説明

高い吸収能力及び高い透過性を有する吸水性ポリマーの製造方法

少なくとも部分的に中和されていてもよい、少なくとも1種の、エチレン性不飽和の酸基を有するモノマー、前記モノマーに対して少なくとも1種の架橋剤0.01〜0.5質量%を有するモノマー溶液の重合による吸水性ポリマーの製造方法において、前記モノマー溶液を重合させ、得られたポリマーを、ポリマーに対して少なくとも1種の後架橋剤0.05〜0.25質量%(その際、前記後架橋剤はポリオールではない)及び前記ポリマーに対して少なくとも1種の多価カチオン0.05〜0.5質量%で後処理する、吸水性ポリマーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、高い吸収能力及び高い透過性を有する吸水性ポリマーの製造方法、前記吸水性ポリマー並びにそれを含有する衛生製品に関する。
【0002】
吸水性ポリマーは、特に(共)重合された親水性モノマーからのポリマー、適当なグラフト主鎖上の1種以上の親水性モノマーのグラフト(コ)ポリマー、架橋されたセルロースエーテル又はデンプンエーテル、架橋されたカルボキシメチルセルロース、部分的に架橋されたポリアルキレンオキシド又は水性液体中で膨潤可能な天産物、例えばグアール誘導体である。このようなポリマーは、おむつ、タンポン、生理帯及びその他の衛生製品を製造するための、水溶液を吸収する製品として使用されているが、しかし、農業園芸における保水剤としても使用されている。
【0003】
吸水性ポリマーの製造は、多数記載されている(例えば、"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F. L. Buchholz及びAT. Graham著, Wiley-VCH, 1998, p. 69-117参照)。
【0004】
吸水性ポリマーは、一般に、25〜60g/g、有利に少なくとも30g/g、特に少なくとも32g/g、特に有利に少なくとも34g/g、さらに特に有利に少なくとも35g/gの遠心分離保持能力を有する。この遠心分離保持能力(CRC)は、EDANA(欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association))により推奨される試験方法番号441.2−02「遠心分離保持能力(Centrifuge retention capacity)」により測定する。
【0005】
適用特性、例えば透過性の改善のために、吸水性ポリマーは一般に後架橋される。この後架橋は、気相中で実施することができる。しかし、有利に微粉砕及び篩別されたポリマー粒子(ベースポリマー)の表面を後架橋剤で被覆し、乾燥させ、そして加熱により後架橋する。このために適当な架橋剤は、親水性ポリマーのカルボキシラート基と共有結合を形成することができるか、又はベースポリマーの少なくとも2個の異なるポリマー鎖の少なくとも2個のカルボキシル基若しくは他の官能基を互いに架橋することができる少なくとも2個の基を含有する化合物である。
【0006】
この後架橋により、吸水性ポリマーの吸収能力は低下する、つまり吸収能力及び透過性は、反対の特性である。
【0007】
EP-A 372 981は、湿った状態で改善された吸収及び耐久性を有する吸水性ポリマーを開示している。
【0008】
EP-A 574 260は、僅かな残留モノマーを有する吸水性ポリマーの製造方法を記載している。
【0009】
US 5,684,106は、改善された特性プロフィールを有する吸水性ポリマーの製造を教示している。
【0010】
WO 00/22018は、高い吸水能及び改善された毛管作用を有する吸水性ポリマーを開示している。
【0011】
WO 00/53644, WO 00/53664, WO 02/20068及びWO 02/22717は、改善された特性、特に液体の保持、保留能力及び輸送を有する吸水性ポリマーを記載している。
【0012】
本発明の課題は、より高い吸収能力及びより高い透過性を有する吸水性ポリマーを提供することであった。
【0013】
前記課題は、
a) 少なくとも部分的に中和されていてもよい、少なくとも1種の、エチレン性不飽和の、酸基を有するモノマー、
b) 前記モノマーa)に対して、少なくとも1種の架橋剤0.01〜0.5質量%、
c) 場合により、a)で挙げられたモノマーと共重合可能な、1種又は数種のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー及び
d) 場合により、1種又は数種の水溶性ポリマー
を有するモノマー溶液の重合により吸水性ポリマーを製造する方法において、
前記モノマー溶液を重合させ、かつ得られたポリマーを
e) 前記ポリマーに対して少なくとも1種の後架橋剤(その際、この後架橋剤はポリオールではない)0.05〜0.25質量%及び
f) 前記ポリマーに対して少なくとも1種の多価カチオン0.05〜0.5質量%で後処理する、
吸水性ポリマーの製造方法により解決される。
【0014】
本発明は、吸収能力と透過性とが所定の条件下でほぼ相加的な関係にあるという認識に基づく。少量の架橋剤b)及び後架橋剤e)の使用により、高い吸収能力を有する吸水性ポリマーが得られる。多価カチオンf)を用いた後処理により、通常では生じる吸収能力の明らかな低下なしに、透過性は向上される。
【0015】
基本的にポリオールも後架橋剤として公知である。ただし、ポリオールの後架橋剤としての使用により、吸収能力の不所望な著しい低下が生じる。
【0016】
後架橋剤e)及び多価カチオンf)を用いた後処理は、一つの共通の方法工程で行うことができる。この場合、後架橋剤e)及び多価カチオンf)を共通の溶液として供給することも可能である。しかしながら、別個の供給が有利である。
【0017】
しかしながら、後架橋剤e)及び多価カチオンf)を別々の方法工程で供給することも可能である。この場合、有利に多価カチオンf)は後続する方法工程で添加される。
【0018】
適当なモノマーa)は、例えばエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸である。特に有利なモノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸である。さらにアクリル酸が特に有利である。
【0019】
モノマーa)の全体量に対するアクリル酸及び/又はその塩の割合は、有利に少なくとも50mol%、特に有利に少なくとも90mol%、さらに特に有利に少なくとも95mol%である。
【0020】
このモノマーa)、特にアクリル酸は、有利に0.025質量%までのヒドロキノン半エーテルを含有する。有利なヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及び/又はトコフェロールである。
【0021】
トコフェロールとは、次の式
【化1】

[式中、R1は、水素又はメチルを表し、R2は、水素又はメチルを表し、R3は、水素又はメチルを表し、R4は、水素又は1〜20個の炭素原子を有する酸基を表す]で示される化合物であると解釈される。
【0022】
4の有利な基は、アセチル、アスコルビル、スクシニル、ニコチニル及び生理学的に認容性の他のカルボン酸である。前記カルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸であってよい。
【0023】
1=R2=R3=メチルであるアルファ−トコフェロール、特にラセミ体のアルファ−トコフェロールが有利である。R4は、特に有利に水素又はアセチルである。特に有利に、RRR−アルファ−トコフェロールである。
【0024】
このモノマー溶液は、それぞれアクリル酸に対して有利に高くても130質量ppm、特に有利に高くても70質量ppm、有利に少なくとも10質量ppm、特に有利に少なくとも30質量ppm、殊に有利に約50質量ppmのヒドロキノン半エーテルを含有し、その際、アクリル酸塩はアクリル酸として考慮し算出した。例えば、このモノマー溶液の製造のために、アクリル酸を相応する含有量のヒドロキノン半エーテルと一緒に使用することができる。
【0025】
この吸水性ポリマーは架橋されている、すなわち、この重合はポリマーネットワーク中にラジカル重合により組み込むことができる少なくとも2個の重合可能な基を有する化合物の存在下で実施される。適当な架橋剤b)は、例えば、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、アリルメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン(例えばEP-A 530 438に記載されている)、ジアクリラート及びトリアクリラート(例えばEP-A 547 847, EP-A 559 476, EP-A 632 068, WO 93/21237, WO 03/104299, WO 03/104300, WO 03/104301及びDE-A 103 31 450に記載されている)、アクリラート基の他にさらにエチレン性不飽和基を含有する混合アクリラート(例えばDE-A 103 31 456及びDE-A 103 55 401に記載されている)又は架橋剤混合物(例えばDE-A 195 43 368, DE-A 196 46 484, WO 90/15830及びWO 02/32962に記載されている)である。
【0026】
適当な架橋剤b)は、特にN,N′−メチレンビスアクリルアミド及びN,N′−メチレンビスメタクリルアミド、不飽和モノカルボン酸又はポリカルボン酸とポリオールとのエステル、例えばジアクリラート又はトリアクリラート、例えばブタンジオールジアクリラート又はエチレンジアクリラート、又はブタンジオールジメタクリラート又はエチレングリコールジメタクリラートならびにトリメチロールプロパントリアクリラート及びアリル化合物、例えばアリル(メタ)アクリラート、トリアリルシアヌラート、マレイン酸ジアリルエステル、ポリアリルエステル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、テトラアリルエチレンジアミン、リン酸のアリルエステルならびに例えば、EP-A 343 427に記載されているようなビニルホスホン酸誘導体である。更に、適当な架橋剤b)は、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル及びペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、グリセロールジアリルエーテル及びグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールをベースとするポリアリルエーテルならびにそのエトキシル化されたバリエーションである。本発明による方法の場合に、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリラートが使用可能であり、その際、使用されたポリエチレングリコールは300〜1000の分子量を有する。
【0027】
しかしながら、特に有利な架橋剤b)は、3〜20箇所エトキシル化されたグリセリン、3〜20箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパン、3〜20箇所エトキシル化されたトリメチロールエタンのジ−及びトリアクリレート、特に、2〜6箇所エトキシル化されたグリセリン又はトリメチロールプロパン、3箇所プロポキシル化されたグリセリン又はトリメチロールプロパン、並びに混合して3箇所エトキシル化又はプロポキシル化されたグリセリン又はトリメチロールプロパン、15箇所エトキシル化されたグリセリン又はトリメチロールプロパン、並びに少なくとも40箇所エトキシル化されたグリセリン、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパンのジ−及びトリアクリレートである。
【0028】
さらに特に有利な架橋剤b)は、例えばDE-A 103 19 462に記載されているような、アクリル酸又はメタクリル酸でジアクリラート又はトリアクリラートにエステル化された、複数箇所エトキシル化された及び/又はプロポキシル化されたグリセリンである。3〜10箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリラート及び/又はトリアクリラートが特に有利である。1〜5箇所エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたグリセリンのジアクリラート又はトリアクリラートがさらに特に有利である。3〜5箇所エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたグリセリンのトリアクリラートが最も有利である。これは、吸水性ポリマー中の特に低い残留物含有量(一般的には10質量ppm以下)を示し、かつこれにより製造された吸水性ポリマーの水性抽出物は、同じ温度の水と比べてほとんど変わらない表面張力(一般的には少なくとも0.068N/m)を有する。
【0029】
架橋剤b)の量は、モノマーa)に対してそれぞれ、有利に0.05〜0.4質量%、特に有利に0.1〜0.3質量%である。
【0030】
モノマーa)と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーc)は、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、クロトン酸アミド、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ジメチルアミノエチルアクリラート、ジメチルアミノプロピルアクリラート、ジエチルアミノプロピルアクリラート、ジメチルアミノブチルアクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ジエチルアミノエチルメタクリラート、ジメチルアミノネオペンチルアクリラート及びジメチルアミノネオペンチルメタクリラートである。
【0031】
水溶性ポリマーd)としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、ポリグリコール又はポリアクリル酸、有利にポリビニルアルコール及びデンプンを使用することができる。
【0032】
適当なポリマー並びに他の有利な親水性エチレン性不飽和モノマーa)の製造は、DE-A 199 41 423, EP-A 686 650, WO 01/45758及びWO 03/104300に記載されている。
【0033】
適当な反応器は、ニーダー反応器又はベルト型反応器である。ニーダー中で、モノマー水溶液の重合の際に生じるポリマーゲルを、例えばWO 01/38402に記載されているように、反転撹拌軸により連続的に粉砕する。ベルト上での重合は、例えばDE-A 38 25 366及びUS 6,241 ,928に記載されている。ベルト型反応器中での重合の際にポリマーゲルが生じ、このポリマーゲルは更なる方法工程で、例えばミンチャー、押出機又はニーダー中で粉砕しなければならない。
【0034】
有利に、前記ヒドロゲルは重合反応器を離れた後に、さらに、高温で、有利に少なくとも50℃、特に有利に少なくとも70℃、さらに特に有利に少なくとも80℃、並びに有利に100℃未満で、例えば断熱容器中で貯蔵される。通常では2〜12時間の貯蔵により、モノマー転化率はさらに高まる。
【0035】
得られたヒドロゲルの酸基は、一般的には部分的に、有利に25〜95mol%、有利に50〜80mol%、特に有利に60〜75mol%中和されており、その際、慣用の中和剤、有利にアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩並びにこれらの混合物を使用することができる。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩を使用してもよい。ナトリウム及びカリウムは、アルカリ金属として特に有利であるが、しかしながら水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムならびにこれらの混合物がさらに特に有利である。
【0036】
この中和は、有利にモノマーの段階で実施される。これは、通常では中和剤を水溶液として、溶融物として又は有利に固体として混入することにより行われる。例えば、50質量%を明らかに下回る含水量を有する水酸化ナトリウムは、23℃を越える融点を有するワックス状の塊として存在していてよい。この場合には、高めた温度で粉粒体又は溶融物として計量供給することが可能である。
【0037】
しかしながら、重合の後の中和をヒドロゲルの段階で実施することも可能である。さらに、40mol%まで、有利に10〜30mol%、特に有利に15〜25mol%の酸基を、重合前に、中和剤の一部を既にモノマー溶液に添加することにより中和し、かつ所望の最終中和度を重合後にようやくヒドロゲルの段階で調節することも可能である。前記ヒドロゲルを少なくとも部分的に重合の後に中和する場合、前記ヒドロゲルは有利に機械的に、例えばミンチャーを用いて粉砕し、その際、中和剤を吹き付けるか、降りかけるか又は注ぎ込み、次いで入念に混合することができる。そのために、得られたゲル材料は、なお数回均質化のために粉砕することができる。
【0038】
このヒドロゲルを、次いでバンド型乾燥機で、有利に15質量%以下、特に10質量%以下の残留湿分にまで乾燥させ、その際、この含水量はEDANA (European Disposables and Nonwovens Association)により推奨される試験法Nr. 430.2-02 "Moisture content"により決定する。しかしながら、選択的に、この乾燥のために、流動床乾燥機又は加熱された鋤刃型ミキサーを使用することもできる。特に白色の製品を得るために、このゲルの乾燥の際に蒸発された水の急速な搬出を保証することが有利である。このために、乾燥温度を最適化しなければならず、空気供給及び空気排出を制御して行わなければならず、かつそれぞれの場合に十分な通気に留意しなければならない。この乾燥は、もちろん、ゲルの固体含有量ができる限り高い場合にはより簡単であり、製品はより白くなる。従って、有利に、この乾燥前のゲルの固体含有率は30〜80質量%である。特に、前記乾燥機に窒素又は他の酸化しない不活性ガスを通気するのが有利である。しかしながら、選択的に、酸化による黄変現象を回避するために、乾燥の間の酸素分圧だけを簡単に下げることもできる。一般に、十分な通気及び水蒸気の排出によっても、なおも許容可能な製品が得られる。色及び製品の品質に関しては、一般に、できる限り短い乾燥時間が有利である。
【0039】
ゲル乾燥の更なる重要な機能は、この場合、高吸収体中の残留モノマー含有量の減少が行われることである。つまりこの乾燥の際に、場合によりなおも存在する開始剤の残りが崩壊し、そしてなおも存在する残留モノマーの重合による組み込みが生じる。更に、蒸発する水量がなおも存在する遊離の水蒸気揮発性モノマー、例えばアクリル酸を連行し、同様に高吸収体中の残留モノマー含有量を低下させる。
【0040】
乾燥したヒドロゲルをこの後で微粉砕しかつ分級し、この場合、微粉砕のために通常では1段階又は多段階のロールミル、有利に2段階又は3段階のロールミル、ピン付きミル、ハンマーミル又はスイングミルを使用することができる。
【0041】
引き続き、得られたポリマーを後架橋する。このために適した架橋剤e)は、ポリマーのカルボキシラート基と共有結合を形成できる少なくとも2個の基を含有する化合物である。適当な化合物は、例えばアルコキシシリル化合物、ポリアジリジン、ポリアミン、ポリアミドアミン、ジグリシジル化合物又はポリグリシジル化合物(例えばEP-A 083 022, EP-A 543 303及びEP-A 937 736に記載されている)、又はβ−ヒドロキシアルキルアミド(例えばDE-A 102 04 938及びUS 6,239,230に記載されている)である。混合した官能基を有する他の化合物、例えばグリシドール、3−エチル−3−オキセタンメタノール(トリメチロールプロパンオキセタン)(例えばEP-A-1 199 327に記載されている)、又は最初の反応の後に他の官能基を形成する化合物、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、アジリジン、アゼチジン又はオキセタンが適している。
【0042】
さらに、DE-A 40 20 780には環式カーボネート、DE-A-198 07 502には2−オキサゾリドン及びその誘導体、例えばN−(2−ヒドロキシエチル)−2−オキサゾリドン、DE-A 198 07 992にはビス−及びポリ−2−オキサゾリジノン、DE-A 198 54 573には2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサジン及びその誘導体、DE-A 198 54 574にはN−アシル−2−オキサゾリドン、DE-A 102 04 937には環式尿素、DE-A 103 34 584には二環式アミドアセタール、EP-A 1 199 327にはオキセタン及び環式尿素、及びWO-A 03/031482にはモルホリン−2,3−ジオン及びその誘導体が適当な後架橋剤e)として記載されている。
【0043】
有利な後架橋剤e)は、オキサゾリドン及びその誘導体、特にN−(2−ヒドロキシエチル)−2−オキサゾリドンである。
【0044】
後架橋剤e)の量は、ポリマーに対してそれぞれ、有利に0.08〜0.22質量%、特に有利に0.1〜0.2質量%である。
【0045】
後架橋剤e)は、通常では水溶液として使用され、この場合さらに助溶剤を使用するのが有利である。工業的に良好に適した助溶剤は、C1〜C6−アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール又は2−メチル−1−プロパノール、C2〜C5−ジオール、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール又は1,4−ブタンジオール、又はケトン、例えばアセトンである。
【0046】
助溶剤としてジオールを使用する場合、このジオールが後架橋剤として作用しないか又は僅かな程度だけしか作用しないように留意しなでればならない。その明らかに僅かな反応性に基づき、これは適当な反応条件、例えば時間及び温度の選択により達成することができる。
【0047】
この後架橋は、一般的には、後架橋剤e)の溶液をヒドロゲル又は乾燥したポリマー粒子上に吹き付けることにより実施される。この吹き付けに引続き熱的に乾燥し、その際、後架橋反応は乾燥前でも乾燥中でも行うことができる。
【0048】
架橋剤溶液の吹き付けは、有利に可動式混合器具を有するミキサー中で、例えばスクリューミキサー、パドルミキサー、ディスクミキサー、鋤刃ミキサー及びブレードミキサ中で実施する。特に有利に、バーティカルミキサー、さらに特に有利に鋤刃ミキサー及びブレードミキサーである。適当なミキサーは、例えばLoedige(R)ミキサー、Bepex(R)ミキサー、Nauta(R)ミキサー、Processall(R)ミキサー及びSchugi(R)ミキサーである。
【0049】
この熱的な乾燥は、有利に接触乾燥器、特に好ましくはパドル型乾燥器、さらに特に有利にディスク型乾燥器中で実施する。適当な乾燥機は、例えばBepex(R)乾燥機及びNara(R)乾燥機である。さらに、流動床乾燥機も使用することができる。
【0050】
乾燥は、ミキサーそれ自体中で、ジャケットの加熱又は熱風の吹き込みによって行なうことができる。同様に後方に配置された乾燥機、例えば箱形乾燥機、回転管炉又は加熱可能なスクリューも適している。しかし、例えば共沸蒸留を乾燥方法として利用することもできる。
【0051】
有利な乾燥温度は、170〜250℃、有利に180〜220℃、特に有利に190〜210℃の範囲内である。この温度での反応ミキサー又は乾燥機中での有利な滞留時間は、少なくとも45分、特に有利に少なくとも60分である。
【0052】
本発明による方法において使用することができる多価カチオンf)は例えば二価のカチオン、例えば亜鉛、マグネシウム、カルシウム及びストロンチウムのカチオン、三価のカチオン、例えばアルミニウム、鉄、クロム、希土類及びマンガンのカチオン、四価のカチオン、例えばチタン及びジルコニウムのカチオンである。対イオンとして塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及びカルボン酸イオン、例えば酢酸イオン及び乳酸イオンが可能である。硫酸アルミニウムが有利である。
【0053】
通常では、多価カチオンf)は水溶液として使用される。水溶液中の多価カチオンf)の濃度は、例えば0.1〜12質量%、有利には0.5〜8質量%、特に有利には1.5〜6質量%である。
【0054】
多価カチオンf)の量は、ポリマーに対してそれぞれ、有利に0.06〜0.25質量%、特に有利に0.07〜0.2質量%、さらに特に有利に0.08〜0.15質量%である。
【0055】
この本発明による方法により、少なくとも16g/g、有利に28〜50g/g、特に有利に30〜40g/g、さらに特に有利に31〜35g/gの遠心分離保持能力(CRC)及び少なくとも16×10-6cm3 s/g、有利に17〜45×10-6cm3 s/g、特に有利に19〜35×10-6cm3 s/g、さらに特に有利に20〜28×10-6cm3 s/gの透過性(FS−FIP)を有する吸水性ポリマーを得ることができる。
【0056】
本発明の他の主題は、本発明による方法により得られたポリマー並びに前記ポリマーを含有する衛生製品、例えばおむつである。
【0057】
方法:
この測定は、別に記載がない限り、23±2℃の周囲温度及び50±10%の相対空気湿度で実施する。膨潤可能なヒドロゲル形成性ポリマーは、測定前に良好に混合される。
【0058】
遠心分離保持能力(CRC Centrifuge Retention Capacity)
この吸水性ポリマーの遠心分離保持能力は、EDANA(欧州不織布協会)により推奨された試験方法番号441.2−02「遠心分離保持能力(Centrifuge retention capasity)」により測定する。
【0059】
液体透過性(FS−FIP(Free Swell Fixed Insult Permeability))
この方法の場合、時間に依存する所定量の液体に対する膨潤したゲル層の透過率を測定する。
【0060】
このテストセルの図を図1に表す。図中で、
Aは外側セル
Bは内側セル
Cは重り
aはマーク1
bはマーク2
を表す。
【0061】
この外側セルAは、篩で閉じた、2.55cmの内径を有するプレキシガラスシリンダーである。
【0062】
この内側セルBは、篩で閉じた、2.45cmの外径を有するプレキシガラスシリンダーである。前記セルBの上側領域に、リング状の金属重りCが存在する。重りCを有する前記セルBの積載重量は、29g/cm2である。
【0063】
試験を開始するために、内側セルBを外側セルA中に嵌め込み、組み立てられた測定セルの高さを測定し、h0として記録する。引き続き、内側セルBを再び取り外す。この試験のために、高吸収体0.160gを外側セルA内へ秤量して入れる。
【0064】
この準備した外側セルAを、0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液で満たしたペトリ皿中にある焼結板(多孔性0)上に立てて、この試験材料を1時間膨潤させる。引き続き、重りCを有する内側セルBを再び外側セルA中に嵌め込む。
【0065】
次に、前記ゲル層を0.9質量%の塩化ナトリウム溶液25mlでそれぞれ2回洗浄し、その際、前記溶液を内側セルBを介して注ぎ込み、組み立てられた測定セルの高さをh1として計測した。
【0066】
本来の測定のために、ゲル床上に、再び内側セルBを介して、0.9質量%の塩化ナトリウム溶液25mlをそれぞれ連続して3回注ぎ、それぞれ、液体レベルが内側セルBのマーク1(篩から6cm上)からマーク2(篩から4cm上)にまで通過するために必要な時間をt1〜t3として記録する。終了のために、組み立てられた測定セルの高さをもう1回h2として測定する。
【0067】
膨潤したゲルの透過性を、ダルシーの法則(Darcy's Law)により導き出すことができる。
【0068】
この場合、平均ゲル高さ[cm]を次式により計算する:
【数1】

【0069】
平均流通時間[s]を次式により計算する:
【数2】

【0070】
平均体積流量[cm3/s]を次式により計算し、その際、体積5.38cm3がセル寸法及び両方のマーク(4及び6cm)の2cmの間隔から得られる。
【数3】

【0071】
Hを、測定の間のゲル床の底からの液体の平均高さ[cm]として、次式により計算する:
【数4】

【0072】
FS−FIP[10-6cm3 s/g]を、ダルシーの法則により次式により測定する:
【数5】

式中、Aはゲル床の面積(πr2=5.107cm2)を表し、平均静水圧P=ρgH(密度ρ=1g/cm3及び重力加速度g=981cm/s2)を表す。
【0073】
実施例
実施例1:
37.3質量%のアクリル酸ナトリウム溶液5.166gを、アクリル酸574g及び水720gと混合し、窒素で不活性化した。この混合物を、Werner & Pfleiderer LUK 8,0 K2タイプ(2シグマ軸)の窒素で不活性化したニーダー中に充填した。この混合物は72mol%のアクリル酸の中和度に相当する。引き続き、15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリラート14g(アクリル酸に対して0.56質量%に相当)、0.75質量%のアスコルビン酸溶液10g、15質量%の過硫酸ナトリウム16.6g及び3質量%の過酸化水素溶液3.75gを順番に添加した。ニーダーを最大回転数(より高速の軸98rpm、より低速の軸約49rpm、約2:1の比)で撹拌した。過酸化水素を添加した直後に、ニーダージャケットを80℃に加熱した。最大温度の達成後に、ニーダージャケットをさらに加熱せず、さらに15分間後反応させた。ゲルを65℃に冷却し、排出した。約1〜2cmの大きさのいくつかのゲル塊を有するをゲルが得られた。
【0074】
このゲルを170℃で75分間、プレート1枚当たり700gの負荷量で循環空気乾燥庫中で乾燥した。ロールミル(Gebr. Baumeister LRC 125/70、ギャップ幅1000μm、600μm及び400μm)中で3回粉砕した後に、ポリマーを850及び100μmの篩い分け画分に篩別した。
【0075】
製造されたポリマーは35.8g/gの遠心分離保持能力(CRC)を有していた。
【0076】
実施例2(比較)
実施例1と同様に製造した、72mol%のアクリル酸の中和度、15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリラート0.56質量%及び35.5g/gのCRCを有するポリマーを、Loedige社の実験室用鋤刃混合器中で、2流体ノズルを用いて表面後架橋剤水溶液(エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1質量%、水2.3質量%、1,2−プロパンジオール1.0質量%)を吹き付けた。その後、22質量%の硫酸アルミニウム溶液1.36質量%を吹き付け、175℃で1時間熱処理した。冷却後に、106〜850μmに篩別を行った。
【0077】
実施例3(比較)
実施例1と同様に製造した、72mol%のアクリル酸の中和度、15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリラート0.84質量%及び32g/gのCRCを有するポリマーを、Loedige社の実験室用鋤刃混合器中で、2流体ノズルを用いて表面後架橋剤水溶液(エチレングリコールジグリシジルエーテル0.12質量%、水1.8質量%、1,2−プロパンジオール0.6質量%)を吹き付けた。その後で、22質量%の硫酸アルミニウム溶液2.45質量%を吹き付け、180℃で1時間熱処理した。冷却後に、106〜850μmに篩別を行った。
【0078】
実施例4
実施例1と同様に製造した、72mol%のアクリル酸の中和度、3箇所エトキシル化されたグリセリントリアクリラート0.44質量%及び36g/gのCRCを有するポリマーを、Loedige社の実験室用鋤刃混合器中で、2流体ノズルを用いて表面後架橋剤水溶液(エチレングリコールジグリシジルエーテル0.12質量%、水1.8質量%、1,2−プロパンジオール0.6質量%)を吹き付けた。その後で、22質量%の硫酸アルミニウム溶液2.45質量%を吹き付け、175℃で1時間熱処理した。冷却後に、106〜850μmに篩別を行った。
【0079】
実施例5
実施例1と同様に製造した、75mol%のアクリル酸の中和度、ポリエチレングリコールジアクリラート(約9エチレンオキシド単位)0.21質量%及び39.9g/gのCRCを有するポリマーを、Loedige社の実験室用鋤刃混合器中で、2流体ノズルを用いて表面後架橋剤水溶液(エチレングリコールジグリシジルエーテル0.08質量%、水0.75質量%、1,2−プロパンジオール0.75質量%)を吹き付けた。その後で、22質量%の硫酸アルミニウム溶液2.45質量%を吹き付け、180℃で1時間熱処理した。冷却後に、106〜850μmに篩別を行った。
【0080】
実施例6
実施例1と同様に製造した、75mol%のアクリル酸の中和度、3箇所エトキシル化されたグリセリントリアクリラート0.18質量%及び40.2g/gのCRCを有するポリマーを、Loedige社の実験室用鋤刃混合器中で、2流体ノズルを用いて表面後架橋剤水溶液(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−オキサゾリジノン0.1質量%、水0.75質量%、イソプロパノール0.75質量%)を吹き付けた。その後で、22質量%の硫酸アルミニウム溶液2.45質量%を吹き付け、190℃で1時間熱処理した。冷却後に、106〜850μmに篩別を行った。
【0081】
実施例7
実施例1と同様に製造した、77mol%のアクリル酸の中和度、3箇所エトキシル化されたグリセリントリアクリラート0.18質量%及び41g/gのCRCを有するポリマーを、Loedige社の実験室用鋤刃混合器中で、2流体ノズルを用いて表面後架橋剤水溶液(エチレングリコールジグリシジルエーテル0.08質量%、水0.75質量%、1,2−プロパンジオール0.75質量%)を吹き付けた。その後で、22質量%の硫酸アルミニウム溶液2.45質量%を吹き付け、170℃で1時間熱処理した。40〜50℃に冷却後に、新たに22質量%の硫酸アルミニウム溶液2.45質量%を吹き付け、なお10分間混合し、引き続き106〜850μmに篩別した。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】透過率を測定するテストセルを表す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 少なくとも部分的に中和されていてもよい、少なくとも1種の、エチレン性不飽和の、酸基を有するモノマー、
b) 前記モノマーa)に対して、少なくとも1種の架橋剤0.01〜0.5質量%、
c) 場合により、a)で挙げられたモノマーと共重合可能な、1種又は数種のエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー及び
d) 場合により、1種又は数種の水溶性ポリマー
を有するモノマー溶液の重合により吸水性ポリマーを製造する方法において、
前記モノマー溶液を重合させ、かつ得られたポリマーを
e) 前記ポリマーに対して少なくとも1種の後架橋剤(その際、この後架橋剤はポリオールではない)0.05〜0.25質量%及び
f) 前記ポリマーに対して少なくとも1種の多価カチオン0.05〜0.5質量%で後処理する、吸水性ポリマーの製造方法。
【請求項2】
後架橋剤及び多価カチオンを共通の方法工程で添加することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
後架橋剤を多価カチオンの前に添加することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリマーを、後架橋剤の添加の間又は添加の後に加熱することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ポリマーを、後架橋剤の添加の間又は添加の後及び多価カチオンの添加の前に加熱することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ポリマーを、後架橋剤の添加の後に少なくとも170℃に加熱することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ポリマーを、後架橋剤の添加の後に少なくとも45分間加熱することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
エチレン性不飽和の、酸基を有するモノマーが少なくとも60mol%中和されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
i) 少なくとも部分的に中和されていてもよい、少なくとも1種の、重合により組み込まれたエチレン性不飽和の、酸基を有するモノマー、
ii) 前記モノマーa)に対して、少なくとも1種の重合により組み込まれた架橋剤0.01〜0.5質量%、
iii) 場合により、i)で挙げられたモノマーと共重合可能な、1種又は数種の重合により組み込まれたエチレン性及び/又はアリル性不飽和モノマー、
iv) 場合により、i)で挙げられたモノマーが少なくとも部分的にグラフトされている1種又は数種の水溶性ポリマー、
v) 前記ポリマーに対して少なくとも1種の重合により組み込まれた後架橋剤(その際、この後架橋剤はポリオールではない)0.05〜0.25質量%及び
vi) 前記ポリマーに対して少なくとも1種の多価カチオン0.05〜0.5質量%を含有する、吸水性ポリマー。
【請求項10】
重合により組み込まれたエチレン性不飽和の、酸基を有するモノマーが少なくとも60mol%中和されていることを特徴とする、請求項9記載のポリマー。
【請求項11】
少なくとも27g/gの遠心分離保持能力(CRC)及び少なくとも16×10-6 cm3 s/gの透過性(FS−FIP)を有するポリマー。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか1項記載の吸水性ポリマーを含有する衛生製品。

【図1】
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【公表番号】特表2009−518482(P2009−518482A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543784(P2008−543784)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069088
【国際公開番号】WO2007/065834
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】