説明

高分子化合物製造用のモノマー及び高分子化合物の製造方法

【課題】鈴木カップリング法を用いて分子量の高い共役高分子化合物を製造しうるジボロン酸の誘導体を提供すること。
【解決手段】式


〔式中、Aは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基等を表す。R11及びR12、R21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表す。m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立に、1から5の整数を表す。n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立に、0又は1を表す。〕で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物製造用のモノマー及び高分子化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共役高分子化合物は、有機トランジスタ素子や、有機太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス素子等の有機半導体素子への適用が検討されており、様々な種類の共役高分子化合物の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
有機半導体素子の特性に大きな影響を与える要因として、共役高分子化合物の分子量が知られている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、式(A)で表される繰り返し単位を有し、分子量の異なる高分子化合物を用いて複数の有機トランジスタ素子を作製したところ、分子量が高い高分子化合物を用いるほど、有機トランジスタの電界効果移動度が高くなることが記載されている。
【0005】
【化1】

(A)
【0006】
また、非特許文献2には、式(B)で表される繰り返し単位を有し、分子量が高い高分子化合物を用いて作製した有機太陽電池素子と分子量が低い高分子化合物を用いて作製した有機太陽電池素子の特性を比較したところ、分子量が高い高分子化合物を用いて作製した有機太陽電池素子の光電流(Jph)の方が大きくなることが記載されている。
【0007】
【化2】

(B)
【0008】
共役高分子化合物の製造方法としては、パラジウム触媒存在下で芳香族化合物のジボロン酸又はその誘導体と、芳香族化合物のジハロゲン化物とを、連続的にカップリングさせる鈴木カップリング法が検討されている。
【0009】
鈴木カップリング法を用いて分子量が高い共役高分子化合物を製造する方法として、例えば、チオフェンジボロン酸の1,3−プロパンジオールエステル誘導体と芳香族化合物のジハロゲン化物とを反応させる方法、及び、チオフェンジボロン酸のピナコールエステル誘導体と芳香族化合物のジハロゲン化物とを反応させる方法が提案されている(非特許文献3)。
【0010】
他方、特許文献1には、有機ボロン酸に含まれるボロン酸基はN−メチルイミノ二酢酸等で保護することが可能であること、及びN−メチルイミノ二酢酸等でボロン酸基が保護された有機ボロン酸は、有機ハロゲン化物と反応して(鈴木カップリング法)、クロスカップリング生成物を与えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2010−534240
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】アドバンスド マテリアルズ(Advanced Materials)、2003年、第15巻、p.1519−1522
【非特許文献2】オーガニック エレクトロニクス(Organic Electronics)、2009年、第10巻、p.1275−1281
【非特許文献3】マクロモレキュールズ(Macromolecules)、2001年、第34巻、p.5386−5393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、実際に有機半導体素子へ適用可能な共役高分子化合物の合成を目的とする場合、上記従来の方法では、共役高分子化合物の分子量を十分に高めることが困難という問題がある。
【0014】
より詳しくは、鈴木カップリング法を用いて、芳香族化合物のジボロン酸又はその誘導体と、芳香族化合物のジハロゲン化物の重縮合を行うことによって、共役高分子化合物を製造する場合、特に、該芳香族化合物が複素環式構造である場合は、芳香族化合物とホウ素原子との結合が重合反応前に切断されてカップリング反応が生じ難い。ジボロン酸のホウ素原子は空配位座を有し、水等の求核試薬が攻撃し易いためと考えられる。また、理由は明確でないが、有機化合物のジボロン酸の有機基が芳香族性を有する複素環式構造である場合は、水等の求核試薬が、ホウ素原子の空配位座に対し、更に攻撃し易くなると考えられる。
【0015】
つまり、非特許文献3に示されているような、有機ジボロン酸のアルキレンジオールエステル誘導体と有機ジハロゲン化物を使用する鈴木カップリング法では、共役高分子化合物の分子量を高めることが困難であり、有機ジボロン酸の有機基がヘテロアリール基である場合は、共役高分子化合物の分子量を高めることが更に困難になる。
【0016】
そこで、本発明は、鈴木カップリング法を用いて分子量の高い共役高分子化合物を製造しうるジボロン酸の誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明は、式
【0018】
【化3】

【0019】
〔式中、Aは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、−C≡C−又は−CR31=CR32−を表す。R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表す。R21が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R22が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R23が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R24が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R25が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R26が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R27が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R28が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立に、1から5の整数を表す。n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立に、0又は1を表す。〕
で表される化合物を提供する。
【0020】
また、本発明は、遷移金属錯体及び塩基の存在下で、前記化合物と、式
【0021】
【化4】

【0022】
〔式中、Eは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、−C≡C−又は−CR91=CR92−を表す。R91及びR92は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。X及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基又はアリールスルホネート基を表す。〕
で表される化合物とを重合させる式(6)で表される繰り返し単位と式(7)で表される繰り返し単位とを含有する高分子化合物の製造方法を提供する。
【0023】
【化5】

【0024】
〔式(6)及び式(7)中、A及びEは、前述と同じ意味を表す。〕
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、鈴木カップリング法を用いて分子量の高い高分子化合物を製造することができるため、本発明は極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】有機半導体素子である有機トランジスタの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を説明する。
【0028】
<式(1)で表される化合物>
前記式(1)中、Aは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、−C≡C−又は−CR31=CR32−を表す。R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表す。R21が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R22が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R23が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R24が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R25が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R26が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R27が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R28が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立に、1から5の整数を表す。n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0029】
Aで表されるアリーレン基は、芳香族炭化水素化合物から、芳香環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた原子団であり、ベンゼン環を含有する基、縮合環を含有する基、独立した芳香族環又は縮合環2個以上が直接結合した構造を含有する基を含む。アリーレン基は置換基を有していてもよい。アリーレン基が有する炭素数は、通常6〜60であり、6〜20であることが好ましい。該炭素数にはアリーレン基が有する置換基の炭素数は含まれない。アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、テトラセンジイル基、ピレンジイル基、ペンタセンジイル基、ペリレンジイル基、フルオレンジイル基、ビフェニルジイル基、テルフェニルジイル基、クアテルフェニルジイル基が挙げられる。
【0030】
Aで表されるヘテロアリーレン基は、芳香族性を有する複素環式化合物から、芳香環を構成する原子に直接結合する水素原子2個を除いた原子団であり、単環を含有する基、縮合環を含有する基、独立した芳香族環又は縮合環2個以上が直接結合した構造を含有する基を含む。ヘテロアリーレン基は置換基を有していてもよい。ヘテロアリーレン基が有する炭素数は、通常2〜60であり、2〜20であることが好ましい。該炭素数にはヘテロアリーレン基が有する置換基の炭素数は含まれない。ヘテロアリーレン基の具体例としては、オキサジアゾールジイル基、チアジアゾールジイル基、オキサゾールジイル基、チアゾールジイル基、チオフェンジイル基、ビチオフェンジイル基、テルチオフェンジイル基、クアテルチオフェンジイル基、ピロールジイル基、フランジイル基、セレノフェンジイル基、ピリジンジイル基、ピラジンジイル基、ピリミジンジイル基、トリアジンジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、ベンゾピロールジイル基、ベンゾフランジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、チエノチオフェンジイル基、ベンゾチアジアゾールジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基、シクロペンタジチオフェンジイル基が挙げられる。
【0031】
11、R12、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R31及びR32で表されるアルキル基は、直鎖、分岐のいずれでもよく、シクロアルキル基であってもよい。アルキル基は置換基を有していてもよい。アルキル基が有する炭素数は、通常1〜60であり、1〜20であることが好ましい。該炭素数にはアルキル基が有する置換基の炭素数は含まれない。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基等の分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0032】
11、R12、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R31及びR32で表されるアリール基は、芳香族炭化水素化合物から芳香環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた原子団であり、ベンゼン環を含有する基、縮合環を含有する基、独立した芳香族環又は縮合環2個以上が直接結合した構造を含有する基を含む。アリール基は置換基を有していてもよい。アリール基が有する炭素数は、通常6〜60であり、6〜20であることが好ましい。該炭素数にはアリール基が有する置換基の炭素数は含まれない。アリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、4−フェニルフェニル基が挙げられる。
【0033】
11、R12、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R31及びR32で表されるヘテロアリール基は、芳香族性を有する複素環式化合物から、芳香環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた原子団であり、単環を含有する基、縮合環を含有する基、独立した複素芳香族環又は縮合環2個以上が直接結合した構造を含有する基を含む。ヘテロアリール基は置換基を有していてもよい。ヘテロアリール基が有する炭素数は、通常2〜60であり、2〜20であることが好ましい。該炭素数にはヘテロアリール基が有する置換基の炭素数は含まれない。ヘテロアリール基の具体例としては、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−チエノチエニル基が挙げられる。
【0034】
21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28で表されるアルコキシ基は、直鎖、分岐いずれでもよく、シクロアルコキシ基であってもよい。アルコキシ基は置換基を有していてもよい。アルコキシ基が有する炭素数は、通常1〜60であり、1〜20であることが好ましい。該炭素数にはアルコキシ基が有する置換基の炭素数は含まれない。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、n−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基が挙げられる。
【0035】
21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28で表されるアルキルチオ基は、直鎖、分岐いずれでもよく、シクロアルキルチオ基であってもよい。アルキルチオ基は置換基を有していてもよい。アルキルチオ基が有する炭素数は、通常1〜60であり、1〜20であることが好ましい。該炭素数にはアルキルチオ基が有する置換基の炭素数は含まれない。アルキルチオ基の具体例としては、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、n−ドデシルチオ基等が挙げられる。
【0036】
21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0037】
Aは、ヘテロアリーレン基が好ましく、ベンゾチアジアゾールジイル基、チオフェンジイル基、ビチオフェンジイル基、テルチオフェンジイル基、クアテルチオフェンジイル基がより好ましい。
【0038】
11及びR12は、式(1)で表される化合物の合成の容易さの観点からは、アルキル基が好ましい。
【0039】
21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、式(1)で表される化合物の合成の容易さの観点からは、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0040】
式(1)で表される化合物は、式(1)中のNで表される窒素原子が式(1)中のBで表されるホウ素原子と配位結合していてもよい。窒素原子(N)からホウ素原子(B)への配位結合を有すると、ホウ素原子(B)の空配位座を窒素原子(N)が保護するため、式(1)で表される化合物を重合反応のモノマーとして用いた場合に、Aで表される基とホウ素原子(B)との結合が重合反応前に切断される割合を抑制することができるため好ましい。
【0041】
窒素原子がホウ素原子の空配位座を保護する結果、Aで表される基とホウ素原子の結合切断を抑制する効果は、Aで表される基がヘテロアリーレン基である場合に、特に有効に発揮される。
【0042】
窒素原子(N)からホウ素原子(B)への配位結合を形成する観点からは、m1とn1の和が2であり、m2とn2の和が2であり、m3とn3の和が2であり、かつ、m4とn4の和が2であることが好ましく、m1、n1、m2、n2、m3、n3、m4及びn4が1であることがより好ましい。
【0043】
式(1)で表される化合物としては、例えば、式(1−001)〜式(1−041)で表される化合物が挙げられる。中でも、式(1−014)〜式(1−039)で表される化合物が好ましい。
【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
式(1−001)〜式(1−041)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数存在するRは、同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数存在するRは、同一でも異なっていてもよい。R及びRで表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例は、前述のR21で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。Rで表されるアルコキシ基、アルキルチオ基の定義、具体例は、前述のR21で表されるアルコキシ基、アルキルチオ基の定義、具体例と同じである。Gは、式(G−001)〜式(G−006)で表される構造単位を表す。式(1)で表される化合物の合成の容易さの観点からは、式(G−004)で表される構造単位が好ましく、式(G−004)で表される構造単位であって、式中のRが水素原子であり、かつ、Rがメチル基である構造単位がより好ましい。複数存在するGは、同一でも異なっていてもよい。
【0050】
【化11】

【0051】
式(1−001)〜式(1−031)中、R及びRは、前述と同じ意味を表す。
【0052】
式(1)中のAの好ましい一態様は、式(2)で表される基である。
【0053】
【化12】

【0054】
式(2)中、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基を表す。R41中の炭素原子とR42中の炭素原子とが結合して環状構造を形成してもよい。Yは、−S−、−O−、−Se−、−NR51−又は−CR61=CR62−を表す。R51、R61及びR62は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0055】
41及びR42で表される、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子の定義、具体例は、前述のR21で表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子の定義、具体例と同じである。
【0056】
51、R61及びR62で表される、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例は、前述のR21で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0057】
式(2)で表される化合物としては、例えば、式(1−028)〜式(1−032)で表される化合物及び式(1−037)で表される化合物が挙げられる。
【0058】
式(1)中のAの好ましい他の態様は、式(3)で表される基である。
【0059】
【化13】

【0060】
式(3)中、R71及びR72は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。uは1〜5の整数を表す。R71が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R72が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R71中の炭素原子とR72中の炭素原子とが結合して環状構造を形成してもよい。
【0061】
71及びR72で表される、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例は、前述のR21で表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0062】
Aが式(3)で表される基である化合物としては、例えば、式(1−019)で表される化合物、式(1−025)〜式(1−027)で表される化合物、式(1−038)で表される化合物及び式(1−039)で表される化合物が挙げられる。
【0063】
式(1)中のAの好ましい他の態様は、式(4)で表される基である。
【0064】
【化14】

【0065】
式(4)中、R81、R82、R83及びR84は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。vは1〜5の整数を表す。R81が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R82が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R83が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R84が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R81中の炭素原子とR82中の炭素原子とが結合して環状構造を形成してもよい。R83中の炭素原子とR84中の炭素原子とが結合して環状構造を形成してもよい。
【0066】
81、R82、R83及びR84で表される、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例は、前述のR21で表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0067】
Aが式(4)で表される基である化合物としては、例えば、式(1−001)で表される化合物、式(1−012)で表される化合物及び式(1−013)で表される化合物が挙げられる。
【0068】
式(1)で表される化合物は、例えば、次のようにして製造される。即ち、式
【0069】
【化15】

【0070】
[式中、Aは上記と同意義である。]
で表される有機ジボロン酸と、式
【0071】
【化16】

【0072】
[式中、R11、R21、R22、R23、R24、m1、m2、n1及びn2は上記と同意義である。]
で表されるボロン酸保護化合物及び/又は、式
【0073】
【化17】

【0074】
[式中、R12、R25、R26、R27、R28、m3、m4、n3及びn4は上記と同意義である。]
で表されるボロン酸保護化合物を反応させる。反応の操作は、例えば、両化合物を適量、適当な溶媒に溶解させて一定時間加熱すればよい。ボロン酸基とボロン酸保護化合物の反応を行う条件は公知であり、特許文献1に記載されている。但し、有機ジボロン酸とボロン酸保護化合物の反応量は、遊離のボロン酸基が残存しないように、モル比で1/2以下になる量に調節する。
【0075】
<高分子化合物の製造方法>
本発明の高分子化合物の製造方法は、遷移金属錯体及び塩基の存在下で、式(1)で表される化合物と、式(5)で表される化合物とを重合させる、式(6)で表される繰り返し単位と式(7)で表される繰り返し単位とを含有する高分子化合物の製造方法である。
【0076】
<式(5)で表される化合物>
式(5)中、Eは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、−C≡C−又は−CR91=CR92−を表す。R91及びR92は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。X及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基又はアリールスルホネート基を表す。
【0077】
Eで表される、アリーレン基、ヘテロアリーレン基の定義、具体例は、前述のAで表されるアリーレン基、ヘテロアリーレン基の定義、具体例と同じである。
【0078】
Eは、製造される高分子化合物の分子量を高める観点からは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基が好ましい。
【0079】
91及びR92で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例は、前述のR21で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0080】
式(5)中、X及びXで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0081】
式(5)中、X及びXで表されるアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基等が挙げられる。
【0082】
式(5)中、X及びXで表されるアリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、パラトルエンスルホネート基等が挙げられる。
【0083】
及びXとしては、製造される高分子化合物の分子量を高める観点からは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子、ヨウ素原子がさらに好ましい。
【0084】
式(5)で表される化合物としては、例えば、式(5−001)〜式(5−041)で表される化合物が挙げられる。
【0085】
【化18】

【0086】
【化19】

【0087】
【化20】

【0088】
【化21】

【0089】
【化22】

【0090】
式(5−001)〜式(5−041)中、R及びRは、前述と同じ意味を表す。Xは、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基又はアリールスルホネート基を表す。複数存在するXは、同一でも異なっていてもよい。
【0091】
Xで表されるハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基の定義、具体例は、Xで表されるハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基の定義、具体例と同じである。
【0092】
<塩基>
本発明の高分子化合物の製造方法に用いられる塩基は、無機塩基であっても有機塩基であってもよいが、無機塩基が好ましい。
【0093】
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸塩、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等のフッ化物が挙げられる。
無機塩基の中でも炭酸塩、リン酸塩が好ましい。
【0094】
有機塩基としては、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0095】
塩基の使用量は、式(1)で表される化合物1モルに対して、2〜20モルであることが好ましく、より好ましくは2〜10モルである。
【0096】
<遷移金属錯体>
本発明の高分子化合物の製造方法に用いられる遷移金属錯体は、第8〜10族の元素を含む遷移金属錯体が好ましく、第10族の元素を含む遷移金属錯体がより好ましく、パラジウム錯体、ニッケル錯体がさらに好ましく、パラジウム錯体が特に好ましい。
【0097】
前記遷移金属錯体は、少なくともひとつのホスフィン配位子を有することが好ましい。
【0098】
前記遷移金属錯体には、遷移金属錯体前駆体も含まれる。ここで、遷移金属錯体前駆体とは、反応系中で遷移金属錯体に変換される組成物である。該組成物としては、例えば、前駆体用遷移金属錯体とホスフィン配位子又はホスホニウム塩とを含む組成物が挙げられる。
【0099】
前記パラジウム錯体としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリストリルホスフィン)パラジウム(0)(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)ジクロリド、[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、及びビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド等が挙げられる。
【0100】
中でも、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドが好ましい。
【0101】
前記ニッケル錯体としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)ジクロリド、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド、[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]ニッケル(II)ジクロリド、[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル(II)ジクロリド等が挙げられる。
【0102】
前記前駆体用遷移金属錯体としては、Pd(dba)(ここでdbaは、トランス、トランス−ジベンジリデンアセトンを表す。)、Pd(dba)、酢酸パラジウム(II)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)等が挙げられる。
中でも、Pd(dba)、Pd(dba)、酢酸パラジウム(II)が好ましい。
【0103】
前記ホスフィン配位子とは、遷移金属に配位しうる化合物を意味する。該ホスフィン配位子としては、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリベンジルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類や、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)、トリス(メトキシフェニル)ホスフィン(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)等のトリアリールホスフィン類、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン等のジアリールアルキルホスフィン類、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、(2−ビフェニリル)ジ−tert−ブチルホスフィン等のジアルキルアリールホスフィン類、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロヘキサン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の二座配位ホスフィン類が挙げられる。
【0104】
中でも、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリトリルホスフィン(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)、トリス(メトキシフェニル)ホスフィン(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)が好ましい。
【0105】
前記ホスホニウム塩は、上記ホスフィン配位子とHBF、HPF、HSbF等の酸とから得られる塩であり、トリ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0106】
本発明の製造方法にホスホニウム塩を用いる場合、反応液中に存在する塩基によりホスホニウム塩がホスフィン配位子へと変換される。
【0107】
本発明の製造方法にホスホニウム塩を用いる場合は、塩基として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムを用いることが好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムがより好ましい。
【0108】
遷移金属錯体の使用量は、式(1)で表される化合物1モルに対して、0.0001〜10モルであることが好ましく、より好ましくは0.001〜1モルである。
【0109】
前駆体用遷移金属錯体の使用量は、式(1)で表される化合物1モルに対して、0.0001〜10モルであることが好ましく、より好ましくは0.001〜1モルである。
【0110】
ホスフィン配位子の使用量は、前駆体用遷移金属錯体1モルに対して、1〜10モルであることが好ましく、より好ましくは1〜4モルである。
【0111】
ホスホニウム塩の使用量は、前駆体用遷移金属錯体1モルに対して、1〜10モルであることが好ましく、より好ましくは1〜4モルである。
【0112】
なお、遷移金属錯体は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0113】
<重合反応条件>
本発明の高分子化合物の製造方法における重合反応温度は、20〜200℃であることが好ましい。重合反応を効率的に進行させる観点からは、50℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、副反応を抑える観点からは、180℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。
【0114】
重合反応時間は、通常、1分〜200時間である。重合反応を十分に進行させる観点からは、1時間以上が好ましい。
【0115】
前記重合反応は、無溶媒で行っても溶媒の存在下で行ってもよいが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒を使用する場合、用いる溶媒は反応不活性な溶媒であればよく、一種単独で用いても複数の溶媒を混合した混合溶媒として用いてもよい。溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル系溶媒、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒、水が挙げられ、芳香族炭化水素溶媒、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
【0116】
前記重合反応は、空気中で行っても、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいが、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0117】
<有機トランジスタ>
有機トランジスタとしては、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の高分子化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられる。このような構成を有する有機トランジスタとしては、例えば、電界効果型有機トランジスタが挙げられる。
【0118】
電界効果型有機トランジスタは、通常、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の高分子化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極と、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層とを有する有機トランジスタである。特に、ソース電極及びドレイン電極が、活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0119】
図1は、有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の一例を示す模式断面図である。図1に示す有機トランジスタ100は、ゲート電極3と、ゲート電極3上に形成された絶縁層2と、絶縁層2上に形成された活性層1と、活性層1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極4及びドレイン電極5と、を備えるものである。
【実施例】
【0120】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0121】
(分子量分析)
高分子化合物の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC、島津製作所製、商品名:LC−10AD)を用いて求めた。測定する高分子化合物は、テトラヒドロフランに溶解させ、GPCに注入した。GPCの移動相にはテトラヒドロフランを用いた。カラムは、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV検出器(島津製作所製、商品名:SPD−M10A)を用いた。
【0122】
(NMR分析)
NMR測定は、化合物をジメチルスルホキシド−dに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0123】
実施例1
(化合物Aの合成)
【0124】
【化23】

【0125】
フラスコに、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジボロン酸を1.50g(6.70mmol)、N−メチルイミノ二酢酸を2.07g(14.1mmol)、トルエンを30mL入れ、5時間還流させた。その後、生成した析出物をろ取し、析出物を水で洗浄し、次いで、メタノールで洗浄した。その後、析出物を乾燥させて化合物Aを得た。化合物Aの得量は2.75gであり、収率は92%であった。
【0126】
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ7.92(s,2H),4.28−4.56(m,8H),2.57(s,6H)
【0127】
実施例2
(化合物Bの合成)
【0128】
【化24】

【0129】
フラスコに、ビフェニル−4,4’−ジボロン酸を1.50g(6.20mmol)、N−メチルイミノ二酢酸を1.91g(13.0mmol)、トルエンを30mL入れ、5時間還流させた。その後、生成した析出物をろ取し、析出物を水で洗浄し、次いで、メタノールで洗浄した。これを乾燥させて化合物Bを得た。化合物Bの得量は2.59gであり、収率は90%であった。
【0130】
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ7.71(d,4H),7.56(d,4H),4.14−4.42(m,8H),2.57(s,6H)
【0131】
実施例3
(化合物Cの合成)
【0132】
【化25】

【0133】
フラスコに、チオフェン−2,5−ジボロン酸を1.50g(8.73mmol)、N−メチルイミノ二酢酸を2.70g(18.3mmol)、トルエンを30mL入れ、5時間還流させた。その後、生成した析出物をろ取し、析出物を水で洗浄し、メタノールで洗浄した。これを乾燥させて化合物Cを得た。化合物Cの得量は3.16gであり、収率は92%であった。
【0134】
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ7.30(s,2H),4.00−4.41(m,8H),2.60(s,6H)
【0135】
実施例4
(高分子化合物Dの合成)
【0136】
【化26】

【0137】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、化合物Aを50.0mg(0.112mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンを61.5mg(0.112mmol)、テトラヒドロフランを50mL、酢酸パラジウムを0.25mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィンを0.79mg入れて撹拌した。この反応液に、リン酸カリウム119mg(0.561mmol)を水10mLに溶解させた溶液を滴下し、9時間還流させて、高分子化合物Dを得た。高分子化合物Dのポリスチレン換算の数平均分子量は1.9×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は6.1×10であった。
【0138】
比較例1
(高分子化合物Eの合成)
【0139】
【化27】

【0140】
化合物Aに代えて、4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを43.5mg(0.112mmol)用いた以外は実施例4と同様に反応を行い、高分子化合物Eを得た。高分子化合物Eのポリスチレン換算の数平均分子量は7.4×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.5×10であった。
【0141】
比較例2
(高分子化合物Fの合成)
【0142】
【化28】

【0143】
化合物Aに代えて、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジボロン酸を25.1mg(0.112mmol)用いた以外は実施例4と同様に反応を行い、高分子化合物Fを得た。高分子化合物Fのポリスチレン換算の数平均分子量は4.8×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は6.8×10であった。
【0144】
実施例5
(高分子化合物Gの合成)
【0145】
【化29】

【0146】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、化合物Aを50.0mg(0.112mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンを61.5mg(0.112mmol)、テトラヒドロフランを50mL、酢酸パラジウムを0.25mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィンを0.79mg入れて撹拌した。この反応液に、炭酸ナトリウム59.4mg(0.561mmol)を水10mLに溶解させた溶液を滴下し、9時間還流させて、高分子化合物Gを得た。高分子化合物Gのポリスチレン換算の数平均分子量は3.0×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.5×10であった。
【0147】
比較例3
(高分子化合物Hの合成)
【0148】
【化30】

【0149】
化合物Aに代えて、4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを43.5mg(0.112mmol)用いた以外は実施例5と同様に反応を行い、高分子化合物Hを得た。高分子化合物Hのポリスチレン換算の数平均分子量は1.7×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は5.1×10であった。
【0150】
比較例4
(高分子化合物Iの合成)
【0151】
【化31】

【0152】
化合物Aに代えて、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジボロン酸を25.1mg(0.112mmol)用いた以外は実施例5と同様に反応を行い、高分子化合物Iを得た。高分子化合物Iのポリスチレン換算の数平均分子量は5.4×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は7.2×10であった。
【0153】
実施例6
(高分子化合物Jの合成)
【0154】
【化32】

【0155】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、化合物Bを50.0mg(0.108mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンを59.1mg(0.108mmol)、テトラヒドロフランを50mL、酢酸パラジウムを0.24mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィンを0.60mg入れて撹拌した。この反応液に、炭酸ナトリウム57.1mg(0.539mmol)を水10mLに溶解させた溶液を滴下し、9時間還流させて、高分子化合物Jを得た。高分子化合物Jのポリスチレン換算の数平均分子量は5.6×10であり、重量平均分子量は1.5×10であった。
【0156】
比較例5
(高分子化合物Kの合成)
【0157】
【化33】

【0158】
化合物Bに代えて、ビフェニル−4,4’−ジボロン酸を26.1mg(0.108mmol)用いた以外は実施例6と同様に反応を行い、高分子化合物Kを得た。高分子化合物Kのポリスチレン換算の数平均分子量は5.6×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.1×10であった。
【0159】
実施例7
(高分子化合物Lの合成)
【0160】
【化34】

【0161】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、化合物Cを50.0mg(0.127mmol)、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジテトラデシル−2,2’−ビチオフェンを69.6mg(0.127mmol)、テトラヒドロフランを50mL、酢酸パラジウムを0.28mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィンを0.71mg入れて撹拌した。この反応液に、炭酸ナトリウム67.3mg(0.635mmol)を水10mLに溶解させた溶液を滴下し、9時間還流させて、高分子化合物Lを得た。高分子化合物Lのポリスチレン換算の数平均分子量は3.7×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は8.7×10であった。
【0162】
比較例6
(高分子化合物Mの合成)
【0163】
【化35】

【0164】
化合物Cに代えて、チオフェン−2,5−ジボロン酸を21.8mg(0.127mmol)用いた以外は実施例7と同様に反応を行い、高分子化合物Mを得た。高分子化合物Mのポリスチレン換算の数平均分子量は5.4×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.0×10であった。
【0165】
参考例1
(有機トランジスタ1の作製及び評価)
電荷輸送性化合物として高分子化合物Lを含む溶液を用いて、図1に示す構造を有する有機トランジスタ1を作製した。
【0166】
ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板の表面を熱酸化し、シリコン酸化膜(以下、「熱酸化膜」という。)を形成した。熱酸化膜は絶縁層として機能する。次に、フォトリソグラフィ工程により熱酸化膜上にソース電極及びドレイン電極を作製した。該ソース電極及び該ドレイン電極は、熱酸化膜側からクロム(Cr)層と金(Au)層とを有し、チャネル長が20μm、チャネル幅が2mmであった。こうして得られた熱酸化膜、ソース電極及びドレイン電極を形成した基板をアセトンで超音波洗浄を行ない、オゾンUVクリーナーでUVオゾン処理を行なった。その後、β−フェネチルトリクロロシランで熱酸化膜の表面を修飾し、ペンタフルオロベンゼンチオールでソース電極及びドレイン電極の表面を修飾した。次に、上記表面処理した熱酸化膜、ソース電極及びドレイン電極上に、0.5重量%の高分子化合物Lのオルトジクロロベンゼン溶液を1000rpmの回転速度でスピンコートし、有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を230℃で1時間加熱し、有機トランジスタ1を製造した。
【0167】
得られた有機トランジスタ1のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、1.8×10−2cm/Vsであった。
【0168】
参考例2
(有機トランジスタ2の作製及び評価)
高分子化合物Lにかえて高分子化合物Mを用いた以外は参考例1と同様に有機トランジスタ2を作製した。
【0169】
得られた有機トランジスタ2のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、2.0×10−3cm/Vsであった。
【符号の説明】
【0170】
1…活性層、
2…絶縁層、
3…ゲート電極、
4…ソース電極、
5…ドレイン電極、
100…有機トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

〔式中、Aは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、−C≡C−又は−CR31=CR32−を表す。R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表す。R21が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R22が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R23が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R24が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R25が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R26が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R27が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R28が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立に、1から5の整数を表す。n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立に、0又は1を表す。〕
で表される化合物。
【請求項2】
Aが、ヘテロアリーレン基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、式
【化2】

〔式中、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基を表す。R41中の炭素原子とR42中の炭素原子とが結合して環状構造を形成してもよい。Yは、−S−、−O−、−Se−、−NR51−又は−CR61=CR62−を表す。R51、R61及びR62は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。〕
で表される基である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、式
【化3】

〔式中、R71及びR72は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。uは1〜5の整数を表す。R71が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R72が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R71中の炭素原子とR72中の炭素原子とが結合して環状構造を形成してもよい。〕
で表される基である請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Aが、式
【化4】

〔式中、R81、R82、R83及びR84は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。vは1〜5の整数を表す。R81が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R82が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R83が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R84が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。R81中の炭素原子とR82中の炭素原子とが結合して環状構造を形成してもよい。R83中の炭素原子とR84中の炭素原子とが結合して環状構造を形成してもよい。〕
で表される基である請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
m1とn1の和が2であり、m2とn2の和が2であり、m3とn3の和が2であり、かつ、m4とn4の和が2である請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
遷移金属錯体及び塩基の存在下で、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物と、式
【化5】

〔式中、Eは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、−C≡C−又は−CR91=CR92−を表す。R91及びR92は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。X及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基又はアリールスルホネート基を表す。〕
で表される化合物とを重合させる式(6)で表される繰り返し単位と式(7)で表される繰り返し単位とを含有する高分子化合物の製造方法。
【化6】

〔式(6)及び式(7)中、A及びEは、前述と同じ意味を表す。〕
【請求項8】
Eが、アリーレン基又はヘテロアリーレン基である請求項7に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項9】
及びXが、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である請求項7又は8に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項10】
塩基が、炭酸塩又はリン酸塩である請求項7〜9のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項11】
前記遷移金属錯体が、パラジウム錯体である請求項7〜10のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−214421(P2012−214421A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81397(P2011−81397)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】