説明

高シリカモレキュラシーブCHA

CHA結晶構造を有する高シリカモレキュラシーブを、1−アダマンタンアミン、3−キヌクリジノール又は2−エキソ−アミノノルボルナンから誘導されたカチオンを有する構造規定剤を用いて合成するための方法を開示する。合成は、フッ素が存在しない状態で実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高シリカモレキュラシーブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「CHA」と呼称される結晶構造を有する菱沸石は、ほぼCaAl12Si2472の式を有する天然ゼオライトである。菱沸石の合成された形態は、John Wiley&Sonsによって1973年に刊行された、D.W.Breckの「Zeolite Molecular Sieves」に記載されている。Breckによって報告された合成形態は、Barrerらによる、J.Chem.Soc.、2822頁(1956年)に記載のゼオライト「K−G」、英国特許第868846号(1961年)に記載のゼオライトD、及び1962年4月17日にMiltonに発行された米国特許第3030181号に記載のゼオライトRである。また、菱沸石は、W.H.Meier及びD.H.Olsonの「Atlas of Zeolite Structure Types」(1978年)においても議論されている。
【0003】
Barrerらによって、J.Chem.Soc.Articleにおいて報告されたK−Gゼオライト材料は、2.3:1から4.15:1のシリカ:アルミナのモル比(本明細書においては「SAR」と呼ぶ)を有するカリウム形態である。英国特許第868846号において報告されたゼオライトDは、4.5:1から4.9:1のSARを有するナトリウム−カリウム形態である。米国特許第3030181号において報告されたゼオライトRは、3.45:1から3.65:1のSARを有するナトリウム形態である。
【0004】
Chemical Abstaracts93巻(1980年)における引用No.93:66052yは、Soobsch.Akad.Nauk.Gruz.SSR1980、97(3)621〜4頁におけるTsitsishriliらのロシア語の論文を扱っている。この論文は、KO−NaO−SiO−Al−HOを含有する反応混合物中に、テトラメチルアンモニウムイオンが存在すると、菱沸石の結晶化を促進することを教示している。結晶化方法によって得られたゼオライトは、4.23のSARを有する。
【0005】
CHA結晶構造を有する、SSZ−13と呼ばれるモレキュラシーブは、1985年10月1日にZonesに発行された米国特許第4544538号に開示されている。SSZ−13は、1−アダマンタンアミン(1−adamantamine)、3−キヌクリジノール又は2−エキソ−アミノノルボルナンから誘導された、窒素含有カチオンから調製される。Zonesは、米国特許第4544538号に記載のSSZ−13が、合成されたままの無水状態において、酸化物のモル比で表して、以下の如き組成を有していることを開示している:
(0.5〜1.4)RO:(0〜0.5)MO:W:(5を超える)YO
[式中、Mはアルカリ金属カチオンであり、Wはアルミニウム、ガリウム及びこれらの混合物から選択され、Yはケイ素、ゲルマニウム、及びこれらの混合物から選択され、Rは有機カチオンである]。調製したままの状態で、シリカ:アルミナのモル比は、典型的には8:1から約50:1の範囲であり、反応物の相対比を変化させることによって、より高いモル比が得られる。また、高モル比は、SSZ−13をキレート剤又は酸によって処理し、SSZ−13の格子からアルミニウムを抽出することによっても得られることが開示されている。また、シリカ:アルミナのモル比は、ケイ素及び炭素のハロゲン化物並びに類似の化合物を使用することによっても増大させることができる。
【0006】
また、米国特許第4544538号も、SSZ−13を調製するために使用した反応混合物が、5:1から350:1の範囲のYO/Wモル比(例えば、SAR)を有することを開示している。反応混合物中のシリカの水性コロイド懸濁液を使用してシリカ源を供給すると、比較的高いシリカ:アルミナのモル比を有するSSZ−13を製造することができるようになることを開示している。
【0007】
しかし、米国特許第4544538号は、シリカ:アルミナのモル比から50を超えるSSZ−13は開示してはいない。
【0008】
2004年3月23日にZonesらに発行された米国特許第6709644号は、CHA結晶構造を有し、小さな結晶寸法を有するアルミノケイ酸塩ゼオライト(SSZ−62と呼ぶ)を開示している。SSZ−62を調製するために使用された反応混合物は、20〜50のSiO/Alモル比を有する。ゼオライトを、ガスを分離(例えば、天然ガスから二酸化炭素を分離する)するために使用できること、並びにガス流(例えば、自動車の排気ガス)中の窒素酸化物の還元、低級アルコール及びその他の酸素含有炭化水素の液体製品への変換、及びジメチルアミンの製造のために使用される触媒中で使用できることが開示されている。
【0009】
Topics in Catalysis、9(1999)、59〜76頁に記載のMA.Camblor、L.A.Villaescusa及びM.J.Diaz−Cabanas、「Synthesis of All−Silica and High−Silica Molecular Sieves in Fluoride Media」は、菱沸石を含む、全シリカ又は高シリカゼオライトを製造するための方法を開示している。菱沸石は、フッ化物及びN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム構造規制剤を含有する反応混合物中で製造されている。しかし、Camblorらは、水酸化物含有反応混合物からの全及び高シリカ菱沸石の合成は開示していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、CHA結晶構造並びに(1)酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム及びこれらの混合物の(2)酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム及びこれらの混合物に対するモル比が50:1を超えるモレキュラシーブを調製するための方法が提供され、前記方法は:
A.モル比で表して以下の範囲に入る組成:
YO/W 220〜∞(好ましくは、350〜5500)
OH−/YO 0.19〜0.52
Q/YO 0.15〜0.25
2/nO/YO 0.04〜0.10
O/YO 10〜50
[式中、Yはケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Wはアルミニウム、鉄、チタン、ガリウム又はこれらの混合物であり、aは1又は2であり、aが1の場合、bは2(すなわち、Wは4価である)であり、又はaが2の場合、bは3(すなわち、Wは3価である)であり;Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、nはMの原子価であり、Qは1−アダマンタンアミン、3−キヌクリジノール又は2−エキソ−アミノノルボルナンから誘導されるカチオンである。]を含む水性反応混合物を形成すること;及び
B.前記水性混合物を、結晶が形成されるまで、十分な結晶化条件下で維持すること
を含む。
【0011】
反応混合物がフッ素を含有していないことに注目すべきである。したがって、反応は、フッ化物が存在しない状態で実施されうる。
【0012】
本発明によれば、CHA結晶構造を有し、合成されたままの無水状態において、酸化物のモル比で表して以下の通りの組成を有する高シリカモレキュラシーブが提供される:
YO/W 50超〜∞(例えば、>50〜1500又は200〜1500)
2/nO/YO 0.04〜0.15
Q/YO 0.15〜0.25
[式中、Yはケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Wはアルミニウム、鉄、チタン、ガリウム又はこれらの混合物であり;cは1又は2であり;cが1の場合、dは2(すなわち、Wは4価である)であり、又はcが2の場合、dは3又は5(すなわち、Wが3価の場合、dは3、又はWが5価の場合、dは5)であり;Mはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又はこれらの混合物であり;nはMの原子価(すなわち、1又は2)であり;及びQは1−アダマンタンアミン、3−キヌクリジノール又は2−エキソ−アミノノルボルナンから誘導されるカチオンである。]。合成されたままの材料はフッ化物を含有していない。
【0013】
本発明によれば、CHA結晶構造を有し、そして酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(2)に対するモル比が、50超から1000までであるモレキュラシーブが提供される。一実施形態において、モレキュラシーブは、酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比200〜1500を有する。
【0014】
本発明によれば、CHA結晶構造を有し、そして酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(2)に対するモル比が50超から1500までであるモレキュラシーブを備えた触媒の存在下において、気相でメタノール、ジメチルエーテル又はこれらの混合物とアンモニアとを反応させることを含む、メチルアミン又はジメチルアミンを製造するための方法を提供する。一実施形態においては、モレキュラシーブは、酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比200〜1500を有する。
【0015】
また、本発明は、酸素含有供給原料から、1分子当たり2から4個の炭素原子を有するオレフィンを含む軽質オレフィンを製造する方法に関する。本方法は、酸素含有物供給原料を、モレキュラシーブ触媒を含有する酸素含有物変換領域へ送り、軽質オレフィン流れを製造することを含む。
【0016】
したがって、本発明によれば、酸素含有物(oxgenate)又は酸素含有物の混合物を含む供給原料から、軽質オレフィンを製造する方法が提供され、前記方法は、CHA結晶構造を有し、そして、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(2)に対するモル比が50超から1500までであるモレキュラシーブを含む触媒上で、効果的な条件下で、供給原料を反応させることを含む。一実施形態においては、酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比は、200〜1500である。
【0017】
本発明によれば、モレキュラシーブを含有する膜を用いて気体を分離するための改善された方法がさらに提供され、前記改善は、CHA結晶構造を有し、そして酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(2)に対するモル比が50超から1500までであるモレキュラシーブを、モレキュラシーブとして使用することを含む。一実施形態においては、モレキュラシーブは、酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比200〜1500を有する。
【0018】
本発明によれば、ガス流中の窒素酸化物を還元するための方法が提案されるのであって、前記方法はガス流をモレキュラシーブと接触させることを含み、前記モレキュラシーブはCHA結晶構造を有し、そして、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(2)に対するモル比が50超から1500までである。一実施形態においては、モレキュラシーブは酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比200〜1500を有する。このモレキュラシーブは、窒素酸化物の還元を触媒することのできる金属又は金属イオン(コバルト、銅、白金、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、ランタン、パラジウム、ロジウム又はこれらの混合物など)を含有することができ、この方法は化学量論的に過剰な酸素の存在下で実施することができる。好ましい実施例においては、このガス流は内燃機関の排気ガス流である。
【0019】
本発明は、概してまた、エンジン排気ガス流を処理するための方法、特に、エンジンを常温始動操作させる間の排出物を最少にするための方法に関する。したがって、本発明は、炭化水素及びその他の汚染物質を含有する常温始動エンジン排気ガス流を処理するための方法を提供するものであって、前記方法は、前記エンジン排気ガス流を、水よりも炭化水素を優先的に吸着するモレキュラシーブ層の上に流して第1の排気ガス流を形成すること、及び前記第1の排気ガス流を触媒上に流して、前記第1の排気ガス流が含有している残留炭化水素及びその他の汚染物質を無害な生成物に変換して、処理された排気ガス流を形成すること、並びに前記処理された排気ガス流を大気中に放出することからなり、前記モレキュラシーブ層は、CHA結晶構造を有し、そして、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(2)に対するモル比が50超から1000までであるモレキュラシーブを含むことを特徴とする。一実施形態においては、モレキュラシーブは、酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比200〜1500を有する。
【0020】
さらに本発明は、エンジンが、自動車エンジンを含む内燃機関であって、炭化水素燃料を燃料供給することができる場合の方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、モレキュラシーブが、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの混合物からなる群から選択された金属を、モレキュラシーブの上に堆積させているこのような方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、CHA結晶構造を有する高シリカモレキュラシーブを調製するための方法及びこのようにして調製されたモレキュラシーブに関する。本明細書において使用される用語「高シリカ」は、モレキュラシーブが、(1)酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物の(2)酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物に対するモル比が50を超えることを意味する。高シリカは、(1):(2)の比が無限大である、すなわち、モレキュラシーブ内に(2)の酸化物が本質的に存在していない、全シリカモレキュラシーブを含む。
【0023】
本発明の1つの利点は、反応が、フッ化物ではなく、水酸化物の存在下で実施されることである。一般に、HFベースの合成は、大量の構造規制剤(「SDA」)を必要とする。通常、HFベースの反応は、0.5のSDA/SiOモル比を有することになる。
【0024】
高シリカCHAモレキュラシーブは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属酸化物源;ケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物の酸化物源;場合により、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム及びこれらの混合物源;及び1−アダマンタンアミン、3−キヌクリジノール又は2−エキソ−アミノノルボルナンから誘導されるカチオンを含有する水性反応混合物から、適切に調製することができる。この混合物は、下の表Aに示した範囲にあるモル比で表した組成を有する:
表A
【表1】


[式中、Yはケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Wはアルミニウム、鉄、チタン、ガリウム又はこれらの混合物であり、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、nはMの原子価(すなわち、1又は2)であり、Qは1−アダマンタンアミン、3−キヌクリジノール又は2−エキソ−アミノノルボルナンから誘導されるカチオンである]。
【0025】
1−アダマンタンアミンから誘導されるカチオンは、次式を有するN,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンでありうる:
【化1】


[式中、R、R、Rはそれぞれ独立した低級アルキル、例えばメチルである。カチオンは、モレキュラシーブの形成に害を及ぼさないアニオンAを伴う]。このようなアニオンを代表するものには、ハロゲン(塩化物、臭化物及び沃化物など);水酸化物;酢酸塩;硫酸塩及びカルボン酸塩が含まれる。水酸化物は、好ましいアニオンである。例えば、ハロゲン化物を水酸化物イオンとイオン交換し、それによって、必要とされる水酸化アルカリ金属又はアルカリ土類金属を削減又は除去することは、有利である可能性がある。
【0026】
3−キヌクリジノールから誘導されるカチオンは、次式を有することができる:
【化2】


[式中、R、R、R及びAは上記で定義された通りである]。
【0027】
2−エキソ−アミノノルボルナンから誘導されるカチオンは、次式を有することができる:
【化3】


[式中、R、R、R及びAは上記で定義された通りである]。
【0028】
反応混合物は、標準のモレキュラシーブ調製法を用いて調製する。典型的な酸化ケイ素源には、ヒュームドシリカ、ケイ酸塩、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイダルシリカ、テトラ−アルキルオルトシリケート、及び水酸化シリカが含まれる。このようなシリカ源の例には、CAB−O−SIL M5ヒュームドシリカ及びHi−Sil水和非晶質シリカ、又はこれらの混合物が含まれる。典型的な酸化アルミニウム源には、アルミネート、アルミナ、水和水酸化アルミニウム、及びアルミニウム化合物(AlCl及びAl(SOなど)が含まれる。その他の酸化物源は、酸化ケイ素源及び酸化アルミニウム源と類似である。
【0029】
反応混合物をCHA結晶によりシーディングすることは、結晶化を規制し、加速するだけでなく、望ましくない汚染物の形成を最少にすることが分かった。純粋な相の高シリカCHA結晶を生成するためには、シーディングが必要とされる場合がある。種晶を使用する場合は、YOの重量を基準にして約2〜3重量%の量の種晶を使用することができる。
【0030】
反応混合物は、CHA結晶が形成されるまでは、高温で維持する。水熱結晶化工程中の温度は、通常、約120℃から約160℃の間に維持する。160℃未満、例えば、約120℃から約140℃間の温度は、第2結晶相を形成することなく、高シリカCHA結晶を生成させるのに有用であることが判明した。
【0031】
一実施形態において、反応混合物はCHA結晶の種晶を含有し、反応混合物は160℃未満、例えば、120℃から140℃の間の温度に維持される。
【0032】
結晶化時間は、通常、1日を超え、好ましくは約3日から約7日である。水熱結晶化は、圧力下で、通常、オートクレーブ内で実施し、反応混合物が自己発生圧力を受けるようにする。反応混合物は、結晶化の間、反応容器を回転させることなどにより撹拌することができる。
【0033】
高シリカCHA結晶が形成した直後に、固体生成物を、反応混合物から濾過などの標準的な機械的分離法によって分離する。結晶を水洗し、例えば、90℃から150℃の温度で8時間から24時間の間乾燥させ、合成したままの結晶を得る。この乾燥工程は、大気圧下で又は大気圧より低い圧力下で実施することができる。
【0034】
∞の、YO/Wのモル比を有する、すなわち、CHA内にWが本質的に存在していない高シリカCHAを作ることができる。この場合、CHAは全シリカ材料又はゲルマノケイ酸塩となるはずである。したがって、ケイ素及びアルミニウムの酸化物を使用する典型的な場合、CHAは、本質的にアルミニウムを含まないように、すなわち、∞の、シリカのアルミナに対するモル比を有するように作ることができる。シリカのアルミナに対するモル比を増大させる方法は、標準的な酸溶出又はキレート処理を使用することによる。また、最初にホウケイ酸塩CHAを調製し、次いでホウ素を除去することによって、高シリカCHAを作ることもできる。(Jonesら、Chem.Mater.、2001、13、1041〜1050頁に記載されているように)、ホウケイ酸塩CHAを高温で酢酸により処理することによってホウ素を除去し、CHAの全シリカバージョンを製造することができる。
【0035】
高シリカCHAモレキュラシーブは、下の表Bに示されたような酸化物のモル比で表された、合成されたままで無水状態の組成を有する:
表B
合成されたままの高シリカCHA組成
【表2】


[式中、Yはケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Wはアルミニウム、鉄、チタン、ガリウム又はこれらの混合物であり;cは1又は2であり;cが1の場合、dは2(すなわち、Wが4価である)であり、又はcが2の場合、dは3又は5(すなわち、Wが3価の場合、dは3、又はWが5価の場合、dは5)であり;Mはアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオン又はこれらの混合物であり;nはMの原子価(すなわち、1又は2)であり;及びQは1−アダマンタンアミン、3−キヌクリジノール又は2−エキソ−アミノノルボルナンから誘導されるカチオンである]。合成されたままの材料は、フッ化物を含有していない。
【0036】
また、本発明は、CHA結晶構造を有し、そして酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(2)に対するモル比が50超から1500までであるモレキュラシーブを提供する。一実施形態において、モレキュラシーブは、酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比200〜1500を有する。
【0037】
高シリカCHAモレキュラシーブは、合成されたままの状態で使用することができ、又は熱処理(か焼)することができる。「熱処理」は、蒸気がある又はない状態で、約200℃から約820℃の間の温度に加熱することを意味する。通常、アルカリ金属カチオンをイオン交換によって除去し、このイオンを水素、アンモニウム、又は任意の所望の金属イオンにより置換することが望ましい。蒸気を含む熱処理は、結晶格子を酸による攻撃から安定化させるのに役立つ。
【0038】
合成されたままの高シリカCHAモレキュラシーブは、粉末X線回折(「XRD」)パターンが、以下の特徴的な線を示す結晶構造を有する:
表I
合成されたままの高シリカCHA XRD
【表3】


(a)±0.10
(b)提供されたX線回折パターンは、相対強度のスケールに基づいており、X線回折パターンの最強線が100の値に指定される:W(弱い)は20未満であり;M(中程度)は20から40の間であり;S(強い)は40から60の間であり、VS(非常に強い)は60を超える。
【0039】
下記の表IAは、実際の相対強度を含む、合成されたままの高シリカCHAの粉末X線回折線を示す。
表IA
合成されたままの高シリカCHA XRD
【表4】


(a)±0.10
【0040】
か焼した後、高シリカCHAモレキュラシーブは、粉末X線回折パターンが表IIに示された特徴的な線を含む結晶構造を有する:
表II
か焼高シリカCHA XRD
【表5】


(a)±0.10
【0041】
下記の表IIAは、実際の相対強度を含む、か焼高シリカCHAの粉末X線回折線を示す。
表IIA
か焼高シリカCHA XRD
【表6】


(a)±0.10
【0042】
粉末X線回折パターンは、標準法により求めた。放射線は、CuのKα2重線であり、ストリップチャートペン記録計を装着したシンチレーション計数管スペクトロメータを使用した。2θ(θはブラッグ角)の関数としてのピーク高さI及び位置は、スペクトロメータのチャートから読み取った。これらの測定値から、相対強度、100×I/I(Iは、最強線又は最強ピークの強度)、及びd(記録された回折線に対応する、Åで表した面間隔)を計算することができる。
【0043】
回折パターンの変化は、試料間の酸化物のモル比の変化から生じうる。モレキュラシーブ内に存在する金属又はその他のカチオンをさまざまな別のカチオンとイオン交換させることによって製造したモレキュラシーブは、類似の回折パターンをもたらすが、面間隔の偏移及び相対強度の変化が生じる可能性がある。か焼も、X線回折パターンに偏移を生じさせることがある。また、対称性は結晶構造中のホウ素及びアルミニウムの相対的な量に基づいて変化しうる。これらの小さな変化があるにもかかわらず、基本的な結晶格子構造は不変である。
【0044】
本発明のモレキュラシーブを触媒中で使用し、メチルアミン又はジメチルアミンを調製することができる。ジメチルアミンは、一般に、シリカ−アルミナ触媒の存在下でメタノール(及び/又はジメチルエーテル)とアンモニアを連続的に反応させることにより、工業的な量で製造されている。この反応物は、通常、300℃から500℃の範囲の温度で、高圧下において気相で合わせる。このような方法は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、1988年4月12日にAbramsらに発行された米国特許第4737592号に開示されている。
【0045】
触媒は、酸の形態で使用される。酸形態のモレキュラシーブは、さまざまな技法によって調製することができる。好ましくは、ジメチルアミンを調製するために使用するモレキュラシーブは、水素型であるか、又は水素型にイオン交換されるNa、K、Rb、又はCsなどのアルカリ又はアルカリ土類金属を有する。
【0046】
本発明の方法は、約0.2から約1.5、好ましくは約0.5から約1.2までの、炭素/窒素(C/N)比をもたらすのに十分な量のメタノール、ジメチルエーテル又はこれらの混合物及びアンモニアを反応させることを含む。反応は、約250℃から約450℃、好ましくは約300℃から約400℃の温度で実施する。反応圧力は、約7〜7000kPa(1〜1000psi)、好ましくは約70〜3000kPa(10〜500psi)まで変化しうる。約0.01〜80時間、好ましくは0.10から1.5時間のメタノール及び/又はジメチルエーテルの空間時間を通常使用する。この空間時間は、触媒の質量を、反応器に導入したメタノール/ジメチルエーテルの質量流量で割り算したものとして計算する。
【0047】
本発明は、アルコール及びエーテルを含む1種又は複数種の酸素含有物を含む供給原料を、軽質オレフィン、すなわち、C、C及び/又はCオレフィンを含む炭化水素生成物へ触媒変換するための工程を含む。供給原料を、効果的な工程条件で本発明のモレキュラシーブと接触させて軽質オレフィンを製造する。
【0048】
本明細書において使用される用語「酸素含有物」は、アルコール、エーテル及びこれらの混合物などの化合物を指す。酸素含有物の例には、これらに限らないが、メタノール及びジメチルエーテルが含まれる。
【0049】
本発明の方法は、全ての供給原料及び希釈剤成分の全モル数を基準として、約1から約99mol%の間の量で、酸素含有物の供給原料中に存在しうる1種又は複数種の希釈剤の存在下で実施することができる。希釈剤には、これらに限らないが、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン、炭化水素(メタンなど)、芳香族化合物、又はこれらの混合物が含まれる。参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4861938号及び第4677242号では、希釈剤を使用して、軽質オレフィン、特にエチレンの生成に対する触媒の選択性を維持することが強調されている。
【0050】
好ましくは、酸素含有物の変換は、炭化水素を生成するのに効果的な条件(すなわち、効果的な温度、圧力、時間基準の重量空間速度、(WHSV)、及び、場合により有効量の希釈剤)下で、酸素含有物供給原料を本発明のモレキュラシーブと反応区域において気相で接触させるように、気相で実施する。この工程は、所望の軽質オレフィンを生産するのに十分な時間実施する。一般に、所望の生成物を生産するために使われる滞留時間は、秒から数時間まで変化しうる。滞留時間が、反応温度、モレキュラシーブ触媒、WHSV、相(液相又は気相)及び工程設計特性によって実質的に決定されることは、容易に理解されよう。酸素含有物供給原料の流量は、オレフィンの製造に影響を及ぼす。供給原料の流量を増大させると、WHSVが増大し、パラフィン製造品と比較してオレフィン製造品の形成を増大させる。しかし、パラフィン製造品と比較して増大されたオレフィン製造品は、酸素含有物の炭化水素への転換が減少させられたことによって相殺される。
【0051】
酸素含有物の変換工程は、自己発生圧力を含めた広範囲にわたる圧力下で、効果的に実施することができる。約0.01気圧(0.1kPa)から約1000気圧(101.3kPa)までの圧力において、軽質オレフィンの生成は影響を受けるが、必ずしも全ての圧力において、最適量の生成物が生成されるわけではない。好ましい圧力は、約0.01気圧(0.1kPa)から約100気圧(10.13kPa)の間である。より好ましくは、圧力は、約1から約10気圧(101.3kPaから1.013Mpa)にわたる。本明細書において言及される圧力は、たとえあったにしても、存在している希釈剤を除外した供給原料の分圧を指すのであり、その理由はこの分圧が酸素含有化合物に関係するからである。
【0052】
酸素含有物変換工程において使用することのできる温度は、少なくとも部分的には、モレキュラシーブ触媒に応じて、広範囲に変化する可能性がある。一般に、工程は、約200℃から約700℃の間の効果的な温度において実施することができる。温度範囲の下限では、したがって、一般に低反応速度では、所望の軽質オレフィンの形成は、低下する可能性がある。範囲の上限では、この工程は、最適量の軽質オレフィンを形成することができず、触媒の失活が速くなる可能性がある。
【0053】
モレキュラシーブ触媒は、好ましくは固体粒子中に取り込まれ、この粒子中に、酸素含有物の軽質オレフィンへの所望の変換を促進するのに効果的な量の触媒が存在する。一実施態様においては、固体粒子は、触媒として効果を発揮する量の触媒と、結合剤、充填剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのマトリックス材料とを含み、所望の特性又は諸特性(例えば、所望の触媒希釈剤、機械的強度など)を、固体粒子に付与する。このようなマトリックス材料は、しばしば本質的に多孔質であり、所望の反応を促進するのに有効であることも、有効でないこともある。充填剤及び結合剤には、例えば、合成及び天然に存在する物質(金属酸化物、粘土、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリアなど)が含まれる。マトリックス材料が触媒組成物に含まれている場合は、モレキュラシーブは、全組成物の、好ましくは約1から99重量%、より好ましくは約5から90重量%、さらに好ましくは約10から80重量%を構成する。
【0054】
本発明のモレキュラシーブを使用して気体を分離することができる。例えば、これを使用して、天然ガスから二酸化炭素を分離することができる。通常、モレキュラシーブは、気体を分離するために使用される膜の成分として使用される。このような膜の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2003年1月21日にKulkarniらに発行された米国特許第6508860号に開示されている。
【0055】
本発明のモレキュラシーブは、ガス流中の窒素酸化物を触媒によって還元するために使用することができる。通常、ガス流も、また、酸素、しばしば化学量論的に過剰な酸素を含有する。また、モレキュラシーブは、窒素酸化物の還元を触媒することのできる金属又は金属イオンを、その内部又は表面上に含有することができる。このような金属又は金属イオンの例には、コバルト、銅、白金、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、ランタン、パラジウム、ロジウム及びこれらの混合物が含まれる。
【0056】
ゼオライトの存在下で窒素酸化物を触媒で還元するためのこのような工程の一例は、参照により本明細書に組み込まれる1981年10月27日にRitscherらに発行された米国特許第4297328号に開示されている。そこでは、触媒工程は、一酸化炭素及び炭化水素の燃焼、及び、内燃機関からの排気ガスなどのガス流に含有されている窒素酸化物の触媒による還元である。ゼオライトの内部又は表面上に、効果がでる量の触媒作用を有する銅金属又は銅イオンを付与するために、使用されるゼオライトは、十分に金属のイオン交換がなされ、ドーピングされ又は充填されている。加えて、この工程は、過剰量の酸化剤、例えば酸素、の下で実施する。
【0057】
本発明は、また、CHA結晶構造を有する高シリカモレキュラシーブを用いて、エンジン排気ガスを処理するための方法に関する。本明細書において使用される用語「高シリカ」は、モレキュラシーブが、50を超える(1)酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物の(2)酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物に対するモル比を有することを意味する。高シリカは、(1):(2)の比が無限大である、すなわち、モレキュラシーブ内に(2)の酸化物が本質的に存在していない全シリカモレキュラシーブを含む。
【0058】
上記のように、本発明は、また、一般的にエンジン排気ガス流を処理するための方法、特に、エンジンを常温始動操作させる間の排出物を最少にするための方法に関する。エンジンは、未燃焼の又は熱分解された炭化水素又は類似の有機物を含む、有害成分又は汚染物質を含有する排気ガス流を発生させる、任意の内燃機関又は外燃機関からなる。排気ガスに通常存在する別の有害成分には、窒素酸化物及び一酸化炭素が含まれる。エンジンは、炭化水素燃料によって燃料が供給される場合がある。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される用語「炭化水素燃料」は、炭化水素、アルコール及びこれらの混合物を含む。エンジンに燃料を補給するために使用することのできる炭化水素の例には、ガソリン又はディーゼル燃料を構成する炭化水素の混合物がある。エンジンに燃料を補給するために使用することもあるアルコールには、エタノール及びメタノールが含まれる。アルコールの混合物及びアルコールと炭化水素の混合物も、使用することができる。エンジンは、ジェットエンジン、ガスタービン、内燃機関(自動車、トラック又はバスのエンジンなど)、ディーゼルエンジンなどである可能性がある。本発明の方法は、炭化水素、アルコール、又は炭化水素−アルコール混合物、自動車に搭載された内燃機関に、特に適している。便宜上、本明細書では、炭化水素を燃料として用いて、本発明を例示的に説明することにする。以下の説明において炭化水素を使用することで、本発明を、炭化水素を補給するエンジンに限定するものであると解釈すべきではない。
【0059】
エンジンが始動されると、エンジンは、エンジン排気ガス流中の炭化水素及びその他の汚染物質を比較的高濃度で作りだす。本明細書においては、汚染物質を使用して、排気ガス流に存在するいずれの未燃焼燃料成分及び燃焼副生物をもまとめて指すことにする。例えば、燃料が炭化水素燃料である場合、炭化水素、窒素酸化物、一酸化炭素及びその他の燃焼副生物が、エンジン排気ガス流に存在するであろう。このエンジン排気ガス流の温度は、比較的低く、一般に500℃未満であり、通常は200°から400℃の範囲である。このエンジン排気ガス流は、エンジン動作の初期期間、通常、常温始動の後、最初の30から120秒の間、上記の特性を有する。エンジン排気ガス流は、通常、体積で約500から1000ppmの炭化水素を含有する。
【0060】
処理するべきエンジン排気ガス流を、本発明のモレキュラシーブを含むモレキュラシーブ層の上に流し、第1の排気ガス流を作る。モレキュラシーブは、以下で説明する。モレキュラシーブ層から放出されたこの第1の排気ガス流は、直ぐに触媒上を流されて、第1の排気ガス流に含有されている汚染物質を無害な成分に変化させ、大気中へ放出される処理された排気ガス流をもたらす。大気中に放出される前に、処理された排気ガスは、当技術分野で公知のマフラ又はその他の消音装置の中を流される場合があることが分かる。
【0061】
汚染物質を無害な成分に変換するために使用される触媒が、当技術分野で、三元制御触媒と通常呼ばれている理由は、この触媒が、第1の排気ガス流に存在するどの残留炭化水素でも二酸化炭素及び水に酸化することと、どの残留一酸化炭素でも二酸化炭素に酸化することと、どの残留酸化窒素でも窒素及び酸素に還元することとを同時に行うことができるからである。いくつかの場合に、触媒は、窒素酸化物を窒素と酸素に変換する必要がない可能性があり、例えば、アルコールを燃料として使用する場合がそうである。この場合、触媒は、酸化触媒と呼ばれる。エンジン排気ガス流及び第1の排気ガス流の温度が比較的低いために、この触媒は高効率的には機能せず、そのためにモレキュラシーブ層が必要となる。
【0062】
モレキュラシーブ層が十分な温度、通常約150〜200℃に到達すると、この層に吸着されていた汚染物質は脱着し始め、第1の排気ガス流によって触媒の上に運ばれる。この時点で、触媒は動作温度に到達しており、したがって、汚染物質を無害な成分に十分変換させることができる。
【0063】
本発明において使用される吸着層は、好都合には粒子状形態で使用することができ、又は吸着剤を固体のモノリシスな担体上に堆積させることができる。粒子状形態を所望する場合、吸着剤は、錠剤、ペレット、顆粒、リング、球などの形状に成形することができる。モノリシスな形状を使用する場合、吸着剤に構造的な支持体を提供する不活性な担体材料上に堆積させられた薄膜又は被覆として、吸着剤を使用することが通常もっとも便利である。不活性担体材料は、セラミック又は金属材料などのどのような耐熱材料であってもよい。担体材料は、吸着材に対して非反応性であり、担体材料が曝されている気体によって分解されないことが望ましい。適切なセラミック材料の例には、シリマナイト、ペタル石、コージエライト、ムライト、ジルコン、ジルコンムライト(zircon mullite)、スポジウメン、アルミナ−チタン酸塩などが含まれる。加えて、本発明の範囲内にある金属材料には、耐酸化性であるか、さもなければ、高温に耐えることのできる、米国特許第3920583号に開示されたような金属及び合金が含まれる。
【0064】
担体材料は、ガス流方向に伸びている複数の細孔又はチャンネルを提供する、いかなる剛性の単一構造体であっても、最高に具合よく利用することができる。構造はハニカム構造であることが好ましい。ハニカム構造は、単一の形状でも、又は多数のモジュールが配列されたものとしても、有利に使用することができる。ハニカム構造は、ハニカム構造のセル又はチャンネルの方向と同じ方向にガスが流れるように、通常、一定の方向を向くようにされる。モノリシスな構造体のより詳細な考察については、米国特許第3785998号及び第3767453号を参照されたい。
【0065】
モレキュラシーブは、当技術分野で公知の任意の常套的方法で、担体上に堆積させる。好ましい方法には、モレキュラシーブを使用してスラリを調製し、このスラリをモノリスなハニカム担体に被覆することが含まれる。スラリは、適切な量のモレキュラシーブを水で結合剤と合わせるなどの当技術分野で公知の手段により調製することができる。次いで、この混合物を、超音波処理、粉砕などの手段を用いることによりブレンドする。このスラリを用いて、ハニカムをスラリに浸漬し、スラリを排出すること又はチャンネルに風を送ることにより過剰なスラリを除去し、約100℃に加熱することによって、モノリスなハニカムを被覆する。モレキュラシーブが所望するほど充填されていない場合は、所望する充填を達成するために必要な回数、上記の方法を繰り返すことができる。
【0066】
モレキュラシーブをモノリシスなハニカム構造体上に堆積させる代わりに、当技術分野において公知の手段により、モレキュラシーブを取り去って、モノリシスなハニカム構造体の中にモレキュラシーブを形成することができる。
【0067】
吸着剤は、吸着剤の上に分散させた1種又は複数種の触媒金属を場合により含有することができる。吸着剤の上に分散させることができる金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの混合物からなる貴金属である。所望する貴金属は、当技術分野において公知である適切ないずれの方法によってでも、担体としての役割を果たす吸着剤の上に堆積させることができる。吸着剤担体上に貴金属を分散させる方法の一例には、所望の貴金属又は貴金属類の、分解可能な化合物の水溶液を吸着剤担体に含浸させること、その上に分散させられた貴金属化合物を所持している吸着剤を乾燥すること、次いで、空気中で、約400℃から約500℃の温度で、約1から約4時間の間か焼することが含まれる。分解可能な化合物とは、空気中で加熱すると金属又は金属酸化物を生じる化合物を意味する。使用することのできる分解可能な化合物の例は、参照により組み込まれる米国特許第4791091号に明記されている。好ましい分解可能な化合物は、塩化白金酸、三塩化ロジウム、塩化パラジウム酸、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸及びヘキサクロロルテニウム酸塩である。貴金属は、吸着剤担体の約0.01から約4重量%の範囲の量で存在することが好ましい。具体的には、白金及びパラジウムの場合、範囲は0.1から4重量%であり、ロジウム及びルテニウムの場合は範囲は約0.01から2重量%である。
【0068】
これらの触媒金属は、炭化水素及び一酸化炭素を酸化し、窒素酸化物成分を還元して無害な生成物にすることができる。したがって、吸着剤層は、吸着剤及び触媒の両方の役割を果たす。
【0069】
本発明に使用される触媒は、当技術分野において公知の、いずれの三元制御又は酸化触媒からでも選択することができる。触媒の例は、全てが参照により組み込まれる米国特許第4528279号、第4791091号、第4760044号、第4868148号及び第4868149号に記載のものである。当技術分野において公知の好ましい触媒は、白金及びロジウム及び場合によりパラジウムを含有するものであり、酸化触媒は通常ロジウムを含有しない。酸化触媒は通常白金及び/又はパラジウム金属を含有する。また、これらの触媒は、通常、バリウム、セリウム、ランタン、ニッケル、及び鉄などの助触媒及び安定剤をも含有する。貴金属助触媒及び安定剤は、通常、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミノケイ酸塩、及びこれらの混合物などの担体上に堆積させるが、アルミナが好ましい。触媒を、好都合には、粒子形状で使用することができ、又は触媒複合材料を、固体のモノリシスな担体上に堆積させることができるが、モノリシスな担体が好ましい。粒子形状及びモノリシス形状の触媒は、上記で吸着剤について説明したのと同様にして調製する。
【実施例】
【0070】
(実施例1〜16)
高シリカCHAを、下表に示した、モル比で表した組成を有するゲル組成物、すなわち、反応混合物を調製することによって合成する。得られたゲルをParr社のボンベ反応容器内に入れ、下に示した速度で回転させながら、下に示した温度でオーブン内で加熱する。生成物をX線回折(XRD)によって分析し、生成物がCHA構造を有する高シリカモレキュラシーブであることが分かる。酸化ケイ素源は、Cabosil M−5フュームドシリカ又はHiSil 233非晶質シリカ(0.208重量%アルミナ)である。酸化アルミニウム源は、Reheis F2000アルミナである。
【表7】


SDA=1−アダマンタンアミンから誘導されたカチオン
℃/RPM/日数
SiO源=Hi Sil
SiO源=CAB−O−SIL
それぞれの反応生成物は、CHA構造を有する結晶性モレキュラシーブである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHA結晶構造を有し、(1)酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム及びこれらの混合物の(2)酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム及びこれらの混合物に対するモル比が50:1を超えるモレキュラシーブを調製するための方法であって、
A.モル比で表して以下の範囲に入る組成:
YO/W 220〜∞
OH−/YO 0.19〜0.52
Q/YO 0.15〜0.25
2/nO/YO 0.04〜0.10
O/YO 10〜50
[式中、Yはケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Wはアルミニウム、鉄、チタン、ガリウム又はこれらの混合物であり、aは1又は2であり、aが1の場合、bは2であり、又はaが2の場合、bは3であり;Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、nはMの原子価であり、Qは1−アダマンタンアミン、3−キヌクリジノール又は2−エキソ−アミノノルボルナンから誘導されるカチオンである。]を含む水性反応混合物を形成すること,及び
B.前記水性混合物を、結晶が形成されるまで、十分な結晶化条件下で維持すること
を含む方法。
【請求項2】
モレキュラシーブをフッ素が存在しない状態で調製する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応混合物が、CHA構造を有するモレキュラシーブの種晶をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応混合物を約120℃から約160℃までの温度で加熱する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
反応混合物を約120℃から約140℃までの温度まで加熱する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応混合物を約120℃から約140℃までの温度まで加熱する請求項3に記載の方法。
【請求項7】
CHA結晶構造を有し、合成されたままの無水状態において、酸化物のモル比で表して以下の通りの組成:
YO/W 50超〜∞
2/nO/YO 0.04〜0.15
Q/YO 0.15〜0.25
[式中、Yはケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Wはアルミニウム、鉄、チタン、ガリウム又はこれらの混合物であり,cは1又は2であり,cが1の場合にdは2であり、又はcが2の場合にdは3又は5であり,Mはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又はこれらの混合物であり,nはMの原子価であり,及びQは1−アダマンタンアミン、3−キヌクリジノール又は2−エキソ−アミノノルボルナンから誘導されるカチオンである。]を有するモレキュラシーブ。
【請求項8】
YO/Wが約50超から1500である請求項7に記載のモレキュラシーブ。
【請求項9】
YO/Wが約200〜1500である請求項7に記載のモレキュラシーブ。
【請求項10】
合成されたままのモレキュラシーブがフッ素を含んでいない請求項7に記載のモレキュラシーブ。
【請求項11】
CHA結晶構造を有し、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択される酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択される酸化物(2)に対するモル比が50超から1500までであるモレキュラシーブ。
【請求項12】
酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比が200〜1500である請求項11に記載のモレキュラシーブ。
【請求項13】
CHA結晶構造を有し、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(2)に対するモル比が50超から1500までであるモレキュラシーブを備えた触媒の存在下において、気相でメタノール、ジメチルエーテル又はこれらの混合物とアンモニアとを反応させることを含む、メチルアミン又はジメチルアミンを製造するための方法。
【請求項14】
酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比が200〜1500である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
メタノール、ジメチルエーテル又はこれらの混合物及びアンモニアが、約0.2から約1.5までの炭素/窒素比をもたらすのに十分な量で存在している請求項13に記載の方法。
【請求項16】
約250℃から約450℃までの温度で実施する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
メタノール、ジメチルエーテル又はこれらの混合物及びアンモニアが、約0.2から約1.5までの炭素/窒素比をもたらすのに十分な量で存在している請求項14に記載の方法。
【請求項18】
約250℃から約450℃までの温度で実施する請求項14に記載の方法。
【請求項19】
酸素含有物又は酸素含有物の混合物を含む供給原料から軽質オレフィンを製造する方法であって、CHA結晶構造を有し、そして、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択される酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択される酸化物(2)に対するモル比が50超から1500までであるモレキュラシーブを含む触媒上で、効果的な条件下で、供給原料を反応させることを含む方法。
【請求項20】
酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比が200〜1500である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
軽質オレフィンが、エチレン、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物である請求項19に記載の方法。
【請求項22】
軽質オレフィンが、エチレン、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物である請求項20に記載の方法。
【請求項23】
軽質オレフィンがエチレンである請求項21に記載の方法。
【請求項24】
軽質オレフィンがエチレンである請求項22に記載の方法。
【請求項25】
酸素含有物が、メタノール、ジメチルエーテル又はこれらの混合物である請求項19に記載の方法。
【請求項26】
酸素含有物が、メタノール、ジメチルエーテル又はこれらの混合物である請求項20に記載の方法。
【請求項27】
酸素含有物がメタノールである請求項25に記載の方法。
【請求項28】
酸素含有物がメタノールである請求項26に記載の方法。
【請求項29】
モレキュラシーブを含有する膜を用いて気体を分離する方法において、CHA結晶構造を有し、そして、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択される酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択される酸化物(2)に対するモル比が50超から1500までであるモレキュラシーブを、モレキュラシーブとして使用することを含む改善。
【請求項30】
酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比が、200〜1500である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ガス流中に含まれる窒素酸化物を還元する方法であって、ガス流をモレキュラシーブと接触させることを含み、前記モレキュラシーブはCHA結晶構造を有し、そして、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(2)に対するモル比が50超から1500までである方法。
【請求項32】
酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比が、200〜1500である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
酸素の存在下で実施する請求項31に記載の方法。
【請求項34】
酸素の存在下で実施する請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記モレキュラシーブが、窒素酸化物の還元を触媒することのできる金属又は金属イオンを含有している請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記モレキュラシーブが、窒素酸化物の還元を触媒することのできる金属又は金属イオンを含有している請求項32に記載の方法。
【請求項37】
金属がコバルト、銅、白金、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、ランタン、パラジウム、ロジウム又はこれらの混合物である請求項35に記載の方法。
【請求項38】
金属がコバルト、銅、白金、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、ランタン、パラジウム、ロジウム又はこれらの混合物である請求項36に記載の方法。
【請求項39】
ガス流が内燃機関の排気ガス流である請求項31に記載の方法。
【請求項40】
ガス流が内燃機関の排気ガス流である請求項32に記載の方法。
【請求項41】
ガス流が内燃機関の排気ガス流である請求項35に記載の方法。
【請求項42】
ガス流が内燃機関の排気ガス流である請求項36に記載の方法。
【請求項43】
炭化水素及びその他の汚染物質を含有する常温始動エンジン排気ガス流を処理するための方法であって、前記エンジン排気ガス流を、水よりも炭化水素を優先的に吸着するモレキュラシーブ層の上に流して第1の排気ガス流を形成すること、及び前記第1の排気ガス流を触媒上に流して、前記第1の排気ガス流が含有している残留炭化水素及びその他の汚染物質を無害な生成物に変換して、処理された排気ガス流を形成すること、並びに前記処理された排気ガス流を大気中に放出することからなり、前記モレキュラシーブ層は、CHA結晶構造を有し、そして、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(1)の酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ガリウム又はこれらの混合物から選択された酸化物(2)に対するモル比から50超から1000までであるモレキュラシーブを含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
モレキュラシーブが、酸化物(1)の酸化物(2)に対するモル比200〜1500を有する請求項43に記載の方法。
【請求項45】
酸化物が酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む請求項43に記載の方法。
【請求項46】
酸化物が酸化ケイ素及び酸化ホウ素を含む請求項43に記載の方法。
【請求項47】
モレキュラシーブが、本質的に全て酸化ケイ素である請求項43に記載の方法。
【請求項48】
エンジンが内燃機関である請求項43に記載の方法。
【請求項49】
内燃機関が自動車のエンジンである請求項48に記載の方法。
【請求項50】
エンジンが、炭化水素燃料によって燃料補給される請求項43に記載の方法。
【請求項51】
モレキュラシーブが、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの混合物からなる群から選択した金属をその上に堆積させている請求項43に記載の方法。
【請求項52】
金属が白金である請求項51に記載の方法。
【請求項53】
金属がパラジウムである請求項50に記載の方法。
【請求項54】
金属が白金及びパラジウムの混合物である請求項50に記載の方法。

【公表番号】特表2008−521744(P2008−521744A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543072(P2007−543072)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/038601
【国際公開番号】WO2006/057760
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】