説明

駆動装置ならびにそれを用いる像ぶれ補正装置および撮像装置

【課題】矩形波パルスを入力し、擬似鋸歯状の変位振動を生じさせて被駆動部材を駆動するSIDM超音波リニアアクチュエータにおいて、ガタツキを抑えつつ小型化する。
【解決手段】圧電素子の一端に錘139を、他端にロッド132を取付け、該ロッド132に摩擦係合する摺動部44を前記擬似鋸歯状の変位振動で移動させる超音波リニアアクチュエータ13において、前記矩形波パルスでの駆動によって、ロッド132が所定長さD13を超えると、基端側が有効な振動を発生することができなくなるのに対して、その長さD13を超えて、長さD14だけ延長形成するとともに、摺動部44側はその延長分の長さD14より長く(D15)形成し、さらに遊端側を従来通りロッド132に摩擦係合させて推力を発生させる摩擦係合部444とし、基端側はロッド132に緩やかに係合する案内筒部442とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置の像ぶれ補正装置に好適に用いられ、SIDM(Smooth Impact Drive Mechanism(登録商標))から成る超音波リニアアクチュエータなどとして好適に実施される駆動装置ならびにそれを用いる前記像ぶれ補正装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記撮像装置の像ぶれ補正装置は、スローシャッターを可能にして、夜間撮影で3脚を不要にできる等のメリットがあり、搭載が進んでいる。その中でも、光学的な補正は、電子的な補正に比べて、解像度等の点で有利であり、像ぶれ補正装置の主流となっている。その光学的な像ぶれ補正の1つの手法としては、レンズ内に設けた補正レンズや、カメラ本体内に設けた撮像素子などの光学部品を光軸と直交方向に変位することで行われる。そのような像ぶれ補正装置におけるアクチュエータとして、前記SIDM超音波リニアアクチュエータは、省スペースに搭載でき、好適である。
【0003】
前記超音波リニアアクチュエータは、たとえば図15で模式的に示すような構造を有し、電気機械変換素子である圧電素子301の伸縮を、駆動部材であるロッド302に伝え、そのロッド302に所定の摩擦力で係合している被駆動部材(移動体)303を、前記圧電素子301の伸張時と縮小時との速度差を利用して移動させるものである。圧電素子301のロッド302が取付けられる面とは反対側の面は、所定の重量を有する固定部304に固定されている。
【0004】
これによって、たとえば図15(a)から図15(b)で示すように、ロッド302をゆっくりと伸張させることで、そのロッド302に摩擦係合している被駆動部材303も移動し、図15(b)から図15(c)で示すように、前記所定の摩擦力を超える程、ロッド302を瞬時に縮小すると、被駆動部材303が慣性のために伸張位置に取り残されるということを繰返し行うことで、前記被駆動部材303を前記ロッド302の軸方向に移動させるものである。そして、伸張を瞬時に、縮小をゆっくりと行うことで、前記被駆動部材303の移動方向を前記とは逆転することができる。
【0005】
図16には、上述のような超音波リニアアクチュエータの時間経過に伴う圧電素子301および被駆動部材303の変位の関係を示す。上述のように、圧電素子301の伸張時と縮小時との速度差を利用して被駆動部材303を移動させるので、駆動部材302と被駆動部材303との係合部には擬似鋸歯状の変位が生じ、その鋸歯状波形の斜辺部分の変位が積算されて、被駆動部材303の総変位量になる。
【0006】
このような超音波リニアアクチュエータは、通常のローレンツ力型のモータなどに比べて、構成が簡単で、しかも減速機構を用いずに負荷をダイレクトに駆動することができる。このため、特許文献1では、その搭載例として、前記ロッド302をレンズ光軸方向に設置し、被駆動部材303となるフォーカシングレンズの保持部材を前記ロッド302に係合させることで、オートフォーカスを実現した駆動装置が提案されている。なお、前記ロッド302に対して被駆動部材303を摩擦係合させるためには、ばねなどによる押圧力だけではなく、磁力が用いられてもよい。
【0007】
ところで、上述のような擬似鋸歯状の変位を生じさせるためには、三角波を作成する必要がある。しかしながら、そのような駆動回路は複雑になる。そこで、本件出願人は、先に特許文献2を提案している。その従来技術によれば、上述のような超音波リニアアクチュエータに対して、駆動信号の周波数を適宜設定し、かつデューティを適宜設定することで、矩形波パルスを用いても、その矩形波に含まれる2次を始めとする高調波成分が前記擬似鋸歯状の波形を構成し、駆動を可能にするものである。
【0008】
具体的には、前記圧電素子、駆動部材および被駆動部材から成る電気機械変換素子の系における共振周波数に対して、前記駆動信号の周波数を0.6〜0.8倍、好ましくは0.7倍、前記デューティを0.55〜0.85または0.15〜0.45、好ましくは0.7または0.3に設定するというものである。デューティの0.7と0.3とは、一方が被駆動部材303を一方方向に駆動し、他方が他方方向に駆動するもので、すなわちそれらを選択することで、移動方向を選択するようになっている。
【0009】
これによって、図17(a)で示す駆動回路310または図17(b)で示す簡単な駆動回路320を、前記圧電素子301の駆動に用いることが可能になっている。駆動回路310は、いわゆるHブリッジ回路から成り、+Vの電源ライン間に接続されるp型のFETQ1およびn型のFETQ2の直列回路ならびに同様にp型のFETQ3およびn型のFETQ4の直列回路を備えて構成され、それらの中点間を連結するように前記圧電素子301が設けられている。前記各FETQ1〜Q4は、制御回路311によってON/OFF制御される。
【0010】
制御回路311から各FETQ1〜Q4に出力される制御信号S1〜S4およびそれによる各FETQ1〜Q4のON/OFFによって圧電素子301の両端子間に印加される電圧Vsの態様は、たとえば図18で示すとおりである。この図17の例では、前記Hブリッジの対角位置に設けられるFETQ1,Q4およびQ2,Q3は、それぞれ同相で駆動されるとともに、FETQ1,Q4とQ2,Q3とは、相互に逆相で駆動される。これによって、圧電素子301には矩形波の駆動信号が印加され、図18で示すように、そのデューティを0.3程度とすることで被駆動部材303が一方方向に駆動され、0.7程度とすることで他方方向に駆動される。
【0011】
一方、図17(b)で示す駆動回路320は、単純なプッシュプル回路である。しかしながら、この駆動回路320では、圧電素子301への印加電圧VsがVであるのに対して、図17(a)で示すHブリッジ回路を用いることで、2倍の電圧差2Vを印加したり、3値の電圧を発生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2633066号公報
【特許文献2】特開2001−268951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上述のような超音波リニアアクチュエータで被駆動部材303を駆動するにあたっては、被駆動部材303をロッド302の軸方向に円滑に変位させるために、参照符号330で示すように、該ロッド302と平行に案内ロッドを設けることが望ましい。しかしながら、その場合、案内ロッド330と、被駆動部材303側にも、その案内ロッド上を摺動する案内部材を設ける必要があり、このような案内機構で、移動機構全体のスペースが大きくなるという問題がある。したがって、被駆動部材303のロッド302回りの回転止めを適宜実現できれば、前記案内ロッド330や案内部材から成る案内機構を省略し、片持ち構造とすることが望まれる。
【0014】
しかしながら、単純に案内ロッド330や案内部材を省略すると、図19で示すように、被駆動部材303の運動精度(傾き、チルトなど)が低下するという問題がある。図19の例は、前記被駆動部材303として、前記特許文献1のようなフォーカシングレンズやズームレンズに適用した例を示す。したがって、被駆動部材303は、ロッド302に係合する保持部材3031と、該保持部材3031に取付けられる玉枠3032と、玉枠3032に嵌め込まれるレンズ3033とを備えて構成される。
【0015】
したがって、図19のような問題に対しては、通常、図20で示すように、被駆動部材303aの保持部材3031aを長くすることで、前記運動精度(傾き、チルトなど)を確保することが考えられる。しかしながら、その場合、所定のストローク(移動量)を確保するためには、駆動部材302aも長くしなければならない。なお、案内ロッド330や案内部材から成る対向の案内機構を有する両持ち構造であっても、前記運動精度をさらに向上するために、この図20で示すような手法が用いられることもある。
【0016】
ここで、前記圧電素子301に三角波を与えている場合、駆動部材302の全長に亘って振動し、被駆動部材303の推力を確保することができる。これに対して、上述のように矩形波パルスを与える場合、本願発明者の実験によれば、圧電素子301の厚さD1と、駆動部材302の長さD2との比が、約3倍を超えると、その超えた分だけ、駆動部材302の基端(圧電素子301)側が振動せず、被駆動部材303に推力を発生させられない現象の生じることが知見された。このため、長くした保持部材3031aに対応して、図20で示すように、圧電素子301aも、その厚みD1を厚くしなければならず、該圧電素子301aの設置スペースが大きくなり、或いは設置の自由度が低下するという問題がある。
【0017】
なお、前記圧電素子301の厚さD1と、駆動部材302の長さD2との倍数比は、少なくとも前記圧電素子301の伸縮方向の厚さD1、駆動周波数および駆動部材302の前記伸縮方向の長さや、それらの材料によって決定される、厳密には前記3倍にならず、同じ構造でも、個体ばらつきによって同じにはならず、2.6〜3.4倍程度である。たとえば、駆動部材302を剛性の高いカーボンから金属に変えると、前記倍数比は小さくなる。本件明細書では、前記被駆動部材303が相対的に移動可能な推力を発生する振動を全長に亘って維持することができる駆動部材302の範囲を、有効振動長さと定義する。
【0018】
本発明の目的は、被駆動部材を長くして、運動精度を向上するにあたって、設置スペースを削減することができる、或いは設置の自由度を向上することができる駆動装置ならびにそれを用いる像ぶれ補正装置および撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の駆動装置は、所定の方向に振動する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に取付けられて該電気機械変換素子により前記伸縮方向に変位駆動される駆動部材と、前記駆動部材に所定の摩擦力で係合している被駆動部材とを備え、前記電気機械変換素子の系における共振周波数に対して所定数倍の駆動周波数で、かつ所定デューティの駆動パルスが該電気機械変換素子に入力されることで、前記駆動部材と被駆動部材との係合部分に、該電気機械変換素子の伸張時と縮小時とに速度差を生じさせる擬似鋸歯状の変位振動を生じさせ、前記駆動部材と被駆動部材とを相対移動させる駆動装置において、前記駆動部材は、前記被駆動部材が相対的に移動可能な推力を発生する振動を全長に亘って維持することができる有効振動長さよりも長く延長形成され、前記被駆動部材は、その伸縮方向の長さが前記駆動部材の延長分の長さより長く形成され、かつ前記電気機械変換素子とは反対側が前記駆動部材に摩擦係合するとともに、前記電気機械変換素子側が前記駆動部材に緩やかに係合することを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、圧電素子などの電気機械変換素子の伸縮を駆動部材に伝え、その駆動部材に所定の摩擦力で係合している被駆動部材を、前記電気機械変換素子の伸張時と縮小時との速度差を利用して移動させる超音波リニアアクチュエータなどとして実現される駆動装置において、駆動回路から、前記電気機械変換素子の系における共振周波数に対して所定数倍の駆動周波数で、かつ所定デューティの駆動パルスを電気機械変換素子に入力することで、前記駆動部材と被駆動部材との係合部分に、前記の速度差を生じさせることができる擬似鋸歯状の変位振動を生じさせ、前記駆動部材と被駆動部材とを相対移動させるにあたって、以下の構成を採用する。
【0021】
すなわち、前記駆動部材には、少なくとも前記電気機械変換素子の伸縮方向の厚さ、前記駆動周波数および該駆動部材の前記伸縮方向の長さによって、有効振動長さが定まり、該駆動部材は、その有効振動長さの範囲でしか、前記被駆動部材が相対的に移動可能な推力を発生する振動を維持することができない。しかしながら、本発明では、該駆動部材を、その有効振動長さを超えて延長形成するとともに、前記被駆動部材を、その伸縮方向の長さが前記駆動部材の延長分の長さより長く形成する。さらに、前記被駆動部材において、前記電気機械変換素子とは反対側(駆動部材の遊端側)を従来通り前記駆動部材に摩擦係合させて前記推力を発生させるとともに、前記電気機械変換素子側(駆動部材の基端側)は、前記駆動部材に緩やかに係合し、案内筒としての機能を持たせる。
【0022】
したがって、被駆動部材を長くして、運動精度(傾き、チルトなど)を向上するにあたって、通常では、それに伴い駆動部材を長くし、さらにそれに伴い電気機械変換素子を厚く形成しないと、前記有効振動長さに起因して、駆動部材の電気機械変換素子側(基端側)で、被駆動部材に推力を発生させられないのに対して、上記構成では、電気機械変換素子の厚みはそのままで、延長によって有効振動長さの範囲から外れる駆動部材の電気機械変換素子側(基端側)側の部分に、被駆動部材の案内筒を被せることになる。これによって、電気機械変換素子を必要以上に厚くすることなく駆動性能を維持し、かつ該駆動部材の延長によって該駆動部材に案内軸としての機能を持たせ、前記被駆動部材における電気機械変換素子側の案内筒として機能する部分と合わせて、被駆動部材のガタツキを抑えることができる。こうして、該駆動装置の設置スペースを削減することができる、或いは設置の自由度を向上することができる。
【0023】
なお、好ましくは、駆動部材を角柱状に形成したり、軸直角断面を楕円状に形成したりし、また被駆動部材もそれに合わせた形状に形成することで、被駆動部材の駆動部材の軸回りに対する回転も抑えることができる。
【0024】
また、本発明の駆動装置では、前記駆動部材の有効振動長さは、前記電気機械変換素子の厚さの2.6〜3.4倍であることを特徴とする。
【0025】
さらにまた、本発明の駆動装置では、前記駆動部材の延長形成される長さは、前記電気機械変換素子の厚さの1.0〜2.0倍であり、前記被駆動部材の摩擦係合する部分は、前記駆動部材の全長における電気機械変換素子側から4割を超える範囲であることを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、前述のように被駆動部材の摩擦係合する部分は、電気機械変換素子側から駆動部材の延長形成された部分を除く有効振動長さの範囲であるが、たとえば前記有効振動長さが電気機械変換素子の伸縮方向における厚さの2.6〜3.4倍、好ましく3倍程度であり、駆動部材の延長形成される長さが前記電気機械変換素子の厚さの1.0〜2.0倍、好ましくは1.5倍程度である場合、駆動部材の全長において、電気機械変換素子側から1/3が延長部分となり、その先2/3が有効振動長さの範囲となる。
【0027】
したがって、前記被駆動部材の摩擦係合する部分を、前記駆動部材の全長における電気機械変換素子側から4割を超える範囲に掛るように形成することで、充分な推力を得ることができる。一方、被駆動部材の摩擦係合する部分と、それよりも緩やかに係合する部分とで、被駆動部材を駆動部材に押圧する抑えばねを替えて、係合度合いを変化するようにしてもよい。また、同じばねでも、押圧力が変わるように、固定方法を変えてもよい。
【0028】
また、本発明の駆動装置では、前記被駆動部材において、前記駆動部材に緩やかに係合する部分には、ベアリングを備えることを特徴とする。
【0029】
上記の構成によれば、被駆動部材の電気機械変換素子側での摩擦力を抑えて前記緩やかな係合を実現し、案内筒としての機能を持たせることができる。
【0030】
或いは、被駆動部材の緩やかに係合する部分に、案内筒を設けて、係合面を(テフロン登録商標)加工するようにしてもよい。前記テフロン加工は、たとえば加工厚さ0.2μm、表面粗さ(Ra)0.2μm、動摩擦係数0.04とする。
【0031】
さらにまた、本発明の駆動装置では、本件出願人による公知の前記特許文献2で示されているように、前記所定数倍は、0.6〜0.8倍、好ましくは、0.7倍程度であり、前記所定デューティは、0.55〜0.85と0.15〜0.45とであり、好ましくは0.7と0.3程度であることを特徴とする。
【0032】
上記の構成によれば、駆動回路から電気機械変換素子に矩形波パルスを入力しても、前記駆動部材と被駆動部材との係合部分に、最も効率的な推力が得られる前記擬似鋸歯状の変位振動を生じさせ、前記駆動部材と被駆動部材とを相対移動させることができる。そして、0.55〜0.85と0.15〜0.45、好ましくは0.7と0.3とのデューティを選択することで、被駆動部材の移動方向を切換えることができる。
【0033】
また、本発明の像ぶれ補正装置は、前記の駆動装置を用いることを特徴とする。
【0034】
上記の構成によれば、駆動装置の設置スペースを削減、或いは設置の自由度を向上した像ぶれ補正装置を実現することができる。
【0035】
さらにまた、本発明の撮像装置は、前記の像ぶれ補正装置を用いることを特徴とする。
【0036】
上記の構成によれば、像ぶれ補正装置の設置スペースを削減、或いは設置の自由度を向上した像ぶれ補正装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の駆動装置ならびにそれを用いる像ぶれ補正装置および撮像装置は、以上のように、圧電素子などの電気機械変換素子の伸縮を駆動部材に伝え、その駆動部材に所定の摩擦力で係合している被駆動部材を、前記電気機械変換素子の伸張時と縮小時との速度差を利用して移動させる超音波リニアアクチュエータなどとして実現される駆動装置において、所定条件の駆動パルスを電気機械変換素子に入力することで前記の速度差を生じさせることができる擬似鋸歯状の変位振動を生じさせるにあたって、駆動部材を有効な振動を発生することができる長さを超えて延長形成するとともに、被駆動部材は、その延長分の長さより長く形成し、さらに電気機械変換素子とは反対側を従来通り駆動部材に摩擦係合させて推力を発生させるとともに、電気機械変換素子側を駆動部材に緩やかに係合し、案内筒としての機能を持たせる。
【0038】
それゆえ、被駆動部材を長くして、運動精度(傾き、チルトなど)を向上するにあたって、電気機械変換素子の厚みはそのままで、延長によって有効振動長さの範囲から外れる駆動部材の電気機械変換素子側の部分に被駆動部材の案内筒を被せることになるので、電気機械変換素子を必要以上に厚くすることなく駆動性能を維持し、かつ該駆動部材の延長によって該駆動部材に案内軸としての機能を持たせ、前記被駆動部材における電気機械変換素子側の案内筒として機能する部分と合わせて、被駆動部材のガタツキを抑えることができる。こうして、該駆動装置ならびにそれを用いる像ぶれ補正装置および撮像装置の設置スペースを削減することができる、或いは設置の自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の一形態に係る駆動装置を用いる像ぶれ補正ユニットの斜視図であり、背面左下から見上げた図である。
【図2】図1の像ぶれ補正ユニットを背面左上から見下ろした図である。
【図3】図1の像ぶれ補正ユニットを背面右上から見下ろした図である。
【図4】図1の像ぶれ補正ユニットを背面右上から見下ろした図である。
【図5】図1の像ぶれ補正ユニットを前面右からやや見下ろした図である。
【図6】図1の像ぶれ補正ユニットを前面左からやや見下ろした図である。
【図7】前記像ぶれ補正ユニットに撮像レンズ鏡筒を備えて構成される撮像装置を前面側から見た斜視図である。
【図8】前記撮像装置を背面側から見た斜視図である。
【図9】本発明の実施の一形態に係る駆動装置である超音波リニアアクチュエータの模式的な側面図である。
【図10】前記超音波リニアアクチュエータにおける摺動部とロッドとの関係を説明するための図である。
【図11】本件発明者の実験結果を示すロッドを10分割した各位置における推力特性を示すグラフである。
【図12】図11の実験にあたって、圧電素子に与えた駆動信号の波形を示す図である。
【図13】本発明の実施の他の形態に係る駆動装置である超音波リニアアクチュエータの模式的な側面図である。
【図14】図13の切断面線A−Aから見た断面図である。
【図15】SIDM超音波リニアアクチュエータの動作を説明するための図である。
【図16】前記SIDM超音波リニアアクチュエータにおける時間経過に伴う圧電素子および被駆動部材の変位の関係を示すグラフである。
【図17】前記SIDM超音波リニアアクチュエータにおける圧電素子の駆動回路の構成例を示すブロック図である。
【図18】図17(a)で示す駆動回路の駆動波形図である。
【図19】前記SIDM超音波リニアアクチュエータにおける問題点を説明するための図である。
【図20】図19で示す問題点を解決する一手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(実施の形態1)
図1〜図6は、本発明の実施の一形態に係る駆動装置を搭載した像ぶれ補正ユニット100の斜視図であり、図1は背面左下から見上げており、図2は背面左上から見下ろしており、図3は背面右上から見下ろしており、図4は背面右上から見下ろしており、図5は前面右からやや見下ろしており、図6は前面左からやや見下ろしている。この像ぶれ補正ユニット100は、図7および図8で示すように、撮像レンズ鏡筒200と一体的に固定されて、レンズ交換不能な単眼のカメラ(撮像装置)に用いられ、撮像素子11を含むセンサユニット1を、光軸zと直交するx方向およびy方向に変位することで、光学的に像ぶれを補正するものである。
【0041】
カメラ本体前面側には、板金加工品から成り、第1の基台である固定部材2が設けられ、該像ぶれ補正ユニット100が組み上がった後に、この固定部材2に対して、前記撮像レンズ鏡筒200が3本のビス31〜33およびそれに巻付けられたばね34〜36によってガタ付きなく支持され、ビス31〜33を六角レンチで調整することで、前記センサユニット1の光軸zと撮像レンズ鏡筒200との光軸とが一致するようにあおり調整が行われる。調整後は、前記ビス31〜33の緩みを防止するために、該ビス31〜33が固定部材2に接着固定される。この固定部材2に形成された開口21を通して、前記撮像レンズ鏡筒200から光が入射し、撮像素子11に結像する。
【0042】
前記センサユニット1は、大略的に、該センサユニット1の前面側に配置される前記固定部材2と、ダイキャスト成形品から成り、該センサユニット1の背面側に配置され、第2の基台であるスライダー4とによって挟持され、前記固定部材2上を前記スライダー4と共にx方向に滑動変位可能であるとともに、単体ではさらにスライダー4に対してy方向に滑動変位自在に支持される。
【0043】
前記撮像素子11は、CCDやCMOSなどから成り、背面側はFPCに貼付けられる。なお、図1〜図6では、図面の簡略化のために、多数の配線が形成され、さらに適宜チップ部品が実装された前記FPCは、省略している。このようにFPCにマウントされた撮像素子11は、さらに樹脂成型品などから成る前記ホルダー12に形成された凹所121に背面側から嵌め込まれ、板金加工品から成るシールド板5がビス51〜53によってホルダー12に螺着されることで、ホルダー12に保持固定され、前記センサユニット1となる。
【0044】
前記シールド板5の上端部に形成された支持部54は、前記撮像素子11からのFPCの引出し部分を保持固定し、固定部材2の上端部に形成された支持部24は、そのFPCの引回しを受け、方向を変換して、該像ぶれ補正ユニット100から延出させるためのものである。
【0045】
そして、先ず第1の方向である前記x方向の摺動変位を実現するために、固定部材2側には、本発明の実施の一形態に係る駆動装置である超音波リニアアクチュエータ22が設けられる。この超音波リニアアクチュエータ22は、前記x方向に伸縮し、電気機械変換素子である圧電素子221と、その圧電素子221から前記x方向に引出され、駆動部材であるロッド222と、錘229とを備えて構成される。前記錘229は、ブラケット223によって前記固定部材2に保持固定され、その錘229に前記圧電素子221の一端が接着され、該圧電素子221の他端にはロッド222が接着される。前記ロッド222は、一対のブラケット224によって、前記固定部材2に、前記x方向に伸縮変位自在に支持されている。
【0046】
前記ロッド222に対応して、前面側には、前記x方向の直交断面がV字状に形成される帯状の受け部材225が設けられ、背面側には、スライダー4の上端に、前記x方向に延びるV溝411を形成して成る摺動部41が設けられる。前記帯状の受け部材225の一方の側部に設けられる係合片225aが前記摺動部41に隣接して設けられた支持片42の凹所421に差込まれ、受け部材225の他方の側部に設けられる一対の係合片225bとスライダー4の上端に設けられたフック43との間に、ばね61が巻き掛けられることで、スライダー4と固定部材2との間にセンサユニット1が挟み込まれ、前記x方向の摺動変位が可能となる。前記x方向に延びるロッド222が前記駆動部材となり、前記受け部材225からスライダー4およびセンサユニット1が被駆動部材となる。
【0047】
このように構成される超音波リニアアクチュエータ22において、前記圧電素子221が、錘229を基台として、ロッド222を、たとえば緩やかに伸長方向に押し出し、瞬時に縮退させると、支持片42は押し出し位置に取り残され、このような動作を繰返すことで、スライダー4およびそれに連係するセンサユニット1は、伸長方向に変位されてゆく。反対に、前記圧電素子221が、ロッド222を、瞬時に伸長方向に押し出し、緩やかに縮退させると、支持片42は縮退位置に引き戻され、このような動作を繰返すことで、スライダー4およびそれに連係するセンサユニット1は、縮退方向に変位されてゆく。
【0048】
次に、第2の方向であるy方向の摺動変位を実現するために、ホルダー12の背面右側にも、本発明の実施の一形態に係る駆動装置である超音波リニアアクチュエータ13が設けられる。この超音波リニアアクチュエータ13も、前述の超音波リニアアクチュエータ22と同様に、前記y方向に伸縮する圧電素子131と、その圧電素子131から前記y方向に引出されるロッド132と、錘139とを備えて構成される。前記錘139は、ブラケット123によって前記ホルダー12に保持固定され、その錘139に前記圧電素子131の一端が接着され、該圧電素子131の他端にはロッド132が接着される。前記ロッド132は、一対のブラケット124によって、前記ホルダー12に、前記y方向に伸縮変位自在に支持されている。
【0049】
前記ロッド132に対応して、前面側には、前記受け部材225と同様に前記y方向の直交断面がV字状に形成される帯状の受け部材135が設けられ、背面側には、スライダー4の背面右側に、前記y方向に延びるV溝441を形成して成る摺動部44が設けられる。前記帯状の受け部材135の一方の側部に設けられる係合片が前記摺動部44に隣接して設けられた支持片45の凹所451に差込まれ、受け部材135の他方の側部に設けられる一対の係合片135bとスライダー4の背面右側に設けられたフック46との間に、ばね62が巻き掛けられることで、センサユニット1がスライダー4に支持され、前記y方向の摺動変位が可能となる。前記y方向に延びるロッド132が前記駆動部材となり、前記受け部材135からセンサユニット1が被駆動部材となる。このように構成される超音波リニアアクチュエータ13の動作は、前述の超音波リニアアクチュエータ22と同様である。
【0050】
こうして前記ホルダー12のx方向の一辺およびy方向の一辺が支持(片持ち支持)され、それらの辺から離れた側に、球体71,72が前後に一対で設けられることで、該ホルダー12は、固定部材2上およびスライダー4上を滑動変位自在となる。このため、ホルダー12の固定部材2に対向した前面側には、前記球体71を収容する凹所125が、ホルダー12のスライダー4に対向した背面側には、前記球体72を収容する凹所126が、それぞれ形成される。凹所125は、ホルダー12の固定部材2上でのx,y方向での変位を許容するために矩形に形成され、凹所126は、ホルダー12のスライダー4上でのy方向での変位を許容するために長孔に形成され、これによってホルダー12は、前記x,y方向それぞれに、たとえば±0.5mm変位可能となっている。
【0051】
なお、球体71,72は、ホルダー12の各面で、複数設けられていてもよい。また、必ずしも前後面で一対に設けられなくてもよい。しかしながら、前後面で一対に設けることで、固定部材2およびスライダー4で、ホルダー12をバランス良く挟持することができる。
【0052】
また、前記超音波リニアアクチュエータ22,13およびばね61,62によって、固定部材12とスライダー4とのx方向の一辺およびy方向の一辺間が連結されるのに対して、反対側は、固定部材12に形成されたフック28とスライダー4に形成されたフック49との間に、ばね63張架がされることで連結されている。さらに固定部材2の上端には前記支持部24が設けられており、下端には一対のフック291,292が設けられている。これらのフック291,292は、衝撃が加わった場合に、前記スライダー4およびセンサユニット1が光軸z方向(背面方向)に脱落しないように設けられている。
【0053】
一方、前記ホルダー12の変位を検出するために、該ホルダー12の前記球体71,72が設けられる側とは反対側の側部には、ホルダー129が形成されており、このホルダー129には永久磁石6が搭載され、これに対応して固定部材2側には、前記ホルダー129の可動範囲をカバーするホール素子7が設けられている。
【0054】
図7および図8は、上述のように構成される像ぶれ補正ユニット100に撮像レンズ鏡筒200を備えて構成される撮像装置の斜視図であり、図7は上面側から見た図であり、図8は背面側から見た図である。この撮像装置は、撮像レンズ鏡筒200に、図示しない本体筐体内に収納される前記像ぶれ補正ユニット100を備えて構成され、前記撮像素子11からはFPC8が、超音波リニアアクチュエータ13,22からはFPC80が引出され、FPC201はズーム用のモータやフォーカス用のモータから引出される。
【0055】
大略的に、前記撮像レンズ鏡筒200では、ズーム用のモータ202からの動力はギアボックス203を介して固定筒204内に収納されたカム筒205に伝達され、該カム筒205の回転によって直進移動筒206が進退し、前玉207が前記光軸z方向に変位するとともに、図示しない内部の直進移動筒も前記カム筒205に駆動され、該直進移動筒206に保持されるズームレンズも前記光軸z方向に変位する。なお、フォーカス用には別途直進移動筒およびそれに保持されるフォーカスレンズが設けられており、内蔵の小型のモータで駆動される。
【0056】
上述のように構成される像ぶれ補正ユニット100において、図9は本発明の実施の一形態に係る駆動装置である超音波リニアアクチュエータ13,22の模式的な側面図である。圧電素子131,221には、前述の図で示すような駆動回路310,320から、電気機械変換素子の系における共振周波数に対して所定数倍の駆動周波数で、かつ所定デューティの駆動パルスが入力されることで、ロッド132,222と摺動部44,41との係合部分に、最も効率的な推力が得られる擬似鋸歯状の変位振動を生じさせ、前記ロッド132,222に対して摺動部44,41を相対移動させるようになっている。
【0057】
前記所定数倍の範囲は、本件出願人による公知の前記特許文献2で示されているように、0.6〜0.8倍であり、好ましくは0.7倍程度である。同様に、前記所定デューティは、0.55〜0.85と0.15〜0.45であり、好ましくは前記0.7と0.3程度である。
【0058】
このような周波数およびデューティに選ぶことで、矩形波パルスに含まれる主に2の高調波成分が三角波の頂角部分を構成し、圧電素子131,221に該矩形波パルスを入力しても、前記ロッド132,222と摺動部44,41との係合部分に、前記最も効率的な推力が得られる前記擬似鋸歯状の変位振動を生じさせ、前記ロッド132,222に対して摺動部44,41を相対移動させることができる。そして、前記0.7と0.3とのデューティを選択することで、摺動部44,41の移動方向を切換えることができる。
【0059】
注目すべきは、本実施の形態では、駆動部材である前記ロッド132,222には、少なくとも前記圧電素子131,221の伸縮方向の厚さD11、前記駆動周波数および該ロッド132,222の前記伸縮方向の長さD12によって、有効振動長さD13が定まり、該ロッド132,222は、その有効振動長さD13の範囲でしか、被駆動部材である摺動部44,41が相対的に移動可能な推力を発生する振動を維持することができないと言う本件発明者の知見に基づき、該ロッド132,222を、その有効振動長さD13を超えて、長さD14だけ延長形成するとともに、前記摺動部44,41を、その伸縮方向の長さD15が前記ロッド132,222の延長分の長さD14より長く形成することである。
【0060】
また、これに対応して、前記摺動部44,41は、前記V溝441,411を有し、前記ロッド132,222に摩擦係合する摩擦係合部444,414と、前記ロッド132,222が緩やかに挿通する挿通孔443,413を有し、前記ロッド132,222に摩擦係合せず、緩やかに係合し、案内筒としての機能を有する案内筒部442,412とを備えて構成され、前記摩擦係合部444,414が圧電素子131,221とは反対側(ロッド132,222の遊端側)に、前記案内筒部442,412が前記圧電素子131,221側(ロッド132,222の基端側)に、それぞれ配置されることである。前述のように、V溝441,411にはロッド132,222を挟んで受け部材135,225が対向し、それらの間にはばね62,61が巻き掛けられて、ロッド132,222と、摩擦係合部444,414および受け部材135,225との間に所定の摩擦力を発生している。
【0061】
ところで、被駆動部材である摺動部44,41の案内筒部442,412における「緩やかな係合」とは、摩擦係合部444,414より動摩擦係数が小さい係合を意味しており、緩やかさを実現するために、該案内筒部442,412も摺動部44,41と同様に、V溝441,411および受け部材135,225を有し、ばね62,61の弾発力を摩擦係合部444,414側よりも小さくしたり、V溝441,411の動摩擦係数を摩擦係合部444,414側よりも小さくする等、種々の手法を採用することができる。前記V溝441,411の動摩擦係数を小さくする方法としては、たとえば係合面を(テフロン登録商標)加工するようにしてもよい。前記テフロン加工は、たとえば加工厚さ0.2μm、表面粗さ(Ra)0.2μm、動摩擦係数0.04とする。
【0062】
図10は、上述のように構成される摺動部44,41とロッド132,222との関係を説明するための図である。先ず、図10(a)で示す摺動部44,41がロッド132,222の最も基端側にある状態では、案内筒部442,412および摩擦係合部444,414の基端側の一部が延長部分(D14)にあり、摩擦係合部444,414の遊端側の一部が有効振動部分(D13)にある。したがって、遊端側へ前進させるためのデューティを有する駆動信号が圧電素子131,221に与えられると、通常の推力よりは劣るものの、摺動部44,41は、図10(b)で示すように引出されてゆく。
【0063】
引出されるに連れて、摩擦係合部444,414の有効振動部分(D13)に掛る長さが増え、推力が増加してゆく。そして、駆動条件に変化がなければ、図10(b)で示すように、案内筒部442,412が有効振動部分(D13)に掛るようになると、それ以上の急激な推力増加は無くなる。
【0064】
図10(c)で示すように、摩擦係合部444,414がロッド132,222の遊端側に到達すると、前記案内筒部442,412の全体が有効振動部分(D13)に乗り入れる。なお、有効振動部分(D13)においても、ロッド132,222の基端側に近付く程推力が小さく、遊端側になるにつれて推力が大きくなる傾向があるので、図10(b)で示す摩擦係合部444,414の全体が有効振動部分(D13)に乗り入れてから、前述のように急激な推力の増加は無くなるものの、緩やかな推力の増加は続く。
【0065】
しかしながら、前記ホール素子7の位置検知結果による駆動回路310,320の制御によって、前記駆動周波数とデューティとの少なくとも一方が前記最も効率的な推力が得られる条件からずらされ、摺動部44,41のブラケット124,224への衝突が防止されている。基端側への移動制御についても、同様である。なお、図10では、分り易くするために、ロッド132,222において、前記有効振動部分には斜線を施して示している。なお、図10(a)では、摺動部44,41の案内筒部442,412だけでなく、摩擦係合部444,414も延長部分(D14)に入り込んでいるが、該摩擦係合部444,414で有効振動部分(D13)に残る部分よりも、延長部分(D14)に掛る部分が長くなる程、駆動(引出し)が困難になる。
【0066】
図11は、本件発明者の実験結果を示すグラフである。この図11は、ロッド132,222を10分割した各位置における推力特性を示すグラフであり、横軸は基端側を0、遊端側を10とした位置を示している。そして、参照符号α1は前記圧電素子131,221の厚さD11とロッド132,222の長さD12との比が3のロッドを示し、参照符号α2は4.5のロッドを示し、圧電素子131,221の厚さD11は2.5mmと固定し、ロッド132,222の長さD12を、7.5mm(α1)と、11.25mm(α2)としている。
【0067】
図12には、図11の実験にあたって、前記圧電素子131,221に与えた駆動信号の波形を示す。駆動周波数は140kHzで、共振周波数の200kHzの0.7倍、したがって1周期は7.1μsecである。そして、デューティは0.3で、ハイ側(+5V)期間aが1.6μsec、ロー側(−5V)期間cが4.5μsec、ハイ/ロー切り替り時におけるデッドタイム(GNDレベル)期間b,dが、それぞれ0.5μsecである。したがって、この駆動信号は、フルブリッジの駆動回路310によって作成したものである。
【0068】
実験の結果、参照符号α1で示す前記比が3のロッドでは、ほぼ全長の位置に亘って、駆動に充分な推力が得られているのに対して、参照符号α2で示す前記比が4.5のロッドでは、基端側の推力が低下していることが理解される。これは、前記比を大きくすると、ロッド132,222上で一様な変位波形が得られないためと思われる。したがって、単純に、摺動部44,41の摺動の安定のために該摺動部44,41の長さD15を長くしたり、省スペース化のために圧電素子131,221の厚さD11を薄くしたりすると、フルストローク駆動できないようになる。
【0069】
これに対して、本実施の形態では、その充分な推力が得られない基端側の延長部分(D14)に、ロッド132,222に摩擦係合しない案内筒部442,412を設け、案内筒として機能させるとともに、前記有効振動長さ(D13)の範囲に、前記摺動部44,41の摩擦係合部444,414の一部を係合させておくので、フルストローク駆動を可能にしつつも、圧電素子131,221を必要以上に厚くする必要はなく、運動精度(傾き、チルトなど)を向上することができる。
【0070】
これによって、該超音波リニアアクチュエータ13,22の設置スペースを削減することができる、或いは設置の自由度を向上することができる。また、このような超音波リニアアクチュエータ13,22を用いる像ぶれ補正ユニット100およびそれを用いるカメラにおいても、駆動装置の設置スペースを削減、或いは設置の自由度を向上することができる。本件発明者の実験によれば、前記摺動部44,41の延長と合わせて、圧電素子131,221の厚さD11とロッド132,222の長さD12との比が、5程度まではフルストローク駆動が可能である。
【0071】
また、前記摺動部44,41の長さD15は、ロッド132,222の延長形成された部分(D14)より長く形成され、摩擦係合部444,414の一部が有効振動長さD13の範囲に掛るように構成されるが、たとえば図11の参照符号α12で示すように、前記有効振動長さD13が圧電素子131,221の厚さD11の2.6〜3.4倍、好ましくは3倍程度であり、ロッド132,222の延長形成される長さD14が前記厚さD11の1.0〜2.0倍、好ましくは1.5倍程度である場合、前記ロッド132,222の全長D12において、圧電素子131,221側から1/3が延長部分(D14)となり、その先2/3が有効振動長さD13の範囲となるので、前記摩擦係合部444,414を、前記ロッド132,222の全長D12における圧電素子131,221側から4割を超える範囲に掛るように形成することで、充分な推力を得ることができる。
【0072】
なお、前記ロッド132,222を角柱状に形成したり、軸直角断面を楕円状に形成したりし、また摺動部44,41もそれに合わせた形状に形成することで、摺動部44,41のロッド132,222の軸回りに対する回転も抑えることができる。
【0073】
(実施の形態2)
図13は本発明の実施の他の形態に係る駆動装置である超音波リニアアクチュエータ13aの模式的な側面図であり、図14は図13の切断面線A−Aから見た断面図である。この超音波リニアアクチュエータ13aは前述の超音波リニアアクチュエータ13,22に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、この超音波リニアアクチュエータ13aでは、摺動部44aは、高剛性プラスチックに、前記V溝441を形成する金属インサート部材44bをインサート成型したブロックなどから成り、対向する受け部材135aとともに、それらの基端側には、前記案内筒部442に代えて、ロッド132上を滑動するベアリングを備える非摩擦係合部445が設けられることである。遊端側は、前記ばね62の弾発力によって、前記摺動部44aと受け部材135aとがロッド132を挟持し、前記摩擦係合部444となる。
【0074】
このように構成してもまた、摺動部44aの圧電素子131側での摩擦力を抑えて、前記緩やかな係合を実現し、案内筒としての機能を持たせることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 センサユニット
11 センサ本体
12 ホルダー
125,126 凹所
127,128 突起
129 ホルダー
13,13a,22 超音波リニアアクチュエータ
131,221 圧電素子
132,222 ロッド
135,135a,225 受け部材
135c ベアリング
139,229 錘
2 固定部材
27,48 凹所
31〜33 ビス
34〜36 ばね
4 スライダー
41,44,44a 摺動部
411,441 V溝
412,442 案内筒部
413,443 挿通孔
414,444 摩擦係合部
42,45 支持片
43,46,49 フック
445 非摩擦係合部
44b 金属インサート部材
44c ベアリング
5 シールド板
6 永久磁石
61,62,63 ばね
7 ホール素子
71,72 球体
100 像ぶれ補正ユニット
200 撮像レンズ鏡筒
310,320 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子と、
前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に取付けられて該電気機械変換素子により前記伸縮方向に変位駆動される駆動部材と、
前記駆動部材に所定の摩擦力で係合している被駆動部材とを備え、
前記電気機械変換素子の系における共振周波数に対して所定数倍の駆動周波数で、かつ所定デューティの駆動パルスが該電気機械変換素子に入力されることで、前記駆動部材と被駆動部材との係合部分に、該電気機械変換素子の伸張時と縮小時とに速度差を生じさせる擬似鋸歯状の変位振動を生じさせ、前記駆動部材と被駆動部材とを相対移動させる駆動装置において、
前記駆動部材は、前記被駆動部材が相対的に移動可能な推力を発生する振動を全長に亘って維持することができる有効振動長さよりも長く延長形成され、
前記被駆動部材は、その伸縮方向の長さが前記駆動部材の延長分の長さより長く形成され、かつ前記電気機械変換素子とは反対側が前記駆動部材に摩擦係合するとともに、前記電気機械変換素子側が前記駆動部材に緩やかに係合することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記駆動部材の有効振動長さは、前記電気機械変換素子の厚さの2.6〜3.4倍であることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記駆動部材の延長形成される長さは、前記電気機械変換素子の厚さの1.0〜2.0倍であり、
前記被駆動部材の摩擦係合する部分は、前記駆動部材の全長における電気機械変換素子側から4割を超える範囲であることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記被駆動部材において、前記駆動部材に緩やかに係合する部分には、ベアリングを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記所定数倍は、0.6〜0.8倍であり、前記所定デューティは、0.55〜0.85と0.15〜0.45とであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の駆動装置を用いることを特徴とする像ぶれ補正装置。
【請求項7】
前記請求項6記載の像ぶれ補正装置を用いることを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−19656(P2012−19656A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156795(P2010−156795)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】