説明

高シアル酸含量のヒトトロンボポエチンを精製する方法

ヒトトロンボポエチンを発現する真核細胞を、血清がごく少量含有された無血清培地で培養し、ヒトトロンボポエチン含有培養物を生産する方法を開示する。また、本発明は、(a)hTPO含有生物学的流液を親和性クロマトグラフィーする段階と、(b)段階(a)で得られた溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィーする段階と、(c)段階(b)で得られた溶出液を逆相クロマトグラフィーする段階と、(d)段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーする段階とを含む、hTPO含有生物学的流液からhTPOを精製する方法を開示する。また、本発明は、段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに充填し、0.15M〜0.3M塩化ナトリウム濃度勾配で前記カラムから選択的に溶出された高シアル酸含量のhTPOを収集する段階を含む方法により得られた、シアル酸含量の高いヒトTPOを開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ヒトトロンボポエチン(human thrombopietin、hTPO)含有培養物の生産方法および前記培養物からhTPOを精製するための方法に関する。より具体的には、本発明は、hTPO含有生物学的流液からシアル酸含量の高いhTPOを分離精製する方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
血小板増殖因子、すなわちトロンボポエチン(TPO)は、血液の血小板数を調節するサイトカイン(cytokine)として知られている物質である(Lok et al., Nature, 369: 565-568 (1994); De savage, F.J. et al., Nature, 369: 533-568 (1994))。TPOは、肝または腎臓で合成されて分泌される糖タンパク質であって、巨核球前駆細胞の増進と分化を促進させ、巨核球細胞の血小板としての成熟を誘導する機能を持っている。
【0003】
これまでは、最も一般的な血小板減少症の治療手段として血小板輸血が使用されてきた。ところが、そのような治療は、血小板輸血に必要なドナーの不足、出血副作用、各種ウィルスの汚染、および血小板の抗原性などのため、難しさが多かった。血小板増殖因子であるTPOは、このような血小板輸血による副作用を減らしながら血小板関連の各種疾患を治療することに使用できるだろうと判断される。hTPOは、1994年に最初にcDNAの形でクローニングされ、多数の論文と特許として公知になっている(Lok et al., Nature, 369: 565-568 (1994); De savage, F.J. et al., Nature, 369: 533-568 (1994); Miyazaki et al., Experimental hematol., 22: 828 (1994);および国際特許公開第95/18858号)。hTPOは、骨髄細胞内に存在する血小板前駆細胞としてのコロニー形成前駆細胞に特異的に作用し、血小板の前駆細胞である巨核球細胞(megakaryocyte)の増殖および分化を誘導して究極的に血小板の数を増加させ、抗癌治療の際に誘発される血小板減少症(thrombocytopenia)、骨髄移植による血素板減少症、その他の血小板減少症に使用される有望なタンパク質であって、臨床実験で顕著な血小板増加効果と共に軽微な副作用を示したので、優れた新薬として期待されている(Shinjo et al., Leukemia, 12: 195-300 (1998); and Martin et al., J. Pediatr. Hematol. Oncol., 20(1): 36-43 (1998))。実際、hTPOは、Genentech Inc.が製造して(国際特許公開第95/18868号)、現在、Pharmacia & Upjohnと共に臨床3床を進行中にあり、Krin社も臨床を進行中にある(国際特許公開WO95/21919号)。本発明者らは、優れた血小板減少症治療剤として期待されている、天然型hTPOより生体内活性に優れたhTPO誘導体を発明した(国際特許公開WO99/00347号)。
【0004】
hTPOは、遺伝子組換え方法を用いて作製されたベクターを真核細胞に挿入し、これから目的する有用タンパク質の合成および/または分布を可能にすることにより大量生産が可能になり、トランスフェクションされた細胞を血清含有培地で培養した後、精製して医学用途に使用している。ところが、トランスフェクションされた細胞を血清含有倍地を用いて培養する場合、動物由来因子による副作用のおそれが高い。
【0005】
現在、医学的使用に適する高純度であり、他の微生物または不純物による汚染のおそれもなく、活性の高いhTPOの製造/精製方法が切実に要求されている。
【0006】
本発明者らは、hTPOを発現することが可能な発現ベクターでトランスフェクションされた真核細胞を、血清がごく少量含有された無血清培地(serum-free medium)で培養することにより、動物由来因子(ウィルスなど)による副作用を最小化しながらも、高い発現効率でヒトトロンボポエチンを得ることができることを見い出した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、hTPOを発現することが可能な真核細胞を無血清培地で培養することによりhTPOを生成する方法を提供することにある。
【0008】
また、hTPO含有生物学的流液を一連のクロマトグラフィー(親和性クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィー)に適用することにより、薬剤学的使用に適した高純粋度のhTPOを精製することに成功した。
【0009】
したがって、本発明の他の目的は、hTPO含有生物学的流液を高純度で精製する方法を提供することにある。
【0010】
治療剤として用いられる多くの糖タンパク質の場合、大部分、糖が糖タンパク質の生体内活性において重要な役割をするものと知られている(Takeuchi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 86: 7819(1989))。エリスロポエチン(EPO)エリスロポエチン(EPO)の場合、糖の数および構成成分、特に生体内半減期の延長のために重要な役割をするシアル酸の含量が重要であり、組換え糖タンパク質を製造するための宿主細胞を選択するとき、高い生体内活性を持つことが可能な糖化能力が最も優先的に考慮されるべきと認識されている。高シアル酸含量の糖タンパク質を精製するために、シアル酸の陰電気的性質を用いて陰イオン交換クロマトグラフィーによって高活性の分画を分離したという報告がある(Glycoconj J.,13(6): 1013-20(1996))。ところが、トロンボポエチンの場合には、シアル酸含量と生体内活性との層間関係について未だ報告されたことがない。本発明者らは、本発明のクロマトグラフィー方法によって純粋精製された、シアル酸含量の異なるhTPOを用いて、シアル酸含量が増加するほどhTPO活性が比例的に増加することを見い出した。
【0011】
したがって、本発明の別の目的は、前述した精製方法によって生成された、高い生体内活性を有するシアル酸含量の高いhTPOを提供することにある。
【0012】
〔発明の開示〕
本発明は、ヒトトロンボポエチン(hTPO)を発現する真核細胞を3〜6.5%血清含有培地で培養し、続いて0.5〜1.5%血清含有倍地で培養した後、血清が実質的に含有されていない無血清培地で培養することにより、hTPO含有培養物を生産する方法に関する。
【0013】
前記方法において、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞株(CHO)が好ましく使用され、CHO dhfr−/pD40434(KCTC 0630BP)、CHO dhfr−/pD40449(KCTC 0631BP)およびCHO dhfr−/pD40458(KCTC 0632BP)よりなる群から選ばれる細胞株が特に好ましく使用される。また、前記真核細胞は、0.5〜1.5%血清含有培地に1.0×10〜1.0×10cell/mLの濃度で、より好ましくは1.5×10cell/mLの濃度で接種される。また、無血清培地にブチル酸および酵母分解物を添加した培地が好ましく使用される。
【0014】
また、本発明は、(a)hTPO含有生物学的流液を親和性クロマトグラフィーする段階と、(b)段階(a)で得られた溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィーする段階と、(c)段階(b)で得られた溶出液を逆相クロマトグラフィーする段階と、(d)段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーする段階とを含む、前記hTPO含有生物学的流液からhTPOを精製する方法に関する。
【0015】
段階(d)において、段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに充填し、0.15M〜0.3M塩化ナトリウム濃度勾配で前記カラムから選択的に溶出されたhTPOを収集することが好ましい。また、前記精製方法は、段階(d)を行った後、ゲル濾過クロマトグラフィーする段階をさらに含むことが好ましく、hTPO含有生物学的流液は、hTPOを発現するベクターでトランスフェクションされた真核細胞を無血清培養培地で培養して得た培養物が好ましく使用される。また、段階(a)において、親和性クロマトグラフィーで使用されるカラムを1M塩化ナトリウム含有リン酸塩緩衝液で溶出させることが好ましく、段階(c)において、逆相クロマトグラフィーで使用されるカラムをエタノール勾配を用いて溶出させることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前述した精製方法で精製されたhTPO含有分画に関する。
〔発明を実施するための最良の形態〕
真核細胞により生成された大部分の細胞表面および分泌タンパク質は、少なくとも一つのオリゴ糖グループによって修飾される。このような修飾を糖化といい、ポリペプチドの骨格に応じて特定の位置で発生するが、一般に2つの類型に分類される。一つの類型は、O結合型オリゴ糖がセリン(Ser)またはトレオニン(Thr)残基に結合するO結合型糖化であり、もう一つの類型は、N結合型オリゴ糖が配列Asn−X−Ser/Thr(ここで、Xは、プロリンを除いたアミノ酸であればいずれも可能である)のアスパラギン(Asn)残基に結合するN結合型糖化である。O結合型オリゴ糖とN結合型オリゴ糖の構造、および各類型から発見される糖残基は、お互い異なる。O結合型オリゴ糖とN結合型オリゴ糖の両方ともから共通に発見される糖がシアル酸である。シアル酸は、多くの糖結合体の必須成分である約30個の天然酸性炭水化物群の一般名である(Society Transactions, 11, 270-271 (1983))。最も代表的なシアル酸の形態はN−アセチルノイラミン酸であり、その次の代表的なシアル酸の形態はN−グリコリルノイラミン酸である(Schauer, Glycobiology, 1, 449-452 (1991))。
【0017】
天然型hTPOは、細胞内で353個のアミノ酸からなる前駆体として発現され、この前駆体から21個のアミノ酸のシグナル配列が切断された後、332個のアミノ酸からなる活性型タンパク質の形で細胞外に分泌される糖タンパク質である。hTPO誘導体は、天然型hTPOとは異なる糖化パターンを持つことができ、その代表的な例としては、hTPOをコードするcDNAにある特定の塩基を置換させてアスパラギン−X−セリン/トレオニン(ここで、Xはプロリンを除いたアミノ酸である)の形に突然変異させることにより、174個のC末端欠失アミノ酸からなるhTPOにN結合型糖鎖を少なくとも一つ導入したhTPO誘導体(国際特許公開WO96/25498号)、完全な天然型hTPOに糖鎖をさらに導入して糖鎖が一つ追加されたhTPO誘導体(HL Park et al., J. Biol. Chem., 273:256-261, 1998)、天然のhTPOの164番、193番、157番と164番、117番と164番、または108番のアミノ酸をアスパラギンで置換してN結合型糖鎖を導入したhTPO誘導体(韓国特許公開第2001−0078744号)などを挙げることができる。
【0018】
本発明者らは、hTPOを発現するベクターでトランスフェクションされた真核細胞を3〜6.5%血清含有培地で培養し、次いで0.5〜1.5%血清含有培地で培養した後、血清がごく少量含有された培地で培養することにより、血清由来因子による汚染要素のないhTPO含有培養液を得ることができた。また、hTPOの発現効率が血清含有培地でより優れた。従来の低血清含有倍地を用いた培養の場合、5%以上の血清含有培地を用いたが、本発明では、3〜6.5%血清含有培地で培養し、次いで0.5〜1.5%血清含有培養培地を用いて培養した後、最終培養段階では血清が実質的に含有されていない無血清(serum-free)培地を用いて培養することにより、多量のhTPOを、血清への汚染を最小化しながら生産することができた。
【0019】
したがって、本発明は、一つの様態として、hTPOを発現する真核細胞を3〜6.5%、好ましくは4〜6%、より好ましくは5%血清含有培地で培養し、続いて0.5〜1.5%、好ましくは1%血清含有培地で培養した後、血清が実質的に含有されていない無血清培地で培養してhTPO含有培養物を生産する方法を提供する。
【0020】
前記培養方法でhTPOを発現する真核細胞は、適切な栄養物と成長因子を含有した培地で単層培養または懸濁培養するときに成長および生存することが可能な哺乳動物由来の細胞株を示す。特定の細胞株のために必要な成長因子は、例えば文献[Mammalian Cell Culture, Mather, J. P. ed., Plenum Press, N.Y. (1984) and by Barnes and Sato, (1980) Cell, 22:649]に記述されているように、過重な実験負担なしに経験で容易に決定できる。本発明の方法に適した哺乳動物宿主細胞としては、hTPO誘導体を発現する、トランスフェクションされたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS細胞、ハイブリドーマ細胞、例えばマウスハイブリドーマ細胞、ベービハムスター腎臓細胞、293細胞、マウスL細胞などを例示することができる。特に、hTPO誘導体を発現するCHO dhfr−/pD40434(KCTC 0630BP)、CHO dhfr−/pD40449(KCTC 0631BP)、CHO dhfr−/pD40458(KCTC 0632BP)が好ましく使用でき、その中でも特にCHO dhfr−/pD40458(KCTC 0632BP)が好ましい。前記培養方法において、0.5〜1.5%血清含有培地を使用した培養の際、hTPO発現細胞は、1×10cell/mL以上、好ましくは1×10cell/mL〜1×10cell/mL、より好ましくは1.5×10cell/mLの濃度で接種できる。
【0021】
一つの具体的実施として、本発明は、hTPO誘導体を発現するベクターでトランスフェクションされたチャイニーズハムスター卵巣細胞株(CHO dhfr−/pD40458)を3〜6.5%血清含有培地でシード培養して回収し、これを1×10-cell/mL〜1×10cell/mLの細胞濃度で0.5〜1.5%血清含有培地に接種して培養した後、無血清培地で培養してhTPO誘導体含有培養物を生成した。好ましくは、前述したように無血清培地で培養されたhTPO誘導体含有培養物の培養上澄み液を本発明のhTPO精製方法にhTPO含有生物学的流液として使用することができる。
【0022】
本願で使用された用語「無血清培養培地」は、哺乳動物起源の血清(例えば牛胎児血清(FBS))を実質的に含有していない栄養液を示す。また、用語「実質的に含有していない」は、細胞培養培地が約0.5%未満の血清、好ましくは約0〜0.1%血清を含有することを意味する。前述したように、血清が実質的に含有されていない無血清培地で、hTPOを発現する真核細胞を培養することにより、精製されたhTPOは、血清起源のウィルスなどによる副作用を最小化させることができる。細胞の成長のための栄養液は、典型的に炭水化物形態(例えば、グルコース)のエネルギー源、全ての必須アミノ酸、ビタミンおよび/またはその他の低濃度で要求される有機化合物、遊離脂肪酸、および微量元素(通常、ミクロモル範囲の最低濃度で要求される有機化合物または天然元素)を含有することができ、任意にホルモンおよびその他の成長因子(例えば、インシュリン、トランスフェリン、および表皮成長因子)、塩および緩衝液(例えば、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、ヌクレオシドおよび塩基(例えば、アデニン、チミジンおよびヒポキサンチン)、並びにタンパク質および組織加水分解物の中から選ばれた少なくとも一つの成分で補充できる。本発明者らは、無血清培地の添加物として非必須アミノ酸、ZnSO、酪酸ナトリウムおよび酵母分解物のhTPO発現効率を観測した。図9に示すように、0.5Mの酪酸ナトリウムが1mMの酪酸ナトリウムを添加した場合より発現効率が高く、酵母分解物を添加する場合が、非必須アミノ酸+酪酸+亜鉛化合物を添加した場合より著しく高い発現効率を示した。したがって、本発明者らは、無血清培養培地に酪酸および酵母分解物を添加し、その結果、血清含有培地を使用する場合に比べて発現量が増加するうえ、培養物内の血清由来の不純物も最小化することができるため、次の段階の精製過程を容易に行うことができた。
【0023】
また、本発明者らは、hTPO含有生物学的流液から一連のクロマトグラフィーによって高純度のhTPOを精製することができた。具体的に、本発明者らは、(a)hTPO含有生物学的流液を親和性クロマトグラフィーする段階と、(b)段階(a)で得られた溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィーする段階と、(c)段階(b)で得られた溶出液を逆相クロマトグラフィーする段階と、(d)段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーする段階とを含む方法によって、高純度のhTPOが得られることを立証した。特に、(a)hTPO含有生物学的流液を親和性クロマトグラフィーする段階、(b)段階(a)で得られた溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィーする段階と、(c)段階(b)で得られた溶出液を逆相クロマトグラフィーする段階と、(d)段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに充填し、0.15M〜0.3M塩化ナトリウム濃度勾配で選択的に溶出されたhTPOを収集する段階とを含む方法によって、高純度の高シアル酸含量のhTPOを得ることができることを立証した。
【0024】
したがって、本発明は、別の様態として、(a)hTPO含有生物学的流液を親和性クロマトグラフィーする段階と、(b)段階(a)で得られた溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィーする段階と、(c)段階(b)で得られた溶出液を逆相クロマトグラフィーする段階と、(d)段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーする段階とを含んでhTPOを精製する方法を提供する。好ましくは、段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに充填し、0.15M〜0.3M塩化ナトリウム濃度勾配で前記カラムから選択的に溶出されたhTPOを収集する段階を含んで高シアル酸含量のhTPOを精製する方法を提供する。好ましくは、前記精製方法は、陰イオン交換クロマトグラフィーの溶出液をゲル濾過クロマトグラフィーして凝集体を除去する段階をさらに含むことができる。
【0025】
本発明の培養/精製方法において、TPOは、hTPOであって、天然型hTPOおよびhTPO誘導体を含み、hTPO誘導体は、天然型hTPOと類似であり或いは優れた生物学的活性を持つ。前記hTPO誘導体は、天然型hTPOアミノ酸配列の置換、挿入、欠失により変異した変異体を含み、天然型hTPOとは異なる糖化パターンを持つことができ、上述したように糖鎖が追加される或いは新しい位置が糖化するhTPO誘導体を例示することができる。
【0026】
本願に使用された用語「生物学的流液」は、細胞、細胞構成要素または細胞産物を含有し、あるいはそれから由来した全ての流液を示し、これらに限定されるものではないが、例えば細胞培養物、細胞培養上澄み液、細胞溶解物、細胞抽出物、組織抽出物、血液、血漿、血清、ミルク、尿、これらの分画を含む。本発明のhTPO精製方法には、hTPOを含有する限り、前述した様々な形態の生物学的流液が精製のための出発物質として使用できる。好ましくは、前述したように無血清培養方法で得られた培養物の培養上澄み液を使用する。
【0027】
前述した精製方法において、親和性クロマトグラフィーは、非共有結合の可逆的方式による生体分子間の特異的相互作用を含む。すなわち、この方法の原理は、物理化学的特性の差を利用するのではなく、リガントという特異的結合パートナーが一般に不溶性マトリックス(例えば、多孔性ガラス、アガロース、シリカ、セルロース、デキストランゲル)に共有結合し、成分の混合物が接触する結合システムの特異性を利用することである。好ましい親和性クロマトグラフィーは、染料−リガンドクロマトグラフィーであり、その例としてはCM Affi−Gel BlueゲルまたはDEAE Affi−Gel Blueゲル(Bio−Rad Laboratories)、MIMETIC Red、Blue、Orange、YellowまたはGreen(Affinity Chromatography Ltd、Freeport、Great Britain)を挙げることができる。特に好ましくは、CM Affi−Gel Blueゲルである。これは、CM Bio−Gel Aゲルに共有結合したチバクロンブルーF3GA染料を含有することができる。CM Bio−Gel Aゲルは、カルボキシ−末端アガロースゲルであり、この支持体は、アミノ末端リガンド、タンパク質またはスペーサアームの結合に使用される。便利には、溶出物をロードする前に親和性クロマトグラフィーカラムを中性pHの水性緩衝液、好ましくは約pH7.2のリン酸塩緩衝液で平衡化させる。溶出は、水性緩衝液、好ましくは約pH7.2のリン酸塩緩衝液を用いて公知の方法によって行う。リン酸塩緩衝液は、好ましくは1M塩化ナトリウム含有緩衝液である。このような緩衝液を用いて溶出させる場合、溶出液を、2次カラムである疎水性相互作用クロマトグラフィーに追加の処理なしにそのまま適用することができる。親和性クロマトグラフィーを1次カラムとして適用させることにより、培養液の培地成分(Phenol redなど)を効果的に除去することができる。
【0028】
本発明において、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、市販の各種マトリックスに結合した疎水性、好ましくは芳香族または脂肪族の帯電しないリガンドを有するゲルで行われる。帯電しないリガンドが形成されるように、通常の結合技術によってリガンドをマトリックスに結合させることができる。このような技術として最も適した例がグリシジル−エーテル結合方法である。他の技術としては、アガロースマトリックスを水中でグリシドキシプロピルトリメトキシシランで活性化させた後、アルコール中でリガンドを固定する方法がある。別の技術としては、アガロースマトリックスを1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのビス−エポキシドで活性化した後、アミノアルキルまたはアルキルメルカプタンなどのリガンドに結合させる方法がある。利用可能なさらに別の技術として、1,1−カルボニルジイミダゾール活性化およびジビニルスルホン活性化がある。前記全ての技術から得たゲルは、全体pH範囲で帯電しない。脂肪族リガンドは、例えばプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどの直鎖アルキルであり、あるいはイソ−またはネオアルキルなどの側鎖アルキルであり、あるいはオリゴエチレングリコールである。芳香族リガンドは、好ましくはフェニルである。マトリックスは、いろいろの強親水性マトリックスの中から選択でき、例えばSepharose(登録商標)などのアガロースマトリックス、TSK−GELなどの有機高分子マトリックス、高多孔性有機高分子マトリックスがある。好ましいマトリックスは、アガロースマトリックスである。好ましいアガロースマトリックスは、Amersham Biosciences(Uppsala、Sweden)のセファロースマトリックス、Bio−Rad Laboratories(Brussels、Belgium)のBio−Gel A、Kem−En−Tec A/S(Copenhagen、Denmark)のMinileak(登録商標)である。好ましくは、マトリックスは、交差結合されて高速流動を許容することにより、高生産能を提供する。さらに好ましくは、本発明の疎水性相互作用クロマトグラフィーは、Amersham Biosciencesのフェニルセファロース6FFゲルまたはブチルセファロース4FFゲルで行う。一般に、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、実施に先立ち、分画の伝導性を高めるために分画に塩を添加することができる。その後、低いイオン強度の緩衝液を用いて媒質から溶出する。本発明の実施において、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、前段階の親和性クロマトグラフィーの溶出液を前処理なしにそのままロードすることができ、hTPOは樹脂に付着され、不純物はそのままカラムを通過し或いは洗浄段階で除去されるので、多くの不純物を効果的に除去することができる。
【0029】
本発明において、逆相クロマトグラフィーは、疎水性によって成分を分離するためのことであって、極性の移動相と非極性の化学的に結合した固定相を利用する。好ましい逆相媒質は、C4樹脂(Amersham Biosciences)、多孔性樹脂Oligo R2(登録商標)およびOligo R3(登録商標)(PerSeptive Biosystems,Inc.,Framingham、MA)を含む。典型的な溶媒システムは、水−エタノール、水−アセトニトリル、水−テトラヒドロフラン、へキシレングリコールなどの混合物を含み、溶出は、そのような溶媒システムの適当な濃度勾配で公知の方法によって行う。好ましくは、溶出された分画は、直ちにリン酸塩緩衝液で希釈してタンパク質の変性を防止する。具体的な様態として、本発明の精製方法は、好ましくは逆相クロマトグラフィーにC4逆相樹脂を使用する。特に好ましくは、溶媒システムとして水−エタノール混合物の勾配を利用する。本発明の実施において、エタノール濃度勾配を用いて逆相クロマトグラフィーした溶出液は、前段階の疎水性相互作用クロマトグラフィーした溶出液に含まれていた不純物を完全に除去する。これにより、hTPOの純度は98%以上である。
【0030】
本発明において、陰イオン交換クロマトグラフィーは、一般に3級または4級アミングループ(例えば、ジエチルアミノエチル、トリエチルアミノエチル、ベンジル−ジエチルアミノエチル)で誘導体化された不溶性の粒子性支持体を含む媒質を用いて行う。好ましい支持体は、セルロース、アガロース、デキストラン、ポリスチレンビードなどを含む。トリエチルアミノエチルグループで誘導体化された支持体が好ましい。好ましい陰イオン交換媒質は、Q Sepharose(登録商標)(Amersham Biosciences)、Macro−Prep(登録商標)Q(Bio−Rad Laboratories)、Q−HyperD(登録商標)(BioSepra,Inc.,Marborough、MA)、Fractogel EMD−TMAE650(Merck)などを含む。陰イオン交換カラムは、溶出物をロードする前に、便利にはpH6.0〜8.0の水性緩衝液で平衡化させることができる。溶出は、水性緩衝液、好ましくは約pH6.5〜4.5のアセテート緩衝液を用いて公知の方法によって行うことができる。或いは、リン酸ナトリウム緩衝液を用いて濃度勾配に応じて溶出することができる。好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに結合したhTPOを塩化ナトリウムの濃度勾配を用いてシアル酸含量に応じてhTPOを分画溶出させる。0.5M以下、好ましくは0.3M以下の塩化ナトリウム勾配を使用することができる。塩化ナトリウ濃度勾配が高いほど、シアル酸含量の高いhTPOが溶出された。塩化ナトリウム濃度勾配を用いて得られた溶出分画中のhTPOのシアル酸含量が図6に示されている。図6中の(a)および(b)に示すように、0.15M〜0.3M塩化ナトリウム濃度勾配で溶出された分画にシアル酸含量の高いhTPOが含有された。本発明者らは、前述したように、精製されたhTPOを等電集束分析によってN−アセチルノイラミン酸(N-acetylneuraminic acid)およびN−グリコノイラミン酸(N-glyconeuraminic acid)を定量および定性分析してシアル酸含量を測定するとともに、シアル酸含量による生体内活性を測定し、シアル酸含量が増加するほど生体内血小板が増加することを確認した(実施例5、図7)。
【0031】
したがって、本発明は、一つの追加様態として、(a)hTPO含有生物学的流液を親和性クロマトグラフィーする段階と、(b)段階(a)で得られた溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィーする段階と、(c)段階(b)で得られた溶出液を逆相クロマトグラフィーする段階と、(d)段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに充填し、0.15M〜0.3M塩化ナトリウム濃度勾配で前記カラムから選択的に溶出されたhTPOを収集する段階とを含む方法により精製された、高シアル酸含量のhTPO含有分画を提供する。
【0032】
本願に使用された用語「高シアル酸含量のhTPO」は、前述したような陰イオン交換クロマトグラフィーカラムから0.15〜0.3Mの塩化ナトリウム勾配で溶出され、pI4.0以下のhTPOを意味する。
【0033】
前述した一連のクロマトグラフィーによって精製されたhTPOは、ゲル濾過クロマトグラフィーによってさらに精製でき、これにより陰イオン交換クロマトグラフィーからの溶出物中の凝集体を除去することができる。ゲル濾過の好ましい媒質は、アガロース、ポリアクリルアミドまたはその他の高分子の交差結合ビードを含み、好ましくはAmersham Biosciencesのセファクリル(例えば、Sephacryl(登録商標) 200HRまたはS−300HR)、セファデキス(例えば、Sephadex G50)またはスーパーデキス(例えば、Superdex(登録商標) 200PGまたはSuperdex75)を挙げることができる。TOSO Haas GmbH(Stuttgart、Germany)のゲル濾過媒質(例えば、TSK Toyopearl HW55)またはその他の製造会社で市販している類似のゲルなどが使用できる。溶出は、水性緩衝液を用いて公知の方法によって行い、TPOの特性に有害な影響を及ぼす成分を溶出するものと知られているその他の通常の溶出緩衝液が使用できる。具体的様態として、本発明の精製方法は、好ましくはゲル濾過クロマトグラフィーにスーパーデキス200PGを使用する。
【0034】
前述したような一連のクロマトグラフィーによって精製されたhTPOは、逆相高速液体クロマトグラフィーおよびゲル濾過高速液体クロマトグラフィーの結果、98%以上の高純度を示した(実施例3)。
【0035】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を下記実施例によってより具体的に説明する。ところが、当業者であれば、下記実施例が本発明を説明するために提供するものに過ぎず、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではないことを理解するであろう。
【0036】
〔実施例1〕
<セルファクトリー培養器を用いた無血清大量培養>
157番および164番のアミノ酸残基をアスパラギン酸で置換してN結合型糖鎖を導入したhTPO誘導体を大量生産するための無血清セルファクトリー培養をシード培養段階と本培養段階に分けて行った。シード培養では、液体窒素タンクに保管されている製造用細胞銀行(Working Cell Bank)でヒトトロンボポエチン誘導体生産細胞株(CHO dhfr−/pD40458)(KCTC 0632BP)5バイアル(1×10cell/mL)を取り出してシード培養培地(5%血清含有、DMEM/F12培地、Gibco−BRL Co.)で1回洗浄した。メトトレキサート(methotrexate)(Sigma社)を含有したシード培養培地を30mLずつ5個の175cmT−フラスコ(Nalge Nunc International Corp.,Naperville、IL)に入れ、洗浄した細胞を接種した。CO2培養器(37℃、5%COの条件)で準飽和(sub-confluency)状態になるまで培養した後、175cmT−フラスコを0.25%トリプシン−EDTA溶液で処理して細胞を回収した。1つの175cmT−フラスコから回収した細胞を、新鮮なメトトレキサート含有シード培養培地が30mLずつ入っている4個の新しい175cmT−フラスコに分けて接種した後、前記と同様の条件でもう1回準飽和状態になるまで培養し、その後回収した細胞を新鮮なシード培養培地が2Lずつ入っている3個の10段セルファクトリー(Nunc Cell Factory of Nalge Nunc International Corp.,Naperville、IL)に分けて接種した。
【0037】
3個の10段セルファクトリーから回収した細胞を新鮮な本培養培地(1%血清含有、DMEM/F12倍地、Gibco−BRL Co.,Gaithersburg、MD)40L入りのMedia bag(Stedim Inc.,Concord、CA)に仕込んで均一に混ぜた後、5個の40段セルファクトリーに1.5×10cell/mLで接種した。72時間培養の後、PBSで1回洗浄し、0.5mM酪酸、酵母分解物(Gibco−BRL Co.)、各種アミノ酸入りの無血清培地DMEM/F12で交替した後、CO培養器(37℃、5%COの条件)で120時間培養した。前述した各種添加物入りの無血清(serum-free)培養方法で培養するときの培養日によるhTPO誘導体生産細胞株の発現量を図2に示した。発現量は、無血清培地で交替した後5日目に最大(20mg/L)であった。これは、10%血清含有培地で確認した発現量(10mg/L)と比較するとき、約2倍増加したものである。
【0038】
〔実施例2〕
<TPO誘導体の純粋精製>
(a)親和性クロマトグラフィー
CM Affi−Gel Blue樹脂(Bio−Rad Laboratories)1LをVS150/500カラム(Millipore、Bellerica、MA)に充填させた後、緩衝液A(10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、pH7.2)10Lで十分洗浄した。実施例1で得た培養上澄み液40Lを130mL/minの速度でカラムを通過させ、280nmでUVによってモニタリングした。培養上澄み液を全て流した後、緩衝液B(10mMリン酸ナトリウム、2M尿素、pH7.2)でUV数値が基底水準となるまで洗浄した後、緩衝液C(10mMリン酸ナトリウム、2M尿素、1M塩化ナトリウム、pH7.2)でTPO含有樹脂に結合したタンパク質を溶出させた。
【0039】
(b)疎水性相互作用クロマトグラフィー
フェニルセファロースFF樹脂(Amersham Biosciences)800mLをVS90/500カラムに充填させた後、2Lの緩衝液C(10mMリン酸ナトリウム、2M尿素、1M塩化ナトリウム、pH7.2)で十分洗浄した。CM Affi−Gel Blue段階で得た溶出分画を43mL/minの速度でカラムに適用し、280nmでUVによってモニタリングした。分画を全て流した後、緩衝液C(10mMリン酸ナトリウム、2M尿素、1M塩化ナトリウム、pH7.2)でUV数値が基底水準になるまで洗浄した後、緩衝液B(10mMリン酸ナトリウム、2M尿素、pH7.2)でTPO含有樹脂に結合されたタンパク質を溶出させた後、この分画にEtOHを20%添加して、次の段階であるC4逆相カラムクロマトグラフィー(C4 reversed phased column chromatography)に適用した。
【0040】
(c)逆相クロマトグラフィー
15μmサイズのC4逆相樹脂(Amersharm Pharmacia社)23mLをTR10/300カラム(Amersharm Biosciences)に充填させ、pH6.0の50mMリン酸ナトリウム、20%エタノールで洗浄して平衡化させた後、7mL/minの速度でフェニルセファローズ段階で得た溶出分画(20%EtOH添加)を注入した。pH6.0の50mMリン酸ナトリウム、40%エタノール緩衝液でカラムを洗浄し、40%〜80%エタノールの濃度勾配によってタンパク質を溶出させた。hTPO誘導体は、約70%エタノールの濃度勾配で大部分溶出された。C4逆相クロマトグラフィーで溶出された分画は、直ちに10mMリン酸ナトリウム緩衝液で10倍希釈して有機溶媒によるタンパク質変性を防止した。
【0041】
(d)陰イオン交換クロマトグラフィー
逆相クロマトグラフィー段階で溶出された分画をシアル酸含量によって分別するために、陰イオン交換クロマトグラフィーQカラム(Amersharm Biosciences)に10mL/minの速度で注入した。10mMリン酸ナトリウム緩衝液で十分洗浄した後、0〜0.3M塩化ナトリウム勾配の10mMリン酸ナトリウム緩衝液を適用して溶出した。この際、シアル酸含量の少ないhTPOは、0.15M以下の塩化ナトリウムを用いた分画で溶出され、シアル酸含量の多いhTPO誘導体は、0.15〜0.3M塩化ナトリウム緩衝液で溶出された。
【0042】
(e)ゲル濾過クロマトグラフィー
陰イオン交換クロマトグラフィーで溶出された高シアル酸含量のhTPOをゲル濾過クロマトグラフィーに適用して凝集体(aggregates)を除去し、最終医薬品薬剤用緩衝液として使用されるTNT(10mMトリス、150mM塩化ナトリウム、0.01%ツイン20)緩衝液で交替した。カラムXK50/100(Amersharm Biosciences)にゲル濾過樹脂スーパーデキス200PG(Superdex 200PG、Amersharm Biosciences)1.4Lを充填させ、0.5N NaOHと0.5N HClで洗浄した後、TNT緩衝液7Lを一日中流して、樹脂にエンドトキシンが存在しないように調節した。溶出液を8mL/minの速度でカラムに注入し、分画収集器(fraction collector、Amersharm Biosciences)で、カラムを通過したタンパク質を収集した。単量体のみを含む分画を集めて0.22μmフィルタで濾過した後、凍結乾燥バイアルに分注し、長期間保存のために凍結乾燥させた。
【0043】
〔実施例3〕
<検定>
各段階のクロマトグラフィーで溶出された溶出液は、還元条件の下で15%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社)上で電気泳動した後、クマシー染色とウェスタンブロット方法で分析した。その結果は、図3に示されている。最終精製された精製産物は、逆相高速液体クロマトグラフィー(reverse phased HPLC)によって、純度が99%以上であることを確認し(図4参照)、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(size exclusion HPLC)によって単量体が98%以上であることが証明された(図5参照)。
【0044】
〔実施例4〕
<精製したhTPO誘導体の等電集束分析およびシアル酸の測定>
実施例2で純粋精製した試料6μgを取ってIEFゲル(pH3〜7、Invitrogen)にロードし、100Vで1時間、200Vで30分、500Vで15分間展開した後、ゲルを取り出して固定液中で30分間放置し、クマシー染色で染色することにより、等電集束分析を行った。等電集束分析の結果、Qカラムで塩化ナトリウム濃度勾配で溶出された分画は塩濃度が高いほど低いpI値を有することが分かった(図6における(a))。シアル酸分析のためには、まず、0.4〜0.6nmoLの乾燥試料に0.4mLの0.1N HClを入れて1時間80℃でシアル酸を加水分解した。スピードバック(Speed Vac)で反応液を乾燥させ、さらに蒸留水に溶解して再乾燥させた試料の一部をBio−LC DX−300(Dionex Corporation、Sunnyvale、CA)に注入して分析した。カラムは、直径4mm、長さ250mmのCarboPac PA1カラムを利用し、150mM塩化酢酸含有の100mM NaOHで分析した。流速は1mL/minであり、標準物質としては、糖タンパク質で発見されるN−アセチルノイラミン酸(N-acetylneuraminic acid)とN−グリコノイラミン酸(N-glyconeuraminic acid)を用いて定性および定量分析を行った。その結果が図6における(b)に示されている。物質のpI値が低いほど、比例的にシアル酸含量が高い。これは、シアル酸含量が糖タンパク質のpI値に多くの影響を及ぼしていることを示す。
【0045】
〔実施例5〕
<hTPO誘導体の生体内(in vivo)活性の検証>
生体内活性試験は、動物細胞で発現されたhTPO誘導体を投与したマウスからの血小板数を測定する方法で行った。動物は、7週齢の雌Balb/cマウスを購入して(Charlex River社、日本)恒温(24±1℃)、恒湿(55%)、照明時間12時間(午前7時〜午後7時)と設定された動物室で1週間程度飼育馴化してから使用した。試験期間中にも、動物は、同一の飼育室で飼育した。1群に5匹となるように、体重を指標とした層別無作為抽出によってマウスを群分離し、それぞれhTPO誘導体投与群、薬剤を投与しない無処理群と設定した。
【0046】
実施例2のQカラムで相異なる塩濃度によって分画し、シアル酸含量の異なるhTPO誘導体を得、そのシアル酸含量によるhTPO誘導体の生体内活性を比較するために、10μg/kgの濃度で1回皮下投与した。採血は、投与開始5日後に行った。エーテル麻酔の下にマウスの腹部下大静脈から全血を採取し、EDTA処理チューブに移した後、抹消血中の血小板数を自動血球計測器(Cell dyne、Abbott社)を用いて測定した。その結果は、平均±標準誤差で示した。シアル酸含量が高いほど、生体内で血小板を増加させる薬効は比例的に高いことが分かった(図7a)。同一の試験方法で0〜0.3M塩化ナトリウム濃度勾配で分離したhTPO誘導体と0.15〜0.3M塩化ナトリウム濃度勾配で溶出した高シアル酸含有hTPO誘導体間の生体内活性を比較したとき(図7b)、前記2つの溶出液間の生体内活性は有意的な差異を示した。
【0047】
高シアル酸含有のhTPO誘導体分画の投与濃度による活性を測定するために、10、20、40、80、160、320、640、1280μg/kgの一定の濃度で1回皮下投与した。試験方法は、前記と同様にした。投与濃度による血小板数値の変化を図8に示した。HTPO誘導体は、血小板数の増加を刺激して8日目に最大血小板数を示し、濃度依存的に血小板数値を増加させた。
【産業上の利用の可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明に係る培養方法でhTPOを生産することができ、本発明の一連のクロマトグラフィーを適用した精製過程によって、高い活性を示す高シアル酸含量の高純度hTPOを得ることができる。このような高シアル酸含量の高純度hTPOは、医学的に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の前記および他の目的、特徴および他の利点は添付図面を参照する以降の詳細な説明からより明らかに理解可能である。
【図1】セルファクトリーを用いた無血清培養と一連のクロマトグラフィーによってhTPOを精製する流れ図である。
【図2】セルファクトリー培養器内で無血清培養工程中のhTPO誘導体の発現量を示す図である。
【図3】hTPO誘導体の精製度を確認するために、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、クマシ−染色およびウェスタンブロットを行った結果を示す図である。
【図4】逆相高速液体クロマトグラフィー(reverse phased HPLC)で精製されたhTPO誘導体が純度99%以上であることを検証したものである。
【図5】サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(size exclusion HPLC)で精製されたhTPO誘導体が98%以上の単量体から構成されていることを検証したものである。
【図6】等電集束(isoelectrofocusing)分析によって各分画のpI値とシアル酸分析結果を示す図である。
【図7a】シアル酸含量によるhTPO誘導体の生体内活性を示す図である。
【図7b】シアル酸含量によるhTPO誘導体の生体内活性を示す図である。
【図8】マウスを用いて高シアル酸分画のhTPO誘導体の生体内活性を示す図である。
【図9】無血清培地に添加される様々な成分によるhTPO誘導体の発現率を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトトロンボポエチン(hTPO)を発現する真核細胞を3〜6.5%血清含有培地で培養する段階と、
続いて0.5〜1.5%血清含有培地で培養する段階と、
血清が実質的に含有されていない無血清培地で培養する段階とを含む、hTPO含有培養物を生産する方法。
【請求項2】
前記真核細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CHO細胞株が、CHO dhfr−/pD40434(KCTC 0630BP)、CHO dhfr−/pD40449(KCTC 0631BP)およびCHO dhfr−/pD40458(KCTC 0632BP)よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記真核細胞が、前記0.5〜1.5%血清含有培地に1.0×10〜1.0×10cell/mLの濃度で接種されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記真核細胞が、1.5×10cell/mLの濃度で接種されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記無血清培地にブチル酸および酵母分解物が添加されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(a)hTPO含有生物学的流液を親和性クロマトグラフィーする段階と、
(b)段階(a)で得られた溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィーする段階と、
(c)段階(b)で得られた溶出液を逆相クロマトグラフィーする段階と、
(d)段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーする段階とを含む、hTPO含有生物学的流液からhTPOを精製する方法。
【請求項8】
段階(c)で得られた溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに充填し、0.15M〜0.3M塩化ナトリウム濃度勾配で前記カラムから選択的に溶出されたhTPOを収集することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
段階(d)を行った後、ゲル濾過クロマトグラフィーする段階をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
hTPO含有生物学的流液が、請求項1記載の方法で生産された培養物の培養上澄み液であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
段階(a)の親和性クロマトグラフィーで使用されるカラムを1M塩化ナトリウム含有リン酸塩緩衝液で溶出させることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
段階(c)の逆相クロマトグラフィーで使用されるカラムをエタノール勾配を用いて溶出させることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法で精製されたhTPOを含有する分画。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−528195(P2007−528195A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509335(P2005−509335)
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002079
【国際公開番号】WO2005/033135
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(506122512)デウン カンパニー,リミテッド (6)
【Fターム(参考)】