説明

高ホエイ蛋白質含有乳蛋白質成分の製造

記載されている本発明は、乳ストリームからのカゼインと結合する、ホエイ蛋白質がそれから生成されるところの、当該乳ストリームからのホエイ蛋白質の高パーセンテージ含有乳蛋白質組成物である。当該組成物は、保持期間の当該乳ストリームを加熱する方法によって製造される。トランスグルタミナーゼ酵素を添加し、当該ストリームを再度加熱する。乳凝固酵素を加えることによって又は酸性化させることによって、蛋白質組成物においてカードを凝固させるステップが続く。次いで、当該乳蛋白質組成物は、チーズ製造において使用のために粉末に乾燥され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規乳製品成分の製造に関する。特に、本発明は、ホエイ蛋白質の保持の改良レベル及び改良レオロジー特性を示す乳製品成分の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
チーズ及びチーズ組成物は、凝塊及び乳清を製造するための凝固薬又は凝固剤(レンネットのような)で乳ストリームを処理することによって通常製造される。当該凝塊は“カード”といい、当該乳清は“ホエイ”という。当該凝塊は、一般的にカゼイン、脂肪を含み、さらにフレーバーを製造するために微生物処理され得る。さらなる過程により、チーズ及び類似チーズ組成物を生じる。
【0003】
当該ホエイは、一般的に、凝固薬又は凝固剤によってほとんど影響を受けない可溶性蛋白質を含み、それ故、当該凝塊は、当該初期乳スクリームの全ての蛋白質を含む傾向にはない。本技術は、ホエイ蛋白質を組み合わせることによるチーズの産生を改良する多種多様な方法を開示する。
【0004】
米国特許第4376072号は、加熱とともにアルカリ処理することによってカゼインに可溶性蛋白質を連結する方法を教示する。次いで、蛋白質成分は、pH約4の酸の添加によって処理した蛋白質を沈殿させ乾燥すること、又はpH約7のアルカリに再溶解させ乾燥することによって製造される。カゼインとの可溶性蛋白質の限定凝集が、この方法において可能となる。
【0005】
カゼイン蛋白質とホエイ蛋白質間の相互作用も重要である、なぜなら、好適に制御すれば、これらは、有効なテクスチャ特性をもたらすからである。そのような特性は、溶液の粘度、ゲル化、テクスチャ、及び熱安定性を含む。
【0006】
カゼインに対するレンネットの作用に類似して、酵素、特に蛋白質活性化酵素は、カゼインと他の蛋白質、特にホエイ蛋白質間の相互作用を制御するために使用され得る。
【0007】
米国特許出願公開第2003/0165594号は、トランスグルタミナーゼ(TG)を使用して、チーズ及びプロセスチーズの特性を修飾する様々な方法を開示する。チーズ粒子及びチーズカードは、当該酵素の溶液と接触することによって処理され得る。当該処理された成分は、それからプロセスチーズに転換され得る。あるいは、限外ろ過したリテンテート(retentate)は、トランスグルタミナーゼ酵素で処理され得、当該溶液は濃縮されプロセスチーズに転換される。これらの方法は、当該乳中に最初から存在するかなりの量の可溶化蛋白質と当該カゼインとの連結又は当該リテンテートの非効率な濃縮に関する、様々な制限や非効率を有する。
【0008】
米国特許番号第6270814号は、トランスグルタミナーゼ酵素を使用するもう1つの方法を教示する。この方法は、トランスグルタミナーゼで、カゼイン、ホエイ蛋白質及びラクトースを含む乳溶液を処理する。脂質、酸及び塩が添加され、当該混合物は均質化され、それから融解チーズとプロセスチーズ調理器具中で混合される。加熱後、当該融解物は、注ぎ出されプロセスチーズとして充填される。本方法の利点は、当該製品中のラクトースの結晶化傾向の減少、当該蛋白質の水結合特性の変更及び当該製品の融解挙動の改善を含む。当該方法は、十分に引き出されるはずのトランスグルタミナーゼの収率強化特性を利用し得ない、なぜなら、当該方法から失われる又は除かれるホエイ又は乳清がないからである。当該発明は、プロセスチーズのテクスチャが、トランスグルタミナーゼでの成分製造ステップの処理によって修飾され得ることを教示しない。
【0009】
米国特許番号第6572901号は、チーズ製品を製造するためのトランスグルタミナーゼの使用に関するさらなるバリエーションを示す。乳液は、酸及びトランスグルタミナーゼで処理される。当該酸は、乳の種培養物を使用して製造され、当該酵素反応期間に乳酸を産生する。当該反応乳液のpHは、好ましくは約4.5〜約4.7である。得られたカードは、加熱され、そして所望により、カードとホエイは分離される。レンネットは当該方法において使用されない。その他のチーズ製造成分は、必要であれば、最終的なチーズを製造するために添加され得る。均質化ステップが使用され得る。好ましい製品はクリームチーズ及びカッテージチーズである。機能強化された蛋白質産生及びテクスチャの利点は、当該方法中に請求されている。当該チーズ製品の製造と異なる時及び場所において、蛋白質修飾酵素を製造するための方法を実施する能力が具現化されることができないように、乾燥成分製造ステップは使用されない。当該初期乳液は、通常の低温殺菌を超えて熱処理されない。
【0010】
米国特許番号第6224914号は、液体を含むホエイ蛋白質(しかしカゼインは含まない)が、熱処理に供され(蛋白質を形成させないため)、そしてトランスグルタミナーゼ酵素で処理され得る方法を開示する。当該反応液体は、それから、カゼインを含む乳ストリームと混合されるが、好ましくはホエイ蛋白質で強化されない。カゼインを含むストリームは、ストリームを反応させるホエイ蛋白質と混合する前に、培養され得る。レンネットは、混合されたストリームに加えられ、セットされ、そして、慣用のチーズ製造実務に従って処理され、後にチーズへと転換されるカード及びホエイを産生する。カゼイン不存在下、トランスグルタミナーゼでホエイ蛋白質を処理することによって、カゼイン及びホエイ蛋白質分子間の分子構造を架橋又は形成する能力は、限定されるようである。
【0011】
米国特許番号第6,093,424号及び6,242,036号は、チーズ製造物中のトランスグルタミナーゼ酵素の使用におけるさらなるバリエーションを開示する。カゼイン及びホエイ蛋白質を含む乳液は、熱処理され、それからトランスグルタミナーゼで処理される。処理後、非レンネットプロテアーゼ酵素が添加され、カード及びホエイの形成と分離を生ずる。当該カードは、本分野に知られるチーズ製造方法を使用して処理されてチーズとなる。チーズ収率は、有意に増加されると請求される。カードは、pH5.5未満への酸性化なしで形成される。
【0012】
JP−A3160957号は、乳、還元乳又はカゼイン塩溶液が、酵素(TG:トランスグルタミナーゼ)で5〜9のpH範囲内において処理され、及び吹き付け乾燥し修飾された乳蛋白質成分を製造する方法を開示する。当該乾燥方法は、当該処理された溶液の高粘度又はゲル化傾向に因り非効率だったであろう。溶液を処理し蛋白質濃縮物及び乳清の分離を産生する酵素の酸性化の方法の開示はない。
【0013】
国際特許公開番号第WO0170041A1号及びWO0170042A1号は各々、酵素TGの使用によって酵素処理されたカゼイン塩成分及びプロセスチーズ製品における使用のためのローラー乾燥された処理溶液の製造方法を示す。Schmelter,van Dijk及びClarkらは、より乾燥した食料ストリーム中で使用され得るとても低い固形性のために、そのような酵素で処理された蛋白質溶液の高粘度(又はゲル化特性)が、スプレー乾燥を非実用的なものとすることを指摘する。Schmelter,van Dijk及びClarkらは、ローラー乾燥が、酵素処理した原材料の固形濃縮が5〜30%の範囲内である際のそのような困難を克服すると教示する。
【0014】
国際特許公開番号第WO9319610号は、乳蛋白質含有溶液がTG酵素で処理される方法を開示する。当該処理溶液が、2.8<pH<5.2の範囲内で酸性となるとき{酸の直接添加又は(乳の)発酵のどちらかによって}、処理溶液中の蛋白質は安定し、そして沈殿せず又はカード+乳清/ホエイを形成しないことを請求する。ある態様において、ヨーグルトは酵素を使用して製造され、スプレー乾燥され乾燥粉末成分を形成し、ここで当該粉末はその後ヨーグルトとして再構成される。蛋白質濃縮物の製造又は乳清の分離を開示する酸沈殿ステップはない。実際、この特許は、特に、そのようなステップから離れて開示する。当該スプレー乾燥手段は、非効率的であろう。
【0015】
国際特許公開番号第9322930号は、乳蛋白質(カゼイン)含有溶液がレンネットのような凝固酵素で、その後数秒間TG酵素で処理される方法を開示する。微粒子化された蛋白質製品が、反応期間経過後生じる。乳の予熱、又は蛋白質濃縮物及び乳清の分離を製造するための酵素処理溶液の酸性化のステップは、開示されていない。粉末成分の製造のための乾燥ステップも、開示されていない。
【0016】
主要ホエイ蛋白質のいくつか(球状ホエイ蛋白質)は、酵素TGによって乳溶液中で作用されにくいことが明らかである(Ikura et al.,トランスグルタミナーゼの使用.特別製造物の高収率のための基質蛋白質におけるアミノ基の可逆的な遮断.Agric.Biol.Chem.1984,48,2347−2354)。しかしながら、反応性は、これらの蛋白質の部分的展開によって著しく改良され得る(Ikura et al.,1984)。
【0017】
さらに、国際特許公開第WO02/35942号において、De Jong,Boumans及びWijngaardsは、乳中の阻害剤の発見、及び‘酵素TGの添加前の脱脂粉乳の強い予熱処理は、架橋結合のかなり高い度合いを生ずること’を示す。De Jong,Boumans及びWijngaardsは、80℃より高い温度処理は、乳中の阻害剤の失活を生ずることをさらに発見した。De Jong,Boumans及びWijngaardsは、記載の‘強い’を超えるにはどの程度の加熱処理が必要なのか教示していない。
【0018】
重要な機能的属性として粘性やゲル化を有する、及び効果的に製造し得る広範囲な製品の製造において高性能である新規成分の製造が望まれる。
【0019】
それゆえ、本発明の目的は、上記要求を達成するためのいくつかの方法を提供し、そして少なくとも、公衆に有用な選択肢を提示することである。
【発明の開示】
【0020】
本発明の要約
ある態様において、本発明は、以下のステップ:
a)約10秒〜約30分の保持時間の間50℃〜95℃の範囲の温度まで乳ストリームを加熱する、
b)6.0〜約8の間に当該ストリームのpHを調整する、
c)トランスグルタミナーゼ酵素を当該ストリームに添加し、蛋白質組成物が形成するのに十分な時間の間、pHを6〜8間で及び温度を20℃〜65℃の範囲内で維持し、次いで当該トランスグルタミナーゼ酵素を失活させる、
d)必要により、当該ストリームを冷却する、及び
e)以下のステップ:
i)pHを5.5未満に調整し、κ−カゼインをパラ−κカゼインに転換させ得る酵素を当該ストリームに添加して蛋白質濃縮物を形成させる、又は
ii)当該ストリームのpHを約4.5〜約4.8に調整して蛋白質濃縮物を形成させる、
のいずれかにより、ステップd)のストリーム中の反応条件を調整して、蛋白質組成物におけるカゼインの凝固を引き起こし、並びに
f)こうして形成された当該蛋白質濃縮物を回収する、
を含む蛋白質組成物の製造方法である。
【0021】
ある態様において、乳ストリームのpHは、ステップa)に先立って、8〜12の間に調整される。
【0022】
ステップe)i)のもう1つの態様において、当該酵素は、動物、野菜又は微生物起源のキモシン、好ましくはレンネットである。
【0023】
ステップe)のもう1つの態様において、ステップd)の当該ストリームは、酵素を添加する前又はpHを下げる前に、約30℃未満に冷却され、そしてその後1秒〜10分の間、好ましくは5秒〜200秒の間、さらに好ましくは10秒〜100秒の間、25℃〜60℃間、好ましくは35℃〜55℃間、最も好ましくは40℃〜50℃間に上昇される。
【0024】
もう1つの態様において、当該乳ストリームは脱脂乳である。
【0025】
もう1つの態様において、ステップe)は、
ステップd)からの乳ストリームを以下の2つの部分:
・1の部分のpHを5.5未満に調整し、そしてκ−カゼインをパラ−κカゼインに転換させ得る酵素を添加して、蛋白質濃縮物を形成させ、
・他方の部分のpHを約4.5〜約4.8に調整して、蛋白質濃縮物を形成させること、
に分け、並びに、
当該2つの部分を蛋白質濃縮物を含む単一のストリームに併合すること、
を含む。
【0026】
あるいは、ステップa)に先立って、pHを9.0〜11.0の間、好ましくは約9.5に調整する。
【0027】
あるいは、ステップa)において、希塩基、好ましくは水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを調整する。
【0028】
あるいは、ステップa)において、温度を約60℃〜90℃の間、好ましくは70℃〜85℃の間とする。
【0029】
あるいは、ステップa)において、当該保持時間を20秒〜500秒の間、好ましくは50秒〜400秒の間とする。
【0030】
あるいは、ステップb)において、pHを食品用希酸の添加によって、好ましくは、硫酸又は塩酸の添加によって調整する。
【0031】
あるいは、ステップc)において、温度を約40℃〜約60℃の間に調整する。
【0032】
あるいは、ステップc)において、トランスグルタミナーゼ酵素をステップb)のストリームにおいて存在する乳蛋白質1グラム当り約0.1〜約20酵素ユニットの間の割合で添加する。
【0033】
あるいは、当該トランスグルタミナーゼを約0.5〜約10、好ましくは約0.5〜約5酵素ユニット/乳蛋白質グラムの間の割合で添加する。
【0034】
もう1つの態様において、ステップc)を約30分〜約24時間、好ましくは1時間〜10時間の間実施する。
【0035】
もう1つの態様において、ステップc)において、トランスグルタミナーゼ酵素を加熱によって失活させる。
【0036】
もう1つの態様において、酵素を加える前に、pHを約5.0〜約5.5の間に調整する。
【0037】
もう1つの態様において、酵素をレンネットとし、そして当該レンネットを添加するとき、当該乳ストリームの温度を約5℃〜約60℃の間とする。
【0038】
もう1つの態様において、当該レンネットを約1分〜約12時間の間反応に供する。
【0039】
もう1つの態様において、カゼインの凝固後、当該ストリームを約20℃未満まで冷却する。
【0040】
もう1つの態様において、ステップe)において、当該pHを食品用希酸、好ましくは、硫酸又は塩酸を加えることによって調整する。
【0041】
もう1つの態様において、ステップf)からの当該蛋白質組成物を乾燥する追加のステップを含む方法。
【0042】
あるいは、当該方法は、ステップf)からの蛋白質組成物を溶解するステップを含む。
【0043】
もう1つの態様において、乳脂(クリーム)、乳脂肪又は食用油を当該溶解蛋白質に添加する。
【0044】
本発明は、上記のような方法によって製造された乳蛋白質濃縮物でもある。
【0045】
もう1つの態様において、本発明は、乳蛋白質濃縮物であり、ここで、ホエイ蛋白質がそれから製造されるところの乳ストリーム中のホエイ蛋白質の少なくとも50%は、当該乳ストリームのカゼインと結合している。
【0046】
もう1つの態様において、本発明は、乳蛋白質濃縮物であり、ここで、pH9.5における当該乳蛋白質濃縮物の8%(W/W)の蛋白質性水溶液は、少なくとも1900cポアズ、好ましくは、2000〜2500cポアズの粘度を有する。
【0047】
もう1つの態様において、16%〜20%の蛋白質濃度(湿量基準)及び5.6〜5.7のpHを有する、水溶液中で形成される乳蛋白質濃縮物のクエン酸塩ゲルは、少なくとも500Paの微少ひずみ弾性率G’を有する。
【0048】
好ましくは、微少ひずみ弾性率G’は、500〜6000Paの間である。
【0049】
もう1つの態様において、当該リン酸塩ゲルは、19%〜20%の蛋白質濃度(湿量基準)及び5.7〜5.9のpHを有する、水溶液中で形成される乳蛋白質濃縮物のリン酸塩ゲルは、少なくとも450Paの微少ひずみ弾性率G’を有する。
【0050】
好ましくは、微小ひずみ弾性率G’は、450〜4000Paの間である。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、食品、好ましくはチーズ、及びプロセスチーズ製品の製造のための、他の成分とのさらなる方法における一成分としての、上記記載の方法の物の使用である。
【0052】
上記は、本発明のいくつかの好ましい態様を記載し、いくつかの可能な修正を示す、しかし、他の修正が本発明の特許請求の範囲から逸脱することなく可能であることは、いわゆる当業者にとって十分認識されるであろう。
【0053】
本発明は、本出願の明細書において、個別に又は集合的に、言及又は提示する部分、要素、及び特徴、並びに、上記部分、要素、又は特徴の2以上のいずれかの又は全ての組み合わせに広く存するともいえ、そして本発明が属する技術において均等と知られる特定の完全なものが本明細書中に言及されている、そのように知られる均等物は、あたかも個別に言及されるかのごとく本明細書中に援用される。
【0054】
本発明は、上記に在り、そしてまた、以下の例示を与える構成をも企図する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
本発明の詳細な説明
本明細書中に使用するとき、“乳ストリーム”とは、乳蛋白質を含む乳ベース液体をいう。例えば、全乳、脱脂乳、乳蛋白質濃縮物である。再構成粉末も含み得る。
【0056】
本発明は、酵素活性に由来する蛋白質間相互作用によって形成される成分の製造に関する。そのような相互作用によって形成されたポリマーは、複合体である。特に着目すべきは、他の蛋白質、特に非制限的に、可溶性蛋白質、より特に、ホエイ蛋白質とカゼイン分子間(及びカゼインミセル)との反応、及びそこから得られる製造物が関連する反応である。そのようにして形成された成分は、食品系中で使用されるとき、新規かつ有用な粘度及びゲル化挙動を示すことが分かっている。当該ポリマー単位は、そのような分子間の連結の形成を可能とする酵素の存在下で、カゼインと可溶性蛋白質とを反応させることによって製造される。
【0057】
図面の詳細な説明
脱脂乳(非脂肪乳)は、再構成脱脂粉乳を含む、便利な源から使用され得る。もし脱脂粉乳が使用されたならば、低熱粉末が好ましい。
【0058】
場合より、当該方法の便利なステージにおいて、当該乳は、膜ろ過を使用して濃縮され得る。好ましい態様は、当該乳蛋白質を濃縮するための限外ろ過の使用である。
【0059】
任意の低温殺菌後、当該脱脂乳ストリームは、希塩基で処理されpH9〜11、好ましくは、約9.5とする。好ましい塩基は、水酸化ナトリウムである。当該アルカリ性乳は、50℃〜95℃まで、より好ましくは60℃〜90℃まで、最も好ましくは70℃〜85℃まで加熱される。加熱された乳は、この温度で、10秒〜30分の間、好ましくは20秒〜500秒の間、最も好ましくは50秒〜400秒の間、保持される。
【0060】
場合により、トランスグルタミナーゼ酵素での処理前に、当該乳は、カルシウム添加処理又は除去処理され得る。それに応じて、トランスグルタミナーゼ酵素は、カルシウム存在下において、活性状態か不活性状態か選択され得る。カルシウム不活性酵素が好まれる。
【0061】
アルカリ性熱処理後、当該乳ストリームは、酸で中和され、pH6.0〜8.0、さらに好ましくはpH6.5〜8.0の範囲内となる。中和された乳の温度は、好ましくは20℃〜80℃の間、より好ましくは30℃〜70℃の間、最も好ましくは50℃〜60℃の間に調整される。
【0062】
トランスグルタミナーゼが、0.1〜20酵素ユニット(US)/グラム(乳蛋白質)の割合、より好ましくは0.5U〜10U/グラム(乳蛋白質)、最も好ましくは1U〜10U/グラム(乳蛋白質)で、中和された乳に添加される。当該酵素処理された乳は、30秒〜24時間、より好ましくは1時間〜10時間、反応を受ける。図1において示される態様において、保持時間は3時間である。場合によっては、酵素反応期間の間、溶液が攪拌される。
【0063】
反応完了後、当該乳は、場合により、熱処理され、酵素を失活させる。
【0064】
トランスグルタミナーゼ反応ステップの完了に続いて、当該ストリームは、2つの部分に分けられ得る。
【0065】
場合によっては、1の部分について、当該乳ストリームは、κ−カゼインをパラ−κカゼインに転換させ得る酵素で反応させられる。好ましい態様において、当該pHは5〜6に調整され、パラ−κカゼインを形成し得る酵素が加えられる。好まれる酵素はレンネットであり、そして好まれる温度は5℃〜30℃で1分〜12時間の間である。
【0066】
トランスグルタミナーゼ反応に続く、当該ストリームの他の部分は、20℃未満まで冷却され、そしてカゼインの等電点まで酸性化される。便利な食品用の酸が使用され得るが、硫酸、塩酸のような鉱酸が好ましく、好まれるpHは、4.5〜4.8、より好ましくは4.5〜4.7である。
【0067】
各々分離したストリーム部分において、又は、当該ストリームが組み合わされた後、当該ストリームは、25℃〜60℃の間、好ましくは35℃〜55℃の間、最も好ましくは40℃〜50℃の間まで加熱される。この温度で、1秒〜10分間、好ましくは5秒〜200秒間、最も好ましくは10秒〜100秒の間の加熱時間が保持される。
【0068】
沈殿した蛋白質は、便利な手段を使用して乳清から分離され得るが、しかし、ふるいにかける(スクリーン)及び/又は静かに移す(デキャンタ)が好ましい。場合によっては、当該回収蛋白質は、水で洗浄され得る。
【0069】
あるいは別の方法において、当該2つのストリームは、組み合わせることを必要とせず、代わりに分けて処理される。どちらの部分の蛋白質沈殿も、ストリームを分けない方法における互いに代わるものとして使用され得る。
【0070】
ある別の手段において、当該蛋白質濃縮物は、いずれかの便利な方法によって乾燥させられ得る。
【0071】
ある別の手段において、当該蛋白質濃縮物は、塩基の追加で溶解し得る。
【0072】
好ましい塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化アンモニウムである。上述の塩基の組み合わせも、企図されている。当該溶液の好ましいpHは、6.0〜8.0である。場合によっては、必要ならば、少量の酸が、pHを調整し好まれる範囲に戻すために、加えられ得る。
【0073】
任意の乳脂、乳脂肪又は食用油が、当該蛋白質溶液に加えられ得る。場合によっては、当該処理された乳は、均質化され得る。
【0074】
乾燥に先立って、当該蛋白質溶液は熱処理を受け得、当該pHは、熱処理前6.0〜8.0の範囲に調整され、粘度を最小にし得る。
【0075】
一態様において、当該蛋白質溶液は、乾燥せずに成分として使用され得る。別の態様において、当該蛋白質溶液は、乾燥され得、乾燥成分として使用され得る。
【0076】
当該蛋白質溶液は、便利な装置を使用して乾燥され得るが、スプレードライが好ましい。
【0077】
乾燥成分の使用
本発明に従って製造された乾燥成分は、一定範囲のテクスチャの修正された食品及びゲルの製造において使用され得る。プロセスチーズ・スプレッド及びプロセスチーズは、本発明の成分の取り込みによって特に利益を受ける食品の例である。
【0078】
当該乾燥成分は、広範囲の食品の製造においても使用され得る、ここで、当該食品は、ヨーグルト、カスタード、ミルクセーキ、ソース、スプレッド、ディップ、チーズ製品、アイスクリーム、プロセスチーズ、デザート、豆腐及び豆腐製品、飲料を非制限的に含む。
【0079】
直接使用
別の態様において、当該乾燥処理は排除され得、そして湿潤蛋白化合物(洗浄されたか未洗浄かのどちらでも)は、テクスチャの修正された食品〜ゲルの範囲の製品において、成分として直接使用され得る。プロセスチーズ・スプレッド及びプロセスチーズは、本発明の湿潤蛋白化合物成分の取り込みによって特に利益を受ける食品の例である。
【0080】
本発明は、上記のものからなり、そして以下に例示する構成をも企図する。
【実施例】
【0081】
以下の非制限的実施例は、本分野において知られる方法によって製造した成分に対して本発明に従って製造した成分の特性を比較し、そしてさらに本発明に従って製造された成分の適用を示す。
【0082】
実施例1:カゼイン及び可溶性蛋白質の相互作用に対する酵素処理の影響
脱脂乳の3つの800mlサンプル:
・サンプル1:アルカリ性熱処理されるが、トランスグルタミナーゼ酵素処理はされない第1サンプル、
・サンプル2:アルカリ性熱処理されず、トランスグルタミナーゼ酵素(TG Activa,Ajinomoto Co.Inc.,Tokyo)処理される第2サンプル、
・サンプル3:アルカリ性熱処理、及び中和pH付近において酵素反応を組み合わせた第3サンプル、
を、分離処理した。
【0083】
サンプル1(トランスグルタミナーゼ未使用で処理された脱脂乳)
脱脂乳を5%NaOHで処理し、pHを9.5にした。当該溶液をウォーターバス中約75℃で、3分間加熱した。当該溶液を約30℃まで冷却し、それから5%H2SO4を使用してpH6.5まで酸性化し、レンネット1mlを加えた。次いで、当該pHをさらに酸を加えることによって5.4まで下げ、温度を45℃まで上げた。当該蛋白質を凝固させ、綿モスリン生地で搾ることによって回収する。当該乳清を分析のために回収した。
【0084】
サンプル2(トランスグルタミナーゼ処理された脱脂乳)
脱脂乳を少量の5%NaOHでpH7.5に調整し、それからトランスグルタミナーゼ6U/グラム(乳蛋白質)で処理し(Activa TG 約1100U/g、Ajinomoto Co .Inc.,)、ウォーターバス中55℃で、反応が進行する75分間保持した。当該サンプルを約30℃まで冷却し、5%H2SO4を使用してpH5.4まで酸性化し、それからレンネット(1ml)を加え、温度を45℃まで上げた。意外にも、当該蛋白質は凝固し、綿モスリン生地で搾ることによって回収した。当該乳清を分析のために回収した。
【0085】
サンプル3(熱/pH処理及びトランスグルタミナーゼ処理された脱脂乳)
サンプル1のように、脱脂乳を5%NaOHで処理しpH9.5とし、75℃、3分間熱処理した。それから、サンプル2のように、酸を加えてpH7.5まで下げ、それからトランスグルタミナーゼで処理した。75分間のトランスグルタミナーゼでの反応後、当該サンプルを約30℃まで冷却し、5%H2SO4を使用してpH5.4まで酸性化し、それからレンネット(1ml)を加え、温度を45℃まで上げた。意外にも、当該蛋白質は凝固し、綿モスリン生地で搾ることによって回収した。当該乳清を分析のために回収した。
【0086】
乳清サンプルを蛋白質について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して分析した(Elgar et al.,逆相高速液体クロマトグラフィーによる、プロテオース ペプトン、及びカゼイノマクロペプチドを含む、主なウシホエイ蛋白質の同時分離及び計量。J.of Chromatography A.878、183−196、2000)。HPLCの分析結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
どの蛋白質が処理1つの組み合わせ又は別の組み合わせにおいて相互作用するのか提示するために、カゼイン蛋白質及び可溶性(ホエイ)蛋白質の混合物に、pH操作、加熱及び酵素処理の組み合わせを適用するとき、高度の熟練者を導く基礎となる理論はほとんど存在しない。表1の結果により、pH及び熱の組み合わせにより相互作用する蛋白質は、トランスグルタミナーゼ処理のみによって相互作用する蛋白質とは際立って異なることが明らかである。驚くべきことに、当該組み合わせ処理は、ホエイ蛋白質のカゼインへの予想外の追加の結合又は相互作用をもたらす。
【0089】
実施例2:蛋白化合物の製造及びその溶液粘度
新鮮な脱脂乳1000mlのサンプルのセットに一連の処理をする。
・レンネット(RENCO“Australian double strength”[280国際凝固ユニット/mL])を1:18,000v/vの割合で脱脂乳サンプルに約9℃で加え、冷蔵庫で一昼夜保持した。当該サンプルをそれからウォーターバスで約45℃まで加熱し凝固させ、当該蛋白質を製造した。(サンプルを“レンネット・カゼイン”と命名した。)
【0090】
・脱脂乳を0.5M硫酸でpH5.4まで酸性化し、ウォーターバスで約30℃まで加熱し、それから上記のようにレンネットを加えた。凝固物が形成されたとき、当該サンプルをウォーターバスで約45℃まで加熱し、当該蛋白質を製造した。(サンプルを“レンネット酸カゼイン”と命名した。)
【0091】
・アルカリ(0.5MNaOH)をpH9.5まで脱脂乳サンプルに加え、それから75℃まで3分間加熱した。0.5M硫酸をpH4.6まで加え、当該蛋白質を沈殿させた。(サンプルを“総乳蛋白化合物”と命名した。)
【0092】
・アルカリ(0.5MNaOH)をpH9.5まで加え、それから75℃まで3分間加熱した。当該サンプルを30℃まで冷却し、0.5M硫酸をpH5.4まで加え、レンネットを加えて蛋白質を凝固させた。凝固物が形成されたとき、当該サンプルを約45℃で加熱し、当該蛋白質を沈殿させた。(サンプルを“レンネット添加総蛋白化合物”と命名した。)
【0093】
・アルカリ(0.5MNaOH)pH7.5までを加え、それから75℃まで3分間加熱した。当該サンプルを50℃まで冷却し、トランスグルタミナーゼ(Ajinomoto,Activa TG)を6U/g(蛋白質)の割合で加え、当該混合物を75分間保持した。それから当該サンプルを45℃まで冷却し、0.5M硫酸でpH4.6へ酸性化し、当該蛋白質を沈殿させた。(サンプルを“TG乳蛋白化合物”と命名した。)
【0094】
・アルカリ(0.5MNaOH)をpH7.5まで加え、それから75℃まで3分間加熱した。当該サンプルを50℃まで冷却し、トランスグルタミナーゼ(Ajinomoto,Activa TG)を6U/g(蛋白質)の割合で加え、当該混合物を75分間保持した。それから当該サンプルを30℃まで冷却し、0.5M硫酸でpH5.4へ酸性化し、レンネットを加えて当該蛋白質を凝固させた。凝固物が形成されたとき、当該サンプルを45℃で加熱し当該蛋白質を沈殿させた。(サンプルを“TG/レンネット蛋白化合物”と命名した。)
【0095】
・アルカリ(0.5MNaOH)をpH9.5まで加え、それから75℃まで3分間加熱した。当該サンプルを0.5M硫酸を使用しpH7.5に調整した。当該サンプルを50℃まで冷却し、トランスグルタミナーゼ(Ajinomoto,Activa TG)を6U/g(蛋白質)の割合で加え、当該混合物を75分間保持した。それから当該サンプルを30℃まで冷却し、0.5M硫酸でpH5.4まで酸性化し、レンネットを加えて当該蛋白質を凝固させた。凝固物が形成されたとき、当該サンプルを45℃で加熱し当該蛋白質を沈殿させた。(サンプルを“TG/レンネット総乳蛋白化合物”を命名した。)
【0096】
・アルカリ(0.5MNaOH)をpH9.5まで加え、それから75℃まで3分間加熱した。当該サンプルを0.5M硫酸を使用しpH7.5に調整した。当該サンプルを50℃まで冷却し、トランスグルタミナーゼ(Ajinomoto,Activa TG)を6U/g(蛋白質)の割合で加え、当該混合物を75分間保持した。それから当該サンプルを45℃まで冷却し、0.5M硫酸でpH4.6まで酸性化し、当該蛋白質を沈殿させた。(サンプルを“TG/総乳蛋白化合物”と命名した。)
【0097】
各サンプルにおける沈殿した蛋白質を綿モスリン生地で回収し、絞りによって当該余剰乳清を除去した。当該回収蛋白質を0.5MNaOHに再溶解し、pH9.5の蛋白化合物溶液を得た。
【0098】
水を加え当該サンプル濃度8.0%固体まで標準化し、又はもし当該物質が完全に溶解しないか、一部ゲル化するときには、当該サンプルを4%固体まで希釈した。各サンプルの粘度をNO.2シリンダー内蔵Brookfield LV粘度計を使用して50℃で計測した。
【0099】
【表2】

【0100】
表2の結果は、処理条件の組み合わせによるトランスグルタミナーゼ処理は、蛋白質溶液の粘度に劇的で意外な効果を有することを現した。
【0101】
実施例3:乾燥成分の製造及び形成ゲルの特性
新鮮な脱脂乳の新しいサンプルセット(10L)を実施例2における処理条件:
a.レンネット・カゼイン
b.レンネット酸カゼイン
c.総乳蛋白化合物
d.レンネット添加総乳蛋白化合物
e.TG/レンネット総乳蛋白化合物
f.TG/総乳蛋白化合物
g.TG蛋白化合物
で処理した。
【0102】
新鮮な脱脂乳を(pHを調整せずに)75℃まで3分間加熱した。当該サンプルを50℃まで冷却し、トランスグルタミナーゼ(Ajinomoto,Activa TG)を6U/g(蛋白質)の割合で加え、当該混合物を75分間保持した。次いで当該サンプルを45℃まで冷却し、0.5M硫酸でpH4.6まで酸性化し、当該蛋白質を沈殿させた。(サンプルを“TG蛋白化合物”と命名した。)
【0103】
乳清(ホエイ)から回収された不溶性蛋白質をUniGlatt実験室乾燥機(Glatt Process Technology GmbH,Binzen,Germany)において、標準乾燥条件を使用し最終含水率が約3%となるまで乾燥し、粉末にした。さらなる操作について、各粉末サンプルの一部を粉砕して、600μmmpメッシュふるいを通した。
【0104】
h.追加のサンプル“溶解したTG/総乳蛋白化合物”を以下の実施例5において要約された手順に従って、半商業的スケールで製造した。
【0105】
ゲルの製造
成分粉末の各サンプルをクエン酸塩ゲルかリン酸塩ゲルかどちらかの標準化セットに変えた。
【0106】
クエン酸塩ゲル
その目的は、約16%蛋白質及びpH5.7で約50g重ゲルサンプルの作成であった。
【0107】
望むべくpHを得るための、クエン酸トリ−ナトリウム二水和物(TSC)及びクエン酸(CA)の比率は、試行錯誤により確認した。当該成分重量は、表3に示す。
【0108】
【表3】

【0109】
以下の方法を室温で実施した:
1、水を100mlプラスチックポトルに計量した。
2、TSC及びCAを検量し、水に加えてスパチュラで攪拌し溶解させた。
3、それから蛋白化合物成分を検量し、当該溶解塩に加えてスパチュラで攪拌し溶解させた。
4、当該混合物を数分間、スパチュラで攪拌し、それから30〜40分以上の間隔を空けて定期的に行った。
5、得られたゲル/混合物を含む当該プラスチックポトルを閉めて(ねじ式のふたを閉めた。)、冷蔵庫に入れて、ゲル構造を形成させレオロジー測定ができるまで安定化させた(次の24〜48時間以上)。
6、当該ゲルを冷蔵庫から出し、テクスチャ分析の前に周囲の温度(約20℃)にならした。
【0110】
リン酸塩ゲル
その目的は、約17%蛋白質及びpH5.7で約50g重ゲルサンプルの作成であった。
【0111】
一定のヘキサメタリン酸ナトリウムを加え、同時に5M塩酸(HCL)及び5M水酸化ナトリウム(NaOH)の様々な量で加え、望むべくpHとした(当該比率は試行錯誤により確認した)。使用する当該成分重量を表4に示す。
【0112】
【表4】

【0113】
以下の方法を室温で実施した:
1、水を100mlプラスチックポトルに計量した。
2、SHMPを検量し、水に加えてスパチュラで攪拌し溶解させた。
3、HCL又はNaOHを水に加え、混合した。
4、それから蛋白化合物成分を検量し、当該溶解塩に加えてスパチュラで攪拌し溶解させた。
5、当該混合物をスパチュラを使用して数分間攪拌し、それから20〜30分以上の間隔を空けて定期的に行った。
6、得られたゲル/混合物を含む当該プラスチックポトルを閉めた。(ねじ式のふたを閉めた。)
7、レオロジー測定を当該ゲル作成後1〜2時間の間に行った。
【0114】
テクスチャを結果製造物のサンプルの微少ひずみ振動弾性率(G’)を測ることによって評価した。当該微少ひずみ振動弾性率は、テクスチャ分析器TA AR2000血流計(TA Instruments−Waters LLC,New Castle,USA)を20℃で使用する、Lee S.K.及びKlostermeyer H.,Lebensm.−Wiss.U−Technol.,34,288−292(2001)に記載の方法を使用して、0.1Hz及び0.005のひずみで得られた(弾性率についての詳細は、Ferry(Ferry,J.D.,(ED.),Viscoelastic Properties of Polymers,3rdedn.New York.John Wiley及びSons.1980)に記載されている)。
【0115】
当該結果を、表5に示す。
【0116】
【表5】

【0117】
表5の結果は、新規TG処理した成分は溶解し、食品系において応用が期待されるゲルに変化することを明らかにした。従来の処理をしたコントロール(すなわち、非−TG処理サンプル)を比較すると、当該結果は、TG処理した成分が、チーズ、プロセスチーズ、及びプロセスチーズ・スプレッドを重要な例とするような多くの食品にとって、重要なpH範囲における微少ひずみゲル強度の、劇的に及び潜在的に有効な効果を有することも示した。
【0118】
実施例4:モデルになるプロセスチーズ・スプレッドの製造及び特性
モデルになるプロセスチーズ・スプレッドのレシピの使用において、上記の一連の成分(a〜g)を、脂肪又は油の存在下満足なエマルジョン及びゲルが形成されるかどうか、及びテクスチャ(G’として測られる)の結果となるものは何か、立証するために使用した。
【0119】
基本レシピ
スプレッドサンプルの製造に使用した当該レシピを表6に示す。
【0120】
【表6】

【0121】
目的組成物
当該スプレッドは、表7に示される名目組成を有していた。
【0122】
【表7】

【0123】
TCA、CA、及び塩をプラスチックビーカー中の水に溶解させた。当該選択された蛋白化合物成分、例えば、レンネット・カゼインを加えて混合した。一度分散させ、当該容器を室温で2時間、当該水和混合物を時折攪拌しながら置いておいた。大豆油、ホエイ蛋白質濃縮物(ALACEN 392TM,Fonterra Co−operative Group Limited,Auckland,New Zealand)、及びラクトース粉末を当該水和成分に加え、手で30秒間、混合物を強く混合した。次いで、当該混合物を注意深く、RVA容器(Rapid ViscoTM Analyser[RVA−4],Newport Science,Warriewood,Australia)に、以下の攪拌プロフィール:
200rpmで30秒間
300rpmで2分30秒間
600rpmで3分間
1000rpmで1分間
2000rpmで7分間
を使用してクッキングのために移した。
【0124】
最初の5分間は、温度を25℃に保った。次の3分間以降、当該温度を85℃まで上げ、終了まで維持した(総時間は、13.5分間であった。)。
【0125】
当該熱いスプレッドサンプルをプラスチックポトルに移し、しっかりとふたをし、それから流水内で15分間冷却した。それから当該容器を冷蔵庫に移した(5℃)。当該テクスチャ(G’)をテクスチャ分析器 TA AR2000(TA Instruments−Waters LLC,New Castle,USA)を使用して、7日のときに3回測定した。微少ひずみ振動弾性率(G’)測定条件は、20℃、0.1Hz、及び0.005のひずみであった。
【0126】
スプレッドのテクスチャ
G’として測定したスプレッドのテクスチャを表8に示す。
【0127】
【表8】

【0128】
(表8のG’値は、各成分から製造された少なくとも2つの分離したバッチであり、各バッチの3テクスチャ測定の平均値であった。)
【0129】
表8の結果は、当該TG成分が満足なモデルとなるスプレッドを形成し得ること、また当該TG処理が劇的に当該スプレッドのテクスチャを強化することを示した。
【0130】
実施例5:プロセスチーズスライスの製造
溶解したTG処理総乳蛋白化合物の試験用サンプルを半商業的規模で製造した。
【0131】
脱脂乳を用意し、希水酸化ナトリウムを使用してpH9.6まで調整した。当該乳を78℃まで加熱し、そして約200秒間、当該温度で保持した。
【0132】
次いで、当該乳を20℃未満まで冷却し、希硫酸を使用してpH7.0まで酸性化した。それから当該乳を50℃まで加熱し、そしてTG酵素(Ajinomoto concentrate)を1:2500の比率(酵素:蛋白質)で加えた。それから当該乳を50℃で約2.5時間保持し、それから約20℃まで冷却し、希硫酸を使用してpH4.6まで酸性化した。
【0133】
次いで、当該乳を約55℃まで加熱し、当該結果沈殿蛋白質をホエイ乳清から分離した。当該沈殿蛋白質(カード)をラクトース及びミネラルがなくなるように洗浄し、それから水で希釈し約15〜20総固体%とした。それから当該蛋白質懸濁液を希水酸化ナトリウムの使用によりpH6.8まで溶解させた。それから当該溶解乳蛋白質を噴霧乾燥し、蛋白質含有量約90%、及び含水率約4%の可溶性粉末成分とした。
【0134】
次いでサンプルを下記のようなプロセスチーズの製造に使用した。
【0135】
プロセスチーズの製造
プロセスチーズスライスのバッチを表9に示す配合を使用して製造した。
【0136】
【表9】

【0137】
(1)上記バターを40lb ツインスクリュー Blentech プロセスチーズ調理器に加えた。当該脂肪が半液体状態となるまで実施した。
(2)本発明に従って製造した上記蛋白化合物成分を加え、続いて塩を加え、なめらかなペースト状となるまで、典型的には1〜2分間、混合した。
(3)上記粉末チェダーチーズ、乳化塩、ホエイ粉末、ホエイ濃縮粉末、及び着色料を加え、全てを均一になるまで、典型的には、ステップ(1)における操作の始めから約5分間、混合した。
(4)次いで、上記水及び酸を加え、当該全体をさらに均一になるまで混合した。
(5)それから、当該全体を直接スチーム及び/又は間接加熱で加熱し、約85℃になるまで、3〜7分間以上かき混ぜた。
(6)それから、融解された全体を冷たいテーブル上に注ぎ、いったん固め、正方形スライスにカットした。
【0138】
本発明に従って、成分を使用して製造した当該スライスは、良品質のプロセスチーズの特徴を有していた。
【0139】
実施例6:IWS プロセスチーズにおけるトランスグルタミナーゼ処理蛋白化合物の応用、テクスチャに対する影響、及びコントロールとの比較
背景
本実験の目的は、トランスグルタミナーゼ処理された蛋白質成分を含むプロセスチーズスプレッドシステムにおいて見られる特別な弾力が、プロセスチーズスライスシステム(例えば、個別にラップしたスライス[IWS])に適用し得る確証を得るためであった。最初の配合(コントロール)は、テクスチャ及びフレーバーの望むべき組み合わせを供給するように選択した混合チーズを使用する伝統的IWSレシピを基本とした。当該コントロールにおける成分の特別な組み合わせは弱い粘性のスライスを製造するために選択された。第2配合(配合2)は、未成熟のチーズのうちいくつかを除いてコントロールと同一目的組成物(蛋白質%、脂肪%、塩%、湿度%、及びpH)を有す、すなわち濃度(テクスチャ)の原因となる当該チーズ構成が、トランスグルタミナーゼ処理され、レンネット処理されたTMPの適した量と置き換えられ、非−チーズ成分は、それに応じて再びバランスをとられた。
【0140】
レシピ
使用される配合を表10に示す。全体的な目的組成物を表11に示す。
【0141】
【表10】

【0142】
目的組成物
当該目的組成物は、製造手順の始めにおいて準備された配合を基本としている。最終的IWS組成物は、わずかにより少ない水分及びその他の組成物中の付随する増加を含むであろう。
【0143】
【表11】

【0144】
手順
当該IWSサンプルを、以下のように製造した。
【0145】
コントロール
当該チーズを細かく切り、そのままの成分に加えてプラスチックビーカーに移した(全て室温で実施された)。当該混合物を30秒間手で強く混ぜた。
【0146】
次いで、当該混合物をクッキングのためにRVA容器に、RVA(Rapid Visco Analyser[RVA−4],Newport Science,Warriewood,Australia)における以下の攪拌プロフィール:
0rpmで30秒間
20rpmで30秒間
100rpmで1分間
200rpmで1分間
600rpmで7分間
を使用して注意して移した。
【0147】
4分間以降、当該温度を25℃から85℃の加熱温度まで上げ、それから加熱期間の終わりまで安定して維持した(総時間10分間)。
【0148】
加熱期間の終わりに向けて、当該融解物の指示的粘度がRVAから読む回転力によって与えられた。この範囲は、1400〜1500(任意ユニット)である。当該融解物は、なめらかで均質であった。
【0149】
当該加熱製品をポリプロピレンフィルム上に注ぎ、2枚目のフィルム層を上に置いた。それから、当該製品を地ならしし、厚さ2mmのIWSスライスを形成した。
【0150】
当該手順を繰り返した。
【0151】
それから当該IWSスライスをプラスチックバッグに移し、冷蔵庫の中(5℃)で事前に冷却したアルミニウムプレート上に移した。当該スライスの堅さ(テクスチャG’)をテクスチャ安定のための5日間後に測定した。
【0152】
配合2
クエン酸トリ−ナトリウム及び塩をプラスチック容器中の水で希釈した。当該TG AMPを加え、混合した。いったん分散させ、当該容器を当該水和混合物をたまに攪拌しながら2時間室温に置いた。細かく切ったチーズ、バター、Alacen392TM、ラクトース、及びクエン酸をプラスチックビーカーに入れ、水和させたTG TMP混合物を加えた。当該混合物を30秒間手で強く混合し、次いで注意深くRVA容器に移し、冷却及びコントロールの際に使用したRVAの温度プロフィールを使用して加熱した。
【0153】
加熱期間の終期に向けて、当該融解物の指示的粘度がRVAから読み取った回転力によって与えられた。この範囲は、2800〜3100(任意ユニット)であった。当該融解物は、なめらかで均質であり、コントロールよりも著しく粘性があった。
【0154】
当該加熱製品をコントロールのようにスライスし、5日後の当該スライスの堅さを測定した。当該手順を繰り返した。
【0155】
テクスチャの結果
コントロール Run1 G’ 17,900 Pa(3回測定の平均値)
Run2 G’ 19,600 Pa(4回測定の平均値)
配合2 Run1 G’ 31,700 Pa(5回測定の平均値)
Run2 G’ 29,500 Pa(4回測定の平均値)
【0156】
コントロールのテクスチャは、選択した配合からの予測通り、やわらかいIWSの特徴であった。対照的に、本発明のTG処理した蛋白化合物を組み入れた(当該配合の約4%のレベルで)サンプルは、意外にもG’において50〜80%増加を伴う、かなり満足のいくスライスという結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、本発明の一態様に従う方法を示すフローダイヤグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
a)約10秒〜約30分の保持時間の間50℃〜95℃の範囲の温度まで乳ストリームを加熱する、
b)6.0〜約8の間に当該ストリームのpHを調整する、
c)トランスグルタミナーゼ酵素を当該ストリームに添加し、蛋白質組成物が形成するのに十分な時間の間、pHを6〜8間に及び温度を20℃〜65℃の範囲内に維持し、次いで当該トランスグルタミナーゼ酵素を失活させる、
d)必要により、当該ストリームを冷却する、及び
e)以下のステップ:
i)pHを5.5未満に調整し、κ−カゼインをパラ−κカゼインに転換させ得る酵素を当該ストリームに添加して蛋白質濃縮物を形成させる、又は
ii)当該ストリームのpHを約4.5〜約4.8に調整して、蛋白質濃縮物を形成させる、
のいずれかにより、ステップd)のストリーム中の反応条件を調整して、蛋白質組成物におけるカゼインの凝固を引き起こし、並びに
f)こうして形成された当該蛋白質濃縮物を回収する、
を含む蛋白質組成物の製造方法。
【請求項2】
前記乳ストリームのpHが、前記ステップa)に先立って、8〜12の間に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップe)i)において、前記酵素が、動物、野菜又は微生物起源のキモシン、好ましくはレンネットである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップe)において、前記ステップd)からの前記ストリームが、酵素を添加する前又はpHを下げる前に、約30℃未満に冷却され、そしてその後1秒〜10分の間、好ましくは5秒〜200秒の間、さらに好ましくは10秒〜100秒の間、25℃〜60℃間、好ましくは35℃〜55℃間、最も好ましくは40℃〜50℃間に上昇される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記乳ストリームが脱脂乳である、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップe)が、
前記ステップd)からの乳ストリームを以下の2つの部分:
・1の部分のpHを5.5未満に調整し、そしてκ−カゼインをパラ−κカゼインに転換させ得る酵素を添加して蛋白質濃縮物を形成させ、
・他の部分のpHを約4.5〜約4.8に調整して、蛋白質濃縮物を形成させること、
に分け、並びに、
当該2つの部分を蛋白質濃縮物を含む単一のストリームに併合すること、
を含む、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップa)に先立って、pHを9.0〜11.0の間、好ましくは約9.5に調整する、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
希塩基、好ましくは水酸化ナトリウム溶液を加えて前記pHを調整する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップa)において、温度が約60℃〜90℃の間、好ましくは70℃〜85℃の間である、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップa)において、前記保持時間が20秒〜500秒の間、好ましくは50秒〜400秒の間である、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップb)において、pHが食品用希酸の添加によって、好ましくは、硫酸又は塩酸の添加によって調整される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップc)において、温度が約40℃〜約60℃の間に調整される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップc)において、ステップb)のストリームにおいて存在する乳蛋白質1グラム当り約0.1〜約20酵素ユニットの間の割合でトランスグルタミナーゼ酵素が添加される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記トランスグルタミナーゼが、約0.5〜約10、好ましくは約0.5〜約5酵素ユニット/乳蛋白質グラムの間の割合で添加される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップc)が、約30分〜約24時間、好ましくは1時間〜10時間の間実施される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップc)において、トランスグルタミナーゼ酵素が、加熱によって失活する、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップe)i)において酵素が添加される前に、pHが、約5.0〜約5.5の間に調整される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記酵素がレンネットであり、そして当該レンネットが添加されるとき、前記ストリームの温度が約5℃〜約60℃の間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記レンネットが、約1分〜約12時間の間反応に供される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップe)後、前記ストリームが約20℃未満に冷却される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップe)において、pHが食品用希酸によって、好ましくは、硫酸又は塩酸によって調整される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップf)からの蛋白質組成物を乾燥する追加のステップを含む、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップf)からの蛋白質組成物を溶解するステップを含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
乳脂(クリーム)、乳脂肪又は食用油が、前記溶解蛋白質に添加される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
先の請求項のいずれか1項に記載の方法により製造された物。
【請求項26】
ホエイ蛋白質がそれから製造されるところの乳ストリーム中のホエイ蛋白質の少なくとも50%が、当該乳ストリームのカゼインと結合している、乳蛋白質濃縮物。
【請求項27】
pH9.5における前記乳蛋白質濃縮物の8%(W/W)の蛋白質性水溶液が、少なくとも1000cポアズ、好ましくは、2000〜2500cポアズの粘度を有する、請求項26に記載の乳蛋白質濃縮物。
【請求項28】
16%〜20%の蛋白質濃度(湿量基準)及び5.6〜5.7のpHを有する、水溶液中で形成される、前記乳蛋白質濃縮物のクエン酸塩ゲルが、少なくとも500Paの微少ひずみ弾性率G’を有する、請求項26又は27のいずれか1項に記載の乳蛋白質濃縮物。
【請求項29】
前記微少ひずみ弾性率G’が、500〜6000Paの間である、請求項28に記載の乳蛋白質濃縮物。
【請求項30】
19%〜20%の蛋白質濃度(湿量基準)及び5.7〜5.9のpHを有する、水溶液中で形成する前記乳蛋白質濃縮物のリン酸塩ゲルが、少なくとも450Paの微少ひずみ弾性率G’を有する、請求項26又は27のいずれか1項に記載の乳蛋白質濃縮物。
【請求項31】
前記微小ひずみ弾性率G’が、450〜4000Paの間である、請求項30に記載乳蛋白質濃縮物。
【請求項32】
食品、好ましくはチーズ、及びプロセスチーズ製品の製造のための、他の成分とのさらなる加工における、一成分としての、請求項25〜28のうちいずれか1項に記載の物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2007−501611(P2007−501611A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522524(P2006−522524)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/NZ2004/000179
【国際公開番号】WO2005/013710
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504214246)フォンテラ コ−オペレイティブ グループ リミティド (17)
【Fターム(参考)】