説明

高分子電解質、その製造方法、膜電極接合体及び燃料電池

【課題】電解質の加湿を行わない場合や低加湿の場合でも高いイオン伝導率を有し、かつ機械的な強度および熱や水に対する寸法安定性に優れた高分子電解質膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】イオン伝導性ブロックと非イオン伝導性ブロックから構成されるブロック共重合体からなる電解質膜であって、かつ非イオン伝導性ブロックの25℃からガラス転移温度までの線膨張係数が6.0×10-5/℃以下である高分子電解質膜。イオン伝導性ブロックを有するブロック共重合体を成膜する工程、成膜したブロック共重合体のイオン伝導性ブロックが形成するシリンダー状ドメインを一軸配向させて、電解質膜の厚さ方向に配列したイオン伝導部を形成する工程を有する高分子電解質膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導性に対する湿度および温度の影響が小さく、高イオン伝導性を有し、かつ機械的強度および水や熱に対する寸法安定性に優れた高分子電解質膜、その製造方法および該高分子電解質膜を用いた膜電極接合体および燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、高効率でクリーンな次世代のエネルギー変換装置として注目されている。低温作動型の燃料電池、特に高分子電解質型燃料電池は、燃料電池を構成する材料面での制約が少なく、小型化・軽量化が可能であるため、可搬型の小型電源や車載用動力源等への応用が期待されている。特に携帯機器用の小型電源としての応用には、さらなる高出力化及び小型化が望まれている。そのためには電解質膜の高イオン伝導率化、高強度化、寸法安定性の向上、電解質膜の耐ドライアウト化及び電極の耐フラッディング化などが望まれている。
【0003】
高分子電解質型燃料電池においては、電解質膜として、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表される非架橋のパーフルオロ系電解質や種々の炭化水素系電解質などの高分子膜が一般に用いられる。このような高分子電解質型燃料電池を高出力化するためには、高分子膜のイオン伝導率は高い方が望ましい。また、燃料電池は一般に多数の単セルを積層したスタックとして使用されるので、燃料電池を小型化するためには、高分子電解質膜の厚さは薄い方が好まし。同時に、高分子膜の強度が高く、熱や水分に対する寸法安定性が高い(形状変化が小さい)ことが望まれる。
【0004】
これらの材料系では、一般に高分子膜中におけるイオン交換基の密度が高いほど、高いイオン伝導率が得られる。しかし、イオン交換基の密度が高くなると、高分子膜のイオン伝導率は高くなるが、同時に吸水性が高くなり、高分子膜の強度が低下するという問題がある。特に、パーフルオロ系電解質膜は、燃料電池が運転される高温湿潤状態では膨潤状態・ゼリー状に変性し、変形・破損しやすくなったり、イオン交換基の脱離に伴ってイオン伝導率が低下したりする傾向があった。さらに、室温と運転温度の温度差に伴う寸法・形状変化や高温下での耐熱性にも課題があった。すなわち、従来の高分子膜では、高イオン伝導率と運転時に必要とされる強度・寸法安定性とを両立させることが困難であった。
【0005】
この問題を解決するために、複合化や架橋により高分子膜の強度や寸法安定性を向上させながら、イオン交換基の密度を高める方法が提案されている。例えば、特許文献1には、電解質膜の化学的安定性、寸法安定性を改善するために、イオン性基であるスルホン酸基間を共有結合により架橋することにより、膨潤が抑制された膜が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献2には、厚さ方向に貫通する連通孔を有する膜支持体と、前記連通孔の内部に導入されたイオン伝導性物質とを有する電解質膜が開示されている。この例においては、電解質膜内において、イオン伝導性物質の導入場所を固定化することにより、高いイオン伝導率が得られる高分子電解質が提案されている。
【0007】
一方、別の問題点として、高分子電解質型燃料電池に用いられる電解質膜は、その多くが水のクラスターにより水素イオンが拡散されるとされている。そのため、いずれもイオン伝導性を発現するには水を必要とするが、燃料電池を低湿度下で運転した場合、電解質膜の含水率が低下するとともにイオン伝導率が低下する、いわゆるドライアウトが発生し、燃料電池の出力が低下する点があった。
【0008】
さらに、燃料電池を運転した場合、カソードにおいて電池反応により水が生成し、また、イオンがアノード側からカソード側に移動すると同時に電気浸透により水もカソード側に移動するため、電解質膜内に含水率の偏りが生じる。このため、カソードにおいて過剰の水が滞留しやすくなり、電極内の細孔が水で閉塞し、いわゆるフラッディングが発生し、燃料電池の出力を低下させる原因となっていた。このような電解質膜内に含水率の偏りなどによる特性低下を抑制するため、湿度条件によりイオン伝導度が影響を受けない電解質膜が望まれている。
【0009】
上記要求特性を解決する方法として、特許文献3には、燃料電池用高分子電解質膜として、スルホン酸基含有ブロックと、スルホン酸基を含有していないブロックとからなるポリエーテルスルホン系ブロック共重合体が開示されている。前記電解質膜は、ランダムにスルホン酸基が導入された高分子電解質と比較して、同等以上のイオン伝導度を有しており、吸水量は少なく抑えられることから、耐水性に優れた、イオン伝導性に対する湿度及び温度の影響の少ない高分子電解質が提案されている。
【特許文献1】特開平6−231779号公報
【特許文献2】特開2002−203576号公報
【特許文献3】特開2003−031232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、スルホン酸基間を共有結合により架橋することで膨潤は抑制できるものの、イオン性基が架橋反応によりイオン性を示さなくなるため、イオン伝導性が低下するという問題点があった。
【0011】
特許文献2では、孔を有する膜支持体と、連通孔の内部に導入されたイオン伝導性物質とを備えることにより、比較的高いイオン伝導率が得られる。しかし、イオン伝導性物質を膜支持体に浸漬させた場合、電解質膜がイオン伝導性物質膜と支持体という異なる二つの物質からなる複合膜である。その為、内部に導入したイオン伝導性物質が含水や膨張などにより流出する可能性があり、電極との接触性や、燃料電池の長期耐久性に問題がある。また、連通孔をイオン伝導性物質で修飾させた場合においても、膜支持体に導入されるイオン交換性物質が疎であることから、ガス遮断性に乏しく、また、イオン交換基の導入量を増大させることが難しい。
【0012】
特許文献3では、スルホン酸基含有親水性セグメントと、疎水性セグメントとからなるスルホン化芳香族ポリエーテルスルホン系ブロック共重合体を用いて、イオン伝導性に対する湿度及び温度の影響の少ない高分子電解質を開示している。このブロック共重合体はその分子構造に起因してガラス転移温度が非常に高いため、耐熱性が高いという利点がある一方、通常熱処理により形成・制御されるブロック共重合体のミクロ相分離構造の制御は困難である。そのため、スルホン酸基含有親水性セグメントと疎水性セグメントとの相分離により形成されるミクロドメインはランダムな方向に向いており秩序性が低いことから、イオン伝導効率の向上には限界がある。
【0013】
上述したように、高分子電解質の多くはイオン伝導性を発現するために水を必要とするため、一般に燃料電池は加湿条件下で運転される。補機を用いて電解質を加湿する場合、加湿用の水を貯蔵するための水タンク、加湿器、燃料電池から排出される水を回収するための凝縮器等、様々なコンポーネントが必要となる。そのため、燃料電池システム全体が複雑かつ大型化するという問題がある。また、補機を用いた電解質の加湿は、余分な補機動力が必要となり、燃料電池の発電効率を低下させる原因にもなる。
【0014】
一方、上述したように、カソード側においては電池反応により水が生成する。この生成水を電解質の加湿に直接利用することができれば、補機による電解質の加湿を軽減又は不要化することができ、燃料電池システム全体の小型化、軽量化及び高効率化に大きく貢献できる。
【0015】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、ブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成・制御することにより、電解質の加湿を行わない場合や低加湿の場合でも高いイオン伝導率を有し、かつ非イオン伝導性ブロックの分子構造を最適化することで機械的な強度および熱や水に対する寸法安定性に優れた高分子電解質膜およびその製造方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、高い出力が安定して得られる、低温・低加湿作動型の携帯機器用小型燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明は、イオン伝導性ブロックと非イオン伝導性ブロックから構成されるブロック共重合体からなる電解質膜であって、かつ非イオン伝導性ブロックの25℃からガラス転移温度までの線膨張係数が6.0×10-5/℃以下であることを特徴とする高分子電解質膜である。
【0018】
前記イオン伝導性ブロックがシリンダー状ドメインを形成することが好ましい。
また前記イオン伝導性ブロックが、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基または亜ホスホン酸基からなる群から選択される少なくとも1つのイオン交換基を有するポリマーからなることが好ましい。
【0019】
前記非イオン伝導性ブロックを構成するポリマーが、繰り返し単位としてマレイミド構造及び/又はアクリロニトリル構造が含まれる共重合体であることが好ましい。
また、前記イオン伝導性ブロックが形成するシリンダー状ドメインが、電解質膜の厚さ方向と平行または略平行に配列してなることを特徴とする高分子電解質である。
【0020】
また、本発明は、イオン伝導性ブロックを有するブロック共重合体を成膜する工程、成膜したブロック共重合体のイオン伝導性ブロックが形成するシリンダー状ドメインを一軸配向させて、電解質膜の厚さ方向に配列したイオン伝導部を形成する工程を有することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法である。
【0021】
前記成膜したブロック共重合体を加熱処理および外場を印加してイオン伝導性ブロックが形成するシリンダー状ドメインを一軸配向させることが好ましい。
さらに本発明は、上記の高分子電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体である。
【0022】
前記高分子電解質膜のイオン伝導部が、電極面に対して垂直または略垂直な方向に配列していることが好ましい。
さらに、本発明は、上記の高分子電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体を備えた燃料電池である。
【0023】
前記高分子電解質膜のイオン伝導部が、電極面に対して垂直または略垂直な方向に配列していることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、脂肪族ビニル系のブロック共重合体の電解質膜において、電解質膜の膜構造を形成・形状保持する非イオン伝導性ブロックのマトリックスと、イオン伝導性ブロックからなるイオン伝導部を自己組織的に相分離させ、寸法安定性の高いマトリックス中にイオン交換基が高密度で存在するシリンダー状ミクロドメインを形成することにより、イオン伝導性に対する湿度及び温度の影響が少なく高イオン伝導率で、かつ熱や水に対する形状変化の小さい電解質膜を提供することができる。
【0025】
さらに、ミクロ相分離構造により形成されるシリンダー状のイオン伝導部を高分子電解質膜の厚さ方向に対して平行または略平行に配向させた構造を備えることにより、イオン伝導部を一軸方向に配列することが可能となり、イオン伝導効率をさらに向上させることができる。
【0026】
また、本発明によれば、高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体を備えた燃料電池において、電解質膜の厚さ方向に対して平行または略平行にイオン伝導部を配向させた構造を備えた電解質膜を用いているので、水の拡散速度が向上する。電池反応による電極での生成水の一部は、拡散によって電解質膜まで戻され、電解質膜の加湿に再利用される。そのため、電解質膜中の水は膜中に偏りなく均一に存在することができる。
【0027】
さらに、そのために、低加湿条件下においても、電解質膜の含水率を安定作動に必要な水準に維持することができ、出力の低下を抑制し、また高い出力が安定して得られる。これにより、補機による電解質の加湿を行わない場合や低加湿の場合においても、燃料電池の起動時など水分供給が不十分でも発電量が低下しにくく、また高い出力が長期間に渡って安定して得られ、燃料電池の小型化が可能となる。
【0028】
このように、本発明によれば、高いイオン伝導率および高い寸法安定性が得られ、補機による電解質の加湿を行わない場合や低加湿の場合でも、高い出力が長期間に渡って安定して得られる高分子電解質膜およびその製造方法を提供することができる。
【0029】
また、本発明は、高いイオン伝導率が得られる、低温作動型の携帯機器用小型燃料電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の高分子電解質は、イオン伝導性ブロックおよび非イオン伝導性ブロックをそれぞれ一つ以上有し、前記イオン伝導性ブロックがシリンダー状ドメインを形成する脂肪族ビニル系ブロック共重合体からなる。尚、本発明において、「ブロック共重合体」とは、2種類以上のブロックが直接共有結合または連結基を介して結合した高分子、すなわち2種類以上のポリマー鎖がブロックとして結合したポリマーのことをいう。このブロックを構成するポリマー鎖は、ホモポリマー鎖であってもよく、(ランダム)コポリマー鎖であってもよい。
【0031】
また本発明においては、「脂肪族ビニル系」ブロック共重合体とは、ポリマー主鎖が鎖状炭化水素および芳香族を除く環状炭化水素のブロック共重合体を示す。これら脂肪族ビニル系ポリマーは具体的には、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリハロオレフィン、ポリジエン等のポリビニル、無水マレイン酸等のエチレン性不飽和基含有酸無水物単量体を重合したポリ酸無水物、マレイミド等のエチレン性不飽和基含有イミド単量体の重合体等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0032】
ブロック共重合体においては、各成分の自己凝集によりそれぞれミクロドメインを形成し、自己組織的に相分離する。しかし、一般に数μm以上のマクロな相分離を示すポリマーブレンドとは異なり、ブロック共重合体は各成分が一本の高分子鎖内で共有結合で固定されている為、相分離のスケールが規制され、その相分離サイズは数ナノメートルから100ナノメートル程度となる。さらにこれらの相分離の形態は、各成分の組成比や相溶性により球状、シリンダー状、ラメラ状等に変化し、ミクロドメインの大きさも、鎖長や相溶性により制御することが出来る。
【0033】
このようなブロック共重合体を適当な溶媒に溶解した塗布溶液より成膜し、ブロック共重合体を構成している両成分(ポリマー)のガラス転移温度(Tg)以上で熱処理することにより、この温度で熱力学的に平衡なミクロドメイン構造を発現する。
【0034】
また、ブロック共重合体を溶融状態にし、Tg以上相転移温度以下の温度で熱処理しミクロ相分離構造を形成した後、室温でミクロ相分離構造を固定してもよい。この際、溶融時にホットプレス法や射出成形法などの方法により、所望の形状に成形しても良い。さらに、所望のミクロ相分離構造が形成された後に、架橋などにより、そのミクロ相分離構造を固定化することも可能である。
【0035】
図1は、本発明のブロック共重合体の一実施形態を示す構成図である。ブロック共重合体13は、イオン伝導性高分子からなるイオン伝導性ブロック12aと、非イオン伝導性高分子からなる非イオン伝導性ブロック11aからなる共重合体である。ブロック共重合体13は膜状態においてミクロ相分離構造を示し、イオン伝導性ブロック12aがシリンダー状ドメインを、非イオン伝導性ブロック11aが膜支持部位のマトリックスを形成する。
【0036】
ここで、本発明においては、ブロック共重合体13の主鎖骨格は脂肪族ビニル系からなる。一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれる類に分類される、主鎖が芳香環で共有結合したブロック共重合体は、そのTgが著しく高く、耐熱性が高いという利点がある一方、ミクロ相分離構造は一般にTg以上の熱処理を伴うため、そのミクロ相分離構造の制御は困難である。本発明は、比較的Tgが低い主鎖骨格が脂肪族ビニル系のポリマーからなり、前記エンジニアリングプラスチック系ポリマーと比較して低温におけるポリマー鎖の運動性も高いため、秩序性を持ったミクロ相分離構造を形成しやすく、特に後述するシリンダー構造を配向させる場合において効果的である。
【0037】
ブロック共重合体13における、イオン伝導性ブロック12aと非イオン伝導性ブロック11aの組成比は、イオン伝導性ブロックがシリンダー状のミクロ相分離構造を形成可能な組成比であればよい。シリンダー構造などミクロ相分離構造の形態は、組成比で決定される両成分の体積分率の比だけでなく、ブロック共重合体を構成する両成分の相溶性パラメーター(当該技術分野でχパラメーターという)や両成分の重合度などにも影響を受けるため、使用するブロック共重合体の化学構造(両ブロックの相溶性)や重合度に応じて、体積分率も決定すればよいが、一般的には、ブロック共重合体に含有されるイオン伝導性ブロックの体積分率は、5から30%、好ましくは10から30%が望ましい。イオン伝導性ブロックの体積分率が低くなる(一般的に約20%以下)とそのミクロ相分離構造は球構造となるが、熱処理および外場によりシリンダー構造へと転移させることができる。さらに、イオン伝導性ブロックの体積分率が5%未満では、一般に相分離構造の形成が難しくなり、また一方、イオン伝導性ブロックの体積分率が30%を超えると他の相分離形態(ジャイロイド、ラメラなど)が出現する。
【0038】
イオン伝導性ブロック12aを構成するイオン伝導性高分子は、イオン交換基を有し、かつ、脂肪族ビニル系ブロック共重合体が合成可能な物質であれば良く、特に限定されるものではない。またイオン交換基の量は、シリンダー構造を形成可能であれば良い。
【0039】
前記イオン交換基についても、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができるが、スルホン酸、カルボン酸、リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸が、特に好ましく用いられる。また、これらのポリマーには、1種類のイオン交換基が含まれていてもよく、あるいは、2種以上のイオン交換基が含まれていても良い。これらイオン交換基のポリマーへの導入法は特に限定されず、イオン交換基を含む単量体を重合してポリマー化してもよく、イオン交換基を含まないポリマーを合成した後に、高分子反応によりポリマー側鎖にイオン交換基を導入してもよい。
【0040】
例えば、スルホン酸基を有する単量体としては、分子内に1個以上のスルホン酸基を含んだエチレン性不飽和結合を有する単量体が好ましい例として挙げられる。具体的には、スルホン酸(塩)基含有スチレン、スルホン酸(塩)含有(メタ)アクリレート、スルホン酸(塩)含有(メタ)アクリルアミド、スルホン酸(塩)基含有ブタジエン、スルホン酸(塩)基含有イソプレン、スルホン酸(塩)基含有エチレン、スルホン酸(塩)基含有プロピレンなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0041】
さらに、電解質の膜強度の向上、寸法安定性や、相分離構造の明確化を促す為、これらの単量体にフッ素を導入した化合物、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸系、パーフルオロカーボンホスホン酸、トリフルオロスチレンスルホン酸等を用いてもよい。
【0042】
また、イオン交換基を含まないポリマーへの高分子反応によるスルホン酸基の導入方法としては、発煙硫酸、クロロスルホン酸、濃硫酸、環状スルトンなどによるスルホン化が挙げられるがこれらに限定されない。
【0043】
マトリックスを形成する非イオン伝導性ブロック11aのポリマーとしては、ブロック共重合体を合成可能であり、膜構造を形成することができるものであれば良く、特に限定されるものではない。非イオン伝導性ブロック11aは機能として膜支持および寸法安定性の役割を果たすことから、熱や水に対して形状変化が小さいものが好ましく、特に本発明においては、非イオン伝導性ブロック11aを構成するポリマーの室温からTgまでの線膨張係数が6.0×10-5/℃以下、好ましくは5.5×10-5/℃以下が望ましい。線膨張係数は、サーマルメカニカルアナライザー(TMA)により求められる。線膨張係数が大きいポリマーや吸水性の高いポリマーを非イオン伝導性ブロック11aのポリマーとして用いると、高温および加湿運転時に電解質膜の形状変化・膨潤が起こるため、好ましくない。
【0044】
このような非イオン伝導性ポリマーとしては、イオン交換基を有さない一般的な高分子、例えば、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン誘導体、共役ジエン、ビニルエステル化合物、マレイミドなどの単量体から合成される重合体が挙げられる。これら単量体の具体例としては、
スチレン、スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、アルコキシル、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル置換体;2,4−ジメチルスチレン、パラジメチルアミノスチレン、ビニルベンジルクロライド、ビニルベンズアルデヒド、インデン、1−メチルインデン、アセナフタレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルフルオレン等の重合性不飽和芳香族化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチルなどの不飽和モノカルボン酸エステル類;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸ヘプタフルオロブチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;γ−((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリプロポキシシランなどのアルコキシシラン含有(メタ)アクリレート類;トリメチルシロキサニルジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキサニル)シリルプロピル(メタ)アクリレートなどのシロキサニル化合物類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミン含有(メタ)アクリレート類;クロトン酸2−ヒドロキシエチル、クロトン酸2−ヒドロキシプロピル、ケイ皮酸2−ヒドロキシプロピルなどの不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類;(メタ)アリルアルコールなどの不飽和アルコール類;(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸−β−エチルグリシジル、α−エチルアクリル酸−β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
その他、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどのN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ポリカルボン酸(無水物)類;(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
これら単量体は単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。また、成膜した後に光などにより架橋可能な官能基を用いることにより、膜強度を向上させることもできる。
【0046】
上記単量体の重合により合成される非イオン伝導性ポリマーの中でも、機械的強度や前記線膨張係数の観点から、(メタ)アクリロニトリルまたは下記一般式(1)で表されるマレイミド類を共重合成分として1成分に含んだ共重合体が好ましい。
【0047】
【化1】

【0048】
(式中、R10は水素原子、炭素数1から20の炭化水素基から選ばれる置換基を表わす。R11、R12は水素原子、メチル基およびエチル基から選ばれる置換基を表わす。)
一般式(1)で表されるマレイミド誘導体化合物に含まれるR11とR12はについては、それぞれが同種であっても、異種であってもよい。
【0049】
10が炭化水素基である場合、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、オクタデシル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基などの分枝状アルキル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、メチルフェニル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基など各種の例を挙げることができる。
【0050】
さらに、R11、R12はおよびR10は、フッ素、塩素、臭素などのハロゲノ基、シアノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基などの各種置換基で置換されたものであってもよい。
【0051】
一般式(1)で示される化合物の具体例としては、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド、N−o−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−m−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−p−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−m−メトキシフェニルマレイミド、N−p−メトキシフェニルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミド、N−m−クロロフェニルマレイミド、N−p−クロロフェニルマレイミド、N−o−カルボキシフェニルマレイミド、N−p−カルボキシフェニルマレイミド、N−p−ニトロフェニルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミドなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0052】
係る(メタ)アクリロニトリルまたはマレイミド類は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の公知のビニル系単量体と共重合させることが好ましい。非イオン伝導性ブロック11aのポリマー鎖中に占める、これら(メタ)アクリロニトリルまたはマレイミド類の含有量は5から95モル%、好ましくは20から80モル%が好ましい。5モル%以下では寸法安定性に寄与する効果が小さく、95モル%以上では膜が脆くなる傾向がある。
【0053】
ブロック共重合体の合成方法は、特に制限はなく、モノマー種によるが、例えば、(1)イオン交換基を有する単量体を重合してイオン伝導性ブロック12aを合成した後、イオン伝導性を示さない単量体を共重合し、非イオン伝導性ブロック11aを合成する、(2)非イオン伝導性ブロック11aを合成した後、イオン交換基を有する単量体を共重合し、イオン伝導性ブロック12aを合成する、(3)イオン交換基を有するイオン伝導性ブロック12a、非イオン伝導性ブロック11aをそれぞれ独立に合成した後に高分子反応によりブロック化する、(4)両成分ともにイオン伝導性を有さないブロック共重合体を合成した後、片方の構成ブロックにイオン交換基の導入を行いイオン伝導性ブロック12aを形成する、などが挙げられ、用途や合成の簡便さに応じて任意に選択することができる。
【0054】
ここでブロック共重合体の合成法として、リビング重合法を用いると、ブロック鎖の重合度を自由に制御して共重合体を合成することが可能である。リビング重合法には、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、配位重合、リビングラジカル重合など様々な重合法がある。これらの重合法の中で、本発明を特に限定するものではないが、リビングラジカル重合法が好ましく用いられる。リビングラジカル重合法は近年様々な手法が開発されており、以下の様な例が挙げられる。
【0055】
例えば、Macromol.Chem.Rapid Commun.1982年,3巻,133頁に示されるイニファーター重合、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されるようなニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1995年、117巻、5614頁に示されるような有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1998年、31巻、5559頁に示される「RAFT:Reversible Addition−Fragmentation chain Transfer重合」などがあげられる。このような重合法を用いることにより、種々のビニルモノマーを重合することが可能である。
【0056】
本発明の一形態は、前記イオン伝導性ブロックが形成するシリンダー状ドメインが、電解質膜の厚さ方向と平行または略平行に配列してなる高分子電解質である。図2は、本発明の高分子電解質膜の一形態を示す概略構成図である。図2において、高分子電解質膜10は、イオン伝導性ブロック(図1の12a)および非イオン伝導性ブロック(図1の11a)から構成されるブロック共重合体からなり、非イオン伝導性ブロックが形成する膜支持部位のマトリックス11と、イオン伝導性ブロックが形成するシリンダー状ドメインからなるイオン伝導部12に相分離し、かつイオン伝導部12のシリンダー状ドメイン14が膜厚d方向に平行または略平行に配列した構造を有する。
【0057】
なお、本発明において、「イオン伝導部12のシリンダー状ドメイン」とは、ミクロ相分離により発現したシリンダー形状であることを示し、イオン伝導部のシリンダー状ドメイン14の断面形状が、円形、だ円形、波打った不定形などであってもよい。また「膜厚方向に平行または略平行に配列した構造」とは、シリンダー状ドメイン14の配列は直線状である必要はなく、膜厚方向に対して90゜未満の角度で傾斜していても、あるいはジグザグ状であっても、またシリンダー状ドメインがみみず状(Worm−like)に連結したドメイン構造であってもよいことを示す。つまり、シリンダー状ドメイン14は膜厚に対してほぼ平行方向に配向していればよいことを示す。
【0058】
イオン伝導部がシリンダー状に平行または略平行に配列した構造は、フィルムの超薄切片を切り出し、該切片をOsO4やRuO4で染色した後、透過型電子顕微鏡(以下TEM)で膜断面の観察を行うことにより確認することができる。
【0059】
前記シリンダー状ドメイン14の直径は、イオン伝導性ブロック及び非イオン伝導性ブロックの分子量やポリマー鎖長に依存する。ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)に特に制限はないが、Mn=1,000以上1,000,000以下のものが一般的に用いられ、一般的にこれらの分子量範囲においては、シリンダー状ドメイン14の直径は1nm以上200nm以下となる。
【0060】
このようなイオン伝導部のシリンダー状ドメイン14が、電解質膜の厚さ方向と平行または略平行に配列してなる電解質膜の作製方法について説明する。イオン伝導性ブロックと非イオン伝導性ブロックからなるブロック共重合体を適当な溶媒に溶解した塗布溶液より成膜し、ブロック共重合体を構成している両成分(ポリマー)のガラス転移温度(Tg)以上で熱処理することにより、この温度で熱力学的に平衡なミクロドメイン構造を発現する。また、ブロック共重合体を溶融状態にし、Tg以上相転移温度以下の温度で熱処理しミクロ相分離構造を形成した後、室温でミクロ相分離構造を固定してもよい。この際、溶融時にホットプレス法や射出成形法などの方法により、所望の形状に成形しても良い(相分離構造の作製)。
【0061】
また、この相分離構造の作製工程にさらに外場を加えることにより、ミクロ相分離構造はある一定方向に並んだ構造を形成する(一軸配向化)。なお本発明において、「外場」とは、電場、磁場、シェア、および溶媒存在下での熱処理などを指し、例えば、一軸配向の方法として、電解質膜に熱処理を行いながら電場、磁場、シェアなどの外場を加えることにより、一軸方向にイオン伝導部を配向させることができる。この場合、一軸配向が達成されれば、Tg以下の温度で熱処理を行いながら外場を印加してもよい。また、成膜した後、外場を印加しなくても一軸配向が達成できる場合には、もちろん、この一軸配向処理の工程は不要である。
【0062】
かかるシリンダー構造が膜厚方向と平行または略平行に配列した構造を形成する場合においては、本発明の主鎖骨格が脂肪族ビニル系のブロック共重合体が、Tgが比較的低く、かつポリマー鎖の運動性も高いため、秩序性を持ったミクロ相分離構造を形成する上で、特に好適である。
【0063】
次に、本発明の形態に係る電解質膜の作用について説明する。本発明における電解質膜では、イオン伝導性ブロックが形成するイオン伝導部と、非イオン伝導性ブロックが形成する膜支持部位のマトリックスとに相分離した構造を有する。そのため、イオン伝導部内では、イオン伝導に有効に寄与するイオン交換基の割合が高く、またイオン伝導部のドメイン内に低湿度時でも多くの水を含むことから、イオン伝導率が高く、また湿度の影響が小さい電解質膜を得ることができる。また、非イオン伝導性ブロックが形成するマトリックスは、熱や水による形状変化が小さいため、寸法安定性に優れ、高強度および高イオン伝導率の両立が可能となる。
【0064】
さらに、前記電解質膜では、イオン伝導部が電解質膜の膜厚方向に対してほぼ平行方向に配向していることにより、イオン伝導部が電解質膜の両側に設けられる電極間が最短のイオン移動経路でつながることになる。そのため、イオン伝導効率がさらに向上し、高イオン伝導度が得られる。またイオン伝導部内の水の拡散速度が向上し、カソードで発生した水を膜内にすばやく均一に分布させることが可能となる。これにより、カソードにおけるフラッディングを抑制するとともに、低加湿下においても膜の乾燥を抑え、湿度に依存しないイオン伝導率特性を得ることができる。
【0065】
上述した本発明の高分子電解質膜に、電極を配置することにより、本発明の一形態である膜−電極接合体を作製することができる。この膜−電極接合体は、本発明の高分子電解質と、それを挟んで対向する触媒電極(アノードおよびカソード)から構成され、該触媒電極はガス拡散層上に触媒層が形成されている。この接合体の作製方法としては特に制限はなく、公知の技術を用いることができ、例えば、白金、白金−ルテニウム合金、あるいはその微粒子をカーボンなどの担持体上に分散担持させたものを触媒とするガス拡散電極を高分子電解質膜に直接形成する方法、ガス拡散電極と高分子電解質膜をホットプレスする方法、あるいは、接着液により接合する方法などの方法により作製できる。
【0066】
また、本発明の高分子電解質膜および前記膜−電極接合体を用いて、公知の手法により燃料電池を作製することができる。該燃料電池の構成の一例としては、前記膜−電極接合体、該膜−電極接合体を挟持する一対のセパレータ、セパレータに取り付けられた集電体およびパッキンとを備える構成が挙げられる。アノード極側のセパレータにはアノード極側開口部が設けられ、水素、メタノール等のアルコール類のガス燃料または液体燃料が供給される。一方、カソード極側のセパレータにはカソード極側開口部が設けられ、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
【0067】
前記高分子電解質膜を用いて燃料電池を作製することにより、補機による電解質の加湿を行わない場合や低加湿の場合においても、高い出力が長期間に渡って安定して得られるため、燃料電池の小型化が可能となる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。まず、以下の手順により各種ポリマーを合成した。
合成例1
マレイミドを含む共重合体からなる非イオン伝導性ブロックとスルホン酸含有ブロックとで構成されるブロック共重合体(BP−1)の合成
窒素雰囲気下で、臭化銅0.3ミリモル、ペンタメチルジエチレントリアミン0.3ミリモル、メチル2−ブロモプロピオネート0.3ミリモル、tert−ブチルアクリレート(tBA)60ミリモルを混合し、窒素で溶存酸素を置換した後、70℃で反応を行った。ガスクロマトグラフィーにより重合率を確認しながら反応を行い、液体窒素で急冷して反応を停止した。得られたポリtBAの分子量をGPCにより確認した結果、Mn=15,500、Mw/Mn=1.07であった。
【0069】
次いで、得られた臭素を末端に有するポリtBA0.4ミリモル、臭化銅(I)0.4ミリモル、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン0.4ミリモル、スチレン(St)600ミリモル、フェニルマレイミド(PhMI)500ミリモルを混合、窒素置換した。100℃で反応を行った後、液体窒素で急冷し、反応を停止した。メタノールへの再沈澱による精製の後、得られたPtBA−b−(PSt−r−PPhMI)[rはランダム共重合体であることを示す]の分子量をGPCで確認した結果、Mn=81,700、Mw/Mn=1.31であった。この結果より、各ブロックの分子量は、PtBAブロックが15,500、PSt−PPhMI共重合体ブロックが66,200と計算され、1H−NMRのピーク積分値比より求められる両ブロックの組成比と良く一致した。
【0070】
次いで、得られたブロック共重合体をテトラヒドロフラン(THF)中、室温でトリフルオロ酢酸(tert−ブチル基に対して5当量)と混合することによりPtBAセグメントのtert−ブチル基の脱保護反応を行いカルボン酸へと変換し、ポリアクリル酸−b−(ポリスチレン−r−ポリフェニルマレイミド)(PAA−b−(PSt−r−PPhMI))を得た。さらに、PAA−b−(PSt−r−PPhMI)をTHFに溶解し、水素化ナトリウム(カルボン酸に対して10当量)および1,3−プロパンスルトン(カルボン酸に対して20当量)を加え、加熱還流を行い、PAAセグメントのスルホン化を行うことで、スルホン酸基含有ブロックとスチレン−マレイミド共重合体を非イオン伝導性ブロックとするブロック共重合体(BP−1)を得た。非イオン伝導性ブロック中のスチレン−マレイミド共重合体中においてマレイミド導入率は50%(モル分率)であり、BP−1におけるスルホン酸含有ブロックの体積分率は26%であった。このブロック共重合体BP−1の構造式を以下に示す。
【0071】
【化2】

【0072】
合成例2
マレイミドを含む共重合体からなる非イオン伝導性ブロックとポリスチレンスルホン酸ブロックとで構成されるブロック共重合体(BP−2)の合成
窒素雰囲気下でスチレン300ミリモル、1−ブロモエチルベンゼン1.0ミリモル、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン2.0ミリモル、臭化銅(I)2.0ミリモルを混合し、この混合溶液を窒素で溶存酸素を置換した後、110℃で反応を行った。ガスクロマトグラフィーにより重合率を確認しながら反応を行い、液体窒素で急冷して反応を停止した。得られたポリStの分子量をGPC測定で確認した結果、Mn=20,100、Mw/Mn=1.18であった。
【0073】
次いで、得られた臭素を末端に有するポリSt0.4ミリモル、塩化銅(I)0.4ミリモル、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン0.4ミリモル、メタクリル酸メチル(MMA)400ミリモル、シクロへキシルマレイミド(CHMI)500ミリモル、アニソール10gを混合、窒素置換した。90℃で反応を行った後、液体窒素で急冷し、反応を停止した。メタノールへの再沈澱による精製の後、得られたPSt−b−(PMMA−r−PCHMI)の分子量をGPCで確認した結果、Mn=84,700、Mw/Mn=1.29であった。この結果より、各ブロックの分子量は、PStブロックが20,100、PMMA−PCHMI共重合体ブロックが64,600と計算され、1H−NMRのピーク積分値比より求められる両ブロックの組成比と良く一致した。
【0074】
さらに、反応容器にジオキサン5gを入れ、これに無水硫酸0.5gを内温を25℃に保ちながら添加し、2時間攪拌して無水硫酸−ジオキサン錯体を得た。また、別の反応容器に、前記ブロック共重合体PSt−b−(PMMA−r−PCHMI)1.3gをテトラヒドロフラン4.0gに溶解させた。この中に、内温を25℃に保ちながら無水硫酸−ジオキサン錯体を添加し、2時間攪拌することで、ポリスチレンのみをスルホン化し、ポリスチレンスルホン酸ブロックとMMA−CHMI共重合体を非イオン伝導性ブロックとしたBP−2を得た。非イオン伝導性ブロック中のメタクリル酸メチル−マレイミド共重合体中においてマレイミド導入率は50%(モル分率)であり、ブロック共重合体中におけるポリスチレンスルホン酸の体積分率は29%であった。このブロック共重合体BP−2の構造式を以下に示す。
【0075】
【化3】

【0076】
合成例3
アクリロニトリルを含むイオン伝導性を示さないブロックとスルホン酸含有ブロックとからなるブロック共重合体(BP−3)の合成
窒素雰囲気下で、臭化銅0.6ミリモル、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン0.6ミリモル、1−ブロモエチルベンゼン0.3ミリモル、tert−ブトキシスチレン(tBOS)40ミリモルを混合し、窒素で溶存酸素を置換した後、110℃で反応を行った。ガスクロマトグラフィーにより重合率を確認しながら反応を行い、液体窒素で急冷して反応を停止した。得られたポリtBOSの分子量をGPCにより確認した結果、Mn=11,400、Mw/Mn=1.15であった。
【0077】
次いで、得られた臭素を末端に有するポリtBOS0.4ミリモル、臭化銅(I)0.4ミリモル、ペンタメチルジエチレントリアミン0.4ミリモル、メチルメタクリレート(MMA)300ミリモル、アクリロニトリル(AN)300ミリモルを溶媒であるアニソールに溶解・混合し、窒素置換した。90℃で反応を行った後、液体窒素で急冷し、反応を停止した。メタノールへの再沈澱による精製の後、得られたPtBOS−b−(PMMA−r−PAN))の分子量をGPCで確認した結果、Mn=53,200、Mw/Mn=1.22であった。この結果より、各ブロックの分子量は、PtBOSブロックが11,400、PMMA−r−PAN共重合体ブロックが41,800と計算され、1H−NMRのピーク積分値比より求められる両ブロックの組成比と良く一致した。
【0078】
次いで、得られたブロック共重合体PtBOS−b−(PMMA−r−PAN))をTHFを溶媒として、8.6N臭化水素酸(tert−ブトキシ基に対して3当量)と60℃で反応させることによりPtBOSセグメントのtert−ブトキシ基の脱保護反応を行ってフェノールへと変換し、ポリビニルフェノール−b−(ポリメチルメタクリレート−r−ポリアクリロニトリル)(PVPh−b−(PMMA−r−PAN))を得た。さらに、PVPh−b−(PMMA−r−PAN)をTHFに溶解し、水素化ナトリウム(水酸基に対して10当量)および1,4−ブタンスルトン(フェノールに対して20当量)を加え、加熱還流を行い、PVPhセグメントのスルホン化を行うことで、スルホン酸基をイオン交換基としたスルホン酸含有ブロックとMMA−AN共重合体を非イオン伝導性ブロックとしたブロック共重合体(BP−3)を得た。非イオン伝導性ブロック中のメタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体中においてアクリロニトリルは35%(モル分率)であり、ブロック共重合体中におけるスルホン酸含有ブロックの体積分率は29%であった。このブロック共重合体BP−3の構造式を以下に示す。
【0079】
【化4】

【0080】
合成例4
ポリスチレンスルホン酸−r−ポリメタクリル酸メチルの合成(RP−1)
スチレンスルホン酸エチルエステル2.5g、メタクリル酸メチル4.5g、ジメチルホルムアミド2.5g、アゾイソブチロニトリル60mgを加え、100℃で2時間重合を行った。これをトルエンに再沈殿することによりランダム共重合体を得た。GPC測定によりRP−1の分子量を測定したところ、Mn=93,000であった。
【0081】
さらに得られたランダム共重合体に1.5M炭酸アンモニウム水溶液、ジメチルホルムアミドを加え、加熱還流を行い、エチルエステルの脱保護を行い、目的のランダム共重合体ポリスチレンスルホン酸−r−ポリメタクリル酸メチル(RP−1)を得た。RP−1におけるポリスチレンスルホン酸の体積分率は28%であった。
【0082】
実施例1
合成例1で得たスルホン酸基をイオン交換基としたブロック共重合体BP−1を固形分濃度20wt%となるようにジメチルホルムアミドに溶解し、キャスト法によりガラス基板上に膜厚50μmの膜を成膜した。さらにこの基板を160℃で10時間加熱することにより、電解質膜を作製した。電解質膜断面のTEM観察を行った結果、イオン伝導部がシリンダー状でランダムに並んだミクロ相分離構造が認められた。
【0083】
得られた電解質膜について両側から白金板を押し当て、周波数1kHzの交流2端子法により電解質膜の抵抗を測定した結果、温度50℃、相対湿度50%におけるイオン伝導度は0.02S・cm-1であった。
【0084】
また、別途合成した非イオン伝導性ブロックを構成成分であるスチレン−フェニルマレイミド共重合体の線膨張係数を、セイコー電子製TMA100を用いて、引張りモード、5g荷重、5℃/minの昇温速度で測定したところ、5.3×10-5/℃であった。結果を表1にまとめた。
【0085】
実施例2
合成例1で得たBP−1を固形分濃度20wt%となるようにプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶解し、ディップコートによりPt基板上に膜厚30μmの膜を成膜した。さらにこの基板上にPt基板でPt/BP−1/Ptとなるように挟み込み、40V/μmとなるように電界をかけ、160℃で10時間加熱することにより、電解質膜を作製した。電解質膜断面のTEM観察を行った結果、イオン伝導部が電解質膜の厚さ方向に対して平行に一軸配向したミクロ相分離構造が認められた。
【0086】
得られた電解質膜について両側から白金板を押し当て、周波数1kHzの交流2端子法により電解質膜の抵抗を測定した結果、温度50℃、相対湿度50%におけるイオン伝導度は0.05S・cm-1であった。結果を表1にまとめた。
【0087】
実施例3
合成例2で得たBP−2を固形分濃度20wt%となるようにプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶解し、ディップコートによりPt基板上に膜厚30μmの膜を成膜した。さらにこの基板上にPt基板でPt/BP−2/Ptとなるように挟み込み、40V/μmとなるように電界をかけ、160℃で10時間加熱することにより、電解質膜を作製した。電解質膜断面のTEM観察を行った結果、イオン伝導部が電解質膜の厚さ方向に対して平行に一軸配向したミクロ相分離構造が認められた。
【0088】
得られた電解質膜について両側から白金板を押し当て、周波数1kHzの交流2端子法により電解質膜の抵抗を測定した結果、温度50℃、相対湿度50%におけるイオン伝導度は0.03S・cm-1であった。
【0089】
また、別途合成した非イオン伝導性ブロックを構成成分であるメタクリル酸メチル−シクロへキシルマレイミド共重合体の線膨張係数を、セイコー電子製TMA100を用いて、引張りモード、5g荷重、5℃/minの昇温速度で測定したところ、5.4×10-5/℃であった。結果を表1にまとめた。
【0090】
実施例4
合成例3で得たBP−3を固形分濃度20wt%となるようにジメチルホルムアミドに溶解し、ディップコートによりPt基板上に膜厚30μmの膜を成膜した。さらにこの基板上にPt基板でPt/BP−3/Ptとなるように挟み込み、40V/μmとなるように電界をかけ、160℃で10時間加熱することにより、電解質膜を作製した。電解質膜断面のTEM観察を行った結果、イオン伝導部が電解質膜の厚さ方向に対して平行に一軸配向したミクロ相分離構造が認められた。
【0091】
得られた電解質膜について両側から白金板を押し当て、周波数1kHzの交流2端子法により電解質膜の抵抗を測定した結果、温度50℃、相対湿度50%におけるイオン伝導度は0.04S・cm-1であった。
【0092】
また、別途合成した非イオン伝導性ブロックを構成成分であるメタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体の線膨張係数を、セイコー電子製TMA100を用いて、引張りモード、5g荷重、5℃/minの昇温速度で測定したところ、5.6×10-5/℃であった。結果を表1にまとめた。
【0093】
比較例1
合成例4で得たRP−1を固形分濃度20wt%となるようにジメチルホルムアミドに溶解し、キャスト法によりガラス基板上に膜厚50μmの膜を成膜し、ホットプレート上、100℃で1時間乾燥した。この膜は、ブロック共重合体ではなくランダム共重合体からなる電解質膜である。得られた電解質膜断面のTEM観察を行ったが、相分離構造は確認されなかった。
【0094】
得られた電解質膜について両側から白金板を押し当て、周波数1kHzの交流2端子法により電解質膜の抵抗を測定した結果、温度50℃、相対湿度50%におけるイオン伝導度は0.001S・cm-1であった。
【0095】
また、別途合成した非イオン伝導性のポリメタクリル酸メチルの線膨張係数を、セイコー電子製TMA100を用いて、引張りモード、5g荷重、5℃/minの昇温速度で測定したところ、7.2×10-5/℃であった。結果を表1にまとめた。
【0096】
【表1】

【0097】
(注)表中の非イオン伝導性ブロックの線膨張係数は、25℃から100℃までの測定における線膨張係数の値を示す。
実施例5
膜−電極接合体、および燃料電池セルの作製方法の一例を以下に示す。
【0098】
触媒粉末として、HiSPEC1000(登録商標、ジョンソン&マッセイ社製)を使用し、電解質溶液としてはNafion溶液(登録商標、デュポン社製)を使用した。まず、触媒粉末と電解質溶液の混合分散液を作製し、ドクターブレード法を用いてPTFEシート上に成膜し、触媒シートを作製した。次に、作製した触媒シートをデカール法によって、150℃、9.8×106Pa(100kgf/cm2)で、実施例2で得たBP−1の一軸配向処理を行った電解質膜上にホットプレス転写し、膜−電極接合体を作製した。さらに、その膜−電極接合体をカーボンクロス電極(E−TEK社製)で挟持した後、集電体で挟んで締結し、燃料電池を作製した。
【0099】
作製した燃料電池を用いて、アノード側に水素ガスを注入速度300ml/minで、カソード側には空気を供給し、セル出口圧力を大気圧、相対湿度をアノード、カソードともに50%、セル温度を50℃とした。電流密度300mA/cm2で放電試験を行ったところ、初期のセル電位は490mVであった。この電池出力性能の安定性を確認したところ、1週間以上運転を継続した後のセル電位は、初期値の99%とほとんど変わらず、出力は安定していた。また、1週間の運転後も電解質の膨潤・劣化は目視で確認されなかった。
【0100】
比較例2
合成例4で得られたランダム共重合体RP−1からなる電解質膜を用いた以外は実施例5と同様の条件で燃料電池を作製、運転を行い、電池出力性能の安定性を確認したところ、1週間後には初期セル電位の46%の電位を示し、出力の大幅な低下が見られた。また、1週間の運転後、電解質は一部クラックが見られ、劣化していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明におけるブロック共重合体の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の高分子電解質膜の一実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0102】
10 高分子電解質膜
11 マトリックス
12 イオン伝導部
13 ブロック共重合体
14 シリンダー状ドメイン
11a 非イオン伝導性ブロック(マトリックスポリマー)
12a イオン伝導性ブロック(イオン伝導性高分子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性ブロックと非イオン伝導性ブロックから構成される脂肪族ビニル系ブロック共重合体からなる電解質膜であって、かつ非イオン伝導性ブロックを構成するポリマーの25℃からガラス転移温度までの線膨張係数が6.0×10-5/℃以下であることを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項2】
前記イオン伝導性ブロックがシリンダー状ドメインを形成することを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項3】
前記イオン伝導性ブロックが、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基または亜ホスホン酸基からなる群から選択される少なくとも1つのイオン交換基を有するポリマーからなる請求項1または2に記載の高分子電解質膜。
【請求項4】
前記非イオン伝導性ブロックを構成するポリマーが、繰り返し単位としてマレイミド構造及び/又はアクリロニトリル構造が含まれる共重合体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の高分子電解質膜。
【請求項5】
前記イオン伝導性ブロックが形成するシリンダー状ドメインが、電解質膜の厚さ方向と平行または略平行に配列してなることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかの項に記載の高分子電解質膜。
【請求項6】
イオン伝導性ブロックを有するブロック共重合体を成膜する工程、成膜したブロック共重合体のイオン伝導性ブロックが形成するシリンダー状ドメインを一軸配向させて、電解質膜の厚さ方向に配列したイオン伝導部を形成する工程を有することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。
【請求項7】
前記成膜したブロック共重合体を加熱処理および外場を印加してイオン伝導性ブロックが形成するシリンダー状ドメインを一軸配向させる請求項5に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の高分子電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体。
【請求項9】
前記高分子電解質膜のイオン伝導部が電極面に対して垂直または略垂直な方向に配列していることを特徴とする請求項8に記載の膜電極接合体。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれかに記載の高分子電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体を備えた燃料電池。
【請求項11】
前記高分子電解質膜のイオン伝導部が、電極面に対して垂直または略垂直な方向に配列している請求項10に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−329106(P2007−329106A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161525(P2006−161525)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】