説明

高分子電解質型燃料電池

【課題】 固体高分子電解質燃料電池において、従来のガス拡散層等を介した集電方法では、電子伝導性が低いため、出力が低下する等の課題がある。
【解決手段】 集電体層がガス透過性を有する金属多孔質体からなり、金属多孔質体の電極と接する面にカーボン製の多孔質体を配置し、金属多孔質体100の電極と長繊維糸のカーボン繊維で構成される織物が接することで、コンタクト層が形成し、カーボン繊維が集合してなる糸の緯糸102と経糸103の直径は金属多孔質体の孔径101よりも小さくすることで、コンタクト層の形成が促進される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器等の電源に用いる高分子電解質型燃料電池、特にその電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコンや携帯電話等のモバイル機器の電源として燃料電池の可能性が検討されている。そこで、“携帯形の燃料電池装置”は高圧の水素をボンベに詰めて用いる方法(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
また、メタノールを直接電極上で反応(DMFC)させる方法が提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【0004】
これらの燃料電池の反応性は三相界面の状態が支配的であるとされている(尚、三相界面とは、電解質−触媒電極−反応ガスの3者が接する界面である。)、(例えば非特許文献1参照。)。
【0005】
そのため効率的に発電するためには、良好な三相界面を常に維持しなければならず、触媒層に隣接する集電体を兼ねたガス拡散層(GDL)には、(1)電子導電性が高いこと、(2)ガスの拡散性・通気性が高いこと、(3)反応で生成した水または水蒸気を効率的に排出する、(4)電気化学的に安定である等の機能が求められる。これらの機能を満たすGDLとして従来は、カーボンペーパー等のカーボン製の支持集電体が多く用いられてきた。
【0006】
そこで、GDLにカーボンペーパー等の材料を用いた場合、発電セルの内部抵抗を低減するためには、GDLと触媒層との密着性を向上するために、押し付けなければならない。しかし、従来からあるカーボンペーパー等のカーボン製多孔質体を用いる場合、面方向に繊維が発達しており、押し付けることによって空隙が潰れてしまい、上記のガスあるいは生成水の通気性能が低減するなどといった課題があった。これを解決するために、空孔率の高い発泡金属等を使用することも検討されている(例えば特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平09−092318号公報
【特許文献2】特開2001−313046号公報
【特許文献3】特開2004−140001号公報
【非特許文献1】表面技術、46巻、1995年、702項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のカーボンペーパーを用いた場合は、カソード極において、水の蒸発が十分ではなくフラッディングを起こしやすかった。しかし、カーボンペーパーに変わり発泡金属を用いた場合は空孔度が高く水を蒸発させる場合に有利ではあるが、発泡金属の端面は凹凸であり、発泡金属と触媒層が接触する面積が小さくなり、電子伝導性が高く取れないため、所望の出力が得られない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に示す課題を解決するために、プロトン導電性の樹脂からなる電解質層の両面にそれぞれ触媒層を形成したアノード極及びカソード極を有し、各電極の電解質層と反対側の面に集電体層を有する固体高分子電解質型燃料電池において、集電体層がガス透過性を有する金属多孔質体からなり、金属多孔質体の電極と接する面にカーボン製の多孔質体を配置する構造とした。さらに、前記ガス透過性を有する金属多孔質体は、2種類以上の孔径の異なる金属多孔質体を組み合わせて用いる。特に、カーボン製の多孔質体と接する面の側には孔径の小さい金属多孔質体を用い、カーボン製の多孔質体と接する面の反対側には、孔径の大きな金属多孔質体を組み合わせて用いる。この時、孔径の大きな金属多孔質体として、曲げ強度が高い材料が好ましく、発泡金属体を用いる以外にも、開孔率が40%以上を有するパンチングメタルやエキスパンドメタルなどを用いる。
【発明の効果】
【0009】
金属多孔質体は骨格が海綿の様に3次元の網目状になっており、その端面は無数の開放端を有する球の集合体である様に近似できる。この時の球と近似される1つを単位空孔104とする。金属多孔質体をカーボン製の多孔質体へ押し付ける。図3(a)に、長繊維糸のカーボン繊維が集合してなる緯糸102と経糸103とで構成される織物と単位空孔104を示す。図3(b)に、金属多孔質体がカーボン製の多孔質体に接した状態を示す。図3(b)の状態では、長繊維糸のカーボン繊維が集合してなる緯糸102と経糸103はその結束を保った状態である。図3(c)に、金属多孔質体をカーボン製の多孔質体に矢印110の方向で押し付けた場合を示す。図3(c)に示す状態では、単位空孔104を押し付けることで、緯糸102と経糸103を外に押し出す力111が生じ、単位空孔104の開放部に位置する緯糸102または経糸103のいずれか、またはその両方の結束が緩む。これらの過程によって、コンタクト層が形成される。このコンタクト層はカーボン製の多孔質体とカソード極に開放された外気の2相で構成される“固−気界面層”を形成し、繊維と繊維の間隔が広がり、空気を取り入れた小空間が、固−気界面層を増大させる。さらに、コンタクト層は、金属多孔質体の断面に生じた矩形でその先端がクサビ状の端面を有する突起が長繊維糸のカーボン繊維が集合してなる緯糸102と経糸103に突き刺さり、炭素繊維の束に深く入り込み強固で、接触面積を増大させた接触界面部つまり固−固界面層を形成する。
【0010】
このようなコンタクト層を発達させることで、固−気界面層を増大させることにより、燃料電池の電気化学反応によって、カソード極の触媒層で生じた水の蒸発を促進する効果がある。
【0011】
これによって、従来のカーボンペーパーを用いた場合は、カソード極において、水の蒸発が十分ではなくフラッディングを起こしやすかったが、回避が可能となる。また、所望の出力を維持できる。
【0012】
また、“固−固界面層”が増大することで、電子伝導性に影響を及ぼす接触抵抗を低減する効果がある。このとき、前記ガス透過性を有する金属多孔質体に、2種類以上の孔径の異なる金属多孔質体を組み合わせ、且つ、孔径の大きな金属多孔質体として、曲げ強度が高い材料を用いることで、前記コンタクト層を面方向対して均質に形成することで、面内の接触抵抗のばらつきを抑制する効果により、最大出力も向上することが期待できる。
【0013】
さらに、コンタクト層を形成することで、クサビ状の端面を有する金属多孔質体の先端が触媒層及び電解質膜と直接接することを防ぎ、貫通や短絡による信頼性低減を抑制するような効果がある。また、コンタクト層を形成することで、金属多孔質と異なる金属材料で構成された触媒金属が直接接することがないため、局所電池の働き等による腐食等の発生を抑制する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のカーボン製の多孔質体は長繊維糸のカーボン繊維が集合してなる緯糸102と経糸103とで構成される織物等を用いる事ができ、その模式図を図2に示す。このとき、金属多孔質体100の電極と長繊維糸のカーボン繊維で構成される織物が接することで、コンタクト層が形成される。ここで、金属多孔質体として発泡金属を用いた場合、その単位となる空孔は針状の金属で形成された内部に空隙を有する球状の構造である。コンタクト層の形成に用いる金属多孔質体の断面を、図1に模式する。この時、多孔度が80%以上で100%に近い金属多孔質の内部存在する空隙を擬似的に球とした場合に、球の直径に相当する値を孔径101とする。そのため、カーボン繊維が集合してなる糸の緯糸102と経糸103の直径は金属多孔質体の孔径101よりも小さくすることで、コンタクト層の形成が促進される構成とする。
【0015】
図4に本発明の実施例を示す。ここで、本発明のカソード極の場合において、プロトン導電性の樹脂からなる電解質層107の配置してある面から外気に向かって外側と呼び、外気から電解質層107の存在する側へ向かって内側と呼ぶ。この時、プロトン導電性の樹脂からなる電解質層107に接する外側の位置に微粒子状の触媒を担持したカーボン粒子を含む触媒層108を配置する。触媒層108とカーボン製の多孔質体102および103の間にPTFEなどで撥水処理を施したカーボン粒子で構成される導電性を有する撥水層109を形成する。この撥水層109の外側に隣接する位置に長繊維糸のカーボン繊維が集合してなる緯糸102と経糸103とで構成される織物であるカーボン製の多孔質体を配置する。更に、長繊維糸のカーボン繊維が集合してなる緯糸102と経糸103とで構成される織物であるカーボン製の多孔質体の外側の位置に、ガス透過性を有する金属多孔質体100からなる集電体層を配置する構造とした。
【0016】
本発明の燃料電池で用いるプロトン導電性の樹脂からなる電解質層107は、常温で、プロトン導電性を示すパーフルオロ樹脂膜やエンジニアリングプラスチックの複合化等のグラフト重合膜、部分フッ素化膜を用いることが出来るが、それらの材質に限定されない。
【0017】
カソード極の触媒層108、及び、アノード極の触媒層に用いる触媒は白金を担持したカーボンを用いることが出来る。また、電極の触媒元素として、白金に限らず各種合金や酸化物を用いる事が出来る。
【0018】
金属製多孔質体100は通気性能や通液性能以外にも、電子伝導性に富み、耐食性が高く、機械的強度を有することが要求される。そのため、機械的強度を持たせた骨格と電子伝導性を持たせた伝導層と耐食性の保護層の3つの機能をそれぞれ異なる種類の材料で構成されていても良いが、3つの異なる機能を金属の単体または合金で行なうことも可能である。例えば、金属チタン、金属ニッケル、又は、ニッケルークロムの合金、又は、ステンレス鋼を使用することができる。
【0019】
金属製多孔質体は、金属繊維の焼結体、粉末金属の焼結体等にすることができる。金属製多孔質体100として、金属製ワイヤーを編んだ網やエキスパンドメタル、パンチングメタル(孔形状:丸穴、スリット、ヘリボン、角穴、スリット出窓スクリーン)を組み合わせて用いることができる。多孔率や通気の連通孔を考慮すると、金属多孔質体として発泡金属体を用いることが最も望ましい。金属製多孔質体として、発泡金属体を用いた場合、骨格が海綿のように3次元の網目状になっているため、非常に高い多孔率により高い通気性能または通液性能を有する。発泡金属体の製法は、原粉粉末と、水溶性樹脂バインダーと、非水溶性炭化水素系有機溶剤である発泡剤と、必要に応じて添加される界面活性剤と、残部の水および不可避不純物とを混合してなる発泡スラリーを原料として、焼成された発泡焼結金属によって構成された発泡金属体でも良い。あるいは、発泡ウレタンに導電性処理を行ってからメッキをし、必要に応じて熱処理を行うメッキプロセスで製造したものによって構成された発泡金属体でも良い。さらに、金属製多孔質体は、2種類以上の孔径の異なる金属多孔質体を組み合わせて用いることが良い。特に、カーボン製の多孔質体と接する面の側には孔径の小さい金属多孔質体を用い、カーボン製の多孔質体と接する面の反対側には、孔径の大きな金属多孔質体を組み合わせて用いる。この時、孔径の大きな金属多孔質体として、曲げ強度が高い材料が好ましく、発泡金属体を用いる以外にも、開孔率が40%以上を有するパンチングメタルやエキスパンドメタルなどを用いることが出来る。
【0020】
金属多孔質体100はカソードにおいて生成した水蒸気が大気中に拡散し易いように、空孔度が60%以上の金属製多孔質体を厚さ0.5mm以上で用いる。より好ましくは、空孔度が90〜98%の金属製多孔質体を厚さ0.5mm以上2mm以下で用いる。また、圧縮強度は0.01〜0.15Kg/mm3が好ましい。発泡金属体100を用いる場合、金属製の単位空孔104の平均直径、つまり孔径101は炭素製の多孔質材料の炭素繊維の径より大きければ良く、0.3mm以上3.2mm以下が好ましい。より好ましくは孔径が0.6mm以上1mm以下である。これは、カソード極の触媒層108で必要とする空気の通気性を高めるには孔径が大きい方が好ましい。しかし、発泡金属体の孔径101が大き過ぎる場合、炭素製の多孔質は機械的強度が低く、炭素製多孔質体との接点が減少すると同時に、荷重110を強めると押し付けた部分のみが局所的に圧縮され、潰れる。この時、炭素製多孔質体でガスの拡散する通路の(パス)の連続性が失われ、通気性が低下する。また逆に、発泡金属体の孔径101が小さ過ぎる場合、繊維が孔密着、または孔を塞ぎ、炭素製多孔質体でガスの拡散する通路の(パス)の連続性が失われ、通気性が低下することにより、生成した水蒸気や水の排出においても阻害する。これら通気性の低下や生成物の排出性の阻害は燃料電池の発電において、連続発電時に出力の低下を招く。このときの通気性を圧力損失で換算すると0.5m/sの風速において、10mmaq以下、より好ましくは、5mmaq以下となる。水分を蒸発させる際に、必要となる比表面積は500以上15000m2/m3である。
【0021】
上記金属製多孔質体100を電極に組み込む際は、酸化防止のためのメッキや金属溶射等を行なうことが望ましい。メッキ材料としては金やタンタルを用いることが望ましい。また、カーボン製多孔質体と接することでコンタクト層を形成する面は酸化皮膜の除去を行なうことが好ましい。酸化皮膜の除去はサンドペーパーやサンブラストなどの物理的除去や塩酸、硫酸、硝酸等の酸性溶液で酸洗処理を行う方法を用いることが出来る。
【0022】
本発明ではカソードまたはアノード少なくとも1方の極に発泡金属体100とカーボン製の多孔質体を同時に用いるという構成にした。
【0023】
カーボン製多孔質体として、紙状の“カーボンファイバーペーパー(以下、CFPと略す)”を用いることができる。カーボンファイバーペーパーは、短繊維をバインダーで結着させて作製したカーボン材料においては短繊維の10mm以上を用いることができる。
【0024】
コンタクト層を形成するためには、複数本の炭素繊維 が集合してなる緯糸と経糸とで構成される織物を用いることが好ましい。この複数本の炭素繊維 が集合してなる緯糸と経糸とで構成される織物を “カーボンクロス(以下、CLと略す)”と呼ぶことがある。カーボン材料の純度は85%以上が好ましく、その密度は1.72〜2.1g/ccが好ましい。繊維径は1〜20μmが好ましい。緯糸と経糸とで構成される織物の場合、緯糸および経糸の密度は15〜25本/cmが好ましく。カーボン材料の密度は8〜200g/m2を有することが好ましく、より好ましくは、80〜200g/m2を有することが好ましい。そのカーボン材料を無加重における厚さは180〜450μmが好ましく、より好ましくは、280〜400μmである。その生地は、平編、フライス編、鹿の子編等を用いることができるが、平編みが好まれる。炭素材料の空孔度は70〜90%が好ましい。
【0025】
ここで、PTFEなどで撥水処理を施したカーボン粒子で構成される導電性を有する撥水層109とその外側に隣接する長繊維糸のカーボン繊維が集合してなる緯糸102と経糸103を合わせてカーボン製多孔質体111とする。この通気性の低下や生成物の排出性に影響の度合いから、カーボン製多孔質体111および金属製多孔質体100の積層方向の総厚さは3.1mm以下が好ましい。また、カーボン製多孔質体111は0.9mm以下が好ましく、上記金属製多孔質体100の厚みも、3.0mm以下が好ましい。よって、図5に前記カーボン製多孔質体111の厚みをt1、前記金属製多孔質体100の厚みをt2の関係を示す。このt2/t1の比が7.5[−]以下であることがのぞましい。また、図6にカーボン製の多孔質体111と金属多孔質体100を外側から観察した鳥瞰図を示す。このとき、カーボン製の多孔質体111の面積112をS1、前記金属多孔質体100の面積113をS2とする。この時の、S2/S1の比が1以上であることが好ましい。
【0026】
さらに、金属製多孔質体100の表面を撥水化処理することで、反応によって生じた水蒸気や水を速やかに排出するため、前記金属製多孔質体100の表面の少なくとも一部に撥水処理を施すことが望ましい。または、前記金属製多孔質体100の表面の少なくとも一部に親水処理を施すことが望ましい。さらに、前記金属製多孔質体100の表面に撥水処理と親水処理を区分して同時に施すことが望ましい。撥水化処理は純金をコートする方法、黒鉛等のカーボンをコートする方法、フッ素を含有する有機物をコートする方法、を用いることで可能となる。金をコートする方法は電解メッキ、無電解メッキ、溶射、蒸着、スッパリング等のいずれの方法を用いることができる。カーボンの場合は前述の方法のほかにバインダーと混合した溶液やスラリーを塗布することも可能である。フッ素を含有する有機物をコートの方法として、フッ素含有物を加熱炉中に配置し、前記のフッ素を含有する有機物の分解温度近傍(400℃以下)まで熱処理し、その分解蒸気を当てることで被覆することができる。または、おおよそ粒径が1〜15μmに揃ったフッ素を含有する有機物の微粒子を水、アルコール又はその他の有機溶剤に分散させた分散溶剤中に、金属製多孔質体100を浸漬後、金属製多孔質体100を引き上げ、金属製多孔質体100の表面に付着した余分な溶剤を除去後、金属製多孔質体100にコートされたフッ素を含有する有機物の分散溶剤の溶媒の沸点以上の温度に加熱することにより乾燥除去し、その後、フッ素を含有する有機物の分解温度近傍以下の温度(400℃以下)を用い加熱炉内で、熱処理することが出来る。ここで、フッ素を含有する有機物として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)などを用いることができる。
【0027】
さらに、特に、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)を用いる場合は、N−メチルピロリドン等の有機溶媒に希釈後、金属製多孔質体100を浸漬後、前出の方法を用いて、コートする方法を用いることができる。
フッ素を含有する有機物のコートに伴う熱処理は大気中、または、真空中の何れかで実施することが出来るが、真空中で行なうことがより望ましい。
【0028】
さらに、撥水性のカーボン層109は導電性を有するカーボンと上述したフッ素を含有する有機物の混合物を用いて、形成することができる。撥水性のカーボン層109に用いる導電性を有するカーボンとして、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ランプブラックで分類されるカ−ボンブラック類は特異な粒子形状により比表面積が大きく好ましい。比表面積は用いる炭素質材料の種類によっても異なるが、同一炭素質材料であっても粉砕工程を経た後の粒径の分布の度合いによっても異なる。本発明でもちいる炭素質材料は比表面積(BET法)が5〜50m2/gに分布していることが好ましく、より好ましくは10〜35m2/gに分布しているものがよい。
【0029】
ここで、図7に発電セルの全体について説明する。発電素子114は金属多孔質体100を除き、構成される。その構成要素とは、プロトン導電性の樹脂からなる電解質層107、カソードの触媒層108、アノードの触媒層、押さえ部110、カーボン製多孔質体111、および燃料の漏れを防ぐためのパッキンで構成される。カソード極の発電素子1114の外側に金属製多孔質体100を配置し、この金属製多孔質体100に荷重をくわえるために押さえ板110を配置する。押さえ板110は金属製多孔質体100に外気を供給するためのスリットまたはそれ以外の形状の貫通孔があいている。この押さえ板110はアノード集電部117に発電素子114に荷重を加え、アノード極の導通をとる。ここで、押さえ板に荷重を加える方法として、押さえ板110にボルト116を貫通させ筐体119に締め付ける方法を用いることができる。更に、筐体119には、アノード極に燃料となる水素を供給するための燃料供給部118を配置することが出来る。
【0030】
金属製多孔質体100から直接電極のリード115を接続することが好ましい。特に、2種類以上の金属製多孔質体(2)からリードを出す場合は少なくとも一方と電気的接続を保てば良い。金属製多孔質体にリードを接続する方法は接触による電気的接続を用いることができるが、抵抗溶接、レーザー溶接、超音波溶接等の手段を用いることができる。
【0031】
金属製多孔質体100を加重する押さえ部113の材質として、ポリエキレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイドなどの高分子ポリマー、酸化アルミナなどのセラミックス、金属製多孔質体110と同様な金属材料、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレスステンレス鋼、スプロン等の耐食性のバネ性金属材料を用いることができる。特に、高分子ポリマーを用いる場合は、ガラスで繊維を強化した材料を用いることが良い。
【0032】
燃料とする水素は水素発生物質と発生を促進する物質を組み合わせることで発生させる。ここに、水素発生物質と発生を促進する物質の組み合わせの例をそれぞれ括弧で括り、次に列挙する。(水酸化ナトリウム、金属アルミニウム)、(水素化ホウ素ナトリウム、水)、(水素化ホウ素ナトリウム、硫酸)、(水素化ホウ素ナトリウム、リンゴ酸)、(水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸)、(水素化ホウ素ナトリウム、シュウ酸)、(水素化ホウ素ナトリウム、)、(水素化ホウ素ナトリウム、塩化コバルト)、(水素化ホウ素ナトリウム、塩化ニッケル)、(水素化ホウ素ナトリウム、金属コバルト粉末)、(水素化ホウ素ナトリウム、ニッケル粉末)、(水素化ホウ素ナトリウム、ホウ酸)、(水素化リチウム、水)、(水素化ナトリウム、水)、(水素化マグネシウム,水)、(水素化カルシウム、水)、(水素化アルミリチウム、水)。これらの水素発生物質として水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合、水以外に、各種無機酸、有機酸、遷移金属の塩化物等を用いることができる。
【0033】
本発明の電源を応用が可能な機器を下記の通り、分類して例示する。〔1〕2〜20級Wの機器として、ノートパソコン,タッチパネル入力パソコン,映像機器用外付け電源,照明機器,ハンディクリーナをあげることができ、〔2〕1〜2W程度を必要とする機器として、デジタルスチルカメラ,ヘルス機器,携帯電話,ウェアラブル携帯電話,オーダーエントリーシステム端末,携帯プリンタ,電動工具,自動車電話,トランシーバ,ペン入力パソコン,電子ブックプレーヤ,液晶テレビ,ウェアラブルテレビ,電気シェーバ,を上げることができる。更に、〔3〕1W以下で動作できる機器、ウェアラブルパソコン,腕型PHS,電子辞書,玩具,医療機器,ウェアラブル医療機器,ページャ,ウェアラブル電卓,ウェアラブルGPSシステム,音声入力機器,メモリカード,テープレコーダ,ラジオ,ヘッドホンステレオ,ポータブルDVD,電子手帳,コードレスフォン子機,ポータブルMD,ポータブルCD,カムコーダー,ゲーム機器,を例示することができる。特に、本発明は〔2〕、〔3〕に示す小型または薄型が求められ、さらに軽量であることが必要なアプリケーションにおいて、有効な電源として最も寄与する。
【実施例1】
【0034】
本発明に基づき、カソード触媒層108およびアノード触媒層が予め固体電解質膜107に形成された市販の膜電極接合体の両側から繊維状のカーボン製多孔質体を用いて挟持した。そのとき、カソードの触媒層108とカーボン製多孔質体111の外周部にスペーサーの役目を兼ねたパッキンを配置する。同様にアノード触媒層とカーボン製多孔質体の外周部にスペーサーの役目を兼ねたパッキンを配置する。
この電解質膜107の厚みは30μmである。この電解質膜のカソード極側およびアノード極側の両極を共に、触媒として白金を0.3mg/cm2で分散(担持)させたカーボン粒子とプロトン導電性のフッ素系固体電解質により触媒層が構成されている。触媒層の寸法は20mm×25mmとした。パッキンに用いたゴム硬度は約50%で、厚さ200μmを所望の寸法に切り出して使用した。この膜電極接合体の両側から挟持するカーボン製多孔質体111の厚さは300〜440μmの厚さを有した。このカーボン製多孔質体111の表面に撥水性を有する導電性のカーボンを含む層109を予め形成し、撥水性を有する導電性のカーボンを含む層109と触媒層が電気的に接続するように配置した。このカーボン製多孔質体111の面積112は、触媒層よりも面積比で約30%の割合で面積が大きい。
【0035】
このカーボン製多孔質体111と金属製多孔質体100をもちいて、コンタクト層を形成した。この金属製多孔質体100として、厚さ2.0mmのニッケル製の発泡金属体(富山住友電工製、セルメット、品番#4)を金属ハサミにより、30mm×42mmの寸法に切り出した。この金属多孔質体は、セル数が27〜33個/インチ、孔径が0.8mm、比表面積が約2500m2/m3の特性を有する。この金属多孔質体に電子を取り出すために厚さ0.1mm、幅7.0mmのニッケル製の帯び状のリード線を抵抗溶接により直接溶接した。金属製多孔質体100でリード115と溶接部は予め圧延し、平面を出すものとする。リード115の溶接は3.0mm間隔で、約30mmに渡って行なった。
このリード115のついた金属製多孔質体100の表面に撥水処理を行なった。撥水処理は、このリードのついた金属製多孔質体100を、フッ素を含有する樹脂の微粉末の分散溶液(デュポン製、DryFilm、RA)に浸漬し、金属製多孔質体100の表面の全面をPTFE微粉末によって被覆し、120℃の温風乾燥庫にて20分間、溶媒の除去を実施した。さらに、300℃に加熱し、フッ素を含む樹脂による皮膜を発泡金属の全面に渡って広げた。
【0036】
撥水処理により、この金属製多孔質体100の表面が絶縁性の高い樹脂によりコートされるので、絶縁され、電子導電性を失う。そこで、金属製多孔質体100のカーボン製多孔質体111と接する面をサンドペーパー(1000番)により、研磨することで、前記フッ素を含有する樹脂の皮膜を除去し、更に、金属製多孔質体110の表面の酸化皮膜も除去した。金属製多孔質体110を、1mm間隔で凸凹形状の水素供給部118を有するアノード極の集電体117に、ステンレススチール製の押さ部110を用い、ボルト116により締めつけた。このとき発電素子114の周囲に配置されたボルト116はトルクドライバー(東日製、RTD120CN型)にて、50CNm以下のトルクで締め付けた。そして、上述したパラメータとして、t1=0.2mm、t2=2.0mm、t2/t1=10[−]なるセルを作成した。このとき、発泡金属はカーボン製の多孔質体を3kgf/cm2の荷重で押しつけている。このように作成したセルを実施例1とする。このセルに純度99.99%で、24℃なる水素を単位面積あたり、10cc/min・cm2の流量で、出口のガス圧が概ね大気圧になるように調整供給した。カソード側は約40%RH、25℃の大気に暴露した。このとき、電子負荷装置(菊水電子工業製、KFM2030型)を使用し、セルに対する負荷を0A/cm2〜0.8A/cm2の間で変化させ、その時の電圧を記録計にて記録した。その際の結果を図8に示す。
【0037】
グラフより、0.3A/sqcmにおける電圧は約0.7V近傍であることがわかる。次に、このセルに上述したガス供給条件にて、0.3A/sqcmの出力を維持しながら、電圧の変化を記録した。この結果を図.10に記載する。時間の経過と共に、電圧が変化し、その変化の度合いを図6に実施例1として示す。この時、0.6Vの電圧を18時間以上に渡り、維持しつづけた。18時間時点の電圧は0.636Vであった。
【実施例2】
【0038】
上記実施例1で、PTFE微粉末を用いた撥水処理を行なわなかったが、金属製多孔質体の表面の酸化皮膜の除去を一面のみ行なった以外は全て同じ条件で作製した燃料電池を実施例7とする。上述した条件と同じく、0.3A/sqcmの出力を維持しながら、電圧の変化を記録した。この結果を図9に実施例2として、記載する。これより、本発明の固体電解質型燃料電池用電極を用いた燃料電池は優れた電圧維持特性を示すことが解かる。18時間時点の電圧は0.628Vであった。
【実施例3】
【0039】
上記実施例1で、PTFE微粉末を用いた撥水処理を行なわず、酸化皮膜の除去も行なわなかった以外は全て同じ条件で作製した燃料電池を実施例3とする。上述した条件と同じく、0.3A/sqcmの出力を維持しながら、電圧の変化を記録した。この結果を図9に実施例3として、記載する。これより、本発明の固体電解質型燃料電池用電極を用いた燃料電池は優れた電圧維持特性を示すことが解かる。18時間時点の電圧は0.546Vであった。
【実施例4】
【0040】
本発明に基づき、カソード触媒層204およびアノード触媒層202が予め固体電解質膜203に形成された市販の膜電極接合体の両側から繊維状のカーボン製多孔質体201およびカーボン製多孔質体205を用いて挟持した。そのとき、カソードの触媒層204とカーボン製多孔質体205の外周部にスペーサーの役目を兼ねたパッキンを配置する。同様にアノード触媒層202とカーボン製多孔質体の外周部にスペーサーの役目を兼ねたパッキンを配置する。
この電解質膜203の厚みは30μmである。この電解質膜のカソード極側およびアノード極側の両極を共に、触媒として白金を0.3mg/cm2で分散(担持)させたカーボン粒子とプロトン導電性のフッ素系固体電解質により触媒層が構成されている。触媒層の寸法は直径11mmの円形とした。パッキンに用いたゴム硬度は約50%で、厚さ200μmを所望の寸法に切り出して使用した。この膜電極接合体の両側から挟持するカーボン製多孔質体201とカーボン製多孔質体205の厚さは300〜440μmの厚さを有した。このカーボン製多孔質体201とカーボン製多孔質体205の表面に撥水性を有する導電性のカーボンを含む層を予め形成し、撥水性を有する導電性のカーボンを含む層と触媒層が電気的に接続するように配置した。
【0041】
このカーボン製多孔質体205と金属製多孔質体206をもちいて、コンタクト層を形成した。この金属製多孔質体206として、厚さ1.0mmのニッケル製の発泡金属体(三菱マテリアル製)を金属ハサミにより、直径20mmの円形に切り出した。この金属多孔質体は、平均孔径は、300μmである。
【0042】
1mm間隔でスリット部を有する燃料供給部、兼アノード極の集電体200と、ステンレススチール製の押さ板207を用い、ボルト208により、上述した発電要素を締めつけた。このステンレススチール製の押さ板207には、通気性の穴を有し、電子を取り出すためリード接続した。また、このステンレススチール製の押さ板207とボルト部は絶縁を施してある。このとき発電素子の周囲に配置されたボルト208はトルクドライバー(東日製、RTD120CN型)にて、50CNm以下のトルクで締め付けた。そして、上述したパラメータとして、t1=0.2mm、t2=1.0mm、t2/t1=5[−]なるセルを作成した。このように作成したセルを実施例4とする。また、図10に本発明の実施の形態を模式的に示した。このときの、このセルに純度99.99%で、24℃なる水素を単位面積あたり、10cc/min・cm2の流量で、出口のガス圧が概ね大気圧になるように調整し供給した。カソード側は約40%RH、25℃の大気に暴露した。このとき、電子負荷装置(菊水電子工業製、KFM2030型)を使用し、セルに対する負荷を0A/cm2〜1.0A/cm2の間で変化させ、その時の電圧を記録計にて記録した。図13に実施例1、および実施例4で作製された燃料電池の電流/電圧特性をしめす。
【実施例5】
【0043】
本発明に基づき、カソード触媒層204およびアノード触媒層202が予め固体電解質膜203に形成された市販の膜電極接合体の両側から繊維状のカーボン製多孔質体201およびカーボン製多孔質体205を用いて挟持した。そのとき、カソードの触媒層204とカーボン製多孔質体205の外周部にスペーサーの役目を兼ねたパッキンを配置する。同様にアノード触媒層202とカーボン製多孔質体の外周部にスペーサーの役目を兼ねたパッキンを配置する。
【0044】
この電解質膜203の厚みは30μmである。この電解質膜のカソード極側およびアノード極側の両極を共に、触媒として白金を0.3mg/cm2で分散(担持)させたカーボン粒子とプロトン導電性のフッ素系固体電解質により触媒層が構成されている。触媒層の寸法は直径11mmの円形とした。パッキンに用いたゴム硬度は約50%で、厚さ200μmを所望の寸法に切り出して使用した。この膜電極接合体の両側から挟持するカーボン製多孔質体201とカーボン製多孔質体205の厚さは300〜440μmの厚さを有した。このカーボン製多孔質体201とカーボン製多孔質体205の表面に撥水性を有する導電性のカーボンを含む層を予め形成し、撥水性を有する導電性のカーボンを含む層と触媒層が電気的に接続するように配置した。
【0045】
このカーボン製多孔質体205と金属製多孔質体206をもちいて、コンタクト層を形成した。この金属製多孔質体206として、厚さ1.0mmのニッケル製の発泡金属体(三菱マテリアル製)を金属ハサミにより、直径20mmの円形に切り出した。この金属多孔質体は、平均孔径は、300μmである。
【0046】
さらに、このコンタクト層を安定に形成するため、金属製多孔質体206に接し、炭素製の多孔質体の反対側の面に、金属製多孔質体206とは、孔径の異なる金属製多孔質体210を配置した。この金属製多孔質体210とは、板厚さ0.3mmのニッケルから作製したエキスパンドメタルであり、網の短目方向の中心距離(SW)1.8mm、網の長目方向の中心距離(LW)3.0mm、刻み幅(W)0.5mmの特性を有する。
【0047】
1mm間隔でスリット部を有する燃料供給部、兼アノード極の集電体200と、ステンレススチール製の押さ板207を用い、ボルト208により、上述した発電要素を締めつけた。このステンレススチール製の押さ板207には、通気性の穴を有し、電子を取り出すためリードを接続した。また、このステンレススチール製の押さ板207とボルト部は絶縁を施してある。このとき発電素子の周囲に配置されたボルト208はトルクドライバー(東日製、RTD120CN型)にて、50CNm以下のトルクで締め付けた。そして、上述したパラメータとして、t1=0.2mm、t2=1.0mm、t2/t1=5[−]なるセルを作成した。このように作成したセルを実施例4とする。また、図10に本発明の実施の形態を模式的に示した。このときの、このセルに純度99.99%で、24℃なる水素を単位面積あたり、10cc/min・cm2の流量で、出口のガス圧が概ね大気圧になるように調整し供給した。カソード側は約40%RH、25℃の大気に暴露した。このとき、電子負荷装置(菊水電子工業製、KFM2030型)を使用し、セルに対する負荷を0A/cm2〜1.0A/cm2の間で変化させ、その時の電圧を記録計にて記録した。図13に実施例1、実施例4および、実施例5で作製された燃料電池の単位面積当たりの最大出力を比較して示す。
【実施例6】
【0048】
本発明に基づき、カソード触媒層204およびアノード触媒層202が予め固体電解質膜203に形成された市販の膜電極接合体の両側から繊維状のカーボン製多孔質体201およびカーボン製多孔質体205を用いて挟持した。そのとき、カソードの触媒層204とカーボン製多孔質体205の外周部にスペーサーの役目を兼ねたパッキンを配置する。同様にアノード触媒層202とカーボン製多孔質体の外周部にスペーサーの役目を兼ねたパッキンを配置する。
【0049】
この電解質膜203の厚みは30μmである。この電解質膜のカソード極側およびアノード極側の両極を共に、触媒として白金を0.3mg/cm2で分散(担持)させたカーボン粒子とプロトン導電性のフッ素系固体電解質により触媒層が構成されている。触媒層の寸法は直径11mmの円形とした。パッキンに用いたゴム硬度は約50%で、厚さ200μmを所望の寸法に切り出して使用した。この膜電極接合体の両側から挟持するカーボン製多孔質体201とカーボン製多孔質体205の厚さは300〜440μmの厚さを有した。このカーボン製多孔質体201とカーボン製多孔質体205の表面に撥水性を有する導電性のカーボンを含む層を予め形成し、撥水性を有する導電性のカーボンを含む層と触媒層が電気的に接続するように配置した。
【0050】
このカーボン製多孔質体205と金属製多孔質体206をもちいて、コンタクト層を形成した。この金属製多孔質体206として、厚さ1.0mmのニッケル製の発泡金属体(三菱マテリアル製)を金属ハサミにより、直径20mmの円形に切り出した。この金属多孔質体は、平均孔径は、300μmである。
【0051】
さらに、このコンタクト層を安定に形成するため、金属製多孔質体206に接し、炭素製の多孔質体の反対側の面に、金属製多孔質体206とは孔径の異なる金属製多孔質体210を配置した。この金属製多孔質体210とは、板厚さ0.3mmのニッケルから作製したエキスパンドメタルであり、網の短目方向の中心距離(SW)1.8mm、網の長目方向の中心距離(LW)3.0mm、刻み幅(W)0.5mmの特性を有する。
【0052】
また、さらに、金属製多孔質体210に接し、金属製多孔質体206と反対の面に、さらに孔径の異なる金属製多孔質体211を配置した。この金属製多孔質体とは、厚さ1mmで、孔径2mmのステンレススチール製のパンチングメタルであり、孔のピッチは3.0mm、開孔率は約40.6%とした。
【0053】
1mm間隔でスリット部を有する燃料供給部、兼アノード極の集電体200と、ステンレススチール製の押さ板207を用い、ボルト208により、上述した発電要素を締めつけた。このステンレススチール製の押さ板207には、通気性の穴を有し、電子を取り出すためリード接続した。また、このステンレススチール製の押さ板207とボルト部は絶縁を施してある。このとき発電素子の周囲に配置されたボルト208はトルクドライバー(東日製、RTD120CN型)にて、50CNm以下のトルクで締め付けた。そして、上述したパラメータとして、t1=0.2mm、t2=1.0mm、t2/t1=5[−]なるセルを作成した。このように作成したセルを実施例4とする。また、図10に本発明の実施の形態を模式的に示した。このときの、このセルに純度99.99%で、24℃なる水素を単位面積あたり、10cc/min・cm2の流量で、出口のガス圧が概ね大気圧になるように調整し供給した。カソード側は約40%RH、25℃の大気に暴露した。このとき、電子負荷装置(菊水電子工業製、KFM2030型)を使用し、セルに対する負荷を0A/cm2〜1.0A/cm2の間で変化させ、その時の電圧を記録計にて記録した。
(比較例)
本発明に基づき、カソード触媒層204およびアノード触媒層202が予め固体電解質膜203に形成された市販の膜電極接合体の両側から繊維状のカーボン製多孔質体201およびカーボン製多孔質体205を用いて挟持した。そのとき、カソードの触媒層204とカーボン製多孔質体205の外周部にスペーサーの役目を兼ねたパッキンを配置する。同様にアノード触媒層202とカーボン製多孔質体の外周部にスペーサーの役目を兼ねたパッキンを配置する。
この電解質膜203の厚みは30μmである。この電解質膜のカソード極側およびアノード極側の両極を共に、触媒として白金を0.3mg/cm2で分散(担持)させたカーボン粒子とプロトン導電性のフッ素系固体電解質により触媒層が構成されている。触媒層の寸法は直径11mmの円形とした。パッキンに用いたゴム硬度は約50%で、厚さ200μmを所望の寸法に切り出して使用した。この膜電極接合体の両側から挟持するカーボン製多孔質体201とカーボン製多孔質体205の厚さは300〜440μmの厚さを有した。このカーボン製多孔質体201とカーボン製多孔質体205の表面に撥水性を有する導電性のカーボンを含む層を予め形成し、撥水性を有する導電性のカーボンを含む層と触媒層が電気的に接続するように配置した。
【0054】
1mm間隔でスリット部を有する燃料供給部、兼アノード極の集電体200と、金メッキを施したステンレススチール製の押さ板212を用い、ボルト208により、実施例と同様に発電要素を締めつけた。このステンレススチール製の押さ板212には、通気性の穴213を有し、電子を取り出すためリード接続した。また、このステンレススチール製の押さ板212とボルト部は絶縁を施してある。このとき発電素子の周囲に配置されたボルト208はトルクドライバー(東日製、RTD120CN型)にて、50CNm以下のトルクで締め付けた。そして、上述したパラメータとして、t1=0.2mm、t2=1.0mm、t2/t1=5[−]なるセルを作成した。このように作成したセルを実施例4とする。また、図14に本発明の実施の形態を模式的に示した。このときの、このセルに純度99.99%で、24℃なる水素を単位面積あたり、10cc/min・cm2の流量で、出口のガス圧が概ね大気圧になるように調整し供給した。カソード側は約40%RH、25℃の大気に暴露した。このとき、電子負荷装置(菊水電子工業製、KFM2030型)を使用し、セルに対する負荷を0A/cm2〜1.0A/cm2の間で変化させ、その時の電圧を記録計にて記録した。図15に実施例1、および、従来例で作製された燃料電池の電流/電圧特性を示す。これより、いかなる電流においても、実施例1の燃料電池の電圧は、従来例の燃料電池の電圧よりも高く、性能が優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は固体電解質型燃料電池用の電極に用いることで、発電部のガス拡散と生成水の排出を容易とし、MEAの損壊を抑制し、アノード極での水分不足を抑制できる電極構成を提供することが可能となり、各種携帯型の電子機器用の燃料電池に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態における金属多孔質体を模式的に示した図。
【図2】本発明の実施の形態におけるカーボン繊維が集合してなる緯糸と経糸で構成される織物を模式的に示した図。
【図3】本発明の実施の形態におけるコンタクト層の形成の様子を模式的に示した図。
【図4】本発明の実施の形態におけるカソード極の発電要素の一部を横から観察した際の断面図。
【図5】本発明の実施の形態におけるカソード極側の発電要素の一部を横から観察した際の断面図。
【図6】カーボン製の多孔質体と金属多孔質体を外側から観察した鳥瞰図。
【図7】本発明の実施の形態における発電要素を模式的に示した断面図。
【図8】本発明の燃料電池の出力性能を測定したグラフ。
【図9】本発明の燃料電池の出力性能を測定し、比較したグラフ。
【図10】本発明の実施の形態を模式的に示した図。
【図11】本発明の実施の形態を模式的に示した図。
【図12】本発明の実施の形態を模式的に示した図。
【図13】実施例1、4、5に関る最大出力密度を示した図。
【図14】従来例の形態を模式的に示した図。
【図15】実施例1と従来例に関る電流/電圧特性図。
【符号の説明】
【0057】
100 金属多孔質体
101 孔径
102 長繊維糸の結束状態の緯糸
103 長繊維糸の結束状態の経糸
104 単位空孔
105 金属多孔質体に荷重
106 カーボンの多孔質体の応力
107 プロトン導電性の樹脂からなる電解質層
108 触媒層
109 撥水性のカーボン層
110 押さえ部
111 カーボン製多孔質体
112 カーボン製の多孔質体111の面積
113 金属多孔質体100の面積
114 発電素子
115 リード
116 ボルト
117 アノード集電部
118 燃料供給部
119 アノード極筐体
t2 金属多孔質体の厚み
t1 カーボン製多孔質体の厚み
200 燃料供給部、兼アノード集電部
201 カーボン製多孔質体
202 アノード触媒層
203 プロトン導電性の樹脂からなる電解質層
204 カソード触媒層
205 カーボン製多孔質体
206 金属製多孔質体
207 押さえ板
208 ボルト
209 押さえ板
210 金属製多孔質体
211 金属製多孔質体
212 押さえ板
213 押さえ板の開口部
301 実施例5で作製された燃料電池の性能
302 従来例を用いて作製された燃料電池の性能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン導電性の樹脂からなる電解質層の一方の面に触媒層を有するアノード極を他方の面に触媒層を有するカソード極を有し、前記アノード極及び前記カソード極の電解質層と接する面の反対側の面にそれぞれ集電体層を有する固体高分子電解質型燃料電池において、
前記集電体層がガス透過性の金属多孔質体からなり、前記金属多孔質体と前記アノード極が接する面もしくは前記金属多孔質体と前記カソード極が接する面にカーボン製の多孔質体を有する高分子電解質型燃料電池。
【請求項2】
前記金属多孔質体と前記カーボン製の多孔質体の接する部分に、前記多孔質体と長繊維糸のカーボン繊維からなるコンタクト層を有する請求項1に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項3】
前記カーボン製の多孔質体は長繊維糸のカーボン繊維が集合してなる緯糸と経糸とで構成される織物である請求項1または2に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項4】
前記金属製多孔質が、発泡金属である請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項5】
前記金属製多孔質体が、孔径の異なる2種類以上の金属製多孔質を組み合わせて構成している請求項2〜4のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項6】
前記金属製多孔質体が、少なくとも発泡金属体及び、エキスパンドメタルである請求項2〜5のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項7】
前記金属製多孔質体が少なくとも発泡金属体及び、パンチングメタルである請求項2〜6のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項8】
前記金属製多孔質体表面の一部に金メッキ処理が施された部分を有する請求項2〜7のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項9】
前記長繊維糸を構成するカーボン繊維の繊維径が1以上20μm以下のカーボン繊維の集合体である請求項2〜8のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項10】
前記発泡金属の平均孔径が0.3mm以上3.2mm以下である請求項1〜9のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項11】
前記発泡金属の体積あたりの空孔度が80以上98%以下である請求項1〜10のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項12】
前記金属多孔質体表面に撥水処理が施された部分を有する請求項1〜11のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項13】
前記金属多孔質体の表面の酸化皮膜の一部を除去した請求項1〜12のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項14】
前記カーボン製の多孔質体の厚みをt1、前記金属多孔質体の厚みをt2とした場合、t2/t1が10以下である請求項1〜13のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項15】
前記カーボン製の多孔質体の厚みをt1、前記金属多孔質体の厚みをt2とした場合、t2/t1が10以下である請求項1〜14のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項16】
前記カーボン製の多孔質体の面積をS1、前記金属多孔質体の面積をS2とした場合、S2/S1が1以上2以下である請求項1〜15のいずれか一項に記載の高分子電解質型燃料電池。
【請求項17】
前記燃料電池は、前記アノード極の燃料が水素ガスである請求項1〜16のいずれか一項に記載の固体高分子電解質型燃料電池。
【請求項18】
前記燃料電池は、前記アノード極の燃料がホウ素の水素化物から得られた水素ガスである請求項1〜17のいずれか一項に記載の固体高分子電解質型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−164947(P2006−164947A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266234(P2005−266234)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】