説明

高信頼パス経路計算方式

【課題】回線交換ネットワークまたはパケット交換ネットワークに対して高信頼パスの設定要求があった時、ルーチングプロトコルの拡張を伴わずに、リソースの利用効率の良い空きの経路を確実に計算可能にする。
【解決手段】ネットワークに対して集中的に配備された経路計算サーバ10は、各リンク障害に対するリンク空き帯域情報を所有し、高信頼パスの設定要求があった時、該リンク空き帯域情報を使用して予備パス間でのリンク帯域共用を図りつつ高信頼パスの経路を計算して高信頼パスの設定をネットワークに指令する。同時に自己が所有するリンク空き帯域情報を更新する。高信頼パスの解放要求があった時、高信頼パスの解放によってリンクの最小空き帯域が増加する場合は、高信頼パスの解放をネットワークに指令した後、ルーチングプロトコルによってリンク空き帯域の最小値が広告された時点でリンク空き帯域情報を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高信頼パス経路計算方式に関し、特に、回線交換ネットワークまたはパケット交換ネットワークに対して設定要求された高信頼パスの経路を計算する高信頼パス経路計算方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回線交換ネットワークにおいては、トポロジ情報やリンク帯域情報等が与えられた時、現用回線交換パスと予備回線交換パスを設定する際に、現用回線交換パスと予備回線交換パスとが同時に障害にならないようにするため互いにリンクを共用しない経路を選択し、また、リンク帯域を有効に利用するため複数の予備回線交換パスによるリンク帯域の共用を最大限図ることができる経路を選択することが行われている。
【0003】
また、パケット交換ネットワークにおいては、トポロジ情報やリンク帯域情報等が与えられた時、任意帯域の現用パケット交換パスと予備パケット交換パスを設定する際に、現用パケット交換パスと予備パケット交換パスとが同時に障害にならないようにするため互いにリンクを共用しない経路を選択し、また、リンク帯域を有効に利用するため複数の予備パケット交換パスによるリンク帯域の共用を最大限図ることができる経路を選択することが行われている。
【0004】
リンク帯域の有効利用を目的として、回線交換ネットワークにおけるレストレーション用予備パスやパケット交換ネットワークにおけるプロテクション用予備パス間でリンク帯域の共用を図る際、従来では、ルーチングプロトコルによって各リンク障害発生に対応したリンク空き帯域情報を各ネットワークノードに広告し、各ネットワークノードでは、広告されたリンク空き帯域情報に基づいてリンク帯域の共用が図れるような予備パスの経路を計算して予備パスを設定する。
【0005】
特許文献1には、回線交換ネットワークを介してパケット交換機が互いに接続される多階層のネットワークにおいて、回線帯域を有効に利用して現用パケット交換パスと予備パケット交換パスを設定する経路選択方法が記載されている。
【特許文献1】特開2004−112743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、ルーチングプロトコルによって、各リンク障害に対するリンク空き帯域情報を各ネットワークノードに広告しなければならず、ルーチングプロトコルによるトラヒック負荷の増大や処理負荷の増大を招くという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、回線交換ネットワークまたはパケット交換ネットワークに対して高信頼パスの設定要求があった時、ルーチングプロトコルの拡張を伴わずに、リソースの利用効率の良い空きの経路を確実に計算することができる高信頼パス経路計算方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、複数のネットワークノードとそれらを接続するリンクによって構成される回線交換ネットワークにおける現用パスとレストレーション用予備パスから構成される高信頼パスの経路またはパケット交換ネットワークにおける現用パスとプロテクション用予備パスから構成される高信頼パスの経路を計算する高信頼パス経路計算方式において、集中的に配備され、高信頼パスの経路を計算する経路計算サーバ装置を備え、前記経路計算サーバ装置は、各リンク障害に対するリンク空き帯域情報を所有し、高信頼パスの設定要求があった時、自己が所有するリンク空き帯域情報を使用して複数の現用パスに対する予備パス間でのリンク帯域共用を図りつつ高信頼パスの経路を計算して該高信頼パスの設定をネットワークに指令すると同時に自己が所有するリンク空き帯域情報を更新し、高信頼パスの解放要求があった時には、該高信頼パスの解放をネットワークに指令した後、自己が所有するリンク空き帯域情報を更新する点に第1の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、高信頼パスの解放要求があった時、前記経路計算サーバ装置は、該高信頼パスの解放によってリンク空き帯域情報におけるリンク空き帯域の最小値が増加する場合は、更新されるリンク空き帯域情報を一時的に記憶しておき、該高信頼パスの解放をネットワークに指令した後にルーチングプロトコルによってリンク空き帯域の最小値の更新が広告された時点で、該一時的に記憶しておいた前記リンク空き帯域情報に従って、自己が所有するリンク空き帯域情報を実際に更新する点に第2の特徴がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、各リンク障害に対するリンク空き帯域情報を所有する経路計算サーバ装置を集中的に配備し、経路計算サーバ装置が所有するリンク空き帯域情報を使用して複数の現用パスに対する予備パス間でのリンク帯域共用を図りつつ高信頼パスの経路を計算するので、ルーチングプロトコルによって各リンク障害に対するリンク空き帯域情報を各ネットワークノードに広告する必要がなく、ルーチングプロトコルによるトラヒック負荷の増大や処理負荷の増大を招くことがない。
【0011】
また、高信頼パスの設定要求があった時、該高信頼パスの設定をネットワークに指令すると同時に自己が所有するリンク空き帯域情報を更新し、また、高信頼パスの解放要求があった時には、該高信頼パスの解放によってリンク空き帯域情報におけるリンク空き帯域の最小値が増加する場合は、該高信頼パスの解放をネットワークに指令した後にルーチングプロトコルによってリンク空き帯域の最小値の更新が広告された時点で、自己が所有するリンク空き帯域情報を実際に更新することにより、ルーチングプロトコルによるリンク空き帯域情報の広告やパスの設定・解放処理に遅れがある場合でも、その影響を受けずに、常に安全確実に利用可能なリンク空き帯域に基づいて空きの経路を確実に計算することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明が適用されるネットワークの一実施形態を示す構成図である。ネットワークノードA〜Eとそれらを接続するリンクによってネットワークが構成され、ネットワークノードA〜Eにはそれぞれクライアント装置a〜eが接続される。このネットワークは回線交換ネットワークでもパケット交換ネットワークでもよい。回線交換ネットワークの場合、ネットワークノードA〜Eには回線交換機が備えられ、パケット交換ネットワークの場合にはパケット交換機が備えられる。
【0013】
ネットワークに対して経路計算サーバ装置10が集中的に配備される。経路計算サーバ10は、各リンク障害に対するリンク空き帯域情報を所有しており、このリンク空き帯域情報は、高信頼パスの設定や解放に伴って更新される。経路計算サーバ装置10が所有するリンク空き帯域情報の一例を図2に示し、更新されたリンク空き帯域情報の一例を図3に示す。高信頼パスは、ネットワークが回線交換ネットワークの場合、現用パスとレストレーション用予備パスから構成され、パケット交換ネットワークの場合には現用パスとプロテクション用予備パスから構成される。
【0014】
図1の例では、ネットワークノードAとネットワークノードCの間に高信頼パスが設定されている。この高信頼パスの現用パス(図示実線で示す。)はネットワークノードDを経由し、予備パス(図示破線で示す。)はネットワークノードBを経由している。また、ネットワークノードBとネットワークノードCの間にも高信頼パスが設定されている。この高信頼パスの現用パスはネットワークノードEを経由し、予備パスはネットワークノードBとネットワークノードC を直接接続している。
【0015】
単一のリンク障害のみを想定すると、上記2つの現用パスは同時に障害とはならないため、それらの現用パスに対する予備パスは、リンクB−Cの帯域を共用することができる。
【0016】
あるリンクに現用パスと予備パスが収容されている場合、現用パスは常にリンク帯域を占有するが、予備パスは対応する現用パスが障害になった時のみリンク帯域を占有する。従って、一般に障害発生場所に応じてリンクの利用帯域は変化し、空き帯域も変化する。
【0017】
例えば図1の★で示すようにリンクA−Dで障害が発生すると、ネットワークノードDを経由する現用パスに代えてネットワークノードBを経由する予備パスが用いられる。これに伴いリンクB−Cの利用帯域は増加し、空き帯域は減少する。
【0018】
図1において、ネットワークノードBとネットワークノードCを接続するリンクB−Cの全帯域を3.0、ネットワークノードAとネットワークノードC間の予備パスの帯域を2.0、ネットワークノードBとネットワークノードC間の予備パスの帯域を1.0と仮定すると、リンクB−Cの、各リンク障害に対するリンク空き帯域情報は、図2のように表される。
【0019】
リンク空き帯域の最小値1.0という値は、ルーチングプロトコルによって全ネットワークノードA〜Eと経路計算サーバ装置10に広告される場合もあるが、経路計算サーバ装置10は、ルーチングプロトコルの存否とは独立に、図2で示されるような、各リンク障害に対するリンク空き帯域情報を所有する。
【0020】
図2より次のことが分かる。リンクB−Cの空き帯域の最小値は、リンクA−DまたはD−Cが障害となった時の1.0(図2の1行目と2行目)であるので、リンクB−Cは、帯域が1.0以下である現用パスまたは予備パスを必ず収容できる。また、リンクB−EまたはリンクE−Cが障害になったとしても、リンクB−Cは空き帯域2.0(図2の3行目と4行目)を有するので、リンクA−DとリンクD−Cを通らず、リンクB−EまたはリンクE−Cを通る他の現用パスに対する他の予備パスは帯域が2.0以下であれば収容でき、他の予備パスとリンクB−Cの帯域を1.0まで共用できる。さらに、その他のリンクが障害になったとしても、リンクB−Cは空き帯域3.0(図2の5行目)を有するので、リンクA−DとリンクD−CとリンクB−EとリンクE−Cを通らない他の現用パスに対する他の予備パスは、帯域が3.0以下であれば収容でき、他の予備パスとリンクB−Cの帯域を2.0まで共用できる。
【0021】
図4は、経路計算サーバ装置10における高信頼パスの経路の計算処理の一例を示すフローチャートである。まず、高信頼パスの設定要求、解放要求の有無を判断する(S41,S42)。高信頼パスの設定要求も解放要求も無ければS31に戻る。
【0022】
高信頼パスの設定要求があった時(S41でY)、経路計算サーバ装置10は、自己が所有するリンク空き帯域情報を参照し、十分な最小空き帯域を持たないリンクを取り除いて、既知のダイクストラアルゴリズム等を用いて現用パスのための最短経路を計算する(S43)。その後、経路計算サーバ装置10は、現用パスが通るリンクと十分な空き帯域を持たないリンクを取り除いて、既知のダイクストラアルゴリズム等を用いて予備パスのための最短経路を計算する(S44)。その際、予備パス間でのリンク帯域の共用を促進するために、他の予備パスと帯域を共用できるようなリンクに対する重みを小さく設定して最短経路を計算する。
【0023】
例えば、ネットワークノードBとネットワークノードCを接続する帯域1.5の高信頼パスの設定要求あった時、リンクB−Cは最短経路であっても十分な空き帯域を持たないので取り除き、ネットワークノードEを経由する経路を現用パスとして計算する。また、ネットワークノードEを経由する現用パスと十分な空き帯域を持たないリンクを取り除き、リンク帯域の共用を促進するためにリンクB−Cに対する重みを小さく設定して、ネットワークノードBとネットワークノードCを直接接続する経路を予備パスとして計算する。
【0024】
次に、経路計算サーバ装置10は、上記のようにして計算した経路に沿った高信頼パスの設定をネットワークに指令する(S45)と同時に自己が所有しているリンク空き帯域情報を更新する(S46)。例えば、リンクB−EとリンクE−Cを通る現用パスに対する帯域1.5の予備パスをリンクB−Cを使って設定した場合、リンクB−Cの、各リンク障害に対する空き帯域情報は、図2から図3へ更新される。
【0025】
この場合、ネットワークへの高信頼パスの設定の指令とリンク空き帯域情報の更新を同時に行うことによって、ルーチングプロトコルによるリンク空き帯域情報の広告やパスの設定処理に遅れがある場合でも、その影響を受けずに、安全確実に利用可能なリンク空き帯域に基づいて空きの経路を確実に計算することができる。
【0026】
ネットワークに対して高信頼パスの設定要求があった時、経路計算サーバ装置10は、以上のようにして、自己が所有するリンク空き帯域情報を使って、予備パス間でのリンク帯域共用が図れるような高信頼パスの経路を計算し、高信頼パスの設定をネットワークに指令すると同時に自己が所有するリンク空き帯域情報を更新する。
【0027】
回線交換ネットワークまたはパケット交換ネットワークに対して、高信頼パスの解放要求があった時(S42でY)、経路計算サーバ装置10は、高信頼パスの解放をネットワークに指令し(S47)、自己が所有するリンク空き帯域情報を更新する(S51)。
【0028】
ここで、ルーチングプロトコルによってリンク空き帯域の最小値が経路計算サーバ装置10に広告される場合には、図4のフローに示すように、リンク空き帯域情報を更新することによってリンク空き帯域の最小値が増加するか否かを判断し(S48)それが増加する時は、高信頼パスの解放をネットワークに指令した後、更新されるリンク空き帯域情報を一時的に記憶しておき(S49)、その後、ルーチングプロトコルによってリンク空き帯域の最小値が広告された(S50)時点で、一時的に記憶しておいたリンク空き帯域情報に従って、自己が所有するリンク空き帯域情報を実際に更新する(S51)ようにするのがよい。
【0029】
例えば、図1に示されるように、ネットワークノードAとネットワークノードCの間に、現用パスがネットワークノードDを経由し、予備パスがネットワークノードBを経由する帯域2.0の高信頼パスが設定されており、また、ネットワークノードBとネットワークノードCの間に、現用パスがネットワークノードEを経由し、予備パスが発着ノードを直接接続する帯域1.0の高信頼パスが設定されており、さらに、ネットワークノードBとネットワークノードCの間に、現用パスがネットワークノードEを経由し、予備パスは発着ノードを直接接続するような帯域1.5の高信頼パスが設定されている場合を想定する。
【0030】
ここで、ネットワークノードBとネットワークノードCの間に設定されている帯域1.5の高信頼パスの解放要求があったとき、経路計算サーバ装置10は、該高信頼パスの解放をネットワークに指令する。この場合、リンクB−Cの空き帯域の最小値が0.5から1.0に増加するので、図3から図2に更新されたリンクB−Cの空き帯域情報を一時的に記憶する。その後、ルーチングプロトコルによってリンクB−Cの空き帯域の最小値1.0が広告された時点で、一時的に記憶していたリンクB−Cの空き帯域情報に従って、自己が所有するリンクB−Cの空き帯域情報を実際に図2に更新する。
【0031】
このように、ルーチングプロトコルによってリンク空き帯域の最小値の更新が広告された時点でリンク空き帯域情報を実際に更新することによって、ルーチングプロトコルによるリンク空き帯域情報の広告やパスの解放処理に遅れがある場合でも、その影響を受けずに、安全確実に利用可能なリンク空き帯域に基づいて空きの経路を確実に計算することができる。
【0032】
ネットワークに対して高信頼パスの解放要求があった時、経路計算サーバ装置10は、以上のようにして、高信頼パスの解放をネットワークに指令し、自己が所有するリンク空き帯域情報を更新する。
【0033】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ルーチングプロトコルの拡張を伴わずに、リソース利用効率が良い高信頼パスを確実に設定できるので、高信頼なGMPLSネットワークサービスを低コストかつ安定的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明が適用されるネットワークの一実施形態を示す構成図である。
【図2】リンク空き帯域情報の例を示す説明図である。
【図3】更新されたリンク空き帯域情報の例を示す説明図である。
【図4】経路計算サーバ装置における高信頼パスの経路の計算処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
A〜E・・・ネットワークノード、a〜e・・・クライアント装置、10・・・経路計算サーバ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のネットワークノードとそれらを接続するリンクによって構成される回線交換ネットワークにおける現用パスとレストレーション用予備パスから構成される高信頼パスの経路またはパケット交換ネットワークにおける現用パスとプロテクション用予備パスから構成される高信頼パスの経路を計算する高信頼パス経路計算方式において、
ネットワークに対して集中的に配備され、高信頼パスの経路を計算する経路計算サーバ装置を備え、
前記経路計算サーバ装置は、
各リンク障害に対するリンク空き帯域情報を所有し、高信頼パスの設定要求があった時、自己が所有するリンク空き帯域情報を使用して複数の現用パスに対する予備パス間でのリンク帯域共用を図りつつ高信頼パスの経路を計算して該高信頼パスの設定をネットワークに指令すると同時に自己が所有するリンク空き帯域情報を更新し、
高信頼パスの解放要求があった時には、該高信頼パスの解放をネットワークに指令した後、自己が所有するリンク空き帯域情報を更新することを特徴とする高信頼経路パス計算方式。
【請求項2】
高信頼パスの解放要求があった時、前記経路計算サーバ装置は、該高信頼パスの解放によってリンク空き帯域情報におけるリンク空き帯域の最小値が増加する場合は、更新されるリンク空き帯域情報を一時的に記憶しておき、該高信頼パスの解放をネットワークに指令した後にルーチングプロトコルによってリンク空き帯域の最小値の更新が広告された時点で、該一時的に記憶しておいた前記リンク空き帯域情報に従って、自己が所有するリンク空き帯域情報を実際に更新することを特徴とする請求項1に記載の高信頼パス経路計算方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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