説明

骨手術用の案内装置

【課題】スリットの両側にある一対の部分を均等に変形させることにより、締め付け後の案内精度を向上させることができる挿通案内構造を提供する。
【解決手段】骨手術用の案内装置は、スリット102sを有する挿通案内構造を締め付け手段によって締め付けることによりガイドピン2の案内位置及び方向を確定する骨手術用の案内装置において、前記締め付け手段は、前記挿通案内構造102における前記スリット102sの両側にある一対の部分からそれぞれ並行して突出する一対の突出部と、該一対の突出部に対してその突出方向に螺合する駆動部材105とを有し、前記駆動部材の螺合深さに応じて前記一対の突出部が近接する方向に締め付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨手術用の案内装置に係り、特に、髄内釘の照準装置として構成する場合に好適な案内装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、骨手術においては、ガイドピンを骨に刺入したり、穿孔等を施すためにドリルやリーマなどの工具を骨に適用したり、インプラントとなるスクリュウや髄内釘を骨に導入したりといったことが行われる。このようなガイドピン、工具、インプラント等の骨手術具は、多くの場合、何らかの案内装置(ガイド器具)によって案内された状態で骨に適用される。
【0003】
上記の案内装置の一例としては、例えば、骨の髄内に挿入された髄内釘の端部に接続される接続端部を有し、この接続端部から屈折するように伸びて最終的に上記髄内釘とほぼ平行に伸びる部分を備えた指標装置(ターゲットデバイス)と呼ばれる器具が知られている(例えば、以下の特許文献1参照)。
【0004】
上記の指標装置においては、髄内釘とほぼ平行に伸びる部分に、所定の方位を向いた案内孔を備えた挿通案内構造が設けられる。この挿通案内構造には上記所定の方位が含まれる案内面に沿ってスリットが形成され、当該スリットによって案内孔の内径が実質的に拡縮可能な状態とされている。また、挿通案内構造には上記スリットの両側にある一対の部分を締め付けるための締め付けネジがスリットを横断するように取り付けられている。そして、実際に指標装置を用いる際には、上記の挿通案内構造の案内孔に案内スリーブを挿通させた状態とし、この案内スリーブを上記締め付けネジで締め付けることによって固定し、この案内スリーブによって種々の骨手術具が直接若しくは間接的に案内されることにより、所定の方向に骨手術具が導かれるようにしている。
【特許文献1】特開2001−286480号公報(特に図1の符号22〜24参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の指標装置では、挿通案内構造におけるスリットの両側にある一対の部分を締め付けネジによって締め付けるようになっているが、この締め付けネジはスリットを横断して一対の部分に係合するとともに、締め付けネジに対しては挿通案内構造の片側から締め付け操作を行うように構成されているため、スリットの両側にある一対の部分が均等に変形しないことから、上記案内スリーブに軸ずれや軸のねじれが生ずるという問題点がある。
【0006】
すなわち、通常、締め付けネジはスリットの両側の一対の部分のうち一方の部分には螺合するが、他方の部分には軸線方向に係合しているだけであるので、一対の部分に対して均等に応力を及ぼすように構成することが困難であり、いずれか一方の部分が他方より変形量が大きくなることにより上記の軸ずれが発生する。また、締め付けネジを片側から操作することによって片側にのみ操作力が加わるため、挿通案内構造には片側からねじれ応力が加わる可能性があり、このねじれ応力が加わると、締め付け時において挿通案内構造がねじれて案内方向が変化することも考えられる。
【0007】
したがって、指標装置が全体的に高精度に構成されていても、締め付けにより生じた挿通案内構造の偏りによって案内精度が低下する。また、この案内精度の低下は個々の案内装置毎に異なる場合が多いので、制御したり、補正したりすることができない。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、スリットを有する挿通案内構造を締め付け手段によって締め付けることによって骨手術具の案内位置及び方向を確定する骨手術用の案内装置において、スリットの両側にある一対の部分を均等に変形させることにより、締め付け後の案内精度を向上させることができる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる実情に鑑み、本発明の骨手術用の案内装置は、スリットを有する挿通案内構造を締め付け手段によって締め付けることにより骨手術具の案内位置及び方向を確定する骨手術用の案内装置において、前記締め付け手段は、前記挿通案内構造における前記スリットの両側にある一対の部分からそれぞれ並行して突出する一対の突出部と、該一対の突出部に対してその突出方向に螺合する駆動部材とを有し、前記駆動部材の螺合深さに応じて前記一対の突出部が近接する方向に締め付けられることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、スリットの両側にある一対の部分からそれぞれ並行して突出する一対の突出部と、これら一対の突出部に対してその突出方向に螺合する駆動部材とを設け、駆動部材の螺合深さに応じて一対の突出部が近接する方向に締め付けられるように構成されていることにより、スリットを横断して一対の部分に作用する締め付けネジを設ける必要がなくなるとともに、スリットの片側から操作を行うこともなくなるので、駆動部材による締め付け時においてスリットの両側にある一対の部分に対して従来よりも均等に応力を加えることが可能になるため、当該一対の部分の変形の偏りに起因する案内孔の軸ずれやねじれを低減することができる。
【0011】
本発明において、前記一対の突出部は前記スリットの両側に実質的に対称に構成されていることが好ましい。これによれば、スリットの両側に実質的に対称に構成された一対の突出部に対して駆動部材を作用させることにより、スリットの両側にある一対の部分をより均等に変形させることができる。
【0012】
本発明において、前記スリットの両側に実質的に対称に形成された一対のネジ部が前記一対の突出部の各々に設けられて一体的な雄ネジが構成され、前記駆動部材には、前記雄ネジに螺合する雌ネジが形成されていることが好ましい。これによれば、一対の突出部に対する駆動部材の螺合状態が実質的に対称となるため、一対の突出部に対する締め付け応力をさらに均等化できる。
【0013】
なお、本発明において実質的に対称とは、駆動部材から均等に応力を受けたときに均等な変形を受けるように構成されていることを言い、応力と変形量の関係において実質的な作用を果たさない細部の相違を考慮しないことを意味する。特に、スリットの両側に対称に構成された一対の突出部にその突出方向に軸線を有するネジ部をそれぞれ設け、これらのネジ部が一体的な雄ネジを構成するようにしたときには、ネジの螺旋形状を実現するために一対のネジ部の形状を相互に完全な対称形状にすることはできないが、駆動部材に対する螺合状態を考慮すると、実質的に対称な構造を有するものとみなすことができる。
【0014】
本発明において、前記一対の突出部と前記駆動部材の少なくとも一方には両者の螺合軸を軸線とする円錐面状に傾斜した係合面が形成され、該係合面が他方に係合することにより、前記一対の突出部が締め付けられるように構成されていることが好ましい。これによれば、螺合軸を軸線とする円錐面状に傾斜した係合面が一方に設けられるとともに、この係合面が他方に係合することによって一対の突出部が締め付けられるように構成されていることにより、一対の突出部を螺合深さの変化量に比例して締め付けることが可能になる。
【0015】
本発明において、前記挿通案内構造が設けられたフレームを有し、該フレームは、患者の骨若しくは患者の体内に埋設されたインプラントに接続される接続端部を備え、前記一対の突出部及び前記駆動部材は、前記フレームにおける前記接続端部とは反対側の自由端に配置されていることが好ましい。これによれば、駆動部材がフレームの自由端に設けられていることにより、操作性を高めることができるとともに、フレームの把持などの各種の操作や作業を妨害することがなくなるので、取り扱いを容易に行うことが可能になる。
【0016】
特に、前記一対の突出部及び前記駆動部材は、前記フレームの延長方向に突設されていることがさらに望ましい。これによれば、フレームの自由端において一対の突出部及び駆動部材がフレームの延長方向に突設されていることにより、挿通案内構造に対する構造上の制約をなくすことができるとともに、操作性をさらに向上させることができ、しかも、挿通案内構造の一対の部分に対する締め付け作用の均等性をさらに高めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は本実施形態の案内装置100の一部断面右側面図、図2は案内装置100の一部断面背面図、図3は案内装置100の平面図である。本実施形態の案内装置100は、大腿骨等の管状の骨1の髄内に導入される髄内釘10に接続され、この髄内釘10の横断孔12,13,14,15にガイドピン、ドリルやリーマ等の工具、或いは、スクリュウ等の骨接合具3,4を導入するための装置(指標装置)である。
【0018】
案内装置100は、髄内釘10の近位端10aに接続される接続端部101aを備えたフレーム本体101と、このフレーム本体101の上記接続端部101aとは反対側の端部に接続された挿通案内体102とを備えている。接続端部101aには貫通孔101bが設けられ、この貫通孔101bに図示点線で示す接続ボルト111を挿通させた後に接続ボルト111を髄内釘10の軸孔11に螺合させることによって接続端部101aと髄内釘10の近位端10aとを接続固定できるように構成されている。
【0019】
フレーム本体101は接続部位101aから湾曲した後に髄内釘10とほぼ平行な姿勢に移行するように全体としてU字状に構成されている。フレーム本体101の湾曲部分は、接続端部101a側において斜め上方向(髄内釘の軸線に対して25〜45度、好ましくは30度程度に傾斜した方向)に湾曲しながら伸びて頂点101xに達する第1湾曲部101Aと、頂点101xを境に下方に湾曲しながら伸びる第2湾曲部101Bとを有する。第2湾曲部101Bは第1湾曲部よりも緩い傾斜角で下方に湾曲し、その先において髄内釘10とほぼ平行に伸びる端部101Cに接続されている。上記頂点101xは端部101Cよりも接続端部101a側に偏った位置に設けられている。
【0020】
フレーム本体101は、特に限定されるものではないが、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属材料で構成されている。フレーム本体101には、図1の紙面に沿った面(案内装置100に設定された複数の案内方向が含まれる仮想平面、以下、単に「案内面」という。)と直交する方向に開口する開口孔101y、101yが設けられている。これらの開口孔101yは、X線撮像装置などの透視画像(図1に対応する正面像)上で開口孔101yの孔形状を確認することによって当該画像が上記案内面と直交する方向から撮影されているか否かを確認するのに役立つ。
【0021】
また、フレーム本体101には、上記頂点101xの近傍に、上記案内面に沿った貫通孔101zが形成されている。この貫通孔101zは頂点101x側から接続端部101aに向けて斜め下方へ向かう方向Xbに伸びている。本実施形態では、方向Xbは骨頭部1hの中心へ向かう方向(骨頭部1hにガイドピン2等の延長部材を刺入できる方向)に設定されている。貫通孔101zに延長部材を挿通させ、案内面に沿った方向Xaから撮影した画像(図7に対応する軸射像)上において、画像に写る延長部材の先端部が案内面に沿って接続端部101aからさらに案内装置100の反対側に突出するので、画像上に写る延長部材の伸びる方向によって案内面に沿った方向が骨接合具3,4を挿入するべき骨1内の部分(骨頭部1h)に向かう方向と整合しているか否かを確認するのに役立つ。
【0022】
さらに、フレーム本体101には、上記頂点101xと端部101Cの間において、すなわち、上記第2湾曲部101Bにおいて、案内面に沿って形成された透視孔101wが形成されている。すなわち、透視孔101wはフレーム本体101の外側から内側へ案内面に沿って貫通している。また、この透視孔101wは、フレーム本体101の延長方向に沿って伸びる延長形状を有する。透視孔101wは髄内釘の横断孔12,13を軸射像上で透視可能に構成するためのものであり、これにより、上記横断孔12,13に向けて挿入されたガイドピン2の撓みを確認することなどが可能になる。
【0023】
透視孔101wは案内面上においてフレーム本体101の外側から図1に示す方向Xaに沿って髄内釘10へ向けて貫通するように設けられている。そして、後述するように、案内装置100を用いて案内位置及び方向を定めてガイドピン2を挿入した場合において、ガイドピン2の先端部が挿入時に案内面から外れる方向に撓むことによって所定の方向からずれた方向に刺入された状態を軸射像上で確認し、ガイドピン2を挿入し直すために設けられている。図7に示すように、軸射像上では、透視孔101wを通して髄内釘10の横断孔12〜15の少なくとも一部(図示例の場合には全ての横断孔)が透視できるように構成されている。なお、軸射像上では透視孔101wを通して横断孔の位置を確認できるため、ガイドピン2の方向を横断孔を基準として観察することができる。
【0024】
フレーム本体101の端部101Cには挿通案内体102が接続固定されている。挿通案内体102は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム等の金属で構成される。挿通案内体102はフレーム本体101の端部101Cから髄内釘10とほぼ平行に伸びるように設けられる。なお、フレーム本体101と挿通案内体102とで案内装置100の上記フレームが構成される。挿通案内体102には、図2に示すように、上記の案内面G(図2の紙面と直交する面)に沿って形成されたスリット102sが設けられている。このスリット102sは、挿通案内体102の下端部(すなわち、フレームの自由端)では開放されているが、挿通案内体102の上端部(上記フレーム本体101に接続されている側の端部)内に終端を備えている。すなわち、スリット102sは挿通案内体102の下端部から切り込まれて上端部の内部で止まった形状を有している。
【0025】
スリット102sの両側には一対の部分102Aと102Bが設けられ、これらの部分102Aと102Bは案内面Gを中心として実質的に対称に構成されている。部分102A、102Bのそれぞれには、スリット102sの両側に複数組の凹溝が設けられている。これらの凹溝のうち、スリット102sの両側に対称に構成された相互に対向する凹溝同士が組となって一つの案内孔を構成し、これによって挿通案内体102内に複数の案内孔102X,102Y,102Z,102V,102Wが構成されている。これらの複数の案内孔は全て案内面Gに含まれる軸線を有し、案内面G上において相互に異なる位置及び方向を有している。これらの案内孔は、それぞれ髄内釘10の横断孔12,13,14,15の軸線と一致する案内位置及び方向を規定するように構成されている。
【0026】
挿通案内体102の下端部には、図4に示すように、上記の部分102Aと102Bから並行してそれぞれ突出する一対の突出部102P及び102Qが設けられている。これらの突出部102P,102Qは、上記案内面Gと平行で、しかも、フレームの延長方向に沿った方向(図示下方向)に共に突出している。また、一対の突出部102Pと102Qはスリット102sの両側に(つまり上記案内面Gを基準として)実質的に対称な形状を有している。突出部102P,102Qにはそれぞれネジ部102tが形成され、突出部102Pのネジ部102tと突出部102Qのネジ部102tとによって一体的な雄ネジが構成される。すなわち、突出部102Pのネジ部102tと突出部102Qのネジ部102tとは実質的に対称なもの(一対のネジ部102tが螺旋状の雄ネジを構成するため、完全な面対称ではないが、案内面を基準とする対称位置に同等のネジ山形状及びピッチを有する実質的に対称なネジ構造を有する。)であり、スリット102sを挟んで一体的な一つの雄ネジが構成されるようになっている。この雄ネジはスリット102sの中央部、すなわち上記の案内面を通過する軸線(螺合軸)を中心として構成される。
【0027】
また、図4に示すように、突出部102P,102Qには円錐面状の係合面102cがそれぞれ設けられている。これらの係合面102cは、上記の雄ネジの軸線である螺合軸を中心とする円錐面であり、当該軸線方向に傾斜した面形状を有している。一対の突出部102P,102Qは、スリット102sの両側に、上記係合面102cの一部をカットしてなるカット面102dをそれぞれ有し、このカット面102dを構成することで、スリット102sの両側の突出部102P,102Qの縁部分が後述するナット105の係合部に接触しないように構成されている。これは、操作時においてナット105の係合部がスリット102sの両側にある縁部分にひっかかり、突出部102P,102Qをねじれ変形させる虞をなくすためである。
【0028】
上記一対の突出部102P,102Qには駆動部材であるナット105が螺合している。ナット105は、図5に示すように、軸孔105aの内面上に雌ネジ105bが形成され、この雌ネジ105bが上記一対の突出部102P,102Qに形成されたネジ部102tで構成される雄ネジに螺合するように構成されている。なお、止めピン106はナット105が挿通案内体102から脱落しないようにするためにナット105に取り付けられた抜け止めである。また、ナット105の外面上には回転操作を容易にするためのローレット(ナーリング)105dが形成されている。
【0029】
また、ナット105の軸孔105aの内面上には、上記一対の突出部102P,102Qの係合面102cに係合する係合部である係合面105cが設けられている。図示例の場合、係合面105cは上記係合面102cに整合する傾斜角を有する円錐面状の傾斜面となっている。そして、係合面102cと係合面105cが係合することによって、ナット105の螺合深さに応じた変形量が一対の突出部102P,102Qに生ずるようになっている。すなわち、図示例の場合には、ナット105を一対の突出部102P,102Qにねじ込んでいき、その螺合深さを深くしていくことにより、係合面105cが係合面102cに締め付け力を及ぼし、上記螺合深さの増加量に比例した分だけ一対の突出部102P,102Qを相互に近接する方向に変形させる。これによって、部分102Aと102Bが接近する方向に変形し、スリット102sが狭められて案内孔102X,102Y,102Z,102V,102Wの内径が実質的に縮径される。
【0030】
なお、本実施形態では、ナット105の螺合深さを変えることで案内孔の内径が縮径されるように構成されていればよいので、必ずしも上記図示例のように構成されている必要はない。例えば、上記とは逆に、ナット105の螺合深さを浅くすることによって挿通案内体102が締め付けられるように構成されていてもよい。また、ネジ部102tのネジ径を軸線方向に徐々に変化させるなどの方法で、係合面102cによる締め付け作用をネジ部102t自体で生じさせるように構成してもよい。さらに、係合面102c、105cのうち、一方の係合面を上記と同様に軸線方向に傾斜した状態に形成し、他方を一方の係合面に当接する単なる係合凸部や環状リブなどで構成しても構わない。
【0031】
以上説明した案内装置100では、大腿骨等の骨1の近位端1aにドリルやリーマ等の工具を適用して穿孔した後、図6(a)及び(b)に示すように、髄内釘10の近位端10aに対して接続ボルト111等によって接続端部101aを接続固定して髄内釘10と案内装置100とを一体化し、この状態で、髄内釘10の遠位端10bを近位端1aから骨1内に導入する。このとき、X線画像等の透視画像を見ながら、髄内釘10の骨1内における姿勢及び深さを確認し、最終的に髄内釘10が骨1に対して適宜の位置に配置されるように設定する。
【0032】
次に、挿通案内体102の案内孔102X,102Yに図1に示す案内スリーブ107,108を挿通し、案内スリーブ107,108の先端が体内に導入されるように押し入れる。そして、案内スリーブ107,108の先端が骨1の表面に近接し、或いは、接触した状態とし、ナット105をねじ込んで、案内孔102X,102Yを締め付け、案内スリーブ107,108を固定する。このとき、本実施形態では、ナット105が一対の突出部102P,102Qへ均等な応力を及ぼすので、案内孔102X,102Yの軸線は案内面上からずれることがなく、また、ナット105に対する操作力もフレームの端部において案内面に沿って作用するため、軸のねじれも発生しにくい。したがって、案内スリーブ107,108の案内位置及び方向は、案内装置100のフレームの本来の形状精度に応じた高い精度で設定される。
【0033】
上記の案内スリーブ107,108は、図1に示すガイドピン2、図示しないドリルやリーマ等の工具、図1に示すスクリュウ3,4などの骨手術具を案内するための案内部材である。例えば、ガイドピン2を刺入する場合には、図1に示すように、案内スリーブ107内にさらに補助スリーブ109を挿入し、この補助スリーブ109の軸孔にガイドピン2を挿通させてその先端を骨1内に刺入していく。このとき、ガイドピン2は案内スリーブ107及び補助スリーブ109を介して挿通案内体102により位置及び方向が案内された状態とされる。
【0034】
ただし、上記ガイドピン2を刺入れていくとき、骨1の刺入抵抗によってガイドピン2の先端部が撓み、これによってガイドピン2が本来の案内位置及び方向とは異なる位置及び方向に刺入られる場合がある。ガイドピン2の先端部が案内面上の異なる方向に撓む場合には、図1に対応する案内面と直交する方向から見た透視画像(正面像)で確認できる。ただし、ガイドピン2の先端部が案内面から外れる方向に撓む場合には、上記の透視画像では確認できない。そこで、本実施形態では、フレームに案内面に沿った透視孔101wを形成し、この透視孔101wを通して、ガイドピン2の先端部が髄内釘20の横断孔22の軸芯からずれていることが案内面に沿った方向Xaから撮影した透視画像(軸射像)上において容易に観察できるようにしている。この画像上でガイドピン2の撓みが発見された場合には、ガイドピンの刺入作業をやり直し、上記案内位置及び方向にガイドピン2が正しく刺入られるようにする。
【0035】
また、上記貫通孔101zに別のガイドピン2を挿通して、このガイドピンの延長方向を軸射像上で確認することにより、案内装置100の案内面が骨1(特に頭部1hの方向)に整合しているか、或いは、ガイドピン2が骨1の骨頭部1h内の正規の位置に刺入られているかを容易に確認することができる。特に、ガイドピン2を骨頭部1h内に差し入れることによって、軸射像上で案内面が骨頭部1hの中心を通過しているか否かをより確実かつ容易に把握できる。
【0036】
上記のガイドピン2の刺入が終了すると、補助スリーブ109は除去され、ドリルやリーマなどの穿孔工具を案内スリーブ107及びガイドピン2に案内した状態で導入し、骨1に穿孔が施される。この穿孔作業も上記の透視画像(正面像及び軸射像)を見ながら行なわれる。穿孔作業が終了すると、スクリュウ3,4を案内スリーブ107,108及びガイドピン2によって案内した状態で骨1にねじ込んでいく。このとき、スクリュウ3,4は髄内釘10の傾斜した横断孔12,13を通して骨1の頭部1hへ向けてねじ込まれる。
【0037】
なお、上記の横断孔12,13のように傾斜方向に伸びる横断孔だけでなく、水平方向に伸びる横断孔14,15に対しても、上記と同様の案内スリーブ、ガイドピン、及び、工具を用いて準備作業を行い、その後、図示しないスクリュウを挿通させて髄内釘10を骨1に固定する。
【0038】
その後、案内装置100を髄内釘10から取り外し、スクリュウ4を用いない場合には髄内釘10の軸孔11内に図示しないセットスクリュウを挿入してスクリュウ3を係合保持する。そして、最後に軸孔11に図示しないキャップを装着する。
【0039】
尚、本発明の案内装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態で説明した案内装置100はガイドピン2や案内スリーブ107,108等の他の案内器具、ドリルやリーマ等の工具、スクリュウ3,4等の骨接合具など、各種の骨手術具を用いて作業を行なう場合に、髄内釘10の横断孔12,13,14,15の位置及び方向に整合するように位置決め及び方向付けを行う指標装置として構成された例を示すものであるが、本発明の案内装置はこのような態様に限らず、骨に対して適用する上記のような骨手術具を何らかの態様で案内するものであれば、如何なるものであっても構わない。
【0040】
また、上記実施形態で説明した案内装置100では、一対の突出部102P,102Q及びこれに螺合するナット105がフレーム101,102の自由端においてフレームの延長方向に軸線を有する態様で突設されているが、一対の突出部はスリットの両側にある部分からそれぞれ並行して突出した構造とされ、その突出方向に駆動部材が螺合する構造とされていれば、それらが設けられる位置及び姿勢(突出方向)は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態の案内装置を正面から見た様子(正面像)を示す概略一部断面右側面図。
【図2】実施形態の案内装置の背面図。
【図3】実施形態の案内装置の平面図。
【図4】実施形態の案内装置の一対の突出部を示す拡大図。
【図5】実施形態の案内装置のナットを示す拡大一部断面図。
【図6】実施形態の案内装置及び髄内釘の後方斜視図(a)及び前方斜視図(b)。
【図7】実施形態の案内装置を方向Xaから見た様子(軸射像)を示す説明図。
【符号の説明】
【0042】
100…案内装置、101…フレーム本体、101a…接続端部、101A…第1湾曲部、101B…第2湾曲部、101x…頂点、101y…開口孔、101z…貫通孔、101w…透視孔、102…挿通案内体、102s…スリット、102X,102Y…案内孔、102A,102B…部分、102P,102Q…突出部、102t…ネジ部、102c…係合面、105…ナット、105a…軸孔、105b…雌ネジ、105c…係合面、111…接続ボルト、1…骨、1a…近位端、1h…頭部、2…ガイドピン、3,4…スクリュウ、10…髄内釘、近位端…10a、11…軸孔、12〜15…横断孔、遠位端…10b

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットを有する挿通案内構造を締め付け手段によって締め付けることにより骨手術具の案内位置及び方向を確定する骨手術用の案内装置において、
前記締め付け手段は、前記挿通案内構造における前記スリットの両側にある一対の部分からそれぞれ並行して突出する一対の突出部と、該一対の突出部に対してその突出方向に螺合する駆動部材とを有し、
前記駆動部材の螺合深さに応じて前記一対の突出部が近接する方向に締め付けられることを特徴とする骨手術用の案内装置。
【請求項2】
前記一対の突出部は前記スリットの両側に実質的に対称に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の骨手術用の案内装置。
【請求項3】
前記スリットの両側に実質的に対称に形成された一対のネジ部が前記一対の突出部の各々に設けられて一体的な雄ネジが構成され、前記駆動部材には、前記雄ネジに螺合する雌ネジが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の骨手術用の案内装置。
【請求項4】
前記一対の突出部と前記駆動部材の少なくとも一方には両者の螺合軸を軸線とする円錐面状に傾斜した係合面が形成され、該係合面が他方に係合することにより、前記一対の突出部が締め付けられるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の骨手術用の案内装置。
【請求項5】
前記挿通案内構造が設けられたフレームを有し、該フレームは、患者の骨若しくは患者の体内に埋設されたインプラントに接続される接続端部を備え、
前記一対の突出部及び前記駆動部材は、前記フレームにおける前記接続端部とは反対側の自由端に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の骨手術用の案内装置。
【請求項6】
前記一対の突出部及び前記駆動部材は、前記フレームの延長方向に突設されていることを特徴とする請求項5に記載の骨手術用の案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−68817(P2007−68817A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260225(P2005−260225)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(393024186)株式会社ホムズ技研 (35)
【Fターム(参考)】