説明

骨増生治具及び骨増生キット

【課題】増生させたい骨の状態にかかわらず、簡単かつ迅速に、再生前の骨と少なくとも同程度の強度を有した骨を増生させることができる骨増生法に使用する骨増生治具及び骨増生用キットを提供する。
【解決手段】皮質骨を除去して海綿骨を露出させ、該露出した海綿骨の一部の表面に複数の掘削孔を穿設し、該穿設した掘削孔に支持柱体を挿入して立設すると共に複数の前記支持柱体に支持されるように天板を載置することにより、骨を増生させるための骨増生治具であって、該骨増生治具は、前記露出した海綿骨に掘削孔を穿設する掘削具21と、前記海綿骨の複数の所定位置に前記掘削孔を穿設すべく、掘削具20を案内する複数のガイドホール23aが形成された案内具20と、を少なくとも備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯槽骨などの骨を増生させる骨増生治具及びそのキットに係り、特に、簡単かつ迅速に骨を増生させることができる骨増生治具及びそのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加齢等に伴い、骨自体が体内に吸収され皮質骨及び海綿骨を含む骨が痩せ細ることがある。例えば、歯が欠損すると、歯槽骨(歯を支える骨)自体が吸収されてしまい、欠損部位の歯槽骨の厚さが薄くなることがある。その場合、歯が欠損した部位に歯科インプラントを施したくても、歯槽骨の厚みがないためにインプラントのねじの部分を埋入できず治療できないという問題が発生する。
【0003】
また、それ以外にも、重度の歯周病患者においても、歯槽骨再生は重要な治療と考えられる。平成17年度厚生労働省による患者調査においては、継続的に歯周病として治療を受けている患者は566万4000人とされている。これらの患者も含めて、歯槽骨再生を必要とする患者は1500万〜2000万人はいるとされ、歯槽骨再生のための技術が求められている。
【0004】
このような歯槽骨再生のために、近年再生医療が行われており、例えば、(財)先端医療振興財団においては、2004年より歯槽骨再生医療の治験が開始されている。彼らの提案する方法は、生体吸収性の足場に間葉系幹細胞を注入する技術である。また、別の方法として、エムドゲイン(生化学工業株式会社)という特殊なたんぱく質を歯周組織欠損部に注入し、歯槽骨の再生を図る技術も知られている。
【0005】
その他の方法として、例えば、骨同士を密着状態から少しずつ引き離した場合、骨同士の間に新生骨が形成される特性を利用した技術が提案されている。具体的には、新生骨の形成にあたって、その治具として、筒付固定板とこれに一体化されたナットと、該ナットに螺合するネジを使用して、骨間に隙間を形成して、新生骨を助長(増生)させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−43053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した間葉系幹細胞を注入する技術や、特殊なたんぱく質を歯周組織欠損部に注入する技術などにより再生した骨は、再生前の骨に比べてその強度は充分なものではなかった。また、特許文献1に記載の治具を用いて、骨を増生させることは可能ではあるが、骨の増生は、1日0.1mm程度であり、このような治具を用いたとしても、所望の骨の増生を行うには時間を要することになる。また、ナットやネジを用いて延長するため、歯科用インプラントをする際にこのナット等を考慮する必要があった。さらには、骨の増生を行う場合には、形成される新生骨間の骨そのものが、ネジを穿設した場合に、破損しない程度の強度を有さねばならず、いかなる状態の骨に対しても、骨を増生することができるものではかった。
【0008】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、増生させたい骨の状態にかかわらず、簡単かつ迅速に、再生前の骨と少なくとも同程度の強度を有した骨を増生させることができる骨増生法に使用するための骨増生治具及び骨増生キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、皮質骨の内部に存在する海綿骨が骨を好適に増生させることができる点に着眼した。そこで、まず、皮質骨を除去して海綿骨を露出させ、次に、露出した海綿骨の表面に掘削孔を穿設し、この掘削孔に支持柱体を挿入して立設すると共に複数の支持柱体に支持されるように天板を載置すれば、簡単かつ迅速に、歯科用インプラントなどにも耐え得る強度を有した骨を増生させることができるとの新たな知見を得た。
【0010】
本発明は、この新たな知見に基づくものであり、本発明に係る骨増生治具は、皮質骨を除去して海綿骨を露出させ、該露出した海綿骨の一部の表面に複数の掘削孔を穿設し、該穿設した掘削孔に支持柱体を挿入して立設すると共に複数の前記支持柱体に支持されるように天板を載置することにより、骨を増生させるための骨増生治具であって、該骨増生治具は、前記露出した海綿骨に掘削孔を穿設する掘削具と、前記海綿骨の複数の所定位置に前記掘削孔を穿設すべく、前記掘削具を案内する複数のガイドホールが形成された案内具と、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、掘削具と案内具とを用いることにより、露出した海綿骨の表面の適切な位置に、掘削孔を穿設することができる。具体的には、皮質骨を除去して海綿骨を露出させた後、この海綿骨の表面に、案内具を配置する。そして、この案内具に形成されたガイドホールを介して掘削具を案内し、海綿骨の表面から所望の深さに掘削孔を形成する。この際、案内具を露出した海綿骨の表面に固定しながら、複数のガイドホールに対して、順次掘削具を案内すれば、所定の位置に位置ずれなく掘削孔を穿設することができる。
【0012】
このような案内具は、複数のガイドホールに掘削具を案内できるように、露出した海綿骨の表面に配置することができるものであれば、その形状や構造は特に限定されるものではなく、例えば、プレート状の案内具に複数のガイドホールが形成されたものや、海面骨の形状に合わせた板状の案内具に複数のガイドホールが形成されたものなど挙げることができる。
【0013】
しかしながら、より好ましくは、本発明に係る骨増生治具は、前記案内具が、該案内具の中央から放射状に延在した複数のアーム部と、該アーム部の先端に前記ガイドホールが形成されたガイド部と、を少なくとも備えている。
【0014】
本発明によれば、案内具が、案内具の中央から放射状に延在した複数のアーム部を備えることにより、露出した海綿骨表面の全体を覆うことがなく、海綿骨を観察しながら海綿骨上の適切な位置にガイド部を配置することができる。また、アーム部を把持することで、掘削孔の穿設前に、海綿骨に案内具を容易に配置し、掘削孔の穿設後に、容易に案内具を取り除くことができる。
【0015】
また、本発明に係る骨増生治具は、前記海綿骨を露出すべく、前記皮質骨を除去する皮質骨除去具をさらに備えることがより好ましい。本発明によれば、皮質骨除去具を用いることにより、皮質骨を除去して海綿骨を露出させることができる。このような、皮質骨除去具としては、皮質骨そのものを研削、又は切削により削り取る治具や、皮質骨を破砕する治具や、皮質骨を刳り貫いて除去する治具などを挙げることができ、皮質骨を除去して海綿骨を露出することができるものであれば、特にその治具は、限定されるものではない。
【0016】
しかしながら、より好ましくは、本発明に係る骨増生治具の前記皮質骨除去具は、前記皮質骨を刳り貫くための刳り貫き部を備える治具である。本発明によれば、皮質骨除去具が、刳り貫き部を備えることにより、刳り貫き部により刳り貫かれて除去された皮質骨を、複数の支持柱体に載置させる天板として利用することができる。これにより、皮質骨の天板骨と、海綿骨との間の骨の増生をより促進させることができる。
【0017】
また、別の態様としては、本発明に係る骨増生治具の前記皮質骨除去具は、前記皮質骨を削り取る研削部を備えてもよい。本発明によれば、例えば、天板としての皮質骨片を採取することが困難と判断した場合等には、皮質骨を削り取り、海綿骨を露出させることができる。この場合には、後述する人工的に製造された天板を用いて、骨の増生を図ることができる。このような天板の形状は平板状に限定されるものではなく、周囲歯槽骨の形状に合わせて山型などにしてもよい。
【0018】
本発明に係る骨増生用キットは、上述した骨増生治具により穿設された掘削孔に挿入する前記支持柱体を備えることがより好ましく、さらに、刳り貫いた皮質骨を天板に用いることが出来ない場合は、前記海綿骨に挿入される前記複数の前記支持柱体に支持される天板をさらに備えることがより好ましい。
【0019】
ここで、本発明にいう「骨増生治具」は、骨を増生するために使用する治具をいい、「骨増生用キット」は、骨増生治具の他に、体内に埋め込まれる部材を含むものをいう。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、増生させたい骨の状態にかかわらず、簡単かつ迅速に、再生前の骨と少なくとも同程度の強度を有した骨を増生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】歯が欠損した部位の歯槽骨が吸収されている状態を示した模式斜視図。
【図1B】吸収した歯槽骨上の皮質骨を除去するステップを示した模式斜視図。
【図1C】海綿骨および採取した皮質骨片に、掘削孔を穿設するステップを示した模式斜視図。
【図1D】支持柱体を皮質骨片(天板)の掘削孔に差し込むステップを示した模式斜視図。
【図1E】天板に差し込まれた支持柱体を海綿骨に差し込み立設させるステップを示した模式斜視図。
【図1F】骨再生促進混合物を充填するステップを示した模式斜視図。
【図1G】歯槽骨を増生した状態を説明するための模式斜視図。
【図2】実施形態に係る骨増生治具の皮質骨除去具を示しており、(a)は、刳り貫き部を備えた皮質骨除去具、(b)は、研削部を備えた皮質骨除去具を示した模式斜視図。
【図3】(a)は本実施形態に係る案内具及び掘削具を示した模式斜視図であり、(b)は、案内具の模式上面図。
【図4】(a)は、組み立て前の支持柱体及び天板を示した模式斜視図であり、(b)は、組み立て後の支持柱体及び天板を示した模式斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明に係る骨増生治具及び骨増生キットを本実施形態に基づいて説明する。
【0023】
図1A〜Gは、本実施形態に係る骨増生治具及び骨増性用キットを用いた一連の骨増生を行う方法を説明するための図であり、以下に図1A〜Gのステップを説明しながら、図2〜4に示す本実施形態に係る骨増生治具及び骨増性用キットに関して詳述する。ここで、図2は、本実施形態に係る骨増生治具の皮質骨除去具を示しており、(a)は、刳り貫き部を備えた皮質骨除去具、(b)は、研削部を備えた皮質骨除去具を示した図である。図3は、案内具及び掘削具を示した図であり、図4は、支持柱体及び天板を示した図である。
【0024】
なお、本実施形態では、図2及び3に示す皮質骨除去具、案内具、及び掘削具を含む治具を骨増生治具といい、この骨増生治具に、支持柱体、(場合によって金属天板)を含むものを骨増生キットという。
【0025】
図1Aは、歯が欠損した部位Pの歯槽骨が吸収されている状態を示した図である。本実施形態では、骨増生治具及び骨増性用キットを用いて、図1Aに示すように、歯が欠損した部位Pにおいて、歯槽骨(皮質骨及び海綿骨)が吸収(水平性骨吸収)された部位の骨の増生を行う。
【0026】
まず、図1Bに示すように、吸収した歯槽骨上の皮質骨を除去するステップを行う。具体的には、歯が欠損した部位における歯肉Mを剥離し、次に、吸収した歯槽骨上の皮質骨CBを除去する。この除去の際には、図2(a)に示すように、皮質骨除去具10Aを用いる。
【0027】
この皮質骨除去具10Aは、金属製の治具であり、回転シャフト11と、皮質骨を刳り貫くための刳り貫き部12を備えている。回転シャフト11は、その一端に、タービンヘッド50に装着可能な接続部11aを形成しており、他端に、刳り貫き部12が設けられている。
【0028】
この刳り貫き部12は、有底円筒状であり、開口側の周縁には、刃12aが形成されている。また、刳り貫き部12の円筒内側の直径D1は5mm〜10mmの範囲にあり、円筒側壁の厚みT1は、0.2mm〜1.0mmの範囲にあることが望ましい。また、開口から底部までの深さFは、2.0mm〜5.0mmの範囲にあることが望ましい。この深さにより、皮質骨は略1.0〜2.0mmの厚さであるので、皮質骨片CB1を好適に採取することができる。
【0029】
ここでは、皮質骨除去具10Aを回転させる歯科用器具として、タービンヘッド50を用いたが、歯科臨床で使用されているエンジンを用いてもよく、皮質骨除去具10Aを接続し、回転させることができるものであれば特に限定さるものではない。また、回転シャフト11の接続部11aの形状は、既存の歯科用器具に接続可能であることが望ましい。
【0030】
このような皮質骨除去具10Aを、接続部11aを介してタービンヘッド50に接続し、タービンヘッド50を駆動させ、回転シャフト11を回転させる。これにより、刳り貫き部12の刃12aが、回転シャフト11の回転軸を中心に回転し、この刃12aを皮質骨CBに押し当てることにより、皮質骨CBを刳り貫き、皮質骨片CB1を取り除き、海綿骨SBを露出させることができる。また、海綿骨SBは皮質骨CBよりも柔らかいので、作業者は皮質骨CBから海綿骨SBに、刃12aが到達したことを容易に把握することができる。なお、刳り貫き後、取り除かれた皮質骨片CB1は、後述する天板として用いられる。
【0031】
また、この他の態様として、天板として皮質骨片を採取することが困難な場合や、皮質骨を天板に使用するに充分な厚み等強度がないと判断した場合には、図2(b)に示す皮質骨除去具10Bを用いることが望ましい。
【0032】
この皮質骨除去具10Bは、前述したものと同様の回転シャフト11の他端に、皮質骨を削り取る研削部13を備えている。このような皮質骨除去具10Bを、タービンヘッド50に接続して、回転シャフト11を回転させ、この研削部13を皮質骨CBに押し当てることにより、皮質骨CBを削り取り、海綿骨SBを露出させることができる。
【0033】
次に、図1Cに示すように、海綿骨SBおよび採取した皮質骨片CB1に、掘削孔Hを穿設するステップを行う。この際に、図3に示す案内具20及び掘削具30を用いる。
【0034】
図3(a)に示すように、掘削具30は、金属製の治具であり、回転シャフト31と、海綿骨SBに、掘削孔Hを穿設するための掘削部(ドリル)32と、を備えている。回転シャフト31は、その一端に、タービンヘッド50に装着可能な接続部31aを形成しており、他端に、掘削部(ドリル)32が設けられており、掘削部32の基端側には、ストッパ33が形成されている。掘削部32の軸方向に長さL3は、1mm〜10mmの範囲にあり、その直径D3は、1mm〜3mmの範囲にあることが望ましい。
【0035】
一方、図3(b)に示すように、案内具20は、案内具20の中央となる中央部21から、略等しい角度(120°)で放射状に延在した3つのアーム部22と、アーム部22の先端にガイドホール23aが形成されたガイド部23とを備えている。
【0036】
各アーム部22は、同じ長さであり、これにより、各ガイドホール23aは、円周上に、等間隔に配置される。しかしながら、中央部から延出される各アーム部22の角度、及び各アーム部の長さは、必ずしも、同じ角度及び長さである必要はなく、増生させたい骨の形状に合わせて、その長さ及び形状を適宜調整することができる。さらに、アーム部が、入れ子式になっており、そのアーム長さを適宜選定することができてもよく、各アーム部が、可撓性材料からなり、設置する海面骨の形状に合わせて適宜形状が変更可能であってもよい。
【0037】
また、案内具20の全体の大きさが、前述した皮質骨除去具の円筒外径よりも小さくなるように、各アーム部22の長さが設計されている。これにより、皮質骨片CB1が除去され、露出した海綿骨SBの表面に案内具20を配置することができる。
【0038】
さらに、ガイド部23のガイドホール23aは、掘削部32の軸方向の長さL3よりも短い長さ(深さL2)であって、掘削部32の直径D3よりもやや大きい直径D2の貫通孔となっている。これにより、ガイド部23のガイドホール23aに、掘削具30の掘削部32を挿入することが可能となる。
【0039】
そして、このような案内具20と掘削具30を用いて、掘削孔Hを穿設する。具体的には、案内具20を、皮質骨CBを除去して露出した海綿骨SBの表面に、固定配置する。次に、掘削具30を、接続部31aを介してタービンヘッド50に接続し、タービンヘッド50を駆動させ、回転シャフト31を回転させる。そして、掘削具30の掘削部32を、複数のガイドホール23aに対して、順次案内して、海綿骨SBの表面に掘削具30で掘削孔Hを穿設する。なお、穿設の際には、掘削具30のストッパ33がガイド部23の端面23bに当接するまで、掘削具30を案内する。これにより、一定の深さの掘削孔Hを形成することができる。また、同様に、採取した皮質骨片CB1に対しても、同様の作業を行い3つの掘削孔Hを穿設する。
【0040】
このようにして、海綿骨SB及び天板となる皮質骨片CB1に、所定の位置に位置ずれなく掘削孔Hを穿設することができる。また、案内具20が、案内具20の中央から放射状に延在した3つのアーム部22を備えることにより、露出した海綿骨SBの表面の全体を覆うことがなく、海綿骨SBを観察しながら海綿骨SB上の適切な位置にガイド部23を配置することができる。また、アーム部22を把持することで、掘削孔Hの穿設前に、海綿骨SBに案内具20を容易に配置し、掘削孔Hの穿設後に、案内具20を容易に取り除くことができる。
【0041】
上述したように、本実施形態の案内具20は、アーム部22を設けたが、このような案内具は、複数のガイドホールに掘削具を案内できるように、露出した海綿骨の表面に配置することができるものであれば、その形状や構造は特に限定されるものではなく、例えば、平板体に複数のガイドホールが形成された案内具や、海面骨の形状に合わせた板体に複数のガイドホールが形成された案内具など挙げることができる。
【0042】
次に、図1Dに示すように、皮質骨片(天板)CB1の掘削孔Hに支持柱体41を差し込むステップと、図1Eに示すように、天板に差し込まれた支持柱体41を海綿骨SBに差し込み立設させるステップを行う。
【0043】
図4に示すように、骨増生キットの一部である支持柱体41は、おおむね60%以上の比較的高い気孔率を有するHA(ハイドロキシアパタイト)やβ−TCP(ベータ-リン酸三カルシウム)をはじめとする材料からなり、本体部41aと、その両端に掘削孔Hに挿入する挿入部41bと、を備えている。挿入部41bの軸方向長さL4は、掘削具30のストッパ33を案内具20のガイド部23の端面23bに当接させたときに、ガイド部23から突出する掘削部32の長さ(具体的にはL3−L2)に相当し、挿入部41bの直径D4は、掘削部32の直径D3に相当する。また、本体部41aは円柱状であり、その軸方向の長さLは、増生させたい骨の高さに応じて決定され、1mm〜2mmの範囲が望ましく、その直径は、挿入部41bの直径D4(又は、ガイドホール23aの直径D2)よりも大きく、ガイド部23の外径よりも小さい範囲にあることが望ましい。
【0044】
そして、図1Dに示すように、採取した皮質骨片CB1の各掘削孔Hに、支持柱体41の挿入部41bを挿入する。このようにして、三脚テーブル状の骨増生用構造体42に組み立てる。なお、皮質骨片CB1を採取できなかった場合には、支持柱体41と同じ材質からなり、掘削孔Hが形成された、人工的に製造された天板を準備し、支持柱体41を挿入する。このような場合、図示のように人工的に製造された天板の形状は平板状に限定されるものではなく、周囲歯槽骨の形状に合わせて山型などにしてもよい。
【0045】
そして、図1Eに示すように、骨増生用構造体42を構成する支持柱体41の挿入部41bを海綿骨SBの掘削孔Hに挿入する。ここで、海綿骨SBおよび採取した皮質骨片CB1の掘削孔Hは、案内具20により、所定の位置に穿設されているので、スムーズに骨増生用構造体42を、海綿骨SBの掘削孔Hに挿入することができる。このようにして、海綿骨SBの穿設した掘削孔Hに3本の支持柱体41を挿入して立設すると共に、3本の支持柱体に支持されるように天板を載置することができる。
【0046】
次に、図1Fに示すように、様々の細胞や骨再生を促進しうる周知の材料の骨再生促進混合物Rを、骨増生用構造体42と海綿骨SBとの間、およびその周囲に充填する。なお、この骨再生促進混合物の材料としては、たとえば、細胞外基質を産生・貯蓄し、骨や骨に類似した構造を有する支持体を構成し得るあらゆる細胞(例えば間葉系幹細胞、脂肪組織由来幹細胞、骨芽細胞、軟骨細胞など)、HAやβ−TCPといった、再生医療に利用される鋳型となり得るあらゆる材料、また創傷治癒を促進させると考えられる増殖因子をはじめとするあらゆる液性因子、またそれらを有したり放出したりする材料(PRP〔多血小板血漿〕など)が挙げられる。具体的には間葉系幹細胞とPRP、脂肪組織由来幹細胞を播種したHAやβ−TCPの混合物、などの組み合わせを挙げることができる。最後に、図1Gに示すように、剥離した歯肉Mで歯槽骨を覆い、骨増生は完了する。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0048】
例えば、本実施形態では、1本の歯の欠損を想定して、3本の支持柱体と、この支持柱体に合わせて案内具にガイドホールを3つ設けたが、複数の歯の欠損などの骨の増生させたい範囲に応じて、アーム部の長さ及び、アーム部及びガイド部の個数を選定すればよく、アーム部及びガイド部の個数は、この数に限定されるものではない。
【0049】
また、本実施形態では、支持柱体は、円柱状であったが、天板を支持することができるのであれば、多角柱状であってもよく、その形状は円柱状に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本実施形態では、歯の歯槽骨の増生を行ったが、その他の骨に対しても同じように、骨を増生することが可能であり、整形手術においても利用が可能である。
【符号の説明】
【0051】
10A、10B:皮質骨除去具、11:回転シャフト、11a:接続部、12:刳り貫き部、12a:刃、13:研削部、20:案内具、21:中央部、22:アーム部、23:ガイド部、23a:ガイドホール、23b:端面、30:掘削具、31:回転シャフト、31a:接続部、32:掘削部、33:ストッパ、41:支持柱体、41a:本体部、41b:挿入部、42:骨増生用構造体、50:タービンヘッド、CB:皮質骨、CB1:皮質骨片、H:掘削孔、M:歯肉、P:歯が欠損した部位、SB:海綿骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮質骨を除去して海綿骨を露出させ、該露出した海綿骨の一部の表面に複数の掘削孔を穿設し、該穿設した掘削孔に支持柱体を挿入して立設すると共に複数の前記支持柱体に支持されるように天板を載置することにより、骨を増生させるための骨増生治具であって、該骨増生治具は、前記露出した海綿骨に掘削孔を穿設する掘削具と、前記海綿骨の複数の所定位置に前記掘削孔を穿設すべく、前記掘削具を案内する複数のガイドホールが形成された案内具と、を少なくとも備えることを特徴とする骨増生治具。
【請求項2】
前記案内具は、該案内具の中央から放射状に延在した複数のアーム部と、該アーム部の先端に前記ガイドホールが形成されたガイド部と、を少なくとも備えることを特徴とする請求項1に記載の骨増生治具。
【請求項3】
前記海綿骨を露出すべく、前記皮質骨を除去する皮質骨除去具をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の骨増生治具。
【請求項4】
前記皮質骨除去具は、前記皮質骨を刳り貫くための刳り貫き部を備えることを特徴とする請求項3に記載の骨増生治具。
【請求項5】
前記皮質骨除去具は、前記皮質骨を削り取る研削部を備えることを特徴とする請求項3に記載の骨増生治具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの骨増生治具により穿設された掘削孔に挿入する前記支持柱体を備えることを特徴とする骨増生用キット。
【請求項7】
前記海綿骨に挿入される前記複数の前記支持柱体に支持される天板をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の骨増生用キット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−167156(P2010−167156A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13571(P2009−13571)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(500557048)学校法人日本医科大学 (20)
【Fターム(参考)】