説明

高い不透明性を有する二酸化チタン顔料及びその製造方法

本発明は、先行技術と比べて紙の高めた不透明度を有する装飾紙に使用するためのルチル型二酸化チタン顔料並びに製造方法に関する。この顔料は、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び酸化チタンを含有するが、有意な量のジルコニウム化合物を含有しない表面被覆を有する。酸化ケイ素は、緩い堆積の形で存在し、そのBET比表面積は少なくとも15m2/gである。この製造方法は、まず、アルミニウム成分及びリン成分をTiO2懸濁液に添加することを特徴とする。引き続き、アルカリ性ケイ素成分及び酸性に反応するチタン成分及び場合によりpH値を調節する他の成分の添加を行い、その際、pH値は4〜9の範囲内の値に調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い不透明性を有する二酸化チタン顔料、その製造方法及びその装飾紙又は装飾シートにおけるその使用に関する。
【0002】
本発明の技術的背景
装飾紙又は装飾シートは装飾用の熱硬化性被覆材料の構成成分であり、この構成成分は、有利に家具表面の加工のため、ラミネート床板のため及び内装に使用されている。積層品はラミネートと呼ばれ、この場合には、例えば多数の含浸された、上下に積層された紙が互いに圧縮されているか、もしくは紙及び硬質繊維板又はチップボールが互いに圧縮されている。特殊な合成樹脂を使用することによって、このラミネートの極めて高い耐引掻性、耐衝撃性、耐薬品性及び耐熱性が達成される。
【0003】
装飾紙(これについては以後常に装飾シートであるとも解釈される)の使用は装飾表面の製造を可能にし、その際、この装飾紙は、例えば魅力のない木材表面用の被覆紙としてだけでなく、合成樹脂用の支持体としても利用される。装飾紙に課せられる要求は、特に、不透明性(隠蔽力)、光堅牢度(灰化安定性)、色堅牢度、湿潤強度、含浸性及び印刷適性である。
【0004】
装飾紙の製造方法の経済性は、特に紙中の顔料の不透明性により決まる。装飾紙に必要とされる不透明性を達成させるために、二酸化チタンをベースとする顔料は、原則として極めて適している。製紙において、一般に二酸化チタン顔料又は二酸化チタン顔料懸濁液はパルプ懸濁液と混合される。使用物質である顔料及びパルプの他に、一般に助剤、例えば湿潤強度付与剤及び場合によっては他の添加剤も使用される。個々の成分(パルプ、顔料、助剤及び添加剤、水)同士の相互作用は、紙の形成に寄与し、顔料の歩留まりを決定する。歩留まりとは、製造時の全ての無機材料の紙中での保持能力であると解釈される。この場合、パルプ繊維との割合における顔料の表面充填は重要な役割がある。
【0005】
不透明性の改善を二酸化チタン顔料での特別な表面処理により達成できることは公知である。
【0006】
EP 0 713 904 B1には表面処理を記載していて、この場合、アルミニウムオキシドホスフェートの第1の層は、4〜6の酸性のpH値で設けられ、酸化アルミニウムの第2の層は、3〜10のpH範囲内、有利に約7のpHで堆積される。この歩留まりの改善は酸化マグネシウムからなる第3の層によって達成されるため、製造された顔料は、アルミニウムオキシドホスフェート、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムの互いに積み重なった連続層を示す。
【0007】
DE 102 36 366 A1は二酸化チタン顔料の表面処理する方法を開示していて、この場合、まずリン成分、チタン成分及びアルミニウム成分を堆積させ、引き続き8〜10のpH値でマグネシウム成分を堆積させる。この顔料は、改善された光堅牢度及び高い不透明性を有するとされている。
【0008】
DE 103 32 650 A1は、二酸化チタン顔料の表面処理する方法を記載していて、この場合、アルミニウム成分及びリン成分を少なくとも10のpH値でTiO2表面処理懸濁液中に導入し、引き続き9より低いpH値で堆積させる。この方法により同じ不透明性で改善された歩留まりが得られるとされている。
【0009】
US 6,200,375は外部被覆のための耐候性の二酸化チタン顔料を開示していて、この粒子は表面上に、水酸化亜鉛、水酸化チタン、リン酸塩/酸化ケイ素及びオキシ水酸化アルミニウムの積み重なった層を有する。
【0010】
本発明の課題設定及び要約
本発明の課題は、先行技術に対して高められた不透明性を有する、装飾紙中での使用のための二酸化チタン顔料を提供することである。本発明の課題は、更に、このような二酸化チタン顔料の製造方法を提供することである。
【0011】
前記課題は、被覆されたルチル型二酸化チタン粒子を含有し、前記被覆はリン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化ケイ素を含有しかつBET比表面積は少なくとも15m2/gである、二酸化チタン顔料により解決される。
【0012】
前記課題は、更に、次の工程
a) 被覆されていない二酸化チタン顔料の水性懸濁液を準備し、
b) アルミニウム成分及びリン成分を添加し、
c) アルカリ性ケイ素成分及び少なくとも1種のpH値を調節する成分を添加し、その際、pH値を調節する成分は酸性に反応するチタン成分であり、その際、前記懸濁液のpH値を4〜9の範囲内の値に調節する、
を有する、被覆された二酸化チタン顔料の製造方法により解決される。
【0013】
本発明の更に有利な実施態様は引用形式請求項に記載されている。
【0014】
本発明の記載
ここで及びこれ以後、「酸化物」とは、相応する水含有酸化物又は水和物でもあると解釈される。次に開示されたpH値、温度、質量%又は体積%で示す濃度等に関する全ての記載は、当業者に公知のそれぞれの測定精度の範囲内にある全ての値を含むと解釈される。本発明の範囲内で「有意な量」又は「有意な割合」の記載は、測定精度の範囲内で混合物の特性に影響を及ぼす、成分の最小量を表す。
【0015】
本発明による二酸化チタン顔料は、有利にルチル型二酸化チタンである。これは、粒子表面上にアルミニウム−リン−チタン−ケイ素含有の化合物からなる層が存在することにより特徴付けられる。ケイ素化合物は、酸化ケイ素及び/又は可能な場合にチタン酸ケイ素である。方法工程c)におけるケイ素成分及びチタン成分の組み合わせは、緩い形で堆積を生じさせ、それにより、BET比表面積を少なくとも15m2/g、有利に20〜60m2/g、特に20〜35m2/gの値に向上させ、改善された不透明性を生じさせる。前記の酸性に反応するチタン成分がこの場合に有利である。
【0016】
本発明による方法の場合に、二酸化チタン粒子表面上にアルミニウム−リン−チタン−ケイ素含有の化合物からなる層(以後これを簡単に混合層という)を堆積させる。まず、アルミニウム成分及びリン成分をTiO2懸濁液に添加し、その際、前記懸濁液のpH値は酸性領域でもアルカリ性領域にでもあることができる。引き続き、アルカリ性のケイ素成分及び酸性に反応するチタン成分及び場合により少なくとも1種のpH値を調節する他の成分を個々に任意の順序で又は一緒に前記懸濁液に添加し、その際、pH値は4〜9の範囲内にあり、かつ前記混合層を前記粒子表面に堆積させる。
【0017】
本発明の根底をなす表面処理法は、水性の、有利に湿式粉砕されたTiO2懸濁液から出発する(工程a)。この湿式粉砕は、場合により分散剤の存在で実施される。この表面処理は湿式粉砕の間では行わない。このTiO2は、被覆されていないTiO2粒子、つまり硫酸塩(SP)法又は塩化物(CP)法により製造されたTiO2基体粒子である。この基体は、通常では、CP法の場合にはアルミニウムをAl23として計算して0.3〜3質量%の程度でかつ気相中で四塩化チタンを二酸化チタンへ酸化する場合に2〜15%の酸素過剰量で添加することにより安定化され、SP法の場合には例えばAl、Sb、Nb又はZnによるドーピングにより安定化される。
【0018】
有利にルチルが使用され、特に塩化物法で製造されたルチルが使用される。この表面処理法は、有利に80℃より低い温度で、特に55〜65℃の温度で実施される。工程a)中での懸濁液は、アルカリ性にも、酸性にも調節することができる。
【0019】
工程b)において、アルミニウム成分及びリン成分が添加される。本発明の表面処理方法のために適当なアルミニウム成分は、アルカリ性又は酸性に反応する水溶性の塩、例えばアルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム等である。この選択は限定であると解釈されない。このアルミニウム成分は、TiO2粒子に対して、Al23として計算して、1.0〜9.0質量%、有利に1.5〜4.5質量%の量で添加される。適当なリン成分は、無機化合物、例えばアルカリ金属リン酸塩、リン酸アンモニウム、ポリリン酸塩、リン酸等である。この選択は限定であると解釈されない。特に、リン酸水素二ナトリウム又はリン酸が適している。このリン成分は、TiO2粒子に対して、P25として計算して、1.0〜5.0質量%、有利に1.5〜4.0質量%の濃度で添加される。
【0020】
工程c)において、アルカリ性のケイ素成分及び酸性に反応するチタン成分並びに場合により1種又は数種の他のpH値を調節する成分が添加されるため、pH値は4〜9の範囲内に、有利に4〜6の範囲内に、特に約5のpH値に調節される。アルカリ性のケイ素成分は、有利にナトリウム水ガラス又はカリウム水ガラスである。被覆されていないTiO2粒子に対して、SiO2 0.1〜5.0質量%、有利に1.0〜3.0質量%を添加する。
【0021】
酸性のチタン成分は、有利に塩化酸化チタン又は硫酸酸化チタンである。その中でチタン成分は被覆されていないTiO2粒子に対して、TiO2として計算して、0.1〜6.0質量%が添加される。
【0022】
この使用されたpH値を調節する成分は、酸又はアルカリであることができる。酸として、例えば硫酸、塩酸、リン酸又は他の適当な酸を使用することができる。更に、酸の代わりに相応して酸性に反応する塩、例えば硫酸アルミニウムを使用することもできる。アルカリとして、有利に苛性ソーダが使用される。アルカリ性に反応する塩も適している。当業者には、適当なpH値を調節する化合物は公知である。従って、この選択は本発明の限定であると解釈されない。
【0023】
次の工程d)において前記混合層上に酸化アルミニウムからなる層を、アルカリ性及び酸性のアルミニウム成分(例えばアルミン酸ナトリウム/硫酸アルミニウム)を並行して添加することにより、又はアルカリ性のアルミニウム成分、例えばアルミン酸ナトリウム及び酸、例えば硫酸又は塩酸を添加することにより、又は酸性のアルミニウム成分、例えば硫酸アルミニウムをアルカリ、例えばNaOHと一緒に添加することによりpH値を4〜9の範囲内に維持することにより設けることが有利であることが判明した。この場合、これらの成分は、pH値が4〜9の範囲内の値に一定に保たれるように添加することができる。又は前記成分は、pH値が添加の間にpH値範囲4〜9の間で変化するような組み合わせで添加される。当業者にはこの方法様式は公知である。pH値を調節するために、例えばアルカリ又は酸(例えば、NaOH/H2SO4)又はアルカリ性に反応するか又は酸性に反応する塩溶液(例えば、アルミン酸ナトリウム/硫酸アルミニウム)が適当である。工程c)で調節されたpH値で処理を実施することが、特に有利であることが判明した。
【0024】
最終的に、必要に応じて、工程e)で例えばアルカリ/酸(例えばNaOH/H2SO4)又はアルカリ性/酸性の塩溶液、例えばアルミン酸ナトリウム/硫酸アルミニウムを用いた約6〜7へのpH値の調節が行なわれる。工程c)、d)及びe)において使用されたアルミニウム成分の量は、Al23として計算して、工程b)ですでに使用された量のAl23に算入しなければならない。被覆されていないTiO2粒子に対して、Al23として計算して、工程b)〜e)で使用されたアルミニウム成分の合計は、理想的には0.1〜9.0質量%、有利に2.0〜8.0質量%、特に3.0〜6.5質量%である。同様に、場合により、P25として計算した工程c)及びd)で使用されたリン成分の量は、工程b)で使用されたP25の量に算入しなければならない。被覆されていないTiO2粒子に対して、P25として計算して、工程b)〜d)で使用されたリン成分の合計は、P25として計算して、理想的には1.0〜5.0質量%、有利に1.5〜4.0質量%である。
【0025】
本発明による方法の特別な実施態様の場合には、有意な量のZr成分又はCe成分は使用されない。一般に、表面処理された顔料は、最終的に>200℃の温度での熱処理にさらされる必要はない。
【0026】
本発明による方法の有利な実施態様の場合には、アルカリ性のTiO2懸濁液から出発する。このため、工程a)において懸濁液は、まず適当なアルカリ性化合物、例えばNaOHで、少なくとも10のpH値に調節される。これは、湿式粉砕が行なわれる場合には、理想的には、前記粉砕の前に行なわれる。
【0027】
工程b)において、次に、アルミニウム成分及びリン成分を、それぞれ水溶液の形で前記懸濁液に添加される。前記成分の添加の間に、前記懸濁液のpH値を少なくとも10、特に少なくとも10.5、特に有利に少なくとも11に維持する。アルカリ性のアルミニウム成分として、特にアルミン酸ナトリウムが適している。添加の際にpH値を10より低く低下させる酸性に反応する化合物が、例えば硫酸アルミニウムである場合には、この効果が適当なアルカリ性化合物、例えばNaOHの添加により補償することが有利であると判明した。当業者にとっては、pH値を少なくとも10に維持するために適当なアルカリ性化合物及びその必要量は周知である。
【0028】
添加によりpH値を10より低く低下させるリン成分の場合には、この効果が適当なアルカリ性化合物、例えばNaOHの添加により補償することが有利であると判明した。当業者にとっては、pH値を少なくとも10に維持するために適当なアルカリ性化合物及びその必要量は周知である。
【0029】
Al成分及びP成分は、懸濁液に任意の順序で、別個に順番に、又は同時に供給することができる。
【0030】
工程c)において、引き続きアルカリ性のケイ素成分の添加並びに酸性に反応するチタン成分の添加及び場合により少なくとも1種のpH値を調節する他の成分の付加的な添加が行われ、pH値を4〜9の範囲内の値に調節する。
【0031】
ケイ素成分及び酸性に反応するチタン成分及びpH調節する他の成分の添加は、連続して又は同時に並びに多段階で及び任意の順序で行うことができる。
【0032】
このアルカリ性のケイ素成分は、有利にナトリウム水ガラス又はカリウム水ガラスである。このチタン成分は、有利に塩化酸化チタンである。付加的に使用される酸性に反応する成分は、有利に塩酸である。
【0033】
本発明による方法の別の実施態様の場合には、本発明による表面処理を酸性のpH値領域から始める。
【0034】
この場合、工程b)においてこのようなアルミニウム成分及びリン成分を添加し、懸濁液のpH値を次に4より低い値にする。工程a)においてすでに適当な酸でpH値を低下させるか又は工程b)において前記成分の適当な組み合わせにより場合により酸の添加下でpH値を4より低く低下させるかどうかは、当業者にゆだねられる。例えば、リン酸/アルミン酸ナトリウム又はリン酸水素二ナトリウム/硫酸アルミニウムの組み合わせが適している。この成分は、懸濁液に任意の順序で、個別に順番に、又は同時に供給することができる。
【0035】
工程c)では、アルカリ性のケイ素成分、有利にナトリウム水ガラス又はカリウム水ガラス、及び酸性に反応するチタン成分、有利に塩化酸化チタンが添加される。pH値を4〜9の範囲内の値に調節するために、場合によりpH値を調節する他の成分の添加が必要である。工程c)において前記成分の添加は、順番に又は同時に並びに多段階で及び任意の順序で行うことができる。工程c)において添加された成分の量、種類及び順序に応じて、懸濁液のpH値は個々の添加の進行において短期間に9を上回る値に上昇させることができる。
【0036】
この表面処理されたTiO2顔料は、当業者に公知の濾過方法によって懸濁液から分離され、生じたフィルターケーキは、可溶性の塩を除去するために洗浄される。この洗浄されたフィルターペーストは、ラミネート中での顔料の光堅牢度の改善のために、引き続く乾燥の前又は乾燥の間に硝酸塩含有化合物、例えばKNO3、NaNO3、Al(NO33を、NO3として計算して0.05〜1.0質量%の量で添加することができる。例えば、スチームミルでの引き続く粉砕の場合には、顔料にTiO2顔料の製造の際に通常使用され、当業者に公知である一連の有機化合物、例えばポリアルコール(トリメチロールプロパン)を添加することができる。乾燥前又は乾燥の間に硝酸塩含有化合物を添加せずに、このような物質を粉砕の間でも添加することができる。
【0037】
この方法により製造された顔料は、比較顔料と比べて改善された不透明性を示し、装飾紙中での使用のために最も適している。更に、本発明による二酸化チタン顔料は、工程c)での堆積されたTiO2又はSiO2及び工程d)でのAl23の量に関して等電点(IEP)の状態を調節することができることを特徴とする。このIEPは、顔料−表面電荷がほぼゼロである水性顔料懸濁液のpH値を表す。従って、本発明による顔料の表面電荷は、製紙プロセスの要求に応じて、正又は負にずらすことができる。
【0038】
この本発明による表面処理方法は、通常では、バッチ式運転で実施される。しかしながら、この処理を連続的に行うことも可能であり、その際、当業者に公知である適当な混合装置により十分な混合が保証されなければならない。
【0039】
実施例
次に本発明を例示的に記載するが、これは本発明を限定するものではないと解釈される。
【0040】
実施例1:
350g/lのTiO2濃度を有する塩化物法からのサンドミルにかけられたルチル型TiO2懸濁液を60℃でNaOHでpH値10に調節した。撹拌しながら、この懸濁液にAl23 3.5質量%をアルミン酸ナトリウムとして添加した。10分間の撹拌時間後、P25 2.4質量%をリン酸水素二ナトリウム溶液として添加した。更に10分間の撹拌時間を続けた。この懸濁液を、次の工程で塩化酸化チタン(TiO2 3.0質量%に相当)及びナトリウム水ガラスの形のSiO2 2.4質量%の添加によりpH値5に調節した。このSiO2の添加は、この場合、2段階で、それぞれSiO2 1.2質量%で、塩化酸化チタンの添加と並行して、pH値10.5及び7で行った。10分間の撹拌時間の後に、引き続きAl23 1.9質量%をアルミン酸ナトリウム溶液及びHClの並行した添加の形で混合して、pH値を5に維持した。
【0041】
この懸濁液を、30分の撹拌時間の後に、アルカリ性のアルミン酸ナトリウム溶液を用いて、約5.8のpH値に調節し、濾過し、洗浄により水溶性の塩を除去した。この洗浄したフィルターペーストを円盤乾燥器中で乾燥し、引き続きスチームミルにかけた。
【0042】
この顔料は、32m2/gのBET値を有し、等電点はpH値5.2であった。
【0043】
シート製造の際に、希薄材料懸濁液(Duennstoffsuspension)のゼータ電位は耐湿剤の添加によりそれぞれ+16mVの値又は−12mVの値に調節された。
【0044】
実施例2:
350g/lのTiO2濃度を有する塩化物法からのサンドミルにかけられたルチル型TiO2懸濁液を60℃でNaOHでpH値10に調節した。撹拌しながら、この懸濁液にAl23 3.5質量%をアルミン酸ナトリウムとして添加した。10分間の撹拌時間後、P25 2.4質量%をリン酸水素二ナトリウム溶液として添加した。更に10分間の撹拌時間を続けた。この懸濁液を次の工程で塩化酸化チタン(TiO2 2.8質量%に相当)を添加することによって、pH値5に調節した。引き続きSiO2 1.2質量%をナトリウム水ガラスの形で添加した。10分間の撹拌時間の後に、HClでpH値を5に調節した。引き続きAl23 1.9質量%をアルミン酸ナトリウム溶液及びHClの並行した添加の形で混合して、pH値を5に維持した。この懸濁液を、30分の撹拌時間の後に、アルカリ性のアルミン酸ナトリウム溶液を用いて、約5.8のpH値に調節し、濾過し、洗浄により水溶性の塩を除去した。この洗浄したフィルターペーストを円盤乾燥器中で乾燥し、引き続きスチームミルにかけた。
【0045】
この顔料は、26m2/gのBET値を有し、等電点はpH値6.0であった。
【0046】
シート製造の際に、希薄材料懸濁液のゼータ電位は耐湿剤の添加によりそれぞれ+18mVの値又は−14mVの値に調節された。
【0047】
実施例3:
実施例2と同様に、このナトリウム水ガラス(SiO2 2.4質量%に相当)を、塩化酸化チタン溶液(TiO2 3.0質量%に相当)の前に前記懸濁液に添加したこの顔料は、30m2/gのBET値を有し、等電点はpH値5.9であった。
【0048】
シート製造の際に、希薄材料懸濁液のゼータ電位は耐湿剤の添加によりそれぞれ+12mVの値又は−16mVの値に調節された。
【0049】
実施例4:
実施例3と同様ではあるが、SiO2 1.2質量%及びTiO2 2.9質量%を使用した。この顔料は、27m2/gのBET値を有し、等電点はpH値6.2であった。
【0050】
実施例5:
実施例3と同様ではあるが、SiO2 0.6質量%及びTiO2 2.9質量%を使用した。この顔料は、26m2/gのBET値を有し、等電点はpH値6.4であった。
【0051】
比較例1:
350g/lのTiO2濃度を有する塩化物法からのサンドミルにかけられたルチル型TiO2懸濁液を60℃でNaOHでpH値10に調節した。撹拌しながら、この懸濁液にAl23 2.0質量%をアルミン酸ナトリウム溶液として添加した。10分間の撹拌時間後、前記懸濁液に引き続きP25 2.4質量%をリン酸水素二ナトリウム溶液として添加する。10分間の撹拌時間を続けた。この懸濁液を次の工程で硫酸アルミニウム溶液(Al23 2.6質量%に相当)の添加によって、pH値5に調節した。引き続き、Al23 0.8質量%を硫酸アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムの同時添加の形で混合して、pH値を5に維持した。
【0052】
この酸性懸濁液を、30分の撹拌時間の後に、アルカリ性のアルミン酸ナトリウム溶液を用いて、約5.8のpH値に調節し、濾過し、洗浄により水溶性の塩を除去した。この洗浄したフィルターペーストを円盤乾燥器中で乾燥し、引き続きスチームミルにかけた。この顔料はBET値12m2/gを示した。
【0053】
シート製造の際に、希薄材料懸濁液のゼータ電位は耐湿剤の添加によりそれぞれ+16mVの値に調節された。負のゼータ電位の調節は、紙の不十分な湿潤強度を生じさせた。
【0054】
比較例2
350g/lのTiO2濃度を有する塩化物法からのサンドミルにかけられたルチル型TiO2懸濁液を60℃でNaOHでpH値10に調節した。撹拌しながら、この懸濁液にAl23 2.0質量%をアルミン酸ナトリウム溶液として添加した。10分間の撹拌時間後、前記懸濁液に引き続きP25 2.4質量%をリン酸水素二ナトリウム溶液として添加した。10分間の撹拌時間を続けた。前記懸濁液にSiO2 1.0質量%をナトリウム水ガラスの形で添加した。次の工程でこの懸濁液を硫酸アルミニウム溶液(Al23 2.7質量%に相当)の添加によって、pH値5に調節した。引き続き、Al23 0.8質量%を硫酸アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムの同時添加の形で混合して、pH値を5に維持した。この酸性懸濁液を、30分の撹拌時間の後に、アルカリ性のアルミン酸ナトリウム溶液を用いて、約5.8のpH値に調節し、濾過し、洗浄により水溶性の塩を除去した。この洗浄したフィルターペーストを噴霧乾燥器中で乾燥し、引き続きスチームミルにかけた。この顔料はBET値12m2/gを示した。
【0055】
試験方法
装飾紙の光学特性の評価及びそれによる二酸化チタン顔料の品質の評価のために、同じ灰分含有量の装飾紙を比較することが重要である。約80g/m2のシート重量及び約30g/m2の灰分含有量を有する装飾紙シートを製造した。
【0056】
装飾紙シートの製造を並行して2つの異なる方法により行った:いわゆる「一工程法」の場合に、シートの製造のために試験されるべき顔料を同時にパルプ及び市販の耐湿剤と一緒に水中に分散させた。これに引き続き、シート製造を行った。この方法は当業者に公知である。システム−ゼータ電位−測定器Mutek SZP 06を用いて測定して、希薄材料懸濁液のゼータ電位が+10mV〜+20mVの範囲に調節されるような量の耐湿剤を計量供給した。
【0057】
いわゆる「スプリット法」の場合に、まずパルプ及び予め測定された量の耐湿剤を水中に懸濁させた。試験されるべき顔料を、所定の滞留時間の後に添加し、分散させた。これに引き続き、シート製造を行った。この方法は当業者に公知である。必要量の耐湿剤を、特別な試験において、希薄材料懸濁液のゼータ電位を用いて測定した。このために、所定量のパルプ及び二酸化チタン顔料を水中に懸濁させた。引き続き、希薄材料懸濁液のゼータ電位が−10mV〜−20mVの範囲内に調節されるまでの量の耐湿剤を計量供給した。使用された量の耐湿剤は、両方の方法のために、パルプ(炉乾燥)に対して耐湿剤(作用物質)1〜4質量%の通常の程度であった。
【0058】
シートの二酸化チタン含有量(灰分)ならびに顔料の歩留まりを引き続き測定した。
【0059】
a) 灰分含有量
二酸化チタン含有量を測定するために、製造された紙の定義された質量を高速型灰化装置(Schnellverascher)を用いて900℃で灰化した。残留物を計量することにより、TiO2(灰分)の質量割合が質量%で得られる。灰分含有量の計算のために次の式に基づいた:灰分含有量[g/m2]=(灰分[質量%]×面積質量[g/m2]/100[%]
【0060】
b) 光学特性
この顔料の光学特性はラミネート中で決定した。このため、装飾紙を変性したメラミン含浸樹脂で含浸し、ラミネートに圧縮した。この樹脂処理されるべきシートをメラミン樹脂溶液中に完全に浸漬し、その後に2個のナイフの間に引き込み、所定の樹脂塗工量を保証し、その直後に空気循環乾燥炉中で130℃で前縮合させた。この樹脂塗工量は、シート質量の120〜140%であった。このシートは約6質量%の残留湿分を有していた。縮合されたシートをフェノール樹脂で含浸された芯紙と白黒の下層の紙と一緒に、圧縮パッケージに統合した。試験顔料の評価のために、このラミネート構造は、11層:装飾紙、白黒下層、芯紙、芯紙、芯紙、白色下層、芯紙、芯紙、芯紙、白黒下層、装飾紙からなる。
【0061】
前記パッケージの圧縮は、Wickert Laminat-Presse Typ 2742を用いて、140℃の温度及び900N/cm2の圧力で、300秒の加圧時間で行った。
【0062】
ラミネートの光学特性の測定は、市販の分光光度計を用いて行った。
【0063】
積層プレス材料の光学特性を評価するために、DIN 6174による装飾紙の三刺激値(CIELAB L*,-a*,-b*)をELREPHO(R) 3000色彩計を用いて白色及び黒色の下層上で測定した。この不透明性は、紙の光透過性又は透過率についての基準である。このラミネートの不透明性についての基準として、次の大きさが選択された:CIELAB L*schwarz、黒色の下層紙上で測定したラミネートの明度、及び不透明性L[%]=(Yschwarz/Yweiss)×100、黒色の下層紙上で測定された前記装飾紙のY値(Yschwarz)及び白色の下層紙上で測定されたY値(Yweiss)から算出。
【0064】
c) BETによる比表面積(Brunauer-Emmett-Teller):
このBET表面積はMicromeritics社のTristar 3000を用いて、静的な容量分析の原理(statisch volumetrischen Prinzip)に従い測定した。
【0065】
d) 等電点
この測定法は、電場の印加下での電解液中での顔料粒子の電位泳動移動度の測定に基づく。試験されるべき顔料は、0.01MのKCl水溶液中に分散した。その後、試料のゼータ電位の推移を、pH値に依存してMalvern社のZetasizer 3000 HSAを用いて測定した。この等電点は、ゼータ電位がゼロであるpH値を特徴づける。
【0066】
試験結果
【表1】

【0067】
本発明による実施例の顔料1、2及び3は、比較顔料1及び2と比較して改善された不透明度及び高いBET値を示す。
【0068】
この実施例顔料1及び2又は3、4及び5は、さらに、被覆中でSiO2含有量が高まると共に等電点(IEP)は低下するpH値にシフトすることが示された。比較顔料1とは反対に、実施例顔料と共に、通常量の耐湿剤を添加で正のゼータ電位並びに負のゼータ電位を調節することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆が、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化ケイ素を含有し、BET比表面積が少なくとも15m2/gである、被覆されたルチル型二酸化チタン粒子を含有する二酸化チタン顔料。
【請求項2】
被覆のアルミニウム含有量は、Al23として計算して、1.0〜9.0質量%、有利に2.0〜8.0質量%及び特に3.0〜6.5質量%であることを特徴とする、請求項1記載の二酸化チタン顔料。
【請求項3】
被覆のリン含有量は、P25として計算して、1.0〜5.0質量%、有利に1.5〜4.0質量%であることを特徴とする、請求項1又は2記載の二酸化チタン顔料。
【請求項4】
被覆のケイ素含有量は、SiO2として計算して、0.1〜5.0質量%、有利に1.0〜3.0質量%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の二酸化チタン顔料。
【請求項5】
被覆のチタン含有量は、TiO2として計算して、0.1〜6.0質量%であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の二酸化チタン顔料。
【請求項6】
BET比表面積は、20〜60m2/g、有利に20〜35m2/gであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の二酸化チタン顔料。
【請求項7】
a) 被覆されていない二酸化チタン粒子の水性懸濁液を準備する工程、
b) アルミニウム成分及びリン成分を添加する工程、
c) アルカリ性ケイ素成分及び少なくとも1種のpH値を調節する成分を添加し、その際、pH値を調節する成分の1つは酸性に反応するチタン成分であり、前記懸濁液のpH値を4〜9の範囲内の値に調節する工程を有する、被覆された二酸化チタン顔料の製造方法。
【請求項8】
a) 被覆されていない二酸化チタン粒子の水性懸濁液を準備し、その際、pH値は少なくとも10である工程、
b) アルミニウム成分及びリン成分を添加し、その際、前記懸濁液のpH値を少なくとも10に維持する工程、
c) アルカリ性ケイ素成分及び少なくとも1種のpH値を調節する成分を添加し、その際、pH値を調節する成分の1つは酸性に反応するチタン成分であり、かつその際、前記懸濁液のpH値は4〜9の範囲内の値に調節する工程を特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程c)の後で、工程d)において、アルカリ性アルミニウム成分及び酸性アルミニウム成分又は酸の添加により懸濁液のpH値を4〜9の範囲内に維持することにより、酸化アルミニウム層を適用することを特徴とする、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
最終的に、工程e)において懸濁液の最終pH値を、アルカリ/酸又はアルカリ性/酸性の塩溶液を用いて約6〜7に調節することを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
工程b)〜e)において添加されたアルミニウム成分の合計が、Al23として計算して、1.0〜9.0質量%、有利に2.0〜8.0質量%、特に3.0〜6.5質量%であることを特徴とする、請求項7から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程b)〜e)において添加されたリン成分の合計が、P25として計算して、1.0〜5.0質量%、有利に1.5〜4.0質量%であることを特徴とする、請求項7から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程c)において添加されたケイ素成分の量は、SiO2として計算して、0.1〜5.0質量%、有利に1.0〜3.0質量%であることを特徴とする、請求項7から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程c)において添加されたチタン成分の量は、TiO2として計算して、0.1〜6.0質量%であることを特徴とする、請求項7から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
顔料を硝酸塩で処理することで、得られた顔料はNO3 0.05から1.0質量%を含有することを特徴とする、請求項7から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
最終的な粉砕の間に有機化合物を適用することを特徴とする、請求項7から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
請求項7から16までのいずれか1項記載の方法により製造された製造された二酸化チタン顔料。
【請求項18】
装飾紙の製造における請求項1又は17記載の二酸化チタン顔料の使用。
【請求項19】
請求項1又は17記載の二酸化チタン顔料を含有する装飾紙。
【請求項20】
装飾被覆材料の製造のための、請求項1又は17記載のチタン顔料を含有する装飾紙の使用。
【請求項21】
請求項19記載の装飾紙を有する装飾被覆材料。
【請求項22】
請求項19記載の装飾紙を有するラミネート。

【公表番号】特表2009−525367(P2009−525367A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552726(P2008−552726)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000625
【国際公開番号】WO2007/085445
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(592039299)クローノス インターナショナル インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】KRONOS INTERNATIONAL, INC.
【住所又は居所原語表記】Peschstrasse 5, D−51373 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】