高分子材料、それを用いたクッションシステムとシートシステム
【課題】磁場の制御によって、変位量および変位応力が大きく、構造が簡単で、小型で、応答が早いアクチュエータ動作を可能にする高分子材料、それを用いたクッション及びそれを用いたシートを提供する。
【解決手段】主鎖および側鎖よりなる群から選ばれた少なくとも一つに、外部磁場の印加に応答し、磁場の方向に整列する機能をもつ磁性部位を有することを特徴とする高分子材料。
【解決手段】主鎖および側鎖よりなる群から選ばれた少なくとも一つに、外部磁場の印加に応答し、磁場の方向に整列する機能をもつ磁性部位を有することを特徴とする高分子材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料に関し、特に、磁場を印加し、高分子材料の膨張、収縮、屈曲、変形を起こすことで、アクチュエータ動作を可能にする高分子材料、それを用いたクッションシステム及びそれを用いたシートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の分野では、小型かつ軽量で、柔軟性に富むアクチュエータ動作を可能にする材料及びそれを用いたクッションやシートなどの装置の必要性が高まっている。
【0003】
従来の技術としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1では、同一相内での分子の配向状態を変化または相転移させることによって体積の変化する液晶性分子と、該液晶性分子を封入する変形可能なセル(伸縮性膜で形成されたセルなど)と、電界、磁界または光に基づく液晶性分子の配向状態および相転移の制御手段とで液晶アクチュエータを構成し、前記セルとして前記液晶性分子の体積の変化に追従できるセルを用いている。
【0005】
特許文献2は、共役ポリマーを活性電極として有する長寿命、高安定性の電気化学アクチュエータ、電気化学コンデンサーおよび電気化学電池を製作するため並びに着色材料としてポリアニリンおよびポリチオフェンを有する長寿命、高安定性エレクトロクロミックデバイスを政策するための電解質としてのイオン性液体の使用に関する。
【0006】
特許文献3では、固体高分子のイオン交換膜の少なくとも一方の表面に強磁性体材料層を備えた磁場応答固体高分子複合体を用いている。
【0007】
特許文献4では、磁場印加による磁性流体の粘度の変化を用いる振動制御装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−88148
【特許文献2】特表2004−527902
【特許文献3】特開2004−222408
【特許文献4】特開2004−291724
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、一般的には、変位量および変位応力の大きな材料を提供することが課題とされていた。この課題を解決するために、上記の特許文献に記載された材料および装置が開発され、提供されていた。この材料および装置は前記課題を解決する上でかなり有用であったが、さらに有用な材料の開発が望まれていた。
【0009】
本発明は、このような観点からなされたもので、磁場の制御によって、変位量および変位応力が大きく、構造が簡単で、小型で、応答が早いアクチュエータ動作を可能にする高分子材料、それを用いたクッション及びそれを用いたシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、主鎖および側鎖よりなる群から選ばれた少なくとも一つに、外部磁場の印加に応答し、磁場の方向に整列する機能をもつ磁性部位を有することを特徴とする高分子材料、に関する。
【0011】
また、本発明は、前記高分子材料を含む繊維状構造体、層状構造体、および発泡構造体よりなる群から選ばれた少なくとも1つと、前記構造体に近い所に、磁場発生装置を備えてなることを特徴とするクッションシステム、に関する。
【0012】
さらに、本発明は、前記クッションシステムを内蔵してなることを特徴とするシートシステム、に関する。
【発明の効果】
【0013】
主鎖及びまたは側鎖に、外部磁場印加に応答し、磁場方向に整列する機能をもつ磁性部位を有することを特徴とする高分子材料に、磁場を印加して、磁性部位を配列制御することで、高分子材料の膨張、収縮、屈曲、変形を起こすことで、変位量及び変位応力が大きく、応答が早いアクチュエータ動作を可能にする。
【0014】
本発明の高分子材料を用いることにより、構造が簡単で小型となるクッションシステムを得ることができる。
【0015】
本発明のクッションシステムを用いた車載化可能なシートシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(高分子材料)
以下、本発明の高分子材料について図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の高分子材料の構成を説明するための図面である。図1(a)は、磁場を印加してない状態の高分子材料の状態を説明する概略図面であり、図1(b)は、磁場を印加した状態の高分子材料の状態を説明する概略図面である。
【0018】
図1に示されるように、本発明の高分子材料100は、主鎖101または側鎖102に、外部磁場104を印加することによって応答し、磁場の方向に沿って整列する機能を持つ磁性部位103を有することを特徴とする。
【0019】
高分子材料100は、延伸結晶性を有するエラストマーから構成されることが好ましく、具体的は、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリシロキサン、ポリエチレン、またはポリエーテルから構成される。高分子材料は、これらの構成材料を、単独あるいは2以上を混合して用いてもよい。
【0020】
磁性部位103は、主鎖101または側鎖102にあることが好ましく、さらに主鎖101よりは側鎖102にあることがより好ましい。磁性部位が側鎖にある側鎖型の場合は、側鎖102の先に磁性部位103があることが望ましい。この場合の側鎖をスペーサと称し、柔軟部分である。
【0021】
外部磁場104の印加によって、整列する機能をもつ磁性部位としては、反磁性状態または常磁性状態を含むものが挙げられる。ここで、反磁性とは、外部磁場を印加すると外部磁場と逆向きに磁化されることをいい、この状態になると、磁場印加の方向に対し、後述するように、磁性部位同士が整列する。
【0022】
また、常磁性とは外部磁場を印加するとその方向に弱く磁化し、磁場をとりさると磁化が消える性質をもつ物質をいい、この状態になると、磁場印加の方向に対し、後述するように、磁性部位にあるスピンが整列する。
【0023】
以上のように高分子材料を構成することにより、外部磁場を高分子材料に印加することによって、高分子材料中の磁性部位が磁場方向に整列するので、高分子材料の異方性が起こる。このように、高分子材料が磁場方向へ膨張するとともに、磁場方向に垂直な方向に収縮することとなる。
【0024】
例えば、本発明の高分子材料は、主鎖材料を構成するメチルハイドロジェンシロキサン(methylhydrogensiloxane)と、側鎖の磁性部位を構成するスペーサを有する分子と、架橋剤とをビーカに入れ、触媒の存在下で反応させて形成できる。ここで、架橋剤は主鎖を構成するポリメチルハイドロジエンシロキサン間の架橋を担うものである。
【0025】
図2は、本発明の高分子材料の別の構成を説明するための図面である。図2(a)は、磁場を印加してない状態の高分子材料の状態を説明する概略図面であり、図2(b)は、磁場を印加した状態の高分子材料の状態を説明する概略図面である。
【0026】
図2に示す本発明の高分子材料200は、主鎖201と側鎖202に磁性部位を有する高分子材料において、前記磁性部位203は、反磁性状態を有する部位と常磁性状態を有する部位の双方を有することを特徴とする。
【0027】
この場合、前記磁性部位203が、反磁性部位と常磁性部位の双方を有することから、外部磁場204を本発明の高分子材料に印加すると、上記したように、反磁性部位同士が整列するとともに、常磁性部位のスピンが整列するので、その相乗効果によって、磁場の印加方向に高分子材料は膨張するとともに、磁場方向に垂直な方向に収縮する。
【0028】
図3は、本発明の高分子材料の構成を説明するための図面である。図3(a)は、磁場を印加してない状態の高分子材料の状態を説明する概略図面であり、図3(b)は、磁場を印加した状態の高分子材料の状態を説明する概略図面である。
【0029】
図3に示す本発明の高分子材料300は、主鎖301と側鎖302に磁性部位を有する高分子材料において、前記磁性部位は、常磁性状態を有する部位306と、その常磁性状態を有する部位の近傍に反磁性状態を有する部位305とからなることを特徴とする。
【0030】
前記磁性部位は、前記常磁性部位と、前記常磁性部位の近傍の反磁性部位とからなるが、前記常磁性部位の近傍の反磁性部位とは、少なくともマクロに高分子材料の常磁性機能を発現させるために必要な密度の常磁性部位があればよいことから、通常、常磁性部位の5nm以内の範囲に少なくとも一つの反磁性部位があればよいことを意味する。
【0031】
以上のように高分子材料を構成することにより、常磁性部位と反磁性部位とが近傍に存在することになる。外部磁場をこのような本発明の高分子材料に印加することによって、上記したように、反磁性部位同士が整列するとともに、常磁性部位のスピンが整列するので、その相乗効果によって、高分子材料は、磁場の印加方向に膨張するととともに、磁場方向に垂直な方向に収縮することとなる。
【0032】
また、本発明の高分子材料は、反磁性状態を有する部位が、平面状に並んだ複数の環状構造を有する部位または複数の環状構造を有する部位が一つの面においておよそ平行に並んだ構造からなることを特徴する。
【0033】
図4に示すように、高分子材料中の環状構造401を有する部位に反磁性が発現する原理は、磁場H 402を、環状構造を有する部位に印加すると、この磁場を打ち消すように、ファラデーの電磁誘導により、環状構造に電流403が流れて磁場H’ 404が発生することによる。
【0034】
この反磁性状態では、磁場402が印加されると、環状構造401の面を磁場に平行とすることで、この環状構造401部分のエネルギーが安定化する。その結果、環状構造401の面は、磁場402が印加されると磁場402に対し、平行になるように配列する。このように、環状構造を有する部位同士が平行に並ぶため、平面あるいはおよそ平面を形成する状態である平面状となる。かかる平面は複数の面の場合もあるが、一つの面であることが最も伸縮の効果が高いといえる。
【0035】
前記環状構造401を有する部位は、多環状構造を有する液晶性分子構造または環状パイ電子共役系分子構造の部位であることが望ましい。
【0036】
液晶性分子としては、高分子材料の膨張率を大きくする点から、ネマチック液晶が望ましい。
【0037】
環状パイ電子共役系分子構造としては、多環状構造が安定して存在できる点から、電気伝導性がよいフェニレンエチニレンが望ましい。
【0038】
本発明の高分子材料は、前記常磁性状態を有する部位が、少なくとも一つの不対電子を有する部位であることを特徴とする。不対電子を有すると、常磁性状態が起こりえるからである。
【0039】
例えば、不対電子を有する部位として、常磁性遷移金属錯体構造およびラジカル構造部位が挙げられる。常磁性遷移金属錯体構造としては、マンガン、鉄、コバルト、またはニッケルの3d遷移の常磁性遷移金属錯体構造が望ましい。有機ラジカル構造を有する部位としては、高分子材料内で安定して、ラジカル状態を保持できるのでニトロキシドラジカルを有する構造が望ましい。
【0040】
(クションシステム)
本発明のクッションシステムは、前記高分子材料501を含む繊維状構造体、層状構造体および発泡構造体よりなる群から選ばれた少なくとも1つと、上記構造体に近い所に、この構造体の膨張収縮、屈曲運動を行うために必要な磁場を生成する磁場発生装置を備えることを特徴とする。
【0041】
繊維状構造体、層状構造体および発泡構造体は、公知の方法で得られるが、例えば、以下のように作製できる。
【0042】
前記高分子材料を溶融、紡糸、延伸して繊維を作製し、それらを編んで繊維状構造体を得る。
【0043】
前記高分子材料を溶融し、金型を使って押し出し成型し、それを延伸して層状構造体を得る。
【0044】
揮発性の液体中で前記高分子材料を作製し、その後揮発性の液体を気化させることによって発砲化して発砲構造体を得ることができる。
【0045】
本発明で用いられる磁場発生装置は、通常、電磁石または永久磁石である。また、これらを内蔵した無機あるいは有機材料であってもよい。かかる磁場発生装置は、上記構造体の該運動を制御できるような上記構造体に近い所に設置する。磁場発生装置は、上記構造体に接していること、または磁場発生装置から発生する磁場によって構造体の該運動を制御できる範囲内の位置に設けることが好ましい。
【0046】
図5は、本発明のクッションの構成例を示す図面である。
【0047】
図5(a)は、本発明の高分子材料を挟むように対向して二つの磁石を設置した図面であり、対向する磁石はそれぞれN極およびS極である。図5(a)において、磁性高分子材料501aは磁石のN極511とS極512で挟持されている。
【0048】
図5(b)は、本発明の高分子材料を挟むように対向して二つの磁石を設置した図面であり、対向する磁石は双方ともN極である。図5(b)において、磁性高分子材料501bは磁石のN極513とN極514で挟持されている。
【0049】
図5(c)は、本発明の高分子材料の片側に一つの磁石を設置した図面である。図5(c)において、磁性高分子材料501cの一面に接して磁石のN極505が配置されている。この場合、N極の代わりにS極であってもよい。
【0050】
図5(d)は、本発明の高分子材料を挟むように対向して二組の磁石を設置した図面であり、対向する磁石はそれぞれN極およびS極(片側の磁石が部分的に存在する)である。図5(d)において、磁性高分子材料501dは磁石のN極517とS極518(片側の磁石が部分的に存在する)で挟持されている。この場合、もちろんN極とS極とが逆の関係であってもよい。
【0051】
クッションをこのような構成とすることで、磁石の磁場を制御することができ、高分子材料を膨張および収縮させることができる。
【0052】
図6は、本発明の磁気コイルを用いたクッションの構成例の一例を示す図面である。
【0053】
本発明の高分子材料602の一部を、金属材料や導電性高分子材料からなる磁気コイル603内に挿入し、固定層601上に、碁盤の目のように所定に間隔をおいて敷きつめる。そして敷き詰めた高分子材料602の上に、上部層605である繊維、層状化または発砲化した高分子材料を設置して、磁気コイルを用いたクッションを作製する。
【0054】
この構成において、各磁気コイルに電流を印加および切断することによって、各高分子材料602の膨張および収縮を起こさせ、それによって、上部層604の上下運動や屈曲運動を起こすことができる。
【0055】
(シートシステム)
図7は本発明のシートシステムの一例を示す概略図である。
【0056】
図7に示すように、本発明のシートシステム700は、前記クッションシステム500または600を内蔵することを特徴とする。前記クッションシステム500または600のクッションを制御する制御装置701を有することが望ましい。シートに着座したドライバーの状態や外部運転環境の情報に基づき、この制御装置の指令によって、クッションシステムの制御をすることもできる。そのため、制御装置は、プログラムで作動するマイクロコンピュータを含むこともできる。
【0057】
本発明のシートシステムは、車両用のシートシステムとして好適に使用可能である。長時間運転時などのドライバーに眠気を起こさせないように刺激を与えることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
高分子材料の骨格材料を構成する平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサン(polymethyl−hydrogen−siloxane)に対し、側鎖を形成するマンガンの金属錯体(マンガン・テトラフェニルポルフィリン)と架橋剤(CH2=CH−0−(Si(CH3)2−O)12−CH=CH2)とを所定の比率で配合してビーカに入れ、Pt触媒の存在下において60℃で反応させた。ここで、所定の比率とは、平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサンが2モル、金属錯体が96モル、架橋剤が12モルであった。
【0060】
その結果、ポリシロキサン主鎖と、マンガンの金属錯体を有する側鎖の磁性部位とからなる高分子材料を得た。
【0061】
この高分子材料の模式図を図8に示す。図8において、側鎖である磁性部位は常磁性遷移金属錯体から構成されている。
【0062】
(実施例2)
高分子材料の骨格材料を構成する平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサン(polymethyl−hydrogen−siloxane)に対し、側鎖の液晶性を形成する基として4−ブテ−3−ニルオキシ安息香酸4−メトキシフェニルエステル(4−but−3−enyloxybenzoic acid 4−methoxyphenyl ester)と、マンガンの金属錯体と架橋剤(CH2=CH−0−(Si(CH3)2−O)12−CH=CH2)とを所定の比率で配合してビーカに入れ、Pt触媒の存在下において60℃で反応させた。ここで、所定の比率とは、平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサンが2モル、4−ブテ−3−ニルオキシ安息香酸4−メトキシフェニルエステルが48モル、金属錯体が48モル、架橋剤が12モルであった。
【0063】
その結果、ポリシロキサン主鎖と、液晶とマンガンの金属錯体を有する側鎖の磁性部位からなる高分子材料を得た。
【0064】
(実施例3)
高分子材料の骨格材料を構成する平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサン(polymethyl−hydrogen−siloxane)に対し、フェニレンエチニレン、ニトロキシドラジカルを有する分子と、架橋剤(CH2=CH−0−(Si(CH3)2−O)12−CH=CH2)とを所定の比率で配合してビーカに入れ、Pt触媒の存在下において60℃で反応させた。ここで、所定の比率とは、平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサンが2モル、フェニレンエチレン構造の分子が48モル、ニトロキシドラジカル構造の分子が48モル、架橋剤が12モルであった。
【0065】
その結果、ポリシロキサン主鎖と、フェニレンエチニレンの環状構造とニトロキシドラジカル基を有する側鎖の磁性部位からなる高分子材料を得た。
【0066】
図9は、実施例3で得られた高分子材料の構成を示す概略図である。ここで、図9Aは、本発明の高分子材料の磁性部位が環状構造の部位の構成であることを示す概略図である。図9Aにおいて、「−(CH2)n−」がスペーサを意味する。図9Bは、本発明の高分子材料の磁性部位がラジカル(ニトロキシドラジカル)構造の部位の構成であるであることを示す概略図である。
【0067】
(実施例4)
高分子材料の骨格材料を構成する平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサン(polymethyl−hydrogen−siloxane)に対し、側鎖の液晶性を示す基として、4−ブテ−3−ニルオキシ安息香酸4−メトキシフェニルエステル(4−but−3−enyloxybenzoic acid 4−methoxyphenyl ester)と、ニトロキシドラジカルと架橋剤(CH2=CH−0−(Si(CH3)2−O)12−CH=CH2)とを所定の比率で配合してビーカに入れ、Pt触媒の存在下において60℃で反応させた。ここで、所定の比率とは、平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサンが2モル、4−ブテ−3−ニルオキシ安息香酸4−メトキシフェニルエステルが48モル、ニトロキシドラジカル構造の分子が48モル、架橋剤が12モルであった。
【0068】
その結果、ポリシロキサン主鎖と、液晶とニトロキシドラジカル基とを有する側鎖の磁性部位からなる高分子材料を得た。
【0069】
(実施例の性能評価結果比較)
実施例1〜4で得られた高分子材料の変位、発生応力、磁場への応答性に関する性能評価を行った。
【0070】
変位、発生応力、磁場への応答性を測定するための装置構成及びこれを用いた測定手法を以下示す。
【0071】
(変位の測定)
台座にサンプルである高分子材料(長さ:10cm)の一端を固定し、その高分子材料に磁気コイルを200回巻いて、その磁気コイルに電流5Aを流すことで、高分子材料に磁場を印加する。その結果、固定側の反対の方の高分子材料の先端の膨張収縮が起こる。これによる変位をレーザでスキャンして測定する。
【0072】
(発生応力の測定)
固定して圧力センサを内蔵した圧力測定部と台座との間にサンプルである高分子材料を挟み、上記と同じように、磁気コイルを用い、磁場を高分子材料に印加して、圧力測定部の圧力センサで発生する電圧を測定することで、その時発生する圧力を測定する。
【0073】
(磁場への応答性の測定)
変位の測定と同じ装置の構成で、磁気コイルに図10に示すようなデューティ比50%の周期性パルス電流を流して、周期パルス磁場を発生させ、固定側の反対の先端の変位をレーザで測定して、応答性を測定する。ここで、各高分子材料が、加えられた周期性パルス磁場に対し、追随して膨張収縮できる周期性パルス磁場の最大周波数を、応答性の指標とする。
【0074】
得られた実施例1〜4の性能評価の結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
(実施例5)
実施例1で得られた高分子材料を円柱状に切り出して、これを銅線からなる磁気コイル内に挿入して、これを多数アレー状に並べ、固定板に並べ、この上に薄い発砲したウレタン層を載せて図6に示す構成からなるクッションを作製した。
【0076】
そして、磁気コイルに、図10に示す10Hzの周期性パルス電流を流すと、クッションの上下運動が起こることが確認された。
【0077】
(実施例6)
実施例5で得られたクッションと、16ビットのマイクロコンピュータからなる制御装置を組み合わせて、図7に示すシートを作製した。かかる制御装置は、周期性パルス電流を流す時間を制御するものであり、連続的にあるには間欠的にあるいは状況に応じて必要により該電流を流すことが可能である。
【0078】
このシートにドライバーが座って、車の運転時のシートの制御実験を行った。
【0079】
ドライバーの状態と運転状態の情報に基づき、マイクロコンピュータからの制御によって、クッションの上下運動を起こさせた。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の高分子材料の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の高分子材料の構成のその他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の高分子材料の構成の別の例を示す概略図である。
【図4】高分子材料中の環状構造を有する部位での反磁性の発現原理を説明する図面である。
【図5】本発明のクッションの構成の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の磁気コイルを用いたクッションの構成の一例を示す概略図である。
【図7】本発明のシートシステムの構成の一例を示す概略図である。
【図8】実施例1で得られた高分子材料の磁性部位が常磁性遷移金属錯体構造による構成であることを示す説明図である。
【図9A】実施例3で得られた高分子材料の磁性部位が環状構造による構成であることを示す説明図である。
【図9B】実施例3で得られた高分子材料の磁性部位がラジカル構造による構成であることを示す説明図である。
【図10】応答速度を測定するために用いた周期性パルス電流印加パターンを示す図面である。
【符号の説明】
【0081】
100 高分子材料、
101 高分子材料の主鎖、
102 高分子材料の側鎖、
103 磁性部位、
104 磁場。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料に関し、特に、磁場を印加し、高分子材料の膨張、収縮、屈曲、変形を起こすことで、アクチュエータ動作を可能にする高分子材料、それを用いたクッションシステム及びそれを用いたシートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の分野では、小型かつ軽量で、柔軟性に富むアクチュエータ動作を可能にする材料及びそれを用いたクッションやシートなどの装置の必要性が高まっている。
【0003】
従来の技術としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1では、同一相内での分子の配向状態を変化または相転移させることによって体積の変化する液晶性分子と、該液晶性分子を封入する変形可能なセル(伸縮性膜で形成されたセルなど)と、電界、磁界または光に基づく液晶性分子の配向状態および相転移の制御手段とで液晶アクチュエータを構成し、前記セルとして前記液晶性分子の体積の変化に追従できるセルを用いている。
【0005】
特許文献2は、共役ポリマーを活性電極として有する長寿命、高安定性の電気化学アクチュエータ、電気化学コンデンサーおよび電気化学電池を製作するため並びに着色材料としてポリアニリンおよびポリチオフェンを有する長寿命、高安定性エレクトロクロミックデバイスを政策するための電解質としてのイオン性液体の使用に関する。
【0006】
特許文献3では、固体高分子のイオン交換膜の少なくとも一方の表面に強磁性体材料層を備えた磁場応答固体高分子複合体を用いている。
【0007】
特許文献4では、磁場印加による磁性流体の粘度の変化を用いる振動制御装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−88148
【特許文献2】特表2004−527902
【特許文献3】特開2004−222408
【特許文献4】特開2004−291724
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、一般的には、変位量および変位応力の大きな材料を提供することが課題とされていた。この課題を解決するために、上記の特許文献に記載された材料および装置が開発され、提供されていた。この材料および装置は前記課題を解決する上でかなり有用であったが、さらに有用な材料の開発が望まれていた。
【0009】
本発明は、このような観点からなされたもので、磁場の制御によって、変位量および変位応力が大きく、構造が簡単で、小型で、応答が早いアクチュエータ動作を可能にする高分子材料、それを用いたクッション及びそれを用いたシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、主鎖および側鎖よりなる群から選ばれた少なくとも一つに、外部磁場の印加に応答し、磁場の方向に整列する機能をもつ磁性部位を有することを特徴とする高分子材料、に関する。
【0011】
また、本発明は、前記高分子材料を含む繊維状構造体、層状構造体、および発泡構造体よりなる群から選ばれた少なくとも1つと、前記構造体に近い所に、磁場発生装置を備えてなることを特徴とするクッションシステム、に関する。
【0012】
さらに、本発明は、前記クッションシステムを内蔵してなることを特徴とするシートシステム、に関する。
【発明の効果】
【0013】
主鎖及びまたは側鎖に、外部磁場印加に応答し、磁場方向に整列する機能をもつ磁性部位を有することを特徴とする高分子材料に、磁場を印加して、磁性部位を配列制御することで、高分子材料の膨張、収縮、屈曲、変形を起こすことで、変位量及び変位応力が大きく、応答が早いアクチュエータ動作を可能にする。
【0014】
本発明の高分子材料を用いることにより、構造が簡単で小型となるクッションシステムを得ることができる。
【0015】
本発明のクッションシステムを用いた車載化可能なシートシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(高分子材料)
以下、本発明の高分子材料について図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の高分子材料の構成を説明するための図面である。図1(a)は、磁場を印加してない状態の高分子材料の状態を説明する概略図面であり、図1(b)は、磁場を印加した状態の高分子材料の状態を説明する概略図面である。
【0018】
図1に示されるように、本発明の高分子材料100は、主鎖101または側鎖102に、外部磁場104を印加することによって応答し、磁場の方向に沿って整列する機能を持つ磁性部位103を有することを特徴とする。
【0019】
高分子材料100は、延伸結晶性を有するエラストマーから構成されることが好ましく、具体的は、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリシロキサン、ポリエチレン、またはポリエーテルから構成される。高分子材料は、これらの構成材料を、単独あるいは2以上を混合して用いてもよい。
【0020】
磁性部位103は、主鎖101または側鎖102にあることが好ましく、さらに主鎖101よりは側鎖102にあることがより好ましい。磁性部位が側鎖にある側鎖型の場合は、側鎖102の先に磁性部位103があることが望ましい。この場合の側鎖をスペーサと称し、柔軟部分である。
【0021】
外部磁場104の印加によって、整列する機能をもつ磁性部位としては、反磁性状態または常磁性状態を含むものが挙げられる。ここで、反磁性とは、外部磁場を印加すると外部磁場と逆向きに磁化されることをいい、この状態になると、磁場印加の方向に対し、後述するように、磁性部位同士が整列する。
【0022】
また、常磁性とは外部磁場を印加するとその方向に弱く磁化し、磁場をとりさると磁化が消える性質をもつ物質をいい、この状態になると、磁場印加の方向に対し、後述するように、磁性部位にあるスピンが整列する。
【0023】
以上のように高分子材料を構成することにより、外部磁場を高分子材料に印加することによって、高分子材料中の磁性部位が磁場方向に整列するので、高分子材料の異方性が起こる。このように、高分子材料が磁場方向へ膨張するとともに、磁場方向に垂直な方向に収縮することとなる。
【0024】
例えば、本発明の高分子材料は、主鎖材料を構成するメチルハイドロジェンシロキサン(methylhydrogensiloxane)と、側鎖の磁性部位を構成するスペーサを有する分子と、架橋剤とをビーカに入れ、触媒の存在下で反応させて形成できる。ここで、架橋剤は主鎖を構成するポリメチルハイドロジエンシロキサン間の架橋を担うものである。
【0025】
図2は、本発明の高分子材料の別の構成を説明するための図面である。図2(a)は、磁場を印加してない状態の高分子材料の状態を説明する概略図面であり、図2(b)は、磁場を印加した状態の高分子材料の状態を説明する概略図面である。
【0026】
図2に示す本発明の高分子材料200は、主鎖201と側鎖202に磁性部位を有する高分子材料において、前記磁性部位203は、反磁性状態を有する部位と常磁性状態を有する部位の双方を有することを特徴とする。
【0027】
この場合、前記磁性部位203が、反磁性部位と常磁性部位の双方を有することから、外部磁場204を本発明の高分子材料に印加すると、上記したように、反磁性部位同士が整列するとともに、常磁性部位のスピンが整列するので、その相乗効果によって、磁場の印加方向に高分子材料は膨張するとともに、磁場方向に垂直な方向に収縮する。
【0028】
図3は、本発明の高分子材料の構成を説明するための図面である。図3(a)は、磁場を印加してない状態の高分子材料の状態を説明する概略図面であり、図3(b)は、磁場を印加した状態の高分子材料の状態を説明する概略図面である。
【0029】
図3に示す本発明の高分子材料300は、主鎖301と側鎖302に磁性部位を有する高分子材料において、前記磁性部位は、常磁性状態を有する部位306と、その常磁性状態を有する部位の近傍に反磁性状態を有する部位305とからなることを特徴とする。
【0030】
前記磁性部位は、前記常磁性部位と、前記常磁性部位の近傍の反磁性部位とからなるが、前記常磁性部位の近傍の反磁性部位とは、少なくともマクロに高分子材料の常磁性機能を発現させるために必要な密度の常磁性部位があればよいことから、通常、常磁性部位の5nm以内の範囲に少なくとも一つの反磁性部位があればよいことを意味する。
【0031】
以上のように高分子材料を構成することにより、常磁性部位と反磁性部位とが近傍に存在することになる。外部磁場をこのような本発明の高分子材料に印加することによって、上記したように、反磁性部位同士が整列するとともに、常磁性部位のスピンが整列するので、その相乗効果によって、高分子材料は、磁場の印加方向に膨張するととともに、磁場方向に垂直な方向に収縮することとなる。
【0032】
また、本発明の高分子材料は、反磁性状態を有する部位が、平面状に並んだ複数の環状構造を有する部位または複数の環状構造を有する部位が一つの面においておよそ平行に並んだ構造からなることを特徴する。
【0033】
図4に示すように、高分子材料中の環状構造401を有する部位に反磁性が発現する原理は、磁場H 402を、環状構造を有する部位に印加すると、この磁場を打ち消すように、ファラデーの電磁誘導により、環状構造に電流403が流れて磁場H’ 404が発生することによる。
【0034】
この反磁性状態では、磁場402が印加されると、環状構造401の面を磁場に平行とすることで、この環状構造401部分のエネルギーが安定化する。その結果、環状構造401の面は、磁場402が印加されると磁場402に対し、平行になるように配列する。このように、環状構造を有する部位同士が平行に並ぶため、平面あるいはおよそ平面を形成する状態である平面状となる。かかる平面は複数の面の場合もあるが、一つの面であることが最も伸縮の効果が高いといえる。
【0035】
前記環状構造401を有する部位は、多環状構造を有する液晶性分子構造または環状パイ電子共役系分子構造の部位であることが望ましい。
【0036】
液晶性分子としては、高分子材料の膨張率を大きくする点から、ネマチック液晶が望ましい。
【0037】
環状パイ電子共役系分子構造としては、多環状構造が安定して存在できる点から、電気伝導性がよいフェニレンエチニレンが望ましい。
【0038】
本発明の高分子材料は、前記常磁性状態を有する部位が、少なくとも一つの不対電子を有する部位であることを特徴とする。不対電子を有すると、常磁性状態が起こりえるからである。
【0039】
例えば、不対電子を有する部位として、常磁性遷移金属錯体構造およびラジカル構造部位が挙げられる。常磁性遷移金属錯体構造としては、マンガン、鉄、コバルト、またはニッケルの3d遷移の常磁性遷移金属錯体構造が望ましい。有機ラジカル構造を有する部位としては、高分子材料内で安定して、ラジカル状態を保持できるのでニトロキシドラジカルを有する構造が望ましい。
【0040】
(クションシステム)
本発明のクッションシステムは、前記高分子材料501を含む繊維状構造体、層状構造体および発泡構造体よりなる群から選ばれた少なくとも1つと、上記構造体に近い所に、この構造体の膨張収縮、屈曲運動を行うために必要な磁場を生成する磁場発生装置を備えることを特徴とする。
【0041】
繊維状構造体、層状構造体および発泡構造体は、公知の方法で得られるが、例えば、以下のように作製できる。
【0042】
前記高分子材料を溶融、紡糸、延伸して繊維を作製し、それらを編んで繊維状構造体を得る。
【0043】
前記高分子材料を溶融し、金型を使って押し出し成型し、それを延伸して層状構造体を得る。
【0044】
揮発性の液体中で前記高分子材料を作製し、その後揮発性の液体を気化させることによって発砲化して発砲構造体を得ることができる。
【0045】
本発明で用いられる磁場発生装置は、通常、電磁石または永久磁石である。また、これらを内蔵した無機あるいは有機材料であってもよい。かかる磁場発生装置は、上記構造体の該運動を制御できるような上記構造体に近い所に設置する。磁場発生装置は、上記構造体に接していること、または磁場発生装置から発生する磁場によって構造体の該運動を制御できる範囲内の位置に設けることが好ましい。
【0046】
図5は、本発明のクッションの構成例を示す図面である。
【0047】
図5(a)は、本発明の高分子材料を挟むように対向して二つの磁石を設置した図面であり、対向する磁石はそれぞれN極およびS極である。図5(a)において、磁性高分子材料501aは磁石のN極511とS極512で挟持されている。
【0048】
図5(b)は、本発明の高分子材料を挟むように対向して二つの磁石を設置した図面であり、対向する磁石は双方ともN極である。図5(b)において、磁性高分子材料501bは磁石のN極513とN極514で挟持されている。
【0049】
図5(c)は、本発明の高分子材料の片側に一つの磁石を設置した図面である。図5(c)において、磁性高分子材料501cの一面に接して磁石のN極505が配置されている。この場合、N極の代わりにS極であってもよい。
【0050】
図5(d)は、本発明の高分子材料を挟むように対向して二組の磁石を設置した図面であり、対向する磁石はそれぞれN極およびS極(片側の磁石が部分的に存在する)である。図5(d)において、磁性高分子材料501dは磁石のN極517とS極518(片側の磁石が部分的に存在する)で挟持されている。この場合、もちろんN極とS極とが逆の関係であってもよい。
【0051】
クッションをこのような構成とすることで、磁石の磁場を制御することができ、高分子材料を膨張および収縮させることができる。
【0052】
図6は、本発明の磁気コイルを用いたクッションの構成例の一例を示す図面である。
【0053】
本発明の高分子材料602の一部を、金属材料や導電性高分子材料からなる磁気コイル603内に挿入し、固定層601上に、碁盤の目のように所定に間隔をおいて敷きつめる。そして敷き詰めた高分子材料602の上に、上部層605である繊維、層状化または発砲化した高分子材料を設置して、磁気コイルを用いたクッションを作製する。
【0054】
この構成において、各磁気コイルに電流を印加および切断することによって、各高分子材料602の膨張および収縮を起こさせ、それによって、上部層604の上下運動や屈曲運動を起こすことができる。
【0055】
(シートシステム)
図7は本発明のシートシステムの一例を示す概略図である。
【0056】
図7に示すように、本発明のシートシステム700は、前記クッションシステム500または600を内蔵することを特徴とする。前記クッションシステム500または600のクッションを制御する制御装置701を有することが望ましい。シートに着座したドライバーの状態や外部運転環境の情報に基づき、この制御装置の指令によって、クッションシステムの制御をすることもできる。そのため、制御装置は、プログラムで作動するマイクロコンピュータを含むこともできる。
【0057】
本発明のシートシステムは、車両用のシートシステムとして好適に使用可能である。長時間運転時などのドライバーに眠気を起こさせないように刺激を与えることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
高分子材料の骨格材料を構成する平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサン(polymethyl−hydrogen−siloxane)に対し、側鎖を形成するマンガンの金属錯体(マンガン・テトラフェニルポルフィリン)と架橋剤(CH2=CH−0−(Si(CH3)2−O)12−CH=CH2)とを所定の比率で配合してビーカに入れ、Pt触媒の存在下において60℃で反応させた。ここで、所定の比率とは、平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサンが2モル、金属錯体が96モル、架橋剤が12モルであった。
【0060】
その結果、ポリシロキサン主鎖と、マンガンの金属錯体を有する側鎖の磁性部位とからなる高分子材料を得た。
【0061】
この高分子材料の模式図を図8に示す。図8において、側鎖である磁性部位は常磁性遷移金属錯体から構成されている。
【0062】
(実施例2)
高分子材料の骨格材料を構成する平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサン(polymethyl−hydrogen−siloxane)に対し、側鎖の液晶性を形成する基として4−ブテ−3−ニルオキシ安息香酸4−メトキシフェニルエステル(4−but−3−enyloxybenzoic acid 4−methoxyphenyl ester)と、マンガンの金属錯体と架橋剤(CH2=CH−0−(Si(CH3)2−O)12−CH=CH2)とを所定の比率で配合してビーカに入れ、Pt触媒の存在下において60℃で反応させた。ここで、所定の比率とは、平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサンが2モル、4−ブテ−3−ニルオキシ安息香酸4−メトキシフェニルエステルが48モル、金属錯体が48モル、架橋剤が12モルであった。
【0063】
その結果、ポリシロキサン主鎖と、液晶とマンガンの金属錯体を有する側鎖の磁性部位からなる高分子材料を得た。
【0064】
(実施例3)
高分子材料の骨格材料を構成する平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサン(polymethyl−hydrogen−siloxane)に対し、フェニレンエチニレン、ニトロキシドラジカルを有する分子と、架橋剤(CH2=CH−0−(Si(CH3)2−O)12−CH=CH2)とを所定の比率で配合してビーカに入れ、Pt触媒の存在下において60℃で反応させた。ここで、所定の比率とは、平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサンが2モル、フェニレンエチレン構造の分子が48モル、ニトロキシドラジカル構造の分子が48モル、架橋剤が12モルであった。
【0065】
その結果、ポリシロキサン主鎖と、フェニレンエチニレンの環状構造とニトロキシドラジカル基を有する側鎖の磁性部位からなる高分子材料を得た。
【0066】
図9は、実施例3で得られた高分子材料の構成を示す概略図である。ここで、図9Aは、本発明の高分子材料の磁性部位が環状構造の部位の構成であることを示す概略図である。図9Aにおいて、「−(CH2)n−」がスペーサを意味する。図9Bは、本発明の高分子材料の磁性部位がラジカル(ニトロキシドラジカル)構造の部位の構成であるであることを示す概略図である。
【0067】
(実施例4)
高分子材料の骨格材料を構成する平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサン(polymethyl−hydrogen−siloxane)に対し、側鎖の液晶性を示す基として、4−ブテ−3−ニルオキシ安息香酸4−メトキシフェニルエステル(4−but−3−enyloxybenzoic acid 4−methoxyphenyl ester)と、ニトロキシドラジカルと架橋剤(CH2=CH−0−(Si(CH3)2−O)12−CH=CH2)とを所定の比率で配合してビーカに入れ、Pt触媒の存在下において60℃で反応させた。ここで、所定の比率とは、平均重合度60のポリメチルハドロジェンシロキサンが2モル、4−ブテ−3−ニルオキシ安息香酸4−メトキシフェニルエステルが48モル、ニトロキシドラジカル構造の分子が48モル、架橋剤が12モルであった。
【0068】
その結果、ポリシロキサン主鎖と、液晶とニトロキシドラジカル基とを有する側鎖の磁性部位からなる高分子材料を得た。
【0069】
(実施例の性能評価結果比較)
実施例1〜4で得られた高分子材料の変位、発生応力、磁場への応答性に関する性能評価を行った。
【0070】
変位、発生応力、磁場への応答性を測定するための装置構成及びこれを用いた測定手法を以下示す。
【0071】
(変位の測定)
台座にサンプルである高分子材料(長さ:10cm)の一端を固定し、その高分子材料に磁気コイルを200回巻いて、その磁気コイルに電流5Aを流すことで、高分子材料に磁場を印加する。その結果、固定側の反対の方の高分子材料の先端の膨張収縮が起こる。これによる変位をレーザでスキャンして測定する。
【0072】
(発生応力の測定)
固定して圧力センサを内蔵した圧力測定部と台座との間にサンプルである高分子材料を挟み、上記と同じように、磁気コイルを用い、磁場を高分子材料に印加して、圧力測定部の圧力センサで発生する電圧を測定することで、その時発生する圧力を測定する。
【0073】
(磁場への応答性の測定)
変位の測定と同じ装置の構成で、磁気コイルに図10に示すようなデューティ比50%の周期性パルス電流を流して、周期パルス磁場を発生させ、固定側の反対の先端の変位をレーザで測定して、応答性を測定する。ここで、各高分子材料が、加えられた周期性パルス磁場に対し、追随して膨張収縮できる周期性パルス磁場の最大周波数を、応答性の指標とする。
【0074】
得られた実施例1〜4の性能評価の結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
(実施例5)
実施例1で得られた高分子材料を円柱状に切り出して、これを銅線からなる磁気コイル内に挿入して、これを多数アレー状に並べ、固定板に並べ、この上に薄い発砲したウレタン層を載せて図6に示す構成からなるクッションを作製した。
【0076】
そして、磁気コイルに、図10に示す10Hzの周期性パルス電流を流すと、クッションの上下運動が起こることが確認された。
【0077】
(実施例6)
実施例5で得られたクッションと、16ビットのマイクロコンピュータからなる制御装置を組み合わせて、図7に示すシートを作製した。かかる制御装置は、周期性パルス電流を流す時間を制御するものであり、連続的にあるには間欠的にあるいは状況に応じて必要により該電流を流すことが可能である。
【0078】
このシートにドライバーが座って、車の運転時のシートの制御実験を行った。
【0079】
ドライバーの状態と運転状態の情報に基づき、マイクロコンピュータからの制御によって、クッションの上下運動を起こさせた。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の高分子材料の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の高分子材料の構成のその他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の高分子材料の構成の別の例を示す概略図である。
【図4】高分子材料中の環状構造を有する部位での反磁性の発現原理を説明する図面である。
【図5】本発明のクッションの構成の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の磁気コイルを用いたクッションの構成の一例を示す概略図である。
【図7】本発明のシートシステムの構成の一例を示す概略図である。
【図8】実施例1で得られた高分子材料の磁性部位が常磁性遷移金属錯体構造による構成であることを示す説明図である。
【図9A】実施例3で得られた高分子材料の磁性部位が環状構造による構成であることを示す説明図である。
【図9B】実施例3で得られた高分子材料の磁性部位がラジカル構造による構成であることを示す説明図である。
【図10】応答速度を測定するために用いた周期性パルス電流印加パターンを示す図面である。
【符号の説明】
【0081】
100 高分子材料、
101 高分子材料の主鎖、
102 高分子材料の側鎖、
103 磁性部位、
104 磁場。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖および側鎖よりなる群から選ばれた少なくとも一つに、外部磁場の印加に応答し、磁場の方向に整列する機能をもつ磁性部位を有することを特徴とする高分子材料。
【請求項2】
前記磁性部位は、反磁性状態を有する部位と常磁性状態を有する部位の双方を有することを特徴とする請求項1に記載の高分子材料。
【請求項3】
前記磁性部位は、常磁性状態を有する部位と、前記常磁性状態を有する部位の近傍に位置する反磁性状態を有する部位とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子材料。
【請求項4】
前記反磁性状態を有する部位は、平面状に並んだ複数の環状構造を有する部位からなることを特徴する請求項2または3に記載の高分子材料。
【請求項5】
前記常磁性状態を有する部位は、少なくとも一つの不対電子を有する部位であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一つに記載の高分子材料。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高分子材料を含む繊維状構造体、層状構造体、および発泡構造体よりなる群から選ばれた少なくとも1つと、
前記構造体に近い所に、磁場発生装置を備えてなることを特徴とするクッションシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のクッションシステムを内蔵してなることを特徴とするシートシステム。
【請求項1】
主鎖および側鎖よりなる群から選ばれた少なくとも一つに、外部磁場の印加に応答し、磁場の方向に整列する機能をもつ磁性部位を有することを特徴とする高分子材料。
【請求項2】
前記磁性部位は、反磁性状態を有する部位と常磁性状態を有する部位の双方を有することを特徴とする請求項1に記載の高分子材料。
【請求項3】
前記磁性部位は、常磁性状態を有する部位と、前記常磁性状態を有する部位の近傍に位置する反磁性状態を有する部位とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子材料。
【請求項4】
前記反磁性状態を有する部位は、平面状に並んだ複数の環状構造を有する部位からなることを特徴する請求項2または3に記載の高分子材料。
【請求項5】
前記常磁性状態を有する部位は、少なくとも一つの不対電子を有する部位であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一つに記載の高分子材料。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高分子材料を含む繊維状構造体、層状構造体、および発泡構造体よりなる群から選ばれた少なくとも1つと、
前記構造体に近い所に、磁場発生装置を備えてなることを特徴とするクッションシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のクッションシステムを内蔵してなることを特徴とするシートシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公開番号】特開2007−291183(P2007−291183A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118269(P2006−118269)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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