説明

騒音低減構造付き外部循環式ボールねじ

【課題】転がり子が循環経路に衝撃する曲り処での衝撃音と、転がり子が循環経路を転がっているときの摩擦音と、を有効に低減することができる騒音低減構造付き外部循環式ボールねじを提供する。
【解決手段】周縁に転がり溝が設けられるねじ軸と、ねじ軸を螺入可能な貫通孔を有し、貫通孔の周壁には、転がり溝が設けられ、ねじ軸に設けられた転がり溝と、貫通孔の周壁に設けられた転がり溝とは、ロード経路を構成するナットと、ロード経路と連通する循環経路を有し、ナットの外部に設けられる循環子と、ロード経路と循環経路との内部に循環に転がり可能な複数の転がり子と、ナットの外部に設けられ、騒音低減通路を有し、騒音低減通路の両端が転がり子と循環子との衝撃箇所に対応する騒音低減蓋と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部循環式ボールねじに係り、特に、騒音低減構造を有する外部循環式ボールねじに関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、図1を参照する。図1は従来の外部循環式ボールねじの断面図である。図1に示す従来の外部循環式ボールねじは、周縁には、転がり溝111が設けられるねじ軸11と、前記ねじ軸11を螺入可能な貫通孔121を有し、前記貫通孔121の周壁には、転がり溝122が設けられ、前記ねじ軸11に設けられた前記転がり溝111と、前記貫通孔121の周壁に設けられた前記転がり溝122とは、ロード経路13を構成するナット12と、前記ロード経路13と連通する循環経路141を有し、前記ナット12の外部に設けられる循環子14と、前記ロード経路13と前記循環経路141との内部に循環に転がり可能な複数の転がり子15と、を備える。
【0003】
前記循環子14が前記ナット12の外部に設けられ、外部循環式ボールねじの最大の騒音源は、前記転がり子15が前記循環経路141に衝撃する曲り処141aでの衝撃音と、前記転がり子15が前記循環経路141を転がっているときの摩擦音とである。従来の外部循環式ボールねじは、騒音源が外部に露出するので、稼動しているときに、大きな騒音が発生する問題があった。
【0004】
例えばアメリカ合衆国特許第5373755号、アメリカ合衆国特許第5653145号、アメリカ合衆国特許第5974908号、アメリカ合衆国特許第6668672号、アメリカ合衆国特許第20080127764号、日本特許第2007247720号、日本特許第2005308081号、日本特許第2004156767号、日本特許第2004116688号及び日本特許第2002276764号は、固定子により循環経路を完全に覆い、更に、内部に振動低減材料を設けるものもあり、それらは、転がり子が循環経路に衝撃する曲り処での衝撃音を低減することができるが、前記固定子には、騒音低減通路が設けられないので、騒音を有効に減少することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第5373755号公報
【特許文献2】アメリカ合衆国特許第5653145号公報
【特許文献3】アメリカ合衆国特許第5974908号公報
【特許文献4】アメリカ合衆国特許第6668672号公報
【特許文献5】アメリカ合衆国特許第20080127764号公報
【特許文献6】日本特許第2007247720号公報
【特許文献7】日本特許第2005308081号公報
【特許文献8】日本特許第2004156767号公報
【特許文献9】日本特許第2004116688号公報
【特許文献10】日本特許第2002276764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、転がり子が循環経路に衝撃する曲り処での衝撃音と、転がり子が循環経路を転がっているときの摩擦音と、を有効に低減することができる騒音低減構造付き外部循環式ボールねじを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の騒音低減構造付き外部循環式ボールねじによると、周縁には、転がり溝が設けられるねじ軸と、ねじ軸を螺入可能な貫通孔を有し、貫通孔の周壁には、転がり溝が設けられ、ねじ軸に設けられた転がり溝と、貫通孔の周壁に設けられた転がり溝とは、ロード経路を構成するナットと、ロード経路と連通する循環経路を有し、ナットの外部に設けられる循環子と、ロード経路と循環経路との内部に循環に転がり可能な複数の転がり子と、ナットの外部に設けられ、騒音低減通路を有し、騒音低減通路の両端が転がり子と循環子との衝撃箇所に対応する騒音低減蓋と、を備えることを特徴とする騒音低減構造付き外部循環式ボールねじである。
【0008】
本発明の請求項2に記載の騒音低減構造付き外部循環式ボールねじによると、周縁には、転がり溝が設けられるねじ軸と、ねじ軸を螺入可能な貫通孔を有し、貫通孔の周壁には、転がり溝が設けられ、ねじ軸に設けられた転がり溝と、貫通孔の周壁に設けられた転がり溝とは、ロード経路を構成するナットと、ロード経路と連通する循環経路を有し、ナットの外部に設けられる循環子と、ロード経路と循環経路との内部に循環に転がり可能な複数の転がり子と、ナットの外部に設けられ、循環子をカバーし定位する溝と、溝と連通する騒音低減通路と、を有し、騒音低減通路の両端が転がり子と循環子との衝撃箇所に対応する騒音低減蓋と、を備えることを特徴とする騒音低減構造付き外部循環式ボールねじ。
【0009】
本発明の請求項3に記載の騒音低減構造付き外部循環式ボールねじによると、ナットの外部には、第1循環子と、第2循環子と、が設けられ、騒音低減蓋は、第1循環子をカバーし定位する第1溝と、第2循環子をカバーし定位する第2溝と、第1溝の両端と連通する第1騒音低減通路と、第2溝の両端と連通する第2騒音低減通路と、第1溝と第2溝との一端と連通する第3騒音低減通路と、第1溝と第2溝との他端と連通する第4騒音低減通路と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の騒音低減構造付き外部循環式ボールねじによれば、転がり子が循環経路に衝撃する曲り処での衝撃音と、転がり子が循環経路を転がっているときの摩擦音と、を有効に低減することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の外部循環式ボールねじの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の外部循環式ボールねじの分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態の外部循環式ボールねじの組合状態の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態の外部循環式ボールねじの作動を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
まず、図2及び図3を参照する。本発明の一実施形態の騒音低減構造付き外部循環式ボールねじは、周縁には、転がり溝211が設けられるねじ軸21と、前記ねじ軸21を螺入可能な貫通孔221を有し、前記貫通孔221の周壁には、転がり溝222が設けられ、前記ねじ軸21に設けられた前記転がり溝211と、前記貫通孔221の周壁に設けられた前記転がり溝222とは、ロード経路26を構成するナット22と、前記ロード経路26と連通する循環経路231を有し、前記ナット22の外部に設けられる第1循環子23と、前記ロード経路26と連通する循環経路241を有し、前記ナット22の外部に設けられる第2循環子24と、前記ロード経路26と前記循環経路231、241との内部に循環に転がり可能な複数の転がり子25と、を含む。
【0014】
前記ナット22の外部には、騒音低減蓋30が設けられ、前記騒音低減蓋30は、ネジ41により前記ナット22の外部に締結され、ヘッド端311及び尾端312を有する第1溝31と、ヘッド端321及び尾端322を有する第2溝32と、ヘッド端331及び尾端332を有する第1騒音低減通路33と、ヘッド端341及び尾端342を有する第2騒音低減通路34と、ヘッド端351及び尾端352を有する第3騒音低減通路35と、ヘッド端361及び尾端362を有する第4騒音低減通路36と、を有する。
【0015】
前記第1溝31は、前記第1循環子23をカバーし定位し、且つ前記第1循環子23の循環経路231の外部に緊密に押付けられ、前記第1溝31のヘッド端311と尾端312とは、それぞれ前記転がり子25と前記第1循環子23に設けられた循環経路231との衝撃箇所に対応し、上記衝撃箇所は、前記第1循環子23の曲り処232、233である。
【0016】
前記第2溝32は、前記第2循環子24をカバーし定位し、且つ前記第2循環子24の循環経路241の外部に緊密に押付けられ、前記第2溝32のヘッド端321と尾端322とは、それぞれ前記転がり子25と前記第2循環子24に設けられた循環経路241との衝撃箇所に対応し、上記衝撃箇所は、前記第2循環子24の曲り処242、243である。
【0017】
前記第1騒音低減通路33は、前記ヘッド端331が前記第1溝31の前記ヘッド端311と連通し、前記尾端332が前記第1溝31の前記尾端312と連通し、これにより、前記第1騒音低減通路33の前記ヘッド端331と前記尾端332とがそれぞれ前記転がり子25と前記第1循環子23との衝撃箇所に対応し、上記衝撃箇所は、前記第1循環子23の曲り処232、233である。
【0018】
前記第2騒音低減通路34は、前記ヘッド端341が前記第2溝32の前記ヘッド端321と連通し、前記尾端342が前記第2溝32の前記尾端322と連通し、これにより、前記第2騒音低減通路34の前記ヘッド端341と前記尾端342とがそれぞれ前記転がり子25と前記第2循環子24との衝撃箇所に対応し、上記衝撃箇所は、前記第2循環子24の曲り処242、243である。
【0019】
前記第3騒音低減通路35は、前記ヘッド端351が前記第1溝31の前記ヘッド端311と連通し、前記尾端352が前記第2溝32の前記ヘッド端321と連通し、これにより、前記第3騒音低減通路35の前記ヘッド端351が前記転がり子25と前記第1循環子23との衝撃箇所に対応し、上記衝撃箇所が前記第1循環子23の曲り処232であり、前記第3騒音低減通路35の前記尾端352が前記転がり子25と前記第2循環子24との衝撃箇所に対応し、上記衝撃箇所が前記第2循環子24の曲り処242である。
【0020】
前記第4騒音低減通路36は、前記ヘッド端361が前記第1溝31の前記尾端312と連通し、前記尾端362が前記第2溝32の前記尾端322と連通し、これにより、前記第4騒音低減通路36の前記ヘッド端361が前記転がり子25と前記第1循環子23との衝撃箇所に対応し、上記衝撃箇所が前記第1循環子23の他の曲り処233であり、前記第4騒音低減通路36の前記尾端362が前記転がり子25と前記第2循環子24との衝撃箇所に対応し、上記衝撃箇所が前記第2循環子24の他の曲り処243である。
【0021】
次に、図2及び図4を参照しながら、本発明の一実施形態の騒音低減構造付き外部循環式ボールねじの作動を説明する。本発明の一実施形態の騒音低減構造付き外部循環式ボールねじが稼動しているときには、前記転がり子25が前記第1循環子23の前記循環経路231の内部に転がり、且つ前記第1循環子23の曲り処232、233では騒音が発生する。上記騒音が前記騒音低減蓋30の第1溝31のヘッド端311と尾端312とに同時に伝達され、前記第1溝31の前記ヘッド部311と前記尾端312とは前記第1騒音低減通路33と連通するので、同図における矢印に示すように、騒音が前記第1騒音低減通路33の前記ヘッド端331と前記尾端332とから同時に前記第1騒音低減通路33に進入する。前記ヘッド端331と前記尾端332とから進入する上記騒音が前記第1騒音低減通路33の内部に合う場合には、破壊的な干渉が発生し、これにより、騒音を有効に低減することができる。そして前記第2溝32の前記ヘッド部321と前記尾端322とは前記第2騒音低減通路34と連通するので、前記転がり子25の前記第2循環子24に設けられた曲り処242、243での発生する騒音を有効に低減することができる。
【0022】
また、本発明の一実施形態の騒音低減構造付き外部循環式ボールねじが稼動しているときには、前記転がり子25により、前記第1循環子23の曲り処232、233と、前記第2循環子24の曲り処242、243と、には騒音が発生する。上記騒音は、前記騒音低減蓋30に設けられた前記第1溝31の前記ヘッド端311及び前記尾端312と、前記騒音低減蓋30に設けられた前記第2溝32の前記ヘッド端321及び前記尾端322と、に伝達される。前記第1溝31の前記ヘッド端311と前記第2溝32の前記ヘッド端321との間には、前記ヘッド端311及び前記ヘッド端321と連通する前記第3騒音低減通路35が設けられる。前記第1溝31の前記尾端312と前記第2溝32の前記尾端322との間には、前記尾端312及び前記尾端322と連通する前記第4騒音低減通路36が設けられる。図2及び図4における矢印に示すように、騒音は、前記第3騒音低減通路35の前記ヘッド端351及び前記尾端352と、前記第4騒音低減通路36の前記ヘッド端361及び前記尾端362と、から同時に前記第3騒音低減通路35と前記第4騒音低減通路36とに進入し、これらの上記騒音が前記第3騒音低減通路35と前記第4騒音低減通路36との内部に合う場合には、破壊的な干渉が発生し、これにより、騒音を有効に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、ボールねじに適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
11 ねじ軸
12 ナット
13 ロード経路
14 循環子
15 転がり子
21 ねじ軸
22 ナット
23 第1循環子
24 第2循環子
25 転がり子
26 ロード経路
30 騒音低減蓋
31 第1溝
32 第2溝
33 第1騒音低減通路
34 第2騒音低減通路
35 第3騒音低減通路
36 第4騒音低減通路
41 ネジ
111 転がり溝
121 貫通孔
122 転がり溝
141 循環経路
141a 曲り処
211 転がり溝
221 貫通孔
222 転がり溝
231 循環経路
232 曲り処
233 曲り処
241 循環経路
242 曲り処
243 曲り処
311 ヘッド端
312 尾端
321 ヘッド端
322 尾端
331 ヘッド端
332 尾端
341 ヘッド端
342 尾端
351 ヘッド端
352 尾端
361 ヘッド端
362 尾端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁には、転がり溝が設けられるねじ軸と、
前記ねじ軸を螺入可能な貫通孔を有し、前記貫通孔の周壁には、転がり溝が設けられ、前記ねじ軸に設けられた前記転がり溝と、前記貫通孔の周壁に設けられた前記転がり溝とは、ロード経路を構成するナットと、
前記ロード経路と連通する循環経路を有し、前記ナットの外部に設けられる循環子と、
前記ロード経路と前記循環経路との内部に循環に転がり可能な複数の転がり子と、
前記ナットの外部に設けられ、騒音低減通路を有し、前記騒音低減通路の両端が前記転がり子と前記循環子との衝撃箇所に対応する騒音低減蓋と、を備えることを特徴とする、騒音低減構造付き外部循環式ボールねじ。
【請求項2】
周縁には、転がり溝が設けられるねじ軸と、
前記ねじ軸を螺入可能な貫通孔を有し、前記貫通孔の周壁には、転がり溝が設けられ、前記ねじ軸に設けられた前記転がり溝と、前記貫通孔の周壁に設けられた前記転がり溝とは、ロード経路を構成するナットと、
前記ロード経路と連通する循環経路を有し、前記ナットの外部に設けられる循環子と、
前記ロード経路と前記循環経路との内部に循環に転がり可能な複数の転がり子と、
前記ナットの外部に設けられ、前記循環子をカバーし定位する溝と、前記溝と連通する騒音低減通路と、を有し、前記騒音低減通路の両端が前記転がり子と前記循環子との衝撃箇所に対応する騒音低減蓋と、を備えることを特徴とする、騒音低減構造付き外部循環式ボールねじ。
【請求項3】
前記ナットの外部には、第1循環子と、第2循環子と、が設けられ、前記騒音低減蓋は、前記第1循環子をカバーし定位する第1溝と、前記第2循環子をカバーし定位する第2溝と、前記第1溝の両端と連通する第1騒音低減通路と、前記第2溝の両端と連通する第2騒音低減通路と、前記第1溝と前記第2溝との一端と連通する第3騒音低減通路と、前記第1溝と前記第2溝との他端と連通する第4騒音低減通路と、を有することを特徴とする、請求項2に記載の騒音低減構造付き外部循環式ボールねじ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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