説明

高い早期圧縮強度を有する超急結性セメント系組成物

セメントボード用の急結性組成物を作製する方法を開示する。ポルトランドセメント、フライアッシュ、石こう、アルカノールアミン及びリン酸塩を含む組成物を開示する。アルカノールアミンとリン酸塩の間の相乗的な相互作用のために、促進反応の効果が増進し、それによって急結性で、早期圧縮強度が増加した組成物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[001]本発明は、一般には、急速硬化及び早期強度の発現が望ましい多様な用途に使用できる超急結性セメント系組成物に関する。詳細には、本発明は、建造物の湿潤及び乾燥部位で使用した場合に耐湿性に優れたボードを作製するのに使用できるセメント系組成物に関する。セメントボードなどのプレキャストコンクリート製品は、静止若しくは移動型枠内に、又は連続移動式ベルト上にセメント系混合物が注がれたらあまり間をおかずにボードの取扱いができるように、セメント系混合物が急結する条件下で作製される。理想的には、セメント混合物のこうした凝結は、セメント混合物を適量の水と混合した後、わずか約30分で、好ましくは、わずか20分で、より好ましくは、わずか10分で、最も好ましくは、わずか5分で実現することができる。
【0002】
[発明の背景]
[002]参照により本明細書に組み込まれているPerez−Penaらの米国特許第6,869,474号では、セメントボードなどのセメント系製品を製造するためのセメント系組成物の超急結性が議論されており、その超急結性は、ポルトランドセメントなどの水硬性セメントにアルカノールアミンを添加し、初期スラリー温度が90°F(32℃)以上である条件下で水を用いてスラリーを形成することによって実現される。追加の反応性材料として、高アルミナセメント、硫酸カルシウム、及びフライアッシュなどのポゾラン性材料なども挙げることができる。超急結性によって、セメント系製品を速やかに生産することが可能になる。トリエタノールアミンの添加により、フライアッシュ及び石こう濃度を上昇させても、アルミン酸カルシウムセメントを必要とせずに、凝結の終結時間(final setting time)が比較的短い配合物を製造することができ、トリエタノールアミンが非常に強力な促進効果を示すことが分かった。しかし、トリエタノールアミンを含む配合物は、アルミン酸カルシウムセメントを含むセメントボード配合物に比較して早期圧縮強度が相対的に低かった。
【0003】
[003]参照により本明細書に組み込まれているGalerらの米国特許第4,488,909号では、急結できるセメント系組成物が議論されている。この組成物では、水と混合した後、エトリンガイトになり得る可能性のあるもののうち、基本的にすべてから約20分以内にエトリンガイトを形成することによって耐二酸化炭素性のセメントボードを高速で生産することができる。このセメント系組成物の基本的な成分は、ポルトランドセメント、高アルミナセメント、硫酸カルシウム及び石灰である。フライアッシュ、モンモリロナイト粘土、珪藻土及び軽石粉などのポゾランは、最大約25%まで添加することができる。このセメント組成物は、約14〜21重量%の高アルミナセメントを含むので、その他の成分と組み合わされたこの高アルミナセメントによって、セメント系混合物の急結の原因となるエトリンガイト及びその他のアルミン酸カルシウム水和物を早期に形成することができる。彼らの発明では、Galerらは、高アルミナセメント(HAC)を用いてアルミン酸塩を供給し、石こうを用いて硫酸塩イオンを供給することによってエトリンガイトを形成し、セメント系混合物の急結性を実現した。
【0004】
[004]エトリンガイトは、式CaAl(SO・32HO、或は3CaO・A1・3CaSO・32HOを有する硫酸アルミニウムカルシウム化合物である。エトリンガイトは、長い針状晶として形成され、セメントボードに速やかに早期強度を提供し、その結果としてセメントボードは、型枠内に、又は連続式鋳込み成型ベルト上に注がれた後、間もなく取り扱うことができる。
【0005】
[005]一般には、Galerらの急結性配合物は、数種の制約を受ける。以下に強調されているようなこうした制約は、セメントボードなどのセメント系製品を製造する場合、大きな関心事である。
【0006】
[006]セメント系混合物の凝結の終結時間は、通常、9分を超える。凝結の終結時間は、以下の実施例でさらに定義されるが、より一般的には、セメント系混合物は、それから作製したセメント系製品が、化学反応はさらに長期間続く場合もあるが、取り扱ったり積層したりすることができる程度まで凝結している。
【0007】
[007]反応性粉末ブレンド中の高アルミナセメント(アルミン酸カルシウムセメントとも呼ばれる)の量は、非常に多い。通常、高アルミナセメントは、反応性粉末ブレンドのうち14重量%を超える。
【0008】
[008]ポゾラン材料の量は、反応性粉末ブレンドの25重量%までに限定される。
【0009】
[009]石灰は、急結性を得るための追加の成分として必要である。セメントボード中に石灰が過剰に存在することは、その長期の耐久性能にとって有害である。セメントボードは、ポリマーコート付グラスファイバメッシュで補強される場合が多く、このメッシュは、高アルカリ環境中で強度及び延性を失い、劣化する。過剰の石灰の存在によって、セメント系マトリックスのアルカリ度が上昇し、それによってポリマーコート付グラスファイバメッシュ及び生成セメントボードの長期の耐久性能が負の影響を受ける。加えて、過剰の石灰の存在によって、コンクリートが硫酸塩による攻撃も受け易くなり、それによってその耐久性が影響される。
【0010】
[発明の概要]
[0010]本発明の目的は、高温の水と、水硬性セメントを含むセメント系反応性粉末と、促進量のアルカノールアミン及びポリリン酸塩とを混合するステップを含む、急結性スラリーを提供する方法を提供することである。
【0011】
[0011]本発明の別の目的は、速やかな終結性能が増進し、早期圧縮強度が増進したセメント系組成物を提供することである。このセメント系組成物は、アルカノールアミンとポリリン酸塩を含む。
【0012】
[0012]したがって、本発明は、一般には、急速硬化及び早期強度の発現が望ましい多様な用途に使用できる超急結性セメント系組成物、及びかかる組成物を作製する方法に関する。スラリーを高温で形成する際にセメント系組成物の凝結を促進するためにポリリン酸塩と組み合わせてアルカノールアミンを使用すると、アルカノールアミン濃度を低減しつつ、セメントボードなどのセメント系製品の生産速度を上昇させることが可能になる。
【0013】
[0013]本発明のセメント系組成物は、建造物の湿潤及び乾燥部位で使用した場合に耐湿性に優れたセメントボードなどのプレキャストコンクリート製品を作製するのに使用することができる。セメントボードなどのプレキャストコンクリート製品は、静止若しくは移動型枠内に、又は連続移動式ベルト上にセメント系混合物が注がれたらあまり間をおかずにボードの取り扱いができるように、セメント系混合物が急結する条件下で作製される。
【0014】
[0014]急結性は、周囲の温度を越える温度、例えば、約90°F(32.2℃)以上、より好ましくは、約100°F(38℃)以上、又約105°F(41℃)以上、又は約110°F(43℃)以上で、水と、水硬性セメントを含むセメント系反応性粉末と、凝結促進量のアルカノールアミン及びポリリン酸塩との混合物を含むスラリーを調製することによって実現される。通常、スラリーは、約90°F〜160°F(32℃〜71℃)、又は約90°F〜135°F(32℃〜57℃)、最も好ましくは、約120〜130°F(49〜54℃)の初期温度を有する。
【0015】
[0015]ギルモア針によって測定した場合の、セメント系組成物の凝結の終結時間(即ち、その時間後では、セメントボードを取り扱うことができる時間)は、適量の水と混合後、長くとも30分、好ましくは、長くとも20分、より好ましくは、長くとも10分又は長くとも5分であるべきである。凝結時間が短くなり、早期圧縮強度が大きくなることにより、生産量の増加、及び製品製造コストの低減を促進する。
【0016】
[0016]スラリー中へのアルカノールアミンの用量は、本発明のセメント系反応性成分に対して、約0.025〜4.0重量%、より好ましくは、約0.025〜2.0重量%、さらに好ましくは、約0.025〜1重量%又は約0.05〜0.25重量%、最も好ましくは、約0.05〜0.1重量%の範囲である。トリエタノールアミンは、好ましいアルカノールアミンである。しかし、モノエタノールアミン及びジエタノールアミンなどの他のアルカノールアミンも、トリエタノールアミンを代替することができ、或は、トリエタノールアミンと組み合わせて使用することができる。
【0017】
[0017]ポリリン酸塩の用量は、本発明のセメント系反応性成分に対して、約0.15〜1.5重量%、好ましくは、約0.3〜1.0重量%、より好ましくは、約0.4〜0.75重量%である。好ましいリン酸塩は、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)であるが、トリポリリン酸カリウム(KTPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)及びピロリン酸四カリウム(TKPP)などの他のポリリン酸塩との配合物も、トリエタノールアミン濃度を低下させた場合に、凝結の終結性能を向上させ、圧縮強度を向上させる。
【0018】
[0018]上述したように、こうした重量%は、反応性成分(セメント系反応性粉末)の重量に対するものである。このセメント系反応性粉末は、少なくとも水硬性セメント、好ましくは、ポルトランドセメントを含むことになり、又、アルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウム、及び鉱物性添加材、好ましくは、フライアッシュも含んで水と共にスラリーを形成することができる。セメント系反応性粉末は、骨材などの不活性物を含まない。
【0019】
[0019]典型的なセメント系反応性粉末は、約40〜80重量%のポルトランドセメントと、約20〜60重量%のフライアッシュとを含み、この場合、重量%は、ポルトランドセメントとフライアッシュの和を基準としたものである。
【0020】
[0020]別の典型的なセメント系反応性粉末は、ポルトランドセメントと、アルミン酸カルシウムセメントと、硫酸カルシウムとフライアッシュとの和を基準にして、約40〜80重量%のポルトランドセメントと、0〜20重量%のアルミン酸カルシウムセメントと、0〜7重量%の硫酸カルシウムと、0〜55重量%のフライアッシュとを含む。したがって、セメント系組成物のセメント系反応性粉末ブレンドは、反応性粉末ブレンドの最大55重量%までのポゾラン性材料などある濃度の鉱物性添加材を含むことができる。鉱物性添加材、例えば、フライアッシュの含有量を増加させることにより、製品コストが実質的に低下するようになると思われる。さらには、組成物においてポゾラン性材料を使用することにより、ポゾラン反応の結果として製品の長期耐久性を向上させるようにもなると思われる。
【0021】
[0021]セメント系組成物の反応性粉末ブレンドは、石灰を外部から添加すべきではない。石灰含量を低下させることは、セメント系マトリックスのアルカリ度を低下させ、これにより、製品の長期耐久性を増進させるようになると思われる。
【0022】
[0022]ポリリン酸塩とアルカノールアミンの間には相乗的相互作用が存在する。ポリリン酸塩及びアルカノールアミンの添加は、ポリリン酸塩を含まない組成物に比較してアルカノールアミン用量を低減した組成物における凝結の終結時間が短くなり、早期圧縮強度が上昇するという利点を有する。
【0023】
[0023]加えて、ポリリン酸塩を添加すると、硫酸アルミニウムなどの他の促進剤と異なり、混合物の流動性が改良される。これは、硫酸アルミニウムでは、コンクリート混合物の固化が早過ぎる恐れがあるからである。
【0024】
[0024]接着特性が実質的にある、ほとんどない、又はまったくない鉱物性添加材を本発明の急結性複合材に含ませることができる。クラスCフライアッシュなど、ポゾラン特性を有する鉱物性添加材は、本発明の反応性粉末ブレンドにおいて特に好ましい。骨材及びフィラーは、本発明の急結性セメント系組成物の用途に応じて添加することができる。
【0025】
[0025]1つ又は複数の、砂、骨材、軽量フィラー、高性能減水剤(superplasticizer)などの減水剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、空気連行剤、発泡剤、収縮調節剤、スラリー粘度調整剤(増粘剤)、着色剤及び内部養生剤などのその他の添加剤は、本発明のセメント系組成物の作業性及び用途に応じて所望通り含ませることができる。
【0026】
[0026]所望により、本発明の反応性粉末ブレンドは、アルミン酸カルシウムセメント(CAC)(通常、アルミナセメント又は高アルミナセメントとも呼ばれる)及び/又は硫酸カルシウムを含んでも、含まなくてもよい。別の実施形態では、反応性粉末ブレンドは、高アルミナセメントを含まず、反応性粉末成分としてポルトランドセメントのみと、任意選択の鉱物性添加材、好ましくは、フライアッシュと、少なくとも1つのアルカノールアミンと、少なくとも1つのリン酸塩と、添加剤とを含む。
【0027】
[0027]別段の指定がない限り、本明細書では、百分率、比及び割合はすべて、重量による。

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】STMPの増加が、トリエタノールアミン0.05%を含む混合物の温度上昇に及ぼす効果を示す実施例1の結果のグラフである。
【図2】100重量部のIII型ポルトランドセメントと、40重量部のクラスCフライアッシュと、20重量部のランドプラスタと、0.10重量%のトリエタノールアミンと、0.75重量%のトリポリリン酸カリウム(KTPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、又はトリメタリン酸ナトリウム(STMP)のうちの1つとを含む混合物における温度上昇の比較を示す実施例5の結果のグラフである。
【0029】
[発明の詳細な説明]
[0030]本発明は、90°F(32.2℃)以上の初期スラリー温度でセメント系反応性粉末をアルカノールアミン、ポリリン酸塩及び水と混合することによって、30分未満、より好ましくは、20分未満、最も好ましくは、10分未満又は5分未満の急結性が得られる。
【0030】
[0031]本発明は、速やかな終結性能が向上し、早期圧縮強度が向上したセメント系組成物も提供する。
【0031】
[0032]特定の理論に拘泥されるものではないが、急結性は、例えば、40〜80重量%のポルトランドセメント、0〜20重量%のアルミン酸カルシウムセメント、0〜7重量%の硫酸カルシウム及び0〜55重量%の鉱物性添加材からなるセメント系反応性粉末を供給し、エトリンガイト及び/又はアルミン酸カルシウムの他の水和物及び/又はリン酸カルシウム化合物の形成がこの反応性粉末ブレンドの水和の結果として生じ得るように、90°F(32.2℃)超の高温で該セメント系反応性粉末、アルカノールアミン、ポリリン酸塩及び水を混合してスラリーを形成することによって実現されることが理論化されている。
【0032】
[0033]したがって、適量の水を供給してセメント系反応性粉末を水和させ、エトリンガイト、アルミン酸カルシウム化合物の他の水和物及び/又はリン酸カルシウムを速やかに形成する。一般には、添加される水の量は、セメント系反応性粉末の水和に理論的に必要とされる量より多いことになる。水の含有量をこのように増加させると、セメント系スラリーの作業性が増進される。
【0033】
[0034]通常、スラリーにおいて、セメント系反応性粉末ブレンドに対する水の重量比は、約0.20/1〜0.80/1、好ましくは、約0.30/1〜0.60/1である。水の量は、セメント系組成物中にその必要性により存在する個別の材料によって決まる。
【0034】
[0035]エトリンガイト、アルミン酸カルシウムの他の水和物及び/又はリン酸カルシウム化合物は、水和過程において非常に速やかに形成され、それによって、本発明のセメント系組成物のセメント系反応性粉末ブレンドによって作製された混合物は急結性及び、剛性を賦与される。セメントボードなどのセメント系製品の製造では、本発明のセメント系組成物が適量の水と混合された後、数分以内にセメントボードのハンドリングを可能にするのは、主として、エトリンガイト、他のアルミン酸カルシウム水和物及び/又はリン酸カルシウム化合物の形成による。
【0035】
[0036]組成物の凝結は、ASTM C266試験手順に規定されたギルモア針を使用して測定される始発時間及び終結時間によって特徴づけられる。終結時間は、セメント系製品、例えば、セメントボードが、十分に硬化してハンドリングできるようになった時間にも対応する。終結時間に到達した後も硬化反応はそれ以後の期間も続くことは当業者には理解されよう。
【0036】
[0037]組成物の早期強度は、ASTM C109に規定された養生5時間後の圧縮強度を測定することによって特徴づけられる。早期強度が大きいことによって、積層されたパネルを容易にハンドリングすることが可能になる。
【0037】
<セメント系反応性粉末>
[0038]本発明のセメント系組成物のセメント系反応性粉末の主成分は、水硬性セメント、好ましくは、ポルトランドセメントである。
【0038】
[0039]その他の成分として、高アルミナセメント、硫酸カルシウム、及び鉱物性添加材、好ましくは、フライアッシュなどのポゾランを挙げることができる。好ましくは、水硬性セメント、鉱物性添加材、並びに促進剤としてのアルカノールアミン及びリン酸塩を残し、アルミン酸カルシウムセメント及び硫酸カルシウムが少量使用され、使用されないことが好ましい。
【0039】
[0040]本発明のセメント系反応性粉末が、ポルトランドセメント及びフライアッシュのみを含む場合、反応性粉末は、通常、ポルトランドセメントとフライアッシュの和を基準にして、40〜80重量%のポルトランドセメントと、20〜60重量%のフライアッシュとを含む。
【0040】
[0041]その他の成分が存在する場合、セメント系反応性粉末は、通常、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウム及びフライアッシの和を基準にして、40〜80重量%のポルトランドセメントと、0〜20重量%のアルミン酸カルシウムセメントと、0〜7重量%の硫酸カルシウムと、0〜55重量%のフライアッシュとを含むことができる。
【0041】
<水硬性セメント>
[0042]ポルトランドセメントなどの水硬性セメントは、本発明の組成物のうちの相当な量を構成する。通常はいくらかの石こうがポルトランドセメント中に含まれるが、本明細書では、「水硬性セメント」は、水の存在下で強度を発現しない石こうを含まないことを理解されたい。ポルトランドセメントに対するASTM C 150標準規格は、ポルトランドセメントを、水硬性ケイ酸カルシウムから基本的になり、同時粉砕用添加物(inter−ground addition)として1以上の形態の硫酸カルシウムを通常含むクリンカを粉砕することによって製造される、水硬性セメントとして定義する。より一般的には、その他の水硬性セメント、例えば、カルシウムスルホアルミネート系セメントは、ポルトランドセメントを代替することができる。ポルトランドセメントを製造するためには、石灰石と粘土との密接な混合物をキルンで焼成してポルトランドセメントクリンカを形成する。ポルトランドセメントの以下の4つの主たる相、即ち、ケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO、CSとも呼ばれる)、ケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO、CSと呼ばれる)、アルミン酸三カルシウム(3CaO・Al又はCA)及びアルミン酸鉄四カルシウム(4CaO・Al・Fe又はCAF)がクリンカ中に存在する。上記の化合物を含む生成クリンカを所望の微細度まで硫酸カルシウムと同時に粉砕する(inter−ground)ことによってポルトランドセメントを生産する。
【0042】
[0043]ポルトランドセメント中に少量存在するその他の化合物として、硫酸アルカリの複塩、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムが挙げられる。セメントボードを作製しようとする場合、ポルトランドセメントは、ブレーン表面積法(ASTM C 204)によって測定した場合、粒子の表面積が4,000cm/グラム超、通常5,000〜6,000cm/グラムであるような非常に微細な粒子の形態で通常存在することになる。ポルトランドセメントの広く認められている多様なクラスのなかで、ASTMIII型ポルトランドセメントが、本発明のセメント系組成物のセメント系反応性粉末において最も好ましい。これは、このセメントの反応性が比較的速やかであり、早期強度の発現が大きいからである。
【0043】
[0044]本発明では、III型ポルトランドセメントを使用する必要性は、最小化されており、III型ポルトランドセメントの代わりに他のセメントを使用しても比較的速やかな早期強度の発現を得ることができる。本発明の組成物においてIII型ポルトランドセメントを代替又は補助するのに使用できるその他の広く認められた型のセメントとして、I型ポルトランドセメント、又は、II型ポルトランドセメント、白色セメント、高炉スラグセメントなどのスラグセメント、ポゾラン混入セメント、膨張セメント、スルホアルミネートセメント、及び油井セメントを含めての他の水硬性セメントが挙げられる。
【0044】
<鉱物性添加材>
[0045]水硬性セメントは、接着特性が相当にある、ほとんどない、又はまったくない鉱物性添加材によって部分的に代替することができる。フライアッシュなどのポゾラン特性を有する鉱物性添加材は、本発明のセメント系反応性粉末において特に好ましい。
【0045】
[0046]ASTM C618−97は、ポゾラン性材料を、「それ自体はほとんど又はまったくセメントとしての価値はないが、微粉砕された形態で、水分の存在下、常温で水酸化カルシウムと化学的に反応することによってセメント系特性を有する化合物を形成するケイ酸質材料又はケイ酸質でアルミノ質である材料」として定義する。天然及び人工の多様な材料が、ポゾラン特性を有するポゾラン材料と呼ばれてきた。ポゾラン材料の例として、軽石、パーライト、珪藻土、シリカフューム、凝灰岩、トラス、籾殻、メタカオリン、造粒高炉スラグ粉砕物、及びフライアッシュが挙げられる。こうしたポゾラン材料はすべて、本発明のセメント系反応性粉末の一部として単独で又は組み合わせて使用することができる。フライアッシュは、本発明のセメント系反応性粉末ブレンドにおける好ましいポゾランである。酸化カルシウム及びアルミン酸カルシウムの含有量が大きいフライアッシュ(ASTM C618標準のクラスCフライアッシュなどの)は、以下で説明されるように好ましい。炭酸カルシウム、バーミキュライト、粘土及び粉砕雲母など他の鉱物性添加材も、鉱物性添加材として含ませることができる。
【0046】
[0047]フライアッシュは、石炭の燃焼に由来して形成される微粉末副生物である。微粉炭を燃焼させる電力プラント事業用ボイラーによって最も市場に適したフライアッシュが生産される。こうしたフライアッシュは、主として、ガラス状球形粒子、並びにヘマタイトとマグネタイトの残分、炭、及び冷却中に形成されるいくつかの結晶相からなる。フライアッシュ粒子の構造、組成及び特性は、石炭の構造と組成、及びフライアッシュが形成される燃焼プロセスによって決まる。ASTM C618標準では、コンクリートで使用されるフライアッシュの2つの主要なクラス−クラスC及びクラスFが認定されている。フライアッシュのこれら2つのクラスは、地質時代に行われた石炭形成プロセスの相違の結果である石炭の種類の相違に由来する。クラスFフライアッシュは、通常、無煙炭又は瀝青炭の燃焼から生成し、クラスCフライアッシュは、通常、亜炭又は亜瀝青炭から生成する。
【0047】
[0048]ASTM C618標準は、主としてそのポゾラン特性によってクラスF及びクラスCフライアッシュを区別する。したがって、ASTM C618標準では、クラスCフライアッシュとクラスFフライアッシュの主要な規格上の相違点は、組成におけるSiO+Al+Feの最低限界によるものである。クラスFフライアッシュに対するSiO+Al+Feの最低限界は、70%であり、クラスCフライアッシュでは50%である。したがって、クラスFフライアッシュは、クラスCフライアッシュよりポゾラン性が高い。ASTM C618標準では明確に認定されていないが、クラスCフライアッシュは、通常、酸化カルシウム含有量が大きい。酸化カルシウムが多く存在するために、クラスCフライアッシュはセメント様特性を有するようになり、それによって、水と混合した場合に、ケイ酸カルシウム水和物及びアルミン酸カルシウム水和物が形成される。以下の実施例で分かるように、クラスCフライアッシュは、特に、アルミン酸カルシウムセメント及び石こうが使用されない好ましい配合物において、優れた結果をもたらすことが分かっている。
【0048】
[0049]本発明のセメント系組成物で使用されるセメント系反応性粉末ブレンドにおけるポルトランドセメントに対するポゾラン材料の重量比は、約0/100〜150/100、好ましくは、75/100〜125/100である。一部のセメント系反応性粉末ブレンドでは、ポルトランドセメントが約40〜80重量%、フライアッシュが20〜60重量%である。
【0049】
<アルミン酸カルシウムセメント>
[0050]アルミン酸カルシウムセメント(CAC)は、本発明の一部の実施形態の反応性粉末ブレンドの成分を形成できる別の型の水硬性セメントである。
【0050】
[0051]アルミン酸カルシウムセメント(CAC)は、通常、アルミナセメント又は高アルミナセメントとも呼ばれる。アルミン酸カルシウムセメントは、アルミナ含有量が高く、約36〜42%重量%が典型的である。より高純度のアルミン酸カルシウムセメントも市販されており、そのセメントでは、アルミナ含有量は、80重量%にもなる場合がある。こうしたより高純度のアルミン酸カルシウムセメントは、他のセメントと比較して非常に高価になる傾向がある。本発明の一部の実施形態の組成物で使用されるアルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸塩が水性相に入るのを促進するように微細に粉砕されており、その結果として、エトリンガイト及び他のアルミン酸カルシウム水和物を速やかに形成させることができる。本発明の一部の実施形態で使用し得るアルミン酸カルシウムセメントの表面積は、ブレーン表面積法(ASTM C 204)によって測定した場合、3,000cm/グラム超、通常、約4,000〜6,000cm/グラムになることになる。
【0051】
[0052]アルミン酸カルシウムセメントを生産するための数種類の製造法が世界全体で現れている。通常、アルミン酸カルシウムセメントの製造で使用される主原料は、ボーキサイト及び石灰石である。アルミン酸カルシウムセメントを生産するためにUSで使用されてきた1つの製造法を以下に説明する。最初にボーキサイト鉱を破砕し、乾燥させ、次いで石灰石と一緒に粉砕する。次いで、ボーキサイト及び石灰石を含む乾燥粉末をロータリーキルンに供給する。キルンの燃料としては、粉砕した低灰分炭を使用する。ボーキサイトと石灰石の反応が、キルン内で行われ、溶融生成物が、キルンの低い方の末端部に集合し、底部の一連のトラフ内に注がれる。溶融クリンカを水で急冷することによって粒状クリンカを形成し、次いでストックパイルに輸送する。次いで、この粒状物を所望の粒度まで粉砕することによって最終のセメントを生産する。
【0052】
[0053]数種のアルミン酸カルシウム化合物が、アルミン酸カルシウムセメントを製造する過程の間に形成される。形成される主化合物は、アルミン酸一カルシウム(CaO・Al、CAとも呼ばれる)である。形成される他のアルミン酸カルシウム化合物及びケイ酸カルシウム化合物として、C12とも呼ばれるl2CaO・7A1、CAとも呼ばれるCaO・2Al、ケイ酸二カルシウム(CSと呼ばれる2CaO・SiO)、ケイ酸アルミナ二カルシウム(CASと呼ばれる、2CaO・A1・SiO)が挙げられる。酸化鉄を比較的高い割合で含む数種の他の化合物も形成される。こうしたものとして、CaO・Fe若しくはCF及び2CaO・Fe若しくはCFなどのカルシウムフェライト、並びにテトラカルシウムアルミノフェライト(4CaO・A1・Fe若しくはCAF)、6CaO・Al・2Fe若しくはCAF、及び6CaO・2Al・Fe若しくはCFなどのカルシウムアルミノフェライトが挙げられる。アルミン酸カルシウムセメント中に存在する他の微量成分として、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO)、硫酸塩、及びアルカリが挙げられる。
【0053】
<硫酸カルシウム>
[0054]以下に示す多様な形態の硫酸カルシウムを本発明で使用することによってエトリンガイト及び他のカルシウムスルホアルミネート水和物化合物を形成するための硫酸塩イオンが提供される。
【0054】
[0055]二水和物−CaSO・2HO(通常、石こう又はランドプラスタとして知られている)
【0055】
[0056]半水和物−CaSO・1/2HO(通常、スタッコ又はプラスタオブパリス若しくは単にプラスタとして知られている)
【0056】
[0057]無水物−CaSO(無水硫酸カルシウムとも呼ばれる)
【0057】
[0058]ランドプラスタは、比較的純度の低い石こうであり、経済的な見地から好ましい。但し、純度が高い方の等級の石こうも使用できる。ランドプラスタは、採掘された石こうから作製され、ブレーン表面積法(ASTM C 204)によって測定した場合、比表面積が2,000cm/グラム超、通常約4,000〜6,000cm/グラムになるように比較的小さい粒子まで粉砕される。微細粒子は、容易に溶解し、エトリンガイトを形成するのに必要である石こうを供給する。多様な製造業からの副生物として得られる合成石こうも本発明の好ましい硫酸カルシウムとして使用することができる。他の2つの形態の硫酸カルシウム、即ち、半水和物及び無水物も、石こうつまり硫酸カルシウムの二水和物形態の代わりに本発明で使用することができる。
【0058】
<アルカノールアミン>
[0059]本発明では、多様なアルカノールアミンを単独で又は組み合わせて使用することによって本発明のセメント系組成物の凝結性を促進することができる。本発明で使用するアルカノールアミンの典型的な群は、NH3−n(ROH)であり、式中、nは、1、2又は3であり、Rは炭素原子を1、2又は3個を有するアルキルである。有用なアルカノールアミンの例として、モノエタノールアミン[NH(CH−CHOH)]、ジエタノールアミン[NH(CH−CHOH)]、及びトリエタノールアミン[N(CH−CHOH)]が挙げられる。トリエタノールアミン(TEA)は、本発明において最も好ましいアルカノールアミンである。
【0059】
[0060]アルカノールアミンは、強力なアルカリ性で、カチオン活性であるアミノアルコールである。アルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミンは、通常、本発明のセメント系反応性粉末の重量に対して、約0.025〜4.0重量%、好ましくは、約0.025〜2.0重量%、より好ましくは、約0.025〜1.0重量%、さらに好ましくは、約0.05〜0.25重量%、最も好ましくは、約0.05〜0.1重量%の用量で使用される。したがって、例えば、セメント系反応性粉末100ポンドに対して、アルカノールアミン0.025〜4.0ポンドが存在する。
【0060】
[0061]アルカノールアミン及びポリリン酸塩(以下に記載の)を添加すると、高温で開始した場合、本発明のセメント系組成物の急結特性に対して有意な影響がもたらされる。約90°F(32℃)超のスラリー温度が得られる条件下で適量のアルカノールアミン及びポリリン酸塩を添加すると、凝結の終結時間を大幅に短縮することが可能になる。
【0061】
<ポリリン酸塩>
[0062]好ましいポリリン酸塩は、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)であるが、トリポリリン酸カリウム(KTPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)及びピロリン酸四カリウム(TKPP)などの他のリン酸塩を含む配合物も、アルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン濃度を減らした場合に、終結性能を向上させ、圧縮強度を向上させた配合物を提供する。
【0062】
[0063]ポリリン酸塩の用量は、本発明のセメント系反応性成分に対して、約0.15〜1.5重量%、好ましくは、約0.3〜1.0重量%、より好ましくは、約0.5〜0.75重量%である。したがって、例えば、セメント系反応性粉末100ポンドに対して、ポリリン酸塩約0.15〜1.5ポンドが存在する。
【0063】
[0064]約90°F(32℃)超のスラリー温度が得られる条件下で適切な用量のポリリン酸塩を添加することによって得られる急結性によって、高アルミナセメントがなくてもトリエタノールアミンを大幅に低減することが可能になる。
【0064】
[0065]用いられるポリリン酸塩又は縮合リン酸塩は、1個以上のリン原子を有し、リン原子は、相互に結合していない。しかし、対になった各リン原子は、少なくとも1つの同じ酸素原子に、例えば、P−O−Pのように結合している。本出願における一般のクラスの縮合リン酸塩として、メタリン酸塩及びピロリン酸塩が挙げられる。用いられるポリリン酸塩は、通常、アルカリ金属ポリリン酸塩から選択される。
【0065】
[0066]メタリン酸塩は、イオン性部分((POn−を含む環式構造であるポリリン酸塩であり、nは、少なくとも3であり、例えば、(Na(PO)である。ウルトラリン酸塩は、PO四面体の少なくとも一部が隅の酸素原子3個を共有するポリリン酸塩である。ピロリン酸塩は、(P4−イオンを有するポリリン酸塩、例えば、Na4−n(P)であり、nは0〜4である。
【0066】
<凝結遅延剤>
[0067]本発明の組成物における成分として凝結遅延剤を使用することは、セメント系製品を成型するのに使用される初期スラリー温度が、特に高い、通常100°F(38℃)超であるような状況では特に助けとなる。かかる比較的高い初期スラリー温度では、クエン酸ナトリウム又はクエン酸などの遅延剤は、組成物中の多様な反応成分間の相乗的な物理的及び化学的反応を促進し、スラリー温度上昇に対する好ましい応答及び好ましい急結挙動がもたらされる。遅延剤を添加しないと、水を混合物に添加した直後に、本発明の反応性粉末ブレンドの固化が非常に速やかに生ずる恐れがある。「偽凝結」とも呼ばれる、混合物の速やかな固化は、望ましくない。というのは、この偽凝結は、エトリンガイトの適切かつ完全な形成を妨害し、それより遅い段階でのケイ酸カルシウム水和物の正常な形成を妨害し、硬化セメントモルタルの極端に不良で脆弱な微細構造が発達する原因になるからである。
【0067】
[0068]組成物中の遅延剤の主たる機能は、スラリー混合物の固化が速やかすぎるのを防止し、それによって多様な反応成分間の相乗的な物理的相互作用及び化学的反応を促進することである。組成物に遅延剤を添加することに由来する他の二次的な利点として、作業可能な硬さを有するスラリー混合物を実現するのに必要な高性能減水剤及び/又は水の量を低減することが挙げられる。前記の利点のすべては、偽凝結を抑制するために実現される。いくつかの有用な凝結遅延剤の例として、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウムなどが挙げられる。本発明の組成物では、クエン酸ナトリウムが好ましい凝結遅延剤である。さらには、凝結遅延剤は、スラリー混合物の固化が速やかすぎるのを防止するので、その添加は重要な役割を果たし、セメントボード製造過程の間に良好な端部を形成するのに役立つ。セメント系反応性粉末ブレンドに対する凝結遅延剤の重量比は、一般に、1.0重量%未満、好ましくは、約0.04〜0.3重量%である。
【0068】
<二次無機凝結促進剤>
[0069]上記で議論したように、ポリリン酸塩と組み合わせたアルカノールアミンは、セメント系混合物を超急結させるための主因である。しかし、アルカノールアミン及びポリリン酸塩と組み合わせて、他の無機凝結促進剤を二次無機凝結促進剤として本発明のセメント系組成物に添加することができる。
【0069】
[0070]こうした二次無機凝結促進剤の添加は、アルカノールアミンとポリリン酸塩の組合せを添加することによって実現される短縮に比較して凝結時間の短縮はわずかしか期待できない。かかる二次無機凝結促進剤の例として、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、亜硝酸リチウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。セメントボード用のファスナーの腐食が心配である場合は、塩化カルシウムの使用は避けるべきである。セメント系反応性粉末ブレンドに対する二次無機凝結促進剤の重量比は、通常、2重量%未満、好ましくは、約0.1〜1重量%となろう。換言すれば、セメント系反応性粉末100ポンドに対して、二次無機凝結促進剤が、通常、2ポンド未満、好ましくは、0.1〜1ポンド存在する。こうした二次無機凝結促進剤は、単独でも組み合わせても使用することができる。
【0070】
<他の化学添加剤及び成分>
[0071]減水剤(高性能減水剤)などの化学添加剤は、本発明の組成物中に含ませることができる。それらは、乾燥形態で添加しても、溶液形態で添加してもよい。高性能減水剤により、混合物において必要になる水の量を低減することができる。高性能減水剤の例として、ポリナフタレンスルホネート、ポリアクリレート、ポリカルボキシレート、リグノスルホネート、メラミンスルホネートなどが挙げられる。用いる高性能減水剤の型によるが、反応性粉末ブレンドに対する高性能減水剤(乾燥粉末基準)の重量比は、通常、約2重量%以下、好ましくは、約0.1〜1.0重量%となろう。
【0071】
[0072]軽量セメントボードなどの軽量製品を生産したい場合、空気連行剤(又は発泡剤)を組成物中に添加して製品を軽量化することができる。
【0072】
[0073]空気連行剤は、セメント系スラリーに添加されてin situで気泡(泡)を形成する。空気連行剤は、通常、コンクリート中に意図的に微細な気泡を捕捉するのに使用される界面活性剤である。或は、空気連行剤は、外部で泡を製造するために用いられ、その泡は、混合操作中に本発明の組成物の混合物内に導入されて製品密度を低減させる。通常、外部で泡を製造するために、空気連行剤(液体発泡剤としても知られている)、空気及び水は、混合されて適切な泡発生装置で泡を形成し、次いで、その泡がセメントスラリーに添加される。
【0073】
[0074]空気連行剤/発泡剤の例として、とりわけ、アルキルスルホネート、アルキルベンゾールスルホネート、アルキルエーテルスルフェートオリゴマーが挙げられる。こうした発泡剤に対する一般式の詳細は、米国特許第5,643,510号で知ることができる。
【0074】
[0075]ASTM C 260「Standard Specification for Air−Entraining Admixtures for Concrete」(2006年8月1日)に規定された標準に合致するものなどの空気連行剤(発泡剤)を用いることができる。かかる空気連行剤は、当業者には周知であり、Kosmatkaらの「Design and Control of Concrete Mixtures」第4版、Portland Cement Association、詳細には、「Air Entrained Concrete」というタイトルの8章(米国特許出願第2007/0079733 Alに引用されている)に記載されている。市販の空気連行剤として、ビンゾール木質樹脂、スルホン化炭化水素、脂肪族樹脂酸;スルホン化リグニン塩、及び通常、アニオン性又は非イオン性界面活性剤の形態をとる多数の他の界面活性材料などの脂肪族置換アリールスルホネート;アビエチン酸ナトリウム、飽和又は不飽和脂肪酸及びそれらの塩、テンサイド、アルキルアリールスルホネート、フェノールエトキシレート、リグノスルホネート、樹脂石けん、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、硫酸ラウリル、ABS(アルキルベンゼンスルホネート)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホネート)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルスルフェートエステル又はそれらの塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルホスフェートエステル又はそれらの塩、タンパク質材料、アルケニルスルホスクシネート、α−オレフィンスルホネート、α−オレフィンスルホネートのナトリウム塩、又はラウリル硫酸ナトリウム若しくはラウリルスルホン酸ナトリウム及びそれらの混合物が挙げられる。
【0075】
[0076]通常は、空気連行(発泡)剤は、セメント系組成物全体の重量の約0.01〜1重量%である。
【0076】
[0077]収縮制御剤、着色剤、粘度調整剤(増粘剤)及び内部養生剤などの他の化学添加剤も、所望であれば、本発明の組成物に添加することができる。
【0077】
<スクリム>
[0078]多様な型の個々の補強繊維も本発明のセメント系組成物に含めることができる。ポリマー被覆グラスファイバ、並びにポリプロピレン、ポリエチレン及びナイロンなどのポリマー材料などの材料から作製したスクリムを使用して、セメント系製品をその機能及び用途に応じて補強することができる。本発明に従って生産されたセメントボードは、通常、ポリマー被覆グラスファイバから作製されたスクリムを用いて補強される。
【0078】
<骨材及びフィラー>
[0079]開示されたセメント系反応性粉末ブレンドは、本発明のセメント系組成物の急結成分を規定するものであるが、所期の使用及び用途に応じて、他の材料もこの組成物に含め得ることを当業者は理解されたい。
【0079】
[0080]例えば、セメントボードの用途では、製品の所望の機械特性を不当に低下させることなく軽量ボードを生産することが望ましい。この目的は、軽量骨材及びフィラーを添加することによって実現される。有用な軽量骨材及びフィラーの例として、高炉スラグ、火山性凝灰岩、軽石;粘土、頁岩、及びパーライトの膨張形態;中空セラミック球、中空プラスチック球、膨張プラスチックビーズなどが挙げられる。セメントボードを生産するためには、膨張粘土及び頁岩性骨材は、特に有用である。膨張プラスチックビーズ及び中空プラスチック球は、本発明組成物で使用する場合、それらのかさ密度が極めて低いので、重量基準では非常に少ない量しか必要ではない。
【0080】
[0081]選択した軽量骨材又はフィラーの種類に応じて、反応性粉末ブレンドに対する軽量骨材又はフィラーの重量比は、約1/100〜200/100、好ましくは、約2/100〜125/100であってもよい。例えば、軽量セメントボードを作製する場合、反応性粉末ブレンドに対する軽量骨材又はフィラーの重量比は好ましくは、約2/100〜125/100となろう。製品が軽量であるという特徴が、重要な基準にならない用途では、コンクリート建造物で通常使用されるか川砂及び粗骨材を本発明の組成物の一部分として利用することもできる。
【0081】
<初期スラリー温度>
[0082]本発明では、初期のスラリー温度を高くする条件下でスラリーを形成することが、セメント系配合物を急結させ、速やかに硬化させるために重要であることが分かった。初期スラリー温度は、約90°F(32℃)以上であるべきである。スラリー温度が、90°F〜160°F(32℃〜71℃)又は90°F〜135°F(32℃〜57℃)の範囲であると、凝結時間が非常に短くなる。初期スラリー温度は、好ましくは、約120°F〜130°F(49℃〜54℃)である。
【0082】
[0083]一般には、この範囲では、スラリーの初期温度が上昇すると、反応の進行と共に温度上昇速度が増加し、凝結時間が短縮される。したがって、95°F(35℃)の初期スラリー温度は、90°F(32℃)の初期スラリー温度より好ましく、温度100°F(38℃)は、95°F(35℃)より好ましく、温度105°F(41℃)は、100°F(38℃)より好ましく、温度110°F(43℃)は、105°F(41℃)より好ましい、以下同様である。初期スラリー温度を上昇させる利点は、ボード温度範囲の上限に接近するにつれて減少すると考えられている。
【0083】
[0084]当業者には理解されるように、初期スラリー温度の実現は、1以上の方法によって達成することができる。おそらく、最も好都合な方法は、スラリーの1つ又は複数の成分を加熱することである。実施例では、本発明者らは、水を乾燥した反応性粉末及び非反応性固体に添加した場合、生成スラリーが所望の温度になるような温度まで加熱した水を供給した。或は、所望なら、固体は周囲温度より高い温度で供給することもできると思われる。スラリーに熱を供給するために蒸気を使用することも採用可能な別の可能な方法である。
【0084】
[0085]おそらくはより遅くなると思われるが、スラリーは、周囲温度で調製し、急速に(例えば、約10、5、2又は1分以内に)加熱して約90°F(又は、その他の上記に列挙した範囲で任意のもの)以上まで温度を上昇させることもできると思われ、それでも本発明の利点は実現される。
【0085】
<セメントボードなどのプレキャストコンクリート製品の製造>
[0086]セメントボードなどのプレキャストコンクリート製品は、連続プロセスで最も効率的に製造され、その連続プロセスでは、反応性粉末ブレンドは、骨材、フィラー及びその他の必要な成分とブレンドされた後に、型枠中に又は連続式鋳込み成型ベルト上に混合物を配置する直前に水及び他の化学添加剤が添加される。
【0086】
[0087]セメント系混合物が急結特性を有するので、セメント系ブレンドの乾燥成分と水の混合は、通常、鋳込み操作の直前に実施されることになることを理解されたい。アルミン酸カルシウム化合物の水和物の形成、及びそれに伴う多量の水の消費の結果として、セメント系製品は剛性を示し、更なる養生のための、切断、ハンドリング及び積層可能な状態になる。
【0087】
[実施例]
[0088]以下の実施例は、アルカノールアミン及びポリリン酸塩の添加が、反応性粉末の成分としてポルトランドセメントと、クラスCフライアッシュと、硫酸カルシウム二水和物(ランドプラスタ)との混合物を含む本発明のセメント系組成物の、スラリー温度の上昇挙動、凝結特性、及び立方体の圧縮強度(CCS)に及ぼす影響を示す。使用される添加物は、トリエタノールアミン、及びポリリン酸塩、例えば、トリメタリン酸ナトリウムであり、両者は水溶液として添加された。
【0088】
[0089]加えて、クエン酸ナトリウム凝結遅延剤及びスルホン化ナフタレン高性能減水剤を添加して混合物の流動性を制御した。こうした添加剤を全反応性粉末の重量%として添加した。
【0089】
[0090]セメント(反応性粉末)に対する水の重量比0.43/1及びセメント(反応性粉末)に対する膨張粘土骨材の重量比0.80/1を使用して、実施例1〜5に含まれる組成物が混合された。
【0090】
[0091]米国特許第6,869,474号に含まれる組成物との比較のために、セメント(反応性粉末)に対する水の重量比0.40/1及びセメント(反応性粉末)に対する膨張粘土骨材の重量比0.90/1を使用して、実施例6に含まれる組成物が混合された。
【0091】
[0092]液体の温度をセメントと混合する前に調整して特定の混合物温度を得た。ホバートミキサー中で混合した後、混合物(約280グラム)を6オンスのスタイロホームカップ中に入れ、断熱スタイロホームボックスに入れた。データ収集用のコンピュータプログラムを使用して、温度応答を連続的に測定した。最高温度上昇速度、並びに最高温度及び最高温度までの時間を実験用混合物の反応性の指標として使用した。
【0092】
[0093]始発時間及び終結時間をASTM C266に従ってギルモア針を用いて測定した。目標は、混合後、10分未満、好ましくは5〜7分以内に終結に到達することであった。圧縮強度のために、試験用立方体(2インチ×2インチ×2インチ)(5.1cm×5.1cm×5.1cm)を試験の時まで温度68℃(154°F)で湿ったタオルを含む密封プラスチックバッグ内に保持した。それぞれの混合物からの3個の立方体の圧縮強度を、混合物用液体の添加後5時間後に測定した。ASTM C109の手順に指定された荷重速度を満足するようにプログラムされたSATEC UTC 12OHVL圧縮機を使用して、立方体を押しつぶすのに必要な最大荷重を測定した。
【0093】
[0094]こうした調査で使用した原料及び成分は以下の通りであった:
[0095]III型ポルトランドセメント
[0096]石こう(ランドプラスタ)
[0097]クラスCフライアッシュ
[0098]膨張粘土/頁岩骨材
[0099]トリエタノールアミン(TEA)
[00100]クエン酸ナトリウム
[00101]スルホン化ナフタレン縮合体の高性能減水剤
[00102]トリメタリン酸ナトリウム(STMP)、トリポリリン酸カリウム(KTPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)
【0094】
[00103]以下の実施例では、初期スラリー温度が周囲より高い条件下で乾燥反応性粉末成分及び使用された任意の骨材を水と混合した。初期温度が90°〜135°F(32〜57℃)の範囲内にあるスラリーを生成する温度を有する熱水を通常使用した。
【0095】
[00104]実施例は、凝結遅延剤(クエン酸ナトリウム)、アルカノールアミン(トリエタノールアミン)、ポリリン酸塩及びスラリー温度の相乗的な役割を実際に示すものである。実施例によって、ASTM C266の試験手順で指定された上記のギルモア針を用いて測定した、始発及び終結時間によって特徴づけられる組成物の凝結、並びにASTM C109による初期の高圧縮強度が報告される。
【0096】
<実施例1(混合物1〜6)>
[00105]0〜0.05%の範囲のトリエタノールアミン及び0〜1.0%の範囲のトリメタリン酸ナトリウム(STMP)(セメント系反応性粉末の重量に対して)を含む配合物を使用して、これらの組成物の終結及び温度上昇特性に及ぼすSTMP及びトリエタノールアミン(TEA)の効果を測定した。本実施例では、III型ポルトランドセメント、クラスCフライアッシュ及びランドプラスタを重量比(部数)100/40/10で添加した。高性能減水剤及びクエン酸塩を本実施例で使用した混合物に水溶液として添加した。図1は、STMPの水準を上昇させると、かかる混合物の温度上昇が促進されたことを示す。
【0097】
[00106]表1は、STMP用量の変動が、図1に示された温度上昇曲線の特徴、及びこれらの混合物に対して測定された終結時間に及ぼす効果を要約する。こうした結果は、0.025〜0.05%の範囲のTEA及び0.75〜1.0%の範囲のSTMPを含む配合物の終結時間が7〜8分であったことを示す。加えて、0.05%のTEA及び0.30%のSTMPを含む配合物は、凝結時間が14分未満であった。
【0098】
[00107]
【表1】

【0099】
<実施例2(混合物1〜8)>
[00108]1〜8と標識された別の組の混合物を調製した。表2は、ポルトランドセメント、クラスCフライアッシュ、及びランドプラスタを重量比(部)100/40/15(混合物1〜4)及び100/70/25(混合物5〜8)で含むこうした配合物を示す。表2は又、混合物1、2、3及び4がTEA0.05%を含み、STMP用量が、それぞれ、0、0.30、0.75及び1.0%であったことを示す。混合物5、6、7及び8では、TEA用量を0.1%に保持し、STMP水準は、それぞれ、0、0.50、0.75及び1.0%であった。
【0100】
[00109]表2に含まれた結果は、STMP用量が増加すると、終結時間が大幅に短縮されることを示す。例えば、III型ポルトランドセメント100部、クラスCフライアッシュ40部、及びランドプラスタ15部を含み、STMPが0%である混合物1では、終結は、187分と測定された。又、1.0%のSTMPを含み、フライアッシュ及びランドプラスタ含有量が混合物1と同じである混合物4では、終結は、約10分まで短縮された。同様に、ポルトランドセメント100部、クラスCフライアッシュ70部、及びランドプラスタ25部を含む混合物5の終結時間は、0.75及び1.0%のSTMPを含む混合物7及び8の場合の丁度12〜17分に比較して4時間超であることが分かった。
【0101】
[00110]加えて、表2に含まれる圧縮強度データは、比較的高用量のSTMPを含む混合物が、中程度のSTMPを含む混合物に比較して比較的大きい圧縮強度と十分な急結性を合わせて有することを示すように思われる。例えば、フライアッシュ40部及びランドプラスタ15部を有し、それぞれ、0、0.75及び1.0%のSTMPを含む混合物1、3及び4は、STMP0.30%を含む混合物2の場合の圧縮強度913psiに比較して、2004、1165及び1693psiであった。同様に、III型ポルトランドセメント100部、フライアッシュ70部、及びランドプラスタ25部を含み、それぞれ、0.75%及び1.0%のSTMPを含む混合物7及び8は、STMP0.50%を含む混合物6の場合の圧縮強度500psiに比較して、662及び880psiであった。
【0102】
[00111]対照的に、STMPを含まない混合物1及び5は、比較的、終結時間が長かった。STMP0%を含む混合物1は、2004psiという比較的大きい圧縮強度を有するが、その終結時間187分は、本発明で計画された使用には不適当である。
【0103】
[00112]
【表2】

【0104】
<実施例3(混合物1〜8)>
[00113]1〜8と標識された別の組の混合物を作製した。トリメタリン酸ナトリウム(STMP)促進剤をトリエタノールアミン(TEA)促進剤と共に含むこうした配合物を、TEAと組み合わせた硫酸アルミニウム(アラム)を含む配合物と比較した。STMPの用量を変動させ、III型ポルトランドセメント100重量部、クラスCフライアッシュ40部、及びランドプラスタ20部を含む混合物に対する温度上昇及び終結時間を、TEA0.25%と組み合わせたアラム0.05%を含み、フライアッシュとランドプラスタの比が同じ(40/20)である混合物と比較した。加えて、STMPの用量を変動させ、III型ポルトランドセメント100部、クラスCフライアッシュ60部、及びランドプラスタ20部を含む混合物に対する温度上昇及び終結時間を、TEA0.25%と組み合わせたアラム0.05%を含み、フライアッシュとランドプラスタの比が同じ(60/20)である混合物と比較した。
【0105】
[00114]表3は、使用されたそれぞれの混合物に対する詳細な組成物、及びそれぞれの混合物に特徴的な温度上昇に加えてそれらの対応する終結時間を示す。表3は、III型ポルトランドセメント100部とフライアッシュとランドプラスタとの比が100/40/20で、0.10%のTEA及び0%のSTMPを含む混合物2に対して測定された終結時間42分が、0.25%のTEA及び0.05%のアラムを含み、III型ポルトランドセメント100部とフライアッシュとランドプラスタの比が同じである混合物1の終結時間約7分と比較した場合、大幅に長いことを示す。対照的に、0.3及び0.75%のSTMPを含む混合物3及び4では、7分未満の終結時間が実現される。
【0106】
[00115]加えて、混合物3及び4では、5時間後の圧縮強度は、0.25%のTEA及び0.05%のアラムを含む混合物1の場合の703psiと比較して、722及び1191psiと測定された。同様な結果を、表3に含まれた混合物5、6、7及び8の場合の結果によって示されるように、III型ポルトランドセメントとフライアッシュとランドプラスタの比が100/60/20である混合物について得た。
【0107】
[00116]
【表3】

【0108】
<実施例4(混合物1〜12)>
[00117]1〜12と標識された別の組の混合物を作製した。トリメタリン酸ナトリウム(STMP)とトリエタノールアミン(TEA)を多様に組み合わせ、III型ポルトランドセメント100部、クラスCフライアッシュ60部、及びランドプラスタ20部を含むこれらの混合物に対する圧縮強度を評価した。表4は、用いたそれぞれの混合物に対する詳細な組成、並びにそれらに対応する終結時間及び温度上昇パラメータを示す。表4は、0.05%のTEA及び0.60%のSTMPを含む混合物12が、終結時間(9.3分)と圧縮強度(836psi)の最良の組合せであることを示す。0%のTEA及び0.65%のSTMPを含む混合物11は、1396psiと測定された最高の圧縮強度を有するが、この混合物について測定された終結時間は、138分まで伸びた。0.65%のTEA及び0%のSTMPを含む混合物10は、終結時間5.5分未満であったが、649psiという圧縮強度は、混合物12のそれに比較して大幅に低い。
【0109】
[00118]表4に含まれた圧縮強度のデータは、最大の圧縮強度を有する混合物が、0.05〜0.10%の範囲のTEA及び0.50〜0.60%の範囲のSTMPを含むことを示す。
【0110】
[00119]
【表4】

【0111】
<実施例5(混合物1〜12)>
[00120]混合物1〜12の別の組を作製した。トリエタノールアミン(TEA)と3つの異なるポリリン酸塩、即ち、トリポリリン酸カリウム(KTPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、及びトリメタリン酸ナトリウム(STMP)を多様に組み合わせ、III型ポルトランドセメント100部、クラスCフライアッシュ40部、及びランドプラスタ20部を含むこれらの混合物に対する5時間圧縮強度及び温度上昇を比較した。表5に含まれたデータは、0.60%のKTPP、STPP又はSTMPを使用し、0.15重量%のTEAを含む混合物1、5又は9が6〜8分の範囲の許容できる終結、及び1333〜2374psiの圧縮強度を有する混合物を生成することを示す。しかし、TEAを0.05〜0.10%まで低減すると、0.75及び0.85重量%のSTMPを含む混合物10及び11のみが、約5〜6分の許容できる終結、及び1769〜2032psiの範囲の圧縮強度を有する配合物を生成する。
【0112】
[00121]表5は、それぞれ、0.60%、0.75%、0.85%及び1.0%のSTMPを含む混合物9、10、11及び12が、TEAが類似の用量で、KTPPを含む混合物1、2、3及び4並びにSTPPを含む混合物5、6、7及び8と比較して、比較的より大きい温度上昇速度及びより高い最高温度を有することを示す。図2は、それぞれ0.75%のKTPP、STPP及びSTMPを含み、0.10%のTEAを含む混合物2、6及び10を比較する。図2は、STMPを含む混合物10が、KTPP及びSTPPを含む混合物2及び6に比較して、より速やかにより高い温度に達したことを示す。最後の結果は、上昇速度(表5に示すように13°F/分に近い)であり、その速度は、KTPP及びSTPPを含む混合物について測定された温度上昇速度(7°F/分)のほぼ2倍であった。
【0113】
[00122]
【表5】

【0114】
<実施例6>
[00123]この実施例は、米国特許第6,869,474号のものと類似の組成を有する混合物を評価した。
【0115】
[00124]III型ポルトランドセメント100部及びクラスCフライアッシュ90部を含むセメント粉末混合物を、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)とトリエタノールアミン(TEA)の多様な組合せにおいて、膨張粘土骨材90部と混合した。各混合物からの3つの立方体の圧縮強度を、水と混合して5時間後に測定した。立方体を試験の時まで温度68℃(154°F)に保持した。表6は、使用された各混合物に対する詳細な組成、及び上記の試験手順ASTM C109によって終結時間及び圧縮強度を測定した場合の各混合物に対応した試験結果を示す。
【0116】
[00125]表6は、それぞれ0.60、0.70及び0.75%のSTMPを含み、0.20、0.10%及び0.05%のTEAを含む本発明の混合物番号11、12及び13が、それぞれ、終結時間4.5、6.5及び8.5分と5時間圧縮強度923、1042及び1676psiの最良の組合せであることを示す。この実施例は、高強度と速やかな終結時間という有利な組合せを示す組成物を実現する場合においてSTMPとTEAを合わせることの利点を示す。
【0117】
【表6】

【0118】
[00126]本発明を実施するための好ましい実施形態を説明してきたが、本開示が対象としている当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明に対する改変及び付加を実施することができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物の温度が約90°F(32℃)以上である条件下で、水と、水硬性セメントを含むセメント系反応性粉末と、凝結促進量のアルカノールアミン及びポリリン酸塩と、を混合するステップを含む、急結性セメント系混合物を提供する方法。
【請求項2】
前記混合物の温度が約90〜135°F(32〜57℃)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物の温度が約100°F(38℃)以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物の温度が約105°F(41℃)以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリリン酸塩が、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)、トリポリリン酸カリウム(KTPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)及びピロリン酸四カリウム(TKPP)からなる群の少なくとも1種から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリリン酸塩が、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.15〜1.5重量%のリン酸塩量で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリリン酸塩が、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.3〜1.0重量%の量で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリリン酸塩が、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.4〜0.75重量%の量で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカノールアミンが、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカノールアミンが、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.025〜1重量%の量で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカノールアミンが、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.05〜0.25重量%の量で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリリン酸塩が、トリメタリン酸ナトリウムを含み、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.4〜0.75重量%の量で供給され、前記アルカノールアミンが、トリエタノールアミンを含み、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.05〜0.1重量%の量で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記セメント系反応性粉末が、水硬性セメントと、任意選択で、鉱物性添加材、アルミン酸カルシウムセメント、及び硫酸カルシウムからなる群の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記水硬性セメントがポルトランドセメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記セメント系反応性粉末が、鉱物性添加材をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記セメント系反応性粉末が、フライアッシュをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記セメント系反応性粉末が、硫酸カルシウムをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記セメント系反応性粉末が、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウム及びフライアッシュの和を基準にして、約40〜80重量%のポルトランドセメントと、0〜20重量%のアルミン酸カルシウムセメントと、0〜7重量%の硫酸カルシウムと、0〜55重量%のフライアッシュとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記セメント系反応性粉末が、ポルトランドセメント及びフライアッシュの和を基準にして、約40〜80重量%のポルトランドセメントと、20〜60重量%のフライアッシュとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記混合物が骨材をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
凝結遅延剤、空気連行剤、二次無機凝結促進剤、及び高性能減水剤からなる群の少なくとも1種を前記混合物に添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記混合物が凝結遅延剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記混合物が空気連行剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記混合物が二次無機凝結促進剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記混合物が高性能減水剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物の温度が、1以上の混合物の成分を加熱することによって、前記混合物を形成した0〜5分後に実現される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記混合物をスラリーとして形成するのに十分な水を供給するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
(a)水硬性セメント及び
(b)任意選択の鉱物性添加材を含むセメント系反応性粉末と、
成分(a)及び(b)に対する促進剤としてのアルカノールアミン及びポリリン酸塩と、
水と、の混合物を含み、
90°F以上の温度で前記混合物を混合するステップを含む方法によって形成されるセメントボードを調製するための組成物。
【請求項29】
前記ポリリン酸塩が、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)、トリポリリン酸カリウム(KTPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、ピロリン酸四カリウム(TKPP)、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記混合物が、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.15〜1.5重量%のリン酸塩を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記混合物が、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.3〜1.0重量%のリン酸塩を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
前記混合物が、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.4〜0.75重量%のリン酸塩を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項33】
前記アルカノールアミンが、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項34】
前記混合物が、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.025〜1重量%のアルカノールアミンを含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項35】
前記混合物が、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.05〜0.25重量%のアルカノールアミンを含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項36】
前記混合物が、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.4〜0.75重量%のリン酸塩と、前記セメント系反応性粉末の重量に対して約0.05〜0.1重量%のアルカノールアミンと、を含み、
該リン酸塩がトリメタリン酸ナトリウムを含み、
該アルカノールアミンがトリエタノールアミンを含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項37】
前記セメント系反応性粉末が、水硬性セメントと、任意選択で、鉱物性添加材、アルミン酸カルシウムセメント、及び硫酸カルシウムからなる群の少なくとも1種とを含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項38】
前記水硬性セメントがポルトランドセメントを含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項39】
前記混合物が鉱物性添加材をさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項40】
前記混合物がフライアッシュをさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項41】
骨材、凝結遅延剤、発泡剤、空気連行剤、二次無機凝結促進剤、高性能減水剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項42】
スラリーを形成するのに十分な水を含む、請求項28に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−528972(P2010−528972A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511258(P2010−511258)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/065228
【国際公開番号】WO2008/154179
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】