説明

高められた応力き裂抵抗性を有する着色された組成物

A)少なくとも1種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマー50.0質量%〜99.5質量%、及び
B)
i.ビニル芳香族モノマー70質量%〜92質量%、及び
ii.アクリルニトリル又はメタクリルニトリル又はその混合物8質量%〜30質量%、
iii.少なくとも1種の更なるモノマー0質量%〜22質量%
からなるモノマー混合物の重合から得られる、少なくとも1種のコポリマー0.5質量%〜50.0質量%
を組成物の全質量に対してそれぞれ含有し、
組成物が50℃で0.15未満のΔEを有し、その際ΔEが式(1):[式中、
ΔL*:23℃での色座標L*と比較した色座標L*の変化
Δa*:23℃での色座標a*と比較した色座標a*の変化
Δb*:23℃での色座標b*と比較した色座標b*の変化を指す]
により定義され、
そして、この組成物が、25℃でクロロホルム中(ISO1628−第6部)で55ml/gより大きい溶液粘度を有する少なくとも1種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)を含有する組成物。この組成物から得られる成形体は、改善された応力き裂抵抗性にとりわけ優れ、かつ、コーティング、塗料又はシートのために特に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高められた応力き裂抵抗性を有する着色された組成物並びにその使用に関する。
【0002】
先行技術
ポリメチルメタクリラート(PMMA)組成物は、自動車領域において、特にテールライトカバー及び計器カバーとして長い間使用される。近年では、この材料は半透明に着色された(gedeckt eingefaerbt)成形部品のためにもますます使用されている。ここでの適用は、特にスポイラー、柱外装材、窓ガラス案内縁、外部ミラー及び外部ミラー基部である。
【0003】
このPMMA組成物は通常は押出、共押出、射出成形又は多成分−射出成形を介して外部領域のための成形品へと加工される。従って、これらの適用では少なくともこの最も外側層がPMMAからなる。これは、PMMAの耐候性及び表面硬度のためにこの下にあるマトリックスの保護を引き起こす。
【0004】
成形体はしばしば褐色に着色されているので(PMMA層自体又はこの下にある層)、これらは太陽光のもとで強力に加熱される。従って、高い耐熱変形性はPMMA組成物に関する要求であり、これにより成形品は相応する気候試験に耐え、成形品の軟化は生じない。
【0005】
この他に成形体は、高い応力亀裂抵抗性及び高い耐化学薬品性を有しなくてはならず、というのはこの適用はしばしば清浄剤、ガソリン及び他の攻撃性の薬剤と接触するからである。
【0006】
更に、PMMA組成物又はPMMA成形体の公知の特性、例えば加工性及び機械的特性は維持されなくてはならない。
【0007】
EP 0 508 173 B1は、PMMA55質量%〜98質量%、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)2質量%〜45質量%及び場合により更なる加工助剤からなるポリマーブレンドの様々な成形部品の製造のための使用を記載する。PMMAは、発明の詳細な説明によれば、少なくとも80質量%のメチルメタクリラート(MMA)単位を含有する。この実施例においては、応力亀裂形成が、2.1〜5.5分間後に観察される。しかしながらこの値はESCR試験に応じたこの結果と比較可能でない。例示的なPMMA−SAN−ポリマーブレンドのビカー軟化温度は106℃である。
【0008】
同様に、EP 0 627 461 B1は、PMMA49質量%〜99質量%及びSAN0.95質量%〜50質量%並びに特定の安定化剤パック0.05質量%〜1質量%からなる耐候性ブレンドを開示する。ここでも、PMMAはMMA単位少なくとも80質量%を含有する。この実施例においては、応力亀裂形成が、680s〜750s後に観察される。しかしながらこの値はESCR試験に応じたこの結果と比較可能でない。この耐熱変形性の改善は記載されていない。
【0009】
JP 03-217446 A2は、芳香族ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸のコポリマー、PMMA及びSANからなるブレンドに関する。このブレンドは、比較的高い耐熱変形性の値(114℃)を有する。但し、この成形体の透過度は84%のみである。
【0010】
JP 02-272050 A2は、
a)MMA40質量%〜90質量%、無水マレイン酸5質量%〜20質量%、スチレン5質量%〜40質量%及びC14アルキルアクリラート1質量%〜15質量%のコポリマー、
b)アクリルニトリル及び芳香族ビニル化合物のコポリマー又はMMA−C14−アルキルアクリラート−コポリマー、
c)アクリルニトリル及び芳香族ビニル化合物でグラフトされたゴムからなる衝撃強さ改善剤からなる、良好な耐熱変形性及び耐衝撃性を有するブレンドを記載する。
【0011】
成分a)及びb)の混合物並びに成分c)の間のこの屈折率の差は、高くとも0.005であるべきである。にもかかわらず、この種の組成物は、光学的特性、特に透明性及び/又は色印象(Farbeindruck)の、温度に対する高い依存性を示す。
【0012】
WO 2005/047392A1号出願は、以下の成分:
a)25℃でクロロホルム中で(ISO1628−第6部)で55ml/g以下の溶液粘度により特徴付けられる低分子量(メタ)アクリラート(コ)ポリマー、
b)架橋したポリ(メタ)アクリラートを基礎とする衝撃強さ改善剤、
c)25℃でクロロホルム中で(ISO1628−第6部)で65ml/g以上の溶液粘度により特徴付けられる高分子量(メタ)アクリラート(コ)ポリマー、及び/又は、
d)25℃でクロロホルム中で(ISO1628−第6部)で50〜55ml/gの溶液粘度により特徴付けられるa)とは異なる更なる(メタ)アクリラート(コ)ポリマー、
を含有するポリマー混合物を開示し、その際成分a)、b)、c)及び/又はd)は、考慮した場合にそれぞれ個々のポリマーとしてもまた同様にポリマーの混合物としても理解されることができ、
その際a)、b)、c)及び/又はd)は、100質量%まで加算され、
その際このポリマー混合物は慣用の添加物、助剤及び/又は充填剤を含有することができる。
このポリマー混合物から製造される試験体は、イソプロパノールでの表面の湿潤の際に、0.39%の一定の外側繊維伸び(Randfaserdehnung)では、1800sより長い破断時間を、そして0.50%の一定の外側繊維伸びでは700sより長い破断時間を示す。但し、やはり、光学的特性、特に透明性及び/又は色印象の、高い温度依存性が観察されるべきである。更に、特に改善された応力亀裂抵抗性及びより良好な加工性が所望される。
【0013】
課題および解決手段
本発明は、着色された組成物及び成形体の応力亀裂抵抗性の改善のための手段を示すとの課題を基礎とした。同時に、可能な限り高い耐熱変形性及び可能な限り良好な光学的特性が達成されることが望ましい。特に、組成物及び成形体の光学的特性の可能な限り少ない温度依存性が所望された。更に、可能な限り良好な機械的特性、可能な限り良好な加工性並びに可能な限り高い貯蔵安定性及び耐候性が実現されることが望ましい。特に目的に適った、この新規の組成物及び成形体の製造方法並びに特に有利な適用の可能性は、同様に挙げられる。
【0014】
前述の並びに前述の考察から必然的に誘導されるか又は直接的に生じる更なる課題は、請求項1に記載の特徴を有する着色された組成物により解決された。この請求項を引用する下位請求項は、この組成物の特に目的に適った実施形態を記載し、そしてこの更なる請求項はこの組成物の特に有利な適用に関する。
【0015】
A)少なくとも1種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマー50質量%〜99.5質量%、及び
B)
i.ビニル芳香族モノマー70質量%〜92質量%、及び
ii.アクリルニトリル又はメタクリルニトリル又はその混合物8質量%〜30質量%、
iii.少なくとも1種の更なるモノマー0質量%〜22質量%
からなるモノマー混合物の重合から得られる、少なくとも1種のコポリマー0.5質量%〜50.0質量%
を組成物の全質量に対してそれぞれ含有し、
組成物が50℃で0.15未満のΔEを有し、その際ΔEが以下のとおりに定義され、
そして、この組成物が、25℃でクロロホルム中(ISO1628−第6部)で55ml/gより大きい溶液粘度を有する少なくとも1種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)を含有する着色した組成物を準備することにより、容易に予期可能でないことに、改善された応力亀裂抵抗性を有する成形体の製造のために傑出して適する着色した組成物を生じることがうまくいった。この際、この組成物は比較的簡単に、特に比較的少ないエネルギー的な消費でもって製造可能かつ加工可能であり、かつ、要求の多い部品幾何学の実現をも可能にする。
【0016】
同時に、この組成物から製造可能な物品は、有利な特性の組み合わせにより優れている:
>この物品は極めて良好な光学的特性、特に高い色恒常性を有し、かつ、温度に対する光学的外観の比較的少ない依存性を示す。
>この物品は、極めて高い耐熱変形性を有する。
>この物品は、傑出した機械的特性、特に高い弾性率及び比較的高いビカー軟化温度を示す。
>この成形体の長期安定性及び耐候性は、同様に傑出している。
【0017】
発明の実施態様
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーA)
本発明は、少なくとも1種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマーA)を含有する成形材料に関する。この際、この(メタ)アクリラート(コ)ポリマーは個々のポリマーとしてもまた同様に複数のポリマーの混合物としても存在することができる。
【0018】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーA)の特性
1種又は複数種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマーは、その量割合において、そしてこの組成において有利には、1種又は複数種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマーから製造可能な試験体が同時に以下の特性を有するように選択される:
I.少なくとも2600MPa、有利には少なくとも2750MPa、特に有利には少なくとも2850MPa、とりわけ少なくとも3000MPaの引張弾性率(ISO527)、
II.少なくとも109℃、有利には少なくとも110℃、特に有利には少なくとも112℃、とりわけ110℃〜125℃の範囲内のビカー軟化温度VET(ISO306−B50)、
III.少なくとも17kJ/m2、有利には少なくとも18kJ/m2、特に有利には少なくとも20kJ/m2、特にとりわけ少なくとも25kJ/m2、とりわけ少なくとも30kj/m2の衝撃強さ(ISO179−2D、フラット式)、
IV.少なくとも1.5cm3/10分、有利には少なくとも1.65cm3/10分、特に有利には少なくとも2.0cm3/10分、とりわけ少なくとも3.0cm3/10分の溶融指数MVR(ISO1133、23℃/3.8kg)。
【0019】
慣用の添加物、助剤及び/又は充填剤は目的に応じて、この前述の特性プロフィルが可能な限り損なわれないか又は最高でもとるに足らない程度で損なわれるように選択される。
【0020】
更なる特性
更に、1種又は複数種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマーは、その量割合において、そしてこの組成において有利には、1種又は複数種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマーから製造可能な試験体が少なくとも幾つかの以下の特性を有するように存在する:
固有色(Eigenfarbe)
少なくとも50%、有利には少なくとも55%のDIN5033/7に応じた光透過度TD65
黄色値
DIN6167に応じて測定可能な黄色値(光種類D65、10°、3mmの層厚で)は、有利には20未満、特に有利には17未満であることが望ましい。
応力き裂抵抗性(ESCR−法)
一定の外側繊維伸びでのイソプロパノールでの表面の湿潤の際の破断時間は、次のとおりである:
◆0.39%:>1800s
◆0.50%:>700s。
表面光沢
R(60°):>48%、有利には>50%。
【0021】
本発明により、この組成物は特に、クロロホルム中で25°で55ml/gより大きい、有利には65ml/g以上、特に68ml/g〜75ml/gの範囲内にある溶液粘度(ISO1628−第6部)を有する少なくとも1種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)を含有することにより特徴付けられる。
【0022】
これは、160000g/mol(較正標準としてのポリメチルメタクリレートに関連するゲル透過クロマトグラフィーによるMwの測定)の分子量Mw(質量平均)に相当しうる。分子量Mwの測定は、例えばゲル透過クロマトグラフィーまたは散乱光法により行なうことができる(例えば、H.F. Mark他, Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,第2版,第10巻,第1頁以降, J. Wiley, 1989参照)。
【0023】
第1の特に有利な本発明の変形の範囲内において、この(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)は、メチルメタクリラート、スチレン及び無水マレイン酸からなるコポリマーである。
【0024】
適当な量含分は、例えば次のものであることができる:
メチルメタクリラート50質量%〜90質量%、有利には70質量%〜80質量%、
スチレン10質量%〜20質量%、有利には12質量%〜18質量%、及び
無水マレイン酸5質量%〜15質量5、有利には8質量%〜12質量%。
【0025】
相応するコポリマーは、自体公知の方法でラジカル重合によって得ることができる。欧州特許出願公開第264590号明細書には、例えばメチルメタクリレート、ビニル芳香族化合物、無水マレイン酸からなるモノマー混合物ならびに場合によっては低級アルキルアクリレートから成形材料を製造するための方法が記載されており、この場合重合は、50%の変換率になるまで重合不可能な有機溶剤の存在下または不在下で実施され、重合は、少なくとも50%の変換率から75〜150℃の温度範囲内で有機溶剤の存在下で少なくとも80%の変換率になるまで継続され、引続き低分子量の揮発性成分は、蒸発される。
【0026】
特開昭60−147417号公報には、高熱変形安定性のポリメタクリレート成形材料の製造法が記載されており、この場合メチルメタクリレートと無水マレイン酸と少なくとも1つのビニル芳香族化合物とからなるモノマー混合物は、溶液重合または塊状重合に適している重合反応器中に100〜180℃の温度で供給され、重合される。ドイツ連邦共和国特許出願公開第4440219号明細書には、もう1つの製造方法が記載されている。
【0027】
全ての(メタ)アクリラート(コ)ポリマーの全質量に対する(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)の割合は、有利には少なくとも75質量%、有利には少なくとも85質量%、特に少なくとも95質量%である。
【0028】
第2の特にとりわけ有利な本発明の変形の範囲内において、(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)は、ホモポリマー又はコポリマーであって、80質量%〜100質量%、特に有利には90質量%〜99.5質量%がラジカルにより重合されたメチルメタクリラート単位、及び、場合により0質量5〜20質量%、有利には0.5質量%〜10質量%が更なるラジカル重合可能なコモノマー、例えばC1〜C4−アルキル(メタ)アクリラート、特にメチルアクリラート、エチルアクリラート又はブチルアクリラートからなる。
【0029】
特に有利には、コポリマーは、95質量%〜99.5質量%がメチルメタクリラート、0.5〜5質量%、有利には1質量%〜4質量%がメチルアクリラートからなる。
【0030】
目的に応じて、この組成物は更に、クロロホルム中で25℃で55ml/g以下、有利には50ml/g以下、特に45ml/g〜55ml/gの溶液粘性(ISO1628、第6部)を有する少なくとも1種の低分子量(メタ)アクリラート(コ)ポリマーb)を含有する。
【0031】
これは、95000g/mol(較正標準としてのポリメチルメタクリレートに関連するゲル透過クロマトグラフィーによるMwの測定)の分子量Mw(質量平均)に相当しうる。この分子量Mwの測定は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー又は散乱光法により行うことができる(例えば、H. F. Mark et al., Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 2nd. Edition, Vol. 10, 第1頁〜, J. Wiley, 1989を参照のこと)。
【0032】
この(メタ)アクリラート(コ)ポリマーb)は、有利には、メチルメタクリラート、スチレン及び無水マレイン酸からなるコポリマーである。
【0033】
適当な量割合は、例えば次のものであることができる:
メチルメタクリラート50質量%〜90質量%、有利には70質量%〜80質量%、
スチレン10質量%〜20質量%、有利には12質量%〜18質量%、及び
無水マレイン酸5質量%〜15質量%、有利には8質量%〜12質量%。
【0034】
この種のコポリマーの製造のための有用な示唆は、特にEPA 264 590, JP-A 60-147 417及びドイツ国公開公報44 40 219から取り出すことができる。
【0035】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーb)は、例えばメチルメタクリレート6355gとスチレン1271gと無水マレイン酸847gとからなるモノマー混合物に重合開始剤としての第三ブチルペルネオデカノエート1.9gおよび第三ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート0.85gおよび分子量調整剤としての2−メルカプトエタノール19.6gならびにパルミチン酸4.3gを添加することにより製造されうる。生じる混合物は、重合室中に充填され、例えば10分間、脱ガスさせることができる。その後に、水浴中で、例えば水浴温度60℃で6時間、次に水浴温度55℃で30時間重合させることができる。約30時間後、重合混合物は、約126℃で最大温度を達成する。重合室を水浴から取り除いた後、ポリマーは、相応して重合室中でなお約7時間、例えば117℃で空気箱中で温度処理される。
【0036】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)及びb)は、有利には、以下の量比で存在し、これは有利には、全(メタ)アクリラート(コ)ポリマーの全質量に対して、少なくとも75質量%、有利には少なくとも90質量%、特に100質量%まで加算される。
【0037】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa):25質量%〜75質量%、有利には40質量%〜60質量%、特に45質量%〜55質量%。
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーb)25質量%〜75質量%、有利には40質量%〜60質量%、特に45質量%〜55質量%。
【0038】
コポリマーB)
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーの他に本発明による成形材料は、少なくとも1種の更なるコポリマーB)(SANコポリマー)を含有し、このコポリマーは、
i.少なくとも1種のビニル芳香族モノマー70質量%〜92質量%、有利には75質量%〜82質量%、特に78質量%〜81質量%、及び、
ii.アクリルニトリル又はメタクリルニトリル又はその混合物8質量%〜30質量%、有利には18質量%〜25質量%、特に19質量%〜22質量%、
iii.少なくとも1種の更なるモノマー0質量%〜22質量%
からなるモノマー混合物を重合することにより得られる。
【0039】
ビニル芳香族モノマーとしては、特にスチレン、α−メチルスチレン、tert.−ブチルスチレン、モノクロロスチレン及びビニルトルエン、特に有利にはスチレン及びα−メチルスチレンが適する。
【0040】
更に、分子量(重量平均値Mw)60000g/mol〜300000g/mol、有利には100000g/mol〜200000g/molを有するSANコポリマーが特に示され、これは有利には、GB-PS 14 72 195に記載された方法に応じて製造されたものである。この分子量の算出はこの際、自体公知の方法で、特に光散乱法により行われる。
【0041】
この成形材料の全質量に対する成分B)の量は、本発明によれば、0.5質量%〜50.0質量%、有利には20.0質量%〜40.0質量%である。
【0042】
成分A)及びB)の量は、有利には、この組成物の全質量に対して少なくとも75質量%まで、有利には少なくとも90質量%まで、特に100質量%まで加算される。
【0043】
成分B)の製造は、通常は公知の重合方法、例えば塊状重合、溶液重合、エマルション重合又はパール重合により実施される。このような方法は、例えばKunststoffhandbuch, Hrsg. Vieweg und Daumiller, 第V巻; Polystyrol, CarlHanserVerlag, Muenchen 1969, 124頁〜及びGB-PS 14 72 195に記載されている。
【0044】
通常の添加剤、助剤および/または充填剤
本発明による組成物は、本発明による組成物の特性がこれらの添加により不利に影響されない限りは、更なる慣用の添加剤、助剤及び/又は充填剤、例えば熱安定化剤、UV安定化剤、UV吸収剤、酸化防止剤を含有することができる。
【0045】
UV安定剤及びラジカル捕捉剤
選択的に含有されるUV保護剤は、例えば、ベンゾフェノン誘導体であり、その置換基は、例えばヒドロキシル−及び/又はアルコキシ基であり、大抵は、2−及び/又は4位に見出される。ここでは、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンが挙げられる。更に、置換されたベンゾトリアゾールがUV保護添加剤として極めて適しており、ここには特に2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ジ−(α,α−ジメチル−ベンジル)−フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−sec−ブチル−5−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、及び2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0046】
更に使用可能なUV保護剤は、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチルエステル、2−エトキシ−2′−エチルシュウ酸ビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2′−エチルシュウ酸ビスアニリド及び置換された安息香酸フェニルエステルである。
【0047】
このUV保護剤は、低分子量化合物として、例えば前述したような低分子量化合物として、安定化すべきポリメタクリラート材料中に含有されていることができる。しかしながら、UV吸収性の基は、マトリックスポリマー分子中に、重合可能なUV吸収化合物、例えばベンゾフェノン誘導体又はベンズトリアゾール誘導体のアクリル−、メタクリル−又はアリル誘導体との共重合後に、共有結合されていることもできる。
【0048】
化学的に異なるUV保護剤の混合物であることもできるUV保護剤の割合は、通常は、本発明によるポリメタクリラート樹脂の全成分の全量に対して、0.01質量%〜1.0質量%、特に0.01質量%〜0.5質量%、特に0.02質量%〜0.2質量%であることができる。
【0049】
ラジカルスカベンジャー/UV安定剤の例として、ここで、HALS(障害アミン光安定剤Hindered Amine Light Stabilizer)の名称で公知である立体障害アミンが挙げられる。これは、塗料及びプラスチック、とりわけポリオレフィンプラスチックの老化プロセスの阻害のために使用することができる(Kunststoffe, 74 (1984) 10, 第620〜623頁; Farbe + Lack, 第96巻, 9/1990, 第689〜693頁)。HALS化合物の安定化作用の要因は、該化合物に含まれるテトラメチルピペリジン基である。この化合物クラスは、ピペリジン窒素で非置換であるかまた同様にアルキル基又はアシル基で置換されていることもできる。立体障害アミンはUV範囲内で吸収しない。該立体障害アミンは形成されたラジカルを捕捉するが、UV吸収剤はこれをすることができない。
【0050】
混合物として使用されてもよい、安定化作用を有するHALS化合物の例は、以下のものである:
ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ(4,5)−デカン−2,5−ジオン、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−スクシネート、ポリ−(N−β−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−コハク酸エステル)及びビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート。
【0051】
本発明による組成物中でラジカル捕捉剤/UV安定剤として適用されるのは、全成分の全体に対して0.01質量%〜1.5質量%の量、特に0.02質量%〜1.0質量%の量、特に0.02質量%〜0.5質量%の量である。
【0052】
滑剤又は離型剤
射出成形法には、殊に射出成形用金型への成形材料の付着をできるだけ回避させることができるかまたは全く回避させることができる、滑剤または離型剤が重要である。
【0053】
それに従って、助剤として、例えばC20個未満、有利にC16〜C18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸またはC20未満、有利にC16〜C18個の炭素原子を有する飽和脂肪アルコールの群から選択された滑剤が含有されていてよい。好ましくは、成形材料に対して最大で0.25質量%、例えば0.05〜0.2質量%の僅かな量含分が含有されている。
【0054】
例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸とパルミチン酸との工業用混合物が適している。更に、例えばn−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、ならびにn−ヘキサデカノールとn−オクタデカノールとの工業用混合物が適している。
【0055】
特に好ましい滑剤または離型剤は、ステアリルアルコールである。
【0056】
更なる添加剤、助剤および/または充填剤
本発明の範囲内で、成分c1)、c2)、c3)及び/又はc4)の添加剤も特にとりわけ適する。
【0057】
成分c1)は、一般式(I)
【化1】

[式中、R1及びR2は、C1〜C12−アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、1−エチルペンチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル、有利には1位で分枝したC3〜C12−アルキル残基、特にC3〜C7−アルキル残基、例えば1−メチルエチル、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、1−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、1−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、1−メチルヘキシル、1−エチルペンチル及び1−プロピルブチル並びに1,1,3,3−テトラメチルブチル、1,1,2,2,5,5−ヘキサメチルヘキシル、
5〜C8−シクロアルキル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル、有利にはシクロヘキシル、
6〜C10−アリール及びC6〜C10−アリール−C1〜C4−アルキル、その際このアルキル残基は3個までC1〜C4−アルキルで置換されていることができ、例えばフェニル、ナフチル又は2,2−ジメチルベンジルであり、かつ、R3は、水素及びC1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−、i−プロピル、n−、i−、sec−、及びtert−ブチル、有利には水素及びメチルを意味する]
のトリアリールホスフィットである。
【0058】
本発明に関して特に重要な化合物(I)の例は、市販されているトリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィット(Irgafos TM 168, Ciby-Geigy)及びトリス(ノニルフェニル)ホスフィット、有利にはトリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ホスフィットである。
【0059】
成分c2)は、一般式(II)
【化2】

[式中、nは2〜10、有利には2〜8の値である]
のアミンである。この種類の化合物は、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)との呼称でも公知であり、市販されている。
【0060】
本発明に関して特に重要である化合物(II)の一例は、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバカート(名称Tinuvin TM 770 DF (Ciba Geigy)で市販されている)。
【0061】
成分c3)は、一般式(III)
【化3】

[式中、R4、R5及びR6は、R1の意味合いを有する]
のベンゾトリアゾールである。
【0062】
本発明に関して特に重要である化合物(III)の例は、2−(2′−ヒドロキシ−5′メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール(名称Tinuvin TM P (Ciba Geigy)で市販されている)、又は2−(2′−ヒドロキシ−3′−ドデシル−5′−メチル−デシル)ベンゾトリアゾールである。
【0063】
成分c4)は、一般式(IV)
ABk (IV)
[式中、k=1、2又は4を意味し、
k=1である場合には、A=−COOR7、−CONHR7
【化4】

であり、
その際、R7はC1〜C21−アルキルを意味し、
k=2である場合には、
A=−CONH−(CH2n−CONH−、
【化5】

又は
【化6】

であり、その際、p及びmは、1〜10の整数を意味し、
k=4である場合には、
【化7】

であり、その際qは、1〜4の整数を意味し、かつ、
【化8】

であり、その際、R8及びR9は、水素、メチル又はtert−ブチルである]
のフェノールである。
【0064】
成分c4)の添加は、幾つかの場合には、屋外暴露後の応力き裂抵抗性の更なる改善を生じることができる。
【0065】
本発明に関して特に重要である化合物(IV)の例は、オクタデシル−3−(3.5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(名称Irganox TM 1076 (Ciba Geigy)で市販されている)並びに次の化合物である:
【化9】

【0066】
有利には、c1)、c2)及びc3)は、屋外暴露後の応力き裂抵抗性の改善に関して相乗作用を達成するために、混合して使用される。
【0067】
成分c1)〜c3)の有利な量はそれぞれ、成分c1)〜c3)の量の合計に対して、1質量%〜50質量%、有利には30質量%〜50質量%であり、その際この個々の量は100まで加算される。
【0068】
成分c4)の量は、成分c1)〜c3)の全量に対して、有利には0質量%〜25質量%、有利には10質量%〜25質量%の範囲内で選択される。
【0069】
成分c1)〜c4)の全量は、この組成物の全質量に対して、有利には0.05質量%〜1質量%、特に0.1質量%〜0.5質量%である。
【0070】
組成物の着色
本発明により組成物は着色されている。この色付与は、この際有利には、着色剤、染料又は顔料により行われていることができる。染料は、有利には、染料分子から成り、これはポリマーマトリックス中で十分に分子的に溶解されるか又は多かれ少なかれ分子的にこの表面上に吸着されるか又は化学的に結合される。顔料は、これに対してとりわけ、染料分子のアグレゲート又は鉱物物質を含有し、これはポリマーマトリックス中に不溶性である。
【0071】
着色剤は更に、一定の温度でもポリマーマトリックス中に不溶性であることができ、かつ、顔料のように振る舞うことができる。その他の、大抵はより高温では、着色剤はこれに対して、同じポリマーマトリックス中で染料として溶解することができる。本発明の範囲内では、しかしながら、ポリマーマトリックス中で温度範囲23℃〜100℃で、23℃での溶解性に対して最高で10%だけ変動する着色剤が、特に有利である。
【0072】
着色は本発明によれば、少なくとも1の吸収を可視可能な範囲内で、即ち、380nm〜750nmの範囲内の少なくとも1の波長で生じる。この吸収は23℃で有利には少なくとも1%、有利には少なくとも5%、特に少なくとも10%であり、着色剤なしの同じ性質の試料と比較される。
【0073】
この組成物の色相(Farbton)は、本発明によりLab表色系により記載される。これは、標準化され、同じ間隔を有し、装置非依存生であり、かつ、ヒトの知覚に基づく。
【0074】
このL***系の色空間は次のように定義される:
*=明度(0=黒色、100=白色)
*=赤−緑(−128=緑、+127=赤)
*=黄色−青(−128=青、+127=黄色)。
【0075】
本発明による組成物は、並はずれた色恒常性により優れている。従って、この組成物は50℃で、0.15未満のΔEを示し、その際ΔEは、式(1)
【数1】

[式中、
ΔL*:23℃での色座標L*と比較した色座標L*の変化
Δa*:23℃での色座標a*と比較した色座標a*の変化
Δb*:23℃での色座標b*と比較した色座標b*の変化を指す]
により定義される。
【0076】
80℃ではΔEは有利には0.3未満である。
【0077】
ポリマーマトリックスと比較して、屈折率の温度挙動が顕著に異なる添加剤、例えば耐衝撃改善剤の添加は、可能な限り回避すべきであり、というのは、さもなければ光学的な外観像の顕著な温度依存性が観察されるからである。
【0078】
成形材料の体積溶融指数MVR
本発明の範囲内では、この組成物は有利には、ISO1133に応じて230℃及び3.8kgで測定して、1.2cm3/10分より大きい、有利には1.5cm3/10分より大きい、特に1.7cm3/10分〜4.0cm3/10分の範囲内の体積溶融指数MVRを有する。
【0079】
組成物の製造
この組成物は、粉末、粒子又は有利には顆粒として存在することができる成分の乾燥混合により、製造されることができる。
【0080】
この組成物は、個々の成分を溶融し、溶融液状態で混合するかまたは個々の成分の乾燥した前混合物を溶融することによって直ちに使用される成形材料に加工されてもよい。これは、例えば一軸押出機または二軸押出機中で行なうことができる。引続き、得られた押出品は、造粒されてよい。常用の添加剤、助剤および/または充填剤は、直接に混入されてもよいし、最終消費者によって必要に応じて後で添加されてもよい。
【0081】
成形体への加工
本発明による組成物は、改善された耐化学薬品性及び応力き裂抵抗性を有する成形体の製造のための出発材料として適する。この組成物の成形は、公知の様式で、例えば、粘弾性状態を介しての加工により、即ち、ニーダー、ローラー処理、カレンダー処理、押出又は射出成形により、行われることができ、その際押出及び射出成形、特に射出成形が本発明により特に有利である。
【0082】
この組成物の射出成形は、公知のように220℃〜260℃(材料温度)及び型温度有利には60℃〜90℃で行われることができる。
【0083】
この押出は有利には、220℃〜260℃の温度で実施される。
【0084】
成形体
このようにして得られる成形体は、50℃で、0.15未満、特に有利には0.11未満のΔE、及び、60℃で、0.3未満、特に有利には0.2未満のΔEを有することにより特徴付けられる。
【0085】
この成形体のビカー軟化温度は、ISO306−B50によれば、有利には、少なくとも109℃、特に有利には112℃である。
【0086】
この成形体の基準の破断伸びは、ISO527に応じて、有利には少なくとも3.0%、特に有利には3.2%であることが望ましい。
【0087】
この成形体の弾性率は、ISO527によれば、有利には3200MPaより大きく、有利には3500MPaより大きい。
【0088】
更に、特に適した成形体は、ESCR法に応じた応力き裂抵抗性試験で30分間後に、外側繊維伸び1%で、基準の応力き裂抵抗性指数0.80より大である。
【0089】
使用
本発明による成形体は、特にコーティング、塗料又はシートとして使用されることができる。射出成形された成形体は、家庭用装置、通信用装置、ホビー用具又はスポーツ用具の部品として及び自動車構造、船舶構造又は飛行機構造におけるボデ部分としての又はボディ部分の部品として使用されることができる。車体部材または自動車の車体部材の一部分の典型的な例は、例えばスポイラー、ブラインド、屋根モジュールまたは外側ミラーケーシングである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、ESCR試験における3点曲げ配置を示す図である。
【図2】図2は、ESCR試験装置を示す図である。
【0091】
実施例
以下においては本発明を実施例により詳細に説明するが、これにより本発明の思想が制限されるべきでない。
【0092】
ポリマーマトリックスのために以下の成分a1)、a2)、b)及び/又はc)を使用した。
【0093】
成分a1)として以下のものを使用した:メチルメタクリラート75質量%、スチレン15質量%及び無水マレイン酸10質量%からなる、ISO1628−6に応じた、25℃、クロロホルムでの溶液粘度数、68ml/gを有する、市販のコポリマー、
成分a2)として以下のものを使用した:メチルメタクリレート99質量%とメチルアクリレート1質量%とからなる、25℃、クロロホルム中での溶液粘度(ISO 1628−第6部)約72ml/gを有する、市販のコポリマー。
【0094】
成分b)の製造
メチルメタクリレート6355g、スチレン1271gおよび無水マレイン酸847gからなるモノマー混合物に重合開始剤としての第三ブチルペルネオデカノエート1.9gおよび第三ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート0.85gおよび分子量調整剤としての2−メルカプトエタノール19.6gならびにパルミチン酸4.3gを添加する。
【0095】
生じる混合物を重合室中に充填し、10分間脱ガスする。その後に、水浴中で、水浴温度60℃で6時間、次に水浴温度55℃で30時間重合させる。約30時間後、重合混合物は、126℃で最大温度を達成する。重合室を水浴から除去した後、ポリマーを重合室中でなお117℃で7時間、空気箱中で温度処理する。
【0096】
生じるコポリマーは、透明で殆んど無色であり、48.7ml/gのV.N.(ISO 1628−6による溶液粘度、25℃、クロロホルム)を有する。このコポリマーの流動能をISO 1133により230℃および3.8kgでMVR=3.27cm3/10分間で測定した。
【0097】
この成分b)は、従って、メチルメタクリレート75質量%、スチレン15質量%および無水マレイン酸10質量%からなるコポリマーである。
【0098】
成分c)として以下のものを使用した:約53ml/gの25℃でクロロホルム中での溶液粘度(ISO 1628−第6部)を有する、メチルメタクリレート99質量%とメチルアクリレート1質量%とからなる市販のコポリマー。
【0099】
SANコポリマーとして、Dow Plastics社の(R)TYRIL 905UVを使用した。
【0100】
個々の成分からタンブルミキサーを使用してドライブレンドを製造し、これを次いで二軸押出機Leistritz LSM 30/34で配合化した。
【0101】
この個々の例の組成は第1表に示してある。
【0102】
第1表:
【表1】

【0103】
体積−流動指数MVR(試験規定ISO 1133:1997)を測定した。
【0104】
射出成形機械Battenfeld BA 350 CDで全ての材料から引張ロッド及び射出成形プレートを製造し、その特性について以下の方法により試験した:
ビカー(16h/80℃):
ビカーの測定
軟化温度(試験規定DIN ISO 306、1994年8月)
弾性率:弾性率の測定(試験規定 ISO527−2)
引張強度:破断点伸びの測定(試験規定 ISO527)
ΔE:3mmの射出成形プレートで測定:測定装置Color Eye 7000A、Mac Beth社;規定DIN5033、DIN6174
応力き裂形成(ESCR):
試験前に全ての試料を少なくとも24時間23℃/50%の相対湿度で貯蔵した。
【0105】
Bledzki教授(A. Bledzki, C. Barth, Materialpruefung 40, 10 (1998))によるESCR試験の際には、時間的に一定の外側繊維伸びが3点曲げ配置を用いて課せられる。試験体(寸法80mm×20mm×d、厚さd=4mm)は、L=64mmの間隔にある2つの支持体上で平らに配置される。
【0106】
この具体的な試験装置は図1及び2に示され、図1は、ESCR試験における3点曲げ配置を図示し、図2は、ESCR試験装置を示す(図1からの配置は、ここでは上下逆である)。この円柱状の支持体並びに押圧端部(Druckfinne)は、10mmの半径を有する。
【0107】
必要なたわみsの算出は、所定の外側繊維曲げε(試験体の真ん中で、押圧端部に対して逆側で)で、ISO 178に記載されたのと同様に行われ、以下の式に応じる:
【数2】

【0108】
このたわみsを、ぎざぎざが付いているねじを用いて調節した。εは、1%の値に調節した。外側繊維伸び(時間点T0)で開始した後に、2分間の維持時間待機し、第1の緩和現象を待機した。T=T1=2分間では、既に前もって真ん中に重ねられた、寸法50×10mm2を有する濾紙を、媒体(イソプロパノール)で湿潤した。T1まで、外側繊維伸びの維持のために必要であった力を、時間の関数として測定した。この濾紙を、測定の経過において媒体で常に湿潤したままにした。この測定を、試験体の破断(力=0)でもって、遅くとも30分間後に終了した。
【0109】
この工程を、3つの試験体について繰り返した。比較のためにこの力の経過を、試験体のためにも記録し、この試験体は、即ち、媒体無しに同じ外側繊維伸びに曝したものである。媒体の影響なしの試料では、測定された力の値がゆっくりと減少し、その一方で、媒体の影響下で試験した試料は、抵抗に依存してより迅速な力の減少を示した。
【0110】
応力き裂抵抗性ETnormの時間依存的な基準は、この実験の際に、外側繊維伸びの維持のために必要な力、媒体の影響ありFTmMと、媒体の影響なしFT0Mとの間の比から生じる:
【数3】

【0111】
この際、力は更にT1でのその値に関し、この結果時間点T1で:ETnorm=1である。図中の3つの曲線が得られ、この個々の試験体は媒体の影響有りである。それぞれの場合の参照は、媒体の影響無しの試験体のためのと同じ測定である。1に近い基準となるESCR係数は、良好なESCR抵抗性を、時間Tにわたる強力に減少するETnormの値は劣悪な抵抗性を示す。
【0112】
混合物及び相応する成形部品に対する試験の結果は、第2表から見ることができる。
【0113】
第2表:
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマー50.0質量%〜99.5質量%、及び
B)
i.ビニル芳香族モノマー70質量%〜92質量%、及び
ii.アクリルニトリル又はメタクリルニトリル又はその混合物8質量%〜30質量%、
iii.少なくとも1種の更なるモノマー0質量%〜22質量%
からなるモノマー混合物の重合から得られる、少なくとも1種のコポリマー0.5質量%〜50.0質量%
を組成物の全質量に対してそれぞれ含有する着色した組成物であって、
この組成物が50℃で0.15未満のΔEを有し、その際ΔEが式(1):
【数1】

[式中、
ΔL*:23℃での色座標L*と比較した色座標L*の変化
Δa*:23℃での色座標a*と比較した色座標a*の変化
Δb*:23℃での色座標b*と比較した色座標b*の変化を指す]
により定義され、
そして、この組成物が、25℃でクロロホルム中(ISO1628−第6部)で55ml/gより大きい溶液粘度を有する少なくとも1種の(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)を含有する
ことを特徴とする、着色した組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)が、25℃でクロロホルム中(ISO1628−第6部)で65ml/g以上の溶液粘度を有することを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
コポリマーB)が、
i.ビニル芳香族モノマー75質量%〜92質量%、及び
ii.アクリルニトリル又はメタクリルニトリル又はその混合物18質量%〜25質量%
を含有するモノマー混合物の重合から得られることを特徴とする、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)が、メチルメタクリラート、スチレン及び無水マレイン酸からなるコポリマーであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)が、
メチルメタクリラート50質量%〜90質量%、
スチレン10質量%〜20質量%、及び
無水マレイン酸5質量%〜15質量%からなるコポリマーであることを特徴とする、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)を、全ての(メタ)アクリラート(コ)ポリマーの全質量に対して少なくとも75質量%の量で含有することを特徴とする、請求項4又は5記載の組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)が、メチルメタクリラート少なくとも80質量%及び場合によりメチルメタクリラートと共重合可能な更なるモノマー20質量%までからなるホモポリマー又はコポリマーであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)が、メチルメタクリラート95質量%〜99.5質量%及びメチルアクリラート0.5質量%〜5質量%からなるコポリマーであることを特徴とする、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
25℃でクロロホルム中で(ISO1628−第6部)55ml/g以下の溶液粘度を有する少なくとも1種の低分子量(メタ)アクリラート(コ)ポリマーb)を更に含有することを特徴とする、請求項7又は8記載の組成物。
【請求項10】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーb)が、メチルメタクリラート、スチレン及び無水マレイン酸からなるコポリマーであることを特徴とする、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーb)が、
メチルメタクリラート50質量%〜90質量%、
スチレン10質量%〜20質量%、及び
無水マレイン酸5質量%〜15質量%
からなるコポリマーであることを特徴とする、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
(メタ)アクリラート(コ)ポリマーa)及びb)が、(メタ)アクリラート(コ)ポリマーの全質量に対して、以下の量比:
a)25質量%〜75質量%、
b)25質量%〜75質量%
で存在することを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
助剤として滑剤が含有されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
離型剤としてステアリルアルコールが含有されていることを特徴とする、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
組成物が、1.2cm3/10分より大きい、ISO 1133に応じて230℃及び3.8kgで測定した体積−溶融指数MVRを有することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
顆粒の形態にあることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
組成物が80℃で0.3未満のΔEを有することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の組成物を成形することを特徴とする、成形体の製造方法。
【請求項19】
組成物を押出又は射出成形することを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
成形体が50℃で0.15未満のΔEを有することを特徴とする、請求項18又は19記載の方法により製造可能な成形体。
【請求項21】
80℃で0.3未満のΔEを有することを特徴とする、請求項20記載の成形体。
【請求項22】
次の特性:
a.ISO306−B50に応じたビカー軟化温度少なくとも109℃、
b.ISO527に応じた名目上の破断伸び少なくとも3.0%及び/又は
c.3200MPaより大きいISO527に応じた弾性率
の1又は複数を有することを特徴とする、請求項20又は21記載の成形体。
【請求項23】
1%の外側繊維伸びで30分後にESCR法に応じた応力き裂抵抗性試験で0.80より大きい標準化した応力き裂抵抗係数を有することを特徴とする、請求項20から22までのいずれか1項記載の成形体。
【請求項24】
半製品、コーティング、塗料又はシートとしての請求項20から23までのいずれか1項記載の成形体の使用。
【請求項25】
家庭用装置、通信用装置、ホビー用具又はスポーツ用具の部品としての及び自動車構造物、船舶構造物又は飛行機構造物におけるボディ部分としての又はボディ部分の部品としての請求項24記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−529241(P2010−529241A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510707(P2010−510707)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053183
【国際公開番号】WO2008/148587
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】