は、軸線Mを中心軸線として軸方向に沿って延設された略円筒形状の筒状部材であり、図5に示すように、軸方向に貫通する横断面視円形の収容部4Aの内周面4Fに雌ネジが形成されている。そして、収容部4Aの内周面4Fにはレンズユニット12が螺合されており、これによりレンズユニット12がレンズ枠4に保持されている。なお、レンズユニット12は、外周面に雄ネジが形成された円筒形状の筒部51と、その筒部51の内側に嵌合されたレンズ50と、から構成されている。
【0029】
レンズ枠4の外壁面4Bには周方向に略90度の間隔をおいて、径方向外方に向けて突出する突出部4C(凸部)が軸方向に延設されており、それら各突出部4Cの上端面4aと下端面4bには、上側固定ピン13A、下側固定ピン13Bがそれぞれ立設されている。上側固定ピン13Aは上板ばね6を保持し、下側固定ピン13Bは下板ばね7を保持するためのものである。
【0030】
上側固定ピン13A及び下側固定ピン13Bは、軸線Mに平行な同軸位置に配置されているため、上板ばね6及び下板ばね7における、上側固定ピン13A及び下側固定ピン13Bの挿通位置はそれぞれ共通化されている。
なお、上側固定ピン13Aおよび下側固定ピン13Bの平面視の位置が異なっていてもよく、例えば4本の突出部4Cのうちの2つの突出部4Cの各上端面4aに上側固定ピン13Aをそれぞれ立設し、残りの2本の突出部4Cの各上端面4aに下側固定ピン13Bをそれぞれ立設してもよい。
【0031】
レンズ枠4には、SMAワイヤ10を掛けられるガイド突起4Dが設けられている。このガイド突起4Dは、複数の突出部4Cのうちの1つの下端部の外周面に一体に接合されており、SMAワイヤ10が掛けられて係止する先端鍵部(係止部)4D1が形成されている。この先端鍵部4D1は、そこに掛けられたSMAワイヤ10が収縮することによりレンズ枠4を上方に持ち上げて軸方向に沿って上方に移動させるものである。
【0032】
また、レンズ枠4には、レンズ枠4を下向きに付勢する図2に示すコイルスプリング34を保持するスプリング保持部33が設けられている。このスプリング保持部33はガイド突起4Dの上端面に立設された柱状の凸部であり、このスプリング保持部33には図2に示すコイルスプリング34が挿通されている。これによりSMAワイヤ10が周囲環境の影響などにより収縮してレンズ枠4を上昇させようとする動きを抑制することができる。なお、レンズ枠4は、熱加締めまたは超音波加締めが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂などにより一体成形されている。
【0033】
モジュール枠5は、軸線Mを中心軸線として軸方向に沿って延設された筒状部材であり、平面視の外形が全体として略矩形状に形成され、かつその中央部に、軸方向に貫通する横断面視円形の収容部5Aが形成されている。この収容部5A内には、上記したレンズ枠4が収容されている。モジュール枠5の上部及び下部の四隅には、軸線Mに対する仮想垂直に沿って形成された平面状の上下端面5a、5bがそれぞれ形成され、各上端面5aには上側固定ピン14Aが上方に向けてそれぞれ突設され、各下端面5bには下側固定ピン14Bが下方に向けてそれぞれ突設されている。
【0034】
上側固定ピン14Aは上板ばね6を保持し、下側固定ピン14Bは下板ばね7、モジュール下板8及び給電部材9を保持するためのものである。なお、上側固定ピン14Aの平面視の位置は、下側固定ピン14Bの配置と異なっていてもよいが、本実施形態では、それぞれ軸線Mに平行な同軸位置に配置されている。このため、上板ばね6、下板ばね7における、上側固定ピン14A及び下側固定ピン14Bの挿通位置は、それぞれ共通化されている。また、上記した上下端面5a、5bの間の距離は、レンズ枠4の上下端面4a、4bの間の距離と略同一距離に設定されている。
【0035】
モジュール枠5の一隅の下部には平面視の溝幅がレンズ枠4のガイド突起4Dに軸方向に移動可能に嵌合する大きさを有する切欠き5Bが形成されている。この切欠き5Bは、レンズ枠4をモジュール枠5内に下方から挿入して収容した状態で、レンズ枠4のガイド突起4Dを貫通させ、ガイド突起4Dの先端鍵部4D1をモジュール枠5の径方向外部に突出させるとともに、レンズ枠4の周方向の位置決めを行うためのものである。
【0036】
また、図3、4に示すように、モジュール枠5の切欠き5Bに隣り合う2つの隅部には、切欠き5Bが設けられた隅部と同方向側の側面において、SMAワイヤ10を保持するワイヤ保持部材(保持端子)15A、15Bを取り付けるための一対の係止溝5Cが形成されている。
【0037】
モジュール枠5の側面におけるワイヤ保持部材15A,15Bが配される位置には、ピン35A,35Bがそれぞれ形成されている。さらに、ピン35A,35Bが形成された下方には、接着剤が充填されてモジュール枠5とワイヤ保持部材15A,15Bとを固定する溝部36が形成されている。そして、ワイヤ保持部材15A,15Bをモジュール枠5に固定する際に、ワイヤ保持部材15A,15Bが回動するのを抑制することができる壁部35Cが形成されている。壁部35Cは、モジュール枠5の側面から側方(側面に対して鉛直方向)に延出されている。
【0038】
また、モジュール枠5は、本実施形態ではレンズ枠4と同様に、熱加締めまたは超音波加締めが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂などにより一体成形されている。
【0039】
ワイヤ保持部材15Aは、駆動モジュール1から給電部材9の一対の端子部9Cが突出される側の側面に取り付けられ、ワイヤ保持部材15Bは、駆動モジュール1から給電部材9の一対の端子部9Cが突出されない側の側面に取り付けられている。
【0040】
図4に示すように、ワイヤ保持部材15A、15Bは、ワイヤ保持部15bにSMAワイヤ10の端部を加締めてなる鍵状に形成された金属板などの導電性部材である。ワイヤ保持部材15A,15Bには、モジュール枠5のピン35A,35Bに嵌合する貫通孔36A,36Bがそれぞれ形成されている。また、貫通孔36A,36Bの軸方向下方には接着剤を流し込むための貫通孔37A,37Bがそれぞれ形成されている。そして、モジュール枠5とワイヤ保持部材15A,15Bとを固定する際に、モジュール枠5の壁部35Cに当接して、ワイヤ保持部材15A,15Bの回動を抑止するための腕部38A,38Bがそれぞれ形成されている。係止溝5Cおよびピン35A,35Bに側方から嵌合させ、壁部35Cと腕部38A,38Bとを当接させることで、SMAワイヤ10の端部を位置決めして保持するものである。
【0041】
ワイヤ保持部材15A、15Bは、SMAワイヤ10のワイヤ保持部15b(加締め位置)と反対側に片状の端子部15aを備え、モジュール枠5に対する取付状態において、端子部15aがモジュール枠5の下方に積層されたモジュール下板8の下方にわずかに突出されるようになっている。
【0042】
また、一対のワイヤ保持部材15A、15Bによって両端が保持されたSMAワイヤ10は、モジュール枠の切欠き5Bから突出されたレンズ枠4のガイド突起4Dの先端鍵部4D1に下方から係止され、SMAワイヤ10の張力により、先端鍵部4D1を介して、レンズ枠4を上方に付勢している。
【0043】
図3,4に示すように、モジュール枠5及びモジュール枠5内に挿入されたレンズ枠4のそれぞれの上部と下部には、それぞれ上板ばね6と下板ばね7とが積層されている。上板ばね6及び下板ばね7は、略同一形状に打ち抜かれた平板状の板ばね部材であり、例えば、ステンレス(SUS)鋼板などの金属板からなる。
【0044】
上板ばね6(下板ばね7)の形状は、平面視の外形が、モジュール枠5の上側(下側)の端部と同様な略矩形状とされ、中央部に軸線Mと同軸でレンズ枠4の内周面4Fよりわずかに大きな円状の開口6C(7C)が形成され、全体としてリング状とされている。
【0045】
上板ばね6(下板ばね7)の隅部近傍には、モジュール枠5の隅部近傍に形成された上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)の配置位置に対応して、各上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)にそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔6B(7B)が形成されている。これにより、モジュール枠5に対する軸線Mに直交する平面内の位置決めが可能となっている。
【0046】
また、上板ばね6(下板ばね7)には、レンズ枠4に形成された上側固定ピン13A(下側固定ピン13B)の配置位置に対応して、各上側固定ピン13A(下側固定ピン13B)にそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔6A(7A)が形成されている。
【0047】
また、開口6C(7C)の径方向外側には、リング部6F(7F)が形成され、軸線Mを挟んで互いに対角方向に対向する貫通孔6A(7A)の近傍位置から、周方向に略半円弧状に延びる4つのスリット6D(7D)がそれぞれ、略四分円弧ずつ径方向に重なった状態に形成されている。
【0048】
これにより、上板ばね6(下板ばね7)の外側の矩形状枠体から、略四分円弧状に延ばされた4つのばね部6E(7E)が、それぞれ1つずつ貫通孔6A(7A)近傍に延ばされた板ばね部材が形成されている。
【0049】
このように、上板ばね6(下板ばね7)の外形が、モジュール枠5の外形に略合わせた矩形状に設けられ、ばね部6E(7E)、リング部6F(7F)が開口6C(7C)に沿うリング状の領域に形成されている。そして、上板ばね6(下板ばね7)をモジュール枠5に固定する上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)の配置に応じて、スペースに余裕のある隅部に被固定部である貫通孔6B(7B)が設けられるため、貫通孔6B(7B)の形状が、ばね部6E(7E)から離すことができるので、精密な打ち抜きによる製造やエッチングでの製造が容易となる。
【0050】
モジュール下板8は、モジュール枠5の各下側固定ピン14Bを下板ばね7の貫通孔7Bに貫通させるとともに、モジュール枠5内に収容したレンズ枠4の各下側固定ピン13Bを下板ばね7の貫通孔7Aに貫通させた状態で、モジュール枠5との間で、下板ばね7を下方側から挟んで積層し、下板ばね7の矩形状の外形枠をモジュール枠5の端面5bに対して押圧状態に固定するものである。
【0051】
モジュール下板8の形状は、モジュール枠5の外形と略同様の矩形状外形を有する板状部材であり、中央部に軸線Mを中心とする略円形状の開口8Aが厚さ方向に貫通して形成されている。そして、組立時に下板ばね7に積層される上面8a側には、レンズ枠4の各下側固定ピン13Bの配置位置に対応する位置に、後述する加締め部との干渉を避けるための4つのU字状の凹部8Bが形成されている。また、モジュール下板8の周縁に位置する各隅部にはモジュール枠5の各下側固定ピン14Bの配置位置に対応して、これら下側固定ピン14Bをそれぞれ挿通させる貫通孔8Cが形成されている。モジュール下板8の材質は、例えば、電気絶縁性および遮光性を有する合成樹脂を採用している。また、モジュール下板8が電気絶縁性を有することで、給電部材9を下板ばね7に対して電気的絶縁状態で固定する絶縁部材となっている。
【0052】
給電部材9は、それぞれ板状の金属板からなる一対の電極9a、9bからなる。電極9a、9bは、いずれも、モジュール下板8の外形に沿う略L字状の配線部9Bと、配線部の端部からモジュール下板8の外形の外側に突出する端子部9Cとを備える折れ線状の金属板からなる。そして、それぞれの配線部9Bには、モジュール下板8の下面から下方に突出されるモジュール枠5の下側固定ピン14Bのうち、モジュール下板8の外形に沿って隣り合う2つの下側固定ピン14Bを、それぞれ挿通させて、電極9a、9bをモジュール枠5に対して位置決めを行う2つの貫通孔9Aが設けられている。
【0053】
また、図4に示すように、一対の電極9a、9bの端子部9Cは、モジュール枠5において、ワイヤ保持部材15Aが取り付けられた側の側面から軸方向下方に並列して突出するように設けられている。
このため、一方の電極9aには、貫通孔9Aと端子部9Cとの間の配線部9B上の側面に、ワイヤ保持部材15Aの端子部15aを電気的に接続するために凹状に切り欠かれた導電接続部9Dが設けられている。
これに対し、他方の電極9bには、配線部9Bの側面におけるワイヤ保持部材15Bの端子部15aとの接続箇所に、切り欠かれた導電接続部9Dが形成されている。この導電接続部9Dにおいて、他方の電極9bとワイヤ保持部材15Bとが電気的に接続されている。
また、それぞれの導電接続部9Dを、端子部15aと電気的に接続する手段としては、例えば、半田付けまたは導電性接着剤による接着を採用することができる。
【0054】
図2にように、カバー11は、上面11Eの外縁部から下方側に、モジュール枠5を外嵌可能に覆う側壁部11Dが延ばされ、下方側に矩形状の開口11Cが形成された部材であり、上面11Eの中央部に軸線Mを中心とした円状の開口11Aが設けられている。開口11Aの大きさは、レンズユニット12を出し入れ可能な大きさとされる。
【0055】
図1,2に示すように、制御基板32は、駆動ユニット31に制御信号や電力を供給する制御基板であり、一対の電極9a、9bの各端子部9Cに電気的に接続されるプリント配線39,39が表面に形成されたプリント基板と、そのプリント基板上に実装された図示しない制御回路と、からなる。詳しく説明すると、制御基板32は、プリント配線39,39を介して一対の電極9a、9bに通電してSMAワイヤ10を適宜伸縮変形させる制御手段であり、SMAワイヤ10を伸縮させることでレンズ枠4をモジュール枠5に対して相対的に軸方向に沿って移動させてレンズ枠4を所望の位置(合焦位置)に配置させるものである。
【0056】
次に、上記した構成の駆動モジュール1の組立方法について順を追って説明する。
【0057】
第1工程では、まず、モジュール枠5の収容部5A内に下方からレンズ枠4を挿入し、モジュール枠5の上端面5aと、レンズ枠4の上端面4aとを同一高さに揃える。そして、モジュール枠5の各上側固定ピン14Aとレンズ枠4の各上側固定ピン13Aとを上板ばね6の各貫通孔6B、6Aにそれぞれ挿通する。
【0058】
その後、上板バネ6の各貫通孔6A、6Bを貫通して上方に突き出された各上側固定ピン13A、14Aの先端部を図示しないヒータチップにより熱加締めして、図4、5に示すようにそれぞれ第1の固定部である加締め部16と、第2の固定部である加締め部17を形成する。
【0059】
このとき、レンズ枠4の上端面4aとモジュール枠5の上端面5aとは、同一平面上に整列されており、平板状の上板ばね6を変形させることなく配置して、熱加締めを行うことができる。そのため、変形する上板ばね6を押さえる必要がないので、容易に加締め作業を行うことができる。また、上板ばね6の変形による浮きなどの発生を防止することができる。
また、各ヒータチップの高さを共通とすることができるので、双方の加締め部16、17を同時に形成しても、加締め精度のバラツキを低減することができる。
【0060】
次に、第2工程では、レンズ枠4の各下側固定ピン13Bを下板ばね7の各貫通孔7Aにそれぞれ挿通する。その際、同時にモジュール枠5の各下側固定ピン14Bを下板ばね7の各貫通孔7B、モジュール下板8の各貫通孔8C、給電部材9の各貫通孔9Aに挿通する。その後、下板ばね7の各貫通孔7Aを貫通して下方に突き出された各下側固定ピン13Bの先端部を図示しないヒータチップにより熱加締めして、図5に示すように第1の固定部である加締め部18を形成する。
【0061】
このとき、レンズ枠4の上下端面4a、4b間の軸方向距離と、モジュール枠5の上下端面5a、5b間の軸方向距離とは等しいため、各下端面4b、5b同士は、同一平面上に整列されており、平板状の下板ばね7を変形させることなくモジュール下板8を積層配置して熱加締めを行うことができるので、下板ばね7の変形による浮きなどの発生を防止することができる。
また、各ヒータチップの高さを共通とすることができるので、加締め部18を同時に形成しても、加締め精度のバラツキを低減することができる。
【0062】
次に、第3工程では、これら貫通孔7B、8C、9Aを貫通して下方に突き出された各下側固定ピン14Bの下端部を図示しないヒータチップにより熱加締めして、図5に示すように第2の固定部である加締め部19を形成する。
【0063】
このとき、各ヒータチップの高さを共通とすることができるため、加締め部19を同時に形成しても、加締め精度のバラツキを低減することができる。
また、モジュール下板8に凹部8Bが形成されているため、第2工程で形成された加締め部18は、モジュール下板8とは接触しない。
【0064】
これら第1〜第3工程の作業を行うことによって、レンズ枠4とモジュール枠5の両端部に、上板ばね6、下板ばね7、モジュール下板8、給電部材9が積層固定される。
【0065】
なお、上側固定ピン13Aと下側固定ピン13B、また上側固定ピン14Aと下側固定ピン14Bが、それぞれ同軸に設けられているため、第1〜第3工程の加締めにおいて、加締め部16、18、加締め部17、19をそれぞれ形成するためのヒータチップの平面上の位置がそれぞれ共通となる。そのため、各加締めにおいて、ヒータチップ位置を変更する必要がないため効率よく加締め作業を行うことができる。
【0066】
次に、第4工程(配設工程)では、SMAワイヤ10が取り付けられた一対のワイヤ保持部材15A、15Bを、モジュール枠5に固定する。具体的には、モジュール枠5に形成された2箇所のピン35A,35Bにワイヤ保持部材15A,15Bの貫通孔36A,36Bを嵌合するとともに、係止溝5Cにワイヤ保持部材15A,15Bをそれぞれ係止させる。その際、SMAワイヤ10の中央部を、ガイド突起4Dの先端鍵部4D1に係止させ、かつ、この先端鍵部4D1を下側から支持するように掛け渡す。また、ワイヤ保持部材15A、15Bの各端子部15aは、モジュール下板8の下方に突出され、それぞれ、モジュール下板8に固定された給電部材9である電極9a、9bの導電接続部9Dに係止されるか、もしくは近接して配置されている。
【0067】
次に、第5工程(固定工程)では、貫通孔37A,37Bに熱硬化性接着剤を流し込み、モジュール枠5の溝部36内に充填する。溝部36に熱硬化性接着剤を充填したら、その接着剤を硬化させるために加熱炉の中に入れる。加熱炉内において、例えば約100℃で20〜30分程度加熱することにより接着剤が硬化してモジュール枠5とワイヤ保持部材15A,15Bとが接着固定される。
【0068】
n
モジュール枠5とワイヤ保持部材15A,15Bとを接着固定した後、例えば、半田付けや導電性接着剤などを用いて、各端子部15aを、それぞれ導電接続部9Dに対して電気的に接続させる。
【0069】
次に、第6工程では、モジュール枠5の上方から、カバー11を被せ、側壁部11Dとモジュール下板8とを接合する。例えば、側壁部11Dに係合爪などを設けてはめ込みによって接合したり、側壁部11Dとモジュール下板8とを接着、または溶着して接合したりする。また、加締め部16、17は、それぞれカバー11の上面11Eの裏面に対して、離間された状態にある。
以上で、駆動モジュール1本体の組み立てが完了する。
【0070】
その後、駆動ユニット31の下方にアダプタ30を取り付けた後、基板上へ取り付ける。駆動モジュール1の基板上への取り付けは、接着、嵌め込みなどの固定手段を採用することができる。なお、基板は、駆動モジュール1に付属する独立した部材であってもよいし、電子機器等に接続、配置された部材であってもよい。
【0071】
さらに、カバー11の開口11Aを通じてレンズ枠4内にレンズユニット12を螺合して取り付ける。このように、レンズユニット12を最後に取り付けているのは、組立作業により、レンズユニット12のレンズが汚れたり、ゴミなどが付着したりしないためであるが、例えば、駆動モジュール1をレンズユニット12が取り付けられた製品状態で出荷する場合や、カバー11の開口11Aをレンズユニット12の外形より小さくしたい場合、例えば開口絞りを兼用するような場合などには、この工程を、早い段階(第6工程の前)で実施してもよい。
【0072】
次に、上記した駆動モジュール1の動作について説明する。
【0073】
駆動モジュール1は、端子部9Cに電力が供給されない状態では、SMAワイヤ10からの張力およびコイルスプリング34の付勢力、加締め部16、18で上板ばね6及び下板ばね7からの復元力などのレンズ枠4に作用する力がつり合い、レンズユニット12が取り付けられたレンズ枠4が、軸方向の一定位置に保持される。
【0074】
上記した駆動モジュール1を駆動させる際には、後述する制御方法に従って制御基板32から端子部9Cを介して給電部材9に電力を供給する。このとき、電極9a、ワイヤ保持部材15A、SMAワイヤ10、ワイヤ保持部15b及び電極9bは、それぞれ導通されているため、SMAワイヤ10に電流が流れる。
【0075】
したがって、SMAワイヤ10に対して通電すると、SMAワイヤ10にジュール熱が発生して、SMAワイヤ10の温度が上昇し、SMAワイヤ10の変態開始温度を超えると、SMAワイヤ10が温度に応じた長さに収縮する。この結果、レンズ枠4のガイド突起4Dが、上方に移動する。これにより、コイルスプリング34、上板ばね6及び下板ばね7が、それぞれ変形し、変形量に応じた弾性復元力がレンズ枠4に付勢される。そして、この弾性復元力がSMAワイヤ10の張力とつり合う位置でレンズ枠4が停止する。このとき、上板ばね6、下板ばね7は、平行ばねを構成しているため、レンズ枠4は、軸方向のガイド部材などに沿わせなくても、正確に軸線M上に沿って移動される。このため、部品点数を削減し、小型化することが可能となっている。また、ガイド部材に対する摺動負荷も発生しないので、低消費電力を実現することが可能となる。
【0076】
一方、電力の供給を停止してSMAワイヤ10に対する通電を停止すると、SMAワイヤ10が伸長可能となり、レンズ枠4は、下方のつり合い位置まで移動する。
このようにして、制御基板32によって電力供給量を制御することで、レンズ枠4を軸線M方向に駆動する。
なお、SMAワイヤ10は昇温時と降温時との間で温度ヒステリシスが現れるが、ソフト等で補正することで対応可能である。
【0077】
次に、駆動モジュール1の制御方法について説明する。
【0078】
上記した構成からなる駆動モジュール1は制御基板32によって図6、7に示す方法で制御することが可能である。
【0079】
まず初めに、図6に示すように、環境温度を検出する(温度検出ステップ)。具体的に説明すると、図7(a)、(b)に示すように、電子機器の電源を入れるたびに、SMAワイヤ10に通電して当該SMAワイヤ10を限界まで縮み変形させる。これにより、SMAワイヤ10の最大電気抵抗値Rmax(図15に示す。)と最小電気抵抗値Rmin(図15に示す。)を検出して駆動モジュール1による動作可能範囲(SMAワイヤ10の伸縮範囲)を検出すると共に環境温度を検出する。なお、環境温度は、SMAワイヤ10の初期の電気抵抗値R0(図15に示す。)や初期温度T0(図15に示す。)、初期の電気抵抗値R0と最大電気抵抗値Rmaxとの差、その他に基いて検出することが可能であり、或いは温度センサによって測定してもよい。
【0080】
次に、図6に示すように、検出された環境温度に基いて図7(a)に示す第一駆動モード及び図7(b)に示す第二駆動モードのうちの何れか一方を選択する(モード選択ステップ)。詳しく説明すると、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合には上記した第一駆動モードを選択し、環境温度が閾値温度よりも高い場合には上記した第二駆動モードを選択する。上記した閾値温度は予め設定された温度であり、図8に示すように、SMAワイヤ10の昇温時における環境温度とSMAワイヤ10の変形収束時間との関数のグラフG1と、SMAワイヤ10の降温時における環境温度とSMAワイヤ10の変形収束時間との関数のグラフG2と、の交点における環境温度TXが閾値温度となる。なお、上記したグラフG1は、SMAワイヤ10の温度を上昇させて縮み変形させたときのグラフであり、反対に上記したグラフG2は、SMAワイヤ10の温度を低下させて伸び変形させたときのグラフである。
【0081】
次に、図6に示すように、選択された駆動モードに従いSMAワイヤ10に対する通電を制御してSMAワイヤ10を伸縮変形させ、レンズ枠4を合焦位置まで移動させる(駆動ステップ)。
【0082】
例えば、環境温度が閾値温度よりも低くて第一駆動モードで駆動させる場合、図7(a)に示すように、まず、上述したように最大に縮んだ状態のSMAワイヤ10に対する通電を停止してSMAワイヤ10の温度を低下させ、SMAワイヤ10を伸び変形させてレンズ枠4を元の基準位置(下側の基準位置)に戻す。
【0083】
次に、SMAワイヤ10に対して再び通電してSMAワイヤ10の温度を漸次上昇させる。具体的には、伸びた状態のSMAワイヤ10に対して間欠的に通電することでSMAワイヤ10を細かく段階的に加熱していく。これにより、SMAワイヤ10が徐々に縮み変形してレンズ枠4が徐々に上昇していく。そして、レンズ枠4を全移動範囲に亘って移動させながら、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が合ったときのSMAワイヤ10の温度(電気抵抗値)を記録する。
【0084】
そして、レンズ枠4の全移動範囲のスキャンが完了した後、SMAワイヤ10に対する通電を停止してSMAワイヤ10の温度を焦点の温度まで低下させる。具体的には、SMAワイヤ10に対する通電を継続的に停止することでSMAワイヤ10の温度を荒く低下させて目標温度(焦点の温度)まで一気に冷却する。これにより、SMAワイヤ10が伸び変形してレンズ枠4が下降し、レンズ枠4が合焦位置まで移動してレンズ50の焦点が合わせられる。
【0085】
また、環境温度が閾値温度よりも高くて第二駆動モードで駆動させる場合、図7(b)に示すように、まず、上述したように最大に縮んだ状態のSMAワイヤ10の温度を若干低下させてレンズ枠4を基準位置(上側の基準位置)に移動させる。
【0086】
その後、SMAワイヤ10に対する通電を停止してSMAワイヤ10の温度を漸次低下させる。具体的には、SMAワイヤ10に対する通電を間欠的に停止することでSMAワイヤ10を細かく段階的に冷却していく。これにより、SMAワイヤ10が徐々に伸び変形してレンズ枠4が徐々に下降していく。そして、レンズ枠4を全移動範囲に亘って移動させながら、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が合ったときのSMAワイヤ10の温度(電気抵抗値)を記録する。
【0087】
そして、レンズ枠4の全移動範囲のスキャンが完了した後、SMAワイヤ10に対して再び通電してSMAワイヤ10の温度を焦点の温度まで上昇させる。具体的には、SMAワイヤ10に対して継続的に通電することでSMAワイヤ10の温度を荒く上昇させて目標温度(焦点の温度)まで一気に加熱する。これにより、SMAワイヤ10が縮み変形してレンズ枠4が上昇し、レンズ枠4が合焦位置まで移動してレンズ50の焦点が合わせられる。
【0088】
また、上記した構成からなる駆動モジュール1は制御基板32によって図9、10に示す方法によって制御することも可能である。
【0089】
まず初めに、図9に示すように、環境温度を検出する(温度検出ステップ)。具体的に説明すると、上述した制御方法(図6、7に示す。)と同様に、図9(a)、(b)に示すように、電子機器の電源を入れるたびに、SMAワイヤ10に通電して当該SMAワイヤ10を限界まで縮み変形させ、駆動モジュール1による動作可能範囲を検出すると共に環境温度を検出する。
【0090】
次に、図9に示すように、検出された環境温度に基いて図10(a)に示す第一駆動モード及び図10(b)に示す第二駆動モードのうちの何れか一方を選択する(モード選択ステップ)。詳しく説明すると、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合には上記した第一駆動モードを選択し、環境温度が閾値温度よりも高い場合には上記した第二駆動モードを選択する。
【0091】
次に、図9に示すように、選択された駆動モードに従いSMAワイヤ10に対する通電を制御してSMAワイヤ10を伸縮変形させ、レンズ枠4を合焦位置まで移動させる(駆動ステップ)。
【0092】
例えば、環境温度が閾値温度よりも低くて第一駆動モードで駆動させる場合、図10(a)に示すように、まず、上述したように最大に縮んだ状態のSMAワイヤ10の温度を若干低下させてレンズ枠4を基準位置(上側の基準位置)に移動させる。
【0093】
次に、SMAワイヤ10に対する通電を停止させてSMAワイヤ10の温度を荒く低下(急低下)させる。具体的には、SMAワイヤ10に対する通電を間欠的或いは継続的に停止させてSMAワイヤ10を冷却する。これにより、SMAワイヤ10が速やかに伸び変形してレンズ枠4が速やかに下降していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を低下させてレンズ枠4を下降させる。
【0094】
そして、焦点が検出された後、山登り法によってSMAワイヤ10の温度を上下させながらレンズ枠4の位置を微調整してレンズ枠4を合焦位置まで移動させる。
詳しく説明すると、焦点が検出された時点で、SMAワイヤ10に対する通電を開始する。これにより、下降中のレンズ枠4が折り返して上昇に転じる。そして、SMAワイヤ10に対して間欠的に通電することでSMAワイヤ10を細かく段階的に加熱してSMAワイヤ10の温度を漸次上昇させる。これにより、SMAワイヤ10が徐々に縮み変形してレンズ枠4が徐々に上昇していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を上昇させてレンズ枠4を上昇させる。
【0095】
そして、焦点が検出された時点で、SMAワイヤ10に対する通電を停止する。これにより、上昇中のレンズ枠4が折り返して下降に転じる。そして、SMAワイヤ10に対する通電を間欠的に停止することでSMAワイヤ10を細かく段階的に冷却してSMAワイヤ10の温度を漸次低下させる。これにより、SMAワイヤ10が徐々に伸び変形してレンズ枠4が徐々に下降していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を下降させてレンズ枠4を下降させる。
【0096】
上記したSMAワイヤ10に対する加熱と冷却を繰り返すことでレンズ枠4を合焦位置に徐々に近づけていき、最終的にレンズ枠4を合焦位置で停止させる。これにより、レンズ50の焦点が合わせられる。
【0097】
また、環境温度が閾値温度よりも高くて第二駆動モードで駆動させる場合、図10(b)に示すように、まず、上述したように最大に縮んだ状態のSMAワイヤ10に対する通電を停止してSMAワイヤ10の温度を低下させ、SMAワイヤ10を伸び変形させてレンズ枠4を元の基準位置(下側の基準位置)に戻す。
【0098】
次に、SMAワイヤ10に対して通電してSMAワイヤ10の温度を荒く上昇(急上昇)させる。具体的には、SMAワイヤ10に対して間欠的或いは継続的に通電してSMAワイヤ10を加熱する。これにより、SMAワイヤ10が速やかに縮み変形してレンズ枠4が速やかに上昇していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を上昇させてレンズ枠4を上昇させる。
【0099】
そして、焦点が検出された後、山登り法によってSMAワイヤ10の温度を上下させながらレンズ枠4の位置を微調整してレンズ枠4を合焦位置まで移動させる。
詳しく説明すると、焦点が検出された時点で、SMAワイヤ10に対する通電を停止する。これにより、上昇中のレンズ枠4が折り返して下降に転じる。そして、SMAワイヤ10に対する通電を間欠的に停止することでSMAワイヤ10を細かく段階的に冷却してSMAワイヤ10の温度を漸次低下させる。これにより、SMAワイヤ10が徐々に伸び変形してレンズ枠4が徐々に下降していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を下降させてレンズ枠4を下降させる。
【0100】
そして、焦点が検出された時点で、SMAワイヤ10に対する通電を開始する。これにより、下降中のレンズ枠4が折り返して上昇に転じる。そして、SMAワイヤ10に対して間欠的に通電することでSMAワイヤ10を細かく段階的に加熱してSMAワイヤ10の温度を漸次上昇させる。これにより、SMAワイヤ10が徐々に縮み変形してレンズ枠4が徐々に上昇していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を上昇させてレンズ枠4を上昇させる。
【0101】
上記したSMAワイヤ10に対する加熱と冷却を繰り返すことでレンズ枠4を合焦位置に徐々に近づけていき、最終的にレンズ枠4を合焦位置で停止させる。これにより、レンズ50の焦点が合わせられる。
【0102】
上述した駆動モジュール1によれば、環境温度に応じて駆動モードが選択され、その駆動モードに従いSMAワイヤ10に対する通電が制御されてSMAワイヤ10が伸縮変形してレンズ枠4が合焦位置まで移動して焦点が合わせられるので、SMAワイヤ10に対して通電したり通電を停止したりしてからSMAワイヤ10が所望の形状に伸縮変形するまでの時間(変形収束時間)が環境温度の影響で長くなることがない。
【0103】
すなわち、環境温度が閾値温度よりも低い場合には、SMAワイヤ10の温度を荒く低下(急低下)させる第一駆動モードでSMAワイヤ10に対する通電が制御される。このとき、環境温度が低くてSMAワイヤ10の温度が低下しやすいので、SMAワイヤ10に対する通電を停止してから短時間でSMAワイヤ10が所望の形状に伸長変形する。また、環境温度が閾値温度よりも高い場合には、SMAワイヤ10の温度を荒く上昇(急上昇)させる第二駆動モードでSMAワイヤ10に対する通電が制御される。このとき、環境温度が高くてSMAワイヤ10の温度が上昇しやすいので、SMAワイヤ10に通電してから短時間でSMAワイヤ10が所望の形状に収縮変形する。
【0104】
上述したように、環境温度に応じて時間的に効率の良いモードでSMAワイヤ10が制御され、レンズ枠4が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられるので、環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなるのを防止することができる。
【0105】
また、上述した駆動モジュール1によれば、SMAワイヤ10の昇温時における環境温度とSMAワイヤ10の変形収束時間との関数のグラフG1と、SMAワイヤ10の降温時における環境温度とSMAワイヤ10の変形収束時間との関数のグラフG2と、の交点における環境温度TXを閾値温度としているので、時間的に効率の良い駆動モードが確実に選択され、レンズ枠4が合焦位置まで移動する時間が長くなることが確実に防止される。これにより、環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなるのをより確実に防止することができる。
【0106】
次に、本発明の実施形態に係る電子機器について説明する。
図11(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る電子機器の表面、裏面の斜視外観図である。図11(c)は、図11(b)におけるF−F断面図である。
【0107】
図11(a)、(b)に示す本実施形態のカメラ付き携帯電話20は、上記実施形態の駆動モジュール1を備えた電子機器の一例である。
カメラ付き携帯電話20は、受話部22a、送話部22b、操作部22c、液晶表示部22d、アンテナ部22e、不図示の制御回路部などの周知の携帯電話の装置構成をカバー22内外に備えている。
【0108】
また、図11(b)に示すように、液晶表示部22dが設けられた側の裏面側のカバー22に、外光を透過させる窓22Aが設けられ、図11(c)に示すように、駆動モジュール1の開口11Aがカバー22の窓22Aを臨み、窓22Aの法線方向に軸線Mが沿うように、上記第一実施形態の駆動モジュール1が設置されている。
【0109】
このような構成によれば、SMAワイヤ10の変形収束時間が環境温度の影響で長くなることがなく、レンズ枠4が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられるので、オートフォーカス動作の応答性が高い高性能のカメラ付き携帯電話20を提供することができる。
【0110】
以上、本発明に係る駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、レンズ枠4を付勢するための板ばね部材である上板ばね6、下板ばね7に上側固定ピン13A、14A、下側固定ピン13B、14Bを挿通させて、これら固定ピンの先端部を熱カシメする場合の例で説明したが、ばね部材の固定方法は、これに限定されない。例えば、超音波加締めなどで固定してもよいし、ばね部材を、レンズ枠4やモジュール枠5に接着してもよい。本構造によれば、大きな接着面積が確保できるので接着剤を用いても大きな強度が得られる。さらに、本発明におけるばね部材は板ばねに限定されず、他の形状のばね部材であってもよい。
【0111】
また、上記の説明では、モジュール枠5は、全体として略矩形状の部材として説明したが、略矩形状には限定されず、多角形状であってもよい。
また、上記した説明では、形状記憶合金体としてSMAワイヤ10が備えられているが、本発明における形状記憶合金体はワイヤ状のものに限定されず、例えば板状などの他の形状の形状記憶合金体であってもよい。
【0112】
また、上記の説明では、駆動モジュールを用いた電子機器として、カメラ付き携帯電話の例で説明したが、電子機器の種類はこれに限定されない。例えば、デジタルカメラ、パソコン内蔵のカメラなどの他の光学機器に用いることができる。
【0113】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…駆動モジュール 4…レンズ枠 5…モジュール枠(支持体) 6…上板ばね(ばね部材) 7…下板ばね(ばね部材) 10…SMAワイヤ(形状記憶合金体、駆動手段) 20…カメラ付携帯電話(電子機器) 32…制御基板(制御手段) 50…レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを保持するレンズ枠を駆動して自動で焦点を合わせるオートフォーカスを行う駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばカメラ等のようなレンズを有する撮像装置では、撮影時に図12に示すように映像の高調波成分がピークとなる位置(フォーカスポイント)にレンズを移動させる動作を行う必要であり、この動作(フォーカス)を自動で行うオートフォーカス機能を有する撮像装置が数多く提供されている。
【0003】
上記したオートフォーカスを実現する駆動モジュールとして、従来、例えば下記特許文献1に記載されているような、形状記憶合金の温度変化に伴う変形特性を利用してレンズ枠を駆動する駆動モジュールが提案されている。この駆動モジュールには、支持体と、その支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能なレンズ枠と、そのレンズ枠を弾性保持するばね部材と、レンズ枠をばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、が備えられている。前記した駆動手段には、レンズ枠に係合した回動可能なアーム部と、アーム部に巻き掛けられていると共に両端がそれぞれ固定された形状記憶合金ワイヤと、が備えられている。
【0004】
上記した従来の駆動モジュールによれば、形状記憶合金ワイヤに通電することで、その通電に伴う発熱によって形状記憶合金ワイヤが縮み変形する。そして、形状記憶合金ワイヤが縮み変形することでアーム部が回動し、そのアーム部によってレンズ枠が押圧され、レンズ枠が一定方向に沿って一方側に移動する。また、上記した通電を停止することで、形状記憶合金ワイヤの温度が低下して形状記憶合金ワイヤが伸び変形する。そして、形状記憶合金ワイヤが伸び変形することでアーム部が戻り方向に回動し、レンズ枠がばね部材の付勢力によってレンズ枠が一定方向に沿って他方側に移動する。また、従来より、形状記憶合金の電気抵抗値に基いて形状記憶合金の温度をモニタリングする技術が知られている(例えば、下記特許文献2参照。)。したがって、上記した形状記憶合金ワイヤの電気抵抗値に基いて形状記憶合金ワイヤの温度をモニタリングしながら形状記憶合金ワイヤに対する通電を制御することで、レンズ枠を合焦位置まで移動させることができる。
【0005】
また、上記した従来の駆動モジュールは、例えば、図13(a)、(b)に示すように動作させる。すなわち、まず、形状記憶合金ワイヤに対して通電して形状記憶合金ワイヤの温度を漸次上昇させることで、形状記憶合金ワイヤを徐々に縮み変形させてレンズ枠を全移動範囲に亘って移動させる。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査する。続いて、形状記憶合金ワイヤの温度を前記した焦点の温度まで低下させて形状記憶合金ワイヤを伸び変形させる。これにより、レンズ枠が合焦位置まで移動し、レンズの焦点が合わせられる。
【0006】
また、上記した従来の駆動モジュールの動作として、例えば、図14(a)、(b)に示すような動作も考えられる。すなわち、まず、形状記憶合金ワイヤに対して通電して形状記憶合金ワイヤを限界付近まで縮み変形させる。続いて、形状記憶合金ワイヤの温度を漸次低下させることで、形状記憶合金ワイヤを徐々に伸び変形させてレンズ枠を全移動範囲に亘って移動させる。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査する。続いて、形状記憶合金ワイヤの温度を前記した焦点の温度まで上昇させて形状記憶合金ワイヤを縮み変形させる。これにより、レンズ枠が合焦位置まで移動し、レンズの焦点が合わせられる。
【0007】
ところで、上記した形状記憶合金の電気抵抗値は、温度変化に対して図15に示すような曲線で変化する。詳しく説明すると、初期温度T0から温度が上昇するのに伴い電気抵抗値が漸次上昇していく。そして、形状記憶合金の変形が開始された時点(温度T1)で電気抵抗値が下降に転じて漸次低下していき、形状記憶合金の変形が限界に達して形状記憶合金の変形が収まった時点(温度T2)で電気抵抗値が再び上昇に転じて漸次上昇する。つまり、形状記憶合金の変形が開始された時点の電気抵抗値Rmaxが最大値となり、形状記憶合金の変形が収まった時点の電気抵抗値Rminが最小値となる。
【0008】
そして、上記した従来の駆動モジュールでは、図13、図14に示すように、撮像装置の電源を入れるたびに、形状記憶合金ワイヤに通電して当該形状記憶合金ワイヤを限界まで縮み変形させる。これにより、最大電気抵抗値Rmaxと最小電気抵抗値Rminを検出して駆動モジュールによる動作可能範囲を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−58075号公報
【特許文献2】特開2006−183564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した形状記憶合金ワイヤは温度変化によって伸縮するため、環境温度が高い場合、冷却に時間がかかり、形状記憶合金ワイヤが伸び方向に変形する際の収束時間が長くなり、環境温度が低い場合、加熱に時間がかかり、形状記憶合金ワイヤが縮み方向に変形する際の収束時間が長くなる。したがって、上記した従来の技術では、環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなる場合があるという問題が存在する。
【0011】
具体的に説明すると、例えば駆動モジュールを図13(a)、(b)に示すように動作させる場合、上述したように焦点の探査後に形状記憶合金ワイヤの温度を低下させることでレンズ枠を合焦位置まで移動させる。よって、環境温度が低い場合には、図13(a)に示すように、形状記憶合金ワイヤの温度が合焦位置の温度まで短時間で低下し、オートフォーカスの作動時間が比較的短時間になるが、環境温度が高い場合には、図13(b)に示すように、形状記憶合金ワイヤの温度を合焦位置の温度まで低下させるのに時間がかかり、その分だけオートフォーカスの作動時間が長くなる。
【0012】
また、例えば駆動モジュールを図14(a)、(b)に示すように動作させる場合、上述したように焦点の探査後に形状記憶合金ワイヤの温度を上昇させることでレンズ枠を合焦位置まで移動させる。よって、環境温度が高い場合には、図14(b)に示すように、形状記憶合金ワイヤの温度が合焦位置の温度まで短時間で上昇し、オートフォーカスの作動時間が比較的短時間になるが、環境温度が低い場合には、図14(a)に示すように、形状記憶合金ワイヤの温度を合焦位置の温度まで上昇させるのに時間がかかり、その分だけオートフォーカスの作動時間が長くなる。
【0013】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなるのを防止することができる駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る駆動モジュールは、支持体と、該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御する制御手段と、を備える駆動モジュールであって、該駆動モジュールの駆動モードとして、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次上昇させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を低下させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第一駆動モードと、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次低下させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を上昇させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第二駆動モードと、を有しており、前記制御手段が、環境温度を検出し、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択し、選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る駆動モジュールは、支持体と、該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御する制御手段と、を備える駆動モジュールであって、該駆動モジュールの駆動モードとして、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を低下させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第一駆動モードと、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を上昇させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第二駆動モードと、を有しており、前記制御手段が、環境温度を検出し、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択し、選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させるものであってもよい。
【0016】
上述した駆動モジュールによれば、環境温度に応じて駆動モードが選択され、その駆動モードに従い駆動手段が駆動してレンズ枠が合焦位置まで移動して焦点が合わせられるので、形状記憶合金体に対して通電したり通電を停止したりしてから形状記憶合金体が所望の形状に伸縮変形するまでの時間(変形収束時間)が環境温度の影響で長くなることがない。すなわち、環境温度が低い場合には、形状記憶合金体の温度を低下させる第一駆動モードで駆動手段が駆動する。このとき、環境温度が低くて形状記憶合金体の温度が低下しやすいので、形状記憶合金体に対する通電を停止してから短時間で形状記憶合金体が所望の形状に伸長変形する。また、環境温度が高い場合には、形状記憶合金体の温度を上昇させる第二駆動モードで駆動手段が駆動する。このとき、環境温度が高くて形状記憶合金体の温度が上昇しやすいので、形状記憶合金体に通電してから短時間で形状記憶合金体が所望の形状に収縮変形する。したがって、レンズ枠が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられる。
【0017】
また、本発明に係る駆動モジュールは、前記制御手段が、前記形状記憶合金体の昇温時における環境温度と該形状記憶合金体の変形収束時間との関数のグラフと、前記形状記憶合金体の降温時における環境温度と該形状記憶合金体の変形収束時間との関数のグラフと、の交点における温度を前記閾値温度とすることが好ましい。
これにより、時間的に効率の良い駆動モードが確実に選択されるので、レンズ枠が合焦位置まで移動する時間が長くなることが確実に防止される。
【0018】
また、本発明に係る電子機器は、上記した駆動モジュールを備えたことを特徴としている。
このような特徴により、レンズ枠が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられるので、電子機器のオートフォーカス動作の応答性が高くなる。
【0019】
また、本発明に係る駆動モジュールの制御方法は、支持体と、該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御して前記レンズ枠を合焦位置まで移動させる制御手段と、を備える駆動モジュールの制御方法であって、該駆動モジュールの駆動モードとして、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次上昇させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を低下させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第一駆動モードと、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次低下させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を上昇させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第二駆動モードと、を有しており、環境温度を検出する温度検出ステップと、該温度検出ステップで検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択するモード選択ステップと、該モード選択ステップで選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させる駆動ステップと、を備えることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る駆動モジュールの制御方法は、支持体と、該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御して前記レンズ枠を合焦位置まで移動させる制御手段と、を備える駆動モジュールの制御方法であって、該駆動モジュールの駆動モードとして、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を低下させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第一駆動モードと、前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を上昇させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第二駆動モードと、を有しており、環境温度を検出する温度検出ステップと、該温度検出ステップで検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択するモード選択ステップと、該モード選択ステップで選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させる駆動ステップと、を備えるものであってもよい。
【0021】
上述した駆動モジュールの制御方法によれば、形状記憶合金体の変形収束時間が環境温度の影響で長くなることがなく、レンズ枠が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法によれば、環境温度に応じた駆動モードが選択され、レンズ枠が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられるので、環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態における駆動モジュールの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における駆動モジュールの構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における駆動ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における駆動ユニットを示す斜視図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】本発明の実施形態における駆動モジュールの制御方法を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の実施形態における駆動モジュールの駆動モードを示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態における駆動モジュールの閾値温度を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態における駆動モジュールの制御方法を示すフローチャート図である。
【図10】本発明の実施形態における駆動モジュールの駆動モードを示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態における電子機器の図面であり、(a)表面斜視図、(b)裏面斜視図、(c)(b)のF−F線に沿う断面図である。
【図12】レンズの焦点位置を示すグラフである。
【図13】従来の駆動モジュールの駆動モードを示すグラフである。
【図14】従来の駆動モジュールの駆動モードを示すグラフである。
【図15】形状記憶合金体の温度変化に対する電気抵抗値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、一部の図面では見易さのため、例えば図5に示すレンズユニット12などの構成部材を適宜省略して図示している。
また、図中の符号Mは、図5に示すレンズ50の光軸に一致する駆動モジュール1の仮想的な軸線であり、後述するレンズ枠4の駆動方向を示している。以下では、説明を簡単にするため、分解された各構成部材の説明においても、組立時の軸線Mとの位置関係に基づいて、位置や方向を参照する場合がある。例えば、構成部材に明確な円、円筒面が存在しない場合でも、誤解のおそれのない限り、軸線Mに沿う方向を単に「軸方向」と称し、軸線Mに直交する方向を単に「径方向」と称し、軸線M回りの方向を単に「周方向」と称する場合がある。また、軸方向のうちの後述する制御基板32側を「下方」とし、その反対側を「上方」とする。
【0025】
まず、本実施形態における駆動モジュール1の構成について説明する。
図1、2に示すように、本実施形態の駆動モジュール1は、図5に示すレンズ12(レンズユニット12)を軸方向に沿って往復移動させるための駆動モジュールであり、電子機器などに搭載されるものである。この駆動モジュール1は、制御手段となる制御基板32と、制御基板32上に位置するアダプタ30と、アダプタ30上に配設される駆動ユニット31と、駆動ユニット31を覆うように配設されたカバー11と、を備えている。
【0026】
図3に示すように、駆動ユニット31は、被駆動体となるレンズ枠4、支持体となるモジュール枠5、ばね部材となる上板ばね6と下板ばね7、モジュール下板8、給電部材9、及び形状記憶合金体となる形状記憶合金(Shape Memory Alloy、以下、SMAと略称する)ワイヤ10を主な構成部材とするものであって、これら構成部材が一体に組み立てられることで1つのアクチュエータを構成する。
【0027】
図3〜5に示すように、上記したレンズ枠4はモジュール枠5の内側に軸方向に移動可能に挿入されており、これらレンズ枠4とモジュール枠5の上端部に上板ばね6が配設されていると共にレンズ枠4とモジュール枠5の下端部に下板ばね7が配設されており、これらの上板ばね6及び下板ばね7によってレンズ枠4及びモジュール枠5が挟持されている。上板ばね6はレンズ枠4及びモジュール枠5の各上端部にそれぞれ加締めにより固定されている。また、下板ばね7の下方にはモジュール下板8が積層されており、そのモジュール下板8の下方には給電部材9が積層されており、これら下板ばね7、モジュール下板8及び給電部材9はモジュール枠5の下端部に加締めによりそれぞれ共に固定され、さらに、下板ばね7はレンズ枠4の下端部に加締めにより固定されている。また、上記したモジュール下板8の上面に上記したカバー11が載置されて固定されている。
【0028】
上記したレンズ枠4は、軸線Mを中心軸線として軸方向に沿って延設された略円筒形状の筒状部材であり、図5に示すように、軸方向に貫通する横断面視円形の収容部4Aの内周面4Fに雌ネジが形成されている。そして、収容部4Aの内周面4Fにはレンズユニット12が螺合されており、これによりレンズユニット12がレンズ枠4に保持されている。なお、レンズユニット12は、外周面に雄ネジが形成された円筒形状の筒部51と、その筒部51の内側に嵌合されたレンズ50と、から構成されている。
【0029】
レンズ枠4の外壁面4Bには周方向に略90度の間隔をおいて、径方向外方に向けて突出する突出部4C(凸部)が軸方向に延設されており、それら各突出部4Cの上端面4aと下端面4bには、上側固定ピン13A、下側固定ピン13Bがそれぞれ立設されている。上側固定ピン13Aは上板ばね6を保持し、下側固定ピン13Bは下板ばね7を保持するためのものである。
【0030】
上側固定ピン13A及び下側固定ピン13Bは、軸線Mに平行な同軸位置に配置されているため、上板ばね6及び下板ばね7における、上側固定ピン13A及び下側固定ピン13Bの挿通位置はそれぞれ共通化されている。
なお、上側固定ピン13Aおよび下側固定ピン13Bの平面視の位置が異なっていてもよく、例えば4本の突出部4Cのうちの2つの突出部4Cの各上端面4aに上側固定ピン13Aをそれぞれ立設し、残りの2本の突出部4Cの各上端面4aに下側固定ピン13Bをそれぞれ立設してもよい。
【0031】
レンズ枠4には、SMAワイヤ10を掛けられるガイド突起4Dが設けられている。このガイド突起4Dは、複数の突出部4Cのうちの1つの下端部の外周面に一体に接合されており、SMAワイヤ10が掛けられて係止する先端鍵部(係止部)4D1が形成されている。この先端鍵部4D1は、そこに掛けられたSMAワイヤ10が収縮することによりレンズ枠4を上方に持ち上げて軸方向に沿って上方に移動させるものである。
【0032】
また、レンズ枠4には、レンズ枠4を下向きに付勢する図2に示すコイルスプリング34を保持するスプリング保持部33が設けられている。このスプリング保持部33はガイド突起4Dの上端面に立設された柱状の凸部であり、このスプリング保持部33には図2に示すコイルスプリング34が挿通されている。これによりSMAワイヤ10が周囲環境の影響などにより収縮してレンズ枠4を上昇させようとする動きを抑制することができる。なお、レンズ枠4は、熱加締めまたは超音波加締めが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂などにより一体成形されている。
【0033】
モジュール枠5は、軸線Mを中心軸線として軸方向に沿って延設された筒状部材であり、平面視の外形が全体として略矩形状に形成され、かつその中央部に、軸方向に貫通する横断面視円形の収容部5Aが形成されている。この収容部5A内には、上記したレンズ枠4が収容されている。モジュール枠5の上部及び下部の四隅には、軸線Mに対する仮想垂直に沿って形成された平面状の上下端面5a、5bがそれぞれ形成され、各上端面5aには上側固定ピン14Aが上方に向けてそれぞれ突設され、各下端面5bには下側固定ピン14Bが下方に向けてそれぞれ突設されている。
【0034】
上側固定ピン14Aは上板ばね6を保持し、下側固定ピン14Bは下板ばね7、モジュール下板8及び給電部材9を保持するためのものである。なお、上側固定ピン14Aの平面視の位置は、下側固定ピン14Bの配置と異なっていてもよいが、本実施形態では、それぞれ軸線Mに平行な同軸位置に配置されている。このため、上板ばね6、下板ばね7における、上側固定ピン14A及び下側固定ピン14Bの挿通位置は、それぞれ共通化されている。また、上記した上下端面5a、5bの間の距離は、レンズ枠4の上下端面4a、4bの間の距離と略同一距離に設定されている。
【0035】
モジュール枠5の一隅の下部には平面視の溝幅がレンズ枠4のガイド突起4Dに軸方向に移動可能に嵌合する大きさを有する切欠き5Bが形成されている。この切欠き5Bは、レンズ枠4をモジュール枠5内に下方から挿入して収容した状態で、レンズ枠4のガイド突起4Dを貫通させ、ガイド突起4Dの先端鍵部4D1をモジュール枠5の径方向外部に突出させるとともに、レンズ枠4の周方向の位置決めを行うためのものである。
【0036】
また、図3、4に示すように、モジュール枠5の切欠き5Bに隣り合う2つの隅部には、切欠き5Bが設けられた隅部と同方向側の側面において、SMAワイヤ10を保持するワイヤ保持部材(保持端子)15A、15Bを取り付けるための一対の係止溝5Cが形成されている。
【0037】
モジュール枠5の側面におけるワイヤ保持部材15A,15Bが配される位置には、ピン35A,35Bがそれぞれ形成されている。さらに、ピン35A,35Bが形成された下方には、接着剤が充填されてモジュール枠5とワイヤ保持部材15A,15Bとを固定する溝部36が形成されている。そして、ワイヤ保持部材15A,15Bをモジュール枠5に固定する際に、ワイヤ保持部材15A,15Bが回動するのを抑制することができる壁部35Cが形成されている。壁部35Cは、モジュール枠5の側面から側方(側面に対して鉛直方向)に延出されている。
【0038】
また、モジュール枠5は、本実施形態ではレンズ枠4と同様に、熱加締めまたは超音波加締めが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂などにより一体成形されている。
【0039】
ワイヤ保持部材15Aは、駆動モジュール1から給電部材9の一対の端子部9Cが突出される側の側面に取り付けられ、ワイヤ保持部材15Bは、駆動モジュール1から給電部材9の一対の端子部9Cが突出されない側の側面に取り付けられている。
【0040】
図4に示すように、ワイヤ保持部材15A、15Bは、ワイヤ保持部15bにSMAワイヤ10の端部を加締めてなる鍵状に形成された金属板などの導電性部材である。ワイヤ保持部材15A,15Bには、モジュール枠5のピン35A,35Bに嵌合する貫通孔36A,36Bがそれぞれ形成されている。また、貫通孔36A,36Bの軸方向下方には接着剤を流し込むための貫通孔37A,37Bがそれぞれ形成されている。そして、モジュール枠5とワイヤ保持部材15A,15Bとを固定する際に、モジュール枠5の壁部35Cに当接して、ワイヤ保持部材15A,15Bの回動を抑止するための腕部38A,38Bがそれぞれ形成されている。係止溝5Cおよびピン35A,35Bに側方から嵌合させ、壁部35Cと腕部38A,38Bとを当接させることで、SMAワイヤ10の端部を位置決めして保持するものである。
【0041】
ワイヤ保持部材15A、15Bは、SMAワイヤ10のワイヤ保持部15b(加締め位置)と反対側に片状の端子部15aを備え、モジュール枠5に対する取付状態において、端子部15aがモジュール枠5の下方に積層されたモジュール下板8の下方にわずかに突出されるようになっている。
【0042】
また、一対のワイヤ保持部材15A、15Bによって両端が保持されたSMAワイヤ10は、モジュール枠の切欠き5Bから突出されたレンズ枠4のガイド突起4Dの先端鍵部4D1に下方から係止され、SMAワイヤ10の張力により、先端鍵部4D1を介して、レンズ枠4を上方に付勢している。
【0043】
図3,4に示すように、モジュール枠5及びモジュール枠5内に挿入されたレンズ枠4のそれぞれの上部と下部には、それぞれ上板ばね6と下板ばね7とが積層されている。上板ばね6及び下板ばね7は、略同一形状に打ち抜かれた平板状の板ばね部材であり、例えば、ステンレス(SUS)鋼板などの金属板からなる。
【0044】
上板ばね6(下板ばね7)の形状は、平面視の外形が、モジュール枠5の上側(下側)の端部と同様な略矩形状とされ、中央部に軸線Mと同軸でレンズ枠4の内周面4Fよりわずかに大きな円状の開口6C(7C)が形成され、全体としてリング状とされている。
【0045】
上板ばね6(下板ばね7)の隅部近傍には、モジュール枠5の隅部近傍に形成された上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)の配置位置に対応して、各上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)にそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔6B(7B)が形成されている。これにより、モジュール枠5に対する軸線Mに直交する平面内の位置決めが可能となっている。
【0046】
また、上板ばね6(下板ばね7)には、レンズ枠4に形成された上側固定ピン13A(下側固定ピン13B)の配置位置に対応して、各上側固定ピン13A(下側固定ピン13B)にそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔6A(7A)が形成されている。
【0047】
また、開口6C(7C)の径方向外側には、リング部6F(7F)が形成され、軸線Mを挟んで互いに対角方向に対向する貫通孔6A(7A)の近傍位置から、周方向に略半円弧状に延びる4つのスリット6D(7D)がそれぞれ、略四分円弧ずつ径方向に重なった状態に形成されている。
【0048】
これにより、上板ばね6(下板ばね7)の外側の矩形状枠体から、略四分円弧状に延ばされた4つのばね部6E(7E)が、それぞれ1つずつ貫通孔6A(7A)近傍に延ばされた板ばね部材が形成されている。
【0049】
このように、上板ばね6(下板ばね7)の外形が、モジュール枠5の外形に略合わせた矩形状に設けられ、ばね部6E(7E)、リング部6F(7F)が開口6C(7C)に沿うリング状の領域に形成されている。そして、上板ばね6(下板ばね7)をモジュール枠5に固定する上側固定ピン14A(下側固定ピン14B)の配置に応じて、スペースに余裕のある隅部に被固定部である貫通孔6B(7B)が設けられるため、貫通孔6B(7B)の形状が、ばね部6E(7E)から離すことができるので、精密な打ち抜きによる製造やエッチングでの製造が容易となる。
【0050】
モジュール下板8は、モジュール枠5の各下側固定ピン14Bを下板ばね7の貫通孔7Bに貫通させるとともに、モジュール枠5内に収容したレンズ枠4の各下側固定ピン13Bを下板ばね7の貫通孔7Aに貫通させた状態で、モジュール枠5との間で、下板ばね7を下方側から挟んで積層し、下板ばね7の矩形状の外形枠をモジュール枠5の端面5bに対して押圧状態に固定するものである。
【0051】
モジュール下板8の形状は、モジュール枠5の外形と略同様の矩形状外形を有する板状部材であり、中央部に軸線Mを中心とする略円形状の開口8Aが厚さ方向に貫通して形成されている。そして、組立時に下板ばね7に積層される上面8a側には、レンズ枠4の各下側固定ピン13Bの配置位置に対応する位置に、後述する加締め部との干渉を避けるための4つのU字状の凹部8Bが形成されている。また、モジュール下板8の周縁に位置する各隅部にはモジュール枠5の各下側固定ピン14Bの配置位置に対応して、これら下側固定ピン14Bをそれぞれ挿通させる貫通孔8Cが形成されている。モジュール下板8の材質は、例えば、電気絶縁性および遮光性を有する合成樹脂を採用している。また、モジュール下板8が電気絶縁性を有することで、給電部材9を下板ばね7に対して電気的絶縁状態で固定する絶縁部材となっている。
【0052】
給電部材9は、それぞれ板状の金属板からなる一対の電極9a、9bからなる。電極9a、9bは、いずれも、モジュール下板8の外形に沿う略L字状の配線部9Bと、配線部の端部からモジュール下板8の外形の外側に突出する端子部9Cとを備える折れ線状の金属板からなる。そして、それぞれの配線部9Bには、モジュール下板8の下面から下方に突出されるモジュール枠5の下側固定ピン14Bのうち、モジュール下板8の外形に沿って隣り合う2つの下側固定ピン14Bを、それぞれ挿通させて、電極9a、9bをモジュール枠5に対して位置決めを行う2つの貫通孔9Aが設けられている。
【0053】
また、図4に示すように、一対の電極9a、9bの端子部9Cは、モジュール枠5において、ワイヤ保持部材15Aが取り付けられた側の側面から軸方向下方に並列して突出するように設けられている。
このため、一方の電極9aには、貫通孔9Aと端子部9Cとの間の配線部9B上の側面に、ワイヤ保持部材15Aの端子部15aを電気的に接続するために凹状に切り欠かれた導電接続部9Dが設けられている。
これに対し、他方の電極9bには、配線部9Bの側面におけるワイヤ保持部材15Bの端子部15aとの接続箇所に、切り欠かれた導電接続部9Dが形成されている。この導電接続部9Dにおいて、他方の電極9bとワイヤ保持部材15Bとが電気的に接続されている。
また、それぞれの導電接続部9Dを、端子部15aと電気的に接続する手段としては、例えば、半田付けまたは導電性接着剤による接着を採用することができる。
【0054】
図2にように、カバー11は、上面11Eの外縁部から下方側に、モジュール枠5を外嵌可能に覆う側壁部11Dが延ばされ、下方側に矩形状の開口11Cが形成された部材であり、上面11Eの中央部に軸線Mを中心とした円状の開口11Aが設けられている。開口11Aの大きさは、レンズユニット12を出し入れ可能な大きさとされる。
【0055】
図1,2に示すように、制御基板32は、駆動ユニット31に制御信号や電力を供給する制御基板であり、一対の電極9a、9bの各端子部9Cに電気的に接続されるプリント配線39,39が表面に形成されたプリント基板と、そのプリント基板上に実装された図示しない制御回路と、からなる。詳しく説明すると、制御基板32は、プリント配線39,39を介して一対の電極9a、9bに通電してSMAワイヤ10を適宜伸縮変形させる制御手段であり、SMAワイヤ10を伸縮させることでレンズ枠4をモジュール枠5に対して相対的に軸方向に沿って移動させてレンズ枠4を所望の位置(合焦位置)に配置させるものである。
【0056】
次に、上記した構成の駆動モジュール1の組立方法について順を追って説明する。
【0057】
第1工程では、まず、モジュール枠5の収容部5A内に下方からレンズ枠4を挿入し、モジュール枠5の上端面5aと、レンズ枠4の上端面4aとを同一高さに揃える。そして、モジュール枠5の各上側固定ピン14Aとレンズ枠4の各上側固定ピン13Aとを上板ばね6の各貫通孔6B、6Aにそれぞれ挿通する。
【0058】
その後、上板バネ6の各貫通孔6A、6Bを貫通して上方に突き出された各上側固定ピン13A、14Aの先端部を図示しないヒータチップにより熱加締めして、図4、5に示すようにそれぞれ第1の固定部である加締め部16と、第2の固定部である加締め部17を形成する。
【0059】
このとき、レンズ枠4の上端面4aとモジュール枠5の上端面5aとは、同一平面上に整列されており、平板状の上板ばね6を変形させることなく配置して、熱加締めを行うことができる。そのため、変形する上板ばね6を押さえる必要がないので、容易に加締め作業を行うことができる。また、上板ばね6の変形による浮きなどの発生を防止することができる。
また、各ヒータチップの高さを共通とすることができるので、双方の加締め部16、17を同時に形成しても、加締め精度のバラツキを低減することができる。
【0060】
次に、第2工程では、レンズ枠4の各下側固定ピン13Bを下板ばね7の各貫通孔7Aにそれぞれ挿通する。その際、同時にモジュール枠5の各下側固定ピン14Bを下板ばね7の各貫通孔7B、モジュール下板8の各貫通孔8C、給電部材9の各貫通孔9Aに挿通する。その後、下板ばね7の各貫通孔7Aを貫通して下方に突き出された各下側固定ピン13Bの先端部を図示しないヒータチップにより熱加締めして、図5に示すように第1の固定部である加締め部18を形成する。
【0061】
このとき、レンズ枠4の上下端面4a、4b間の軸方向距離と、モジュール枠5の上下端面5a、5b間の軸方向距離とは等しいため、各下端面4b、5b同士は、同一平面上に整列されており、平板状の下板ばね7を変形させることなくモジュール下板8を積層配置して熱加締めを行うことができるので、下板ばね7の変形による浮きなどの発生を防止することができる。
また、各ヒータチップの高さを共通とすることができるので、加締め部18を同時に形成しても、加締め精度のバラツキを低減することができる。
【0062】
次に、第3工程では、これら貫通孔7B、8C、9Aを貫通して下方に突き出された各下側固定ピン14Bの下端部を図示しないヒータチップにより熱加締めして、図5に示すように第2の固定部である加締め部19を形成する。
【0063】
このとき、各ヒータチップの高さを共通とすることができるため、加締め部19を同時に形成しても、加締め精度のバラツキを低減することができる。
また、モジュール下板8に凹部8Bが形成されているため、第2工程で形成された加締め部18は、モジュール下板8とは接触しない。
【0064】
これら第1〜第3工程の作業を行うことによって、レンズ枠4とモジュール枠5の両端部に、上板ばね6、下板ばね7、モジュール下板8、給電部材9が積層固定される。
【0065】
なお、上側固定ピン13Aと下側固定ピン13B、また上側固定ピン14Aと下側固定ピン14Bが、それぞれ同軸に設けられているため、第1〜第3工程の加締めにおいて、加締め部16、18、加締め部17、19をそれぞれ形成するためのヒータチップの平面上の位置がそれぞれ共通となる。そのため、各加締めにおいて、ヒータチップ位置を変更する必要がないため効率よく加締め作業を行うことができる。
【0066】
次に、第4工程(配設工程)では、SMAワイヤ10が取り付けられた一対のワイヤ保持部材15A、15Bを、モジュール枠5に固定する。具体的には、モジュール枠5に形成された2箇所のピン35A,35Bにワイヤ保持部材15A,15Bの貫通孔36A,36Bを嵌合するとともに、係止溝5Cにワイヤ保持部材15A,15Bをそれぞれ係止させる。その際、SMAワイヤ10の中央部を、ガイド突起4Dの先端鍵部4D1に係止させ、かつ、この先端鍵部4D1を下側から支持するように掛け渡す。また、ワイヤ保持部材15A、15Bの各端子部15aは、モジュール下板8の下方に突出され、それぞれ、モジュール下板8に固定された給電部材9である電極9a、9bの導電接続部9Dに係止されるか、もしくは近接して配置されている。
【0067】
次に、第5工程(固定工程)では、貫通孔37A,37Bに熱硬化性接着剤を流し込み、モジュール枠5の溝部36内に充填する。溝部36に熱硬化性接着剤を充填したら、その接着剤を硬化させるために加熱炉の中に入れる。加熱炉内において、例えば約100℃で20〜30分程度加熱することにより接着剤が硬化してモジュール枠5とワイヤ保持部材15A,15Bとが接着固定される。
【0068】
n
モジュール枠5とワイヤ保持部材15A,15Bとを接着固定した後、例えば、半田付けや導電性接着剤などを用いて、各端子部15aを、それぞれ導電接続部9Dに対して電気的に接続させる。
【0069】
次に、第6工程では、モジュール枠5の上方から、カバー11を被せ、側壁部11Dとモジュール下板8とを接合する。例えば、側壁部11Dに係合爪などを設けてはめ込みによって接合したり、側壁部11Dとモジュール下板8とを接着、または溶着して接合したりする。また、加締め部16、17は、それぞれカバー11の上面11Eの裏面に対して、離間された状態にある。
以上で、駆動モジュール1本体の組み立てが完了する。
【0070】
その後、駆動ユニット31の下方にアダプタ30を取り付けた後、基板上へ取り付ける。駆動モジュール1の基板上への取り付けは、接着、嵌め込みなどの固定手段を採用することができる。なお、基板は、駆動モジュール1に付属する独立した部材であってもよいし、電子機器等に接続、配置された部材であってもよい。
【0071】
さらに、カバー11の開口11Aを通じてレンズ枠4内にレンズユニット12を螺合して取り付ける。このように、レンズユニット12を最後に取り付けているのは、組立作業により、レンズユニット12のレンズが汚れたり、ゴミなどが付着したりしないためであるが、例えば、駆動モジュール1をレンズユニット12が取り付けられた製品状態で出荷する場合や、カバー11の開口11Aをレンズユニット12の外形より小さくしたい場合、例えば開口絞りを兼用するような場合などには、この工程を、早い段階(第6工程の前)で実施してもよい。
【0072】
次に、上記した駆動モジュール1の動作について説明する。
【0073】
駆動モジュール1は、端子部9Cに電力が供給されない状態では、SMAワイヤ10からの張力およびコイルスプリング34の付勢力、加締め部16、18で上板ばね6及び下板ばね7からの復元力などのレンズ枠4に作用する力がつり合い、レンズユニット12が取り付けられたレンズ枠4が、軸方向の一定位置に保持される。
【0074】
上記した駆動モジュール1を駆動させる際には、後述する制御方法に従って制御基板32から端子部9Cを介して給電部材9に電力を供給する。このとき、電極9a、ワイヤ保持部材15A、SMAワイヤ10、ワイヤ保持部15b及び電極9bは、それぞれ導通されているため、SMAワイヤ10に電流が流れる。
【0075】
したがって、SMAワイヤ10に対して通電すると、SMAワイヤ10にジュール熱が発生して、SMAワイヤ10の温度が上昇し、SMAワイヤ10の変態開始温度を超えると、SMAワイヤ10が温度に応じた長さに収縮する。この結果、レンズ枠4のガイド突起4Dが、上方に移動する。これにより、コイルスプリング34、上板ばね6及び下板ばね7が、それぞれ変形し、変形量に応じた弾性復元力がレンズ枠4に付勢される。そして、この弾性復元力がSMAワイヤ10の張力とつり合う位置でレンズ枠4が停止する。このとき、上板ばね6、下板ばね7は、平行ばねを構成しているため、レンズ枠4は、軸方向のガイド部材などに沿わせなくても、正確に軸線M上に沿って移動される。このため、部品点数を削減し、小型化することが可能となっている。また、ガイド部材に対する摺動負荷も発生しないので、低消費電力を実現することが可能となる。
【0076】
一方、電力の供給を停止してSMAワイヤ10に対する通電を停止すると、SMAワイヤ10が伸長可能となり、レンズ枠4は、下方のつり合い位置まで移動する。
このようにして、制御基板32によって電力供給量を制御することで、レンズ枠4を軸線M方向に駆動する。
なお、SMAワイヤ10は昇温時と降温時との間で温度ヒステリシスが現れるが、ソフト等で補正することで対応可能である。
【0077】
次に、駆動モジュール1の制御方法について説明する。
【0078】
上記した構成からなる駆動モジュール1は制御基板32によって図6、7に示す方法で制御することが可能である。
【0079】
まず初めに、図6に示すように、環境温度を検出する(温度検出ステップ)。具体的に説明すると、図7(a)、(b)に示すように、電子機器の電源を入れるたびに、SMAワイヤ10に通電して当該SMAワイヤ10を限界まで縮み変形させる。これにより、SMAワイヤ10の最大電気抵抗値Rmax(図15に示す。)と最小電気抵抗値Rmin(図15に示す。)を検出して駆動モジュール1による動作可能範囲(SMAワイヤ10の伸縮範囲)を検出すると共に環境温度を検出する。なお、環境温度は、SMAワイヤ10の初期の電気抵抗値R0(図15に示す。)や初期温度T0(図15に示す。)、初期の電気抵抗値R0と最大電気抵抗値Rmaxとの差、その他に基いて検出することが可能であり、或いは温度センサによって測定してもよい。
【0080】
次に、図6に示すように、検出された環境温度に基いて図7(a)に示す第一駆動モード及び図7(b)に示す第二駆動モードのうちの何れか一方を選択する(モード選択ステップ)。詳しく説明すると、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合には上記した第一駆動モードを選択し、環境温度が閾値温度よりも高い場合には上記した第二駆動モードを選択する。上記した閾値温度は予め設定された温度であり、図8に示すように、SMAワイヤ10の昇温時における環境温度とSMAワイヤ10の変形収束時間との関数のグラフG1と、SMAワイヤ10の降温時における環境温度とSMAワイヤ10の変形収束時間との関数のグラフG2と、の交点における環境温度TXが閾値温度となる。なお、上記したグラフG1は、SMAワイヤ10の温度を上昇させて縮み変形させたときのグラフであり、反対に上記したグラフG2は、SMAワイヤ10の温度を低下させて伸び変形させたときのグラフである。
【0081】
次に、図6に示すように、選択された駆動モードに従いSMAワイヤ10に対する通電を制御してSMAワイヤ10を伸縮変形させ、レンズ枠4を合焦位置まで移動させる(駆動ステップ)。
【0082】
例えば、環境温度が閾値温度よりも低くて第一駆動モードで駆動させる場合、図7(a)に示すように、まず、上述したように最大に縮んだ状態のSMAワイヤ10に対する通電を停止してSMAワイヤ10の温度を低下させ、SMAワイヤ10を伸び変形させてレンズ枠4を元の基準位置(下側の基準位置)に戻す。
【0083】
次に、SMAワイヤ10に対して再び通電してSMAワイヤ10の温度を漸次上昇させる。具体的には、伸びた状態のSMAワイヤ10に対して間欠的に通電することでSMAワイヤ10を細かく段階的に加熱していく。これにより、SMAワイヤ10が徐々に縮み変形してレンズ枠4が徐々に上昇していく。そして、レンズ枠4を全移動範囲に亘って移動させながら、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が合ったときのSMAワイヤ10の温度(電気抵抗値)を記録する。
【0084】
そして、レンズ枠4の全移動範囲のスキャンが完了した後、SMAワイヤ10に対する通電を停止してSMAワイヤ10の温度を焦点の温度まで低下させる。具体的には、SMAワイヤ10に対する通電を継続的に停止することでSMAワイヤ10の温度を荒く低下させて目標温度(焦点の温度)まで一気に冷却する。これにより、SMAワイヤ10が伸び変形してレンズ枠4が下降し、レンズ枠4が合焦位置まで移動してレンズ50の焦点が合わせられる。
【0085】
また、環境温度が閾値温度よりも高くて第二駆動モードで駆動させる場合、図7(b)に示すように、まず、上述したように最大に縮んだ状態のSMAワイヤ10の温度を若干低下させてレンズ枠4を基準位置(上側の基準位置)に移動させる。
【0086】
その後、SMAワイヤ10に対する通電を停止してSMAワイヤ10の温度を漸次低下させる。具体的には、SMAワイヤ10に対する通電を間欠的に停止することでSMAワイヤ10を細かく段階的に冷却していく。これにより、SMAワイヤ10が徐々に伸び変形してレンズ枠4が徐々に下降していく。そして、レンズ枠4を全移動範囲に亘って移動させながら、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が合ったときのSMAワイヤ10の温度(電気抵抗値)を記録する。
【0087】
そして、レンズ枠4の全移動範囲のスキャンが完了した後、SMAワイヤ10に対して再び通電してSMAワイヤ10の温度を焦点の温度まで上昇させる。具体的には、SMAワイヤ10に対して継続的に通電することでSMAワイヤ10の温度を荒く上昇させて目標温度(焦点の温度)まで一気に加熱する。これにより、SMAワイヤ10が縮み変形してレンズ枠4が上昇し、レンズ枠4が合焦位置まで移動してレンズ50の焦点が合わせられる。
【0088】
また、上記した構成からなる駆動モジュール1は制御基板32によって図9、10に示す方法によって制御することも可能である。
【0089】
まず初めに、図9に示すように、環境温度を検出する(温度検出ステップ)。具体的に説明すると、上述した制御方法(図6、7に示す。)と同様に、図9(a)、(b)に示すように、電子機器の電源を入れるたびに、SMAワイヤ10に通電して当該SMAワイヤ10を限界まで縮み変形させ、駆動モジュール1による動作可能範囲を検出すると共に環境温度を検出する。
【0090】
次に、図9に示すように、検出された環境温度に基いて図10(a)に示す第一駆動モード及び図10(b)に示す第二駆動モードのうちの何れか一方を選択する(モード選択ステップ)。詳しく説明すると、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合には上記した第一駆動モードを選択し、環境温度が閾値温度よりも高い場合には上記した第二駆動モードを選択する。
【0091】
次に、図9に示すように、選択された駆動モードに従いSMAワイヤ10に対する通電を制御してSMAワイヤ10を伸縮変形させ、レンズ枠4を合焦位置まで移動させる(駆動ステップ)。
【0092】
例えば、環境温度が閾値温度よりも低くて第一駆動モードで駆動させる場合、図10(a)に示すように、まず、上述したように最大に縮んだ状態のSMAワイヤ10の温度を若干低下させてレンズ枠4を基準位置(上側の基準位置)に移動させる。
【0093】
次に、SMAワイヤ10に対する通電を停止させてSMAワイヤ10の温度を荒く低下(急低下)させる。具体的には、SMAワイヤ10に対する通電を間欠的或いは継続的に停止させてSMAワイヤ10を冷却する。これにより、SMAワイヤ10が速やかに伸び変形してレンズ枠4が速やかに下降していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を低下させてレンズ枠4を下降させる。
【0094】
そして、焦点が検出された後、山登り法によってSMAワイヤ10の温度を上下させながらレンズ枠4の位置を微調整してレンズ枠4を合焦位置まで移動させる。
詳しく説明すると、焦点が検出された時点で、SMAワイヤ10に対する通電を開始する。これにより、下降中のレンズ枠4が折り返して上昇に転じる。そして、SMAワイヤ10に対して間欠的に通電することでSMAワイヤ10を細かく段階的に加熱してSMAワイヤ10の温度を漸次上昇させる。これにより、SMAワイヤ10が徐々に縮み変形してレンズ枠4が徐々に上昇していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を上昇させてレンズ枠4を上昇させる。
【0095】
そして、焦点が検出された時点で、SMAワイヤ10に対する通電を停止する。これにより、上昇中のレンズ枠4が折り返して下降に転じる。そして、SMAワイヤ10に対する通電を間欠的に停止することでSMAワイヤ10を細かく段階的に冷却してSMAワイヤ10の温度を漸次低下させる。これにより、SMAワイヤ10が徐々に伸び変形してレンズ枠4が徐々に下降していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を下降させてレンズ枠4を下降させる。
【0096】
上記したSMAワイヤ10に対する加熱と冷却を繰り返すことでレンズ枠4を合焦位置に徐々に近づけていき、最終的にレンズ枠4を合焦位置で停止させる。これにより、レンズ50の焦点が合わせられる。
【0097】
また、環境温度が閾値温度よりも高くて第二駆動モードで駆動させる場合、図10(b)に示すように、まず、上述したように最大に縮んだ状態のSMAワイヤ10に対する通電を停止してSMAワイヤ10の温度を低下させ、SMAワイヤ10を伸び変形させてレンズ枠4を元の基準位置(下側の基準位置)に戻す。
【0098】
次に、SMAワイヤ10に対して通電してSMAワイヤ10の温度を荒く上昇(急上昇)させる。具体的には、SMAワイヤ10に対して間欠的或いは継続的に通電してSMAワイヤ10を加熱する。これにより、SMAワイヤ10が速やかに縮み変形してレンズ枠4が速やかに上昇していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を上昇させてレンズ枠4を上昇させる。
【0099】
そして、焦点が検出された後、山登り法によってSMAワイヤ10の温度を上下させながらレンズ枠4の位置を微調整してレンズ枠4を合焦位置まで移動させる。
詳しく説明すると、焦点が検出された時点で、SMAワイヤ10に対する通電を停止する。これにより、上昇中のレンズ枠4が折り返して下降に転じる。そして、SMAワイヤ10に対する通電を間欠的に停止することでSMAワイヤ10を細かく段階的に冷却してSMAワイヤ10の温度を漸次低下させる。これにより、SMAワイヤ10が徐々に伸び変形してレンズ枠4が徐々に下降していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を下降させてレンズ枠4を下降させる。
【0100】
そして、焦点が検出された時点で、SMAワイヤ10に対する通電を開始する。これにより、下降中のレンズ枠4が折り返して上昇に転じる。そして、SMAワイヤ10に対して間欠的に通電することでSMAワイヤ10を細かく段階的に加熱してSMAワイヤ10の温度を漸次上昇させる。これにより、SMAワイヤ10が徐々に縮み変形してレンズ枠4が徐々に上昇していく。このとき、高調波成分が最も大きくなる焦点を探査し、焦点が検出されるまでSMAワイヤ10の温度を上昇させてレンズ枠4を上昇させる。
【0101】
上記したSMAワイヤ10に対する加熱と冷却を繰り返すことでレンズ枠4を合焦位置に徐々に近づけていき、最終的にレンズ枠4を合焦位置で停止させる。これにより、レンズ50の焦点が合わせられる。
【0102】
上述した駆動モジュール1によれば、環境温度に応じて駆動モードが選択され、その駆動モードに従いSMAワイヤ10に対する通電が制御されてSMAワイヤ10が伸縮変形してレンズ枠4が合焦位置まで移動して焦点が合わせられるので、SMAワイヤ10に対して通電したり通電を停止したりしてからSMAワイヤ10が所望の形状に伸縮変形するまでの時間(変形収束時間)が環境温度の影響で長くなることがない。
【0103】
すなわち、環境温度が閾値温度よりも低い場合には、SMAワイヤ10の温度を荒く低下(急低下)させる第一駆動モードでSMAワイヤ10に対する通電が制御される。このとき、環境温度が低くてSMAワイヤ10の温度が低下しやすいので、SMAワイヤ10に対する通電を停止してから短時間でSMAワイヤ10が所望の形状に伸長変形する。また、環境温度が閾値温度よりも高い場合には、SMAワイヤ10の温度を荒く上昇(急上昇)させる第二駆動モードでSMAワイヤ10に対する通電が制御される。このとき、環境温度が高くてSMAワイヤ10の温度が上昇しやすいので、SMAワイヤ10に通電してから短時間でSMAワイヤ10が所望の形状に収縮変形する。
【0104】
上述したように、環境温度に応じて時間的に効率の良いモードでSMAワイヤ10が制御され、レンズ枠4が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられるので、環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなるのを防止することができる。
【0105】
また、上述した駆動モジュール1によれば、SMAワイヤ10の昇温時における環境温度とSMAワイヤ10の変形収束時間との関数のグラフG1と、SMAワイヤ10の降温時における環境温度とSMAワイヤ10の変形収束時間との関数のグラフG2と、の交点における環境温度TXを閾値温度としているので、時間的に効率の良い駆動モードが確実に選択され、レンズ枠4が合焦位置まで移動する時間が長くなることが確実に防止される。これにより、環境温度によってオートフォーカスの作動時間が長くなるのをより確実に防止することができる。
【0106】
次に、本発明の実施形態に係る電子機器について説明する。
図11(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る電子機器の表面、裏面の斜視外観図である。図11(c)は、図11(b)におけるF−F断面図である。
【0107】
図11(a)、(b)に示す本実施形態のカメラ付き携帯電話20は、上記実施形態の駆動モジュール1を備えた電子機器の一例である。
カメラ付き携帯電話20は、受話部22a、送話部22b、操作部22c、液晶表示部22d、アンテナ部22e、不図示の制御回路部などの周知の携帯電話の装置構成をカバー22内外に備えている。
【0108】
また、図11(b)に示すように、液晶表示部22dが設けられた側の裏面側のカバー22に、外光を透過させる窓22Aが設けられ、図11(c)に示すように、駆動モジュール1の開口11Aがカバー22の窓22Aを臨み、窓22Aの法線方向に軸線Mが沿うように、上記第一実施形態の駆動モジュール1が設置されている。
【0109】
このような構成によれば、SMAワイヤ10の変形収束時間が環境温度の影響で長くなることがなく、レンズ枠4が合焦位置まで短時間で移動して焦点が直ちに合わせられるので、オートフォーカス動作の応答性が高い高性能のカメラ付き携帯電話20を提供することができる。
【0110】
以上、本発明に係る駆動モジュール、電子機器及び駆動モジュールの制御方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、レンズ枠4を付勢するための板ばね部材である上板ばね6、下板ばね7に上側固定ピン13A、14A、下側固定ピン13B、14Bを挿通させて、これら固定ピンの先端部を熱カシメする場合の例で説明したが、ばね部材の固定方法は、これに限定されない。例えば、超音波加締めなどで固定してもよいし、ばね部材を、レンズ枠4やモジュール枠5に接着してもよい。本構造によれば、大きな接着面積が確保できるので接着剤を用いても大きな強度が得られる。さらに、本発明におけるばね部材は板ばねに限定されず、他の形状のばね部材であってもよい。
【0111】
また、上記の説明では、モジュール枠5は、全体として略矩形状の部材として説明したが、略矩形状には限定されず、多角形状であってもよい。
また、上記した説明では、形状記憶合金体としてSMAワイヤ10が備えられているが、本発明における形状記憶合金体はワイヤ状のものに限定されず、例えば板状などの他の形状の形状記憶合金体であってもよい。
【0112】
また、上記の説明では、駆動モジュールを用いた電子機器として、カメラ付き携帯電話の例で説明したが、電子機器の種類はこれに限定されない。例えば、デジタルカメラ、パソコン内蔵のカメラなどの他の光学機器に用いることができる。
【0113】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…駆動モジュール 4…レンズ枠 5…モジュール枠(支持体) 6…上板ばね(ばね部材) 7…下板ばね(ばね部材) 10…SMAワイヤ(形状記憶合金体、駆動手段) 20…カメラ付携帯電話(電子機器) 32…制御基板(制御手段) 50…レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、
該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、
通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、
前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備える駆動モジュールであって、
該駆動モジュールの駆動モードとして、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次上昇させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を低下させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第一駆動モードと、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次低下させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を上昇させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第二駆動モードと、
を有しており、
前記制御手段が、環境温度を検出し、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択し、選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項2】
支持体と、
該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、
該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、
通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、
前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備える駆動モジュールであって、
該駆動モジュールの駆動モードとして、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を低下させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第一駆動モードと、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を上昇させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第二駆動モードと、
を有しており、
前記制御手段が、環境温度を検出し、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択し、選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の駆動モジュールにおいて、
前記制御手段が、
前記形状記憶合金体の昇温時における環境温度と該形状記憶合金体の変形収束時間との関数のグラフと、前記形状記憶合金体の降温時における環境温度と該形状記憶合金体の変形収束時間との関数のグラフと、の交点における環境温度を前記閾値温度とすることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の駆動モジュールを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
支持体と、
該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、
該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、
通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、
前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御して前記レンズ枠を合焦位置まで移動させる制御手段と、
を備える駆動モジュールの制御方法であって、
該駆動モジュールの駆動モードとして、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次上昇させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を低下させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第一駆動モードと、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次低下させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を上昇させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第二駆動モードと、
を有しており、
環境温度を検出する温度検出ステップと、
該温度検出ステップで検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択するモード選択ステップと、
該モード選択ステップで選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させる駆動ステップと、
を備えることを特徴とする駆動モジュールの制御方法。
【請求項6】
支持体と、
該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、
該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、
通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、
前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御して前記レンズ枠を合焦位置まで移動させる制御手段と、
を備える駆動モジュールの制御方法であって、
該駆動モジュールの駆動モードとして、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を低下させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第一駆動モードと、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を上昇させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第二駆動モードと、
を有しており、
環境温度を検出する温度検出ステップと、
該温度検出ステップで検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択するモード選択ステップと、
該モード選択ステップで選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させる駆動ステップと、
を備えることを特徴とする駆動モジュールの制御方法。
【請求項1】
支持体と、
該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、
該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、
通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、
前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備える駆動モジュールであって、
該駆動モジュールの駆動モードとして、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次上昇させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を低下させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第一駆動モードと、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次低下させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を上昇させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第二駆動モードと、
を有しており、
前記制御手段が、環境温度を検出し、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択し、選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項2】
支持体と、
該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、
該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、
通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、
前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備える駆動モジュールであって、
該駆動モジュールの駆動モードとして、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を低下させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第一駆動モードと、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を上昇させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第二駆動モードと、
を有しており、
前記制御手段が、環境温度を検出し、検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択し、選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の駆動モジュールにおいて、
前記制御手段が、
前記形状記憶合金体の昇温時における環境温度と該形状記憶合金体の変形収束時間との関数のグラフと、前記形状記憶合金体の降温時における環境温度と該形状記憶合金体の変形収束時間との関数のグラフと、の交点における環境温度を前記閾値温度とすることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の駆動モジュールを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
支持体と、
該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、
該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、
通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、
前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御して前記レンズ枠を合焦位置まで移動させる制御手段と、
を備える駆動モジュールの制御方法であって、
該駆動モジュールの駆動モードとして、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次上昇させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を低下させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第一駆動モードと、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を漸次低下させることで前記レンズ枠を全移動範囲に亘って移動させて焦点を探査し、その後、前記形状記憶合金体の温度を上昇させて合焦位置まで前記レンズ枠を移動させる第二駆動モードと、
を有しており、
環境温度を検出する温度検出ステップと、
該温度検出ステップで検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択するモード選択ステップと、
該モード選択ステップで選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させる駆動ステップと、
を備えることを特徴とする駆動モジュールの制御方法。
【請求項6】
支持体と、
該支持体に対して一定方向に沿って往復移動可能に設けられていると共にレンズを保持するレンズ枠と、
該レンズ枠を弾性保持するばね部材と、
通電による発熱によって変形可能な形状記憶合金体を有し、該形状記憶合金体に通電して該形状記憶合金体を変形させることで前記レンズ枠を前記ばね部材の復元力に抗して駆動する駆動手段と、
前記形状記憶合金体に対する通電を制御することで前記駆動手段を制御して前記レンズ枠を合焦位置まで移動させる制御手段と、
を備える駆動モジュールの制御方法であって、
該駆動モジュールの駆動モードとして、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を低下させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第一駆動モードと、
前記形状記憶合金体に対して通電して該形状記憶合金体の温度を上昇させることで前記レンズ枠を移動させて焦点を探査し、該焦点が検出された後、山登り法によって前記形状記憶合金体の温度を上下させながら前記レンズ枠の位置を微調整して該レンズ枠を合焦位置まで移動させる第二駆動モードと、
を有しており、
環境温度を検出する温度検出ステップと、
該温度検出ステップで検出された環境温度が閾値温度よりも低い場合に前記第一駆動モードを選択して環境温度が閾値温度よりも高い場合に前記第二駆動モードを選択するモード選択ステップと、
該モード選択ステップで選択された駆動モードに従い前記形状記憶合金体に対する通電を制御して前記駆動手段を駆動させる駆動ステップと、
を備えることを特徴とする駆動モジュールの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−209468(P2011−209468A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76359(P2010−76359)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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