説明

骨形態形成タンパク質(BMP)2A及びその使用

本発明は、新規の薬学的組成物を提供する。該組成物は、幾つかの態様において、オリゴヌクレオチドを含み、神経変性疾患の治療に及びダメージをうけた神経組織および神経変性疾患と関連する症状の減少に使用しえる。前記疾患の治療のための方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、特に中枢神経系の虚血および神経毒性イベントの治療の分野に関する。
【発明の背景】
【0002】
脳の虚血
外傷(trauma)および脳卒中(stroke)などの脳損傷(Brain injury)は、西欧社会における死亡率および能力障害(disability)の主要な原因である。
【0003】
外傷性脳損傷(TBI;Traumatic brain injury)は、現代社会における入院および能力障害に関する最も重大な原因の1つである。臨床上の経験から次の事項が示唆されている、その事項とは、TBIを、損傷直後に発生する一次的なダメージ、そして損傷後数日間に発生する二次的なダメージに分類し得ることである。TBIの現行の療法は、外科又は他の主に対症なもの(symptomatic)である。
【0004】
脳血管疾患は、人生の中期および後期に優勢に発生する。それらが原因で各年米国で約200,000が死亡し、同様に相当数の神経的な能力障害の原因となっている。脳卒中の発生率は、年齢と共に増加し、多くの老人に影響する(人口において急速に増加しているセグメント)。これらの疾患は、虚血梗塞(ischemia-infarction)または頭蓋内出血(intracranial hemorrhage)の原因である。
【0005】
脳卒中は、血液供給の中断によって生じる急性の神経損傷であり、脳の発作(insult)を生じる。大抵の脳血管疾患は、焦点性の神経欠陥(focal neurologic deficit)の突然の発症として呈される。前記欠陥は固定されて残るか(remain fixed)、或いは、それは改善するか又は進行的に悪化し、虚血病巣(ischemic focus)のコアで不可逆性の神経ダメージに至るであろう。他方で、境界域(penumbra)における神経的な機能不全は、治療可能および/または可逆性であろう。虚血の期間が長期化することによって、明らか(frank)な組織のネグローシスを生じる。脳浮腫(Cerebral edema)が、次の2から4日に続いて生じ、そして進行する。梗塞の領域が大きい場合、浮腫は顕著な質量効果(mass effect)を全てのそれに付随する結果と共に生じるだろう。
【0006】
神経保護薬(Neuroprotective drug)が、境界域のニーロンを死からレスキューさせる試験において開発されている、しかし、今のところ有効であると証明されたものはない。
【0007】
ニューロン組織に対するダメージによって、重篤な能力障害および死へと至る可能性がある。ダメージの程度は、位置および傷害された組織の範囲によって主に影響される。急性発作への応答において活性化される内在性のカスケードが、機能の転帰(outcome)に影響する。最小化させる努力として、ダメージの限定(limit)および/または逆転(reverse)が、臨床転帰を緩和させることに大きな潜在力を有している。
【0008】
BMP2A
骨形態形成タンパク質(Bone morphogenic protein)は、BMP I/IIヘテロ二量体レセプターと結合し、SMADおよびNF-カッパb経路を活性化することに作用しえる。NF-カッパBのTGFベータ活性化キナーゼ (TAK1)を介した活性化は、プロアポトーシス シグナル(proapoptotic signal)を供給する〔Kimura N, Matsuo R, Shibuya H, Nakashima K, Taga T: BMP2-induced apoptosis is mediated by activation of the TAK1-p38 kinase pathway that is negatively regulated by Smad6. J Biol Chem. 2000 Jun 9;275(23):17647-52〕。BMPがPKC依存性の経路を介してアポトーシスを誘導するとの証拠も存在する〔Hay E, Lemonnier J, Fromigue O, Marie PJ: Bone morphogenetic protein-2 promotes osteoblast apoptosis through a Smad-independent, protein kinase C-dependent signaling pathway. J Biol Chem. 2001 Aug 3;276(31):29028-36.〕。BMP-2は、脳の発生の異なる段階で重要な役割を担っている〔Stull ND, Jung JW, Iacovitti L: Induction of a dopaminergic phenotype in cultured striatal neurons by bone morphogenetic proteins. Brain Res Dev. 2001 Sep 23;130(1):91-8; Gratacos E, Checa N, Alberch J: Bone morphogenetic protein-2, but not bone morphogenetic protein-7, promotes dendritic growth and calbindin phenotype in cultured rat striatal neurons. Neuroscience. 2001;104(3):783-90; Nakashima K, Takizawa T, Ochiai W, Yanagisawa M, Hisatsune T, Nakafuku M, Miyazono K, Kishimoto T, Kageyama R, Taga T: BMP2-mediated alteration in the developmental pathway of fetal mouse brain cells from neurogenesis to astrocytogenesis. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 May 8;98(10):5868-73.〕。一次ヒト頭蓋冠骨芽細胞(primary human calvaria osteoblasts)において&不死化されたヒト新生児頭蓋冠骨芽細胞において、BMP2Aはアポトーシスを促進する。BMP2アポトーシスの作用に関連する機構の研究は、BMP2AがBax/Bcl-2比を増加させることを示している。そのうえ、BMP2Aは、ミトコンドリアのチトクロムCのサイトゾルへの放出を増加させる。加えて、これらの発見と矛盾することなく、BMP2Aはカスパーゼ-9&カスパーゼ-3、-6&-7活性を増加させる。BMP2Aのプロアポトーシス効果は、PKC依存的である。
【0009】
WO 2002022871は、新規のヒト骨形態形成タンパク質2が、骨粗鬆症(osteoporosis)の治療、診断、又は臨床経過の予測に有用であることを開示する。
【0010】
US 6245889は、新規の精製された骨形態形成タンパク質-4が、骨(bone)の治療(例えば、骨粗鬆症)または軟骨欠陥(cartilage defect)に、骨および/または軟骨の形成の誘導に、同様に、創傷治癒(wound healing)および関連する組織の修復(repair)に有用であることを開示する。
【0011】
US 6150328は、骨および/または軟骨形成を誘導するための方法を開示している;該方法は、創傷治癒および組織修復のために、BMPをコードしているDNAで形質転換した細胞を培養することによって産生された、精製された骨形態形成タンパク質を投与することを含む。
【0012】
WO 2000017360は、新規の変異型のシスチンノット(cystine knot)成長因子タンパク質に関し、これは1以上の変異サブユニットを具備し、疾患(例えば、甲状腺機能低下症および甲状腺癌)の治療および予防に有用である。
【0013】
US 5618924は、骨および軟骨欠陥などを治療するための、タンパク質 BMP-2AおよびBMP-2Bを開示する。
【0014】
US 5631142は、創傷治癒および組織修復において骨または軟骨産生を誘導するために有用な、ヒト骨形態形成タンパク質2Aまたは2Bの細胞培養における製造を提供する。
【0015】
WO 9309229は、骨欠陥(bone defects)の治療、骨損傷の治癒および創傷治癒に有用な、組換え型のヘテロ-二量体のBMPタンパク質に関する。
【0016】
US 5166058は、骨または軟骨形成および創傷治癒を誘導させるためのBMP-2AおよびBMP-2Bを産生させることに使用される、骨誘導性タンパク質(osteo-inductive proteins)をコード化しているDNAを提供する。
【0017】
US 5013649は、骨および軟骨の再形成の刺激(例えば、創傷治癒および組織修復)に有用な、骨誘導性タンパク質をコード化している新しいDNA配列を開示する。
【0018】
WO 9403600は、哺乳類中の組織の再生および組織障害を診断するための、形態形成タンパク質可溶性複合体(a morphogenic protein soluble complex)に関する。
【0019】
WO 2001053486は、良性または悪性の腫瘍、白血病、およびリンパ球悪性腫瘍(lymphoid malignancies)、炎症性の、血管原性の、および免疫性の障害の治療に有用な、PROポリペプチドをコード化している35核酸を提供する。
【0020】
US 5863758は、マトリックスにインプラントされた際に軟骨および骨形成を誘導することができる、骨欠陥を修復するために有用な、プレプロ形態(prepro form)の哺乳類の骨原性タンパク質(osteogenic proteins)をコード化している核酸を開示する。
【0021】
US 5958441は、遊走性前駆細胞(migratory progenitor cells)の流入(influx)、増殖、および分化を許容する、哺乳類のためのインプラント(Implant)を提供し、これは哺乳類における軟骨内骨形成(endochondral bone formation)を誘導するために有用である。
【0022】
US 5714589は、混合物からの骨原性タンパク質の抽出を記載しており、二量体の骨原性タンパク質(s)のサブユニット(s)として有用な新規のポリペプチド鎖に特異的な抗体を用いている。
【0023】
US 5468845は、骨原性タンパク質結合特異性を有する抗体に関し、これは骨原性タンパク質の精製に使用される(および抗原タンパク質として)。
【0024】
US 5266683は、マトリックスに関連した際に、軟骨および軟骨内骨形成を誘導する新しい純粋な哺乳類の骨原性タンパク質を開示する。
【0025】
WO 8800205は骨形態形成タンパク質を開示しており、これは組換えDNAを用いて取得(obtd.)され、そして軟骨および骨形成(cartilage and bone formation)に使用される;並びに。
【0026】
US 5354557は、骨生成(osteogenesis)を誘導するためのインプラント可能(implantable)な装置に関し、これは非グリコシル化型の二量体でジスルフィド連結した骨原性タンパク質を含有している多孔性マトリックスを具備する。
【0027】
上記の文献は、BMP2の神経毒性イベントに関連する役割を又は神経変性疾患(例えば、とりわけ脳卒中)の診断もしくは治療、及び疑いなくBMP2Aのこれらの疾患に関連する役割を開示していない。
【発明の概要】
【0028】
本発明は、組織外傷による結果であろうと、慢性または急性の変性変化(degenerative changes)によるものであろうと、ダメージをうけたニューロン組織と関連する症状または徴候(signs)を緩和(alleviation)または減少させるための、組成物および方法を提供する。
【0029】
特に、本発明の幾つかの態様は、活性成分としてBMP2Aインヒビターを含み、さらに薬学的に許容される希釈剤または担体を含む1以上の薬学的組成物を提供する。
【0030】
付加的な態様は、中枢神経系に対して損傷を受けた患者において中枢神経系へのダメージを減少させるための方法を提供する;該方法は、前記患者に薬学的組成物を前記ダメージを減少させるために十分な用量で投与することを含む。なお別の態様は、中枢神経系に対して損傷を受けた患者において回復(recovery)を促進する又は増強するための医薬の調製における、BMP2Aインヒビターの使用を提供する。本発明の幾つかの態様による好ましいインヒビターは、siRNA分子および中和抗体である。
【0031】
付加的な態様は、アポトーシスを変調する化学物質(chemical compound)を同定するための方法を提供する。
【0032】
さらに、被験者における神経変性疾患(neurodegenrative disease)または虚血性イベントを診断するためのプロセス(process)が提供される。
【0033】
以下に記載される好適な方法、材料(materials)および例は、単なる例示であり、限定されることを意図していない;本明細書中に記載されるものと類似する又は均等な材料および方法を、本発明の実施(practice)に又は試験に使用することができる。本発明の他の特性(features)および利点(advantages)は、以下の詳細な記載から及び請求項から明らかである。
【発明の詳細な記載】
【0034】
本発明は、その態様の幾つかにおいて、組織外傷による結果であろうと、急性または慢性の変性変化(degenerative changes)によるものであろうと、ダメージをうけたニューロン組織と関連する症状または徴候(signs)を緩和(alleviation)または減少させるための、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、小分子(small molecules)、組成物および方法を提供する。本発明の特定の側面は、組織ダメージまたは変性を減少させる又は更に完全に縮小(even completely diminish)させる薬学的組成物を提供する。付加的な側面において、本発明は、外傷性の虚血性イベント後に機能的な改善へと至らせる方法を提供する。これらの効果は、BMP2Aの生物活性またはBMP2Aの発現を阻害する薬剤を投与することによって達成される。
【0035】
本発明の発明者は、BMP2Aの発現が過酸化水素により誘導されるアポトーシス(これは酸化的ストレスにより生じる)に関与すること、及びアンチセンス BMP2A RNAが細胞をこのアポトーシスから保護したことを発見した。
【0036】
理論に拘泥することなく、出願人は次の事項を提案する、その事項とは、BMP2Aインヒビターが、虚血性イベントの間に生じるニューロンの神経毒性-ストレス誘発性アポトーシス(neurotoxic-stress induced apoptosis)を予防することが可能であり、それゆえ前記虚血性イベントにより生じるダメージを予防することに寄与することである。
【0037】
「アポトーシス」の用語は、組み込まれた細胞死プログラムの遂行と具体的(particularly)に規定される;これによって、膜結合粒子へのクロマチン断片化、細胞の細胞骨格および膜構造における変化、及び引続いて他の細胞によるアポトーシス細胞のファゴサイトーシスが生じる。しかしながら、本明細書中に使用されるように、次のように理解すべきである;つまり、細胞死が上記のアポトーシスのプロセスに厳密(strictly)であるかどうかにかかわらず、本用語はニューロンの細胞死をより広く包含すると解釈される。
【0038】
本明細書中に使用される「BMP2A」の用語は、任意の生物体、好ましくはヒト(man)に由来する、BMP2A遺伝子の発現されたポリペプチド及びそのホモログ(マウスのホモログを含む)及び類似する生物活性を有している断片を意味する。また、当該技術分野において既知の高度に厳密なハイブリダイゼーション条件下(例えば、 Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1988), updated in 1995 and 1998)で、BMP2A遺伝子に結合する核酸配列によりコード化されるポリペプチドも、本用語に包含される。BMP2AのcDNA配列およびアミノ酸配列は、図1および2にそれぞれ記載されている。BMP2Aの特定断片には、図2に示される配列のアミノ酸1〜50, 51〜100, 101〜150, 151〜200, 201〜250, 251〜300, 301〜350 および 351〜396が含まれる。BMP2Aのさらなる特定断片には、図2に示される配列のアミノ酸25〜74, 75〜124, 125〜174, 175〜224, 225〜274, 275〜324, 325〜374 および 375〜396が含まれる。
【0039】
BMP2Aの用語は本明細書において最も使用されるが、全ての例示的な態様に関して、BMPタンパク質ファミリーの他のメンバーが、前記BMPファミリータンパク質が本明細書に記載のBMP2A生物活性を所有するかぎり、BMP2Aを効率的に置換すること、或いはBMP2Aに関連して(in conjunction with)又は加えて作用することが可能であると理解されるべきである。
【0040】
「BMP2Aの生物学的効果(biological effect of BMP2A)」または「BMP2A生物学的効果(BMP2A biological activity)」は、アポトーシスにおけるBMP2Aの効果を意味し、また本願発明で「BMP2A誘発性アポトーシス(BMP2A-induced apoptosis)」とも称され、直接的又は間接的なものであってもよく、理論に拘泥することなく、神経毒性ストレスによって誘発されるアポトーシスにおけるBMP2Aの効果を含む。間接的な効果には、アポトーシスを生じるシグナル伝達カスケードに関与する、幾つかの分子の1つに結合する又はそれに効果を有しているBMP2Aを含む;しかし、これに限定されない。
【0041】
「BMP2Aインヒビター(BMP2A inhibitor)」は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体であろうと、又は小化学物質(small chemical compound)であろうと、上記で説明されたとおりのBMP2Aの生物学的効果を予防する又は減少させる任意の分子を意味する。また、BMP2Aインヒビターは、BMP2Aプロモーターの又はBMP2A転写/翻訳のインヒビターであってもよい(例えば、とりわけ、アンチセンスRNA分子、siRNA、ドミナントネガティブペプチド)。
【0042】
本発明の1側面は、活性成分としてBMP2Aインヒビターを治療的に効果的な量で含む薬学的組成物を提供し、これは小化学物質;ポリヌクレオチド、例えば、図1(配列番号1)に記載の配列に対するアンチセンス配列である配列を有している、自由選択で配列番号46〜66)に記載の配列を有している、連続的なヌクレオチドを具備しているアンチセンスポリヌクレオチド、又は小さな干渉性RNA(siRNA)として機能する、自由選択で配列番号3〜45に記載の配列を有している、オリゴヌクレオチド;これらのポリヌクレオチドの任意を具備しているベクター(好ましくは、発現ベクター)、並びにポリペプチド、例えば、とりわけ、Sclerostin(Kusu et al., Sclerostin is a novel secreted osteoclast-derived bone morphogenetic protein (BMP) antagonist with unique ligand specificity, JBC, 2003)、ドミナントネガティブなペプチド、または抗体(自由選択でポリクローナルまたはモノクローナル抗体、好ましくは中和抗体)であってもよい。薬学的組成物は、さらに希釈剤または担体を含有してもよい。
【0043】
「化学物質(chemical compound)」、「小分子(small molecule)」、「化学分子(chemical molecule)」、「小化学分子(small chemical molecule)」、および「小化学物質(small chemical compound)」の用語は、本明細書中で互換的に使用され、合成によって製造されえる又は天然の供給源から取得されえる、典型的には2000ダルトン未満、より好ましくは1000ダルトン未満または更に600ダルトン未満の分子量を有する、任意の特定のタイプの化学成分(chemical moieties)を意味すると理解される。
【0044】
「ポリヌクレオチド」の用語は、DNAヌクレオチド、RNAヌクレオチド又は両方のタイプの組み合わせから構成される任意の分子を意味し、即ち、それは2以上の塩基、とりわけグアニジン、シトシン、チミジン、アデニン、ウラシル、またはイノシンを含む。ポリヌクレオチドは、天然のヌクレオチド、化学的に修飾されたヌクレオチドおよび合成ヌクレオチド、又はその化学的なアナログを含みえる。前記用語は、「オリゴヌクレオチド」を含み、「核酸」を包含する。
【0045】
「アンチセンス(antisense)」(AS)または「アンチセンス断片」の用語は、阻害性のアンチセンス活性を有している核酸断片を意味し、該活性は、対応する遺伝子(このケースではBMP2A)の内在性ゲノムコピー(endogenous genomic copy)の発現の減少を生じる。ASの配列は、所望の標的mRNAに相補(complement)する及びRNA:AS二本鎖を形成するために設計される。この二重鎖形成(duplex formation)は、関連性のあるmRNAのプロセシング、スプライシング、輸送または翻訳を阻止することができる。そのうえ、特定のASヌクレオチド配列は、それらの標的mRNAとハイブリダイズする際、細胞のRNaseH活性を惹起することができ、これによってmRNA分解を生じる(Calabretta et al, 1996: Antisense strategies in the treatment of leukemias. Semin Oncol. 23(1):78-87)。このケースにおいて、RNase Hは、二本鎖のRNAコンポーネントを切断し、前記ASを潜在的に放出して、前記標的RNAの付加的な分子とさらにハイブリダイズすることができる。付加的な作用様式は、ASとゲノムDNAとが相互作用して、転写的に不活性となる三重ラセン体を形成することから生じる。本発明のAS断片は、自由選択で図3に示される配列又はその相同的な配列を有する。特定のAS断片は、上記のBMP2Aの特定断片をコード化しているDNAのASである。AS断片の送達に関しては、例8を参照されたい。
【0046】
「小さな干渉性RNA(small interfering RNA)」(siRNA)は、遺伝子/その内在性の又は細胞の対応物のmRNAの発現を減少させる又は抑制(阻止)するRNA分子を意味する。本発明の文脈において、BMP2A siRNAは、BMP2A遺伝子の発現をダウンレギュレートするsiRNAである。前記用語は、「RNA干渉(RNA interference)」(RNAi)および「二本鎖(double-stranded RNA)」(dsRNA)を包含すると理解される。更に、前記用語は、多彩(a wide array of)な可能な修飾(例えば、本明細書に記載されるもの)によって修飾された塩基を含有する、siRNA分子を含むと理解される。これらの用語および提唱された機構の最近の情報に関しては、文献〔 Bernstein E., Denli AM., Hannon GJ: The rest is silence. RNA. 2001 Nov;7(11):1509-21; Nishikura K.: A short primer on RNAi: RNA-directed RNA polymerase acts as a key catalyst. Cell. 2001 Nov 16;107(4):415-8; and PCT publication WO 01/36646 (Glover et al)〕を参照されたい。
【0047】
本発明のsiRNAsの一般的な仕様
一般に、本発明に使用されるsiRNAsは二本鎖構造を具備しているリボ核酸を具備し、前記二本鎖構造は第1鎖および第2鎖を具備し、前記第1鎖は近接ヌクレオチド(contiguous nucleotides)の第1ストレッチ(first stretch)を具備し、そして、該第1ストレッチは標的核酸と少なくとも部分的に相補的(complementary)であり、前記第2鎖は近接ヌクレオチドの第2ストレッチ(second stretch)を具備し、そして、該第2ストレッチは標的核酸と少なくとも部分的に同一(identical)であり、前記第1鎖および/または前記第2鎖は2'-ポジションに修飾を有している複数グループの修飾ヌクレオチドを具備し、鎖内で各グループの修飾ヌクレオチドは1または双方の側をフランキンググループ(a flanking group)のヌクレオチドによって挟まれ(flanked)、前記フランキンググループのヌクレオチドを形成しているフランキングヌクレオチドは無修飾ヌクレオチド又は前記修飾ヌクレオチドの修飾とは異なる修飾を有しているヌクレオチドの何れかである。更に、前記第1鎖および/または前記第2鎖は、前記複数の修飾ヌクレオチドを具備しえる及び前記複数グループの修飾ヌクレオチドを具備しえる。
【0048】
前記グループの修飾ヌクレオチドおよび/またはグループのフランキングヌクレオチドは、幾つかのヌクレオチドを具備してもよく、その数は1ヌクレオチドから10ヌクレオチドを具備しているグループから選択される。本明細書において特定された任意の範囲に関連して、次の事項が理解される、その事項とは、各範囲が、前記の範囲を規定している前記の2つの数字(figures)を含んでいる範囲を規定するために使用される、夫々の数字の間の任意の個々の整数(integer)を開示することである。このケースにおいて、前記グループは、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、および10ヌクレオチドを具備する。
【0049】
前記第1鎖の修飾ヌクレオチドのパターンは、前記第2鎖の修飾ヌクレオチドのパターンと同じであり、そして前記第2鎖のパターンと整列(align)しうる。さらに、前記第1鎖のパターンは、前記第2鎖のパターンと、相対的(relative to)に1以上のヌクレオチドによってシフトしてもよい。
【0050】
上記で議論された修飾は、アミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシ、およびアルキルからなる群から選択されてもよい。
【0051】
siRNAの二本鎖構造は、1または双方の側がブラントエンドにされえる。より具体的には、前記二本鎖構造は、前記第1鎖の5'端および前記第2鎖の3'端で規定される、二本鎖構造側でブラントエンドにされてもよい。或いは、前記二本鎖構造は、前記第1鎖の3'端および前記第2鎖の5'端で規定される、二本鎖構造側でブラントエンドにされてもよい。
【0052】
付加的に、2つの鎖の少なくとも1つは、5'端で少なくとも1つヌクレオチドのオーバーハングを有してもよい;前記オーバーハングは、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドからなっていてもよい。また、少なくとも前記鎖の1つは、3'端で少なくとも1つヌクレオチドのオーバーハングを自由選択で有してもよい。
【0053】
siRNAの二本鎖構造の長さは、典型的には約17〜24、より好ましくは18または19塩基である。更に、前記第1鎖の長さおよび/または前記第2鎖の長さは、互いに独立に、約15〜約23塩基、17〜21塩基、および18または19塩基の範囲を具備している群から選択されえる。
【0054】
付加的に、前記第1鎖と前記標的核酸との間の相補性は、完全(perfect)であってもよい。或いは、前記第1鎖と前記標的核酸との間で形成される二重鎖(duplex)は、前記二本鎖構造を形成している前記第1鎖と前記標的核酸との間で1ミスマッチまたは2ミスマッチが存在する、少なくとも 15 ヌクレオチドを具備してもよい。
【0055】
幾つかのケースにおいて、前記第1鎖および前記第2鎖の双方は、少なくとも1グループの修飾ヌクレオチドと少なくとも1フランキンググループのヌクレオチドを各々具備し;各グループの修飾ヌクレオチドは、少なくとも1ヌクレオチドを具備し;少なくとも1ヌクレオチドを具備し、前記第1鎖の各グループの修飾ヌクレオチドを伴っている、各フランキンググループのヌクレオチドは、前記第2鎖上のフランキンググループのヌクレオチドと整列され;前記第1鎖の最も端の5'ヌクレオチドは、前記グループの修飾ヌクレオチドのヌクレオチドであり、前記第2鎖の最も端の3'ヌクレオチドは、前記フランキンググループのヌクレオチドのヌクレオチドである。各グループの修飾ヌクレオチドは、単一ヌクレオチド(a single nucleotide)からなってもよく、および/または、各フランキンググループのヌクレオチドは、単一ヌクレオチドからなってもよい。
【0056】
更に、次の事項が可能である;その事項とは、第1鎖でフランキンググループのヌクレオチドを形成しているヌクレオチドが、非修飾ヌクレオチドであり、これが前記グループの修飾ヌクレオチドを形成しているヌクレオチドと比較して3'方向に配置されること、並びに、第2鎖で前記グループの修飾ヌクレオチドを形成しているヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドであり、これが前記フランキンググループのヌクレオチドを形成しているヌクレオチドと比較して5'方向に配置されることである。
【0057】
更に、siRNAの第1鎖は、8〜12、好ましくは、9〜11のグループの修飾ヌクレオチドを具備してもよい;また、第2鎖は、7〜11、好ましくは、8〜10のグループの修飾ヌクレオチドを具備してもよい。
【0058】
第1鎖および第2鎖をループ構造で連結しえる、これは非核酸ポリマー(例えば、とりわけ、ポリエチレングリコール)から構成されてもよい。代わりに、ループ構造は、核酸から構成されてもよい。
【0059】
さらに、siRNAの第1鎖の5'端(5'-terminus)は、第2鎖の3'端に連結されえる。或いは、第1鎖の3'端は、第2鎖の5'端に連結されえる。
本発明のsiRNAsの特別な仕様
特に、本発明に使用されるsiRNAsは、1鎖が5’から3’に配列番号3〜24に記載される配列を有している連続的なヌクレオチド(これらはセンス鎖である)(ここで複数の塩基が修飾されてもよく、好ましくは2-O-メチル修飾される)、又はそのホモログ〔ここで各端領域で前記ヌクレオチドの2つのヌクレオチドまでにおいて、1塩基(a base)が変更される〕を具備するオリゴリボヌクレオチドである。
【0060】
前記オリゴヌクレオチドの末端領域は、19-mer配列において、塩基1〜4および/または16〜19を意味する。
【0061】
さらに、本発明に使用されるsiRNAsは、1鎖が5’から3’に配列番号25〜45に記載される配列を有している連続的なヌクレオチド(アンチセンス鎖)又は各端領域で前記ヌクレオチドの2つまでにおいて1塩基(a base)が変更されたそのホモログを具備するオリゴリボヌクレオチドである。
【0062】
従って、特定の側面において、前記オリゴヌクレオチドは二本鎖構造を具備する;係る二本鎖構造は第1鎖および第2鎖を具備する;前記第1鎖は近接ヌクレオチドの第1ストレッチを具備し、前記第2鎖は近接ヌクレオチドの第2ストレッチを具備する;前記第1ストレッチは遺伝子BMP2Aをコード化している核酸配列と相補的であるか又は同一であるかの何れかであり、前記第2ストレッチはBMP2Aをコード化している核酸配列と同一であるか又は相補的であるかの何れかである。前記第1ストレッチは、少なくとも 14 ヌクレオチド、好ましくは 少なくとも 18 ヌクレオチド、及びなおより好ましくは 19 ヌクレオチド又は少なくとも 21 ヌクレオチド同等を具備する。特定の態様において、前記第1ストレッチは、約14〜40ヌクレオチド、好ましくは約18〜30ヌクレオチド、より好ましくは約19〜27ヌクレオチドおよび最も好ましくは約19〜23ヌクレオチドを具備する。特定の態様において、前記第2ストレッチは、約14〜40ヌクレオチド、好ましくは約18〜30ヌクレオチド、より好ましくは約19〜27ヌクレオチドおよび最も好ましくは約19〜23ヌクレオチド又は約19〜21ヌクレオチド同等を具備する。特定の態様において、前記第1ストレッチの第1ヌクレオチドはBMP2Aをコード化している核酸配列のヌクレオチドに対応(corresponds)し、前記第1ストレッチの最後のヌクレオチドはBMP2Aをコード化している核酸配列のヌクレオチドに対応する。特定の態様において、前記第1ストレッチは、少なくとも14の近接ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドの配列を具備し、係るオリゴヌクレオチドは、配列番号3〜45を含む群から、好ましくは表1の任意のシリアルナンバー1〜2, 4〜6, 14〜16および18〜22の配列を有しているオリゴリボヌクレオチドを含む群から選択される。本発明に使用されるsiRNA分子の付加的な仕様は、ジヌクレオチドdTdTが3’端に共有結合性に結合する、および/または少なくとも1ヌクレオチドにおいて、糖残基がおそらく(possibly)2’-O-メチル修飾を含む修飾で修飾されるオリゴリボヌクレオチドを提供しえる。さらに、2’ OH基は、-H-OCH3, -OCH2CH3, -OCH2CH2 CH3, -NH2, および
-Fを含む群から選択される基または成分(moiety)で置換されてもよい。
【0063】
更に、本発明に使用されるsiRNAsは、ヌクレオチドを変更することにおいて修飾糖が両鎖に配置される、オリゴリボヌクレオチドであってもよい。特に、前記オリゴリボヌクレオチドは、センス鎖の1つを具備してもよい(ここで前記糖は端の5’および3’ヌクレオチドが非修飾である)、又はアンチセンス鎖の1つを具備してもよい(ここで前記糖は端の5’および3’ヌクレオチドが修飾される)。
【0064】
さらに、本発明に使用される更なる核酸は、配列番号3〜45の任意の1つの、少なくとも14近接ヌクレオチド、より好ましくは14近接ヌクレオチド塩基対を上記の第1ストレッチおよび第2ストレッチから構成される二本鎖構造の任意の端に具備する。当業者によって次の事項が理解されるだろう、その事項とは、本発明による核酸の及び特に本発明による係る核酸を形成している個々のストレッチの潜在的な長さによって、配列番号1に詳細に記載されるBMP2A遺伝子のコード配列と比較して、幾つかのシフト(some shifts)が各側に対して可能であること、これによってこのように作出された二本鎖分子も本発明の範囲内であろうことである。siRNAsの調製における情報は、例3に記載されている。
【0065】
本発明のsiRNAsと関連して、幾つかの態様および方法が提供される。一態様は、二本鎖オリゴヌクレオチド(好ましくは、オリゴリボヌクレオチド)を提供する;ここで1鎖は、5’から3’に配列番号3〜24に記載された配列を有している連続的なヌクレオチド又は各端領域で前記ヌクレオチドの2つまでにおいて1塩基(a base)が変更されたそのホモログを具備する。さらに、二本鎖オリゴヌクレオチド(好ましくは、オリゴリボヌクレオチド)であって、1鎖が5’から3’に配列番号25〜45に記載される配列を有している連続的なヌクレオチド又は各端領域で前記ヌクレオチドの2つまでにおいて1塩基(a base)が変更されたそのホモログを具備するものが提供され、任意のこれらのオリゴヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチドを具備しているベクター(好ましくは、発現ベクター)として提供される。
【0066】
前記二本鎖のオリゴヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドは、本願発明において開示される様々なコンディションの治療のための(特に神経変性疾患の治療のための)医薬の調製に使用しえる。これらのオリゴヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチドを含む薬学的組成物も、本発明の一部である。
【0067】
更に提供される発明は、被験者の神経変性疾患(例えば、脳卒中)を治療する方法を提供し、該方法は、前記被験者を治療するために、前記被験者に治療上効果的な量のBMP2Aインヒビターを含んでいる薬学的組成物を投与することを備える。前記薬学的組成物は、BMP2A siRNA(例えば、上記の任意の二本鎖のオリゴリボヌクレオチド)であるオリゴリボヌクレオチド、又は遺伝子BMP2Aの発現をコントロールと比較して少なくとも50%までダウンレギュレートするオリゴリボヌクレオチドを含みえる。特に、前記siRNAは、表1に記載される配列(ID番号1〜2, 4〜6, 14〜16 および 18〜22)を有しえる。薬学的組成物は、さらに薬学的に許容される担体を含みえる。
【0068】
「発現ベクター」の用語は、外来細胞中で異種性のDNA断片を取込む及び発現する能力を有するベクターを意味する。多くの原核生物性および真核生物性の発現ベクターが、既知であるおよび/または商業的に利用可能である。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0069】
「ポリペプチド」は、アミノ酸から構成される分子を意味する。また、該用語には、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびペプチドミメティックス(peptidomimetics)が含まれる。
【0070】
ペプチドミメティックスは、天然の親ペプチド(natural parent peptide)の生物学的作用を模倣する能力を有する非ペプチド性の構造要素(non-peptidic structural elements)を含有している化合物である。酵素的に切断されるペプチド結合(enzymatically scissille peptidic bonds)などの古典的なペプチド特性は、ペプチドミメティックスに通常は存在しない。
【0071】
「アミノ酸」の用語は、20の天然のアミノ酸、化学的に修飾されたアミノ酸(以下を参照されたい)、または合成アミノ酸の何れか1つからなる分子を意味する。
【0072】
「ドミナントネガティブペプチド(dominant negative peptide)」の用語は、完全なタンパク質(full protein)と相互作用し、その活性を阻害することができる又は他のタンパク質と相互作用し、完全なタンパク質との反応において、それらの活性を阻害することができる、タンパク質の一部をコード化するcDNA断片によってコード化されるポリペプチドを意味する。
【0073】
「抗体」の用語は、とりわけIgG, IgM, IgD, IgA, および IgE 抗体を意味する。前記規定は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を含む。この用語は、抗GPCRV産物抗体の抗原結合ドメインを含んでいる抗体の抗体全体または断片を意味しており、例えば、Fc部分を欠いた抗体、単鎖抗体、基本的に可変のみからなる断片、前記抗体の抗原結合ドメインなどである。また、「抗体」の用語は、cDNAワクチン接種によって得られた核酸配列に対する抗体を意味する。
【0074】
また、前記用語は特定の抗体断片をも包含する;該抗体断片は、それらの抗原またはレセプターと選択的に結合する能力を維持し、とりわけ以下に例示されるものである、即ち:
(1) Fab, 抗体分子の一価の抗原結合断片を含有する断片であって、抗体全体を酵素パパインで消化して、軽鎖および重鎖の一部を生じることによって産生することができる断片;
(2)(Fab’)2, 抗体全体を酵素ペプシンで処理することによって、引続いて還元することなく取得することができる抗体の断片;F(ab’2)は、2つのジスルフィド結合によって共に支持される2つのFab断片のダイマーである;
(3)Fv, 2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有している遺伝的に設計された断片として規定される;および
(4)単鎖抗体(SCA;Single chain antibody), 適切なポリペプチドリンカーで遺伝的に融合された単鎖分子として連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有している遺伝的に設計された断片として規定される。
【0075】
本発明に使用される「エピトープ」の用語は、抗体が結合する抗原上の抗原決定基を意味する。エピトープ決定基(Epitopic determinants)は、通常ではアミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基(surface groupings)からなり、通常では特異的な3次元構造特性同様に特異的な荷電特性を有している。
【0076】
本発明の一態様において、本願において開示される薬学的組成物の何れか1つが、組織外傷による結果であろうと、慢性の変性変化によるものであろうと、ダメージをうけたニューロン組織と関連する症状または徴候を緩和または減少させるために使用される。本態様は、神経変性疾患を治療する又は中枢神経系に対するダメージを減少させる又は中枢神経系に損傷を受けた患者の回復を促進する方法に関し、該方法は、患者に上記の薬学的組成物の何れか1つを、前記ダメージを減少させるため又は回復を促進するために十分な用量および期間で投与することを備え、これによって患者が治療される。さらに本態様は、中枢神経系に(任意で本願に記載されるコンディションまたは損傷の何れかの結果として)損傷を受けた患者を治療する方法またはプロセスを提供し、該方法またはプロセスは、患者に治療上効果的な量のBMP2Aインヒビター(本願において例示されたような)を含んでいる薬学的組成物を、BMP2Aを阻害するために十分な用量および期間で投与することを備え、これによって患者が治療される。
【0077】
当該技術分野において次の事項が既知である;その事項とは、ある種の神経疾患(例えば、脳虚血または脳卒中)において、血液脳関門(BBB)が正常被験者のものと比較して相対的に解放されており、このため分子の脳への進入が抗体を含む高分子(macromolecules)などの大きな分子でさえも可能であり、これによって該分子とBMP2Aとの相互作用が続いて認容されるだろうことである。脳への送達に関する更なる情報は、以下の例7に提供されている。
【0078】
本発明の一側面において、前記薬学的組成物が減少を意図する又は前記薬学的組成物が回復を促進することを試みる中枢神経系への損傷は、虚血性エピソード(ischemic episode)であり、このエピソードは全体的な又は限局的な大脳エピソードであってもよいが、これに限定されない;前記損傷は、本願発明において議論された脳卒中イベントまたは外傷性脳損傷であってもよい。
【0079】
本発明の別の側面において 、付加的な薬学的に効果的な化合物は、上述の薬学的組成物と共に投与される。
【0080】
「と共に(in conjunction with)」は、付加的な薬学的に効果的な化合物が、インヒビターの投与に対し、事前に、同時に、又は引続いて投与されることを意味する。
【0081】
本発明の付加的な態様において、上記の薬学的組成物の何れか1つが、それを必要とする被験者におけるニューロンの再生を生じさせるために使用される。本発明の本態様は、ニューロンの再生をそれを必要とする患者に生じさせるための方法に関し、該方法は、前記患者に上記の薬学的組成物の何れか1つを、前記ダメージを減少させるため又は回復を促進するために十分な用量および期間で投与することを備える。
【0082】
本発明の薬学的組成物は、ニューロンの変性またはダメージが関与(involved)する又は寄与(implicated)する任意の疾患の治療に適用を有してもよい。これは、例えば、とりわけ次のコンディションである、即ち:高血圧症、高血圧性の脳血管疾患(cerebral vascular disease)、動脈瘤の破裂、血栓または塞栓のケースで発生するような血管の狭窄(constriction)または閉塞(obstruction)、血管腫(angioma)、血液悪液質(blood dyscrasias)、心臓の停止(arrest)または不全(failure)を含む心機能障害(compromised cardiac function)の任意の形態、全身性低血圧、心停止、心原性ショック(cardiogenic shock)、敗血症ショック、脊髄外傷(spinal cord trauma)、頭部外傷(head trauma)、発作(seizure)、腫瘍からの出血;並びに脳卒中、パーキンソン病、てんかん、うつ病(Depression)、ALS、アルツハイマー病、ハンティングトン病および任意の他の疾患誘発性の痴呆(例えば、HIV誘発性の痴呆など)などの疾患である。これらのコンディションは、本願発明において、「神経変性疾患(neurodegenerative diseases)」とも称される。
【0083】
請求される発明の一態様は、中枢神経系に損傷(例えば、とりわけ、虚血性エピソード、脳卒中または外傷性脳損傷)を受けた患者を治療するための医薬を製造するプロセスへの治療上効果的な量のBMP2Aインヒビターの使用を提供する。前記インヒビターは、小化学物質;ポリヌクレオチド、例えば、図1(配列番号1)に記載される配列に対してアンチセンス配列である配列を有している、自由選択で配列番号46〜66に記載の配列を有している、連続的なヌクレオチドを具備しているアンチセンスポリヌクレオチド、又は小さな干渉性RNA(siRNA)として機能する、自由選択で配列番号3〜45に記載の配列を有している、ポリヌクレオチドおよび本願発明において記載される二本鎖構造;これらのポリヌクレオチドの任意を具備しているベクター、並びにポリペプチド、例えば、とりわけSclerostin(上記を参照されたい)、ドミナントネガティブペプチド、または抗体(自由選択でポリクローナルまたはモノクローナル抗体、好ましくは中和抗体)であってもよい。
【0084】
本発明による治療措置(treatment regimen)が、投与様式(administration mode)、投与のタイミング、および用量に関連して実施され、それによって虚血性イベントまたは中枢神経系損傷の有害な帰結(adverse consequences)からの患者の機能的な回復が改善される;即ち、少なくとも1つの患者の運動技能(例えば、姿勢、バランス、握り、または歩調)、認知技能、スピーチ、および/または感覚知覚(視覚的な能力、味覚、嗅覚、および固有受容性感覚を含む)が、本発明にしたがったインヒビター投与の結果として改善される。従って、前記インヒビターは、少なくとも1つのこれらの技能を改善することによって患者の回復を促進する又は増強する。
【0085】
本発明によるBMP2Aインヒビターを具備している薬学的組成物の投与は、任意の既知の投与経路によって実施することができる、これには静脈内、動脈内、皮下、または大脳内(intracerebrally)の投与が含まれる。特殊な製剤を用いることによって、これらを経口的に又は吸入を介して投与することが可能であろう。組成物をそれを必要とする個体に投与するための適切な用量および治療措置は、以下で詳細に議論される。
【0086】
本発明を使用して、任意の様々なコンディションから生じる、中枢神経系損傷の有害な結果を治療することができる。血栓、塞栓、および全身性の低血圧は、大脳の虚血性エピソードの最も一般的な原因である。他の損傷は、高血圧症、高血圧性の脳血管疾患、動脈瘤の破裂、血管腫、血液悪液質、心不全(cardiac failure)、心停止、心原性ショック、敗血症ショック、頭部外傷、脊髄外傷、発作、腫瘍からの出血、または他の失血によって生じえる。
【0087】
虚血が脳卒中と関連する場合、以下に規定される全体的な又は限局的な虚血であってもよい。本発明による薬学的組成物の投与が、たとえ投与を損傷後のかなり後に行っても効果的であることが信じられている。
【0088】
「虚血性エピソード(ischemic episode)」は、組織への血液の供給の欠乏(deficient)に至る任意の状況を意味する。大脳の虚血性エピソードは、脳への血液供給の欠乏から生じる。脊髄(これも中枢神経系の一部である)は、縮小した血流から生じる虚血に同等に感受性である。虚血性エピソードは、高血圧症、高血圧性の脳血管疾患、動脈瘤の破裂、血栓または塞栓のケースで発生するような血管の狭窄または閉塞、血管腫、血液悪液質、心臓の停止または不全を含む心機能障害の任意の形態、全身性低血圧、心停止、心原性ショック、敗血症ショック、脊髄外傷、頭部外傷、発作、腫瘍からの出血、または他の失血によって生じえる。本発明が、機械的な力(例えば、頭部または脊椎への打撃)によって生じる中枢神経系への損傷を治療するために有用であることが期待される。外傷には、組織発作(tissue insult)、例えば、摩耗(abrasion)、切開(incision)、挫傷(contusion)、穿刺、圧迫(compression)、など、頭部、首、または脊柱の任意の部位への又はこれらの付属物への外来物体(foreign object)の外傷性接触から生じえるものが関与し得る。外傷性損傷の他の形態は、液体の不適切な蓄積(例えば、正常な脳脊髄液または硝子体液の産生の遮断または機能不全、ターンオーバー、または容量制御(volume regulation)、または硬膜下若しくは頭蓋内の血腫もしくは浮腫)によるCNS組織の狭窄または圧迫から生じえる。同様に、外傷性の狭窄または圧迫は、異常な組織(例えば、転移性または原発性の腫瘍)の塊の存在から生じえる。
【0089】
本願発明において中枢神経系に関連して使用される「限局的な虚血(focal ischemia)」は、次のコンディションを意味する、そのコンディションとは、脳もしくは脊髄液へ血液を供給する単一の動脈の閉塞から生じ、その動脈によって供給される領域における全ての細胞要素の死〔汎ネグローシス(pan-necrosis)〕を生じるコンディションである。
【0090】
本願発明において中枢神経系に関連して使用される「全体的な虚血(global ischemia)」は、次のコンディションを意味する、そのコンディションとは、脳全体、前脳、もしくは脊髄液への血流の一般的な減少から生じ、これらの組織を通して選択的に脆弱な領域中のニューロンの死を生じるコンディションである。これらのケースの各々における病理は、臨床的に関連するものとして、全く異なっている。限局的な虚血のモデルは限局的な脳梗塞を有する患者に適用され、全体的な虚血のモデルは心停止および全身性の低血圧と類似する。
【0091】
本願発明において使用される「神経毒性ストレス(neurotoxic stress)」の用語は、正常な神経細胞に毒性である(また、それらの死またはアポトーシスを生じえる)任意のストレスを包含することを意図している。係るストレスは酸化的ストレス(低酸素症または高酸素症)または虚血または外傷であってもよく、および/または、それには細胞をインビボで細胞に毒性である物質(例えば、グルタミン酸もしくはドーパミンもしくはAβタンパク質、または酸化的ストレスを生じる物質もしくは処理)へと供試することが関与しえる。神経毒性の物質は内在性または外来性であってもよい。また、神経毒性(neurotoxic)の用語は、様々な既知の神経毒性物質(有機リン中毒、又はこのタイプの任意の他の発作を含む)への暴露を包含することが意図される。加えて、神経毒性ストレスは、神経変性疾患によって生じ得る。
【0092】
付加的な態様において、本発明は、ニューロンの再生をそれを必要とする被験者において生じさせる方法またはプロセスを提供し、これは前記患者に薬学的組成物を投与することを含む。該薬学的組成物は、活性成分としてBMP2Aインヒビターを治療上効果的な量で含み、さらに希釈剤または担体および自由選択で本願発明に記載される任意の薬学的組成物であるものを含む。
【0093】
「スクリーニング(screening)」の態様として本願発明において称される本発明の付加的な態様は、BMP2Aの生物活性、神経毒性ストレス、および/またはアポトーシスを変調する種(species)および/または化学物質を取得するための方法およびプロセスに関する。本態様の1側面は、BMP2Aの生物活性、神経毒性ストレス、および/またはアポトーシスを変調する種および/または化学物質を取得するためのプロセスを提供し、該プロセスは、BMP2Aを発現している細胞を種および/または化合物と接触させることと、コントロールと比較して、前記細胞のBMP2Aの生物活性、神経毒性ストレス、および/またはアポトーシスを変調する前記種および/または化合物の能力を決定することとを備える。試験される細胞は、修飾されてBMP2Aを発現しえる。また、理論に拘泥するものではないが、アポトーシスは、BMP2Aの存在によって、又は神経毒性ストレスによって、任意で過酸化水素、グルタミン酸、ドーパミン、Aβタンパク質または任意の既知の神経毒または神経毒性処理、例えば、虚血もしくは低酸素症(hypoxia)の存在によって、又は神経変性疾患(例えば、脳卒中)によって誘導されえる。加えて、本プロセスは、薬学的組成物を調製するために使用し得る。前記プロセスは、上記のプロセスによって取得された種および/または化合物又はその化学的なアナログもしくはホモログを、薬学的に認容される担体と混合することを備える。
【0094】
本願発明に使用される「修飾されて発現する(modified to express)」細胞は次の事項を意味する、その事項とは、その細胞が、トランスフェクション、トランスダクション、感染、または前記細胞に所望の遺伝子を発現せしめる任意の他の既知の分子生物学的方法によって修飾されることである。係る方法を実施するための、材料およびプロトコールは、当業者に明白である。
【0095】
スクリーニング態様の付加的な側面は、BMP2Aの生物活性、神経毒性ストレス、および/またはアポトーシスを変調する種および/または化学物質を取得するプロセスを提供し、該プロセスは以下を備える、即ち:
(a)BMP2Aを発現している細胞を複数の種および/または化学物質と接触させることと;
(b)BMP2Aの生物活性、神経毒性ストレス、および/またはアポトーシスが、前記種および/または化学物質の存在下で、コントロールと比較して、変調されるかどうかを決定することと;そうである場合、
(c)BMP2Aの生物活性、神経毒性ストレス、および/またはアポトーシスの変調が、前記複数の種および/または化学物質に含まれる各々の種および/または化学物質によって影響されるかどうかを別々に決定することと、それによってBMP2Aの生物活性、神経毒性ストレス、および/またはアポトーシスを変調する種および/または化学物質を同定することである。
【0096】
接触工程における細胞は、修飾されてBMP2A遺伝子を発現しえる。また、理論に拘泥することなく、アポトーシスは、BMP2A過剰発現によって自然発生的(spontaneously)に誘導され得る、又は細胞を神経毒性ストレスへと供試した結果として、任意で過酸化水素、グルタミン酸、ドーパミン、Aβタンパク質または任意の既知の神経毒または神経毒性処理、例えば、虚血もしくは低酸素症(hypoxia)によって、又は神経変性疾患(例えば、脳卒中)によって生じえる。加えて、本プロセスは、薬学的組成物を調製するために使用し得る。前記プロセスは、上記のプロセスによって同定された種および/または化合物を或いはその化学的なアナログまたはホモログを、薬学的に認容される担体と混合することを備える。
【0097】
前記プロセスは、アポトーシスを変調することが認められた種または化合物の、上記プロセスにより改善した活性を有する化合物を産生する修飾、および係る化合物を薬学的に許容される担体と混合することを付加的に備える。この付加的な作用は、本発明のスクリーニング態様に開示された任意のプロセスによって発見された化合物で実施されうるものであり、これによって改善された活性を有する化合物を具備している薬学的組成物が取得される。
【0098】
更に本発明のスクリーニング態様は、BMP2Aの生物活性、神経毒性ストレス、および/またはアポトーシス(BMP2Aを通じた)を変調する種および/または化合物を取得するためのインビトロ非細胞ベースのプロセスを提供し、該方法は以下を備える、即ち:
(a)BMP2AまたはBMP2A遺伝子の相互作用体への結合を測定することと;
(b)BMP2AまたはBMP2A遺伝子を前記種または化合物と接触させることと;および
(c)BMP2AまたはBMP2A遺伝子の前記相互作用体への結合が前記種または化合物によって影響されるかどうかを決定することである。
【0099】
インビトロ系でアポトーシス条件が試験される、この試験は、理論に拘泥することなく、とりわけ、過酸化水素、グルタミン酸、ドーパミン、Aβタンパク質、または任意の既知の神経毒での処理の結果として、神経毒性ストレスを生じることによって誘導させることができる。加えて、本プロセスは、薬学的組成物を調製するために使用し得る。前記プロセスは、上記のプロセスによって同定された種および/または化合物或いはその化学的なアナログまたはホモログを、薬学的に認容される担体と混合することを備える。
【0100】
本発明によって提供されるスクリーニング態様の別の側面は、細胞におけるBMP2AまたはBMP2A遺伝子の生物活性、神経毒性ストレスおよび/またはアポトーシスを変調する種および/または化合物を取得するためのキットであり、以下を備える、即ち:
(a)BMP2AまたはBMP2A遺伝子;および
(b)BMP2AまたはBMP2A遺伝子が相互作用する相互作用体;
(c)BMP2AまたはBMP2A遺伝子の前記相互作用体との相互作用を測定するための手段;および
(d)BMP2AまたはBMP2A遺伝子の前記相互作用体への結合が前記種または化合物によって影響されるかどうかを決定する手段。
【0101】
分子間の相互作用を測定する並びに力(strength)、親和性、結合活性(avidity)および相互作用の他のパラメータを決定する手段は、当該技術分野において周知である(例えば、 Lubert Stryer, Biochemistry, W H Freeman & Co.; 5th edition (April 2002); and "Comprehensive Medicinal Chemistry", by various authors and editors, published by Pergamon Pressを参照されたい)。
【0102】
本発明の付加的な態様は、神経毒性ストレスおよび/または脳卒中および/または癌を被った細胞を診断するための方法またはプロセスに関し、該方法は、図1の配列又はその断片またはホモログに対応するRNAを又は前記配列の1つが一部(a part)である遺伝子の発現産物をアッセイすることを備え、前記RNAまたは発現産物の正常コントロールと比較したアップレギュレーションの所見が、係る細胞が神経毒性ストレスおよび/または脳卒中を被ったことの尤度(likelihood)を表し、さらに前記RNAまたは発現産物の正常コントロールと比較したダウンレギュレーションの所見が、係る細胞が癌を被ったこと又は癌性(cancerous)になったことの尤度(likelihood)を表す。
【0103】
さらに本発明は、コントロールと比較して、被験者におけるBMP2A(例えば:BMP2Aを免疫アッセイで検出することによって)又はBMP2A遺伝子(例えば:BMP2Aをコード化しているmRNAを検出することによって)の発現レベルの変調を検出することを備えた、被験者における神経変性疾患を診断するための方法またはプロセスを提供する。一態様において、診断される被験者は、脳卒中を経験したと疑われる被験者である。
【0104】
本発明の別の態様は、被験者の神経変性疾患を診断する方法またはプロセスに関する;該方法またはプロセスは、コントロールと比較して、前記被験者におけるBMPポリペプチドの発現レベルの変調を検出することを備え、他方で発現の前記変調は、前記被験者における神経変性疾患の尤度の指標である;実際、本発明の診断方法は、脳卒中を経験したことが疑われる被験者で実施しえる。
【0105】
前記ポリペプチドの発現レベルは、前記BMPポリペプチドをコード化しているmRNAをアッセイすることによって(例えば、図1に記載のもの、又はその断片又はホモログ)、又は前記ポリペプチド検出する抗体を用いるイムノアッセイの方法によって評価することができる。mRNAおよびイムノアッセイの双方の検出は、当該技術分野において周知の方法によって実施することができる。BMP2ポリペプチドのレベルの測定は、免疫組織化学 (Microscopy, Immunohistochemistry and Antigen Retrieval Methods: For Light and Electron Microscopy, M.A. Hayat (Author), Kluwer Academic Publishers, 2002; Brown C.: "Antigen retrieval methods for immunohistochemistry", Toxicol Pathol 1998; 26(6): 830-1)、ウエスタンブロット法 (Laemmeli UK: "Cleavage of structural proteins during the assembley of the head of a bacteriophage T4", Nature 1970;227: 680-685; Egger & Bienz, "Protein (western) blotting", Mol Biotechnol 1994; 1(3): 289-305)、ELISA (Onorato et al., "Immunohistochemical and ELISA assays for biomarkers of oxidative stress in aging and disease", Ann NY Acad Sci 1998 20; 854: 277-90)、抗体 マイクロアレイハイブリダイゼーション(Huang, "detection of multiple proteins in an antibody-based protein microarray system, Immunol Methods 2001 1; 255 (1-2): 1-13)および標的分子のイメージン
グ(Thomas, Targeted Molecular Imaging in Oncology, Kim et al (Eds)., Springer Verlag, 2001)からなる群から選択される方法によって決定される。
【0106】
BMP2ポリヌクレオチドのレベルの測定は、次から選択される方法によって決定される、即ち:RT-PCR分析、in-situハイブリダイゼーション ("Introduction to Fluorescence In Situ Hybridization: Principles and Clinical Applications", Andreeff & Pinkel (Editors), John Wiley & Sons Inc., 1999)、ポリヌクレオチドマイクロアレイおよびノーザンブロッティング(Trayhurn, "Northern blotting", Proc Nutr Soc 1996; 55(1B): 583-9; Shifman & Stein, "A reliable and sensitive method for non-radioactive Northern blot analysis of nerve growth factor mRNA from brain tissues", Journal of Neuroscience Methods 1995; 59: 205-208)である。この診断法は、とりわけ脳卒中を経験したことが疑われる患者を診断するために有用であろう。
【0107】
タンパク質発現の前後関係において、「異常(abnormal)」は、コントロールと比較した前記ポリペプチドの発現レベルにおいて、少なくとも10%の差を意味する。
【0108】
さらに、本発明は、被験者における腫瘍または自己免疫疾患を治療する方法またはプロセスを提供し、該方法またはプロセスは、前記被験者にBMP2Aの生物活性を変調する治療上効果的な量の薬学的組成物を投与することを備える。
【0109】
さらに、本発明は、被験者における神経変性疾患を治療する方法またはプロセスを提供し、該方法またはプロセスは、前記被験者にBMP2Aの生物活性を阻害する治療上効果的な量の薬学的組成物を投与することを備える。
【0110】
さらに、本発明は、医薬の調製におけるBMP2Aモジュレーターの使用を提供する;該医薬は、神経変性疾患の治療に使用しえる。
【0111】
本発明の付加的な態様は、連続的なヌクレオチドを具備しているsiRNA分子〔その配列は表1(配列番号3〜45)に示される〕、又は前記siRNAを具備しているベクター(好ましくは、発現ベクター)を提供する。前記ベクターは、薬物送達に特に適しているだろう。通常は、siRNA分子およびベクター運搬性siRNA(the vector borne siRNA)の双方は、神経変性疾患および/または神経毒性コンディションの治療における治療剤として使用することができる。siRNAsの治療送達に関しては、例9を参照されたい。
【0112】
本発明の別の態様は、配列番号46〜66に記載される配列又は少なくとも70%その配列と相同的な、好ましくは少なくとも80%その配列と相同的な、より好ましくは少なくとも90%または95%その配列と相同的な配列を有している連続的なアミノ酸を具備している実質的に精製されたポリヌクレオチドを、および前記ポリヌクレオチドを具備するベクター(好ましくは、発現ベクター)を提供する。前記ベクターは、遺伝子治療またはターゲティングを目的とする特定タイプのものであってもよい。
【0113】
本発明の別の側面は、アポトーシスを増強する能力に関するBMP2Aの使用に関する。この側面において、本発明は、被験者における腫瘍または自己免疫疾患を、前記被験者に治療的に効果的な量の化学物質を投与することによって治療する方法またはプロセスを提供する;ここで前記化学物質は、BMP2A、またはBMP2A cDNA、または治療的に効果的な量の、BMP2A cDNAまたはポリペプチドを刺激する化学物質を、全てを別々に又は組合せて具備する。この側面において、さらに本発明は、腫瘍または自己免疫疾患を罹患している患者の回復を促進する又は増強させるための医薬の調製のための、BMP2AまたはBMP2A cDNAを具備しているベクターの使用を提供する。
【0114】
「保存的な置換(conservative substitution)」の用語は、1クラス(one class)のアミノ酸の、同じクラスのアミノ酸による置換を意味し、ここでクラスは、例えば、標準のDayhoff頻度交換マトリックスまたはBLOSUMマトリックスによって規定されるような、共通の物理化学的なアミノ酸側鎖特性および天然で見つかる相同的なタンパク質における高い置換頻度とによって規定される。6つの一般的なクラスのアミノ酸側鎖は、以下に分類されるものを含む、即ち:クラスI(Cys);クラスII(Ser, Thr, Pro, Ala, Gly);クラスIII(Asn, Asp, Gln, Glu);クラスIV(His, Arg, Lys);クラスV(Ile, Leu, Val, Met);およびクラスVI(Phe, Tyr, Trp)である。例えば、Aspの別のクラスIII残基(例えば、Asn, Gln, または Glu)での置換は、保存的な置換である。
【0115】
「非保存的な置換(non-conservative substitution)」の用語は、1クラス(one class)のアミノ酸の、別のクラスのアミノ酸での置換を意味し;例えば、Ala(クラスII残基)の、クラスIII残基(例えば、Asp, Asn, Glu, または Gln)での置換である。
【0116】
「化学的に修飾された(Chemically modified)」は、本発明の産物を意味する場合、少なくとも1つのアミノ酸残基が天然のプロセス(例えば、プロセシングまたは他の翻訳後修飾)によって又は当該技術分野において周知の化学修飾技術によって修飾される産物(ポリペプチド)を意味する。多くの既知の修飾の、典型的であるが包括的(inclusive)ではない例には、以下が含まれる、即ち:アセチル化、アシル化、アミド化、ADP-リボシル化、糖鎖形成、GPIアンカー形成、脂質または脂質誘導体の共有結合性の付着、アセチル化、ミリストイル化(myristlyation)、ペグ化(pegylation)、プレニル化、リン酸化、ユビキチン化、または任意の類似するプロセスである。
【0117】
「削除(deletion)」の用語は、それぞれ1以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が天然のものと比較して非存在(absent)である、ヌクレオチドまたはアミノ酸分子の何れかの配列における変化を意味する。
【0118】
「挿入(insertion)」または「付加(addition)」の用語は、天然の分子と比較して、それぞれ1以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の付加を生じる、ヌクレオチドまたはアミノ酸分子の配列における変化を意味する。
【0119】
「置換(substitution)」の用語は、1以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の、それぞれ異なるヌクレオチドまたはアミノ酸による交換(replacement)を意味する。アミノ酸配列に関して、前記置換は、保存的または非保存的であってもよい。
【0120】
本発明に使用される「ホモログ(homolog)/ホモロジー(homology)」は、少なくとも約 70%、好ましくは少なくとも約 75% ホモロジー、有利には少なくとも約 80% ホモロジー、より有利には少なくとも約 90% ホモロジー、さらにより有利には少なくとも約 95%、例えば、少なくとも約 97%、約98%、約99%または約100% ホモロジー同等を意味する。また、本発明は、次の事項を包含する、その事項とは、これらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドが、本願発明の同じ様式(fashion)又は上述のポリヌクレオチドおよびポリペプチドに使用することができることである。
【0121】
配列に関して代替的に又は付加的に「ホモロジー」は、2つの配列のうち短いほうのヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数で割られる、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のポジションの数を意味することができる;ここで、2つの配列のアラインメントは、WilburおよびLipmanのアルゴリズム((1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:726)にしたがって決定することができる;一例を挙げると、20ヌクレオチドのウィンドウサイズ(window size)、4ヌクレオチドのワード長(word length)、および4のギャップペナルティー(gap penalty)を用いた配列データのコンピュータ補助的な分析および解釈(アラインメントを含む)を、商業的に利用可能なプログラム(例えば、IntelligeneticsTM Suite, Intelligenetics Inc., CA)を用いて実施することができる。RNA配列がDNA配列に類似すると又は特定の(a degree of)配列同一性またはホモロジーを有するといえる場合、前記DNA配列におけるチミジン(T)は、前記RNA配列におけるウラシル(U)と等しい(equal)と考えられる。本発明の範囲内のRNA配列は、DNA配列又はその相補物(complements)から、前記DNA配列におけるチミジン(T)をウラシル(U)で置換することによって得ることができる。
【0122】
付加的に又は代替的に、アミノ酸配列の類似度または相同性を、一例を挙げると、BlastPプログラム(Altschul et al., Nucl. Acids Res. 25:3389-3402)およびNCBIで利用可能なものを用いて決定することができる。次の文献は、2つのポリペプチドのアミノ酸残基の相対的な同一性または相同性を比較するためのアルゴリズムを提供する;また、付加的に又は代替的(alternatively)に、前述の事項に関連して、これらの文献における教示は、パーセントホモロジー(percent homology)を決定するために使用することができる:( Smith et al., (1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489; Smith et al., (1983) Nucl. Acids Res. 11:2205-2220; Devereux et al., (1984) Nucl. Acids Res. 12:387-395; Feng et al., (1987) J. Molec. Evol. 25:351-360; Higgins et al., (1989) CABIOS 5:151-153; and Thompson et al., (1994) Nucl. Acids Res. 22:4673-4680)。.
アポトーシス変調の前後関係において「変調(modulates)」の用語は、増加(促進、増加)または減少(阻止、阻害)の何れかを意味する。
【0123】
本発明は、例示的に記載されている。また、使用される専門用語(terminology)は、限定するものではなく、記述の単語の本質(nature of words of description)であることを意図していることが理解されるべきである。
【0124】
明らかに、本発明の多くの修飾および変形(variations)が、上記の教示に照らして可能である。従って、添付される特許請求の範囲の請求項の範囲内で、本明細書中に具体的に記載された以外でも本発明を実施し得ることが理解される。
【0125】
本出願の全体において、様々な文献(米国特許を含む)が、著者名及び年および番号で表示した特許により参照される。これら文献および特許および特許出願の開示の全体は、当該発明が属する技術の状況をより完全に記載するために、本明細書中に引用されることによって本出願に援用される。
【例】
【0126】
更に労作(elaboration)することなく、当業者は上記の記載を用いて本発明をその完全な程度にまで利用することができる。従って、以下の好適で具体的な態様は、単なる例示であると解釈され、請求される発明をいかようにも限定するものではない。
【0127】
本明細書中に具体的に記載されない、当該技術分野において既知の標準の分子生物学プロトコールは、基本的には次の文献、すなわち、 Sambrook et al., Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New-York (1989, 1992),および Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1988)に一般的にしたがっている。
【0128】
本明細書中に具体的に記載されない、当該技術分野において既知の標準の有機合成プロトコールは、基本的には次の文献、すなわち、 Organic syntheses: Vol.1- 79, editors vary, J. Wiley, New York, (1941 - 2003); Gewert et al., Organic synthesis workbook, Wiley-VCH, Weinheim (2000); Smith & March, Advanced Organic Chemistry, Wiley-Interscience; 5th edition (2001)に一般的にしたがっている。
【0129】
本明細書中に具体的に記載されない、当該技術分野において既知の標準の医薬品化学法は、基本的には様々な著者および編者によるシリーズ「Comprehensive Medicinal Chemistry」に一般的にしたがっている。
【0130】
[例1]
Be2C細胞における低酸素誘導性アポトーシスに重要な遺伝子としての、BMP2Aの同定
新規の創薬への第一段階として、神経毒性でストレス誘発性のアポトーシスに関与する重要な遺伝子が、本発明者による直接的な機能的選択(機能的プロファイリング)によって同定された。
【0131】
機能的プロファイリングのための発現ライブラリーは、トータルの細胞性cDNAをレトロウイルス発現ベクターにクローニングすることによって作出された。係るライブラリーのクローンは、完全長cDNAをセンスまたはアンチセンスの方向性で含有しえる、或いはcDNA断片は、アンチセンスRNAとして転写される、又はドミナントネガティブ様式で作用することができる短いポリペプチドとして翻訳される。前記cDNAがアンチセンス方向で又は短いペプチドとして発現される場合、結果は適合する内在性の遺伝子の発現または活性の阻害に至るだろう。プラスミドDNAプールは、細菌から調製され、前記ライブラリーを選んだ哺乳類のレトロウイルスのパッケージング細胞へと導入するために使用される。レスキューされた組換え型レトロウイルス混合物を、標的Be2Cヒト神経芽細胞腫細胞のトランスダクションにさらに使用した。トランスダクションされた細胞によって発現されるcDNA断片は、特定の内在性の遺伝子の発現を又は係る遺伝子によって発現されるタンパク質の機能を、潜在的に阻害または刺激しえる。Be2C細胞のプールを、G418選択に供試し、次にレチノイン酸処理によってニューロン分化を誘導した。次に分化型Be2C細胞を、ドーパミンおよび/または低酸素(酸素欠乏)および/またはグルタミン酸で、90%アポトーシスに至る濃度で処理した。このように、前記細胞は特定の選択プロセスに供試された;該プロセスにおいて、幾つかの遺伝子の活性が、前記細胞が特定の表現型(例えば、アポトーシス表現型)を示すために必要であり、特定の誘導処理(例えば、ドーパミン処理)後に、それを実験的に追跡することができる(例えば、細胞死)。重要な遺伝子の発現が阻害される場合、前記表現型はその細胞に関して示されない(アポトーシス表現型において、前記細胞は死細胞のバックグランドで生存し、ここでは前記遺伝子が阻害されていない)。選択プロセスは、まさにこれらのタイプの細胞(ライブラリcDNA発現によって生存するもの)の選択を許容する。これの次に、生存した細胞に認められる発現ベクター中に存在するcDNA断片の、RT-PCRおよびシークエンシング同定が行われる。これらのcDNA断片の同一性は、阻害された遺伝子または遺伝子群の同一性の指標であった;それゆえ、それらがアポトーシス表現型の発生に要求される重要な遺伝子として同定された。直接的な機能的プロファイリング法において、これらの同定された断片は更なる分析のための候補者として使用された。このようなレスキューするcDNA断片の1つは、BMP2A cDNAに属しており、アンチセンス方向性で発現されていた。従って、その活性は、内在性のBMP2A遺伝子の通常の機能を、損なわせた(compromised)又はブロックさせた。
【0132】
[例2]
実験的なバリデーション結果
BMP2Aが神経毒性ストレスに関与することに関するバリデーションは、BMP2A siRNAを用いて行われた。siRNAを利用することによって、特定の所望のmRNAのレベルを阻害または低下させることができる。ID番号1を有する表1のsiRNA(以下を参照されたい)を使用して、BMP2Aの内在性mRNAレベルを成功裏に低下させた。
【0133】
ヒトBMP2A遺伝子発現におけるsiRNAの効果
効果は、Real-Time-PCRによって測定された。サイクロフィリンAの発現は、参照(コントロール)遺伝子として作用する。
【表A】

認められるとおり、siBMP2-hA(図3に示されるBMP2A siRNAを具備するベクター)は、ヒトBMP2Aの発現を60%にまで低下させた。
【0134】
アポトーシスに関するBMP2A活性の重要性の機能喪失バリデーション(Loss-of-function validation)
細胞のドーパミンでの処理は、酸化的ストレスの発生(虚血も伴う特性)に至る。BMP2Aの酸化的ストレス誘導性アポトーシスにおける関与をバリデート(validate)するために、BE2C細胞をBMP2A siRNAに感染させた(レトロウイルスまたはレンチウイルスによって)。前記細胞を、次にドーパミンまたは過酸化水素での処理にさらに供試した。ストレス条件は、コントロール細胞にアポトーシスを(しかし、このアポトーシスは、有意に、非常に縮小されていた)及びBMP2A siRNAを含有する細胞にアポトーシスを生じさせた(図5を参照されたい)。コントロール細胞およびBMP2A siRNAを含有している細胞は、通常の培養条件において同等に生存可能であった。生存度を、XTT分析によって試験した。
【0135】
[例3]
BMP2A siRNAsの調製
独自のアルゴリズムおよび遺伝子BMP2A(配列番号1)の既知の配列を用いて、潜在的なsiRNAsの配列を発生させた。上記の仕様によるsiRNA分子を、基本的に本明細書に記載の通りに調製した。
【0136】
本発明のsiRNAsは、リボ核酸性(またはデオキシリボ核酸性)のオリゴヌクレオチドの合成に関する技術において周知の任意の方法によって合成することができる。例えば、商業的に利用可能な機械(とりわけ、アプライドバイオシステムから利用可能である)を使用することができる;前記オリゴヌクレオチドは、本明細書に開示される配列にしたがって調製される。化学的に合成された断片のオーバーラップペア(Overlapping pairs)は、当該技術分野において周知の方法(例えば、米国特許第6,121,426号を参照されたい)を用いて連結することができる。前記の鎖(strands)は、別々に合成され、そして次にチューブ中で互いにアニールされる。次に、二本鎖のsiRNAsは、アニールしなかった(例えば、それらの一方の過剰のために)一本鎖のオリゴヌクレオチドからHPLCで分離される。本発明のsiRNAsまたはsiRNA断片に関連して、2以上の係る配列を、本発明に使用するために、合成し、共に連結(linked)させることができる。
【0137】
本発明のsiRNA分子は、当該技術分野において既知の処置(例えば、 Usman et al., 1987, J. Am. Chem. Soc., 109, 7845; Scaringe et al., 1990, Nucleic Acids Res., 18, 5433; Wincott et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23, 2677-2684; and Wincott et al., 1997, Methods Mol. Bio., 74, 59、に記載の処置)によって合成しえる、また、通常の核酸の保護およびカップリング基(例えば、5’端でのジメトキシトリチルおよび3’端でのホスホラミダイト)を利用し得る。修飾された(例えば、2’-O-メチル化)ヌクレオチドおよび無修飾ヌクレオチドが、所望により導入される。
【0138】
或いは、本発明の核酸分子は、別々に合成し、合成後に共に接合(joined)させることができる;これは例えば、ライゲーションによって(Moore et al., 1992, Science 256, 9923; Draper et al., International PCT publication No. WO93/23569; Shabarova et al., 1991, Nucleic Acids Research 19, 4247; Bellon et al., 1997, Nucleosides & Nucleotides, 16, 951; Bellon et al., 1997, Bioconjugate Chem. 8, 204)、又は合成および/または脱保護に続くハイブリダイゼーションによって行われる。
【0139】
また、本発明のsiRNA分子は、米国特許出願公開番号US2004/0019001 (McSwiggen)に記載の通り、タンデム合成法(tandem synthesis methodology)を介して合成することができる;ここで、双方のsiRNA鎖は、別々のsiRNA断片を提供するために引き続いて切断される切断可能なリンカーによって引き離された単一の近接(contiguous)するオリゴヌクレオチド断片もしくは鎖又はハイブリダイズし、siRNAデュプレックスの精製を許容する鎖(strands)として合成される。前記リンカーは、ポリヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーであってもよい。
【0140】
更なる情報に関しては、PCT公開番号WO2004/015107(ATUGEN)を参照されたい。
【0141】
上記のように、表1(下記)のsiRNAsは、交互の糖(alternate sugars)が2’-O-メチル修飾を有するように構築される(即ち、交互のヌクレオチドはこのように修飾された)。これらの好適な態様において、siRNAの一方の鎖において、修飾型ヌクレオチドは番号1,3,5,7,9,11,13,15,17および19であった、逆側(opposite)の鎖において、修飾型ヌクレオチドは番号2,4,6,8,10,12,14,16および18であった。従って、これらのsiRNAsはブラントエンドの19-mer RNA分子に、上記のような交互の2-0’-メチル修飾(alternate 2-0’-methyl modifications)を伴うものである。
【表1−1】

【表1−2】

表1は、独自(proprietary)のアルゴリズムによって発生させた19-mer siRNAsを含んでいる。これらのsiRNAsのなかで、好適な分子は、ID番号1,2,4,5,6,14,15,16,18,19,20,21および22を有している。一態様において、ID番号1および2の分子は、非常に好適であり、本明細書中で詳細に説明されるバリデーション実験において使用された。上記の表1において、siRNAs 1〜22のセンス鎖は、それぞれ配列番号3〜24を有し、siRNAs 1〜22のアンチセンス鎖は、それぞれ配列番号25〜45を有することに注意されたい。
【0142】
[例4]
抗BMP2A抗体の調製
BMP2Aに結合する抗体は、免疫抗原として、インタクト(intact)なポリペプチド又はより小さいポリペプチドを含有している断片を用いて調製し得る。例えば、BMP2AのNもしくはC末端または任意の他の適切なドメインに特異的に結合する抗体を産生することが望ましい。動物を免疫するために使用されるポリペプチドは、翻訳されたcDNAまたは化学合成に由来するものであってもよい(これを、必要に応じて、担体タンパク質に結合させることができる)。このようなポリペプチドに化学的に連結される通常に使用される担体には、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)およびテタヌストキソイドが含まれる。結合させたポリペプチドは、次に動物を免疫するために使用される。
【0143】
必要に応じて、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を、更に精製することができる(例えば、前記抗体を産生させたポリペプチドまたはペプチドを結合させたマトリックスへと結合させて、そして溶出させることによって)。当業者は、ポリクローナル同様にモノクローナル抗体の精製および/または濃縮に関する免疫学における通常の様々な技術を知っている(Coligan et al, Unit 9, Current Protocols in Immunology, Wiley Interscience, 1994)。
【0144】
全てのタイプの抗体(断片を含む)を作出するための方法は、当該技術分野において既知である(例えば Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988)を参照されたい)。適切なアジュバントに免疫原を調製することに必要な全ての工程を含む免疫化の方法、抗体結合を決定すること、抗体の単離、モノクローナル抗体を取得する方法、及びモノクローナル抗体のヒト化は、全て当業者に既知である。
【0145】
前記抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体であってもよい。抗体は、当該技術分野において既知の様々な技術を用いてヒト化することができる、この技術には、CDR-移植(EP239,400: PCT 公開WO91/09967; 米国特許第5,225,539;5,530,101; および5,585,089)、ベニヤリング(veneering)またはリサーフェーシング(resurfacing)(EP 592,106; EP 519,596; Padlan, Molecular Immunology 28(4/5):489-498 (1991); Studnicka et al., Protein Engineering 7(6):805-814 (1994); Roguska et al., PNAS 91:969-973 (1994))、およびチェーン シャッフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号)が含まれる。
【0146】
規定されたようなモノクローナル抗体には、1種(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ラット、ヒト、など)から由来する抗体、同様に2(または、それ以上)の種(例えば、キメラおよびヒト化抗体)から由来する抗体が含まれる。
【0147】
中和抗体(Neutralizing antibodies)は、上記で議論した方法によって調製することができる;これはおそらく生存アッセイなどにより中和活性をスクリーニングする付加的な工程を伴う。
【0148】
完全なヒト抗体は、ヒト患者の治療上の処置に特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ法を含む、当該技術分野において既知の様々な方法によって作出することができる。米国特許第4,444,887および4,716,111;およびPCT公開番号WO 98/46645, WO 98/50433, WO 98/24893, WO 98/16654, WO 96/34096, WO 96/33735, およびWO 91/10741;(これらの各々は、本明細書中に参照によって援用される)をも参照されたい。
【0149】
全てのタイプの抗体に関する付加的な情報(ヒト化抗体、ヒト抗体、および抗体断片を含む)は、WO01/05998(これは、本明細書中に参照によって、その全体が援用される)に認められる。
【0150】
[例5]
ポリペプチドの調製
ポリペプチドは、幾つかの方法を介して産生しえる、例えば:
1)合成的:
合成ポリペプチドは、BMP2Aの既知配列を用いて、商業的に利用可能な機械を用いて作出できる。
【0151】
2)組換え法:
BMP2Aポリペプチドを作出する好適な方法は、BMP2A遺伝子のcDNAを含むポリヌクレオチドを発現ベクターにクローンし、前記ベクターを保持している細胞をコード化されたポリペプチドが発現されるように培養し、そして生じるポリペプチドを精製することであり、全ては、例えば、文献〔Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization. A laboratory course manual." CSHL Press (1996)〕〔加えて、 Bibl Haematol. 1965;23:1165-74 Appl Microbiol. 1967 Jul;15(4):851-6; Can J Biochem. 1968 May;46(5):441-4; Biochemistry. 1968 Jul;7(7):2574-80; Arch Biochem Biophys. 1968 Sep 10;126(3):746-72; Biochem Biophys Res Commun. 1970 Feb 20;38(4):825-30).を参照されたい〕に記載されるような当該技術分野において既知の方法を用いて実施される。
【0152】
発現ベクターは、異種性物質(heterologous material)の転写をコントロールするためのプロモーターを含むことができる、選択的な転写を許容するための構成的な又は誘導性のプロモーターの何れかであってもよい。必要な転写レベルを得るために必要とされるエンハンサーを、自由選択で含めることができる。また、発現ビヒクル(expression vehicle)は、選択遺伝子を含むことができる。
【0153】
ベクターは、当該技術において既知の様々な方法の何れかによって細胞または組織に導入することができる。係る方法は、一般に文献〔Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New York (1989, 1992), in Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989), Vega et al., Gene Targeting, CRC Press, Ann Arbor, MI (1995), Vectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses, Butterworths, Boston MA (1988) and Gilboa et al. (1986)〕に記載されている事項に見つけることができる。
【0154】
3)天然の供給源からの精製:
BMP2Aは、天然の供給源(例えば、組織)から、例えば:抗BMP2A抗体での免疫沈降、又はBMP2Aに結合することが知られている任意の分子でのマトリックス結合アフィニティークロマトグラフィーなどの、当該技術における通常の技術を有する当業者に知られる多くの方法を用いて精製することができる。
【0155】
タンパク質精製は、例えば、文献〔 Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization. A laboratory course manual." CSHL Press (1996)〕に記載のような、当該技術で知られたとおりに実施される。
【0156】
[例6]
ポリヌクレオチドの調製
対象発明のポリヌクレオチドは、商業的に利用可能なDNA合成機および図1に記載の配列(配列番号1)又はその断片を用いて構築することができる。例えば、化学的に合成された断片のオーバーラップペアは、当該技術分野において周知の方法(例えば、米国特許第6,121,426号を参照されたい)を用いて連結することができる。
【0157】
ポリヌクレオチド(例えば、図1または3のポリヌクレオチド)を単離する別の手段は、その配列に基いて、天然または人工的に設計されたDNA断片を得ることである。このDNA断片は、適切な標識化システムの手段によって標識される〔この手段は、当該技術における当業者に周知であり;例えば、Davis et al.(1986)を参照されたい〕。前記断片を、次にプローブとして使用して、lambdaファージcDNAライブラリまたはプラスミドcDNAライブラリを当該技術分野において周知の方法を用いてスクリーンする;一般に, Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1989), in Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)を参照されたい。
【0158】
cDNAプローブに関連するクローンを含有するコロニーを同定することができる。また、それらのクローンは、既知の方法によって精製することができる。次に新しく精製されたクローンの端(ends)を、完全長配列を同定するためにシークエンスする。完全長クローンの完全なシークエンシングは、酵素消化またはプライマーウォーキングによって実施される。類似するスクリーニングおよびクローン選択アプローチを、ゲノムDNAライブラリからのクローンに適用することができる。全体の天然のcDNAまたは遺伝子配列(その任意の対立形質バリエーションを含む)は、全て図1または3の同定されたポリヌクレオチドに関して上記で議論したのと同じ有用性を有しているだろう。
【0159】
図1、3もしくは4のポリヌクレオチド、又はその断片、又は表1のオリゴヌクレオチドは、とりわけ(inter alia)診断的な作業のためのプローブとして使用することができる。それらを使用して、特定の細胞の診断をすることができる。該細胞は、脳卒中、神経毒性ストレスまたはTBIを経験し、これによって前記ポリヌクレオチド配列は過剰発現され、それゆえに高いレベルのmRNA遺伝子転写物が存在する。加えて、それを使用して、特定の細胞の診断をすることができる、該細胞は、癌性の形質転換を経験し、上述のポリヌクレオチが過剰発現されているであろう細胞である(そして、そのレベルを、診断の目的に関して正常被験者におけるレベルと比較することができる)。
【0160】
[例7]
薬理学および薬物送達(drug delivery)
本発明の化合物または薬学的組成物は、優良医療規範(good medical practice)に準拠し、個々の患者の臨床状態、治療される疾患、投与の部位および方法、投与のスケジューリング、患者の年齢、性別、体重、および医療従事者に知られる他の因子を考慮して、投与および用量設定(dosed)される。
【0161】
本願の目的に関して、薬剤的に「効果的な量(effective amount)」は、当該技術分野において既知の考慮によって決定される。前記量は、改善(improvement)を達成するために効果的でなければならない;該改善には、生存率の改善、より急速な回復、又は症状(symptoms)および当業者によって適切な測定対象として選択されるような他の指標(indicators)の改善もしくは除去(elimination)が含まれるが、これらに限定されない。
【0162】
治療は、一般的に範囲(a length)を有しており、この範囲は、疾患経過(disease process)及び薬物有効性及び治療される患者種(patient species)の範囲に比例(proportional)する。ヒトは、本明細書中に例示されるマウスまたは他の実験動物よりも一般的に長く治療されることが注意される。
【0163】
本発明の化合物は、任意の従来の投与経路によって投与することができる。前記化合物は、化合物として又は薬学的に許容される塩として投与できること及び単独で又は薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、およびビヒクルと組合せた活性成分として投与できることに注意すべきである。化合物は、経口、皮下、又は非経口で投与され、これには静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、および鼻腔内投与、同様にクモ膜下腔内(intrathecal)および輸液技術が含まれる。化合物のインプラント(Implants)も、有用である。液剤(Liquid forms)は注射のために調製されてもよく、この用語は、皮下、経皮(transdermal)、静脈内、筋肉内、クモ膜下腔内、および他の非経口投与経路を含む。前記液体組成物は、水性の溶液を含み、これは有機共溶媒(organic cosolvents)、水性または油性の懸濁物、食用油とのエマルジョン、同様に類似する薬学的ビヒクルを有する及び有さない。加えて、特定の環境下において、本発明の新規治療に使用するための組成物は、鼻内などの投与のために、エアロゾルとして処方し得る。治療される患者は、温血動物であり、特にヒトを含む哺乳類である。薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、およびビヒクル、同様にインプラント担体は、一般的に不活性、非毒性の固体または液体のフィラー(fillers)、希釈剤、または封入物質(encapsulating material)を意味しており、本発明の活性な成分と反応しない。
【0164】
本発明の化合物を非経口的に投与する場合、それは一般的に単位用量(a unit dosage)の注射可能な形態(溶液、懸濁物、エマルジョン)に処方される。注射に適切な薬学的製剤(pharmaceutical formulations)には、無菌の水性溶剤または無菌の注射可能な溶剤もしくは分散剤中に再構成するための無菌の粉剤が含まれる。前記担体は、溶媒または分散媒体(dispersing medium)であってもよく、これは例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、適切なその混合物、および野菜オイルなどを含んでいる。
【0165】
適切な流動性(fluidity)を、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤のケースにおいて要求される粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。非水系のビヒクル、例えば綿実オイル、ゴマオイル、オリーブオイル、ダイズオイル、コーンオイル、ヒマワリオイル、またはピーナッツオイル、およびエステル、例えばイソプロピルミリスチン酸エステルを、化合物組成物のための溶媒系として使用することができる。加えて、前記組成物の安定性、無菌性(sterility)、および等張性を増強する様々な添加物(抗菌性保存剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤が含まれる)を、添加することができる。微生物の活動の阻止は、様々な抗細菌性および抗真菌性の薬剤(例えば、パラベン(parabens)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)によって達成することができる。多くの場合、等張性剤(isotonic agents)、例えば、糖、塩化ナトリウムを含むことが望ましい。注射可能剤の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、アルミニウム モノステアレートおよびゼラチン)の使用によって生じさせることができる。しかしながら、本発明によると、使用された任意のビヒクル、希釈剤、または添加物は、前記化合物と適合性でなければならない。
【0166】
無菌の注射可能溶液は、本発明の実施において利用される化合物を、所望により様々な他の成分を有する要求量の適切な溶媒に導入することによって調製することができる。
【0167】
本発明の薬学的製剤は、任意の適合性の担体、例えば、様々なビヒクル、アジュバント、添加物、および希釈剤を含有している注射可能製剤中で患者に投与することができる;或いは、本発明に利用される化合物は、遅延放出性(slow release)の皮下インプラントまたは標的設定された(targeted)送達システム、例えば、モノクローナル抗体、ベクター性送達(vectored delivery)、イオン泳動(iontophoretic)、ポリマーマトリックス、リポソーム、およびミクロスフェア(microspheres)の形態で患者に非経口的に投与することができる。本発明に有用な送達システムの例には、米国特許第5,225,182; 5,169,383; 5,167,616; 4,959,217; 4,925,678; 4,487,603; 4,486,194; 4,447,233; 4,447,224; 4,439,196;および4,475,196が含まれる。多くの他の係るインプラント、送達システム、およびモジュールは、当業者に周知である。
【0168】
本発明に利用される化合物の薬学的製剤は、患者に経口的に投与することができる。従来の方法、例えば、錠剤、懸濁剤、液剤、エマルジョン剤、カプセル、粉剤、シロップなどにおいて前記化合物を投与することは、利用可能(usable)である。それを経口的に又は静脈的に送達し、生物活性を保持する既知の技術が、好適である。一態様において、本発明の化合物は、血液レベルを適切なレベルへ変化させるために、静脈注射によって最初に投与することができる。患者のレベルは次に経口剤形(oral dosage form)により維持されるが、投与の他の形態を患者の状態に応じて上記で指摘したとおりに使用することができる。
【0169】
通常は、ヒトに対する化合物の作用用量(active dose)は、1ng/kg〜約20〜100mg/kg体重/日、好ましくは約0.01 mg〜約2〜10mg/kg体重/日の範囲で、1用量/日又は2若しくは3若しくはそれ以上の回数/日の措置で、1〜2週以上、好ましくは24〜48hrsの期間である、或いは1〜2週以上の期間の連続的な輸液による。
【0170】
本発明の薬学的組成物の最も適切な投与が、治療される損傷または疾患のタイプに依存することが理解される。従って、急性期イベント(acute event)の治療には、損傷の誘発後に比較的迅速な活性組成物の全身投与が必要であろう。他方で、慢性の変性性ダメージ(degenerative damage)の治療(縮小)は、持続性の投与措置を必要とするだろう。
【0171】
BMP2Aインヒビターの脳への送達
化合物(核酸またはsiRNAを含む化合物を含む)の脳への送達は、幾つかの方法によって達成することが可能であり、これは例えば、とりわけ、神経外科的インプラント、血液脳関門破壊、脂質媒介性輸送、担体媒介性の流入または流出、血漿タンパク質-媒介性の輸送、レセプター媒介性のトランスサイトーシス、吸収媒介性のトランスサイトーシス、血液脳関門でのニューロペプチド輸送、および薬物ターゲティングのための遺伝的に操作された「トロイの木馬(Trojan horses)」である。上記方法は、文献〔 "Brain Drug Targeting: the future of brain drug development", W.M. Pardridge, Cambridge University Press, Cambridge, UK (2001)〕に記載されているとおりに実施される。
【0172】
[例8]
アンチセンス断片の治療的な送達
本発明の実施において、アンチセンス断片を使用してもよい。アンチセンス断片の長さは、好ましくは約9〜約4,000ヌクレオチド、より好ましくは約20〜約2,000ヌクレオチド、最も好ましくは約50〜約500ヌクレオチドである。
【0173】
効果的であるために、本発明のアンチセンス断片は、細胞膜を横切って往来しなければならない。一般的に、アンチセンス断片は、明らかに特定のレセプターを介した取込みによる、細胞膜を横切る能力を有する。アンチセンス断片は一本鎖分子(single-stranded molecules)なので、それらはある程度まで疎水性であり、これによって膜を通じた受動的拡散が増強される。修飾をアンチセンス断片に導入して、膜を横切るその能力を改善し得る。一例を挙げると、前記AS分子は、部分的に不飽和の脂肪族炭化水素鎖および1以上の極性または荷電基(例えば、カルボン酸基、エステル基、およびアルコール基)を含む基に連結されてもよい。代わりに、AS断片はペプチド構造に連結されてもよく、これは好ましくは膜向性ペプチド(membranotropic peptides)である。係る修飾AS断片は、膜をより容易に貫通する;この事項はそれらの機能に重要なものであり、結果的にそれらの活性を有意に増強し得る。パルミチル連結オリゴヌクレオチドは、Gerster等〔Gerster et al (1998): Quantitative analysis of modified antisense oligonucleotides in biological fluids using cationic nanoparticles for solid-phase extraction. Anal Biochem. 1998 Sep 10;262(2):177-84〕によって記載された。ゲラニオール連結オリゴヌクレオチドは、Shoji等〔Shoji et al (1998): Enhancement of anti-herpetic activity of antisense phosphorothioate oligonucleotides 5' end modified with geraniol. J Drug Target. 1998;5(4):261-73〕によって記載された。 ペプチドに連結されたオリゴヌクレオチド(例えば、膜向性ペプチド)、及びそれらの調製は、Soukchareun等〔Soukchareun et al (1998): Use of Nalpha-Fmoc-cysteine(S-thiobutyl) derivatized oligodeoxynucleotides for the preparation of oligodeoxynucleotide-peptide hybrid molecules. Bioconjug Chem. 1998 Jul-Aug;9(4):466-75によって記載された。アンチセンス分子の又は特定の細胞に対して前記分子を標的とし、前記細胞による前記オリゴヌクレオチドの取込みを増強する他の薬剤の修飾は、Wang (1998)によって記載されている。
【0174】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般に薬学的組成物の形態で提供される。これらの組成物は、とりわけ、注射、局所投与、経口摂取による使用に関するものである(更なる情報に関しては例7を参照されたい)。
【0175】
アンチセンスRNAの作用機構およびアンチセンスツール(antisense tools)の使用における技術の現状は、Kumar等〔Kumar et al (1998): Antisense RNA: function and fate of duplex RNA in cells of higher eukaryotes. Microbiol Mol Biol Rev. 1998 Dec;62(4):1415-34〕が論評している。この急速に発展している技術において議論がなされており、それには化学的な(Crooke, 1995: Progress in antisense therapeutics. Hematol Pathol. 1995;9(2):59-72. ; Uhlmann et al, 1990 )、細胞の(Wagner, 1994: Gene inhibition using antisense oligodeoxynucleotides. Nature. 1994 Nov 24;372(6504):333-5.)および治療上の(Hanania, et al, 1995: Recent advances in the application of gene therapy to human disease. Am J Med. 1995 Nov;99(5):537-52.; Scanlon, et al, 1995: Oligonucleotide-mediated modulation of mammalian gene expression. FASEB J. 1995 Oct;9(13):1288-96. ; Gewirtz, 1993: Oligodeoxynucleotide-based therapeutics for human leukemias. Stem Cells. 1993 Oct;11 Suppl 3:96-103)側面におけるものが存在する。BMPレセプター合成の阻害におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、Yeh等〔Yeh et al (1998): Inhibition of BMP receptor synthesis by antisense oligonucleotides attenuates OP-1 action in primary cultures of fetal rat calvaria cells. J Bone Miner Res. 1998 Dec;13(12):1870-9〕によって記載されている。電位依存性カリウムチャンネル遺伝子Kv1.4の合成を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、Meiriら〔Meiri et al (1998) Memory and long-term potentiation (LTP) dissociated: normal spatial memory despite CA1 LTP elimination with Kv1.4 antisense. Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Dec 8;95(25):15037-42〕によって記載されている。Bcl-xの合成を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチド使用は、Kondoら〔Kondo et al (1998): Antisense telomerase treatment: induction of two distinct pathways, apoptosis and differentiation. FASEB J. 1998 Jul;12(10):801-11〕によって記載されている。アンチセンス薬物の治療上の使用は、Stixら〔Stix (1998): Shutting down a gene. Antisense drug wins approval. Sci Am. 1998 Nov;279(5):46, 50; Flanagan (1998) Antisense comes of age. Cancer Metastasis Rev. 1998 Jun;17(2):169-76; Guinot et al (1998) Antisense oligonucleotides: a new therapeutic approach Pathol Biol (Paris). 1998 May;46(5):347-54〕、およびその文献中の引用において議論されている。相対的に短い時間内で豊富な情報(ample information)が、培養された初代細胞および細胞株におけるASヌクレオチド配列のインビト
ロ使用、同様に、係るヌクレオチド配列の、一過性の様式で特定のプロセスを抑制すること及び身体機能を変化させることに対するインビボ投与に関して蓄積されている。更に、動物モデルにおける及びヒト有効性を予測するためのヒト臨床試験における十分な経験が、インビトロおよびインビボの結果から現在利用可能である。
【0176】
新規のBMP2Aアンチセンス断片(これは、薬学的組成物において活性成分として使用し得る)および本発明の治療方法は、表2に詳細に記載される。一態様において、ID No1(配列番号46)のアンチセンス断片が好適である;もとより本アンチセンス断片が使用されて、遺伝子BMP2Aが神経毒性誘発性アポトーシス(neurotoxic-induced apoptosis)に関与していると同定された。
【表2】

【0177】
[例9]
siRNAの治療上の送達
siRNAの哺乳類細胞への増強および改善された送達を特異的に目的とした送達システムが、開発されている。Shenら(FEBS letters 539:111-114 (2003))はアデノウイルスに基づくベクターを記載しており、これはsiRNAsを哺乳類細胞に効率的に送達する。ウイルスに基づくsiRNA送達システムにおける更なる詳細は、Xiaら〔Xia et al., Nature Biotechnology 20: 1006-1010 (2002); and Reich et al., Molecular Vision 9: 210-216 (2003)〕中に見つけることができる。
【0178】
Sorensenら(J.Mol.Biol. 327: 761-766 (2003)) は、成体マウスへのsiRNAsの全身送達のための注射に基づくシステムを考案した、これはリポソームに基づく静脈注射および/または腹腔内注射による。
【0179】
急速な尾静脈注射による、siRNAのマウスへの効率的な送達のためのシステムも、開発されている(Lewis et al., nature genetics 32: 107-108 (2002))。
【0180】
更に、ペプチドに基づく遺伝子送達システムMPG(以前、DNAターゲティングに使用された)は、siRNAsに効果的であるように修飾された〔Simeoni et al., Nuclaic Acids Research 31, 11: 2717-2724 (2003)〕。
【0181】
siRNAsの送達のための付加的な方法は、AS断片の送達の見出しで例8に記載に記載されている。siRNAsを含む薬剤の用量および処方は、例7で議論されている。
【0182】
[例10]
実験モデル
CNS損傷 ― BMP2Aインヒビターの、CNS損傷を治療するための使用の可能性が、動物モデルで評価される。前記モデルは、様々なレベルの複雑性を、コントロール動物をインヒビター処理動物に対して比較することによって示している。係る治療の有効性は、臨床予後、神経欠陥(neurological deficit)、用量応答性(dose-response)および治療濃度域(therapeutic window)に関して評価される。検査動物は、BMP2Aインヒビターで静脈内または皮下または経口的(per os)に治療される。コントロール動物は、緩衝剤または薬学的ビヒクルのみで処理される。使用するモデルは、以下から選択されてもよい、即ち:
1.閉鎖頭部損傷(CHI;Closed Head Injury) ― 実験的なTBIは、神経学的および神経代謝的(neurometabolic)なカスケードに寄与する一連のイベントを生じる、これは行動的欠陥(behavioral deficits)の程度(degree)および限度(extent)に関連する。CHIを麻酔下で誘発させる、中央管状平面(midcoronal plane)において左半球を覆っている暴露させた頭蓋に対して、ウエイトを既定の高さから自由落下させる〔Chen et al, J. Neurotrauma 13, 557, 1996〕。
【0183】
2.一過性の中大脳動脈閉塞(MCAO;middle cerebral artery occlusion) ― 90〜120分間の一過性の限局的な虚血が成体雄性Sprague Dawleyラット(300-370gr)で実施される。実施される方法は、腔内縫合(intraluminal suture MCAO)である〔Longa et al., Stroke, 30, 84, 1989, and Dogan et al., J. Neurochem. 72, 765, 1999〕。要約すると、ハロタン麻酔下で、ポリ-L-リジンでコートされた3-0-ナイロン縫合物質が、右の内頚動脈(ICA;internal carotid artery)へ外頚動脈(external carotid artery)中の孔を通して挿入される。前記ナイロン糸は、右のMCA起点に対するICAへと推し進められる(20〜23mm)。90〜120分間後、前記糸を引張り、前記動物を閉鎖し、そして回復させる。
【0184】
3.永続的な中大脳動脈閉塞(MCAO) ― 閉塞は永続的であり、一側性(unilateral)であり ― MCAの電気凝固法によって誘導される。両方の方法によって、脳皮質の同側(ipsilateral side)の限局的な脳虚血に至り、反対側は無傷で残存する(コントロール)。左のMCAは、一時的な頭蓋骨切除(craniectomy)を介して暴露される〔Tamura A.et al., J Cereb Blood Flow Metab. 1981;1:53-60によってラットに関して記載されたとおり〕。MCA及びそのレンズ核線状体分岐(lenticulostriatal branch)は、嗅索の内側縁(medial border)に近接して、微小二極性凝固(microbipolar coagulation)を伴って閉塞される。創傷は縫合され、そして動物は26゜C〜28゜Cに温められたホームケージに戻される。動物の温度は、自動サーモスタットで常に維持される。
【0185】
評価プロセス
BMP2Aインヒビターの有効性は、死亡率、重量増加、梗塞容量、短期および長期の臨床およびニューロフィジコロジカル(neurophysichological)および行動(食餌行動を含む)の転帰によって決定される。梗塞容積は、組織学的に評価される(Knight et al., Stroke, 25, 1252, 1994, and Mintorovitch et al., Magn. Reson. Med. 18, 39, 1991)。階段検査(Montoya et al., J. Neurosci. Methods 36, 219, 1991)またはBedersonの方法(Bederson et al., Stroke, 17, 472, 1986)による運動能力障害スケールが実施されて、MCAOに続く機能的な転帰が評価される。動物は異なる時点で追跡され、最長のものは2ヶ月である。各時点(24h, 1週, 3, 6, 8週)で、動物は屠殺され、4%ホルムアルデヒド(PBS中)で心臓灌流(cardiac perfusion)が実施される。脳が除去され、連続的な冠状の200μm切片が処理され、パラフィン包埋のために調製される。前記切片は、TCCなどの適切な染料で染色される。梗塞領域は、コンピューター化イメージ分析器を用いて、これらの切片において測定される。
【0186】
上記の動物モデルにおいて例示されたようなBMP2Aインヒビター治療の利用によって、急性であるか又は慢性であるかにかかわらず、ヒトの脳損傷の治療に関する新たな可能性が提供される。
【0187】
[例11]
スクリーニング システム
BMP2遺伝子またはポリペプチドは、その活性を変調(modulate)させる化合物を、特に神経毒性ストレスまたは神経変性疾患を変調させる化合物を同定すること及び分離することに関するスクリーニングアッセイに使用し得る。選抜すべき化合物には、とりわけ小化学分子(small chemical molecules)、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNAまたはRNA分子、ポリペプチドおよびドミナントネガティブ、および発現ベクターなどの物質が含まれる。
【0188】
多くのタイプのスクリーニングアッセイが、当業者に知られている。選ばれた特定のアッセイは、候補遺伝子又はそれによって発現されるポリペプチドの活性に大きく依存する。従って、候補遺伝子の発現産物が酵素活性を有していることが知られている場合、前記酵素活性の阻害(又は刺激)に基づくアッセイが使用できる。候補ポリペプチドがリガンドまたは他の相互作用体(interactor)に結合することが知られている場合、前記アッセイは係る結合または相互作用の阻害に基づくものであってもよい。候補遺伝子が既知の遺伝子である場合、その特性の多くも知られている。そして、これらを使用して、最適なスクリーニングアッセイを決定することができる。候補遺伝子が新規の場合、ある種の分析および/または実験は、その候補遺伝子の活性のインヒビターを発見することに使用される最適なアッセイを決定するために適している。前記分析には、その活性を説明する配列中のドメインを発見するための配列分析が関与してもよい。
【0189】
当該技術分野において知られているとおり、前記スクリーニングアッセイは、細胞準拠(cell-based)又は非細胞準拠(non-cell-based)であってもよい。前記細胞準拠アッセイは、真核細胞(例えば、Hela細胞)を用いて実施される。そして、係る細胞準拠システムは、候補遺伝子の活性を直接的に測定するために特に関連するものである。該遺伝子は抗アポトーシス性の機能遺伝子である、即ち、前記遺伝子の発現は、標的細胞におけるアポトーシスを予防する(prevents)又は細胞死を予防する。係る細胞準拠アッセイを試験する一様式は、テトラサイクリン誘導性(Tet誘導性)遺伝子発現を使用することである。Tet誘導性の遺伝子発現は、当該技術分野において周知である〔例えば Hofmann et al, 1996, Proc Natl Acad Sci 93(11):5185-5190を参照されたい〕。
【0190】
Tet誘導性のレトロウイルスは、3'Ltrエンハンサー/プロモーターレトロウイルス欠失変異株の自己不活化(SIN;Self-inactivating)特性が導入されるように設計されている。細胞中での本ベクターの発現は、テトラサイクリンまたは他の活性なアナログの存在下では事実上は検出不可能である。しかしながら、Tetの非存在下で、発現は誘導後の48時間以内で最大まで誘導され、誘導性のレトロウイルスを保持する細胞の全集団の発現を一様(uniform)に増加させる。従って、この事項は、発現が感染した細胞集団内で一様に制御されることを指摘している。
【0191】
候補遺伝子の遺伝子産物が特定の標的蛋白質をリン酸化する場合、特異的なレポーター遺伝子構築物を次のように設計できる;つまり、本レポーター遺伝子産物のリン酸化がその活性を生じるように設計できる(これに呈色反応が続いてもよい)。候補遺伝子は、上記で議論したTet誘導システムを用いて特異的に誘導することができる;誘導性 対 非誘導性の遺伝子の比較は、レポーター遺伝子活性化の尺度(measure)を提供する。
【0192】
類似する間接的なアッセイにおいて、レポーターシステムを設計することができ、これは候補タンパク質のタンパク質間相互作用における変化に反応する。前記レポーターが前記候補タンパク質との実際の相互作用に反応する場合、呈色反応が生じる。
【0193】
また、当業者は、レポーター遺伝子活性の阻害または刺激を、特定の候補プロモータまたは他の制御エレメントを介したその発現レベルの変調(modulation)によって測定することができる。候補遺伝子の活性をコントロールする特異的プロモーターまたは制御エレメントは、当該技術において周知の方法によって規定される。レポーター遺伝子が構築され、これは特異的な候補遺伝子プロモーターまたは制御エレメントによってコントロールされる。特異的なプロモーターまたは制御因子を含有しているDNAは、前記レポーターをコードしている遺伝子に実際に連結される。レポーター活性は、プロモーターまたは制御エレメントの特異的な活性化に依存する。従って、前記レポーターの阻害または刺激は、前記レポーター遺伝子の刺激/阻害の直接的なアッセイである;例えば、文献〔Komarov et al (1999), Science vol 285.1733-7 and Storz et al (1999) Analytical Biochemistry, 276, 97-104〕を参照されたい。
【0194】
様々な非細胞準拠スクリーニングアッセイは、当該技術における当業者の能力の範囲内である。例えば、酵素活性が測定されるべき場合(例えば、候補タンパク質がキナーゼ活性を有する場合)、標的タンパク質を規定することができ、そして標的の特異的なリン酸化を追跡することができる。前記アッセイには、標的リン酸化の阻害または標的リン酸化の刺激が関与することが可能であり、双方のタイプのアッセイは当該技術において周知である;例えば、キナーゼ活性の測定に関しては文献〔Mohney et al (1998) J.Neuroscience 18, 5285 and Tang et al (1997) J Clin. Invest. 100, 1180〕を参照されたい。この事項は既知の酵素活性を有していないBMP2のケースにおいては関連性がないが、BMP2は酵素と結合し、その酵素活性をタンパク質間相互作用を通して制御する可能性が存在する。
【0195】
また当業者は、候補ポリペプチドと相互作用体とのインビトロ相互作用を測定することができる。この選抜において、前記候補ポリペプチドはビーズ上に固定化される。相互作用体(例えば、レセプター リガンド)は、放射性の標識をされ、そして添加される。それがビーズ上で候補ポリペプチドと結合する場合、前記ビーズに保持される(候補タンパク質との相互作用により)放射活性量を測定することができる。前記アッセイは、ビーズの放射活性量を測定することによって、相互作用の阻害を示す。
【0196】
本発明による、任意のスクリーニングアッセイは、化学物質(上記のとおり)又は前記アッセイにおいてポジティブであると試験された他の種を同定する工程を含みえる及びそのように同定されたものを医薬として製造する更なる工程をも含みえる。係る化合物を含む医薬、または化学的なアナログ又はそのホモログは、本発明の一部であると考えられる。アポトーシスの阻害または刺激に関して同定された任意の係る化合物の使用も、本発明の一部であると考えられる。
【0197】
[例12]
遺伝子治療
本明細書中に使用される「遺伝子治療(gene therapy)」の用語は、遺伝性または後天性の疾患またはコンディションの表現型を治療する又は予防するための、所望の遺伝物質(たとえば、DNAまたはRNA)の宿主への導入を意味する。所望の遺伝物質は、産物(たとえば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、機能的なRNA、アンチセンス)をコードし、インビボで産生されることが望ましい。例えば、所望の遺伝物質は、治療上の価値を有する、ホルモン、レセプター、酵素、ポリペプチドまたはペプチドをコードすることができる。或いは、所望の遺伝物質は、自殺遺伝子をコード化してもよい。一般的な総説に関しては、「遺伝子治療」 (Advances in Pharmacology 40, Academic Press, 1997)を参照されたい。
【0198】
本発明の遺伝子治療は、インビボまたはエキソビボで実施することができる。エキソビボの遺伝子治療には、患者細胞の分離および精製、治療遺伝子の導入、および遺伝的に変更された細胞を前記患者に戻す導入が要求される。複製欠陥性ウイルス(例えば、修飾されたレトロウイルス)を使用して、治療上のBMP2A cDNAまたはBMP2Aアンチセンス断片を係る細胞へと導入することができる。例えば、マウスモロニー白血病ウイルス(MMLV)は、臨床的な遺伝子治療試験における周知のベクターである。例えば、文献〔 Boris-Lauerie et al., Curr. Opin. Genet. Dev., 3, 102-109 (1993)〕を参照されたい。
【0199】
対照的に、インビボ遺伝子治療は、患者の細胞の分離および精製を要求しない。治療上の遺伝子または断片(例えば、アンチセンス断片)は、典型的には患者への投与に関してリポソーム又は複製欠陥性ウイルス中に「パッケージされる」;このようなウイルスは、例えば、Berkner〔Berkner, K. L., in Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158, 39-66 (1992)〕によって記載されたようなアデノウイルスまたはMuzyczka〔Muzyczka, N., in Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158, 97-129 (1992)〕および米国特許第5,252,479号によって記載されたようなアデノ関連ウイルスである。別のアプローチは「裸のDNA(naked DNA)」の投与であり、該投与では治療上の遺伝子または断片(例えば、アンチセンス断片)が血流または筋肉組織に直接的に注射される。なお別のアプローチは、「裸のDNA」の投与において、治療上の遺伝子または断片(例えば、アンチセンス断片)が標的組織に前記DNAでコートされた金粒子を用いた微粒子衝突によって導入される。
【0200】
遺伝子治療ベクターを、例えば、静脈注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照されたい)によって又は定位的注射(stereotactic injection)によって被験者に送達することができる(例えば、Chen et al. (1994) PNAS 91:3054-3057を参照されたい)。遺伝子治療ベクターの薬剤的製剤は、遺伝子治療ベクターを、認容される希釈剤に含ませてもよい、又は遺伝子送達ビヒクルが埋めこまれた遅延放出性マトリックスを含ませてもよい。或いは、完全な遺伝子送達ベクターをリコンビナント細胞から無傷(intact)で産生させることができる場合(例えば、レトロウイルスベクター)、薬学的製剤は遺伝子送達システムを産生する1以上の細胞を含みえる。
【0201】
本発明の遺伝子治療に有用な細胞タイプには、リンパ球、肝細胞、筋芽細胞(myoblasts)、線維芽細胞、並びに網膜細胞、上皮および内皮細胞などの眼の任意の細胞が含まれる。好ましくは、前記細胞は、治療される患者からとったTリンパ球、肝細胞、眼の任意の細胞または呼吸器(respiratory)または肺(pulmonary)の上皮細胞である。肺の上皮細胞のトランスフェクションは、リポソーム、DNA−タンパク質複合体または複製欠陥性アデノウイルスにおけるDNAベクターのネブライザー製剤(a neubulized preparation)の吸入を介して生じ得る。例えば、米国特許第5,240,846を参照されたい。遺伝子治療の問題の総説に関しては、一般的に「遺伝子治療」(Advances in Pharmacology 40, Academic Press, 1997)を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】図1は、BMP2A遺伝子(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を示す;
【図2】図2は、対応するアミノ酸配列(配列番号2)を示す;
【図3】図3は、機能喪失バリデーション実験の結果を説明するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖オリゴリボヌクレオチドであって、1鎖は、5’から3’に配列番号3〜24に記載された配列を有している連続的なヌクレオチド又は各端領域で前記ヌクレオチドの2つまでにおいて1塩基(a base)が変更されたそのホモログを具備するオリゴリボヌクレオチド。
【請求項2】
二本鎖オリゴリボヌクレオチドであって、1鎖は、5’から3’に配列番号25〜45に記載された配列を有している連続的なヌクレオチド又は各端領域で前記ヌクレオチドの2つまでにおいて1塩基(a base)が変更されたそのホモログを具備するオリゴリボヌクレオチド。
【請求項3】
オリゴヌクレオチドであって、5’から3’に配列番号46〜66に記載された配列を有している連続的なヌクレオチド又はそのホモログを具備するオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1または2に記載のオリゴリボヌクレオチドまたは請求項3に記載のオリゴヌクレオチドを具備するベクター。
【請求項5】
請求項1または2に記載のオリゴリボヌクレオチド、請求項3に記載のオリゴヌクレオチドあるいは請求項4に記載のベクターを具備する薬学的組成物。
【請求項6】
被験者の神経変性疾患を治療する方法であって、前記被験者を治療するために、前記被験者に治療上効果的な量のBMP2Aインヒビターを含んでいる薬学的組成物を投与することを備える方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記薬学的組成物が、遺伝子BMP2Aの発現をコントロールと比較して少なくとも50%までダウンレギュレートするオリゴリボヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを具備する方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記BMP2Aインヒビターがアンチセンスオリゴヌクレオチドである方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが請求項3に記載のオリゴヌクレオチドである方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法であって、前記BMP2AインヒビターがBMP2A siRNAである方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記siRNAが請求項1に記載のオリゴリボヌクレオチドである方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記siRNAが請求項2に記載のオリゴリボヌクレオチドである方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、前記siRNAが、表1、ID番号1〜2、4〜6、14〜16および18〜22に記載される群から選択される配列を有する方法。
【請求項14】
請求項6〜13の何れか1項に記載の方法であって、前記疾患が脳卒中である方法。
【請求項15】
医薬の調製におけるBMP2Aインヒビターの使用。
【請求項16】
神経変性疾患の治療のための医薬の調製における、BMP2Aインヒビターの使用。
【請求項17】
請求項15または16に記載の使用であって、前記BMP2Aインヒビターがアンチセンスオリゴヌクレオチドである使用。
【請求項18】
請求項17に記載の使用であって、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが請求項3に記載のオリゴヌクレオチドである使用。
【請求項19】
請求項15または16に記載の使用であって、前記BMP2AインヒビターがBMP2A siRNAである使用。
【請求項20】
請求項19に記載の使用であって、前記siRNAが請求項1に記載のオリゴリボヌクレオチドである使用。
【請求項21】
請求項19に記載の使用であって、前記siRNAが請求項2に記載のオリゴリボヌクレオチドである使用。
【請求項22】
配列が配列番号46〜66に記載される連続的なヌクレオチドを具備するオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
配列が配列番号3〜45に記載される連続的なヌクレオチドを具備するオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
請求項22または23に記載のオリゴヌクレオチドを具備するベクター。
【請求項25】
請求項22または23に記載のオリゴヌクレオチドまたは請求項24に記載のベクターおよび薬学的に許容される担体を具備する薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−517498(P2007−517498A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−531018(P2006−531018)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000924
【国際公開番号】WO2005/041857
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【出願人】(502337583)クアーク・バイオテック・インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】