説明

高分子電解質、高分子電解質膜およびポリアリーレン系化合物

【課題】良好な発電性と長期安定性の燃料電池を実現する高分子電解質膜が得られる高分子電解質を提供する。
【解決手段】ポリアリーレン系化合物を含有することを特徴とする高分子電解質。ポリアリーレン系化合物が窒素原子と硫黄原子とを含む6員環を有する2価の芳香族基であることを特徴とする高分子電解質。ポリアリーレン系化合物が−S−で示される基、−SO−で示される基および−S+=で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む6員環を有する2価の芳香族基である高分子電解質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質、高分子電解質膜およびポリアリーレン系化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(以下、「燃料電池」と略記することがある。)は、水素と酸素の電気化学的反応を利用した発電装置であり、燃料電池に使用される高分子電解質膜として、フッ素系高分子電解質膜や炭化水素系高分子電解質膜が注目されている。
【0003】
ところで、フッ素系高分子電解質膜や炭化水素系高分子電解質膜を用いた燃料電池は、長期運転を行った場合の運転安定性(以下、「長期安定性」と呼ぶことがある)が必ずしも十分でないことが指摘されている。この長期安定性を妨げる要因の1つとして、電池稼動時に発生する過酸化物(例えば、過酸化水素等)又は該過酸化物から発生するラジカルによる膜の劣化が知られている。それゆえ、高分子電解質膜の過酸化物やラジカルに対する耐久性(以下、「ラジカル耐性」と呼ぶことがある)を向上させることが、固体高分子型燃料電池の長期安定性の向上に繋がるとされている。
【0004】
このようなラジカル耐性を向上させた高分子電解質膜として、特許文献1には、スルホン化ポリマーと、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよびビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトからなる酸化防止剤とを含む高分子電解質組成物からなる高分子電解質膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−201403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の高分子電解質膜を用いた燃料電池は、電池の起動と停止を繰り返すような長期運転を行なうと、ラジカルによる高分子電解質膜の劣化により、イオン伝導性が低下し易く、結果として燃料電池自体の発電性能が低下し易い。
そこで、本発明の目的は、発電性と長期安定性の良好な燃料電池を実現する高分子電解質膜が得られる高分子電解質、該高分子電解質を用いた燃料電池部材、長期安定性に優れた固体高分子型燃料電池および該高分子電解質に有用な安定化剤となり得るポリアリーレン系化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は下記[1]〜[14]を提供する。
[1]下記式(1)で示される基および下記式(2)で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有するポリアリーレン系化合物を含有することを特徴とする高分子電解質。

−Y01−A−B 式(1)

(式(1)中、Aは窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上の原子を含む6員環を有する2価の芳香族基を表す。該2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。Y01は直接結合または下記式(1−1)〜(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。Bは、水素原子、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)

−Y02−A−Y03− 式(2)

(式(2)中、Aは上記と同義である。Y02およびY03はそれぞれ同一または相異なり直接結合または下記式(1−1)〜(1−3)、(1−5)〜(1−7)、(1−9)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。)



(式(1−1)中、Ar01は置換基を有していてもよい炭素数3〜20の2価の芳香族基を表す。式(1−3)および(1−5)〜(1−7)中、R01は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20の1価の芳香族基を表わす。)
[2]上記Aが、窒素原子と硫黄原子とを含む6員環を有する2価の芳香族基であることを特徴とする[1]に記載の高分子電解質。
[3]上記Aが、−S−で示される基、−SO−で示される基および−S=で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む6員環を有する2価の芳香族基であることを特徴とする[1]または[2]に記載の高分子電解質。
[4]上記式(1)が、下記式(3)で示されることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子電解質。



(式(3)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y01、Bはそれぞれ上記と同義である。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R001〜R006はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。)
[5]上記式(1)が、下記式(4)で示されることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子電解質。



(式(4)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y04は直接結合または上記式(1−1)、(1−2)、(1−5)〜(1−7)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。R008〜R014はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。Bは上記と同義である。)
[6]上記式(2)が、下記式(5)で示されることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子電解質。



(式(5)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R001〜R006はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。Y02およびY03はそれぞれ上記と同義である。)
[7]上記式(2)が、下記式(6)で示されることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子電解質。



(式(6)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y03は上記と同義である。Y04は直接結合もしくは上記式(1−1)、(1−2)、(1−5)〜(1−7)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。R008〜R014はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)
[8]さらに、イオン交換基を有する芳香族炭化水素系高分子を含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の高分子電解質。
[9]さらに、イオン交換基を有するフッ素系高分子を含有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の高分子電解質。
[10][1]〜[9]のいずれかに記載の高分子電解質を含有することを特徴とする高分子電解質膜。
[11][1]〜[9]のいずれかに記載の高分子電解質と、触媒成分とを含有することを特徴とする触媒組成物。
[12][10]に記載の高分子電解質膜および[11]に記載の触媒組成物からなる群より選ばれる1種以上を有することを特徴とする膜電極接合体。
[13][12]に記載の膜電極接合体を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池。
[14]下記式(7)で示される構造単位を有することを特徴とするポリアリーレン系化合物。



(式(7)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R015〜R022はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。Ar02は置換基を有していてもよい炭素数3〜30の3価の芳香族基を表す。)
[15]イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位を有することを特徴とする[14]に記載のポリアリーレン系化合物。
[16]イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位が下記式(9)で示されることを特徴とする[15]に記載のポリアリーレン系化合物。



(式(9)中、rは1〜4の整数を表す。Q01はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。R033は水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)
[17]下記式(10)で示される構造単位並びにイオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位とを有することを特徴とするポリアリーレン系化合物。



(式(10)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R001〜R006はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。)
[18]イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位が下記式(11)で示されることを特徴とする[17]に記載のポリアリーレン系化合物。



(式(11)中、rは1〜4の整数を表す。Q01はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。R033は水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の高分子電解質を用いることで、ラジカル耐性に優れた高分子電解質膜等の燃料電池用部材を得ることができる。かかる燃料電池用部材を備えた燃料電池は長期安定性に優れるので、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の高分子電解質に係る好適な実施態様について具体的に説明する。
【0010】
本発明の高分子電解質は、下記式(1)で示される基および下記式(2)で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有するポリアリーレン系化合物を含有することを特徴とする。

−Y01−A−B 式(1)

(式(1)中、Aは窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上の原子を含む6員環を有する2価の芳香族基を表す。該2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。Y01は直接結合または下記式(1−1)〜(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。Bは、水素原子、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)

−Y02−A−Y03− 式(2)

(式(2)中、Aは上記式(1)におけるAと同義である。Y02およびY03はそれぞれ同一または相異なり直接結合または下記式(1−1)〜(1−3)、(1−5)〜(1−7)、(1−9)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。)



(式(1−1)中、Ar01は置換基を有していてもよい炭素数3〜20の2価の芳香族基を表す。式(1−3)および(1−5)〜(1−7)中、R01は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20の1価の芳香族基を表わす。)
【0011】
本発明のポリアリーレン系化合物は、主鎖を構成している芳香環同士が直接結合で結合されている形態であり、ポリマー主鎖を構成している芳香環同士の結合の総数に対する直接結合が多いほど、燃料電池用電解質としての耐久性の向上がより高度に図れる傾向があるため好ましい。具体的にいうと、前記ポリアリーレン系化合物中、直接結合の数が3個以上の構造であると好ましく、10個以上の構造であるとより好ましく、50個以上の構造であるとさらに好ましく、100個以上の構造であると特に好ましい。なお、直接結合以外の結合とは、芳香環同士が2価の原子又は2価の原子団で結合している形態である。2価の原子としては、例えば、−O−で示される基、−S−で示される基などがあげられ、2価の原子団としては、例えば、−C(CH32−で示される基、−C(CF32−で示される基、−CH=CH−で示される基、−SO2−で示される基、−CO−で示される基などがあげられる。ここで、「ポリマー主鎖」とは、本発明においては、ポリマーを形成する最も長い鎖のことをいう。この鎖は共有結合により相互に結合した炭素原子から構成されていて、その際、この鎖は、窒素原子、酸素原子等により中断されていてもよい。また、「ポリマーの主鎖を構成している芳香環」とは、芳香族環の有する結合手のうち、2本がポリマーの主鎖の一部を構成している芳香環のことをいう。
【0012】
上記式(1)におけるAは、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上の原子を有する。硫黄原子を有する場合、硫黄原子を有する基の構造については、−S−で示される基、−S=で示される基、または−SO−で示される基があげられる。好ましくは、−S−で示される基または−SO−で示される基であり、特に好ましくは−S−で示される基である。
【0013】
上記Aは窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上の原子を含む6員環を有する2価の芳香族基を表す。具体的には、フェノチアジン、フェノチアジン誘導体(10-フェニルフェノチアジン、10-(3−フルオロフェニル)フェノチアジン、N-ベンゾイルフェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、2−メチルチオフェノチアジン、2-エチルチオフェノチアジン、2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン、10−メチルフェノチアジン、フェノチアジン−5−オキサイド、ベンゾイルロイコメチレンブルー、エトプロパジンなど)、3−フェノチアゾン、アズールB、アズールII、メチレンブルー、ベーシックグリーン5、チオニンクロライド、チオニンアセテート、ベーシックブルー17、8‐メルカプトキノリン、2‐メルカプトピリジン N‐オキシド、2‐(メチルチオ)ピリジン、2‐エチル‐3‐(メチルチオ)ピラジン、2‐メチルメルカプト‐3‐メチルピラジン、2‐(メチルチオ)ピラジン、2‐メルカプトピリミジン、6‐メルカプトプリン、3‐(メチルチオ)ピリダジン、2‐チオニルピリジン、4‐(メチルスルフィニル)ピリジン、4‐(メチルスルフィニル)ピリジン、4‐ピリジルフェニルスルホキシドから芳香環上の水素原子を2個取り去って得られる基をあげることができる。
【0014】
が窒素原子と硫黄原子とを含む6員環を有する2価の芳香族基であることが好ましく、縮合環構造を有するものがさらに好ましい。Aで表される2価の芳香族基としては、具体的には、フェノチアジン、フェノチアジン誘導体(10-フェニルフェノチアジン、10-(3−フルオロフェニル)フェノチアジン、N-ベンゾイルフェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、2−メチルチオフェノチアジン、2-エチルチオフェノチアジン、2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン、10−メチルフェノチアジン、フェノチアジン−5−オキサイド、ベンゾイルロイコメチレンブルー、エトプロパジンなど)、3−フェノチアゾン、アズールB、アズールII、メチレンブルー、ベーシックグリーン5、チオニンクロライド、チオニンアセテート、ベーシックブルー17から芳香環上の水素原子を2個取り去って得られる基をあげることができる。
【0015】
また、上記Aで表される、2価の芳香族基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基をあげることができる。好ましくは、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、ホルミル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基であり、より好ましくは、シアノ基、カルボキシ基、ホルミル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基であり、よりさらに好ましくは、カルボキシ基、ホルミル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基であり、特に好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基である。
【0016】
2価の芳香族基が有していてもよい置換基としてのハロゲノ基の例としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基があげられ、好ましくはフルオロ基があげられる。
【0017】
上記の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基として、直鎖状または分岐鎖状アルキル基があげられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロメチル基などがあげられる。
【0018】
上記の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の例示の群より選ばれるアルキル基で水酸基の水素原子を置換した基などがあげられる。
【0019】
上記の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の例示の群より選ばれるアルキル基でメルカプト基の水素原子を置換した基があげられる。
【0020】
上記の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の例示の群より選ばれるアルキル基でアミノ基の1つの水素原子を置換した基があげられる。
【0021】
上記の置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の例示の群より選ばれる2つのアルキル基でアミノ基の2つの水素原子を置換した基があげられる。
【0022】
上記の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基として、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o-エトキシフェニル基、m-エトキシフェニル基、p-エトキシフェニル基、o−フェノキシフェニル基、m−フェノキシフェニル基、p−フェノキシフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−アミノフェニル基、m−アミノフェニル基、p−アミノフェニル基、ビフェニル基などの単環性アリール基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラシル基、2−アントラシル基、4−アントラシル基などの縮環系アリール基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、4−ピリジル基、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、1−ピラゾリル基、3−ピラゾリル基、2−ピラゾリル基などのヘテロアリール基などがあげられる。好ましくは、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o-エトキシフェニル基、m-エトキシフェニル基、p-エトキシフェニル基、o−フェノキシフェニル基、m−フェノキシフェニル基、p−フェノキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−アミノフェニル基、m−アミノフェニル基、p−アミノフェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラシル基、2−アントラシル基、4−アントラシル基、3−チエニル基、2−チエニル基があげられる。
【0023】
上記の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の例示の群より選ばれるアリール基で水酸基の水素原子を置換した基などがあげられる。その好ましい例は前述のアリール基の好ましい例示の群より選ばれるアリール基で水酸基の水素原子を置換した基などがあげられる。
【0024】
上記の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の例示の群より選ばれるアリール基でアミノ基の1つの水素原子を置換した基があげられる。その好ましい例は前述のアリール基の好ましい例示の群より選ばれるアリール基でアミノ基の1つの水素原子を置換した基などがあげられる。
【0025】
上記の置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の例示の群より選ばれる2つのアリール基でアミノ基の2つの水素原子を置換した基などがあげられる。その好ましい例は前述のアリール基の好ましい例示の群より選ばれるアリール基でアミノ基の2つの水素原子を置換した基などがあげられる。
【0026】
上記の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の例示の群より選ばれるアリール基でメルカプト基の水素原子を置換した基などがあげられる。その好ましい例は前述のアリール基の好ましい例示の群より選ばれるアリール基でメルカプト基の水素原子を置換した基などがあげられる。
【0027】
上記の置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の例示の群より選ばれるアルキル基でホルミル基の水素原子を置換した基があげられる。
【0028】
上記の置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の例示の群より選ばれるアリール基でホルミル基の水素原子を置換した基などがあげられる。その好ましい例は前述のアリール基の好ましい例示の群より選ばれるアリール基でホルミル基の水素原子を置換した基などがあげられる。
【0029】
上記の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基として、フェニルスルホニル基、o−メチルフェニルスルホニル基、m−メチルフェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基、o−メトキシフェニルスルホニル基、m−メトキシフェニルスルホニル基、p−メトキシフェニルスルホニル基、o-エトキシフェニルスルホニル基、m-エトキシフェニルスルホニル基、p-エトキシフェニルスルホニル基、o−フェノキシフェニルスルホニル基、m−フェノキシフェニルスルホニル基、p−フェノキシフェニルスルホニル基、o−クロロフェニルスルホニル基、m−クロロフェニルスルホニル基、p−クロロフェニルスルホニル基、o−ニトロフェニルスルホニル基、m−ニトロフェニルスルホニル基、p−ニトロフェニルスルホニル基、o−アミノフェニルスルホニル基、m−アミノフェニルスルホニル基、p−アミノフェニルスルホニル基、ビフェニルスルホニル基などの単環性アリールスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基、1−アントラシルスルホニル基、2−アントラシルスルホニル基、4−アントラシルスルホニル基などの縮環系アリールスルホニル基、3−ピリジルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基、4−ピリジルスルホニル基、1−ピロリルスルホニル基、2−ピロリルスルホニル基、3−ピロリルスルホニル基、3−チエニルスルホニル基、2−チエニルスルホニル基、1−イミダゾリルスルホニル基、2−イミダゾリルスルホニル基、4−イミダゾリルスルホニル基、2−チアゾリルスルホニル基、4−チアゾリルスルホニル基、5−チアゾリルスルホニル基、1−ピラゾリルスルホニル基、3−ピラゾリルスルホニル基、4−ピラゾリルスルホニル基などがあげられる。好ましくは、フェニルスルホニル基、o−メチルフェニルスルホニル基、m−メチルフェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基、o−メトキシフェニルスルホニル基、m−メトキシフェニルスルホニル基、p−メトキシフェニルスルホニル基、o-エトキシフェニルスルホニル基、m-エトキシフェニルスルホニル基、p-エトキシフェニルスルホニル基、o−フェノキシフェニルスルホニル基、m−フェノキシフェニルスルホニル基、p−フェノキシフェニルスルホニル基、o−ニトロフェニルスルホニル基、m−ニトロフェニルスルホニル基、p−ニトロフェニルスルホニル基、o−アミノフェニルスルホニル基、m−アミノフェニルスルホニル基、p−アミノフェニルスルホニル基などの単環性アリールスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基、1−アントラシルスルホニル基、2−アントラシルスルホニル基、4−アントラシルスルホニル基などの縮環系アリールスルホニル基、3−チエニルスルホニル基、2−チエニルスルホニル基があげられる。
【0030】
上記の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基として、具体的には、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基、デシルスルホニル基などがあげられる。
【0031】
上記式(1)におけるBは、水素原子、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。
【0032】
で表されるハロゲノ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基および置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基の具体例と好ましい例としては、上記Aで表されるこれらの基として例示された基と同様な基をあげることができる。
【0033】
で表される好ましい基としては、水素原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホルミル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基であり、よりさらに好ましくは水素原子、シアノ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基であり、特に好ましくは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基である。
【0034】
上記式(1)におけるY01は、直接結合または下記式(1−1)〜(1−10)のいずれかで示される2価の基を表わす。



(式(1−1)中、Ar01は置換基を有していてもよい炭素数3〜20の2価の芳香族基を表す。式(1−3)および(1−5)〜(1−7)中、R01は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20の芳香族基を表わす。)
【0035】
上記炭素数3〜20の2価の芳香族基の具体例としては、ベンゼン、トルエン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、アニリン、ビフェニル、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、ペリレン、ピリジン、ピロール、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、アクリジン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジンから芳香環上の水素原子を2つ取り去って得られる基をあげることができる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、アニリン、ビフェニル、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、ペリレン、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノチアジンから芳香環上の水素原子を2つ取り去って得られる基をあげることができる。
【0036】
Ar01で表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基の具体例と好ましい例としては、上記のAで表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基と同様な基を例示することができる。
【0037】
上記R01は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の芳香族基から選ばれる基を表わす。
【0038】
01で表される、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の例としては、上記のAで表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基の例示であげたものと同様な基をあげることができる。
【0039】
01で表される、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の芳香族基の具体例と好ましい例としては、上記のAで表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基の例示であげた置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の例と同様なものをあげることができる。
【0040】
上記式(1)におけるY01として、好ましくは直接結合、式(1−1)〜(1−4)、(1−8)〜(1−10)で示される基であり、より好ましくは直接結合、式(1−1)、(1−2)、(1−4)、(1−10)で示される基であり、特に好ましくは直接結合、式(1−1)、(1−2)、(1−10)で示される基ある。
【0041】
上記式(2)におけるY02およびY03はそれぞれ同一または相異なり直接結合または上記式(1−1)〜(1−3)、(1−5)〜(1−7)、(1−9)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。上記Y02およびY03として、好ましくは直接結合、式(1−1)〜(1−3)、(1−9)、(1−10)で示される2価の基であり、より好ましくは直接結合、式(1−1)、(1−2)、(1−9)、(1−10)で示される2価の基であり、特に好ましくは直接結合、式(1−1)、(1−2)、(1−10)で示される2価の基ある。
【0042】
上記式(1)の好ましい例として、下記式(3)および下記式(4)で示される基をあげることができる。



(式(3)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y01、Bはそれぞれ上記式(1)におけるY01及びBと同義である。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R001〜R006はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基から選ばれる基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。)



(式(4)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y04は直接結合もしくは上記式(1−1)、(1−2)、(1−5)〜(1−7)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。R008〜R014はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基から選ばれる基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。Bは上記式(1)におけるBと同義である。)
【0043】
上記式(3)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表わし、好ましくは−S−で示される基をあげることができるである。
【0044】
上記式(3)中、Y01は上記式(1)におけるY01で表される基と同様な基を表し、その好ましい例も式(1)におけるY01の好ましい例と同様である。
【0045】
上記式(3)中、R001〜R006はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基から選ばれる基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。
【0046】
具体的にR001〜R006で表される、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基の具体例と好ましい例としては、上記のAで表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基の例示であげたものと同様な基をあげることができる。
【0047】
001〜R006で表される好ましい基としては、水素原子、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、ホルミル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基があげられ、より好ましくは、水素原子、フルオロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、ホルミル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基であり、特に好ましくは、水素原子、カルボキシ基、ホスホノ基、ホルミル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基である。
【0048】
007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。具体的にR007で表される、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の具体例と好ましい例としては、上記のAで表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基の例示であげたものと同様な基をあげることができる。
【0049】
007で表される好ましい基としては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基があげられ、該アリール基の好ましい例は上記のAで表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基の例示と同様である。
【0050】
式(4)中、EおよびBは上記式(3)におけるEおよびBと同様な基を表し、これらの好ましい例も式(3)におけるEおよびBの好ましい例と同様である。
【0051】
式(4)中、Y04は直接結合または下記式(1−1)、(1−2)、(1−5)〜(1−7)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。好ましくは、式(1−1)、(1−2)、(1−10)で示される2価の基をあげることができる。
【0052】
式(4)中、R008〜R014は式(3)におけるR001〜R006と同様な基を表わし、これらの好ましい例も式(3)におけるR001〜R006で表される基の好ましい例と同様である。
【0053】
上記式(3)で示される基の具体例としては、下記式(3−001)〜(3−030)で表される基をあげることができる。


【0054】
上記式の中でも好ましくは式(3−001)〜(3−008)、(3−010)〜(3−023)、(3−025)〜(3−030)であり、より好ましくは、式(3−001)、(3−003)、(3−004)、(3−006)、(3−008)、(3−010)〜(3−023)、(3−030)であり、特に好ましくは、式(3−001)、(3−003)、(3−006)、(3−008)、(3−011)、(3−015)〜(3−020)、(3−030)をあげることができる。
【0055】
上記式(4)で示される基の具体例としては、下記式(4−001)〜(4−031)で表される基をあげることができる。


【0056】
上記式の中でも好ましくは式(4−001)、(4−003)〜(4−010)、(4−012)〜(4−019)、(4−021)〜(4−028)であり、より好ましくは式(4−001)、(4−003)、(4−004)、(4−006)、(4−007)、(4−010)、(4−012)、(4−013)、(4−015)、(4−016)、(4−019)、(4−021)、(4−022)、(4−021)、(4−024)、(4−025)、(4−028)である。
【0057】
上記式(2)で表される基の好ましい例として、下記式(5)および下記式(6)で示される基をあげることができる。



(式(5)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R001〜R006はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。Y02およびY03はそれぞれ上記式(2)におけるY02およびY03と同義である。)



(式(6)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y03は上記式(2)におけるY03と同義である。Y04は直接結合もしくは上記式(1−1)、(1−2)、(1−5)〜(1−7)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。R008〜R014はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基から選ばれる基を表す。)
【0058】
上記式(5)中、E、Y02、Y03、Y001、およびR001〜R007の具体例と好ましい例は上記と同様である。
【0059】
上記式(6)中、E、Y03、Y04、およびR008〜R014の具体例と好ましい例は上記と同様である。
【0060】
上記式(5)で表される基の具体例としては、下記式(5−001)〜(5−028)をあげることができる。


【0061】
上記式の中でも好ましくは式(5−001)〜(5−008)、(5−010)〜(5−021)、(5−026)〜(5−028)であり、より好ましくは、式(5−001)〜(5−008)、(5−010)、(5−011)、(5−015)〜(5−017)、(5−021)、(5−027)、(5−028)である。
【0062】
上記式(6)で表される基の具体例としては、下記式(6−001)〜(6−038)で表される基をあげることができる。


【0063】
上記式の中でも好ましくは式(6−001)〜(6−008)、(6−011)〜(6−019)、(6−024)〜(6−027)、(6−032)〜(6−034)、(6−038)であり、より好ましくは、式(6−001)〜(6−003)、(6−007)、(6−008)、(6−011)、(6−012)、(6−016)〜(6−019)、(6−024)〜(6−026)、(6−032)〜(6−034)、(6−038)をあげることができる。
【0064】
上記のポリアリーレン系化合物は、上記式(1)で示される基および上記式(2)で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する構造単位を有することが好ましく、下記式(500)で示される構造単位、下記式(600)で示される構造単位および下記式(7)で示される構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位を有していることがより好ましい。



(式(500)中、E、Y02、Y03、Y001、およびR001〜R007は上記と同様な基を表す。)



(式(600)中、E、Y03、Y04、およびR008〜R014は上記と同様な基を表す。)



(式(7)中、EおよびY001は、上記と同様な基を表す。R015〜R022はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。Ar02は置換基を有していてもよい炭素数3〜30の3価の芳香族基を表す。)
【0065】
上記式(500)中、E、Y02、Y03、Y001、およびR001〜R007の具体例と好ましい例は上記と同様である。
【0066】
上記式(500)で表される構造単位の具体例としては、上記式(5−001)〜(5−028)で表される基を有する構造単位をあげることができる。上記式の中でも好ましくは式(5−001)〜(5−008)、(5−010)〜(5−021)、(5−026)〜(5−028)であり、より好ましくは、式(5−001)〜(5−008)、(5−010)、(5−011)、(5−015)〜(5−017)、(5−021)、(5−027)、(5−028)である。
【0067】
上記式(600)中、E、Y03、Y04、およびR008〜R014の具体例と好ましい例は上記と同様である。
【0068】
上記式(600)で表される構造単位の具体例としては、上記式(6−001)〜(6−038)で表される基を有する構造単位をあげることができる。上記式の中でも好ましくは式(6−001)〜(6−008)、(6−011)〜(6−019)、(6−024)〜(6−027)、(6−032)〜(6−034)、(6−038)であり、より好ましくは、式(6−001)〜(6−003)、(6−007)、(6−008)、(6−011)、(6−012)、(6−016)〜(6−019)、(6−024)〜(6−026)、(6−032)〜(6−034)、(6−038)をあげることができる。
【0069】
上記式(7)中、EおよびY001の具体例と好ましい例は上記と同様である。
【0070】
上記式(7)中、R015〜R022はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表し、その具体例および好ましい例は上記R001〜R006で例示したものと同様なものをあげることができる。
【0071】
上記式(7)中、Ar02は置換基を有していてもよい炭素数3〜30の3価の芳香族基を示す。かかる3価の芳香族基は、好ましくは炭素数3〜20であり、より好ましくは炭素数3〜12であり、特に好ましくは炭素数6である。
Ar02の具体例としては、ベンゼン、トルエン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、アニリン、ビフェニルなどの単環性芳香族化合物から芳香環上の水素原子を三つ取り去って得られる基、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、ペリレンなどの縮環系芳香族化合物から芳香環上の水素原子を三つ取り去って得られる基、ピリジン、ピロール、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、アクリジン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジンなどのヘテロ原子を含む芳香族化合物より芳香環上の水素原子を三つ取り去って得られる基などがあげられる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、アニリン、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、ペリレン、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノチアジンより芳香環上の水素原子を三つ取り去って得られる基などがあげられる。
【0072】
Ar02で表される3価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、上記Aで表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基と同様なものを例示することができ、その好ましい例も同様である。
【0073】
上記式(7)で表される構造単位の具体例として、下記式(7−001)〜(7−018)で表される構造単位をあげることができる。
【0074】

【0075】
これらの中でも好ましくは式(7−001)〜(7−003)、(7−005)〜(7−009)、(7−011)〜(7−015)、(7−017)、(7−018)で表される構造単位であり、より好ましくは式(7−001)、(7−003)、(7−005)、(7−007)、(7−009)、(7−011)〜(7−013)、(7−015)、(7−017)、(7−018)で表される構造単位をあげることができる。
【0076】
また、上記ポリアリーレン系化合物は上記の構造単位以外にも構造単位を有していてもよい。このような構造単位の例としてはとしては、イオン交換基を有する構造単位、イオン交換基を有しない構造単位があげられる。イオン交換基を有する構造単位としては、後述の式(11a)〜(15a)で表される構造単位があげられ、イオン交換基を有しない構造単位としては、後述の式(11b)〜(15b)で表される構造単位があげられる。式(11a)〜(15a)の具体例として式(4a−1)〜(4a−20)があげられ、式(11b)〜(15b)の具体例としては、式(4b−1)〜(4b−32)をあげることができる。イオン交換基を有する構造単位としては、式(4a−1)及び/又は、(4a−2)及び/又は、(4a−3)及び/又は、(4a−4)及び/又は、(4a−5)及び/又は、(4a−6)及び/又は、(4a−7)及び/又は、(4a−8)及び/又は、(4a−9)及び/又は、(4a−10)及び/又は、(4a−11)及び/又は、(4a−12)で表される構造単位が好ましく、(4a−10)及び/又は、(4a−11)及び/又は、(4a−12)で表される構造単位がより好ましく、(4a−11)及び/又は、(4a−12)で表される構造単位が特に好ましい。
イオン交換基を有しない構造単位としては、式(4b−1)及び/又は、(4b−2)及び/又は、(4b−3)及び/又は、(4b−4)及び/又は、(4b−5)及び/又は、(4b−6)及び/又は、(4b−7)及び/又は、(4b−8)及び/又は、(4b−9)及び/又は、(4b−10)及び/又は、(4b−11)、(4b−12)及び/又は、(4b−13)及び/又は及び/又は、(4b−14)で表される構造単位が好ましく、(4b−2)及び/又は、(4b−3)及び/又は、(4b−9)及び/又は、(4b−10)及び/又は、(4b−13)及び/又は、(4b−14)で表される構造単位がより好ましく、(4b−2)及び/又は、(4b−3)及び/又は、(4b−13)及び/又は、(4b−14)で表される構造単位がよりさらに好ましく、(4b−2)及び/又は、(4b−3)及び/又は、(4b−14)で表される構造単位が特に好ましい。
【0077】
また、ポリアリーレン系化合物が式(11a)〜(15a)で表される構造単位および式(11b)〜(15b)で表される構造単位を併せ持つ場合、その組み合わせの好ましい例は後述の<a>〜<m>に示す構造単位の組み合わせをあげることができる。更に好ましくは、<b>、<c>、<d>、<g>、<h>、<i>、<j>、<l>、又は<m>であり、より更に好ましくは<g>、<h>、<l>、又は<m>であり、<g>、<h>、又は<l>が特に好ましい。
【0078】
上記ポリアリーレン系化合物は、上記式(1)で示される基および上記式(2)で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する構造単位からなる化合物、上記式(1)で示される基および上記式(2)で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する構造単位と、上記イオン交換基を有しない構造単位とからなる化合物、または上記式(1)で示される基および上記式(2)で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する構造単位と、上記イオン交換基を有しない構造単位と、イオン交換基を有する構造単位とからなる化合物であることが好ましく、上記式(1)で示される基および上記式(2)で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する構造単位からなる化合物、または上記式(1)で示される基および上記式(2)で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する構造単位と、上記イオン交換基を有しない構造単位とからなる化合物であることがより好ましく、上記式(1)で示される基および上記式(2)で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する構造単位からなる化合物であることがさらに好ましい。また、上記ポリアリーレン系化合物は、合成の効率と容易さの観点から、イオン交換基を有しないことが好ましい。
【0079】
上記式(3)で表される基からなる構造単位と、上記のイオン交換基を有する構造単位および/またはイオン交換基を有しない構造単位とを併せ持つポリアリーレン系化合物について、上記式(3−001)で表される基の場合を例に取って構造単位の組み合わせを以下の式(3−001−1)〜(3−001−15)に示す。
【0080】

【0081】

【0082】
上記式(4)で表される基からなる構造単位と、上記のイオン交換基を有する構造単位および/またはイオン交換基を有しない構造単位とを併せ持つポリアリーレン系化合物について、上記式(4−001)で表される基の場合を例に取って構造単位の組み合わせを以下の式(4−001−1)〜(4−001−15)に示す。
【0083】

【0084】

【0085】
上記式(5)で表される基からなる構造単位と、上記のイオン交換基を有する構造単位および/またはイオン交換基を有しない構造単位とを併せ持つポリアリーレン系化合物について、上記式(5−001)で表される基の場合を例に取って構造単位の組み合わせを以下の式(5−001−1)〜(5−001−15)に示す。
【0086】

【0087】

【0088】
上記式(6)で表される基からなる構造単位と、上記のイオン交換基を有する構造単位および/またはイオン交換基を有しない構造単位とを併せ持つポリアリーレン系化合物について、上記式(6−001)で表される基の場合を例に取って構造単位の組み合わせを以下の式(6−001−1)〜(6−001−15)に示す。
【0089】

【0090】

【0091】
上記式(7)で示される構造単位と、上記のイオン交換基を有する構造単位および/またはイオン交換基を有しない構造単位とを併せ持つポリアリーレン系化合物について、上記式(7−001)で表される基の場合を例に取って構造単位の組み合わせを以下の式(7−001−1)〜(7−001−15)に示す。
【0092】

【0093】

【0094】
また、上記式(7)で示される構造単位と、イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位とを有するポリアリーレン系化合物も好ましい。この場合、イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位としては、下記式(9)で示される構造単位が好ましい。



(式(9)中、rは1〜4の整数を表す。Q01はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。R033は水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)
【0095】
01が示すイオン交換前駆基とは、加水分解反応や酸や塩基との反応によりイオン交換基へと変換可能な基である。このようなイオン交換基として、酸性のイオン交換基(すなわち、カチオン交換基)又は塩基性のイオン交換基(すなわち、アニオン交換基)があげられる。高いプロトン伝導性を得る観点から、イオン交換基はカチオン交換基であることが好ましく、カチオン交換基を有する高分子電解質を用いることにより、発電性能に一層優れた燃料電池が得られる。カチオン交換基としては、例えば、スルホ基(−SOH)、カルボキシ基(−COOH)、ホスホノ酸基(−P(O)(OH))、ヒドロキシホスホリル基(−P(O)(OH)−)、スルホニルイミド基(−SONHSO−)、フェノール性水酸基が挙げられる。これらの中でも、カチオン交換基としては、スルホ基又はホスホノ基がより好ましく、スルホ基が特に好ましい。
イオン交換前駆基の代表例としてはスルホ前駆基、ホスホノ前駆基、カルボキシ前駆基等があげられる。スルホ前駆基とは、加水分解反応や、酸や塩基との反応を経て、スルホ基となる基のことであり、ホスホノ前駆基とは、加水分解反応や酸や塩基との反応を経て、ホスホノ基となる基のことであり、カルボキシ前駆基とは、加水分解反応や酸や塩基との反応を経て、カルボキシ基となる基のことである。これらの中でも、スルホ前駆基、ホスホノ前駆基が好ましく、スルホ前駆基がより好ましい。
【0096】
スルホ前駆基の具体例としては、以下のものがあげられる。
スルホン酸エステル基:スルホン酸ネオペンチル基、スルホン酸t−ブチル基など
スルフィン酸エステル基:スルフィン酸ネオペンチル基、スルフィン酸t−ブチル基など
メルカプト基:メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基など
スルホン酸塩基:スルホン酸ナトリウム基、スルホン酸カリウム基、スルホン酸リチウム基、スルホン酸アンモニウム基、スルホン酸モノメチルアンモニウム基、スルホン酸モノエチルアンモニウム基、スルホン酸モノ−n−プロピルアンモニウム基、スルホン酸モノ−n−ブチルアンモニウム基、スルホン酸ジメチルアンモニウム基、スルホン酸ジエチルアンモニウム基、スルホン酸ジ−n−プロピルアンモニウム基、スルホン酸ジ−n−ブチルアンモニウム基、スルホン酸トリメチルアンモニウム基、スルホン酸トリエチルアンモニウム基、スルホン酸トリ−n−プロピルアンモニウム基、スルホン酸トリ−n−ブチルアンモニウム基、スルホン酸テトラメチルアンモニウム基、スルホン酸テトラエチルアンモニウム基、スルホン酸テトラ−n−プロピルアンモニウム基、スルホン酸テトラ−n−ブチルアンモニウム基など
【0097】
ホスホノ前駆基の具体例としては、以下のものがあげられる。
ホスホン酸ジエステル基:ホスホン酸ジエチル基、ホスホン酸ジ−n−ブチル基、ホスホン酸ジ−t−ブチル基、ホスホン酸ジメチル基、ホスホン酸ジイソプロピル基、ホスホン酸ジフェニル基など
ホスホン酸モノエステル基:ホスホン酸モノエチル基、ホスホン酸モノ−t−ブチル基、ホスホン酸モノメチル基、ホスホン酸モノジイソプロピル基など
ホスホン酸モノエステル塩基:ホスホン酸エチル−ナトリウム基、ホスホン酸エチル−カリウム基、ホスホン酸エチル−リチウム基、ホスホン酸エチル−アンモニウム基、ホスホン酸エチル−モノメチルアンモニウム基、ホスホン酸エチル−モノエチルアンモニウム基、ホスホン酸エチル−モノ−n−プロピルアンモニウム基、など
ホスホン酸塩基:ホスホン酸ナトリウム基、ホスホン酸カリウム基、ホスホン酸リチウム基、ホスホン酸アンモニウム基、ホスホン酸−モノメチルアンモニウム基、ホスホン酸−
モノエチルアンモニウム基、など。これらはモノカチオン塩でもジカチオン塩でも或いはそれらの混合物であってもよい。
【0098】
カルボキシ基前駆基の具体例としては、以下のものがあげられる。
カルボン酸エステル基:カルボン酸ネオペンチル基、カルボン酸t−ブチル基など
カルボン酸塩基:カルボン酸ナトリウム基、カルボン酸カリウム基、カルボン酸リチウム基、カルボン酸アンモニウム基、カルボン酸−モノメチルアンモニウム基、カルボン酸−モノエチルアンモニウム基、カルボン酸−モノ−n−プロピルアンモニウム基、カルボン酸−モノ−n−ブチルアンモニウム基、カルボン酸−ジメチルアンモニウム基、カルボン酸−ジエチルアンモニウム基、カルボン酸−ジ−n−プロピルアンモニウム基、カルボン酸−ジ−n−ブチルアンモニウム基、カルボン酸−トリメチルアンモニウム基、カルボン酸−トリエチルアンモニウム基、カルボン酸−トリ−n−プロピルアンモニウム基、カルボン酸−トリ−n−ブチルアンモニウム基、カルボン酸−テトラメチルアンモニウム基、カルボン酸−テトラエチルアンモニウム基、カルボン酸−テトラ−n−プロピルアンモニウム基、カルボン酸−テトラ−n−ブチルアンモニウム基、など。
【0099】
rは1〜4の整数を表し、好ましくは1〜3であり、より好ましくは2または1である。
【0100】
033で表される、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基の具体例と好ましい例としては、上記のAで表される2価の芳香族基が有していてもよいこれらの置換基の例示であげたものと同様な基をあげることができる。
【0101】
033で表される好ましい基としては、水素原子、フルオロ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基があげられ、より好ましくは、水素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基があげられ、特に好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基である。
【0102】
また、下記式(10)で示される構造単位並びにイオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位とを有するポリアリーレン系化合物も好ましい。この場合、イオン交換基並びにイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位としては、下記式(11)で示される構造単位が好ましい。



(式(10)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R001〜R006はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。)
【0103】
上記式(10)中、E、Y001、およびR001〜R007の具体例と好ましい例は上記と同様である。
【0104】


(式(11)中、rは1〜4の整数を表す。Q01はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。R033は水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)
【0105】
r、Q01およびR033の具体例およびその好ましい例は、それぞれ、式(9)におけるr、Q01およびR033の具体例およびその好ましい例と同様である。
【0106】
本発明のポリアリーレン系化合物を製造するための方法について以下に説明する。例えば、上記式(7)で表される構造単位を有するポリアリーレン系化合物の製造方法としては、例えば、下記式(8)で表されるモノマーを用いた重合反応をあげることができる。



(式(8)中、E、Y001、R015〜R022およびAr02はそれぞれ上記と同様な基を表す。X01およびX02はそれぞれ同一または相異なりクロロ基、ブロモ基、ヨード基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基または下記式(8−1)〜(8−3)のいずれかで示される基を表す。)



(式(8−1)中、R100は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。式(8−2)中、R200は水素原子または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。式(8−2)中、M100はリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはセシウムイオンを表す。)
【0107】
また、上記式(10)で表される構造単位を有するポリアリーレン系化合物の製造方法としては、例えば、下記式(1000)で表されるモノマーを用いた重合反応をあげることができる。



(式(1000)中、E、Y001、R015〜R022およびAr02はそれぞれ上記と同様な基を表す。X01およびX02はそれぞれ同一または相異なりクロロ基、ブロモ基、ヨード基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基または下記式(8−1)〜(8−3)のいずれかで示される基を表す。)



(式(8−1)中、R100は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。式(8−2)中、R200は水素原子または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。式(8−2)中、M100はリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはセシウムイオンを表す。)
【0108】
また、上記重合反応において、式(8)および式(1000)で示されるモノマーに加え、上記のX01およびX02基を有する芳香族化合物を併せて反応させることで、該芳香族化合物を共重合させることも可能である。
【0109】
さらに、イオン交換基を有するポリアリーレン系化合物の製造方法において、上記X01およびX02基と、イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基とを有するモノマーを用いれば、イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を有するポリアリーレン系化合物を得ることもできる。なお、これらのイオン交換前駆基は、加水分解反応、酸もしくは塩基との反応などによりイオン交換基に変換することができる。
【0110】
イオン交換基として、酸性のイオン交換基(すなわち、カチオン交換基)又は塩基性のイオン交換基(すなわち、アニオン交換基)があげられる。高いプロトン伝導性を得る観点から、イオン交換基はカチオン交換基であることが好ましく、カチオン交換基を有する高分子電解質を用いることにより、一層発電性能に優れた燃料電池が得られる。カチオン交換基としては、例えば、スルホ基(−SOH)、カルボキシ基(−COOH)、ホスホノ酸基(−P(O)(OH))、ヒドロキシホスホリル基(−P(O)(OH)−)、スルホニルイミド基(−SONHSO−)、フェノール性水酸基が挙げられる。これらの中でも、カチオン交換基としては、スルホ基又はホスホノ基がより好ましく、スルホ基が特に好ましい。
イオン交換前駆基の代表例としてはスルホ前駆基、ホスホノ前駆基、カルボキシ前駆基等があげられる。スルホ前駆基とは、加水分解反応や酸や塩基との反応を経て、スルホ基となる基のことであり、ホスホノ前駆基とは、加水分解反応や酸や塩基との反応を経て、ホスホノ基となる基のことであり、カルボキシ前駆基とは、加水分解反応や酸や塩基との反応を経て、カルボキシ基となる基のことである。これらの中でも、スルホ前駆基、ホスホノ前駆基が好ましく、スルホ前駆基がより好ましい。
【0111】
01基及びX02基と、イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基とを有するモノマーとしては、ベンゼン、トルエン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、アニリン、ビフェニル、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、ペリレン、ピリジン、ピロール、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、アクリジン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジンから芳香環上の水素原子が、X01基及びX02基と、イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基とで置換された化合物があげられる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、アニリン、ビフェニル、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、ペリレン、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノチアジンから芳香環上の水素原子が、X01基及びX02基と、イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基とで置換された化合物があげられる。
【0112】
01基およびX02基と、イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基とを有する好ましいモノマーの例としては、下記式(1100)および下記式(1200)をあげることができる。



(式(1100)中、rは1〜4の整数を表す。Q01はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。R033は水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。X01およびX02は上記式(1000)におけるX01およびX02と同様な基を表す。)



(式(1200)中、rおよびsはそれぞれ同一または相異なり1〜4の整数を表す。Q01およびQ02はそれぞれ同一または相異なりイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。R033およびR044はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。X01およびX02は上記式(1000)におけるX01およびX02と同様な基を表す。)
【0113】
上記式(1100)もしくは上記式(1200)で表されるモノマーを用いることで、上記式(9)または(11)で表されるイオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する構造単位をポリアリーレン系化合物に導入することができる。
【0114】
式(1100)中のrは1〜4の整数を表し、好ましくは1〜3であり、より好ましくは2または1である。式(1200)中のrおよびsはそれぞれ同一または相異なり1〜4の整数を表し、好ましくは1〜3であり、より好ましくは2または1である。
【0115】
具体的に式(1100)および式(1200)のR033並びに式(1200)中のR044で表される、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基の具体例と好ましい例としては、上記のAで表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基の例示であげたものと同様な基をあげることができる。
【0116】
033、R044における好ましい基としては、水素原子、フルオロ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基があげられ、より好ましくは、水素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基があげられ、特に好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基である。
【0117】
具体的に式(1100)および式(1200)中のQ01並びに式(1200)中のQ02におけるイオン交換基の例および好ましい例は前述のものと同様な基をあげることができる。
【0118】
具体的に式(1100)および式(1200)中のQ01並びに式(1200)中のQ02におけるイオン交換前駆基の例および好ましい例は前述のものと同様の基をあげることができる。
【0119】
重合反応の例として、下記式(8−100)〜(8−2100)で表される反応をあげることができる。
【0120】

【0121】

【0122】

【0123】

【0124】

【0125】

【0126】
上記反応では溶媒を用いることができ、使用可能な溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ベンゼンなどの炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)などの非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル、2H,3H-デカフルオロペンタン、エイコサフルオロノナン、ヘプタコサフルオロトリブチルアミン、ヘキサフルオロベンゼン、オクタデカフルオロオクタン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロトリエチルアミン、1H,1H,10H,10H-ヘキサデカフロオロ-1,10-デカンジオール、1H,1H-ノナフルオロ-1-ペンタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール、ヘプタフルオロ酪酸メチルなどのフッ素系溶媒、水などがあげられる。
【0127】
上記のポリアリーレン系化合物はイオン交換基を有する高分子に配合して高分子電解質として用いることが好ましい。上記のポリアリーレン系化合物がイオン交換基を有する場合はポリアリーレン系化合物を単独で高分子電解質として用いることも可能である。イオン交換基を有する高分子としては、イオン交換基を有する炭化水素系高分子やイオン交換基を有するフッ素系高分子を用いることができ、好ましくはイオン交換基を有する炭化水素系高分子があげられる。イオン交換基を有する炭化水素系高分子の中でもより好ましくは、イオン交換基を有する芳香族炭化水素系高分子があげられ、例えば後述の(C)主鎖が芳香環を有する高分子に、イオン交換基が導入された高分子、があげられる。上記のイオン交換基を有する高分子の具体例およびその好ましい例としては、後述の<イオン交換基を有する高分子>の項に例示のものをあげることができる。
【0128】
上記のポリアリーレン系化合物をイオン交換基を有する高分子に配合する場合、その配合量は、イオン交換基を有する高分子が有しているイオン伝導性等の特性を著しく損なうことない範囲で選択される。ポリアリーレン系化合物の配合量は、好適には、イオン交換基を有する高分子100重量部に対して、ポリアリーレン系化合物が0.01〜30重量部であり、0.1〜20重量部であるとさらに好ましく、0.5〜10重量部であるとよりさらに好ましく、1〜6重量部であると特に好ましい。
【0129】
また、本発明のポリアリーレン系化合物の数平均分子量としては800を超えるものが好ましく、より好ましくは1300超〜800000未満であり、よりさらに好ましくは1500超〜50000未満であり、特に好ましくは1600超〜8000未満である。数平均分子量が800を超える、特に1300を超えるポリアリーレン系化合物は、かかるポリアリーレン系化合物を、イオン交換基を有する高分子に配合して高分子電解質膜とした場合、高分子電解質膜からポリアリーレン系化合物が流出しにくくなるため、好ましい。
ポリアリーレン系化合物がイオン交換基を有する場合、その数平均分子量は、好ましくは1300超〜1000000未満であり、より好ましくは1600超〜900000未満であり、よりさらに好ましくは10000超〜800000未満であり、特に好ましくは100000超〜700000未満である。数平均分子量が1300を超えるポリアリーレン系化合物は、かかるポリアリーレン系化合物を、イオン交換基を有する高分子に配合して高分子電解質膜とした場合、高分子電解質膜からポリアリーレン系化合物が流出しにくくなるため、好ましい。該数平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
以下にGPC測定条件を示す。

・カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR−M
・カラム温度:40℃
・移動相溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
・溶媒流量:0.5mL/分
・検出:示差屈折率法
【0130】
<イオン交換基を有する高分子>
次に、上記のイオン交換基を有する高分子について説明する。該イオン交換基を有する高分子としては、Nafion(デュポン社登録商標)、旭化成製のAciplex(旭化成登録商標)、旭硝子製のFlemion(旭硝子登録商標)などのイオン交換基を有するフッ素系高分子や、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素にスルホ基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)、ホスホン基(−PO32)、スルホニルイミド基(−SO2NHSO2−)、フェノール性水酸基等のイオン交換基を導入した炭化水素系高分子などが用いられる。ただし、炭化水素系高分子はラジカル耐性が低いことが懸念されるので、イオン交換基を有する高分子が炭化水素系高分子である場合、本発明が奏する、優れたラジカル耐性を有する高分子電解質膜等が得られるという効果をよりよく享受できる。また、フッ素系高分子電解質に比して、耐熱性等の観点からも炭化水素系高分子電解質は有利である。なお、イオン交換基を有する高分子は、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質を組み合わせて含有してもよいが、この場合、炭化水素系高分子電解質を主成分として含むことが好ましい。この場合の炭化水素系高分子電解質の含有量としては、好ましくは51重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、よりさらに好ましくは85重量%以上であり、特に好ましくは90重量%以上である。
【0131】
なお、イオン交換基を有する炭化水素系高分子とは、当該高分子を構成する元素重量含有比で表してハロゲン原子が15重量%以下である高分子電解質を意味する。かかる炭化水素系高分子は、前記のフッ素系高分子と比較して安価であるという利点を有する。特に好適な炭化水素系高分子は、実質的にハロゲン原子を含有していない高分子であり、このような炭化水素系高分子は燃料電池の作動時に、ハロゲン化水素の発生により他の部材を腐食させたりする恐れがない。
【0132】
フッ素系高分子とは、当該高分子を構成する元素重量含有比で表してフッ素原子が15重量%を超える高分子を意味する。具体例としては上記例示の市販のフッ素系高分子などをあげることができる。
【0133】
上述のイオン交換基として、酸性のイオン交換基(すなわち、カチオン交換基)又は塩基性のイオン交換基(すなわち、アニオン交換基)があげられる。高いプロトン伝導性を得る観点から、イオン交換基はカチオン交換基であることが好ましく、カチオン交換基を有する高分子電解質を用いることにより、一層発電性能に優れた燃料電池が得られる。カチオン交換基としては、例えば、スルホ基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)、ホスホン基(−PO32)、スルホニルイミド基(−SO2NHSO2−)、フェノール性水酸基等があげられる。これらの中でも、カチオン交換基としては、スルホ基又はホスホン基がより好ましく、スルホ基が特に好ましい。なお、これらのイオン交換基は、部分的に、あるいは全てが、金属イオンや4級アンモニウムイオン等で交換されて塩を形成していてもよいが、燃料電池用部材として使用する際には、実質的に全てが遊離酸の形態であることが好ましい。これらのイオン交換基は、高分子の主鎖、側鎖の何れか/又は両方に導入されていてもよいが、好ましくは主鎖へ導入されているものがあげられる。
【0134】
以下、好適なイオン交換基を有する炭化水素系高分子に関し詳述する。このような炭化水素系高分子の具体例としては、例えば、下記の(A)〜(F)で表される高分子が挙げられる。
(A)主鎖が脂肪族炭化水素からなる高分子に、イオン交換基が導入された高分子;
(B)主鎖が脂肪族炭化水素からなり、主鎖の一部の水素原子がフッ素原子で置換された高分子に、イオン交換基が導入された高分子;
(C)主鎖が芳香環を有する高分子に、イオン交換基が導入された高分子;
(D)主鎖が、シロキサン基やフォスファゼン基等の無機の単位構造を有する高分子にイオン交換基が導入された高分子;
(E)高分子(A)〜(D)の調製に使用する高分子の主鎖を構成する構造単位から選ばれる2種以上の構造単位を組み合わせた共重合体に、イオン交換基が導入された高分子;
(F)主鎖や側鎖に窒素原子を含む炭化水素系高分子に、硫酸やリン酸等の酸性化合物をイオン結合により導入した高分子
【0135】
なお、以下においては、イオン交換基がスルホ基である高分子を主として例示するが、このスルホ基を別のイオン交換基に置き換えた高分子でもよい。
【0136】
前記(A)の高分子としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸等が挙げられる。
【0137】
前記(B)の高分子としては、特開平9−102322号公報に記載された炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合によって製造された高分子を主鎖とし、スルホ基を有する炭化水素鎖を側鎖とし、共重合様式がグラフト重合であるスルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)が挙げられる。また、米国特許第4,012,303号公報又は米国特許第4,605,685号公報に記載された方法により得られる炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合体に、α,β,β−トリフルオロスチレンをグラフト重合させ、これにスルホ基を導入して固体高分子電解質としたスルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFEも挙げることができる。
【0138】
前記(C)の高分子は、主鎖に酸素原子等のヘテロ原子を含むものであってもよい。このような高分子としては、例えば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリ((4−フェノキシベンゾイル)−1,4−フェニレン)、ポリフェニルキノキサレン等の単独重合体のそれぞれに、スルホ基が導入された高分子が挙げられる。具体的には、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール(例えば、特開平9−110982号公報参照)等が挙げられる。主鎖が酸素原子等のヘテロ原子で中断されている化合物であってもよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリ((4−フェノキシベンゾイル)−1,4−フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール、ホスホアルキル化ポリベンズイミダゾール、ホスホン化ポリ(フェニレンエーテル)が挙げられる。このような高分子は、特開平9−110982号公報、J.Appl.Polym.Sci.,18,1969(1974)にも記載されている。
【0139】
前記(D)の高分子としては、例えば、ポリフォスファゼンにスルホ基が導入されたもの等が挙げられる。これらは、Polymer Prep.,41,No.1,70(2000)に準じて容易に製造することができる。
【0140】
前記(E)の高分子は、スルホ基が導入されたランダム共重合体、スルホ基が導入された交互共重合体、スルホ基が導入されたブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0141】
前記(F)の高分子電解質としては、例えば、特表平11−503262号公報に記載されたようなリン酸を含有させたポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0142】
燃料電池用として良好な耐熱性を有する高分子電解質膜を得るためには、該炭化水素系高分子の中でも、芳香族炭化水素系高分子が好ましく、特に主鎖に芳香環を有する高分子(すなわち、上記(C))が好ましく、これは、より機械強度に優れ、高耐熱性であることからも好ましい。上記高分子(C)の中でも、さらには主鎖を構成する芳香環を有し、且つ該芳香環に直接結合または他の原子もしくは原子団を介して間接的に結合したイオン交換基を有する炭化水素系高分子が好ましい。特に、主鎖を構成する芳香族を有し、さらに芳香環を有する側鎖を有してもよく、主鎖を構成する芳香環か側鎖の芳香環の、どちらかの芳香環に直接結合したイオン交換基を有する炭化水素系高分子が好ましい。
【0143】
さらに、本実施形態の高分子電解質膜に使用するイオン交換基を有する高分子としては、イオン交換基を有する構造単位とイオン交換基を有しない構造単位とからなる共重合体が、高分子電解質膜としたとき、耐水性や機械強度に優れる傾向があるので、好ましい。この2種の構造単位の共重合様式は、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合の何れでもよく、好ましくは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合であり、より好ましくは、ランダム共重合、ブロック共重合であり、特に好ましくはブロック共重合である。これらの共重合様式の組み合わせでもよい。
【0144】
本発明に適用するイオン交換基を有する高分子においては、プロトン伝導性を担うイオン交換基の導入量は、イオン交換容量で表して、0.5meq/g以上が好ましく、1.0meq/g以上がより好ましく、2.0meq/g以上が更に好ましく、2.7meq/g以上が特に好ましい。また、5.5meq/g以下が好ましく、5.0meq/g以下がより好ましい。イオン交換容量が前記の範囲であると、燃料電池用高分子電解質として、十分なプロトン伝導性が発現され、比較的耐水性も良好であるという利点もある。
【0145】
特に好ましいイオン交換基を有する高分子としては、下記式(11a)、(12a)、(13a)又は(14a)[以下、場合により、「式(11a)〜(14a)」と呼ぶことがある]



(式中、Ar1〜Ar9は、それぞれ同一または相異なり、主鎖に芳香族環を有し、さらに芳香族環を有する側鎖を有してもよい2価の芳香族基を表す。該主鎖の芳香族環か側鎖の芳香族環の少なくとも1つが該芳香族環に直接結合したイオン交換基を有する。
Z、Z’はそれぞれ同一または相異なり−CO−で示される基、−SO2−で示される基のいずれかを表し、X、X’、X”はそれぞれ同一または相異なり−O−で示される基、−S−で示される基のいずれかを表す。Yは直接結合もしくは下記一般式(15)で表される基を表す。pは0、1又は2を表し、q、rはそれぞれ同一または相異なり1、2又は3を表す。)
で示されるイオン交換基を有する構造単位と、
下記式(11b)、(12b)、(13b)又は(14b)[以下、場合により、「式(11b)〜(14b)」と呼ぶことがある。]



(式中、Ar11〜Ar19は、それぞれ同一または相異なり側鎖としての置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。Z、Z’はそれぞれ同一または相異なり−CO−で示される基、−SO2−で示される基のいずれかを表し、X、X’、X”はそれぞれ同一または相異なり−O−で示される基、−S−で示される基のいずれかを表す。Yは直接もしくは下記一般式(15)で表される基を表す。p’は0、1又は2を表し、q’、r’はそれぞれ同一または相異なり1、2又は3を表す。)
で表される、イオン交換基を有しない構造単位と、を有し、その共重合様式がランダム共重合、ブロック共重合、ブロック共重合又はグラフト共重合のいずれか、もしくはこれらの共重合様式を組合わせた高分子が例示される。



(式中、R1及びR2はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基を表するか、またはR1とR2とが連結して環を形成している。R1とR2とが連結して形成される環を有する式(15)の基としては、シクロヘキシリデン基などの炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基があげられる。)
【0146】
式(11a)〜(14a)におけるAr1〜Ar9は、2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルや、ピロール、2H−ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、3H−インドール、インドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、イソインドリン、キヌクリジン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,3,5−トリアジン、ブリン、テトラゾール、テトラジン、トリアゾール、フェナルサジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種から芳香環上の水素原子を2個取り去って得られるヘテロ芳香族基か、下記式(N−01)〜(N−07)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含むヘテロ芳香族基等があげられる。好ましくは2価の単環性芳香族基、2価の縮環系芳香族基であり、より好ましくは2価の単環性芳香族基である。


【0147】
また、式(11a)〜(14a)におけるAr1〜Ar9で表される2価の芳香族基の芳香環上の水素原子は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基で置換されていてもよい。
【0148】
式(11a)〜(14a)におけるAr1〜Ar9で表される2価の芳香族基は、芳香環に少なくとも一つのイオン交換基を有する。これらのイオン交換基は、高分子の主鎖、側鎖の何れか/又は両方に導入されていてもよいが、好ましくは主鎖を構成する芳香環に少なくとも一つのイオン交換基を有するものである。該イオン交換基として、上述のように酸性のイオン交換基が好ましく、酸性のイオン交換基の中でも、スルホ基又はホスホン基がより好ましく、スルホ基が特に好ましい。
【0149】
また、式(14a)で表されるイオン交換基を有する構造単位の例の一つとして、下記式(14a−1)で表される構造単位をあげることができる。



(上記式14a−1中、Ar110、Ar120、およびAr130は、それぞれ独立に、芳香環上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい2価の芳香族基を示す。Y000は、−CO−、−SO−、−SO−、−CONH−,−COO−、−(CFu000−(u000は1〜10の整数である)、−C(CF3)2−または直接結合を示す。Z000は、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO−、−SO−、−(CHl000−(l000は1〜10の整数である)または−C(CH−を示す。R110は、直接結合、−O(CHp000−、−O(CFp000−、−(CHp000−または−(CFp000−を示す(p000は、1〜12の整数を示す)。R120、R130は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属原子または炭化水素基を示す。ただし、上記式中に含まれる全てのR120およびR130のうち少なくとも1個は水素原子である。x100は、0〜4の整数。x200は、1〜5の整数。a000は、0〜1の整数。b000は、0〜3の整数を示す。)
【0150】
式(14a−1)におけるAr110、Ar120およびAr130は、2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、式(11a)〜(14a)におけるAr1〜Ar9で表される2価の芳香族基と同様のものがあげられる。
【0151】
120およびR130は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属原子または炭化水素基を示す。アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ルビジウムがあげられ、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n − プロピル基、i s o − プロピル基、t e r t − ブチル基、i s o− ブチル基、n − ブチル基、s e c − ブチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチル基、アダマンタンメチル基、2 − エチルヘキシル基、ビシクロ[ 2 .2 .1 ] へプチル基、ビシクロ[ 2 .2 .1 ] へプチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2 − メチルブチル基、3 ,3 − ジメチル− 2 ,4 − ジオキソランメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[ 2 .2 .1 ] ヘプチルメチル基などの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基、複素環を有する炭化水素基などが挙げられる。これらのうちn − ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[ 2 .2 .1 ] ヘプチルメチル基が好ましく、さらにはネオペンチル基が好ましい。なお、R120およびR130は、水素原子であることが好ましい。
【0152】
上記式(14a−1)で表される構造単位は、さらに下記式(14a−2)で表される構造単位が好ましい。



(式(14a-2)中、Y001は−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)l−(lは1〜10の整数である)、−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Z001は直接結合または、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH32−、−O−、−S−、−CO−、−SO2−からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を示し、Ar001は−SO3Hまたは−O(CH2)pSO3Hまたは−O(CF2)pSO3Hで表される置換基を有する芳香族基を示す。pは1〜12の整数を示し、m001は0〜10の整数を示し、n001は0〜10の整数を示し、k001は1〜4の整数を示す。)
【0153】
上記式(14a−2)で表されるイオン交換基を有する構造単位の具体例としては、後述の式(4a−13)〜(4a−20)で表される構造単位をあげることができる
【0154】
一方、式(11b)〜(14b)におけるAr11〜Ar19は、互いに独立な2価の芳香族基を表す。このような2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルや、ピロール、2H−ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、3H−インドール、インドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、イソインドリン、キヌクリジン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,3,5−トリアジン、ブリン、テトラゾール、テトラジン、トリアゾール、フェナルサジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香環上の水素原子を2個取り去って得られるヘテロ芳香族基か、下記式(N−01)〜(N−07)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含むヘテロ芳香族基等があげられる。好ましくは2価の単環性芳香族基、2価の縮環系芳香族基であり、より好ましくは2価の単環性芳香族基である。


【0155】
また、Ar11〜Ar19で表される2価の芳香族基の芳香環上の水素原子は、フッ素原子、ホルミル基、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基で置換されていてもよい。なお、ここでいう「置換基を有していてもよい」の置換基とはイオン交換基を包含するものではない。
【0156】
ここで、前述の2価の芳香族基(式(11a)〜(14a)におけるAr1〜Ar9及び式(11b)〜(14b)におけるAr11〜Ar19)の置換基の例を以下に示す。
【0157】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基、及びこれらの基の水素原子がフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等で置換されており、その置換基の炭素原子を含む総炭素原子数が20以下であるアルキル基が挙げられる。
【0158】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ペントキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、シクロペントキシ基、n−ヘキソキシ基、シクロヘキソキシ基、2−メチルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、ドデシロキシ基、ヘキサデシロキシ基、イコシロキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、及びこれらの基の水素原子がフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等で置換されており、その置換基の炭素原子を含む総炭素原子数が20以下であるアルコキシ基が挙げられる。
【0159】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等のアリール基、及びこれらの基の水素原子がフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等で置換されており、その置換基の炭素原子を含む総炭素原子数が20以下であるアリール基が挙げられる。
【0160】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基等のアリールオキシ基、及びこれらの基の水素原子がフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等で置換されており、その置換基の炭素原子を含む総炭素原子数が20以下であるアリールオキシ
基が挙げられる。
【0161】
置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の炭素数2〜20のアシル基、及びこれらの基の水素原子がフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等で置換されており、その置換基の炭素原子を含む総炭素原子数が21以下であるアシル基が挙げられる。
【0162】
なかでも、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等のアリール基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基等のアリールオキシ基、またはベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の芳香環を有するアシル基が芳香環上にあると、ポリマーの耐熱性が良好となる傾向があり、より実用的な燃料電池用部材が得られる。
【0163】
芳香環を有するアシル基を構造単位の芳香環上に置換基として有する重合体を含む高分子においては、該アシル基を有する2つの構造単位が隣接し、該2つの構造単位にあるアシル基同士が結合したり、このようにしてアシル基同士が結合した後、転位反応を生じたり、する場合がある。また、このように芳香環置換基同士が結合したり、結合後に転位反応を生じたりするような反応が生じたか否かは、例えば13C−核磁気共鳴スペクトルの測定により確認することができる。
【0164】
該炭化水素系高分子が、イオン交換基を有する構造単位及び、イオン交換基を有しない構造単位とを有する高分子である場合に、かかる高分子を含む高分子電解質を製膜したとき、イオン交換基を有する構造単位が密な相が膜厚方向に連続相を形成できれば、よりプロトン伝導性に優れる高分子電解質膜が得られるという利点がある。
【0165】
本発明において、イオン交換基を有する好適な高分子は、前記式(11a)〜(14a)で表される構造単位である、イオン交換基を有する構造単位と、前記式(11b)〜(14b)で表される構造単位である、イオン交換基を有しない構造単位とを有する高分子である。さらに好適なイオン交換基を有する構造単位とイオン交換基を構造単位の組み合わせをあげると、下記の表1の<a>〜<m>に示す構造単位の組み合わせをあげることができる。
【0166】
【表1】

【0167】
更に好ましくは、<b>、<c>、<d>、<g>、<h>、<i>、<j>、<l>、又は<m>であり、より更に好ましくは<g>、<h>、<l>、又は<m>であり、<g>、<h>、又は<l>が特に好ましい。
【0168】
好適な共重合体の例をあげると、以下に示すイオン交換基を有する構造単位から選ばれる1種又は2種以上の構造単位と、以下に示すイオン交換基を有しない構造単位から選ばれる1種又は2種以上の構造単位と、からなる共重合体をあげることができる。なお、以下の例ではイオン交換基を有する構造単位としては、イオン交換基が、好適なスルホ基である構造単位を例示している。
また、これら構造単位同士は、直接結合で結合されているか、適当な原子又は原子団で結合された形態でもよい。ここでいう構造単位同士を結合する原子又は原子団の典型的なものとしては、2価の芳香族基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はこれらを組み合わせてなる2価の基をあげることができる。
【0169】
(イオン交換基を有する構造単位)

【0170】

【0171】
(イオン交換基を有しない構造単位)

【0172】

【0173】

【0174】
前記例示の中でも、イオン交換基を有する構造単位としては、(4a−1)及び/又は、(4a−2)及び/又は、(4a−3)及び/又は、(4a−4)及び/又は、(4a−5)及び/又は、(4a−6)及び/又は、(4a−7)及び/又は、(4a−8)及び/又は、(4a−9)及び/又は、(4a−10)及び/又は、(4a−11)及び/又は、(4a−12)で表される構造単位が好ましく、(4a−10)及び/又は、(4a−11)及び/又は、(4a−12)で表される構造単位がより好ましく、(4a−11)及び/又は、(4a−12)で表される構造単位が特に好ましい。
前記例示の中でも、イオン交換基を有しない構造単位としては、
(4b−1)及び/又は、(4b−2)及び/又は、(4b−3)及び/又は、(4b−4)及び/又は、(4b−5)及び/又は、(4b−6)及び/又は、(4b−7)及び/又は、(4b−8)及び/又は、(4b−9)及び/又は、(4b−10)及び/又は、(4b−11)、(4b−12)及び/又は、(4b−13)及び/又は及び/又は、(4b−14)で表される構造単位が好ましく、(4b−2)及び/又は、(4b−3)及び/又は、(4b−9)及び/又は、(4b−10)及び/又は、(4b−13)及び/又は、(4b−14)で表される構造単位がより好ましく、(4b−2)及び/又は、(4b−3)及び/又は、(4b−13)及び/又は、(4b−14)で表される構造単位がよりさらに好ましく、(4b−2)及び/又は、(4b−3)及び/又は、(4b−14)で表される構造単位が特に好ましい。
【0175】
該炭化水素系高分子は、イオン交換基を有する構造単位と、イオン交換基を有さない構造単位とを有する高分子であり、この2種の構造単位の共重合様式は、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合の何れでもよく、これらの共重合様式の組み合わせでもよく、好ましくは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合であり、より好ましくは、ランダム共重合、ブロック共重合であり、特に好ましくはブロック共重合である。
【0176】
本発明において、好適なブロック共重合体は、前記式(11a)〜(14a)で表される構造単位からなる、イオン交換基を有するセグメントと、前記式(11b)〜(14b)で表される構造単位からなる、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとを有する共重合体である。また、好適なイオン交換基を有するセグメントを構成する構造単位とイオン交換基を実質的に有しないセグメントを構成する構造単位の組み合わせをあげると、下記の表2の<a>〜<m>に示すセグメントの組み合わせをあげることができる。
【0177】
【表2】

【0178】
更に好ましくは、<b>、<c>、<d>、<g>、<h>、<i>、<j>、<l>、又は<m>であり、より更に好ましくは<g>、<h>、<l>、又は<m>であり、<g>、<h>、又は<l>が特に好ましい。
【0179】
前記例示の中でも、イオン交換基を有するセグメントを構成する繰り返し単位を構成する構造単位としては(4a−1)及び/又は(4a−2)及び/又は(4a−3)及び/又は(4a−4)及び/又は(4a−5)及び/又は(4a−6)及び/又は(4a−7)及び/又は(4a−8)及び/又は(4a−9)及び/又は(4a−10)及び/又は(4a−11)及び/又は(4a−12)で表される構造単位が好ましく、(4a−10)及び/又は(4a−11)及び/又は(4a−12)で表される構造単位がより好ましく、その中でも(4a−11)及び/又は(4a−12)で表される構造単位が特に好ましい。
【0180】
本発明に係る、上記ブロック共重合体の好ましい形態の一つとして、イオン交換基を有するセグメントの主鎖が、複数の芳香環が直接連結してなるポリアリーレン構造を有することがあげられる。そのようなセグメントの構造単位として、好ましくは前述の(4a−10)及び/又は(4a−11)及び/又は(4a−12)及び/又は(4a−13)及び/又は(4a−14)及び/又は(4a−15)及び/又は(4a−16)及び/又は(4a−17)及び/又は(4a−18)及び/又は(4a−19)及び/又は(4a−20)で表される構造単位があげられ、より好ましくは(4a−10)及び/又は(4a−11)及び/又は(4a−12)で表される構造単位があげられ、特に好ましくは(4a−11)及び/又は(4a−12)で表される構造単位があげられる。
このような構造単位からなる繰り返し単位を含むセグメント(イオン交換基を有するセグメント)を有する高分子、特に、このような繰り返し単位からなるセグメントを有する高分子は、優れたイオン伝導性を発現できるものであり、当該セグメントがポリアリーレン構造となるために化学的安定性も比較的良好となる傾向がある。
ここで「ポリアリーレン構造」とは、主鎖を構成している芳香環同士が直接結合で結合されている形態であり、具体的には、該芳香環同士の結合の総数を100%としたとき、直接結合の割合が80%以上の構造であると好ましく、90%以上の構造であるとより好ましく、95%以上の構造であるとさらに好ましい。なお、直接結合で結合されている形態以外の形態とは、芳香環同士が2価の原子又は2価の原子団で結合している形態である。
【0181】
イオン交換基を有しないセグメントを構成する繰り返し単位を構成する構造単位としては、(4b−1)及び/又は(4b−2)及び/又は(4b−3)及び/又は(4b−4)及び/又は(4b−5)及び/又は(4b−6)及び/又は(4b−7)及び/又は(4b−8)及び/又は(4b−9)及び/又は(4b−10)及び/又は(4b−11)及び/又は(4b−12)及び/又は(4b−13)及び/又は及び/又は(4b−14)で表される構造単位が好ましく、(4b−2)及び/又は(4b−3)及び/又は(4b−9)及び/又は(4b−10)及び/又は(4b−13)及び/又は(4b−14)で表される構造単位がより好ましく、(4b−2)及び/又は(4b−3)及び/又は(4b−13)及び/又は(4b−14)で表される構造単位がよりさらに好ましく、(4b−2)及び/又は(4b−3)及び/又は(4b−14)で表される構造単位が特に好ましい。
【0182】
また、イオン交換基を有するセグメントとイオン交換基を実質的に有しないセグメントとは、直接結合している形態でもよく、適当な原子又は原子団で連結している形態でもよい。ここでいうセグメント同士を結合する原子又は原子団の典型的な例としては、2価の芳香族基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はこれらを組み合わせてなる2価の基をあげることができる。
【0183】
好適なブロック共重合体の例として、上記に示すイオン交換基を有する構造単位の群から選ばれる1種又は2種以上の構造単位を含むセグメント(すなわち、イオン交換基を有するセグメント)と、上記に示すイオン交換基を有しない構造単位の群から選ばれる1種又は2種以上の構造単位を含むセグメント(すなわち、イオン交換基を実質的に有しないセグメント)と、からなるブロック共重合体をあげることができる。
【0184】
ここで、「イオン交換基を有するセグメント」とは、イオン交換基が、該セグメントを構成する構造単位1個あたりで平均0.5個以上含まれているセグメントであることを意味し、構造単位1個あたりでイオン交換基が平均1.0個以上含まれているとより好ましい。
一方、「イオン交換基を実質的に有しないセグメント」とは、イオン交換基の個数が、該セグメントを構成する構造単位1個あたりで平均0.5個未満であるセグメントを意味し、構造単位1個あたりでイオン交換基の個数が平均0.1個以下であるとより好ましく、平均0.05個以下であるとさらに好ましい。
典型的には、イオン交換基を有するセグメントとイオン交換基を実質的に有しないセグメントとが、直接結合で結合されているか、適当な原子又は原子団で結合された形態のブロック共重合体である。
【0185】
上記式(11a)〜(14a)で表される構造単位から選ばれる1種以上の構造単位からなるセグメントの重合度は2以上であり、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。また、かかるセグメントの重合度は1000以下が好ましく、500以下が好ましい。この重合度が2以上、好ましくは5以上であれば、燃料電池用の高分子電解質として、十分なプロトン伝導度を発現し、この重合度が1000以下であれば、製造がより容易である利点がある。
【0186】
また、式(11b)〜(14b)で表される構造単位から選ばれる1種以上の構造単位からなるセグメントの重合度は1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。また、かかるセグメントの重合度は100以下が好ましく、90以下がより好ましく、80以下が更に好ましい。重合度がこのような範囲内であれば、燃料電池用の高分子電解質として、十分な機械強度を有し、製造が容易であるので好ましい。
【0187】
<高分子電解質膜>
本発明の高分子電解質膜は、上記本発明のポリアリーレン系化合物を含有する高分子電解質を含有することを特徴とする。高分子電解質膜は、以下の(i)〜(iv)の工程を含む溶液キャスト法により製造される高分子電解質膜が好ましい。
(i)上述のようなポリアリーレン系化合物からなる高分子電解質および/またはポリアリーレン系化合物とイオン交換基を有する高分子とからなる高分子電解質を、ポリアリーレン系化合物からなる高分子電解質および/またはポリアリーレン系化合物とイオン交換基を有する高分子とからなる高分子電解質を溶解し得る有機溶媒に溶解し、高分子電解質溶液を調製する工程;
(ii)前記(i)で得られた高分子溶液を、比較的平滑な表面を有する支持基材上に流延塗工し、該支持基材上に高分子電解質流延膜を形成する工程;
(iii)前記(ii)で支持基材上に形成された高分子電解質流延膜から、前記有機溶媒を除去して、該支持基材上に高分子電解質膜を形成する工程;
(iv)前記(iii)の工程を行った後、支持基材と高分子電解質膜とを分離する工程
【0188】
ここで、前記溶液キャスト法に関する各工程(i)〜(iv)に関し順次説明する。
まず、(i)では上述のように高分子電解質溶液を調製する。ここで該高分子電解質溶液調製に使用する有機溶媒としては、使用する1種又は2種以上の高分子電解質を溶解し得るものが選ばれる。また、高分子電解質および/または高分子電解質組成物に加えて、添加剤などの成分を用いる場合は、これら他の成分も共に溶解し得る溶媒が好ましい。
使用する有機溶媒は、使用する高分子電解質および/または高分子電解質組成物を溶解し得る溶媒であり、好ましくは、この高分子電解質および/または高分子電解質組成物を、25℃で1重量%以上の濃度で溶解し得る有機溶媒である。より好適には、高分子電解質および/または高分子電解質組成物を5〜50重量%の濃度で溶解し得る有機溶媒を用いる。
また、この有機溶媒は、前記支持基材上に前記高分子電解質流延膜を形成した後に、加熱処理により除去し得る程度の揮発性が必要である。ただし、該有機溶媒は少なくとも1種、101.3kPa(1気圧)における沸点が150℃以上である有機溶媒を含むことが好ましい。前記高分子電解質および/または高分子電解質組成物を溶解し得る有機溶媒として沸点が150℃未満の有機溶媒のみを用いると、後述する工程(iii)で高分子電解質流延膜から有機溶媒を除去して高分子電解質膜を形成しようとすると、形成した高分子電解質膜に凹凸状の外観不良が発生するおそれがある。これは、沸点が150℃未満である有機溶媒では、前記高分子電解質流延膜から急激に有機溶媒が揮発してしまうためである。
【0189】
前記高分子電解質溶液の調製に好適な有機溶媒の例としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)などの非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。これらは単独で用いることもできるが、2種以上の有機溶媒を混合して用いることもできる。中でも、非プロトン性極性溶媒を含む有機溶媒が好ましく、実質的に非プロトン性極性溶媒からなる有機溶媒が特に好ましい。ここでいう「実質的に非プロトン性極性溶媒からなる有機溶媒」とは企図せず含有される水分などの存在を排除するものではない。該非プロトン性極性溶媒は、支持基材に対して親和性が比較的小さく、該支持基材に非プロトン性極性溶媒が吸収され難いという利点もある。また、上述の好適な高分子電解質であるブロック共重合体の溶解性が高いという点では、該非プロトン性極性溶媒の中でも、DMSO、DMF、DMAc、NMP、GBL又はこれらから選ばれる2種以上の混合溶媒が好ましい。
【0190】
次に、工程(ii)について説明する。
この工程は、前記工程(i)で得られた高分子電解質溶液を支持基材上に流延塗工する工程である。該流延塗工の方法としては、ローラーコート法、スプレイコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法などの各種手段を用いることができるが、好ましくは、ダイと呼ばれる一定クリアランスが設けられた金型により、所定の幅及び厚みに高分子電解質溶液を賦型する手段があげられる。このようにして支持基材上に形成された高分子電解質流延膜は、塗工時に高分子電解質溶液中の有機溶媒の一部が揮発するために膜の形状を有するものとなる。この際の高分子電解質流延膜の膜厚は、3〜50μmになるようにしておくことが好ましい。このような膜厚の高分子電解質流延膜を得るには、使用する高分子電解質溶液の高分子電解質濃度、塗工装置の塗出量などを適宜調整すればよい。また、該支持基材が連続的に走行する基材である場合は、その支持基材の走行速度等で調節することもできる。
【0191】
工程(ii)で使用する支持基材としては、流延塗工に供する高分子電解質溶液に対して十分な耐久性を有し、後述する工程(iii)での処理条件に対しても耐久性を有する材質からなるものが選択される。この場合の耐久性とは、高分子電解質溶液によって支持基材自身が実質的に溶け出さないことや、工程(iii)の処理条件により、支持基材自身が膨潤や収縮を起こさず寸法安定性がよいことなどを意味するものである。
【0192】
該支持基材としては、たとえばガラス板;SUS箔、銅箔等の金属箔;ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のプラスチックフィルムをあげることができる。また、このプラスチックフィルムには、上述したような耐久性を著しく損なわない範囲で、そのフィルム表面に対し、UV処理、離型処理、エンボス処理などの表面処理を行ってもよい。
【0193】
次に工程(iii)に関し説明する。
この工程は前記工程(ii)において前記支持基材上に形成された高分子電解質流延膜に含有される前記有機溶媒を除去して、該支持基材上に高分子電解質膜を形成する工程である。このような除去には、乾燥又は洗浄溶媒による洗浄が推奨される。このような乾燥と洗浄とを組み合わせて、前記有機溶媒を除去することがより一層好ましく、乾燥と洗浄とを組み合わせる場合には、まず乾燥を行って、前記支持基材上に形成された高分子電解質流延膜に含有される前記有機溶媒のほとんど全てを除去した後、洗浄溶媒による洗浄を行うことが特に好ましい。
【0194】
ここでは、工程(iii)として好適な方法である乾燥と洗浄とを、この順で実施することについて詳述する。工程(ii)を経て得られた支持基材上に形成された高分子電解質流延膜から有機溶媒を乾燥除去するには、加熱、減圧、通風などの処理を採用することができるが、生産性が良好である点と、操作が容易である点で加熱処理が好ましい。この場合、高分子電解質流延膜が形成された支持基材(以下、場合により「第1の積層フィルム」という)を、直接加熱、温風接触などにより加熱処理する。高分子電解質流延膜中の高分子電解質を著しく損なわない点で、温風処理が特に好ましい。たとえば、該第1の積層フィルムが長尺状であり、かかる長尺状の第1の積層フィルムを連続的に処理する場合は、乾燥炉中に該第1の積層フィルムを通過させればよい。このときの乾燥炉は、40〜150℃の範囲、好ましくは50〜140℃に温度設定された温風を、該第1の積層フィルムの通過方向に対し垂直方向及び/又は対向方向に沿って送風する。こうすることにより、支持基材上にある高分子電解質流延膜から有機溶媒等の揮発成分が乾燥(蒸発)除去され、該支持基材上に高分子電解質膜が形成された第2の積層フィルムが形成される。
【0195】
このようにして得られた第2の積層フィルムの高分子電解質膜中には、まだ若干量の有機溶媒が含有されているため、この有機溶媒を洗浄溶媒で洗浄する。洗浄溶媒で洗浄することにより、外観等に優れる高分子電解質膜が得られ易い。前記高分子電解質溶液の調製において好適な有機溶媒である、DMSO、DMF、DMAc、NMP又はGBL、あるいはこれらの組合せからなる混合溶媒を使用した場合、前記洗浄溶媒には純水、特に超純水を使用することが好ましい。
【0196】
上述のように、第1の積層フィルムが長尺状であって連続的に走行している場合、乾燥炉を通過して連続的に形成された第2の積層フィルムは、たとえば洗浄溶媒を充填した洗浄槽中を通過させることにより洗浄することができる。また、乾燥炉を通過して連続的に形成された第2の積層フィルムを適当な巻芯に巻き取って巻取り体として後、この巻取り体を、洗浄処理を担う洗浄装置へと移し変え、移し変えた巻取り体から第2の積層フィルムを洗浄槽へと送り出す形式で洗浄を行うこともできる。こうすることで、第2の積層フィルムにある高分子電解質膜の有機溶媒含有量はより一層低減することが可能である。
【0197】
かくして得られた第2の積層フィルムから支持基材を剥離などによって除去することにより高分子電解質膜は得られる。この高分子電解質膜は好適な溶液キャスト法により得られたものであるため、実質的に無多孔質の膜となる。なお、ここでいう実質的に無多孔質とは、ボイドなどの微小貫通孔が高分子電解質膜に形成されていないことを意味する。ただし、この高分子電解質膜は、燃料電池の作動に支障のない程度の少数量のボイド又は小さい径のボイドであれば、当該ボイドを有するような膜であってもよい。
また、上述の溶液キャスト法による高分子電解質膜製造では、主として支持基材が連続的に走行している場合を説明したが、無論枚葉の支持基材を用いても、高分子電解質膜を得ることができる。この場合、枚葉の支持基材上に塗工された高分子電解質溶液は、適当な乾燥炉中に保管することで、有機溶媒を除去することができるし、このようにして得られた枚葉の第2の積層フィルムは、洗浄溶媒を備えた洗浄槽に浸漬等することで洗浄処理を行うことができる。
また、洗浄後の第2の積層フィルムは、支持基材を除去した後、残存又は付着している洗浄溶媒を乾燥除去させてもよいし、洗浄後の第2の積層フィルムをそのまま加熱等することで残存又は付着している洗浄溶媒を乾燥除去した後、支持基材を除去してもよい。
【0198】
以上、前記溶液キャスト法による実質的に無多孔質の高分子電解質膜の製造方法を説明したが、既述のとおり、この高分子電解質膜には高分子電解質以外の成分(その他の成分)を含有させることができる。
その他の成分としては、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤、保水剤等の添加剤があげられ、上記のポリアリーレン系化合物も含有させることができる。
なお、これらその他の成分は、溶液キャスト法を用いる際に、使用する高分子電解質溶液を調製する際に、該高分子電解質溶液にこれらの成分を添加しておけばよい。
【0199】
<燃料電池>
次に、前記本発明の高分子電解質膜を有する燃料電池について説明する。本発明の燃料電池は、本発明の高分子電解質膜の両面に、触媒および集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
ここで触媒としては、水素又は酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知の触媒を用いることができるが、白金又は白金系合金の微粒子を触媒として用いることが好ましい。白金又は白金系合金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されて用いられることもある。
また、カーボンに担持された白金又は白金系合金を、パーフルオロアルキルスルホン酸樹脂の溶剤と共に混合して調製したペースト(触媒インク)を、ガス拡散層に塗布し、乾燥することにより、ガス拡散層と積層一体化した触媒層が得られる。得られた触媒層を、高分子電解質膜に接合させれば、燃料電池用の膜−電極接合体を得ることができる。膜−電極接合体を製造するための具体的な方法としては例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。また、触媒インクを、高分子電解質膜に塗布し、乾燥して、この膜の表面上に、直接触媒層を形成させても、燃料電池用の膜−電極接合体を得ることができる。
ここで、触媒層に使用する高分子電解質として、前記のパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂の代わりに、本発明の高分子電解質および/または高分子電解質組成物を用い、触媒組成物とすることもできる。この触媒組成物を用いて得られる触媒層は、前記の高分子電解質膜と同様に、良好な長期安定性を発現できるため、触媒層として好適である。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
このようにして製造された本発明の燃料電池は、燃料として水素ガス、改質水素ガス、メタノールを用いる各種の形式で使用可能である。
なお、本発明の高分子電解質膜を用いた膜−電極接合体および燃料電池においては、高分子電解質膜中に導入したポリアリーレン系化合物が触媒層へ移行することもある。このような移行は、該高分子電解質膜の両面に触媒および集電体としての導電性物質を接合する工程および/又は燃料電池の運転時などに起こることがある。なお、ここでの運転とは、燃料電池のエージング、起動、作動、および停止の何れかをさす。このような形態も、前記の高分子電解質膜および前記の触媒層と同様に、良好な長期安定性を発現できるため、好適である。
【実施例】
【0200】
以下に本発明を実施例により説明する。
【0201】
実施例1<ポリアリーレン系化合物1の製造>
亜鉛粉末3.6gとN−メチル−2−ピロリドン41.0gの混合物にメタンスルホン酸42mgとN−メチル−2−ピロリドン2.8gから成る溶液を加え、40℃で2時間攪拌した。60℃昇温後、下記式



で示されるN−(2,5−ジクロロベンゾイル)フェノチアジン6.84gとヨウ化ナトリウム1.4gと[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II) ジクロライド5.0gを加えて4時間攪拌した。得られた重合反応溶液を5%塩酸182gに加え、析出したポリマーを水、メタノールで洗浄した。得られた粗ポリマーを乾燥後、シリカゲルクロマトグラフィ(溶媒;テトラヒドロフラン)により精製し、得られた溶出液から溶媒を、減圧条件下で留去することにより、下記式



で示されるポリアリーレン系化合物1を4.3g得た。得られたポリマーをゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、重量平均分子量は8,200、数平均分子量は7,700であった。なお、GPCの測定条件はポリスチレンを標準物質とし、下記の通りとした。

・カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR−M
・カラム温度:40℃
・移動相溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
・溶媒流量:0.5mL/分
・検出:示差屈折率法

収率:77%。
H NMR((CDSO,δ(ppm)):6.2−8.2(c)
【0202】
製造例1<ポリアリーレン系化合物2の製造>



ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル0.98g、トリフェニルホスフィン2.35g、ヨウ化ナトリウム0.22g、亜鉛粉末2.93g、2,7−ジクロロフェノチアジン(J.Phem.Chem.B.2008,112,11694記載の方法に基づいて合成した)2.02g、市販品の2−クロロフェノチアジン3.50gにN−メチル−2−ピロリドン76g加えて、60℃で3時間撹拌した。2N塩酸/メタノール混合液(体積比1/1)471gに上記で得られたマス87gを加え、1時間撹拌後、ろ過し、得られた固体を2N塩酸/メタノール混合液(体積比1/1)163gで1回、水400gで4回洗浄し、メタノール300gでリパルプ洗浄を3回行い、ポリアリーレン系化合物2を3.32g(収率:74%)を得た。これをGPCにより測定したところ、重量平均分子量は2,000、数平均分子量は1,900であった。GPCの測定条件は上記の通りとした。
マススペクトル:(MALDI−TOFMS m/z:1379)
【0203】
製造例2<ポリアリーレン系化合物3の製造>



臭化ニッケル1.78g、2、2’−ビピリジン1.26gにN−メチル−2−ピロリドン30gを加え、65℃で2時間撹拌し、15℃に冷却した(生じた溶液を溶液−Aとする)。一方、特表2006−511659記載の方法に基づいて合成した3,7−ジブロモー(4’−n−ブチルフェニル)フェノチアジン4.08gにN−メチル−2−ピロリドン24g、亜鉛粉末0.84gを加え、40℃に昇温後、メタンスルホン酸9.3mgとN−メチル−2−ピロリドン0.62gから成る溶液を加え、3時間撹拌した。15℃に冷却後、溶液−Aを加え、室温で16時間撹拌した。2N塩酸120g中に、上記で得られたマスを23g加え、1時間撹拌後、ろ過し、得られた固体を2N塩酸57g、水34gを10回、メタノール30gで3回洗い、ポリアリーレン系化合物3を1.29g(収率:93%)得た。これをGPCにより測定したところ、重量平均分子量は2,400、数平均分子量は2,300であった。GPCの測定条件は上記の通りとした。
マススペクトル:(MALDI−TOFMS m/z:3622)
【0204】
実施例2
<ポリアリーレン系化合物1とイオン交換基を有する高分子からなる膜の製造>
イオン交換基を有する高分子としては、特開2007−284653号公報記載の方法を参考にして、スミカエクセルPES 5200P(住友化学株式会社製、重量平均分子量73,000)を使用し、下記式



で示される繰り返し単位からなる、スルホン酸基を有するセグメント(イオン交換基を有するセグメント)と、下記式


(ここでnは繰返し単位数を示す。)

で示される、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとを有するブロック共重合体A(イオン交換容量=2.5meq/g、数平均分子量1.13×10、重量平均分子量2.38×10)を準備した。このブロック共重合体Aと、ポリアリーレン系化合物1とを、ジメチルスルホキシドに約10重量%の濃度(ブロック共重合体A/ポリアリーレン系化合物1中の硫黄含量(理論値)=100重量%/0.8重量%)になるように溶解させて、高分子電解質溶液を調製した。次いで、この高分子電解質溶液をPET基材上に均一に塗り広げ、その後高分子電解質溶液を100℃で常圧乾燥した。得られた乾燥塗膜を2N硫酸に浸漬、洗浄した後、イオン交換水で洗浄し、更に常温乾燥し、PET基材から剥離することで高分子電解質膜Aを得た。
【0205】
実施例3<ポリアリーレン系化合物1を含む膜の燃料電池評価>
(触媒インクの製造)
市販の5重量%ナフィオン溶液(溶媒:水と低級アルコールの混合物)7mLに、白金が担持された白金担持カーボン(SA50BK、エヌ・イー・ケムキャット製、白金含有量;50重量%)を1.00g投入し、さらにエタノールを55g、水を6.4g加えた。得られた混合物を1時間超音波処理した後、スターラーで5時間攪拌して触媒インクを得た。
【0206】
(膜−電極接合体の製造)
次に、高分子電解質膜Aの片面の中央部における3cm角の領域に、スプレー法により上記の触媒インクを塗布した。この際、吐出口から膜までの距離は6cmとし、ステージ温度は75℃に設定した。同様の方法で重ね塗りを行った後、塗布物をステージ上に15分間放置し、これにより溶媒を除去してアノード触媒層を形成させた。得られたアノード触媒層は、その組成と塗布重量から算出して0.6mg/cmの白金を含有するものであった。続いて、高分子電解質膜のアノード触媒層と反対側の面にも同様に触媒インクを塗布して、0.6mg/cmの白金を含むカソード触媒層を形成した。これにより、膜−電極接合体を得た。
【0207】
(燃料電池セルの製造)
上記の膜−電極接合体の両外側に、ガス拡散層としてカーボンクロスと、ガス通路用の溝を切削加工したカーボン製セパレータとをこの順で配置し、さらにその外側に集電体及びエンドプレートを順に配置し、これらをボルトで締め付けることによって、有効電極面積9cm2の燃料電池セルを製造した。
【0208】
(燃料電池セルの特性評価[負荷変動試験])
得られた燃料電池セルを95℃に保ちながら、低加湿状態の水素(25mL/分、背圧0.1MPaG)と低加湿状態の空気(63mL/分、背圧0.05MPaG)をセルに導入し、開回路と一定電流での負荷変動試験を行うことで、高分子電解質膜や燃料電池セルの長期安定性を評価した。この条件で燃料電池セルを約200時間作動させた後、膜−電極接合体を取り出してエタノール/水の混合溶液に投入し、さらに超音波処理することで触媒層を取り除いた。そして、残った高分子電解質膜Aのイオン交換基を有するセグメントの分子量を次の手順で測定した。すなわち、膜中のポリアリーレン系ブロック共重合体4mgに対し、ジメチルスルホキシド8mlを添加し溶解させた後、テトラメチルアンモニウム水酸化物の25%メタノール溶液10μLを100℃で2時間反応させ、放冷後、得られた溶液の分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。負荷変動試験前と試験後のイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量、及び、負荷変動試験前後におけるイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量の維持率を表3に示す。この維持率が高いほど、高分子電解質膜の劣化が小さいことを意味する。なお、GPCの測定条件は下記の通りとした。

・カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR−M
・カラム温度:40℃
・移動相溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
・溶媒流量:0.5mL/分
・検出:示差屈折率法
【0209】
比較例1<高分子電解質膜Bの燃料電池評価>
実施例2において、ポリアリーレン系化合物1を加えない以外は全て同様にすることで、高分子電解質膜Bを得た。また、高分子電解質膜Bを実施例3と同様の方法で負荷変動試験を実施し、同様にGPC分析を行った。負荷変動試験前と試験後のイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量、及び、負荷変動試験前後におけるイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量の維持率を表3に示す。
【0210】
実施例4、5
<ポリアリーレン系化合物2、3を含む膜の製造>
実施例2において、ポリアリーレン系化合物1の代わりにポリアリーレン系化合物2〜3を用いることで、高分子電解質膜C、Dをそれぞれ得た。
【0211】
実施例6
<ポリアリーレン系化合物2を含む膜の燃料電池評価>
上記の高分子電解質膜Aの代わりに高分子電解質膜Cを用いて上記実施例3と同様な手法により、膜−電極接合体および該膜−電極接合体を有する燃料電池セルをそれぞれ製造した。
また、高分子電解質膜Cを有する燃料電池セルを用いて実施例3と同様の方法で負荷変動試験を実施し、同様にGPC分析を行った。負荷変動試験前と試験後のイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量、及び、負荷変動試験前後におけるイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量の維持率を表3に示す。
【0212】
表3より、本発明のポリアリーレン系化合物1、2を用いて調製された高分子電解質膜は、添加しないものと比較して、負荷変動試験前後でもイオン交換基を有するセグメントの分子量が十分維持されており、優れたラジカル耐性を有することが判明した。
【0213】
【表3】

【0214】
実施例7<ポリアリーレン系化合物4の製造>
アルゴン雰囲気下、臭化ニッケル1.80g、2、2’−ビピリジン1.30gにN−メチル−2−ピロリドン100gを加え、65℃で2時間撹拌し、15℃に冷却した(生じた溶液を溶液−A1とする)。
一方、下記式(A)



で示されるポリ(オキシ−4,4’−ビフェニレンオキシ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレン)(住友化学株式会社製;Mw=1,500)3.36gと4,4'−ジクロロビフェニル−2,2'−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)21.70g、特表2006−511659記載の方法に基づいて合成した3,7−ジブロモー(4‘−n−ブチルフェニル)フェノチアジン0.43gにN−メチル−2−ピロリドン170g、亜鉛粉末4.05gを加え、40℃に昇温後、メタンスルホン酸47.7mgとN−メチル−2−ピロリドン3.13gから成る溶液を加え、3時間撹拌した。15℃に冷却後、溶液−A1を加え、室温で16時間撹拌した。2N塩酸610g中に、上記で得られたマスを304g加え、30分間撹拌後、ろ過し、得られた固体を2N塩酸410gで洗浄した。その後pH>4になるまで水で洗浄し、メタノール/水(1:1重量%)870gで還流し、メタノールで洗浄してスルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマーを20.18g(収率96%)得た。
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
まず、上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー16.76g、N−メチル−2−ピロリドン301g、濃塩酸45.64gをフラスコに入れ、バス温126℃で24時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をアセトン982gに投入し、30分攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過し、さらにアセトン984gを入れて30分洗浄した。その後13.2重量%の塩酸654gで2回、イオン交換水650gで100℃で加熱しながら5回洗浄を繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまでイオン交換水で洗浄した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式(i−1)で示される繰り返し単位と、下記式(ii−2)で示される繰返し単位と下記式(iii−3)で示される繰り返し単位を含むポリマー10.2gを得た。







ここで、式(ii−1)中、nは繰り返し単位数を表す。
なお、得られたポリマーの重量平均分子量(上記のGPCの測定条件で測定)及びイオン交換容量は以下のとおりであった。

数平均分子量: 235000
重量平均分子量: 540000
イオン交換容量:4.81meq/g
【0215】
実施例8<ポリアリーレン系化合物5の製造>
アルゴン雰囲気下、臭化ニッケル1.81g、2、2’−ビピリジン1.30gにN−メチル−2−ピロリドン100gを加え、65℃で2時間撹拌し、15℃に冷却した(生じた溶液を溶液−A2とする)。
一方、下記式(A)



で示されるポリ(オキシ−4,4’−ビフェニレンオキシ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレン)(住友化学株式会社製;Mw=1,500)3.36gと4,4'−ジクロロビフェニル−2,2'−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)21.70g、N−(3,5−ジクロロフェニル)フェノチアジン0.30gにN−メチル−2−ピロリドン170g、亜鉛粉末4.06gを加え、40℃に昇温後、メタンスルホン酸47.7mgとN−メチル−2−ピロリドン3.13gから成る溶液を加え、3時間撹拌した。15℃に冷却後、溶液−A2を加え、室温で16時間撹拌した。2N塩酸620g中に、上記で得られたマスを304g加え、30分間撹拌後、ろ過し、得られた固体を2N塩酸400gで洗浄した。その後pH>4になるまで水で洗浄し、メタノール/水(1:1重量%)834gで還流し、メタノールで洗浄してスルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマーを19.74g(収率95%)得た。
【0216】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
まず、上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー16.73g、N−メチル−2−ピロリドン301g、濃塩酸45.64gをフラスコに入れ、バス温126℃で24時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液のうち290gをアセトン871gへ投入し、30分攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過し、さらにアセトン871gを入れて30分洗浄した。その後13.2重量%の塩酸581gで2回、イオン交換水581gで100℃で加熱しながら7回洗浄を繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまでイオン交換水で洗浄した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式(i−2)で示される繰り返し単位と、下記式(ii−2)で示される繰返し単位と下記式(iii−2)で示される繰り返し単位を含むポリマー9.08g(収率:91.3%)を得た。







ここで、式(ii)中、nは繰り返し単位数を表す。
なお、得られたポリマーの重量平均分子量(上記のGPCの測定条件で測定)及びイオン交換容量は以下のとおりであった。

数平均分子量:433000
重量平均分子量:909000
イオン交換容量:4.69meq/g
【0217】
実施例9<ポリアリーレン系化合物6の製造>
アルゴン雰囲気下、臭化ニッケル9.72g、2、2’−ビピリジン6.98gにN−メチル−2−ピロリドン100gを加え、65℃で2時間撹拌し、15℃に冷却した(生じた溶液を溶液−A3とする)。
一方、下記式(A)



で示されるポリ(オキシ−4,4’−ビフェニレンオキシ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレン)(住友化学株式会社製;Mw=1,500)3.36gと4,4'−ジクロロビフェニル−2,2'−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)21.70g、N−(3,5−ジクロロフェニル)フェノチアジン1.46gにN−メチル−2−ピロリドン170g、亜鉛粉末4.38gを加え、40℃に昇温後、メタンスルホン酸51.5mgとN−メチル−2−ピロリドン3.38gから成る溶液を加え、3時間撹拌した。15℃に冷却後、溶液−A3を加え、室温で16時間撹拌した。2N塩酸642g中に、上記で得られたマスを317g加え、30分間撹拌後、ろ過し、得られた固体を2N塩酸300gで洗浄した。その後pH>4になるまで水で洗浄し、メタノール/水(1:1重量%)872gで還流し、メタノールで洗浄してスルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマーを21.46g(収率98%)得た。
【0218】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
まず、上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー18.54g、N−メチル−2−ピロリドン221g、濃塩酸46.8gをフラスコに入れ、バス温126℃で24時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液のうち244gをアセトン653gへ投入し、30分攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過し、さらにアセトン648gを入れて30分洗浄した。その後13.2重量%の塩酸480gで2回、イオン交換水480gで100℃で加熱しながら6回洗浄を繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまでイオン交換水で洗浄した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式(i−3)で示される繰り返し単位と、下記式(ii−3)で示される繰返し単位と下記式(iii−3)で示される繰り返し単位を含むポリマー10.17g(収率:85.4%)を得た。







ここで、式(ii−3)中、nは繰り返し単位数を表す。
なお、得られたポリマーの分子量(上記のGPCの測定条件で測定)及びイオン交換容量は以下のとおりであった。

数平均分子量: 112000
重量平均分子量: 258000
イオン交換容量:4.44meq/g
【0219】
実施例10<ポリアリーレン系化合物7の製造>
アルゴン雰囲気下、臭化ニッケル7.69gにN−メチル−2−ピロリドン125gを加え、濃縮脱水を行った後、50℃まで冷却し、2、2’−ビピリジン5.49g仕込んで1時間撹拌した後、15℃に冷却した(生じた溶液を溶液−A4とする)。
一方、下記式(A)



で示されるポリ(オキシ−4,4’−ビフェニレンオキシ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレン)(住友化学株式会社製;Mw=1,500)0.97gと4,4'−ジクロロビフェニル−2,2'−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)16.28g、N−(3,5−ジクロロフェニル)フェノチアジン2.00gにN−メチル−2−ピロリドン127g、亜鉛粉末3.45gを加え、40℃に昇温後、メタンスルホン酸40.5mgとN−メチル−2−ピロリドン2.78gから成る溶液を加え、3時間撹拌した。15℃に冷却後、溶液−A4を加え、室温で16時間撹拌した。
2N塩酸582g中に、上記で得られたマスを229g加え、30分間撹拌後、ろ過し、得られた固体を2N塩酸653gで洗浄した。その後pH>4になるまで水で洗浄し、メタノール/水(1:1重量%)620gで還流し、メタノールで洗浄してスルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマーを15.32g(収率99%)得た。
【0220】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
まず、上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー14.76g、N−メチル−2−ピロリドン147g、濃塩酸11.95gをフラスコに入れ、バス温126℃で24時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液のうち156gをアセトン467gへ投入し、30分攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過し、さらにアセトン467gを入れて30分洗浄した。その後13.2重量%の塩酸312gで2回、イオン交換水312gで100℃で加熱しながら3回洗浄を繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式(i−4)で示される繰り返し単位と、下記式(ii−4)で示される繰返し単位と下記式(iii−4)で示される繰り返し単位を含むポリマー11.37g(収率:107.7%)を得た。







ここで、式(ii−4)中、nは繰り返し単位数を表す。
なお、得られたポリマーの分子量(上記のGPCの測定条件で測定)は以下のとおりであった。

数平均分子量: 137000
重量平均分子量:306000
【0221】
実施例11<ポリアリーレン系化合物8の製造>
200mlフラスコの中の雰囲気を窒素置換し、ここに臭化ニッケル13.57gにN−メチル−2−ピロリドン93gを加え、65℃で2時間撹拌し、ここに2、2’−ビピリジン9.70gを加え50℃で1時間撹拌し、室温に冷却した(生じた溶液を溶液−A5とする)。
一方で、500mlセパラブルフラスコに4,4'−ジクロロビフェニル−2,2'−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)20.3g、2,5−ジクロロベンゾフェノン6.51g、N−(3,5−ジクロロフェニル)フェノチアジン0.30gにN−メチル−2−ピロリドン157g、亜鉛粉末12.19gを加えた。この混合物に窒素ガスを20分間バブリングした後、40℃に昇温させ、1.5wt%メタンスルホン酸を含むN−メチル−2−ピロリドン溶液9.55gを加え、3時間撹拌した。室温に冷却後、溶液−A5を加え、室温で8時間撹拌した。
この反応混合物にトルエン80.5gを加えた。この溶液をトルエン241gおよびメチルエチルケトン321gの混合溶液に注ぎ75℃に加熱した。ここに18.9%塩酸49.4gを30分かけて滴下し、1時間75℃で攪拌した。反応混合物を室温に冷却した後、この溶液の油層を分液し、115℃、2kpaで減圧濃縮した。この濃縮分にN−メチル−2−ピロリドン180mlを加え、再度115℃、2kpaで減圧濃縮した。この濃縮分を90℃に加熱し35%塩酸14.7gを滴下した。この混合物を120℃、12時間攪拌した後、120℃、2kpaで減圧濃縮した。2Lセパラブルフラスコにアセトン827gを加え、ここに上記の濃縮物を少量づつ加え、固形物を析出させた。上澄みの溶液を抜き、ここにアセトン827gを加え、攪拌した後、上澄み溶液を抜いた。残った固形物に13.2%塩酸620gを加え1時間攪拌し、上澄み溶液を抜いた。これを2回行なった後、熱水で水溶液のpHが3.5を超えるまで洗浄した。この後、水620gを加えてろ過し、固形物を乾燥させ下記式(i−5)で示される繰り返し単位と、下記式(ii−5)で示される繰返し単位と下記式(iii−5)で示される繰り返し単位を含むポリマー11.4gを得た。



なお、得られたポリマーの分子量(上記のGPCの測定条件で測定)及びイオン交換容量は以下のとおりであった。

数平均分子量:137000
重量平均分子量:321000
イオン交換容量:4.29meq/g
【0222】
実施例12<ポリアリーレン系化合物9の製造>
300mlフラスコの中の雰囲気を窒素置換し、ここに臭化ニッケル14.55gにN−メチル−2−ピロリドン149gを加え、65℃で2時間撹拌し、ここに2、2’−ビピリジン9.28g、N−(3,5−ジクロロフェニル)フェノチアジン1.36gを加え50℃で1時間撹拌し、室温に冷却した(生じた溶液を溶液−A6とする)。
一方で、500mlセパラブルフラスコに4,4'−ジクロロビフェニル−2,2'−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)20.3g、2,5−ジクロロベンゾフェノン5.06g、N−メチル−2−ピロリドン100g、亜鉛粉末11.66gを加えた。この混合物に窒素ガスを20分間バブリングした後、40℃に昇温させ、1.5wt%メタンスルホン酸を含むN−メチル−2−ピロリドン溶液9.20gを加え、3時間撹拌した。室温に冷却後、溶液−A6を加え、室温で7時間撹拌した。
この反応混合物にトルエン54.8gを加えた。この溶液をトルエン164gおよびメチルエチルケトン219gの混合溶液に注ぎ75℃に加熱した。ここに18.9%塩酸65.7gを30分かけて滴下し、1時間75℃で攪拌した。反応混合物を室温に冷却した後、この溶液の油層を分液し、115℃、2kpaで減圧濃縮した。この濃縮分にN−メチル−2−ピロリドン183mlを加え、再度115℃、2kpaで減圧濃縮した。この濃縮分を90℃に加熱し35%塩酸14.7gを滴下した。この混合物を120℃、12時間攪拌した後、120℃、2kpaで減圧濃縮した。2Lセパラブルフラスコにアセトン814gを加え、ここに上記の濃縮物を少量づつ加え、固形物を析出させた。上澄みの溶液を抜き、ここにアセトン814gを加え、攪拌した後、上澄み溶液を抜いた。残った固形物に13.2%塩酸611gを加え1時間攪拌し、上澄み溶液を抜いた。これを2回行なった後、熱水で水溶液のpHが3.5を超えるまで洗浄した。この後、水611gを加えてろ過し、固形物を乾燥させ下記式(i−6)で示される繰り返し単位と、下記式(ii−6)で示される繰返し単位と下記式(iii−6)で示される繰り返し単位を含むポリマー12.7gを得た。



なお、得られたポリマーの分子量(上記のGPCの測定条件で測定)は以下のとおりであった。

数平均分子量:145000
重量平均分子量:363000
【0223】
実施例13〜17<ポリアリーレン系化合物4〜6,8,9の製膜>
ポリアリーレン系化合物4〜6,8,9について、それぞれ表4の濃度になるようにジメチルスルホキシドに溶解させて高分子電解質溶液を調製した。次いで、これらの高分子電解質溶液を用いて実施例2と同様な手法で製膜することで、高分子電解質膜E、F、GH、Iをそれぞれ得た。
【0224】
【表4】

【0225】
実施例18<ポリアリーレン系化合物2を含む膜の製造>
高分子電解質としては、特開2005−197236号公報記載の方法を参考にして、下記式



で示される繰り返し単位からなる、スルホン酸基を有するセグメント(イオン交換基を有するセグメント)と、
下記式


(ここでkは繰返し単位数を示す。)

で示される、イオン交換基を実質的に有しない構造単位を有するブロック共重合体C(イオン交換容量=2.00meq/g、数平均分子量=102000、重量平均分子量=253000、なお、数平均分子量および重量平均分子量は上記のGPC条件での分析により得た)を準備した。
このブロック共重合体CをN−メチルピロリドン/メタノール=60重量%/40重量%の溶液に約20重量%の濃度になるように溶解させ、併せてここにポリアリーレン系化合物2を、ブロック共重合体A/ポリアリーレン系化合物2中の硫黄含量(理論値)=100重量%/0.8重量%となるように溶解させることで高分子電解質溶液を調製した。次いで、この高分子電解質溶液をPET基材上に均一に塗り広げ、その後高分子電解質溶液を80℃で40分予備乾燥した後、120℃で40分乾燥した。得られた乾燥塗膜を大量の蒸留水に一晩浸漬した後、風乾し、PET基材から剥離することで高分子電解質膜Jを得た。
【0226】
実施例19<ポリアリーレン系化合物2を含む膜の燃料電池評価>
上記の高分子電解質膜Aの代わりに高分子電解質膜Jを用いて上記実施例3と同様な手法により、膜−電極接合体および該膜−電極接合体を有する燃料電池セルを製造した。

(燃料電池セルの特性評価[開回路試験])
高分子電解質膜Jを使用して製造した燃料電池セルについて特性評価を行なった。
すなわち、作製した燃料電池セルを95℃に保ちながら、アノード触媒層側には低加湿状態の水素(25mL/分、背圧0.1MPaG)を供給し、カソード触媒層側には低加湿状態の空気(63mL/分、背圧0.05MPaG)を供給して、開回路試験を行った。各原料ガスの加湿は水の入ったバブラーにガスを通すことで行い、水素バブラーの水温は95℃、空気用バブラーの水温は30℃とした。
この条件で燃料電池セルを100時間継続して作動させた。
該試験後、実施例3と同様に電解質膜を取出しGPC分析を行った。該試験前後におけるイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量の維持率を表5に示す。
【0227】
比較例2<高分子電解質膜Kの燃料電池評価>
実施例18において、ポリアリーレン系化合物2を加えない以外は全て同様にすることで、高分子電解質膜Kを得た。また、高分子電解質膜Kを実施例19と同様の方法で試験を実施し、同様にGPC分析を行った。開回路試験前後におけるイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量の維持率を表5に示す。
【0228】
【表5】

【0229】
表5より、本発明のポリアリーレン系化合物2を用いて調製された高分子電解質膜は、該化合物を添加しないものと比較して、開回路試験前後でも高分子電解質の分子量が高く維持されており、優れた長期安定性を有することが判明した。
【0230】
実施例20<ポリアリーレン系化合物2を含む膜の製造>
ポリアリーレン系化合物2(0.05g)をテトラヒドロフラン20g、に溶解し、市販の20質量%ナフィオン(登録商標)溶液(アルドリッチ社製、溶媒:水と低級アルコールの混合物)0.63g、エタノール3.2gを加え、室温にて6時間攪拌することで、劣化防止剤溶液を得た。
得られた劣化防止剤溶液をナフィオン XL(登録商標)膜の片面の中央部における3cm×3cmの領域に、スプレー法にて塗布した。この際、吐出口から膜までの距離は6cm、ステージ温度は60℃に設定した。さらに重ね塗りを行い溶媒を除去することで劣化防止剤層を形成し、3cm×3cmの領域に固形分が0.37mg配置された高分子電解質膜001を得た。
【0231】
実施例21<ポリアリーレン系化合物2を含む膜の燃料電池評価>
[触媒インクの作成]
市販の5質量%ナフィオン(登録商標)溶液(アルドリッチ社製、溶媒:水と低級アルコールの混合物)6.30gに、白金が担持された白金担持カーボン(SA50BK、エヌ・イー・ケムキャット製、白金含有量:50質量%)1.00g投入し、さらにエタノール43.45g、水6.43gを加えた。得られた混合物を1時間超音波処理した後、スターラーで5時間攪拌して触媒インクを得た。
【0232】
[膜電極接合体の作製]
一方の表面に劣化防止剤層を形成した高分子電解質膜001について、劣化防止剤層を有さない表面の中央部における3cm×3cmの領域に、スプレー法にて上記の触媒インクを塗布した。この際、吐出口から膜までの距離は6cm、ステージ温度は75℃に設定した。同様にして重ね塗りをした後、溶媒を除去してアノード触媒層を形成させた。アノード触媒層として14.2mgの固形分(白金目付け:0.6mg/cm)が塗布された。
続いて、劣化防止剤層の上に同様に触媒インクを塗布して、カソード触媒層を形成させ膜電極接合体を得た。カソード触媒層として14.2mgの固形分(白金目付け:0.6mg/cm)が塗布された。
【0233】
[燃料電池セルの組み立て]
上述のようにして得られた膜電極接合体の両外側に、ガス拡散層としてカーボンクロスと、ガス通路用の溝を切削加工したカーボン製セパレータとを配し、さらにその外側に集電体及びエンドプレートを順に配置し、これらをボルトで締め付けることによって、有効電極面積9cmの燃料電池セルを組み立てた。
【0234】
[燃料電池セルの耐久性評価]
製造した高分子電解質膜001を含む燃料電池セルを用いて、実施例19と同様の方法で開回路試験を100時間実施した。
上記開回路試験において発生した排水を、セル中のガス排出口から空気極側と燃料極側から共に採取し、これをイオンクロマトグラフィーにかけ、フッ化物イオンおよび硫酸イオンの溶出量を測定した。結果を表6に示す。イオンクロマトグラフィーの分析条件を以下に示す。

・ 機器:Dionex社製 DX−500
・ カラム:Dionex社製 IonPac AS−17C
・ 溶離液:10mMの水酸化カリウム(KOH)水溶液
・ 溶離液の流速:1.0ml/min
【0235】
比較例3<高分子電解質膜002の燃料電池評価>
高分子電解質膜001の代わりにナフィオン XL(登録商標)膜を実施例21と同様の方法で開回路試験を100時間実施した。
上記開回路試験において発生した排水を、セル中のガス排出口から空気極側と燃料極側から共に採取し、これをイオンクロマトグラフィーにかけ、フッ化物イオンおよび硫酸イオンの溶出量を測定した。イオンクロマトグラフィーの分析条件は上記と同様である。結果を表6に示す。
【0236】
【表6】

【0237】
表6より、実施例21は排水中のフッ化物イオンおよび硫酸イオンの量が比較例3より小さいものであり、電解質の劣化が抑制されていることがわかる。これより、本発明のポリアリーレン系化合物はフッ素系高分子電解質に対しても安定化剤として大変有用であることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される基および下記式(2)で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有するポリアリーレン系化合物を含有することを特徴とする高分子電解質。

−Y01−A−B 式(1)

(式(1)中、Aは窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上の原子を含む6員環を有する2価の芳香族基を表す。該2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。Y01は直接結合または下記式(1−1)〜(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。Bは、水素原子、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)

−Y02−A−Y03− 式(2)

(式(2)中、Aは上記と同義である。Y02およびY03はそれぞれ同一または相異なり直接結合または下記式(1−1)〜(1−3)、(1−5)〜(1−7)、(1−9)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。)



(式(1−1)中、Ar01は置換基を有していてもよい炭素数3〜20の2価の芳香族基を表す。式(1−3)および(1−5)〜(1−7)中、R01は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20の1価の芳香族基を表わす。)
【請求項2】
上記Aが、窒素原子と硫黄原子とを含む6員環を有する2価の芳香族基であることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質。
【請求項3】
上記Aが、−S−で示される基、−SO−で示される基および−S=で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む6員環を有する2価の芳香族基であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子電解質。
【請求項4】
上記式(1)が、下記式(3)で示されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質。



(式(3)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y01、Bはそれぞれ上記と同義である。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R001〜R006はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。)
【請求項5】
上記式(1)が、下記式(4)で示されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質。



(式(4)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y04は直接結合または上記式(1−1)、(1−2)、(1−5)〜(1−7)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。R008〜R014はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。Bは上記と同義である。)
【請求項6】
上記式(2)が、下記式(5)で示されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質。



(式(5)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R001〜R006はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。Y02およびY03はそれぞれ上記と同義である。)
【請求項7】
上記式(2)が、下記式(6)で示されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質。



(式(6)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y03は上記と同義である。Y04は直接結合もしくは上記式(1−1)、(1−2)、(1−5)〜(1−7)および(1−10)のいずれかで示される2価の基を表す。R008〜R014はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)
【請求項8】
さらに、イオン交換基を有する芳香族炭化水素系高分子を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質。
【請求項9】
さらに、イオン交換基を有するフッ素系高分子を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の高分子電解質を含有することを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の高分子電解質と、触媒成分とを含有することを特徴とする触媒組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の高分子電解質膜および請求項11に記載の触媒組成物からなる群より選ばれる1種以上を有することを特徴とする膜電極接合体。
【請求項13】
請求項12に記載の膜電極接合体を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【請求項14】
下記式(7)で示される構造単位を有することを特徴とするポリアリーレン系化合物。



(式(7)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R015〜R022はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。Ar02は置換基を有していてもよい炭素数3〜30の3価の芳香族基を表す。)
【請求項15】
イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位を有することを特徴とする請求項14に記載のポリアリーレン系化合物。
【請求項16】
イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位が下記式(9)で示されることを特徴とする請求項15に記載のポリアリーレン系化合物。



(式(9)中、rは1〜4の整数を表す。Q01はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。R033は水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)
【請求項17】
下記式(10)で示される構造単位並びにイオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位とを有することを特徴とするポリアリーレン系化合物。



(式(10)中、Eは−S−で示される基または−SO−で示される基を表す。Y001は直接結合、−CO−で示される基または−SO−で示される基を表す。R001〜R006はそれぞれ同一または相異なり水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。R007は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基を表わす。)
【請求項18】
イオン交換基およびイオン交換前駆基からなる群より選ばれる1種以上の基を含む構造単位が下記式(11)で示されることを特徴とする請求項17に記載のポリアリーレン系化合物。



(式(11)中、rは1〜4の整数を表す。Q01はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。R033は水素原子、水酸基、フルオロ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表す。)

【公開番号】特開2012−49118(P2012−49118A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165192(P2011−165192)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】