説明

骨または軟骨の再生のための補填材

【課題】損傷した骨・軟骨を生体内で自然治癒により再生させるための補填材および骨・軟骨の再生方法を提供する。
【解決手段】軟骨または骨の再生のための補填材であって、細胞を生着させる多孔質部および骨髄液を溜める貯液部からなり、多孔質部は、生体吸収性材料からなり、ポロシティが10〜90%の円筒状であり、貯液部は、多孔質部の一方の底面に開口部を有し、容積が円筒の見かけ体積の1〜50%の補填材および該補填材を用いる軟骨または骨の再生方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷した軟骨または骨の再生のための補填材に関する。更に詳しくは、細胞を生着させる多孔質部および骨髄液を溜める貯液部からなる軟骨、骨の再生に優れる補填材に関する。
【背景技術】
【0002】
関節は、骨と骨とが可動結合している連結部である。この連結部における互いの骨の末端表面(関節面)は、関節骨・軟骨により覆われている。そして、互いの骨の末端の骨膜は、一体となって関節包として連結部を包んでいる。この関節包に覆われた骨と骨との間には、関節腔と呼ばれる空間が形成され、その内部に関節液が満たされている。
通常、人間の膝関節面の骨・軟骨は、厚さが約2mm程度であり、外傷や疾病等により、1〜4mm程度損傷した場合には、自然治癒により再生の可能性がある。しかし、それ以上損傷した場合には、自力での再生は困難である。さらに、関節炎、腫瘍、壊死等の種々の原因により、関節骨・軟骨を完全に失ったような場合には、人工関節を埋め込む等の処置が施されている。
【0003】
しかし、人工関節は、あくまでも関節機能に類似して人工的に構成されたものであり、生体にとっては異物であるため、生体適合性を維持するのは困難である。また、人工関節は、生体内での厳しい環境下で、複雑な動作を要求されるため、耐久性の点から長期間維持させることは困難である。したがって、人工関節治療に替わるものとして、関節軟骨自体を再生する技術が要望されている。
軟骨を再生させるには、生体外で軟骨細胞を培養し生体に移植する方法および生体内で再生する環境を整え自然治癒により再生させる2つの方法がある。いずれの方法においても軟骨細胞が増殖する足場として機能する支持体が必要である。このような組織再生用の支持体として、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの生体適合性材料により形成された特定形状の細孔を有する多孔性支持体が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−216119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、損傷した軟骨または骨を生体内で自然治癒により再生させるための補填材を提供することを目的とする。ここで損傷とは、外傷による外因性損傷や、疾患などによる内因性損傷を含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、生体内で関節の軟骨または骨を再生させるのに適した多孔質体からなる補填材について検討した。特に、多孔質体の形状に着目して検討を行なった。その結果、補填材の下部に開口を設け、補填材内に骨髄液を溜める部位を設けると、骨や軟骨の再生が促進されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、軟骨または骨再生のための補填材であって、細胞を生着させる多孔質部および骨髄液を溜める貯液部からなり、多孔質部は、生体吸収性材料からなり、ポロシティが10〜90%の円筒状であり、貯液部は、多孔質部の内部に形成された空孔であり、多孔質部の一方の底面に開口部を有し、容積が円筒の見かけ体積の1〜50%である補填材である。また本発明は、前記補填材を損傷した軟骨部位あるいは骨部位に埋入することからなる軟骨または骨の再生方法を包含する。該再生方法は、損傷した軟骨組織を取り除く際に軟骨下骨に達する穴を形成し、そこに本補填材を挿入することで軟骨層および軟骨下骨層を再生することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の補填材は、生体内での軟骨または骨の再生機能に優れている。また本発明の再生方法によれば、生体内で軟骨や軟骨下骨、骨を迅速に再生することができる。生体とはヒトを含む哺乳動物のことをいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の補填材について詳述する。
【0008】
本発明の補填材は、軟骨、軟骨下骨などを含む骨のための補填材である。軟骨として肘、膝、股などの関節の軟骨が好ましい。骨としては特に制限はないが、主として軟骨の内側にある軟骨下骨を修復するのに本発明の補填材は好ましく用いることができる。本発明の補填材の各部位を図1に基づいて説明する。図1中、1は多孔質部である。2は多孔質部の一方の底面である。3は貯液部である。4は貯液部の開口部である。
【0009】
<多孔質部>
多孔質部は、生体吸収性材料からなり、ポロシティが10〜90%の円筒状である。多孔質部は、細胞を生着させる足場となる部位である。
【0010】
(生体吸収性材料)
生体吸収性材料は、生体内において分解あるいは溶解し、最終的には代謝、排泄されることにより吸収される材料のことを言うが、本発明においては、好ましくは脂肪族ポリエステルからなる。脂肪族ポリエステルとしては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートおよびこれらの共重合体などが挙げられる。これらのうち、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンおよびこれらの共重合体が好ましい。乳酸とグリコール酸との共重合体の場合は、乳酸単位30〜70モル%およびグリコール酸単位70〜30モル%からなる共重合体が好ましい。
【0011】
生体吸収性材料には、生体吸収性材料以外の第2成分を含有していても良い。第2成分としてタンパク質、ポリアミノ酸、糖質、リン脂質、細胞増殖因子などが挙げられる。タンパク質として、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、フィブリン、ラミニン、カゼイン、ケラチン、セリシン、トロンビンなどが挙げられる。また、ポリアミノ酸として、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリジンなどが挙げられる。これらの成分の含有量は、生体吸収性材料100重量部に対し、30重量部以下が好ましい。より好ましくは10〜0.1重量部である。
【0012】
糖質として、ポリガラクチュロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン、デキストラン硫酸、硫酸化セルロース、アルギン酸、デキストラン、カルボキシメチルキチン、ガラクトマンナン、アラビアガム、トラガントガム、ジェランガム、硫酸化ジェラン、カラヤガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、カードラン、プルラン、セルロース、デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、グルコマンナン、キチン、キトサン、キシログルカン、レンチナンなどが挙げられる。これらの成分の含有量は、生体吸収性材料100重量部に対し、30重量部以下が好ましい。
またリン脂質として、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールなどが挙げられる。これらの成分の含有量は、生体吸収性材料100重量部に対し、10重量部以下が好ましい。また細胞増殖因子として、FGF(繊維芽細胞増殖因子)、EGF(上皮増殖因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、TGF−β(β型形質転換増殖因子)、NGF(神経増殖因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、BMP(骨形成因子)などが挙げられる。これらの成分の含有量は、生体吸収性材料100重量部に対し、1重量部以下が好ましい。
【0013】
(ポロシティ)
多孔質部は、ポロシティが10〜90%である。好ましくは75〜90%、より好ましくは80〜85%である。ポロシティが10%未満であると再生する細胞数が少なく、また90%を超えると生着する細胞数は多いものの、空間部が多いため機械強度が低く、自然治癒の過程で生分解され補填材が陥没し、均一な厚さの軟骨を再生することができない。ポロシティは、以下に定義される。
ε=(1−ρ/ρ)×100
ε:ポロシティ、
ρ:補填材の見かけ密度(質量/体積)、
ρ:ポリマー密度
【0014】
(形状)
多孔質部の形状は円筒状である。また多孔質部は、軟骨下骨に達する深さまで埋入することが好ましく、円筒の直径は3mm以上であることが好ましく、高さは2mm以上であることが好ましい。より好ましくは、円筒の直径は5〜30mm、高さ3〜10mm程度であることが好ましい。
多孔質部は、スポンジ状で、外表面に、長径(ポアサイズ)で好ましくは1〜800μm、さらに好ましくは2〜500μmの細孔(ポア)を有する。細孔は目視観察によれば外表面に略均一に存在する。また内部には長径で、好ましくは1〜800μm、さらに好ましくは2〜500μmの空隙を有する。空隙の配置は略均一である。各空隙の大半は互いに連通しているのが好ましい。
【0015】
<貯液部>
貯液部は、骨髄液を溜める部位である。貯液部は、多孔質部の内部に形成された空孔であり、多孔質部の一方の底面に開口部を有し、容積が円筒の見かけ体積の1〜50%、好ましくは2〜30%である。開口部の大きさは、底面の見かけ面積(rπ、r=円筒の半径)の、好ましくは2〜50%、より好ましくは3〜40%である。貯液部の深さは円筒の高さの、好ましくは5〜80%、より好ましくは10〜70%である。貯液部の形状は任意であるが、円筒状が好ましい。貯液部の開口部としては、直径が0.5mm以上、深さが0.5mm以上であることが好ましく、さらに好ましくは、開口部の直径は1〜15mmであり、深さが1〜6mmの円筒状の空孔であることが良い。貯液部は、総容積が円筒の見かけ体積の1〜50%の条件を満たせばよく、複数の穴を形成してもよい。
貯液部には、軟骨下骨からしみ出て来る幹細胞を含有する骨髄液が溜まり、幹細胞が貯液部から多孔質部に供給されることにより、骨や軟骨の再生速度を向上させることができる。貯液部は、生体吸収性材料で多孔質部を作製した後、ドリル等で穴を開け形成することができる。また、貯液部を形成する型を用いて、成形することもできる。
【0016】
<製造方法>
本発明の補填材は、以下の工程により製造することができる。
(1)生体吸収性材料を、融点が15〜30℃である有機溶媒に溶解し、生体吸収性材料の含有量が6重量%以上のドープを調製する工程、
(2)ドープを型内で冷却する工程であって、到達温度が−15℃〜−25℃の間で、少なくとも0℃から到達温度までの間は、0.5〜1.5℃/分の速度で冷却する工程、および(3)到達温度において凍結乾燥し、有機溶媒を除去する工程。多孔質部および貯液部の形状は、工程(1)〜(3)の後に、所定の形状に切り出すことにより整えることができる。また工程(2)で所定の形状の型を使用することにより整えることができる。
【0017】
(ドープ)
ドープは、生体吸収性材料を、融点が15〜30℃である有機溶媒に溶解することにより調製することができる。ドープ中の生体吸収性材料の含有量は6重量%以上である。好ましくは、7〜20重量%である。生体吸収性材料は前述の通りである。
有機溶媒は、融点が15〜30℃の有機溶媒が好ましい。なかでもジメチルスルホキシドやスルホラン等が好ましい。融点が15℃未満の有機溶媒であると凍結乾燥後、得られた成形体のポアサイズが小さく補填材としては好ましくない。また融点が30℃を超えると凍結はするものの乾燥中に溶媒が昇華せず成形体が得られない。さらに得られた成形体の空隙の大きさを考慮した場合、凍結した際得られる結晶が大きいジメチルスルホキシドが最も好ましい。
【0018】
(冷却工程)
冷却は、ドープを型内に入れ、冷却機で冷却することにより行なう。冷却の到達温度は、−15℃〜−25℃の間である。好ましくは−17℃〜−22℃の間である。冷却速度は、少なくとも0℃から到達温度までの間は、0.5〜1.5℃/分、好ましくは0.7〜1.3℃/分である。冷却速度が速すぎると補填材中の空隙が小さくなり好ましくない。
【0019】
(凍結乾燥工程)
凍結乾燥工程は、到達温度において減圧下で行い、有機溶媒を除去する工程である。凍結乾燥工程は、10〜30Paで行なうことが好ましい。凍結乾燥時間は8〜24時間が好ましい。
【0020】
<骨、軟骨の再生方法>
本発明の補填材は、軟骨が損傷した部位に埋入して軟骨や軟骨下骨の再生に用いることができる。再生方法は以下の手順で行なうことができる。まず、関節部を手術し軟骨を露出させる。次に、軟骨の損傷部位にドリルなどで穴を開ける。穴は、厚さ2mm程度の軟骨組織より下の軟骨下骨に達する程度の深さまで開けることが好ましい。従って穴の深さは3〜8mm程度が好ましい。その後、穴の内径に略一致する形状の本発明の補填材を埋入する。その後、手術部位を修復し、自然治癒により、軟骨および軟骨下骨の再生を行なう。
【実施例】
【0021】
以下の実施例により本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例で使用した材料、測定方法は以下の通りである。
(1)乳酸/グリコール酸共重合体:バーミンガムポリマー社(Birmingham Polymers,Inc)製のDL乳酸/グリコール酸共重合体(モル比=50/50)、固有粘度:1.08dL/g、30℃、ヘキサフルオロイソプロパノール
(2)ジメチルスルホキシド:和光純薬工業(株)製
(3)消毒用エタノール:和光純薬工業(株)製
(4)10%中性緩衝ホルマリン溶液:和光純薬工業(株)製
(5)Safranin O溶液:和光純薬工業(株)製
(6)Fast Green FCF:ポリサイエンス(Polyscience)(株)社製
(7)エチレンジアミン−N,N,N’,N’−4ナトリウム塩4無水物(以下EDTA):同仁化学研究所(株)
(8)結晶ペニシリンGカリウム(以下ペニシリン):萬有製薬(株)製
(9)ヨードチンキ:吉田製薬(株)製
(10)動物用ケタラール:三共エール薬品(株)製
(11)動物用セラクタール2%注射液:バイエル(Bayer)(株)製
(12)ウサギ
実験に使用したニュージーランド白色家兎(以下NZWウサギ)は雄性であり、日本SLC(株)より購入してゲージにて通常飼育を行った。手術時の週齢は24週齢であった。
(13)ポロシティ
ポロシティは下記式により算出した。
ε=(1−ρ/ρ)×100
ρ=4m/πd
ε:ポロシティ,ρ:補填材の見かけ密度,m:質量,d:直径,h:厚さ,ρp:ポリマー固有密度(乳酸−グリコール酸共重合体(モル比=50/50):1.34g/ml)
(14)ポアサイズ
試料をスパッタコーティング(Pt:1.0nm)処理し、SEM(JSM−5310型(日本電子製)、加速電圧:2.0kV、撮影角度30°)により観察を行い、ポアサイズを求めた。
【0023】
<実施例1>
(1)補填材の製造
(ドープの調製)
乳酸/グリコール酸共重合体(モル比=50/50)を、ジメチルスルホキシド溶媒に溶解し、10重量%のドープを調製した。
(冷却)
つぎにドープを10ml容のフッ素樹脂製容器に7.5ml流し入れ、真空にて脱気後、冷蔵庫で4℃まで冷却した。その後、細胞用凍結処理容器(BICELL(登録商標))を用いて4℃から−20℃まで1℃/分の速度で冷却した。
(凍結乾燥)
そして−20℃、20Paで48時間、凍結乾燥を行いジメチルスルホキシドを除去した。容器から成形体を取り出し、エタノール中に浸漬し洗浄した後、真空乾燥し、直径5mm×高さ5mmの円柱状のものを切り出した。得られた円柱状の多孔体のポロシティは84%であり、外表面のポアサイズ(μm)は50〜600μmであった。
【0024】
この円筒体の片方の平面より同心円状に直径1.5mm、深さ3.5mmの穴を切削し、貯液部を有する補填材を作成した。貯液部の容積は、円筒体の見かけの容積に対して6.3%であった。
【0025】
(2)補填材の生物学的評価
(補填材の埋入)
補填材の生物学的評価を以下の方法により行った。通常飼育したNZWウサギに後肢大腿部にケタラールとセラクタールを筋肉内投与し、全身麻酔下で以下の手術を施した。両側の後肢膝関節周辺部を剃毛し、エタノール消毒した。その後、膝関節内側を切開し、膝蓋骨を脱臼させることにより大腿骨膝蓋溝を露出させた。内側側副靭帯から5mmほど上部の滑車溝部分に、手術用ドリルで内径5mm、深さ5mmの円筒形の欠損部を作製することによって、膝関節軟骨全層を欠損させた。できた欠損部に実施例1で製造した補填材を、蓄液部が内側に(欠損部の下部に)なるように埋入したのち、膝蓋骨を元の位置に戻して筋肉を手術用縫合糸にて縫合した。感染防止のためにペニシリンを患部に滴下したのち、皮膚を縫合した。最後にヨードチンキで消毒し、ゲージに戻して通常の飼育を行った。
【0026】
(評価)
術後12週目に屠殺して欠損部位を摘出し、軟骨組織の目視による観察を行ったのち10%中性緩衝ホルマリン溶液に浸漬、固定させ、組織学的評価に供した。組織学的評価は、固定した組織を脱脂、EDTA脱灰した後、パラフィンに包埋し、欠損部の中心部近傍を矢状面に薄切りして標本を作製し、作製した標本にSafranin O−Fast Green染色を施した。
標本の顕微鏡写真を図2に示す。術後12週目において修復された軟骨組織は、ほとんどが硝子軟骨様を呈しており、基質が良好に産生をしている様子が観察された。また、正常部との結合も良好であり、厚さが正常部とほぼ同等に維持され、組織の連続性を認めた。
【0027】
以上の結果より、貯液部を有する補填材を埋め込んだ軟骨では、表面の状態、修復した軟骨組織の厚さと正常組織との組織学的な連続性については正常組織に近く、全体として良好な修復能を示すことが確認できた。また軟骨下骨についても良好な再生を認めることができた。これより、本発明の補填材は、関節の骨・軟骨治療用材料として優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の補填材は、生体内での関節軟骨または骨の再生機能に優れているので、軟骨や軟骨下骨、骨を損傷した患者の治療への利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の補填材の略図である。
【図2】実施例1の術後12週目における補填材埋入部近傍の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0030】
1 多孔質部
2 底面
3 貯液部
4 開口部
5 修復された骨・軟骨組織の端部
6 修復された骨・軟骨組織層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨または骨の再生のための補填材であって、細胞を生着させる多孔質部および骨髄液を溜める貯液部からなり、多孔質部は、生体吸収性材料からなり、ポロシティが10〜90%の円筒状であり、貯液部は、多孔質部の内部に形成された空孔であり、多孔質部の一方の底面に開口部を有し、容積が円筒の見かけ体積の1〜50%である補填材。
【請求項2】
生体吸収性材料が、脂肪族ポリエステルからなる請求項1記載の補填材。
【請求項3】
脂肪族ポリエステルが、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、またはそれらの共重合体である請求項2に記載の補填材。
【請求項4】
多孔質部のポロシティが75〜90%である請求項1に記載の補填材。
【請求項5】
直径3mm以上、高さ2mm以上の円筒である請求項1記載の補填材。
【請求項6】
貯液部は、直径が0.5mm以上であり、深さが0.5mm以上の円筒状の空孔である請求項1記載の補填材。
【請求項7】
補填材が、
(1)生体吸収性材料を、融点が15〜30℃である有機溶媒に溶解し、生体吸収性材料の含有量が6重量%以上のドープを調製する工程、
(2)ドープを型内で冷却する工程であって、到達温度が−15℃〜−25℃の間で、少なくとも0℃から到達温度までの間は、0.5〜1.5℃/分の速度で冷却する工程、
(3)到達温度において凍結乾燥し、有機溶媒を除去する工程、
からなる方法により製造されたものである請求項1記載の補填材。
【請求項8】
有機溶媒が、ジメチルスルホキシドである請求項7に記載の補填材。
【請求項9】
請求項1記載の補填材を、損傷した軟骨部位あるいは骨部位に埋入することからなる軟骨または骨の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−181514(P2007−181514A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190(P2006−190)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】