説明

高分子錯体変性物及びレドックス触媒

【課題】過酸化水素を水と酸素とに分解できる触媒能を有するのみならず、熱安定性に優れる触媒として用いることができる高分子錯体変性物及びこれを用いたレドックス触媒を提供する。
【解決手段】2個以上の遷移金属原子と当該遷移金属原子に配位結合する配位原子を3個以上含み1個以上のビニル基を有する多座配位子とを備える錯体モノマーと、コモノマーとの共重合体である高分子錯体を、その側鎖を介して分子間及び/又は分子内架橋させてなる高分子錯体変性物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子錯体変性物及びこれを用いたレドックス触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
多核錯体は、一つの錯体中に2つ以上の金属原子が中心原子として含まれる錯体である(化学辞典、第1版、1994年、東京化学同人)。このような多核錯体は、複数ある金属サイト間の相互作用に基づいて、特異かつ多様な反応性を発揮するため、反応触媒として用いることができ、例えば、レドックス触媒等の電子移動を伴う化学反応に係る触媒として有用である(例えば、非特許文献1)。
【0003】
多核錯体としては、フリーラジカル(ヒドロキシルラジカル、ヒドロペルオキシラジカル等)の発生を抑制しつつ、過酸化水素を水と酸素とに分解する触媒(過酸化水素分解触媒)として、マンガン2核錯体が知られている(例えば、非特許文献2)。更に、金属を含有するタンパク質を熱処理して得られる触媒の報告もある(例えば、特許文献1)。
【非特許文献1】小柳津研一、湯浅真、表面2003、41(3)、22
【非特許文献2】A.E.Boelrijk and G.C.Dismukes Inorg.Chem.2000、39、3020
【特許文献1】特開2004−217507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のマンガン2核錯体を過酸化水素分解触媒として用いた場合、安定性、特に熱安定性が十分ではなく、加熱反応等で使用するには問題があるため、より熱安定性に優れる触媒が切望されていた。また、金属を含有するタンパク質を熱処理して得られる触媒は高価であるばかりか、生体物質であることから保存安定性が困難であり、これを原料として用いた触媒は、製造再現性が困難であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、過酸化水素を水と酸素とに分解できる触媒能を有するのみならず、熱安定性に優れる触媒として用いることができる高分子錯体変性物及びこれを用いた触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(i)〜(iii)の条件を満たす錯体モノマーと下記一般式(1)で表されるコモノマーとの共重合体である高分子錯体を、その側鎖を介して分子間及び/又は分子内架橋させてなる高分子錯体変性物を提供する。
(i)2個以上の遷移金属原子を有すること
(ii)前記遷移金属原子に配位結合する配位原子を3個以上含む多座配位子を有すること
(iii)前記多座配位子に結合した1個以上のビニル基を有すること
【0007】
【化1】

【0008】
なお、上記式(1)中、Eは、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルバモイル基、ホスホン酸基、スルホン酸基、ハロゲノ基、−CONHCHOR04基又は−Si(OR05基を示す。R01、R02及びR03は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲノ基、シアノ基、−COOR04基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、をそれぞれ示す。なお、R04は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基である。R05は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基である。
【0009】
本発明の高分子錯体変性物は、上述のように、ビニル基を有する多核錯体(錯体モノマー)とコモノマー(ビニル化合物等)を重合させて高分子錯体としたものを、更に架橋させることにより得られるものである。このように、本発明の高分子錯体変性物は、錯体モノマーに由来する骨格を含むため、過酸化水素を水と酸素とに分解できる触媒能を有するのみならず、レドックス触媒として高い反応活性を発揮する。本発明の高分子錯体変性物はまた、錯体モノマーとコモノマーとの共重合で得られたポリマー(高分子錯体)の側鎖の反応により架橋が生じているために、熱安定性に特に優れており、高温での反応に用いることのできる触媒として機能する。
【0010】
上記コモノマーは、一般式(1)中、Eがシアノ基、ホルミル基又はカルバモイル基であるコモノマーから選ばれる少なくとも一種の架橋性コモノマーであると好ましい。このような架橋性コモノマーを用いると、上記高分子錯体の側鎖を介した分子間及び/又は分子内架橋が効果的に生じ、特に熱安定性の優れる高分子錯体変性物を得ることができる。
【0011】
上記架橋性コモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びクロロアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であると好ましい。これらの架橋性コモノマーは、上記高分子錯体の側鎖を介して、イミン型の分子間及び/又は分子内架橋が効果的に生じるため、特に好適である。
【0012】
上記コモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩及びスチレンスルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性コモノマーであっても好ましい。このような親水性コモノマーを用いると、上記高分子錯体変性物が、極性溶媒中、特に水を含む溶媒中で良好な分散性を示すものとなり、該溶媒中でレドックス錯体として用いた際の触媒活性が優れたものとなる。
【0013】
上記コモノマーは、上記架橋性コモノマーの少なくとも一種と、上記親水性コモノマーの少なくとも一種とを含むとさらに好ましい。このようなコモノマーを用いると、両コモノマーに由来する上記利点を併せ持ち、特に過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に優れる、高分子錯体変性物を得ることができる。
【0014】
上記高分子錯体は、上記錯体モノマーと上記コモノマーとをカーボン系添加剤存在下で共重合させてなる高分子錯体であると好ましい。カーボン系添加剤を添加することによって、カーボンに由来する導電性、及びカーボン表面の官能基に由来する親水性、疎水性等が付与された高分子錯体変性物を得ることができる。また、微粒子状のカーボン系添加剤を共重合の際に添加すれば、微粒子状の高分子錯体及び高分子錯体変性物が得られ易くなる。さらに、高分子錯体を高分子錯体変性物へと誘導する際に、カーボン系添加剤を用いると、高分子錯体粒子間の融着を抑制することができ、微粒子状の高分子錯体変性物を比較的容易に得ることができる。
【0015】
上記高分子錯体変性物は、赤外分光測定において、1390〜1440cm−1および1590〜1630cm−1の範囲にピーク極大を示すことが好ましい。このようなピーク極大は架橋イミド基の存在を示唆し、このようなピーク極大を示す高分子錯体変性物は、レドックス触媒として用いた際に安定な触媒となる傾向がある。
【0016】
上記高分子錯体は、熱重量−マススペクトルにおいて、分子イオンの質量数をm、分子イオンの電荷数をZとしたときに、m/Zが53又は67のいずれかである分子イオンピークを示すものであることが好ましい。このような高分子錯体変性物は、ポリマー鎖中に、ポリアクリロニトリル型構造又はポリメタクリロニトリル型構造が形成されていると考えられ、側鎖を介した分子間及び/又は分子内架橋が生じやすい。その結果、熱安定性に特に優れる高分子錯体変性物を得ることができるようになる。
【0017】
熱安定性及び触媒としての活性の点から、高分子錯体変性物において、以下の(i)又は(ii)の構造が生じていることが好ましい。
(i)2個の遷移金属原子が同一の配位原子と配位結合している構造が少なくとも1つ存在する
(ii)一の遷移金属原子に配位結合した配位原子と、他の遷移金属原子に配位結合した配位原子とが、1〜4個の共有結合を介して結合している構造が少なくとも1つ存在する
【0018】
上記遷移金属原子は、第一遷移元素系列の遷移金属原子であることが好ましい。このような中心金属を有する錯体は、レドックス触媒として好適であり、過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に特に優れる。
【0019】
多座配位子は下記一般式(2)で表される構造を有することが好ましく、下記一般式(3a)又は(3b)で表される構造を有することがより好ましい。このような多座配位子を有する錯体モノマーから得られる高分子錯体変性物は、熱安定性及び触媒活性が特に優れる。
【0020】
【化2】

【0021】
なお、上記式(2)中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、ビニル基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立にビニル基を有していてもよい2価の基、Z及びZは、それぞれ独立に窒素原子又は3価の基、をそれぞれ示す。さらに、Ar、Ar、Ar、Ar、R、R、R、R及びRの少なくとも1つはビニル基を有する。
【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
なお、上記式(3a)及び(3b)中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ビニル基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又はビニル基を有していてもよい炭素数2〜60の芳香族基を示し、且つ、Y、Y、Y及びYのうち少なくとも1つは、ビニル基を有する炭素数1〜50のアルキル基、又はビニル基を有する炭素数2〜60の芳香族基である。
【0025】
上記高分子錯体変性物は、上記高分子錯体を、加熱処理、放射線照射処理、電磁波照射処理又は放電処理により、分子間及び/又は分子内架橋させてなる高分子錯体変性物であることが好ましい。また、上記処理においては、処理前の重量を基準として、処理後の重量減少率が3重量%以上50重量%以下であると好ましい。このような処理によれば、上記高分子錯体中の錯体構造の分解を抑制しつつ、分子間及び/又は分子内架橋させることができる。
【0026】
上記加熱処理としては、上記高分子錯体を、200〜900℃の範囲で加熱する処理であることが好ましい。このような処理によれば、簡便に、錯体構造の分解を抑制しつつ分子間及び/又は分子内架橋させることができる。
【0027】
上記高分子錯体変性物は、ICP発光分析による元素分析において、遷移金属の含有量が0.01重量%〜8重量%であると好ましい。遷移金属の含有量が上記範囲であると、レドックス触媒として用いた際に触媒活性が優れたものとなる。
【0028】
上記高分子錯体変性物は、微粒子状であって、かつ走査型電子顕微鏡写真から導出される平均粒径が10nm〜10μmの範囲内であると好ましい。このような微粒子状の高分子錯体変性物は、大きな表面積を有するため高い反応活性を示すと共に、部材への導入も容易となり、レドックス触媒として好適に使用できる。
【0029】
上記高分子錯体変性物は、固体電子スピン共鳴スペクトルにおいて、下記数式(I)によって定義されるgTOPが、1.8000〜2.2400の範囲にあることが好ましい。
【0030】
gTOP=hν/βH (I)
【0031】
なお、上記数式(I)中、hはプランク定数、νは測定電磁波の共鳴周波数、βはボーア磁子、Hは観測されるESR信号が極大を示す磁場強度をそれぞれ示す。
【0032】
gTOPが上記範囲にある高分子錯体変性物は、マンガン原子を含み、かつ、好ましい金属中心構造を有する。
【0033】
上述した高分子錯体変性物を含有させてレドックス触媒とすることができる。このようなレドックス触媒は、反応活性が高く熱安定性にも優れる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の高分子錯体変性物は、特に過酸化水素分解触媒として用いた場合、過酸化水素を、フリーラジカルの発生を抑制して水と酸素とに分解することが可能であるのみならず、従来の多核錯体触媒と比較して著しく高い熱安定性を有することができ、レドックス触媒として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0036】
(錯体モノマー)
高分子錯体変性物の合成に用いられる錯体モノマーは、2個以上の遷移金属原子を有する多核錯体であり、配位子として、遷移金属原子に配位結合する配位原子を3個以上含む多座配位子を含んでいる。また、多座配位子には1個以上のビニル基が存在する。
【0037】
錯体モノマーはビニル基を有しているために、一般式(1)で表されるコモノマーと共重合が可能であり、共重合により高分子錯体を得ることができる。錯体モノマーはまた、多核錯体構造を有するために、高分子錯体の架橋により得られる高分子錯体変性物に触媒活性を付与することが可能になる。すなわち、最終生成物である高分子錯体変性物は、レドックス触媒として有用であり、特にフリーラジカル(ヒドロキシルラジカル、ヒドロペルオキシラジカル、等)の発生を抑制しつつ過酸化水素を水と酸素とに分解する触媒、として用いることができる。
【0038】
錯体モノマー中の遷移金属原子の個数は、2以上8以下であることが好ましく、2以上4以下であることが更に好ましく、2又は3が特に好ましい。遷移金属原子は無電荷であっても、荷電しているイオンでもよい。また、錯体モノマー中に複数含まれる遷移金属原子は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
錯体モノマー中に含まれる遷移金属原子の具体例としては、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれる第一遷移元素系列の遷移金属原子、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン等を例示することができる。
【0040】
上述の遷移金属原子のうち、第一遷移元素系列の遷移金属原子、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金を用いることが好ましく、第一遷移元素系列の遷移金属原子、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ランタン、セリウム、サマリウム、ユウロピウム、イッテルビウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金を用いることがより好ましく、第一遷移元素系列の遷移金属原子を用いることが更に好ましい。第一遷移元素系列の遷移金属原子としては、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅を用いることが好ましく、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅を用いることがさらに好ましく、マンガンを用いることが最も好ましい。
【0041】
錯体モノマーは、遷移金属原子に配位結合する配位原子を3個以上含む多座配位子を有するため、多座配位子のキレート効果により安定な錯体モノマーを形成することが可能である。配位原子の数は3以上であり、3以上50以下であることが好ましく、5以上25以下であることが更に好ましく、6以上20以下であることが特に好ましい。
【0042】
錯体モノマーはまた、多座配位子に結合した1個以上のビニル基を有する。ビニル基の重合反応性を利用して錯体モノマーとコモノマーとを共重合させて高分子化することにより、不均一系錯体触媒へと容易に誘導することができる。錯体モノマーに含まれるビニル基の数は、1以上20以下であることが好ましく、2以上10以下であることが更に好ましく、4以上8以下であることが特に好ましい。
【0043】
錯体モノマーにおいては、複数の遷移金属原子の中で少なくとも2つの遷移金属原子が多核錯体分子内において近接して位置することが好ましい。
【0044】
多核錯体、すなわち錯体モノマー中の2つの遷移金属原子をM1、M2とし、M1に配位する配位原子のうち1個をAM1、M2に配位する配位原子のうち1個をAM2としたとき、AM1とAM2との間に介在する共有結合数を計算して、これを「遷移金属原子が近接して位置する指標」として用いることができる。ここで、AM1とAM2が直接結合しているときは、共有結合数は1となり、AM1とAM2が1個の原子を介して全体として共有結合しているときは、共有結合数は2となり、AM1とAM2がn個の原子を介して全体として共有結合しているときは、共有結合数は(n+1)となる。また、AM1とAM2が複数の原子を介して結合しているが、例えばその結合に共有結合と配位結合が混在している場合には、共有結合の数だけを計算する。なお、原子と原子が2重結合で直接結合している場合(例えばC=C)や、原子と原子が3重結合で結合している場合(例えばC≡C)も、それぞれ共有結合数は1と計算する。
【0045】
例えば、M1に配位する配位原子AM1が複数存在し、M2に配位する配位原子AM2が複数存在する場合において、AM1とAM2の間に介在する共有結合数は種々の値を取り得るが、その値が1以上4以下となるAM1とAM2との組み合わせが存在することが好ましい。なお、これは、「一の遷移金属原子に配位結合した配位原子と、他の遷移金属原子に配位結合した配位原子とが、1〜4個の共有結合を介して結合している構造が少なくとも1つ存在する」と言い換えることもできる。
【0046】
AM1とAM2との間に介在する共有結合数は1以上3以下であることがより好ましく、1以上2以下であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。AM1とAM2との間に介在する共有結合数が小さいほどM1−M2間距離が近づくことになる。
【0047】
これらに加え、錯体モノマーが有する複数の遷移金属原子から選ばれる2つの遷移金属原子(M1、M2)が同一の配位原子と配位結合していることが特に好ましい。これは、M1とM2が同一の配位原子で架橋配位されていることを意味する。このようにM1とM2が同一の配位原子で架橋配位されていると、M1−M2間距離が近づくことになる。上述のように、M1−M2間距離が近づくと、2つの遷移金属原子間の相互作用が発現されやすくなり、錯体モノマー及び錯体モノマーを用いて形成される高分子錯体変性物の触媒活性がより高くなる。
【0048】
なお、上述のAM1とAM2は、多座配位子の中にある配位原子同士でもよく、あるいは多座配位子以外の配位子の中にある配位原子同士でもよい。また、錯体モノマー中において、2つの遷移金属原子を架橋配位している配位原子も、多座配位子の中にある配位原子でもよく、多座配位子以外の配位子の中にある配位原子でもよい。
【0049】
多座配位子は下記一般式(2)で表される構造を有することが好ましい。
【0050】
【化5】

【0051】
一般式(2)中、Ar、Ar、Ar及びAr(以下、Ar〜Arのように表わすこともある。)は、それぞれ独立に含窒素芳香族複素環基を示し、R、R、R、R及びR(以下、R〜Rのように表すこともある)は、それぞれ独立に2価の基を示し、Z及びZは、それぞれ独立に窒素原子又は3価の基を示し、Ar〜Ar、R〜Rの中で少なくとも1つがビニル基を含む基を有する。
【0052】
一般式(2)で表される多座配位子が有する配位原子の一部又は全部は、Ar〜Arの含窒素芳香族複素環上にある窒素原子であることが好ましい。このような窒素原子を配位原子として含む多座配位子を有する錯体モノマー、錯体モノマーを用いて形成される高分子錯体、及び当該高分子錯体の変性物は、レドックス触媒活性、特に過酸化物分解反応における触媒活性に優れる。
【0053】
一般式(2)におけるAr〜Arとしては、例えば、イミダゾリル基、ピラゾリル基、2H−1,2,3−トリアゾリル基、1H−1,2,4−トリアゾリル基、4H−1,2,4−トリアゾリル基、1H−テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラジル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、1,3,5−トリアジリル基、1,3,4,5−テトラジリル基等の含窒素芳香族複素環基が挙げられる。この芳香族複素環は、その縮合環基であってもよく、例えば、ベンゾイミダゾイル基、1H−インダゾイル基、ベンゾオキサゾイル基、ベンゾチアゾイル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリル基、キナゾイル基、キノキサリル基、フタラジル基、1,8−ナフチリジル基、プテリジル基、カルバゾリル基、フェナントリジル基、1,10−フェナントロリル基、プリル基、プテリジル基、ペリミジル基等であってもよい。なお、縮合環とは、「化学辞典」(第1版、1994年、東京化学同人)に記載の通り、2つ又はそれ以上の環をもつ環式化合物において、各々の環が2個又はそれ以上の原子を共有する環式構造のことを示すものである。
【0054】
一般式(2)におけるAr〜Arは、ベンゾイミダゾイル基、ピリジル基、イミダゾイル基、ピラゾイル基、オキサゾイル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基であることが好ましく、ベンゾイミダゾイル基、ピリジル基、イミダゾイル基、ピラゾイル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基であることがより好ましく、ベンゾイミダゾイル基、ピリジル基、イミダゾイル基、ピラゾイル基であることが更に好ましい。
【0055】
また、一般式(2)におけるAr〜Arは、置換基を有していてもよい。該置換基の置換位置、数、及びその組合せは任意である。また、該芳香族複素環基に、後述のビニル基を含む基が結合されていてもよい。
【0056】
一般式(2)におけるRは、配位原子又は配位原子を含む基を有していてもよい2価の基であり、以下に示すアルキレン基、2価の芳香族基、及びのヘテロ原子を含む2価の基から選ばれ、これらを任意につなぎ組み合わせた基でもよい。
【0057】
のアルキレン基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、オクタン、デカン、イコサン、トリアコンタン、ペンタコンタン、シクロヘプタン、シクロへキサン等の全炭素数1〜50程度の飽和炭化水素分子から水素原子を二つ取り去って得られるアルキレン基が挙げられる。また、Rのアルキレン基における含有炭素数は、1〜30であることが好ましく、1〜16であることがより好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。また、アルキレン基には、後述のビニル基を含む基が置換されていてもよい。
【0058】
の2価の芳香族基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ビフェニル、アセナフチレン、フェナレン、ピレン、フラン、チオフェン、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、1−ベンゾチオフェン、2−ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、カルバゾ−ル、キサンテン、キノリン、イソキノリン、4H−キノリジン、フェナントリジン、アクリジン、1,8−ナフチリジン、ベンゾイミダゾール、1H−インダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、ペリミジン、1,10−フェナントロリン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン、フェナルサジン等の芳香族化合物、複素環化合物又はこれらの化合物に置換基を有している化合物から水素原子を二つ取り去って得られる基等が挙げられる。
【0059】
これらの中でも、Rとしての2価の芳香族基は、ベンゼン、フェノール、p−クレゾール、ナフタレン、ビフェニル、フラン、チオフェン、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、1−ベンゾチオフェン、2−ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、カルバゾ−ル、キサンテン、キノリン、イソキノリン、1,8−ナフチリジン、ベンゾイミダゾール、1H−インダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、ペリミジンから選ばれる化合物から水素原子を二つ取り去って得られる基であることが好ましく、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、1,8−ナフチリジン、ベンゾイミダゾール、1H−インダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジンから選ばれる化合物から水素原子を二つ取り去って得られる基であることがより好ましく、ベンゼン、フェノール、p−クレゾール、ナフタレン、ビフェニル、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、1,8−ナフチリジン、ベンゾイミダゾール、1H−インダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジンから選ばれる化合物から水素原子を二つ取り去って得られる基であることが更に好ましく、フェノール、p−クレゾール、ピリジン、ピラゾール、ピリダジン、1,8−ナフチリジン、1H−インダゾール、フタラジンから選ばれる化合物から水素原子を二つ取り去って得られる基であることが特に好ましい。また、Rとしての2価の芳香族基には、後述のビニル基を含む基が置換されていてもよい。
【0060】
一般式(2)におけるRがヘテロ原子を含む2価の基である場合、Rとしては、例えば以下の式(E−1)〜(E−10)で示される基及びこれらの基を含む基が挙げられる。
【0061】
【化6】

【0062】
式(E−1)〜(E−10)中、R、R、R、Rは炭素数1〜50のアルキル基、炭素数2〜60の芳香族基、炭素数1〜50のアルコキシ基、炭素数2〜60のアリールオキシ基、水酸基又は水素原子を示す。Rは炭素数1〜50のアルキル基、炭素数2〜60の芳香族基又は水素原子示し、R、Rは炭素数1〜50のアルキル基又は炭素数2〜60の芳香族基を示す。
【0063】
一般式(2)におけるRとしてのヘテロ原子を含む2価の基は、(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)、(E−5)、(E−7)、(E−8)、(E−10)であることが好ましく、(E−1)、(E−2)、(E−4)、(E−7)、(E−10)であることがより好ましく、(E−1)、(E−7)であることが更に好ましい。
【0064】
一般式(2)におけるRは遷移金属原子に配位可能な官能基を含むことが好ましい。遷移金属原子に配位可能な官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ニトロ基、シアノ基、エーテル基、アシル基、エステル基、アミノ基、カルバモイル基、酸アミド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、スルフィド基、スルホニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、インドリル基、イソインドリル基、カルバゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、1,8−ナフチリジル基、ベンゾイミダゾリル基、1H−インダゾリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、シンノリル基、フタラジル基、プリル基、プテリジル基、ペリミジル基等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ニトロ基、シアノ基、エーテル基、アシル基、アミノ基、ホスホリル基、チオホスホリル基、スルホニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、イソキノリル基、1,8−ナフチリジル基、ベンゾイミダゾリル基、1H−インダゾリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、シンノリル基、フタラジル基、プリル基、プテリジル基、ペリミジル基が好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、シアノ基、エーテル基、アシル基、アミノ基、ホスホリル基、スルホニル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、イソキノリル基、1,8−ナフチリジル基、ベンゾイミダゾリル基、1H−インダゾリル基、シンノリル基、フタラジル基、プテリジル基がより好ましい。
【0065】
一般式(2)におけるRとしては、下記化学式(R5−1)、(R5−2)、(R5−3)あるいは(R5−4)に示すものが好ましく、特に下記化学式(R5−1)に示すものがより好ましい。
【0066】
【化7】

【0067】
上記化学式(R5−1)、(R5−2)における水酸基、(R5−3)のピラゾール環、(R5−4)のホスフィン酸基は、配位子として金属原子に配位する際に、プロトンを放出してアニオン性となることもある。
【0068】
一般式(2)におけるR〜Rは置換されてもよい2価の基であり、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。R〜Rは、Rと場合の同様のアルキレン基、2価の芳香族基、ヘテロ原子を含む2価の基、及びこれらの基を任意につなぎ組み合わせた2価の基であればよく、メチレン基、1,1−エチレン基、2,2−プロピレン基、1,2−エチレン基、1,2−フェニレン基であることが好ましく、メチレン基、1,2−エチレン基であることがより好ましい。
【0069】
一般式(2)におけるZ及びZは窒素原子又は3価の基から選ばれ、3価の基としては、例えば、下記一般式(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)、(Z−5)、(Z−6)、(Z−7)のいずれかで表される基が挙げられる。また、Z及びZのどちらか一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
【0070】
【化8】

【0071】
一般式(Z−1)、(Z−2)中、Rは炭素数1〜50のアルキル基、炭素数2〜60の芳香族基、炭素数1〜50のアルコキシ基、炭素数2〜60のアリールオキシ基、水酸基、又は水素原子を示し、Rは炭素数1〜50のアルキル基又は炭素数2〜60の芳香族基を示す。
【0072】
一般式(2)においてAr〜Ar、R〜Rの中で少なくとも1つがビニル基を含む基を有するが、このビニル基を含む基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ブタジニル基、スチリル基、2−ビニルベンジル基、3−ビニルベンジル基、4−ビニルベンジル基、等が挙げられ、ビニル基、スチリル基、アリル基、2−ビニルベンジル基、3−ビニルベンジル基、4−ビニルベンジル基が好ましく、ビニル基、スチリル基、アリル基、4−ビニルベンジル基がより好ましい。
【0073】
一般式(2)で示される多座配位子の中でも、下記一般式(3a)又は(3b)で表される構造を有する多座配位子が好ましい。
【0074】
【化9】

【0075】
【化10】

【0076】
一般式(3a)、(3b)中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜50のアルキル基又は炭素数2〜60の芳香族基を示し、且つ、Y、Y、Y及びYのうち少なくとも1つは、ビニル基を有する炭素数1〜50のアルキル基、又はビニル基を有する炭素数2〜60の芳香族基である。
【0077】
一般式(2)と同様に、一般式(3a)又は(3b)において、水酸基は、配位子として遷移金属原子に配位する際に、プロトンを放出してアニオン性となることもある。また、Y〜Yのうちビニル基を含む基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ブタジニル基、スチリル基、2−ビニルベンジル基、3−ビニルベンジル基、4−ビニルベンジル基、等が挙げられ、ビニル基、スチリル基、アリル基、2−ビニルベンジル基、3−ビニルベンジル基、4−ビニルベンジル基が好ましく、ビニル基、スチリル基、アリル基、4−ビニルベンジル基がより好ましい。
【0078】
錯体モノマーとしては、上述した多座配位子に加え、他の配位子を有していてもよい。他の配位子としてはイオン性でも電気的に中性の化合物でもよく、このような他の配位子を複数有する場合、これらの他の配位子は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0079】
多座配位子以外の他の配位子のうち電気的に中性の化合物としては、アンモニア、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,4―トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3―トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4−オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、インドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェニレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、オキサミド、ジメチルグリオキシム、o―アミノフェノール等の窒素原子含有化合物、水、フェノール、シュウ酸、カテコール、サリチル酸、フタル酸、2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、ヘキサフルオロペンタンジオン、1,3−ジフェニルー1,3―プロパンジオン、2,2’−ビナフトール等の酸素含有化合物、ジメチルスルホキシド、尿素等の硫黄含有化合物、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−フェニレンビス(ジメチルホスフィン)等のリン含有化合物が例示される。
【0080】
上述の電気的に中性の化合物である配位子のうち、アンモニア、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,4―トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3―トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4−オキサジアゾール、インドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4´−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェニレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、オキサミド、ジメチルグリオキシム、o―アミノフェノール、水、フェノール、シュウ酸、カテコール、サリチル酸、フタル酸、2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、ヘキサフルオロペンタンジオン、1,3−ジフェニルー1,3―プロパンジオン、2,2’−ビナフトールが好ましく、アンモニア、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,4―トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3―トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4−オキサジアゾール、インドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4v−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェニレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、o―アミノフェノール、フェノール、カテコール、サリチル酸、フタル酸、1,3−ジフェニルー1,3―プロパンジオン、2,2’−ビナフトールがより好ましく、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、フェニレンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、o―アミノフェノール、フェノールが更に好ましい。
【0081】
また、多座配位子以外の他の配位子のうちアニオン性を有する配位子としては、水酸化物イオン、ペルオキシド、スーパーオキシド、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、テトラフェニルボレートイオン等のテトラアリールボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン、ドデシル硫酸イオン、硫酸エステルイオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、フェニルホスホン酸イオン、ジフェニルホスホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸イオン、金属酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオン、ビニル安息香酸イオン、アクリル酸イオン、メタクリル酸イオン及び下記一般式(40)で表される構造を有するアニオン性配位子等が挙げられる。
01−(OCHCH(R))OR (40)
一般式(40)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を示す。G01は下記式(40−1)、(40−2)、(40−3)及び(40−4)のいずれかで表される構造を有する官能基を含む置換基である。式(40−4)中、Rは上記式(E−5)のRと同意義を示す。
【0082】
【化11】

【0083】
上述のアニオン性を有する配位子のうち、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、テトラフェニルボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、硫酸エステルイオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、フェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸リン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ビニル安息香酸イオン、アクリル酸イオン、メタクリル酸イオン、及び上記一般式(40)におけるG01として下記式(G−1)、(G−2)、(G−3)、(G−4)、(G−5)、(G−6)、(G−7)、(G−8)、(G−9)、(G−10)、(G−11)、(G−12)で示されるG01を有する上記一般式(40)で示されるアニオン性を有する配位子が好ましい。これらの中でも、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、硫酸エステルイオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸、ビニル安息香酸イオン、アクリル酸イオン、メタクリル酸イオン、及び上記一般式(40)におけるG01として下記式(G−1)、(G−2)、(G−3)、(G−4)、(G−5)、(G−6)、(G−7)、(G−8)、(G−9)、(G−10)、(G−11)、(G−12)で示されるG01を有する上記一般式(40)で示されるアニオン性を有する配位子がより好ましい。式(G−1)〜(G−12)中、Rは上記式(E−5)のRと同意義を示す。
【0084】
【化12】

【0085】
なお、上述のアニオン性を有する配位子として例示したイオンは、錯体モノマー自体を電気的に中和する対イオンとして作用していてもよい。なお、種々の対イオンを適宜使い分けることで、錯体モノマー(多核錯体)の溶媒への溶解性や分散性等を調整することもできる。
【0086】
また、錯体モノマーは、電気的中性を保たせるようなカチオン性を有する対イオンとして持つ場合がある。カチオン性を有する対イオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン等のテトラアルキルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン等のテトラアリールホスホニウムイオン等を例示され、具体的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオンであり、より好ましくはテトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオンが挙げられる。これらの中でも、カチオン性を有する対イオンとして、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオンが好ましい。
【0087】
錯体モノマーの具体的の構造としては、例えば、下記一般式(4)で表される構造が好ましい。
【0088】
【化13】

【0089】
一般式(4)に示す錯体モノマーにおいて、配位原子を3以上有する多座配位子は、窒素配位原子を含む芳香族複素環基(一般式(2)におけるAr〜Ar)としてベンゾイミダゾリル基を4つ有する。このベンゾイミダゾリル基の中で1つの窒素原子が配位原子(N、N、N及びNと表す)としてM又はMに配位し(M又はMに結合する点線は配位結合を示す)、このベンゾイミダゾリル基の他方の窒素原子には重合反応性を有する4−ビニルベンジル基が結合している。一般式(2)におけるR〜Rで示される基は、一般式(4)におけるメチレン基であり、一般式(2)におけるRは、一般式(4)において、架橋配位原子(Oと表す)を有するプロピレン基を有するものである。更に前述の多座配位子以外の配位子として、p−ビニル安息香酸イオンを有し(配位原子としてO、Oを有する)、カウンターイオンとして、p−ビニル安息香酸イオンを2分子有する。なお、一般式(4)において、窒素配位原子、酸素配位原子に表記した数字は、後述の配位原子間の共有結合数を説明するにあたり、区別のために表記したものである。
【0090】
ここで、一般式(4)に示す錯体モノマーにおいて、MとMにそれぞれ配位する配位原子間に存在する共有結合数を説明する。一般式(4)の錯体では、M−O−M間では、MとMが同一配位原子Oで(架橋)配位しており、M−O−O−M間では、配位原子間を結ぶ共有結合数の最小値が2であり、M−O−N−M間とM−O−N−M間では、その配位原子間を結ぶ共有結合数の最小値が3であり、M−N−N−M間では、配位原子間を結ぶ共有結合数の最小値が4となる。すなわち、「一の遷移金属原子に配位結合した配位原子と、他の遷移金属原子に配位結合した配位原子とが、1〜4個の共有結合を介して結合している構造が少なくとも1つ存在している」と言える。
【0091】
このような配位原子の組合せを有する多核錯体は、MとMが近接して存在する配位構造を有する多核錯体であり、このような多核錯体は触媒活性に富むため、錯体モノマーとして好ましい。
【0092】
(コモノマー)
上述の錯体モノマーとコモノマーとが共重合したものが、高分子錯体である。コモノマーとしては、種々の炭素−炭素2重結合を有する化合物を様々な量比で組み合わせて用いることができるが、本実施形態では下記一般式(1)で表される構造を有するコモノマーを用いる。
【0093】
【化14】

【0094】
一般式(1)中、Eは、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルバモイル基、ホスホン酸基、スルホン酸基、ハロゲノ基、−CONHCHOR04基又は−Si(OR05基、R01、R02及びR03は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲノ基、シアノ基、−COOR04基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、をそれぞれ示す。なお、R04は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基である。R05は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基である。
【0095】
上記一般式(1)中、Eのハロゲノ基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。R01、R02、及びR03のハロゲノ基の例としては、Eと同様なものを挙げることができる。
【0096】
上記一般式(1)中、R01、R02及びR03は、水素原子、塩素原子、シアノ基、カルボキシル基、メチル基、又はフェニル基であることが好ましく、水素原子、塩素原子、シアノ基、カルボキシル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。R01、R02及びR03の組み合わせとしては、互いに同じであっても異なっていても良いが、R02とR03が共に水素原子である組み合わせが特に好ましい。
【0097】
上記コモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロロアクリロニトリル、ビニルクロライド、ビニルブロマイド、1,1−ジクロロエチレン、2,3−ジクロロ−1−プロペン、アクリル酸、メタクリル酸、アクロレイン、メタクロレイン、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸モノエチルエステル、フマル酸、フマラミド、フマル酸モノエチルエステル、フマロニトリル、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド、ビニルトリメトキシシランなどのビニルアルコキシシラン、スチレンスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸エステル、並びに、安息香酸ビニル及びその塩、からなる群から選ばれるコモノマーが好ましい。なお、上記コモノマーとしては、上述の群より選ばれる複数の種類のコモノマーを併用してもよい。
【0098】
上記コモノマーとしては、一般式(1)中、Eがシアノ基、ホルミル基又はカルバモイル基であるコモノマーから選ばれる少なくとも一種の架橋性コモノマーを含むと好ましい。このようなコモノマーを用いると、上記高分子錯体の側鎖を介した分子間及び/又は分子内架橋が効果的に生じ、特に熱安定性の優れる高分子錯体変性物を得ることができる。
【0099】
上記架橋性コモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロロアクリロニトリル、アクロレイン、メタクロレイン、マレアミド、マレイン酸モノアミド、フマラミド及びフマロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びクロロアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。これらの架橋性コモノマーは、上記高分子錯体の側鎖を介して、イミン型の分子間及び/又は分子内架橋が効果的に生じるため、特に好適である。
【0100】
さらに、上記コモノマーとしては、上記コモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩及びスチレンスルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性コモノマーも好ましい。このような親水性コモノマーを用いると、上記高分子錯体変性物は、極性溶媒中、特に水を含む溶媒中で良好な分散性を示し、該溶媒中でレドックス錯体として用いた際の触媒活性が優れたものとなる。なお、上記スチレンスルホン酸エステルとしては、加水分解により容易にスルホン酸部位を与えるものが好ましい。
【0101】
上記親水性コモノマーとしては、例えば、アクリル酸、ビニルホスホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸ルビジウム、スチレンスルホン酸セシウム、スチレンスルホン酸メチル、スチレンスルホン酸エチル、スチレンスルホン酸プロピル、スチレンスルホン酸アリルが挙げられ、更に好ましくは、アクリル酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸メチル、スチレンスルホン酸エチルなどが好適に使用できる。
【0102】
上記コモノマーは、上記架橋性コモノマーの少なくとも一種と、上記親水性コモノマーの少なくとも一種とを含むとさらに好ましい。このようなコモノマーを用いると、両コモノマーに由来する上記利点を併せ持ち、特に過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に優れる、高分子錯体変性物を得ることができる。
【0103】
上記コモノマーが、架橋性コモノマーと親水性コモノマーとの混合物である場合、その混合比(架橋性コモノマー(重量)/親水性コモノマー(重量))は、0.05〜20の範囲が好ましく、0.1〜10の範囲がより好ましく、0.2〜5の範囲が特に好ましい。混合比が上記範囲であれば、高い熱安定性をもち、かつ上述の極性溶媒中での触媒活性が優れたレドックス触媒となり得る高分子錯体変性物を得ることができる。
【0104】
(高分子錯体変性物)
上述した錯体モノマーとコモノマーとを共重合させて高分子錯体を形成し、その側鎖の反応を介して分子間及び/又は分子内架橋させる(このような反応を「変性処理」と呼ぶ場合がある。)ことにより、高分子錯体変性物を得ることができる。
【0105】
高分子錯体変性物の構造の一態様について、(i)〜(iii)の条件を満たす錯体モノマーとして下記式(4a)の化合物を用い、一般式(1)で表される構造を有するコモノマーとして下記式(1a)及び(1b)を用いた場合を用いて説明する。
【0106】
【化15】

【0107】
【化16】

【0108】
高分子錯体は、下記式(4a)の錯体モノマーと、下記式(1a)及び(1b)のコモノマーとの共重合体であることから、化学構造は、例えば、以下の化学式(100)で表すことができる(化学式(100)は模式図であるために、主鎖や側鎖の一部は省略してある。また、化学式(100)では、高分子錯体と共に残存するコモノマーと配位子との反応生成物も示してある。)。
【0109】
【化17】

【0110】
上記化学式(100)で表すことができる高分子錯体は、例えば、加熱等の変性処理を施すことにより、その側鎖の反応を介して分子間架橋や分子内架橋が生じ、高分子錯体変性物となる。高分子錯体の変性処理において起こる架橋反応のうち、シアノ基が関与する架橋反応としては、「高分子加工」(1993年、42巻、12号、10ページ、柿田秀人著、高分子刊行会)に列挙された耐炎化反応のいずれかが起こるものと考えられ、シアノ基と酸素が関与する架橋反応としては、「高分子加工」(1993年、42巻、12号、11,12ページ、柿田秀人著、高分子刊行会)に列挙された耐炎化反応のいずれかが起こるものと考えられる。上記化学式(100)で表される高分子錯体を変性処理することによって得られる高分子錯体変性物は、例えば以下の化学式(101)で表されるような化学構造を有する。なお、化学式(101)において、L1で示す破線円内では、分子内架橋が生じており、L2で示す破線円内では分子間架橋が生じている。
【0111】
【化18】

【0112】
錯体モノマーとコモノマーとの共重合反応は、無溶媒で行うこともできれば、反応溶媒の存在下で行うこともできる。
【0113】
反応溶媒を用いて錯体モノマー及びコモノマーの共重合反応を行う際は、反応系は均一系でも不均一系でもよい。この共重合反応は種々の溶媒下で実施可能である。溶媒としては、例えば水、テトラヒドロフラン、エーテル、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプルパノール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。溶媒はこれらのいずれかを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0114】
共重合は、前述の錯体モノマーのうち少なくとも1種類以上の錯体モノマーと、1種類以上のコモノマーとを共に重合することで行われる。このように、種々の重合性モノマーを組み合わせて様々なモノマー比で共重合を行うことができる。
【0115】
共重合の重合開始法としては、熱、光、電解、放射線、酸化等の様々な手法を用いることができ、ラジカル発生触媒や開始剤等を用いてもよい。これらの中でも、ラジカル開始剤を用いた重合開始法が好ましい。
【0116】
ラジカル開始剤を用いた共重合を行う場合、ラジカル開始剤としては、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、もしくは2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系の開始剤を用いることができる。重合温度は、使用するラジカル開始剤のラジカル発生温度により決められる。
【0117】
錯体モノマーとコモノマーとの共重合反応の形態は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、マイクロエマルジョン重合、ミニエマルジョン重合、沈殿重合、分散重合の何れでも良いが、微粒子状の高分子錯体が得られる懸濁重合、乳化重合、マイクロエマルジョン重合、ミニエマルジョン重合、沈殿重合及び分散重合が好ましく、乳化重合、マイクロエマルジョン重合、ミニエマルジョン重合及び分散重合がより好ましい。
【0118】
錯体モノマーとコモノマーとの共重合反応では、必要に応じて、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、キチン、キトサン、ポリメタクリルアミド等の水溶性ポリマー、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリピロール、タルク、ベントナイト、シリカゲル、珪藻土、粘土、酸化チタン、BaSO、Al(OH)、CaSO、BaCO、MgCO、Ca(PO、CaCO、カーボン系添加剤(フラーレン、カーボンブラック、活性炭等)、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、等の添加剤を併用する場合もあり、それぞれ単独で使用してもよく2種以上組み合わせて使用してもよい。また、添加剤として、必要に応じて、t−ドデシルメルカプタン(TDM)、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー(αMSD)、ターピノーレン類等の連鎖移動剤も併せて用いることができる(特開2005−054108号公報参照)。
【0119】
上記添加剤としては、カーボン系添加剤が好ましい。カーボン系添加剤存在下で、上記錯体も上記高分子錯体としては、上記錯体モノマーと上記コモノマーとをカーボン系添加剤存在下で共重合させてなる高分子錯体であると好ましい。カーボン系添加剤を添加することによって、カーボンに由来する導電性、及びカーボン表面の官能基に由来する親水性又は疎水性等が付与された高分子錯体変性物を得ることができる。また、微粒子状のカーボン系添加剤を添加すれば、微粒子状の高分子錯体及び高分子錯体変性物が得られ易くなる。
【0120】
上記カーボン系添加剤としては、種々のカーボン系添加剤が使用でき、例えば、カーボンブラック、黒鉛、フラーレン、活性炭などが挙げられる。その中でもカーボンブラックが好ましく、種々のカーボンブラックが使用できる。カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラック(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、1500°C程度の高温で熱処理されたファーネスブラック、及び、1500°C程度の高温で熱処理されたチャンネルブラック等が挙げられる。
【0121】
上記カーボンブラックとしては、例えば、電化アセチレンブラック(電気化学製)、シャウニガンアセチレンブラック(シャウニガンケミカル製)、コンチネックスCF(コンチネンタルカーボン製)、バルカンC(キャボット製)、コンチネックスSCF(コンチネンタルカーボン製)、バルカンSC(キャボット製)、旭HS−500(旭カーボン製)、バルカンXC−7(キャボット製)、コウラックスL(デグッサ製)、ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェンブラックインターナショナル製)、カーボンナノパウダー(アルドリッチ製)、nanom black ST(フロンティアカーボン製)、nanom mix ST(フロンティアカーボン製)、Aqua−black001(東海カーボン製)等を用いることもできる。これらの中で、好ましくはバルカンC(キャボット製)、バルカンXC−7(キャボット製)、ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェンブラックインターナショナル製)、カーボンナノパウダー(アルドリッチ製)、nanom black ST(フロンティアカーボン製)、nanom mix ST(フロンティアカーボン製)であり、より好ましくはケッチェンブラックEC(ケッチェンブラックインターナショナル製)、ケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェンブラックインターナショナル製)である。
【0122】
なお、カーボンブラックの非存在下で上述の錯体モノマーとコモノマーとを共重合させて高分子錯体を合成した場合、この高分子錯体は、IRスペクトルにおいて、2200〜2300cm−1の波数帯域にピークを示すことが好ましく、このピークに対応するニトリル基を有する構造を備えることが好ましい。ニトリル基を有する構造の具体例としては、ポリアクリロニトリル構造、ポリメタクリロニトリル構造、ポリ(クロロアクリロニトリル)構造等が挙げられる。あるいは、カーボンブラックの非存在下で上述の錯体モノマーとコモノマーとを共重合させて高分子錯体を合成した場合、この高分子錯体は、IRスペクトルにおいて、3000〜3550cm−1の波数帯域にピークを示すことが好ましく、このピークに対応する1級または2級アミド基を有する構造を備えることが好ましい。1級または2級アミド基を有する構造の具体例としては、ポリアクリルアミド構造、ポリメタクリロニトリル構造、ポリ(N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド)構造、ポリ(N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド)構造等が挙げられる。
【0123】
錯体モノマー(多核錯体)とコモノマー(重合性モノマー)とを共重合して得られた共重合体(高分子錯体)は、窒素気流下で測定した熱重量−マススペクトルにおいて、熱重量分析条件として400〜500℃の領域で、m/Zが53又は67のいずれかである分子イオンピークを示すことが好ましい。なお、mは分子イオンの質量数であり、Zは分子イオンの電荷数である。このような高分子錯体の鎖中には、ポリアクリロニトリル型構造又はポリメタクリロニトリル型構造が形成されていると考えられ、もしくは後述の変性処理においてポリアクリロニトリル型構造又はポリメタクリロニトリル型構造が形成され得ると考えられる。
【0124】
高分子錯体に対しては、必要に応じて粉砕等の加工が施される。粉砕手法としては、乳鉢、メノウ鉢、ボールミル、ジェットミル、ファインミル、ディスクミル、ハンマーミル等による粉砕を挙げられる。
【0125】
得られた高分子錯体に対して、加熱処理、放射線照射処理、電磁波照射処理又は放電処理等の変性処理を施すことにより、高分子錯体を高分子錯体変性物へと誘導する。この際、変性処理前後の重量減少率が3重量%以上50重量%以下となることが好ましい。このような処理であれば、錯体構造の分解を抑制しつつ分子間及び/又は分子内架橋させることができる。このようにして得られる高分子錯体変性物は、触媒活性と良好な安定性(耐熱性、耐酸性)を併せ持つ触媒材料として好適に用いることができる。この変性処理によってポリマー鎖上(高分子錯体上)で、錯体モノマーに由来する側鎖及び高分子錯体に残存するコモノマーの架橋反応が起こり、これにより錯体構造が剛直化するのではないかと考えられる。この作用によって、高分子錯体変性物を触媒として用いた際に高い安定性が発現されるものと推測される。なお、高分子錯体上で起こる架橋反応の機構や作用については、これに限定されない。
【0126】
前述した高分子錯体の変性処理として好ましいものは、簡便さの観点から、加熱処理である。加熱処理は様々な条件下で行うことが可能であるが、ポリマー鎖上(高分子錯体上)で架橋反応が起こりかつ錯体構造の分解が極力少ない温度条件で加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の温度範囲は、150℃以上1000℃以下であることが好ましく、200℃以上900℃以下であることがより好ましく、250℃以上600℃以下であることがさらに好ましく、300℃以上500℃以下であることが特に好ましく、300℃以上400℃以下であることがとりわけ好ましい。
【0127】
加熱処理を行う際のガス雰囲気は、窒素、ヘリウム、アルゴン、水素、空気、酸素、一酸化炭素、水蒸気、アンモニア等の種々のガス雰囲気であってよく、窒素、ヘリウム、アルゴンであることが好ましい。
【0128】
上記高分子錯体変性物は、必要に応じて粉砕等の加工が施される。粉砕手法としては、乳鉢、メノウ鉢、ボールミル、ジェットミル、ファインミル、ディスクミル、ハンマーミル等による粉砕が挙げられる。なお、上記高分子錯体が微粒子状であれば、粉砕を行わなくとも微粒子状の高分子錯体変性物を得ることができる。
【0129】
上記高分子錯体変性物は、微粒子状であることが好ましく、その粒径としては、走査型電子顕微鏡写真から導出される平均粒径が、1nm〜10μmであると好ましく、5nm〜5μmであるとより好ましく、10nm〜1μmであると更に好ましく、10nm〜500nmであると特に好ましい。このような微粒子状の高分子錯体変性物は、大きな表面積を有するため高い反応活性を示すと共に、部材への導入も容易となり、レドックス触媒として好適に使用できる。
【0130】
走査型電子顕微鏡写真からの平均粒径導出としては、下記の条件および方法が挙げられる。
【0131】
[条件]250個以上の粒子が長方形の走査型電子顕微鏡写真に写っており、かつ該写真を長方形に均等に16分割した際にそれぞれの分割写真中に15個以上の粒子が確認できる走査型電子顕微鏡写真であること。
【0132】
[方法]上記の16個の分割写真それぞれから、任意の3つの粒子の長径を測定し、測定したこれら48個の粒子の長径を平均したものを平均粒径とする。ただし長径が10μmを超える粒子が該写真の中に一つでも存在する場合、該写真中の10μmを超える粒子のうちの何れか一つの長径を平均粒径とする。
【0133】
上述の錯体モノマーとコモノマーとをカーボンブラックの非存在下で共重合させて合成した高分子錯体を変性処理することによって高分子錯体変性物を形成した場合、この高分子錯体変性物は、IRスペクトルにおいて、1440〜1390cm−1および1630〜1590cm−1の波数帯域にピークを示すことが好ましく、このピークに対応するイミン架橋構造を有することが好ましい。
【0134】
高分子錯体変性物は、2個の遷移金属原子が同一の配位原子と配位結合している構造を少なくとも1つ有することが好ましい。また、高分子錯体変性物において、一の遷移金属原子に配位結合した配位原子と、他の遷移金属原子に配位結合した配位原子とが、1〜4個の共有結合を介して結合している構造が少なくとも1つ存在することが好ましい。
【0135】
このような構造をとることにより、2個の遷移金属原子間の距離が近づき、2つの遷移金属原子間の相互作用が発現されやすくなり、高分子錯体変性物の触媒活性がより高くなる。
【0136】
上記高分子錯体変性物は、元素組成において、遷移金属の含有量が0.01重量%〜8重量%であると好ましく、0.05重量%〜5重量%であるとより好ましく、0.1重量%〜4重量%であると更に好ましい。遷移金属の好ましい例は前述と同様である。高分子錯体変性物は、遷移金属の含有量が上記範囲であると、レドックス触媒として用いた際に触媒活性が優れたものとなり、特に過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に優れたものとなる。遷移金属の含有量が0.01重量%未満であると、レドックス触媒能が低下する。また、高分子錯体変性物の遷移金属の含有量が8重量%より多いと、該高分子錯体変性物を製造する際の共重合反応における重合反応性が低下し、製造効率が悪くなる傾向がある。
【0137】
上記高分子錯体変性物は、固体電子スピン共鳴スペクトルにおいて、下記数式(I)によって定義されるgTOPが、1.8000〜2.2400の範囲にあることが好ましく、1.9000〜2.2000であることがより好ましく、1.9500〜2.1000であることが特に好ましい。
gTOP=hν/βH (I)
【0138】
なお、上記数式(I)中、hはプランク定数、νは測定電磁波の共鳴周波数、βはボーア磁子、Hは観測されるESR信号が極大を示す磁場強度をそれぞれ示す。
【0139】
gTOPが上記範囲にある高分子錯体変性物は、マンガン原子を含み、かつ、好ましい金属中心構造を有する。
【0140】
上述のように、錯体モノマー及びコモノマーを共重合させて高分子錯体とし、更に、変性処理によって高分子錯体を高分子錯体変性物へと誘導する。その結果、高分子錯体変性物は、耐熱及び耐酸安定性と多核錯体自体のユニークな触媒活性とを兼備するようになる。この高分子錯体変性物は、特に過酸化水素分解触媒として用いた場合、フリーラジカルの発生を抑制しつつ過酸化水素を水と酸素とに分解することが可能であるのみならず、従来の多核錯体触媒と比較して著しく高い熱安定性を有することができるため、レドックス触媒等に好適に用いることが可能となる。
【0141】
このような本実施形態の高分子錯体変性物、及びこれを用いたレドックス触媒は、高分子電解質型燃料電池や水電解装置の劣化防止剤や、医農薬や食品の抗酸化剤等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0142】
以下、本発明を、実施例を示し、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0143】
(製造例1)[配位子の合成]
J.Am.Chem. Soc.1984、106、pp4765−4772.に記載のHL-Et配位子の合成に準拠し、2−ヒドロキシ−1,3−ジアミノプロパン四酢酸と、o−ジアミノベンゼンと反応させ、次いで4−クロロメチルスチレンを反応させることで、下記化学式(5)で示されるbbpr−CHSt配位子を収率85%で得た。この配位子の1H−NMR(0.05%(v/v)TMS CDCl溶液)を測定した結果、5〜8ppmのピークから−CHSt基が導入されたことを確認した。1H−NMRのチャートを図1に示す。
【0144】
【化19】

【0145】
(製造例2)[錯体モノマー前駆体の合成]
フラスコにp−ビニル安息香酸 (10.1g, 67.5mmol)、NaOH水溶液(10.2g, 64.1mmol)を量りとり、ここに水140mlを加え攪拌溶解させ、不溶成分を濾別し、p−ビニル安息香酸ナトリウム水溶液を調製した。別途フラスコに、Mn(SO)・5HO(7.74g, 32.1mmol)と水50mlとを量りとり、攪拌溶解させた。ここに前述のp−ビニル安息香酸ナトリウム水溶液を加え、室温下2時間攪拌した。生成した沈殿を濾取し、水洗浄、ether洗浄した後、減圧乾燥させることでp−ビニル安息香酸マンガン・4水和物(錯体モノマー前駆体)の白色粉末を得た。収量は5.87g(13.9mmol)、収率は43%であった。元素分析Calcd for C1822MnO:C,51.32;H.5.26.Found:C,51.63;H,5.16。
【0146】
(製造例3)[錯体モノマーの製造]
フラスコにbbpr−CHSt(400mg、0.372mmol)、NEt(i−Pr)(43.2mg、0.335 mmol)を量りとり、ここにTHF54mlを加え攪拌溶解させた。ここにp−ビニル安息香酸マンガン・4水和物(313mg、0.744mmol)を加え、室温下2時間攪拌した。この反応混合物を減圧下濃縮し、MeOHを加えて生成した沈殿を濾取し、水洗浄とエーテル洗浄を行なった後、減圧乾燥させることで化学式(6)(化学式(4a)と同一)で示されるMn−vb−(bbpr−CHSt)−vb(錯体モノマー)のベージュ色粉末を得た。収量は122mgであった。ESI MS[M−(p−ビニル安息香酸アニオン)]=1477.4。
【0147】
【化20】

【0148】
(製造例4)[高分子錯体の製造]
10mlガラス製サンプル管にMn−vb−(bbpr−CHSt)−vb(200mg)、メタクリルアミド(60.0mg)、アクリル酸(49.3mg)、メタクロレイン(135mg)、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(18.4mg)を混合溶解させた。このサンプル管へアルゴンガスをフローした後、ラバーセプタムで栓をし、50℃のオイルバスで11時間加熱し重合させた。生成した高分子錯体はサンプル管を破砕して取り出した。取り出した高分子錯体をハンマーとメノウ鉢で粉砕し、白色粉末を得た(337mg、収量に出発時(重合開始時)のマンガンが100%含まれるとするとマンガン含有量は0.731μmol/mgとなる)。この製造例4で得られた高分子錯体のIRスペクトルを測定した。結果を図2に示す。図2に示すように、製造例4で得られた高分子錯体は、IRスペクトルにおいて3000〜3550cm−1の波数帯域にピークを示すことから、ポリメタクリルアミド構造を有することが確認された。
【0149】
(実施例1)[高分子錯体変性物の製造]
製造例4で得られた高分子錯体(107mg)を下記の条件で2つの試料容器に分けて加熱処理し、高分子錯体変性物の黒褐色粉末を得た(59.7mg、収量に出発時のマンガンが100%含まれるとするとマンガン含有量は1.30μmol/mgとなる)。
装置 :Rigaku TG8101D TAS200
ガス雰囲気 :窒素,200ml/min
温度条件 :40℃〜350℃(昇温速度10℃/min)この後350℃で15min保持
試料容器 :オープン型アルミニウム製試料容器(φ:5.2、H:5.0mm、容量:100μl)
試料量 :53±1mg/該試料容器。
【0150】
実施例1で得られた高分子錯体変性物のIRスペクトルを測定した。結果を図3に示す。図3に示すように、実施例1で得られた高分子錯体変性物は、IRスペクトルにおいて2220cm−1にピークを示したことから、高分子錯体中に含まれるポリメタクリロアミド鎖中のアミド基が変性処理によってニトリル基へ変化したことが確認された。また、実施例1の高分子錯体変性物は、1602cm−1、1397cm−1にピークを示したことから、高分子錯体変性物では前述のイミン構造を伴う架橋が起こったものと考えられる。
【0151】
[高分子錯体変性物の熱重量−マススペクトル分析]
下記の測定装置を用いて、下記の条件下で、実施例1で得られた高分子錯体変性物に対して熱重量−マススペクトル分析を行ったところ、熱重量分析における400〜500℃の領域で、m/Z=67,77,78の分子イオンピークが観測された。
熱重量分析装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製TG−DTA6300
マススペクトル分析装置:PFEIFFER VACUUM社製QMS200
ガス雰囲気 :窒素(流量200ml/min)
温度条件 :40℃〜500℃(昇温速度10℃/min)
試料容器 :オープン型アルミニウム製試料容器(φ:5.2、H:2.5mm、容量:50μl)
試料量 :2.1mg/該試料容器
【0152】
(実施例2)[高分子錯体変性物の過酸化水素分解試験]
過酸化水素分解触媒として実施例1で得られた高分子錯体変性物(6.35mg、ca.8.41μmol(1金属原子当り))を25ml二口フラスコに量り取った。ここに溶媒として、ポリ(ナトリウム 4−スチレンスルホナート)(アルドリッチ市販品、重量平均分子量:約70,000)を酒石酸/酒石酸ナトリウム緩衝溶液(0.20mol/l酒石酸水溶液と0.10mol/l酒石酸ナトリウム水溶液から調製、pH4.0)に該ポリマー濃度が21.1mg/mlとなるよう溶解させた溶液(1.00ml)を加え、次いでエチレングリコール(1.00ml)を加え攪拌した。これを触媒混合溶液として用いた。
【0153】
この触媒混合溶液の入った二口フラスコの一方の口にセプタムを取り付け、もう一方の口をガスビュレットへ連結した。このフラスコを反応前熱処理として80℃下5分間攪拌した後、過酸化水素水溶液(11.4mol/l、0.20ml(2.28mmol))をシリンジで加え、80℃下20分間、過酸化水素分解反応を行った。発生する酸素をガスビュレットにより測定し、分解した過酸化水素を定量した。過酸化水素の定量では、発生した酸素をガスビュレットにより測定し、得られた実測の酸素の体積値(V)を下記数式(II)で換算し、大気圧と水蒸気圧を考慮した条件下(0℃,101325Pa(760mmHg))での気体発生量(V)を求めた。発生酸素量の経時変化(経過時間をtとする)を図4に示す。
【0154】
【数1】

【0155】
なお、上記数式(II)中、Pは大気圧(mmHg)、pは水の蒸気圧(mmHg)、tは温度(℃)、vは実測の体積値(ml)、Vは0℃、101325Pa(760mmHg)下の体積値(ml)を示す。
【0156】
(実施例3)[高分子錯体変性物の過酸化水素分解試験]
反応前熱処理の温度を80℃とし、24時間攪拌を行った以外は、実施例2と同様に実施例3の試験を行った。換算した発生酸素量の経時変化を図4に併せて示す。
【0157】
(比較例1)[Mn−bbprの過酸化水素分解試験]
過酸化水素分解触媒として、実施例1で得られた高分子錯体変性物の代わりに、特許文献1に記載の化学式(7)で示されるMn−bbprを同金属モル量用いて実施例2と同様の試験を行った。換算した発生酸素量の経時変化を図5に示す。
【0158】
【化21】

【0159】
(比較例2)[Mn−bbprの過酸化水素分解試験]
反応前熱処理の温度を80℃とし、24時間攪拌を行った以外は、比較例1と同様に比較例2の試験を行った。換算した発生酸素量の経時変化を図5に併せて示す。
【0160】
図4の実施例2及び3で示される本発明の高分子錯体変性物は、反応前熱処理の時間に関わらず触媒活性の低下は全くなく、高い熱安定性をもつことがわかった。これに対して図5の比較例1及び2で示される従来のMn−bbpr触媒は24時間の反応前熱処理によって大幅に触媒活性が低下しており、熱安定性が低いことがわかった。
【0161】
(製造例5)[錯体モノマー前駆体の合成3]
500ml三口フラスコにポリエチレングリコールモノメチルエステル(73.4g、Mn:〜2000)と水酸化ナトリウム、1,4−ブタンスルトンをそれぞれ36.7mmolずつ量り取り、テトラヒドロフラン(250ml)を加え80℃のオイルバスにて48時間撹拌させた。その後、溶媒を減圧下で留去し、真空乾燥することによって、下記一般式(8)で示されるP45Na(錯体モノマー前駆体)を褐色固体の状態で得た。なお、一般式中、n=〜45とはnの平均値が45であることを意味する。P45Naの収量は79.0gであった。このP45NaのH−NMR(0.05%(v/v)TMS CDCl溶液)を測定した。得られたH−NMRのチャートを図6に示す。図6に示すように、1.6〜2.0ppmのピークおよび2.8〜2.9ppmのピークから、P45Na(錯体モノマー前駆体)に−CHCHCHSONa基が導入されていることを確認した。
【0162】
【化22】

【0163】
(製造例6)[錯体モノマーの合成]
200mlフラスコにMn−vb−(bppr−CHSt)−vb(1.00g)とP45Na(2.67g)を量り取り、THF(60ml)を加え80℃のオイルバスにて2時間還流撹拌させた。その後、減圧下にて反応混合物から溶媒を留去し、ヘキサンで洗浄して下記化学式(9)で示されるMn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(錯体モノマー)を黄土色粉末の状態で得た。収量は3.66gであった。
【0164】
【化23】

【0165】
製造例6で得られた錯体モノマーの、赤外分光測定を行った。スペクトルチャートを図7に示す。
【0166】
また、製造例6で得られた高分子錯体の固体電子スピン共鳴スペクトルを−150℃で測定した。上記数式(I)よりgTOPを算出したところ、2.0076であった。
【0167】
(製造例7)[高分子錯体の製造]
ガラスコートされた撹拌子(φ6mm、L25mm)の入った50mlガラス製サンプル管に、Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、エタノール(1.5g)、アクリロニトリル(100mg)、アクリル酸(18.4mg)、及び2,2'-アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10.0mg)、水(1.5g)を加え混合撹拌した。このサンプル管を窒素ガス置換し、ラバーセプタムで栓をした状態で、60℃のオイルバスとマグネチックスターラーを用い、回転数350rpmで1時間加熱し反応を行った。生成した高分子錯体を、反応混合物から濾別し、メタノール次いでエーテルで洗浄し、真空乾燥させることで高分子錯体を白色粉末として得た(73.7mg)。得られた高分子錯体の走査型電子顕微鏡写真を図8に示す。図8の走査型電子顕微鏡写真より、前述の方法で平均粒径を導出すると、平均粒径362nmの微粒子であることが確認された。
【0168】
また、製造例7で得られた高分子錯体のIRスペクトルを測定した。結果を図9に示す。製造例7で得られた高分子錯体は、IRスペクトルにおいて2240cm−1の波数帯域にピークを示すことから、シアノ基を有するポリアクリロニトリル構造を備えることが確認された。
【0169】
(実施例4)[高分子錯体変性物の製造]
製造例7で得られた高分子錯体(50.0mg)を9mlガラス製サンプル管に量りとり、このサンプル管を下記の管状炉に導入し、200ml/minの流量で窒素ガスを30minフローした後、下記の温度条件で加熱処理し、高分子錯体変性物の黒褐色粉末を得た(39.0mg)。
装置 :株式会社いすず製作所製 管状炉 EPKRO−14K
ガス雰囲気 :窒素,200ml/min
温度条件 :30minの間に室温から350℃まで昇温、かつ350℃到達時に装置電源オフがとなる装置プログラムを設定し、その後室温まで自然冷却した。
なお、実際の管状炉温度をモニターしたところ、装置の過昇温が観測された。加熱処理における管状炉温度の経時変化のグラフを図10に示す。
【0170】
(製造例8)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
50mlガラス製サンプル管にMn−vb(bbpr−CHSt)−P45(150mg)をエタノール(1.5g)中に懸濁させ、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(113mg)、アクリル酸(24.3mg)、水(1.5g)、ケッチェンブラックEC(50mg)を順次加え混合撹拌した。このサンプル管を、窒素ガス置換し、ラバーセプタムで栓をした状態で、60℃のオイルバスとマグネチックスターラーを用い、回転数350rpmで1時間加熱し反応を行った。反応後、サンプル管中の不溶物を濾取し、メタノール、ジエチルエーテルで洗浄を行い、真空乾燥させて高分子錯体・カーボンブラック複合体を黒色の粉末で得た(87mg)。得られた高分子錯体・カーボンブラック複合体の走査型電子顕微鏡写真を図11に示す。図11の走査型電子顕微鏡写真より、前述の方法で平均粒径を導出すると、高分子錯体・カーボンブラック複合体は、平均粒径179nmの粒径を有する微粒子であることが確認された。
【0171】
(実施例5)[高分子錯体変性物の製造]
製造例8で得られた高分子錯体(72.1mg)を実施例4と同様の手法で加熱処理し、高分子錯体変性物の黒褐色粉末を得た(59.5mg)。得られた高分子錯体変性物の走査型電子顕微鏡写真を図12に示す。図12の走査型電子顕微鏡写真より、平均粒径119nmの粒径を有する微粒子であることが確認された。
【0172】
(製造例9)[高分子錯体・カーボン複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(103mg)、アクリル酸(19mg)、ジメチルホルムアミド(1.2g)、水(1.8g)、およびカーボンナノパウダー(50mg、アルドリッチ製)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボン複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は102mgであった。
【0173】
(製造例10)[高分子錯体・ポリアニリン・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(101mg)、アクリル酸(18mg)、エタノール(1.5g)、水(1.5g)、およびポリアニリン・カーボンブラック複合体(50mg、ポリアニリン20重量%、アルドリッチ製)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・ポリアニリン・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は80mgであった。
【0174】
(製造例11)[高分子錯体・ポリピロール・カーボン複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(107mg)、アクリル酸(17mg)、エタノール(1.5g)、水(1.5g)、およびポリピロール・カーボン複合体(50mg、ポリピロール20重量%、アルドリッチ製)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・ポリピロール・カーボン複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は93mgであった。
【0175】
(製造例12)[高分子錯体・メラミン樹脂・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(100mg)、アクリル酸(16mg)、エタノール(1.5g)、水(1.5g)、アクリル化(メラミン・ホルムアルデヒド共重合体)メチルエチルケトン溶液(30mg、80重量%、アルドリッチ製)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・メラミン樹脂・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は94mgであった。
【0176】
(製造例13)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、メタクリルアミド(70mg)、アクリル酸(50mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は70mgであった。
【0177】
(製造例14)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(70mg)、ビニルホスホン酸(50mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は82mgであった。
【0178】
(製造例15)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(70mg)、メタクロレイン(25mg)、アクリル酸(25mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は72mgであった。
【0179】
(製造例16)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(30mg)、N−メチロールアクリルアミド(30mg)、アクリル酸(50mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は88mgであった。
【0180】
(製造例17)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(30mg)、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド(30mg)、アクリル酸(50mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は89mgであった。
【0181】
(製造例18)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(100mg)、スチレンスルホン酸ナトリウム(20mg)、アクリル酸(18mg)、エタノール(1.5g)、水(1.5g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は110mgであった。
【0182】
(製造例19)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、メチルメタクリレート(51mg)、4−ビニルピリジン(50mg)、アクリル酸(17mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は82mgであった。
【0183】
(製造例20)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、N−ビニルイミダゾール(55mg)、N−ビニルピロリドン(53mg)、アクリル酸(19mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は82mgであった。
【0184】
(製造例21)[高分子錯体・カーボン複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(101mg)、アクリル酸(16mg)、メタノール(3.0g)、およびnanom mix ST(50mg、フロンティアカーボン製)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボン複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は66mgであった。
【0185】
(製造例22)[高分子錯体・カーボン複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(105mg)、アクリル酸(15mg)、メタノール(3.0g)、およびnanom black ST(50mg、フロンティアカーボン製)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボン複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は66mgであった。
【0186】
(製造例23)[高分子錯体・キトサン複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(102mg)、アクリル酸(17mg)、メタノール(3.0g)、およびキトサン低分子量体(50mg、アルドリッチ製)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・キトサン複合体(高分子錯体複合体)を乳白色の粉末で得た。収量は78mgであった。
【0187】
(製造例24)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾ
ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(52mg)
、ビニルトリメトキシシラン(66mg)、無水メタノール(3.0g)、およびケッチ
ェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応
および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体
)を黒色の粉末で得た。収量は73mgであった。
【0188】
(製造例25)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(21mg)、アクリル酸(20mg)、2−プロペニルオキサゾリン(80mg)、メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は71mgであった。
【0189】
(製造例26)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、2,3−ジクロロ−1−プロペン(111mg)、アクリル酸(30mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は70mgであった。
【0190】
(製造例27)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、2−クロロアクリロニトリル(101mg)、アクリル酸(27mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は100mgであった。
【0191】
(製造例28)[錯体前駆体の合成]
500mlフラスコにbbpr−CHSt(2.00g)と塩化鉄(III)・6水和物(1.01g)を量り取り、ジメチルスルホキシド(300ml)を加え80℃のオイルバスにて24時間撹拌させた。その後、反応混合物を1リットルビーカーに張った水中にゆっくりと加えて撹拌し、得られた沈殿物を桐山漏斗にて濾過し、残渣を水で洗浄し、これを真空乾燥することで、下記化学式(11)で示されるFe−Cl−(bbpr−CHSt)−Clを淡緑色の粉末の状態で得た。収量は779mgであった。
【0192】
【化24】

【0193】
(製造例29)[錯体の合成]
100mlフラスコにFe−Cl−(bbpr−CHSt)−Cl(300mg)とP45Na(956mg)を量り取り、テトラヒドロフラン(22ml)を加えオイルバス80℃にて27時間加熱還流した。その後減圧下にて溶媒を留去し、下記化学式(12)で示されるFe−Cl−(bbpr−CHSt)−P45を黄褐色粉末の状態で得た。収量は1.18gであった。
【0194】
【化25】

【0195】
(製造例30)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Fe−Cl−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(106mg)、アクリル酸(21mg)、メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は93mgであった。
【0196】
(製造例31)[錯体前駆体の合成]
500mlフラスコにbbpr−CHSt(2.00g)と酢酸コバルト・4水和物(927mg)を量り取り、ジメチルスルホキシド(300ml)を加え80℃のオイルバスにて24時間撹拌させた。その後、反応混合物を1リットルビーカーに張った水中にゆっくりと加え撹拌し、得られた沈殿物を桐山漏斗にて濾過し、残渣を水で洗浄し、これを真空乾燥することで、下記化学式(13)で示されるCo−OAc−(bbpr−CHSt)−OAcを橙色の粉末で得た。収量は688mgであった。
【0197】
【化26】

【0198】
(製造例32)[錯体の合成]
100mlフラスコにCo−OAc−(bbpr−CHSt)−OAc(300mg)とP45Na(951mg)を量り取り、テトラヒドロフラン(22ml)を加えオイルバス80℃にて27時間加熱還流した。その後減圧下にて溶媒を留去し、下記化学式(14)で示されるCo−OAc−(bbpr−CHSt)−P45を赤褐色粉末の状態で得た。収量は1.19gであった。
【0199】
【化27】

【0200】
(製造例33)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Co−OAc−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(100mg)、アクリル酸(21mg)、メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は94mgであった。
【0201】
(製造例34)[錯体前駆体の合成]
500mlフラスコにbbpr−CHSt(2.00g)とNi−(OAc)・4HO(926mg)を量り取り、ジメチルスルホキシド(300ml)を加え80℃のオイルバスにて24時間撹拌させた。その後、反応混合物を1リットルビーカーに張った水中にゆっくりと加え撹拌し、得られた沈殿物を桐山漏斗にて濾過し、残渣を水で洗浄し、これを真空乾燥することで、下記化学式(15)で示されるNi−OAc−(bbpr−CHSt)−OAcを黄緑色の粉末の状態で得た。収量は937mgであった。ESI MS、m/Z 624.2 ([M−2(酢酸アニオン)]2+)。
【0202】
【化28】

【0203】
(製造例35)[錯体の合成]
100mlフラスコにNi−OAc−(bbpr−CHSt)−OAc(300mg)とP45Na(951mg)を量り取り、テトラヒドロフラン(22ml)を加えオイルバス80℃にて27時間加熱還流した。その後減圧下にて溶媒を留去し、下記化学式(16)で示されるNi−OAc−(bbpr−CHSt)−P45を緑褐色粉末の状態で得た。収量は1.14gであった。
【0204】
【化29】

【0205】
(製造例36)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Ni−OAc−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(103mg)、アクリル酸(23mg)、メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は97mgであった。
【0206】
(製造例37)[錯体前駆体の合成]
500mlフラスコにbbpr−CHSt(2.00g)とCu(OAc)・HO(743mg)を量り取り、ジメチルスルホキシド(300ml)を加え80℃のオイルバスにて24時間撹拌させた。その後、反応混合物を1リットルビーカーに張った水中にゆっくりと加えて撹拌し、得られた沈殿物を桐山漏斗にて濾過し、残渣を再度同様の操作にて水及びヘキサンで洗い、これを真空乾燥することで、下記化学式(17)で示されるCu−OAc−(bbpr−CHSt)−OAcを茶色の粉末の状態で得た。収量は1.14gであった。
【0207】
【化30】

【0208】
(製造例38)[錯体の合成]
100mlフラスコにCu−OAc−(bbpr−CHSt)−OAc(300mg)とP45Na(947mg)を量り取り、テトラヒドロフラン(22ml)を加えオイルバス80℃にて27時間加熱還流した。その後減圧下にて溶媒を留去し、下記化学式(18)で示されるCu−OAc−(bbpr−CHSt)−P45を茶褐色粉末の状態で得た。収量は1.22gであった。
【0209】
【化31】

【0210】
(製造例39)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Cu−OAc−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(103mg)、アクリル酸(18mg)、メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用いたこと以外は製造例8と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は89mgであった。
【0211】
(製造例40)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
メカニカルスターラーを備えた200mlセパラブルフラスコにMn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(3.0g)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(200mg)、蒸留水(20g)を加え、次いでここに予め100mlバイアル中、エタノール(30g)とケッチェンブラックEC(1.0g)を超音波撹拌した混合物を加え、室温下350rpmで30分間撹拌した。ここに、アクリロニトリル(2.4g)、アクリル酸(400mg)、p−スチレンスルホン酸ナトリウム(10g)、および蒸留水(10g)を加え、更に室温下350rpmで30分間撹拌した。このフラスコに窒素ガスを30分間バブルさせ、フラスコを窒素気流下とした後に、60℃下350rpmで60分間加熱撹拌し反応させた。反応後、沈殿を濾取し、メタノールで洗浄した。次いで濾取物をメタノール/水=9/1(v/v)の溶液で洗浄した後、更にメタノールで洗浄し、真空乾燥させることで高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は4.69gであった。マンガン含有量についてICP発光分析を行ったところ、0.38重量%であった。
【0212】
また、製造例40で得られた高分子錯体の固体電子スピン共鳴スペクトルを−150℃で測定した。上記数式(I)よりgTOPを算出したところ、1.9896であり、出発のマンガン錯体モノマーの金属中心を備えることが確認された。
【0213】
(実施例6〜29)[高分子錯体変性物の製造]
製造例9〜27、30、33、36、39、40で得られた高分子錯体複合体を実施例4と同様な手法でそれぞれ加熱処理を行い、高分子錯体変性物を得た。使用した高分子錯体複合体の重量(出発の高分子錯体複合体の使用量)と高分子錯体変性物の収量を表1にまとめて示す。
【0214】
【表1】

【0215】
実施例29で得られた高分子錯体変性物のマンガン含有量についてICP発光分析を行ったところ、0.42重量%であった。
【0216】
(実施例30)[高分子錯体変性物の過酸化水素分解試験]
過酸化水素分解触媒として、実施例14で得られた高分子錯体変性物(30.0mg)を25ml二口フラスコに量り取った。ここに溶媒として、酒石酸/酒石酸ナトリウム緩衝溶液(0.20mol/l酒石酸水溶液と0.10mol/l酒石酸ナトリウム水溶液から調製、pH4.0、2.00ml)を加えて攪拌した。これを触媒混合溶液として用いた。反応前にこの触媒混合溶液の入ったフラスコの重量を測定した。
【0217】
次に、この触媒混合溶液の入った二口フラスコの一方の口にセプタムを取り付け、もう一方の口をガスビュレットへ連結した。このフラスコを反応前熱処理として80℃下で5分間攪拌した後、フラスコ内に過酸化水素水溶液(11.4mol/l、0.20ml(2.28mmol))をシリンジで加え、80℃下で60分間、過酸化水素分解反応を行った。この過酸化水素分解反応で発生する酸素をガスビュレットにより測定し、分解した過酸化水素を定量した。前述の過酸化水素分解試験と同様に、発生した酸素をガスビュレットにより測定し、得られた実測の酸素の体積値(v)を大気圧と水蒸気圧を考慮した条件下(0℃,101325Pa(760mmHg))での気体発生量(V)を求めた。次に、過酸化水素分解反応の進行中における過酸化水素分解率、及び過酸化水素分解率の経時変化を求めた。結果を図13に示す。なお、過酸化水素分解率は、V=25.5mlの時の過酸化水素分解率を100%として算出した。図13において、縦軸は過酸化水素分解率(conv.(%)H)であり、横軸は経過時間t(単位:minute)であり、曲線「5min」は過酸化水素分解率の経時変化を示す。
【0218】
上述のように、80℃下で60分間、過酸化水素分解反応を行った後、引き続きフラスコを80℃で保温し続けた。そして、過酸化水素分解反応を最初に開始した時点から48h(時間)、96h、192h、384h、576h、840h経過した各時点(以下、各経過時点と記す)において、再度フラスコ内に過酸化水素水溶液(11.4mol/l、0.20ml(2.28mmol))をシリンジで加えた。そして、各経過時点から更に60分間、過酸化水素分解反応をそれぞれ進行させて、上述の場合と同様の方法で、各経過時点から更に60分に渡って過酸化水素分解率、及び過酸化水素分解率の経時変化を求めた。結果を図13に示す。なお、図13の曲線「48h」、「96h」、「192h」、「384h」、「576h」、「840h」は、各経過時点から60分にわたる過酸化水素分解率の経時変化をそれぞれ示す。また、一連の過酸化水素分解反応を進行させる際は、フラスコを80℃下で長時間保温することにより溶媒の水が幾分揮散する為、過酸化水素分解反応を開始する各経過時点から0.5〜4時間前に、触媒混合溶液の入ったフラスコの重量を再測定し、揮散した分の水をフラスコに加えてから反応を行った。
【0219】
図13により、高分子錯体変性物の触媒活性は、最初に行った過酸化水素分解反応「5min」の場合に比べて、「48h」、「96h」の各経過時点から開始した過酸化水素分解反応では一旦低下するが、「192h」の経過時点から開始した過酸化水素分解反応では向上し、「384h」、「576h」の経過時点から行った過酸化水素分解反応では更に向上し、「840h」の経過時点から行った過酸化水素分解反応においても高いことが確認された。この過酸化水素分解試験の結果から、実施例14では、酸性熱水処理によって触媒活性が向上し、かつ高い耐熱・耐酸安定性を併せ持つ不均一系触媒(高分子錯体変性物)が得られたことが明らかとなった。
【0220】
(実施例31)[高分子錯体変性物の過酸化水素分解試験]
製造例8および実施例5と同様な手法で調製した触媒(30mg)を25ml二口フラスコに量り取った。ここに溶媒として、ポリ(ナトリウム 4−スチレンスルホナート)(アルドリッチ市販品、重量平均分子量:約70,000)を酒石酸/酒石酸ナトリウム緩衝溶液(0.20mol/l酒石酸水溶液と0.10mol/l酒石酸ナトリウム水溶液から調製、pH4.0)に該ポリマー濃度が10.5mg/mlとなるよう溶解させた溶液(2.00ml)を加え攪拌した。これを触媒混合溶液として用いた。
【0221】
この触媒混合溶液の入った二口フラスコの一方の口にセプタムを取り付け、もう一方の口をガスビュレットへ連結した。このフラスコを反応前熱処理として80℃下5分間攪拌した後、過酸化水素水溶液(11.4mol/l、0.20ml(2.28mmol))をシリンジで加え、80℃下20分間、過酸化水素分解反応を行った。発生する酸素をガスビュレットにより測定し、分解した過酸化水素を定量した。発生した酸素をガスビュレットにより測定した実測の体積値(v)を、上記数式(II)により大気圧と水蒸気圧を考慮した0℃,101325Pa(760mmHg)下の条件に換算し、気体発生量(V)を求めた。V=25.5mlの時の過酸化水素分解率を100%として算出すると、この時の過酸化水素分解率は39%であった。
【0222】
この後、反応溶液を水/アセトニトリル混合溶液(水:アセトニトリル=7:3(v/v))で溶液量が10.0mlになるよう希釈し、この溶液をシリンジフィルターで濾過した。この濾液をGPC測定(GPC分析条件は下記のとおりである)し、試験後のポリ(ナトリウム 4−スチレンスルホナート)の重量平均分子量を求めた。この試験後の重量平均分子量と試験前のポリ(ナトリウム 4−スチレンスルホナート)の重量平均分子量を比較し、過酸化水素由来のフリーラジカルによって該ポリマーがどの程度低分子量化したか調べることで発生フリーラジカル量を見積もった。重量平均分子量結果を表2に示す。
【0223】
GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)分析条件
カラム :東ソー(株)製TSKgel α−M
(13μm、7.8mmφ×30cm)
カラム温度:40℃
移動相 :50mmol/l酢酸アンモニウム水溶液:CH3CN
=7:3(v/v)
流速 :0.6ml/min
検出器 :RI
注入量 :50μl
分子量算出:重量平均分子量はポリエチレンオキサイド換算値で求めた。
【0224】
[試験前のポリ(ナトリウム 4−スチレンスルホナート)の重量平均分子量の測定]
ポリ(ナトリウム 4−スチレンスルホナート)(アルドリッチ市販品、重量平均分子量:約70,000)の重量平均分子量を前記記載のGPC分析条件と同様にして求めた。重量平均分子量結果を表2に示す。
【0225】
【表2】

【0226】
表2より、実施例31で共存させたポリ(ナトリウム 4−スチレンスルホナート)の重量平均分子量は試験前品に比べほぼ同じであった。これより実施例5の触媒はフリーラジカルの発生を抑制して過酸化水素を分解できることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】製造例1におけるbbpr−CHSt配位子の1H−NMR分析チャートである。
【図2】製造例4における高分子錯体のIR分析チャートである。
【図3】実施例1で得られた高分子錯体変性物のIR分析チャートである。
【図4】実施例2、3の高分子錯体変性物の過酸化水素分解試験における発生酸素量の経時変化を示すグラフである。
【図5】比較例1、2の過酸化水素分解試験における発生酸素量の経時変化を示すグラフである。
【図6】製造例5におけるP45Naの1H−NMR分析チャートである。
【図7】製造例6における錯体モノマーのIR分析チャートである。
【図8】製造例7で得られた高分子錯体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】製造例7で得られた高分子錯体のIR分析チャートである。
【図10】実施例4での加熱処理における管状炉温度の経時変化のグラフである。
【図11】製造例8で得られた高分子錯体・カーボンブラック複合体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例5で得られた高分子錯体変性物の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例30の過酸化水素分解試験における過酸化水素分解率の経時変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)〜(iii)の条件を満たす錯体モノマーと下記一般式(1)で表されるコモノマーとの共重合体である高分子錯体を、その側鎖を介して分子間及び/又は分子内架橋させてなる高分子錯体変性物。
(i)2個以上の遷移金属原子を有すること
(ii)前記遷移金属原子に配位結合する配位原子を3個以上含む多座配位子を有すること
(iii)前記多座配位子に結合した1個以上のビニル基を有すること
【化1】


[式中、Eは、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルバモイル基、ホスホン酸基、スルホン酸基、ハロゲノ基、−CONHCHOR04基又は−Si(OR05基、R01、R02及びR03は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲノ基、シアノ基、−COOR04基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、をそれぞれ示す。なお、R04は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基である。R05は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基である。]
【請求項2】
前記コモノマーが、一般式(1)中、Eがシアノ基、ホルミル基又はカルバモイル基であるコモノマーから選ばれる少なくとも一種の架橋性コモノマーを含む、請求項1記載の高分子錯体変性物。
【請求項3】
前記コモノマーが、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びクロロアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋性コモノマーを含む、請求項1又は2に記載の高分子錯体変性物。
【請求項4】
前記コモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩及びスチレンスルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性コモノマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項5】
前記コモノマーが、
一般式(1)中、Eがシアノ基、ホルミル基又はカルバモイル基である架橋性コモノマーの少なくとも一種と、
アクリル酸、メタクリル酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩及びスチレンスルホン酸エステルからなる群より選ばれる親水性コモノマーの少なくとも一種と、を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項6】
前記高分子錯体が、前記錯体モノマーと前記コモノマーとをカーボン系添加剤存在下で共重合させてなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項7】
赤外分光測定において1390〜1440cm−1及び1590〜1630cm−1の範囲にピーク極大を示す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項8】
前記高分子錯体が、熱重量−マススペクトルにおいて、分子イオンの質量数をm、当該分子イオンの電荷数をZとしたとき、m/Zが53又は67である分子イオンピークを示す請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項9】
2個の遷移金属原子が同一の配位原子と配位結合している構造が少なくとも1つ存在する請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項10】
一の遷移金属原子に配位結合した配位原子と、他の遷移金属原子に配位結合した配位原子とが、1〜4個の共有結合を介して結合している構造が少なくとも1つ存在する請求項1〜9のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項11】
前記遷移金属原子が第一遷移元素系列の遷移金属原子である請求項1〜10のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項12】
前記多座配位子が下記一般式(2)で表される構造を有する請求項1〜11のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【化2】


[式中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、ビニル基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、ビニル基を有していてもよい2価の基、Z及びZは、それぞれ独立に窒素原子又は3価の基、をそれぞれ示す。但し、Ar、Ar、Ar、Ar、R、R、R、R及びRの少なくとも1つはビニル基を有する。]
【請求項13】
前記多座配位子が下記一般式(3a)又は(3b)で表される構造を有する請求項1〜12のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【化3】


【化4】


[式中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ビニル基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又はビニル基を有していてもよい炭素数2〜60の芳香族基を示す。但し、Y、Y、Y及びYのうち少なくとも1つは、ビニル基を有する炭素数1〜50のアルキル基、又はビニル基を有する炭素数2〜60の芳香族基である。]
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物であって、
前記高分子錯体変性物は、前記高分子錯体を、加熱処理、放射線照射処理、電磁波照射処理又は放電処理により、分子間及び/又は分子内架橋させてなるものであり、
当該処理前の重量を基準として、当該処理後の重量減少率が3重量%以上50重量%以下である、高分子錯体変性物。
【請求項15】
前記高分子錯体を、200〜900℃の範囲で加熱処理により、分子間及び/又は分子内架橋させてなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項16】
ICP発光分析による元素分析において、遷移金属の含有量が0.01重量%〜8重量%である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項17】
走査型電子顕微鏡写真に基づく平均粒径が10nm〜10μmの範囲内の微粒子状である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
【請求項18】
固体電子スピン共鳴スペクトルにおいて、下記数式(I)によって定義されるgTOPが1.8000〜2.2400の範囲である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物。
gTOP=hν/βH (I)
[式中、hはプランク定数、νは測定電磁波の共鳴周波数、βはボーア磁子、Hは観測されるESR信号が極大を示す磁場強度をそれぞれ示す。]
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の高分子錯体変性物を含有するレドックス触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−57545(P2009−57545A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198677(P2008−198677)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】