高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法
【課題】核拡散抵抗性と廃棄物の発生量を最少化する親環境性を具有しながら、使用済核燃料からウランだけを選択的に分離して回収する。
【解決手段】炭酸塩溶液の溶解槽内で、ウラン酸化物酸化−還元平衡電圧と、プルトニウム酸化物、ネプツニウム酸化物、アメリシウム酸化物の酸化−還元平衡電圧間の酸化力を有する過酸化水素によってウランだけを溶解させるウラン溶解−浸出の段階と、有機沈殿剤によるCsとTcを沈殿分離させる段階と、前記ウランを包含する炭酸塩溶液をウラン沈殿槽において酸によりpH2〜4に調整することによって、ウランをUO酸化物形態に沈殿させると共に発生する二酸化炭素ガスを吸収して炭酸塩にリサイクルさせるようにするウラン沈殿−炭酸塩回収段階と、ウランと炭酸塩が抜き出した溶液内に残存する不純物の金属イオンを除去しながらウラン沈殿−炭酸塩回収段階で使用された酸とアルカリ溶液を回収する段階を包含する。
【解決手段】炭酸塩溶液の溶解槽内で、ウラン酸化物酸化−還元平衡電圧と、プルトニウム酸化物、ネプツニウム酸化物、アメリシウム酸化物の酸化−還元平衡電圧間の酸化力を有する過酸化水素によってウランだけを溶解させるウラン溶解−浸出の段階と、有機沈殿剤によるCsとTcを沈殿分離させる段階と、前記ウランを包含する炭酸塩溶液をウラン沈殿槽において酸によりpH2〜4に調整することによって、ウランをUO酸化物形態に沈殿させると共に発生する二酸化炭素ガスを吸収して炭酸塩にリサイクルさせるようにするウラン沈殿−炭酸塩回収段階と、ウランと炭酸塩が抜き出した溶液内に残存する不純物の金属イオンを除去しながらウラン沈殿−炭酸塩回収段階で使用された酸とアルカリ溶液を回収する段階を包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法に関する。より詳細には、使用済核燃料から超ウラン元素であるTRU(TRans Uranium:Pu、Np、Am、Cm)核種が溶解されない核拡散抵抗性と廃棄物の発生量を最少化する親環境性を具備しながら、使用済核燃料からウラン(以下、Uと略記することもある)だけを回収することのできる高アルカリ炭酸塩溶液系を利用して使用済核燃料からウランだけを分離して回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石エネルギー使用の増大による地球温暖化と、これによる環境災害の増悪、また、石油資源の枯渇を見通すことによる石油資源の民族主義化は、全世界的にクリーンエネルギーの安定的供給源を確保するための激しい競争を誘発せしめている。このような趨勢によって、2001年からIAEAによるGEN−IV(Generation IV)概念と、2003年米国のDOE(Department of Energy)によるAFCI(Advanced Fuel Cycle Initiative)と、2006年のGNEP(Global Nuclear Energy Partnership)概念を通じて次世代核燃料周期の概念が導入されている。このようなプログラムにおいて新たに考慮されている全ての核燃料周期の概念には、資源の効果的な再活用性と親環境性を通じる持続性(Sustainablity)、核拡散抵抗性(Proliferation resistance)と、システムの安定性と信頼性などを求めている。
【0003】
GEN−IV及びGNEPにおいては、原子炉で核燃料を燃焼させた後に発生する使用済核燃料の再循環、または、処理技術の開発と関連して高い核拡散抵抗性とともに廃棄物の発生が最少化される親環境的使用済核燃料の処理技術の開発を基本的な前提としている。原子力発電所で燃焼させた後の使用済核燃料を処理するための後行核燃料周期の技術においては、使用済核燃料を処理する方法の特性に従って大きく湿式処理と乾式処理に分けられる。
【0004】
湿式処理方法は、強酸によって使用済核燃料を溶解させた後、連続する殆ど全ての単位工程などにおいて溶媒抽出法を使用して目的によって核種を分離処理する方法であり、乾式処理方法は、使用済核燃料を高温の溶融塩状態に転換して電解法によって核種を分離する方法である。代表的な使用済核燃料の湿式処理方法として知られている、PUREX(Plutonium URanium EXtraction)は、専ら、UとPuだけの高純度分離を考慮した処理方法であって、核拡散抵抗性においては致命的欠陥を有し、廃棄物発生量の最少化に対する概念が無いため、次世代核燃料周期においては、絶対的に止揚されるべき使用済核燃料の処理概念となる。現在、最も注目を受けている次世代湿式処理方法は、UREX+(URanium EXtraction Plus)であって、米国のAFCI報告書に提示されてGNEPプログラムに適用される予定となっている。ここでは、使用済核燃料から放射性毒性を除去してUだけを天然U水準の高純度に分離し、これを低準位廃棄物化して浅層処理を可能にすることによって高準位廃棄物の処理能を40〜60倍に増大させるとともに、または、回収されたUの再活用を一次的目標としている。このとき、Puは単独に分離されなく、TRUとともに常に混在される状態を維持することによって、核拡散抵抗性があるとして評価されている。また、GENPでは、より高度化されたUREX+ II、III、IVのシナリオによって、主に溶媒抽出法に基づいて化学的特性に従って一連のTRU核種を分離して、使用済核燃料の再活用及び高準位廃棄物の発生量を最少化することにより、高準位廃棄物の処理用の敷地能を一層増大させるための研究を進めている。米国より先立って、EUと日本国で研究している様々な湿式工程も大部分高い分離効率を有する溶媒抽出方法を使用して廃棄物の発生量を最少化させ、使用済核燃料の有用核種を再循環させることを目標としている。
【0005】
使用済核燃料の乾式処理方法は、PYROX process(PYRO−metallurgy process)と称するが、ここでは500℃以上のLiCl、または、LiF溶融塩の雰囲気下で使用済核燃料から一連の電解方法によって、U、TRU、RE(Rear Earth:希土類)などを分離することであって、1960年代から米国を中心に日本国、ロシアなどで研究されている使用済核燃料の処理技術である。このような乾式処理方法は、核種の高純度分離の難易性及びPuがTRUなどとともに混在されて挙動することにより、核拡散抵抗性があると評価されているが、多くの高準位廃棄物の発生、高温溶融塩の雰囲気下で必要とする耐蝕材料の不十分な開発と実証技術の不十分などが解決するべき問題として残っている状態である。
【0006】
現在、米国、日本、EUなど先進国では、乾式工程に有する問題、即ち、操業の安定性、耐蝕性材料の開発、高純度分離などの問題を解決するためには、長期間を要する関連研究と開発が必要であると判断され、先ず、湿式分離法を開発して使用済核燃料の処理、及び、これから発生する高準位廃棄物の処理を基本概念として採択している。米国の場合、湿式分離技術は、2015年に実用化を目標として推進する一方、乾式分離技術の実用化は、2030年以後の実現を目標に設定し、湿式工程に係る開発を乾式工程の開発より優先する方針を取っている。
【0007】
溶媒抽出法に基づいて開発されている大部分の湿式処理方法は、低温操作による操業の安定性、運転の連続性、技術的成熟度など乾式方法に比べてメリットが多いにも拘らず、核拡散抵抗性に弱いと思われる理由は、使用済核燃料が強酸によって溶解されることのために発生する使用済核燃料の溶解された溶液自体が酸性であることと、今まで知られた大部分の多様な有機溶媒抽出剤が酸性雰囲気下でのみ抽出能を有することによって、既に開発された溶媒抽出剤によるPuの独立的分離可能性が高いことと、また、Puを分離するための代表的な湿式工程であるPUREXで使用される溶媒抽出と関連された技術的類似性が存在するためである。
【0008】
1990年代の中盤以後、日本国では、従来の使用済核燃料の溶解法とは別に、低温において炭酸塩媒質の非酸性系を使用して使用済核燃料の低温酸化溶解を可能にする方法を提示し、以後、溶媒抽出法とは異なる沈殿法を使用して、Puは単独で分離されないと共に、UとTRUとが同時に核分裂生成物(FP:Fission Product)からの高純度分離が可能になる方法を提示した。
【0009】
また、2003年米国LANL(Los Alamos National Laboratory)も、AFCI comparison報告書を出し、冷却結晶化によるU沈殿法を使用する湿式工程を、既存の湿式工程の前半部にUだけを大量に除去するプロセスを挿入した工程を提示しながら、廃棄物発生の側面から見て既存の溶媒抽出法だけを使用する湿式工程に比べて高いメリットがあることを報告した。したがって、このような公開資料によれば低温非酸性である炭酸塩溶液による溶解と沈殿法を使用して使用済核燃料からUだけを分離する方法は、核拡散抵抗性と親環境性及び操業安定性を同時に具現する湿式工程開発の可能性を有するようにした。
【0010】
本発明が属する従来の使用済核燃料の処理技術において、使用済核燃料から、炭酸塩溶液系を使用する湿式方法によってUを回収する技術に関連する韓国内の特許はなく、また国外においても炭酸塩媒質を使用するU沈殿法に関する特許や公開技術は極稀な状態である。既に公開技術として広く知られているPUREX法や、UREX法などは、基本的に溶媒抽出法に基づく湿式工程であって、本発明とは技術的類似性がなく、技術的目標も相違する。次に掲示する特許文献1乃至5などは、炭酸塩溶液系を使用してUを分離する技術に関することであるが、これらは使用される媒質の条件、目的及び方法が本発明とは相異し、これらはUを除去するための単一工程であって本発明が追求する工程の目的とは全く相異する。また、特許文献6は、アクチニド物質であるPu、Npをアルカリ条件で分離するためのことであって、やはり目的と方法が本発明と相異し、特許文献7と8は、炭酸塩またはアルカリ条件でUを沈殿分離させるための工程に関することであって、使用される単位工程技術と沈殿方法及び沈殿条件が本発明における研究とは相異する。特許文献9は、廃棄物から炭酸塩溶液を利用してUを回収する技術に対して言及しているが、その過程と目的及び工程の構成が本発明とは相異する。特許文献10は、U原鉱からアルカリ媒質によってUを回収することであるが目的及び方法が本発明とは相異する。特許文献11及び非特許文献1は、炭酸塩系を使用して使用済核燃料を処理するための方法を提示しているが、ここでは、使用済核燃料からU、Pu、Npを炭酸塩溶液によって同時に溶解させることを目的とし、これらの物質が沈殿された後、必要とする追加的単位工程の目的と構成の方法がやはり本発明とは全く相異する。
【特許文献1】米国特許4,410,487
【特許文献2】米国特許4,436,704
【特許文献3】米国特許4,460,547
【特許文献4】米国特許4,675,166
【特許文献5】米国特許4,696,768
【特許文献6】米国特許5,640,668
【特許文献7】米国特許4,410,497
【特許文献8】米国特許6,471,922
【特許文献9】米国特許5,384,104
【特許文献10】米国特許4,305,911
【特許文献11】日本特許P1997−113681
【非特許文献1】J.Nucl.Sci.&Tech.,Vol.43,p.255−262,(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1目的は、核拡散抵抗性と廃棄物の発生量を最少化する親環境性を有しながら、使用済核燃料からUだけを選択的に分離して回収することのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法を提供することにある。
【0012】
本発明の第2目的は、使用済核燃料からTRU核種と大部分のランタニド及び遷移金属核種が混合された固形物状態に分離させながら、浅層処理を可能にする天然Uレベルの放射能毒性水準を具有するように、高純度のUを分離して回収することのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法を提供する。
【0013】
本発明の第3目的は、使用済核燃料の95%以上を占めているUを使用済核燃料から除去して使用済核燃料を処分するための敷地を拡大させるとともに、使用済核燃料の効果的な管理を維持することのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法を提供する。
【0014】
本発明の第4目的は、炭酸塩溶液系によって、核種らの酸化−還元平衡電位の差異と、これらの核種の溶解度の差異を利用して使用済核燃料からのUだけを選択的に溶解させることのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法を提供する。
【0015】
本発明の第5目的は、常温の炭酸塩溶液系によって使用済核燃料に包含されているUだけを選択的に酸化させて、これを炭酸塩イオン錯体の形態に溶解させるとともに、残りのTRU核種とその他の核分裂生成物質などは、不溶解残滓物、または、水酸化物の状態で混合・沈降−沈殿させることによって、Uを効率的に分離することのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済燃料からのウラン回収方法を提供する。
【0016】
本発明の第6目的は、炭酸塩溶液のpHを酸で調節することによって、UをUO4形態にして沈殿回収する方法と、Uが除去された炭酸塩溶液から残余不純物の金属イオンを除去して、炭酸塩溶液を使用済核燃料の溶解浸出槽にリサイクルさせることのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウランを分離して回収する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、pH11〜pH13の炭酸塩溶液の溶解槽内に、ウラン酸化物(UO2)酸化−還元平衡電圧と、プルトニウム酸化物(PuO2)、ネプツニウム酸化物(NpO2)、アメリシウム酸化物(AmO2)の酸化−還元平衡電圧間の酸化力を有し、使用された後、固体残存物を残さない過酸化水素(H2O2)のような酸化剤を使用して、前記炭酸塩溶液によって使用済核燃料からUO2を溶解させるプロセスにおいて、PuO2、NpO2、AmO2などのTRU酸化物は、不溶解の状態で沈殿されるようにする、ウラン溶解−浸出の段階を有する。ここで、炭酸塩溶液によって溶解されたUは、炭酸塩溶液で高い溶解度を有するウラニルオキソ炭酸塩の錯体イオン(UO2(O2)x(CO32−)y2−2x−2yの複雑な形態で存在する。前記炭酸塩溶液は、0.1M〜3.0MのH2O2が包含される0.1M〜3.0Mの炭酸塩(Na2CO3)溶液である。
【0018】
また、本発明は、前記Uが溶解されている炭酸塩溶液からCs、Tcを分離させるセシウム−テクネチウムの沈殿段階を包含する。前記セシウム−テクネチウムの除去段階において、Cs沈殿剤は、NaTPB(Sodium TetraPhenyl Borate)を使用し、Tc沈殿剤は、TPPCl(Tetraphenyl PhosPhonium Chloride)を使用する。
【0019】
また、本発明は、Cs、Tcが除去されたUを含有する炭酸塩溶液からUを沈殿させるとともに、炭酸塩を回収するために、Uが溶解された炭酸塩溶液に酸を供給するウラン沈殿−炭酸塩回収の段階を包含する。このとき、Uが溶解された炭酸塩溶液を溶液のpHが2〜4に到達するように調節することにより、溶液中のウランオキソ炭酸イオン錯体が分離され、ウラニル過酸化物(UO4)の形態で沈殿されるとともに、ウランオキソ炭酸イオン錯体から分離された炭酸塩イオン(CO32−)と溶液中のフリー(free)炭酸塩イオンとが二酸化炭素に変換されてガス状態で溶液外に排出される。このとき、排出された二酸化炭素ガスが、苛性ソーダ(NaOH)のようなアルカリ溶液が循環されるガス吸収塔から炭酸塩溶液にさらに変換されて回収されるようにする、炭酸塩回収段階を酸の添加によるウラン沈殿段階に包含させる。このとき、炭酸塩溶液のpHは溶液に酸を直接添加するか、対象炭酸塩溶液をカチオン交換膜を有する電解槽の陽極室に注入して陽極で水分解反応により生成される水素イオン(H+)によって調節することができる。
【0020】
また、本発明は、カチオン交換膜とアニオン交換膜を使用する電解透析法によって、前記のウラン沈殿−炭酸塩回収段階でUと炭酸塩が除去されて酸性化された溶液に残っているモリブデン(Mo)、テルル(Te)などの不純物金属イオンを除去するとともに、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で使用された酸と、アルカリ溶液を回収するための酸−アルカリ回収段階をさらに包含する。
【発明の効果】
【0021】
上述のように、本発明は、炭酸塩溶液でUO2酸化−還元平衡電圧と、PuO2、NpO2、AmO2の酸化−還元平衡電圧間の酸化力を有するH2O2のような酸化剤によって、使用済核燃料からUだけを+6価に酸化させて、炭酸塩イオン錯体の形態で溶解−浸出させるが、Pu、Np、Am、CmなどのTRU酸化物は不溶解となり、また、大部分の核分裂生成物の核種酸化物らも不溶解にされるか、一部が溶解されても加水分解沈殿になって、TRU酸化物と混合されて沈殿されることによって、使用済核燃料からUを溶解浸出させる過程においてPu、Npなどが単独で分離される経路が遮断されることにより、本発明で開示する工程が、高い核拡散抵抗性を有することになる。また、使用済核燃料の溶解段階において酸を使用しないことは、湿式工程における溶解装置の腐食問題を解決することができるので、操業の安定性を確保することができる。
【0022】
また、本発明においては、使用済核燃料の処理において、溶媒抽出法が全く使用されないことによって、溶媒抽出技術を使用して容易にPuを単独分離することのできるPUREX法、UREX法などの既存湿式工程と技術的類似性がない。また本願発明によって開発された技術は、核拡散抵抗性をさらに増大させ、溶媒抽出法に有する問題である多量の有機廃液の発生が根本的に解決されるので、一般的溶媒抽出法を使用する湿式工程に比べて廃棄物の発生が最少化されるとともに、溶媒抽出剤などの有機蒸気による火災の危険性が根本的に排除され、さらに、pHの調節による沈殿装置は、溶媒抽出装置に比べて簡単である。また、本願発明で提示する技術は、廃棄物の発生が最少化されるだけでなく、工程の単純化と共に操業の安定性も強化させることができる。
【0023】
また、本発明においては、Uを回収した後、電気化学的な方法を使用して、本発明の工程内で使用された炭酸塩溶液、及び、Uの沈殿に使用された酸−アルカリ溶液を全量回収してリサイクルさせることができるため、全体的工程内における2次廃棄物が殆ど発生されないか、発生されても最少化されるので非常に高い親環境性を有することができる。
【0024】
したがって、本発明の炭酸塩溶液系による常温での溶解浸出−沈殿分離の組合せ技術は、今まで知られたどの方法より高い核拡散抵抗性と環境親和性を同時に具現するとともに、使用済核燃料からUだけの浅層処理を可能にするレベルの高純度で回収することができるため、使用済核燃料を処理する時、高準位廃棄物処分場の処理能を増大させることと、使用済核燃料の大部分を占めるUの再活用を可能にして効果的な使用済核燃料の管理方案として活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、酸化剤であるH2O2を含有する炭酸塩溶液を使用して、使用済核燃料に含有されているTRU核種と、その他大部分の核分裂生成物などを、不溶解の残宰物または水酸化物の状態で沈降、または、沈殿させながらウランだけを選択的に炭酸塩溶液系によって溶解浸出させる。その後、使用済核燃料からUと一緒に浸出されたCs、Tcを有機沈殿剤によって分離し、炭酸塩溶液に溶解されているUは、酸の添加によってpHを調整してUを沈殿させるとともに、発生される二酸化炭素ガスを炭酸塩溶液に変化させてリサイクルを可能にし、電解的透析法によってUの沈殿と炭酸塩回収段階で使用された酸−アルカリ溶液を回収し、最終的に残余不純物の金属イオンを分離するように構成されている。
【0026】
即ち、本発明は、UO2酸化−還元平衡電圧と、PuO2、NpO2、AmO2の酸化−還元平衡電圧間の酸化力を有しながら、pH11〜13を有する0.1M〜3.0Mの過酸化水素を含有する0.1M〜3.0Mの炭酸塩(M2CO3:M=Na、Li、K)溶液に使用済核燃料を取り入れて、Uだけをウランオキソ炭酸塩錯体(UO2(O2)x(CO3)y2−2x−2y)の形態に溶解させるウラン溶解−浸出段階と、前記ウラン溶解の段階時において一緒に溶解されたCs、Tcを選択的に分離させる沈殿剤としてNaTPB、TPPClを使用するセシウム−テクネチウム沈殿段階と、その後、Cs、Tcが除去されたUを含有する炭酸塩溶液のpHを2〜4に調整してウランオキソ化合物をウラン過酸化物(UO4)の形態で沈殿分離するようにするU沈殿と、この過程で発生する二酸化炭素ガスをNaOHのようなアルカリ溶液が循環されるガス吸収塔を使用して炭酸塩を同時に回収するウラン沈殿−炭酸塩回収段階と、U溶解の過程でウランとともに溶解された一部の不純物核種であるMo、Teなどを分離して除去し、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で使用された酸とアルカリ溶液を回収して残余の金属不純物を除去・分離するために、カチオン交換膜とアニオン交換膜を具備する電解透析法による酸−アルカリ回収段階を有してなる。
【0027】
また、本発明は、ウラン溶解浸出段階で不溶解になったTRU核種及びその他の核種の沈殿物と、セシウム−テクネチウムの除去段階において発生するCs、Tcの沈殿物、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で分離されたU、及び酸−アルカリ回収段階において発生する金属不純物をそれぞれ熱処理して酸化物に固定する固定化段階をさらに包含する。
【0028】
前記ウラン沈殿−炭酸塩回収段階においてUを含有する炭酸塩溶液のpHを調節するための方法は、図15に図示したように、溶液に直接硝酸(HNO3)のような酸を加えてpHを調節する酸適正方法と、カチオン交換膜を有する電解槽の陽極室にUを含有する炭酸塩溶液を注入し、陽極室で水分解によって発生する水素イオン(H+)によってpHを調節する電解適正方法を使用することができる。
【0029】
また、炭酸塩溶液に水素イオンが供給される場合、溶液中の炭酸塩イオン(CO32−)が二酸化炭素に変換されて溶液系の外に放出されるが、これを回収するためには、U沈殿のために溶液に直接酸を使用する場合には、U沈殿槽から放出される二酸化炭素ガスの排出ラインをU沈殿槽の外部に具備されたガス吸収塔の下部に連結し、NaOHのようなアルカリ溶液をガス吸収塔の上部に注入して、気−液接触を通じて二酸化炭素を炭酸塩に転換させて再び回収する。U沈殿のために、カチオン交換膜を具備する電解槽を使用する場合には、陰極室の溶液がガス吸収塔の上端に連結されて循環されるようにし、Uを含有した炭酸塩溶液を陽極室に注入されるようにした後、陽極で水分解反応によって生成される水素イオンにより炭酸塩溶液を酸性化させながら、二酸化炭素ガスが陽極室から放出されるようにし、放出される二酸化炭素ガスは、陰極室と連結されたガス吸収塔の下部に導入されるようにする。このとき、陽極室で炭酸塩イオンが二酸化炭素で放出されると、残る炭酸塩のカチオン(炭酸塩としてNa2CO3を使用した場合はNa+)は、カチオン交換膜を通じて陰極室に移動するため、陰極で水分解反応によって生成される水酸基イオン(OH−)と反応して外部からの供給なしに自体的にアルカリ溶液(例えば、Na+、OH−)が生成されるので、この陰極溶液をガス吸収塔の上部に循環させて陽極室から排出される二酸化炭素と反応させて、再び炭酸塩溶液にして(例えば、Na2CO3溶液)回収するようにする。このとき、陽極室の炭酸塩溶液が二酸化炭素とカチオンで陰極室に移動されて溶液系から抜け出すと、陽極溶液の電気伝導度が低下して電解反応が難しくなる。これを防止するためにウラン溶解−浸出槽で使用される陽極溶液である炭酸塩溶液のカチオンと同様のカチオンを有する支持溶液(例えば、炭酸塩溶液でNa2CO3を使用する場合、NaNO3溶液)を陽極室に注入して炭酸塩溶液と混合するようにする。このように、支持溶液をさらに添加する場合、陽極溶液の中、2価以上の金属イオン(本発明ではウラン錯体イオン:Mo、Teなど)と、陽極溶液の支持電解質に使用されるアニオンは、カチオン交換膜を通過することができなく、陽極溶液にそのまま残留するようになって、酸−アルカリ回収段階において処理されるようになる。
【0030】
以下、本発明を図1を参照して詳細に説明する。図1は、使用済核燃料から核拡散抵抗性と環境親和性とを有しながら、ウランだけを分離して高準位処分対象の体積を減少させるための工程の模式図である。まず、使用済核燃料から炭酸塩溶液によってUだけを溶解−浸出させるウラン溶解−浸出槽1と、ウラン溶解浸出槽1でUと一緒に同伴溶解されたCsとTcとを沈殿分離するセシウム−テクネチウム沈殿槽2を有し、その後、pHの調整によってウランを沈殿分離させるU沈殿槽3、U沈殿槽3から発生する二酸化炭素を炭酸塩にして回収するためのガス吸収塔4、ウラン溶解浸出槽1で使用された炭酸塩とU沈殿槽3とガス吸収塔4で使用された酸とアルカリ溶液を回収するための酸−アルカリ回収電解槽5によって構成される。また、ウラン溶解浸出槽1で沈殿された不溶解沈殿物であるTRU核種と、その他の核分裂生成物の核種混合沈殿物6と、セシウム−テクネチウム沈殿槽2で沈殿されたセシウム−テクネチウム有機沈殿物7と、酸−アルカリ回収電解槽5で排出される金属イオン9(金属不純物)などは、熱処理による酸化物で固定化段階を経て高準位廃棄物の処分場、または、これらの沈殿物から放射性毒性物質を一層さらに除去するための後続段階に移動させる一方、U沈殿槽3から回収されたウラン沈殿物8は、酸化物による安定化を通じて中低準位処分場、またはUをリサイクルするための後続段階に回される。
【0031】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0032】
使用済核燃料の溶解
はじめに、炭酸塩溶液によって使用済核燃料内のUだけを選択的に溶解させる過程を説明するためには、炭酸塩溶液系によって使用済核燃料に包含されている核種らの溶解メカニズム(Dissolution mechanism)と、これら核種の溶解度(Solubility)と関連されたイオンの溶液化学的(Aquatic chemistry)特性を理解しなければならない。使用済核燃料の溶解に関する化学的影響変数としては、接触溶液の酸化力、溶液系のpH、核種の溶解度、溶液中に存在するアニオンなどで大きく影響を受け、また、物理的影響変数としては、使用済核燃料の体積と溶液の体積比、攪拌速度、温度などで影響を受けるようになる。
【0033】
下記の表1には、使用済核燃料を構成する主要核種の種類と、これらの核種が有することのできる最大酸化価、また、使用済核燃料内に存在する実際酸化価の状態が一緒に表示されている。使用済核燃料内に存在する全ての核種は、大部分が酸化物の形態で存在し、全体重量の95%はU、約1%のTRU(この中Puは0.9%)、その他、核分裂生成核種が約4%を占めている。溶液において如何なる金属がその金属に有することのできる最大酸化価の状態で酸素と量論的に結合されている場合、その金属酸化物は非常に安定的であるため、酸化の条件が与えられても溶解されることが難しい。しかし、金属酸化物がその金属に有することのできる最大酸化価より低い状態で酸素と結合されているとすれば、
【0034】
【表1】
【0035】
その金属酸化物は、酸化条件からより高い酸化価状態に変わりながら溶液中にイオンで溶解される可能性が高くなる。このとき、その金属イオンの溶解度は、その酸化物が接する溶液の条件によって影響を受けることになる。本発明は、このような条件を利用することであって、水素イオンが殆ど存在しない高アルカリ条件の炭酸塩溶液によって使用済核燃料内における最大の酸化価状態で酸素と結合されない核種の酸化物に酸化条件を与えることによって溶解を可能にしたことである。また、実験的に測定された使用済核燃料内の核種の中、その核種に有することのできる最大酸化価状態ではない状態で存在する核種は、例えば、代表的にU、Pu、Np、Am、Cs及びTc、Moなどになる。核分裂生成核種の酸化物は、原子炉において核燃料であるU酸化物(UO2)内のUが核変換されて生成されるため、+4価以上の酸化価として存在することのできるPu、Np、Am、Cs及びTc、Mo核種は、UO2のように酸素原子2つが結合された最大+4より低いMO2(M:Metal)、M2O3、または、MOx、(0<x<2)の形態で存在するようになる。炭酸塩溶液によって溶解可能な核種の実際の溶解性は、その核種がより高い酸化状態に変換されるための酸化−還元平衡電位(Redox equilibrium potential)、接触する溶液リガンドとの結合力、また、その金属酸化物結晶の安定性などに影響を受けるのでこれらに対する理論的予測は非常に難しい問題になっている。
【0036】
使用済核燃料の酸化溶解のメカニズムは、正確に究明されていないが、炭酸塩溶液によるUO2の溶解メカニズムは、下記のような複雑な過程を通じて溶解されることが知られており、PuO2とNpO2も類似の経路を経て溶解されることと推定されている。即ち、一般的にウラン酸化物であるUO2の溶解は、酸化価+6価状態で起り、その溶解過程は非可逆的であると知られている。UO2の溶解過程は、U5+の表面中間生成物(Surface intermediate)が形成されて起り、UO2がUO3になるための酸素は水から得られる。したがって、一般的に知られているUO2の溶解過程は下記のような経路を有する。
【0037】
【0038】
これをより詳細に説明すると、酸化条件において核燃料UO2の加工焼結の時に、結晶粒系(Grain boundary)に残存する非化学量論的酸化物(Non−stoichiometric oxide)が先に酸化され、次いで、UO2結晶がUO2.33(U3O7)に酸化される。
【0039】
UO2.33は、U6+とU4+との混合、または、U5+とU4+との混合状態で、UO2.33の生成によってUO2内のU4+の減少がなされる。UO2内の+5価酸化物が最終的にUO3に酸化されるとき、表面で接触する溶液が酸性である場合は、ウラニルイオンであるUO22+になり、アルカリである場合は、UO2(OH)3−イオンに変化し、溶液が炭酸塩溶液である場合は、CO32−と結合して複雑な形態のウラン炭酸塩イオン錯体(Uranium carbonato complex:(UO2(CO3)22−、UO2(CO3)34−)を形成して溶解される。Np、Puも類似する炭酸塩錯体の形態で存在することと推定される。また、炭酸塩溶液にH2O2が存在する場合、U、Np、Puは、オキソ炭酸塩錯体の形態で(MO2(O2)x(CO3)y2−2x−2y:M=U、Np、Pu)溶解され、これらは、H2O2がない場合に生成されるウラン炭酸塩イオン錯体に比べて非常に高い溶解度を有している。
【0040】
使用済核燃料核種の酸化−還元平衡電位
上述のように、+4価状態のアクチニド核種(U、Pu、Np、Am、Cm)の酸化物が溶解されるためには、まず、+4価のアクチニド核種の酸化物が+6価への酸化が必要になるため、Pourbaix diagramからU、Pu、Np酸化物の酸化−還元平衡電位を確認することが必要である。これらの核種が溶解されるためには、+4価状態のU、Pu、Np、Am酸化物(MO2:M=U、Np、Pu、Am)が、まず、+6価の状態に酸化されなければならなく、これらの酸化物の平衡酸化−還元の反応式は、下記に示すように、pHの影響を受ける。U酸化物の酸化−還元平衡電位は、U、Pu、Np、Am酸化物の酸化−還元平衡電位とそれぞれ約1.12V、0.942V、1.16V程度の大きな差異があるため、使用済核燃料からU酸化物だけが溶解される適切な酸化電位条件で使用済核燃料からUだけを容易に+6価に酸化させることができ、炭酸塩溶液においては高い溶解度を有するウラン−炭酸塩イオン錯体になって使用済核燃料から多量のUを溶解させることができる。
【0041】
【0042】
使用済核燃料を炭酸塩溶液系によって溶解させるために化学酸化剤を使用する場合、他の2次廃棄物が発生してはならないため、化学酸化剤としてK2S2O8、NaOCl、H2O2などを使用することができるが、使用済核燃料が溶解された後、固形物の2次廃棄物を残す可能性があるK2S2O8、NaOClは、本発明ではこれを除いてH2O2を使用する。H2O2の酸化−還元平衡電位の特性は、UO2に対しては酸化剤で、その他、TRU酸化物に対しては還元剤として作用される。H2O2は、アルカリ媒質においてはHO2−に解離され、溶液におけるH2O2とHO2−の酸化及び還元反応は下記のように整理される。
【0043】
H2O2の解離反応:
【0044】
H2O2の還元反応:
【0045】
H2O2の酸化反応:
【0046】
前記アクチニド酸化物とH2O2の酸化−還元平衡電位式から図2のようなpHによるH2O2とアクチニド酸化物の酸化−還元平衡電位の関係図を作成することができる。ここで、水溶液にH2O2とTRU酸化物が共存する時、UのUO2−UO3平衡電位がH2O2の酸化電位より低いため、H2O2はUO2酸化物に対して酸化剤として作用し、Pu、Np、AmのMO2−MO3平衡電位は、H2O2の平衡電位より高いため、H2O2はこれらのMO2酸化物に対して還元剤として作用する。したがって、H2O2を含有する炭酸塩溶液によっては2次廃棄物が発生することなしに使用済核燃料のPu、Np、Am酸化物は全く溶解されないまま、Uだけが選択的に溶解されるようになる。
【0047】
使用済核燃料からUだけの選択的溶解−浸出
上述のように炭酸塩溶液によって使用済核燃料を溶解させる時に、Uだけを炭酸塩溶液に十分溶解されるようにするためには、溶解系にウラン酸化物だけを+6価に酸化させ、Pu、Np、Am酸化物は、+6価で酸化されない適切な酸化剤の添加や酸化電位を供給することによりUだけを+6価で酸化させた後、炭酸塩イオンと錯体を形成しなければならない。使用済核燃料内の核種が使用済核燃料の酸化物構造(Matrix)から抜け出してイオンになる溶解速度は、酸化−還元平衡電位と酸化物の材料的構造特性に影響を受けるとともに、使用済核燃料と接する溶液での溶解度に影響を受けることになる。図3には、文献Separation Science & Technology[Vol.35,p2127−2141(2000)]で発表した炭酸塩濃度1MでpHに従って理論的に計算された+6価のUと、+4価のPu溶解度の値が示されている。この資料によれば、Pu+4は、pH11.5以前までは炭酸塩イオンと錯体を形成して高い溶解度を有することができるが、それ以上のpHでは溶解度は殆ど0に近くなり、+6価のUは、pH約12.5以上まで炭酸塩イオンと錯体形成を通じて高い溶解度を維持していることを確認することができる。このような溶解度特性を利用すると、pHが11.5〜12.5程度の炭酸塩溶液で使用済核燃料からUだけを選択的に溶解させる酸化条件を印加するとき、上述のようなUに比べて、Puは極低い溶解度を有するため、Puが炭酸塩イオンと結合して溶解されても加水分解され沈殿物として存在することになるため、炭酸塩溶液においてはPuは殆どなくUだけが存在することになる。図4では、炭酸塩Na2CO3濃度によって計算された炭酸塩溶液のpH値が示されている。ここで、使用済核燃料からウランを選択的に溶解させる時に、Na2CO3濃度を0.1M以上にする場合、この炭酸塩溶液のpHは、11.6以上を維持することができるため、使用済核燃料からのUの選択的溶解−浸出の時の炭酸塩溶液に少量のPuが溶解されていても、このPuが加水分解沈殿されるpHのためには、Na2CO3濃度を0.1M以上にすることが必要であることがわかる。
【0048】
実際、使用済核燃料を使用して直接溶解実験を実施することはできないが、本発明のために製造されたUO2とNpO2を利用する溶解実施例が図5と図6に示されている。図5には2gのUO2を、過酸化水素0.05M〜2.0Mを含有する0.5M Na2CO3 10mlの溶液に入れたとき、炭酸塩溶液中のウランの濃度が示されている。Uは、H2O2の濃度が高いほどUが多く溶解されるが、溶解はH2O2が0.5M以上のときでUO2の完全溶解が約10分内に実現されている。H2O2を含有する炭酸塩溶液でのUは、上述のようにウランオキソ炭酸塩錯体(UO2(O2)x(CO3)y2−2x−2yの形態で溶解される。図6には、0.5M Na2CO3と1.0M H2O2を含有する0.5M Na2CO3溶液に微量のNpO2を入れたときの、溶液中のNpの濃度が示されている。このとき、溶液には溶解されないNpO2粒子が継続観察されて測定された溶液中のNp濃度は、その溶液条件におけるNpの溶解度の値になる。H2O2のない場合は、約10−6M程度が溶解され、H2O2がある場合は、10−9M程度が溶解されていることを確認することができ、溶解後8日が経過しても濃度の変化は殆どない。これは、上述の図2で説明したように、H2O2はUに対しては酸化剤として作用するが、Npに対しては還元剤として作用することにより、Npの溶解が殆ど起らないためである。図5と図6の結果から、Uは、炭酸塩での過酸化水素によって完全に溶解されるが、Npは非常に少ない溶解程度だけが溶解され、それ以上は溶解されないことを確認することができる。また、TRU核種酸化物であるPuO2、NpO2、AmO2の中、NpO2の酸化電位が一番低いので、H2O2を含有する同一条件の炭酸塩溶液においてPuO2、AmO2は、NpO2よりさらに溶解することが難しいため、炭酸塩溶液においてこれらのPu、Amの濃度はNp濃度以下であると推定される。したがって、このような条件の炭酸塩溶液では、使用済核燃料からUとTRU核種酸化物の溶解浸出比(Dissolution leaching ratio=Du/DTRU)が、108〜109程度に予想されるので、H2O2を含有する炭酸塩溶液を使用する場合は、高い核拡散抵抗性を有するとともに、使用済核燃料からUだけを選択的に溶解−浸出させることができることがわかる。
【0049】
ウランの浸出−沈殿による回収及び炭酸塩のリサイクル
図7乃至図14では、本発明の技術的妥当性を証明するために行われた一連の実施結果が示されている。ここで使用された酸化物核種の種類と濃度は、Origen codeによって計算された33,000MWd/Mt使用済核燃料に対し相対的に多量を有する核種を選定し、そのときの濃度比に合わせて使用した。図7と図8には、UとTRUを除外した使用済核燃料に存在する代表的な核種を酸化物(MO2)の形態で0.5M Na2CO3炭酸塩溶液(pH約12)によって2時間溶解させた時と、炭酸塩溶液のpHを変化させた時の溶解率が示されている。ここで、Reは、Tcの代用核種として使用した。図7を参照すると、Cs、Re(/Tc)、Teは、酸化剤の種類に係らず殆ど全てが溶解されていることを確認することができる。Moの場合は、+4価状態の酸化物は、酸化剤に従って溶解率が変化してH2O2で最も少なく溶解され、+6価状態の場合は、酸化剤の種類に係らず全てが溶解された。したがって、使用済核燃料からUだけを選択的に溶解させるとき、溶解後の2次廃棄物の発生が無いという面のみならず、U以外の核種の溶解を最少化するためには、H2O2を使用することが有利であることを確認することができた。アルカリ土金属であるBa、Sr、ランタニド核種であるLa、Ce、Nd、白金族元素であるRu、Pd、遷移金属であるZrは、基本的に炭酸塩溶液に溶解されないことを確認することができる。図8には、pHによる溶解率として、Ba、Sr、LaはpHが8以下では溶解性があるが、pH9以上では溶解が起らないことを確認することができる。これは、これらの核種が、pH9以上では加水分解による沈殿によって炭酸塩溶液では溶解されないことを意味することである。
【0050】
図9には、0.5M Na2CO3炭酸塩溶液と0.5M H2O2でUO2.18酸化物をpHによって溶解させた後の溶液中のUの濃度が示されている。このとき、Uはウランオキソ炭酸塩錯体(UO2(O2)x(CO3)y2−2x−2yの形態で溶解される。図3のように、理論的に計算されたUの溶解は、pH12までは一定であるが、pH12.5から急激に低下されることを確認することができる。溶解されたUの濃度が図3より低いことは、図9の実施例で使用されたH2O2の量が十分でなかったことによってUが少量溶解されたためである。図10には、0.5M Na2CO3の炭酸塩溶液でH2O2の濃度度変化によるUの溶解度が示されている。2.0M H2O2の場合、図3の理論的溶解度の値と殆ど同様にUが溶解されたことを確認することができる。また、2.0M H2O2では、図7の場合のように、Cs、Re(/Tc)、Mo以外にBa、Sr、La、Ce、Nd、Ru、Pd、Zrの核種は溶解されなかった。H2O2は図2の場合のように、UO2に対しては酸化剤として作用し、PuO2、NpO2、AmO2に対しては還元剤として作用すること、0.1M以上のNa2CO3の炭酸塩濃度ではpHを11.6以上を有すること、また、図2〜図10の結果からH2O2 0.5M〜2.0Mを有する0.2M以上の炭酸塩溶液では、使用済核燃料のTRU核種は不溶解でありながら、十分早い速度で多量のUが溶解浸出されることができ、このとき、不純物として一部核種(Cs、Tc、Mo、Te)が一緒に浸出されることができることがわかる。
【0051】
Uが溶解された炭酸塩溶液に一緒に溶解されたCs、Tc、Mo、Teの中、Cs、Tcは、それぞれ高放熱性及び地下処分環境での移動性が高いので、代表的な処分環境阻害物質であるため、TRU核種とともに除去する必要がある。図11には、炭酸塩溶液で沈殿が予想される核種に対して有機沈殿剤であるNaTPBとTPPClによる沈殿実施例が示されている。NaTPBは、唯Csだけを沈殿させ、TPPClは唯Tcだけを沈殿させることを確認することができる。したがって、CsとTcを含有するUが溶解された炭酸溶液にNaTPB、TPPCl沈殿剤を注入することによって、CsとTcだけを選択的に沈殿除去することができる。
【0052】
次いで、Cs、Tcが除去されたU、Mo、Teを含有するpH11〜13の炭酸塩溶液においてUだけを選択的に沈殿させるために、溶液のpHを2〜4程度に低下させることによって、UはUO4の形態で沈殿させることができる。図12には、1.0M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液でUO2(U基準:50g/l)を完全溶解させた後、硝酸(HNO3)でpHを低下させながら、溶液のU濃度を測定した実施例が示されている。Uを含有する炭酸塩溶液のpHが低くなって6以下になるとき、溶液の炭酸塩イオンは、二酸化炭素に変換される脱炭酸過程が進行されるとともに、Uの沈殿が観察されながら、pHが2〜4のときには、最大に多量の沈殿物が発生して溶液中でのUの濃度は1ppm未満になっていた。このとき、溶液中の炭酸の濃度は殆ど0であった。次いで、U沈殿物を乾燥させた後、XRD分析した結果、UO4・4H2Oを示しU沈殿物がウラン過酸化物(UO4)であることを確認した。溶液中でのUO4の溶解度積(Solubility product,Ksp)は、10−3程度で非常に低いことがわかるので、pH2〜4においてUの濃度が1ppm未満になる理由を説明することができる。また、このとき、Uとともに共存するMoとTeはUとともに沈殿されていないことを確認することもできた。したがって、炭酸塩溶液でウランオキソ炭酸塩錯体(UO2(O2)x(CO3)y2−2x−2yの形態で溶解されたUは、pHを2〜4に調節することによって99.9%以上の高効率でU沈殿物として回収することができることを確認した。図12の実施例において、U沈殿のためにUを含有する炭酸塩溶液に酸を加えてpHを4以下に低くすると、ウランオキソ炭酸塩錯体(UO2(O2)x(CO3)y2−2x−2y内のCO32−と溶液中のUと結合されない自由CO32−とが二酸化炭素(CO2)に変化されて溶液の外に排出されるので、これを回収するためには、U沈殿槽から放出される二酸化炭素ガスの排出ラインをU沈殿槽の外部に設置されたガス吸収塔の下部に連結し、外部で準備されたNaOH溶液をガス吸収塔の上部に注入して気−液接触を通じて二酸化炭素を炭酸塩として殆ど99%以上回収することができる。したがって、図1に図示されたようにウランを沈殿させるときに、炭酸塩の回収(リサイクル)を同時に実施することができる。Uを含有した炭酸塩溶液のpHを低下させるために溶液系に直接酸を導入する場合、炭酸塩溶液の全体を適定するためには、Uの溶解段階で使用された炭酸塩溶液濃度の2倍以上の水素イオン濃度を必要とするため、これのために多量の酸が必要となる。したがって、UがpH2〜4で沈殿された後、残存する溶液には、ウラン溶解−浸出段階で使用された炭酸塩溶液のカチオンと、U沈殿段階で使用された酸のアニオンが多量に残存することになって(図12の実施の場合には、溶液に1.0M Na+と1.0M NO3−が残留)、図1で説明した酸−アルカリ回収段階でこれらのイオンを回収するために、多量の電流量が必要になる。
【0053】
また、本発明によるU沈殿のために、カチオン交換膜を具備する電解槽を使用する場合、陽極室で発生する水分解反応によって生成される水素イオン(H+)を利用してUを含有する炭酸塩溶液のpHを低下させることができる。図13には、カチオン交換膜を具備する電解槽の陽極室に、図12で使用した同一のUが含有された炭酸塩溶液を注入し、80mA/cm2の電流を供給するとき、時間経過による陰極室と陽極室での炭酸塩濃度の変化を測定した実施例を示している。この実施例においては、カチオン交換膜としてNafion424を使用し、初期0.1M NaOHを有する陰極室溶液を電解槽の外部に設置されたCO2ガス吸収塔の上端で注入されるように連結し、陽極室で排出されるガスラインをガス吸収塔の下端に連結した。陽極室に注入されるU含有の炭酸塩溶液が陽極室で発生する水分解反応によって酸性化されると、溶液中のUは沈殿するとともに、溶液中の炭酸塩イオンがCO2ガスになって排出される。このとき、陽極における溶液の電気伝導度が急激に低下して、セル電圧が上昇することになるので、これを防止するために、図13の実施例においては、U含有の炭酸塩溶液が陽極室に注入される前に、予め0.2M NaNO3支持電解液を混合して使用された。図13の実施例において、電解反応時間が約120分経過して陽極室のpHが6以下になるとこの時から陽極溶液の炭酸塩濃度は殆ど0になり、このときの陽極室ではUが図12で説明した同じ現象によってUO4になって沈殿された。陽極室でCO2が放出されると、残余のNa+イオンが溶液の電気的中性を維持するために、カチオン交換膜を通じて陰極室に移動される現象と、陰極室で水分解反応によって生成される水酸基(OH−)イオンによって陰極室において自体的に生成される高い濃度のNaOH溶液が、ガス吸収塔を通じて陽極室から排出されたCO2と反応してNa2CO3を生成させることによって、陽極室から注入された炭酸塩を陰極室に回収することができる。このとき、Na+イオンがイオン交換膜を移動するときの浸透圧現象によって、陽極室の水10%程度が陰極室に移動することが観察された。図13での陰極室の電解反応過程において、陽極室から陰極室に移動した水の量を考慮すると、陽極室の炭酸塩が陰極室に99%以上回収されていることを確認することができる。このように回収されたNa2CO3溶液は、図1に図示したウラン浸出−溶解槽にリサイクルされる。陽極室における溶液がpH2〜4に到達してUが沈殿した後に残存する溶液には、U沈殿のために酸を直接使用する図12の場合より、溶液中にイオンが少なく残留されて(図13の実施例の場合は、溶液に約0.2M Na+と0.2M NO3−が残留)図1で説明した酸−アルカリ回収電解槽でこれらのイオンを回収するときに使用する電流量は、相対的に少量の電流量を必要とする。
【0054】
図14には、陰極側にカチオン交換膜を装着し、陽極側にはアニオン交換膜を装着した電解透析槽を利用してウラン沈殿−炭酸塩回収段階で発生するMo、TeイオンとNa+、NO3−イオンを含有する溶液から酸とアルカリを回収しながら最終の残存金属イオンであるMo、Teイオンを分離させる実施例が示されている。100mlの0.5MのNaNO3供給溶液を電解透析槽のカチオン交換膜と、アニオン交換膜との間を循環させ、初期の条件で0.1M NaOH溶液と、0.1M HNO3の溶液をそれぞれ陰極室と陽極室とを循環させながらセル電圧15ボルトを印加する時、陽極室と陰極室及び供給溶液側において測定されたHNO3、NaOH、及びNaNO3の濃度が示されている。2つのイオン交換膜間における供給溶液のNa+とNO3−イオンがそれぞれ陰極室と陽極室に移動されながら水分解反応によって、殆ど0.5M HNO3と0.5M NaOHに再生されることを確認することができる。これらの酸とアルカリは、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階にリサイクルされる。このとき、Moはイオン交換膜を通過することができなく、溶液中に残留して排出される。
【0055】
以上のように図1に示す工程の単位実施・実験及び様々な溶液化学特性の資料を要約すれば、本発明で開示する高アルカリ炭酸塩溶液系を利用する溶解浸出と、沈殿及び電解的炭酸塩及び酸−アルカリ回収技術は、使用済核燃料からTRU核種とその他の核分裂生成物とを混合沈殿させながら、Uだけを選択的に溶解させてUを回収することができ、このような過程において廃棄物の発生は殆ど無い程度であることを確認することができた。
【0056】
本発明は、上述の特定の好適な実施形態に限定されるものではなく、請求範囲で請求する本発明要旨の範囲内で、当該発明の属する技術分野で通常の知識を有する当業者であれば、多様な変形による実施は勿論、その変更は請求範囲内にあることを付言する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による炭酸塩溶液系を利用する使用済核燃料からUだけを分離するための工程を説明するための模式図である。
【図2】pHによる過酸化水素とアクチニド酸化物の酸化−還元平衡電位関係を示す例示図である。
【図3】炭酸塩溶液系によって使用済核燃料を溶解する時に、核拡散抵抗性を高めるための条件を決定するためのpHによるPu(IV)及びU(VI)の溶解度を示す例示図である。
【図4】Na2CO3炭酸塩溶液の濃度によるpH計算のグラフ図である。
【図5】様々な過酸化水素(H2O2)の濃度を有する0.5M炭酸塩溶液(NaCO3)によるUO2の酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図6】1.0M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液と、0.5M Na2CO3炭酸塩溶液におけるNpO2酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図7】酸化剤の変化による0.5M Na2CO3炭酸塩溶液による様々な核種の酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図8】0.5M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液のpHによる様々な核種の酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図9】0.5M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液のpHによるUO2酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図10】0.5M Na2CO3炭酸塩溶液のH2O2濃度変化によるUO2酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図11】0.5M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液によって溶解されたCs、Reに対する様々な有機沈殿剤による沈殿の実施例を示すグラフ図である。
【図12】1.0M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液によって溶解されたU溶液のpH変化による沈殿後の溶液内のUの濃度を測定する実施例を示すグラフ図である。
【図13】カチオン交換膜を有する電解槽を利用して炭酸塩を回収する実施例を示すグラフ図である。
【図14】カチオン交換膜とアニオン交換膜を有する電解透析槽を利用して酸−アルカリを回収する実施例を示すグラフ図である。
【図15】ウラン沈殿−炭酸塩回収段階においてUを含有する炭酸塩溶液のpHを調節するための方法を説明する模式図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法に関する。より詳細には、使用済核燃料から超ウラン元素であるTRU(TRans Uranium:Pu、Np、Am、Cm)核種が溶解されない核拡散抵抗性と廃棄物の発生量を最少化する親環境性を具備しながら、使用済核燃料からウラン(以下、Uと略記することもある)だけを回収することのできる高アルカリ炭酸塩溶液系を利用して使用済核燃料からウランだけを分離して回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石エネルギー使用の増大による地球温暖化と、これによる環境災害の増悪、また、石油資源の枯渇を見通すことによる石油資源の民族主義化は、全世界的にクリーンエネルギーの安定的供給源を確保するための激しい競争を誘発せしめている。このような趨勢によって、2001年からIAEAによるGEN−IV(Generation IV)概念と、2003年米国のDOE(Department of Energy)によるAFCI(Advanced Fuel Cycle Initiative)と、2006年のGNEP(Global Nuclear Energy Partnership)概念を通じて次世代核燃料周期の概念が導入されている。このようなプログラムにおいて新たに考慮されている全ての核燃料周期の概念には、資源の効果的な再活用性と親環境性を通じる持続性(Sustainablity)、核拡散抵抗性(Proliferation resistance)と、システムの安定性と信頼性などを求めている。
【0003】
GEN−IV及びGNEPにおいては、原子炉で核燃料を燃焼させた後に発生する使用済核燃料の再循環、または、処理技術の開発と関連して高い核拡散抵抗性とともに廃棄物の発生が最少化される親環境的使用済核燃料の処理技術の開発を基本的な前提としている。原子力発電所で燃焼させた後の使用済核燃料を処理するための後行核燃料周期の技術においては、使用済核燃料を処理する方法の特性に従って大きく湿式処理と乾式処理に分けられる。
【0004】
湿式処理方法は、強酸によって使用済核燃料を溶解させた後、連続する殆ど全ての単位工程などにおいて溶媒抽出法を使用して目的によって核種を分離処理する方法であり、乾式処理方法は、使用済核燃料を高温の溶融塩状態に転換して電解法によって核種を分離する方法である。代表的な使用済核燃料の湿式処理方法として知られている、PUREX(Plutonium URanium EXtraction)は、専ら、UとPuだけの高純度分離を考慮した処理方法であって、核拡散抵抗性においては致命的欠陥を有し、廃棄物発生量の最少化に対する概念が無いため、次世代核燃料周期においては、絶対的に止揚されるべき使用済核燃料の処理概念となる。現在、最も注目を受けている次世代湿式処理方法は、UREX+(URanium EXtraction Plus)であって、米国のAFCI報告書に提示されてGNEPプログラムに適用される予定となっている。ここでは、使用済核燃料から放射性毒性を除去してUだけを天然U水準の高純度に分離し、これを低準位廃棄物化して浅層処理を可能にすることによって高準位廃棄物の処理能を40〜60倍に増大させるとともに、または、回収されたUの再活用を一次的目標としている。このとき、Puは単独に分離されなく、TRUとともに常に混在される状態を維持することによって、核拡散抵抗性があるとして評価されている。また、GENPでは、より高度化されたUREX+ II、III、IVのシナリオによって、主に溶媒抽出法に基づいて化学的特性に従って一連のTRU核種を分離して、使用済核燃料の再活用及び高準位廃棄物の発生量を最少化することにより、高準位廃棄物の処理用の敷地能を一層増大させるための研究を進めている。米国より先立って、EUと日本国で研究している様々な湿式工程も大部分高い分離効率を有する溶媒抽出方法を使用して廃棄物の発生量を最少化させ、使用済核燃料の有用核種を再循環させることを目標としている。
【0005】
使用済核燃料の乾式処理方法は、PYROX process(PYRO−metallurgy process)と称するが、ここでは500℃以上のLiCl、または、LiF溶融塩の雰囲気下で使用済核燃料から一連の電解方法によって、U、TRU、RE(Rear Earth:希土類)などを分離することであって、1960年代から米国を中心に日本国、ロシアなどで研究されている使用済核燃料の処理技術である。このような乾式処理方法は、核種の高純度分離の難易性及びPuがTRUなどとともに混在されて挙動することにより、核拡散抵抗性があると評価されているが、多くの高準位廃棄物の発生、高温溶融塩の雰囲気下で必要とする耐蝕材料の不十分な開発と実証技術の不十分などが解決するべき問題として残っている状態である。
【0006】
現在、米国、日本、EUなど先進国では、乾式工程に有する問題、即ち、操業の安定性、耐蝕性材料の開発、高純度分離などの問題を解決するためには、長期間を要する関連研究と開発が必要であると判断され、先ず、湿式分離法を開発して使用済核燃料の処理、及び、これから発生する高準位廃棄物の処理を基本概念として採択している。米国の場合、湿式分離技術は、2015年に実用化を目標として推進する一方、乾式分離技術の実用化は、2030年以後の実現を目標に設定し、湿式工程に係る開発を乾式工程の開発より優先する方針を取っている。
【0007】
溶媒抽出法に基づいて開発されている大部分の湿式処理方法は、低温操作による操業の安定性、運転の連続性、技術的成熟度など乾式方法に比べてメリットが多いにも拘らず、核拡散抵抗性に弱いと思われる理由は、使用済核燃料が強酸によって溶解されることのために発生する使用済核燃料の溶解された溶液自体が酸性であることと、今まで知られた大部分の多様な有機溶媒抽出剤が酸性雰囲気下でのみ抽出能を有することによって、既に開発された溶媒抽出剤によるPuの独立的分離可能性が高いことと、また、Puを分離するための代表的な湿式工程であるPUREXで使用される溶媒抽出と関連された技術的類似性が存在するためである。
【0008】
1990年代の中盤以後、日本国では、従来の使用済核燃料の溶解法とは別に、低温において炭酸塩媒質の非酸性系を使用して使用済核燃料の低温酸化溶解を可能にする方法を提示し、以後、溶媒抽出法とは異なる沈殿法を使用して、Puは単独で分離されないと共に、UとTRUとが同時に核分裂生成物(FP:Fission Product)からの高純度分離が可能になる方法を提示した。
【0009】
また、2003年米国LANL(Los Alamos National Laboratory)も、AFCI comparison報告書を出し、冷却結晶化によるU沈殿法を使用する湿式工程を、既存の湿式工程の前半部にUだけを大量に除去するプロセスを挿入した工程を提示しながら、廃棄物発生の側面から見て既存の溶媒抽出法だけを使用する湿式工程に比べて高いメリットがあることを報告した。したがって、このような公開資料によれば低温非酸性である炭酸塩溶液による溶解と沈殿法を使用して使用済核燃料からUだけを分離する方法は、核拡散抵抗性と親環境性及び操業安定性を同時に具現する湿式工程開発の可能性を有するようにした。
【0010】
本発明が属する従来の使用済核燃料の処理技術において、使用済核燃料から、炭酸塩溶液系を使用する湿式方法によってUを回収する技術に関連する韓国内の特許はなく、また国外においても炭酸塩媒質を使用するU沈殿法に関する特許や公開技術は極稀な状態である。既に公開技術として広く知られているPUREX法や、UREX法などは、基本的に溶媒抽出法に基づく湿式工程であって、本発明とは技術的類似性がなく、技術的目標も相違する。次に掲示する特許文献1乃至5などは、炭酸塩溶液系を使用してUを分離する技術に関することであるが、これらは使用される媒質の条件、目的及び方法が本発明とは相異し、これらはUを除去するための単一工程であって本発明が追求する工程の目的とは全く相異する。また、特許文献6は、アクチニド物質であるPu、Npをアルカリ条件で分離するためのことであって、やはり目的と方法が本発明と相異し、特許文献7と8は、炭酸塩またはアルカリ条件でUを沈殿分離させるための工程に関することであって、使用される単位工程技術と沈殿方法及び沈殿条件が本発明における研究とは相異する。特許文献9は、廃棄物から炭酸塩溶液を利用してUを回収する技術に対して言及しているが、その過程と目的及び工程の構成が本発明とは相異する。特許文献10は、U原鉱からアルカリ媒質によってUを回収することであるが目的及び方法が本発明とは相異する。特許文献11及び非特許文献1は、炭酸塩系を使用して使用済核燃料を処理するための方法を提示しているが、ここでは、使用済核燃料からU、Pu、Npを炭酸塩溶液によって同時に溶解させることを目的とし、これらの物質が沈殿された後、必要とする追加的単位工程の目的と構成の方法がやはり本発明とは全く相異する。
【特許文献1】米国特許4,410,487
【特許文献2】米国特許4,436,704
【特許文献3】米国特許4,460,547
【特許文献4】米国特許4,675,166
【特許文献5】米国特許4,696,768
【特許文献6】米国特許5,640,668
【特許文献7】米国特許4,410,497
【特許文献8】米国特許6,471,922
【特許文献9】米国特許5,384,104
【特許文献10】米国特許4,305,911
【特許文献11】日本特許P1997−113681
【非特許文献1】J.Nucl.Sci.&Tech.,Vol.43,p.255−262,(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1目的は、核拡散抵抗性と廃棄物の発生量を最少化する親環境性を有しながら、使用済核燃料からUだけを選択的に分離して回収することのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法を提供することにある。
【0012】
本発明の第2目的は、使用済核燃料からTRU核種と大部分のランタニド及び遷移金属核種が混合された固形物状態に分離させながら、浅層処理を可能にする天然Uレベルの放射能毒性水準を具有するように、高純度のUを分離して回収することのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法を提供する。
【0013】
本発明の第3目的は、使用済核燃料の95%以上を占めているUを使用済核燃料から除去して使用済核燃料を処分するための敷地を拡大させるとともに、使用済核燃料の効果的な管理を維持することのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法を提供する。
【0014】
本発明の第4目的は、炭酸塩溶液系によって、核種らの酸化−還元平衡電位の差異と、これらの核種の溶解度の差異を利用して使用済核燃料からのUだけを選択的に溶解させることのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法を提供する。
【0015】
本発明の第5目的は、常温の炭酸塩溶液系によって使用済核燃料に包含されているUだけを選択的に酸化させて、これを炭酸塩イオン錯体の形態に溶解させるとともに、残りのTRU核種とその他の核分裂生成物質などは、不溶解残滓物、または、水酸化物の状態で混合・沈降−沈殿させることによって、Uを効率的に分離することのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済燃料からのウラン回収方法を提供する。
【0016】
本発明の第6目的は、炭酸塩溶液のpHを酸で調節することによって、UをUO4形態にして沈殿回収する方法と、Uが除去された炭酸塩溶液から残余不純物の金属イオンを除去して、炭酸塩溶液を使用済核燃料の溶解浸出槽にリサイクルさせることのできる高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウランを分離して回収する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、pH11〜pH13の炭酸塩溶液の溶解槽内に、ウラン酸化物(UO2)酸化−還元平衡電圧と、プルトニウム酸化物(PuO2)、ネプツニウム酸化物(NpO2)、アメリシウム酸化物(AmO2)の酸化−還元平衡電圧間の酸化力を有し、使用された後、固体残存物を残さない過酸化水素(H2O2)のような酸化剤を使用して、前記炭酸塩溶液によって使用済核燃料からUO2を溶解させるプロセスにおいて、PuO2、NpO2、AmO2などのTRU酸化物は、不溶解の状態で沈殿されるようにする、ウラン溶解−浸出の段階を有する。ここで、炭酸塩溶液によって溶解されたUは、炭酸塩溶液で高い溶解度を有するウラニルオキソ炭酸塩の錯体イオン(UO2(O2)x(CO32−)y2−2x−2yの複雑な形態で存在する。前記炭酸塩溶液は、0.1M〜3.0MのH2O2が包含される0.1M〜3.0Mの炭酸塩(Na2CO3)溶液である。
【0018】
また、本発明は、前記Uが溶解されている炭酸塩溶液からCs、Tcを分離させるセシウム−テクネチウムの沈殿段階を包含する。前記セシウム−テクネチウムの除去段階において、Cs沈殿剤は、NaTPB(Sodium TetraPhenyl Borate)を使用し、Tc沈殿剤は、TPPCl(Tetraphenyl PhosPhonium Chloride)を使用する。
【0019】
また、本発明は、Cs、Tcが除去されたUを含有する炭酸塩溶液からUを沈殿させるとともに、炭酸塩を回収するために、Uが溶解された炭酸塩溶液に酸を供給するウラン沈殿−炭酸塩回収の段階を包含する。このとき、Uが溶解された炭酸塩溶液を溶液のpHが2〜4に到達するように調節することにより、溶液中のウランオキソ炭酸イオン錯体が分離され、ウラニル過酸化物(UO4)の形態で沈殿されるとともに、ウランオキソ炭酸イオン錯体から分離された炭酸塩イオン(CO32−)と溶液中のフリー(free)炭酸塩イオンとが二酸化炭素に変換されてガス状態で溶液外に排出される。このとき、排出された二酸化炭素ガスが、苛性ソーダ(NaOH)のようなアルカリ溶液が循環されるガス吸収塔から炭酸塩溶液にさらに変換されて回収されるようにする、炭酸塩回収段階を酸の添加によるウラン沈殿段階に包含させる。このとき、炭酸塩溶液のpHは溶液に酸を直接添加するか、対象炭酸塩溶液をカチオン交換膜を有する電解槽の陽極室に注入して陽極で水分解反応により生成される水素イオン(H+)によって調節することができる。
【0020】
また、本発明は、カチオン交換膜とアニオン交換膜を使用する電解透析法によって、前記のウラン沈殿−炭酸塩回収段階でUと炭酸塩が除去されて酸性化された溶液に残っているモリブデン(Mo)、テルル(Te)などの不純物金属イオンを除去するとともに、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で使用された酸と、アルカリ溶液を回収するための酸−アルカリ回収段階をさらに包含する。
【発明の効果】
【0021】
上述のように、本発明は、炭酸塩溶液でUO2酸化−還元平衡電圧と、PuO2、NpO2、AmO2の酸化−還元平衡電圧間の酸化力を有するH2O2のような酸化剤によって、使用済核燃料からUだけを+6価に酸化させて、炭酸塩イオン錯体の形態で溶解−浸出させるが、Pu、Np、Am、CmなどのTRU酸化物は不溶解となり、また、大部分の核分裂生成物の核種酸化物らも不溶解にされるか、一部が溶解されても加水分解沈殿になって、TRU酸化物と混合されて沈殿されることによって、使用済核燃料からUを溶解浸出させる過程においてPu、Npなどが単独で分離される経路が遮断されることにより、本発明で開示する工程が、高い核拡散抵抗性を有することになる。また、使用済核燃料の溶解段階において酸を使用しないことは、湿式工程における溶解装置の腐食問題を解決することができるので、操業の安定性を確保することができる。
【0022】
また、本発明においては、使用済核燃料の処理において、溶媒抽出法が全く使用されないことによって、溶媒抽出技術を使用して容易にPuを単独分離することのできるPUREX法、UREX法などの既存湿式工程と技術的類似性がない。また本願発明によって開発された技術は、核拡散抵抗性をさらに増大させ、溶媒抽出法に有する問題である多量の有機廃液の発生が根本的に解決されるので、一般的溶媒抽出法を使用する湿式工程に比べて廃棄物の発生が最少化されるとともに、溶媒抽出剤などの有機蒸気による火災の危険性が根本的に排除され、さらに、pHの調節による沈殿装置は、溶媒抽出装置に比べて簡単である。また、本願発明で提示する技術は、廃棄物の発生が最少化されるだけでなく、工程の単純化と共に操業の安定性も強化させることができる。
【0023】
また、本発明においては、Uを回収した後、電気化学的な方法を使用して、本発明の工程内で使用された炭酸塩溶液、及び、Uの沈殿に使用された酸−アルカリ溶液を全量回収してリサイクルさせることができるため、全体的工程内における2次廃棄物が殆ど発生されないか、発生されても最少化されるので非常に高い親環境性を有することができる。
【0024】
したがって、本発明の炭酸塩溶液系による常温での溶解浸出−沈殿分離の組合せ技術は、今まで知られたどの方法より高い核拡散抵抗性と環境親和性を同時に具現するとともに、使用済核燃料からUだけの浅層処理を可能にするレベルの高純度で回収することができるため、使用済核燃料を処理する時、高準位廃棄物処分場の処理能を増大させることと、使用済核燃料の大部分を占めるUの再活用を可能にして効果的な使用済核燃料の管理方案として活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、酸化剤であるH2O2を含有する炭酸塩溶液を使用して、使用済核燃料に含有されているTRU核種と、その他大部分の核分裂生成物などを、不溶解の残宰物または水酸化物の状態で沈降、または、沈殿させながらウランだけを選択的に炭酸塩溶液系によって溶解浸出させる。その後、使用済核燃料からUと一緒に浸出されたCs、Tcを有機沈殿剤によって分離し、炭酸塩溶液に溶解されているUは、酸の添加によってpHを調整してUを沈殿させるとともに、発生される二酸化炭素ガスを炭酸塩溶液に変化させてリサイクルを可能にし、電解的透析法によってUの沈殿と炭酸塩回収段階で使用された酸−アルカリ溶液を回収し、最終的に残余不純物の金属イオンを分離するように構成されている。
【0026】
即ち、本発明は、UO2酸化−還元平衡電圧と、PuO2、NpO2、AmO2の酸化−還元平衡電圧間の酸化力を有しながら、pH11〜13を有する0.1M〜3.0Mの過酸化水素を含有する0.1M〜3.0Mの炭酸塩(M2CO3:M=Na、Li、K)溶液に使用済核燃料を取り入れて、Uだけをウランオキソ炭酸塩錯体(UO2(O2)x(CO3)y2−2x−2y)の形態に溶解させるウラン溶解−浸出段階と、前記ウラン溶解の段階時において一緒に溶解されたCs、Tcを選択的に分離させる沈殿剤としてNaTPB、TPPClを使用するセシウム−テクネチウム沈殿段階と、その後、Cs、Tcが除去されたUを含有する炭酸塩溶液のpHを2〜4に調整してウランオキソ化合物をウラン過酸化物(UO4)の形態で沈殿分離するようにするU沈殿と、この過程で発生する二酸化炭素ガスをNaOHのようなアルカリ溶液が循環されるガス吸収塔を使用して炭酸塩を同時に回収するウラン沈殿−炭酸塩回収段階と、U溶解の過程でウランとともに溶解された一部の不純物核種であるMo、Teなどを分離して除去し、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で使用された酸とアルカリ溶液を回収して残余の金属不純物を除去・分離するために、カチオン交換膜とアニオン交換膜を具備する電解透析法による酸−アルカリ回収段階を有してなる。
【0027】
また、本発明は、ウラン溶解浸出段階で不溶解になったTRU核種及びその他の核種の沈殿物と、セシウム−テクネチウムの除去段階において発生するCs、Tcの沈殿物、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で分離されたU、及び酸−アルカリ回収段階において発生する金属不純物をそれぞれ熱処理して酸化物に固定する固定化段階をさらに包含する。
【0028】
前記ウラン沈殿−炭酸塩回収段階においてUを含有する炭酸塩溶液のpHを調節するための方法は、図15に図示したように、溶液に直接硝酸(HNO3)のような酸を加えてpHを調節する酸適正方法と、カチオン交換膜を有する電解槽の陽極室にUを含有する炭酸塩溶液を注入し、陽極室で水分解によって発生する水素イオン(H+)によってpHを調節する電解適正方法を使用することができる。
【0029】
また、炭酸塩溶液に水素イオンが供給される場合、溶液中の炭酸塩イオン(CO32−)が二酸化炭素に変換されて溶液系の外に放出されるが、これを回収するためには、U沈殿のために溶液に直接酸を使用する場合には、U沈殿槽から放出される二酸化炭素ガスの排出ラインをU沈殿槽の外部に具備されたガス吸収塔の下部に連結し、NaOHのようなアルカリ溶液をガス吸収塔の上部に注入して、気−液接触を通じて二酸化炭素を炭酸塩に転換させて再び回収する。U沈殿のために、カチオン交換膜を具備する電解槽を使用する場合には、陰極室の溶液がガス吸収塔の上端に連結されて循環されるようにし、Uを含有した炭酸塩溶液を陽極室に注入されるようにした後、陽極で水分解反応によって生成される水素イオンにより炭酸塩溶液を酸性化させながら、二酸化炭素ガスが陽極室から放出されるようにし、放出される二酸化炭素ガスは、陰極室と連結されたガス吸収塔の下部に導入されるようにする。このとき、陽極室で炭酸塩イオンが二酸化炭素で放出されると、残る炭酸塩のカチオン(炭酸塩としてNa2CO3を使用した場合はNa+)は、カチオン交換膜を通じて陰極室に移動するため、陰極で水分解反応によって生成される水酸基イオン(OH−)と反応して外部からの供給なしに自体的にアルカリ溶液(例えば、Na+、OH−)が生成されるので、この陰極溶液をガス吸収塔の上部に循環させて陽極室から排出される二酸化炭素と反応させて、再び炭酸塩溶液にして(例えば、Na2CO3溶液)回収するようにする。このとき、陽極室の炭酸塩溶液が二酸化炭素とカチオンで陰極室に移動されて溶液系から抜け出すと、陽極溶液の電気伝導度が低下して電解反応が難しくなる。これを防止するためにウラン溶解−浸出槽で使用される陽極溶液である炭酸塩溶液のカチオンと同様のカチオンを有する支持溶液(例えば、炭酸塩溶液でNa2CO3を使用する場合、NaNO3溶液)を陽極室に注入して炭酸塩溶液と混合するようにする。このように、支持溶液をさらに添加する場合、陽極溶液の中、2価以上の金属イオン(本発明ではウラン錯体イオン:Mo、Teなど)と、陽極溶液の支持電解質に使用されるアニオンは、カチオン交換膜を通過することができなく、陽極溶液にそのまま残留するようになって、酸−アルカリ回収段階において処理されるようになる。
【0030】
以下、本発明を図1を参照して詳細に説明する。図1は、使用済核燃料から核拡散抵抗性と環境親和性とを有しながら、ウランだけを分離して高準位処分対象の体積を減少させるための工程の模式図である。まず、使用済核燃料から炭酸塩溶液によってUだけを溶解−浸出させるウラン溶解−浸出槽1と、ウラン溶解浸出槽1でUと一緒に同伴溶解されたCsとTcとを沈殿分離するセシウム−テクネチウム沈殿槽2を有し、その後、pHの調整によってウランを沈殿分離させるU沈殿槽3、U沈殿槽3から発生する二酸化炭素を炭酸塩にして回収するためのガス吸収塔4、ウラン溶解浸出槽1で使用された炭酸塩とU沈殿槽3とガス吸収塔4で使用された酸とアルカリ溶液を回収するための酸−アルカリ回収電解槽5によって構成される。また、ウラン溶解浸出槽1で沈殿された不溶解沈殿物であるTRU核種と、その他の核分裂生成物の核種混合沈殿物6と、セシウム−テクネチウム沈殿槽2で沈殿されたセシウム−テクネチウム有機沈殿物7と、酸−アルカリ回収電解槽5で排出される金属イオン9(金属不純物)などは、熱処理による酸化物で固定化段階を経て高準位廃棄物の処分場、または、これらの沈殿物から放射性毒性物質を一層さらに除去するための後続段階に移動させる一方、U沈殿槽3から回収されたウラン沈殿物8は、酸化物による安定化を通じて中低準位処分場、またはUをリサイクルするための後続段階に回される。
【0031】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0032】
使用済核燃料の溶解
はじめに、炭酸塩溶液によって使用済核燃料内のUだけを選択的に溶解させる過程を説明するためには、炭酸塩溶液系によって使用済核燃料に包含されている核種らの溶解メカニズム(Dissolution mechanism)と、これら核種の溶解度(Solubility)と関連されたイオンの溶液化学的(Aquatic chemistry)特性を理解しなければならない。使用済核燃料の溶解に関する化学的影響変数としては、接触溶液の酸化力、溶液系のpH、核種の溶解度、溶液中に存在するアニオンなどで大きく影響を受け、また、物理的影響変数としては、使用済核燃料の体積と溶液の体積比、攪拌速度、温度などで影響を受けるようになる。
【0033】
下記の表1には、使用済核燃料を構成する主要核種の種類と、これらの核種が有することのできる最大酸化価、また、使用済核燃料内に存在する実際酸化価の状態が一緒に表示されている。使用済核燃料内に存在する全ての核種は、大部分が酸化物の形態で存在し、全体重量の95%はU、約1%のTRU(この中Puは0.9%)、その他、核分裂生成核種が約4%を占めている。溶液において如何なる金属がその金属に有することのできる最大酸化価の状態で酸素と量論的に結合されている場合、その金属酸化物は非常に安定的であるため、酸化の条件が与えられても溶解されることが難しい。しかし、金属酸化物がその金属に有することのできる最大酸化価より低い状態で酸素と結合されているとすれば、
【0034】
【表1】
【0035】
その金属酸化物は、酸化条件からより高い酸化価状態に変わりながら溶液中にイオンで溶解される可能性が高くなる。このとき、その金属イオンの溶解度は、その酸化物が接する溶液の条件によって影響を受けることになる。本発明は、このような条件を利用することであって、水素イオンが殆ど存在しない高アルカリ条件の炭酸塩溶液によって使用済核燃料内における最大の酸化価状態で酸素と結合されない核種の酸化物に酸化条件を与えることによって溶解を可能にしたことである。また、実験的に測定された使用済核燃料内の核種の中、その核種に有することのできる最大酸化価状態ではない状態で存在する核種は、例えば、代表的にU、Pu、Np、Am、Cs及びTc、Moなどになる。核分裂生成核種の酸化物は、原子炉において核燃料であるU酸化物(UO2)内のUが核変換されて生成されるため、+4価以上の酸化価として存在することのできるPu、Np、Am、Cs及びTc、Mo核種は、UO2のように酸素原子2つが結合された最大+4より低いMO2(M:Metal)、M2O3、または、MOx、(0<x<2)の形態で存在するようになる。炭酸塩溶液によって溶解可能な核種の実際の溶解性は、その核種がより高い酸化状態に変換されるための酸化−還元平衡電位(Redox equilibrium potential)、接触する溶液リガンドとの結合力、また、その金属酸化物結晶の安定性などに影響を受けるのでこれらに対する理論的予測は非常に難しい問題になっている。
【0036】
使用済核燃料の酸化溶解のメカニズムは、正確に究明されていないが、炭酸塩溶液によるUO2の溶解メカニズムは、下記のような複雑な過程を通じて溶解されることが知られており、PuO2とNpO2も類似の経路を経て溶解されることと推定されている。即ち、一般的にウラン酸化物であるUO2の溶解は、酸化価+6価状態で起り、その溶解過程は非可逆的であると知られている。UO2の溶解過程は、U5+の表面中間生成物(Surface intermediate)が形成されて起り、UO2がUO3になるための酸素は水から得られる。したがって、一般的に知られているUO2の溶解過程は下記のような経路を有する。
【0037】
【0038】
これをより詳細に説明すると、酸化条件において核燃料UO2の加工焼結の時に、結晶粒系(Grain boundary)に残存する非化学量論的酸化物(Non−stoichiometric oxide)が先に酸化され、次いで、UO2結晶がUO2.33(U3O7)に酸化される。
【0039】
UO2.33は、U6+とU4+との混合、または、U5+とU4+との混合状態で、UO2.33の生成によってUO2内のU4+の減少がなされる。UO2内の+5価酸化物が最終的にUO3に酸化されるとき、表面で接触する溶液が酸性である場合は、ウラニルイオンであるUO22+になり、アルカリである場合は、UO2(OH)3−イオンに変化し、溶液が炭酸塩溶液である場合は、CO32−と結合して複雑な形態のウラン炭酸塩イオン錯体(Uranium carbonato complex:(UO2(CO3)22−、UO2(CO3)34−)を形成して溶解される。Np、Puも類似する炭酸塩錯体の形態で存在することと推定される。また、炭酸塩溶液にH2O2が存在する場合、U、Np、Puは、オキソ炭酸塩錯体の形態で(MO2(O2)x(CO3)y2−2x−2y:M=U、Np、Pu)溶解され、これらは、H2O2がない場合に生成されるウラン炭酸塩イオン錯体に比べて非常に高い溶解度を有している。
【0040】
使用済核燃料核種の酸化−還元平衡電位
上述のように、+4価状態のアクチニド核種(U、Pu、Np、Am、Cm)の酸化物が溶解されるためには、まず、+4価のアクチニド核種の酸化物が+6価への酸化が必要になるため、Pourbaix diagramからU、Pu、Np酸化物の酸化−還元平衡電位を確認することが必要である。これらの核種が溶解されるためには、+4価状態のU、Pu、Np、Am酸化物(MO2:M=U、Np、Pu、Am)が、まず、+6価の状態に酸化されなければならなく、これらの酸化物の平衡酸化−還元の反応式は、下記に示すように、pHの影響を受ける。U酸化物の酸化−還元平衡電位は、U、Pu、Np、Am酸化物の酸化−還元平衡電位とそれぞれ約1.12V、0.942V、1.16V程度の大きな差異があるため、使用済核燃料からU酸化物だけが溶解される適切な酸化電位条件で使用済核燃料からUだけを容易に+6価に酸化させることができ、炭酸塩溶液においては高い溶解度を有するウラン−炭酸塩イオン錯体になって使用済核燃料から多量のUを溶解させることができる。
【0041】
【0042】
使用済核燃料を炭酸塩溶液系によって溶解させるために化学酸化剤を使用する場合、他の2次廃棄物が発生してはならないため、化学酸化剤としてK2S2O8、NaOCl、H2O2などを使用することができるが、使用済核燃料が溶解された後、固形物の2次廃棄物を残す可能性があるK2S2O8、NaOClは、本発明ではこれを除いてH2O2を使用する。H2O2の酸化−還元平衡電位の特性は、UO2に対しては酸化剤で、その他、TRU酸化物に対しては還元剤として作用される。H2O2は、アルカリ媒質においてはHO2−に解離され、溶液におけるH2O2とHO2−の酸化及び還元反応は下記のように整理される。
【0043】
H2O2の解離反応:
【0044】
H2O2の還元反応:
【0045】
H2O2の酸化反応:
【0046】
前記アクチニド酸化物とH2O2の酸化−還元平衡電位式から図2のようなpHによるH2O2とアクチニド酸化物の酸化−還元平衡電位の関係図を作成することができる。ここで、水溶液にH2O2とTRU酸化物が共存する時、UのUO2−UO3平衡電位がH2O2の酸化電位より低いため、H2O2はUO2酸化物に対して酸化剤として作用し、Pu、Np、AmのMO2−MO3平衡電位は、H2O2の平衡電位より高いため、H2O2はこれらのMO2酸化物に対して還元剤として作用する。したがって、H2O2を含有する炭酸塩溶液によっては2次廃棄物が発生することなしに使用済核燃料のPu、Np、Am酸化物は全く溶解されないまま、Uだけが選択的に溶解されるようになる。
【0047】
使用済核燃料からUだけの選択的溶解−浸出
上述のように炭酸塩溶液によって使用済核燃料を溶解させる時に、Uだけを炭酸塩溶液に十分溶解されるようにするためには、溶解系にウラン酸化物だけを+6価に酸化させ、Pu、Np、Am酸化物は、+6価で酸化されない適切な酸化剤の添加や酸化電位を供給することによりUだけを+6価で酸化させた後、炭酸塩イオンと錯体を形成しなければならない。使用済核燃料内の核種が使用済核燃料の酸化物構造(Matrix)から抜け出してイオンになる溶解速度は、酸化−還元平衡電位と酸化物の材料的構造特性に影響を受けるとともに、使用済核燃料と接する溶液での溶解度に影響を受けることになる。図3には、文献Separation Science & Technology[Vol.35,p2127−2141(2000)]で発表した炭酸塩濃度1MでpHに従って理論的に計算された+6価のUと、+4価のPu溶解度の値が示されている。この資料によれば、Pu+4は、pH11.5以前までは炭酸塩イオンと錯体を形成して高い溶解度を有することができるが、それ以上のpHでは溶解度は殆ど0に近くなり、+6価のUは、pH約12.5以上まで炭酸塩イオンと錯体形成を通じて高い溶解度を維持していることを確認することができる。このような溶解度特性を利用すると、pHが11.5〜12.5程度の炭酸塩溶液で使用済核燃料からUだけを選択的に溶解させる酸化条件を印加するとき、上述のようなUに比べて、Puは極低い溶解度を有するため、Puが炭酸塩イオンと結合して溶解されても加水分解され沈殿物として存在することになるため、炭酸塩溶液においてはPuは殆どなくUだけが存在することになる。図4では、炭酸塩Na2CO3濃度によって計算された炭酸塩溶液のpH値が示されている。ここで、使用済核燃料からウランを選択的に溶解させる時に、Na2CO3濃度を0.1M以上にする場合、この炭酸塩溶液のpHは、11.6以上を維持することができるため、使用済核燃料からのUの選択的溶解−浸出の時の炭酸塩溶液に少量のPuが溶解されていても、このPuが加水分解沈殿されるpHのためには、Na2CO3濃度を0.1M以上にすることが必要であることがわかる。
【0048】
実際、使用済核燃料を使用して直接溶解実験を実施することはできないが、本発明のために製造されたUO2とNpO2を利用する溶解実施例が図5と図6に示されている。図5には2gのUO2を、過酸化水素0.05M〜2.0Mを含有する0.5M Na2CO3 10mlの溶液に入れたとき、炭酸塩溶液中のウランの濃度が示されている。Uは、H2O2の濃度が高いほどUが多く溶解されるが、溶解はH2O2が0.5M以上のときでUO2の完全溶解が約10分内に実現されている。H2O2を含有する炭酸塩溶液でのUは、上述のようにウランオキソ炭酸塩錯体(UO2(O2)x(CO3)y2−2x−2yの形態で溶解される。図6には、0.5M Na2CO3と1.0M H2O2を含有する0.5M Na2CO3溶液に微量のNpO2を入れたときの、溶液中のNpの濃度が示されている。このとき、溶液には溶解されないNpO2粒子が継続観察されて測定された溶液中のNp濃度は、その溶液条件におけるNpの溶解度の値になる。H2O2のない場合は、約10−6M程度が溶解され、H2O2がある場合は、10−9M程度が溶解されていることを確認することができ、溶解後8日が経過しても濃度の変化は殆どない。これは、上述の図2で説明したように、H2O2はUに対しては酸化剤として作用するが、Npに対しては還元剤として作用することにより、Npの溶解が殆ど起らないためである。図5と図6の結果から、Uは、炭酸塩での過酸化水素によって完全に溶解されるが、Npは非常に少ない溶解程度だけが溶解され、それ以上は溶解されないことを確認することができる。また、TRU核種酸化物であるPuO2、NpO2、AmO2の中、NpO2の酸化電位が一番低いので、H2O2を含有する同一条件の炭酸塩溶液においてPuO2、AmO2は、NpO2よりさらに溶解することが難しいため、炭酸塩溶液においてこれらのPu、Amの濃度はNp濃度以下であると推定される。したがって、このような条件の炭酸塩溶液では、使用済核燃料からUとTRU核種酸化物の溶解浸出比(Dissolution leaching ratio=Du/DTRU)が、108〜109程度に予想されるので、H2O2を含有する炭酸塩溶液を使用する場合は、高い核拡散抵抗性を有するとともに、使用済核燃料からUだけを選択的に溶解−浸出させることができることがわかる。
【0049】
ウランの浸出−沈殿による回収及び炭酸塩のリサイクル
図7乃至図14では、本発明の技術的妥当性を証明するために行われた一連の実施結果が示されている。ここで使用された酸化物核種の種類と濃度は、Origen codeによって計算された33,000MWd/Mt使用済核燃料に対し相対的に多量を有する核種を選定し、そのときの濃度比に合わせて使用した。図7と図8には、UとTRUを除外した使用済核燃料に存在する代表的な核種を酸化物(MO2)の形態で0.5M Na2CO3炭酸塩溶液(pH約12)によって2時間溶解させた時と、炭酸塩溶液のpHを変化させた時の溶解率が示されている。ここで、Reは、Tcの代用核種として使用した。図7を参照すると、Cs、Re(/Tc)、Teは、酸化剤の種類に係らず殆ど全てが溶解されていることを確認することができる。Moの場合は、+4価状態の酸化物は、酸化剤に従って溶解率が変化してH2O2で最も少なく溶解され、+6価状態の場合は、酸化剤の種類に係らず全てが溶解された。したがって、使用済核燃料からUだけを選択的に溶解させるとき、溶解後の2次廃棄物の発生が無いという面のみならず、U以外の核種の溶解を最少化するためには、H2O2を使用することが有利であることを確認することができた。アルカリ土金属であるBa、Sr、ランタニド核種であるLa、Ce、Nd、白金族元素であるRu、Pd、遷移金属であるZrは、基本的に炭酸塩溶液に溶解されないことを確認することができる。図8には、pHによる溶解率として、Ba、Sr、LaはpHが8以下では溶解性があるが、pH9以上では溶解が起らないことを確認することができる。これは、これらの核種が、pH9以上では加水分解による沈殿によって炭酸塩溶液では溶解されないことを意味することである。
【0050】
図9には、0.5M Na2CO3炭酸塩溶液と0.5M H2O2でUO2.18酸化物をpHによって溶解させた後の溶液中のUの濃度が示されている。このとき、Uはウランオキソ炭酸塩錯体(UO2(O2)x(CO3)y2−2x−2yの形態で溶解される。図3のように、理論的に計算されたUの溶解は、pH12までは一定であるが、pH12.5から急激に低下されることを確認することができる。溶解されたUの濃度が図3より低いことは、図9の実施例で使用されたH2O2の量が十分でなかったことによってUが少量溶解されたためである。図10には、0.5M Na2CO3の炭酸塩溶液でH2O2の濃度度変化によるUの溶解度が示されている。2.0M H2O2の場合、図3の理論的溶解度の値と殆ど同様にUが溶解されたことを確認することができる。また、2.0M H2O2では、図7の場合のように、Cs、Re(/Tc)、Mo以外にBa、Sr、La、Ce、Nd、Ru、Pd、Zrの核種は溶解されなかった。H2O2は図2の場合のように、UO2に対しては酸化剤として作用し、PuO2、NpO2、AmO2に対しては還元剤として作用すること、0.1M以上のNa2CO3の炭酸塩濃度ではpHを11.6以上を有すること、また、図2〜図10の結果からH2O2 0.5M〜2.0Mを有する0.2M以上の炭酸塩溶液では、使用済核燃料のTRU核種は不溶解でありながら、十分早い速度で多量のUが溶解浸出されることができ、このとき、不純物として一部核種(Cs、Tc、Mo、Te)が一緒に浸出されることができることがわかる。
【0051】
Uが溶解された炭酸塩溶液に一緒に溶解されたCs、Tc、Mo、Teの中、Cs、Tcは、それぞれ高放熱性及び地下処分環境での移動性が高いので、代表的な処分環境阻害物質であるため、TRU核種とともに除去する必要がある。図11には、炭酸塩溶液で沈殿が予想される核種に対して有機沈殿剤であるNaTPBとTPPClによる沈殿実施例が示されている。NaTPBは、唯Csだけを沈殿させ、TPPClは唯Tcだけを沈殿させることを確認することができる。したがって、CsとTcを含有するUが溶解された炭酸溶液にNaTPB、TPPCl沈殿剤を注入することによって、CsとTcだけを選択的に沈殿除去することができる。
【0052】
次いで、Cs、Tcが除去されたU、Mo、Teを含有するpH11〜13の炭酸塩溶液においてUだけを選択的に沈殿させるために、溶液のpHを2〜4程度に低下させることによって、UはUO4の形態で沈殿させることができる。図12には、1.0M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液でUO2(U基準:50g/l)を完全溶解させた後、硝酸(HNO3)でpHを低下させながら、溶液のU濃度を測定した実施例が示されている。Uを含有する炭酸塩溶液のpHが低くなって6以下になるとき、溶液の炭酸塩イオンは、二酸化炭素に変換される脱炭酸過程が進行されるとともに、Uの沈殿が観察されながら、pHが2〜4のときには、最大に多量の沈殿物が発生して溶液中でのUの濃度は1ppm未満になっていた。このとき、溶液中の炭酸の濃度は殆ど0であった。次いで、U沈殿物を乾燥させた後、XRD分析した結果、UO4・4H2Oを示しU沈殿物がウラン過酸化物(UO4)であることを確認した。溶液中でのUO4の溶解度積(Solubility product,Ksp)は、10−3程度で非常に低いことがわかるので、pH2〜4においてUの濃度が1ppm未満になる理由を説明することができる。また、このとき、Uとともに共存するMoとTeはUとともに沈殿されていないことを確認することもできた。したがって、炭酸塩溶液でウランオキソ炭酸塩錯体(UO2(O2)x(CO3)y2−2x−2yの形態で溶解されたUは、pHを2〜4に調節することによって99.9%以上の高効率でU沈殿物として回収することができることを確認した。図12の実施例において、U沈殿のためにUを含有する炭酸塩溶液に酸を加えてpHを4以下に低くすると、ウランオキソ炭酸塩錯体(UO2(O2)x(CO3)y2−2x−2y内のCO32−と溶液中のUと結合されない自由CO32−とが二酸化炭素(CO2)に変化されて溶液の外に排出されるので、これを回収するためには、U沈殿槽から放出される二酸化炭素ガスの排出ラインをU沈殿槽の外部に設置されたガス吸収塔の下部に連結し、外部で準備されたNaOH溶液をガス吸収塔の上部に注入して気−液接触を通じて二酸化炭素を炭酸塩として殆ど99%以上回収することができる。したがって、図1に図示されたようにウランを沈殿させるときに、炭酸塩の回収(リサイクル)を同時に実施することができる。Uを含有した炭酸塩溶液のpHを低下させるために溶液系に直接酸を導入する場合、炭酸塩溶液の全体を適定するためには、Uの溶解段階で使用された炭酸塩溶液濃度の2倍以上の水素イオン濃度を必要とするため、これのために多量の酸が必要となる。したがって、UがpH2〜4で沈殿された後、残存する溶液には、ウラン溶解−浸出段階で使用された炭酸塩溶液のカチオンと、U沈殿段階で使用された酸のアニオンが多量に残存することになって(図12の実施の場合には、溶液に1.0M Na+と1.0M NO3−が残留)、図1で説明した酸−アルカリ回収段階でこれらのイオンを回収するために、多量の電流量が必要になる。
【0053】
また、本発明によるU沈殿のために、カチオン交換膜を具備する電解槽を使用する場合、陽極室で発生する水分解反応によって生成される水素イオン(H+)を利用してUを含有する炭酸塩溶液のpHを低下させることができる。図13には、カチオン交換膜を具備する電解槽の陽極室に、図12で使用した同一のUが含有された炭酸塩溶液を注入し、80mA/cm2の電流を供給するとき、時間経過による陰極室と陽極室での炭酸塩濃度の変化を測定した実施例を示している。この実施例においては、カチオン交換膜としてNafion424を使用し、初期0.1M NaOHを有する陰極室溶液を電解槽の外部に設置されたCO2ガス吸収塔の上端で注入されるように連結し、陽極室で排出されるガスラインをガス吸収塔の下端に連結した。陽極室に注入されるU含有の炭酸塩溶液が陽極室で発生する水分解反応によって酸性化されると、溶液中のUは沈殿するとともに、溶液中の炭酸塩イオンがCO2ガスになって排出される。このとき、陽極における溶液の電気伝導度が急激に低下して、セル電圧が上昇することになるので、これを防止するために、図13の実施例においては、U含有の炭酸塩溶液が陽極室に注入される前に、予め0.2M NaNO3支持電解液を混合して使用された。図13の実施例において、電解反応時間が約120分経過して陽極室のpHが6以下になるとこの時から陽極溶液の炭酸塩濃度は殆ど0になり、このときの陽極室ではUが図12で説明した同じ現象によってUO4になって沈殿された。陽極室でCO2が放出されると、残余のNa+イオンが溶液の電気的中性を維持するために、カチオン交換膜を通じて陰極室に移動される現象と、陰極室で水分解反応によって生成される水酸基(OH−)イオンによって陰極室において自体的に生成される高い濃度のNaOH溶液が、ガス吸収塔を通じて陽極室から排出されたCO2と反応してNa2CO3を生成させることによって、陽極室から注入された炭酸塩を陰極室に回収することができる。このとき、Na+イオンがイオン交換膜を移動するときの浸透圧現象によって、陽極室の水10%程度が陰極室に移動することが観察された。図13での陰極室の電解反応過程において、陽極室から陰極室に移動した水の量を考慮すると、陽極室の炭酸塩が陰極室に99%以上回収されていることを確認することができる。このように回収されたNa2CO3溶液は、図1に図示したウラン浸出−溶解槽にリサイクルされる。陽極室における溶液がpH2〜4に到達してUが沈殿した後に残存する溶液には、U沈殿のために酸を直接使用する図12の場合より、溶液中にイオンが少なく残留されて(図13の実施例の場合は、溶液に約0.2M Na+と0.2M NO3−が残留)図1で説明した酸−アルカリ回収電解槽でこれらのイオンを回収するときに使用する電流量は、相対的に少量の電流量を必要とする。
【0054】
図14には、陰極側にカチオン交換膜を装着し、陽極側にはアニオン交換膜を装着した電解透析槽を利用してウラン沈殿−炭酸塩回収段階で発生するMo、TeイオンとNa+、NO3−イオンを含有する溶液から酸とアルカリを回収しながら最終の残存金属イオンであるMo、Teイオンを分離させる実施例が示されている。100mlの0.5MのNaNO3供給溶液を電解透析槽のカチオン交換膜と、アニオン交換膜との間を循環させ、初期の条件で0.1M NaOH溶液と、0.1M HNO3の溶液をそれぞれ陰極室と陽極室とを循環させながらセル電圧15ボルトを印加する時、陽極室と陰極室及び供給溶液側において測定されたHNO3、NaOH、及びNaNO3の濃度が示されている。2つのイオン交換膜間における供給溶液のNa+とNO3−イオンがそれぞれ陰極室と陽極室に移動されながら水分解反応によって、殆ど0.5M HNO3と0.5M NaOHに再生されることを確認することができる。これらの酸とアルカリは、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階にリサイクルされる。このとき、Moはイオン交換膜を通過することができなく、溶液中に残留して排出される。
【0055】
以上のように図1に示す工程の単位実施・実験及び様々な溶液化学特性の資料を要約すれば、本発明で開示する高アルカリ炭酸塩溶液系を利用する溶解浸出と、沈殿及び電解的炭酸塩及び酸−アルカリ回収技術は、使用済核燃料からTRU核種とその他の核分裂生成物とを混合沈殿させながら、Uだけを選択的に溶解させてUを回収することができ、このような過程において廃棄物の発生は殆ど無い程度であることを確認することができた。
【0056】
本発明は、上述の特定の好適な実施形態に限定されるものではなく、請求範囲で請求する本発明要旨の範囲内で、当該発明の属する技術分野で通常の知識を有する当業者であれば、多様な変形による実施は勿論、その変更は請求範囲内にあることを付言する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による炭酸塩溶液系を利用する使用済核燃料からUだけを分離するための工程を説明するための模式図である。
【図2】pHによる過酸化水素とアクチニド酸化物の酸化−還元平衡電位関係を示す例示図である。
【図3】炭酸塩溶液系によって使用済核燃料を溶解する時に、核拡散抵抗性を高めるための条件を決定するためのpHによるPu(IV)及びU(VI)の溶解度を示す例示図である。
【図4】Na2CO3炭酸塩溶液の濃度によるpH計算のグラフ図である。
【図5】様々な過酸化水素(H2O2)の濃度を有する0.5M炭酸塩溶液(NaCO3)によるUO2の酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図6】1.0M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液と、0.5M Na2CO3炭酸塩溶液におけるNpO2酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図7】酸化剤の変化による0.5M Na2CO3炭酸塩溶液による様々な核種の酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図8】0.5M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液のpHによる様々な核種の酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図9】0.5M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液のpHによるUO2酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図10】0.5M Na2CO3炭酸塩溶液のH2O2濃度変化によるUO2酸化溶解・浸出の実施例を示すグラフ図である。
【図11】0.5M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液によって溶解されたCs、Reに対する様々な有機沈殿剤による沈殿の実施例を示すグラフ図である。
【図12】1.0M H2O2を含有する0.5M Na2CO3炭酸塩溶液によって溶解されたU溶液のpH変化による沈殿後の溶液内のUの濃度を測定する実施例を示すグラフ図である。
【図13】カチオン交換膜を有する電解槽を利用して炭酸塩を回収する実施例を示すグラフ図である。
【図14】カチオン交換膜とアニオン交換膜を有する電解透析槽を利用して酸−アルカリを回収する実施例を示すグラフ図である。
【図15】ウラン沈殿−炭酸塩回収段階においてUを含有する炭酸塩溶液のpHを調節するための方法を説明する模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)過酸化水素(H2O2)を含有するpH11〜13の炭酸塩溶液の溶解槽内に使用済核燃料を入れて、使用済核燃料からTRU核種の溶解なしにUだけを溶解浸出させるウラン溶解浸出段階と、
(b)ウランの溶解段階に従って、ウランが溶解された炭酸塩溶液に有機沈殿剤を加えてCs、Tcを沈殿させるセシウム−テクネチウム沈殿段階と、
(c)Cs、Tcが除去された炭酸塩溶液をU沈殿槽においてpH2〜4に調節してウランをウラン過酸化物(UO4)の形態で沈殿させることにより分離し、この過程で発生する二酸化炭素ガスをアルカリ溶液が循環されるガス吸収塔に循環させて炭酸塩を回収するウラン沈殿−炭酸塩回収段階と、
(d)カチオン交換膜とアニオン交換膜を具備する電解透析法によって、U溶解の過程でウランと共に溶解された一部の不純物の核種を分離して除去し、前記ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で使用された酸とアルカリ溶液を回収する酸−アルカリ回収段階とを包含してなることを特徴とする高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項2】
前記(a)段階の炭酸塩溶液は、0.1M〜3.0MのH2O2が含有される0.1M〜3.0Mの炭酸塩溶液であることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項3】
前記(a)段階のウラン溶解浸出段階において、前記ウランは(UO2(O2)x(CO32−)y2−2x−2yの形態で溶解浸出されることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項4】
前記(b)段階のセシウム−テクネチウム沈殿段階において、Csの沈殿剤は、NaTPB(Sodium TetraPhenyl Borate)であり、Tcの沈殿剤は、TPPCl(Tetraphenyl PhosPhonium Chloride)であることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項5】
前記(c)段階のウラン沈殿−炭酸塩回収段階は、U沈殿槽の外部にガス吸収塔を具備し、炭酸塩溶液から排出される二酸化炭素ガスをガス吸収塔の下部に導入されるようにし、ガス吸収塔の上部にアルカリ溶液を注入して二酸化炭素を炭酸塩に転換させることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項6】
前記(c)段階のウラン沈殿−炭酸塩回収段階において、U沈殿槽内の炭酸塩溶液に対するpH調節は、Uを含有する炭酸塩溶液に直接的に酸を加えるか、
または、カチオン交換膜を有する電解槽の陽極室にUを含有する炭酸塩溶液に0.1M〜3.0M濃度の支持電解塩を混合して陽極室に注入し、陽極室で発生する水分解反応によって、Uを含有する炭酸塩溶液を酸性化させ、電解反応過程でカチオン交換膜を通じて陰極室に移動するカチオンと、陰極室における水分解反応によって生成されるアルカリ溶液をガス吸収塔の上部に注入することを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項7】
前記(d)段階の酸−アルカリ回収段階は、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で使用された酸、アルカリ、支持電解塩から発生されるカチオン、またはアニオンを酸とアルカリで回収するために、電解透析式反応器のカチオン交換膜と、アニオン交換膜との間に、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階でUが沈殿された後に残存する溶液を注入して、陽極室では酸溶液が生成されるようにし、陰極室ではアルカリ溶液が生成されるようにして、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で回収しながら、Uが沈殿された後に残存する残存不純物の金属イオンを分離させることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項8】
前記(a)段階のTRU核種は、Pu、Np及び/又はAmであることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項9】
前記(d)段階の不純物核種は、Mo及び/又はTeであることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項10】
前記炭酸塩がNa2CO3であることを特徴とする請求項2に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項11】
前記アルカリ溶液がNaOH、LiOH及び/又はKOHであることを特徴とする請求項5に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項12】
前記酸がHNO3、HCl及び/又はH2SO4であることを特徴とする請求項6に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項13】
前記支持電解塩がNaNO3、LiNO3、KNO3、Na2SO4、Li2SO4及びK2SO4からなる群から選択されたいずれか1種であることを特徴とする請求項6に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項14】
前記アルカリ溶液がNaOH、LiOH及び/又はKOHであることを特徴とする請求項6に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項1】
(a)過酸化水素(H2O2)を含有するpH11〜13の炭酸塩溶液の溶解槽内に使用済核燃料を入れて、使用済核燃料からTRU核種の溶解なしにUだけを溶解浸出させるウラン溶解浸出段階と、
(b)ウランの溶解段階に従って、ウランが溶解された炭酸塩溶液に有機沈殿剤を加えてCs、Tcを沈殿させるセシウム−テクネチウム沈殿段階と、
(c)Cs、Tcが除去された炭酸塩溶液をU沈殿槽においてpH2〜4に調節してウランをウラン過酸化物(UO4)の形態で沈殿させることにより分離し、この過程で発生する二酸化炭素ガスをアルカリ溶液が循環されるガス吸収塔に循環させて炭酸塩を回収するウラン沈殿−炭酸塩回収段階と、
(d)カチオン交換膜とアニオン交換膜を具備する電解透析法によって、U溶解の過程でウランと共に溶解された一部の不純物の核種を分離して除去し、前記ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で使用された酸とアルカリ溶液を回収する酸−アルカリ回収段階とを包含してなることを特徴とする高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項2】
前記(a)段階の炭酸塩溶液は、0.1M〜3.0MのH2O2が含有される0.1M〜3.0Mの炭酸塩溶液であることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項3】
前記(a)段階のウラン溶解浸出段階において、前記ウランは(UO2(O2)x(CO32−)y2−2x−2yの形態で溶解浸出されることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項4】
前記(b)段階のセシウム−テクネチウム沈殿段階において、Csの沈殿剤は、NaTPB(Sodium TetraPhenyl Borate)であり、Tcの沈殿剤は、TPPCl(Tetraphenyl PhosPhonium Chloride)であることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項5】
前記(c)段階のウラン沈殿−炭酸塩回収段階は、U沈殿槽の外部にガス吸収塔を具備し、炭酸塩溶液から排出される二酸化炭素ガスをガス吸収塔の下部に導入されるようにし、ガス吸収塔の上部にアルカリ溶液を注入して二酸化炭素を炭酸塩に転換させることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項6】
前記(c)段階のウラン沈殿−炭酸塩回収段階において、U沈殿槽内の炭酸塩溶液に対するpH調節は、Uを含有する炭酸塩溶液に直接的に酸を加えるか、
または、カチオン交換膜を有する電解槽の陽極室にUを含有する炭酸塩溶液に0.1M〜3.0M濃度の支持電解塩を混合して陽極室に注入し、陽極室で発生する水分解反応によって、Uを含有する炭酸塩溶液を酸性化させ、電解反応過程でカチオン交換膜を通じて陰極室に移動するカチオンと、陰極室における水分解反応によって生成されるアルカリ溶液をガス吸収塔の上部に注入することを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項7】
前記(d)段階の酸−アルカリ回収段階は、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で使用された酸、アルカリ、支持電解塩から発生されるカチオン、またはアニオンを酸とアルカリで回収するために、電解透析式反応器のカチオン交換膜と、アニオン交換膜との間に、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階でUが沈殿された後に残存する溶液を注入して、陽極室では酸溶液が生成されるようにし、陰極室ではアルカリ溶液が生成されるようにして、ウラン沈殿−炭酸塩回収段階で回収しながら、Uが沈殿された後に残存する残存不純物の金属イオンを分離させることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項8】
前記(a)段階のTRU核種は、Pu、Np及び/又はAmであることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項9】
前記(d)段階の不純物核種は、Mo及び/又はTeであることを特徴とする請求項1に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項10】
前記炭酸塩がNa2CO3であることを特徴とする請求項2に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項11】
前記アルカリ溶液がNaOH、LiOH及び/又はKOHであることを特徴とする請求項5に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項12】
前記酸がHNO3、HCl及び/又はH2SO4であることを特徴とする請求項6に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項13】
前記支持電解塩がNaNO3、LiNO3、KNO3、Na2SO4、Li2SO4及びK2SO4からなる群から選択されたいずれか1種であることを特徴とする請求項6に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【請求項14】
前記アルカリ溶液がNaOH、LiOH及び/又はKOHであることを特徴とする請求項6に記載の高アルカリ炭酸塩溶液系による使用済核燃料からのウラン回収方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−265080(P2009−265080A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314631(P2008−314631)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(508363409)韓国原子力研究院 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(508363409)韓国原子力研究院 (2)
【Fターム(参考)】
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