骨形成促進用合成ペプチド、この合成ペプチドを含む薬学組成物および培地組成物
【課題】BMP(Bone Morphogenetic Protein)−7に由来する15個のアミノ酸配列からなる合成ペプチド、この合成ペプチドを含む薬学組成物および培地組成物の提供。
【解決手段】BMP−7に存在する15個のアミノ酸配列からなって骨芽細胞分化を促進することを特徴とする骨形成促進用合成ペプチドを提供し、この骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、製薬上または獣医学上許容される液体または固体担体を含む薬学組成物を提供する。
【解決手段】BMP−7に存在する15個のアミノ酸配列からなって骨芽細胞分化を促進することを特徴とする骨形成促進用合成ペプチドを提供し、この骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、製薬上または獣医学上許容される液体または固体担体を含む薬学組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効な機能性を有するペプチドに係り、より具体的には、BMP(Bone Morphogenetic Protein)−7に由来する15個のアミノ酸配列からなる合成ペプチド、この合成ペプチドを含む薬学組成物および培地組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症(osteoporosis)は、骨組織の石灰が減少して骨の骨質が薄くなり、それにより骨髄腔が広くなる症状であって、症状が進展するにつれて骨が弱くなるため、小さい衝撃でも骨折され易い。
【0003】
骨の健康状態を決定する骨量は、様々な要因、例えば遺伝的要因、栄養摂取、ホルモンの変化、運動および生活習慣の差異などから影響を受けるが、特に老齢、運動不足、低体重、喫煙、低カルシウム食餌、閉経または卵巣切除などが骨粗鬆症の原因として知られている。
【0004】
個人差はあるが、白人よりは黒人の骨再吸収水準(bone resorption level)が低くて骨量がさらに高く、一般に14歳〜18歳に骨量が最も高く、老後には1年当たり約1%ずつ減少する。特に女性の場合、30歳以後から骨の減少が持続的に行われ、閉経期に達すると、ホルモン変化によって骨の減少が急激に行われる。すなわち、閉経期に達すると、エストロゲンの濃度が急激に減少するが、この際、Bリンパ球(B-lymphocyte)が多量生成されて骨髄(bone marrow)にB細胞前駆体(pre-B cell)が蓄積され、これによりIL−6の量が増加して破骨細胞の活性を増加させるので、結果として骨量が減少する。
【0005】
前述したように、骨粗鬆症は、程度には差異があるが、老年層、特に閉経期以後の女性においては避けられない症状であって、先進国では人口の老齢化に伴って骨粗鬆症およびその治療剤に対する関心が益々増加しつつある。
【0006】
また、骨関連疾患としては、骨粗鬆症以外にも、骨関節炎および骨欠損疾患などがあるが、骨関節炎は、関節の軟骨が損傷して局所的に退行性変化が現れる疾患であって、退行性関節炎ともいう。骨関節炎の原因は、2つの原因に分けられる。すなわち、関節の軟骨または骨は正常であるが関節に過度な負荷がかかって関節組織が損傷を受ける場合と、負荷は正常であるが関節の軟骨または骨が弱い場合である。
【0007】
骨欠損疾患は、人体の様々な部位に現れうるが、その主な原因として、骨質損失を伴った急性外傷、手術中の組織除去による骨損失を伴った急性外傷、骨切除を伴った慢性感染、分節性骨欠損を伴った慢性不癒合などを挙げることができる。
【0008】
実際、このような骨疾患治療に関連して全世界的に約1,300億ドル以上の市場が形成されており、その規模はこれからも増加し続けると予想されるため、世界的な各研究機関と製薬会社では骨疾患治療剤の開発に多くの投資を行っている。
【0009】
特に骨粗鬆症を例として挙げると、現在骨粗鬆症の治療剤として使われている物質は、エストロゲン(estrogen)、男性ホルモン作用タンパク同化ステロイド(androgenic anabolic steroid)、カルシウム製剤、リン酸塩、フッ素製剤、イプリフラボン(Ipriflavone)、ビタミンD3などがある。1995年米国Merck社ではアミノビスホスフォネート(aminobisphosphonate)を、1997年米国Lilly社では選択的なエストロゲン受容体調節器(selective estrogen receptor modulator、SERM)としての役割を果たすラロキシフェン(raloxifene)を骨粗鬆症治療剤として開発したことがある。
【0010】
一方、骨粗鬆症治療剤として骨吸収抑制剤のエストロゲンが最も広く使われているが、エストロゲンの商用化が子宮内膜癌、乳癌の発生頻度を増加させ、血栓症、胆石症、高血圧、浮腫、乳房痛などを誘発させるおそれがあり、閉経の後にエストロゲンとプロゲステロンを同時投与した女性を追跡観察した結果、乳癌、脳卒中、肺塞栓などの発生率が高いことが証明された。
【0011】
その他にも、ビスホスフォネート製剤(アレンドロネート、エチドロネート)、ビタミンD製剤、カルシトニン製剤またはカルシウム製剤などが骨粗鬆症治療剤として使用されるが、ビスホスフォネート製剤は、吸収率が低下するうえ、服用方法がややこしく、食道炎を誘発させる。
【0012】
ビタミンD製剤は、高価であり、効果が確実ではない。カルシトニン製剤は、高価であり、投与方法が容易ではない。カルシウム製剤は、副作用が少ないが、治療よりは予防効果に局限されるという欠点がある。
【0013】
しかも、骨粗鬆症は、薬物の短期投与のみでは治療することができず、薬物の長期投与が必須的である。よって、薬物を長期投与するときにも、前述したような副作用がなく、既存の治療物質を代替することができる程度に優れた薬効を持つ新規物質の開発が要求されている。
【0014】
ところが、現在韓国内の場合、骨粗鬆症に対する認識が足りないため、骨粗鬆症の予防と治療がまともに行われていないうえ、特に薬物乱用による二次性骨粗鬆症が激しい様相を示しており、これに対する結果が多くないため、韓国内とは状況が異なる西欧ヨーロッパの治療条件に合わせて治療を行う状態なので、韓国内の実情に合う正確な骨粗鬆症に対する研究と韓国内の骨粗鬆症患者に適した治療剤の開発が必要な実情である。
【0015】
このような状況は、骨関節炎も骨欠損疾患も大同小異な状態である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した従来の技術の諸般欠点と問題点を解決するために研究努力した結果、本発明者らは、骨芽細胞分化を促進するペプチドを合成することにより、本発明を完成した。
そこで、本発明の目的は、低廉な費用で合成可能であり、骨芽細胞分化または骨形成を促進するBMP−7に由来する15個のアミノ酸配列からなる合成ペプチドを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、骨形成促進用合成ペプチドを有効成分として含むため、副作用がなく、優れた薬効を示すうえ、生産コストが相対的に低い骨粗鬆症、骨関節炎、および/または骨欠損疾患の治療に有効な薬学組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、骨形成促進用合成ペプチドを含んで骨芽細胞分化または骨形成 の速度を実験者の意図に応じて調節することが可能な骨芽細胞分化培地組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の目的は以上で言及した目的に制限されず、言及されていない別の目的は下記の記載から当業者には明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は、BMP−7に存在する15個のアミノ酸配列からなって骨芽細胞分化または骨形成を促進することを特徴とする、骨形成促進用合成ペプチドを提供する。
【0021】
好適な実施例において、前記ペプチドは下記配列番号1のポリペプチドまたはその相同体である。
【0022】
<配列番号1>
Gly−Gln−Gly−Phe−Ser−Tyr−Pro−Tyr−Lys−Ala−Val−Phe−Ser−Thr−Gln
好適な実施例において、前記ペプチドは下記配列番号2のポリペプチドまたはその相同体である。
【0023】
<配列番号2>
Val−Glu−His−Asp−Lys−Glu−Phe−Phe−His−Pro−Arg−Tyr−His−His−Arg
好適な実施例において、骨芽細胞分化または骨形成を促進するための前記合成ペプチドの添加含量は0.1〜2μg/mLである。
【0024】
また、本発明は、請求項1〜4のいずれか1項の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、製薬上または獣医学上許容される液体または固体担体を含む薬学組成物を提供する。
【0025】
好適な実施例において、前記合成ペプチドまたはその無毒性塩は、骨粗鬆症、骨関節炎および骨欠損疾患治療のための有効成分として作用する。
【0026】
また、本発明は、請求項1〜4のいずれか1項の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、培地製造の際に許容可能な液体または固体担体を含む骨芽細胞培地組成物を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、次のような優れた効果を持つ。
【0028】
まず、本発明の骨形成促進用合成ペプチドは、骨芽細胞が分化されるときに骨芽細胞の分化を促進させて速い骨形成を誘導するので、骨芽細胞分化または骨形成の速度を促進させる必要のある様々な分野に応用できる。
【0029】
また、本発明の骨形成促進用合成ペプチドを有効成分として含む薬学組成物は、骨粗鬆症、骨関節炎、および/または骨欠損疾患治療の際に既存の治療物質に比べて副作用がなく、既存の治療物質を代替することができる程度に優れた薬効、すなわち骨芽細胞分化促進効果による速い骨形成効果を持つうえ、生産コストが相対的に低いので経済性の側面でも優れた効果を持つ。
【0030】
また、本発明の骨形成促進用合成ペプチドが含まれた培地組成物は、実験者が骨芽細胞分化速度を調節することができるので、様々な実験条件を実現して実験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】本発明の骨形成促進用合成ペプチドとしてのBFP1のアミノ酸配列情報を示す図である。
【図1b】本発明の骨形成促進用合成ペプチドとしてのBFP2のアミノ酸配列情報を示す図である。
【図2a】BFP1の構造図である。
【図2b】BFP2の構造図である。
【図3a】BFP1の細胞毒性結果を示すグラフである。
【図3b】BFP2の細胞毒性結果を示すグラフである。
【図4a】BFP1による骨芽細胞分化により蓄積されるミネラリゼーションを測定するアリザリンレッド染色によって確認した結果写真である。
【図4b】BFP2による骨芽細胞分化により蓄積されるミネラリゼーションを測定するアリザリンレッド染色によって確認した結果写真である。
【図5a】BFP1による骨芽細胞特定遺伝子、コラーゲンタイプ1、アルカリ性ホスファターゼ(ALP)、Runx2遺伝子の発現を測定した結果グラフである。
【図5b】BFP2による骨芽細胞特定遺伝子アルカリ性ホスファターゼ(ALP)の発現を確認した写真である。
【図6a】BFP1による骨芽細胞特定遺伝子としてのオステオカルシンの発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図6b】BFP2による骨芽細胞特定遺伝子としてのオステオカルシンの発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図7a】BFP1による骨芽細胞特定遺伝子としてのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)の発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図7b】BFP2による骨芽細胞特定遺伝子としてのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)の発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図8a】BFP1による骨芽細胞特定遺伝子としてのRunx2の発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図8b】BFP2による骨芽細胞特定遺伝子としてのRunx2の発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図9a】BFP1による骨芽細胞分化に関連した細胞表面マーカーの発現をFACS分析によって調査した結果である(灰色矢印はODM単独、黒色矢印はODM+合成ペプチド)。
【図9b】BFP2による骨芽細胞分化に関連した細胞表面マーカーの発現をFACS分析によって調査した結果である(灰色矢印はODM単独、黒色矢印はODM+合成ペプチド)。
【図10a】BFP1による細胞表面マーカーCD44の発現を蛍光顕微鏡によって観察した結果写真である。
【図10b】BFP2による細胞表面マーカーCD44の発現を蛍光顕微鏡によって観察した結果写真である。
【図11a】BFP1による骨芽細胞特定酵素としてのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)とカルシウムの濃度を商業的に販売する診断キットを用いて確認した結果グラフである。
【図11b】BFP2による骨芽細胞特定酵素としてのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)とカルシウムの濃度を商業的に販売する診断キットを用いて確認した結果グラフである。
【図12】BFP1に蛍光物質としてのFITCを結合させて細胞に処理した後で観察した結果写真である。
【図13a】中間葉幹細胞が骨芽細胞に分化されながら細胞の移動を確認するためにBFP1に対して化学走化性実験法を行った結果グラフである。
【図13b】中間葉幹細胞が骨芽細胞に分化されながら細胞の移動を確認するためにBFP2に対して化学走化性実験法を行った結果グラフである。
【図14a】BFP1の骨細胞形成を確認するために、マウスを用いて動物実験を行った結果写真である。
【図14b】BFP2の骨細胞形成を確認するために、マウスを用いて動物実験を行った結果写真である。
【図15a】BFP1の骨細胞形成を確認するための動物実験において、8週目の組織を切り取り、ヘマトキシリン・エオシン染色により骨組織の形成を観察した結果写真である。
【図15b】BFP2の骨細胞形成を確認するための動物実験において、8週目の組織を切り取り、ヘマトキシリン・エオシン染色により骨組織の形成を観察した結果写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明で使用される用語は、出来る限り現在広く用いられる一般な用語を選択したが、特定の場合は出願人が任意に選定した用語もあるが、この場合には単純な用語の名称ではなく、発明の詳細説明部分に記載または使用された意味を考慮してその意味が把握されなければならない。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を参照して本発明の技術的構成を詳細に説明する。ところが、本発明はここで説明される実施例に限定されず、他の形態でも具体化できる。
現在、骨形態発生活性は、TGF(形質転換成長因子)−βスーパーファミリに属する骨形態発生因子BMPについて報告されている(Science 150, 893-897, 1965; Science 242; 1528-1534, 1988)。公知のBMP種はBMP−1〜BMP−14である。これらの中で、BMP−2〜BMP−14は骨形態発生活性を示すものと知られている。BMP−2〜BMP−14のBMPは様々な骨機能障害および骨疾患の治療的処置に効果的なものと思われているが、これらは自然界に極小量で存在する。よって、このような処置に用いられるBMP−2〜BMP−14を手に入れることができるように多量で得るには組み換えタンパク質の製造を必要とする。組み換えタンパク質の製造は一般に低分子量化合物に比べて費用が高くかかる。他方、そのタンパク質特性のため、物性および投与の側面で医学的には多くの制約がある。このような点を考慮するとき、前記BMPタンパク質と同一の活性を有する低分子量有機化合物が存在するならば、その有機化合物は非常に有望な医薬になるであろう。
本発明者らは、このような点に着目し、BMP−7に存在するアミノ酸配列を研究した結果、BMP−7に存在する15個のアミノ酸からなる下記のような配列を有するペプチドがヒトBMP−7(骨形成因子)の発現を誘発させる活性を有し、且つヒトBMP−7と同一の効能を持って非常に高い有用性を有することを発見し、BFP1(bone forming peptide : 配列番号1)およびBFP2(bone forming peptide 2 : 配列番号2)とそれぞれ命名した。
<配列番号1>
Gly−Gln−Gly−Phe−Ser−Tyr−Pro−Tyr−Lys−Ala−Val−Phe−Ser−Thr−Gln
<配列番号2>
Val−Glu−His−Asp−Lys−Glu−Phe−Phe−His−Pro−Arg−Tyr−His−HIs−Arg
前記BFP1およびBFP2は、BMP−7に由来する15個のアミノ酸からなる配列のペプチドであって、公知のペプチド合成法によって人為的に合成可能である。
また、後述の実験例によって明らかになったが、骨芽細胞分化培地を用いて骨芽細胞(正確にはマウス中間葉幹細胞)の分化を誘導したとき、一般な骨芽細胞分化培地のみを用いて分化するときより本発明のBFP1またはBFP2を処理したとき、さらに強く骨芽細胞が分化されることを確認することができた。
したがって、前記BFP1およびBFP2を含む本発明のBMP−7に存在する15個のアミノ酸からなる骨形成促進用合成ペプチドは、骨芽細胞が分化されるときに骨芽細胞の分化を促進させて分化能を向上させるので、骨形成促進効能を持っていることが分かる。
これにより、本発明の骨形成促進用合成ペプチドが著しい骨芽細胞分化の誘導活性または骨形成促進活性を示すことが分かるので、骨粗鬆症、骨関節炎または骨欠損疾患などを含む骨疾患により骨損失がある場合、本発明の合成ペプチドまたはその無毒性塩を有効成分として含む薬学組成物を骨欠損部位に充填または投与すると、骨粗鬆症、骨欠損疾患および/または骨関節炎を治療することができるという効能があることが分かる。
以下では、本発明のBMP−7由来の15個のアミノ酸配列を有する骨形成促進用合成ペプチドのうち好適な実施例としてのBFP1およびBFP2それぞれの骨芽細胞分化誘導活性および骨形成促進活性について、実験例および図面を参照してより具体的に考察する。
図1a〜図3bは本発明のBFP1およびBFP2のアミノ酸配列の順序、BFP1およびBFP2の構造、並びにBFP1およびBFP2の細胞毒性をそれぞれ示す。
この際、図1aおよび図1bに示すような配列情報、すなわち配列番号1を有するBFP1と配列番号2を有するBFP2は、それぞれBMP−7の全体アミノ酸配列の一部と同一のものと公知になっているペプチド合成方法を用いて、下記配列番号1および配列番号2のような15個のアミノ酸配列を持つように合成されたものである。
<配列番号1>
Gly−Gln−Gly−Phe−Ser−Tyr−Pro−Tyr−Lys−Ala−Val−Phe−Ser−Thr−Gln
(G−Q−G−F−S−Y−P−Y−K−A−V−F−S−T−Q)
<配列番号2>
Val−Glu−His−Asp−Lys−Glu−Phe−Phe−His−Pro−Arg−Tyr−His−His−Arg
(V−E−H−D−K−E−F−F−H−P−R−Y−H−H−R)
図2aおよび図2bに示すように、前記合成されたBFP1およびBFP2の構造を商用プログラムを用いて確認した結果、図1aおよび図1bに示すような配列を有するα−へリックス構造を持っていることを確認することができた。
この際、合成されたBFP1およびBFP2の細胞に対する毒性を調べるために、実験に使用された濃度範囲内で細胞毒性実験をMTT方法によって行った結果、図3aおよび図3bに示すように細胞毒性が現れないことを確認することができた。
実験例1
BFP1およびBFP2の骨芽細胞分化活性を確認するために、次の実験を行った。
1.骨芽細胞および骨芽細胞分化培地の準備
10%FBS入りのDMEMに1×104個の中間葉幹細胞(Balb/cマウス骨髄間質細胞からクローンされる)が入るように分注した後、約3日間約37℃の温度を維持する5%の二酸化炭素が含有された大気中で培養して、本実験に使用される骨芽細胞として前記中間葉幹細胞が準備された。
【0033】
骨芽細胞分化培地(osteogenic differentiation medium、以下「ODM」という)は、50μg/mLアスコルビン酸、10−8M デキサメタゾンおよび10mM β−グリセロホスフェートなどが添加されたDMEMからなる。
【0034】
2.ミネラリゼーションの測定
前記中間葉幹細胞の骨芽細胞への分化が行われると、カルシウムが蓄積されるが、この際、カルシウムイオンの蓄積程度は骨芽細胞の分化程度を意味し、カルシウムイオンの蓄積程度はアリザリン染色によって赤色に染色される度合いを観察すれば確認することができるという点に着目し、アリザリンレッド染色によってミネラリゼーションを測定した。すなわち、骨芽細胞に分化が促進されるほど、アリザリンレッドによって染色される部分が多くなるためである。
【0035】
したがって、骨芽細胞分化培地にアリザリンレッドを入れてBFP1および/またはBFP2を処理した後、アリザリンレッドの染色度合いを見て骨芽細胞分化程度を確認することができる。
【0036】
より具体的に考察すると、まず、BFP1の場合は、前記骨芽細胞分化培地に、準備された骨芽細胞、すなわち中間葉幹細胞を移して3日間培養した後、BFP1を0.1μg/mL、1μg/mL、2μg/mLずつそれぞれ添加して2日間さらに培養した。
【0037】
BFP2の場合もBFP1と同様に行った。
その後、培養された前記中間葉幹細胞を氷に冷却させた70%エタノールで1時間固定し、アリザリンレッド−s(alinzarin red-s)溶液で約10分間染色してカルシウムの沈着程度から無機質化を確認し、その結果を図4aおよび図4bに示した。
【0038】
本発明のBMP−7に由来した骨形成促進用合成ペプチドとしてのBFP1またはBFP2による骨芽細胞分化によって蓄積されるミネラリゼーションを測定するアリザリンレッド染色によって確認した結果写真を示す図4aおよび図4bより、1μg/mLのBFP1またはBFP2が入った細胞で最も強く染色されることを確認することができ、BMP−7を用いて骨芽細胞分化を確認した結果と比較すれば、本発明のBFP1またはBFP2より弱く染色されることを確認することができた。よって、BFP1またはBFP2がBMP−7に比べて骨芽細胞分化を促進することが分かる。
【0039】
実験例2
骨芽細胞特定遺伝子としてのコラーゲンタイプ1、アルカリ性ホスファターゼ、Runx2遺伝子が本発明の骨形成促進用合成ペプチドのうちBFP1によって発現する程度を測定する実験を行い、その結果を図5aに示した。
【0040】
すなわち、骨芽細胞への分化が行われると、骨芽細胞特定遺伝子が発現するが、このような遺伝子の発現を最新技術としての実時間遺伝子増幅を用いて確認した結果、骨芽細胞分化培地を入れて発現した遺伝子を100%に計算したとき、コラーゲンタイプ1の場合にはBFP1 1μg/mLで171%の遺伝子発現を確認し、アルカリ性ホスファターゼの場合にはBFP1 1μg/mLで241%の遺伝子発現を確認し、Runx2の場合にもBFP1 1μg/mLの濃度で178%の遺伝子発現を確認することができた。
【0041】
BFP2の場合にも、逆転写遺伝子増幅(RT−PCR)を用いて骨芽細胞特定遺伝子としてのアルカリ性ホスファターゼの発現を測定した結果を図5bに示した。
【0042】
アルカリ性ホスファターゼの発現が1μg/mLの濃度で強く発現することを確認することができた。
【0043】
実験例3
本発明のBFP1とBFP2が骨芽細胞分化活性にどんな影響を与えるかを確認するために、骨芽細胞特定遺伝子であるオステオカルシン、アルカリ性ホスファターゼおよびRunx2がBFP1およびBFP2によって発現する程度を、抗体を用いて蛍光顕微鏡によって分析し、その結果写真を図6a、図6b、図7a、図7b、図8aおよび図8bにそれぞれ示した。
すなわち、骨芽細胞への分化が行われると、骨芽細胞特定タンパク
質が発現するが、このようなタンパク質は、これらのタンパク質に対する抗体を細胞に反応させて結合した程度を蛍光顕微鏡によって確認した結果、骨芽細胞から分泌される骨基質物質であり、それぞれの活性程度は骨芽細胞増殖の判定要素であって、その濃度が増加すると、骨芽細胞の成長および分化が活発であることを知らせるオステオカルシンの場合、BFP1およびBFP2を1μg/mL添加したとき、骨芽細胞分化培地(ODM)を入れたものとBMP−7を入れたものよりさらに強く緑色(図面では明るい部分で表現される)で発現することを確認することができた。
ここで、PIは生きている細胞の核を染色することであって、それぞれの細胞が生きていることを確認することができ、目的タンパク質であるオステオカルシンの場合、緑色の蛍光抗体を用いて細胞で発現することを示す。mergeは、細胞の核が染色されたものと目的タンパク質の発現を重畳させることにより、同一の細胞で目的タンパク質が発現することを示す。
アルカリ性ホスファターゼ(alkaline phosphatase)は、骨形成の指標となる酵素であって、骨芽細胞の分化中期に生成されるが、アルカリ性ホスファターゼもBFP1およびBFP2の1μg/mLで強く発現することを確認することができた。
Runx2は、骨芽細胞における骨芽細胞特定タンパク質の生産に重要な作用を果たす転写調節因子であって、骨芽細胞分化に重要な役割を果たす。このようなRunx2はBFP1およびBFP2の1μg/mLで強く発現することを確認することができた。
実験例4
中間葉幹細胞は、骨、軟骨、脂肪組織、筋肉、腱、靱帯、神経組織および血管に分化できるように様々な表面タンパク質を含んでいる。本実験では、様々な表面タンパク質のうち、前記中間葉幹細胞の骨芽細胞への分化から現れる特定表面タンパク質CD44、CD51、CD47、CD45の発現程度をFACS分析によって測定することにより、本発明のBFP1およびBFP2がどんな影響を与えるかを確認した。その確認結果を図9aおよび図9bに示した。
まず、BFP1による骨芽細胞分化に関連した細胞表面マーカーの発現をFACS分析によって調査した結果(灰色矢印はODM単独、黒色矢印はODM+BFP1)を示す図9aを参照すると、中間葉幹細胞で発現する細胞表面マーカーCD44がBFP1を骨芽細胞分化培地に添加すると、骨芽細胞への分化過程中に強く発現することを確認することができた。特に骨芽細胞分化培地にBFP1 1μg/mLを入れたとき、CD44の発現がより強く現れることを確認した。一方、骨芽細胞分化の際に発現するCD47とCD51も、骨芽細胞分化培地を単独で入れたときよりBFP1を一緒に入れたときにさらに強く発現することを確認することができた。
また、BFP2による骨芽細胞分化に関連した細胞表面マーカーの発現をFACS分析によって調べた結果(灰色矢印はODM単独、黒色矢印はODM+BFP2)を示す図9bを参照すると、中間葉幹細胞で発現する細胞表面マーカーCD44がBFP2を骨芽細胞分化培地に添加すると、骨芽細胞への分化過程中に強く発現することを確認することができた。そして、骨芽細胞分化培地とBFP2を1μg/mL入れたときにCD44の発現がより強く現れることを確認した。
一方、骨芽細胞分化の際に発現するCD51の発現も、骨芽細胞分化培地を単独で入れたときよりBFP2を一緒に入れたときにさらに強い発現を確認することができた。
CD45は、造血系幹細胞の表面因子であって、本実験に使用された細胞が造血系に由来しないことを示すために使用した。図9aおよび図9bより、CD45の発現がないことを確認することができた。これは本実験に使用した細胞が造血系由来幹細胞ではないことを確認することができる。
実験例5
BFP1およびBFP2による細胞表面マーカーCD44の発現を蛍光顕微鏡によって観察した後、その結果を図10aおよび図10bに示した。
すなわち、細胞分化の際に細胞が生きていることを確認するために、核に染色を施して青色を示すDAPI染色と、CD44に結合して赤色を示すCD44抗体を用いて、蛍光顕微鏡の下で観察した結果である。
核が青色で染色されることを観察することができ、CD44が赤く染色されることを観察することができた。この染色を重ねて確認した結果、細胞においてCD44が発現することが分かった。そして、骨芽細胞分化培地を単独で処理したものより、骨芽細胞分化培地にBFP1またはBFP2を入れたときに強くCD44が発現することが分かった。また、BMP−7をBFP1またはBFP2と同じ濃度を用いて蛍光顕微鏡の下で観察したが、BFP1またはBFP2より弱く染色されたことを確認することができた。
実験例6
BFP1およびBFP2を用いた骨芽細胞分化において発現する骨芽細胞特定酵素としてのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)とカルシウムの濃度を商業的に販売する診断キットを用いて確認し、その結果を図11aおよび図11bに示した。
図11aより、BFP1が1μg/mL濃度のときに有意的な増加を示すことを観察することができた。図11bより、BFP2が1μg/mL濃度のときに有意的な増加を示すことを観察することができた。
実験例7
BFP1に蛍光物質FITCを結合させて細胞に処理した後で観察された結果写真を図12に示した。ここで、この実験は本発明によって合成製造されたBFP1が細胞内でどのように作用するかを確認するためのものである。
図12に示すように、BFP1に蛍光物質FITCを結合させて細胞に処理した後で観察した結果、BFP1が細胞内に入っていることを確認することができる。
実験例8
中間葉幹細胞の骨芽細胞へ分化が行われながら細胞が移動することを確認するために、BFP1およびBFP2それぞれに対して化学走化性実験法を行い、その結果グラフを図13aおよび図13bに示した。
すなわち、中間葉幹細胞それぞれの分化培地に分化因子(BMP−7、BFP1、BFP2)を処理した後、細胞の移動を確認した結果、図13aおよび図13bに示すように、BFP1またはBFP2はBMP−7よりさらに多くの細胞が移動することを観察した。この結果より、本発明のBFP1またはBFP2が骨欠損などの疾患において骨芽細胞を傷部位に速く移動させ得ることを確認することができる。
実験例9
BFP1またはBFP2が生体内の骨細胞形成を促進するか否かを確認するために、マウスを用いて動物実験を行った(n=6)。まず、中間葉幹細胞の分化を誘導するために、ODMを3日にわたって2回処理し、第2回目のODMを添加するときにBMP−7、BFP1およびBFP2を処理した後、24時間経過後に細胞を収集して同数の細胞数を測定し、しかる後に、マウスの背部分にコラーゲンを支持体として用いて移植した。移植4週後と8週後にX線を用いて骨形成を比較し、その結果写真を図14aおよび図14bに示した。特に、8週目の組織を切り取って脱灰(decalcification)した後、ヘマトキシリン・エオシン(hematoxylin & eosin)染色により骨組織の形成を観察し、その結果写真を図15aおよび図15bに示した。
図14aおよび図14bに示すように、移植4週後にはBFP1とBFP2の処理部位に骨が形成されることをX線上で観察することができた。移植8週後の結果写真は、骨形成がBFP1またはBFP2の処理部位でBMP−7の処理部位よりさらに強くなされることを示している。
また、図15aおよび図15bに示すように、対照群としてのBMP−7を処理した結果と比較するとき、本発明の骨形成促進用ペプチドであるBFP1およびBFP2による骨形成も非常に良好になされていることを確認することができる。
このような実験結果より、本発明の骨形成促進用合成ペプチドBFP1またはBFP2が、骨芽細胞分化を促進するものと知られている従来のBMP−7よりさらに骨芽細胞分化促進に重要な影響を及ぼすので、BMP−7と同一またはそれ以上の骨形成強度をもってさらに広い範囲で速い骨形成を誘導することができることが分かる。
したがって、本発明は、骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、製薬上または獣医学上許容される液体または固体担体を含む薬学組成物を提供することができる。ここで、製薬上または獣医学上許容される液体または固体担体は、限定されず、公知のものを全て使用することができるので、その詳細な説明は省略する。
特に、BFP1またはBFP2を生体に投与したときに骨形成が促進されることを示す実験例9の結果は、BFP1またはBFP2を含む本発明の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩が有効成分として含まれた薬学組成物を、骨粗鬆症および/または骨関節炎が発生した骨髄部位に投与すると、骨髄の骨芽細胞分化を促進して骨形成を促進することができることを明確に示す。その結果、本発明の薬学組成物は有効な骨粗鬆症および/または骨関節炎治療剤として作用することができる。
また、同様に、BFP1またはBFP2を含む本発明の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩が有効成分として含まれた薬学組成物を、骨欠損疾患の骨欠損部位に充填または投与すると、骨形成促進によって骨修復を効果的に行うことができる。
一方、具体的な実施例として提示してはいないが、BFP1またはBFP2を含む本発明の骨形成促進用合成ペプチドを骨芽細胞分化培地組成物に添加すると、骨芽細胞を用いる実験の際に実験者が実験速度を調節することができるため、容易に実験を行うことができるのは当たり前である。
以上、本発明の好適な実施例を挙げて図示し説明したが、前述した実施例に限定されず、本発明の精神から外れない範囲内において、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって多様な変更と修正が可能であろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効な機能性を有するペプチドに係り、より具体的には、BMP(Bone Morphogenetic Protein)−7に由来する15個のアミノ酸配列からなる合成ペプチド、この合成ペプチドを含む薬学組成物および培地組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症(osteoporosis)は、骨組織の石灰が減少して骨の骨質が薄くなり、それにより骨髄腔が広くなる症状であって、症状が進展するにつれて骨が弱くなるため、小さい衝撃でも骨折され易い。
【0003】
骨の健康状態を決定する骨量は、様々な要因、例えば遺伝的要因、栄養摂取、ホルモンの変化、運動および生活習慣の差異などから影響を受けるが、特に老齢、運動不足、低体重、喫煙、低カルシウム食餌、閉経または卵巣切除などが骨粗鬆症の原因として知られている。
【0004】
個人差はあるが、白人よりは黒人の骨再吸収水準(bone resorption level)が低くて骨量がさらに高く、一般に14歳〜18歳に骨量が最も高く、老後には1年当たり約1%ずつ減少する。特に女性の場合、30歳以後から骨の減少が持続的に行われ、閉経期に達すると、ホルモン変化によって骨の減少が急激に行われる。すなわち、閉経期に達すると、エストロゲンの濃度が急激に減少するが、この際、Bリンパ球(B-lymphocyte)が多量生成されて骨髄(bone marrow)にB細胞前駆体(pre-B cell)が蓄積され、これによりIL−6の量が増加して破骨細胞の活性を増加させるので、結果として骨量が減少する。
【0005】
前述したように、骨粗鬆症は、程度には差異があるが、老年層、特に閉経期以後の女性においては避けられない症状であって、先進国では人口の老齢化に伴って骨粗鬆症およびその治療剤に対する関心が益々増加しつつある。
【0006】
また、骨関連疾患としては、骨粗鬆症以外にも、骨関節炎および骨欠損疾患などがあるが、骨関節炎は、関節の軟骨が損傷して局所的に退行性変化が現れる疾患であって、退行性関節炎ともいう。骨関節炎の原因は、2つの原因に分けられる。すなわち、関節の軟骨または骨は正常であるが関節に過度な負荷がかかって関節組織が損傷を受ける場合と、負荷は正常であるが関節の軟骨または骨が弱い場合である。
【0007】
骨欠損疾患は、人体の様々な部位に現れうるが、その主な原因として、骨質損失を伴った急性外傷、手術中の組織除去による骨損失を伴った急性外傷、骨切除を伴った慢性感染、分節性骨欠損を伴った慢性不癒合などを挙げることができる。
【0008】
実際、このような骨疾患治療に関連して全世界的に約1,300億ドル以上の市場が形成されており、その規模はこれからも増加し続けると予想されるため、世界的な各研究機関と製薬会社では骨疾患治療剤の開発に多くの投資を行っている。
【0009】
特に骨粗鬆症を例として挙げると、現在骨粗鬆症の治療剤として使われている物質は、エストロゲン(estrogen)、男性ホルモン作用タンパク同化ステロイド(androgenic anabolic steroid)、カルシウム製剤、リン酸塩、フッ素製剤、イプリフラボン(Ipriflavone)、ビタミンD3などがある。1995年米国Merck社ではアミノビスホスフォネート(aminobisphosphonate)を、1997年米国Lilly社では選択的なエストロゲン受容体調節器(selective estrogen receptor modulator、SERM)としての役割を果たすラロキシフェン(raloxifene)を骨粗鬆症治療剤として開発したことがある。
【0010】
一方、骨粗鬆症治療剤として骨吸収抑制剤のエストロゲンが最も広く使われているが、エストロゲンの商用化が子宮内膜癌、乳癌の発生頻度を増加させ、血栓症、胆石症、高血圧、浮腫、乳房痛などを誘発させるおそれがあり、閉経の後にエストロゲンとプロゲステロンを同時投与した女性を追跡観察した結果、乳癌、脳卒中、肺塞栓などの発生率が高いことが証明された。
【0011】
その他にも、ビスホスフォネート製剤(アレンドロネート、エチドロネート)、ビタミンD製剤、カルシトニン製剤またはカルシウム製剤などが骨粗鬆症治療剤として使用されるが、ビスホスフォネート製剤は、吸収率が低下するうえ、服用方法がややこしく、食道炎を誘発させる。
【0012】
ビタミンD製剤は、高価であり、効果が確実ではない。カルシトニン製剤は、高価であり、投与方法が容易ではない。カルシウム製剤は、副作用が少ないが、治療よりは予防効果に局限されるという欠点がある。
【0013】
しかも、骨粗鬆症は、薬物の短期投与のみでは治療することができず、薬物の長期投与が必須的である。よって、薬物を長期投与するときにも、前述したような副作用がなく、既存の治療物質を代替することができる程度に優れた薬効を持つ新規物質の開発が要求されている。
【0014】
ところが、現在韓国内の場合、骨粗鬆症に対する認識が足りないため、骨粗鬆症の予防と治療がまともに行われていないうえ、特に薬物乱用による二次性骨粗鬆症が激しい様相を示しており、これに対する結果が多くないため、韓国内とは状況が異なる西欧ヨーロッパの治療条件に合わせて治療を行う状態なので、韓国内の実情に合う正確な骨粗鬆症に対する研究と韓国内の骨粗鬆症患者に適した治療剤の開発が必要な実情である。
【0015】
このような状況は、骨関節炎も骨欠損疾患も大同小異な状態である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した従来の技術の諸般欠点と問題点を解決するために研究努力した結果、本発明者らは、骨芽細胞分化を促進するペプチドを合成することにより、本発明を完成した。
そこで、本発明の目的は、低廉な費用で合成可能であり、骨芽細胞分化または骨形成を促進するBMP−7に由来する15個のアミノ酸配列からなる合成ペプチドを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、骨形成促進用合成ペプチドを有効成分として含むため、副作用がなく、優れた薬効を示すうえ、生産コストが相対的に低い骨粗鬆症、骨関節炎、および/または骨欠損疾患の治療に有効な薬学組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、骨形成促進用合成ペプチドを含んで骨芽細胞分化または骨形成 の速度を実験者の意図に応じて調節することが可能な骨芽細胞分化培地組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の目的は以上で言及した目的に制限されず、言及されていない別の目的は下記の記載から当業者には明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は、BMP−7に存在する15個のアミノ酸配列からなって骨芽細胞分化または骨形成を促進することを特徴とする、骨形成促進用合成ペプチドを提供する。
【0021】
好適な実施例において、前記ペプチドは下記配列番号1のポリペプチドまたはその相同体である。
【0022】
<配列番号1>
Gly−Gln−Gly−Phe−Ser−Tyr−Pro−Tyr−Lys−Ala−Val−Phe−Ser−Thr−Gln
好適な実施例において、前記ペプチドは下記配列番号2のポリペプチドまたはその相同体である。
【0023】
<配列番号2>
Val−Glu−His−Asp−Lys−Glu−Phe−Phe−His−Pro−Arg−Tyr−His−His−Arg
好適な実施例において、骨芽細胞分化または骨形成を促進するための前記合成ペプチドの添加含量は0.1〜2μg/mLである。
【0024】
また、本発明は、請求項1〜4のいずれか1項の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、製薬上または獣医学上許容される液体または固体担体を含む薬学組成物を提供する。
【0025】
好適な実施例において、前記合成ペプチドまたはその無毒性塩は、骨粗鬆症、骨関節炎および骨欠損疾患治療のための有効成分として作用する。
【0026】
また、本発明は、請求項1〜4のいずれか1項の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、培地製造の際に許容可能な液体または固体担体を含む骨芽細胞培地組成物を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、次のような優れた効果を持つ。
【0028】
まず、本発明の骨形成促進用合成ペプチドは、骨芽細胞が分化されるときに骨芽細胞の分化を促進させて速い骨形成を誘導するので、骨芽細胞分化または骨形成の速度を促進させる必要のある様々な分野に応用できる。
【0029】
また、本発明の骨形成促進用合成ペプチドを有効成分として含む薬学組成物は、骨粗鬆症、骨関節炎、および/または骨欠損疾患治療の際に既存の治療物質に比べて副作用がなく、既存の治療物質を代替することができる程度に優れた薬効、すなわち骨芽細胞分化促進効果による速い骨形成効果を持つうえ、生産コストが相対的に低いので経済性の側面でも優れた効果を持つ。
【0030】
また、本発明の骨形成促進用合成ペプチドが含まれた培地組成物は、実験者が骨芽細胞分化速度を調節することができるので、様々な実験条件を実現して実験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】本発明の骨形成促進用合成ペプチドとしてのBFP1のアミノ酸配列情報を示す図である。
【図1b】本発明の骨形成促進用合成ペプチドとしてのBFP2のアミノ酸配列情報を示す図である。
【図2a】BFP1の構造図である。
【図2b】BFP2の構造図である。
【図3a】BFP1の細胞毒性結果を示すグラフである。
【図3b】BFP2の細胞毒性結果を示すグラフである。
【図4a】BFP1による骨芽細胞分化により蓄積されるミネラリゼーションを測定するアリザリンレッド染色によって確認した結果写真である。
【図4b】BFP2による骨芽細胞分化により蓄積されるミネラリゼーションを測定するアリザリンレッド染色によって確認した結果写真である。
【図5a】BFP1による骨芽細胞特定遺伝子、コラーゲンタイプ1、アルカリ性ホスファターゼ(ALP)、Runx2遺伝子の発現を測定した結果グラフである。
【図5b】BFP2による骨芽細胞特定遺伝子アルカリ性ホスファターゼ(ALP)の発現を確認した写真である。
【図6a】BFP1による骨芽細胞特定遺伝子としてのオステオカルシンの発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図6b】BFP2による骨芽細胞特定遺伝子としてのオステオカルシンの発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図7a】BFP1による骨芽細胞特定遺伝子としてのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)の発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図7b】BFP2による骨芽細胞特定遺伝子としてのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)の発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図8a】BFP1による骨芽細胞特定遺伝子としてのRunx2の発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図8b】BFP2による骨芽細胞特定遺伝子としてのRunx2の発現を蛍光顕微鏡によって測定した結果写真である。
【図9a】BFP1による骨芽細胞分化に関連した細胞表面マーカーの発現をFACS分析によって調査した結果である(灰色矢印はODM単独、黒色矢印はODM+合成ペプチド)。
【図9b】BFP2による骨芽細胞分化に関連した細胞表面マーカーの発現をFACS分析によって調査した結果である(灰色矢印はODM単独、黒色矢印はODM+合成ペプチド)。
【図10a】BFP1による細胞表面マーカーCD44の発現を蛍光顕微鏡によって観察した結果写真である。
【図10b】BFP2による細胞表面マーカーCD44の発現を蛍光顕微鏡によって観察した結果写真である。
【図11a】BFP1による骨芽細胞特定酵素としてのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)とカルシウムの濃度を商業的に販売する診断キットを用いて確認した結果グラフである。
【図11b】BFP2による骨芽細胞特定酵素としてのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)とカルシウムの濃度を商業的に販売する診断キットを用いて確認した結果グラフである。
【図12】BFP1に蛍光物質としてのFITCを結合させて細胞に処理した後で観察した結果写真である。
【図13a】中間葉幹細胞が骨芽細胞に分化されながら細胞の移動を確認するためにBFP1に対して化学走化性実験法を行った結果グラフである。
【図13b】中間葉幹細胞が骨芽細胞に分化されながら細胞の移動を確認するためにBFP2に対して化学走化性実験法を行った結果グラフである。
【図14a】BFP1の骨細胞形成を確認するために、マウスを用いて動物実験を行った結果写真である。
【図14b】BFP2の骨細胞形成を確認するために、マウスを用いて動物実験を行った結果写真である。
【図15a】BFP1の骨細胞形成を確認するための動物実験において、8週目の組織を切り取り、ヘマトキシリン・エオシン染色により骨組織の形成を観察した結果写真である。
【図15b】BFP2の骨細胞形成を確認するための動物実験において、8週目の組織を切り取り、ヘマトキシリン・エオシン染色により骨組織の形成を観察した結果写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明で使用される用語は、出来る限り現在広く用いられる一般な用語を選択したが、特定の場合は出願人が任意に選定した用語もあるが、この場合には単純な用語の名称ではなく、発明の詳細説明部分に記載または使用された意味を考慮してその意味が把握されなければならない。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を参照して本発明の技術的構成を詳細に説明する。ところが、本発明はここで説明される実施例に限定されず、他の形態でも具体化できる。
現在、骨形態発生活性は、TGF(形質転換成長因子)−βスーパーファミリに属する骨形態発生因子BMPについて報告されている(Science 150, 893-897, 1965; Science 242; 1528-1534, 1988)。公知のBMP種はBMP−1〜BMP−14である。これらの中で、BMP−2〜BMP−14は骨形態発生活性を示すものと知られている。BMP−2〜BMP−14のBMPは様々な骨機能障害および骨疾患の治療的処置に効果的なものと思われているが、これらは自然界に極小量で存在する。よって、このような処置に用いられるBMP−2〜BMP−14を手に入れることができるように多量で得るには組み換えタンパク質の製造を必要とする。組み換えタンパク質の製造は一般に低分子量化合物に比べて費用が高くかかる。他方、そのタンパク質特性のため、物性および投与の側面で医学的には多くの制約がある。このような点を考慮するとき、前記BMPタンパク質と同一の活性を有する低分子量有機化合物が存在するならば、その有機化合物は非常に有望な医薬になるであろう。
本発明者らは、このような点に着目し、BMP−7に存在するアミノ酸配列を研究した結果、BMP−7に存在する15個のアミノ酸からなる下記のような配列を有するペプチドがヒトBMP−7(骨形成因子)の発現を誘発させる活性を有し、且つヒトBMP−7と同一の効能を持って非常に高い有用性を有することを発見し、BFP1(bone forming peptide : 配列番号1)およびBFP2(bone forming peptide 2 : 配列番号2)とそれぞれ命名した。
<配列番号1>
Gly−Gln−Gly−Phe−Ser−Tyr−Pro−Tyr−Lys−Ala−Val−Phe−Ser−Thr−Gln
<配列番号2>
Val−Glu−His−Asp−Lys−Glu−Phe−Phe−His−Pro−Arg−Tyr−His−HIs−Arg
前記BFP1およびBFP2は、BMP−7に由来する15個のアミノ酸からなる配列のペプチドであって、公知のペプチド合成法によって人為的に合成可能である。
また、後述の実験例によって明らかになったが、骨芽細胞分化培地を用いて骨芽細胞(正確にはマウス中間葉幹細胞)の分化を誘導したとき、一般な骨芽細胞分化培地のみを用いて分化するときより本発明のBFP1またはBFP2を処理したとき、さらに強く骨芽細胞が分化されることを確認することができた。
したがって、前記BFP1およびBFP2を含む本発明のBMP−7に存在する15個のアミノ酸からなる骨形成促進用合成ペプチドは、骨芽細胞が分化されるときに骨芽細胞の分化を促進させて分化能を向上させるので、骨形成促進効能を持っていることが分かる。
これにより、本発明の骨形成促進用合成ペプチドが著しい骨芽細胞分化の誘導活性または骨形成促進活性を示すことが分かるので、骨粗鬆症、骨関節炎または骨欠損疾患などを含む骨疾患により骨損失がある場合、本発明の合成ペプチドまたはその無毒性塩を有効成分として含む薬学組成物を骨欠損部位に充填または投与すると、骨粗鬆症、骨欠損疾患および/または骨関節炎を治療することができるという効能があることが分かる。
以下では、本発明のBMP−7由来の15個のアミノ酸配列を有する骨形成促進用合成ペプチドのうち好適な実施例としてのBFP1およびBFP2それぞれの骨芽細胞分化誘導活性および骨形成促進活性について、実験例および図面を参照してより具体的に考察する。
図1a〜図3bは本発明のBFP1およびBFP2のアミノ酸配列の順序、BFP1およびBFP2の構造、並びにBFP1およびBFP2の細胞毒性をそれぞれ示す。
この際、図1aおよび図1bに示すような配列情報、すなわち配列番号1を有するBFP1と配列番号2を有するBFP2は、それぞれBMP−7の全体アミノ酸配列の一部と同一のものと公知になっているペプチド合成方法を用いて、下記配列番号1および配列番号2のような15個のアミノ酸配列を持つように合成されたものである。
<配列番号1>
Gly−Gln−Gly−Phe−Ser−Tyr−Pro−Tyr−Lys−Ala−Val−Phe−Ser−Thr−Gln
(G−Q−G−F−S−Y−P−Y−K−A−V−F−S−T−Q)
<配列番号2>
Val−Glu−His−Asp−Lys−Glu−Phe−Phe−His−Pro−Arg−Tyr−His−His−Arg
(V−E−H−D−K−E−F−F−H−P−R−Y−H−H−R)
図2aおよび図2bに示すように、前記合成されたBFP1およびBFP2の構造を商用プログラムを用いて確認した結果、図1aおよび図1bに示すような配列を有するα−へリックス構造を持っていることを確認することができた。
この際、合成されたBFP1およびBFP2の細胞に対する毒性を調べるために、実験に使用された濃度範囲内で細胞毒性実験をMTT方法によって行った結果、図3aおよび図3bに示すように細胞毒性が現れないことを確認することができた。
実験例1
BFP1およびBFP2の骨芽細胞分化活性を確認するために、次の実験を行った。
1.骨芽細胞および骨芽細胞分化培地の準備
10%FBS入りのDMEMに1×104個の中間葉幹細胞(Balb/cマウス骨髄間質細胞からクローンされる)が入るように分注した後、約3日間約37℃の温度を維持する5%の二酸化炭素が含有された大気中で培養して、本実験に使用される骨芽細胞として前記中間葉幹細胞が準備された。
【0033】
骨芽細胞分化培地(osteogenic differentiation medium、以下「ODM」という)は、50μg/mLアスコルビン酸、10−8M デキサメタゾンおよび10mM β−グリセロホスフェートなどが添加されたDMEMからなる。
【0034】
2.ミネラリゼーションの測定
前記中間葉幹細胞の骨芽細胞への分化が行われると、カルシウムが蓄積されるが、この際、カルシウムイオンの蓄積程度は骨芽細胞の分化程度を意味し、カルシウムイオンの蓄積程度はアリザリン染色によって赤色に染色される度合いを観察すれば確認することができるという点に着目し、アリザリンレッド染色によってミネラリゼーションを測定した。すなわち、骨芽細胞に分化が促進されるほど、アリザリンレッドによって染色される部分が多くなるためである。
【0035】
したがって、骨芽細胞分化培地にアリザリンレッドを入れてBFP1および/またはBFP2を処理した後、アリザリンレッドの染色度合いを見て骨芽細胞分化程度を確認することができる。
【0036】
より具体的に考察すると、まず、BFP1の場合は、前記骨芽細胞分化培地に、準備された骨芽細胞、すなわち中間葉幹細胞を移して3日間培養した後、BFP1を0.1μg/mL、1μg/mL、2μg/mLずつそれぞれ添加して2日間さらに培養した。
【0037】
BFP2の場合もBFP1と同様に行った。
その後、培養された前記中間葉幹細胞を氷に冷却させた70%エタノールで1時間固定し、アリザリンレッド−s(alinzarin red-s)溶液で約10分間染色してカルシウムの沈着程度から無機質化を確認し、その結果を図4aおよび図4bに示した。
【0038】
本発明のBMP−7に由来した骨形成促進用合成ペプチドとしてのBFP1またはBFP2による骨芽細胞分化によって蓄積されるミネラリゼーションを測定するアリザリンレッド染色によって確認した結果写真を示す図4aおよび図4bより、1μg/mLのBFP1またはBFP2が入った細胞で最も強く染色されることを確認することができ、BMP−7を用いて骨芽細胞分化を確認した結果と比較すれば、本発明のBFP1またはBFP2より弱く染色されることを確認することができた。よって、BFP1またはBFP2がBMP−7に比べて骨芽細胞分化を促進することが分かる。
【0039】
実験例2
骨芽細胞特定遺伝子としてのコラーゲンタイプ1、アルカリ性ホスファターゼ、Runx2遺伝子が本発明の骨形成促進用合成ペプチドのうちBFP1によって発現する程度を測定する実験を行い、その結果を図5aに示した。
【0040】
すなわち、骨芽細胞への分化が行われると、骨芽細胞特定遺伝子が発現するが、このような遺伝子の発現を最新技術としての実時間遺伝子増幅を用いて確認した結果、骨芽細胞分化培地を入れて発現した遺伝子を100%に計算したとき、コラーゲンタイプ1の場合にはBFP1 1μg/mLで171%の遺伝子発現を確認し、アルカリ性ホスファターゼの場合にはBFP1 1μg/mLで241%の遺伝子発現を確認し、Runx2の場合にもBFP1 1μg/mLの濃度で178%の遺伝子発現を確認することができた。
【0041】
BFP2の場合にも、逆転写遺伝子増幅(RT−PCR)を用いて骨芽細胞特定遺伝子としてのアルカリ性ホスファターゼの発現を測定した結果を図5bに示した。
【0042】
アルカリ性ホスファターゼの発現が1μg/mLの濃度で強く発現することを確認することができた。
【0043】
実験例3
本発明のBFP1とBFP2が骨芽細胞分化活性にどんな影響を与えるかを確認するために、骨芽細胞特定遺伝子であるオステオカルシン、アルカリ性ホスファターゼおよびRunx2がBFP1およびBFP2によって発現する程度を、抗体を用いて蛍光顕微鏡によって分析し、その結果写真を図6a、図6b、図7a、図7b、図8aおよび図8bにそれぞれ示した。
すなわち、骨芽細胞への分化が行われると、骨芽細胞特定タンパク
質が発現するが、このようなタンパク質は、これらのタンパク質に対する抗体を細胞に反応させて結合した程度を蛍光顕微鏡によって確認した結果、骨芽細胞から分泌される骨基質物質であり、それぞれの活性程度は骨芽細胞増殖の判定要素であって、その濃度が増加すると、骨芽細胞の成長および分化が活発であることを知らせるオステオカルシンの場合、BFP1およびBFP2を1μg/mL添加したとき、骨芽細胞分化培地(ODM)を入れたものとBMP−7を入れたものよりさらに強く緑色(図面では明るい部分で表現される)で発現することを確認することができた。
ここで、PIは生きている細胞の核を染色することであって、それぞれの細胞が生きていることを確認することができ、目的タンパク質であるオステオカルシンの場合、緑色の蛍光抗体を用いて細胞で発現することを示す。mergeは、細胞の核が染色されたものと目的タンパク質の発現を重畳させることにより、同一の細胞で目的タンパク質が発現することを示す。
アルカリ性ホスファターゼ(alkaline phosphatase)は、骨形成の指標となる酵素であって、骨芽細胞の分化中期に生成されるが、アルカリ性ホスファターゼもBFP1およびBFP2の1μg/mLで強く発現することを確認することができた。
Runx2は、骨芽細胞における骨芽細胞特定タンパク質の生産に重要な作用を果たす転写調節因子であって、骨芽細胞分化に重要な役割を果たす。このようなRunx2はBFP1およびBFP2の1μg/mLで強く発現することを確認することができた。
実験例4
中間葉幹細胞は、骨、軟骨、脂肪組織、筋肉、腱、靱帯、神経組織および血管に分化できるように様々な表面タンパク質を含んでいる。本実験では、様々な表面タンパク質のうち、前記中間葉幹細胞の骨芽細胞への分化から現れる特定表面タンパク質CD44、CD51、CD47、CD45の発現程度をFACS分析によって測定することにより、本発明のBFP1およびBFP2がどんな影響を与えるかを確認した。その確認結果を図9aおよび図9bに示した。
まず、BFP1による骨芽細胞分化に関連した細胞表面マーカーの発現をFACS分析によって調査した結果(灰色矢印はODM単独、黒色矢印はODM+BFP1)を示す図9aを参照すると、中間葉幹細胞で発現する細胞表面マーカーCD44がBFP1を骨芽細胞分化培地に添加すると、骨芽細胞への分化過程中に強く発現することを確認することができた。特に骨芽細胞分化培地にBFP1 1μg/mLを入れたとき、CD44の発現がより強く現れることを確認した。一方、骨芽細胞分化の際に発現するCD47とCD51も、骨芽細胞分化培地を単独で入れたときよりBFP1を一緒に入れたときにさらに強く発現することを確認することができた。
また、BFP2による骨芽細胞分化に関連した細胞表面マーカーの発現をFACS分析によって調べた結果(灰色矢印はODM単独、黒色矢印はODM+BFP2)を示す図9bを参照すると、中間葉幹細胞で発現する細胞表面マーカーCD44がBFP2を骨芽細胞分化培地に添加すると、骨芽細胞への分化過程中に強く発現することを確認することができた。そして、骨芽細胞分化培地とBFP2を1μg/mL入れたときにCD44の発現がより強く現れることを確認した。
一方、骨芽細胞分化の際に発現するCD51の発現も、骨芽細胞分化培地を単独で入れたときよりBFP2を一緒に入れたときにさらに強い発現を確認することができた。
CD45は、造血系幹細胞の表面因子であって、本実験に使用された細胞が造血系に由来しないことを示すために使用した。図9aおよび図9bより、CD45の発現がないことを確認することができた。これは本実験に使用した細胞が造血系由来幹細胞ではないことを確認することができる。
実験例5
BFP1およびBFP2による細胞表面マーカーCD44の発現を蛍光顕微鏡によって観察した後、その結果を図10aおよび図10bに示した。
すなわち、細胞分化の際に細胞が生きていることを確認するために、核に染色を施して青色を示すDAPI染色と、CD44に結合して赤色を示すCD44抗体を用いて、蛍光顕微鏡の下で観察した結果である。
核が青色で染色されることを観察することができ、CD44が赤く染色されることを観察することができた。この染色を重ねて確認した結果、細胞においてCD44が発現することが分かった。そして、骨芽細胞分化培地を単独で処理したものより、骨芽細胞分化培地にBFP1またはBFP2を入れたときに強くCD44が発現することが分かった。また、BMP−7をBFP1またはBFP2と同じ濃度を用いて蛍光顕微鏡の下で観察したが、BFP1またはBFP2より弱く染色されたことを確認することができた。
実験例6
BFP1およびBFP2を用いた骨芽細胞分化において発現する骨芽細胞特定酵素としてのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)とカルシウムの濃度を商業的に販売する診断キットを用いて確認し、その結果を図11aおよび図11bに示した。
図11aより、BFP1が1μg/mL濃度のときに有意的な増加を示すことを観察することができた。図11bより、BFP2が1μg/mL濃度のときに有意的な増加を示すことを観察することができた。
実験例7
BFP1に蛍光物質FITCを結合させて細胞に処理した後で観察された結果写真を図12に示した。ここで、この実験は本発明によって合成製造されたBFP1が細胞内でどのように作用するかを確認するためのものである。
図12に示すように、BFP1に蛍光物質FITCを結合させて細胞に処理した後で観察した結果、BFP1が細胞内に入っていることを確認することができる。
実験例8
中間葉幹細胞の骨芽細胞へ分化が行われながら細胞が移動することを確認するために、BFP1およびBFP2それぞれに対して化学走化性実験法を行い、その結果グラフを図13aおよび図13bに示した。
すなわち、中間葉幹細胞それぞれの分化培地に分化因子(BMP−7、BFP1、BFP2)を処理した後、細胞の移動を確認した結果、図13aおよび図13bに示すように、BFP1またはBFP2はBMP−7よりさらに多くの細胞が移動することを観察した。この結果より、本発明のBFP1またはBFP2が骨欠損などの疾患において骨芽細胞を傷部位に速く移動させ得ることを確認することができる。
実験例9
BFP1またはBFP2が生体内の骨細胞形成を促進するか否かを確認するために、マウスを用いて動物実験を行った(n=6)。まず、中間葉幹細胞の分化を誘導するために、ODMを3日にわたって2回処理し、第2回目のODMを添加するときにBMP−7、BFP1およびBFP2を処理した後、24時間経過後に細胞を収集して同数の細胞数を測定し、しかる後に、マウスの背部分にコラーゲンを支持体として用いて移植した。移植4週後と8週後にX線を用いて骨形成を比較し、その結果写真を図14aおよび図14bに示した。特に、8週目の組織を切り取って脱灰(decalcification)した後、ヘマトキシリン・エオシン(hematoxylin & eosin)染色により骨組織の形成を観察し、その結果写真を図15aおよび図15bに示した。
図14aおよび図14bに示すように、移植4週後にはBFP1とBFP2の処理部位に骨が形成されることをX線上で観察することができた。移植8週後の結果写真は、骨形成がBFP1またはBFP2の処理部位でBMP−7の処理部位よりさらに強くなされることを示している。
また、図15aおよび図15bに示すように、対照群としてのBMP−7を処理した結果と比較するとき、本発明の骨形成促進用ペプチドであるBFP1およびBFP2による骨形成も非常に良好になされていることを確認することができる。
このような実験結果より、本発明の骨形成促進用合成ペプチドBFP1またはBFP2が、骨芽細胞分化を促進するものと知られている従来のBMP−7よりさらに骨芽細胞分化促進に重要な影響を及ぼすので、BMP−7と同一またはそれ以上の骨形成強度をもってさらに広い範囲で速い骨形成を誘導することができることが分かる。
したがって、本発明は、骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、製薬上または獣医学上許容される液体または固体担体を含む薬学組成物を提供することができる。ここで、製薬上または獣医学上許容される液体または固体担体は、限定されず、公知のものを全て使用することができるので、その詳細な説明は省略する。
特に、BFP1またはBFP2を生体に投与したときに骨形成が促進されることを示す実験例9の結果は、BFP1またはBFP2を含む本発明の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩が有効成分として含まれた薬学組成物を、骨粗鬆症および/または骨関節炎が発生した骨髄部位に投与すると、骨髄の骨芽細胞分化を促進して骨形成を促進することができることを明確に示す。その結果、本発明の薬学組成物は有効な骨粗鬆症および/または骨関節炎治療剤として作用することができる。
また、同様に、BFP1またはBFP2を含む本発明の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩が有効成分として含まれた薬学組成物を、骨欠損疾患の骨欠損部位に充填または投与すると、骨形成促進によって骨修復を効果的に行うことができる。
一方、具体的な実施例として提示してはいないが、BFP1またはBFP2を含む本発明の骨形成促進用合成ペプチドを骨芽細胞分化培地組成物に添加すると、骨芽細胞を用いる実験の際に実験者が実験速度を調節することができるため、容易に実験を行うことができるのは当たり前である。
以上、本発明の好適な実施例を挙げて図示し説明したが、前述した実施例に限定されず、本発明の精神から外れない範囲内において、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって多様な変更と修正が可能であろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BMP−7に存在する15個のアミノ酸配列からなって骨芽細胞分化または骨形成を促進することを特徴とする、骨形成促進用合成ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが下記配列番号1のポリペプチドまたはその相同体であることを特徴とする、請求項1に記載の骨形成促進用合成ペプチド。
<配列番号1>
Gly−Gln−Gly−Phe−Ser−Tyr−Pro−Tyr−Lys−Ala−Val−Phe−Ser−Thr−Gln
【請求項3】
前記ペプチドが下記配列番号2のポリペプチドまたはその相同体であることを特徴とする、請求項1に記載の骨形成促進用合成ペプチド。
<配列番号2>
Val−Glu−His−Asp−Lys−Glu−Phe−Phe−His−Pro−Arg−Tyr−His−His−Arg
【請求項4】
骨芽細胞分化または骨形成を促進するための前記合成ペプチドの添加含量が0.1〜2μg/mLであることを特徴とする、請求項1に記載の骨形成促進用合成ペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、製薬上または獣医学上許容される液体または固体担体を含む、薬学組成物。
【請求項6】
前記合成ペプチドまたはその無毒性塩が骨粗鬆症、骨関節炎および骨欠損疾患治療のための有効成分として作用することを特徴とする、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、培地製造の際に許容可能な液体または固体担体を含む、骨芽細胞培地組成物。
【請求項1】
BMP−7に存在する15個のアミノ酸配列からなって骨芽細胞分化または骨形成を促進することを特徴とする、骨形成促進用合成ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが下記配列番号1のポリペプチドまたはその相同体であることを特徴とする、請求項1に記載の骨形成促進用合成ペプチド。
<配列番号1>
Gly−Gln−Gly−Phe−Ser−Tyr−Pro−Tyr−Lys−Ala−Val−Phe−Ser−Thr−Gln
【請求項3】
前記ペプチドが下記配列番号2のポリペプチドまたはその相同体であることを特徴とする、請求項1に記載の骨形成促進用合成ペプチド。
<配列番号2>
Val−Glu−His−Asp−Lys−Glu−Phe−Phe−His−Pro−Arg−Tyr−His−His−Arg
【請求項4】
骨芽細胞分化または骨形成を促進するための前記合成ペプチドの添加含量が0.1〜2μg/mLであることを特徴とする、請求項1に記載の骨形成促進用合成ペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、製薬上または獣医学上許容される液体または固体担体を含む、薬学組成物。
【請求項6】
前記合成ペプチドまたはその無毒性塩が骨粗鬆症、骨関節炎および骨欠損疾患治療のための有効成分として作用することを特徴とする、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項の骨形成促進用合成ペプチドまたはその無毒性塩と、培地製造の際に許容可能な液体または固体担体を含む、骨芽細胞培地組成物。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図15a】
【図15b】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図15a】
【図15b】
【公開番号】特開2009−298784(P2009−298784A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119661(P2009−119661)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(509138383)インダストリー ファウンデーション オブ チョンナム ナショナル ユニバーシティ (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(509138383)インダストリー ファウンデーション オブ チョンナム ナショナル ユニバーシティ (4)
【Fターム(参考)】
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