説明

高分子フィルム、位相差フィルム、偏光板、液晶表示装置、及び化合物

【課題】使用環境の湿度変化にともなうRe及びRthの変動が軽減された高分子フィルムの提供。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物又はその水和物、溶媒和物もしくは塩の少なくとも1種を含有する高分子フィルムである。Yはメチン基又は窒素原子を表し;Qa、Qb、Qcは、単結合又は2価の連結基を表し;Ra、Rb、Rcは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基、複素環基を表し;X2は、単結合又は2価の連結基を表し、X1は単結合又は所定の2価の連結基を表し;R1及びR2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を表す;ただし、−Qc−Rc及び−N(X11)X22の一方のみが−NH2である化合物等を除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルム、偏光板保護フィルム等の種々の用途に利用可能な高分子フィルム、並びにそれを利用した位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。また、本発明は、高分子フィルムの添加剤等、種々の用途に有用な新規な化合物にも関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示特性は近年ますます向上している。液晶表示装置の視野角特性に関しては、偏光板と液晶セルとの間に、位相差フィルムを配置することにより、著しく改善できることが知られている。視野角補償を達成するためには、用いられる位相差フィルムの光学特性、具体的には面内レターデーション(Re)及び/又は厚み方向レターデーション(Rth)が、表示モードに応じて、適切な範囲内に制御されていることが好ましい。
【0003】
位相差フィルムのRe、Rthを制御する方法の一つとして、高分子フィルムにレターデーション上昇剤を添加する方法が開示されている(特許文献1参照)。この文献に開示されているレターデーション上昇剤は、ケト−エノール互変異性可能な構造をその構成要素として含む分子錯合体を形成しうる化合物であり、その一例としてグアナミン骨格等の1,3,5−トリアジン環を含む化合物が開示されている。また、その他のレターデーション上昇剤として、円盤状化合物や、1,3,5−トリアジン環を含む他の構造を有する化合物が開示されている(特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−109410号公報
【特許文献2】特開2001−166144号公報
【特許文献3】特開2003−344655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、本発明者らが、この様な従来のレターデーション上昇剤を添加した高分子フィルムについて検討したところ、使用環境の湿度変化に伴うRe及びRthの変動(Re及びRthの湿度依存性と称することがある)が大きいことが判明した。
本発明は使用環境の湿度変化に伴うRe及びRthの変動が軽減された高分子フィルムを提供すること、並びにそれを用いた位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、溶液安定性が良好であり、高分子フィルムの添加剤等、種々の用途に有用な新規な化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、Re及びRth発現効果を高めることを目的に、様々な化合物について、添加剤としての有用性を種々検討した。その結果、ピリミジン環又はピリジン環を含み、環上の所定の位置に所定の置換基を有する化合物群は、高分子フィルムのレターデーション(Re及び/又はRth)を上昇させる作用があることを見出し、さらに、予期せぬことに、当該化合物を添加することによってRe及び/又はRthが制御された高分子フィルムは、使用環境の湿度変化に伴うRe及びRthの変動が、従来のレターデーション上昇剤を添加することによってRe及び/又はRthが制御された高分子フィルムと比較して、顕著に軽減されていることを見出した。これらの知見に基づきさらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
なお、本発明に用いられる、所定の位置に所定の置換基を有するピリミジン環又はピリジン環を有する化合物群のレターデーション上昇の作用は、トリアジン環を有する分子錯合体の形成を必要としない点で特許文献1に開示のレターデーション上昇剤の作用と異なり、また円盤状であることを必要としない点で引用文献2に開示のレターデーション上昇剤の作用と異なる。また1,3,5−トリアジン環を含まない点で引用文献3に開示のレターデーション上昇剤と異なる。
【0007】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩の少なくとも1種を含有する高分子フィルム:
【化1】

一般式(1)中、Yは−N−又は−C(−Qd−Rd)−を表し;Qa、Qb、Qc及びQdはそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し;Ra、Rb、Rc及びRdはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRb及びRaとRdはそれぞれ連結して環を形成してもよく;X2は、単結合又は2価の連結基を表し、X1は、単結合又は下記2価の連結基群G1
【化2】

(各式中、*側が前記各式で表される化合物中のピリミジン環又はピリジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。)から選択される2価の基を表し;R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい;ただし、−Qc−Rc及び−N(X11)X22のうち一方のみが−NH2である化合物、並びにYが窒素原子であり、−Qc−Rc及び−N(X11)X22の双方が−NH2でなく、且つ−Qa−Raが−NH2である化合物を除く。
【0008】
[2] 前記一般式(1)で表わされる化合物の少なくも1種を、水和物、溶媒和物もしくは塩の形態で添加してなる[1]の高分子フィルム。
[3] 前記一般式(1)が、下記一般式(2)である[1]又は[2]の高分子フィルム:
【化3】

一般式(2)中の各記号は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;X4は、単結合又は2価の連結基を表し、X3は、単結合又は下記2価の連結基群G1
【化4】

(各式中、*側が前記各式で表される化合物中のピリミジン環又はピリジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。)から選択される2価の基を表し;R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。
【0009】
[4] 前記一般式(1)が、下記一般式(3)又は(4)である[1]又は[2]の高分子フィルム:
【化5】

一般式(3)中の各記号は、一般式(1)中のそれぞれと同義である。
【化6】

一般式(4)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義である。
【0010】
[5] 前記一般式(1)が、下記一般式(5−1)である[1]又は[2]の高分子フィルム:
【化7】

一般式(5−1)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、Ar1はアリール基を表す。
【0011】
[6] 前記一般式(1)が、下記一般式(5−2)である[1]又は[2]の高分子フィルム:
【化8】

一般式(5−2)中の各記号の定義は、一般式(1)及び(3)中のそれぞれと同義であり、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、アリール基を表す。
【0012】
[7] 前記一般式(1)が、下記一般式(6)である[1]又は[2]の高分子フィルム:
【化9】

一般式(6)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、アリール基を表す。
【0013】
[8] Qaが、単結合、又は−O−、−S−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し、Raが、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す[1〜7]のいずれかの高分子フィルム。
【0014】
[9] 前記一般式(1)が、下記一般式(7−1)である[1]又は[2]の高分子フィルム:
【化10】

一般式(7−1)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;Qaaは、単結合、又は−O−、−S−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し;Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
【0015】
[10] 前記一般式(1)が、下記一般式(7−2)である[1]又は[2]の高分子フィルム:
【化11】

一般式(7−2)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
【0016】
[11] 前記一般式(7−2)が、下記一般式(8)、一般式(9)、又は一般式(10)である[9]の高分子フィルム:
【化12】

【化13】

【化14】

式中の各記号の定義は、一般式(7−2)中のそれぞれと同義であり;Ra8、Ra9及びRa10はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
【0017】
[12] 前記一般式(1)が、下記一般式(11a)である[1]又は[2]の高分子フィルム:
【化15】

一般式(11a)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義である。
【0018】
[13] 下記一般式(IIIe)、(IVe)及び(Ve)のいずれかで表される少なくとも1種の化合物又はその水和物、溶媒和物もしくは塩をさらに含む[1]〜[12]のいずれかの高分子フィルム:
【化16】

式中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;Arはそれぞれ独立に、アリール基を表す。
[14] 水酸基を有する高分子を主成分として含有する[1]〜[13]のいずれかの高分子フィルム。
[15] 前記水酸基を有する高分子が、セルロースアシレート樹脂である[14]の高分子フィルム。
[16] 前記セルロースアシレート樹脂が、セルロースアセテート樹脂である[15]の高分子フィルム。
[17] 溶液製膜法により製膜されてなる[1]〜[16]のいずれかの高分子フィルム。
[18] 前記化合物の水和物又は溶媒和物を用いることを特徴とする[17]の高分子フィルム。
[19] [1]〜[18]のいずれかの高分子フィルムからなる、又は[1]〜[18]のいずれかの高分子フィルムを含む位相差フィルム。
[20] 偏光子、及び[1]〜[18]のいずれかの高分子フィルムを含む偏光板。
[21] [1]〜[18]のいずれかの高分子フィルム、及び/又は[20]の偏光板を含む液晶表示装置。
【0019】
[22] 下記一般式(7−1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩:
【化17】

一般式(7−1)中、Yは−N−又は−C(−Qd−Rd)−を表し;Qdは、単結合又は2価の連結基を表し;Rdは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し;Qaaは、単結合、又は−O−、−S−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し;Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、RdとRaaとが結合して環構造を形成していてもよく;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
【0020】
[23] 下記一般式(7−2)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩:
【化18】

一般式(7−2)中、Yは−N−又は−C(−Qd−Rd)−を表し;Qdは、単結合又は2価の連結基を表し;Rdは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し;Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、RdとRa7とが結合して環を形成していてもよく;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
【0021】
[24] 下記一般式(8)、一般式(9)、又は一般式(10)で表される[22]又は[23]の化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩:
【化19】

【化20】

【化21】

式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表し;Ra8、Ra9及びRa10はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
【0022】
[25] Ra8、Ra9及びRa10はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキル基を表す[24]の化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩。
[26] 前記一般式(7−1)、(7−2)、及び(8)〜(10)のいずれかの化合物の水和物又は溶媒和物。
[27] 前記一般式(7−1)、(7−2)、及び(8)〜(10)のいずれかの化合物の水和物。
【0023】
[28] 下記式(7a)とスキームで表わされる化合物と、一般式(7b)で表される化合物とを反応させる工程を含む、下記一般式(7−1)で表される化合物、又はその塩、水和物又は溶媒和物の製造方法:
【化22】

一般式(7a)及び一般式(7b)中、Qaaは、単結合、又は−O−、−S−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し;Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し;R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表し;Zはハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はアシルオキシ基を表す。
【0024】
[29] 前記一般式(7−1)で表される化合物の水和物又は溶媒和物の製造方法であって、前記一般式(7−2)で表される化合物を水又は有機溶媒を用いて晶析することをさらに含む、[28]の方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、使用環境の湿度変化に伴うRe及びRthの変動が軽減された高分子フィルムを提供すること、並びにそれを用いた位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
また、本発明によれば、溶液安定性が良好であり、高分子フィルムの添加剤等、種々の用途に有用な、新規な化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の液晶表示装置の一例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0028】
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション(Re及びRth))
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
【0029】
【数1】

式(XI)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
【0030】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0031】
本発明において、位相差膜等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=589nmでの値である。
また、本明細書において、位相差膜及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
【0032】
1. 高分子フィルム
本発明の高分子フィルムは、下記一般式(1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩の少なくとも1種を含有することを特徴とする。下記一般式(1)の化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩は、レターデーション上昇剤として作用し、これを含有する高分子フィルムは、該化合物を含まない以外は原料及び製法が同一の高分子フィルムと比較して、そのRe及び/又はRthが上昇しているという特徴がある。また、下記一般式(1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩を添加することによってRe及び/又はRthが制御された高分子フィルムは、他のレターデーション上昇剤(例えば、トリアジン環を中心母核とする円盤状化合物)によりRe及び/又はRthが制御された高分子フィルムと比較して、使用環境の湿度変化に伴うReの変動及びRthの変動の少なくとも一方が、軽減されている。
【0033】
さらに、溶液製膜法にて製造される態様、即ち、主成分である高分子材料(樹脂及び重合体のいずれも含む意味で用いるものとする)と、下記一般式(1)で表される化合物とを有機溶媒に溶解して調製されたドープを用いて、製膜されて製造される態様では、製造されるフィルムの品質安定化の観点では、下記一般式(1)の化合物は、水和物、溶媒和物もしくは塩の形態で用いることがより好ましく、水和物もしくは溶媒和物の形態で用いることがさらに好ましい。
【0034】
以下、本発明の高分子フィルムの作製に利用可能な、種々の材料及び方法について詳細に説明する。
(1−1) 一般式(1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩
本発明の高分子フィルムは、下記一般式(1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩(以下、「本発明の化合物」という場合がある)の少なくとも1種を含有することを特徴とする。下記一般式(1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩は、高分子フィルムのRe及び/又はRthを上昇させる作用があり、即ち、レターデーション上昇剤として作用する。また、親水性高分子、特に水酸基を有する高分子、を主成分として含有する高分子フィルムでは、使用環境の湿度変化に伴うReの変動及びRthの変動が顕著になる傾向があるが、下記一般式(1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩は、使用環境の湿度変化に伴うReの変動及びRthの変動の少なくとも一方を、軽減させる作用があり、即ち、高分子フィルム用湿度依存性改良剤としても作用する。
なお、本発明において、「高分子フィルム用湿度依存性改良剤」とは、高分子フィルムに添加すると、該高分子フィルムの湿度に依存したRe及び/又はRthの変動を軽減できる剤をいうものとする。具体的には、無添加の高分子フィルムと、試料を添加した高分子フィルムを準備し、それぞれ25℃・相対湿度10%にて12時間調湿したときのRe及びRth(それぞれRe[25℃、RH10%]、Rth[25℃、RH10%]とも言う)、並びに25℃・相対湿度80%にて12時間調湿したときのRe及びRth(それぞれRe[25℃、RH80%]、Rth[25℃、RH80%]とも言う)をそれぞれ測定し、且つ比較する。試料を添加した高分子フィルムのほうが、無添加の高分子フィルムと比較して、Re及び/又はRthの変動が小さい場合、該試料を、湿度依存性改良剤というものとする。
【0035】
さらに、下記一般式(1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩は、有機溶媒に溶解した状態での安定性に優れ、これらの化合物を使用することは、高分子フィルムの製造、特に溶液製膜法による製造の安定性改善にも寄与する。
以下、一般式(1)及びその好ましい例である一般式(2)について詳細に説明する。なお、本明細書では、「アルキル基」、「アルケニル基」及び「アルキニル基」については、直鎖状及び分岐鎖状のいずれも含む意味で用いるものとする。
【0036】
【化23】

【0037】
一般式(1)中、Yは−N−又は−C(−Qd−Rd)−を表し;Qa、Qb、Qc及びQdはそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し;Ra、Rb、Rc及びRdはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRb及びRaとRdはそれぞれ連結して環を形成してもよく;X2は、単結合又は2価の連結基を表し、X1は、単結合又は下記2価の連結基群G1から選択される2価の基を表し;R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。ただし、−Qc−Rc及び−N(X11)X22のうち一方のみが−NH2である化合物、並びにYが窒素原子であり、−Qc−Rc及び−N(X11)X22の双方が−NH2でなく、且つ−Qa−Raが−NH2である化合物は除かれ、即ち、下記部分構造をそれぞれ有するモノアミン体は除かれる。
【0038】
【化24】

式中、*にはそれぞれ、−Qa−Ra、−Qb−Rb、−Qc−Rc、−Qd−Rd及び−N(X11)X22のいずれかが結合し、ただしそれらはNH2以外である。
【0039】
【化25】

【0040】
一般式(2)中の各記号は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;X4は、単結合又は2価の連結基を表し、X3は、単結合又は後述する2価の連結基群G1から選択される2価の基を表し;R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。ただし、−N(X33)X44及び−N(X11)X22の一方のみが−NH2である化合物、並びにYが窒素原子であり、−Qc−Rc及び−N(X11)X22の双方が−NH2でなく、且つ−Qa−Raが−NH2である化合物を除く。
【0041】
一般式(1)及び(2)中、Yが−C(−Qd−Rd)−である場合は、式中の6員環はピリジン環であり、Yが−N−である場合は、式中の6員環はピリミジン環である。
【0042】
一般式(1)及び(2)中、Qa、Qb、Qc及びQdがそれぞれ表す2価の連結基の例には、−O−、−S−、−N(Xa−Rh)−、−N(Xa−Rh)−Xb−で表される2価の連結基が含まれる。ここで、Xa及びXbはそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。Xa及びXbでそれぞれ表される2価の連結基の例には、−CO−、−COO−、−CONH−が含まれる。Rhは水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、又は炭素原子数2〜10の複素環基を表す。Qa、Qb、Qc及びQdがそれぞれ表す2価の連結基の好ましい例としては、単結合、−O−、−S−、−N(Xa−Rh)−、−N(Xa−Rh)−Xb−を挙げることができ、単結合、−O−、−N(Xa−Rh)−、−N(Xa−Rh)−Xb−がより好ましく、単結合、−O−、−NH−、及び−NH−Xb−が特に好ましい。−NH−Xb−の好ましい例には、−NH−CO−、−NH−COO−、−NH−CONH−、−NH−SO2−などが含まれ、−NH−CO−、−NH−COO−であることがさらに好ましい。Qdは単結合であるのが好ましい。
【0043】
一般式(1)及び(2)中、Ra、Rb、Rc及びRdはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRb及びRaとRdはそれぞれ連結して環を形成してもよい。
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれアルキル基である場合、炭素原子数1〜20であることが好ましく、炭素原子数1〜8であることがより好ましく、炭素原子数1〜4であることが特に好ましい。なお、Ra、Rb、Rc及びRdがそれぞれアルキル基である場合、1つ又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子(−NH−又は−N(R)−(Rはアルキル基)を含む)から選択されるヘテロ原子に置き換えられていてもよい。例えば、Ra、Rb、Rc及びRdはそれぞれ、アルキレン(例えば、エチレン、プロピレン)オキシ基であってもよい。
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれアルケニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれアルキニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
【0044】
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれアリール基である場合、炭素原子数6〜24であることが好ましく、炭素原子数6〜18であることがより好ましく、炭素原子数6〜10であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。具体的にはベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
a、Rb、Rc及びRdがそれぞれ複素環基である場合、炭素原子数4〜20であることが好ましく、炭素原子数4〜10であることがより好ましく、炭素原子数4〜6であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。具体的には、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基を挙げることができる。
【0045】
aとRb及びRaとRdはそれぞれ連結して環を形成してもよい。形成される環は、炭化水素環であっても、複素環であってもよい。5員環又は6員環であるのが好ましい。
【0046】
a、Rb、Rc及びRdはそれぞれ、可能であれば、さらに1以上の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。Ra、Rb、Rc及びRdがそれぞれ有していてもよい置換基の例には、以下の置換基群Tが含まれる。
置換基群T:
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、及びシリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が2つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0047】
一般式(1)及び(2)中、Ra及びRbはそれぞれ、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基であるのが好ましい。一般式(1)中、Rcは、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、及び置換もしくは無置換の複素環基であるのが好ましい。Rdは水素原子であり、且つQdが単結合であるのが好ましく、即ちYが−C(−Qd−Rd)−である場合は、無置換メチンであるのが好ましい。
【0048】
一般式(1)及び(2)で表される化合物の例には、Yが窒素原子であって、且つ、−Qa−Ra及び−Qc−Rcがそれぞれ、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。
また、前記一般式(1)及び(2)で表される化合物は、上記一般式(1)及び(2)に明示された構造に限定されるものではなく、当然に一般式(1)及び(2)におけるヘテロ環骨格部分の共鳴構造も含まれる。また、一般式(1)及び(2)におけるヘテロ環骨格部分が−Qa−Ra及び−Qc−Rcと共鳴している構造も前記一般式(1)及び(2)で表される化合物に含まれる。なお、後述する一般式(3)〜(12)で表される化合物についても同様である。
【0049】
一般式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。
1、R2、R3及びR4がそれぞれアルキル基である場合、炭素原子数1〜20であることが好ましく、炭素原子数1〜8であることがより好ましく、炭素原子数1〜4であることが特に好ましい。なお、R1、R2、R3及びR4がそれぞれアルキル基である場合、1つ又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子(−NH−又は−N(R)−(Rはアルキル基)を含む)から選択されるヘテロ原子に置き換えられていてもよい。例えば、R1、R2、R3及びR4は、アルキレン(例えば、エチレン、プロピレン)オキシ基であってもよい。
1、R2、R3及びR4がそれぞれアルケニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
1、R2、R3及びR4がそれぞれアルキニル基である場合、炭素原子数2〜20であることが好ましく、炭素原子数2〜8であることがより好ましく、炭素原子数2〜4であることが特に好ましい。
【0050】
1、R2、R3及びR4がそれぞれアリール基である場合、炭素原子数6〜24であることが好ましく、炭素原子数6〜18であることがより好ましく、炭素原子数6〜10であることが湿度依存性軽減の観点から特に好ましい。具体的にはベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
1、R2、R3及びR4がそれぞれ複素環基である場合、炭素原子数4〜20であることが好ましく、炭素原子数4〜10であることがより好ましく、炭素原子数4〜6であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。具体的には、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基を挙げることができる。
【0051】
一般式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又は複素環基であるのが好ましい。
【0052】
1、R2、R3及びR4はそれぞれ、可能であれば、さらに1以上の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。R1、R2、R3及びR4がそれぞれ有していてもよい置換基の例には、前述の置換基群Tが含まれる。
【0053】
一般式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基が好ましい。
1及びR2のいずれか一方、並びにR3及びR4のいずれか一方は、それぞれ、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基であるのが好ましく、水素原子であるのが特に好ましい。湿度依存性軽減の観点では、他方は、置換もしくは無置換のアリール基であるのが好ましい。
【0054】
一般式(1)及び(2)中、X2及びX4はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し;X1及びX3はそれぞれ、単結合又は下記2価の連結基群G1から選択される基を表す。
2及びX4がそれぞれ表す2価の連結基の例には、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは炭素原子数2)、アリーレン基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは、炭素原子数6〜10)が含まれ、X1及びX3は下記2価の連結基群G1が含まれる。
【0055】
【化26】

【0056】
各式中、*側が前記各式で表される化合物中のピリミジン環又はピリジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。それぞれの基中の炭素原子数の好ましい範囲は、Xa及びXbがそれぞれ表す基中の炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0057】
1及びX3は好ましくは、それぞれ独立に、下記2価の連結基群G2から選ばれる。
【化27】

2価の連結基群G2中の各記号の定義は、2価の連結基群G1中のそれぞれと同義である。
【0058】
1及びX3がそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基群G1から選ばれるいずれかの基を表すのが好ましく、X2が単結合で且つX1が2価の連結基群G1から選ばれるいずれかの基を表し;並びにX4が単結合で且つX3が2価の連結基群G1から選ばれるいずれかの基を表すのが好ましい。
その場合、X1及びX3はそれぞれ独立に、−CO−、−COO−、−CO(NRg)−のいずれかであることがより好ましく、−CO−であることが特に好ましい。
例えば、X1が所定の2価の連結基(特に好ましくは−CO−)で、且つX2が単結合である場合は、R1は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基であり(湿度依存性軽減の観点では、好ましくは置換もしくは無置換のアリール基であり)、且つR2は水素原子であるのが好ましく;同様に、X3が所定の2価の連結基(好ましくは−CO−)で、且つX4が単結合である場合は、R3は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基であり(湿度依存性軽減の観点では、好ましくは置換もしくは無置換のアリール基であり)、且つR4は水素原子であるのが特に好ましい。
【0059】
さらに、一般式(1)中、X1が所定の2価の連結基である場合、R1は、アリール基であるのが好ましく、中でも置換もしくは無置換のフェニル基であるのが好ましい。アリール基は、上記置換基群Tから選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。該置換基の置換位置についても特に制限はない、X1に対して、オルト、メタ及びパラ位のいずれの位置が置換されていてもよい。好ましい置換基の例には、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキルアミノ基)、又はジアルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8のジアルキルアミノ基)が含まれ、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基)がより好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であることがさらに好ましい。
【0060】
一般式(2)中、X1及びX3がそれぞれ2価の連結基である場合、R1及びR3はそれぞれ、アリール基であるのが好ましく、中でも置換もしくは無置換のフェニル基であるのが好ましい。アリール基は、上記置換基群Tから選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。該置換基の置換位置についても特に制限はない、X1及びX3それぞれに対して、オルト、メタ及びパラ位のいずれの位置が置換されていてもよい。好ましい置換基の例には、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキルアミノ基)、又はジアルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜8のジアルキルアミノ基)が含まれ、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基)がより好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であることがさらに好ましい。
【0061】
一方、一般式(1)及び(2)中のX1、X2、X3及びX4のそれぞれが、前記2価の連結基群G1で表される2価の連結基のいずれかでない場合は、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ単結合であるのが好ましく、それぞれに結合するR1、R2、R3及びR4は、水素原子であるのが好ましい。ただし、一般式(2)では、X1及びX2が単結合であり、且つR1及びR2が水素原子である場合、X3及びX4は単結合であり、且つR3及びR4が水素原子である。また、一般式(1)では、X1及びX2が単結合であり、且つR1及びR2が水素原子である場合、−Qc−Rcは、−NH2である。
【0062】
前記一般式(1)で表される化合物の例には、下記一般式(3)で表される化合物が含まれる。
【0063】
【化28】

【0064】
一般式(3)中の各記号は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。一般式(3)で表される化合物の例には、−Qa−Raが、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。ただし、−Qc−Rc又は−N(X11)X22の一方のみが−NH2である化合物、並びに−Qc−Rc及び−N(X11)X22の双方が−NH2でなく、且つ−Qa−Raが−NH2である化合物を除く。
【0065】
前記一般式(1)で表される化合物の例には、下記一般式(4)で表される化合物が含まれる。
【0066】
【化29】

【0067】
一般式(4)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。ただし、−Qc−Rc又は−N(X11)X22の一方のみが−NH2である化合物は除く。
【0068】
前記一般式(1)で表される化合物の例には、下記一般式(3a)で表される化合物が含まれる。
【0069】
【化30】

【0070】
一般式(3a)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。
【0071】
前記一般式(1)で表される化合物の例には、下記一般式(3b)で表される化合物が含まれる。
【0072】
【化31】

【0073】
一般式(3b)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。
【0074】
前記一般式(1)で表される化合物の例には、下記一般式(3c)で表される化合物が含まれる。
【0075】
【化32】

【0076】
一般式(3c)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。
【0077】
前記一般式(1)中、Qaは、単結合、又は−O−、−S−、−N(Xa−Rh)−、もしくは−N(Xa−Rh)−Xb−で表される2価の連結基であるのが好ましい。中でも、単結合、又は−O−、−S−、−NH−又は−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基)であるのがより好ましく、単結合又は−O−であることが更に好ましい。Raは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数6〜18のアリール基(例えば、ベンゼン環及びナフタレン環の基)、炭素原子数4〜10の複素環の基(例えば、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基)が好ましく;及び、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基であるのが好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。置換基の例には、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基等が含まれる。またRaは、Qaが−N(R)−である場合には、Rと結合して環(例えば5又は6員の環)を形成していてもよい。一般式(1)で表される化合物の例には、−Qa−Raが、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。
−Qa−Raとして、好ましい例としては、−Cl、−CH3、−(t)C49、−OH、−OCH3、−OC25、−NH2、−NHCH3、NHC25、−NHC37、−NHC49、−N(CH32、−N(C252が挙げられ、その中でも特に好ましい例としては、−Cl、−CH3、−OH、−OCH3、NH2、−NHCH3、NHC25が挙げられ、その中でも最も好ましい例としては、−CH3、−OCH3が挙げられる。
【0078】
前記一般式(1)で表される化合物の例には、下記一般式(5−1)で表される化合物が含まれる。
【0079】
【化33】

【0080】
一般式(5−1)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。ただし、−Qc−Rc及び−Qa−Ra−の一方のみが、NH2である化合物は除かれる。
Ar1はアリール基を表す。アリール基は置換もしくは無置換のフェニル基又はナフチル基であることが好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基を有することがより好ましい。Ar1が表すアリール基は、1以上の置換基を有していてもよく、該置換基の例には、上記置換基群Tが含まれる。好ましい置換基の例は、前記一般式(2)中のR1及びR3がそれぞれ有する置換基の好ましい例と同様である。
【0081】
前記一般式(1)で表される化合物の例には、下記一般式(5−2)で表される化合物が含まれる。
【0082】
【化34】

【0083】
一般式(5−2)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。Ar2はアリール基を表す。
【0084】
前記一般式(1)及び(2)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(6)で表される化合物が含まれる。
【0085】
【化35】

【0086】
一般式(6)中の各記号の定義は、一般式(2)中のそれぞれと同義であり;Ar1及びAr2はそれぞれ、アリール基を表す。Qa及びRaの好ましい例は、上記一般式(3c)中の各基の好ましい例と同じである。
【0087】
Ar1及びAr2がそれぞれ表すアリール基は、置換もしくは無置換のフェニル基又はナフチル基であるのが好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基であるのがより好ましい。Ar1及びAr2がそれぞれ表すアリール基は、1以上の置換基を有していてもよく、該置換基の例には、上記置換基群Tが含まれる。好ましい置換基の例は、前記一般式(2)中のR1及びR3がそれぞれ有する置換基の好ましい例と同様である。Ar1及びAr2は、勿論同一であっても、互いに異なっていてもよい。例えば、一方が無置換のアリール基で、他方が同一のアリール基であって、1以上の置換基を有する置換アリール基であってもよい。また双方とも互いに同一のアリール基であって、但し異なる置換基で置換された互いに異なる置換アリール基であってもよい。
【0088】
前記一般式(6)の合成方法の一例では、互いに異なるAr1及びAr2を導入するための試薬をそれぞれ用いて、Ar1及びAr2が互いに異なる化合物を製造しようとすると、Ar1が導入された化合物、双方にAr2が導入された化合物、及び互いに異なるAr1及びAr2をそれぞれ有する1種又は2種の化合物(Yが窒素原子である場合は2種の化合物として特定される)の3種又は4種の混合物が得られる場合がある。本発明では、当該混合物をそのまま高分子フィルムの添加剤として用いてもよい。即ち、下記一般式(6a)〜(6d)(但し、Yがメチン基の場合は(6a)〜(6c))で表される化合物の混合物を、添加剤として使用してもよい。
【0089】
【化36】

【0090】
一般式(6a)〜(6d)中の各記号の定義は、一般式(2)中のそれぞれと同義であるが、但し、Ar1及びAr2はそれぞれ互いに異なる基を表す。
【0091】
aは、単結合、又は−O−、−S−、−N(Xa−Rh)−、もしくは−N(Xa−Rh)−Xb−で表される2価の連結基であるのが好ましい。中でも、単結合、又は−O−、−S−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基)であるのがより好ましく、単結合又は−O−であることが更に好ましい。Raは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基、炭素原子数6〜18のアリール基(例えば、ベンゼン環及びナフタレン環の基)、炭素原子数4〜10の複素環の基(例えば、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基)が好ましく;及び、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基(さらに好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基)であることがより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。置換基の例には、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基等が含まれる。またRaは、Qaが−N(R)−である場合には、Rと結合して環(例えば5又は6員の環)を形成していてもよい。一般式(6)で表される化合物の例には、−Qa−Raが、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。
−Qa−Raの好ましい例には、−Cl、−CH3、−(t)C49、−OH、−OCH3、−OC25、−NH2、−NHCH3、NHC25、−NHC37、−NHC49、−N(CH32、−N(C252が含まれr、その中でも特に好ましい例としては、−Cl、−CH3、−OH、−OCH3、NH2、−NHCH3、NHC25が挙げられ、その中でもさらに好ましい例としては、−CH3、−OCH3が挙げられる。
【0092】
前記一般式(6)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(6−1)で表される化合物が含まれる。
【0093】
【化37】

【0094】
一般式(6−1)中の各記号の定義は、一般式(6)中のそれぞれと同義であり;Ar1及びAr2はそれぞれ、アリール基を表す。
aaは、単結合、又は−O−、−NH−もしくは−N(R)−(但し、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表す。
aaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
Ar1及びAr2の好ましい範囲は、一般式(6)で示したものと同様である。
aa及びRaaの好ましい範囲は、一般式(6)中のQa及びRaの好ましい範囲と同様である。
【0095】
一般式(6)、並びに後述する一般式(7−1)、(7−2)、及び(8)〜(10)の化合物は、高いレターデーション上昇作用を示すとともに、これらの化合物を添加することによってRe及び/又はRthが制御された高分子フィルムは、湿度に依存してRe及び/又はRthが変動するのがより軽減されているという特徴がある。
【0096】
前記一般式(2)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(7−1)で表される化合物が含まれる。
【0097】
【化38】

【0098】
一般式(7−1)中の各記号Y、Qaa及びRaaそれぞれの定義は、一般式(6−1)中のそれぞれと同義であり;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基であることが好ましく、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基であることが特に好ましい。R11〜R16は勿論互いに同一であっても異なっていてもよい。例えばR11〜R13又はR14〜R16が全て水素原子で、且つR14〜R16のいずれか少なくとも1つ又はR11〜R13のいずれか少なくとも1つが前記置換基であってもよいし;またR11〜R13の少なくとも1つ、及びR14〜R16の少なくとも1つが互いに異なる前記置換基であってもよい。
11、R12、R13、R14、R15及びR16の置換位置は−C(=O)−に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれも好ましく用いられるが、湿度依存性改良効果の点からはオルト位以外に置換することがより好ましい。
【0099】
前記式(7−1)中、−Qaa−Raaの好ましい例には、−Cl、−CH3、−(t)C49、−OH、−OCH3、−OC25、−NH2、−NHCH3、NHC25、−NHC37、−NHC49、−N(CH32、−N(C252が含まれ、その中でも特に好ましい例としては、−Cl、−CH3、−OH、−OCH3、NH2、−NHCH3、及びNHC25が挙げられ、その中でもさらに好ましい例としては、−CH3、−OCH3が挙げられる。
【0100】
また、式(7−1)中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基であることが好ましく、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基であることが特に好ましい。
【0101】
前記一般式(2)で表される化合物の好ましい例には、下記一般式(7−2)で表される化合物が含まれる。
【0102】
【化39】

【0103】
一般式(7−2)中の各記号の定義は、一般式(2)中のそれぞれと同義であり;Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基であることが好ましく、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基であることが特に好ましい。R11〜R16は勿論互いに同一であっても異なっていてもよい。例えばR11〜R13又はR14〜R16が全て水素原子で、且つR14〜R16のいずれか少なくとも1つ又はR11〜R13のいずれか少なくとも1つが前記置換基であってもよいし;またR11〜R13の少なくとも1つ、及びR14〜R16の少なくとも1つが互いに異なる前記置換基であってもよい。
【0104】
aは、単結合、又は−O−、−S−、−N(Xa−Rh)−、もしくは−N(Xa−Rh)−Xb−で表される2価の連結基であるのが好ましい。中でも、単結合、又は−O−、−S−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基)であるのがより好ましく、単結合、又は−O−もしくは−NH−であることが更に好ましい。
【0105】
一般式(7−1)及び(7−2)で表される化合物の例には、下記一般式(8)〜(10)のそれぞれで表される化合物が含まれる。
【0106】
【化40】

【化41】

【化42】

【0107】
式(8)〜(10)中の各記号の定義は、一般式(7−1)及び(7−2)中のそれぞれと同義であり;Ra8、Ra9及びRa10はそれぞれ、炭素原子数1〜8(好ましくは炭素原子数1〜4)のアルキル基を表す。
【0108】
また、前記一般式(1)で表される化合物の例には、−Qc−Rc及び−N(X11)X22の双方が−NH2である、下記式(11)で表される化合物が含まれる。下記式(11)(好ましくは下記一般式(11a))で表される化合物は、上記一般式(6)〜(10)で表される化合物と比較して、Re及びRthの上昇作用が小さいが、比較的低いRe及びRthを必要とする用途等において、好ましく用いられるであろう。
【0109】
【化43】

【0110】
式中の各記号の定義は、一般式(2)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び好ましい例も同様である。一般式(11)及び(11a)で表される化合物の例には、−Qa−Raが、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。
【0111】
また、下記式(12)で表される化合物も、前記一般式(6)、(7−1)、(7−2)、(8)〜(10)の化合物と同様に、高いレターデーション上昇作用を示す。
【化44】

【0112】
式中の各基の定義は、上記一般式(1)〜(6)、(7−1)、(7−2)、(8)〜(10)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Q12は、単結合、−NH−、−O−、又は−S−であり、R12は水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基(例えば、ベンゼン環及びナフタレン環の基)、又は炭素原子数4〜10の複素環の基(例えば、ピロリル基、ピロリジノ基、ピラゾリル基、ピラゾリジノ基、イミダゾリル基、ピペラジノ基、モルホリノ基)であり、好ましくは、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数6〜18のアリール基である。Q12が、単結合、−O−、又は−S−である場合は、特に、R12は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基であるのが好ましく、Q12が−NH−である場合は、特に、R12は炭素原子数1〜8のアルキル基であるのが好ましく、さらには、炭素原子数6〜18のアリール基(より好ましくはベンゼン環の基)であるのが好ましい。一般式(12)で表される化合物の例には、−Qa−Raが、−OH及び−SH以外の基である化合物が含まれる。ただし、−Q12−R12及び−Qa−Ra−の一方のみが、−NH2である化合物は除かれる。
【0113】
本発明の化合物の一つの特徴は、ピリミジン環又はピリジン環を含み、環上の所定の位置に所定の置換基を有することである。本発明の化合物の中でもRe及びRthの湿度依存性の軽減に特に効果が大きいものとしては、下記部分構造(A)の一般式で示されるものがあげられる。より好ましくは、下記部分構造(B)であり、さらに好ましくは、下記部分構造(C)である。なお、下記一般式(A)〜(C)中のYは、前記一般式(1)中のYと同義であり、即ち、−N−又は−C(−Qd−Rd)−(Qd及びRdの定義は前述のとおりである。)である。
【0114】
【化45】

【0115】
これらの部分構造の特徴は、水素結合ドナー及びアクセプター部分が立体的に近い配置になっていることである。これにより、水や水酸基と多点の水素結合を形成することが可能となる。特に、部分構造(B)や(C)を有する化合物は、水は水酸基と環状の水素結合対を形成できる配座を取り得る。これらの構造上の特徴により、高分子フィルム中の水分子を捕獲したり、高分子中の水酸基や、高分子に水素結合した水に対して強く相互作用したりすることにより、使用環境の湿度変化に伴うRe及びRthの変動を低減する効果を発現していると推測される。
【0116】
また本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物は、その立体構造も重要である。
高分子フィルムのレターデーション(Re及び/又はRth)を上昇させる効果発現には、平面性が高く、棒状構造であることが好ましい。また、高分子フィルムの使用環境の湿度変化に伴うRe及びRthの変動を低減させる効果発現には、同じく平面性が高く、コンパクトな構造であることが好ましい。これは立体的にかさ高いと、高分子鎖に本発明の化合物が接近しにくくなり効果的に水分子を捕獲することができなくなるためである。
【0117】
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明に使用可能な化合物は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0118】
【化46】

【0119】
【化47】

【0120】
【化48】

【0121】
【化49】

【0122】
【化50】

【0123】
【化51】

【0124】
【化52】

【0125】
【化53】

【0126】
【化54】

【0127】
【化55】

【0128】
【化56】

【0129】
【化57】

【0130】
【化58】

【0131】
【化59】

【0132】
【化60】

【0133】
【化61】

【0134】
本発明の範囲には、前記一般式(1)で表される化合物を水和物、溶媒和物もしくは塩の形態で添加してなる高分子フィルムも含まれる。なお、本発明において、水和物は有機溶媒を含んでいてもく、また溶媒和物は水を含んでいてもよい。即ち、「水和物」及び「溶媒和物」には、水と有機溶媒のいずれも含む混合溶媒和物が含まれる。上記した通り、前記化合物の水和物、溶媒和物又は塩のほうが、溶液製膜法により製造する態様では好ましい。塩としては、無機又は有機酸で形成された酸付加塩が含まれる。無機酸の例として、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸など)、硫酸、リン酸などが含まれ、またこれらに限定されない。また、有機酸の例には、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、アルキルスルホン酸(メタンスルホン酸など)、アリルスルホン酸(ベンゼンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸など)などがあげられ、またこれらに限定されない。これらのうち好ましくは、塩酸塩、酢酸塩である。
【0135】
なお、前記一般式(1)で表される化合物を、水和物、溶媒和物もしくは塩の形態で添加してなるフィルムでは、フィルム中、該化合物がもはや水和物、溶媒和物もしくは塩の形態ではない場合もある。その場合であっても、水和物等の形態の化合物を用いた場合に得られる製膜安定性は、結果物としてのフィルム中の前記一般式(1)で表される化合物の含率の安定化、フィルムの光学特性のバラツキ低減及び光学特性の環境湿度依存性の低減に寄与する。
【0136】
塩はまた、親化合物に存在する酸性部分が、金属イオン(たとえばアルカリ金属塩、たとえばナトリウム又はカリウム塩、アルカリ土類金属塩、たとえばカルシウム又はマグネシウム塩、アンモニウム塩アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオンなど)により置換されるか、あるいは有機塩基(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペリジン、など)と調整されたときに形成される塩があげられ、またこれらに限定されない。これらのうち好ましくはナトリウム塩、カリウム塩である。
【0137】
溶媒和物が含む溶媒の例には、一般的な有機溶剤のいずれも含まれる。具体的には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノールなど)、エステル(例えば、酢酸エチルなど)、炭化水素(例えば、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなど)、エーテル(例えば、テトラヒドロフランなど)、ニトリル(例えば、アセトニトリルなど)、ケトン(例えば、アセトン、2−ブタノンなど)などがあげられる。好ましくは、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノールなど)の溶媒和物であり、より好ましくは、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。これらの溶媒は、前記化合物の合成時に用いられる反応溶媒であっても、合成後の晶析精製の際に用いられる溶媒であってもよく、又はこれらの混合であってもよい。
また、二種類以上の溶媒を同時に含んでもよいし、水と溶媒を含む形(例えば、水とアルコール(たとえば、メタノール、エタノール、t-ブタノールなど)など)であってもよい。
【0138】
本発明に係わる化合物は、該化合物と水や溶媒とがある範囲の比率で存在し、一定の温度、湿度、圧力の範囲では含水率/溶媒の比率は変化しない水和物/溶媒和物を形成してもよい。このような水和物及び溶媒和物は、ある特定の結晶構造を有し、粉末X線回折(XRD)にて特定の回折パターンを示す。一方、含水率/溶媒の比率一定となる範囲を超えて、高温や減圧の環境下におくと、水分や溶媒が失われ、非晶質(アモルファス)へと変化することがある。ここで非晶質(アモルファス)とは、規則的な分子の配列である結晶構造をもたないものであり、例えば、融点以上に加熱して融解させて水、溶媒を留去し、急冷することで得られる。こうして得られた非晶質は、環境湿度に応じて含水することがあり、含水率は環境湿度によって変化する。しかし、含水アモルファスにおいても、粉末X線回折の回折パターンは現れないことから、本発明に係わる化合物と水とがある範囲の比率で存在し、一定の温度、湿度、圧力の範囲では含水率が変化しない水和物とは区別される。
本発明においては、非晶質(アモルファス)の形態では、含水率が環境湿度によって変化するため、結晶の形態(無水物、水和物、及び/又は溶媒和物)で用いることがより好ましい。
ここで、結晶とは、三次元的に構成原子が規則正しく配列した結晶構造を有する固体のことをいい、無水物、水和物、及び/又は溶媒和物が含まれ、一般に、粉末X線回折である特定の結晶構造、結晶面に応じた回折角にピークを持つ。本明細書中では、これを、結晶粉末X線回折で回折パターンを示す、と記載している。また、非晶質(アモルファス)であれば、一般に、粉末X線回折でブロードな単一ピーク(ハロー)を持つが、これを、本明細書中では、粉末X線回折の回折パターンを示さない、と記載している。また、非晶質と結晶は、粉末X線回折の他、熱分析などの分析方法によって区別することができる。
【0139】
水和物、溶媒和物及びこれらの混合溶媒和物の形態における、前記一般式(1)で表される化合物と、水、溶媒及びこれらの混合溶媒との比率については特に制限はない。一般に水和物や溶媒和物は、化合物1分子あたり整数倍の水及び/又は溶媒分子が取り込まれるが、結晶の間隙にも取り込まれることがあるため整数倍とならない場合もある。
水和物や溶媒和物における、化合物1分子あたりの、水及び/又は溶媒分子の比率は、いずれも本発明の範疇であるが、化合物1分子あたりの及び/又は溶媒分子は、0.25モル〜4モルであることが好ましい。
これを重量に換算すると、化合物の分子量に依存するが、例えば、水和物の場合、含水率は、0.8〜25%が好ましい。
含水率が1%以上の水和物であると、特にフィルムの光学特性のバラツキが軽減されるので好ましく、含水率が2%以上であるのがより好ましい。含水率の上限値は、(有機溶剤への)溶解性や製造工程への負荷の観点から、15%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。溶媒和物の含溶媒率についても同様に考えることができる。
水和物は、前記化合物を水により晶析することで、製造することができる。又は有機溶媒の多くは微量の水を含んでいるので、有機溶媒により晶析しても、含水率が前記範囲である水和物が得られる。また、必要に応じて、有機溶媒に必要量の水を添加して、晶析することで、含水率が前記範囲である水和物を得ることもできる。
【0140】
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物は、分子量が200〜2000であることが好ましく、200〜1000であることがより好ましく、200〜600であることが特に好ましい。
【0141】
一般式(1)で表される化合物の製造方法は、特に限定はなく、種々の方法により製造することができる。以下に、一般式(1)で表される化合物の製造方法の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(1)の化合物は、例えば、下記スキーム1−1の方法で合成することができる。即ち、一般式(1a)の化合物と一般式(1b)の化合物とを、無溶媒又は有機溶剤中にて反応させることにより合成することができる。一般式(1a)及び一般式(1b)中の各基の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義である。また、Zは脱離基を表し、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(好ましくはC1〜C4のアルコキシ基、より好ましくは、C1〜C2のアルコキシ基、最も好ましくはC1のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくはC1〜C8のアリールオキシ基)、ヘテロ環基、アシルオキシ基(好ましくはC2〜C8のアシルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくはC1〜C4のアルキルスルホニルオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基などを好ましく用いることができる。これらのうち特に好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基である。
【0142】
一般式(1a)及び一般式(1b)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン)、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン)、ニトリル(例、アセトニトリル)あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。これらのうち、炭化水素、アルコール及びアミドが好ましく、トルエン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンが特に好ましい。また、トルエン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンの混合溶媒も特に好適な例である。また、有機溶剤と併用して水を使用することも好ましい。
【0143】
一般式(1a)の化合物と一般式(1b)の化合物の反応においては、塩基存在下で反応させることも好ましい。塩基としては、無機塩基(例、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)と有機塩基(例、ピリジン、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム、t−ブトキシナトリウム)のいずれも使用でき、Zの種類に応じて適宜選択することができる。Zがアルコキシ基である場合には無機塩基が好ましく、ナトリウムメトキシドが特に好ましい。用いる塩基の使用量は、一般式(1b)で表される化合物に対して0.5〜10当量の範囲であることが好ましく、0.5〜6当量の範囲であることが特に好ましい。Zがハロゲン原子である場合には、無機塩基、有機塩基ともに好ましく用いることができ、例えば、ピリジン、炭酸水素ナトリウムなどがより好ましい。
【0144】
反応温度は、通常、−20℃〜用いる溶媒の沸点の範囲とするのが好ましく、室温〜溶媒の沸点の範囲にするが好ましい。
反応時間は、通常10分〜3日間であり、好ましくは1時間〜1日間である。反応を窒素雰囲気下、あるいは減圧下で行ってもよい。特に脱離基Zがアルコキシ基、アリールオキシ基の場合は減圧下で行うことも好ましい。
【0145】
【化62】

【0146】
一般式(1)で表される化合物の製造方法の他の例は、下記スキーム1−2で示される方法である。即ち、一般式(1c)の化合物と一般式(1d)の化合物とを無溶媒又は有機溶剤中にて塩基の非存在下で、あるいは塩基存在下で反応させることにより合成することができる。
一般式(1c)及び一般式(1d)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン)、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン)、ニトリル(例、アセトニトリル)あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコール及びアミドが好ましく、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンが特に好ましい。また、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンの混合溶媒も特に好適な例である。
【0147】
塩基を用いる場合、塩基としては、無機塩基(例、炭酸カリウム)と有機塩基(例、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)のいずれも使用できる。無機塩基が好ましく、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。用いる塩基の使用量は、一般式(1c)で表される化合物に対して0.5〜10当量の範囲であることが好ましく、1〜5当量の範囲であることが特に好ましい。
【0148】
反応温度は、通常、−20℃〜用いる溶媒の沸点の範囲であるのが好ましく、室温〜溶媒の沸点の範囲であるのがより好ましい。
反応時間は、通常、10分〜3日間であり、好ましくは1時間〜1日間である。反応を窒素雰囲気下、あるいは減圧下で行ってもよい。
【0149】
【化63】

【0150】
一般式(1c)及び一般式(1d)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(1)中のそれぞれと同義である。Z1は脱離基を表し、ハロゲン原子などを好ましく用いることができる。
【0151】
また、一般式(2)の一例である一般式(2)’の化合物は、例えば、下記スキーム2−1の方法で合成することができる。即ち、一般式(2a)の化合物と、一般式(1b)の化合物とを無溶媒又は有機溶剤中にて、塩基存在下で反応させることにより合成することができる。一般式(2a)、及び一般式(1b)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。使用可能な有機溶媒及び塩基の例は、前記スキーム1−1及び1−2の反応と同様であり、反応温度及び反応時間についても、上記スキームの反応と同様である。
【0152】
【化64】

【0153】
一般式(2a)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(2)中のそれぞれと同義である。また、一般式(1b)について前述したものと同様である。
【0154】
また、一般式(6)の一例である下記一般式(6)’の化合物は、例えば、下記スキーム2の方法で合成することができる。即ち、一般式(6a)の化合物と、一般式(6b)の化合物とを、無溶媒又は有機溶剤中にて、反応させることにより合成することができる。一般式(6a)及び一般式(6b)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。一般式(6a)の化合物と一般式(6b)の化合物との反応においては、塩基存在下で反応させることも好ましい。使用可能な有機溶媒及び塩基の例は、前記スキーム1−1の反応と同様であり、反応温度及び反応時間についても、上記スキームの反応と同様である。
【0155】
【化65】

【0156】
一般式(6a)及び一般式(6b)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(6)中のそれぞれと同義である。Arはアリール基である。また、Zの定義は、一般式(1b)中のそれと同義である。脱離基Zとして好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基であり、より好ましくはアルコキシ基であり、さらに好ましくはC1〜C4のアルコキシ基、より好ましくは、C1〜C2のアルコキシ基、最も好ましくはC1のアルコキシ基である。
【0157】
また、前記一般式(7−1)の化合物は、例えば、下記スキーム3の方法で合成することができる。即ち、一般式(7a)の化合物と、一般式(7b)の化合物とを、無溶媒又は有機溶剤中にて、反応させることにより合成することができる。一般式(7a)及び一般式(7b)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。一般式(7a)の化合物と一般式(7b)の化合物の反応においては、塩基存在下で反応させることも好ましい。使用可能な有機溶媒及び塩基の例は、前記スキーム1−1の反応と同様であり、反応温度及び反応時間についても、上記スキームの反応と同様である。
【0158】
【化66】

【0159】
一般式(7a)及び一般式(7b)中、各基の定義はそれぞれ、一般式(7−1)中のそれぞれと同義である。また、Zの定義は、一般式(1b)中のそれと同義である。Zとして好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基であり、より好ましくは、アルコキシ基であり、さらに好ましくはC1〜C4のアルコキシ基、より好ましくは、C1〜C2のアルコキシ基、最も好ましくはC1のアルコキシ基である。
【0160】
出発物質である一般式(7a)で表されるジアミノピリミジン化合物は、市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。また、市販の原料を用いて、一般式(7a)の化合物を合成し、そのまま単離することなく本反応を実施することも好ましい。
【0161】
上記スキーム1−1及び1−2、並びにスキーム2及び3の合成例において、原料として使用可能な市販の化合物の例には、2,4,6-トリクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2,4−ジアミノ−6−クロロピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノピリジン等が含まれ、これらの原料を用い、求核置換反応、縮合反応等を組み合わせて、本発明の化合物を合成することができる。
また、一般式(1)の化合物及びその前駆体は、環化反応により、直接ヘテロ環(ピリミジン環、ピリジン環)を構築して合成することも可能であり、種々の公知の方法を用いることができる。
【0162】
本発明の化合物の単離方法は、一般的に用いられる方法はいずれも用いることができるが、晶析により結晶として取り出すことが好ましい。晶析に使用する溶剤としては、一般的な有機溶剤又は水を用いることができる。水系から晶析することで水和物の形態で単離することも好ましい。
【0163】
(1−2)高分子
本発明の高分子フィルムは、主成分として、種々の高分子材料から選択される1種又は2種以上の高分子を含有する。用いる高分子については特に制限はない。使用可能な高分子の例には、水酸基を有する高分子が含まれる。水酸基を含有する高分子としては、ポリビニルアルコールとその変性体やセルロースアシレート樹脂が挙げられる。なお、前記の水酸基を含有する高分子にはその水酸基が他の置換基によって置換された誘導体も前記水酸基を有する高分子の例に含まれ、水酸基の全てがアシル基で置換されたセルロースアシレート樹脂も、前記水酸基を有する高分子の例に含まれる。
【0164】
本発明のフィルムの一態様は、前記水酸基を有する高分子として、セルロースアシレート樹脂を含む。セルロースには、β−1,4結合しているグルコース単位当り、2位、3位及び6位に遊離の水酸基がある。本態様のフィルムは、セルロースアシレート樹脂を主成分として含有することが好ましい。ここで「主成分として含有する」とは、セルロースアシレートフィルムの材料として用いられているセルロースアシレート樹脂が1種である場合は、当該セルロースアシレート樹脂をいい、複数種である場合は、最も高い割合で含有されるセルロースアシレート樹脂をいう。
【0165】
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレート樹脂でも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0166】
セルロースアシレート樹脂のアシル基の種類については、特に制限はないが、アセチル基、プロピオニル基又はブチリル基であることが好ましく、アセチル基であることがより好ましい。
具体的には、下記式(i)〜(iii)を同時に満たすセルロースアシレートを含有することが好ましい。
式(i) 2.0≦A+B≦3
式(ii) 1.0≦A≦3
式(iii) 0≦B≦1.0
上記式(i)〜式(iii)中、Aはアセチル基の置換度、Bはプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。
【0167】
前記セルロースアシレート樹脂のアシル置換度は、下記式(iv)〜(vi)を同時に満たすことがより好ましい。
式(iv) 2.0≦A+B≦3
式(v) 1.5≦A≦3
式(vi) B=0
上記式(iv)〜式(vi)中、Aはアセチル基の置換度、Bはプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。
【0168】
セルロースアシレート樹脂中のアセチル置換度、プロピオニル置換度及びブチリル置換度はそれぞれ、セルロースの構成単位((β)1,4−グリコシド結合しているグルコース)に存在している、3つの水酸基がアセチル化ならびにプロピオニル化及び/又はブチリル化されている割合をそれぞれ意味する。なお、本明細書では、セルロースアシレート樹脂のアセチル基、プロピオニル基、及びブチリル基の置換度は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、「ASTM D817−91」に準じて実施する。
【0169】
前記セルロースアシレート樹脂は、350〜800の重合度を有することが好ましく、370〜600の重合度を有することがさらに好ましい。また本発明に用いるセルロースアシレート樹脂は、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
【0170】
前記セルロースアシレート樹脂は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法としては、以下の通りである。綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基並びにプロピオニル基及び/又はブチリル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化し、目的のセルロースアシレート樹脂を合成することができる。
【0171】
(1−3) 一般式(1)で表される化合物の添加量
本発明のフィルム中、主成分である高分子(例えば、水酸基を有する高分子)100質量部に対する、前記一般式(1)で表される化合物の添加量は、30質量部以下とすることが好ましく、0.01〜30質量部とすることがより好ましく、0.01〜20質量部とすることが特に好ましく、0.1〜15質量部とすることがさらに好ましい。
また、本発明のフィルムは、主成分である高分子100質量部に対する、添加剤(前記一般式(1)で表される化合物とともに、所望により他の添加剤を含む)の合計含有量が55質量%以下であることが、好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
【0172】
前記一般式(1)で表される化合物は1種類のみを用いても2種以上用いてもよい。また、前記スキーム2−1又は3−1にしたがって製造する場合に、一般式(1b)又は一般式(7b)で表される化合物を2種以上用いて得られる反応混合物も好ましく用いることができる。
このように一般式(1)で表される化合物を2種以上用いる場合には、一般式(1)で表される化合物の合計の添加量が、前述の好ましい添加量の範囲となることが好ましい。
【0173】
また、前記一般式(1)で表される化合物は、水和物や溶媒和物として得られることがあるが、水和物や溶媒和物としてそのまま用いてもよいし、水や溶媒を除いてからもちいてもよい。一旦、水和物や溶媒和物として得られた結晶から水や溶媒を除くと、吸湿などにより、含率が変化する場合があるので、水和物や溶媒和物として得られた結晶をそのまま用いる方がより好ましい。
【0174】
(1−4) 他の添加剤
本発明の高分子フィルムは、種々の目的により、前記一般式(1)で表される化合物以外の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は、当該高分子フィルムを溶液製膜法で製造する場合は、高分子樹脂ドープ、例えばセルロースアシレートドープ中に添加することができる。添加のタイミングについては特に制限はない。添加剤は、高分子(例えば、セルロースアシレート)と相溶(溶液製膜法ではセルロースアシレートドープ中に可溶)な剤から選択する。添加剤は、高分子フィルムの光学特性の調整及びその他の特性の調整等を目的として添加される。
【0175】
本発明の高分子フィルムは、下記一般式(IIIe)、(IVe)及び(Ve)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種をさらに含有していてもよい。これらの式中の各記号は、上記一般式中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲及び具体例も同様である。Arはそれぞれアリール基を表し、一般式(5−1)中のAr1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0176】
【化67】

【0177】
これらの化合物は、本発明の一般式(6)の化合物を合成する際に、副生成物として得られることがある。
【0178】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物に対する、化合物(IIIe)、(IVe)及び(Ve)の添加量の比率としては、5質量%以下とすることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましく、2質量%以下とすることが特に好ましい。前記化合物(IIIe)、(IVe)及び(Ve)の添加量の比率の下限値は、例えば、0.01質量%以上である。勿論、上記化合物(IIIe)、(IVe)及び(Ve)を含まない態様であってもよい。
【0179】
本発明のフィルム中、化合物(IIIe)、(IVe)又は(Ve)の添加量は、5質量部以下とすることが好ましく、2.5質量部以下とすることがより好ましく、1.5質量部以下とすることが特に好ましい。
【0180】
以下に、一般式(IIIe)、(IVe)又は(Ve)で表される化合物の具体例、及び本発明の化合物との組み合わせの具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0181】
【化68】

【0182】
【表1】

【0183】
(可塑剤)
本発明の高分子フィルムは、可塑剤を含有しているのが、製膜性などが改善されるので好ましい。可塑剤として、糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される糖類系可塑剤、又はジカルボン酸類とジオール類との重縮合エステル及びその誘導体からなるオリゴマー類から選択されるオリゴマー系可塑剤を使用すると、高分子フィルムの環境湿度耐性が改善されるので好ましい。具体的には、湿度に依存したRthの変動を軽減することができる。糖類系可塑剤及びオリゴマー系可塑剤の双方を併用すると、湿度に依存したRthの変動の軽減効果が高くなる。
【0184】
(糖類系可塑剤)
上記した通り、本発明の高分子フィルムは、糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される少なくとも1種の化合物を、含有しているのが好ましい。中でも、1〜10量体の糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される化合物は、可塑剤として好ましい。その例には、国際公開を2007/125764号パンフレットの[0042]〜[0065]に記載のグルコース等の糖のOHの一部又は全部の水素原子がアシル基に置換された糖誘導体が含まれる。糖類系可塑剤の添加量は、主成分である高分子(例えばセルロースアシレート)に対して、0.1質量%以上20質量%未満であるのが好ましく、0.1質量%以上10質量%未満であるのがより好ましく、0.1質量%以上7質量%未満であるのがさらに好ましい。
【0185】
(オリゴマー系可塑剤)
上記した通り、本発明の高分子フィルムは、オリゴマー類から選択されるオリゴマー系可塑剤を含有しているのが好ましい。オリゴマー系可塑剤の好ましい例には、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合エステル及びその誘導体(以下、「重縮合エステル系可塑剤」という場合がある)、並びにメチルアクリレート(MA)のオリゴマー及びその誘導体(以下、「MAオリゴマー系可塑剤」という場合がある)が含まれる。
【0186】
前記重縮合エステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合エステルである。ジカルボン酸成分は、1種のジカルボン酸のみからなっていても、又は2種以上のジカルボン酸の混合物であってもよい。中でも、ジカルボン酸成分として、少なくとも1種の芳香族性ジカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分を用いるのが好ましい。一方、ジオール成分についても1種のジオール成分のみからなっていても、又は2種以上のジオールの混合物であってもよい。中でも、ジオール成分として、エチレングリコール及び/又は平均炭素原子数が2.0より大きく3.0以下の脂肪族ジオールを用いるのが好ましい。
【0187】
前記ジカルボン酸成分中の前記芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との比率は、芳香族ジカルボン酸が5〜70モル%であることが好ましい。上記範囲であると、フィルムの光学特性の環境湿度依存性を低減できるとともに、製膜過程でブリードアウトの発生を抑制できる。前記ジカルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸は、より好ましくは10〜60モル%であり、20〜50モル%であることがさらに好ましい。
芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等が含まれ、フタル酸、及びテレフタル酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が含まれ、中でも、コハク酸、及びアジピン酸が好ましい。
【0188】
前記ジオール成分は、エチレングリコール及び/又は平均炭素原子数が2.0より大きく3.0以下のジオールである。前記ジオール成分中、エチレングリコールが50モル%であることが好ましく、75モル%であることがより好ましい。脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
【0189】
前記ジオール成分は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールであるのが好ましく、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールである。
【0190】
また、前記重縮合エステル系可塑剤としては、前記重縮合エステルの末端のOHがモノカルボン酸とエステルを形成している当該重縮合エステルの誘導体であるのが好ましい。両末端OH基の封止に用いるモノカルボン酸類としては、脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。重縮合エステルの両末端に使用するモノカルボン酸類の炭素原子数が3以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障の発生を低減することが可能である。また、封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。前記重縮合エステルの両末端は酢酸又はプロピオン酸による封止されているのが好ましく、酢酸封止により両末端がアセチルエステル残基となっている重縮合エステルの誘導体が特に好ましい。
【0191】
前記重縮合エステル及びその誘導体は、数平均分子量は700〜2000程度のオリゴマーであることが好ましく、800〜1500程度がより好ましく、900〜1200程度がさらに好ましい。なお、重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。
【0192】
以下の表1に、重縮合エステル系可塑剤の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0193】
【表2】

【0194】
前記重縮合エステルは、常法により、ジカルボン酸成分とジオール成分とのポリエステル化反応もしくはエステル交換反応による熱溶融縮合法、又はジカルボン酸成分の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係る重縮合エステルについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号の各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0195】
前記重縮合エステル系可塑剤の添加量は、主成分であるセルロースアシレートの量に対し0.1〜70質量%であることが好ましく、1〜65質量%であることがさらに好ましく、3〜60質量%であることがよりさらに好ましい。
【0196】
なお、重縮合エステル系可塑剤が含有する原料及び副生成物、具体的には、脂肪族ジオール、ジカルボン酸エステル、及びジオールエステル等、のフィルム中の含有量は、1%未満が好ましく、0.5%未満がより好ましい。ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、アジピン酸ジ(ヒドロキシエチル)、コハク酸ジ(ヒドロキシエチル)等が挙げられる。ジオールエステルとしては、エチレンジアセテート、プロピレンジアセテート等が挙げられる。
【0197】
本発明の高分子フィルムに用いられる可塑剤としては、メチルメタクリレート(MA)オリゴマー系可塑剤も好ましい。MAオリゴマー系可塑剤と前記糖類系可塑剤との併用も好ましい。併用の態様では、MAオリゴマー系可塑剤と糖類型可塑剤とを質量比で1:2〜1:5の割合で使用するのが好ましく、1:3〜1:4の割合で使用するのがより好ましい。MAオリゴマー系可塑剤の一例は、下記繰り返し単位を含むオリゴマーである。
【0198】
【化69】

【0199】
重量平均分子量は、500〜2000程度が好ましく、700〜1500程度がより好ましく、800〜1200程度であるのがさらに好ましい。
【0200】
また、MAオリゴマー系可塑剤は、MA単独のオリゴマーの他、MAから誘導体される上記繰り返し単位とともに、他のモノマーから誘導される繰り返し単位の少なくとも1種を有するオリゴマーであってもよい。前記他のモノマーの例には、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、ならびに上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルにかえたモノマーが含まれる。また、スチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレンなどの芳香環を有するモノマーを利用することもできる。前記他のモノマーとしては、芳香環を持たない、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーが好ましい。
また、MAオリゴマー系可塑剤が、2種以上の繰り返し単位を有するオリゴマーである場合は、X(親水基を有するモノマー成分)及びY(親水基を持たないモノマー成分)からなり、X:Y(モル比)が1:1〜1:99のオリゴマーが好ましい。
【0201】
これらのMA系オリゴマーは、特開2003−12859号公報に記載されている方法を参考にして合成することができる。
【0202】
(高分子可塑剤)
本発明の高分子フィルムは、前述した糖類系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤、及びMMAオリゴマー系可塑剤とともに、又はそれに代えて、他の高分子系可塑剤を含有していてもよい。他の高分子系可塑剤としては、ポリエステルポリウレタン系可塑剤、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、酢酸ビニル、等が挙げられる。
【0203】
(少なくとも2つの芳香環を有する化合物)
本発明の高分子フィルムは、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、少なくとも2つの芳香環を有する化合物を含有していてもよい。当該化合物は、高分子フィルムの光学特性を調整する作用がある。例えば、本発明の高分子フィルムを光学補償フィルムとして用いる場合、光学特性、特にReを好ましい値に制御するには、延伸が有効である。Reの上昇はフィルム面内の屈折率異方性を大きくすることが必要であり、一つの方法が延伸による主鎖配向の向上である。また、屈折率異方性の大きな化合物を添加剤として用いることで、さらにフィルムの屈折率異方性を上昇することが可能である。例えば上記の2つ以上の芳香環を有する化合物は、延伸によりポリマー主鎖が並び、それに伴い該化合物の配向性も向上し、所望の光学特性に制御することが容易となる。
【0204】
少なくとも2つの芳香族環を有する化合物としては、例えば特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2002−363343号公報に記載の棒状化合物、特開2005−134884及び特開2007−119737号公報に記載の液晶性化合物等が挙げられる。より好ましくは、上記トリアジン化合物又は棒状化合物である。少なくとも2つの芳香族環を有する化合物は2種以上を併用して用いることもできる。なお、少なくとも2つの芳香環を有する化合物の分子量は、300〜1200程度であることが好ましく、400〜1000であることがより好ましい。
【0205】
少なくとも2つの芳香族環を有する化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂に対して質量比で0.05%〜10%が好ましく、0.5%〜8%がより好ましく、1%〜5%がさらに好ましい。また、前記2つの芳香族環を有する化合物は、本発明に用いられる前記一般式(1)又は(2)で表される化合物を兼ねていてもよい。一方、前記2つの芳香族環を有する化合物が、1,3,5−トリアジン環構造を有するものの前記一般式(1)又は(2)を満たさない場合は、湿度依存性改良の観点から、該2つの芳香族環を有する化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂に対して質量比で0.05%〜10%が好ましく、0.5%〜8%がより好ましく、1%〜5%が特に好ましい。
【0206】
(光学異方性調整剤)
また、本発明の高分子フィルムは、光学異方性調整剤を含有していてもよい。例えば、特開2006−30937号公報の23〜72頁に記載の「Rthを低減させる化合物」が例に挙げられる。
【0207】
(マット剤微粒子)
前記高分子フィルムには、マット剤を添加してもよい。マット剤として使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0208】
2次平均粒子径の小さな粒子を有する高分子フィルムの製造方法には、微粒子の分散液を用いることができる。例えば、セルロースアシレートフィルムを例に挙げると、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ調製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集し難い点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。いずれの方法を利用してもよいし、またこれらの方法に限定されるものでもない。
上記調製方法に使用される溶剤は、低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースアシレートの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0209】
(低分子可塑剤、劣化防止剤、剥離剤)
前記高分子フィルムには、各調製工程において用途に応じた、上述した以外の種々の添加剤(例えば、低分子可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は、ドープ調製工程においていずれのタイミングで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後のタイミングで添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、高分子フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0210】
(1−5) 高分子フィルムの製造方法
本発明の高分子フィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)によって製膜されたフィルムであるのが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマーを有機溶媒に溶解して調製されたドープを、金属等からなる支持体の表面にキャストして、乾燥して製膜する。その後、膜を支持体面から剥ぎ取り、延伸処理することで製造される。
ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の記載を参考にすることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等に記載の例を参考にすることができる。
【0211】
(1−6) 高分子フィルムの諸特性
(Re及びRth)
本発明の高分子フィルムの光学特性の好ましい範囲は、用途に応じて変動するであろう。VAモード液晶表示装置に利用される態様では、Re(589)が30nm〜200nmであり、及びRth(589)が70nm〜400nmであるのが好ましく;Re(589)が30nm〜150nmであり、及びRth(589)が100nm〜300nmであるのがより好ましい。さらには、Re(589)が40nm〜100nmであり、及びRth(589)が100nm〜250nmであることがさらに好ましい。
なお、特に断らない限り、フィルムのRe及びRthは、フィルムを温度25℃・相対湿度60%の環境下に十分な時間(2時間以上であって、例えば12時間、24時間)放置した後に、当該温度及び相対湿度で測定される値をいうものとする。
【0212】
(Reの湿度依存性及びRthの湿度依存性)
本発明の高分子フィルムは、湿度に依存したRe及び/又はRthの変動が小さいという特徴がある。具体的には、フィルムを25℃・相対湿度10%にて2時間調湿したときのRe、Rth(それぞれRe[25℃、RH10%]、Rth[25℃、RH10%]とも言う)と、25℃・相対湿度80%にて2時間調湿したときのRe、Rth(それぞれRe[25℃、RH80%]、Rth[25℃、RH80%]とも言う)の変動が小さい。本発明のフィルムは、光学特性の湿度依存性が軽減されているので、湿度が変化する環境下においてもRe及びRthの変動が抑制され、前記好ましい範囲のレターデーションを発揮することができる。
【0213】
本発明の高分子フィルムは、Reの湿度依存性(ΔRe=|Re[25℃、RH10%]−Re[25℃、RH80%]|)が、10nm以下であることが好ましく、9nm以下であることがさらに好ましく、8nm以下であることが特に好ましい。
本発明の高分子フィルムはRthの湿度依存性(ΔRth=|Rth[25℃、RH10%]−Rth[25℃、RH80%]|)が、21nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがよりさらに好ましく、19nm以下であることが特に好ましい。
【0214】
(膜厚)
本発明の高分子フィルムを液晶表示装置の部材等、薄型化が望まれる装置の部材として利用する態様では、膜厚は薄いほうが好ましいが、一方、膜厚が薄すぎるとその用途に要求される光学特性を達成できない。液晶表示装置の光学補償フィルムや偏光板保護フィルムとして利用する態様では、膜厚は20〜80μm程度であるのが好ましい。より好ましくは、25〜70μm程度であり、さらに好ましくは30〜60μm程度である。
【0215】
3. 高分子フィルムの用途
本発明の高分子フィルムは、種々の用途に用いることができる。例えば、液晶表示装置の位相差フィルム(以下、光学補償フィルムとも言う)、偏光板の保護フィルム等に利用することができる。
(位相差フィルム)
本発明の高分子フィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。なお、「位相差フィルム、又は光学補償フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、光学補償フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
【0216】
また、所望のRe及びRthに調整するために、本発明の高分子フィルムを複数枚積層して、又は本発明の高分子フィルムと他のフィルムとを積層して用いることもできる。フィルムの積層は、粘着剤や接着剤を用いて実施することができる。
【0217】
(偏光板)
本発明の高分子フィルムは、偏光板(本発明の偏光板)の保護フィルムとして用いることができる。本発明の偏光板の一例は、偏光膜とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明フィルム)を有し、本発明の高分子フィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして有する。本発明の高分子フィルムが支持体として利用され、その表面に液晶組成物からなる光学異方性層を有する態様について、偏光板の保護フィルムとして利用する場合は、支持体である本発明の高分子フィルムの裏面(光学異方性層が形成されていない側の面)を偏光膜の表面に貼り合せるのが好ましい。
本発明の高分子フィルムを前記偏光板保護フィルムとして用いる場合、本発明の高分子フィルムには前記表面処理(特開平6−94915号公報、同6−118232号公報にも記載)を施して親水化しておくことが好ましく、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、又は、アルカリ鹸化処理などを施すことが好ましい。特に、本発明の高分子フィルムがセルロースアシレートフィルムの場合には、前記表面処理としてはアルカリ鹸化処理が最も好ましく用いられる。
【0218】
また、前記偏光膜としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸した偏光膜を用いる場合、接着剤を用いて偏光膜の両面に本発明の高分子フィルムの表面処理面を直接貼り合わせることができる。本発明の製造方法においては、このように前記高分子フィルムが偏光膜と直接貼合されていることが好ましい。前記接着剤としては、ポリビニルアルコール又はポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例えば、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。
【0219】
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明の高分子フィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明の高分子フィルムは、液晶表示装置における偏光膜と液晶層(液晶セル)の間に配置される保護フィルムとして、特に有用である。また、前記偏光膜を挟んで本発明の高分子フィルムの反対側に配置される保護フィルムには、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層などを設けることができ、特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムとして好ましく用いられる。
【0220】
(液晶表示装置)
本発明の高分子フィルム、ならびそれを利用した光学補償フィルム及び偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。以下にこれらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらのモードのうち、本発明の高分子フィルム、並びにそれを利用した光学補償フィルム及び偏光板は、特にVAモードの液晶表示装置に好ましく用いられる。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型及び半透過型のいずれでもよい。
【0221】
図1に、本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図を示す。なお、図1中、上を観察者(表示面)側、下をバックライト側とする。
図1のVAモード液晶表示装置は、液晶セルLC(上側基板1、下側基板3、及び液晶層5、からなる)と、液晶セルLCを挟持して配置される一対の上側偏光板P1及び下側偏光板P2とを有する。なお、偏光膜は、双方の表面に保護フィルムを有する偏光板として液晶表示装置に組み込まれるのが一般的であるが、図1では、偏光膜の外側保護フィルムは省略した。偏光板P1及びP2は、それぞれ偏光膜8a及び8bを有し、その吸収軸9a及び9bを互いに直交方向にして配置されている。液晶セルLCはVAモードの液晶セルであり、黒表示時には、図1に示す通り、液晶層5はホメオトロピック配向になる。上側基板1と下側基板3は、それぞれ内面に、配向膜(図示せず)と電極層(図示せず)を有し、さらに観察者側の基板1の内面には、カラーフィルタ層(図示せず)を有する。
【0222】
上側基板1と上側偏光膜8aとの間、及び下側基板3と下側偏光膜8bとの間には、位相差膜10a及び10bがそれぞれ配置されている。位相差膜10a及び10bは、本発明の高分子フィルムである。位相差膜10a及び10bは、その面内遅相軸11a及び11bを、上側偏光膜8a及び下側偏光膜8bのそれぞれの吸収軸9a及び9bと直交にして配置される。即ち、位相差膜10a及び10bは、それぞれの遅相軸を直交にして配置される。本発明の高分子フィルムからなる位相差膜10a及び10bは、黒表示時の斜め方向に生じる光漏れ及びカラーシフトの軽減に寄与する。
【0223】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明の高分子フィルムは、所望により、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへ適用してもよい。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の高分子フィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか或いは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明の高分子フィルムにおいても好ましく用いることができる。
【実施例】
【0224】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0225】
実施例1.一般式(1)で表される化合物の合成例
[合成例1−1:化合物(1−2)の合成−1]
2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンは、Aust.J.Chem.1984年、37巻、1195−1201ページに記載の方法に準じて合成した。
メタノール50mL、ナトリウムメトキシド/28%メタノール溶液51mL中にグアニジン塩酸塩23.8gを加え、室温で30分攪拌した。その後、析出する塩をろ別し、減圧濃縮し、グアニジンフリー体溶液を得た。これに、3-アミノクロトノニトリル16.4g、1−ブタノール60mLを加え、反応溶液を素気流下、10時間110℃で加熱攪拌した。反応終了後、析出する塩を熱時ろ過にてろ別したのちに、アセトン100mLを添加し、さらに氷冷下で30分攪拌したのちに、粗生成物をろ取した。得られた粗生成物をアセトンで再結晶し、2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジン10.5gを得た。
2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジン10g(81mmol)のN−エチルピロリドン100mL溶液に、安息香酸メチル23g(169mmol)とナトリウムメトキシド22g(407mmol)とを加え、40℃で2時間加熱攪拌した。反応系の温度を室温に戻し、反応溶液を1N塩酸水溶液に注ぎ固体を濾取した。得られた粗生成物を2−プロパノールで再結晶し、化合物(1−2)を得た。
得られた化合物(1−2)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.50(3H,s)
7.45−7.70(6H,m)
7.90(1H,s)
7.95−8.05(4H,m)
10.88(1H,s)
11.10(1H,s)
【0226】
[合成例1−2:化合物(1−2)の合成−2]
2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジン2g(16mmol)と安息香酸フェニルとをキシレン中で混合し、6時間加熱還流した。HPLCより、化合物(1−2)が60%生成していることを確認した。
【0227】
[合成例2:化合物(1−8)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジンに変更した以外は合成例1−1と同様に合成を行った。反応溶液を酢酸水溶液に注ぎ、pH6に調整して析出した固体を濾取し、アセトニトリル、メタノールで加熱洗浄することで、化合物(1−8)を得た。
得られた化合物(1−8)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
6.88(1H,s)
7.48−7.68(4H,m)
7.92(2H,d)
8.01(2H,d)
10.36(1H,s)
11.64(1H,s)
12.11(1H,s)
【0228】
[合成例3−1:化合物(1−9)の合成−1]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから6−メトキシ−2,4−ジアミノピリミジンに変更し、下記のように合成を行った以外は合成例1−1と同様に合成した。
2,4−ジアミノ−6−メトキシピリミジンは、J.Bioorg.Med.Chem. 1998年、6巻、1057−1067ページに記載の方法に準じて合成し、単離せず、次工程を実施した。
メタノール20mL、トルエン80mL中に窒素気流下、2,4−ジアミノ−6−クロロピリミジン21.9g(150mmol)を加え、室温にてナトリウムメトキシド/28%メタノール溶液153mLを滴下した。その後、80度の水浴下で、Dean−starkで溶媒を留去しながら加熱還流した。途中トルエン60mLを追添して、加熱還流を続けた。この反応液を50℃まで冷却後に、N−エチルピロリドン60mL、安息香酸メチル53g(485mol)混合溶液を添加し、45℃で3時間加熱攪拌を続けた。反応系の温度を室温に戻し、トルエン200mL、水200mL,酢酸43mLの混合液中に添加した。有機層を分取し、加温した状態で、1N酢酸水溶液150mLで二回、分液処理をしたのちに、水200mLを添加し、室温まで冷却させることで、生成物を析出させた。得られた粗生成物をろ取し、さらに、アセトニトリルで再結晶し、化合物(1−9)30g(収率57%)を得た。
得られた化合物(1−9)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
3.90(3H,s)
7.39(1H,s)
7.45−7.70(6H,m)
7.90−8.05(4H,m)
10.78(1H,s)
11.00(1H,s)
【0229】
[合成例3−2:化合物(1−9)の合成−2]
t−ブタノール 60mL、N−エチルピロリドン30mL中に窒素気流下、2,4−ジアミノ−6−クロロピリミジン17.34g(120mmol)、及びナトリウムメトキシド38.9gを順に添加した。その後、80℃にて2時間加熱攪拌した後、60℃まで温度を下げ、安息香酸メチル38.9g(288mol)を滴下し、60℃で2時間加熱攪拌を続けた。この反応液を、氷冷した水130mL、濃塩酸51mLの混合液中に添加した後に、50℃に加熱して固体を完溶させた。有機層を分取し、そこにメタノール 100mL、及び水 100mLを添加し、氷冷下1時間攪拌した。析出した生成物をろ取し、結晶は、メタノール/水混合溶媒、水で順次かけ洗いした。50℃13時間送風乾燥することで化合物(1−9)38g(収率85%)を得た。
【0230】
[合成例3−3:化合物(1−9)の合成−3]
合成例3−1で得られた結晶5gを、アセトニトリル/水(30mL/20mL)に分散し、室温にて2時間攪拌した。析出している固体をろ取したところ、含水率の異なる化合物(1−9)が得られた。
【0231】
[合成例3−4:化合物(1−9)の合成−4]
合成例3−2で得られた結晶を150℃3時間、溶融させた状態で減圧乾燥し、急冷することで化合物(1−9)のアモルファスを得た。得られた化合物の乾燥直後の含水率は0.5%未満であった。
【0232】
[合成例3−5:化合物(1−9)の合成−5]
合成例3−1で得られた結晶3.5gを、酢酸エチル(20mL)に溶解し、濃塩酸1mLを添加し、室温にて1時間攪拌した。析出した塩酸塩をろ取した。
得られた化合物(1−9)塩酸塩のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
3.96(3H,s)
6.8(1H,br)
7.39(1H,s)
7.50−7.68(6H,m)
7.99(2H,m)
8.08(2H,m)
11.4(1H,br)
11.6(1H,br)
【0233】
[合成例3−6:化合物(1−9)の合成−6]
合成例3−1で得られた結晶を、種々の溶媒にて再結晶を行い、下記表に示す通り、含水率及び含有溶媒の異なる結晶を種々得た。
【0234】
【表3】

【0235】
[合成例4:化合物(2−1)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,4−ジアミノピリミジンに、安息香酸メチルからm−メチル安息香酸メチルに変更した以外は、合成例1−1と同様に合成を行った。
得られた化合物(2−1)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.38(6H,s)
7.35−7.50(4H,m)
7.74−7.90(4H,m)
7.98(1H,s)
8.67(1H,s)
10.84(1H,s)
11.10(1H,s)
【0236】
[合成例5:化合物(2−2)の合成]
合成例1−1において、安息香酸メチルからm−メチル安息香酸メチルに変更し、下記のように合成を行った以外は合成例1−1と同様に合成した。
2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジン20g(161mmol)のN−エチルピロリドン140mL溶液に、m-メチル安息香酸メチル72.5g(485mmol)とナトリウムメトキシド35g(650mmol)とを加え、40℃で3時間加熱攪拌した。反応系の温度を室温に戻し、反応溶液を氷冷下で、水190mL、濃塩酸72.5mL、酢酸エチル50mLの混合溶液に注ぎ、固体(化合物(2−2)塩酸塩)を濾取した。塩酸塩を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液160mL,酢酸エチル150mLに添加し、加熱攪拌して、溶解したのちに、室温まで冷却して生成物を析出させた。得られた粗生成物をろ取し、さらに、アセトニトリルで再結晶し、化合物(2−2)47g(収率81%)を得た。
得られた化合物(2−2)NMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.38(6H,s)
2.50(3H,s)
7.36−7.47(4H,m)
7.70−7.90(5H,m)
10.77(1H,s)
10.99(1H,s)
【0237】
[合成例5−2:化合物(2−2)の合成−2]
2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジン2.4g(20mmol)、トリエチルアミン 6.97mL、及びTHF 20mLを混合し、m−メチル安息香酸クロリド7.7g(50mmol)を室温にて滴下した。その後、6時間40℃で加熱攪拌した。放冷後、生成物を酢酸エチルで抽出、酢酸エチル/ヘキサンで再結晶し、化合物(2−2)を2.1g得た。
【0238】
[合成例6:化合物(2−4)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,4−ジアミノ−6−メチルアミノピリミジンに、安息香酸メチルからm−メチル安息香酸メチルに変更した他は合成例1−1と同様に合成を行った。
得られた化合物(2−4)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.35(6H,s)
2.81(3H,s)
7.15(1H,s)
7.30−7.43(5H,m)
7.65−7.85(4H,m)
10.22(1H,s)
10.38(1H,s)
【0239】
[合成例7:化合物(2−8)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジンに、安息香酸メチルからm−メチル安息香酸メチルに変更した他は合成例1−1と同様に合成を行った。
得られた化合物(2−8)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.41(6H,s)
6.89(1H,s)
7.36−7.53(4H,m)
7.70−7.88(4H,m)
10.23(1H,s)
11.54(1H,s)
11.99(1H,s)
【0240】
[合成例8:化合物(2−9)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,4−ジアミノ−6−メトキシピリミジンに、安息香酸メチルからm−メチル安息香酸メチルに変更した他は合成例1−1と同様に合成を行った。粗体は、酢酸エチル/n-ヘキサンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、酢酸エチル/ n-ヘキサンより再結晶して、化合物(2−9)を得た。
得られた化合物(2−9)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.40(6H,s)
3.92(3H,s)
7.35−7.45(5H,m)
7.73−7.87(4H,m)
10.67(1H,s)
10.88(1H,s)
【0241】
[合成例8−2:化合物(2−9)の合成−2]
2,4−ジアミノ−6−メトキシピリミジン 2.2g(20mmol)に、m−メチル安息香酸クロリド 4.56g(50mmol)、及び炭酸水素ナトリウム 4.2gをアセトニトリルを混合し、6時間加熱還流した。放冷後、析出している固体をろ取し、水に分散、洗浄して、再度ろ取、水、及びアセトニトリルでかけ洗いすることで化合物(2−9)を2.1g得た。
【0242】
[合成例9:化合物(5−1)、(5−2)、(5−7)及び(5−8)の合成]
合成例1−1において、出発原料を安息香酸メチルからp−メチル安息香酸メチル、0−メチル安息香酸メチル、m−メトキシ安息香酸メチル、p−メトキシ安息香酸メチルにそれぞれ変更し、ナトリウムメトキシドを用いて同様に反応し、化合物(5−1)(5−2)(5−7)(5−8)をそれぞれ得た。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーと再結晶により行った。
【0243】
[合成例10:化合物(6−13)の合成]
2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジンを出発原料として、2−アミノ−4−クロロ−6−メトキシピリミジンを経て、2−アミノ−4−アニリノ−6−メトキシピリミジンを合成した。2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン 32.8g、アセトン 700mLを混合し、水冷下、ナトリウムメトキシド/28%メタノール溶液 43mLを内温20℃以下で滴下した。その後、内温40℃で4時間反応させた後に、減圧下で溶媒を濃縮し、水500mLを添加して、析出している固体をろ取した。精製は行わず、次工程に進んだ。得られた2−アミノ−4−クロロー6−メトキシピリミジンの粗体、アニリン(26.7mL)、メトキシエタノール 150mL、塩酸 0.2mLを混合し、120℃3時間過熱攪拌した。放冷後、氷冷下、重曹水500mL/酢酸エチルに添加し、生成物を酢酸エチルで抽出した。濃縮後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン)で精製し、2−アミノ−4−アニリノ−6−メトキシピリミジンを14g得た。
2−アミノ−4−アニリノ−6−メトキシピリミジンを、m−メチル安息香酸メチル、ナトリウムメトキシドを用い、合成例1−1と同様に合成を行った。粗体は、塩化メチレン/メタノールを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、塩化メチレン/n-ヘキサンより再結晶して、化合物(6−13)を得た。
得られた化合物(6−13)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.39(3H,s)
3.85(3H,s)
5.87(1H,s)
6.95(1H,s)
7.23−7.30(2H,m)
7.38−7.41(2H,m)
7.72−7.85(4H,m)
9.40(1H,s)
9.46(1H,s)
【0244】
[合成例11:化合物(6−14)の合成]
2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジンを出発原料として、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルアミノピリミジンを経て、2−アミノ−4−アニリノ−6−メチルアミノピリミジンを合成した。2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン 32.8g、メチルアミン 40%水溶液34.5mL、エタノール 300mLを混合し、内温70℃で4時間過熱攪拌した。その後、減圧下で溶媒を濃縮し、アセトニトリルで晶析し、生成物をろ取した。精製は行わず、次工程に進んだ。得られた2−アミノ−4−クロロ−6−メチルアミノピリミジンの粗体、アニリン(27.4mL)、メトキシエタノール 100mL、塩酸0.2mLを混合し、120℃3時間過熱攪拌した。放冷後、氷冷下、重曹水500mL/酢酸エチルに添加し、生成物を酢酸エチルで抽出した。濃縮後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)で精製し、2−アミノ−4−アニリノ−6−メチルアミノピリミジンを18g得た。2−アミノ−4−アニリノ−6−メチルアミノピリミジン、m−メチル安息香酸メチル、ナトリウムメトキシドを用い、合成例1−1と同様に合成を行った。粗体は、酢酸エチル/n-ヘキサンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、酢酸エチル/ n-ヘキサンより再結晶して、化合物(6−14)を得た。
得られた化合物(6−14)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.37(3H,s)
2.75(3H,d)
5.51(1H,s)
6.87−6.91(1H,m)
7.15−7.24(2H,m)
7.34−7.38(2H,m)
7.65−7.74(4H,m)
8.95(1H,s)
10.02(1H,s)
【0245】
[合成例12:化合物(6−15)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジンに、安息香酸メチルからp−ターシャリーブチル安息香酸メチルに変更した他は合成例1−1と同様に合成を行った。
得られた化合物(6−15)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
1.34(18H,s)
7.87(1H,s)
7.51−7.63(4H,m)
7.85−7.95(4H,m)
10.21(1H,s)
11.57(1H,s)
12.07(1H,s)
【0246】
[合成例13:化合物(6−16)の合成]
合成例5において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,4−ジアミノ−6−クロロピリミジンに、m-メチル安息香酸メチルを安息香酸メチルに変更した他は合成例5と同様に合成を行った。炭酸水素ナトリウム水溶液/酢酸エチルから析出した生成物をろ取し、これ以上の精製は行わなかった。
得られた化合物(6−16)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
1.34(18H,s)
7.87(1H,s)
7.51−7.63(4H,m)
7.85−7.95(4H,m)
10.21(1H,s)
11.57(1H,s)
12.07(1H,s)
【0247】
[合成例14:化合物(7−1)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,6−ジアミノピリジンに変更した他は合成例1−1と同様に合成を行った。
得られた化合物(7−1)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
7.45−7.66(6H,m)
7.87−7.94(3H,m)
7.95−8.10(4H,m)
10.51(2H,s)
【0248】
[合成例15:化合物(7−2)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,6−ジアミノピリジンに、安息香酸メチルからm−メチル安息香酸メチルに変更した他は合成例1−1と同様に合成を行った。
得られた化合物(7−2)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.40(6H,s)
7.37−7.45(4H,m)
7.75−7.88(7H,m)
10.40(2H,s)
【0249】
[合成例16:化合物(8−1)の合成]
N−(2,5−ジメトキシフェニル)−3−オキソブタンアミド 50g(211mmol)のN−メチルピロリドン150mL溶液に、ジシアンジアミド18g(214mmol)、酢酸ニッケル(II)52g(209mmol)を加え、130℃で5時間加熱攪拌した。反応溶液を室温に戻した後、飽和重曹水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をロータリーエバポレーターで留去した。得られた粗生成物を2−プロパノールでたき洗いし、化合物(8−1)を得た。
得られた化合物(8−1)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.28(3H,s)
2.71(3H,s)
2.77(3H,s)
6.22(2H,s)
6.40(2H,s)
6.67(1H,d)
6.97(1H,d)
7.59(1H,s)
9.01(1H,s)
【0250】
[合成例17:化合物(8−2)の合成]
2−アミノピリミジン10g(105mmol)のN−エチルピロリドン100mL溶液にm−メチル安息香酸メチル17g(113mmol)とナトリウムメトキシド 11g(204mmol)を加え、40℃で2時間加熱攪拌した。反応系の温度を室温に戻し、反応溶液を1N塩酸水溶液に注ぎ固体を濾取した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液はメタノール:ジクロロメタン=1:10)で精製し、化合物(8−2)を得た。
得られた化合物(8−2)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.40(3H,s)
7.25(1H,t)
7.35−7.44(2H,m)
7.72−7.84(2H,m)
8.74(2H,d)
10.91(1H,s)
【0251】
[合成例18:化合物(8−3)の合成]
合成例17において、出発原料を2−アミノピリミジンから2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジンに変更した他は合成例17と同様に合成を行った。
得られた化合物(8−3)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.35−2.45(9H,m)
7.00(1H,s)
7.35−7.40(2H,m)
7.73−7.83(2H,m)
10.72(1H,s)
【0252】
[合成例19:化合物(8−4)の合成]
合成例17において、出発原料を2−アミノピリミジンから2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジンに変更した他は合成例17と同様に合成を行った。
得られた化合物(8−4)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.38(3H,s)
3.88(6H,s)
5.98(1H,s)
7.35−7.42(2H,m)
7.67−7.78(2H,m)
10.69(1H,s)
【0253】
[合成例20:化合物(8−5)の合成]
2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン 10g(81mmol)のN−エチルピロリドン 75mL溶液にイソフタル酸ジメチル 7.2g(37mmol)とナトリウムメトキシド 10g(185mmol)を加え、40℃で2時間加熱攪拌した。反応系の温度を室温に戻し、反応溶液を1N塩酸水溶液に注ぎ固体を濾取した。得られた粗生成物をアセトニトリルで再結晶し、化合物(8−5)を得た。
得られた化合物(8−5)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.42(12H,s)
7.04(2H,s)
7.65(1H,t)
8.11(2H,d)
8.52(1H,s)
10.80(2H,s)
【0254】
[合成例21:化合物(8−6)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,4−ジアミノ−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリンに、安息香酸メチルからm−メチル安息香酸メチルに変更した他は合成例1−1と同様に合成を行った。
得られた化合物(8−6)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
1.65−1.75(2H,m)
1.75−1.90(2H,m)
2.40(6H,s)
2.47−2.56(2H,m)
2.80−2.87(2H,m)
7.35−7.49(4H,m)
7.71−7.88(4H,m)
10.72(1H,s)
10.78(1H,s)
【0255】
[合成例22−1:化合物(1−2)、化合物(2−2)、化合物(10−1)及び化合物(10−2)を含む混合物Aの合成−1]
合成例5において、出発原料のm−メチル安息香酸メチルを、安息香酸メチルとm−メチル安息香酸メチルとの混合物に変更して合成を行った。2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジン 15g(121mmol)のN−エチルピロリドン 105mL溶液に、m−メチル安息香酸メチル 21.7g(145mmol)、安息香酸メチル 19.7g(145mmol)とナトリウムメトキシド 26.1g(483mmol)とを加え、40℃で3時間加熱攪拌した。反応系の温度を室温に戻し、反応溶液を氷冷下で、水190mL、濃塩酸63mL、酢酸エチル40mLの混合溶液に注ぎ、固体を濾取した。塩酸塩を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液120mL、酢酸エチル300mLに添加し、加熱攪拌して、溶解したのちに、室温まで冷却して生成物を析出させた。得られた生成物をろ取し、80℃8時間減圧乾燥して、化合物(1−2)、化合物(2−2)、化合物(10−1)及び化合物(10−2)の混合物を得た(収量28g、収率67%、含水率3.0%)。
【0256】
[合成例22−2:化合物(1−2)、化合物(2−2)、化合物(10−1)及び化合物(10−2)を含む混合物Aの合成−2]
合成例22−1で得られた結晶を170℃3時間減圧乾燥することで混合物Aのアモルファスを得た。得られた混合物の乾燥直後の含水率は、0.5%未満であった。
【0257】
[合成例23:化合物(1−2)、化合物(2−2)、化合物(10−1)及び化合物(10−2)を含む混合物Bの合成]
合成例1−1において、出発原料の安息香酸メチル23gを、安息香酸メチル9.3gとm−メチル安息香酸メチル15.2gとの混合物に変更した他は、合成例1−1と同様に合成を行い、化合物(1−2)、化合物(2−2)、化合物(10−1)及び化合物(10−2)の混合物を得た。合成例22−1に対して化合物(1−2)の含率が減少し、化合物(2−2)の含率が増加した。
【0258】
[合成例24:混合物Cの合成]
t−ブタノール 51mL、及びメタノール 9mL中に窒素気流下、2,4−ジアミノ−6−クロロピリミジン 5.8g(40mmol)、ナトリウムメトキシド 22.7gを順に添加した。その後、80℃にて0.5時間加熱攪拌した後、70℃まで温度を下げ、安息香酸メチル 19.6g(96mol)を滴下し、70℃で6時間加熱攪拌を続けた。この反応液を、40℃まで放冷した後に、1−メトキシ−2−プロパノールを45mL添加した。この溶液を、氷冷した水68mL、及び酢酸25.22gの混合液中に添加した後に、さらに水 200mLを添加し、氷冷下1時間攪拌することで生成物を析出させた。析出した生成物をろ取し、水でかけ洗いした。生成物を8.3g(収率60%)得た。HPLCを測定した結果、化合物(M−5a)/化合物(M−6a)/化合物(1−9)の1.5/3.5/95(HPLC面積比)の混合物であった。
【0259】
[合成例25:混合物Dの合成]
N−エチルピロリドン 30mLに窒素気流下、2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジン 7.4g(60mmol)、及びナトリウムメトキシド 11.3gを順に添加した。その後、m−メチル安息香酸メチル 21.6g(144mol)を滴下し、40℃で3時間加熱攪拌を続けた。この反応液を、氷冷した酢酸エチル30mL、水75mL、及び塩酸17.5mLの混合液中に添加した後に、さらに、水100mLを添加し、氷冷下1時間攪拌することで生成物を析出させた。析出した生成物をろ取し、酢酸エチル、アセトニトリル、水でかけ洗いした。生成物を15.1g(収率71%)得た。HPLCを測定した結果、化合物(M−3a)/化合物(M−4a)/化合物(2−2)の混合物であった。
【0260】
[合成例26:化合物(9−1)の合成]
Bioorg. Med. Chem. Lett. 誌、第13巻 217頁、2003年に記載の方法により合成を行った。
【0261】
[合成例27:化合物(9−2)の合成]
Bioorg. Med. Chem. Lett. 誌、第13巻 217頁、2003年に記載の方法により合成を行った。
【0262】
[合成例28:化合物(9−3)の合成]
Journal of the Chemical Society誌、41頁、1947年に記載の方法により合成を行った。
【0263】
[合成例29:化合物(9−4)の合成]
Tetrahedron誌、第57巻、2787頁、2001年に記載の方法により合成を行った。
【0264】
[合成例30:化合物(9−5)の合成]
Angewandte Chemie誌、第111巻、2170頁、1999年に記載の方法により合成を行った。
【0265】
[合成例31:化合物(9−13)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから化合物(9-11)(市販品)に変更した他は、合成例1−1と同様に合成を行った。
【0266】
[合成例32:化合物(6−19)の合成]
合成例1−1において、出発原料を2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジンから2,4−ジアミノ−6−メトキシピリミジンに、安息香酸メチルを酢酸メチルに変更した他は合成例1−1と同様に合成を行った。反応後の溶液を酢酸水溶液に注ぎ、pH6に調整して析出した固体を濾取し、MeOH/H2Oでかけ洗いすることで、化合物(6−19)を得た。
得られた化合物(6−19)のNMRスペクトルは以下の通りである。得られた化合物(1−9)のNMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm)
2.11(3H,s)
2.26(3H,s)
3.88(3H,s)
7.10(1H,s)
10.11(1H,br)
10.50(1H,br)
【0267】
合成した化合物の含水率をカールフィッシャー法により求めた。
化合物(1−2):含水率3.8%
化合物(1−8):含水率5.4%)
化合物(1−9)(合成例3−1):含水率2.8%
化合物(1−9)(合成例3−2):含水率7.1%
化合物(1−9)(合成例3−3):含水率7.5%
化合物(1−9)(合成例3−4):含水率<0.5%
化合物(2−1):含水率5.5%
化合物(2−2):含水率3.4%
化合物(2−4):含水率1.3%
化合物(2−8):含水率1.8%
化合物(2−9):含水率3.2%
化合物(5−1):含水率3.1%
化合物(5−2):含水率0.8%
化合物(5−7):含水率9.1%
化合物(5−8):含水率3.1%
化合物(6−13):含水率1.2%
化合物(6−15):含水率2.7%
化合物(6−16):含水率2.8%
化合物(6−19):含水率0.7%
化合物(7−2):含水率3.1%
化合物(8−2):含水率1.0%
化合物(8−5):含水率2.6%
化合物(8−6):含水率3.1%
【0268】
実施例2−1. セルロースアシレートフィルムの作製
(製膜用セルロースアシレート溶液の調製)
下記表に示す各例示化合物を、下記表に記載のアセチル置換度のセルロースアシレート樹脂 100質量部に対して下記表に示す割合で混合し、溶媒であるメチレンクロライド 396質量部、メタノール 59質量部中に溶解して、セルロースアシレート(具体的には、セルロースアセテート)溶液を調製した。
【0269】
(流延)
上述のセルロースアシレート溶液をガラス板流延装置を用いて流延した。給気温度70℃の温風で6分間乾燥し、ガラス板から剥ぎ取ったフィルムを枠に固定し、給気温度100℃の温風で10分間、給気温度140℃の温風で20分間乾燥し、膜厚65μmのセルロースアシレートフィルムを作製した。
次に、得られたフィルムを200℃の条件で30%の延伸倍率まで、30%/分の延伸速度で横延伸し、膜厚50μmのセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0270】
比較例用フィルムとして、添加剤を無添加のフィルムを製造した。また、以下に示す構造の比較化合物1を添加剤として用いた比較例用フィルムもそれぞれ作製した。
【0271】
【化70】

【0272】
(光学特性の評価)
得られた各実施例及び比較例のフィルムについて、25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向及び遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差を測定することから、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出した。
その結果を下記表に示す。
【0273】
また、レターデーション値の湿度に伴う変化については、フィルムを25℃・相対湿度10%にて2時間調湿した以外は、上記の方法と同様にして測定して算出したRe及びRth(それぞれRe[25℃,RH10%]、Rth[25℃,RH10%])、及び25℃・相対湿度80%にて12時間調湿した以外は上記の方法と同様にして測定して算出したRe、Rth(それぞれRe[25℃,RH80%]、Rth[25℃,RH80%])から、Reの湿度依存性(ΔRe)とRthの湿度依存性(ΔRth)とを算出した。
その結果を下記表に、それぞれΔRe、ΔRthとして示す。
さらに、湿度依存性を以下の評価基準で評価した。
[ΔReの評価基準]
◎;ΔReが10未満
○;ΔReが10以上11未満
△;ΔReが11以上16未満
×;ΔReが16以上
[ΔRthの評価基準]
◎;ΔRthが18未満
○;ΔRthが18以上21未満
△;ΔRthが21以上25未満
×;ΔRthが25以上
【0274】
【表4】

【0275】
【表5】

【0276】
上記表に示す結果から、本発明の実施例の高分子フィルムはいずれも、式(1)の化合物が添加されていることによりレターデーションが上昇しているとともに、トリアジン環化合物の添加によりレターデーションが上昇している比較例のフィルムと比較して、レターデーションの湿度依存性が軽減されていることが理解できる。
化合物(8−6)及び(9−13)といった、ピリミジン環の5位に置換基を持ち、立体的にかさ高く、平面性が低い化合物では、レターデーションの湿度依存性の低減効果が比較的小さいことがわかる。
【0277】
実施例2−2. セルロースアシレートフィルムの作製
延伸温度を200℃から180℃に変更した以外は、実施例2−1と同様にして、セルロースアセテートフィルムを作成し、光学特性を評価した。
湿度依存性は以下の評価基準で評価した。
[ΔReの評価基準]
○;ΔReが10未満
△;ΔReが10以上15未満
×;ΔReが15以上
[ΔRthの評価基準]
○;ΔRthが22未満
△;ΔRthが22以上26未満
×;ΔRthが26以上
【0278】
【表6】

【0279】
実施例2−3. セルロースアシレートフィルムの作製
(製膜用セルロースアシレート溶液の調製)
下記表に示す各例示化合物を、下記表に記載のアセチル置換度のセルロースアシレート樹脂 100質量部に対して下記表に示す割合で混合し、溶媒であるメチレンクロライド 396質量部、メタノール 59質量部中に溶解して、セルロースアシレート(具体的には、セルロースアセテート)溶液を調製した。
【0280】
(流延)
上述のセルロースアシレート溶液をガラス板流延装置を用いて流延した。給気温度70℃の温風で6分間乾燥し、ガラス板から剥ぎ取ったフィルムを枠に固定し、給気温度100℃の温風で10分間、給気温度140℃の温風で20分間乾燥し、膜厚55μmのセルロースアシレートフィルムを作製した。
比較例用フィルムとして、添加剤を無添加のフィルムを製造した。また、比較化合物1を添加剤として用いた比較例用フィルムもそれぞれ作製した。
【0281】
(光学特性の評価)
光学特性の評価は実施例2−1と同様にして行い、湿度依存性を以下の評価基準で評価した。
[ΔRthの評価基準]
○;ΔRthが15未満
△;ΔRthが15以上20未満
×;ΔRthが20以上
【0282】
【表7】

【0283】
実施例2−4. セルロースアシレートフィルムの作製
実施例2−1と同様の条件でセルロースアセテートフィルムを作製し、光学特性を評価した。
【0284】
【表8】

【0285】
上記表に示す結果から、本発明の実施例の高分子フィルムはいずれも、式(1)の化合物が添加されていることによりレターデーションが上昇しているとともに、トリアジン環化合物の添加によりレターデーションが上昇している比較例のフィルムと比較して、レターデーションの湿度依存性が軽減されていることが理解できる。
【0286】
実施例2−5. セルロースアシレートフィルムの作製
実施例2−1と同様の条件でセルロースアセテートフィルムを作製し、光学特性を評価した。
また、添加剤として、例示化合物(1−2)とともに、下記のトリアジン化合物をそれぞれ、組成比(質量比)1:1で混合した混合物C−1及びC−2をそれぞれ用いた以外は、実施例2−1と同様にしてフィルムをそれぞれ作製し、その光学特性を測定した。結果を、実施例2−1のフィルム102及び比較例のフィルム156の結果とともに下記表に示す。
【0287】
【化71】

【0288】
【表9】

【0289】
上記表に示す結果から、一般式(1)で表される化合物(例示化合物(1−2))とともに、トリアジン環化合物を使用すると、レターデーション上昇作用はより高められるが、一方で、レターデーションの湿度依存性軽減効果は低下することが理解できる。この結果から、本発明の実施例が示す湿度依存性軽減効果は、特開2004−109410号公報(特許文献1)に開示のケト−エノール互変異可能な構造をその構成要素として含む分子錯合体からなるレターデーション上昇剤や、特開2001−166144号公報(特許文献2)及び特開2003−344655号公報(特許文献3)に記載の1,3,5−トリアジン環を含む円盤状化合物からなるレターデーション上昇剤では得られない効果であることが理解できる。
【0290】
実施例3. セルロースアシレートフィルムの作製
(製膜用セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液301を調製した。
【0291】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液301の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.43、重合度340のセルロースアセテート 100.0質量部
前記化合物(2−2) 4.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0292】
(流延、延伸)
セルロースアシレート溶液301を、バンド流延機を用いて流延し、残留溶媒含量40%まで乾燥した後、得られたウェブをバンドから剥離し、その後140℃の条件下、残留溶媒含量20%になった時点でテンターを用いて延伸倍率30%で横延伸したのち、さらに130℃で3分間保持した。その後フィルムを保持していたクリップをはずして該フィルムを130℃30分間乾燥させて、セルロースアシレートフィルム301を作製した。膜厚は60μmであった。
比較例用フィルムとして、添加剤を無添加のフィルム(セルロースアシレートフィルム302)を製造した。また、比較化合物1を添加剤として用いた比較例用フィルム(セルロースアシレートフィルム303)もそれぞれ作製した。
【0293】
(光学特性の評価)
光学特性の評価は実施例2−1と同様にして行ったところ、本発明の化合物を用いたセルロースアシレートフィルム301では、セルロースアシレートフィルム301及び302と比較して、レターデーションの湿度依存性が軽減されていた。
【0294】
実施例4. セルロースアシレートフィルムの作製
実施例2−1と同様にして、添加剤として混合物(R−1)、(R−2)、及び(R−3)を用いて、セルロースアセテートフィルムを作製し、光学特性を評価した。
実施例2−1において、セルロースアシレートの置換度、各添加剤の種類と量、延伸温度延伸倍率、フィルムの厚みを下表のとおりに変更した以外は実施例2−1と同様にして、セルロースアシレートフィルムをそれぞれ作製した。
光学特性の評価は実施例1と同様にして行った。
【0295】
【表10】

【0296】
混合物(R−2)、(R−4)、(R−5)、(R−8)、(R−10)、(R−11)、及び(R−12)〜(R−15)、混合物Cについても同様に評価し、レターデーションの湿度依存性が軽減されていることを確認した。
【0297】
実施例5. セルロースアシレートフィルムの作製
実施例2−1と同様にして、添加剤として混合物(A)、及び化合物(1−9)を用いて、セルロースアセテートフィルムを作製した。
セルロースアシレートの置換度は、アセチル置換度2.42、各添加剤の添加量は4質量%とした以外、延伸温度延伸倍率、フィルムの厚みなどは実施例2−1と同様にしてセルロースアシレートフィルムをそれぞれ作製した。
用いる混合物A、化合物(1−9)のロットの違うもの、製膜日の異なるものなど数種のフィルムをそれぞれ作製した。
【0298】
(光学特性の評価)
光学特性の評価は実施例2−1と同様にして行った。
【0299】
【表11】

【0300】
上記表に示す結果から、合成例3−4及び合成例22−2により、加熱減圧乾燥してそれぞれ得られた化合物(1−9)及び混合物Aの無水物を使用した場合、フィルムの光学特性のばらつきが大きいことが理解できる。これは、無水物として単離した化合物(1−9)及び混合物A中の各化合物が、保存中に吸湿するために、フィルムを作製する際に等重量で添加すると、実際の含率が変動するためと考えている。
一方で、合成例3−2及び合成例22−1によりそれぞれ得られた水和物を用いた場合には、ばらつきが小さく、品質の安定性に優れていることが理解できる。これは水和物の形で得られた結晶では、経時で含水率が変動しないためであると考えている。
【0301】
実施例6. 含水率変化の評価
下記表に示す各化合物0.5gを25℃80%RHの恒温恒湿槽で7日間経時したのちに、カールフィッシャー法により含水率を測定した。
【0302】
【表12】

【0303】
上記表に示す結果から、本発明の化合物の水和物は、湿度変化によらず含水率が一定であること、一方、アモルファスは、初期含水率は低いものの、高湿下では吸湿し、環境湿度によって含水率が変動することが理解できる。
【0304】
実施例7. 溶液安定性の評価
下記表に示す各化合物(1質量部)を、メチレンクロライド 87質量部、メタノール 13質量部中に溶解して、耐圧容器中にて80℃、66時間静置し、液体クロマトグラフィーを用いた定量によりその残存率を算出した。結果を下記表に示す。
【0305】
【表13】

【0306】
【化72】

【0307】
【化73】

【0308】
上記表に示す結果から、本発明の化合物は、溶液安定性に優れていることが理解できる。
【符号の説明】
【0309】
1 液晶セル上側基板
3 液晶セル下側基板
5 液晶層(液晶分子)
8a、8b 偏光板の保護フィルム
9a、9b 偏光板の保護フィルム吸収軸
10a、10b 位相差膜(本発明の高分子フィルム)
11a、11b 位相差膜(本発明の高分子フィルム)吸収軸
P1、P2 偏光板
LC 液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩の少なくとも1種を含有する高分子フィルム:
【化1】

一般式(1)中、Yは−N−又は−C(−Qd−Rd)−を表し;Qa、Qb、Qc及びQdはそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し;Ra、Rb、Rc及びRdはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し、RaとRb及びRaとRdはそれぞれ連結して環を形成してもよく;X2は、単結合又は2価の連結基を表し、X1は、単結合又は下記2価の連結基群G1
【化2】

(各式中、*側が前記各式で表される化合物中のピリミジン環又はピリジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。)から選択される2価の基を表し;R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい;ただし、−Qc−Rc及び−N(X11)X22のうち一方のみが−NH2である化合物、並びにYが窒素原子であり、−Qc−Rc及び−N(X11)X22の双方が−NH2でなく、且つ−Qa−Raが−NH2である化合物を除く。
【請求項2】
前記一般式(1)で表わされる化合物の少なくも1種を、水和物、溶媒和物もしくは塩の形態で添加してなる請求項1に記載の高分子フィルム。
【請求項3】
前記一般式(1)が、下記一般式(2)である請求項1又は2に記載の高分子フィルム:
【化3】

一般式(2)中の各記号は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;X4は、単結合又は2価の連結基を表し、X3は、単結合又は下記2価の連結基群G1
【化4】

(各式中、*側が前記各式で表される化合物中のピリミジン環又はピリジン環に置換しているN原子との連結部位であり;Rgは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。)から選択される2価の基を表し;R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。
【請求項4】
前記一般式(1)が、下記一般式(3)又は(4)である請求項1又は2に記載の高分子フィルム:
【化5】

一般式(3)中の各記号は、一般式(1)中のそれぞれと同義である。
【化6】

一般式(4)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義である。
【請求項5】
前記一般式(1)が、下記一般式(5−1)である請求項1又は2に記載の高分子フィルム:
【化7】

一般式(5−1)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり、Ar1はアリール基を表す。
【請求項6】
前記一般式(1)が、下記一般式(5−2)である請求項1又は2に記載の高分子フィルム:
【化8】

一般式(5−2)中の各記号の定義は、一般式(1)及び(3)中のそれぞれと同義であり、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、アリール基を表す。
【請求項7】
前記一般式(1)が、下記一般式(6)である請求項1又は2に記載の高分子フィルム:
【化9】

一般式(6)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、アリール基を表す。
【請求項8】
aが、単結合、又は−O−、−S−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し、Raが、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子フィルム。
【請求項9】
前記一般式(1)が、下記一般式(7−1)である請求項1又は2に記載の高分子フィルム:
【化10】

一般式(7−1)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;Qaaは、単結合、又は−O−、−S−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し;Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
【請求項10】
前記一般式(1)が、下記一般式(7−2)である請求項1又は2に記載の高分子フィルム:
【化11】

一般式(7−2)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
【請求項11】
前記一般式(7−2)が、下記一般式(8)、一般式(9)、又は一般式(10)である請求項10に記載の高分子フィルム:
【化12】

【化13】

【化14】

式中の各記号の定義は、一般式(7−2)中のそれぞれと同義であり;Ra8、Ra9及びRa10はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
【請求項12】
前記一般式(1)が、下記一般式(11a)である請求項1又は2に記載の高分子フィルム:
【化15】

一般式(11a)中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義である。
【請求項13】
下記一般式(IIIe)、(IVe)及び(Ve)のいずれかで表される少なくとも1種の化合物又はその水和物、溶媒和物もしくは塩をさらに含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の高分子フィルム:
【化16】

式中の各記号の定義は、一般式(1)中のそれぞれと同義であり;Arはそれぞれ独立に、アリール基を表す。
【請求項14】
水酸基を有する高分子を主成分として含有する請求項1〜13のいずれか1項に記載の高分子フィルム。
【請求項15】
前記水酸基を有する高分子が、セルロースアシレート樹脂である請求項14に記載の高分子フィルム。
【請求項16】
前記セルロースアシレート樹脂が、セルロースアセテート樹脂である請求項15に記載の高分子フィルム。
【請求項17】
溶液製膜法により製膜されてなる請求項1〜16のいずれか1項に記載の高分子フィルム。
【請求項18】
前記化合物の水和物又は溶媒和物を用いることを特徴とする請求項17に記載の高分子フィルム。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の高分子フィルムからなる、又は請求項1〜18のいずれか1項に記載の高分子フィルムを含む位相差フィルム。
【請求項20】
偏光子、及び請求項1〜18のいずれか1項に記載の高分子フィルムを含む偏光板。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の高分子フィルム、及び/又は請求項20に記載の偏光板を含む液晶表示装置。
【請求項22】
下記一般式(7−1)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩:
【化17】

一般式(7−1)中、Yは−N−又は−C(−Qd−Rd)−を表し;Qdは、単結合又は2価の連結基を表し;Rdは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し;Qaaは、単結合、又は−O−、−S−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し;Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、RdとRaaとが結合して環構造を形成していてもよく;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
【請求項23】
下記一般式(7−2)で表される化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩:
【化18】

一般式(7−2)中、Yは−N−又は−C(−Qd−Rd)−を表し;Qdは、単結合又は2価の連結基を表し;Rdは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン基又は複素環基を表し;Ra7は、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、RdとRa7とが結合して環を形成していてもよく;R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。
【請求項24】
下記一般式(8)、一般式(9)、又は一般式(10)で表される請求項22又は23に記載の化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩:
【化19】

【化20】

【化21】

式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表し;Ra8、Ra9及びRa10はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。
【請求項25】
a8、Ra9及びRa10はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキル基を表す請求項24に記載の化合物、又はその水和物、溶媒和物もしくは塩。
【請求項26】
請求項22〜25のいずれか1項中に記載の化合物の水和物又は溶媒和物。
【請求項27】
請求項22〜25のいずれか1項中に記載の化合物の水和物。
【請求項28】
下記式(7a)とスキームで表わされる化合物と、一般式(7b)で表される化合物とを反応させる工程を含む、下記一般式(7−1)で表される化合物、又はその塩、水和物又は溶媒和物の製造方法:
【化22】

一般式(7a)及び一般式(7b)中、Qaaは、単結合、又は−O−、−S−、−NH−もしくは−N(R)−(但しRは炭素原子数1〜8のアルキル基)を表し;Raaは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し;R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表し;Zはハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はアシルオキシ基を表す。
【請求項29】
前記一般式(7−1)で表される化合物の水和物又は溶媒和物の製造方法であって、前記一般式(7−2)で表される化合物を水又は有機溶媒を用いて晶析することをさらに含む、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−214682(P2012−214682A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257364(P2011−257364)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】