説明

高分子窒素化合物を用いたビニリデン末端基を含むポリオレフィンの製造方法

【課題】ビニリデン末端基を含むポリオレフィンの製造方法を提供する。
【解決手段】疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、ポリピロール、ポリビニルピリジン、ポリフェノチアジン、ポリオキサジン、ポリ(ピロール−co−フラン)およびポリピロール−co−チオフェン並びにそれらの置換誘導体からなる群より選ばれる失活化剤と接触させることにより、疑似リビングカルボカチオン末端ポリマーからビニリデン末端基を含むポリオレフィンを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニリデン末端基を含むポリオレフィンの製造方法に関するものである。特には、本発明は、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、ポリピロール、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリフェノチアジン、ポリオキサジン、ポリ(ピロール−co−フラン)およびポリピロール−co−チオフェン並びにそれらの置換誘導体からなる群より選ばれた失活化剤と接触させることにより、疑似リビングカルボカチオン末端ポリマーからビニリデン末端基を含むポリオレフィンを製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
単一の「エキソ−オレフィン」、「1,1−二置換」オレフィン又は「メチルビニリデン」末端基を含む一官能性開始剤を用いて製造された線状ポリオレフィンは、特定の末端官能基を含む重合体を製造するための有用な前駆体である。多官能性開始剤を用いて製造された重合体は、多数のエキソ−オレフィン末端基を有することになる。特定の末端基を含む重合体は潤滑油添加剤として有用である。ヘテロ原子を含む官能化重合体の一例としてポリイソブテニルコハク酸無水物があり、オレフィンを末端基とするポリイソブチレンと無水マレイン酸との反応により生成する。末端官能基は、更なる反応を進めることができる重合体を合成するためにも望ましいものである。
【0003】
従来のイオン重合は、アニオン重合またはカチオン重合であると言える。アニオン重合は、塩基の存在下でカルボアニオンにより進行し、電子吸引基を持つ単量体に好都合である。カチオン重合は、酸の存在下でカルベニウムイオンとも呼ばれるカルボカチオンにより進行し、電子供与基を持つ単量体に好都合である。
【0004】
従来の重合系と同様に、リビング重合系もアニオン重合またはカチオン重合のいずれかである。従来の重合とリビング重合の相違は、理想的なリビング重合が連鎖移動反応も連鎖停止反応も無しで進行することにある。リビング重合系は、単量体と開始剤の供給比を制御することで重合度を制御でき、また二種以上の異なる単量体の逐次添加によってブロック共重合体を生成させる能力が生じるから、商業的に非常に重要である。単量体を使い尽くすまで重合は続くが、重合体は将来何時でも追加の単量体を付加する能力を保持している。当該分野では多数のそのような系がよく知られている。
【0005】
更に発展したものが、従来の単量体を用いる疑似リビングカチオン重合系である。疑似リビング重合は、ある一定条件、例えば無水の試薬を用いると最もよく達成できる。疑似リビングカチオン重合は、連鎖移動反応の速度はゼロに近いが連鎖停止反応が存在する、ただし可逆的であるという点で、真のリビング重合とは異なっている。疑似リビングカチオン重合の重要な一例が、イソブチレンの疑似リビングカチオン重合である。
【0006】
一般に、イソブチレンの疑似リビングカチオン重合によって狭い分子量分布が生じて、「tert−クロリド」末端基とも呼ばれる2−クロロ−2−メチルプロピル末端基を含む一種類の主要な重合体生成物が生じる。ある一定条件下では、少量のオレフィン異性体が生成することもある。一方、従来のBF3を用いたイソブチレンの重合では二種類の主要なオレフィン異性体が生成する。高反応性エキソ−オレフィン異性体が最も量が多く、比較的非反応性の2−メチル−1−プロペニル異性体も生成する。2−メチル−1−プロペニル異性体は、「三置換」異性体または「エンドオレフィン」異性体とも呼ばれる。さらに、従来のイソブチレンの重合では、一般的な疑似リビング重合よりも分子量分布又は多分散性指数が大きい重合体が生じる。
【0007】
エキソ−オレフィン異性体単独のものの製造はこれまで、従来の重合条件では達成されなかった。
【0008】
エキソ−オレフィン末端基だけを含むポリイソブチレンを製造するには二つの確立された方法がある。一つの方法は、tert−クロリドを末端基とするポリイソブチレンから、重合後反応でカリウムtert−ブトキシドを用いて化学的にハロゲン化水素を取り去ることを含んでいる(特許文献1)。もう一つの方法は、疑似リビングイソブチレンをメタリルトリメチルシランでその場で失活させて、活性なリビングカルベニウムイオンをエキソ−オレフィン末端基に変換することを含んでいる。例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照されたい。
【0009】
上記の方法を使用して多官能性開始剤を用いて、一以上のエキソ−オレフィン末端基を含むポリイソブチレン重合体を製造することができる。ポリイソブチレン重合体を含むポリオレフィンの製造は当該分野ではよく知られている。多数の特許文献に、エキソ−オレフィン末端基を含むポリイソブチレン重合体の製造方法が記述されているが、本発明の飽和複素環式化合物を用いて疑似リビングカチオン重合系を失活させることを利用する方法については全く記述が無い。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4342849号明細書
【非特許文献1】ロス(Roth)及びH.メイヤー(H. Mayr)著、「マクロモレキュルズ(Macromolecules)」、1996年、第29号、p.6104、
【非特許文献2】ニールセン、L.V.(Nielsen, L.V.)、ニールセン、R.R.(Nielsen, R.R.)、ガオ、B.(Gao, B.)、コップス、J.(Kops, J.)、イワン、B.(Ivan, B.)著、「ポリマー(Polymer)」、1997年、第38(10)号、p.2529
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ビニリデン末端基を含むポリオレフィンの製造方法に関するものである。特には、本発明は、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、ポリピロール、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリフェノチアジン、ポリオキサジン、ポリ(ピロール−co−フラン)およびポリピロール−co−チオフェン並びにそれらの置換誘導体からなる群より選ばれた失活化剤と接触させることにより、疑似リビングカルボカチオン末端ポリマーからビニリデン末端基を含むポリオレフィンを製造することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は一部では、ビニリデン末端基を含むポリオレフィンの製造方法に関するものであり、この方法は次の工程からなる:a)疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを供給する工程、そしてb)工程a)のポリマーを、ポリピロール、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリフェノチアジン、ポリオキサジン、ポリ(ピロール−co−チオフェン)[ピロール/チオフェン共重合体]、ポリ(ピロール−co−フラン)[ピロール/フラン共重合体]およびそれらの置換誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種の失活化剤と接触させる工程。本発明の製造方法では、接触工程を好適な条件で行って、失活化剤が、ポリオレフィンの反応性鎖末端と相互作用して反応性鎖末端からのプロトンの除去を促進することができるようにし、それによりビニリデン末端基を生成させる。
【0013】
疑似リビングカルボカチオン末端ポリマーは、ルイス酸と溶媒との存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下で、少なくとも一種のカチオン重合可能なオレフィン単量体を開始剤と接触させ、そののち失活化剤を添加することにより、生成させることができる。この種の反応により、最終的なビニリデン含有ポリオレフィンをその場で生成させることが可能になる。別の好適な疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーは、ルイス酸と溶媒の存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下で、ポリオレフィン鎖末端、普通はハライドをイオン化することにより生成させることができる。
【0014】
開始剤は一官能性であっても二官能性であっても、あるいは多官能性であってもよく、そして各種のオレフィン単量体を用いることができる。
【0015】
ある態様では、失活化剤は、ポリピロール、ポリビニルピリジン、ポリフェノチアジン、ポリフェノオキサジン、ポリイミダゾール、ポリ(ピロール−co−チオフェン)、ポリ(ピロール−co−フラン)およびそれらの置換誘導体からなる群より選ばれる高分子化合物である。さらに、高分子の混合物またはそれらの置換誘導体の混合物も用いることができる。当該分野では知られているように、これらの高分子は、ポリ(置換ピロール)のように置換されていてもよいし、あるいはブロック重合体、二元ブロック重合体等を含む共重合体であってもよい。置換は、取扱い、溶解度、反応動力学について容易にするから、最終目的に応じて最適化することができる。好ましい失活化剤は、ポリピロール、ポリビニルピリジン、ポリピロール−チオフェンおよびポリピロール−フランからなる群より選ばれ、より好ましくはポリピロール、ポリピロール−チオフェンおよびポリピロール−フランからなる群、更に好ましくはポリピロールおよび置換ポリピロールからなる群より選ばれる。別の態様では、本発明は、上記の共重合体にある。
【0016】
ある態様では、本発明において、失活化剤を、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーとは不均一な相で用いることができる。よって、失活化剤を分散液としてもしくは例えば固定媒体中で、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーと接触させることができる。これにより、失活化剤を最終重合体から容易に分離することができる。その上、疑似リビングポリマーを失活化剤と接触させるときに、この態様を利用することができる。例えば、固定床反応器または流動床反応器、または他の好適な不均一型反応器でこの接触を行うことができる。
【0017】
別の態様では、ビニリデン基末端重合体の分子量分布(Mw/Mn)が約1.01乃至約3.0、より好ましくは約1.1乃至約2.0、更に好ましくは1.5未満となるように、疑似リビング重合系をうまく制御する。
【発明の効果】
【0018】
本発明で用いる失活化剤は、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーのエンド−オレフィン鎖末端およびtert−クロリド鎖末端を、エキソ−オレフィン鎖末端に変換することができる。如何なる理論にもとらわれることはないが、例えばポリイソブチレンでは、ポリイソブチレン鎖末端のgem−ジメチル炭素からプロトンを取り去るのに、本発明で用いる失活化剤が選択的に触媒として作用すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[定義]
以下の用語は、本明細書で使用するとき、特に断わらない限りは以下の意味を有する:
【0020】
「アルキル」は、本明細書で使用するとき、一般に炭素原子数1〜約20の直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族基を意味する。直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族基の幾つかの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル等がある。「分枝アルキル」は、本明細書で使用するとき、アルキル基が分子の残部に結合している位置を表す炭素原子が、第三級又は第四級炭素原子のいずれかであるアルキル基を意味する。「第三級炭素」は、本明細書で使用するとき、3個の他の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。「第四級炭素」は、本明細書で使用するとき、4個の他の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。
【0021】
「カルベニウムイオン」又は「カルボカチオン」は、本明細書で使用するとき、3個のsp2結合置換基と空のp軌道を持つ正に荷電した炭素原子を意味する。
【0022】
【化1】

【0023】
「連鎖移動反応」は、本明細書で使用するとき、一つの重合鎖の生長の停止とそれに伴う別の重合鎖の可能な開始を意味する。
【0024】
「共通イオン塩」は、本明細書で使用するとき、生長したカルベニウムイオンと対イオンの対の解離を防ぐために、疑似リビングカチオン重合混合物に任意に添加されるイオン性の塩を意味する。共通イオン塩のアニオンは、生長した鎖末端の対イオンと同じである。共通イオン塩のカチオンは、一般にはテトラ−n−ブチルアンモニウムイオンのような脂肪族第四級アンモニウムカチオンであり、有機媒体への溶解度を付与する。
【0025】
「共通イオン塩前駆体」は、本明細書で使用するとき、疑似リビングカチオン重合混合物に任意に添加されて、ルイス酸とのその場での反応により、生長した鎖末端の対アニオンと同じ対アニオンを発生させるイオン性の塩を意味する。一例として塩化テトラ−n−ブチルアンモニウムがある。
【0026】
「制御された分子量分布」は、本明細書で使用するとき、所望の分子量分布を有するポリオレフィン重合体を意味する。分子量分布又は多分散性指数(PDI)は、本明細書では重合体鎖の平均分子量を数平均分子量で割算することにより、Mw/Mnで算出される。
【0027】
「カップリング」は、本明細書で使用するとき、重合体エキソ−オレフィン鎖末端に重合体末端カルベニウムが付加することを意味し、例えば重合体がポリイソブチレンであるときには、これはポリイソブチレンオレフィン鎖末端にポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが付加することを意味する。
【0028】
「カップリング生成物」は、本明細書で使用するとき、重合体(エキソ−オレフィン)鎖末端に重合体(末端カルベニウム)イオンが付加した生成物を意味する。カップリング生成物の数平均分子量は、主重合体生成物の数平均分子量のおよそ二倍である。
【0029】
「従来の重合」は、本明細書で使用するとき、オレフィンを含む連鎖反応重合が、連鎖伝達粒子としてイオン、アニオン又はカチオンのいずれかによって進行する重合を意味する。重合は、連鎖開始、連鎖生長、連鎖移動および連鎖停止の工程で進む。
【0030】
「二EAS生成物」は、本明細書で使用するとき、2個の別個の重合体末端カルベニウムイオンが単一の失活化剤分子と反応して共有結合を形成したときに、結果として生じる生成物を意味する。二EAS生成物は、その構造中に失活化剤の残基を含んでいる。
【0031】
「ビニリデン」は、下記一般構造を持つ重合体鎖末端を意味する。ただし、RはH、アルキル、アリール、アラルキルまたはアルカリールであってよい。
【0032】
【化2】

【0033】
「二置換オレフィン」又は「エキソ−オレフィン」又は「メチルビニリデン」は、本明細書で使用するとき、エキソ−オレフィン鎖末端を含むオレフィン重合体鎖を意味し、ポリイソブチレンではその構造は下記に示す通りである。
【0034】
【化3】

【0035】
「EAS生成物」は、本明細書で使用するとき、1個の重合体末端カルベニウムイオンが単一の失活化剤分子と反応して共有結合を形成したときに、結果として生じる生成物を意味する。EAS生成物は、その構造中に失活化剤の残基を含んでいる。
【0036】
「電子供与体」は、本明細書で使用するとき、重合反応に添加されて、ルイス酸と完全に錯体を作る、またはルイス酸と全く錯体を作らないかのいずれかである塩基性及び/又は求核物質を意味する。電子供与体の濃度は、例えば水のようなプロトン性不純物の濃度を上回る。
【0037】
「求電子芳香族置換又はEAS」は、本明細書で使用するとき、EAS生成物が生成する工程を意味する。
【0038】
「gem−ジメチル炭素」は、本明細書で使用するとき、下記の構造で示すように、ポリオレフィン重合体鎖末端のカルベニウムイオン又は塩素が結合した炭素にアルファ位で結合した2個のメチル炭素を意味する。
【0039】
【化4】

【0040】
「炭化水素基」は、本明細書で使用するとき、主として炭素と水素とからなる有機基を意味し、脂肪族、脂環式、芳香族またはそれらの組合せ、例えばアラルキルまたはアルカリールであってよい。そのような炭化水素基は、脂肪族不飽和、すなわちオレフィン又はアセチレン不飽和を含んでいてもよいし、また少量のヘテロ原子、例えば酸素または窒素、または塩素などのハロゲンを含んでいてもよい。
【0041】
「開始剤」は、本明細書で使用するとき、重合を開始して重合体鎖の先端の原子価を満たす化学的部分、もしくはそのような部分を供給する分子を意味する。一官能性開始剤が使用されるなら、鎖末端(CE)濃度は開始剤の濃度に等しい。多官能性開始剤では、開始剤の官能価がxであるときには鎖末端濃度は開始剤濃度のx倍に等しい。
【0042】
「ルイス酸」は、本明細書で使用するとき、一対の電子を受容して共有結合を形成することができる化合物を意味する。
【0043】
「リビング重合」は、本明細書で使用するとき、測定できる連鎖移動反応も連鎖停止反応も無くて進行する重合を意味する。
【0044】
「疑似リビング重合」は、本明細書で使用するとき、可逆的な連鎖停止反応は発生する、不可逆的な連鎖停止反応と連鎖移動反応の速度はゼロに近いリビング重合を意味する。
【0045】
「失活化剤」は、本明細書で使用するとき、重合反応に添加されて活性ルイス酸の存在下で重合体鎖末端と反応する化学化合物を意味する。失活化剤は反応性鎖末端からプロトンを除去することを促進する。
【0046】
「ポリオレフィン」は、本明細書で使用するとき、一種以上のオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、スチレン、イソブチレン等の付加重合によって生成する重合体を意味する。
【0047】
「プロトン性不純物」は、本明細書で使用するとき、酸性水素原子をその構造に含む重合反応混合物中の不純物、例えば水を意味する。
【0048】
「位置特異的」は、本明細書で使用するとき、幾つかの可能な異性生成物のうちの一種類を独占的に又はほぼ独占的に与える化学反応を意味する。
【0049】
「停止」は、本明細書で使用するとき、重合工程を停止させる化学反応、またはルイス酸の失活による失活反応を意味する。
【0050】
「停止剤」は、本明細書で使用するとき、重合工程を停止させる、あるいは反応を失活させるが、同時に新たな重合体鎖を生成しない化学化合物を意味する。停止剤として多数のアルコールを使用することができる。一般的な停止剤はメチルアルコールである。
【0051】
「tert−クロリド」は、ポリオレフィン重合体鎖の2−クロロ−2−メチルプロピル末端基を意味する。
【0052】
本発明は一部では、ビニリデン基末端重合体を製造する方法であって、a)疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを供給する工程、そしてb)工程a)のポリマーを、ポリピロール、ポリビニルピリジン、ポリフェノチアジン、ポリオキサジン、ポリ(ピロール−co−フラン)、ポリピロール−co−チオフェン、およびそれらの置換誘導体からなる群より選ばれた失活化剤と接触させる工程からなる方法に関する。
【0053】
本発明の失活化剤は、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーのエンド−オレフィン鎖末端およびtert−クロリド鎖末端を、エキソ−オレフィン鎖末端に変換することができる。如何なる理論にもとらわれずに、例えばポリイソブチレンでは下記に示すように、ポリイソブチレン鎖末端のgem−ジメチル炭素からプロトンを取り去るのに、本発明の失活化剤が選択的に触媒として作用すると考えられる。
【0054】
【化5】

【0055】
米国特許第6969744号明細書に開示されているように、求電子芳香族置換(EAS)メカニズムで疑似リビングカチオン重合を失活させる、非常に似通った構造の失活化剤が先行技術で知られているので、この結果は予測し得ないものであった。最も高いEAS収率を与える化合物は一般に、環の戦略的位置に位置する電子供与基で置換されている。これらの置換基は、例えばポリイソブチレンカルベニウムイオンが、環のオレフィンと反応したときに生じるフリーデル・クラフツ中間体を安定化させると考えられる。
【0056】
本発明に使用される失活化剤は、一官能性開始剤が使用されようと多官能性開始剤が使用されようとそれとは無関係に、オレフィン鎖末端およびtert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィン重合体をエキソ−オレフィン鎖末端に変換するために用いることができる。この変換速度は、一官能性開始剤でも二官能性開始剤でも同様であると予測される。全鎖末端に基づき高濃度のエキソ−オレフィン鎖末端を含むポリイソブチレン重合体の製造では、温度依存性が観察されている。反応温度を上げると、カップリングを抑えることによりエキソ−オレフィンの収量が増加することが測定されている。カップリングは、1H−NMRスペクトルでは百万分の4.85部ピークのエキソ−オレフィンピークよりほんの上方領域に4.82に中心があるピークとして見つけられ、またGPCスペクトルでも主ピークに低溶離量の肩として現われる。
【0057】
ある態様では、疑似リビング重合条件の条件および系をそれ以後の失活工程に照らして最適化することができる。如何なる理論にもとらわれることはないが、所望とする脱離反応は、カルベニウムイオンと既に生成したエキソ−オレフィンとの反応によるカップリング生成物の生成と競合していると考えられる。従って、脱離に有利でカップリングに不利な条件が好ましい。高い反応温度が脱離に有利でカップリングに不利であることが分かっている。イソブチレンの疑似リビングカチオン重合では、活性カルベニウムイオンと休止状態のtert−クロリド鎖末端間の平衡が存在する。系の温度が上がると、この平衡は休止状態の鎖末端に益々有利になるが、これは脱離及びカップリングの速度を同等程度まで下げることになる。しかし、高温は失活化剤とルイス酸の間の錯体の平衡を非錯化失活化剤の方にずらすことにもなり、それが脱離を起こさせる薬剤であると思われる。よって、温度の上昇は所望の反応に競合的な利点をもたらす。温度を無制限に上げることはできない。
【0058】
鎖末端濃度、並びにそれと失活化剤濃度およびルイス酸濃度との関係は重要な変数である。高い鎖末端濃度は、低分子量が目的であるときに必要になるが、オレフィンカップリングに優先的に有利である、というのはその工程が重合体鎖では二次的なものだからである。従って、所望の優勢な脱離速度維持するためには、失活化剤濃度および/または温度を上げるべきである。しかし、これらの変化は両方とも、カルベニウムイオンの濃度を低下させ、よって鎖末端のエキソ−オレフィンへの変換速度を減ずるという望ましくない影響を及ぼす。失活化剤濃度の増加は、おそらくは失活化剤とルイス酸の間の錯体形成によりルイス酸の濃度を減少させ、そしてこれがカルベニウムイオン濃度を減少させることになる。その理由は、後者はおよそルイス酸濃度の二乗で変化するからである。従って、低分子量を目的とする処方では、高い失活化剤濃度と高いルイス酸濃度で配合するべきで、好ましくは高温で実施する。目的の分子量が何であれカップリングを減らす得策は、追加の希釈剤で反応体全部を希釈することである。
【0059】
充分な濃度の塩基性電子供与体が存在する場合、失活化剤濃度が疑似リビング鎖末端濃度のほんの一部であるときに、エキソ−オレフィン鎖末端への変換の改善が得られることが判明している。このことは、これらの条件下で失活化剤がカルベニウムイオンからプロトンを取り去り、続いてプロトンを電子供与体に移動できることを示唆している。すなわち、失活化剤は脱離の触媒として作用することができ、電子供与体はプロトン受容体として働くことができる。(鎖末端に対して)化学量論濃度以下の失活化剤の使用が、本発明の方法を実施するに当り経済的利点をもたらすことになる。一方、塩基性電子供与体が不在である場合、後者の代わりに共通イオン塩又はその前駆体が存在するとき、鎖末端のエキソ−オレフィンへの完全な変換には化学量論又はそれ以上の濃度の失活化剤が必要になることが判明している。これらの条件下では、失活化剤は触媒とプロトン受容体両方として働くことができる。
【0060】
[エキソ−オレフィン末端基を鎖に含むポリオレフィン重合体の一般的な製造方法]
以下に、本発明のポリオレフィン重合体の代表的な製造方法を記載する。本発明の方法は、バッチ法、連続法、半バッチ法、あるいは当該分野の熟練者には知られている任意の方法で実施することができる。重合反応は一般に、不活性ガス中で実質的に無水の環境で行われる。
【0061】
次のような反応体を反応器に充填する:
1)希釈剤、
2)開始剤、
3)電子供与体、または共通イオン塩又はその前駆体、
4)一種以上の単量体、および
5)ルイス酸、一般にはチタン又はホウ素のハロゲン化物。
【0062】
反応混合物を、約−130℃乃至約10℃の範囲の所望の温度で平衡させる。本発明の方法は、任意の所望の圧力で、大気圧、減圧または過圧で行うことができる。重合反応の進行を、反応混合物中に残っている単量体の量の測定によりその場でモニタする。単量体の高度の変換を観察した後、失活化剤を添加する前に失活前の鎖末端組成を測定するためにアリコートを取り出す。アリコートの重合反応を所望の温度で平衡にした適当なアルコールで停止させる。
【0063】
6)一種以上の窒素含有高分子失活化剤を、反応混合物に添加して重合反応を失活させる。
【0064】
所望の生成物を得るために反応体の濃度を変えることができるが、エキソ−オレフィン鎖末端を高い収量で得るためにはある一定比の反応体が好ましい。その比を下記に記す。
【0065】
単量体と開始剤とのモル比は、約3:1乃至約20000:1の範囲にある。好ましくは、単量体と開始剤とのモル比は約5:1乃至約2000:1の範囲にある。より好ましくは、単量体と開始剤とのモル比は約10:1乃至150:1である。単量体と開始剤とのモル比が、ポリオレフィンの最終的な分子量を制御する。
【0066】
ルイス酸と鎖末端とのモル比は、約0.1:1乃至約2500:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と鎖末端とのモル比は約2:1乃至約200:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と鎖末端とのモル比は約2:1乃至15:1である。
【0067】
ルイス酸と電子供与体とのモル比は、約1.1:1乃至約10000:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と電子供与体とのモル比は約2:1乃至約100:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と電子供与体とのモル比は約4:1乃至30:1である。
【0068】
ルイス酸と失活化剤とのモル比は、高分子失活化剤のモル当量窒素量に基づいていて、約1.1:1乃至約150:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と当量窒素量とのモル比は約2:1乃至約100:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と当量窒素量とのモル比は約2:1乃至15:1である。
【0069】
同様に、高分子失活化剤の当量窒素量に基づいた失活化剤と鎖末端との比は、約0.25:1乃至約20:1の範囲にある。好ましくは、当量窒素量と鎖末端とのモル比は約0.5:1乃至約5:1の範囲にある。より好ましくは、当量窒素量と鎖末端とのモル比は約0.5:1乃至4:1である。
【0070】
ポリオレフィン重合体のエキソ−オレフィン鎖末端の濃度を測定するために、失活化剤を添加したのち様々な時間間隔で反応混合物から追加のアリコートを取り出してもよい。全てのアリコート試料および残った反応混合物で、所望の温度で平衡にした適当なアルコールを用いて重合反応を停止させる。
【0071】
エキソ−オレフィン鎖末端の濃度を、エンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端の濃度と共に、1H−NMRを使用して定める。EAS生成物、二EAS生成物およびカップリング生成物の量を定性的に求めるために、GPCスペクトルも取る。
【0072】
疑似リビング重合及び/又は失活化剤との接触反応(群)は、バッチ形式でも、あるいは成分が連続的な流れで反応器に送られる半連続又は連続操作でも実施することができ、適切な反応器装置としては、これらに限定されるものではないが、溢れた重合体のスラリー又は溶液が重合体回収のために取り出されるような連続撹拌タンク型反応器装置、または栓流式(plug flow)反応器を挙げることができる。反応器の内容物を撹拌したりかき混ぜて、その一様な反応体分布を達成することが好ましい。不均質な失活化剤は、失活化剤を分散液としてあるいは固定媒体中に調製した固定床反応器やスラリー反応器を使用して、疑似リビングポリマーと有効に接触させることができる。理論的には栓流式反応器に操作利点があるものの、好ましい反応様式はバッチ法である。一般に、取扱いを容易にするために、また環又は分枝形成に対比して線状又は鎖状重合を誘発するために、液相で反応(群)を実施する。周囲条件で気体状の供給物を使用するならば、供給物を液相に維持するために反応圧力を制御する、および/または供給物を不活性溶媒または液体希釈剤に溶解させることが好ましい。ブタン供給物については、供給物を含む一般的なC4留分は加圧下および/または低温で液体であり、溶媒または希釈剤を要しない。反応を行う温度は重要であり、リビング又は疑似リビング系によっては、反応温度が高過ぎるとカチオン重合のリビング特性を減少させたり、排除することになる。
【0073】
以下に、本発明のポリオレフィン重合体の製造に使用するのに適した化合物を記載する:
【0074】
[希釈剤]
希釈剤はその極性により、生長種のイオン化平衡および交換速度に影響を及ぼし、極性はその誘電率から見積もることができる。一般に、低い誘電率を有する溶媒はイオン対が解離しにくいので好ましい。好適な溶媒としては、これらに限定されるものではないが、凝固点がかなり低くて好ましい重合温度で使用できる低沸点のアルカンおよび一又は多ハロゲン化アルキルが挙げられる。具体的な溶媒としては、アルカン(一般にはC2−C10アルカン、例えばプロパン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナンおよびノルマルデカンなどのノルマルアルカン、およびイソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタンおよび2,3−ジメチルブタン等を含む分枝アルカン)、ハロゲン化アルカン、例えばクロロホルム、塩化エチル、塩化n−ブチル、塩化メチレン、塩化メチル、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、1,2−ジクロロプロパンまたは1,3−ジクロロプロパン、アルケン及びハロゲン化アルケン(例えば、塩化ビニル、1,1−ジクロロエテンおよび1,2−ジクロロエテン)、二硫化炭素、二酸化硫黄、無水酢酸、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、クロロベンゼン、ニトロ−アルカン(例えば、ニトロプロパン)が挙げられ、カチオン重合に使用できる少数の代表的な液体希釈剤または溶媒も挙げることができる。混合溶媒(例えば、上記に挙げたものの組合せ)も使用することができる。
【0075】
[開始剤]
リビング及び疑似リビングカルボカチオン重合の開始剤化合物は、当該分野ではよく知られている。開始剤は、所望とする生成物に応じて一官能性であっても多官能性であってもよい。所望の重合体が線状であるなら、一官能性及び二官能性開始剤が用いられる。星形重合体を製造するには、開始剤は2個以上の反応性部位を有するべきである。考えられる開始剤化合物は、一般式(X’−CRabnc(ただし、Ra、RbおよびRcは独立に、アルキル基、芳香族基、およびアルキル芳香族基のうちの少なくとも一種からなり、同じでも異なっていてもよく、そしてX’は、アセテート、エテレート、ヒドロキシル基またはハロゲンである)で表すことができる。Rcの価数はnであり、nは1〜4の整数である。Ra、RbおよびRcは、1〜約20個の炭素原子、好ましくは1〜約8個の炭素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。X’はハロゲンであることが好ましく、より好ましくは塩素である。場合によっては、Ra、RbおよびRcの構造を生長種または単量体に似せて選択することが好ましく、例えば、ポリスチレンには1−フェニルエチル誘導体、あるいはポリイソブチレンには2,4,4−トリメチルペンチル誘導体である。好適な化合物としては例えば、ハロゲン化クミル、ジクミル及びトリクミル、特には塩化物、すなわち2−クロロ−2−フェニルプロパン、すなわち塩化クミル;1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちジ(塩化クミル);1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちトリ(塩化クミル);2,4,4−トリメチル−2−クロロペンタン;2−アセチル−2−フェニルプロパン、すなわち酢酸クミル;2−プロピオニル−2−フェニルプロパン、すなわちプロピオン酸クミル;2−メトキシ−2−フェニルプロパン、すなわちクミルメチルエーテル;1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちジ(クミルメチルエーテル);1,3,5−トリ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちトリ(クミルメチルエーテル)、および類似化合物を挙げることができる。その他の好適な例は米国特許第4946899号明細書に見い出すことができる。特に好ましい例は、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン(TMPCl)、1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、および1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン(bDCC)である。
【0076】
全反応混合物における鎖末端の濃度は、1リットル当り約0.0001モル乃至1リットル当り約2.0モルの範囲にあってよい。好ましくは、鎖末端の濃度は1リットル当り約0.001モル乃至1リットル当り約1.0モルの範囲にある。より好ましくは、鎖末端の濃度は1リットル当り約0.005モル乃至1リットル当り約0.5モルの範囲にある。
【0077】
[電子供与体]
電子供与体は、従来の重合系をリビング及び/又は疑似リビングカチオン重合系に変換することが明らかになっている。本発明に用いられる電子供与体は、特別な化合物又は化合物の部類にはっきりと限定されるわけではない。例としては、ピリジンおよびアルキルアミン、非プロトン性アミド、スルホキシド、エステル、および金属原子に結合した酸素原子を持つ金属化合物等を挙げることができる。ピリジン化合物としては、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2−メチルピリジン、およびピリジンが挙げられる。N,N−ジメチルアニリンおよびN,N−ジメチルトルイジンも用いることができる。アミド化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、およびN,N−ジエチルアセトアミドが挙げられる。スルホキシド化合物の例としてはジメチルスルホキシドがある。ジエチルエーテルはエーテル化合物の例であり、そして酢酸メチルおよび酢酸エチルはエステル化合物の例である。リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、トリアミドヘキサメチルホスフェートなどのリン酸エステル化合物も用いることができる。チタン酸テトライソプロピルなどの酸素含有金属化合物も電子供与体として使用できる。
【0078】
全反応混合物における電子供与体の濃度は、1リットル当り約0.001モル乃至1リットル当り約0.1モルの範囲にあってよい。好ましくは、電子供与体の濃度は1リットル当り約0.001モル乃至1リットル当り約0.05モルの範囲にある。より好ましくは、電子供与体の濃度は1リットル当り約0.002モル乃至1リットル当り約0.02モルの範囲にある。
【0079】
[共通イオン塩及び共通イオン塩前駆体]
電子供与体に加えて、もしくはその代わりに、共通イオン塩又は塩前駆体を任意に反応混合物に添加することができる。一般にこれらの塩は、イオン強度を高め、遊離イオンを抑え、そして配位子交換体と有利に相互作用させるために使用される。特に好ましいのは共通イオン塩前駆体、例えば塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu4NCl)である。全反応混合物における共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は、1リットル当り約0.0005モル乃至1リットル当り約0.05モルの範囲にあってよい。好ましくは、共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は1リットル当り約0.0005モル乃至1リットル当り約0.025モルの範囲にある。より好ましくは、共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は1リットル当り約0.001モル乃至1リットル当り約0.007モルの範囲にある。
【0080】
[単量体]
本発明の方法に使用するのに適した単量体は、炭化水素単量体、すなわち水素原子と炭素原子だけを含む化合物、特にはオレフィンおよびジオレフィンであり、通常は炭素原子数約2〜約20のものであるが、好ましくは約4〜約8のものである。この方法は、そのような単量体を重合して、異なってはいても分子量が均一な重合体、例えば約300乃至100万g/モルを越える重合体を生成させるのに用いることができる。そのような重合体は、分子量が約200乃至10000g/モルの低分子量液体又は粘性重合体であっても、あるいは分子量が約100000乃至1000000g/モルかそれ以上の固体ワックス状乃至塑性又は弾性物質であってよい。好適な単量体としては、イソブチレン、スチレン、ベータピネン、イソプレン、ブタジエンなどの化合物、およびこれらの種の置換化合物等を挙げることができる。特に好ましい単量体は、イソブチレン、2−メチル−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、およびベータ−ピネンである。更に好ましい単量体はイソブチレンである。単量体の混合物も使用することができる。全反応混合物における単量体の濃度は、1リットル当り約0.01モル乃至1リットル当り約5.0モルの範囲にあってよい。好ましくは、単量体の濃度は1リットル当り約0.1モル乃至1リットル当り約2.0モルの範囲にある。より好ましくは、単量体の濃度は1リットル当り約0.3モル乃至1リットル当り約1.0モルの範囲にある。最も好ましくは、単量体の濃度は1リットル当り0.5モルである。
【0081】
[ルイス酸]
本発明のための触媒として適したルイス酸としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン化チタン及びホウ素、特には四塩化チタンおよび三塩化ホウ素が挙げられる。ハロゲン化チタン、特には四塩化チタンを使用することが好ましい。ルイス酸の強度とその濃度は特定の単量体に対して調整すべきである。さらに、これらルイス酸の強度は求核添加剤を用いて調整することができる。場合によってはこれらルイス酸は補助開始剤とも呼ばれる。開始剤系に存在するルイス酸の量は変えることができる。しかし、ルイス酸の濃度は適切な重合及び失活速度を遂行できるほど充分であることが望ましい。ルイス酸濃度は、生成した重合体を沈殿させるほど高くすべきではない。全反応混合物におけるルイス酸の濃度は、1リットル当り約0.001モル乃至1リットル当り約3.0モルの範囲にあってよい。好ましくは、ルイス酸の濃度は1リットル当り約0.005モル乃至1リットル当り約1.5モルの範囲にある。より好ましくは、ルイス酸の濃度は1リットル当り約0.05モル乃至1リットル当り約1.0モルの範囲にある。
【0082】
[失活化剤]
本発明のポリオレフィンの製造に使用が考えられる失活化剤について、以下に記載する。本発明の各失活化剤が共有する基本的な特徴は、失活化剤がすべて窒素含有芳香族単量体の重合により生成した高分子であることにある。同時に、この特徴により、これらの高分子は導体または半導体など他の用途でも機能することができる。
【0083】
ある態様では、失活化剤は、ポリピロール、ポリビニルピリジン、ポリフェノチアジン、ポリフェノオキサジン、ポリイミダゾール、ポリ(ピロール−co−フラン)、およびポリ(ピロール−co−チオフェン)、並びにそれらの置換誘導体からなる群より選ばれる高分子である。さらに、高分子の混合物またはそれらの置換誘導体の混合物も用いることができる。当該分野では知られているように、これらの高分子は、ポリ(置換ピロール)等のように置換されていてもよい。置換は、取扱い、溶解度、反応動力学について容易にするから、よって最終目的に応じて最適化することができる。ある態様では、失活化剤を、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーとは不均一な相で用いることができる。
【0084】
ピロールは、五員環構造を持つ公知の化学化合物であり、環構成員のうちの4個は炭素原子で、五番目は窒素原子である。炭素原子は、アルキル、アルケンまたはハロゲンなどの置換基を包含できることが分かっている。ピロールの重合も知られていて、特にピロールの電気化学重合は、例えばジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティ・ケミカル・コミュニケーション(J. Chem. Soc. Chem. Comm.)、1979年、p.635に開示されている。電気化学セルのアノードで導電性塩を存在させてピロールを重合することにより、導電率を有する薄膜が得られる。そのような得られた導電性ポリピロールは、対イオン、特にはBF4-、AsF6-、ClO4-およびHSO4-を含みうる。一般にポリピロールの膜状構造の生成は、貴金属電極を用い、任意に隔膜を含む従来式セルでの電気化学重合により行われる。白金もしくはチタンなどのバルブ金属電極が一般には好ましい。陰極酸化で生成した得られたポリピロール薄膜はアノードに析出し、その後ストリッピングにより取り出される。膜状構造物を連続的に形成し、その構造物をアノードから連続的にストリッピングする方法は、例えば米国特許第4468291号明細書に提案されている。ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)、1984年、第106巻、p.6861−6863には、バルチ・ジンガー(Baruch Zinger)及びラリー・L.ミラー(Larry L. Miller)により、ドープ剤としてフェロシアン化物イオン(Fe(CN)64-)を使用して、水溶液中の陰極酸化によってポリピロールが得られることが報告されている。
【0085】
置換ピロールの重合体、およびピロールと他の共重合可能な単量体との共重合体を含むポリピロール(PPy)は、本発明に使用できる高分子の一部類を表す。これらの複素環単量体は、下記図式に示すように重合が2,5位で起こると、ドープされた導電率のポテンシャルを持つ完全共役重合体を形成する。
【0086】
【化6】

【0087】
複素環単量体は、化学手段または電気化学手段のいずれかで開始しうる酸化カップリングメカニズムで重合させることができる。ピロールの電気化学重合は一般に、単量体がアノードで酸化されてラジカルカチオンが生成し、それが迅速にカップリングし、2個のプロトンを脱離して再芳香族化する、ラジカル逐次生長メカニズムを辿ると考えられる。こうして生成したピロール二量体は、単量体よりも酸化され易く、再酸化されて更にカップリングすることができる。生長オリゴマーの鎖長が長くなるにつれて、不溶性になって黒色薄膜としてセルアノード表面の析出物となり、固相重合が起こり続ける。「ポリピロール」は、重合ピロール環を含む高分子を意味し、下記I式で表されるもののような置換ピロール環も含まれる:
【0088】
【化7】

【0089】
式中、R1およびR2は各々独立に、水素または炭素原子1〜約7個を含む低級アルキル基である。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル等が挙げられる。好ましい一態様では、R1およびR2は独立にメチル基である。ピロールとN−メチルピロール又は3,4−ジメチルピロールとの共重合体も、本発明に使用することができる。あるいは、ピロールまたは(I)式で表される種類の置換ピロールを、他の共重合可能な単量体、特には、ピリジン、イミダゾールなどの窒素含有化合物、フランおよびチオフェンを含む他の複素環式化合物、もしくは他の芳香族又は置換芳香族化合物と共重合させることもできる。特に好ましい共重合体はピロール/フランおよびピロール/チオフェンである。
【0090】
ピロールの重合体及び共重合体は、様々な供給源から市販され、あるいは当該分野の熟練者にはよく知られた技術により製造することもできる。例えば、ピロールの重合体は、英国特許第2184738号明細書、およびディアズ、外著、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティ・ケミカル・コミュニケーション、1979年、p.635及びジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティ・ケミカル・コミュニケーション、1980年、p.397に報告されているように、電解重合により得ることができる。ポリピロールは、荷電又は酸化状態(黒色)で導電性であり、電解重合によりこの状態で生成する。ポリピロールが完全に還元されて中性又は放電状態(黄色)になると、電子絶縁体になる。ポリピロール、特に黒色ピロールは、ピロールを均一な溶液中で(例えば、過酸化水素を用いて)酸化することにより、粉末状高分子物質として生成させることができる。ガルディニ(Gardini)は、アドバンセス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリ(Adv. Heterocyl. Chem.)、1973年、第15号、p.67で、そのような製造法および生成物について述べている。また、ピロールを塩化第二鉄など他の酸化剤で酸化してポリピロールにすることもできる。本発明に使用できる電解重合ポリピロールまたはピロールの共重合体を含む多孔性導電性組成物については、英国特許第2184738号明細書に記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。簡単に言えば、これに記載の方法は、ピロールまたはピロールを含む共重合可能な混合物を電解浴の導電表面で電解重合することからなり、(A)(i)ピロール又はピロールの混合物と共重合可能な単量体、(ii)ポリピロール又はピロールの共重合体に取り込まれる一種以上の低移動度アニオンであって、ポリピロール又は共重合体の還元過程で該低移動度アニオンの平均イオン輸率が約0.1未満であることに特徴がある低移動度アニオン、および(iii)有機希釈剤を含む電解浴に、導電表面を浸漬する、そして(B)ピロール又はピロールを含む共重合可能な混合物を導電表面で電解重合するのに充分な電圧で、該浴に電流を通すことからなる。組成物に取り込まれる低移動度アニオンは有機イオンであっても無機イオンであってもよい。記載されている低移動度の無機イオンの例としては、フェリシアン化物、ニトロプルシドなどの遷移金属錯体が挙げられる。好ましい低移動度アニオンは、有機硫酸塩又はスルホン酸塩から誘導されたものを含む有機アニオンであり、硫酸及びスルホン酸アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル又はアルカリールであってもよい。アニオンは、1以上のアニオン部位、すなわち分子当り1以上のイオン性基、例えば分子当り1以上のスルホン酸基を含んでいてもよい。スルホン酸の例としては、ヘキシルスルホン酸、オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等を挙げることができる。硫酸塩の例としては、硫酸水素ラウリルなどの硫酸アルキル、および様々な分子量の硫酸水素ポリエチレンが挙げられる。
【0091】
本発明で用いる失活化剤として利用することができるポリビニルピリジンとしては、ビニルピリジン及び置換ビニルピリジンの重合体、並びにピリジン、置換ビニルピリジンおよび/またはアクリル酸エステルなど他の共重合可能な単量体との共重合体を挙げることができる。本発明に使用できる重合体および共重合体は、2−ビニルピリジン並びに4−ビニルピリジンから誘導することができる。これらの重合体は当該分野では普通、ポリ(2−ビニルピリジン)はP2VP、そしてポリ(4−ビニルピリジン)はP4VPと呼ばれる。ビニルピリジンの重合体及び共重合体は、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)、ポリサイエンス(Polyscience)社などの供給源から市販されている。
【0092】
他の複素環式窒素含有化合物の重合体も使用でき、これらとしてはポリイミダゾールおよびポリフェノチアジンが挙げられる。特に有用なものは、イミダゾール、1−ビニルイミダゾールおよびフェノチアジンの重合体である。
【0093】
ポリ(ピロール−co−フラン)およびポリ(ピロール−co−チオフェン)のなかで本発明に使用することが考えられるポリ(ピロール−co−チオフェン)は、チオフェン環に結合したピロールの反復単位からなる。同様に、ポリ(ピロール−co−フラン)は、フラン環に結合したピロールの反復単位からなる。従って、共重合体、ABブロック重合体、共重合体単独重合体混合物が考えられる。特に好ましいのは、チオフェンまたはピロールが2位と2’位でそれぞれピロール環に直接結合していて、よって下記式で表される反復単位である:
【0094】
【化8】

【0095】
式中、Xは、酸素または硫黄であり、そしてR21、R22、R23およびR24の各々は独立に、水素、アルキル基、アリール基、アルカリール基およびアラルキル基からなる群より選ばれる。本発明では例えばXが硫黄であるとき、下記式で表される化合物が単量体として使用される:
【0096】
【化9】

【0097】
式中、R20およびR26は、水素、カルボキシル基またはその塩、好ましくは水素を表し、そしてR21、R22、R23およびR24は、H、アルキル基、ハロゲン基、エーテル基、アリール基またはアラルキル基を表す。Xが酸素であるときも、同様の単量体を使用することができる。
【0098】
これらの単量体としては、Xが硫黄であるときは例えば、R20、R21、R22、R23、R24およびR26がHであるなら2,2’−チエニルピロール;4−メチル−2,2’−チエニルピロール、または4−エチル−2,2’−チエニルピロールが挙げられ、また好ましいのは4’−メチル−2,2’−チエニルピロール、または4’−エチル−2,2’−チエニルピロール、4,4’−ジメチル−2,2’−チエニルピロール、または4,4’−ジエチル−2,2’−チエニルピロール、4−クロロ−2,2’−チエニルピロール、4−ブロモ−2,2’−チエニルピロール、4−メトキシ−2,2’−チエニルピロール、または4−エトキシ−2,2’−チエニルピロール、および4−フェニル−2,2’−チエニルピロールである。
【0099】
これらの化合物は容易に入手できるが、例えば次のような方法によっても得ることができる:テノイルアリルアミド化合物を、ホスゲンまたは二塩化トリフェニルホスフィンなどの好適な試薬を用いて塩化イミドイル誘導体に変換し、そののちt−ブトキシカリウムなどの強塩基での処理により1,5−双極子環化反応を起こさせる。
【0100】
本発明で用いるポリ(ピロール−co−チオフェン)共重合体及びポリ(ピロール−co−フラン)共重合体失活化剤は主として、上記単量体を支持電解質と(誘電率の高い)溶媒の存在下で電解酸化することにより得られる。
【0101】
支持電解質としては、各種の化合物、例えば有機第四級アンモニウム塩、無機塩、プロトン酸およびエステルを挙げることができる。有機第四級アンモニウム塩としては、例えばテトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラn−ブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラn−ブチルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム、硫酸水素テトラエチルアンモニウム、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラn−ブチルアンモニウム、トリフルオロメタン−スルホン酸テトラエチルアンモニウム、およびトリフルオロメタン−スルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムを挙げることができる。無機塩としては、上記のアニオン部を持つリチウム、ナトリウム、バリウム及び銀塩が挙げられる。プロトン酸としては、硫酸および硝酸が挙げられる。以上の支持電解質および単量体をそれぞれ、水、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチル−リンアミド、塩化メチレン、ピリジンおよびテトラヒドロフランなどの溶媒に、0.01M乃至1Mの濃度で溶解させる。こうして得られた溶液に、白金などの導電性金属の電極または導電性金属酸化物で被覆した導電性ガラスの電極より電流を通して、100V以下、好ましくは50V以下の電極間電圧と、0.01乃至10mA/cm2の範囲の電流密度を与え、それにより本発明の重合体を得ることができる。電解重合条件、例えば電極間電圧や電流密度を上記の範囲外で与えると、本発明で特定した反復構造単位を持ち構造的に規則正しい重合体を得ることができない。
【0102】
[製造例]
(製造A)
塩化第二鉄(373部、2.3モル)を、5リットル容フラスコ内の蒸留水3000部に溶解させる。ピロール(67.09部、1モル)をフラスコに約45分かけて滴下して、混合物の温度が最大3℃の増加となるようにする。混合物を室温で1日撹拌し、2日間放置し、ろ過し、そしてろ液が無色になるまで残留物を蒸留水で洗浄する。残留物を蒸気オーブンで一晩乾燥し、そして120℃−125℃の真空オーブンで乾燥する。このようにして製造したポリピロール塩は、窒素16.3%および塩素10.59%を含む。
【0103】
(製造B)
3リットル容フラスコに、水酸化アンモニウム水溶液66部(1モル)、および蒸留水1940部を入れる。実施例Aのポリピロール塩(100部)を加え、そして混合物を室温で1日撹拌する。反応混合物をろ過し、そして残留物を蒸留水2000部で一晩かけてスラリーにする。スラリーをろ過し、そして残留物を150℃の真空オーブンで乾燥する。これで得られた粉末は、窒素19.0%および塩素0.97%を含む。
【0104】
(製造C)
5リットル容フラスコに、塩化第二鉄六水和物491.7部(1.76モル)、および水3700部を入れる。ポリビニルアルコール(Mw25000)8部(0.18モル)の水100部溶液を、約15分間撹拌しながら75℃に加熱することにより調製する。この溶液も5リットル容フラスコに加える。ピロール(50.8部、0.75モル)を、約15分かけて反応フラスコに加え、そして黒色反応混合物を一晩撹拌する。次に、混合物をろ過し、そしてこうして得られた黒色残留物を水2500部でスラリーにし、1時間撹拌し、ろ過する。残留物を再び水2000部でスラリーにし、3.5時間撹拌し、ろ過する。残留物を55℃の熱風乾燥機で6時間乾燥し、110℃の真空オーブンで48時間乾燥する。窒素15.4%および塩素9.08%を含む黒色固形物が得られる。
【0105】
(製造D)
英国特許第2184738号明細書に記載されている一般的な方法に従って、硫酸ラウリルポリピロールを製造する。この方法では、ピロール1200グラム(17.89モル)、硫酸ラウリルナトリウム1200グラム(4.16モル)、ポリエチレンオキシド(分子量=20000)600グラム、および水15ガロンを混合し、そして細目ワイヤブラシで清浄した17インチ×36インチ×0.05インチの10/10スチールアノードを使用して電解重合させる。アノードを36インチの上部寸法に沿って、アノード板に通した5個のボルトを用いて2つの1.5×36×0.1インチ銅片で支持する。内側3個のボルトはアノードの電気接続として働く。電解重合を100アンペアで120分間行う。電力を取り除き、そして混合物を周囲温度まで冷却し、水洗し、ろ過する。残留物を水で3回洗浄し、ウォリング・ブレンダで水と一緒に粉砕し、そしてろ過する。残留物を水洗した後メタノールで洗浄する。粉末を75℃で一晩真空乾燥する。このようにして得られた乾燥粉末は、炭素62.31%、窒素10.77%、硫黄5.33%およびナトリウム0.010%を含む。
【0106】
(製造E)
2リットル容フラスコに、実施例Dで製造した硫酸ラウリルポリピロール196.7部(0.3モル)、およびメタノール900部を入れてスラリーを形成する。水酸化カリウム20部(0.357モル)の水300部溶液を調製し、そして撹拌しながら2時間かけてフラスコに加える。混合物を室温で数時間撹拌してろ過する。残留物をスラリーにし、メタノール1000部で洗浄し、メタノール水溶液(50/50)1000部で洗浄し、そして最後にメタノール1000部で2回洗浄する。スラリーをろ過し、そして残留物を風乾し、蒸気オーブンで乾燥する。このようにして得られた生成物は、硫黄1.88%を含む。
【0107】
(製造F)
5リットル容フラスコに、o−トルイジン214部(2モル)、および水1400部中の濃塩酸600部(7.2モル)を加える。混合物を6℃に冷却し、そして硫酸第一鉄七水和物0.28部(0.001モル)の水20部溶液を加えた後、5℃の予備冷却水1800部に溶解した過硫酸アンモニウム912部(4モル)の塩酸200部溶液を加えた。この溶液を加えるにつれて反応温度は約22℃に上昇する。反応混合物を外部冷却により約20℃に維持して、過硫酸塩の添加を約3.5時間で終える。撹拌を一晩続けた後、反応混合物をろ過する。残留物を水2500部でスラリーにし、約5時間撹拌し、ろ過する。こうして得られた残留物を水酸化アンモニウム200部(3モル)と蒸留水2000部でスラリーにし、一晩撹拌する。混合物を再びろ過し、そしてこうして得られた残留物を水2500部でスラリーにし、一晩撹拌する。混合物をろ過し、そして黒色残留物を得て、それを蒸気箱で約2日間乾燥し、最後に140℃の真空オーブンで24時間乾燥する。このようにして得られた固形物は、窒素8.55%、硫黄0.11%および塩素2.85%を含む。
【0108】
(製造G)
1リットル容反応フラスコに、アクリル酸72部(1モル)、および蒸留水700部を入れる。この混合物に、4−ビニルピリジン100.7部(0.95モル)を15分かけて滴下する。この添加の間に、温度は約23℃から約36℃に上昇する。4−ビニルピリジンの添加が終わったら、反応混合物を加熱し、窒素でパージして60℃の温度にし、そこで二塩酸2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)1部の水5グラム溶液を添加する。混合物を撹拌しながら約60℃で約2日間加熱し、そして混合物をパイレックスガラス皿に移して蒸気箱で18日間乾燥し、125℃の真空オーブンで40時間乾燥する。窒素8.31%を含む褐色固形物が得られる。
【0109】
(製造H)
1リットル容反応フラスコに、4−ビニルピリジン55部(0.5モル)、蒸留水200部、およびメタノール200部を入れる。混合物を窒素でパージしながら撹拌し、加熱する。59℃の温度で、二塩酸2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)0.2部の水2部溶液を添加する。約60℃の温度で約36時間撹拌を続ける。この時点で混合物を冷却し、一晩放置する。水200部とメタノール200部に硫酸第一銅五水和物62.4部(0.25モル)の混合物を調製して、反応フラスコに加える。撹拌を2日間続ける。反応混合物をガラス皿に移して蒸気箱で8日間乾燥した後、125℃の真空オーブンで24時間乾燥する。窒素7.33%および銅15.2%を含む褐色固形物が得られる。
【0110】
(製造K)
1リットル容反応フラスコに、ポリ(2−ビニルピリジン)(アルドリッチ・ケミカル社製)22.4部(0.213モル)、および水250部を入れる。硫酸第一銅五水和物26.6部(0.106モル)の水150部溶液を5分かけて加える。混合物を一晩撹拌し、この時点で反応混合物をろ過する。緑色ろ液を得てパイレックスガラス皿に移す。緑色ろ液を蒸気箱で5日間乾燥し、最後に125℃の真空オーブンで24時間乾燥する。窒素8.53%および銅9.2%を含む褐色固形物が得られる。
【実施例】
【0111】
本発明について以下の実施例により更に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。以下の限定しない製造および実施例で本発明の更なる理解を得ることができる。反対に特に断わらない限り、温度および温度範囲は全て摂氏度系を意味し、「周囲温度」又は「室温」は約20乃至25℃を意味する。「パーセント又は%」は質量%を意味する。「当量」は、その実施例で一定モルまたは一定質量又は容量で記す前後の反応体のモル数に対して、モル数で等しい試薬の量を意味する。
【0112】
[実施例1] 一官能性開始剤とポリピロールを用いたポリイソブチレンの製造
250ミリリットル四つ口丸底フラスコに、垂下式機械撹拌器および白金抵抗温度計を備え付けた。この組立装置を、実質的に不活性な雰囲気のグローブボックス内で乾燥窒素ガス中で、−60℃のヘプタン浴に浸漬した。次いで、フラスコに次のような反応体を充填した:−60℃で平衡にしたヘキサン108ミリリットル、−60℃で平衡にした塩化メチル72ミリリットル、室温で平衡にした2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン0.48ミリリットル、室温で平衡にした2,6−ジメチルピリジン0.23ミリリットル、−60℃で平衡にしたイソブチレン16.4ミリリットル、そして丸底フラスコの内容物を−60℃で平衡させた。撹拌を続けながら、次に四塩化チタン1.82ミリリットルをフラスコに充填した。反応を12分間進行させた後、重合溶液20ミリリットルを9本の60ミリリットル試験管に入れ、ねじ込みキャップを付し、ヘプタン浴に浸漬した。
【0113】
各試験管で更に12分間重合を続行させ(反応は全部で24分間)、この時点で9本の試験管のうちの1本をメタノール5ミリリットルで停止させて、ポリピロール添加前の対照例(対照1)とした。反応重合物を含む試験管のうちの1本に、ポリピロール(カーボンブラックとの20質量%ブレンドで、二酸化チタンに被覆されていて、アルドリッチ・ケミカル社より購入した)2.094gを添加し、そして残り7本の試験管のうちの6本には別の6種類の失活化剤を添加した。ポリピロール失活反応を30分間進めさせ、この時点で反応を停止させるためにメタノール5ミリリットルを加えた。次に、最後の重合試験管をメタノール5ミリリットルで停止させて、最終対照例(対照2)とした。失活反応の比較基線とし、また失活化剤無しの場合の構造及び分子量的特徴決定の基準とするために、対照例を使用した。
【0114】
[比較例A] 一官能性開始剤とピロールを用いたポリイソブチレンの製造
実施例1に記載した方法に従ってポリイソブチレンを製造した。全反応容量が40ミリリットル、失活化剤濃度が0.015M、温度が−70℃で、そしてポリピロールの代わりにピロール0.04gを用いたこと以外は、比較例Aの条件は実施例1の条件と同じであった。
【0115】
[比較例B] 一官能性開始剤とN−メチルピロールを用いたポリイソブチレンの製造
実施例1に記載した方法に従ってポリイソブチレンを製造した。全反応容量が40ミリリットル、失活化剤濃度が0.015M、温度が−70℃で、そしてポリピロールの代わりにN−メチルピロール0.049gを用いたこと以外は、比較例Bの条件は実施例1の条件と同じであった。
【0116】
第1表に、比較例A及びBの結果を列挙する。結果は、ピロール自体もN−メチルピロールも、オレフィン末端基を含むポリイソブチレンを生じないことを示している。
【0117】
1H−NMRデータの収集方法)
バリアン(Varian)(300MHz)分光光度計を使用して、試料濃度CDCl3中で3%乃至5%(質量/質量)を用いて、1H−NMRスペクトルを得た。末端基の分析のために1H−NMRスペクトルを使用した。エキソ−オレフィン、エンド−オレフィン、tert−クロリドおよびカップリングオレフィンの鎖末端の割合を、後続の項に記載するように1H−NMR積分を用いて得た。
【0118】
(GPCデータの収集方法)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散性指数(PDI)、すなわちMw/Mnを決定するためにGPCデータを使用した。オレフィンカップリング生成物を定性的に検出するためにもGPCを使用した。
【0119】
(ポリイソブチレン生成物の鎖末端の量の割合の計算方法)
ポリイソブチレン試料中のエキソ−オレフィン、エンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端、およびEAS、二EAS及びカップリング生成物の割合を、1H−NMR積分を用いて定めた。これら六種で100%の鎖末端を表すと仮定した。場合によっては、1H−NMRスペクトルの定性的検査によりEAS、二EAS及びカップリング生成物は存在しないと思われ、またGPCクロマトグラムで重合体主ピークの低溶離量側に肩が無いのを確認することにより、二EAS及びカップリング生成物は存在しないと思われた。以下に、二つの方法を記す。カップリング生成物が検出されたときは「一般的方法」を使用し、カップリング生成物が存在しないと思われたときは「特別な方法」を使用した。
【0120】
(一般的方法)
エキソ−オレフィンの量の割合を決定するための下記の方程式と類似の方程式を用いて、各種類の鎖末端のモル量の割合を得た。
【0121】

F(exo)=(Aexo)/(Aexo+Aendo+Atert-Cl+AEAS
+2A2EAS+2Acoupled) (1)
【0122】
ここで、Aendoは5.15ppmにおける単独オレフィン共鳴の面積であり、Aexoは4.63ppmにおけるエキソ−オレフィン共鳴の面積であり、そしてAtert-Clは下記のようにして算出した。
【0123】

tert-Cl=(A1.65-1.72/6)−Aendo (2)
【0124】
ここで、A1.65-1.72はエンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端のgem−ジメチルプロトンに関係した入り組んだピークの積分面積である。EAS又は二EAS生成物が存在するときは、その積分面積は一つ一つの状態に基づいて見積った。他のピークで入り組んでいないピークに基づいて積分を求め、その特徴的なピークを持つプロトンの数に基づいて面積を規格化した。方程式(1)で二EAS及びカップリング生成物に2の係数が見られるが、その理由はこれら生成物の発生に2個のポリイソブチレン鎖が消費される、という事実にあることに注意されたい。Acoupledは下記のようにして算出した。
【0125】

coupled=(A5.0-4.75−A4.5-4.75)/2 (3)
【0126】
ここで、A5.0-4.75はエキソ−オレフィンプロトンのうちの1個とカップリング生成物の2個の同等なプロトンに関係した入り組んだピークの積分面積であり、そしてA4.5-4.75はもう一方のエキソ−オレフィンプロトンに関係したピークの積分面積である。
【0127】
(特別な方法)
カップリング生成物が定性的に存在しない場合には、エキソ−オレフィンの量の割合を決定するための下記の方程式と類似の方程式を用いて、各種類の鎖末端のモル量の割合を得た。
【0128】

F(exo)=(Aexo)/(Aexo+Aendo+Atert-Cl+AEAS
+2A2EAS) (1)
【0129】
ここで、Aendoは5.15ppmにおける単独オレフィン共鳴の面積であり、Aexoは百万分の4.63部と4.85部における2つのエキソ−オレフィン共鳴の平均面積であり、そしてAtert-Cl、AEASおよびA2EASは「一般的方法」に記載したのと同じようにして算出した。
【0130】
下記第1表に、上記の実施例1および比較例A及びBで製造したポリイソブチレン試料について得られた1H−NMRの結果を、全末端基のモル%で記載する。
【0131】
【表1】

【0132】
結果は、第1表に示したように、ポリピロール失活により、−60℃で検出可能なカップリング無しでエキソ−オレフィンが生成したことを示している。失活化剤添加前の対照1で分かるように、エキソ−オレフィン鎖末端は最少でtert−クロリド鎖末端は大きなモル比率であった。対照2は、重合体のエキソ−オレフィン含量が失活後及び反応後の工程や条件に影響されないことを証明している。よって、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを選択し、そして疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを好適な失活化剤と接触させることにより、重合体のエキソ−オレフィンにビニリデン末端基が豊富にあるようにできることが明らかである。
【0133】
さらに、比較例A及びBの結果も第1表に列挙した。その結果は、ピロール自体もN−メチルピロールも、オレフィン末端基を含むポリイソブチレンを生じないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程からなるビニリデン基末端重合体の製造方法:
a)疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを供給する工程、
b)工程a)のポリマーを、ポリピロール、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリフェノチアジン、ポリオキサジン、ポリ(ピロール−co−フラン)およびポリ(ピロール−co−チオフェン)並びにそれらの置換誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種の失活化剤と接触させる工程。
【請求項2】
疑似リビングカルボカチオン末端ポリマーを、ルイス酸と溶媒との存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下で、少なくとも一種のカチオン重合可能なオレフィン単量体を開始剤と接触させることにより、生成させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
開始剤が一官能性である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
開始剤が、2−クロロ−2−フェニルプロパン、2−アセチル−2−フェニルプロパン、2−プロピオニル−2−フェニルプロパン、2−メトキシ−2−フェニルプロパン、2−エトキシ−2−フェニルプロパン、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−アセチル−2,4,4−トリメチルペンタン、2−プロピオニル−2,4,4−トリメチルペンタン、2−メトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、および2−エトキシ−2,4,4−トリメチルペンタンからなる群より選ばれる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
開始剤が2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
開始剤が二官能性である請求項2に記載の方法。
【請求項7】
開始剤が、1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、および5−t−ブチル−1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンからなる群より選ばれる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
開始剤が5−t−ブチル−1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
開始剤が多官能性である請求項2に記載の方法。
【請求項10】
開始剤が、1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、および1,3,5−トリ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼンからなる群より選ばれる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一種のカチオン重合可能なオレフィン単量体が、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、および4−メチル−1−ペンテンからなる群より選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一種のカチオン重合可能なオレフィン単量体がイソブチレンである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
二種類の異なるカチオン重合可能なオレフィン単量体を用いる請求項2に記載の方法。
【請求項14】
ルイス酸が、四ハロゲン化チタン、三ハロゲン化ホウ素、三塩化アルミニウム、四塩化スズ、塩化亜鉛および二塩化エチルアルミニウムからなる群より選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項15】
ルイス酸が、四塩化チタン、四臭化チタンおよび三塩化ホウ素からなる群より選ばれる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ルイス酸が四塩化チタンである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
疑似リビング重合反応条件が、温度範囲が約−130℃から+10℃の間にあるように選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項18】
疑似リビング重合反応条件が、温度範囲が約−70℃から−10℃の間にあるように選ばれる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
疑似リビング重合反応条件が、温度範囲が−60℃から−20℃の間にあるように選ばれる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、ルイス酸と溶媒との存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下でポリオレフィン鎖末端をイオン化することにより生成させる請求項1に記載の方法。
【請求項21】
疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、ルイス酸と溶媒との存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下でtert−ハライド鎖末端を含むポリオレフィンをイオン化することにより生成させる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、ルイス酸と溶媒との存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下でtert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィンをイオン化することにより生成させる請求項20に記載の方法。
【請求項23】
工程b)の失活化剤が、ポリピロール、ポリビニルピリジン、ポリ(ピロール−co−チオフェン)およびポリ(ピロール−co−フラン)からなる群より選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項24】
工程b)の失活化剤が、ポリピロール、ポリ(ピロール−co−チオフェン)およびポリ(ピロール−co−フラン)からなる群より選ばれる請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程b)の失活化剤がポリピロールまたは置換ポリピロールである請求項1に記載の方法。
【請求項26】
工程b)の失活化剤が共重合体である請求項1に記載の方法。
【請求項27】
接触工程において、工程b)の失活化剤が固相のものであるように選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項28】
接触工程を固定床反応器または流動床反応器で行う請求項27に記載の方法。
【請求項29】
工程b)の失活化剤が溶媒に不溶性である請求項2に記載の方法。
【請求項30】
ビニリデン基末端重合体の分子量分布、Mw/Mnが約1.01乃至約3.0である請求項1に記載の方法。
【請求項31】
分子量分布、Mw/Mnが約1.1乃至約2.0である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
分子量分布、Mw/Mnが1.5未満である請求項31に記載の方法。

【公開番号】特開2007−182573(P2007−182573A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352986(P2006−352986)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】