説明

骨髄増殖性新生物および他の血液リンパ系悪性腫瘍を有する患者におけるLNK遺伝子の変異

本発明の態様は、被験者がLNK遺伝子の変異を有する場合、該被験者を、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を有するまたはその素因があると分類するための方法、組成物およびキットを含む。本発明の態様はまた、細胞ベースのアッセイおよび無細胞アッセイにおいてLNK変異に基づく血液リンパ系新生物またされる悪性腫瘍を治療するための候補薬剤ならびにLNK変異体に基づく血液リンパ系疾患を治療するための治療用組成物をスクリーニングすること含む。また、本発明の方法を実施する際に使用し得る組成物、システム、キットおよびコンピュータプログラム製品も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
本発明は、米国立衛生研究所によって与えられた契約NIH U19 AI057229、NIH 0158 G KB065およびNIH 2P01 CA034233−22A1の下での政府援助を得て為された。政府は本発明に一定の権利を有する。
【発明の概要】
【0002】
本発明の態様は、LNK遺伝子の配列を決定することにより、被験者を血液リンパ系新生物もしくは悪性腫瘍に関してスクリーニングする、または血液リンパ系新生物もしくは悪性腫瘍に罹患する素因もしくはより高い感受性を有するとして被験者をスクリーニングするための方法、組成物およびキットを含み、野生型配列と比較して配列変異が存在することは、被験者が血液リンパ系新生物もしくは悪性腫瘍を有する、または血液リンパ系新生物もしくは悪性腫瘍を発症する素因もしくはより高い感受性を有することを示す。本発明の態様はまた、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を治療するための候補薬剤を、LNK変異体を含む細胞と接触させ、候補薬剤であるかどうかを決定することにより、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を治療するための候補薬剤をスクリーニングすることを含む。また、本発明の方法を実施する際に使用し得る組成物、システム、キットおよびコンピュータプログラム製品も提供される。本発明の方法および組成物は様々な適用において使用し得る。
【0003】
本発明の態様は、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を特徴づけ、分類すること、ならびに存在するLNK変異のタイプに応じて治療法を決定する方法をさらに含む。
本発明の態様は、薬のスクリーニングと開発、遺伝子治療、および変異LNK遺伝子の作用または変異LNK遺伝子から生じる作用を予防するまたは改善する他の用途のための、変異LNK遺伝子および変異タンパク質の発現をさらに含む。
【0004】
定義
便宜上、本明細書、実施例および付属の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここに集める。
本明細書で使用される「ストリンジェントなアッセイ条件」という用語は、アッセイにおいて所望レベルの特異性を提供するのに十分な相補性を有する核酸、例えば表面結合核酸および溶液相核酸の結合対を生じさせるのに適合するが、所望の特異性を提供するのに十分な相補性を有さない結合成員の間での結合対の形成にはより適合性でない条件を指す。ストリンジェントなアッセイ条件は、ハイブリダイゼーションと洗浄条件の両方の総和または組合せ(全体)である。
【0005】
核酸ハイブリダイゼーションに関連する(例えばアレイ、サザンハイブリダイゼーションまたはノーザンハイブリダイゼーションにおけるような)「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は配列依存的であり、種々の実験パラメータ下で異なる。本発明の範囲内の核酸を同定するために使用できるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDSを含む緩衝液中42℃でのハイブリダイゼーション、または5×SSCおよび1%SDSを含む緩衝液中65℃でのハイブリダイゼーションを含むことができ、どちらも0.2×SSCおよび0.1%SDS中65℃での洗浄を伴う。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件はまた、40%ホルムアミド、1M NaClおよび1%SDSの緩衝液中37℃でのハイブリダイゼーション、ならびに1×SSC中45℃での洗浄を含み得る。あるいは、0.5M NaHPO、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中65℃でのフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC/0.1%SDS中68℃での洗浄が使用できる。さらなるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、60℃もしくはそれ以上および3×SSC(450mM塩化ナトリウム/45mMクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーション、または30%ホルムアミド、1M NaCl、0.5%サルコシンナトリウム、50mM MES、pH6.5を含む溶液中42℃でのインキュベーションを含む。当業者は、選択的であるが匹敵するハイブリダイゼーションおよび洗浄条件が同様のストリンジェンシーの条件を提供するために利用できることを容易に認識する。
【0006】
ある実施形態では、洗浄条件のストリンジェンシーは、核酸が表面結合核酸に特異的にハイブリダイズするかどうかを判定する条件を示す。核酸を同定するために使用される洗浄条件は、例えば、pH7で約0.02モルの塩濃度および少なくとも約50℃もしくは約55℃〜約60℃の温度;または72℃、約0.15M NaClの塩濃度で約15分間;または約0.2×SSCの塩濃度、少なくとも約50℃もしくは約55℃〜約60℃の温度で約15〜約20分間;またはハイブリダイゼーション複合体を、0.1%SDSを含む約2×SSCの塩濃度の溶液で室温にて15分間2回洗浄し、次に0.1%SDSを含む0.1×SSCによって68℃で15分間2回洗浄するか;または等価の条件を含み得る。洗浄のためのストリンジェントな条件はまた、例えば42℃で0.2×SSC/0.1%SDSであり得る。
【0007】
ストリンジェントなアッセイ条件の特定例は、1.5Mの総一価カチオン濃度を有する塩ベースのハイブリダイゼーション緩衝液中65℃での回転ハイブリダイゼーション(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2000年9月5日出願の米国特許出願第09/655,482号に記載されているように)と、それに続く室温での0.5×SSCおよび0.1×SSCの洗浄である。
ストリンジェントなアッセイ条件は、少なくとも上記の代表的条件と同程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件であり、その場合、上記の特定条件と比較して、所与のセットの条件下で所望特異性を提供するのに十分な相補性を欠く付加的な結合複合体が実質的に生成されない場合、前記所与のセットの条件は少なくともストリンジェントであるとみなされ、その場合、「実質的に超えない」とは、約5倍未満、典型的には約3倍未満であることを意味する。他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は当分野において公知であり、適宜に使用され得る。
【0008】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」または「組換え遺伝子」という用語は、エクソンおよび(場合により)イントロン配列を含む、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸を指す。「イントロン」という用語は、タンパク質に翻訳されず、一般にはDNA分子中のエクソンの間に認められる、所与の遺伝子中に存在するDNA配列を指す。加えて、遺伝子は、場合によりその天然プロモータ(すなわち遺伝子のエクソンとイントロンが非組換え細胞、すなわち天然に生じる細胞中で作動可能に連結されているプロモータ)、および関連調節配列を含んでもよく、AUG開始部位の上流に配列を有してもよくまたは有さなくてもよく、非翻訳リーダー配列、シグナル配列、下流非翻訳配列、転写開始および終結配列、ポリアデニル化シグナル、翻訳開始および終結配列、リボソーム結合部位等を含んでもよくまたは含まなくてもよい。
【0009】
「タンパク質コード配列」または特別なポリペプチドもしくはペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合、インビトロまたはインビボでポリペプチドに転写され(DNAの場合)、翻訳される(mRNAの場合)核酸配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列は、ウイルス、原核生物または真核生物mRNAからのcDNA、ウイルス、原核生物または真核生物DNAからのゲノムDNA配列、およびさらには合成DNA配列を含み得るが、これらに限定されない。転写終結配列は、コード配列に対して3’側に位置し得る。
【0010】
「参照」および「対照」という用語は、観察されたデータを比較し得る公知の値または公知の値のセットを指すために交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、公知とは、その値が了解されているパラメータ、例えば遺伝子またはタンパク質の野生型配列であることを意味する。参照または対照値は、単一データ点からであり得るかまたは2以上の測定もしくはデータ点に基づいて計算される値(例えば野生型コンセンサス配列)であり得る。本発明の態様を実施する際には任意の好都合な参照または対照値を使用し得る。
【0011】
「核酸」という用語は、DNA、RNA(二本鎖または一本鎖)、その類似体(例えばPNAまたはLNA分子)およびそれらの誘導体を含む。本明細書で使用される「リボ核酸」および「RNA」という用語は、リボヌクレオチドから成るポリマーを意味する。本明細書で使用される「デオキシリボ核酸」および「DNA」という用語は、デオキシリボヌクレオチドから成るポリマーを意味する。「mRNA」という用語は、メッセンジャーRNAを意味する。「オリゴヌクレオチド」は、一般に約10〜100ヌクレオチド長のヌクレオチド多量体を指すが、「ポリヌクレオチド」は、任意の数のヌクレオチドを有するヌクレオチド多量体を含む。
【0012】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、「ペプチド」等の用語は、アミノ酸のポリマー(アミノ酸配列)を指し、特定の長さの分子を意味しない。この用語はまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化等のような、ポリペプチドの任意の修飾(例えば翻訳後)を指すまたは含む。例えば、アミノ酸の1またはそれ以上の類似体を含むポリペプチド、置換された結合を有するポリペプチド、ならびに天然および非天然に生じる、当分野で公知の他の修飾が上記の定義に含まれる。
【0013】
「評価する(assesing)」および「審査する(evaluating)」という用語は、任意の形態の測定を指すために交換可能に使用され、分析物(例えばその配列)の同一性を判定するおよび/またはそれが存在するか否かを判定することを含む。「判定する」、「測定する」、「評価する」および「検定する」という用語は交換可能に使用され、定量的測定と定性的測定の両方を含む。評価は相対的または絶対的であり得る。「の存在を評価する」は、試料中の分析物の量または同一性を判定すること、ならびにそれが存在するか否かを判定することを含む。
【0014】
「プロフィール」および「シグナチャー」および「結果」および「データ」等の用語は、ペプチドレベルまたは遺伝子発現レベルのデータを表すために使用される場合、交換可能に使用される(例えばペプチドシグナチャー/プロフィール/結果/データ、遺伝子発現シグナチャー/プロフィール/結果/データ等)。
【0015】
本明細書で使用される「変異」は、非機能性タンパク質または実質的に低いもしくは変化した機能を有するタンパク質をコードする遺伝子を生じさせる変化した遺伝子配列を指す。一般に、有害な変異は病変または病変の潜在的可能性に結びつく。
【0016】
LNK遺伝子/タンパク質は、NCBIウエブサイト上に以下の要約情報を有する:遺伝子ID:10019;公式記号:SH2B3;公式名称:SH2Bアダプタータンパク質3;主要ソース:HGNC:29605;関連するEnsembl参照:ENSG00000111252、HPRD:05480、MIM:605093;遺伝子型:タンパク質をコードする;参照配列の状態:有効;生物:ヒト;別称:LNK;SH2B3。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】LNKの構造および変異の位置。パネルAは、N末端のプロリンリッチ・二量体化ドメイン(Pro/DD)、プレクストリン相同(PH)ドメイン、SH2ドメインおよびC末端の保存されたチロシン残基(Y)を含む、LNKの構造を示す。パネルBでは、野生型(WT;配列番号:18)および変異型のLNKのDNA配列を示す。変異を緑色の斜線で示す。DEL(配列番号:19)は、フレームシフトと中途終止コドン(赤色の箱)を導く5bpの欠失およびミスセンス変異(603_607delGCGCT;613C>G)である。622G>C(配列番号:20)は、PHドメイン内の点変異である。WTのタンパク質配列(配列番号:21)および変異型のLNKのタンパク質配列をパネルCに示す。アミノ酸変化を赤色の斜線で示す。DEL変異は、コドン202におけるフレームシフト、次で63個のナンセンスアミノ酸および中途終止コドンを導く(配列番号:22)。これは、PHおよびSH2ドメインの欠如をもたらす。622G>C変異は、PHドメイン内のグルタミン酸のグルタミン置換(E208Q)を導く(配列番号:23)。パネルDでは、WTおよび変異型のLNKを図式的に示す。E208Q変異の位置を星印で表す。配列決定クロマトグラムをパネルEに示しており、LNK変異は血液中に存在する(DELは配列番号:24であり;E208Qは配列番号:26である)が、生殖系組織、この場合は皮膚線維芽細胞には存在しない(DELに対応する野生型配列は配列番号:25であり;E208Qに対応する野生型配列は配列番号:27である)ことを明らかにし、変異が体細胞性であることを示す。
【図2】LNK変異はTPO依存性増殖およびJAK2−STAT3/5活性化の調節不全を引き起こす。BaF3−MPL細胞を、空のベクター(EV)、WT LNK(WT)または変異LNK(DEL、E208Q、R392E)で形質導入した。パネルAは、0〜10ng/mLの範囲のTPOの濃度での4日間にわたるBaF3−MPLの増殖を示す。生細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色することによって毎日計数し、LSRIIフローサイトメータでTruCountビーズを用いて定量した。誤差バーは、各試料につき2回の反復の標準偏差を表す。パネルBでは、BaF3−MPL細胞を、示されている期間TPO(1ng/mL)で刺激し、次いでリン酸特異的フローサイトメトリによってJAK2、STAT3およびSTAT5の活性化を測定した。リン酸化型のJAK2(pJAK2)、STAT3(pSTAT3)およびSTAT5(pSTAT5)についてのヒストグラムを提示しており、内部の色は、各々の細胞株についての刺激していない細胞(unstim)と比較した平均蛍光強度(MFI)の倍数変化を表す。赤線は、比較のためのEV非刺激細胞のMFIを表す。パネルCでは、BaF3−MPL細胞を、DMSO対照または0.2μM〜5μMの範囲の濃度のJAK阻害剤Iの存在下で培養した。4日目の累積増殖(各細胞株についての最大増殖に基準化した)を示す。誤差バーは、各試料につき2回の反復の標準偏差を表す。
【図3】LNK変異を有する患者からのCD34+早期前駆細胞におけるサイトカイン応答性pSTAT3+/pSTAT5+集団の同定。LNK DELおよびE208Q変異を有する患者、ならびにJAK2 V617FおよびMPL W515L変異を有するPMF患者からの末梢血試料を健常ドナーと比較した。CD3−/CD66−/CD33mid未熟骨髄性細胞をパネルA〜Cに示す。パネルAでは、試料をDMSOまたはJAK阻害剤I(5μM)のいずれかと共に30分間プレインキュベートし、次にTPO(50ng/mL)またはG−CSF(20ng/mL)のいずれかで15分間刺激した後、リン酸特異的フローサイトメトリによってSTAT3およびSTAT5の活性化を評価した。パネルBは、DELからのサイトカイン応答性pSTAT3+/5+(「応答性」)細胞のCD34およびCD38表面染色を、非応答性細胞(pSTAT3+/5+細胞以外のすべての細胞を含む)と比較して示す。サイトカイン応答性細胞を緑色(TPO)および赤色(G−CSF)で示す。パネルAおよびBに関して、各々の象限に示す数は、各象限ゲートに存在する総細胞のパーセンテージを表す。パネルCでは、CD34+サイトカイン応答性細胞の頻度を定量し、健常ドナーに対する倍数変化として提示する。パネルDでは、DELからのPBMCをG−CSFで刺激し、6つのサブセットを、表に示す表面マーカーおよびリン酸化STATタンパク質によって定義されるように、FACSによって選別した。不適(n/a)は、その特定のサブセットを説明するのには使用されなかった表面マーカーを表す。DNAを各々のサブセットから単離し、DEL変異に関する対立遺伝子特異的な定量的PCRを実施した。各サブセットについての対立遺伝子負荷を提示する。誤差バーは3回の反復の標準偏差を表す。
【図4】TPOで刺激したBaF3−MPL細胞におけるJAK2、STAT3およびSTAT5活性化についての倍数変化。各時点のMFIを各々の細胞株について非刺激細胞(0分)に基準化し、倍数変化として表した。このデータを図2Bにおいてヒストグラムとして視覚的に提示する。
【図5】WTまたは変異LNKを発現するBaF3−MPL細胞におけるJAK2−STAT3/5の活性化はJAK活性を必要とする。WTまたは変異LNKを発現するBaF3−MPL細胞を、0.2μM〜5μMの範囲の濃度のDMSOまたはJAK阻害剤Iと共に2時間プレインキュベートした後、TPO(10ng/mL)で刺激した。次に、JAK2、STAT3およびSTAT5の活性化をリン酸特異的フローサイトメトリによって測定した。線グラフは各々の細胞株についての最大活性化%を表す。
【図6】図3A〜Cのための上流ゲーティング方法。一重項を前方および側方散乱に基づいてゲートした。次にCD3およびCD66を使用して、それぞれT細胞および顆粒球を排除した。初期試験は、CD33hi細胞がCD14+(成熟単球)であり、TPOおよび/またはG−CSFに応答したSTAT3/5リン酸化を示さないことを指示した。CD33mid細胞はCD14−(未熟骨髄性細胞)であり、それゆえpSTAT3およびpSTAT5の分析のために使用した。
【図7】野生型および変異LNKのドメイン構造。(A)野生型LNKは575アミノ酸であり、N末端のプロリンリッチドメインおよび二量体化ドメイン(Pro/DD)、形質膜へのターゲティングのために重要なプレクストリン相同(PH)ドメイン、MPLおよびJAK2と相互作用するSH2ドメイン、ならびにC末端の保存されたチロシン残基(Y)から成る。(B)DEL変異体は5bpの欠失およびミスセンス変異を含み、中途終止コドンおよび264アミノ酸の切断型タンパク質を導く。E208Q変異体は、PHドメインの開始部に位置する、アミノ酸208におけるグルタミン酸のグルタミンへの変化を生じさせる点変異を含む。(C)R392E変異体は、SH2ドメインを破壊し、TPO媒介性シグナル伝達および増殖を阻害するLNKの能力を廃することが示されている(Gery et al,Blood 2007)。del PH/SH2変異体は、形質膜に局在する能力を喪失する(Gery et al,Blood 2007)。dPH/R364E/dC変異体は、野生型Lnkにドミナントネガティブ作用を及ぼす(Takizawa et al,Blood 2006)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を詳細に説明する前に、本発明の実施形態は、言うまでもなく、異なり得るので、本発明は記述される特定の実施形態に限定されないことが了解されるべきである。また、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することだけを目的とし、限定を意図されないことも了解されるべきである。
【0019】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間の、文脈上明らかに異なる指示が為されない限り下限の単位の10分の1までの、各々の介在値およびその指定される範囲内の任意の他の指定値または介在値は、本発明に含まれる。これらのより小さな範囲の上限および下限は、指定される範囲内の任意の明確に除外される制限に従って、独立してそのより小さな範囲に含まれてもよく、同時に本発明に含まれる。指定される範囲が上下限の一方または両方を含む場合、それらの含まれる上下限のいずれかまたは両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0020】
ある特定の範囲は、本明細書において数値の前に「約」という用語を付けて提示される。「約」という用語は、本明細書ではその後に続く正確な数、ならびにその用語の後に続く数に近い数または近似する数について明示の裏付けを与えるために使用される。ある数が明確に言及される数に近いまたは近似するかどうかを判定する際に、近いまたは近似する言及されていない数は、それが提示される文脈において、明確に言及される数の実質的等価物を提供する数であり得る。
【0021】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および学術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で述べるものと類似または等価の任意の方法および材料も本発明の実施または試験において使用できるが、代表的な例示的方法および材料をここで説明する。
【0022】
本明細書で引用されるすべての公表文献および特許は、各々個別の公表文献または特許が、参照により組み込まれることが明確かつ個別に指示されているかのごとくに参照により本明細書に組み込まれ、関連して公表文献が引用される方法および/または材料を開示し、説明するために参照により本明細書に組み込まれるものである。任意の公表文献の引用は、出願日に先立つその開示のためであり、本発明が、先行発明によるそのような公表文献に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるべきではない。さらに、提供される公表日は実際の公表日とは異なることがあり得、実際の公表日は独立して確認される必要があり得る。
【0023】
本明細書および付属の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに異なる指示が為されない限り、複数の指示対象を含むことが留意される。さらに、特許請求の範囲は任意の選択的要素を除外するように作成され得ることも留意される。そこで、この記述は、請求項の要素の言及に関連して「唯一」、「のみ」等の排他的用語を使用すること、または「否定的な」限定を使用することの先行詞となることが意図されている。
【0024】
本開示を読了後に当業者に明らかになるように、本明細書で記述および例示される個々の実施形態の各々は別個の構成要素および特徴を有し、それらは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、その他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るまたは前記特徴と組み合わされ得る。任意の言及される方法は、言及される事象の順序でまたは論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0025】
血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を診断するまたは予測するための方法
本発明の態様は、被験者を、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を有するまたはその素因があると分類する方法であって、
被験者からの血球を含んだ試料に由来するLNK遺伝子の配列を決定すること;および
決定されたLNK配列が少なくとも1つの変異を有する場合、被験者を、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を有するまたはその素因があると分類すること
を含む方法を含む。
【0026】
ある実施形態では、LNK変異はプレクストリン相同(PH)ドメインおよび/またはSH2ドメイン内にある。ある実施形態では、LNK変異は、プレクストリン相同(PH)ドメインおよび/またはSH2ドメインの全部または一部の欠失である。ある実施形態では、LNK変異は、野生型LNKと比較して細胞におけるサイトカインシグナル伝達の増大を生じさせる。ある実施形態では、LNK変異はE208Qおよび603_607delGCGCT;613C>Gから選択される。
ある実施形態では、試料は血液試料である。
ある実施形態では、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍は、JAK2 V617F陰性骨髄増殖性新生物(MPN)である。
【0027】
ある実施形態では、分類工程は、決定されたLNK配列を1またはそれ以上の参照LNK配列と比較することを含み、1またはそれ以上の参照LNK配列は、
血液リンパ系新生物または悪性腫瘍の素因があることが既知の被験者からのLNK配列;および
血液リンパ系新生物または悪性腫瘍の素因がないことが既知の被験者からのLNK配列
の一方または両方を含む。
【0028】
LNK核酸またはタンパク質の配列を決定するために任意の好都合な方法を使用してよく、そのためこれに関する限定は意図されていない。ある実施形態では、配列決定工程は、PCR、核酸ハイブリダイゼーション、塩基配列解析および抗体結合アッセイの1またはそれ以上を含む。
【0029】
本開示の方法は、本開示の方法から生じる結果または成績を提供する報告の作成に適する。本明細書で述べる「報告」は、診断または危険性評価およびその結果(例えばLNK変異の結果および新生物/悪性腫瘍を有するまたは発症する可能性)に関する関心対象の情報を提供する報告要素を含む電子文書または有形文書である。本発明の報告は、完全にまたは部分的に電子的に作成する、例えば電子表示(例えばコンピュータのモニター)上に提示することができる。報告はさらに、1)試験施設に関する情報;2)サービスプロバイダー情報;3)患者データ;4)試料データ;5)a)適応症;b)遺伝子検査データを含む様々な情報を含み得る説明報告、および6)他の特徴の1またはそれ以上を含み得る。
【0030】
本開示は、したがって、報告を作成する方法およびそれから生じる報告を提供する。報告は、電子形式または書類上で提示されてよく、患者または患者の医療サービス提供者に提供され得る。ある実施形態では、本明細書で開示される方法は、ユーザー、例えば患者または医療サービス提供者に対して本明細書で詳述される方法の結果の報告を作成するまたは出力する工程をさらに含み得る。報告を作成する人物または主体(「報告作成者」)はまた、その中でデータの評価を実施してもよい。報告作成者はまた、処理工程の任意の1またはそれ以上、例えば試料の収集、試料の処理およびデータ生成を実施してもよい。あるいは、報告作成者以外の主体が、試料の収集、試料の処理およびデータ生成の1またはそれ以上を実施することができる。
【0031】
ある実施形態、例えば本発明の方法が完全に1台のコンピュータ上で実行される実施形態では、ユーザーまたは顧客がデータ入力およびデータ出力の検討を提供する。「ユーザー」は、医療従事者(例えば臨床医、検査技師、医師(例えば癌専門医、外科医、病理学者)等)であり得る。
【0032】
ユーザーが方法の一部だけを実行する実施形態では、本発明の方法に従ってコンピュータ化されたデータ処理後、データ出力(例えば、公表の前に完全な報告を提供する、または「不完全な」報告を検討し、手作業で介入して説明報告を完成させる)を検討する個人を本明細書では「検討者」と称する。検討者はユーザーとは離れた場所に位置し得る(例えば、ユーザーが位置し得る医療施設とは別途に提供される施設)。
【0033】
政府の規制または他の制限事項(例えば保健衛生、医療過誤または損害賠償保険による要求)が適用される場合、すべての結果は、全面的または部分的に電子的に生成されたか否かに関わらず、ユーザーへの公表の前に品質管理ルーチンに供され得る。
本開示によって提供される方法はまた、全体的または部分的に自動化され得る。
【0034】
薬剤スクリーニング
本発明の態様は、被験者において血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を治療するための候補治療薬を同定する方法であって、
野生型LNKと比較してサイトカインシグナル伝達の増大を細胞に付与する、変異LNKタンパク質を含有する細胞を薬剤と接触させること;および
前記薬剤が対照と比較して細胞におけるサイトカインシグナル伝達を低減する場合、前記薬剤を被験者の血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を治療するための候補治療薬として同定すること
を含む方法を含む。
【0035】
ある実施形態では、LNK変異はプレクストリン相同(PH)ドメインおよび/またはSH2ドメイン内にある。ある実施形態では、LNK変異は、プレクストリン相同(PH)ドメインおよび/またはSH2ドメインの全部または一部の欠失である。ある実施形態では、LNK変異はE208Qおよび603_607delGCGCT;613C>Gから選択される。ある実施形態では、LNK変異体は血液リンパ系新生物または悪性腫瘍に関連する。ある実施形態では、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍は、JAK2 V617F陰性骨髄増殖性新生物(MPN)である。
ある実施形態では、接触工程は、細胞をサイトカインと接触させることをさらに含む。ある実施形態では、サイトカインはTPOである。
【0036】
治療方法、治療薬およびその医薬組成物
本発明の態様は、LNK変異体が媒介するサイトカインシグナル伝達(例えばTPOシグナル伝達からの)の増大を阻害する薬剤の有効量を投与することを含む、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を有する被験者を治療することを含む。ある実施形態では、前記薬剤は、LNK変異体が媒介するSTAT3および/またはSTAT5の活性化をブロックする。
【0037】
治療薬の医薬組成物は、標的部位における保持および安定化のために最適化され得る。安定化技術は、分子量の増大を達成するために架橋する、多量体化するまたはポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、中性タンパク質担体等のような基に連結することにより、ポリペプチドのサイズを増大させることを含む。保持を増大させるために他の方法は、ポリペプチドを生分解性または生腐食性インプラントに封入することを含む。治療有効成分の放出速度は、ポリマーマトリックスを通過する輸送の速度およびインプラントの生体内分解によって制御される。ポリマー障壁を通過するポリペプチドの輸送はまた、化合物の溶解度、ポリマーの親水性、ポリマーの架橋の程度、ポリマー障壁を薬剤に対してより透過性にするための水吸収後のポリマーの膨張、インプラントの形状等によっても影響される。インプラントは、移植の部位として選択される領域の大きさと形状に相応した寸法である。インプラントは、粒子、シート、パッチ、プラーク、繊維、マイクロカプセル等であり得、選択される挿入部位と適合性の任意の大きさまたは形状であり得る。
【0038】
医薬組成物は、所望する製剤に応じて、動物またはヒトへの投与用の医薬組成物を製剤するために一般的に使用されるビヒクルと定義される、医薬的に許容される非毒性の担体または希釈剤を含み得る。希釈剤は、配合剤の生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝水、生理食塩水、PBS、リンガー液、デキストロース溶液およびハンクス液である。加えて、医薬組成物または製剤は、他の担体、アジュバントまたは非毒性、非治療性、非免疫原性安定剤、賦形剤等を含み得る。組成物はまた、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤および界面活性剤などの、生理的条件に近づけるための付加的な薬剤も含み得る。
【0039】
組成物はまた、様々な安定剤のいずれか、例えば抗酸化剤なども含み得る。ポリペプチドは、ポリペプチドのインビボでの安定性を高める、またはさもなければその薬理的特性を増強する(例えばポリペプチドの半減期を延長させる、その毒性を低減する、溶解度または取り込みを増強する)様々な周知の化合物と複合体を形成し得る。そのような修飾または複合体化剤の例は、硫酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩を含む。組成物のポリペプチドはまた、それらのインビボでの特性を増強する分子と複合体形成することもできる。そのような分子は、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)および脂質を含む。
様々なタイプの投与に適した製剤に関するさらなる指針は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,PA,17th ed.(1985)に認められ得る。薬物送達のための方法の簡単な総説については、Langer,Science 249:1527−1533(1990)参照。
【0040】
医薬組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与することができる。有効成分の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を測定することを含む、細胞培養物および/または実験動物における標準的な医薬的手順に従って決定できる。毒性作用と治療効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。
【0041】
細胞培養および/または動物実験から得られたデータを、ヒトについての投与量の範囲を策定する際に使用することができる。有効成分の投与量は、典型的には、低い毒性でED50を含む循環濃度範囲内にある。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に依存してこの範囲内で変化し得る。
本明細書で述べる医薬組成物は、様々な異なる方法で投与することができる。例としては、経口、鼻内、経直腸、局所、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下(subcutaneous、subdermal)、経皮、髄腔内および頭蓋内方法によって医薬的に許容される担体を含有する組成物を投与することを含む。
【0042】
例えば静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内および皮下経路等による非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬および製剤を意図される受容者の血液と等張にする溶質を含有し得る、水性および非水性等張滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および防腐剤を含有し得る水性および非水性滅菌懸濁液を含む。
【0043】
医薬組成物を製剤するために使用される成分は、好ましくは高純度であり、潜在的に有害な夾雑物を実質的に含まない(例えば、少なくともナショナルフード(NF)等級、一般には少なくとも分析等級、より典型的には少なくとも医薬品等級)。さらに、インビボでの使用を意図される組成物は、通常は無菌である。所与の化合物を使用前に合成しなければならない限り、生じる生成物は、典型的には合成または精製工程の間に存在し得るいかなる潜在的毒性物質、特にいかなる内毒素も実質的に含まない。非経口投与用の組成物もまた無菌で、実質的に等張であり、GMP条件下で製造される。
【0044】
表現型決定遺伝子の発現プロフィールのデータベース
LNK遺伝子配列および血液リンパ系新生物または悪性腫瘍とそれらの関連性についてのデータベースも提供される。配列および対応する関連性は、それらの使用を容易にする様々な媒体で(例えばユーザーがアクセス可能/読み取り可能な形式で)提供され得る。「媒体」は、本発明の発現プロフィール情報を含む製造物を指す。本発明のデータベースは、コンピュータ読み取り可能媒体、例えばコンピュータを使用するユーザーが直接読み取り、アクセスすることができる任意の媒体上に記録され得る。そのような媒体は、フレキシブルディスク、ハードディスク記憶媒体および磁気テープなどの磁気記憶媒体;CD−ROMなどの光記憶媒体;RAMおよびROMなどの電気記憶媒体;ならびに磁気/光記憶媒体などのこれらのカテゴリーのハイブリッドを含むが、これらに限定されない。当業者は、現在公知のコンピュータ読み取り可能媒体のいずれかを使用して、どのようにして本発明のデータベース情報の記録を含む製造物を作製できるかを容易に認識し得る。「記録される」とは、当分野で公知の任意の方法を使用して、コンピュータ読み取り可能媒体に情報を保存するためのプロセスを指す。保存した情報にアクセスするために使用される手段に基づき、任意の好都合なデータ記憶構造を選択し得る。様々なデータ処理プログラムおよびフォーマット、例えばワードプロセシングテキストファイル、データベースフォーマット等が保存のために使用できる。したがって、本発明の発現プロフィールデータベースはユーザーによってアクセス可能である、すなわちデータベースファイルはユーザーの読み取り可能なフォーマット(例えばユーザーがコンピュータを制御する場は、コンピュータが読み取り可能なフォーマット)で保存される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「コンピュータベースシステム」は、本発明の情報を解析するために使用されるハードウエア手段、ソフトウエア手段およびデータ記憶手段を指す。本発明のコンピュータベースシステムの最小限のハードウエアは、中央処理装置(CPU)、入力手段、出力手段およびデータ記憶手段を含む。当業者は、現在利用可能なコンピュータベースシステムの任意の1つが本発明における使用に適することを容易に認識し得る。データ記憶手段は、上述した本発明の記録を含む任意の製造物、またはそのような製造物にアクセスできる記憶アクセス手段を含み得る。
【0046】
そこで、本発明は、被験者が血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を有するまたはその素因があるかどうかを判定するためのコンピュータプログラム製品をさらに含む。コンピュータプログラム製品は、コンピュータに搭載される場合、血球含有試料からのLNK遺伝子またはタンパク質配列を使用して、被験者についての血液リンパ系新生物または悪性腫瘍カテゴリーを決定するように構成される。決定されると、臨床的な血液リンパ系新生物または悪性腫瘍カテゴリーがユーザーに読み取り可能なフォーマットでユーザーに提供される。加えて、コンピュータプログラム製品は、患者の臨床移植カテゴリーを決定するために用いられる1またはそれ以上の参照または対照LNK配列を含み得る。
【0047】
試薬、システムおよびキット
また、上記で述べた方法の1またはそれ以上を実施するための試薬、システムおよびそれらのキットも提供される。本発明の試薬、システムおよびそれらのキットは大きく異なり得る。関心対象の試薬は、LNK核酸および/またはタンパク質配列を決定する際に使用するために特に設計された試薬を含む。システムという用語は試薬の収集物を指すが、例えば、同じまたは異なる供給源からの試薬の収集物を購入することにより、蓄積されたものを指す。キットという用語は、一緒に提供される、例えば販売される、試薬の収集物を指す。
【0048】
LNK遺伝子またはタンパク質の配列を決定するために特にオーダーメードされた試薬は、そのうちの少なくとも1つがLNK変異遺伝子/cDNA(等)を選択的に検出するおよび/または増幅する(例えばハイブリダイゼーションアッセイ、PCRに基づく技術、線形増幅等を用いて)ように設計された、LNK特異的プライマーまたはプローブの収集物を含む。本発明のシステムおよびキットは、変異アミノ酸配列(例えばポジティブスクリーニングアッセイに関して)またはLNK変異体において欠失していることが公知の配列(例えばネガティブスクリーニングアッセイにおいて)に特異的な抗体を含み得る。システムおよびキットは、様々な方法において用いられる1またはそれ以上の付加的な試薬、例えば標的核酸を作製するためのプライマー、あらかじめ混合されるかまたは別々であってよいdNTPおよび/またはrNTP、1またはそれ以上の独自に標識されたdNTPおよび/またはrNTP、例えばビオチニル化またはCy3もしくはCy5標識dNTP、種々の散乱スペクトルを有する金または銀粒子、または他の合成後標識試薬、例えば蛍光染料の化学的に活性な誘導体、一次および二次抗体(標識抗体を含む)、酵素、例えば逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ等、様々な緩衝媒質、例えばハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液、作製済みのプローブアレイ/基質、スピンカラム等のような標識プローブ精製試薬および成分、シグナル生成および検出試薬、例えばストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ複合体、化学蛍光または発光基質等をさらに含み得る。
【0049】
本発明のシステムおよびキットは、ペプチドまたはタンパク質レベルの測定のための試薬、例えばELISAアッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、MSアッセイ(例えばLC−MS)、HPLCアッセイ、フローサイトメトリアッセイ等において使用されるものをさらに含み得る。
【0050】
本発明のシステムおよびキットはまた、表現型決定要素も含んでもよく、表現型決定要素は、多くの実施形態において、「入力された」LNK核酸またはタンパク質配列に基づき被験者に関して血液リンパ系新生物または悪性腫瘍カテゴリーを決定するために、例えば適切なコンピュータ手段によって、使用できる参照または対照配列である。
【0051】
上記成分に加えて、本発明のキットは、本発明の方法を実施するための説明書をさらに含む。これらの説明書は、様々な形態で本発明のキットに存在してよく、そのうちの1またはそれ以上はキット中に存在し得る。これらの説明書が存在し得る1つの形態は、適切な媒体または被印刷物、例えば情報が印刷された1または複数の紙片上、キットの包装中、添付文書中等に印刷された情報としてである。さらに別の手段は、情報が記録されているコンピュータ読み取り可能媒体、例えばディスケット、CD等である。存在し得るさらに別の手段は、離れた場所で情報にアクセスするためにインターネットを介して使用し得るウエブサイトアドレスである。任意の好都合な手段がキット中に存在し得る。
【0052】
以下の実施例は説明として提供されるものであり、限定としてではない。
実験
概要
LNKは、トロンボポエチン(TPO)およびJAK2を阻害するアダプタータンパク質である。ここで本発明者らは、JAK2 V617F陰性骨髄増殖性新生物を有する2名の患者における新規LNK変異を報告する。1名の患者は、中途終止コドンおよびプレクストリン相同(PH)ドメインおよびSH2ドメインの喪失をもたらす5塩基対の欠失およびミスセンス変異を示した。2番目の患者は、PHドメイン内にミスセンス変異(E208Q)を有していた。これらのLNK変異体で形質導入したBaF3−MPL細胞は、TPO依存性増殖およびシグナル伝達の調節不全を示した。サイトカイン応答性CD34+細胞が両方の患者において異常に豊富であった。したがって、LNKの負のフィードバック調節の喪失はJAK−STATシグナル伝達の異常を推進し、MPNの病因の新規機構を構成する。
【0053】
緒言
チロシンキナーゼの活性化変異によるシグナル伝達異常は、慢性骨髄増殖性新生物(MPN)の顕著な特徴である。JAK2のエクソン14におけるV617F変異は、真性赤血球増加症(PV)を有する患者の>95%、ならびに本態性血小板血症(ET)および原発性骨髄線維症(PMF)を有する患者の約50%において記述されている(参考文献1〜4)。JAK2遺伝子のエクソン12における機能獲得型変異が、V617F変異を有さないPV患者のごく少数で認められており(参考文献5)、またトロンボポエチン(TPO)受容体MPLにおける活性化変異(W515K/L)が、JAK2 V617F陰性PMFおよびETを有する患者の約5%で同定されている(参考文献6、7)。したがって、ETおよびPMF患者の約40〜50%は明確な遺伝的異常を有さない。JAK2またはMPLに変異が存在しない場合でも、JAK−STATシグナル伝達の活性化を一部のMPN患者で明らかにすることができ(参考文献8〜10)、この経路における他の調節要素の変化がMPNの病因に寄与し得ることを示唆する。
【0054】
JAK−STATシグナル伝達の1つの調節因子はLNK(SH2B3)であり、LNKは、プロリンに富むN末端の二量体化ドメイン、プレクストリン相同(PH)ドメイン、SH2ドメインおよびC末端近くの保存されたチロシン残基を含む、いくつかの構造モチーフを共有するアダプタータンパク質のファミリーの成員である(参考文献11)(図1A)。LNKは、そのSH2ドメインを介してMPLに構成的に結合し、そのPHドメインを介して形質膜に共局在する(参考文献12、13)。TPOでのサイトカインの刺激後、LNKはJAK2に強く結合し、下流のSTAT活性化を抑制するまたは終結させる(参考文献12)。 LNK−/−マウスは、造血幹細胞(HSC)画分の拡大、巨核球過形成、巨脾腫、白血球増加および血小板増加を含む、MPN表現型と一致する特徴を示す(参考文献14〜16)。TPO−/−マウスと交配したLNK−/−マウスはこれらの特徴を示さないので、この表現型はTPO依存性である(参考文献17)。加えて、LNK−/−HSCは、TPO刺激に応答して増強されたJAK2の活性化を示す(参考文献12)。これらの試験は、LNKが造血の調節において中心的な役割を果たすこと、およびLNK活性の消失がMPNの重要な病因特徴であり得ることの説得力のある証拠を提供する。本発明者らはそれゆえ、JAK2 V617F陰性MPNのコホートにおいてLNKを塩基配列決定し、ここで、JAK−STATシグナル伝達および増殖の調節不全を導く新規LNK変異の同定を報告する。
【0055】
結果
JAK2 V617F陰性MPNにおける体細胞性LNK変異の同定
PHおよびSH2ドメインを含むLNKの領域(部分的エクソン2〜エクソン7)(図1A)の直接塩基配列決定を、JAK2 V617F陰性MPN(世界保健機構によって定義される)を有する33名の患者からの試料に関して実施し(表1)、LNKのエクソン2において2つの新規変異を同定した。図1Bに示すように、中途終止コドンを導く、5bpの欠失およびミスセンス変異(NM_005475.2:c.[603_607delGCGCT;613C>G]、以下DELと称する)が、PMFを有する患者01において同定された。この変異は、PHドメインおよびSH2ドメインの両方の不在を生じさせる(図1CおよびD)。
【0056】
ETを有する患者02(図4の症例経過記録)では、PHドメインに局在するグルタミン酸のグルタミン置換(E208Q)を導くミスセンス変異(NM_005475.2:c.622G>C)が同定された。どちらの症例もMPL W515変異に関しては陰性であった(データは示していない)。これらの患者の培養皮膚線維芽細胞からの生殖系DNAの塩基配列決定は野生型LNK配列を明らかにし(図1E)、これらの変異が体細胞性であることを確認した。これらの変異のいずれもが、公的に利用可能なSNNPデータベースでは報告されていない。全体として、本発明者らのJAK2 V617F陰性MPN患者のコホートにおいて同定されたLNK変異の頻度は2/33(6%)であった。
【0057】
LNK変異はTPO依存性増殖およびSTAT3/5活性化の調節不全を引き起こす
MPNの病因におけるLNK変異の機能的影響を検討するため、野生型(WT)または変異型LNKをレトロウイルスによってTPO依存性BaF3−MPL細胞株で発現させた。BaF3−MPL細胞はTPO用量依存性増殖を示し、この増殖はWT LNKの発現によって阻害された(図2A)。先の試験(参考文献13)と一致して、SH2ドメインを破壊する合成点変異(R392E)は、LNKが媒介するTPO依存性増殖の阻害を排除した。同様に、DEL変異体は、LNKの負のフィードバック機能の喪失と一致して、TPO媒介性増殖を阻害する能力を欠如していた。これに対し、E208Q変異体は部分的な阻害活性を保持しており、LNK変異が様々な表現型を付与し得ることを示唆した。この区別的な作用は、下記の、これらの変異を担持するMPN患者からの一次試料におけるJAK−STATシグナル伝達の分析においてさらに強調された。
【0058】
LNKは、MPLおよびJAK2に結合し、下流のSTAT3/5活性化をブロックすることによってTPO媒介性増殖を阻害する(参考文献12、13)。それゆえ、本発明者らは、JAK2−STAT3/5経路のTPO媒介性活性化へのLNK変異の影響を検討した。WTおよび変異LNKを発現するBaF3−MPL細胞をTPOで刺激し、JAK2、STAT3およびSTAT5のリン酸化(活性化)をリン酸特異的フローサイトメトリによって測定した(図2Bおよび図4)。空のベクター(EV)で形質導入したBaF3−MPL細胞において、TPO(1ng/mL)での刺激はJAK2−STAT3/5経路の堅固な活性化を生じさせ、前記活性化は約30分でピークに達し、60分まで維持された。これに対し、WT LNKを発現する細胞はJAK2−STAT3/5の低い活性化を示し、30分で一過性にピークに達し、直ちに低下した。SH2ドメイン変異体R392Eを発現するBaF3−MPL細胞はLNKの阻害能力を喪失しており、EVの2倍長い30〜120分間、JAK2−STAT3/5活性化の最大値を達成し、維持した。DEL変異体を発現する細胞はEVに類似した成績であり、30〜60分間、JAK2−STAT3/5活性化の維持を示した。E208Q変異体はこの系においてほぼ完全な阻害能力を保持し、増殖アッセイで見られた部分的阻害と一致して、機能のわずかな喪失をもたらし得ることを示唆した。これらの所見は、LNKが、サイトカイン刺激後にJAK−STATシグナル伝達を終結させる上で重要な役割を果たし(参考文献12)、機能喪失変異がMPNにおいて一般的に認められる減衰しないJAK−STAT活性化および細胞増殖の増大を可能にし得ることを示した以前の試験と一致する。
【0059】
TPO依存性STAT3/5活性化および増殖のLNK媒介性阻害におけるJAK2の役割をさらに評価するため、BaF3−MPL細胞を汎JAK阻害剤(JAK阻害剤I)の存在下で培養した。WTまたは変異LNKを発現するBaF3−MPL細胞はJAK阻害に対して感受性のままであり、各々の細胞株について類似のIC50であった(図2C)。同様に、JAK2−STAT3/5活性化は、すべての細胞株においてJAK阻害剤Iによって有効に阻害された(図5)。これらの所見は、WTまたは変異LNKの存在下で、TPO媒介性増殖およびSTAT活性化がJAK阻害によって排除され得ることを確認する。
【0060】
LNK変異はCD34+早期前駆細胞画分におけるJAK−STATの異常活性化に関連する。
本発明者らは、健常ドナーならびにLNK、JAK2 V617FまたはMPL W515L変異を担持するMPN患者からの循環未熟骨髄性細胞におけるJAK−STATシグナル伝達を検討した(図6)。図3A(左側)に示すように、TPOまたはG−CSFでの刺激は、健常ドナーの試料と比較してDELにおいて著明に増大している独特のリン酸化STAT3/5(pSTAT3+/5+)亜集団を明らかにした。同様のサイトカイン応答性pSTAT3+/5+亜集団がJAK2 V617F陽性およびMPL W515L陽性PMF試料に関して認められ、これがPMF患者の間で共有される表現型であり得ることを示唆した。興味深いことに、E208Q変異を担持する患者からの細胞は、TPOに応答してSTAT3/5リン酸化の増大を示したが、GCSFでは増大を示さず、LNK機能の部分的喪失が特定のサイトカインに応答して区別的なSTAT活性化プロフィールをもたらし得ることを示唆した。STAT3/5活性化をJAK阻害剤Iの存在下でも測定した(図3A、右側)。各々の場合に、pSTAT3+/5+亜集団はJAK阻害によって完全に根絶され、STAT3/5活性化がJAK活性に依存することを確認した。
【0061】
サイトカイン応答性pSTAT3+/5+(「応答性」)集団をさらに特徴づけるため、このサブセットに関する広範な表面マーカー分析を実施した。図3Bに示すように、DELからの応答性細胞は主としてCD34+であり(TPO応答性の81%およびGCSF応答性の89%)、応答性細胞が主として早期前駆細胞および/またはHSCから成ることを示唆した。加えて、サイトカイン応答性細胞と非応答性細胞集団を比較した場合、CD34+発現は応答性細胞において著明に増大しており、サイトカイン応答性が早期前駆細胞画分の顕著な特徴であり得ることを指示した。CD34+応答性細胞の全体的な頻度を計算し(図3C)、この亜集団が健常ドナーと比較してDELにおいて著明に増加していることを認めた。同様の結果がJAK2 V617F陽性およびMPL W515L陽性PMF試料に関して認められた。TPO応答性であるがG−CSF応答性ではないE208Qでは、CD34+細胞が増加していた。これらの所見は、CD34+早期前駆細胞画分におけるTPOおよび/またはG−CSFを介したSTAT3/5の活性化はMPNにおいて頻発する特徴であるが、様々な表現型が存在し得ることを示唆する。
【0062】
DELにおけるサイトカイン応答性CD34+細胞の異常な存在率を考慮して、LNK変異がこれらの細胞に存在するかどうかを検討した。図3Dに示すように、対立遺伝子特異的な定量的PCRは、サイトカイン応答性細胞におけるDEL変異の存在を確認した。加えて、T細胞中にDEL変異が存在しないことは、変異が骨髄系列に限定されていたことを示唆する。最後に、変異対立遺伝子負荷は、異型接合変異と一致して、検討したすべての骨髄性細胞において〜50%であった。これらの所見は、LNK変異がCD34+早期前駆細胞画分において起こり、MPNの病因における早期遺伝的事象であることを示唆する。
【0063】
考察
初めてヒト疾患に関係づけられた、本発明者らのMPN患者のサブセットにおけるLNK遺伝子の変異の同定は、阻害性アダプタータンパク質の破壊が、典型的にはチロシンキナーゼ(すなわちJAK2、MPL)の活性化変異によって駆動される疾患を表現型模写できることを明らかにする。本発明者らは、33名のうち2名(6%)のJAK2 V617F陰性MPN患者においてLNK変異を検出した。この頻度は、ETおよびPMFにおけるMPL W515変異の発生率に類似するが、LNK変異の正確な頻度ならびにMPNの臨床病理学的特徴および予後とのそれらの関連性を決定するには、より大きなコホートのスクリーニングが必要である。以前のインビトロ試験は、LNKがMPL W515LおよびJAK2 V617Fの両方の活性を阻害できることを明らかにしているので(参考文献13、18)、LNK機能の喪失もまた、これらのMPNの病因における協力的な事象として起こり得ることが考えられる。
【0064】
本明細書で述べるLNK変異の両方がPHドメインに影響を及ぼし、また他のタンパク質(例えばAKT1)のPHドメインにおける変異が固形腫瘍において報告されており(参考文献19、20)、これが次第に認識されつつある腫瘍形成の機構であり得ることを示唆する。LNKのPHドメインは形質膜局在化のために重要であるので、DELおよびE208Q変異は、LNKの誤った局在化ならびにMPLおよびJAK2に結合する能力の変化を生じさせ、下流のSTAT活性化を阻害し得る。実際に、PHドメインが欠失した合成LNK変異体はもはや形質膜に局在することができなかった(参考文献13)。DEL変異体はまたSH2ドメインも欠如しており、これは、そのより完全な機能の喪失を説明し得る。このことは以前の試験によって裏付けられ、その試験では、PHドメインに影響を及ぼす合成点変異はLNK機能の部分的喪失をもたらしたが(E208Qと同様に)、SH2ドメインに影響を及ぼす変異はMPLおよびJAK2への結合を排除し、より深刻な表現型を生じさせた(参考文献12、13、16、21)。
【0065】
本発明者らの対立遺伝子特異的な定量的PCRの結果は、DEL変異が異型接合であることを示唆し、一方の機能性LNK対立遺伝子の喪失(すなわちハプロ不全)はこれらの症例においてMPN病因を開始させるのに十分であり得るという概念を想起させる。マウス試験では、LNK機能の不在(LNK−/−)はMPN表現型を導いたが、異型接合性(LNK+/−)は、ハプロ不全モデルと一致して、中間的な表現型を付与した(参考文献15)。あるいは、N末端のプロリンリッチ二量体化ドメインはDELおよびE208Q変異の両方に関して保持されるので、変異LNKの誤った局在化はWT LNKの分離を導き、それによって両方のLNK対立遺伝子の機能喪失をもたらし得る(すなわちトランス優性)。この仮説は、PHドメインとSH2ドメインの両方を破壊する合成変異体がドミナントネガティブ作用を及ぼした以前の試験によって裏付けられる(参考文献22)。
【0066】
LNKは負のフィードバックループの重要な成分であるので、TPOでのサイトカイン刺激はLNKがJAK2に強く結合し、下流のSTAT活性化を抑制するまたは終結させるように誘導する(参考文献12)。この負の調節は、正常な造血およびHSCの増殖と成長の調節に不可欠である。本発明者らの所見は、LNKの変異がこのフィードバック軸を分断し、それによってサイトカイン刺激に応答したSTAT3/5活性化の増強と維持を可能にし、BaF3−MPL増殖アッセイによって明らかにされたように、増殖の増大を生じさせることを指示する。これらの作用は、LNK変異を担持するMPN患者におけるサイトカイン応答性CD34+早期前駆細胞の過剰として生理的に発現された。さらに、CD34+画分におけるDEL変異の存在は、LNKの破壊がこれらの細胞に増殖上の利点を与え、PVにおけるJAK2 V617Fに関する以前の所見と同様に(参考文献23)、MPNの病因における早期遺伝的事象であり得ることを示唆する。LNK変異を担持する患者からの一次試料におけるpSTAT3+/5+応答は、JAK2 V617FまたはMPL W515L変異を担持するPMF患者においても認められた。明らかに、JAK−STAT活性化はMPN生物学の主要な特徴である;JAK2またはMPL変異の不在下で、LNK変異はこの異常な応答を駆動し得る。さらに、pSTAT3+/5+応答の異常は、急性骨髄性白血病において認められる亜集団を想起させ(参考文献24)、このシグナル伝達表現型が様々な骨髄性新生物において認められる頻発特徴であることを示唆する。LNK変異を担持する細胞株および一次試料のTPO媒介性シグナル伝達および増殖はJAK阻害剤によって有効に阻害されたので、JAK2阻害剤による治療はLNK変異を有する患者のために実施可能であり得る。実際に、JAK2阻害剤に関する早期治験において、JAK2 V617F陽性および陰性の両方のMPN患者で応答が認められており(参考文献25)、それゆえこれらの後者の個人をLNK変異に関してスクリーニングすることは興味深い。
【0067】
方法
臨床試料
すべての臨床試料は、インフォームドコンセントおよびスタンフォード大学医学部の治験審査委員会による承認を得て入手した。末梢血試料をヘパリンナトリウム中で得て、直ちにサイトカインで刺激するか、または標準的な手順に従ったフィコール密度勾配分離による末梢血単核細胞(PBMC)の単離後にサイトカインで刺激した(参考文献24、26)。皮膚線維芽細胞を皮膚パンチ生検の機械的解離によって単離し、標準的な方法を用いて短期単層培養において樹立した。
【0068】
塩基配列決定
ゲノムDNA(gDNA)を、QIAamp DNA Blood MiniまたはGentra Purgene Blood Kit(Qiagen,Valencia,CA)のいずれかを製造者の説明書に従って使用して末梢血試料または培養した皮膚線維芽細胞から抽出した。gDNAの品質と量を、Nanodrop分光光度計(Thermo Scientific,Wilmington,DE)を用いて評価した。PHドメインおよびSH2ドメインを含む、LNKエクソン2〜7についてのPCRおよび配列決定プライマーを以下のように設計した:
(配列番号:1)LNK_PART_EX2_F:CGGAGAGGCTGCTGAGAC
(配列番号:2)LNK_PART_EX2_R:TTGCACTCGGCCTAAAAGTT
(配列番号:3)LNK_PART_EX2_F_nest:AAGAAGTTCCTGCCCTGGAG
(配列番号:4)LNK_PART_EX2_R_nest:CTGGAAAGCCATCACACCTC
(配列番号:5)LNK EX 3−5_F:AACTCAGGCCTGGCTGG
(配列番号:6)LNK EX 3−5_R:GGGCTACCTTATGTCCTGGG
(配列番号:7)LNK Ex 3−5_F_INTSEQ:GGTGGGAGACGAGCAG
(配列番号:8)LNK Ex 3−5_R_INTSEQ:CTGTGCACTCCGAGAGC
(配列番号:9)LNK_Ex6−7_F:GTACGCTGGAACCCAGACTC
(配列番号:10)LNK_Ex6−7_R:GTCTGCAGCAAGCCTCTACC
(配列番号:11)LNK_Ex6−7_Nest_F:ACTCAGCCCAGGACATAAGG
(配列番号:12)LNK_Ex6−7_Nest_R:GCCTCTACCCTCTACCCAGTG
(配列番号:13)LNK_EX6_NEST_SEQF:GCTCATGGAGTGTTCCTGGT
(配列番号:14)LNK_EX6_NEST_SEQR:AGGTGCTGTGGGAGGAGAG
【0069】
タッチダウンPCRを標準的なプロトコールに従って実施し、次いで配列分析の前に適切な増幅を確認するためにアガロースゲル電気泳動を行った。BigDye v3.1(Applied Biosystems,Foster City,CA)およびApplied Biosystems 3100または3730xl DNA Analyzerを使用して、製造者のプロトコールに従って両方向塩基配列決定を実施した。
【0070】
細胞培養
BaF3−MPL細胞はJ.Tyner/B.Druker(Oregon Health and Sciences University,Portland,OR)の好意によって提供され、これらを10%FBSおよびIL−3(1ng/mL)(Peprotech,Rocky Hill,NJ)を含有するRPMI培地に維持した。増殖アッセイのために、BaF3−MPL細胞をサイトカイン不含培地で2回洗浄し、10%FBSおよびTPO(0〜10ng/mL)(Peprotech, Rocky Hill, NJ)を含むRPMIに再塗布した。JAK阻害剤増殖アッセイのために、BaF3−MPL細胞を様々な濃度のDMSO対照またはJAK阻害剤I(EMD/Calbiochem,San Diego,CA)の存在下でTPO(10ng/mL)と共に増殖させた。ヨウ化プロピジウム(PI)で染色することによって生細胞を毎日計数し、LSRIIフローサイトメータでTruCountビーズ(BD Biosciences,San Jose,CA)を用いて定量した。Phoenix−Ecoレトロウイルスパッケージング細胞を、10%FBSを含有するDMEM培地に維持した。
【0071】
発現ベクター
野生型LNKおよびDEL配列をGateway適合性ドナーベクター中のDNA 2.0(Menlo Park,CA)によって合成した。pSRαレトロウイルス発現ベクターはJ.Tyner/B.Drukerの好意によって提供され、Gateway Vector Conversion System(Invitrogen,Carlsbad,CA)を製造者の説明書に従って使用してGateway適合性デスティネーションベクター(pSRα−GW)に転換した。WTおよびDEL配列を、LRクロナーゼ(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いてpSRα−GWに移入した。E208QおよびR392E変異体を、QuikChange Lightning Kit(Stratagene,La Jolla,CA)を用いてWT LNKから作製し、直接塩基配列決定によって確認した。
【0072】
レトロウイルス形質導入
Lipofectamine 2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してレトロウイルス発現ベクターをPhoenix−Eco細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後にレトロウイルス上清を収集し、レトロネクチン被覆プレート上でポリブレン(4mg/mL)と共にBaF3−MPL細胞に添加して、1500×gで90分間遠心分離した。形質導入の2日後、形質導入された細胞が安定に増殖し続けるまで、細胞を少なくとも1週間G418(750ng/mL)中で選択した。
【0073】
サイトカイン刺激およびリン酸特異的フローサイトメトリ
BaF3−MPL細胞をサイトカイン不含培地中で一晩飢餓させ、15分〜16時間にわたる時点で37℃にてTPO(1または10ng/mL)で刺激した。末梢血試料をTPO(50ng/mL)またはG−CSF(20ng/mL)(Peprotech,Rocky Hill,NJ)のいずれかで37℃にて15分間刺激した。PBMCを、サイトカイン刺激の前に10%FBSを含有するRPMI中で37℃にて1時間休ませた。JAK阻害剤実験のために、PBMCをJAK阻害剤I(EMD/Calbiochem,San Diego,CA)5μMと共に最後の30分間インキュベートした後、サイトカインで刺激した。サイトカイン刺激後、細胞をパラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences,Hatfield,PA)に固定した。末梢血試料のために、赤血球を低張条件下で溶解した。次に、固定した細胞を氷冷メタノール中で透過処理し、標準的な手順に従って細胞表面マーカーおよび/または細胞内リン酸特異的エピトープを染色した(参考文献24、26)。以下の抗体を使用した(特に断りのない限り、すべての抗体はBD Biosciences,San Jose,CAから得た):pSTAT3(pY705、クローン4/P)、pSTAT5(pY694、クローン47)、pJAK2(pY1007/1008、Cell Signaling Technology,Danvers,MA)、CD34(クローン8G12)、CD38(クローンHIT2、Invitrogen,Carlsbad,CA)、CD14(クローンM5E2)、CD66(クローンB1.1)、CD33(クローンP67.6)、CD3(クローンUCHT1、Beckman Coulter,Brea,CA)。細胞をBD LSRIIフローサイトメータで測定した。選別実験のために、BD FACSAria IIセルソータを用いて細胞を直接PBS中に選別した。フローサイトメトリのデータをFACSDivaソフトウエアで入手し、FlowJo(Tree Star,Ashland,OR)またはCytobankを用いて標準的な手順に従って解析した(参考文献24、26)。
【0074】
対立遺伝子特異的な定量的PCR
選別した細胞からのDNAを、RecoverALL(Ambion,Austin,TX)を製造者の説明書に従って使用して抽出した。Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用してRotor−Gene 3000(Corbett/Qiagen,Valencia,CA)で、5%DMSOの存在下に3組の複製と共に増幅を実施した。LNKの両方の対立遺伝子に区別なくハイブリダイズするプライマー[(配列番号:15)GCTGAAGGAGGCGGTGCTおよび(配列番号:16)GCTGTCCATGGAGGCCTCGT)]ならびに変異体(DEL)対立遺伝子に特異的なプライマー[(配列番号:17)GGAGGCGGTGCTATAGCGTおよび(配列番号:16)GCTGTCCATGGAGGCCTCGT)]を使用して全LNKまたは変異LNKのいずれかを増幅した。WTまたは変異LNK DNAプラスミドの段階希釈を使用して別々の標準曲線を構築した。変異LNK対立遺伝子の相対的存在率を、分析した細胞サブセット内の変異LNK対全LNKの絶対濃度の比として推定した。
【0075】
【表1】

【0076】
LNK変異を有する2名の患者の臨床症例報告
患者01は、2007年に疲労を呈した75歳の男性であった。理学的検査は、肋骨縁の下の20cm以上の巨脾腫が顕著であった。白血球数は12,100/mm、ヘモグロビンは6.3g/dL、血小板数は323,000/mmであった。末梢血スメアは、涙滴赤血球および有核赤血球形態ならびに未熟骨髄性細胞を含む白赤芽球症を示した。骨髄穿刺液は針骨状(aspiculate)であり、細胞遺伝学分析は実施しなかった。骨髄生検は、巨核球の過形成およびクラスタリングを伴うびまん性の著明な線維症を明らかにした。フローサイトメトリは、末梢血中で6%および骨髄で8%の芽細胞を示した。JAK2 V617F変異分析は陰性であった。原発性骨髄線維症の診断が与えられた。患者は赤血球輸血依存性であり、プレドニゾン、ダナゾール、エリスロポエチンおよびヒドロキシ尿素を含むいくつかの療法に対して不応答性であった。患者は現在、JAK2阻害剤臨床試験のために考慮されている。
【0077】
患者02は59歳の男性で、2002年に1,200,000/mmの血小板数を示し、そのほかの血球算定は正常であった。検査で臓器巨大症は存在しなかった。血小板増加症の反応性原因は除外された。末梢血スメアは、他の有意の形態学異常を伴わない巨大血小板形態を明らかにし、骨髄生検は、本態性血小板血症と一致して、巨核球増加を伴う正常細胞性であった。細胞遺伝学は正常であり、JAK2 V617F変異分析は陰性であった。患者は、アスピリンならびにアナグレリドおよびヒドロキシ尿素を含む細胞減少薬の間欠的使用で治療されており、血栓出血性合併症は有していなかった。
【0078】
さらなる研究
LNK変異体の細胞内局在の検査:これまでの試験は、LNKがPHドメインを介して形質膜に局在し、形質膜においてMPLおよびJAK2と直接相互作用することを示した(Bersenev et al.,J.Clin.Invest 2008,118:2832−2844;およびGery et al.,Blood 2007,110:3360−3364)。LNK SH2変異体R392EおよびSH2ドメインを欠く欠失変異体は、どちらも形質膜に局在する能力を保持する。しかし、SH2ドメインとPHドメインの両方を欠く欠失変異体(del PH/SH2)はこの能力を喪失する(Gery et al.,Blood 2007,110:3360−3364)。LNKのN末端(二量体化ドメインを含む)、次いでPHドメインの直前の中途終止コドンを保持するこの変異体は、本発明者らが同定したLNK DEL変異体に著しく類似する(図7)。それゆえ、本発明者らは、LNK DEL変異体もまた、もはや形質膜に局在しないと予測する。この仮説を調べるため、野生型LNKならびにLNK DELおよびE208Q変異体を発現する細胞をLNK特異的抗体で染色し、共焦点顕微鏡で検査する免疫蛍光実験を実施する予定である。LNKに特異的な市販の抗体が利用可能であるが、本発明者らは、これらの実験を容易にするためにLNKのN末端にエピトープタグ(例えばHAタグ)を導入するつもりである。
【0079】
潜在的ドミナントネガティブとしてのLNK変異体の評価:新たに記述されたLNK DELおよびE208Q変異体は、野生型LNK機能の一部または全部を欠如し得る。加えて、野生型LNKタンパク質の存在下で発現された場合(これらの変異を担持する患者について述べたように異型接合状態であるので)、それらはドミナントネガティブとして作用し得る。これは、おそらくPHドメインの欠如のために形質膜に局在する能力を喪失している、LNK DEL変異体に関して特に当てはまる。しかし、この変異体は二量体化ドメインを保持するので、本発明者らは、この変異体が野生型LNKと二量体化して、野生型タンパク質の誤った局在化も引き起こし得ると推測する。この概念は、同様に構造化された変異体(PHドメインの欠失およびSH2ドメインを破壊する点変異を含む)(図7)がドミナントネガティブ作用を及ぼす能力を有することが示された以前の試験(Takizawa et al.,Blood 2006,107:2968−2975)によってさらに裏付けられる。
【0080】
参考文献
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26.Kotecha N,Flores N,Irish J,et al.Single−cell profiling identifies aberrant STAT5 activation in myeloid malignancies with specific clinical and biologic correlates.Cancer Cell 2008;14:335−43.
【0081】
前述の本発明を、理解を明瞭にするために図面および実施例によってある程度詳細に説明したが、本発明の教示に照らして、付属の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく特定の変更および修正を行い得ることは当業者に容易に明白である。
【0082】
したがって、前記説明は単に本発明の原理を例示するものである。当業者は、本明細書において明白に説明または示されてはいないが、本発明の原理を具現化し、その精神および範囲に含まれる様々な仕組みを考案できることが認識される。さらに、本明細書で言及されるすべての例および条件付き言語は、主として、本発明の原理および当分野の技術を推進するために発明人によって寄与される概念を理解する閲覧者の助けとなることが意図されており、そのような特定して言及される例および条件に限定されないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様および実施形態を列挙する本明細書のすべての記述ならびにその特定例は、その構造的および機能的等価物の両方を含むことが意図されている。加えて、そのような等価物は、現在公知の等価物および将来開発される等価物、すなわち、構造にかかわりなく同じ機能を実施する開発された任意の要素の両方を含むことが意図されている。本発明の範囲は、それゆえ、本明細書で示され、説明される例示的な実施形態に限定されることを意図されない。むしろ、本発明の範囲および精神は付属の特許請求の範囲によって具現化される。
【図1−1】

【図1−2】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3−1】

【図3−2】

【図3−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者を、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を有するまたはその素因があると分類する方法であって、
前記被験者からの血球を含んだ試料に由来するLNK遺伝子の配列を決定すること;および
決定されたLNK配列が少なくとも1つの変異を有する場合、前記被験者を、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を有するまたはその素因があると分類すること
を含む方法。
【請求項2】
前記LNK変異がプレクストリン相同(PH)ドメインおよび/またはSH2ドメイン内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記LNK変異が、プレクストリン相同(PH)ドメインおよび/またはSH2ドメインの全部または一部の欠失である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記LNK変異が、野生型LNKと比較して細胞におけるサイトカインシグナル伝達の増大を生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記LNK変異がE208Qおよび603_607delGCGCT;613C>Gから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が血液試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記血液リンパ系新生物または悪性腫瘍がJAK2 V617F陰性骨髄増殖性新生物(MPN)である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分類工程が、決定されたLNK配列を1またはそれ以上の参照LNK配列と比較することを含み、前記1またはそれ以上の参照LNK配列が、
血液リンパ系新生物または悪性腫瘍の素因があることが既知の被験者からのLNK配列;および
血液リンパ系新生物または悪性腫瘍の素因がないことが既知の被験者からのLNK配列
の一方または両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記配列決定工程が、PCR、核酸ハイブリダイゼーション、塩基配列解析および抗体結合アッセイの1またはそれ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
被験者において血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を治療するための候補治療薬を同定する方法であって、
野生型LNKと比較してサイトカインシグナル伝達の増大を細胞に付与する、変異LNKタンパク質を含有する細胞を薬剤と接触させること;および
前記薬剤が対照と比較して前記細胞におけるサイトカインシグナル伝達を低減する場合、前記薬剤を被験者において血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を治療するための候補治療薬として同定すること
を含む方法。
【請求項11】
前記LNK変異がプレクストリン相同(PH)ドメインおよび/またはSH2ドメイン内にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記LNK変異が、プレクストリン相同(PH)ドメインおよび/またはSH2ドメインの全部または一部の欠失である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記LNK変異がE208Qおよび603_607delGCGCT;613C>Gから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記LNK変異体が血液リンパ系新生物または悪性腫瘍に関連する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記血液リンパ系新生物または悪性腫瘍がJAK2 V617F陰性骨髄増殖性新生物(MPN)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記接触工程が、細胞をサイトカインと接触させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記サイトカインがTPOである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
LNK変異体が媒介するサイトカインシグナル伝達の増大を阻害する薬剤の有効量を投与することを含む、血液リンパ系新生物または悪性腫瘍を有する被験者を治療する方法。
【請求項19】
前記薬剤が、LNK変異体が媒介するSTAT3および/またはSTAT5の活性化をブロックする、請求項18に記載の方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−516988(P2013−516988A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549049(P2012−549049)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2011/020997
【国際公開番号】WO2011/088125
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】