説明

骨材の品質判定方法

【課題】骨材自体の試験成績表からだけでは判らない、骨材をコンクリート又はモルタルに使用した際の性状を予測することができ、略々同一又は同種の骨材について、骨材品質の変動、産地の変更等がコンクリートやモルタルの物性に及ぼす影響を予測することなど。
【解決手段】粗骨材又は細骨材を対象骨材とし、対象骨材をコンクリート又はモルタルへ使用した際の骨材性能を、予め取得しておいた所定条件で作製したコンクリート又は所定条件で作製したモルタルによる標準化データから推定する骨材の品質判定方法であって、標準化データを得る粗骨材に対しては所定条件で作製した普通コンクリートと所定条件で作製した高強度コンクリートでの標準化データにより、標準化データを得る細骨材に対しては所定条件で作製したモルタルでの標準化データにより各々推定する骨材の品質判定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨材の品質判定方法に関し、特に、採石山、砕石工場(骨材メーカー)等で生産された骨材(対象骨材)をコンクリート又はモルタルに使用した際の性能を、予め対象骨材と略々同一又は同種骨材について取得しておいた所定条件で作製したコンクリート又は所定条件で作製したモルタルによる標準化データから推定する骨材の品質判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、採石山、砕石工場等(骨材メーカー)で生産された骨材は、コンクリート用砕石や道路用砕石等、多種多様な用途に用いられ、用途に合わせてJIS(日本工業規格)が定められている。従って、例えば、砕石については、砕石メーカーが篩い分け試験、微粒分量試験、密度・吸水試験、粒径判定、すりへり減量、軽石量等を毎月又は年1回の頻度で実施し、その他砕砂、路盤材用骨材、アスファルト用骨材等についてもメーカーサイドで同様の試験を行っている。そして、ユーザーへの骨材納入時には、多くの場合はこれらの試験成績書を添付している。
【0003】
しかし、JIS認定を受けている砕石工場が少なく、確かな品質の骨材を供給するのは容易ではなく、また、JIS規定項目の試験結果を記載した試験成績書が添付されていたとしても、これだけではコンクリートやモルタルに使用した際の性能は把握できない。従って、生コン工場等(ユーザー)は、受け入れた骨材について、都度、コンクリート等による品質・性能のチェック(試験練り)を行う必要があるなど、受入側の手間やコストが増加していた。
【0004】
そこで、特許文献1には、骨材メーカーの管理負担やユーザーのチェック負担を低減し、品質の確かな骨材を顧客に提供し、骨材について、JIS規格や多種・多様な用途への対応ができ、物流効率も向上させることのできる骨材生産出荷システム及び骨材生産出荷方法が提案されている。このシステムは、骨材の受入設備から出荷設備までの所要の設備を備え、異なる複数の産地の骨材を、一事業所での一元的な管理の下で用途別に生産出荷することで、骨材の品質を安定化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−239455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の骨材生産出荷システム等においても、ユーザーに骨材の品質管理データを提供する場合、JIS規格への適合性の確認、用途に応じた品質・性能の確認をすることが記載されているものの、具体的開示がないため、依然として、骨材をコンクリート又はモルタルに使用した際の骨材性能を把握することができないという問題があった。
【0007】
また、ユーザーが使用している同種の骨材でも、産地(メーカー)が変更された場合や、骨材品質の変動等があった場合は、コンクリートやモルタルの物性に及ぼす影響が判らないため、各ユーザーがコンクリートやモルタルに使用した際の骨材の性能を確認するために、都度、コンクリートの試験練りを行う必要があるという問題もあった。
【0008】
さらに、骨材メーカーからユーザーに提供される骨材についての品質管理データは、骨材メーカーによって実施試験項目が異なり、骨材同士の相対比較を行うことができない場合があるという問題もあった。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、骨材自体の試験成績表からだけでは判らない、対象骨材をコンクリート又はモルタルに使用した際の性状を推定することができ、対象骨材と略々同一又は同種の骨材について、骨材品質の変動、産地の変更等がコンクリートやモルタルの物性に及ぼす影響を推定することができ、異なる骨材メーカーから提供される骨材であっても骨材同士の相対比較が可能で、ユーザー側でのコンクリート等の試験練りを省略してユーザーの負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、グループ形成された骨材メーカーから生コン会社等のユーザーに提供される粗骨材又は細骨材を対象骨材とし、該対象骨材をコンクリート又はモルタルへ使用した際の骨材性能を、該対象骨材と略々同一又は同種の骨材について予め取得しておいた所定条件で作製したコンクリート又は所定条件で作製したモルタルによる標準化データから推定する骨材の品質判定方法であって、前記対象骨材における対象粗骨材に対しては所定条件で作製した普通コンクリートと所定条件で作製した高強度コンクリートでの前記標準化データにより、対象細骨材に対しては所定条件で作製したモルタルでの前記標準化データにより各々推定することを特徴とする。本発明でいう略々同一又は同種の骨材とは、ロットの違いはあるものの同じ骨材、産地の違いはあるものの同じ骨材、骨材メーカーの違いはあるものの岩質等が同じ骨材をいう。
【0011】
そして、本発明によれば、対象骨材をコンクリート又はモルタルへ使用した際の骨材性能を予め取得しておいた所定条件で作製したコンクリート又は所定条件で作製したモルタルによる標準化データから推定するため、対象骨材自体の試験成績表からだけでは判らない、対象骨材をコンクリート又はモルタルに使用した際の性状の推定が可能となる。本発明では、このように、推定に予め取得しておいた標準化データを用いるため、種々の骨材の品質を横並びで評価することが可能となる。また、対象骨材と略々同一又は同種の骨材について、骨材品質の変動、産地の変更等がコンクリートやモルタルの物性に及ぼす影響を予測することも可能となる。
【0012】
さらに、上記骨材の品質判定方法によれば、粗骨材を対象として、普通コンクリートだけでなく、高強度コンクリートでの標準化データを用いるため、対象粗骨材について、その品質をより明確に判定することができるとともに、高強度コンクリート用粗骨材としての適性についても判定することができる。
【0013】
上記骨材の品質判定方法において、標準化データを得るべく上記所定条件で作製したコンクリートは、上記標準化データを得る粗骨材以外の使用材料を所定の材料に固定するとともに、これらの材料を用いて所定のコンクリート配合になるように配合し、配合物を所定の混練方法により混練して得られるコンクリートであり、上記所定条件で作製したモルタルは、上記標準化データを得る細骨材以外の使用材料を所定の材料に固定するとともに、これらの材料を用いて所定のモルタル配合になるように配合し、配合物を所定の混練方法により混練して得られるモルタルとする。
【0014】
また、上記骨材の品質判定方法において、上記高強度コンクリートを、シリカフュームを含み、設計基準強度が80N/mm以上の超高強度コンクリートとすると、高強度コンクリートの場合よりも上記骨材の品質をさらに明確に判定することができるので好ましい。
【0015】
さらに、標準化データを用いた上記骨材の品質判定方法において、より具体的には、選定される上記コンクリート又はモルタルによる標準化データは、複数の骨材メーカーから入手した複数種の粗骨材又は細骨材に対し予め収集しデータベース化しておいた前記粗骨材に対するコンクリート又は前記細骨材に対するモルタルにおけるフレッシュ性状と硬化性状のデータのうち、産地(骨材メーカー)、骨材の種類及び骨材自体の品質から選択された一以上において、該対象骨材に最も近い骨材の前記データであり、対象骨材をコンクリート又はモルタルへ使用した際の骨材性能の推定は、該データから行う。
【0016】
また、上記骨材の品質判定方法において、上記フレッシュ性状と硬化性状のデータは、標準化データとすべくJISを含む規格で定める試験方法で得られるデータであり、具体的な試験項目としては、上記コンクリートのうち、普通コンクリートにおけるフレッシュ性状はスランプフローと空気量と練上り温度であって硬化性状は圧縮強度と静弾性係数と長さ変化であり、高強度コンクリートにおけるフレッシュ性状はスランプフローと空気量と練上り温度であって硬化性状は圧縮強度と静弾性係数であり、モルタルにおけるフレッシュ性状はモルタルフローと空気量と練上り温度であって硬化性状は圧縮強度とすることが好ましい。
【0017】
さらにまた、上記骨材の品質判定方法において、上記コンクリート及び上記モルタルによる標準化データの取得を、上記フレッシュ性状と硬化性状のデータ取得が可能な試験設備とデータ管理・提供が可能な施設を備えた事業所での一元的管理の下で行うことは好ましい。一元的管理を行う事業所で品質判定を行うことで、種々の骨材に対応することができるとともに、より適切なデータを提供でき、骨材同士の相対的比較も容易となる。尚、事業所は必ずしも一箇所である必要はなく、ネットワークで繋がっていれば、複数箇所に点在していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、骨材自体の試験成績表からだけでは判らない、対象骨材をコンクリート又はモルタルに使用した際の性状を推定することができ、対象骨材と略々同一又は同種の骨材について、骨材品質の変動、産地の変更等がコンクリートやモルタルの物性に及ぼす影響を予測することができ、異なる骨材メーカーから提供される骨材であっても骨材同士の相対比較を行うことができ、ユーザー側でのコンクリート等の試験練りを省略することもでき、ユーザーの負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる方法を用いて骨材の品質判定を行う骨材品質評価センター(以下、「評価センター」と略す)の説明図である。
【図2】本発明にかかる骨材の標準化データ作成におけるコンクリート及びモルタルの練り混ぜ条件の説明図である。
【図3】本発明にかかる骨材の品質判定方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明にかかる方法を用いて骨材(粗骨材、細骨材)の品質判定を行う評価センターについての説明図であって、コンクリートやモルタルによる標準化データの取得を、このデータ取得が可能な試験設備とデータ管理・提供が可能な施設を備えた事業所での一元的管理の下で行う場合を示している。この評価センター1は、管理部1Aと、試験所1Bからなり、グループ形成された骨材メーカー2と生コン会社(ユーザー)3との間で所定の業務を行う。
【0022】
管理部1Aは、評価センター1の全体の業務を管理し、試験所1Bで得られたデータの管理や、骨材メーカー2や生コン会社3へのデータの提供を行うための設備(データベース、営業資料(比較表等)の作成ツール、データ解析ツール等)を備える。一方、試験所1Bは、所定条件で作製したコンクリート及び所定条件で作製したモルタルについてのフレッシュ性状(スランプフロー、空気量、練上がり温度、モルタルフロー等)と、硬化性状(圧縮強度、静弾性係数、長さ変化等)のデータ等の取得が可能な試験設備(圧縮強度試験機、ミキサー、スランプコーン、フローコーン、エアメーター、温度計、コンパレータ等)を備える。評価センター1は、試験所1Bと管理部1Aとで、適宜情報交換し後述するように、一元的に骨材の品質判定を行う。
【0023】
採石山、砕石工場等の骨材メーカー2は、複数集まってグループを形成し、各社が取り扱っている骨材製品については、すべて評価センター1によって骨材の品質評価を受けるように提携される。各骨材メーカー2は、生コン会社3に普通コンクリート用の粗骨材又は細骨材あるいはこれら両方を納入する。また、骨材メーカー2は、必要に応じて高強度コンクリート等の各種コンクリート用の骨材も生コン会社3に納入する。高強度コンクリートは、一般的に言われている高強度コンクリートであり、通常、設計基準強度が60N/mm以上である。
【0024】
骨材のユーザーである生コン会社3は、普通コンクリートや各種コンクリートを製造するため、骨材メーカー2から粗骨材及び細骨材を購入する。各々の生コン会社3は、通常所定の骨材メーカー2から粗骨材及び細骨材を購入するが、その際、納入骨材自体の品質試験成績書は骨材メーカー2から受け取る。
【0025】
次に、評価センター1によって行われる対象骨材の品質判定業務の流れについて図1を参照しながら説明する。
【0026】
骨材メーカー2は、生コン会社3に骨材を納入する都度試験成績書(JIS規定項目)を提出する。この他、納入する骨材について、予め評価センター1から標準化データを取得していれば、これを添付することもできる。また、骨材メーカー2は、評価センターからの指示に従い、半年に1回程度の割合で、試験所1Bに、自分の所で取り扱っている各種骨材の骨材サンプル(粗骨材、細骨材)を試験所1Bに提供し、その試験成績書(JIS規定項目)を管理部1Aに送付する。さらに、骨材メーカー2は、管理部1Aに生コン会社3に納入した骨材の試験成績書(JIS規定項目)の写しを都度送付する。
【0027】
試験所1Bは、半年に1回程度の割合で、骨材メーカー2から自分の所で取り扱っている各種骨材の骨材サンプル(粗骨材、細骨材)を受領し、この骨材サンプル(粗骨材、細骨材)を用いて所定条件で作製したコンクリート物性データ及び/又はモルタルデータ(標準化データ)を取得するための各種試験を行い、適宜試験結果を管理部1Aに報告する。
【0028】
管理部1Aは、適宜、骨材メーカー2から送付された試験成績書やその他の技術情報、営業情報を骨材データベースに入力する。また、試験所1Bから骨材について所定の条件で試験したコンクリート物性データ及び/又はモルタル物性データ(標準化データ)についての報告を受け、骨材データベースへのデータ等の入力を行うとともに、データの取り纏め、データ解析、営業資料(比較表等)の作成も適宜行う。尚、管理部1Aと試験所1Bとは、必要に応じて、適宜情報交換を行う。管理部1Aは、生コン会社3から納入された骨材(対象骨材)についての各種依頼、問い合わせ等があった場合、生コン会社3にその都度、これらについての標準化データを提供したり、解析結果を報告したり、技術指導したりする。尚、本発明の対象骨材は、グループ形成された骨材2からの骨材であり、該骨材と同一又は同種の骨材については、上記各種試験済みなので、通常提供可能な標準化データを有する骨材である。
【0029】
生コン会社3は、骨材メーカー2から骨材を購入する際、試験成績書(JIS規定項目)を受領する。また、生コン会社3は、必要に応じて、骨材メーカー2から購入した骨材(対象骨材)についての各種依頼、問い合わせ等を管理部1Aに行い、管理部1Aより、各種依頼、問い合わせに対する回答(標準化データ、解析結果等)を受領する。尚、生コン会社3は必要に応じて、試験所1Bとも情報交換を行う。
【0030】
次に、本発明にかかる方法を用いて骨材の品質判定を行う具体的な要領について、以下に説明する。
【0031】
表1は、標準化データとなる骨材を提供するグループを形成した骨材メーカーと、標準化データを得る骨材の一覧を示したものである。同表に示すように、評価センター1が行う所定条件で作製したコンクリート又は所定条件で作製したモルタル等による骨材品質・性能のデータベース化(標準化データのデータベース化)は、A〜Wの23の骨材メーカーが提供する21種以上の粗骨材と、23種以上の細骨材に基づく。
【0032】
【表1】

【0033】
本発明では、標準化データを得るべく、所定材料と所定配合のコンクリート、又は所定材料と所定配合のモルタルを用いて配合物を所定の混練方法で混練して試験体を得る。そして、得られた試験体につき、所定項目の試験をJIS法により行い、統一化・体系化されたデータ(標準化データ)を得る。標準化データを得ることにより、骨材同士の相対的比較ができるようになるとともに、骨材自体の試験成績書からは分からない、実用上の評価が可能となる。すなわち、対象骨材について、一々試し練りをしなくても、コンクリートやモルタルへ適用した際の骨材性能を安定して推定できる。以下に、具体例を示す。
【0034】
表2は、上記骨材と、これらの骨材を用いて所定条件で作製するコンクリートとモルタルの関係を示すものであって、粗骨材に対しては、普通コンクリート及び超高強度コンクリートを作製して骨材の品質・性能のデータベース化(コンクリートに使用した際の骨材性能の把握)を行い、細骨材に対しては、モルタルを作製して骨材の品質・性能のデータベース化(モルタルもしくはコンクリートに使用した際の骨材性能の把握)を行う。各コンクリートもしくはモルタルを作製する際の水セメント比、使用する他の材料等は、同表の概要に示す通りである。尚、同表に記載の「SFPC」とは、シリカフュームプレミックスセメントを示し、このセメントは、シリカフュームを含み、設計基準強度が80〜120N/mm程度の超高強度コンクリート向けのセメントとして、太平洋セメント株式会社等で製造されているものである。
【0035】
【表2】

【0036】
表3は、上記コンクリートとモルタルによる所定の試験項目を示し、表4は、各試験項目に対する所定の試験方法を示す。尚、フレッシュ性状以外の試験項目のn数は3とする。
【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
次に、粗骨材についての標準化データを得るにあたり、特定のコンクリート試験体又はモルタル試験体を用いるが、その際に使用する材料と、配合について説明する。
【0040】
表5は、粗骨材の標準化データを得る際に用いる普通コンクリート試験体を作製する場合の使用材料を示し、表6は、配合を示す。表5に示すように、標準化データの対象となる粗骨材以外の材料については、すべて所定の材料に固定し、配合についても所定の配合に固定する。
【0041】
【表5】

【0042】
【表6】

【0043】
また、表7は、上記同様、粗骨材の標準化データを得る際に用いる超高強度コンクリートに試験体を作製する場合の使用材料を示し、表8は、配合を示す。超高強度コンクリートについても、表7に示すように、標準化データの対象となる粗骨材以外の材料については、すべて所定の材料に固定し、配合についても所定の配合に固定する。上記のように各粗骨材につき、普通コンクリートの標準化データだけでなく、超高強度コンクリートの標準化データを得ておけば、対象粗骨材の品質をより明確に判定することができるとともに、超高強度コンクリート用粗骨材としての適性についても判定することができる。
【0044】
【表7】

【0045】
【表8】

【0046】
また、表9は、細骨材の標準化データを得る際に用いるモルタル試験体を作製する場合の使用材料を示し、表10は、配合を示す。モルタルについても、表9に示すように、標準化データの対象となる細骨材以外の材料については、すべて所定の材料に固定し、配合についても所定の配合に固定する。
【0047】
【表9】

【0048】
【表10】

【0049】
次に、粗骨材及び細骨材についての標準化データを得る際のコンクリート及びモルタルの練り混ぜ条件について、図2を参照しながら説明する。
【0050】
(1)普通コンクリートを練り混ぜる際には、50Lのパン型ミキサーを用い、セメント(C)と、標準化データの対象となる粗骨材(G)と、細骨材(S)とをミキサーに投入後、20秒間ミキサーを回転させて撹拌する。さらに、水(W)と混和剤を加え、60秒間ミキサーを回転させる。その後、ミキサーの壁面及び底面に付着している材料を掻き落とし、さらに60秒間ミキサーを回転させた後、ミキサーから排出する。
(2)超高強度コンクリートを練り混ぜる際には、二軸ミキサーを用い、セメント(C)と、細骨材(S)とをミキサーに投入後、30秒間ミキサーを回転させて撹拌する。さらに、水(W)と混和剤を加え、360秒間ミキサーを回転させる。さらに標準化データの対象となる粗骨材(G)を加え、90秒間ミキサーを回転させた後、5分間静置し、さらに30秒間ミキサーを回転させた後、ミキサーから排出する。
(3)モルタルを練り混ぜる際には、10Lのモルタルミキサーを用い、セメント(C)と、標準化データの対象となる細骨材(S)とをミキサーに投入後、20秒間ミキサーを回転させて撹拌する。さらに、水(W)と混和剤を加え、60秒間ミキサーを回転させる。その後、ミキサーの壁面及び底面に付着している材料を掻き落とし、さらに60秒間ミキサーを回転させた後、ミキサーから排出する。
【0051】
次に、本発明の品質判定手法の流れについて、図3を参照しながら説明する。
【0052】
まず、評価センター1が標準化データを作成する(ステップS1)。標準化データは、図1に示したグループ形成された複数の骨材メーカー2から定期的に入手した粗骨材及び細骨材について、上記所定の試験方法で試験を行ったコンクリート物性データ及びモルタル物性データであって、表11に示すように、これらをデータベース化する。データベース化するデータは、粗骨材に対する標準化データとしては、普通コンクリートにおけるフレッシュ性状は、スランプ、空気量及び練上り温度であって、硬化性状は、圧縮強度、静弾性係数及び長さ変化である。また、高強度コンクリート(超高強度コンクリート)におけるフレッシュ性状は、スランプフロー、空気量及び練上り温度であって、硬化性状は、圧縮強度と静弾性係数である。さらに、細骨材に対する標準化データとしては、モルタルにおけるフレッシュ性状は、モルタルフロー、空気量及び練上り温度であり、硬化性状は圧縮強度である。これらの他、各骨材自体の試験成績データ(JIS規定項目)、産地データ、骨材メーカーデータ等も併せてデータベース化する。
【0053】
【表11】

【0054】
そして、例えば、図1に示した骨材メーカー2が生コン会社3に納入する骨材の産地が変わったような場合には、都度、骨材メーカー2が該産地から入手した骨材(以下、「追加骨材」という)C1について、上記試験方法で試験を行い、新たな標準化データを得る。
【0055】
次に、評価センター1は、適宜、骨材メーカー2からの骨材の納入先である生コン会社3(ユーザ−)等から対象骨材の品質判定依頼を受ける(ステップS2)。この際、骨材の種類、産地、骨材自体の試験成績書等を添付してもらう。該依頼を受け、評価センター1は、上記データベースから、対象骨材の産地(骨材メーカー)、骨材の種類、骨材自体の品質等に最も近い骨材の品質データ(標準化データ等)をデータベースより選定する(ステップS3)。前述の通り、通常、対象骨材と略々同一又は同種の骨材について標準化データが作成されているので選定は容易である(品質データは、複数回分の標準化データを平均するなどして用いてもよい)。対象骨材が追加骨材Cl又は新規骨材であり、未だ標準化データが作成されていない場合は、該対象骨材について各種試験(骨材自体の試験、顕微鏡観察、標準化データを得る試験方法での試験等)を補足的に行う(ステップS4)場合もあるが、それは例外的であり、対象骨材は選定可能な標準化データが存在する骨材であって選定できない骨材は対象骨材としない。
【0056】
評価センター1は、対象骨材をコンクリート又はモルタルへ使用した際の骨材性能を、選定した骨材の標準化データに示される性能と略々同一と推定する(ステップS5)。以上の流れは、粗骨材、細骨材のいずれに対しても同様である。
【符号の説明】
【0057】
1 評価センター
1A 管理部
1B 試験所
2 骨材メーカー
3 生コン会社(ユーザー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗骨材又は細骨材を対象骨材とし、該対象骨材をコンクリート又はモルタルへ使用した際の骨材性能を、該対象骨材と略々同一又は同種の骨材について予め取得しておいた所定条件で作製したコンクリート又は所定条件で作製したモルタルによる標準化データから推定する骨材の品質判定方法であって、
前記対象骨材における対象粗骨材に対しては所定条件で作製した普通コンクリートと所定条件で作製した高強度コンクリートでの前記標準化データにより、対象細骨材に対しては所定条件で作製したモルタルでの前記標準化データにより各々推定することを特徴とする骨材の品質判定方法。
【請求項2】
上記所定条件で作製したコンクリートは、上記標準化データを得る粗骨材以外の使用材料を所定の材料に固定するとともに、これらの材料を用いて所定のコンクリート配合になるように配合し、配合物を所定の混練方法により混練して得られるコンクリートであり、上記所定条件で作製したモルタルは、上記標準化データを得る細骨材以外の使用材料を所定の材料に固定するとともに、これらの材料を用いて所定のモルタル配合になるように配合し、配合物を所定の混練方法により混練して得られるモルタルであることを特徴とする請求項1に記載の骨材の品質判定方法。
【請求項3】
上記高強度コンクリートは、シリカフュームを含み、設計基準強度が80N/mm以上の超高強度コンクリートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の骨材の品質判定方法。
【請求項4】
選定される上記コンクリート又はモルタルによる標準化データは、グループ形成された複数の骨材メーカーから入手した複数種の粗骨材又は細骨材に対し予め収集しデータベース化しておいた前記粗骨材に対するコンクリート又は前記細骨材に対するモルタルにおけるフレッシュ性状と硬化性状のデータのうち、産地、骨材の種類及び骨材自体の品質から選択された一以上において、該対象骨材に最も近い骨材の前記データであり、対象骨材をコンクリート又はモルタルへ使用した際の骨材性能の推定は、該データから行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の骨材の品質判定方法。
【請求項5】
上記フレッシュ性状と硬化性状のデータは、JISを含む規格で定める試験方法で得られるデータであり、上記コンクリートのうち、普通コンクリートにおけるフレッシュ性状はスランプフローと空気量と練上り温度であって硬化性状は圧縮強度と静弾性係数と長さ変化であり、高強度コンクリートにおけるフレッシュ性状はスランプフローと空気量と練上り温度であって硬化性状は圧縮強度と静弾性係数であり、モルタルにおけるフレッシュ性状はモルタルフローと空気量と練上り温度であって硬化性状は圧縮強度であることを特徴とする請求項4に記載の骨材の品質判定方法。
【請求項6】
上記コンクリート及び上記モルタルによる標準化データの取得を、上記フレッシュ性状と硬化性状のデータ取得が可能な試験設備とデータ管理・提供が可能な施設を備えた事業所での一元的管理の下で行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の骨材の品質判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−235319(P2010−235319A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81681(P2009−81681)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】