高い糖度およびアルコールの含有量を得るための、その酵母を得ることのできるブドウ園培養法
自然の幹を持つ自生したブドウの木を選び、その土地の草/木を含む肥料を与え、他の栄養は与えず、秋に収穫する方法。発酵方法は、大樽の20〜25%のプレスされたブドウに基づいており、その野生酵母が生産され、最初の状態で3.5〜6%体積のアルコールが得られる。続いて、7〜15日間おきに継ぎ足しが行われ、加えられた糖分の全体が、段階的な発酵を受ける。白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)という3つの異なる酵母が得られる。前記酵母は、60%vol./vol.までのアルコール含有量を持つ製品とともに、たとえばサイダー、ビール、コニャック、ラム、ウォッカなどの高品質な飲料を得ることを直接可能にする。発酵は、サッカロース溶液、糖蜜、スターチ加水分解から得られた糖分、および植物から得られた糖分の、高濃度の溶液でも起こる。パン、ペーストリー、および高品質に生成された生産物の生産が促進される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
ワイン造りの際に、ブドウの絞り汁の中に存在する全ての糖分を完全に発酵させることが、長年望まれている。したがって、一般的には最大14体積%までであり、それより高すぎない高いアルコール度数によって、最終的な香りの良い構造がワインにもたらされる。
【背景技術】
【0002】
ブドウのマストの発酵は、実際上、野生酵母、植菌された酵母、または両方の手段を通じて達成されるだろう。発酵に関与する野生酵母は、「ブルーム」と呼ばれるブドウの皮に(一般的には、ブドウの皮を覆っている白い微粒子の層(ビニフェラ種I)として)天然に存在する。特定の培養された酵母菌株は、特定の果物のような芳香、高いアルコール度数、嗅覚にとって感じの良い質感、および低温や比較的低いpH値での発酵のような他の特徴を生み出す。
【0003】
大部分のワイン貯蔵室では、糖分をアルコールに変えるために、一般的に、選択された特定の酵母が用いられる。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces Cerevisiae)は、全アルコール発酵に薦められる最も良い酵母種である。
【0004】
野生または自生した酵母を通じた発酵は、未だ広まっていないが、主に数人のヨーロッパのワインメーカーによって行われており、彼らは野生酵母を使って伝統的に発酵を行っており、非常に良い結果を得ている。さらに、カリフォルニアのワインメーカーもまた、このおおらかな発酵を採用しつつあり、また好ましい結果を得ている。収穫の際、ブドウはその中に含まれるたくさんの有機体や酵母を運び、汚染のリスクを持つ。野生酵母の最も共通する特徴は、そのアルコールへの耐性の低さと、汚染への耐性の低さとにある。
【0005】
しかし、多くの種類の野生酵母は、アルコール値が一旦9体積%に達すると働かなくなり、発酵が妨げられる。その結果、免疫系が低く、残留した望まれない糖分を大量に含み、さらに他の問題を持つ、一貫性の無いワインが出来上がる。野生酵母がコロニーを形成するのに必要な時間は、より速い発達を持つ他の有機体による汚染、または酸化にマストがさらされる時間であり、この時間は、野生酵母を発酵に用いたときには、さらなる困難にぶつかる。加えて、発酵が一旦開始すると、発酵は、満足のいく結果が得られる保証の無い時間のかかる遅いプロセスである。野生酵母によってワインに取り込まれる芳香やエステルは、予期できないものであることもまた、問題である。しかし、選ばれた酵母または民間試験場の酵母によれば、ワインメーカーのテイストに合った香りや芳香を得ることができる。
【0006】
発酵を始めるのに長い時間を要するので、ブドウの皮と接する時間が長くなり、より多くのコク、特徴や色の深さ、およびより果実味のある香りをもたらすことができる(つまり、工業的なワインよりもバリエーションが非常に多い)、ということが、野生酵母を採用することに関する利点である。野生酵母によってもたらされた予期できない多くの芳香およびエステルが、興味深く上品な性質をワインにもたらし、複雑な風味と、良いブーケと、非常に良いアルコールとを持つワインとなることが確認されている。
【0007】
ワインの等級に影響を与える方法は、灌漑を通じてのものである。しかし、ワインのアルコール度数に関する灌漑の影響は、希釈の影響に起因して糖分の濃度の低下として跳ね返ってくる。灌漑栽培のブドウの木と無灌漑栽培のブドウの木とを比較した場合、生産量は増加するが、灌漑栽培のブドウの木から得られたワインでは、フェノール化合物および顔料の強度の低下が観察される。灌漑栽培のブドウの木から得られたブドウのマストでは、リンゴ酸が増加している。水分の働きは、成熟の最後の段階で、実の中の水分による希釈化のせいで、成分の濃度の低下に起因して最終的なワインの組成と品質とに悪影響を及ぼす。
【0008】
公知の技術の中で、ワインの品質に影響を与える深さという要因について、調査を行っている研究はほとんど無い。なぜならば、野生酵母による糖分の発酵性の解糖に影響を与える要因は、それらの相互関係や、発酵プロセスに介在するパラメーターの性質などに起因して、複雑であるからである。
【0009】
仏国特許公開第2,844,275号明細書(FR2,844,275)の文書の目的は、野生酵母を使った自然のワインの発酵手順に関するものであり、
複数の木の樽をいっぱいに満たすために、振動運動を用いて、重力を通じて複数の樽へブドウを移すステップと、
これらの樽の中で、周期的な振動などでブドウの発酵を制御するステップと、
さらに、マロラクティックワイン発酵を行ない、同じ発酵樽の中でこのワインを保存するステップとによって特徴付けられる。
【0010】
この技術は、入れ替えのためにポンプやタンクを採用しておらず、樽のみを採用している。
【0011】
国際公開第2004/029,193号パンフレット(WO2004,029,193)は、たとえばリパーゼ、フィターゼ、ホスホリパーゼ、およびクチナーゼなどのエステラーゼ酵素とともに少なくとも用いられる発酵の微生物または発酵手段との接触を含む発酵ステージを備えた、発酵生成物の生成方法を示している。
【0012】
しかし、公知技術では、野生酵母株を得て全ての糖分の発酵を行うことに注目したブドウ園培養に関しては、言及されていない。
【0013】
全ての糖分の発酵を行う野生酵母を得て、ワイン汚染を改善することを保証するための方法は、間違いなく実用的に興味深いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許公開第2,844,275号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/029,193号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明の目的
発明の第1の目的は、深く強い根の発育により、気象および/または気候の荒れに対する耐性を持つブドウ園培養方法に関連する。
【0016】
発明の第2の目的は、土壌を思い起こさせ、感覚器官を刺激する性質を有する野生ブドウ酵母を用いた完全な発酵方法、および高いアルコール度数のワインを得る方法の発展に関連する。
【0017】
発明の第3の目的は、サッカロース溶液、商業用砂糖、サトウキビの糖蜜、ビートの糖蜜、スターチ加水分解から得られた糖分の発酵、および植物から得られた糖分の発酵からの、低濃度および高濃度の糖分を発酵させることのできる野生ぶどう酵母を入手および使用する方法の発展に関連する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の説明
本発明は、深く強い根の発育を通じて、気象および/または気候の荒れに対する耐性を持つブドウ園培養方法に関する。この培養方法を通じて、野生酵母はワイン発酵プロセスを発展させる。糖分からアルコールへの完全な変化をもたらす完全な発酵方法によって、ブドウジュース中のこれらの野生酵母は発達して増加し、高いアルコール度数が達成され、これは、今まで行われてきた従来の発酵を通じて得られたものよりもあらゆる面で優れている。
【0019】
自然の培養方法の本質的は、完全に自然のワインを得ることにあり、自分自身で、かつ自らの酵母を通じてブドウの木が発育し、果実を作りだすようなブドウの木を選択することから始まる。人間の介在する部分は土壌を準備することに集中する。どのようなものであれ肥料を追加せずに、ハーブを有機産出物として「その場で」土壌に埋めるために、そのハーブを育てると、植物は自然な方法で強くなり、自分自身でその土壌に適合する。この手順に続いて、収穫を遅らせることができるかの確認が年月をかけて行われる。したがって、より糖分の割合の多いブドウを得ることができ、1月および2月であっても収集される。近年、収穫を先送りすることが可能となってきているが、品質および生産量の増加に関する結果は同じである。
【0020】
ブドウの木を選択する瞬間からこれらの菌株から酵母が得られるまでの間にこの方法は開始し、それらのケースの中で遺伝子学的にさらに取り扱われ、より速く発達し、発酵プロセスの中で支配的になる。他の酵母が現れるにもかかわらず、それに打ち勝って品質と強さを発展させる。さらに、糖分の全体発酵が起こり、特徴およびとても高いアルコールを持ったワインが得られる。果実だけで無く、ブドウの木が育った土壌や環境をも思い起こさせるような、長寿性、芳香、および風味がワインに与えられる。野生または自生した酵母を通じては高いアルコール度数の発酵を行うことができないという実際の問題を解決することができる。
【0021】
自然の培養方法の必須の特徴的なステージは、
接ぎ木のない自生した自然のブドウの木の種を選び、
土壌自身の有機物から得られた堆肥を前記ブドウの木に与え、
遅れてブドウを収集し、
土壌自身の栄養以外の栄養を与えない、というものである。
【0022】
野生ブドウ酵母を用いた完全な発酵方法は、土壌を思い起こさせ、感覚器官を刺激する性質を有する。そしてより重要なことに、野生ブドウ酵母は、ブドウに含まれる全ての糖分を発酵させる。完全な発酵方法は、追加されるどのような酵母でも起こるわけでは無く、ブドウ自身の野生酵母のみを通じて起こるものである。すなわち、発酵は、自然の培養方法によって成長したブドウから得られた酵母によってなされる。土壌を強く思い起こさせる性質を有するブドウ自体の野生の酵母は、高いアルコールの割合であっても発酵することができる。ワインセラーでは、ブドウによって生み出された野生酵母が時間経過とともに進化する証拠があり、この進化とは、風味、芳香、およびブーケの増加および標準化が起こることである。アルコールは、性質が標準化された2004年のものまでかなり高かったのだが、それ以降は普通のものに近いワインが産出された。
【0023】
さらに、野生ブドウ酵母を用いた完全な発酵によって、アルコール含有量が今までよりも高いブドウジュースが得られ、コニャックなどのアルコール飲料を直接得ることができる。最後に、本発明の方法は、サトウキビやビートのジュースのような生の材料の発酵を通じてバイオエタノールの工業的生産で現在得られるものと比較して、効率の良いエネルギーのレーティングで、バイオエタノールの工業的な製品の条件を作り出す。
【0024】
完全な発酵方法の必須の特徴的なステージは、
野生のブドウのジュース樽を、プレスされたブドウで形成し、
5000リットル未満の容量の大樽で、前記体積の20〜25%を越える量で発酵を行ない、
得られた野生の自生した酵母を繁殖させ、3.5〜6%の体積のアルコールを得て、
7〜15日おきに継ぎ足しを行ない、
同酵母を用いて段階的な発酵を行ない、一連のステージでの発酵を行ない、それぞれのステージでアルコールの割合を増加させ、全ての糖分を発酵させ、最終的にアルコール度数が14〜21%の体積であるワインを得る、というものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】17.7%のエタノールを含む樽のおりと、18.2%のアルコールの含有量である第2の樽のおりであり、どちらもYPD(Yeast Extract Peptone Dextrose)培地中でプレート上にシードされたものである。
【図2】白色酵母1、低速成長酵母、および黄色酵母3のYPD培地中の、白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3のシードである。
【図3】タンクの底部のサンプルと、2008年のビンテージのブドウ発酵タンクのおりの別のサンプルとを示しており、低速成長酵母に属するフィラメント状の菌類が見られる。
【図4】2008年のビンテージに同様に対応し、YPD培地中の、タンクの底部のサンプルと、ブドウ発酵タンクのおりの別のサンプルとを示しており、白色酵母に属する長いフィラメント状の菌類および黄色酵母の短いフィラメント状の菌類とが見られる。
【図5】図5.1および5.2では、右手の列は、エタノールの増加に耐えた、ブドウ糖を含まないYPD培地である。左手の列は、1%ブドウ糖を含むYPD培地のプレートを示している。左手の写真の側部において、文字は、それぞれのプレートのエタノールの割合を示している。全てのプレートは3つの領域に分けられており、それぞれの領域には、白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3がそれぞれシードされている。
【図6】エタノール値が上昇した場合の、1%ブドウ糖のYPD培地中の3つの酵母菌株である白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3の動きを示す。同様に、全てのプレートは3つの領域に分けられており、それぞれの領域にはそれぞれの酵母がシードされている。
【図7】分離された白色酵母のシードの微視的観点の形態を示す。
【図8】成長の進行後における、分離された白色酵母のシードの微視的観点の形態を示す。
【図9】分離された低速成長酵母のシードの微視的観点の形態である。
【図10】図4のプレートと同じものであり、このプレートからは、マストが分析される予定の発酵中に、菌類の大多数のシリンダー形のフィラメント状の要素の特徴である、菌糸が得られた。
【図11】頭部を含む菌糸全体の1つを示す。
【図12】図11の菌糸の頭部の拡大図を示しており、菌糸が小さな細胞でできていることが観察される。
【図13】図12の小さな細胞が観察される拡大図である。
【図14】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、60%商業的砂糖(サッカロース)の培地中での発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図15】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、70%商業的砂糖(サッカロース)の培地中での発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図16】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、12.2%のサッカロース含有量のビートの糖蜜の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図17】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、40%のサッカロース含有量の純粋なサトウキビの糖蜜の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図18】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、12.2%のサッカロース含有量のビートの糖蜜の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図19】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、18.4%のサッカロース含有量のビートの糖蜜の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図20】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、42.7%のサッカロース含有量のビートの糖蜜の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図21】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、20%のスターチ含有量のスターチから得た糖分の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図22】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、40%のスターチ含有量のスターチから得た糖分の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図23】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、植物から得た糖分の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図24】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、植物から得た糖分の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好ましい実施例
実施例1 耐性のあるブドウ園培養法
a)培養条件
1989年から研究が開始され、ボーバル、クルジデラ、ローヤル、およびターダナ(Bobal, Crujidera, Royal and Tardana)の自生したブドウの木が選ばれた。開始当初農業は完全に自然の方法で行われており、ブドウの木が植えられた土壌から得られたハーブで合成された堆肥を除いては、化学肥料や有機肥料は全く採用されていなかった。耐性のあるブドウ園培養法という先の目的は、発明の第1の目的に一致し、自給自足でき、土壌自身の栄養物に依存し、それによって深く強い根を発育させる、それ自身で耐性のあるブドウの木を得ることにある。したがって、ブドウは、それらが育った土壌を思い起こさせる風味と芳香とを持つ。その地域の降水率は、典型的な大陸生乾燥気候(300〜500mmの降雨)であり、500l/m2未満であったが、無灌漑であった。これもまた、培養のタイプのための発明の第1の目的に一致し、さらにブドウの皮に存在する酵母のこの気候条件への適用を可能にする。
b)収集年表およびブドウの特徴
1990年:ブドウは遅れて収集された。なぜなら、栽培方法に起因して、ぶどうは完全に木にとどまっていたからである。これらのブドウの木は土地の全域にわたって拡大し、農園は南向きであり、微気候の中に位置していた。それらの両側に2本の小さな木があったからである。
【0027】
1996年〜1998年:6、7年後、ブドウの木は異なる風味および芳香のブドウの実をつけ始め、毎年産出量が良くなった。遅れて収穫されたブドウでワインが作られ、これは発明の第2の目的に一致する。このタイプの遅れた栽培によって、マスト中に現れる野生酵母に依存する、全くの自然な方法で、14度〜16度の高いアルコール度数が得られる。このマストは、野生酵母はそのような高アルコールの含有量の培地中で生き延びて発達することは難しいという、一般的な意見を上回るものである。1998年まで、野生酵母はアルコール値がそれより高い場合には順応しなかったものの、芳香を変えた。酵母は生物に対して非常に敏感であることが知られており、高いアルコール値にも徐々に順応するものと思われる。
【0028】
2002年:発明の第1の目的に従って、霧の時期であり、秋の降雨の後の遅い収穫で、第1の商業用の収穫物が収集された。発明に従って、9月に雨が降るとブドウの実は大きくなるが、それにもかかわらず、秋の雨は、ブドウの実が大きくなるのを妨げるブドウの皮を厚くする。したがって、野生酵母の完全な発酵方法であって、前記酵母は革新的な糖発酵プロセスの中にさらに介在する発酵法、という発明の第2の目的がここで現れる。
実施例2 野生酵母の完全な発酵法
発明の第2の目的に従って、ワインは、
5000リットル未満の大樽で、前記体積の20〜25%を越える量、またはそれと等価な比例的な関係で、プレスされたブドウの入った野生のブドウの樽を構成し、ブドウの木の野生または自然の酵母である酵母を繁殖させ、
アルコールの体積が3.5%〜6%に達する15日〜20日間、発酵が継続され、
この野生のブドウの樽から、7〜15日おきにコンテナの体積の15%〜20%が追加され、段階的な発酵が行われ、この方法で酸素と栄養物とが酵母に提供され、全ての糖分が発酵するまでアルコール度数が上昇され
最終的なアルコール度数は16体積%〜19体積%の間になる、という方法で得られる。
2.1 2002年からの生産物:2002年および2003年には、15.5度のアルコール分を持つジュースが生産され、2004年には、15.5%〜18.98%の体積のアルコール濃度を得た。
【0029】
この方法で、こくがありとても良いアルコールを持つワインが得られる。したがって、このワインは、時間による品質と、環境と土壌とを思い起こさせるとても良い風味を持つ。前記芳香は、由来の果物を思い起こさせ、ブドウの木の長寿(70年以上の古いブドウ園)に起因して、特徴的なブーケおよび個性が得られる。より高い品質を持った発酵したジュースが得られる。
2.2 自生した野生酵母の特徴
自生した野生酵母を得る方法という、発明の第3の目的に従って、発明の第2の目的に一致する発酵を起こす酵母は、研究室での研究の対象であり、生産されたワインの代表的なサンプルが抽出された。
【0030】
サンプル:集められたサンプルは、2004年のビンテージに属するものであり、
アルコールの体積で17%の割合のエタノールを含む樽のおりのサンプルであって、以降17.7%と記すものと、
アルコール内容物がアルコールの体積で18.2%であった他の樽のおりのサンプルであって、以降18.2%と記すものとであった。
【0031】
プレート上のサンプルの調査:
1−サンプルはYPD培地中を含むプレート上にシードされた。図1は、得られた結果の例を示しており、異なる3つのタイプのコロニーが観察された。
【0032】
2−酵母の3つのタイプのサンプルが採取され、それらがより大きく成長し、より区別されるように、YPD培地中の新たなプレート上にシードされた。図2参照。矢印は、この図2でのそれぞれの酵母を指している。したがって、白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3に区別される。
【0033】
3−酵母が完全に明確になり、区別されるとともに、酵母の成長能力が決定された。それぞれのタイプの酵母が同量ずつ採取され、新たなYPDプレート上にシードされた。いわゆる低速成長酵母と呼ばれる酵母が、実際他の2つの酵母よりもゆっくり成長した。
【0034】
4−樽からでは無く、2008年のビンテージであり、かつ発酵タンクから新たなサンプルが採取され、
タンクの底部の液体からのサンプルが採取され、
発酵タンク中の別のサンプルが採取された。
【0035】
2つのサンプルは2つのプレート上のYPD培地中にシードされた。図3で示され、図4では矢印でより明確に見えるように、フィラメント状の菌類の発生が観察された。低速成長酵母2から、おそらくは、発酵プロセスは、フィラメント状の菌類の形で見られ、これらの菌類は、樽の中で得られた酵母の形へ発展するのであろう。プレートの中にはさらに、たくさんの白色酵母1と、より小量の黄色酵母3とが存在していた。
2.3 異なるエタロール濃度での分離された酵母のテスト
a.3つの酵母からのグリセリン酸塩のシーディング。異なるエタノールおよびブドウ糖濃度での酵母の成長。
【0036】
3つの酵母のそれぞれのグリセリン酸塩が外部に運び出され、異なるエタノール値の培地中にシードされ、それらの反転能力が調べられた。2種類の培地が準備され、1つはブドウ糖(1%)を含むものであり、もう一つはブドウ糖を含まないものだった。エタノール濃度の上昇によってYPD培地が過度に流動化するために、エタノールを含むYPD培地の準備に失敗した後で、適切な手順が実行された。エタノールの量に応じて寒天の量を増やすことによって凝固された培地がさらに加えられた。酵母はこれらのプレート上にシードされ、全てのプレートに同じ量の酵母が注意深くシードされ、以下の結果が得られた。図5.1および図5.2参照。
【0037】
1−白色酵母は、全てのエタノール濃度で適切に成長し、ブドウ糖(1%)を含む培地でもブドウ糖を含まない培地でも多量に成長した。この酵母は、ペプトンおよび酵母抽出物と同様に、エタノールの炭素の供給源として使用するできるものであるからである。これらは全て、YPD培地の成分である。
【0038】
2−黄色酵母は、培地がブドウ糖を含むか否かによって異なる形態を示す。ブドウ糖の培地中では、この酵母は大きなコロニーに成長する一方で、ブドウ糖の無い培地中では、この酵母は小さいコロニーにしか成長しない。しかしこのコロニーの数はブドウ糖の培地中の場合の数よりもずっと多い。どちらの場合にも、エタノールの割合を増加すると、酵母の数が減少する。
【0039】
3−低速成長酵母は、黄色酵母と同様に、培地がブドウ糖を含むか否かによって異なる方法で成長する。この場合、低速成長酵母の挙動は、黄色酵母の挙動とは反対である。したがって、ブドウ糖を含まない培地中のコロニーは、ブドウ糖を含む培地中のコロニーよりも大きいサイズを示し、コロニー数は少なくなる。異なるエタノール値での成長については、高いエタノール値では酵母の成長は困難である。
b.より高いエタノール濃度での酵母の成長
さらなるテストでは、エタノール濃度が増加され、酵母のそれぞれのタイプが耐えうるエタノール濃度の限界を決定した。このテストでは、加えるエタノールの量が比較的高く、培地が凝固に問題を有しているので、問題が生じた。そこで、培地中の寒天の濃度を2%〜3%に増加することを決めた。培地中に採用されたブドウ糖の量は1%とされた。
【0040】
次の結果が得られた。
【0041】
白色酵母は、全てのエタノール濃度で大きく成長した。濃度による違いは酵母の成長率であった。高い濃度であれば成長率は低くなり、したがって、酵母が成長するのにより日数がかかった。しかし、観察されたように、成長した酵母の量は全てのプレートでとても類似していた。
【0042】
黄色酵母は、全てのプレートで成長した。しかし、その成長は小さく、いくつかのプレートでは酵母が成長しているのか否かを観察するのがとても困難であった。ゆえに、25%および40%のエタノール体積のプレートではより大きな成長が観察された。
【0043】
低速成長酵母は、25%の体積の濃度ではより多くのコロニーが成長し、それより高いエタノール濃度では、どんな成長も実験しなかった。
【0044】
ゆえに、結論として、準備の方法において、低速成長酵母は25%体積を超える条件のエタノール濃度に対して耐性が無く、一方で白色酵母は非常に高いエタノールの濃度に対して耐性を有する。黄色酵母に関しては、全てのエタノール濃度において、成長が非常に困難であり、非常に少数しか成長しなかった。
c.ずっと高いエタノール値での酵母テスト
これらのプレートでテストされたエタノール値は、40%、45%、50%、および60%の体積であった。得られた結果(図6参照)は以下の通りであった。
【0045】
白色酵母は、全てのプレートで非常大きく成長するが、60%のエタノール体積では、著しい酵母数の減少があり、これはおそらく、このレベルではエタノールの毒性が作用するためであろう。
【0046】
低速成長酵母は、いずれのプレートでも成長しない。
【0047】
黄色酵母は、いくつかのプレートで成長のサインを示すが、これは、ハンドルによってシードされ、シード線に残った多量の酵母に起因する残余成長であると思われる。
d.異なる酵母のタイプの形態
異なる酵母のタイプが顕微鏡で観察された。
【0048】
図7および8は、白色酵母1に対応する。図8は多数の繁殖に関与する細胞を示している。
【0049】
図9は、低速成長酵母2に対応する像である。
【0050】
図10は2008年のビンテージの発酵タンクから収集された発酵中のマストに対応する像であり、菌糸が認識される。
【0051】
図11は、図10の菌糸全体に対応する像であり、前記菌糸の頭部が完全に観察される。
【0052】
図12は、図11の菌糸の頭部の拡大に対応する像であり、菌糸は小さな細胞によって形成されているのが観察される。
【0053】
図13は、図12の菌糸を形成する小さな細胞に対応する像である。これらの細胞のサイズは、低速成長酵母2で観察された細胞のサイズよりも大きく、これらの細胞の細胞膜の厚みは、低速成長酵母2で観察された細胞膜の厚みより大きいが、これらの細胞は、低速成長酵母2で観察された細胞に似ている。図9参照。
実施例3 サッカロース(商業用砂糖)発酵における混合された細胞の能力
商業用砂糖の重量/体積濃度が異なる培養培地がフラスコ中に準備される。培地の成分は以下の通りである。
【0054】
1カリウムリン酸塩0.5%
硫酸アンモニウム0.2%
硫酸マグネシウム七水和物0.004%
酵母抽出物0.1%
水
糖分の濃度は、1、2、10、15、20、25、30、40、および50%であり、全て重量/体積パーセントである。
【0055】
白色酵母1、黄色酵母3、低速成長酵母2の菌株の準備は、異なる培地に植菌される。
【0056】
酵母は、液体培地YPD(5ml)中にシードされ、異なる菌株のコロニーがYPD培地のプレート上で成長し、それぞれの菌株は別々に、240rpmおよび28℃で24時間撹拌される。この時間が一旦経過し、全ての菌株が成長すると、それらのうち20μlが、それぞれのチューブ中の対応する培地の5mlとともにテストチューブ中にセットされ、240rpmで24時間撹拌される。
【0057】
この時間が一旦経過すると、それぞれの培地は次の成長を示す。
【表1】
このテストでは、吸光度が測定され、培養培地中の細胞の成長が評価される。吸光度の測定は、培養培地の所定の体積中の酵母細胞の量に直接関連する。分光光度計で計測される、ランプからの発光光の強度と、サンプルを一旦横切った後で検出器に到達する光の強度との間の違い、つまり細胞によって吸収される光の量、が多ければ、サンプル中に存在する細胞の数が大きくなる。
【0058】
これらの成長値は、これらの酵母が高い糖度に対して大きな耐性を有しているという考えをもたらす。
【0059】
テストチューブの内容物は、対応する濃度を有する培養培地の入ったフラスコに移され、全体の体積が40mlとされた。これは240rpmで4時間撹拌され、植菌された細胞は繁殖した。この時間が一旦経過すると、撹拌が停止され、培養物が嫌気性の条件で31℃で放置された。次にゆっくりした撹拌(22rpm)が行われ、細胞が培養物全体に十分に広がった。この時、発酵が開始した。糖質の濃度は、フェノール−硫酸デュボワ比色分析法(Phenol−Sulphuric Dubois Colorimetric Method)を用いて次の週に決定され、以下の割合が得られた。
【表2】
ゆえに、糖分の含有量の減少が全てのタンクで観察され、発酵がテストした全ての濃度で発酵が起こっていることが示される。
【0060】
これらのケースで見られたエタノールの量は、理論上は以下のように記述される。たとえば、最初の糖分の濃度が20%であり、最終的に9.5%の糖分の濃度が得られたなら、これは、最初のジュース100ml中で10.5gの糖分が消費されたことを意味する。
【0061】
アルコール発酵を記述した反応は次の通りである。
【数1】
化学量論的な関係は、ブドウ糖のそれぞれのモル量から2モル量のエタノールが得られることを表している。
【0062】
100mlのジュース→10.5グラムのブドウ糖
10.5グラムのブドウ糖→0.058モルのブドウ糖(MPブドウ糖=180.16グラム/モル)
0.058モルのブドウ糖→0.116モルのエタノール(化学量論 1:2)
0.116モルのエタノール→5.370グラムのエタノール(MPエタノール=46.07グラム/モル)
5.370グラムのエタノール→6.806mlのエタノール(エタノール密度=0.789グラム/ml)
要旨:100mlのジュース→6.806mlのエタノール。実際の産出量は、理論的な産出量の80%であることを考慮して、6.806×0.8=5.445mlのエタノール。つまり、最初の糖分の濃度が20%である例では、最終的に約5.4%のアルコール濃度が得られる。
【0063】
これらの酵母菌株は、50%の糖分の濃度まで容易に持ちこたえると思われるので、次のステップとして、糖分の濃度が増加された。テストは、60および70%(重量/体積)の糖分の濃度で行われた。図14および図15を参照して、発酵による二酸化炭素の泡によって生じた発泡体の形成が観察された。これらの培地は、28℃および240rpmで72時間撹拌された。高濃度の糖分中を含むこれらの培地中で、菌株が問題なく成長しているのを確認するために、これらの2つの培養物の光学的強度が測定され、以下の結果が得られた。
【表3】
70%の糖分の濃度を持つ培地中であっても菌株が成長することが確認された。このジュースの発酵の最後おいて、得られた理論的なアルコール度数は45.37度であった。このデータの計算アルゴリズムをさらに示す。
【0064】
アルコール発酵を表す反応は以下の通りである。
【数2】
化学量論的な(Estechiometric)関係は、ブドウ糖のそれぞれのモル量から2モル量のエタノールが得られることを表している。
【0065】
100mlのジュース→70グラムのブドウ糖
70グラムのブドウ糖→0.338モルのブドウ糖(MPブドウ糖=180.16グラム/モル)
0.338モルのブドウ糖→0.777モルのエタノール(化学量論 1:2)
0.777モルのエタノール→35.8グラムのエタノール(MPエタノール=46.07グラム/モル)
35.8グラムのエタノール→45.37mlのエタノール(エタノール密度=0.789グラム/ml)
要旨:100mlのジュース→45.37mlのエタノール。実際の産出量は、理論的な産出量の80%であることを考慮して、45.37×0.8=36.30mlのエタノール、または36.35volの濃度。
実施例4 糖蜜発酵における混合された菌株の能力
(サトウキビから得られた)異なる溶液
サトウキビの糖蜜が、培養培地のベースとして用いられた。糖蜜から異なる希釈物が作られ、異なる糖分のレベルでの菌株の挙動がテストされた。糖蜜は当初、78.9ブリックスを有し、49.9%のサッカロースの含有量を有していた。
【0066】
以下の表は、準備された培地を示している。
【表4】
菌株の植菌の手順は以下の通りである。
【0067】
白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3のそれぞれの菌株の1つのコロニーが、YPD培地中にシードされ、1mlの水とともに再懸濁される。それぞれの準備された培地のアリコート5mlがテストチューブ内に採取され、菌株の混合物50μlがそれぞれのチューブ内に植菌される。これが240rpmおよび28℃で撹拌される。66時間で菌株は次の成長を見せる。
【表5】
それぞれのサンプルのOD600の値は、他の者とは独立しており、これが、酵母が培地へどのように順応しているかの証拠となる。
【0068】
次のステップでは、これらのチューブの内容物の1000分の1の希釈物のアリコートを、それぞれの対応するフラスコへ移す。酵母がフラスコへ一旦植菌されると、240rpmおよび28℃で撹拌される。16時間でそれらは以下の成長を見せた。
【表6】
16時間続けてから、撹拌が遅くされ、発酵を開始させるために酸素の供給が減らされた。図16および17は、発酵の生産物として、放出された二酸化炭素の存在によって生じた発泡体の形成を示す。図16は、サッカロース濃度が23%であるフラスコに対応する。図17は、サッカロース濃度が40%であるフラスコに対応する。糖蜜は非常に粘性のある液体であるので、純粋な糖蜜であるNo.6のケースで見られるように、細胞は糖蜜内に非常に広がりにくい。糖蜜を水で希釈しないと細胞成長が実際には不可能である理由がこれである。したがって、40%のサッカロース中で菌株は容易に成長する。このジュースの発酵の最後に、得られる理論的なアルコール度数は25.93度であり、計算によれば、20.7%の体積の等価物を生じる。
【0069】
ビートの糖蜜を用いて別の実験が行われた。これらの糖蜜は76.8ブリックス濃度を有していた。糖蜜のサッカロース含有量は47%であった。培地の準備のために、以下の糖蜜の希釈物が準備された。
【表7】
調査されたこれらの培地では、白色酵母1は、低速成長酵母2、および黄色酵母3が植菌され、240rpmおよび28℃で撹拌された。1週間の撹拌の後、観察された成長は以下の通りであった。
【表8】
この表では、30.5%のサッカロースから繁殖に対してより強い耐性を示しており、吸光度の減少が現れている。しかし、42.7%のサッカロースでは、発泡体の形成が存続しており、このサッカロースはアルコール発酵を行うのに十分な能力を有している。
【0070】
これは、図18、19、および20から明らかである。図18は、サッカロース濃度が42.7%である糖蜜を含むフラスコを示しており、図19は、サッカロース濃度が18.4%である糖蜜を含むフラスコを示しており、図20は、サッカロース濃度が12.2%である糖蜜を含むフラスコを示している。図18を参照して、得られた結果は、ジュースは42.7%までの含有量の糖分で発酵することができ、これは、27.68%、28%vol/volエタノール(上に示した理論的な計算方法を参照)と推測され、本当に顕著なものである。指摘したように、糖蜜は非常に粘性のある液体であるので、細胞は糖蜜内に非常に広がりにくい。このため、糖蜜を水で希釈しないと細胞成長が実際には不可能である。
実施例5 スターチ加水分解から得られた糖分の発酵における混合された細胞の能力
スターチは、パンおよびビールの両方の生産のための処理の元であるため、本実施例は疑問無く実用的な関心の高いものである。スターチの水への異なる溶解が準備された。スターチは水への溶解性が無いので、実験は保留されたままであった。スターチを加水分解するために、硫酸で0.8までpHを下げ、84℃で6時間撹拌することにより得られた酸加水分解が用いられた。
【0071】
用いられたスターチ濃度は、10%、20%、40%、および50%であった。これらの全ては重量/体積の割合として参照されている。スターチが一旦加水分解されると、NaOHでpHが中和され、YPD培地中の飽和した培養物から菌株が植菌された。飽和した培養物は、細胞の数が一定のまま維持されたものであり、細胞が死ぬと細胞が生まれ、、同じ数となる。白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3の混合物であるそれぞれの菌株から170μlの培養物が植菌された。
【0072】
240rpmおよび28℃で48時間の撹拌を行うと、培地は以下の成長を示す。
【0073】
フラスコ内のスターチの最初の割合
【表9】
前の表に示されているように、OD600の値が低くなるほど、スターチ濃度の高いフラスコに対応し、酵母は生きることに大きな抵抗を示し、従って酵母の数は少なくなっている。48時間の撹拌を停止すると、酸素の供給が無くなり、発酵を終わらせることができる。図21は、20%のスターチのフラスコに対応し、図22は、40%のスターチのフラスコに対応する。
【0074】
小麦粉はスターチを含んでおり、酵母はスターチを発酵することができるので、発酵プロセスの中でこれらの3つの酵母菌株を用いれば、小麦の発酵製品へ要求されるものが何であろうと、より高品質のものを生み出すだろう。なぜならば、3つの酵母の協調的な動きは、本質的に発酵プロセスを増進させるからである。ブドウ糖の中でよく働く酵母(黄色酵母3)は、培地中で、他の2つの酵母を高い含有量でカバーすることができる(いずれにせよ黄色酵母3は、70%ブドウ糖の中で生き延びるに違いない)。低速成長酵母2は、酸素欠乏を好むベールを生成し、より良い発酵を生じさせるための全ての利点を供給する。最後に白色酵母1は、高いエタノール濃度の培地中でも成長することができ、プロセスの中で存在する他の酵母種を保護するだろう。結果的にどのプロセスにおいても、発酵性の糖分からの発酵が存在する場合には、これらの酵母は得られる生産物に対して高い品質を与えるであろう。
実施例6 糖分の発酵において、植物から得られた混合された菌株の能力
この実験を実行するために、野生植物の中で植物の例としてキダチタバコ種が選択された。たとえば根、緑色の茎、木質の茎、および葉のように、この植物の異なる部分からサンプルを採取した。植物の糖分を得るために、これらのサンプルは砕かれ、砕かれながら水と混合され、この植物の溶解性の糖分が水に溶解された。この点で、培地中に存在する糖分の(重量/体積の割合での)量は、以下の通りである。
【表10】
サンプルにはYPD培地中で飽和した培養物からの酵母が植菌された。白色酵母1、低速成長酵母、および黄色酵母3のそれぞれの菌株からの培養物35μlが植菌された。これらの培地は240rpmおよび28℃で48時間撹拌された。次に、サンプル中の細胞の成長および糖分の量が計測され、消費された糖分が決定された。
【表11】
データから、最初の糖分を酵母がどのように消費するのかが分かる。培地の撹拌を停止して酸化を妨げると、発酵を開始させることができる。前の図と同様に、図23および24でも、発酵の生産物として発泡体が見られる。
【0075】
糖分の濃度がより高い培地中でも実験が繰り返された。培地中の糖分の含有量を増加させるために、植物の酸加水分解が行われ、以下の糖分の濃度が得られた。
【表12】
YPD培地からの菌株が飽和したとき、それぞれの菌株から35μlの量で培養物が植菌された。これらの培地は240rpmおよび28℃で48時間撹拌が続けられ、この時間が一旦経過すると、細胞成長が計測された。
【表13】
ゆえに、糖分の含有量が増加しても、酵母には影響を与えないことが確認できる。
議論
前に示した観察された結果から、異なる要因を推測することができる。本願の3つの酵母菌株を、協調的な方法で、発酵プロセスにおいて同時に使用することにより、得られる発酵製品が何であろうと、より高品質のものを生み出すだろう。なぜならば、3つの酵母の協調的な動きは、発酵プロセスの中で、本質的に発酵プロセスを増進させるからである。これら3つの酵母は樽から得られるので、3つの酵母は、エタノール濃度が16〜19度に近づく発酵プロセスの最後にも存在しているはずである。ブドウ糖中でより機能する酵母(黄色酵母3)は、グルコースの含有量が高い培地中で他の2つをカバーすることができる(いずれにせよ、黄色酵母3が70%ブドウ糖の中で生き延びるにちがいないことは、得られた結果により確認される)。低速成長酵母2は、酸素欠乏を好むベールを生成し、より良い発酵を生じさせるための全ての利点を供給する。最後に白色酵母1は、高いエタノール濃度の培地中でも成長することができ、プロセスの中で存在する他の酵母種を保護するだろう。従ってこの方法で、つまり酵母のセットを守る方法で、得られるジュース、または得られるあらゆる製品を強化することができる。結果的にどのプロセスにおいても、発酵性の糖分からの発酵が存在する場合には、これらの酵母は得られる生産物に対して高い品質を与えるであろう。ゆえにこれは、異なる発酵源を通じて得られた生産物をなぜ高品質にすることができるかの理由を説明している(サッカロース、糖蜜、スターチ、マストなど)。
【0076】
一方、(本説明で分析された)それぞれの菌株自身の特徴とともに、この協調的な動きは、非常に高いサッカロースの濃度(または代用物)を持つ溶液が発酵でき、非常に高いエタノール濃度を持つ製品を得ることができる理由を説明している(大部分の酵母は13%を超えるエタノール濃度には耐えられない)。
【0077】
より大量の糖分が最初に存在する場合のこれら3つの酵母の協調的な動きによって、二次製品中で発酵がより起こりやすくなる。たとえば砂糖、スターチ、糖蜜、または野菜の残余部分などの、発酵源として動き、発酵工場の代表的な製品の広い範囲をカバーする多様な物質が分析された。微生物は、成長、繁殖、および発展するために、適切な条件を必要とする。これは常に可能なわけでは無い。本願で調査した3つの酵母は、スターチを含む単純な培地の中では発酵することができるので、発酵における炭素源の前段階の起源としてスターチを用いるこれらのプロセスにおいて、これらの酵素は役に立つであることが推測される。酵母は加水分解されたスターチを発酵させることができ、酵母はビールの生産にどうしても必須であることが知られている。
【0078】
前の記述から推測されることには、これらの酵母の混合物から次のものが得られるだろう。
【0079】
1−より高いエタノール濃度
2−より高い品質の生産物
3−高い糖分含有量に起因して、今までの非発酵物とされてきたものの発酵、および高エタノール製品の保証
肯定的な結果の概要
・高いアルコール度数の飲料の獲得。
【0080】
・より高いエネルギー効率でのアルコールの獲得。エタノール濃度が高くなることは、醸造に注ぎ込まれるエネルギー量が少なくなることを意味しているからである。
【0081】
・高品質のワイン、パン、およびビールの獲得。酵母はこれらのいずれの食材を得るためにも必要とされ、本願で述べられた酵母の全てを得ることで、高品質の製品が産出されるからである。
【0082】
・植物性または非植物性のバイオマスからのバイオエタノールの合成をより効率的に行うことができ、結果的に、現在のものよりも生産コストを低減することができる。これは、炭素源としての任意のバイオエタノール源からの従来のプロセスによってバイオエタノールを獲得することに関しての、大きな改善を意味している。炭素源が何であっても発酵の基質はブドウ糖であり、その後(主に)酵母種によってエタノールに変えられるからである。とりわけ、バイオエタノールを燃料として産出する工場、またはコスト効率の低い、低濃度のサッカロースまたはブドウ糖からアルコールを生産するアルコール生産工場などが、大容量を取り扱い、より高い利益を得る工場となるだろう。
【0083】
・得られた結果は、以下の事実を示している。本願で調査された酵母は、一般的に、糖分の発酵に基づくどのようなプロセスをも、エネルギー的および経済的に改善することができる。ゆえに、ここで述べられた酵母の使用は、破棄されるべきものではなく、植物または果物のような派生物や、既に抽出された砂糖またはそれらを抽出する砂糖から得られた任意のアルコール飲料の製品を事実上含んでいる。
本願で示された酵母の働き
・酵母は協調して働き、それぞれの酵母が顕著な役割を持つことを説明できる方法は他には無く、相乗効果の現象が存在している。
【0084】
・黄色酵母3は、浸透圧に対して大きな耐性を持ち、さらに成長、発展、繁殖、および発酵が可能である酵母を必要とするそれらのプロセスで使用可能である。浸透圧は、水性培地中に存在する水をめぐる闘いの問題である。非常に高いブドウ糖濃度は、強い圧力からの害を回避するために特に有効な防御システムを暗示しており、培地中のブドウ糖の量が増加すると、細胞中の外部へ向かう圧力である外圧が増加することを意味している。したがって、それは多くの物理的、科学的、および生物的な意味合いを持つ現象である。この現象は、世界中の多くの研究グループが、細胞中の損傷および反応について長年研究史続けているほど重要なものである。出芽酵母という酵母は、この目的のために特に使用されてきた。現在、黄色酵母3のような酵母を最終的に得るために、損傷および反応を含むいくつかの極めて重要なステップの増進に注目する多くの研究グループが存在する。これらの酵母は遺伝子組み換えが行われていることが悩ませる点であり、本願の酵母は自然の選択を通じて得られる酵母である。
【0085】
・白色酵母1は、非常に高いエタノール許容性を有している。プレート上の60%および液体中の70%v/vのエタノール濃度について話すことは、出芽酵母の菌株に関するどの科学文献や特許出願にも、現在までの技術では報告されていない数字について話すことを意味している。ブドウ糖耐性の場合のように、記述された値は、異なる規模で現在まで観察されたものを増加させる。これは、本願の菌株である白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3が、今まで知られた菌株よりも優れた規模の、科学的および技術的な問題を解決する潜在能力を有していることを意味している。白色酵母1は、それが潜在的に発展させる役割が強調されるべきである。エタノールは生きている有機体の大半にとって有毒であり、エタノールの有毒性は、生物の種や濃度に依存する。エタノールは、医療環境において、あらゆるタイプのものを消毒するために古来用いられてきた。一般的に、病原菌はエタノールにより影響を受けて死滅する。白色酵母1は、この範囲で応用があり、エタノール濃度が増加する中でどのように微生物が生き延びるのかを調査し、プロセスのキーとなるものを決定するために(特に出芽酵母のモデルとなる有機体として)用いられる可能性がある。白色酵母1は、そのタイプの溶液においてエタノールの濃度の増加に対して耐性の無い微生物を輸送する働きを持つ。白色酵母1の濃度の増加は、短時間の間ある微生物が生き延びることを可能にする微小な環境を作り出すだろう。糖分の濃度が増加する中での黄色酵母3についても同じことが言える。このタイプの戦略は、プロトプラスト中のDNAのエレクトロポレーションの技術を行う場合などに用いられ、たとえばサケ精子のようなエレクトロポレーションの対象物とは異なるDNAの濃度を増加させることによって、エキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼの働きが回避される(DNAが守られる)。
【0086】
・酵母は酸化力があり、同時に発酵性または代謝活動も同じタイプである。液体の表面では、酸化力のある酵母は膜状、ベール状、または泡状に成長することができ、この酵母を膜形成酵母と呼ぶ理由がここにある。低速成長酵母2は、特に、キーとなる発酵の状況によって生み出された変化への形態学的な柔軟性に敏感である。たとえば、YPD培地中プレート上での低速成長酵母2の成長が観察された場合(図3および4)、時間の経過とともに直ちに黒色になる現象が観察される。この酵母で早い変化が観察された場合(この酵母は、強烈な白色から深い黒色に急速に変化し、酵母は通常の状態では白色を有する)、その理由は、酵母が、通常経験しない因子と接触していることにあり、この因子はおそらく酸素である。この主張は、最も高い濃度の場合に、当初、酸素と接触している酵母の部分(YPD培地の表面)で黒色化がより顕著に観察されるという事実によってサポートされている。この仮説は、低速成長酵母2が菌糸体であり、球状でない時にこの現象が起きるという観察結果によって強化される。この議論は、発酵は、酸素の無い状態でのブドウ糖の部分的な燃焼プロセスであるという事実と整合する。したがって、酸素が少ない方がより効率的である。このように、低速成長酵母2は、よりよい条件で起こる発酵プロセスに貢献し、ベールによって酸素の存在から守られることを保証することが推測される。結果として、タイポロジーが何であれ、それを発酵プロセスと統合することによって、即座の商業的な使用が可能となり、よりよいプロセスで、より効率的で高い品質を得ることができる。たとえば膜を形成する糖、酸素有機酸、御世簿アルコールのように酸化力を有する糖分などであっても、一般的に、糖分は酵母にとって最も好ましいエネルギー源であり、糖分はワインの風味や「ブーケ」を作り出すのに貢献する。したがって、この酵母を商業的に使用することは、ワイン菌株、またはリキュールの生産、低アルコール度数の飲料、パンなどのような他の発酵プロセスに対して、ブーケを刻み込むことができるであろう。この酵母は、上述の、または酸素の存在が特に重要または必須であるあらゆる場合における、任意の工業的プロセスに使用することができ、たとえば、薬品や、酸素に敏感な物質の製造などにおいて、膜を形成する酵母を使用することができる。このグループは、酸化防止剤、すなわち、環境内の電気的アンバランスに敏感な物質として考えられる全ての物質を網羅することができ、この電気的アンバランスは、基礎的状態についての電荷の過多または欠乏によって特徴付けられる。
【0087】
・他ならぬこの酵母は、食品、または工業的な溶液のそのままの特性を失うことを回避する方法として、特定の溶液を酸化から守るために使用可能である。酸素への敏感さ(酸素によって生み出されるか否か)は、電子的なアンバランスを生じさせる化学物質、電子を捕獲する化学物質(たとえば酸素)、または電子を放出する化学物質(たとえばFe2+の場合)が存在することを意味している。酸化防止剤として知られたこの種の公知の物質は、電子的アンバランスのタンポンとして働くことが主な機能であるので、生体医療で興味を持たれている物質の大きなグループを含み、同時に、大半の生物にもたらす利益を含んでいる。たとえば、老化プロセスやガンなどの分野で酸化防止剤として興味を持たれている物質は、クエン酸、アスコルビン(ビタミンC)グルタチオン、レスベラトロルなどである。一般的にそれらの物質はpH指示薬であり、それらの物質が存在する環境における電子バランスが比較的小さく変化する前に、それらの物質の電子的配置が容易に変化したり、電子を容易に獲得または放出したりするものである。ベールを作り出すこの種の物質の製造、輸送、または貯蔵は、明らかに増加するだろう。その後、このベールは、簡単な遠心分離プロセスによって収集することができる。これは、生体医療や食物のセクターで大きな興味を持たれている例のためのものとなり得る。食物のセクターでは、近年、食料品に加えられた酸化防止剤の使用に興味を持たれている。工業的なセクターでは、酸素に非常備敏感な物質が生産される。現在、この技術の部分は、真空製造やパッキングなどの他の技術が採用されている、しかし、このケースでは、この種の口語を使用することによって、大きくコストを削減することができ、時には製品の品質を高めることができる。なぜならば、真空化の実現によって生産の瞬間に製品内に衝撃が加わるからである。
【0088】
発明は、その好ましい実施例とともに十分に説明された。クレームで定義された発明の範囲を超えない限り、発明の構成および使用される材料の修正が可能であることを付け加える。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
ワイン造りの際に、ブドウの絞り汁の中に存在する全ての糖分を完全に発酵させることが、長年望まれている。したがって、一般的には最大14体積%までであり、それより高すぎない高いアルコール度数によって、最終的な香りの良い構造がワインにもたらされる。
【背景技術】
【0002】
ブドウのマストの発酵は、実際上、野生酵母、植菌された酵母、または両方の手段を通じて達成されるだろう。発酵に関与する野生酵母は、「ブルーム」と呼ばれるブドウの皮に(一般的には、ブドウの皮を覆っている白い微粒子の層(ビニフェラ種I)として)天然に存在する。特定の培養された酵母菌株は、特定の果物のような芳香、高いアルコール度数、嗅覚にとって感じの良い質感、および低温や比較的低いpH値での発酵のような他の特徴を生み出す。
【0003】
大部分のワイン貯蔵室では、糖分をアルコールに変えるために、一般的に、選択された特定の酵母が用いられる。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces Cerevisiae)は、全アルコール発酵に薦められる最も良い酵母種である。
【0004】
野生または自生した酵母を通じた発酵は、未だ広まっていないが、主に数人のヨーロッパのワインメーカーによって行われており、彼らは野生酵母を使って伝統的に発酵を行っており、非常に良い結果を得ている。さらに、カリフォルニアのワインメーカーもまた、このおおらかな発酵を採用しつつあり、また好ましい結果を得ている。収穫の際、ブドウはその中に含まれるたくさんの有機体や酵母を運び、汚染のリスクを持つ。野生酵母の最も共通する特徴は、そのアルコールへの耐性の低さと、汚染への耐性の低さとにある。
【0005】
しかし、多くの種類の野生酵母は、アルコール値が一旦9体積%に達すると働かなくなり、発酵が妨げられる。その結果、免疫系が低く、残留した望まれない糖分を大量に含み、さらに他の問題を持つ、一貫性の無いワインが出来上がる。野生酵母がコロニーを形成するのに必要な時間は、より速い発達を持つ他の有機体による汚染、または酸化にマストがさらされる時間であり、この時間は、野生酵母を発酵に用いたときには、さらなる困難にぶつかる。加えて、発酵が一旦開始すると、発酵は、満足のいく結果が得られる保証の無い時間のかかる遅いプロセスである。野生酵母によってワインに取り込まれる芳香やエステルは、予期できないものであることもまた、問題である。しかし、選ばれた酵母または民間試験場の酵母によれば、ワインメーカーのテイストに合った香りや芳香を得ることができる。
【0006】
発酵を始めるのに長い時間を要するので、ブドウの皮と接する時間が長くなり、より多くのコク、特徴や色の深さ、およびより果実味のある香りをもたらすことができる(つまり、工業的なワインよりもバリエーションが非常に多い)、ということが、野生酵母を採用することに関する利点である。野生酵母によってもたらされた予期できない多くの芳香およびエステルが、興味深く上品な性質をワインにもたらし、複雑な風味と、良いブーケと、非常に良いアルコールとを持つワインとなることが確認されている。
【0007】
ワインの等級に影響を与える方法は、灌漑を通じてのものである。しかし、ワインのアルコール度数に関する灌漑の影響は、希釈の影響に起因して糖分の濃度の低下として跳ね返ってくる。灌漑栽培のブドウの木と無灌漑栽培のブドウの木とを比較した場合、生産量は増加するが、灌漑栽培のブドウの木から得られたワインでは、フェノール化合物および顔料の強度の低下が観察される。灌漑栽培のブドウの木から得られたブドウのマストでは、リンゴ酸が増加している。水分の働きは、成熟の最後の段階で、実の中の水分による希釈化のせいで、成分の濃度の低下に起因して最終的なワインの組成と品質とに悪影響を及ぼす。
【0008】
公知の技術の中で、ワインの品質に影響を与える深さという要因について、調査を行っている研究はほとんど無い。なぜならば、野生酵母による糖分の発酵性の解糖に影響を与える要因は、それらの相互関係や、発酵プロセスに介在するパラメーターの性質などに起因して、複雑であるからである。
【0009】
仏国特許公開第2,844,275号明細書(FR2,844,275)の文書の目的は、野生酵母を使った自然のワインの発酵手順に関するものであり、
複数の木の樽をいっぱいに満たすために、振動運動を用いて、重力を通じて複数の樽へブドウを移すステップと、
これらの樽の中で、周期的な振動などでブドウの発酵を制御するステップと、
さらに、マロラクティックワイン発酵を行ない、同じ発酵樽の中でこのワインを保存するステップとによって特徴付けられる。
【0010】
この技術は、入れ替えのためにポンプやタンクを採用しておらず、樽のみを採用している。
【0011】
国際公開第2004/029,193号パンフレット(WO2004,029,193)は、たとえばリパーゼ、フィターゼ、ホスホリパーゼ、およびクチナーゼなどのエステラーゼ酵素とともに少なくとも用いられる発酵の微生物または発酵手段との接触を含む発酵ステージを備えた、発酵生成物の生成方法を示している。
【0012】
しかし、公知技術では、野生酵母株を得て全ての糖分の発酵を行うことに注目したブドウ園培養に関しては、言及されていない。
【0013】
全ての糖分の発酵を行う野生酵母を得て、ワイン汚染を改善することを保証するための方法は、間違いなく実用的に興味深いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許公開第2,844,275号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/029,193号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明の目的
発明の第1の目的は、深く強い根の発育により、気象および/または気候の荒れに対する耐性を持つブドウ園培養方法に関連する。
【0016】
発明の第2の目的は、土壌を思い起こさせ、感覚器官を刺激する性質を有する野生ブドウ酵母を用いた完全な発酵方法、および高いアルコール度数のワインを得る方法の発展に関連する。
【0017】
発明の第3の目的は、サッカロース溶液、商業用砂糖、サトウキビの糖蜜、ビートの糖蜜、スターチ加水分解から得られた糖分の発酵、および植物から得られた糖分の発酵からの、低濃度および高濃度の糖分を発酵させることのできる野生ぶどう酵母を入手および使用する方法の発展に関連する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の説明
本発明は、深く強い根の発育を通じて、気象および/または気候の荒れに対する耐性を持つブドウ園培養方法に関する。この培養方法を通じて、野生酵母はワイン発酵プロセスを発展させる。糖分からアルコールへの完全な変化をもたらす完全な発酵方法によって、ブドウジュース中のこれらの野生酵母は発達して増加し、高いアルコール度数が達成され、これは、今まで行われてきた従来の発酵を通じて得られたものよりもあらゆる面で優れている。
【0019】
自然の培養方法の本質的は、完全に自然のワインを得ることにあり、自分自身で、かつ自らの酵母を通じてブドウの木が発育し、果実を作りだすようなブドウの木を選択することから始まる。人間の介在する部分は土壌を準備することに集中する。どのようなものであれ肥料を追加せずに、ハーブを有機産出物として「その場で」土壌に埋めるために、そのハーブを育てると、植物は自然な方法で強くなり、自分自身でその土壌に適合する。この手順に続いて、収穫を遅らせることができるかの確認が年月をかけて行われる。したがって、より糖分の割合の多いブドウを得ることができ、1月および2月であっても収集される。近年、収穫を先送りすることが可能となってきているが、品質および生産量の増加に関する結果は同じである。
【0020】
ブドウの木を選択する瞬間からこれらの菌株から酵母が得られるまでの間にこの方法は開始し、それらのケースの中で遺伝子学的にさらに取り扱われ、より速く発達し、発酵プロセスの中で支配的になる。他の酵母が現れるにもかかわらず、それに打ち勝って品質と強さを発展させる。さらに、糖分の全体発酵が起こり、特徴およびとても高いアルコールを持ったワインが得られる。果実だけで無く、ブドウの木が育った土壌や環境をも思い起こさせるような、長寿性、芳香、および風味がワインに与えられる。野生または自生した酵母を通じては高いアルコール度数の発酵を行うことができないという実際の問題を解決することができる。
【0021】
自然の培養方法の必須の特徴的なステージは、
接ぎ木のない自生した自然のブドウの木の種を選び、
土壌自身の有機物から得られた堆肥を前記ブドウの木に与え、
遅れてブドウを収集し、
土壌自身の栄養以外の栄養を与えない、というものである。
【0022】
野生ブドウ酵母を用いた完全な発酵方法は、土壌を思い起こさせ、感覚器官を刺激する性質を有する。そしてより重要なことに、野生ブドウ酵母は、ブドウに含まれる全ての糖分を発酵させる。完全な発酵方法は、追加されるどのような酵母でも起こるわけでは無く、ブドウ自身の野生酵母のみを通じて起こるものである。すなわち、発酵は、自然の培養方法によって成長したブドウから得られた酵母によってなされる。土壌を強く思い起こさせる性質を有するブドウ自体の野生の酵母は、高いアルコールの割合であっても発酵することができる。ワインセラーでは、ブドウによって生み出された野生酵母が時間経過とともに進化する証拠があり、この進化とは、風味、芳香、およびブーケの増加および標準化が起こることである。アルコールは、性質が標準化された2004年のものまでかなり高かったのだが、それ以降は普通のものに近いワインが産出された。
【0023】
さらに、野生ブドウ酵母を用いた完全な発酵によって、アルコール含有量が今までよりも高いブドウジュースが得られ、コニャックなどのアルコール飲料を直接得ることができる。最後に、本発明の方法は、サトウキビやビートのジュースのような生の材料の発酵を通じてバイオエタノールの工業的生産で現在得られるものと比較して、効率の良いエネルギーのレーティングで、バイオエタノールの工業的な製品の条件を作り出す。
【0024】
完全な発酵方法の必須の特徴的なステージは、
野生のブドウのジュース樽を、プレスされたブドウで形成し、
5000リットル未満の容量の大樽で、前記体積の20〜25%を越える量で発酵を行ない、
得られた野生の自生した酵母を繁殖させ、3.5〜6%の体積のアルコールを得て、
7〜15日おきに継ぎ足しを行ない、
同酵母を用いて段階的な発酵を行ない、一連のステージでの発酵を行ない、それぞれのステージでアルコールの割合を増加させ、全ての糖分を発酵させ、最終的にアルコール度数が14〜21%の体積であるワインを得る、というものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】17.7%のエタノールを含む樽のおりと、18.2%のアルコールの含有量である第2の樽のおりであり、どちらもYPD(Yeast Extract Peptone Dextrose)培地中でプレート上にシードされたものである。
【図2】白色酵母1、低速成長酵母、および黄色酵母3のYPD培地中の、白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3のシードである。
【図3】タンクの底部のサンプルと、2008年のビンテージのブドウ発酵タンクのおりの別のサンプルとを示しており、低速成長酵母に属するフィラメント状の菌類が見られる。
【図4】2008年のビンテージに同様に対応し、YPD培地中の、タンクの底部のサンプルと、ブドウ発酵タンクのおりの別のサンプルとを示しており、白色酵母に属する長いフィラメント状の菌類および黄色酵母の短いフィラメント状の菌類とが見られる。
【図5】図5.1および5.2では、右手の列は、エタノールの増加に耐えた、ブドウ糖を含まないYPD培地である。左手の列は、1%ブドウ糖を含むYPD培地のプレートを示している。左手の写真の側部において、文字は、それぞれのプレートのエタノールの割合を示している。全てのプレートは3つの領域に分けられており、それぞれの領域には、白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3がそれぞれシードされている。
【図6】エタノール値が上昇した場合の、1%ブドウ糖のYPD培地中の3つの酵母菌株である白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3の動きを示す。同様に、全てのプレートは3つの領域に分けられており、それぞれの領域にはそれぞれの酵母がシードされている。
【図7】分離された白色酵母のシードの微視的観点の形態を示す。
【図8】成長の進行後における、分離された白色酵母のシードの微視的観点の形態を示す。
【図9】分離された低速成長酵母のシードの微視的観点の形態である。
【図10】図4のプレートと同じものであり、このプレートからは、マストが分析される予定の発酵中に、菌類の大多数のシリンダー形のフィラメント状の要素の特徴である、菌糸が得られた。
【図11】頭部を含む菌糸全体の1つを示す。
【図12】図11の菌糸の頭部の拡大図を示しており、菌糸が小さな細胞でできていることが観察される。
【図13】図12の小さな細胞が観察される拡大図である。
【図14】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、60%商業的砂糖(サッカロース)の培地中での発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図15】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、70%商業的砂糖(サッカロース)の培地中での発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図16】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、12.2%のサッカロース含有量のビートの糖蜜の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図17】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、40%のサッカロース含有量の純粋なサトウキビの糖蜜の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図18】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、12.2%のサッカロース含有量のビートの糖蜜の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図19】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、18.4%のサッカロース含有量のビートの糖蜜の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図20】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、42.7%のサッカロース含有量のビートの糖蜜の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図21】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、20%のスターチ含有量のスターチから得た糖分の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図22】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、40%のスターチ含有量のスターチから得た糖分の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図23】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、植物から得た糖分の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【図24】泡立ったフラスコの写真であり、この発泡体は、植物から得た糖分の発酵中のサンプルからの二酸化炭素の放出によるものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好ましい実施例
実施例1 耐性のあるブドウ園培養法
a)培養条件
1989年から研究が開始され、ボーバル、クルジデラ、ローヤル、およびターダナ(Bobal, Crujidera, Royal and Tardana)の自生したブドウの木が選ばれた。開始当初農業は完全に自然の方法で行われており、ブドウの木が植えられた土壌から得られたハーブで合成された堆肥を除いては、化学肥料や有機肥料は全く採用されていなかった。耐性のあるブドウ園培養法という先の目的は、発明の第1の目的に一致し、自給自足でき、土壌自身の栄養物に依存し、それによって深く強い根を発育させる、それ自身で耐性のあるブドウの木を得ることにある。したがって、ブドウは、それらが育った土壌を思い起こさせる風味と芳香とを持つ。その地域の降水率は、典型的な大陸生乾燥気候(300〜500mmの降雨)であり、500l/m2未満であったが、無灌漑であった。これもまた、培養のタイプのための発明の第1の目的に一致し、さらにブドウの皮に存在する酵母のこの気候条件への適用を可能にする。
b)収集年表およびブドウの特徴
1990年:ブドウは遅れて収集された。なぜなら、栽培方法に起因して、ぶどうは完全に木にとどまっていたからである。これらのブドウの木は土地の全域にわたって拡大し、農園は南向きであり、微気候の中に位置していた。それらの両側に2本の小さな木があったからである。
【0027】
1996年〜1998年:6、7年後、ブドウの木は異なる風味および芳香のブドウの実をつけ始め、毎年産出量が良くなった。遅れて収穫されたブドウでワインが作られ、これは発明の第2の目的に一致する。このタイプの遅れた栽培によって、マスト中に現れる野生酵母に依存する、全くの自然な方法で、14度〜16度の高いアルコール度数が得られる。このマストは、野生酵母はそのような高アルコールの含有量の培地中で生き延びて発達することは難しいという、一般的な意見を上回るものである。1998年まで、野生酵母はアルコール値がそれより高い場合には順応しなかったものの、芳香を変えた。酵母は生物に対して非常に敏感であることが知られており、高いアルコール値にも徐々に順応するものと思われる。
【0028】
2002年:発明の第1の目的に従って、霧の時期であり、秋の降雨の後の遅い収穫で、第1の商業用の収穫物が収集された。発明に従って、9月に雨が降るとブドウの実は大きくなるが、それにもかかわらず、秋の雨は、ブドウの実が大きくなるのを妨げるブドウの皮を厚くする。したがって、野生酵母の完全な発酵方法であって、前記酵母は革新的な糖発酵プロセスの中にさらに介在する発酵法、という発明の第2の目的がここで現れる。
実施例2 野生酵母の完全な発酵法
発明の第2の目的に従って、ワインは、
5000リットル未満の大樽で、前記体積の20〜25%を越える量、またはそれと等価な比例的な関係で、プレスされたブドウの入った野生のブドウの樽を構成し、ブドウの木の野生または自然の酵母である酵母を繁殖させ、
アルコールの体積が3.5%〜6%に達する15日〜20日間、発酵が継続され、
この野生のブドウの樽から、7〜15日おきにコンテナの体積の15%〜20%が追加され、段階的な発酵が行われ、この方法で酸素と栄養物とが酵母に提供され、全ての糖分が発酵するまでアルコール度数が上昇され
最終的なアルコール度数は16体積%〜19体積%の間になる、という方法で得られる。
2.1 2002年からの生産物:2002年および2003年には、15.5度のアルコール分を持つジュースが生産され、2004年には、15.5%〜18.98%の体積のアルコール濃度を得た。
【0029】
この方法で、こくがありとても良いアルコールを持つワインが得られる。したがって、このワインは、時間による品質と、環境と土壌とを思い起こさせるとても良い風味を持つ。前記芳香は、由来の果物を思い起こさせ、ブドウの木の長寿(70年以上の古いブドウ園)に起因して、特徴的なブーケおよび個性が得られる。より高い品質を持った発酵したジュースが得られる。
2.2 自生した野生酵母の特徴
自生した野生酵母を得る方法という、発明の第3の目的に従って、発明の第2の目的に一致する発酵を起こす酵母は、研究室での研究の対象であり、生産されたワインの代表的なサンプルが抽出された。
【0030】
サンプル:集められたサンプルは、2004年のビンテージに属するものであり、
アルコールの体積で17%の割合のエタノールを含む樽のおりのサンプルであって、以降17.7%と記すものと、
アルコール内容物がアルコールの体積で18.2%であった他の樽のおりのサンプルであって、以降18.2%と記すものとであった。
【0031】
プレート上のサンプルの調査:
1−サンプルはYPD培地中を含むプレート上にシードされた。図1は、得られた結果の例を示しており、異なる3つのタイプのコロニーが観察された。
【0032】
2−酵母の3つのタイプのサンプルが採取され、それらがより大きく成長し、より区別されるように、YPD培地中の新たなプレート上にシードされた。図2参照。矢印は、この図2でのそれぞれの酵母を指している。したがって、白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3に区別される。
【0033】
3−酵母が完全に明確になり、区別されるとともに、酵母の成長能力が決定された。それぞれのタイプの酵母が同量ずつ採取され、新たなYPDプレート上にシードされた。いわゆる低速成長酵母と呼ばれる酵母が、実際他の2つの酵母よりもゆっくり成長した。
【0034】
4−樽からでは無く、2008年のビンテージであり、かつ発酵タンクから新たなサンプルが採取され、
タンクの底部の液体からのサンプルが採取され、
発酵タンク中の別のサンプルが採取された。
【0035】
2つのサンプルは2つのプレート上のYPD培地中にシードされた。図3で示され、図4では矢印でより明確に見えるように、フィラメント状の菌類の発生が観察された。低速成長酵母2から、おそらくは、発酵プロセスは、フィラメント状の菌類の形で見られ、これらの菌類は、樽の中で得られた酵母の形へ発展するのであろう。プレートの中にはさらに、たくさんの白色酵母1と、より小量の黄色酵母3とが存在していた。
2.3 異なるエタロール濃度での分離された酵母のテスト
a.3つの酵母からのグリセリン酸塩のシーディング。異なるエタノールおよびブドウ糖濃度での酵母の成長。
【0036】
3つの酵母のそれぞれのグリセリン酸塩が外部に運び出され、異なるエタノール値の培地中にシードされ、それらの反転能力が調べられた。2種類の培地が準備され、1つはブドウ糖(1%)を含むものであり、もう一つはブドウ糖を含まないものだった。エタノール濃度の上昇によってYPD培地が過度に流動化するために、エタノールを含むYPD培地の準備に失敗した後で、適切な手順が実行された。エタノールの量に応じて寒天の量を増やすことによって凝固された培地がさらに加えられた。酵母はこれらのプレート上にシードされ、全てのプレートに同じ量の酵母が注意深くシードされ、以下の結果が得られた。図5.1および図5.2参照。
【0037】
1−白色酵母は、全てのエタノール濃度で適切に成長し、ブドウ糖(1%)を含む培地でもブドウ糖を含まない培地でも多量に成長した。この酵母は、ペプトンおよび酵母抽出物と同様に、エタノールの炭素の供給源として使用するできるものであるからである。これらは全て、YPD培地の成分である。
【0038】
2−黄色酵母は、培地がブドウ糖を含むか否かによって異なる形態を示す。ブドウ糖の培地中では、この酵母は大きなコロニーに成長する一方で、ブドウ糖の無い培地中では、この酵母は小さいコロニーにしか成長しない。しかしこのコロニーの数はブドウ糖の培地中の場合の数よりもずっと多い。どちらの場合にも、エタノールの割合を増加すると、酵母の数が減少する。
【0039】
3−低速成長酵母は、黄色酵母と同様に、培地がブドウ糖を含むか否かによって異なる方法で成長する。この場合、低速成長酵母の挙動は、黄色酵母の挙動とは反対である。したがって、ブドウ糖を含まない培地中のコロニーは、ブドウ糖を含む培地中のコロニーよりも大きいサイズを示し、コロニー数は少なくなる。異なるエタノール値での成長については、高いエタノール値では酵母の成長は困難である。
b.より高いエタノール濃度での酵母の成長
さらなるテストでは、エタノール濃度が増加され、酵母のそれぞれのタイプが耐えうるエタノール濃度の限界を決定した。このテストでは、加えるエタノールの量が比較的高く、培地が凝固に問題を有しているので、問題が生じた。そこで、培地中の寒天の濃度を2%〜3%に増加することを決めた。培地中に採用されたブドウ糖の量は1%とされた。
【0040】
次の結果が得られた。
【0041】
白色酵母は、全てのエタノール濃度で大きく成長した。濃度による違いは酵母の成長率であった。高い濃度であれば成長率は低くなり、したがって、酵母が成長するのにより日数がかかった。しかし、観察されたように、成長した酵母の量は全てのプレートでとても類似していた。
【0042】
黄色酵母は、全てのプレートで成長した。しかし、その成長は小さく、いくつかのプレートでは酵母が成長しているのか否かを観察するのがとても困難であった。ゆえに、25%および40%のエタノール体積のプレートではより大きな成長が観察された。
【0043】
低速成長酵母は、25%の体積の濃度ではより多くのコロニーが成長し、それより高いエタノール濃度では、どんな成長も実験しなかった。
【0044】
ゆえに、結論として、準備の方法において、低速成長酵母は25%体積を超える条件のエタノール濃度に対して耐性が無く、一方で白色酵母は非常に高いエタノールの濃度に対して耐性を有する。黄色酵母に関しては、全てのエタノール濃度において、成長が非常に困難であり、非常に少数しか成長しなかった。
c.ずっと高いエタノール値での酵母テスト
これらのプレートでテストされたエタノール値は、40%、45%、50%、および60%の体積であった。得られた結果(図6参照)は以下の通りであった。
【0045】
白色酵母は、全てのプレートで非常大きく成長するが、60%のエタノール体積では、著しい酵母数の減少があり、これはおそらく、このレベルではエタノールの毒性が作用するためであろう。
【0046】
低速成長酵母は、いずれのプレートでも成長しない。
【0047】
黄色酵母は、いくつかのプレートで成長のサインを示すが、これは、ハンドルによってシードされ、シード線に残った多量の酵母に起因する残余成長であると思われる。
d.異なる酵母のタイプの形態
異なる酵母のタイプが顕微鏡で観察された。
【0048】
図7および8は、白色酵母1に対応する。図8は多数の繁殖に関与する細胞を示している。
【0049】
図9は、低速成長酵母2に対応する像である。
【0050】
図10は2008年のビンテージの発酵タンクから収集された発酵中のマストに対応する像であり、菌糸が認識される。
【0051】
図11は、図10の菌糸全体に対応する像であり、前記菌糸の頭部が完全に観察される。
【0052】
図12は、図11の菌糸の頭部の拡大に対応する像であり、菌糸は小さな細胞によって形成されているのが観察される。
【0053】
図13は、図12の菌糸を形成する小さな細胞に対応する像である。これらの細胞のサイズは、低速成長酵母2で観察された細胞のサイズよりも大きく、これらの細胞の細胞膜の厚みは、低速成長酵母2で観察された細胞膜の厚みより大きいが、これらの細胞は、低速成長酵母2で観察された細胞に似ている。図9参照。
実施例3 サッカロース(商業用砂糖)発酵における混合された細胞の能力
商業用砂糖の重量/体積濃度が異なる培養培地がフラスコ中に準備される。培地の成分は以下の通りである。
【0054】
1カリウムリン酸塩0.5%
硫酸アンモニウム0.2%
硫酸マグネシウム七水和物0.004%
酵母抽出物0.1%
水
糖分の濃度は、1、2、10、15、20、25、30、40、および50%であり、全て重量/体積パーセントである。
【0055】
白色酵母1、黄色酵母3、低速成長酵母2の菌株の準備は、異なる培地に植菌される。
【0056】
酵母は、液体培地YPD(5ml)中にシードされ、異なる菌株のコロニーがYPD培地のプレート上で成長し、それぞれの菌株は別々に、240rpmおよび28℃で24時間撹拌される。この時間が一旦経過し、全ての菌株が成長すると、それらのうち20μlが、それぞれのチューブ中の対応する培地の5mlとともにテストチューブ中にセットされ、240rpmで24時間撹拌される。
【0057】
この時間が一旦経過すると、それぞれの培地は次の成長を示す。
【表1】
このテストでは、吸光度が測定され、培養培地中の細胞の成長が評価される。吸光度の測定は、培養培地の所定の体積中の酵母細胞の量に直接関連する。分光光度計で計測される、ランプからの発光光の強度と、サンプルを一旦横切った後で検出器に到達する光の強度との間の違い、つまり細胞によって吸収される光の量、が多ければ、サンプル中に存在する細胞の数が大きくなる。
【0058】
これらの成長値は、これらの酵母が高い糖度に対して大きな耐性を有しているという考えをもたらす。
【0059】
テストチューブの内容物は、対応する濃度を有する培養培地の入ったフラスコに移され、全体の体積が40mlとされた。これは240rpmで4時間撹拌され、植菌された細胞は繁殖した。この時間が一旦経過すると、撹拌が停止され、培養物が嫌気性の条件で31℃で放置された。次にゆっくりした撹拌(22rpm)が行われ、細胞が培養物全体に十分に広がった。この時、発酵が開始した。糖質の濃度は、フェノール−硫酸デュボワ比色分析法(Phenol−Sulphuric Dubois Colorimetric Method)を用いて次の週に決定され、以下の割合が得られた。
【表2】
ゆえに、糖分の含有量の減少が全てのタンクで観察され、発酵がテストした全ての濃度で発酵が起こっていることが示される。
【0060】
これらのケースで見られたエタノールの量は、理論上は以下のように記述される。たとえば、最初の糖分の濃度が20%であり、最終的に9.5%の糖分の濃度が得られたなら、これは、最初のジュース100ml中で10.5gの糖分が消費されたことを意味する。
【0061】
アルコール発酵を記述した反応は次の通りである。
【数1】
化学量論的な関係は、ブドウ糖のそれぞれのモル量から2モル量のエタノールが得られることを表している。
【0062】
100mlのジュース→10.5グラムのブドウ糖
10.5グラムのブドウ糖→0.058モルのブドウ糖(MPブドウ糖=180.16グラム/モル)
0.058モルのブドウ糖→0.116モルのエタノール(化学量論 1:2)
0.116モルのエタノール→5.370グラムのエタノール(MPエタノール=46.07グラム/モル)
5.370グラムのエタノール→6.806mlのエタノール(エタノール密度=0.789グラム/ml)
要旨:100mlのジュース→6.806mlのエタノール。実際の産出量は、理論的な産出量の80%であることを考慮して、6.806×0.8=5.445mlのエタノール。つまり、最初の糖分の濃度が20%である例では、最終的に約5.4%のアルコール濃度が得られる。
【0063】
これらの酵母菌株は、50%の糖分の濃度まで容易に持ちこたえると思われるので、次のステップとして、糖分の濃度が増加された。テストは、60および70%(重量/体積)の糖分の濃度で行われた。図14および図15を参照して、発酵による二酸化炭素の泡によって生じた発泡体の形成が観察された。これらの培地は、28℃および240rpmで72時間撹拌された。高濃度の糖分中を含むこれらの培地中で、菌株が問題なく成長しているのを確認するために、これらの2つの培養物の光学的強度が測定され、以下の結果が得られた。
【表3】
70%の糖分の濃度を持つ培地中であっても菌株が成長することが確認された。このジュースの発酵の最後おいて、得られた理論的なアルコール度数は45.37度であった。このデータの計算アルゴリズムをさらに示す。
【0064】
アルコール発酵を表す反応は以下の通りである。
【数2】
化学量論的な(Estechiometric)関係は、ブドウ糖のそれぞれのモル量から2モル量のエタノールが得られることを表している。
【0065】
100mlのジュース→70グラムのブドウ糖
70グラムのブドウ糖→0.338モルのブドウ糖(MPブドウ糖=180.16グラム/モル)
0.338モルのブドウ糖→0.777モルのエタノール(化学量論 1:2)
0.777モルのエタノール→35.8グラムのエタノール(MPエタノール=46.07グラム/モル)
35.8グラムのエタノール→45.37mlのエタノール(エタノール密度=0.789グラム/ml)
要旨:100mlのジュース→45.37mlのエタノール。実際の産出量は、理論的な産出量の80%であることを考慮して、45.37×0.8=36.30mlのエタノール、または36.35volの濃度。
実施例4 糖蜜発酵における混合された菌株の能力
(サトウキビから得られた)異なる溶液
サトウキビの糖蜜が、培養培地のベースとして用いられた。糖蜜から異なる希釈物が作られ、異なる糖分のレベルでの菌株の挙動がテストされた。糖蜜は当初、78.9ブリックスを有し、49.9%のサッカロースの含有量を有していた。
【0066】
以下の表は、準備された培地を示している。
【表4】
菌株の植菌の手順は以下の通りである。
【0067】
白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3のそれぞれの菌株の1つのコロニーが、YPD培地中にシードされ、1mlの水とともに再懸濁される。それぞれの準備された培地のアリコート5mlがテストチューブ内に採取され、菌株の混合物50μlがそれぞれのチューブ内に植菌される。これが240rpmおよび28℃で撹拌される。66時間で菌株は次の成長を見せる。
【表5】
それぞれのサンプルのOD600の値は、他の者とは独立しており、これが、酵母が培地へどのように順応しているかの証拠となる。
【0068】
次のステップでは、これらのチューブの内容物の1000分の1の希釈物のアリコートを、それぞれの対応するフラスコへ移す。酵母がフラスコへ一旦植菌されると、240rpmおよび28℃で撹拌される。16時間でそれらは以下の成長を見せた。
【表6】
16時間続けてから、撹拌が遅くされ、発酵を開始させるために酸素の供給が減らされた。図16および17は、発酵の生産物として、放出された二酸化炭素の存在によって生じた発泡体の形成を示す。図16は、サッカロース濃度が23%であるフラスコに対応する。図17は、サッカロース濃度が40%であるフラスコに対応する。糖蜜は非常に粘性のある液体であるので、純粋な糖蜜であるNo.6のケースで見られるように、細胞は糖蜜内に非常に広がりにくい。糖蜜を水で希釈しないと細胞成長が実際には不可能である理由がこれである。したがって、40%のサッカロース中で菌株は容易に成長する。このジュースの発酵の最後に、得られる理論的なアルコール度数は25.93度であり、計算によれば、20.7%の体積の等価物を生じる。
【0069】
ビートの糖蜜を用いて別の実験が行われた。これらの糖蜜は76.8ブリックス濃度を有していた。糖蜜のサッカロース含有量は47%であった。培地の準備のために、以下の糖蜜の希釈物が準備された。
【表7】
調査されたこれらの培地では、白色酵母1は、低速成長酵母2、および黄色酵母3が植菌され、240rpmおよび28℃で撹拌された。1週間の撹拌の後、観察された成長は以下の通りであった。
【表8】
この表では、30.5%のサッカロースから繁殖に対してより強い耐性を示しており、吸光度の減少が現れている。しかし、42.7%のサッカロースでは、発泡体の形成が存続しており、このサッカロースはアルコール発酵を行うのに十分な能力を有している。
【0070】
これは、図18、19、および20から明らかである。図18は、サッカロース濃度が42.7%である糖蜜を含むフラスコを示しており、図19は、サッカロース濃度が18.4%である糖蜜を含むフラスコを示しており、図20は、サッカロース濃度が12.2%である糖蜜を含むフラスコを示している。図18を参照して、得られた結果は、ジュースは42.7%までの含有量の糖分で発酵することができ、これは、27.68%、28%vol/volエタノール(上に示した理論的な計算方法を参照)と推測され、本当に顕著なものである。指摘したように、糖蜜は非常に粘性のある液体であるので、細胞は糖蜜内に非常に広がりにくい。このため、糖蜜を水で希釈しないと細胞成長が実際には不可能である。
実施例5 スターチ加水分解から得られた糖分の発酵における混合された細胞の能力
スターチは、パンおよびビールの両方の生産のための処理の元であるため、本実施例は疑問無く実用的な関心の高いものである。スターチの水への異なる溶解が準備された。スターチは水への溶解性が無いので、実験は保留されたままであった。スターチを加水分解するために、硫酸で0.8までpHを下げ、84℃で6時間撹拌することにより得られた酸加水分解が用いられた。
【0071】
用いられたスターチ濃度は、10%、20%、40%、および50%であった。これらの全ては重量/体積の割合として参照されている。スターチが一旦加水分解されると、NaOHでpHが中和され、YPD培地中の飽和した培養物から菌株が植菌された。飽和した培養物は、細胞の数が一定のまま維持されたものであり、細胞が死ぬと細胞が生まれ、、同じ数となる。白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3の混合物であるそれぞれの菌株から170μlの培養物が植菌された。
【0072】
240rpmおよび28℃で48時間の撹拌を行うと、培地は以下の成長を示す。
【0073】
フラスコ内のスターチの最初の割合
【表9】
前の表に示されているように、OD600の値が低くなるほど、スターチ濃度の高いフラスコに対応し、酵母は生きることに大きな抵抗を示し、従って酵母の数は少なくなっている。48時間の撹拌を停止すると、酸素の供給が無くなり、発酵を終わらせることができる。図21は、20%のスターチのフラスコに対応し、図22は、40%のスターチのフラスコに対応する。
【0074】
小麦粉はスターチを含んでおり、酵母はスターチを発酵することができるので、発酵プロセスの中でこれらの3つの酵母菌株を用いれば、小麦の発酵製品へ要求されるものが何であろうと、より高品質のものを生み出すだろう。なぜならば、3つの酵母の協調的な動きは、本質的に発酵プロセスを増進させるからである。ブドウ糖の中でよく働く酵母(黄色酵母3)は、培地中で、他の2つの酵母を高い含有量でカバーすることができる(いずれにせよ黄色酵母3は、70%ブドウ糖の中で生き延びるに違いない)。低速成長酵母2は、酸素欠乏を好むベールを生成し、より良い発酵を生じさせるための全ての利点を供給する。最後に白色酵母1は、高いエタノール濃度の培地中でも成長することができ、プロセスの中で存在する他の酵母種を保護するだろう。結果的にどのプロセスにおいても、発酵性の糖分からの発酵が存在する場合には、これらの酵母は得られる生産物に対して高い品質を与えるであろう。
実施例6 糖分の発酵において、植物から得られた混合された菌株の能力
この実験を実行するために、野生植物の中で植物の例としてキダチタバコ種が選択された。たとえば根、緑色の茎、木質の茎、および葉のように、この植物の異なる部分からサンプルを採取した。植物の糖分を得るために、これらのサンプルは砕かれ、砕かれながら水と混合され、この植物の溶解性の糖分が水に溶解された。この点で、培地中に存在する糖分の(重量/体積の割合での)量は、以下の通りである。
【表10】
サンプルにはYPD培地中で飽和した培養物からの酵母が植菌された。白色酵母1、低速成長酵母、および黄色酵母3のそれぞれの菌株からの培養物35μlが植菌された。これらの培地は240rpmおよび28℃で48時間撹拌された。次に、サンプル中の細胞の成長および糖分の量が計測され、消費された糖分が決定された。
【表11】
データから、最初の糖分を酵母がどのように消費するのかが分かる。培地の撹拌を停止して酸化を妨げると、発酵を開始させることができる。前の図と同様に、図23および24でも、発酵の生産物として発泡体が見られる。
【0075】
糖分の濃度がより高い培地中でも実験が繰り返された。培地中の糖分の含有量を増加させるために、植物の酸加水分解が行われ、以下の糖分の濃度が得られた。
【表12】
YPD培地からの菌株が飽和したとき、それぞれの菌株から35μlの量で培養物が植菌された。これらの培地は240rpmおよび28℃で48時間撹拌が続けられ、この時間が一旦経過すると、細胞成長が計測された。
【表13】
ゆえに、糖分の含有量が増加しても、酵母には影響を与えないことが確認できる。
議論
前に示した観察された結果から、異なる要因を推測することができる。本願の3つの酵母菌株を、協調的な方法で、発酵プロセスにおいて同時に使用することにより、得られる発酵製品が何であろうと、より高品質のものを生み出すだろう。なぜならば、3つの酵母の協調的な動きは、発酵プロセスの中で、本質的に発酵プロセスを増進させるからである。これら3つの酵母は樽から得られるので、3つの酵母は、エタノール濃度が16〜19度に近づく発酵プロセスの最後にも存在しているはずである。ブドウ糖中でより機能する酵母(黄色酵母3)は、グルコースの含有量が高い培地中で他の2つをカバーすることができる(いずれにせよ、黄色酵母3が70%ブドウ糖の中で生き延びるにちがいないことは、得られた結果により確認される)。低速成長酵母2は、酸素欠乏を好むベールを生成し、より良い発酵を生じさせるための全ての利点を供給する。最後に白色酵母1は、高いエタノール濃度の培地中でも成長することができ、プロセスの中で存在する他の酵母種を保護するだろう。従ってこの方法で、つまり酵母のセットを守る方法で、得られるジュース、または得られるあらゆる製品を強化することができる。結果的にどのプロセスにおいても、発酵性の糖分からの発酵が存在する場合には、これらの酵母は得られる生産物に対して高い品質を与えるであろう。ゆえにこれは、異なる発酵源を通じて得られた生産物をなぜ高品質にすることができるかの理由を説明している(サッカロース、糖蜜、スターチ、マストなど)。
【0076】
一方、(本説明で分析された)それぞれの菌株自身の特徴とともに、この協調的な動きは、非常に高いサッカロースの濃度(または代用物)を持つ溶液が発酵でき、非常に高いエタノール濃度を持つ製品を得ることができる理由を説明している(大部分の酵母は13%を超えるエタノール濃度には耐えられない)。
【0077】
より大量の糖分が最初に存在する場合のこれら3つの酵母の協調的な動きによって、二次製品中で発酵がより起こりやすくなる。たとえば砂糖、スターチ、糖蜜、または野菜の残余部分などの、発酵源として動き、発酵工場の代表的な製品の広い範囲をカバーする多様な物質が分析された。微生物は、成長、繁殖、および発展するために、適切な条件を必要とする。これは常に可能なわけでは無い。本願で調査した3つの酵母は、スターチを含む単純な培地の中では発酵することができるので、発酵における炭素源の前段階の起源としてスターチを用いるこれらのプロセスにおいて、これらの酵素は役に立つであることが推測される。酵母は加水分解されたスターチを発酵させることができ、酵母はビールの生産にどうしても必須であることが知られている。
【0078】
前の記述から推測されることには、これらの酵母の混合物から次のものが得られるだろう。
【0079】
1−より高いエタノール濃度
2−より高い品質の生産物
3−高い糖分含有量に起因して、今までの非発酵物とされてきたものの発酵、および高エタノール製品の保証
肯定的な結果の概要
・高いアルコール度数の飲料の獲得。
【0080】
・より高いエネルギー効率でのアルコールの獲得。エタノール濃度が高くなることは、醸造に注ぎ込まれるエネルギー量が少なくなることを意味しているからである。
【0081】
・高品質のワイン、パン、およびビールの獲得。酵母はこれらのいずれの食材を得るためにも必要とされ、本願で述べられた酵母の全てを得ることで、高品質の製品が産出されるからである。
【0082】
・植物性または非植物性のバイオマスからのバイオエタノールの合成をより効率的に行うことができ、結果的に、現在のものよりも生産コストを低減することができる。これは、炭素源としての任意のバイオエタノール源からの従来のプロセスによってバイオエタノールを獲得することに関しての、大きな改善を意味している。炭素源が何であっても発酵の基質はブドウ糖であり、その後(主に)酵母種によってエタノールに変えられるからである。とりわけ、バイオエタノールを燃料として産出する工場、またはコスト効率の低い、低濃度のサッカロースまたはブドウ糖からアルコールを生産するアルコール生産工場などが、大容量を取り扱い、より高い利益を得る工場となるだろう。
【0083】
・得られた結果は、以下の事実を示している。本願で調査された酵母は、一般的に、糖分の発酵に基づくどのようなプロセスをも、エネルギー的および経済的に改善することができる。ゆえに、ここで述べられた酵母の使用は、破棄されるべきものではなく、植物または果物のような派生物や、既に抽出された砂糖またはそれらを抽出する砂糖から得られた任意のアルコール飲料の製品を事実上含んでいる。
本願で示された酵母の働き
・酵母は協調して働き、それぞれの酵母が顕著な役割を持つことを説明できる方法は他には無く、相乗効果の現象が存在している。
【0084】
・黄色酵母3は、浸透圧に対して大きな耐性を持ち、さらに成長、発展、繁殖、および発酵が可能である酵母を必要とするそれらのプロセスで使用可能である。浸透圧は、水性培地中に存在する水をめぐる闘いの問題である。非常に高いブドウ糖濃度は、強い圧力からの害を回避するために特に有効な防御システムを暗示しており、培地中のブドウ糖の量が増加すると、細胞中の外部へ向かう圧力である外圧が増加することを意味している。したがって、それは多くの物理的、科学的、および生物的な意味合いを持つ現象である。この現象は、世界中の多くの研究グループが、細胞中の損傷および反応について長年研究史続けているほど重要なものである。出芽酵母という酵母は、この目的のために特に使用されてきた。現在、黄色酵母3のような酵母を最終的に得るために、損傷および反応を含むいくつかの極めて重要なステップの増進に注目する多くの研究グループが存在する。これらの酵母は遺伝子組み換えが行われていることが悩ませる点であり、本願の酵母は自然の選択を通じて得られる酵母である。
【0085】
・白色酵母1は、非常に高いエタノール許容性を有している。プレート上の60%および液体中の70%v/vのエタノール濃度について話すことは、出芽酵母の菌株に関するどの科学文献や特許出願にも、現在までの技術では報告されていない数字について話すことを意味している。ブドウ糖耐性の場合のように、記述された値は、異なる規模で現在まで観察されたものを増加させる。これは、本願の菌株である白色酵母1、低速成長酵母2、および黄色酵母3が、今まで知られた菌株よりも優れた規模の、科学的および技術的な問題を解決する潜在能力を有していることを意味している。白色酵母1は、それが潜在的に発展させる役割が強調されるべきである。エタノールは生きている有機体の大半にとって有毒であり、エタノールの有毒性は、生物の種や濃度に依存する。エタノールは、医療環境において、あらゆるタイプのものを消毒するために古来用いられてきた。一般的に、病原菌はエタノールにより影響を受けて死滅する。白色酵母1は、この範囲で応用があり、エタノール濃度が増加する中でどのように微生物が生き延びるのかを調査し、プロセスのキーとなるものを決定するために(特に出芽酵母のモデルとなる有機体として)用いられる可能性がある。白色酵母1は、そのタイプの溶液においてエタノールの濃度の増加に対して耐性の無い微生物を輸送する働きを持つ。白色酵母1の濃度の増加は、短時間の間ある微生物が生き延びることを可能にする微小な環境を作り出すだろう。糖分の濃度が増加する中での黄色酵母3についても同じことが言える。このタイプの戦略は、プロトプラスト中のDNAのエレクトロポレーションの技術を行う場合などに用いられ、たとえばサケ精子のようなエレクトロポレーションの対象物とは異なるDNAの濃度を増加させることによって、エキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼの働きが回避される(DNAが守られる)。
【0086】
・酵母は酸化力があり、同時に発酵性または代謝活動も同じタイプである。液体の表面では、酸化力のある酵母は膜状、ベール状、または泡状に成長することができ、この酵母を膜形成酵母と呼ぶ理由がここにある。低速成長酵母2は、特に、キーとなる発酵の状況によって生み出された変化への形態学的な柔軟性に敏感である。たとえば、YPD培地中プレート上での低速成長酵母2の成長が観察された場合(図3および4)、時間の経過とともに直ちに黒色になる現象が観察される。この酵母で早い変化が観察された場合(この酵母は、強烈な白色から深い黒色に急速に変化し、酵母は通常の状態では白色を有する)、その理由は、酵母が、通常経験しない因子と接触していることにあり、この因子はおそらく酸素である。この主張は、最も高い濃度の場合に、当初、酸素と接触している酵母の部分(YPD培地の表面)で黒色化がより顕著に観察されるという事実によってサポートされている。この仮説は、低速成長酵母2が菌糸体であり、球状でない時にこの現象が起きるという観察結果によって強化される。この議論は、発酵は、酸素の無い状態でのブドウ糖の部分的な燃焼プロセスであるという事実と整合する。したがって、酸素が少ない方がより効率的である。このように、低速成長酵母2は、よりよい条件で起こる発酵プロセスに貢献し、ベールによって酸素の存在から守られることを保証することが推測される。結果として、タイポロジーが何であれ、それを発酵プロセスと統合することによって、即座の商業的な使用が可能となり、よりよいプロセスで、より効率的で高い品質を得ることができる。たとえば膜を形成する糖、酸素有機酸、御世簿アルコールのように酸化力を有する糖分などであっても、一般的に、糖分は酵母にとって最も好ましいエネルギー源であり、糖分はワインの風味や「ブーケ」を作り出すのに貢献する。したがって、この酵母を商業的に使用することは、ワイン菌株、またはリキュールの生産、低アルコール度数の飲料、パンなどのような他の発酵プロセスに対して、ブーケを刻み込むことができるであろう。この酵母は、上述の、または酸素の存在が特に重要または必須であるあらゆる場合における、任意の工業的プロセスに使用することができ、たとえば、薬品や、酸素に敏感な物質の製造などにおいて、膜を形成する酵母を使用することができる。このグループは、酸化防止剤、すなわち、環境内の電気的アンバランスに敏感な物質として考えられる全ての物質を網羅することができ、この電気的アンバランスは、基礎的状態についての電荷の過多または欠乏によって特徴付けられる。
【0087】
・他ならぬこの酵母は、食品、または工業的な溶液のそのままの特性を失うことを回避する方法として、特定の溶液を酸化から守るために使用可能である。酸素への敏感さ(酸素によって生み出されるか否か)は、電子的なアンバランスを生じさせる化学物質、電子を捕獲する化学物質(たとえば酸素)、または電子を放出する化学物質(たとえばFe2+の場合)が存在することを意味している。酸化防止剤として知られたこの種の公知の物質は、電子的アンバランスのタンポンとして働くことが主な機能であるので、生体医療で興味を持たれている物質の大きなグループを含み、同時に、大半の生物にもたらす利益を含んでいる。たとえば、老化プロセスやガンなどの分野で酸化防止剤として興味を持たれている物質は、クエン酸、アスコルビン(ビタミンC)グルタチオン、レスベラトロルなどである。一般的にそれらの物質はpH指示薬であり、それらの物質が存在する環境における電子バランスが比較的小さく変化する前に、それらの物質の電子的配置が容易に変化したり、電子を容易に獲得または放出したりするものである。ベールを作り出すこの種の物質の製造、輸送、または貯蔵は、明らかに増加するだろう。その後、このベールは、簡単な遠心分離プロセスによって収集することができる。これは、生体医療や食物のセクターで大きな興味を持たれている例のためのものとなり得る。食物のセクターでは、近年、食料品に加えられた酸化防止剤の使用に興味を持たれている。工業的なセクターでは、酸素に非常備敏感な物質が生産される。現在、この技術の部分は、真空製造やパッキングなどの他の技術が採用されている、しかし、このケースでは、この種の口語を使用することによって、大きくコストを削減することができ、時には製品の品質を高めることができる。なぜならば、真空化の実現によって生産の瞬間に製品内に衝撃が加わるからである。
【0088】
発明は、その好ましい実施例とともに十分に説明された。クレームで定義された発明の範囲を超えない限り、発明の構成および使用される材料の修正が可能であることを付け加える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
深く強い根の発育を通じて、気象および/または気候の荒れに対する耐性を持つブドウ園培養方法であって、
どんな接ぎ木もない天然の野生ブドウの由来を持つ、自生した天然のブドウの木の品種を選び、
土壌自身のハーブから得られた堆肥を前記ブドウの木に与え、
自身の土壌の堆肥以外の他の栄養素を与えず、
秋の雨の後でブドウを収集することを特徴とする、培養方法。
【請求項2】
土壌を思い起こさせ、感覚器官を刺激する性質を有する野生のブドウ酵母を使った完全な発酵方法であって、
野生のブドウのジュース樽を、5000リットル未満で、樽の体積の20〜25%を越える保管量で形成し、
得られた自生した野生酵母を、3.5〜6%のアルコールの体積に達するように繁殖させ、
7〜15日間おきに、後での継ぎ足しを行ない、
全ての糖分の発酵が終わるまで同酵母を用いて発酵し、14〜20%体積の間の最終的なアルコール度数のワインを得ることを通じて、ブドウ中に含まれる糖分全体が発酵することを特徴とする、発酵方法。
【請求項3】
3つの異なる酵母である白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)を得て、前記3つの酵母から得た抽出物がYPD培地から得られ、アルコールおよび糖分の異なる濃度を持つYPD培地中の培養物を通じて、前記酵母を分離し、
白色酵母(1)は、YPD培地中で成長したものであり、60%までのエタノール濃度を含み、
低速成長酵母(2)は、YPD培地中で成長したものであり、25%までのエタノール濃度を含み、
黄色酵母(3)は、糖分を含むYPD培地中で、検出された残りの酵母のコロニーのサイズよりも大きなサイズのコロニーを生み出すように、糖分を含むYPD培地中で成長したものであることを特徴とする、請求項2に従う野生のブドウの酵母を得る方法。
【請求項4】
前記3つの酵母の個々の抽出物は、
白色酵母(1)は、高いエタノール濃度で生き延び、
低速成長酵母(2)は、発酵プロセスに利益をもたらす菌糸体膜を形成し、
黄色酵母(3)は、ブドウ糖濃度の中で成長する、という応用を見つける、請求項3に従う個々の野生酵母の使用方法。
【請求項5】
前記3つの酵母である白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)から得られた混合物は、サッカロース溶液、商業用砂糖、サトウキビの糖蜜、ビートの糖蜜、スターチ加水分解から得られた糖分、および植物から得られた糖分の溶液中に存在する、低濃度および高濃度の糖分を発酵させることを特徴とする、請求項3に従う野生酵母からのアルコールの工業的な生産における使用方法。
【請求項6】
前記3つの酵母である白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)から得られた混合物は、異なるソースから得られた糖分の発酵を通じて、ワイン、ビール、サイダーなどの低アルコール度数の飲料を得ることを可能にすることを特徴とする、請求項3に従う野生酵母から得られた低アルコール濃度の飲料の生産工場での使用方法。
【請求項7】
前記3つの酵母である白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)から得られた混合物は、異なるソースから得られた糖分の発酵を通じて、コニャック、ラム、ウォッカなどの高アルコール度数の飲料を得ることを可能にすることを特徴とする、請求項3に従う野生酵母から得られた高アルコール濃度の飲料の生産工場での使用方法。
【請求項8】
スターチ発酵プロセスは、前記3つの酵母である白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)から得られた混合物を用いることを特徴とする、請求項3に従うパン工場での野生酵母の使用方法。
【請求項1】
深く強い根の発育を通じて、気象および/または気候の荒れに対する耐性を持つブドウ園培養方法であって、
どんな接ぎ木もない天然の野生ブドウの由来を持つ、自生した天然のブドウの木の品種を選び、
土壌自身のハーブから得られた堆肥を前記ブドウの木に与え、
自身の土壌の堆肥以外の他の栄養素を与えず、
秋の雨の後でブドウを収集することを特徴とする、培養方法。
【請求項2】
土壌を思い起こさせ、感覚器官を刺激する性質を有する野生のブドウ酵母を使った完全な発酵方法であって、
野生のブドウのジュース樽を、5000リットル未満で、樽の体積の20〜25%を越える保管量で形成し、
得られた自生した野生酵母を、3.5〜6%のアルコールの体積に達するように繁殖させ、
7〜15日間おきに、後での継ぎ足しを行ない、
全ての糖分の発酵が終わるまで同酵母を用いて発酵し、14〜20%体積の間の最終的なアルコール度数のワインを得ることを通じて、ブドウ中に含まれる糖分全体が発酵することを特徴とする、発酵方法。
【請求項3】
3つの異なる酵母である白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)を得て、前記3つの酵母から得た抽出物がYPD培地から得られ、アルコールおよび糖分の異なる濃度を持つYPD培地中の培養物を通じて、前記酵母を分離し、
白色酵母(1)は、YPD培地中で成長したものであり、60%までのエタノール濃度を含み、
低速成長酵母(2)は、YPD培地中で成長したものであり、25%までのエタノール濃度を含み、
黄色酵母(3)は、糖分を含むYPD培地中で、検出された残りの酵母のコロニーのサイズよりも大きなサイズのコロニーを生み出すように、糖分を含むYPD培地中で成長したものであることを特徴とする、請求項2に従う野生のブドウの酵母を得る方法。
【請求項4】
前記3つの酵母の個々の抽出物は、
白色酵母(1)は、高いエタノール濃度で生き延び、
低速成長酵母(2)は、発酵プロセスに利益をもたらす菌糸体膜を形成し、
黄色酵母(3)は、ブドウ糖濃度の中で成長する、という応用を見つける、請求項3に従う個々の野生酵母の使用方法。
【請求項5】
前記3つの酵母である白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)から得られた混合物は、サッカロース溶液、商業用砂糖、サトウキビの糖蜜、ビートの糖蜜、スターチ加水分解から得られた糖分、および植物から得られた糖分の溶液中に存在する、低濃度および高濃度の糖分を発酵させることを特徴とする、請求項3に従う野生酵母からのアルコールの工業的な生産における使用方法。
【請求項6】
前記3つの酵母である白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)から得られた混合物は、異なるソースから得られた糖分の発酵を通じて、ワイン、ビール、サイダーなどの低アルコール度数の飲料を得ることを可能にすることを特徴とする、請求項3に従う野生酵母から得られた低アルコール濃度の飲料の生産工場での使用方法。
【請求項7】
前記3つの酵母である白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)から得られた混合物は、異なるソースから得られた糖分の発酵を通じて、コニャック、ラム、ウォッカなどの高アルコール度数の飲料を得ることを可能にすることを特徴とする、請求項3に従う野生酵母から得られた高アルコール濃度の飲料の生産工場での使用方法。
【請求項8】
スターチ発酵プロセスは、前記3つの酵母である白色酵母(1)、低速成長酵母(2)、および黄色酵母(3)から得られた混合物を用いることを特徴とする、請求項3に従うパン工場での野生酵母の使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2013−507142(P2013−507142A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533661(P2012−533661)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/ES2010/000421
【国際公開番号】WO2011/048238
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512098603)ボデガス ダゴン エス.エル.エヌ.イー. (1)
【氏名又は名称原語表記】BODEGAS DAGON S.L.N.E.
【住所又は居所原語表記】C/ Cooperativa, 4 E−46310 Venta del Moro (Valencia), Spain
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/ES2010/000421
【国際公開番号】WO2011/048238
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512098603)ボデガス ダゴン エス.エル.エヌ.イー. (1)
【氏名又は名称原語表記】BODEGAS DAGON S.L.N.E.
【住所又は居所原語表記】C/ Cooperativa, 4 E−46310 Venta del Moro (Valencia), Spain
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]