高分子形マンノース結合型レクチンの大量生産方法
本発明は、ヒトマンノース結合型レクチンのコード領域の配列を含むベクターによって形質転換された組換えヒトマンノース結合型レクチン(rhMBL)生産用CHO細胞株で高分子形の組換えヒトMBLを大量生産する方法、及びバクテリアまたはカビのような微生物による感染及び/または免疫欠乏の予防及び治療のために前記方法によって製造された組換えヒトMBLの治療学的用途に関するものである。特に、本発明の組換えヒトMBLは、ウイルス、バクテリアまたはカビによって感染した個体を治療するのに有用なので、補体系を活性化するための開始剤として使用されるだけでなく、ヒトMBLを検出する診断用キットの製造にもまた有用に使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子形の組換えヒトマンノース結合型レクチン(rhMBL)の大量生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンノース結合型レクチン(mannose binding lectin:以下「MBL」と略称する)は、先天性免疫を担当している血清タンパク質で、その分子量は 32kDaで、カルボキシ−末端部位の炭水化物認識ドメイン(C−terminal carbohydrate recognition domain、CRD)、コラーゲンドメイン及びアミノ−末端部位のシステイン豊富地域(cysteine rich region)からなっている。前記コラーゲンドメインは、3個の分子が三重ラセン構造を形成して、3個のMBL分子からなる一つの複合体を形成した後、再びアミノ−末端部位のシステインによる内部分子間のニ硫化結合(−s−s−)を通じて6個の複合体が結合することにより、総18個からなる巨大なMBL分子を形成する。
【0003】
また、MBLは、MBL連関セリンプロテアーゼ(MBLassociated serine proteases;MASP−1、MASP−2またはMASP−3)またはMBL関連タンパク質(MBLassociated protein;Map19)のような他のタンパク質と結合する。MBLは、全体分子構造及び機能面で補体系(complement system)中の古典的な経路(classical pathway)の第1成分であるC1qと類似であるが、C1qとは異なりレクチン経路(lectin pathway)を通じてC4とC2を分割することにより補体系を活性化させる。MBLによる補体系の活性化は、抗体が形成される前に微生物感染に対する1次的な防御の役割をする。すなわち、補体系の活性化によってMBLの炭水化物認識ドメイン(CRD)が、微生物表面に存在する表面タンパク質の独特の糖化形態(glycosylation pattern)を認識して微生物と複合体を形成する。ここで前記複合体は、セリンプロテアーゼの前駆体であるMASP−1またはMASP−2のプロテアーゼ活性を誘導して補体系のC4とC2をC4b2aに活性化させて、窮極的にはC3bを形成して補体系を活性化させる。また、補体系を成すタンパク質の中で一部は、オプソニン(opsonin)として作用して微生物表面に直接結合することにより大食作用または中性白血球による食菌作用(phagocytosis)を誘導するが、MBLもまた、自体がオプソニンとして作用して微生物に直接結合することにより食細胞による食菌作用を誘導する。また、ある程度活性化されたタンパク質は、膜攻撃性複合体(membrane attacking complex、MAC)を形成して侵入した微生物を直接分解したりし、それ以外にも活性化過程で生成された補体タンパク質切片は、強い炎症反応を起こすサイトカインの分泌を促進することによって外来物質が存在する部位に白血球を集めるようにする。
【0004】
以前報告されたように、CHO細胞、またはHLF肝臓癌細胞、骨髄腫細胞またはHEK293 EBNA細胞を含む多様な細胞でMBL遺伝子が発現されることが明らかにされた。特に、CHO細胞では、MBL遺伝子が高収率で発現されたが、回収されたMBLは主に活性がない単量体またはニ量体の分子で、MBLの活性を示す高分子形重合体の生産量は非常に低いという問題があり(Katsuki Ohtani等.J.Immunol.Methods,1999年,第222巻,135−144頁)、HEK293EBNA細胞では、多重合体形態に発現したが、発現量が1μg/ml未満で非常に低く、MBL生産細胞株としては適当ではなかった(T.Vorup−Jensen等.International Immunopharmacology,2001年,第1巻,677−687頁)。
【0005】
中性白血球(neutrophil)、大食細胞(macrophage)等のような食菌作用をする細胞は、外部から侵入した微生物または異物を食菌作用及び直接的な溶菌によって効果的に除去する重要な役割をするだけでなく、APC(antigen presenting cell)として作用する大食細胞は、T−細胞を活性化させてインターフェロンガンマ、TNFまたはIL−12の分泌を誘導することにより後天性免疫反応もまた効果的に誘導する。すなわち、補体系を活性化することができる高分子形態のMBLは、先天性免疫反応に関与して人体での1次防御に重要な役割を果たすだけでなく、後天性免疫反応を誘導するのにおいても重要な役割をする。
【0006】
ヒト血清内MBLの量は、MBL遺伝子の遺伝的変異によって50ng/ml以下から3μg/ml以上の範囲で個人によって多くの差が見られ。例えば、MBL遺伝子中エクソン(exon)1の52番、54番または57番に点突然変異が発生すると、MBL分子間の複合体を形成することができなくてその活性が阻害される。また、MBL遺伝子のプローモーター部位に突然変異が発生する場合にも、MBLの発現量に影響を及ぼし得る。一般的に血中MBLの量が少ない人、特に新生児または免疫力が弱化した成人は、微生物感染に対する感受性が増加することが知られている(Sumiya、M.等,Lancet,1991年,第337巻,1569−1570頁;Summerfield、J.A.等,Lancet,1995年,第345巻,886頁;Garred、P.等,Lancet,1995年,第346巻,941頁;Summerfield、J.等,Br.Med J.,1997年,第314巻,1229頁;Mullighan、C. G.等,Scand J Immunol.,2000年,第51巻,111−122頁;Neth、O.等,Lancet,2001年,第358巻,614−618頁;Peterslund、N.A.等,Lancet,2001年,第358巻,637−638頁;Mullighan C.G.等,Blood,2002年,第99巻,3524−3529頁)。
【0007】
また、B型肝炎ウイルス感染患者を対象にした研究(Hakozaki Y.等、Liver,2002年,第22巻,29−34頁)では、B型肝炎ウイルスの感染によって劇症肝炎(Fulminant hepatic failure)に進展した患者たちの血漿内MBLの量が3μg/ml以上なら死亡率が0%で、1.5μg/mlなら死亡率が54%であり、0.5μg/ml以下なら死亡率がほぼ80%以上に達し、このような感染は、血漿内MBLの量に依存することが示された。したがって、MBL量が低い人にMBLを補充してやればこのような感染可能性を下げることができる。
【0008】
前記のような治療目的に組換えMBLを使用するために組換えMBLは、活性を示す多重合体の形態で大量発現されなければならないが、いまだに活性形態の組換えMBLを大量生産する方法が明らかにされていないのが実情である。
【0009】
したがって、本発明者等は、MBL結合型糖化タンパク質及びセリンプロテアーゼの存在下にMBL結合型糖化タンパク質に特異的に結合して補体を活性化する組換えMBLを解明するために鋭意研究努力した結果、ヒトMBLのコード領域の配列を含む発現ベクターで形質転換されたCHO細胞株から治療目的に使用できる活性形態の組換えヒトMBLを多重合体形態で大量生産することができることを確認して本発明を完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、組換えヒトマンノース結合型レクチン(recombinant human mannose binding lectin、rhMBL)、ヒトMBLのコード領域の配列を含むベクター、前記ベクターによって形質転換された組換えヒトMBL生産用CHO細胞株、前記CHO細胞株での組換えヒトMBLの大量生産方法、及び微生物による感染及び/または免疫欠乏の予防及び治療のための組換えヒトMBLの用途に関するものである。
【0011】
また、本発明は、i)抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体またはプレSタンパク質がテストライン(test line)に固定された支持体;ii)前記支持体の下端部に連結されて染料接合体が吸着した染料パッド(ここで、コントロールライン(control line)に抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体を固定した場合には、前記染料接合体は抗マウスIgG抗体−ゴールドパーティクルで、コントロールラインにプレSタンパク質を固定した場合には前記染料接合体はプレSタンパク質に対する抗体−ゴールドパーティクルである);及びiii)前記染料パッドの下端部に連結されたサンプルパッドを含む組換えヒトMBL検出用キット、前記MBL検出用キットの製造方法、及び前記MBL検出用キットを使用してMBLを検出する方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を果たすために、本発明は、ヒトMBLコード領域の配列を含む、図1の遺伝子地図に開示された発現ベクターpMSG−MBLを提供する。
【0013】
また、本発明は前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞株を提供する。
【0014】
また、本発明は、
(1)ヒトMBLコード領域の配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する工程;
(2)前記ヒトMBLコード領域配列を培養システムで発現させて組換えヒトMBLを生産する工程;及び
(3)工程(2)の組換えヒトMBLを精製する工程を含む高分子形の組換えMBLの大量生産方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、
i)抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体またはプレSタンパク質がテストライン(test line)に固定された支持体;
ii)前記支持体の下端部に連結されて染料接合体が吸着した染料パッド(ここで、コントロールライン(control line)に抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体を固定した場合には、前記染料接合体は抗マウスIgG抗体−ゴールドパーティクルで、コントロールラインにプレSタンパク質を固定した場合には、前記染料接合体はプレSタンパク質に対する抗体−ゴールドパーティクルである);及び
iii)前記染料パッドの下端部に連結されたサンプルパッドを含む、組換えヒトMBL検出用キットを提供する。
【0016】
また、本発明は、
(1)プレSまたは抗ヒトMBL抗体をゴールドパーティクルに結合させて染料接合体(dye conjugate)を製造する工程;
(2)前記染料接合体を染料パッドに吸着させる工程;
(3)工程1においてプレSがゴールドパーティクルに結合する場合に支持体にテストライン(test line)として抗ヒトMBL抗体及びコントロールライン(control line)として抗プレS抗体を結合させたり、抗ヒトMBL抗体がゴールドパーティクルに結合する場合には支持体にテストライン(test line)として抗ヒトMBL抗体及びコントロールライン(control line)として抗マウスIgG抗体を結合させたりする工程;及び
(4)前記支持体の下端部に前記染料パッド及びサンプルパッドを順次に付着させる工程を含むMBL検出用キットの製造方法を提供する。
【0017】
同時に、本発明は、
(1)支持体の下端部に結合された染料パッドにMBLが含まれた試料を処理する工程;及び
(2)支持体上のテストライン及びコントロールラインに抗体が結合することを確認する工程を含む、MBL検出用キットを使用してMBLを検出する方法を提供する。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、MBL結合型糖化タンパク質及びセリンプロテアーゼの存在下にMBL結合型糖化タンパク質に特異的に結合して補体を活性化する組換えヒトMBLを形質転換された宿主細胞で発現させるのに十分であり、ヒトMBLコード領域の配列を含む、図1の遺伝子地図に開示された発現ベクターpMSG−MBLを提供する。
【0019】
本発明の一実施態様は、ベータグロビン遺伝子のMAR因子(Nuclear matrix attachment region element)逆方向体、SV40ウイルスのpoly−A及びガストリン(gastrin)遺伝子の転写終結因子の組合わせ体を含むpMSG(寄託番号 KCCM(Korean culture center of microorganisms)10202)ベクターにヒトMBLcDNA(Gene Bank NM_000242)を挿入してpMSG−MBLベクターを製造することができる。
【0020】
また、本発明は、MBL結合型糖化タンパク質及びセリンプロテアーゼの存在下にMBL結合型糖化タンパク質に特異的に結合して補体を活性化する組換えヒトMBLを、形質転換された宿主細胞で発現させるのに十分であり、前記発現ベクターpMSG−MBLで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0021】
本発明での宿主細胞は、通常的な動物細胞であり、好ましくはCHO(Chinese hamster ovary)細胞、肝細胞(hepatocyte)、HEK(human embryonic kidney)細胞などからなる群から選択することができる。
【0022】
本発明の一実施態様では、MBL結合型糖化タンパク質及びセリンプロテアーゼの存在下でMBL結合型糖化タンパク質に特異的に結合して補体を活性化する組換えヒトMBLを形質転換された宿主細胞で発現させるのに十分であり、前記発現ベクターpMSG−MBLをCHO細胞株に導入して形質転換体を製造して、前記形質転換体をMTX(methotrexate)の存在下で適応させて組換えヒトMBLを多重合体形態で大量発現する形質転換体を選別した。選別された形質転換体は、CHOMBL/D1−3と名付けて、2003年5月16日付けで大韓民国大田所在の遺伝子銀行(Korean Collection for Type Culture)に寄託して、寄託番号KCTC 10472BPが付与された。
【0023】
本発明のMBL形質転換体で生産された組換えヒトMBLは、先天性免疫体系を活性化することができない単量体またはニ量体のようなオリゴマー(oligomer)形態ではない、ヒト来由の天然型MBLと類似の多重合体(multimerization)形態のタンパク質であり、本発明の組換えヒトMBLは形質転換されたCHO宿主細胞で多重合体形態で非常に高い発現率を示す。したがって、前記形質転換体は、組換えヒトMBLを大量生産することができる細胞株として使用することができる。
【0024】
また、本発明は、
(1)MBL結合型糖化タンパク質及びセリンプロテアーゼの存在下でMBL結合型糖化タンパク質に特異的に結合して補体を活性化する組換えヒトMBLを形質転換した宿主細胞で発現させるのに十分であり、ヒトMBLコード領域の配列を含む前記発現ベクターpMSG−MBLで形質転換された宿主細胞を提供する工程;
(2)前記ヒトMBLコード領域の配列を培養システムで発現して組換えヒトMBLを生産する工程;及び
(3)工程(2)の組換えヒトMBLを精製する工程を含む、組換えヒトMBLの生産方法を提供する。
【0025】
具体的には、本発明の工程(1)で前記MBL結合型糖化タンパク質の例としては、B型肝炎ウイルスのプレS(pre S)を含む糖化ウイルス性外皮タンパク質(envelope protein)、糖化バクテリア性タンパク質、糖化カビ性タンパク質及び人工合成糖化タンパク質を挙げることができる。
【0026】
本発明の好ましい実施態様で、工程(1)で前記工程(2)の組換えヒトMBLを生産する工程は、無血清/無タンパク培地で細胞を浮遊培養する工程;無血清/無タンパク培地で適応された細胞を継代培養することで順次にスケールアップして多重合体形態の組換えヒトMBLを大量生産する工程であることを特徴とする。
【0027】
本発明の好ましい実施態様で、前記工程(3)は陰イオン交換クロマトグラフィー法及びB型肝炎ウイルスプレSの結合性を使用して、MBL形質転換体の培養液から精製することができる。MBL精製方法は、(a)陰イオン交換クロマトグラフィー法を使用して多重合体を構成する高分子形組換えヒトMBL試料を分画化する工程;(b)B型肝炎ウイルスプレSが付着した基質を充填してカラムを製造する工程、(c)前記カラムを平衡化させた後、組換えヒトMBL試料をカルシウムイオンの存在下にカラムに投入して組換えヒトMBLを前記B型肝炎ウイルスプレSに特異的に結合させる工程;及び(d)前記組換えヒトMBLが結合されたカラムにEDTAまたはEGTAが含まれた緩衝液を流し入れて組換えヒトMBLを溶出させる工程であることを特徴とする。
【0028】
前記(a)工程で、前記基質は通常的な陰イオン交換クロマトグラフィー法に使用されるもので、その例としては、Q−セファロースがある。ここで、単量体またはニ量体形態のMBL試料は、NaClが150乃至200mM含まれた条件で分画され、多重合体形態の高分子形の組換えヒトMBL試料は、NaClが350乃至400mM含まれた条件で分画される。
【0029】
前記(b)工程で、前記基質は通常的な親和性クロマトグラフィーに使用されるもので、その例にはセファロースがある。
【0030】
前記(c)工程で、カラムの平衡化は組換えヒトMBLをB型肝炎ウイルスプレSと結合させる時に使用される同一な溶液または緩衝液をカラムに流し入れることにより実施することができる。組換えヒトMBLをB型肝炎ウイルスプレSと結合させる場合には、カルシウムイオンの存在下で実施するのが好ましく、ここでカルシウムの濃度は2乃至20mMであることが好ましい。組換えヒトMBL試料は、MBL形質転換体の培養培地またはMBL形質転換体の溶出物から修得された上澄み液であることができる。
【0031】
前記(d)工程で、組換えヒトMBLの溶出は、カルシウムイオンが含まれないEDTAまたはEGTA緩衝液を使用して実施する。前記緩衝液は、EDTAまたはEGTAが2乃至10mMの濃度で含まれた緩衝液、例えば蒸留水またはTris−Cl緩衝液であることができる。
【0032】
前記(d)工程以後に溶出物は、凍結乾燥したり、透析後凍結乾燥して精製された組換えヒトMBLを修得することができる。
【0033】
本発明の前記組換えヒトMBL精製方法は、形質転換体から生産された組換えヒトMBL以外にも天然の生体試料からMBLを精製するのに使用することができる。前記生体試料としては、血液、プラズマまたは血清(serum)が使用できる。
【0034】
また、本発明は、
i)抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体またはプレSタンパク質がテストライン(test line)に固定された支持体;
ii)前記支持体の下端部に連結されて染料接合体が吸着した染料パッド(ここで、コントロールライン(control line)に抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体を固定した場合には、前記染料接合体は抗マウスIgG抗体ゴールドパーティクルで、コントロールラインにプレSタンパク質を固定した場合には、前記染料接合体はプレSタンパク質に対する抗体ゴールドパーティクルである);及びiii)前記染料パッドの下端部に連結されたサンプルパッドを含む組換えヒトMBL検出用キットを提供する。
【0035】
本発明に使用され得る支持体としては、ニトロセルロース膜、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)及びナイロン膜(nylon membrane)を挙げることができる。また、本発明で使用できる染料パッドとしては、ポリエステル、グラスファイバー(glass fiber)などを挙げることができるが、それに限定されない。
【0036】
また、本発明は、
(1)プレSまたは抗ヒトMBL抗体をゴールドパーティクルに結合させて染料接合体を製造する工程;
(2)前記染料接合体を染料パッドに吸着させる工程;
(3)工程(1)においてプレSがゴールドパーティクルに結合する場合に支持体にテストライン(test line)として抗ヒトMBL抗体及びコントロールライン(control line)として抗プレS抗体を結合させたり、抗ヒトMBL抗体がゴールドパーティクルに結合する場合には支持体にテストライン(test line)として抗ヒトMBL抗体及びコントロールライン(control line)として抗マウスIgG抗体を結合させたりする工程;及び
(4)前記支持体の下端部に前記染料パッド及びサンプルパッドを順次に付着させる工程を含む、MBL検出用キットの製造方法を提供する。本発明で使用できる染料接合体には、プレSタンパク質または抗ヒトMBL抗体を挙げることができるが、それに限定されない。
【0037】
同時に、本発明は、
(1)支持体の下端部に結合された染料パッドにMBLが含まれた試料を処理する工程;及び
(2)支持体上のテストライン及びコントロールラインに抗体が結合することを確認する工程を含む、MBL検出用キットを使用してMBLを検出する方法を提供する。
【0038】
特に、本発明の組換えヒトMBLは、ウイルス、バクテリアまたはカビによって感染した個体を治療するのに有用なので、補体系を活性化するための開始剤として使用されるだけではなく、組換えヒトMBLを検出する診断用キットの製造にもまた、有用に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。
但し、下記の実施例は本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1:MBL形質転換体製作及び組換えヒトMBLの発現
1−1.発現ベクター製作
ヒトの肝細胞(hepatocyte)cDNAライブラリからPCR法によって修得されたMBLcDNAをpEZベクターにクローニングしてpEZ−MBL2−5を製造して、報告されたMBL塩基配列とMBLcDNA塩基配列を比べた(Gene Bank NM_000242)。鋳型としての前記pEZ−MBL2−5、及び順方向プライマー1及び逆方向プライマー2のセットを使用して、PCRを実施することにより約750bpのMBLcDNAを増幅した。プライマー各々は、制限酵素認識配列及びコザック配列(Kozak sequence)を含んでいて、暗号化部位全体を増幅することができる。続いて、MBLcDNAを pMSGベクター(寄託番号KCCM10202)にクローニングしてpMSG−MBLを製造し、遺伝子配列分析法によって挿入されたMBL塩基配列を確認した(図1)。
【0041】
順方向プライマー1(配列番号1)
ctagctagcc accatgtccc tgtttccatc actc(34mer)
逆方向プライマー2(配列番号2)
gaagatctca gatagggaac tcacagacg(29mer)
【0042】
1−2.宿主細胞へのpMSG−MBLの形質導入
1−2−1.pMSG−MBL発現プラスミドDNAの準備
pMSG−MBLを大膓菌(E.coli)に形質転換させた後、得られた形質転換体をアムピシリン(Ampicillin;Sigma、米国)100μg/mlを添加したLB培地100mlで培養して、プラスミドミディキット(QUIAPREP Plasmid Midi Kit;Quiagen、米国)を使用してpMSG−MBLDNAを分離した。分離したDNAをSca I制限酵素で切断して線形化して、PCR生成物精製キット(QIAQuick PCR product purification kit;Quiagen、米国)で分離して使用した。
【0043】
1−2−2.宿主細胞の準備
CHO DG44(dhfr−/dhfr−)宿主細胞を、10%cFBSを添加したα−MEM培地で培養した後、血球計数器(hemacytometer)を使用して細胞の数を測定した。10%cFBSを添加したα−MEM培地に2×105細胞/ウェルで分注して、CO2培養器で24時間培養した。
【0044】
1−2−3.形質転換
pMSG−MBLベクター2μgをDosperTM5.3μl、pDCH1Pベクター(DHFR遺伝子を含むプラスミド;Venolia,L.等.,Somat.Cell Mol.Genet.1987年,第13巻,491−501頁)DNA16ngと混合して常温で45分間反応させて、それを宿主細胞に添加した。37℃で6時間培養した後、培地を除去して、新鮮な10%cFBSを含むα−MEM培地を3ml/ウェルで添加して再び培養した。2乃至3日後、形質転換された細胞が充分に成長した時にトリプシンを処理し、続いて細胞(4×105細胞/ウェル)に10%dFBSを含むα−MEM(w/o)培地2mlを添加した後、それを培養した。2乃至3日間隔で培地を交換しながら顕微鏡で細胞の状態及び単一コロニーの生成有無を観察し、10日後に初期適応した細胞を得た。
【0045】
1−3.MBL発現細胞株の選別及び発現量の増幅
初期適応した細胞を得た後、培地に添加したMTX(methotrexate)濃度を段階的に増加させることにより、導入遺伝子の増幅を誘導した。初期適応した細胞を4×105細胞/ウェルで分注して、10nM MTXを添加した培地(α−MEM+10%dFBS)で培養した。2乃至3日間隔で培地を交換しながらコンフルエント(confluency)に至るまで培養した。前記細胞を4×105細胞/ウェルで再び分注した後に前記と同一な方法で100nM MTXを添加した培地で適応させて、引き続き1uM MTXの条件下で適応させた。上述したように導入した遺伝子の増幅過程を遂行する間、各工程で試料を採取してMBL発現量の変化をウエスタンブロットによって観察した。MBLは、培地に含有されたMTX濃度が高くなるにつれて発現量が増加することが示された。
【0046】
1−4.単一細胞株分離
MBL発現効率が高い単一細胞株を選別するために、1uM MTX培養条件で適応した細胞を0.5細胞/ウェルで96ウェル平板に分注して、1uM MTXを含んだ培地(α−MEM+10%dFBS)で培養した。約2週間後に単一コロニーが形成されると24ウェル平板に移して、それを継続的に培養して十分な数の細胞に増殖させた後、一部を凍結保管して、一部をウエスタンブロットによって細胞の発現量を比べた。多重合体を成す高分子形MBLを多量発現することが確認された単一細胞D1−3形質転換体を細胞株に選別し、それをCHOMBL/D1−3と命名して、2003年5月16日付けで大韓民国大田所在の遺伝子銀行(Korean Collection for Type Culture)に寄託して、寄託番号KCTC10472BPが付与された。形質転換体で発現した組換えMBLを非変性条件で電気泳動した結果、ヒト由来天然型MBLと類似の多重合体(multimerization)様相を示すことが明らかになった。
【0047】
1−5.形質転換体での組換えヒトMBL発現量の測定
ヒト血清から精製/定量された天然MBLと比べて形質転換体CHOMBL/D1−3での組換えヒトMBL発現量を分析した。T25フラスコに5×105個の細胞を分注して10%dFBSを含むα−MEM(w/o)培地で培養した。細胞が約90%のコンフルエント(confluency)に至った時、培地(α−MEM(w/o)+5%dFBS)3mlを添加した後、4日間培養した。得られた培養液を10倍希釈してウエスタンブロットを遂行して天然型MBLとの発現量を比べた。その結果、平板培養時に組換えヒトMBLの発現量は、約50μg/106細胞/日であると示された。
【0048】
実施例2:組換えヒトMBLの大量生産方法
2−1.無血清浮遊培養適応細胞株の確保
付着細胞であるMBL発現細胞株を10%dFBS及び1uM MTXを添加したα−MEM(w/o)培地で培養した後、細胞を回収して、0.15%重炭酸ナトリウムを添加した無タンパク培地HyQ SFM4CHO培地(Hyclone、米国)100mlを含む250mlスピンナーフラスコに5×105細胞/mlの濃度で接種した。スピンナーフラスコでの培養は、37℃の5%CO2インキュベーターで40rpmで撹拌しながら遂行した。細胞数が1.0乃至2.0×106細胞/mlに到達すると再び0.15%重炭酸ナトリウム100mlを添加したHyQ SFM4CHO培地に5×105細胞/mlの濃度で接種して、前記のように培養を繰り返した。細胞の生存度(cell viability)は、トリパンブルー色素排除法(trypan blue exclusion method)で決定し、適応過程後半期には細胞が90%以上の生存度を維持した。
【0049】
無血清浮遊培養培地に適応した細胞株を2.5×106細胞/mlの濃度まで培養した後、細胞を回収して凍結培地に再懸濁して、2.8×107細胞/mlの濃度で凍結用バイアル(cryovial)に分注して液体窒素タンクに保存した。
【0050】
2−2.無血清浮遊培養適応細胞株を使用した生物反応器(bioreactor)工程の開発
0.15%重炭酸ナトリウムを添加した無血清/無タンパク培地であるHyQ SFM4CHO培地100mlを含む250mlスピンナーフラスコに浮遊培養細胞を5×105細胞/mlの濃度で接種した。細胞数が1.0乃至2.0×106細胞/mlに到達すると、HyQ SFM4CHO培地200mlを含む500mlスピンナーフラスコに5×105細胞/mlの濃度で接種して培養して、再び細胞数が2×106細胞/mlに到達すると、HyQ SFM4CHO培地400mlを含む1,000mlスピンナーフラスコに5×105細胞/mlの濃度で接種して培養した。前記のように順次的な方式でスケールアップ(scale up)して、2.5×106細胞/ml濃度の接種用細胞1lを準備した。
【0051】
準備した接種用細胞を7.5l(5l作業容積)生物培養器に接種した後、50rpmで撹拌しながら34℃で5日間DO50で培養して目的とする培養液(pH7.2乃至7.4)を修得した。
【0052】
実施例3:高分子形の組換えヒトMBLの精製方法
MBLを大量発現するCHO細胞株をHyQ SFM4CHO培地で培養して、培養液を遠心分離した後に0.45μm膜を通過させて細胞を除去した。続いて、通常的な陰イオン交換クロマトグラフィー法及び親和性クロマトグラフィー法によって組換えヒトMBLを精製し、MBLエライザキットを使用してこれを定量化した。
【0053】
3−1.Qセファロースカラムを使用した多重合体含有試料の分画化
上澄み液のpHと伝導率を滴定した後、Qセファロースが充填されたカラムを通過させて単量体またはニ量体のような分子量が少ない形態(smaller form)のタンパク質を除去して、多重合体を含む分子量が大きい形態(larger form)のタンパク質を収集した。分子量が少ない形態のタンパク質試料を150乃至200mM NaClの緩衝液で分画して、分子量が大きい形態のタンパク質試料を350乃至400mM NaClの緩衝液で分画した。SDS−PAGE分析法によって組換えヒトMBL中で80%以上が多重合体形態である高分子形に発現されることを確認した(図2A)。
【0054】
3−2.プレS−セファロースカラムの製造
使用されたプレS組換えタンパク質は、B型肝炎ウイルスの表面タンパク質であるプレSタンパク質をサカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発現して高糖化された形態に精製した(国際公開公報WO02/094866号)。
【0055】
CNBrで活性化になったセファロース4Bパウダー1gを1mM HClに溶解させた後、数回洗浄した。プレS組換えタンパク質をリガンドに使用するためにプレS組換えタンパク質6.4mgをカップリング緩衝液(0.2M NaHCO3、0.5M NaCl及びpH8.3)に0.5乃至10mg/mlの濃度になるように溶解させた。セファロース4B樹脂をプレS溶液と混合した後、常温で2時間反応させて、それをブロッキング緩衝液(0.1M TrisCl、pH8.0)に移して、再び常温で2時間反応させた。洗浄後、セファロースに結合されたプレSをウエスタンブロットで確認した。その結果、大部分のプレS組換えタンパク質がセファロース樹脂に結合するということが確認された。プレS組換えタンパク質が結合されたプレS−セファロース4B樹脂をカラムに充填して、組換えヒトMBLを精製するためのプレS−セファロースカラムを製造した。
【0056】
3−3.組換えヒトMBL精製
プレS−セファロースが充填されたカラムを結合緩衝液(20mM Tris、150mM NaCl及び10mM CaCl2、pH7.6)で平衡化させた後、組換えヒトMBLの培養培地をカラムに積載して組換えヒトMBLを吸着させて、結合緩衝液でカラムを数回洗浄した。続いて、Ca2+イオンが添加されない溶出緩衝液(20mM Tris、150mM NaCl及び5mM EDTA、pH7.6)をカラムに通過させて、組換えヒトMBLを溶出させた。得られた溶出液をSDS−PAGE分析法によって確認した結果、純度が99.9%である組換えヒトMBLが精製されたことを確認した(図2A及びB)。
【0057】
実施例4:組換えヒトMBLの多重合体形成及び微生物表面への結合
4−1.組換えヒトMBLの多重合体形成確認
精製された組換えヒトMBLが、花束形態の多重合体を形成するかどうかを確認するため、精製された組換えヒトMBLを非結晶質炭素で処理した後、透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)であるテクナイ(Tecnai)12(FEI、オランダ)を使用して、組換えヒトMBLの形態を観察した。その結果、精製された組換えヒトMBLは、花束形態の多重合体を成すことが確認された(図3)。
【0058】
4−2.組換えヒトMBLとプレSが付着したゴールドパーティクルの結合
B型肝炎ウイルスの表面タンパク質であるプレSを使用したモデルシステムによって、組換えヒトMBLが微生物の表面に結合する方式を観察した。20乃至40nmサイズに該当するゴールドパーティクル表面に、プレSタンパク質を付着させて微生物の表面と類似の形態に製作して、カルシウムの存在下で組換えヒトMBLを添加した後、透過型電子顕微鏡のテクナイ(Tecnai)12を使用して組換えヒトMBLが結合された複合体形態を観察した。その結果、図4に図示されたように、組換えヒトMBLはプレSが付着したゴールドパーティクルを取り囲んでいる複合体形態の構造が観察された。実際に、組換えヒトMBLは、前記の方式で微生物表面にも付着して補体系を活性化して、微生物に対する防御をすることが分かった。また、組換えヒトMBLは、微生物がヒト細胞の表面に近付くことを遮断することによって、微生物の感染を抑制するということが分かった。
【0059】
実施例5:組換えヒトMBLの結合活性試験
カルシウムイオンの存在下で組換えヒトMBLが、プレS及びマンナンに結合するかどうかを確認するために下記のように組換えヒトMBLの生物活性実験を実施した。
【0060】
50mMのカーボネート−バイカーボネート緩衝液に溶解されたマンナンまたはB型ウイルスプレSタンパク質をウェル当り1μgになるようにヌンクマキシソープイムノプレート(Nunc Maxisorp Immunoplate)に添加して、4℃でひと晩コーティングした。それを洗浄緩衝液(20mM Tris、150mM NaCl、10mM CaCl2、0.05%Tween−20、pH7.6)で4回洗浄した後、0.2%BSAで常温で1時間ブロッキングした。続いて、洗浄緩衝液で3回洗浄して、結合緩衝液(20mM Tris、1M NaCl、10mM CaCl2、0.1%BSA、0.05%Tween−20、pH7.6)に溶解させた組換えヒトMBL1μgを入れて、常温で2時間反応させた。洗浄緩衝液で6回洗浄した後、マウス単一クローン性抗ヒトMBL8F6(mouse monoclonal anti−humanMBL8F6(ドゥビエル、大韓民国))を1:100に希釈して常温で2時間反応させた。抗マウスIgG−HRPを1:1500に希釈して常温で1時間反応させた後、OPD溶液150ulを入れて、20分間発色させた。3M HCL50μlを添加して反応を停止させた後、492nmでエライザ(ELISA)プレートリーダー(Multiskan Ex、Labsystems、米国)を使用してOD値を測定した。図5Aは、マンナン及びプレSタンパク質に対するヒト血漿−来由天然型MBLの結合性を示したもので、図5Bはマンナン及びプレSタンパク質に対する組換えヒトMBLの結合性を示したもので、天然MBL及び組換えヒトMBLは糖化されたプレS及びマンナンに類似の活性で結合する一方、BSAには結合しなかった(図5A及びB)。
【0061】
実施例6:高分子形組換えヒトMBLとオリゴマー型組換えヒトMBLの生物活性比較
多重合体を成す分子量が大きい形態と単一体及びニ量体を含んだ分子量が小さな形態の組換えヒトMBLの生物活性を比べるために、プレSに対する結合実験とC4活性化実験を実施した。
【0062】
6−1.糖化されたタンパク質プレSに対する結合試験
実施例5と同一な条件下でプレSタンパク質をヌンクマキシソープイムノプレート(Nunc Maxisorp Immunoplate)にコーティングした後、結合緩衝液(20mM Tris、1M NaCl、10mM CaCl2、0.1%BSA、0.05%Tween−20、pH7.6)に溶解された組換えヒトMBLを200ngから2倍数に希釈して添加して、37℃で1時間反応させた。ここで使用された組換えヒトMBLは、本発明で提供された多重合体形態の分子量が大きい高分子形の組換えヒトMBL(larger form)と単量体及びニ量体を多量に含む分子量が小さな組換えヒトMBL(smaller form)を各々使用して活性を比べた。抗ヒトMBLマウス単一クローン性抗体MB1B5(ドゥビエル、大韓民国)を1:10,000の割合に希釈して37℃で1時間反応させた。抗マウスIgG−HRPを1:10,000の割合に希釈して37℃で1時間反応させた後、100μl TMB溶液を入れて、30分間発色させた。続いて、反応停止液(H2SO4)50μlを添加した後、450nmでエライザ(ELISA)プレートリーダーを使用してOD値を測定した。
【0063】
多重合体を成す分子量が大きい形態の高分子形組換えヒトMBLは、単一体及びニ量体のようなオリゴマー型で主に成り立った分子量が小さな形態のタンパク質に比べてプレSに対する結合活性が非常に高いことが示された(図6)。
【0064】
6−2.補体係でのC4活性化試験
ヌンクマキシソープイムノプレート(Nunc Maxisorp Immunoplate)にウェル当り500ngのプレSでコーティングして、そこに相違する濃度の組換えヒトMBLを添加して常温で2時間結合させた。MASPタンパク質供給源でMBLが欠乏した血清(MBL−free serum)を1:100に希釈して使用した。それを洗浄緩衝液で6回洗浄した後、C4 500ngを入れて、常温で2時間反応させた。抗C4 抗体−HRPを1:1500に希釈して常温で1時間反応させた後にOPD溶液150μlを入れて、20分間発色させて、C4b沈殿物(deposit)を測定した。3M HCl50μlを添加した後、492nmでエライザ(ELISA)プレートリーダーでOD値を測定した(図7)。ここで、組換えヒトMBLは、本発明で提供された多重合体形態の高分子形組換えヒトMBLと単量体及びニ量体を多量に含む分子量が小さな組換えヒトMBLを各々使用して活性を比べた。図7に図示されたように、高分子形組換えタンパク質は優秀なC4活性化を誘導する一方、分子量が小さな形態のMBLは、C4活性化をほとんど誘導することができなかった。したがって、本発明で提供された多重合体形態の組換えヒトMBLが、C4活性化を誘導することが確認された。
【0065】
実施例7:多様な微生物に対する組換えヒトMBLの結合試験
S.aureusを含む11種のグラム陽性菌(gram positive bacteria)、グラム陰性菌(gram negative bacteria)及び真菌を選別して前記各々の菌株に適合した液体培地で培養した。ヌンクマキシソープイムノプレート(Nunc Maxisorp Immunoplate)にウェル当たり細胞数が1×107細胞/mlの濃度になるように4℃でひと晩中コーティングした。0.2%BSAを使用して37℃で1時間ブロッキングした後、結合緩衝液(20mM Tris、1M NaCl、10mM CaCl2、0.1%BSA、0.05%Tween−20、pH7.6)に溶解された組換えヒトMBL500ngを入れて、37℃で1時間反応させた。抗ヒトMBLマウス単一クローン性抗体MB1B5(ドゥビエル、大韓民国)を1:10,000の濃度に希釈して、37℃で1時間反応させた。抗マウスIgG−HRPを1:10,000の濃度に希釈して、37℃で1時間反応させた後、TMB溶液100μlを入れて、30分間発色させた。続いて、反応停止液(H2SO4)50μlを添加した後、450nmでエライザプレートリーダーを使用してOD値を測定した。
【0066】
本発明で使用した微生物は、微生物表面に対する組換えヒトMBLの結合力の差が多様な群から選択し、図8に図示したように、カンジダ・アルビカンス(C.albicans、インフルエンザ菌(H.influenzae ATCC51907)、黄色ブドウ球菌(S.aureus CCARM3197)及び黄色ブドウ球菌(S.aureus ATCC29213)は、組換えヒトMBLと高い結合力を示し、化膿連鎖球菌(S.pyogenes ATCC8668)、黄色ブドウ球菌(S.aureus CCARM3114)及び大便レンサ球菌(E.faecalis ATCC29212)は中間程度の結合力を示したが、肺炎桿菌(K.pneumoniae ATCC10031)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis ATCC12228)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis CCARM35048)、ヘシウム菌(E.faecium CCARM5028)は、組換えヒトMBLとの結合力が非常に低かった。したがって、組換えヒトMBLは、微生物表面の糖化された表面タンパク質パターンを認知して結合することが明らかになり、その結合程度は標的微生物によって相異することが分かった。
【0067】
実施例8:組換えヒトMBLによるSARSコロナウイルス(SARS−CoV)の感染抑制試験
サルの腎臓細胞FRhk−4をMEM培地に接種して培養して、得られた培養液に組換えヒトMBLを処理した後、SARSコロナウイルス(SARS−CoV)を感染させた。組換えヒトMBLは、2.5μg/mlの濃度で4倍ずつ順次に希釈して使用し、SARSコロナウイルスはサス感染患者から直接分離して使用した(Ksiazek T.G.等,N.Eng.J.Med,2003年,第348巻,1953−1966頁;Peiris等,Lancet,2003年,第361巻,1319−1325頁)。
【0068】
SARSコロナウイルスによる宿主細胞の感染有無を確認するため、SARS−CoVに特異的なプライマーを使用して定量的リアルタイムPCR(Quantitative Real−time PCR、GeneAmp PCR system、Applied Biosystems、米国)を実施した。対照群には培養液に組換えヒトMBLを処理しないでSARS−CoVによって感染したFRhk−4細胞を使用した。
【0069】
図9に図示したように、組換えヒトMBLを処理した場合には、濃度依存的にSARSコロナウイルスの感染を抑制し、組換えヒトMBLを2.5μg/mlで処理した場合、対照群に比べてウイルスの増殖が約15%以下に抑制されることが分かった。
【0070】
図10は、位相差顕微鏡(phase contrast microscope)でSARSコロナウイルスによって感染したFRhk−4細胞を観察した写真で、図10の(1)では組換えヒトMBLを処理しない対照群で元気な細胞が観察されないが、図10の(2)乃至(6)では組換えヒトMBLが処理された実験群で元気な細胞が観察された。特に、使用された組換えヒトMBLの濃度が高くなるにつれて元気な細胞の数が増加することが分かった。
【0071】
実施例9:臨床試料に含まれたMBL量の測定
B型肝炎ウイルスのプレSタンパク質が、MBLに結合する能力を使用して血液、血清、唾液などを含む臨床試料中のMBLの量を測定する診断方法を開発した。
【0072】
9−1.ゴールドパーティクルとプレSタンパク質の結合
粒子サイズが、20乃至80nmのコロイド性ゴールドパーティクルを準備した後、pH6.0乃至8.0条件下でプレSタンパク質を添加して、室温で撹拌しながら反応させた。反応後、10%BSA(Bovine Serum Albumin)を最終濃度が0.3%(重量/体積)になるように添加して、室温で15分間撹拌しながら反応させて残り表面をブロッキングした。12,000rpmで15分間遠心分離して上澄み液を除去した後、ペレットを2%BSAが含まれた緩衝液に懸濁させた。前記のように製作した染料接合体(dye conjugate)は、コロイド性ゴールドパーティクル表面にプレSタンパク質が均一に結合し、ここでコロイド性ゴールドパーティクルによって赤色または紫色を示す。
【0073】
9−2.診断用ストリップ(strip)製作
ニトロセルロース膜(S&S、米国)に通常的なインクジェットプリンターまたはスプレー型プリンターを使用してテストライン(test line)及びコントロールライン(control line)を引いて、前記通常的な方法によってテストラインには抗ヒトMBLマウス単一クローン性抗体MB1B5(ドゥビエル、大韓民国)を結合させて、コントロールラインにはプレSに対する単一クローン性抗体を結合させて診断用ストリップを製作した。診断用ストリップの支持体の下端部に連結された染料パッドであるポリエステルまたはグラスファイバー(glass fiber)には、染料接合体を吸着させて診断時に陽性または陰性を確認することができるマーカー(marker)として使用した。
【0074】
組換えヒトMBLが含まれた一滴の臨床試料を診断用ストリップの下端部に落とすと、臨床試料が毛細管現象及び拡散によってニトロセルロース膜にしたがって進行して、試料がテストラインに到達した場合にはMBL−プレS−ゴールドパーティクル複合体が抗ヒトMBLマウス単一クローン性抗体と結合してラインが赤色に変わり、コントロールラインに到達した場合にはMBL−プレS−ゴールドパーティクル複合体及びプレS−ゴールドパーティクルがプレSに対する単一クローン性抗体と結合してラインが赤色に変わった。したがって、試料中にMBLが存在する場合にはテストライン及びコントロールラインが陽性で示され、試料中にMBLが存在しない場合にはコントロールラインだけが陽性で示された(図11)。
【産業上の利用可能性】
【0075】
上述したように、本発明の高分子形組換えヒトマンノース結合型レクチン(rhMBL)は、ウイルス、バクテリアまたはカビによる感染を抑制する効果があるので、ウイルス、バクテリアまたはカビのような微生物、特にSARSコロナウイルスによる感染の予防及び/または治療に使用することができる治療剤の開発及び組換えヒトMBLを検出する診断用キットの製造に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】pMSG−MBLプラスミドベクターの遺伝子地図を示したものである。
【図2】A及びBは、形質転換体CHOMBL/D1−3で生産された組換えヒトMBLを精製してSDS−PAGEとウエスタンブロットで確認したものである。
【図3】組換えヒトMBLの電子顕微鏡写真である。
【図4】組換えヒトMBLとプレS−ゴールドパーティクルナノパーティクル複合体の電子顕微鏡写真である。
【図5】A及びBは、組換えヒトMBLが糖化されたタンパク質であるプレS(pre S)またはマンナン(mannan)に特異的に結合することを示すグラフである。
【図6】多重合体を成す分子量が大きい形態と単量体及びニ量体で主に成り立った分子量が小さな形態の組換えヒトMBLが糖化タンパク質であるプレSに結合する活性を比べたグラフである。
【図7】分子量が大きい形態と分子量が小さな形態の組換えヒトMBLがプレSに結合してC4を活性化する程度を比べたグラフである。
【図8】組換えヒトMBLが多様な微生物表面に特異的に結合する程度を示すグラフである。
【図9】組換えヒトMBLがSARSコロナウイルスによる感染を抑制する効果を示したグラフである。
【図10】SARSコロナウイルスを感染させたFRhK−4細胞を位相差顕微鏡(phase contrast microscope)で観察した写真である。
【図11】組換えヒトMBLを使用した診断用ストリップの例を示した写真である。
【配列表フリーテキスト】
【0077】
配列番号1 MBL cDNA増幅のためのフォワードプライマー1
配列番号2 MBL cDNA増幅のためのリバースプライマー2
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子形の組換えヒトマンノース結合型レクチン(rhMBL)の大量生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンノース結合型レクチン(mannose binding lectin:以下「MBL」と略称する)は、先天性免疫を担当している血清タンパク質で、その分子量は 32kDaで、カルボキシ−末端部位の炭水化物認識ドメイン(C−terminal carbohydrate recognition domain、CRD)、コラーゲンドメイン及びアミノ−末端部位のシステイン豊富地域(cysteine rich region)からなっている。前記コラーゲンドメインは、3個の分子が三重ラセン構造を形成して、3個のMBL分子からなる一つの複合体を形成した後、再びアミノ−末端部位のシステインによる内部分子間のニ硫化結合(−s−s−)を通じて6個の複合体が結合することにより、総18個からなる巨大なMBL分子を形成する。
【0003】
また、MBLは、MBL連関セリンプロテアーゼ(MBLassociated serine proteases;MASP−1、MASP−2またはMASP−3)またはMBL関連タンパク質(MBLassociated protein;Map19)のような他のタンパク質と結合する。MBLは、全体分子構造及び機能面で補体系(complement system)中の古典的な経路(classical pathway)の第1成分であるC1qと類似であるが、C1qとは異なりレクチン経路(lectin pathway)を通じてC4とC2を分割することにより補体系を活性化させる。MBLによる補体系の活性化は、抗体が形成される前に微生物感染に対する1次的な防御の役割をする。すなわち、補体系の活性化によってMBLの炭水化物認識ドメイン(CRD)が、微生物表面に存在する表面タンパク質の独特の糖化形態(glycosylation pattern)を認識して微生物と複合体を形成する。ここで前記複合体は、セリンプロテアーゼの前駆体であるMASP−1またはMASP−2のプロテアーゼ活性を誘導して補体系のC4とC2をC4b2aに活性化させて、窮極的にはC3bを形成して補体系を活性化させる。また、補体系を成すタンパク質の中で一部は、オプソニン(opsonin)として作用して微生物表面に直接結合することにより大食作用または中性白血球による食菌作用(phagocytosis)を誘導するが、MBLもまた、自体がオプソニンとして作用して微生物に直接結合することにより食細胞による食菌作用を誘導する。また、ある程度活性化されたタンパク質は、膜攻撃性複合体(membrane attacking complex、MAC)を形成して侵入した微生物を直接分解したりし、それ以外にも活性化過程で生成された補体タンパク質切片は、強い炎症反応を起こすサイトカインの分泌を促進することによって外来物質が存在する部位に白血球を集めるようにする。
【0004】
以前報告されたように、CHO細胞、またはHLF肝臓癌細胞、骨髄腫細胞またはHEK293 EBNA細胞を含む多様な細胞でMBL遺伝子が発現されることが明らかにされた。特に、CHO細胞では、MBL遺伝子が高収率で発現されたが、回収されたMBLは主に活性がない単量体またはニ量体の分子で、MBLの活性を示す高分子形重合体の生産量は非常に低いという問題があり(Katsuki Ohtani等.J.Immunol.Methods,1999年,第222巻,135−144頁)、HEK293EBNA細胞では、多重合体形態に発現したが、発現量が1μg/ml未満で非常に低く、MBL生産細胞株としては適当ではなかった(T.Vorup−Jensen等.International Immunopharmacology,2001年,第1巻,677−687頁)。
【0005】
中性白血球(neutrophil)、大食細胞(macrophage)等のような食菌作用をする細胞は、外部から侵入した微生物または異物を食菌作用及び直接的な溶菌によって効果的に除去する重要な役割をするだけでなく、APC(antigen presenting cell)として作用する大食細胞は、T−細胞を活性化させてインターフェロンガンマ、TNFまたはIL−12の分泌を誘導することにより後天性免疫反応もまた効果的に誘導する。すなわち、補体系を活性化することができる高分子形態のMBLは、先天性免疫反応に関与して人体での1次防御に重要な役割を果たすだけでなく、後天性免疫反応を誘導するのにおいても重要な役割をする。
【0006】
ヒト血清内MBLの量は、MBL遺伝子の遺伝的変異によって50ng/ml以下から3μg/ml以上の範囲で個人によって多くの差が見られ。例えば、MBL遺伝子中エクソン(exon)1の52番、54番または57番に点突然変異が発生すると、MBL分子間の複合体を形成することができなくてその活性が阻害される。また、MBL遺伝子のプローモーター部位に突然変異が発生する場合にも、MBLの発現量に影響を及ぼし得る。一般的に血中MBLの量が少ない人、特に新生児または免疫力が弱化した成人は、微生物感染に対する感受性が増加することが知られている(Sumiya、M.等,Lancet,1991年,第337巻,1569−1570頁;Summerfield、J.A.等,Lancet,1995年,第345巻,886頁;Garred、P.等,Lancet,1995年,第346巻,941頁;Summerfield、J.等,Br.Med J.,1997年,第314巻,1229頁;Mullighan、C. G.等,Scand J Immunol.,2000年,第51巻,111−122頁;Neth、O.等,Lancet,2001年,第358巻,614−618頁;Peterslund、N.A.等,Lancet,2001年,第358巻,637−638頁;Mullighan C.G.等,Blood,2002年,第99巻,3524−3529頁)。
【0007】
また、B型肝炎ウイルス感染患者を対象にした研究(Hakozaki Y.等、Liver,2002年,第22巻,29−34頁)では、B型肝炎ウイルスの感染によって劇症肝炎(Fulminant hepatic failure)に進展した患者たちの血漿内MBLの量が3μg/ml以上なら死亡率が0%で、1.5μg/mlなら死亡率が54%であり、0.5μg/ml以下なら死亡率がほぼ80%以上に達し、このような感染は、血漿内MBLの量に依存することが示された。したがって、MBL量が低い人にMBLを補充してやればこのような感染可能性を下げることができる。
【0008】
前記のような治療目的に組換えMBLを使用するために組換えMBLは、活性を示す多重合体の形態で大量発現されなければならないが、いまだに活性形態の組換えMBLを大量生産する方法が明らかにされていないのが実情である。
【0009】
したがって、本発明者等は、MBL結合型糖化タンパク質及びセリンプロテアーゼの存在下にMBL結合型糖化タンパク質に特異的に結合して補体を活性化する組換えMBLを解明するために鋭意研究努力した結果、ヒトMBLのコード領域の配列を含む発現ベクターで形質転換されたCHO細胞株から治療目的に使用できる活性形態の組換えヒトMBLを多重合体形態で大量生産することができることを確認して本発明を完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、組換えヒトマンノース結合型レクチン(recombinant human mannose binding lectin、rhMBL)、ヒトMBLのコード領域の配列を含むベクター、前記ベクターによって形質転換された組換えヒトMBL生産用CHO細胞株、前記CHO細胞株での組換えヒトMBLの大量生産方法、及び微生物による感染及び/または免疫欠乏の予防及び治療のための組換えヒトMBLの用途に関するものである。
【0011】
また、本発明は、i)抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体またはプレSタンパク質がテストライン(test line)に固定された支持体;ii)前記支持体の下端部に連結されて染料接合体が吸着した染料パッド(ここで、コントロールライン(control line)に抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体を固定した場合には、前記染料接合体は抗マウスIgG抗体−ゴールドパーティクルで、コントロールラインにプレSタンパク質を固定した場合には前記染料接合体はプレSタンパク質に対する抗体−ゴールドパーティクルである);及びiii)前記染料パッドの下端部に連結されたサンプルパッドを含む組換えヒトMBL検出用キット、前記MBL検出用キットの製造方法、及び前記MBL検出用キットを使用してMBLを検出する方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を果たすために、本発明は、ヒトMBLコード領域の配列を含む、図1の遺伝子地図に開示された発現ベクターpMSG−MBLを提供する。
【0013】
また、本発明は前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞株を提供する。
【0014】
また、本発明は、
(1)ヒトMBLコード領域の配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する工程;
(2)前記ヒトMBLコード領域配列を培養システムで発現させて組換えヒトMBLを生産する工程;及び
(3)工程(2)の組換えヒトMBLを精製する工程を含む高分子形の組換えMBLの大量生産方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、
i)抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体またはプレSタンパク質がテストライン(test line)に固定された支持体;
ii)前記支持体の下端部に連結されて染料接合体が吸着した染料パッド(ここで、コントロールライン(control line)に抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体を固定した場合には、前記染料接合体は抗マウスIgG抗体−ゴールドパーティクルで、コントロールラインにプレSタンパク質を固定した場合には、前記染料接合体はプレSタンパク質に対する抗体−ゴールドパーティクルである);及び
iii)前記染料パッドの下端部に連結されたサンプルパッドを含む、組換えヒトMBL検出用キットを提供する。
【0016】
また、本発明は、
(1)プレSまたは抗ヒトMBL抗体をゴールドパーティクルに結合させて染料接合体(dye conjugate)を製造する工程;
(2)前記染料接合体を染料パッドに吸着させる工程;
(3)工程1においてプレSがゴールドパーティクルに結合する場合に支持体にテストライン(test line)として抗ヒトMBL抗体及びコントロールライン(control line)として抗プレS抗体を結合させたり、抗ヒトMBL抗体がゴールドパーティクルに結合する場合には支持体にテストライン(test line)として抗ヒトMBL抗体及びコントロールライン(control line)として抗マウスIgG抗体を結合させたりする工程;及び
(4)前記支持体の下端部に前記染料パッド及びサンプルパッドを順次に付着させる工程を含むMBL検出用キットの製造方法を提供する。
【0017】
同時に、本発明は、
(1)支持体の下端部に結合された染料パッドにMBLが含まれた試料を処理する工程;及び
(2)支持体上のテストライン及びコントロールラインに抗体が結合することを確認する工程を含む、MBL検出用キットを使用してMBLを検出する方法を提供する。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、MBL結合型糖化タンパク質及びセリンプロテアーゼの存在下にMBL結合型糖化タンパク質に特異的に結合して補体を活性化する組換えヒトMBLを形質転換された宿主細胞で発現させるのに十分であり、ヒトMBLコード領域の配列を含む、図1の遺伝子地図に開示された発現ベクターpMSG−MBLを提供する。
【0019】
本発明の一実施態様は、ベータグロビン遺伝子のMAR因子(Nuclear matrix attachment region element)逆方向体、SV40ウイルスのpoly−A及びガストリン(gastrin)遺伝子の転写終結因子の組合わせ体を含むpMSG(寄託番号 KCCM(Korean culture center of microorganisms)10202)ベクターにヒトMBLcDNA(Gene Bank NM_000242)を挿入してpMSG−MBLベクターを製造することができる。
【0020】
また、本発明は、MBL結合型糖化タンパク質及びセリンプロテアーゼの存在下にMBL結合型糖化タンパク質に特異的に結合して補体を活性化する組換えヒトMBLを、形質転換された宿主細胞で発現させるのに十分であり、前記発現ベクターpMSG−MBLで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0021】
本発明での宿主細胞は、通常的な動物細胞であり、好ましくはCHO(Chinese hamster ovary)細胞、肝細胞(hepatocyte)、HEK(human embryonic kidney)細胞などからなる群から選択することができる。
【0022】
本発明の一実施態様では、MBL結合型糖化タンパク質及びセリンプロテアーゼの存在下でMBL結合型糖化タンパク質に特異的に結合して補体を活性化する組換えヒトMBLを形質転換された宿主細胞で発現させるのに十分であり、前記発現ベクターpMSG−MBLをCHO細胞株に導入して形質転換体を製造して、前記形質転換体をMTX(methotrexate)の存在下で適応させて組換えヒトMBLを多重合体形態で大量発現する形質転換体を選別した。選別された形質転換体は、CHOMBL/D1−3と名付けて、2003年5月16日付けで大韓民国大田所在の遺伝子銀行(Korean Collection for Type Culture)に寄託して、寄託番号KCTC 10472BPが付与された。
【0023】
本発明のMBL形質転換体で生産された組換えヒトMBLは、先天性免疫体系を活性化することができない単量体またはニ量体のようなオリゴマー(oligomer)形態ではない、ヒト来由の天然型MBLと類似の多重合体(multimerization)形態のタンパク質であり、本発明の組換えヒトMBLは形質転換されたCHO宿主細胞で多重合体形態で非常に高い発現率を示す。したがって、前記形質転換体は、組換えヒトMBLを大量生産することができる細胞株として使用することができる。
【0024】
また、本発明は、
(1)MBL結合型糖化タンパク質及びセリンプロテアーゼの存在下でMBL結合型糖化タンパク質に特異的に結合して補体を活性化する組換えヒトMBLを形質転換した宿主細胞で発現させるのに十分であり、ヒトMBLコード領域の配列を含む前記発現ベクターpMSG−MBLで形質転換された宿主細胞を提供する工程;
(2)前記ヒトMBLコード領域の配列を培養システムで発現して組換えヒトMBLを生産する工程;及び
(3)工程(2)の組換えヒトMBLを精製する工程を含む、組換えヒトMBLの生産方法を提供する。
【0025】
具体的には、本発明の工程(1)で前記MBL結合型糖化タンパク質の例としては、B型肝炎ウイルスのプレS(pre S)を含む糖化ウイルス性外皮タンパク質(envelope protein)、糖化バクテリア性タンパク質、糖化カビ性タンパク質及び人工合成糖化タンパク質を挙げることができる。
【0026】
本発明の好ましい実施態様で、工程(1)で前記工程(2)の組換えヒトMBLを生産する工程は、無血清/無タンパク培地で細胞を浮遊培養する工程;無血清/無タンパク培地で適応された細胞を継代培養することで順次にスケールアップして多重合体形態の組換えヒトMBLを大量生産する工程であることを特徴とする。
【0027】
本発明の好ましい実施態様で、前記工程(3)は陰イオン交換クロマトグラフィー法及びB型肝炎ウイルスプレSの結合性を使用して、MBL形質転換体の培養液から精製することができる。MBL精製方法は、(a)陰イオン交換クロマトグラフィー法を使用して多重合体を構成する高分子形組換えヒトMBL試料を分画化する工程;(b)B型肝炎ウイルスプレSが付着した基質を充填してカラムを製造する工程、(c)前記カラムを平衡化させた後、組換えヒトMBL試料をカルシウムイオンの存在下にカラムに投入して組換えヒトMBLを前記B型肝炎ウイルスプレSに特異的に結合させる工程;及び(d)前記組換えヒトMBLが結合されたカラムにEDTAまたはEGTAが含まれた緩衝液を流し入れて組換えヒトMBLを溶出させる工程であることを特徴とする。
【0028】
前記(a)工程で、前記基質は通常的な陰イオン交換クロマトグラフィー法に使用されるもので、その例としては、Q−セファロースがある。ここで、単量体またはニ量体形態のMBL試料は、NaClが150乃至200mM含まれた条件で分画され、多重合体形態の高分子形の組換えヒトMBL試料は、NaClが350乃至400mM含まれた条件で分画される。
【0029】
前記(b)工程で、前記基質は通常的な親和性クロマトグラフィーに使用されるもので、その例にはセファロースがある。
【0030】
前記(c)工程で、カラムの平衡化は組換えヒトMBLをB型肝炎ウイルスプレSと結合させる時に使用される同一な溶液または緩衝液をカラムに流し入れることにより実施することができる。組換えヒトMBLをB型肝炎ウイルスプレSと結合させる場合には、カルシウムイオンの存在下で実施するのが好ましく、ここでカルシウムの濃度は2乃至20mMであることが好ましい。組換えヒトMBL試料は、MBL形質転換体の培養培地またはMBL形質転換体の溶出物から修得された上澄み液であることができる。
【0031】
前記(d)工程で、組換えヒトMBLの溶出は、カルシウムイオンが含まれないEDTAまたはEGTA緩衝液を使用して実施する。前記緩衝液は、EDTAまたはEGTAが2乃至10mMの濃度で含まれた緩衝液、例えば蒸留水またはTris−Cl緩衝液であることができる。
【0032】
前記(d)工程以後に溶出物は、凍結乾燥したり、透析後凍結乾燥して精製された組換えヒトMBLを修得することができる。
【0033】
本発明の前記組換えヒトMBL精製方法は、形質転換体から生産された組換えヒトMBL以外にも天然の生体試料からMBLを精製するのに使用することができる。前記生体試料としては、血液、プラズマまたは血清(serum)が使用できる。
【0034】
また、本発明は、
i)抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体またはプレSタンパク質がテストライン(test line)に固定された支持体;
ii)前記支持体の下端部に連結されて染料接合体が吸着した染料パッド(ここで、コントロールライン(control line)に抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体を固定した場合には、前記染料接合体は抗マウスIgG抗体ゴールドパーティクルで、コントロールラインにプレSタンパク質を固定した場合には、前記染料接合体はプレSタンパク質に対する抗体ゴールドパーティクルである);及びiii)前記染料パッドの下端部に連結されたサンプルパッドを含む組換えヒトMBL検出用キットを提供する。
【0035】
本発明に使用され得る支持体としては、ニトロセルロース膜、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)及びナイロン膜(nylon membrane)を挙げることができる。また、本発明で使用できる染料パッドとしては、ポリエステル、グラスファイバー(glass fiber)などを挙げることができるが、それに限定されない。
【0036】
また、本発明は、
(1)プレSまたは抗ヒトMBL抗体をゴールドパーティクルに結合させて染料接合体を製造する工程;
(2)前記染料接合体を染料パッドに吸着させる工程;
(3)工程(1)においてプレSがゴールドパーティクルに結合する場合に支持体にテストライン(test line)として抗ヒトMBL抗体及びコントロールライン(control line)として抗プレS抗体を結合させたり、抗ヒトMBL抗体がゴールドパーティクルに結合する場合には支持体にテストライン(test line)として抗ヒトMBL抗体及びコントロールライン(control line)として抗マウスIgG抗体を結合させたりする工程;及び
(4)前記支持体の下端部に前記染料パッド及びサンプルパッドを順次に付着させる工程を含む、MBL検出用キットの製造方法を提供する。本発明で使用できる染料接合体には、プレSタンパク質または抗ヒトMBL抗体を挙げることができるが、それに限定されない。
【0037】
同時に、本発明は、
(1)支持体の下端部に結合された染料パッドにMBLが含まれた試料を処理する工程;及び
(2)支持体上のテストライン及びコントロールラインに抗体が結合することを確認する工程を含む、MBL検出用キットを使用してMBLを検出する方法を提供する。
【0038】
特に、本発明の組換えヒトMBLは、ウイルス、バクテリアまたはカビによって感染した個体を治療するのに有用なので、補体系を活性化するための開始剤として使用されるだけではなく、組換えヒトMBLを検出する診断用キットの製造にもまた、有用に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。
但し、下記の実施例は本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1:MBL形質転換体製作及び組換えヒトMBLの発現
1−1.発現ベクター製作
ヒトの肝細胞(hepatocyte)cDNAライブラリからPCR法によって修得されたMBLcDNAをpEZベクターにクローニングしてpEZ−MBL2−5を製造して、報告されたMBL塩基配列とMBLcDNA塩基配列を比べた(Gene Bank NM_000242)。鋳型としての前記pEZ−MBL2−5、及び順方向プライマー1及び逆方向プライマー2のセットを使用して、PCRを実施することにより約750bpのMBLcDNAを増幅した。プライマー各々は、制限酵素認識配列及びコザック配列(Kozak sequence)を含んでいて、暗号化部位全体を増幅することができる。続いて、MBLcDNAを pMSGベクター(寄託番号KCCM10202)にクローニングしてpMSG−MBLを製造し、遺伝子配列分析法によって挿入されたMBL塩基配列を確認した(図1)。
【0041】
順方向プライマー1(配列番号1)
ctagctagcc accatgtccc tgtttccatc actc(34mer)
逆方向プライマー2(配列番号2)
gaagatctca gatagggaac tcacagacg(29mer)
【0042】
1−2.宿主細胞へのpMSG−MBLの形質導入
1−2−1.pMSG−MBL発現プラスミドDNAの準備
pMSG−MBLを大膓菌(E.coli)に形質転換させた後、得られた形質転換体をアムピシリン(Ampicillin;Sigma、米国)100μg/mlを添加したLB培地100mlで培養して、プラスミドミディキット(QUIAPREP Plasmid Midi Kit;Quiagen、米国)を使用してpMSG−MBLDNAを分離した。分離したDNAをSca I制限酵素で切断して線形化して、PCR生成物精製キット(QIAQuick PCR product purification kit;Quiagen、米国)で分離して使用した。
【0043】
1−2−2.宿主細胞の準備
CHO DG44(dhfr−/dhfr−)宿主細胞を、10%cFBSを添加したα−MEM培地で培養した後、血球計数器(hemacytometer)を使用して細胞の数を測定した。10%cFBSを添加したα−MEM培地に2×105細胞/ウェルで分注して、CO2培養器で24時間培養した。
【0044】
1−2−3.形質転換
pMSG−MBLベクター2μgをDosperTM5.3μl、pDCH1Pベクター(DHFR遺伝子を含むプラスミド;Venolia,L.等.,Somat.Cell Mol.Genet.1987年,第13巻,491−501頁)DNA16ngと混合して常温で45分間反応させて、それを宿主細胞に添加した。37℃で6時間培養した後、培地を除去して、新鮮な10%cFBSを含むα−MEM培地を3ml/ウェルで添加して再び培養した。2乃至3日後、形質転換された細胞が充分に成長した時にトリプシンを処理し、続いて細胞(4×105細胞/ウェル)に10%dFBSを含むα−MEM(w/o)培地2mlを添加した後、それを培養した。2乃至3日間隔で培地を交換しながら顕微鏡で細胞の状態及び単一コロニーの生成有無を観察し、10日後に初期適応した細胞を得た。
【0045】
1−3.MBL発現細胞株の選別及び発現量の増幅
初期適応した細胞を得た後、培地に添加したMTX(methotrexate)濃度を段階的に増加させることにより、導入遺伝子の増幅を誘導した。初期適応した細胞を4×105細胞/ウェルで分注して、10nM MTXを添加した培地(α−MEM+10%dFBS)で培養した。2乃至3日間隔で培地を交換しながらコンフルエント(confluency)に至るまで培養した。前記細胞を4×105細胞/ウェルで再び分注した後に前記と同一な方法で100nM MTXを添加した培地で適応させて、引き続き1uM MTXの条件下で適応させた。上述したように導入した遺伝子の増幅過程を遂行する間、各工程で試料を採取してMBL発現量の変化をウエスタンブロットによって観察した。MBLは、培地に含有されたMTX濃度が高くなるにつれて発現量が増加することが示された。
【0046】
1−4.単一細胞株分離
MBL発現効率が高い単一細胞株を選別するために、1uM MTX培養条件で適応した細胞を0.5細胞/ウェルで96ウェル平板に分注して、1uM MTXを含んだ培地(α−MEM+10%dFBS)で培養した。約2週間後に単一コロニーが形成されると24ウェル平板に移して、それを継続的に培養して十分な数の細胞に増殖させた後、一部を凍結保管して、一部をウエスタンブロットによって細胞の発現量を比べた。多重合体を成す高分子形MBLを多量発現することが確認された単一細胞D1−3形質転換体を細胞株に選別し、それをCHOMBL/D1−3と命名して、2003年5月16日付けで大韓民国大田所在の遺伝子銀行(Korean Collection for Type Culture)に寄託して、寄託番号KCTC10472BPが付与された。形質転換体で発現した組換えMBLを非変性条件で電気泳動した結果、ヒト由来天然型MBLと類似の多重合体(multimerization)様相を示すことが明らかになった。
【0047】
1−5.形質転換体での組換えヒトMBL発現量の測定
ヒト血清から精製/定量された天然MBLと比べて形質転換体CHOMBL/D1−3での組換えヒトMBL発現量を分析した。T25フラスコに5×105個の細胞を分注して10%dFBSを含むα−MEM(w/o)培地で培養した。細胞が約90%のコンフルエント(confluency)に至った時、培地(α−MEM(w/o)+5%dFBS)3mlを添加した後、4日間培養した。得られた培養液を10倍希釈してウエスタンブロットを遂行して天然型MBLとの発現量を比べた。その結果、平板培養時に組換えヒトMBLの発現量は、約50μg/106細胞/日であると示された。
【0048】
実施例2:組換えヒトMBLの大量生産方法
2−1.無血清浮遊培養適応細胞株の確保
付着細胞であるMBL発現細胞株を10%dFBS及び1uM MTXを添加したα−MEM(w/o)培地で培養した後、細胞を回収して、0.15%重炭酸ナトリウムを添加した無タンパク培地HyQ SFM4CHO培地(Hyclone、米国)100mlを含む250mlスピンナーフラスコに5×105細胞/mlの濃度で接種した。スピンナーフラスコでの培養は、37℃の5%CO2インキュベーターで40rpmで撹拌しながら遂行した。細胞数が1.0乃至2.0×106細胞/mlに到達すると再び0.15%重炭酸ナトリウム100mlを添加したHyQ SFM4CHO培地に5×105細胞/mlの濃度で接種して、前記のように培養を繰り返した。細胞の生存度(cell viability)は、トリパンブルー色素排除法(trypan blue exclusion method)で決定し、適応過程後半期には細胞が90%以上の生存度を維持した。
【0049】
無血清浮遊培養培地に適応した細胞株を2.5×106細胞/mlの濃度まで培養した後、細胞を回収して凍結培地に再懸濁して、2.8×107細胞/mlの濃度で凍結用バイアル(cryovial)に分注して液体窒素タンクに保存した。
【0050】
2−2.無血清浮遊培養適応細胞株を使用した生物反応器(bioreactor)工程の開発
0.15%重炭酸ナトリウムを添加した無血清/無タンパク培地であるHyQ SFM4CHO培地100mlを含む250mlスピンナーフラスコに浮遊培養細胞を5×105細胞/mlの濃度で接種した。細胞数が1.0乃至2.0×106細胞/mlに到達すると、HyQ SFM4CHO培地200mlを含む500mlスピンナーフラスコに5×105細胞/mlの濃度で接種して培養して、再び細胞数が2×106細胞/mlに到達すると、HyQ SFM4CHO培地400mlを含む1,000mlスピンナーフラスコに5×105細胞/mlの濃度で接種して培養した。前記のように順次的な方式でスケールアップ(scale up)して、2.5×106細胞/ml濃度の接種用細胞1lを準備した。
【0051】
準備した接種用細胞を7.5l(5l作業容積)生物培養器に接種した後、50rpmで撹拌しながら34℃で5日間DO50で培養して目的とする培養液(pH7.2乃至7.4)を修得した。
【0052】
実施例3:高分子形の組換えヒトMBLの精製方法
MBLを大量発現するCHO細胞株をHyQ SFM4CHO培地で培養して、培養液を遠心分離した後に0.45μm膜を通過させて細胞を除去した。続いて、通常的な陰イオン交換クロマトグラフィー法及び親和性クロマトグラフィー法によって組換えヒトMBLを精製し、MBLエライザキットを使用してこれを定量化した。
【0053】
3−1.Qセファロースカラムを使用した多重合体含有試料の分画化
上澄み液のpHと伝導率を滴定した後、Qセファロースが充填されたカラムを通過させて単量体またはニ量体のような分子量が少ない形態(smaller form)のタンパク質を除去して、多重合体を含む分子量が大きい形態(larger form)のタンパク質を収集した。分子量が少ない形態のタンパク質試料を150乃至200mM NaClの緩衝液で分画して、分子量が大きい形態のタンパク質試料を350乃至400mM NaClの緩衝液で分画した。SDS−PAGE分析法によって組換えヒトMBL中で80%以上が多重合体形態である高分子形に発現されることを確認した(図2A)。
【0054】
3−2.プレS−セファロースカラムの製造
使用されたプレS組換えタンパク質は、B型肝炎ウイルスの表面タンパク質であるプレSタンパク質をサカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発現して高糖化された形態に精製した(国際公開公報WO02/094866号)。
【0055】
CNBrで活性化になったセファロース4Bパウダー1gを1mM HClに溶解させた後、数回洗浄した。プレS組換えタンパク質をリガンドに使用するためにプレS組換えタンパク質6.4mgをカップリング緩衝液(0.2M NaHCO3、0.5M NaCl及びpH8.3)に0.5乃至10mg/mlの濃度になるように溶解させた。セファロース4B樹脂をプレS溶液と混合した後、常温で2時間反応させて、それをブロッキング緩衝液(0.1M TrisCl、pH8.0)に移して、再び常温で2時間反応させた。洗浄後、セファロースに結合されたプレSをウエスタンブロットで確認した。その結果、大部分のプレS組換えタンパク質がセファロース樹脂に結合するということが確認された。プレS組換えタンパク質が結合されたプレS−セファロース4B樹脂をカラムに充填して、組換えヒトMBLを精製するためのプレS−セファロースカラムを製造した。
【0056】
3−3.組換えヒトMBL精製
プレS−セファロースが充填されたカラムを結合緩衝液(20mM Tris、150mM NaCl及び10mM CaCl2、pH7.6)で平衡化させた後、組換えヒトMBLの培養培地をカラムに積載して組換えヒトMBLを吸着させて、結合緩衝液でカラムを数回洗浄した。続いて、Ca2+イオンが添加されない溶出緩衝液(20mM Tris、150mM NaCl及び5mM EDTA、pH7.6)をカラムに通過させて、組換えヒトMBLを溶出させた。得られた溶出液をSDS−PAGE分析法によって確認した結果、純度が99.9%である組換えヒトMBLが精製されたことを確認した(図2A及びB)。
【0057】
実施例4:組換えヒトMBLの多重合体形成及び微生物表面への結合
4−1.組換えヒトMBLの多重合体形成確認
精製された組換えヒトMBLが、花束形態の多重合体を形成するかどうかを確認するため、精製された組換えヒトMBLを非結晶質炭素で処理した後、透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)であるテクナイ(Tecnai)12(FEI、オランダ)を使用して、組換えヒトMBLの形態を観察した。その結果、精製された組換えヒトMBLは、花束形態の多重合体を成すことが確認された(図3)。
【0058】
4−2.組換えヒトMBLとプレSが付着したゴールドパーティクルの結合
B型肝炎ウイルスの表面タンパク質であるプレSを使用したモデルシステムによって、組換えヒトMBLが微生物の表面に結合する方式を観察した。20乃至40nmサイズに該当するゴールドパーティクル表面に、プレSタンパク質を付着させて微生物の表面と類似の形態に製作して、カルシウムの存在下で組換えヒトMBLを添加した後、透過型電子顕微鏡のテクナイ(Tecnai)12を使用して組換えヒトMBLが結合された複合体形態を観察した。その結果、図4に図示されたように、組換えヒトMBLはプレSが付着したゴールドパーティクルを取り囲んでいる複合体形態の構造が観察された。実際に、組換えヒトMBLは、前記の方式で微生物表面にも付着して補体系を活性化して、微生物に対する防御をすることが分かった。また、組換えヒトMBLは、微生物がヒト細胞の表面に近付くことを遮断することによって、微生物の感染を抑制するということが分かった。
【0059】
実施例5:組換えヒトMBLの結合活性試験
カルシウムイオンの存在下で組換えヒトMBLが、プレS及びマンナンに結合するかどうかを確認するために下記のように組換えヒトMBLの生物活性実験を実施した。
【0060】
50mMのカーボネート−バイカーボネート緩衝液に溶解されたマンナンまたはB型ウイルスプレSタンパク質をウェル当り1μgになるようにヌンクマキシソープイムノプレート(Nunc Maxisorp Immunoplate)に添加して、4℃でひと晩コーティングした。それを洗浄緩衝液(20mM Tris、150mM NaCl、10mM CaCl2、0.05%Tween−20、pH7.6)で4回洗浄した後、0.2%BSAで常温で1時間ブロッキングした。続いて、洗浄緩衝液で3回洗浄して、結合緩衝液(20mM Tris、1M NaCl、10mM CaCl2、0.1%BSA、0.05%Tween−20、pH7.6)に溶解させた組換えヒトMBL1μgを入れて、常温で2時間反応させた。洗浄緩衝液で6回洗浄した後、マウス単一クローン性抗ヒトMBL8F6(mouse monoclonal anti−humanMBL8F6(ドゥビエル、大韓民国))を1:100に希釈して常温で2時間反応させた。抗マウスIgG−HRPを1:1500に希釈して常温で1時間反応させた後、OPD溶液150ulを入れて、20分間発色させた。3M HCL50μlを添加して反応を停止させた後、492nmでエライザ(ELISA)プレートリーダー(Multiskan Ex、Labsystems、米国)を使用してOD値を測定した。図5Aは、マンナン及びプレSタンパク質に対するヒト血漿−来由天然型MBLの結合性を示したもので、図5Bはマンナン及びプレSタンパク質に対する組換えヒトMBLの結合性を示したもので、天然MBL及び組換えヒトMBLは糖化されたプレS及びマンナンに類似の活性で結合する一方、BSAには結合しなかった(図5A及びB)。
【0061】
実施例6:高分子形組換えヒトMBLとオリゴマー型組換えヒトMBLの生物活性比較
多重合体を成す分子量が大きい形態と単一体及びニ量体を含んだ分子量が小さな形態の組換えヒトMBLの生物活性を比べるために、プレSに対する結合実験とC4活性化実験を実施した。
【0062】
6−1.糖化されたタンパク質プレSに対する結合試験
実施例5と同一な条件下でプレSタンパク質をヌンクマキシソープイムノプレート(Nunc Maxisorp Immunoplate)にコーティングした後、結合緩衝液(20mM Tris、1M NaCl、10mM CaCl2、0.1%BSA、0.05%Tween−20、pH7.6)に溶解された組換えヒトMBLを200ngから2倍数に希釈して添加して、37℃で1時間反応させた。ここで使用された組換えヒトMBLは、本発明で提供された多重合体形態の分子量が大きい高分子形の組換えヒトMBL(larger form)と単量体及びニ量体を多量に含む分子量が小さな組換えヒトMBL(smaller form)を各々使用して活性を比べた。抗ヒトMBLマウス単一クローン性抗体MB1B5(ドゥビエル、大韓民国)を1:10,000の割合に希釈して37℃で1時間反応させた。抗マウスIgG−HRPを1:10,000の割合に希釈して37℃で1時間反応させた後、100μl TMB溶液を入れて、30分間発色させた。続いて、反応停止液(H2SO4)50μlを添加した後、450nmでエライザ(ELISA)プレートリーダーを使用してOD値を測定した。
【0063】
多重合体を成す分子量が大きい形態の高分子形組換えヒトMBLは、単一体及びニ量体のようなオリゴマー型で主に成り立った分子量が小さな形態のタンパク質に比べてプレSに対する結合活性が非常に高いことが示された(図6)。
【0064】
6−2.補体係でのC4活性化試験
ヌンクマキシソープイムノプレート(Nunc Maxisorp Immunoplate)にウェル当り500ngのプレSでコーティングして、そこに相違する濃度の組換えヒトMBLを添加して常温で2時間結合させた。MASPタンパク質供給源でMBLが欠乏した血清(MBL−free serum)を1:100に希釈して使用した。それを洗浄緩衝液で6回洗浄した後、C4 500ngを入れて、常温で2時間反応させた。抗C4 抗体−HRPを1:1500に希釈して常温で1時間反応させた後にOPD溶液150μlを入れて、20分間発色させて、C4b沈殿物(deposit)を測定した。3M HCl50μlを添加した後、492nmでエライザ(ELISA)プレートリーダーでOD値を測定した(図7)。ここで、組換えヒトMBLは、本発明で提供された多重合体形態の高分子形組換えヒトMBLと単量体及びニ量体を多量に含む分子量が小さな組換えヒトMBLを各々使用して活性を比べた。図7に図示されたように、高分子形組換えタンパク質は優秀なC4活性化を誘導する一方、分子量が小さな形態のMBLは、C4活性化をほとんど誘導することができなかった。したがって、本発明で提供された多重合体形態の組換えヒトMBLが、C4活性化を誘導することが確認された。
【0065】
実施例7:多様な微生物に対する組換えヒトMBLの結合試験
S.aureusを含む11種のグラム陽性菌(gram positive bacteria)、グラム陰性菌(gram negative bacteria)及び真菌を選別して前記各々の菌株に適合した液体培地で培養した。ヌンクマキシソープイムノプレート(Nunc Maxisorp Immunoplate)にウェル当たり細胞数が1×107細胞/mlの濃度になるように4℃でひと晩中コーティングした。0.2%BSAを使用して37℃で1時間ブロッキングした後、結合緩衝液(20mM Tris、1M NaCl、10mM CaCl2、0.1%BSA、0.05%Tween−20、pH7.6)に溶解された組換えヒトMBL500ngを入れて、37℃で1時間反応させた。抗ヒトMBLマウス単一クローン性抗体MB1B5(ドゥビエル、大韓民国)を1:10,000の濃度に希釈して、37℃で1時間反応させた。抗マウスIgG−HRPを1:10,000の濃度に希釈して、37℃で1時間反応させた後、TMB溶液100μlを入れて、30分間発色させた。続いて、反応停止液(H2SO4)50μlを添加した後、450nmでエライザプレートリーダーを使用してOD値を測定した。
【0066】
本発明で使用した微生物は、微生物表面に対する組換えヒトMBLの結合力の差が多様な群から選択し、図8に図示したように、カンジダ・アルビカンス(C.albicans、インフルエンザ菌(H.influenzae ATCC51907)、黄色ブドウ球菌(S.aureus CCARM3197)及び黄色ブドウ球菌(S.aureus ATCC29213)は、組換えヒトMBLと高い結合力を示し、化膿連鎖球菌(S.pyogenes ATCC8668)、黄色ブドウ球菌(S.aureus CCARM3114)及び大便レンサ球菌(E.faecalis ATCC29212)は中間程度の結合力を示したが、肺炎桿菌(K.pneumoniae ATCC10031)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis ATCC12228)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis CCARM35048)、ヘシウム菌(E.faecium CCARM5028)は、組換えヒトMBLとの結合力が非常に低かった。したがって、組換えヒトMBLは、微生物表面の糖化された表面タンパク質パターンを認知して結合することが明らかになり、その結合程度は標的微生物によって相異することが分かった。
【0067】
実施例8:組換えヒトMBLによるSARSコロナウイルス(SARS−CoV)の感染抑制試験
サルの腎臓細胞FRhk−4をMEM培地に接種して培養して、得られた培養液に組換えヒトMBLを処理した後、SARSコロナウイルス(SARS−CoV)を感染させた。組換えヒトMBLは、2.5μg/mlの濃度で4倍ずつ順次に希釈して使用し、SARSコロナウイルスはサス感染患者から直接分離して使用した(Ksiazek T.G.等,N.Eng.J.Med,2003年,第348巻,1953−1966頁;Peiris等,Lancet,2003年,第361巻,1319−1325頁)。
【0068】
SARSコロナウイルスによる宿主細胞の感染有無を確認するため、SARS−CoVに特異的なプライマーを使用して定量的リアルタイムPCR(Quantitative Real−time PCR、GeneAmp PCR system、Applied Biosystems、米国)を実施した。対照群には培養液に組換えヒトMBLを処理しないでSARS−CoVによって感染したFRhk−4細胞を使用した。
【0069】
図9に図示したように、組換えヒトMBLを処理した場合には、濃度依存的にSARSコロナウイルスの感染を抑制し、組換えヒトMBLを2.5μg/mlで処理した場合、対照群に比べてウイルスの増殖が約15%以下に抑制されることが分かった。
【0070】
図10は、位相差顕微鏡(phase contrast microscope)でSARSコロナウイルスによって感染したFRhk−4細胞を観察した写真で、図10の(1)では組換えヒトMBLを処理しない対照群で元気な細胞が観察されないが、図10の(2)乃至(6)では組換えヒトMBLが処理された実験群で元気な細胞が観察された。特に、使用された組換えヒトMBLの濃度が高くなるにつれて元気な細胞の数が増加することが分かった。
【0071】
実施例9:臨床試料に含まれたMBL量の測定
B型肝炎ウイルスのプレSタンパク質が、MBLに結合する能力を使用して血液、血清、唾液などを含む臨床試料中のMBLの量を測定する診断方法を開発した。
【0072】
9−1.ゴールドパーティクルとプレSタンパク質の結合
粒子サイズが、20乃至80nmのコロイド性ゴールドパーティクルを準備した後、pH6.0乃至8.0条件下でプレSタンパク質を添加して、室温で撹拌しながら反応させた。反応後、10%BSA(Bovine Serum Albumin)を最終濃度が0.3%(重量/体積)になるように添加して、室温で15分間撹拌しながら反応させて残り表面をブロッキングした。12,000rpmで15分間遠心分離して上澄み液を除去した後、ペレットを2%BSAが含まれた緩衝液に懸濁させた。前記のように製作した染料接合体(dye conjugate)は、コロイド性ゴールドパーティクル表面にプレSタンパク質が均一に結合し、ここでコロイド性ゴールドパーティクルによって赤色または紫色を示す。
【0073】
9−2.診断用ストリップ(strip)製作
ニトロセルロース膜(S&S、米国)に通常的なインクジェットプリンターまたはスプレー型プリンターを使用してテストライン(test line)及びコントロールライン(control line)を引いて、前記通常的な方法によってテストラインには抗ヒトMBLマウス単一クローン性抗体MB1B5(ドゥビエル、大韓民国)を結合させて、コントロールラインにはプレSに対する単一クローン性抗体を結合させて診断用ストリップを製作した。診断用ストリップの支持体の下端部に連結された染料パッドであるポリエステルまたはグラスファイバー(glass fiber)には、染料接合体を吸着させて診断時に陽性または陰性を確認することができるマーカー(marker)として使用した。
【0074】
組換えヒトMBLが含まれた一滴の臨床試料を診断用ストリップの下端部に落とすと、臨床試料が毛細管現象及び拡散によってニトロセルロース膜にしたがって進行して、試料がテストラインに到達した場合にはMBL−プレS−ゴールドパーティクル複合体が抗ヒトMBLマウス単一クローン性抗体と結合してラインが赤色に変わり、コントロールラインに到達した場合にはMBL−プレS−ゴールドパーティクル複合体及びプレS−ゴールドパーティクルがプレSに対する単一クローン性抗体と結合してラインが赤色に変わった。したがって、試料中にMBLが存在する場合にはテストライン及びコントロールラインが陽性で示され、試料中にMBLが存在しない場合にはコントロールラインだけが陽性で示された(図11)。
【産業上の利用可能性】
【0075】
上述したように、本発明の高分子形組換えヒトマンノース結合型レクチン(rhMBL)は、ウイルス、バクテリアまたはカビによる感染を抑制する効果があるので、ウイルス、バクテリアまたはカビのような微生物、特にSARSコロナウイルスによる感染の予防及び/または治療に使用することができる治療剤の開発及び組換えヒトMBLを検出する診断用キットの製造に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】pMSG−MBLプラスミドベクターの遺伝子地図を示したものである。
【図2】A及びBは、形質転換体CHOMBL/D1−3で生産された組換えヒトMBLを精製してSDS−PAGEとウエスタンブロットで確認したものである。
【図3】組換えヒトMBLの電子顕微鏡写真である。
【図4】組換えヒトMBLとプレS−ゴールドパーティクルナノパーティクル複合体の電子顕微鏡写真である。
【図5】A及びBは、組換えヒトMBLが糖化されたタンパク質であるプレS(pre S)またはマンナン(mannan)に特異的に結合することを示すグラフである。
【図6】多重合体を成す分子量が大きい形態と単量体及びニ量体で主に成り立った分子量が小さな形態の組換えヒトMBLが糖化タンパク質であるプレSに結合する活性を比べたグラフである。
【図7】分子量が大きい形態と分子量が小さな形態の組換えヒトMBLがプレSに結合してC4を活性化する程度を比べたグラフである。
【図8】組換えヒトMBLが多様な微生物表面に特異的に結合する程度を示すグラフである。
【図9】組換えヒトMBLがSARSコロナウイルスによる感染を抑制する効果を示したグラフである。
【図10】SARSコロナウイルスを感染させたFRhK−4細胞を位相差顕微鏡(phase contrast microscope)で観察した写真である。
【図11】組換えヒトMBLを使用した診断用ストリップの例を示した写真である。
【配列表フリーテキスト】
【0077】
配列番号1 MBL cDNA増幅のためのフォワードプライマー1
配列番号2 MBL cDNA増幅のためのリバースプライマー2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトマンノース結合型レクチン(human mannose binding lectin)コード領域の配列を含む、図1の遺伝子地図に図示された発現ベクターpMSG−MBL。
【請求項2】
請求項1の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項3】
CHO(Chinese hamster ovary)細胞、肝細胞(hepatocyte)、HEK(human embryonic kidney)細胞からなる群から選択される、請求項2に記載の宿主細胞。
【請求項4】
KCTC(Korean Collection for Type Culture)10472BPとして寄託されたCHO細胞株MBL/D1−3である、請求項2に記載の宿主細胞。
【請求項5】
(1)ヒトマンノース結合型レクチンコード領域の配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する工程;
(2)前記ヒトマンノース結合型レクチンのコード領域配列を培養システムで発現させて組換えヒトマンノース結合型レクチンを生産する工程;及び
(3)工程(2)の組換えヒトマンノース結合型レクチンを精製する工程を含む、高分子形の組換えマンノース結合型レクチンの大量生産方法。
【請求項6】
形質転換された宿主細胞が、KCTC10472BPとして寄託されたCHO細胞株MBL/D1−3である、請求項5に記載の大量生産方法。
【請求項7】
前記工程(2)が、
無血清/無タンパク培地で細胞を浮遊培養する工程;及び
無血清/無タンパク培地で適応した細胞を順次にスケールアップしながら継代培養して多重合体形態の組換えヒトマンノース結合型レクチンタンパク質を大量生産する工程である、請求項5に記載の大量生産方法。
【請求項8】
前記精製工程(3)が、
(a)陰イオン交換クロマトグラフィー法を使用して多重合体からなる高分子形の組換えマンノース結合型レクチンタンパク質試料を分画化する工程;
(b)B型肝炎ウイルスプレSが付着した基質を充填してカラムを製造する工程;
(c)前記カラムを平衡化させた後に組換えマンノース結合型レクチンタンパク質試料をカルシウムイオンの存在下でカラムに投入して高分子形の組換えマンノース結合型レクチンタンパク質を前記B型肝炎ウイルスプレSに特異的に結合させる工程;及び
(d)前記組換えマンノース結合型レクチンタンパク質が結合されたカラムにEDTAまたはEGTA緩衝液を流し入れて高分子形の組換えマンノース結合型レクチンタンパク質のみを溶出させる工程である、請求項5に記載の大量生産方法。
【請求項9】
前記マンノース結合型レクチン結合型糖化タンパク質が、プレS糖化ウイルス性外皮タンパク質(envelope protein)、糖化バクテリア性タンパク質、糖化カビ性タンパク質及び人工合成糖化タンパク質からなる群から選択される、請求項5に記載の大量生産方法。
【請求項10】
i)抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体またはプレSタンパク質がテストライン(test line)に固定された支持体;
ii)前記支持体の下端部に連結されて染料接合体が吸着された染料パッド(ここで、コントロールライン(control line)に抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体を固定した場合には、前記染料接合体は抗マウスIgG抗体−ゴールドパーティクルで、コントロールラインにプレSタンパク質を固定した場合には、前記染料接合体はプレSタンパク質に対する抗体−ゴールドパーティクルである);及び
iii)前記染料パッドの下端部に連結されたサンプルパッドを含む組換えヒトマンノース結合型レクチン検出用キット。
【請求項1】
ヒトマンノース結合型レクチン(human mannose binding lectin)コード領域の配列を含む、図1の遺伝子地図に図示された発現ベクターpMSG−MBL。
【請求項2】
請求項1の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項3】
CHO(Chinese hamster ovary)細胞、肝細胞(hepatocyte)、HEK(human embryonic kidney)細胞からなる群から選択される、請求項2に記載の宿主細胞。
【請求項4】
KCTC(Korean Collection for Type Culture)10472BPとして寄託されたCHO細胞株MBL/D1−3である、請求項2に記載の宿主細胞。
【請求項5】
(1)ヒトマンノース結合型レクチンコード領域の配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する工程;
(2)前記ヒトマンノース結合型レクチンのコード領域配列を培養システムで発現させて組換えヒトマンノース結合型レクチンを生産する工程;及び
(3)工程(2)の組換えヒトマンノース結合型レクチンを精製する工程を含む、高分子形の組換えマンノース結合型レクチンの大量生産方法。
【請求項6】
形質転換された宿主細胞が、KCTC10472BPとして寄託されたCHO細胞株MBL/D1−3である、請求項5に記載の大量生産方法。
【請求項7】
前記工程(2)が、
無血清/無タンパク培地で細胞を浮遊培養する工程;及び
無血清/無タンパク培地で適応した細胞を順次にスケールアップしながら継代培養して多重合体形態の組換えヒトマンノース結合型レクチンタンパク質を大量生産する工程である、請求項5に記載の大量生産方法。
【請求項8】
前記精製工程(3)が、
(a)陰イオン交換クロマトグラフィー法を使用して多重合体からなる高分子形の組換えマンノース結合型レクチンタンパク質試料を分画化する工程;
(b)B型肝炎ウイルスプレSが付着した基質を充填してカラムを製造する工程;
(c)前記カラムを平衡化させた後に組換えマンノース結合型レクチンタンパク質試料をカルシウムイオンの存在下でカラムに投入して高分子形の組換えマンノース結合型レクチンタンパク質を前記B型肝炎ウイルスプレSに特異的に結合させる工程;及び
(d)前記組換えマンノース結合型レクチンタンパク質が結合されたカラムにEDTAまたはEGTA緩衝液を流し入れて高分子形の組換えマンノース結合型レクチンタンパク質のみを溶出させる工程である、請求項5に記載の大量生産方法。
【請求項9】
前記マンノース結合型レクチン結合型糖化タンパク質が、プレS糖化ウイルス性外皮タンパク質(envelope protein)、糖化バクテリア性タンパク質、糖化カビ性タンパク質及び人工合成糖化タンパク質からなる群から選択される、請求項5に記載の大量生産方法。
【請求項10】
i)抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体またはプレSタンパク質がテストライン(test line)に固定された支持体;
ii)前記支持体の下端部に連結されて染料接合体が吸着された染料パッド(ここで、コントロールライン(control line)に抗ヒトマンノース結合型レクチン抗体を固定した場合には、前記染料接合体は抗マウスIgG抗体−ゴールドパーティクルで、コントロールラインにプレSタンパク質を固定した場合には、前記染料接合体はプレSタンパク質に対する抗体−ゴールドパーティクルである);及び
iii)前記染料パッドの下端部に連結されたサンプルパッドを含む組換えヒトマンノース結合型レクチン検出用キット。
【図1】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−517619(P2008−517619A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538806(P2007−538806)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002739
【国際公開番号】WO2006/046786
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507140298)ドゥビエル カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002739
【国際公開番号】WO2006/046786
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507140298)ドゥビエル カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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