説明

高分子電解質膜とその製造方法、及び該高分子電解質膜を含む燃料電池

【課題】プロトン伝導性を向上させるとともに、メタノールクロスオーバーを効果的に減少させた高分子電解質膜とその製造方法、及びこの高分子電解質を備える燃料電池を提供する。
【解決手段】プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子、固体酸及びプロトン伝導性高分子を含む高分子電解質膜である。望ましくは、プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子は、Si,Ti,Zr,AlまたはBから選ばれる金属の前駆体とプロトン伝導性基を含む化合物とを反応させた結果物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質膜及びそれを含む燃料電池に係り、さらに具体的には、プロトン伝導性を顕著に向上し、メタノールクロスオーバーを減少させることが可能な高分子電解質膜及びそれを含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、メタノール、エタノール、天然ガスのような炭化水素系列の物質内に含まれている水素と酸素との化学エネルギーを直接電気エネルギーに転換する電気化学装置である。燃料電池のエネルギー転換工程は、非常に効率的かつ環境親和的であるため、さる数十年間注目されており、多様な種類の燃料電池が試みられた。
【0003】
燃料電池は、使われる電解質の種類によって、リン酸型燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid type Fuel Cell)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC:Molten Carbonate type Fuel Cell)、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide type Fuel Cell)、高分子電解質型燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)及びアルカリ型燃料電池(AFC:Alkali type Fuel Cell)に分類される。これらそれぞれの燃料電池は、根本的に同じ原理によって作動されるが、使われる燃料の種類、運転温度、触媒、電解質が異なる。この中で、PEMFCは、小規模据置型発電装備だけでなく、輸送システムにも最も有望なものと知られている。これは、PEMFCが有する低温作動、高出力密度、迅速な始動、及び出力要求の変化に対する機敏な応答のような長所に起因する。
【0004】
高分子電解質膜は、酸化剤と還元剤との直接接触を防止する隔離膜の役割、及び二つの電極を電気的に絶縁する役割だけでなく、陽性子伝導体の役割も担当する。したがって、優秀な高分子電解質膜は、(1)高いプロトン伝導性、(2)高い電気絶縁性、(3)低い反応物透過性、(4)燃料電池の運転条件で優秀な熱的、化学的、機械的な安定性、(5)薄膜化の容易性、及び(6)低コストなどの条件を備えねばならない。
【0005】
前記のような条件を満足するために、多様な高分子電解質膜が開発され、ナフィオン膜のような高フッ化ポリスルホン酸膜は、優秀な耐久性及び性能のために現在標準的な地位を占めている。しかし、ナフィオン膜は、よく作動するために十分に加湿せねばならず、水分の損失を防止するために、80℃以下で使われねばならず、酸素(O)によって主鎖の炭素−炭素結合が攻撃されて、燃料電池の作動条件で安定していないという短所がある。
【0006】
また、DMFCの場合、メタノール水溶液が燃料としてアノードに供給されるが、未反応メタノール水溶液のうち一部は、高分子電解質膜に侵入する。高分子電解質膜に侵入したメタノール水溶液は、電解質膜にスウェリング現象を起こしつつ拡散されてカソード触媒層まで伝えられる。このような現象を‘メタノールクロスオーバー’というが、水素イオンと酸素との電気化学的還元が進められねばならないカソードでメタノールの直接酸化を起こすので、カソードの電位を落とし、その結果、電池の性能を深刻に低下させる恐れがある。
【0007】
このような問題は、メタノールだけでなく、他の極性有機燃料を含む液体燃料を使用する燃料電池に共通する問題である。
【0008】
このような理由で、メタノール、エタノールのような極性有機液体燃料のクロスオーバーを遮断するための努力が活発に進められており、無機物を利用したナノ複合素材を利用して物理的に遮断する方法など、色々な方法が試みられている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第7008971号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、メタノールクロスオーバーを減らしつつ、十分に優秀なプロトン伝導性を有する高分子電解質膜は、未だ得られていないため、改善の余地がある。
【0011】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、前述した問題点を改善するためにプロトン伝導性を向上させるとともに、メタノールクロスオーバーを効果的に減少させた高分子電解質膜とその製造方法、及びこの高分子電解質を備える燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子、固体酸及びプロトン伝導性高分子を含む高分子電解質膜が提供される。
【0013】
プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子は、金属前駆体とプロトン伝導性基とを含む化合物を反応させた結果物でありうる。
【0014】
前記金属前駆体は、下記化学式1または2の化合物でありうる。
【0015】
【化1】

【0016】
前記式で、Mは、Si、TiまたはZrであり、R、R、R及びRは、それぞれ独立的に、炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から20のアルコキシ基、炭素数7から20のアルキルアリール基、炭素数7から20のアリールアルキル基、炭素数2から20のアルケニル基、炭素数8から20のアリールアルケニル基、炭素数2から20のアルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、またはアミノ基であり、但し、R、R、R及びRのうち少なくとも一つ以上は、炭素数1から20のアルコキシ基である。
【0017】
【化2】

【0018】
前記式で、Mは、AlまたはBであり、R、R及びRは、それぞれ独立的に、炭素数1から20のアルコキシ基、またはヒドロキシル基であり、但し、R、R及びRのうち少なくとも一つ以上は、炭素数1から20のアルコキシ基である。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、触媒層と拡散層とを備えるカソードと、触媒層と拡散層とを備えるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に位置する電解質膜と、を備える燃料電池において、前記電解質膜が本発明による高分子電解質膜を備えることを特徴とする燃料電池が提供される。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、(a)前記化学式1または2の化合物にプロトン伝導性基を含む化合物を添加、攪拌した後、その結果物に水を添加してゾル状態のプロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子を準備する工程と、(b)前記(a)工程の結果物であるゾル状態の無機ナノ粒子、プロトン伝導性高分子、固体酸及び溶媒を含む高分子電解質膜形成用の組成物を提供する工程と、(c)前記高分子電解質膜形成用の組成物を塗布する工程と、(d)前記塗布された高分子電解質膜形成用の組成物を乾燥する工程と、を含む高分子電解質膜の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の高分子電解質膜によれば、プロトン伝導性を顕著に向上させ、メタノールクロスオーバーを減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明は、プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子、固体酸及びプロトン伝導性高分子を含む高分子電解質膜を提供する。
【0024】
本発明による高分子電解質膜に含まれた前記固体酸は、サイズが非常に大きいため、高分子マトリックスの間に分布させる場合にスウェリングによる流出がほとんどなく、末端に付着された−OH、−COOH、−SOH、−POHのような酸性作用基の高いプロトン伝導性を付与するために、高分子電解質膜にプロトン伝導性を付与する手段として利用される。また、ここにプロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子を混合して、固体酸と共に網状ネットワークを形成することによって、単純なチャンネルブロッキング構造に比べてメタノールクロスオーバーを効果的に防止しうる。すなわち、プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子及び固体酸を混合することによって、膜のプロトン伝導度を向上させると同時に、さらに稠密な膜を形成して、メタノールクロスオーバーを減少させる。
【0025】
本発明の一実施形態で、前記プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子は、金属前駆体とプロトン伝導性基を含む化合物とを反応させた結果物である。
【0026】
本発明の他の実施形態で、前記金属前駆体は、下記化学式1または2の化合物である。
【0027】
【化3】

【0028】
前記式で、Mは、Si、TiまたはZrであり、R、R、R及びRは、それぞれ独立的に、炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から20のアルコキシ基、炭素数7から20のアルキルアリール基、炭素数7から20のアリールアルキル基、炭素数2から20のアルケニル基、炭素数8から20のアリールアルケニル基、炭素数2から20のアルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、またはアミノ基であり、但し、R、R、R及びRのうち少なくとも一つ以上は、炭素数1から20のアルコキシ基である。
【0029】
【化4】

【0030】
前記式で、Mは、AlまたはBであり、R、R及びRは、それぞれ独立的に、炭素数1から20のアルコキシ基、またはヒドロキシル基であり、但し、R、R及びRのうち少なくとも一つ以上は、炭素数1から20のアルコキシ基である。
【0031】
前記金属前駆体の例として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、テトラエチルオルトシリケート、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)ブトキシド、チタン(IV)tert−ブトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)プロポキシド、塩化チタン(IV)、チタン(IV)ジイソプリポキシドビスアセチルアセトネート、チタン(IV)(トリエタノールアミナート)イプロポキシド)、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、3塩化ホウ素、ボロン酸が挙げられる。
【0032】
本発明のさらに他の実施形態で、前記プロトン伝導性基を含む化合物でプロトン伝導性基は、−SOH、−COOH、−POH、−OH、−OSOH、−OPO(OH)でありうる。このような化合物として、ClSOH、ClCSOH、ClC(SONH)COH、ClCCOH、ClSOCOH、ClCCOCH=CHCOH、ClCCOCCOH、ClCCOCHCHCOH、ClCCHOH、ClCFCOH、ClC(NO)COH、ClC(F)COH、ClC(F)COH、ClC(I)COH、ClCHCHPO(OH)、Cl(CHOH、Cl(CH10OHなどの例が挙げられる。望ましくは、プロトン伝導性基を含む化合物は、ClSOHである。
【0033】
前記プロトン伝導性基を含む化合物と金属前駆体とを反応させれば、その結果物として、主にSiO、TiO、ZrOなどの粒子に−SOHのようなプロトン伝導性基が配位結合されている化合物が生成され、シルセスキオキサンのような化合物が少量生成されるが、SiOが一部のネットワークを形成して含まれうる。これら反応結果物は、ナノサイズ粒子として形成される。
【0034】
前記プロトン伝導性基を含む化合物と金属前駆体とを反応させた結果物であるプロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子のプロトン伝導性基は、伝導性膜のイオン伝導性を高めるだけでなく、ナノサイズの粒子サイズによって、固体酸の間に稠密に位置し、固体酸が網状ネットワークを形成する。
【0035】
本発明のさらに他の実施形態で、前記固体酸は、(a)10から70の重合度を有する主鎖と、(b)前記主鎖の反復単位に結合され、下記化学式3の構造を有する側鎖とを有する。
【0036】
【化5】

【0037】
ここで、EからEn−1内のEは、それぞれ独立的に下記化学式4から化学式8の有機グループのうち何れか一つであり、
【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
前記化学式6から化学式8で、各Ei+1は、相互独立的なものであって、同一または異なり、(i)世代であるEと結合する(i+1)世代Ei+1の数は、Eに存在する可能な結合の数と同じであり、nは、分枝単位の世代を表し、2から4の整数であり、Eは、−SOH、−COOH、−OH、または−OPO(OH)のうち何れか一つである。
【0044】
本発明の固体酸は、そのサイズが非常に大きいため、高分子マトリックスの間に分布させる場合、スウェリングによる流出がほとんどなく、末端に付着された−OH、−COOH、−SOH、−OPO(OH)のような酸性作用基が高いイオン伝導度を付与するため、高分子電解質膜にイオン伝導度を付与する手段として利用できる。
【0045】
前記固体酸の主鎖は、重合度が10から70であり、20から50であることが望ましい。主鎖の重合度が10に達しなければ、側鎖まで含む全体分子量が10,000に達しない可能性が高くなるが、この場合に分子のサイズが十分に大きくなくて固体酸が流出される可能性が高い。また、主鎖の重合度が70を超えれば、側鎖まで含む全体分子量が40,000を超える可能性が高くなるが、この場合に物性調節が難しく、高分子膜内でマトリックスとの相分離によって形成された固体酸の粒子サイズが過度に大きくなるという問題点がある。
【0046】
前記主鎖の反復単位は、スチレン、エチレン、イミド、アミド、アクリル酸、アミックエステル、またはアニリンの反復単位でありうる。特に、前記主鎖の反復単位は、下記化学式9から化学式11のうち何れか一つであるが、ここに限定されるものではない。
【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
前記主鎖の反復単位に結合される側鎖は、下記化学式12から化学式17のうち何れか一つであるが、ここに限定されるものではない。
【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
【化16】

【0054】
【化17】

【0055】
【化18】

【0056】
【化19】

【0057】
化学式12から化学式17で、Rは、−SOH、−COOH、−OH、または−OPO(OH)のうち何れか一つである。
【0058】
前記固体酸は、本出願人によって出願された韓国特許第2005−0094935号明細書に記載された固体酸を何れも使用しうる。
【0059】
前記固体酸の分子量は、10,000から40,000であることが望ましい。もし、分子量が10,000より小さければ、分子のサイズが十分に大きくなくて高分子電解質膜から流出され、分子量が40,000より大きければ、物性調節が難しく、マトリックスとの相分離によって形成された固体酸の粒子サイズが過度に大きくなるという問題点がある。
【0060】
以下では、本発明の固体酸のうち代表的なものの製造過程を通じて、本発明をさらに詳細に説明する。下記製造方法は、本発明の固体酸のうち代表的なものの製造過程を表したことであるだけで、これに限定されるものではない。
【0061】
まず、下記反応式1のように側鎖をなす単位体を合成しうる。
【0062】
【化20】

【0063】
側鎖をなす単位体は、前記反応式1の方法を反復することによって、複数の世代を有する単位体で作ることもできる。
【0064】
その後、下記反応式2のように、前記単位体を主鎖をなす化合物と反応させて本発明の固体酸を製造しうる。
【0065】
【化21】

【0066】
ここで、pは、主鎖をなす前記化合物の分子量が2,000から8,000となるように決定される整数である。
【0067】
末端に作用基として−COOH、−OH、または−OPO(OH)を有しようとする場合には、複数の構造合成時に−COOH、−OH、または−OPO(OH)の作用基がアルキル基で保護された構造、すなわち、−COOR、−OR、または−OPO(OR)3構造を有するベンジルハライド化合物から出発して低分子量のポリマーを製造した後、アルキル基を脱離させる方法で製造しうる。ここで、Rは、例えば、炭素数1から5の1価のアルキル基である。
【0068】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記プロトン伝導性高分子は、ポリイミド、ポリアルキルエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ナフィオン、ポリビニルアルコール及びその共重合体からなる群から選択された一つ以上である。
【0069】
本発明のさらに他の実施形態による高分子電解質膜は、プロトン伝導性高分子100質量部を基準として、プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子1から90質量部及び固体酸0.1から50質量部を含む。
【0070】
前記プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子は、プロトン伝導性高分子100質量部を基準として1質量部未満に含まれる場合、プロトン伝導性の向上及びメタノールクロスオーバーの防止効果が微小であるという問題点があり、90質量部を超えて含まれる場合に、膜の亀裂が発生する恐れがある。
【0071】
前記固体酸は、プロトン伝導性高分子100質量部を基準として0.1質量部未満に含まれる場合に、固体酸としての効果が微小であるという問題点があり、50質量部超えて含まれる場合に、固体酸が漏れるという恐れがある。
【0072】
以下では、前記高分子電解質膜を備える燃料電池について詳細に説明する。
【0073】
本発明は、触媒層と拡散層とを備えるカソードと、触媒層と拡散層とを備えるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に位置する電解質膜と、を備える燃料電池において、前記電解質膜が本発明の高分子電解質膜を備えることを特徴とする燃料電池を提供する。特に、本発明による燃料電池は、直接メタノール燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)または高分子電解質型燃料電池(PEMFC)でありうる。
【0074】
触媒層と拡散層とを備える前記カソード及びアノードは、燃料電池分野に広く知られたものでありうる。また、前記電解質膜は、本発明の高分子電解質膜を備える。本発明の高分子電解質膜は、単独で電解質膜として使われることもあり、イオン伝導性を帯びる他の膜と結合して使われることもある。
【0075】
このような燃料電池の製造は、各種の文献に公示されている通常的な方法を利用できるので、本明細書では、それについての詳細な説明を省略する。
【0076】
また、本発明は、下記の工程を含む高分子電解質膜の製造方法を提供する:
(a)下記化学式1または2の化合物にプロトン伝導性基を含む化合物を添加、攪拌した後、その結果物に水を添加してゾル状態のスルホン化された無機ナノ粒子を準備する工程と、(b)前記(a)工程の結果物であるゾル状態の無機ナノ粒子、プロトン伝導性高分子、固体酸及び溶媒を含む高分子電解質膜形成用の組成物を提供する工程と、(c)前記高分子電解質膜形成用の組成物を塗布する工程と、(d)前記塗布された高分子電解質膜形成用の組成物を乾燥する工程。
【0077】
【化22】

【0078】
前記式で、Mは、Si、TiまたはZrであり、R、R、R及びRは、それぞれ独立的に、炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から20のアルコキシ基、炭素数7から20のアルキルアリール基、炭素数7から20のアリールアルキル基、炭素数2から20のアルケニル基、炭素数8から20のアリールアルケニル基、炭素数2から20のアルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、またはアミノ基であり、但し、R、R、R及びRのうち少なくとも一つ以上は、炭素数1から20のアルコキシ基である。
【0079】
【化23】

【0080】
前記式で、Mは、AlまたはBであり、R、R及びRは、それぞれ独立的に、炭素数1から20のアルコキシ基、またはヒドロキシル基であり、但し、R、R及びRのうち少なくとも一つ以上は、炭素数1から20のアルコキシ基である。
【0081】
望ましくは、前記(a)工程でのプロトン伝導性基が結合された化合物は、ClSOHである。
【0082】
前記(b)工程で、高分子電解質膜形成用の組成物のうち、溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、メチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルアセトアミドまたはこれらからなる群から選択された一つ以上を混合して使用しうる。
【0083】
前記(c)工程で、高分子電解質膜形成用の組成物は、電極上に塗布されるか、または別途の支持体上に塗布される。上記組成物が電極上に塗布された場合には、燃料電池が形成される。一方、上記組成物が別途の支持体上に塗布された場合には、支持体上に高分子電解質膜を形成した後、この膜を支持体から分離して最終的な高分子電解質膜を製造する。
【0084】
以下、本発明の非制限的な一実施例を例として、前記高分子電解質膜の製造方法をさらに具体的に説明する。
【0085】
ゾル状態のスルホン化されたナノ粒子を製造するために、まず、メチルトリメトキシシランにクロロスルホン酸を添加する。前記混合物を一晩中十分に攪拌して混合する。以後、ジメチルホルムアミド(DMF)のような溶媒を添加して2〜3時間攪拌する。この時に使われうる溶媒としては、ジメチルホルムアミド以外にも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、メチルスルホキシド、ジメチルスルホキシドなどを使用しうるが、これに限定されるものではない。以後、再び水を添加して、高分子電解質膜形成用として使われるゾル状態の無機ナノ粒子が最終的に合成される。このとき、ゾルでの無機粒子の含量は、約1〜80質量%にし、望ましくは、ゾルでの無機粒子の含量は、約5〜40質量%を維持する。
【0086】
前記のように製造されたゾル状態の無機ナノ粒子に、プロトン伝導性高分子、固体酸及び溶媒を混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造する。このとき、前記高分子電解質膜形成用の組成物のうち、溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルスルホキシド、ジメチルスルホキシドなどを使用しうるが、これに限定されるものでない。これらのうち2以上の組合わせを使用することも可能である。前記溶媒の含量は、高分子電解質膜形成用の組成物を基準として1質量%から99質量%でありうる。前記溶媒の含量が高分子電解質膜形成用の組成物を基準として1質量%未満である場合、高分子電解質膜形成用の組成物のコーティング性、粘度が低下し、前記溶媒の含量が高分子電解質膜形成用の組成物を基準として99質量%を超える場合、固形分の含量が過度に低くて、望ましくない。
【0087】
前記高分子電解質膜形成用の組成物を基板上に塗布する。このとき、塗布方法としては特別に限定されず、スピンコーティング、バーコーティングのような公知の多様な方法が利用されうる。
【0088】
次いで、前記塗布された高分子電解質膜形成用の組成物を熱処理する。
【0089】
前記熱処理工程は、120から250℃でなされるハードベーキング過程であり、もし、熱処理工程の温度が120℃未満であれば、高分子膜の硬化がよくなされず、250℃を超えれば、高分子電解質膜自体に含まれているスルホン酸基が分解されて、望ましくない。熱処理時間は、熱処理温度によって可変的であり、望ましくは、5分から24時間実施することが望ましい。
【0090】
本発明では、前述したハードベーキング工程以前に予備熱処理工程をさらに経ることもある。ここで、予備熱処理工程は、高分子電解質膜形成用の組成物が塗布された結果物から溶媒を一部除去する過程であって、60から110℃でなされるソフトベーキング過程であり、もし、予備熱処理工程の温度が60℃未満であれば、溶媒の乾燥に過度に長い時間がかかり、110℃を超えれば、溶媒除去が過度に急速になされて、フィルムの不均一性を誘発して望ましくない。
【0091】
熱処理時間は、熱処理温度によって可変的であり、望ましくは、5分から4時間実施することが望ましい。
【0092】
前記過程によって得た高分子電解質膜は、燃料電池の電解質膜として使用可能である。
本発明による高分子電解質膜の厚さは、5から200μmであることが望ましい。もし、高分子電解質膜の厚さが5μm未満であれば、過度に薄くて破れる危険性があり、200μmを超えれば、膜に亀裂が生じて、望ましくない。
【0093】
また、図3に示すように、本発明の一実施形態に係る膜電極接合体10は、高分子電解質膜11と、高分子電解質膜11の両面に設けられた触媒層12、12’と、触媒層12、12’の表面の外側に露出されたガス拡散層13、13’と、を有する。
【0094】
触媒層と拡散層をそれぞれ有するカソードとアノードは、従来からよく知られている。さらに、電解質膜は、本発明の一実施形態による高分子電解質膜を含む。高分子電解質膜は、電解質膜単独で、あるいは、イオン伝導性を有する他の膜と組み合わせて使用され得る。
【実施例】
【0095】
以下、具体的な実施例及び比較例をもって本発明の構成及び効果をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は、単に本発明をさらに明確に理解させるためのものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0096】
(製造例1−スルホン化されたSiOゾルの合成)
金属前駆体としてメチルトリメトキシシラン4gとクロロスルホン酸1gとを混合した。前記混合物を50℃で一晩中攪拌した。ここに再びDMF 150mlを混合し、3時間攪拌した。次いで、再び水2.6mlを添加し、スルホン化されたSiOゾルを製造した。
【0097】
(製造例2−スルホン化されたTiOゾルの合成)
金属前駆体としてチタンエトキシド4gとクロロスルホン酸1.4gとを混合して使用したことを除いては、前記製造例1と同じ方法でスルホン化されたTiOゾルを製造した。このとき、チタニアゾル内の溶媒対比チタニア粒子が約10質量%存在するように製造された。
【0098】
(製造例3−固体酸の合成)
臭化ベンジル0.38モルと3,5−ジヒドロキシベンジルアルコール0.18モルとを、KCO 0.36モル及び18−クラウン−6 0.036モルと共にアセトンに溶解させて24時間還流させた。前記混合物を常温まで冷却させた後、アセトンを蒸留させて除去し、酢酸エチル/水酸化ナトリウム溶液で抽出して分離した。分離した有機層をMgSOを利用して乾燥させ、溶媒を蒸留させて除去した。結果物をエーテル/へキサンで再結晶して精製し、下記化学式18の化合物を白色の結晶性固体と37g収得した(収率:67%)。
【0099】
【化24】

【0100】
前記化学式18の化合物20g(0.065モル)を0℃でベンゼン50mlに溶解させて、PBr 6.4g(0.0238モル)をベンゼンに溶解させた溶液を前記溶液に滴加し、15分間攪拌した。次いで、室温に昇温させた後に2時間攪拌し、前記混合物を氷槽に入れてベンゼンを蒸留させて除去した。その後、水溶性相を酢酸エチルで抽出し、有機層をMgSOを利用して乾燥させ、溶媒を蒸留して除去した。結果物をトルエン/エタノールで再結晶して精製し、下記化学式19の化合物を白色の結晶性固体と19g収得した(収率:79%)。
【0101】
【化25】

【0102】
前記のように合成した化学式19の化合物8.4gと、商用として入手可能なポリヒドロキシスチレン(PHSt:下記化学式20の化合物、Mw=3000、Nippon Soda社製)2.42gとを、KCO 2.8g及び18−クラウン−6 1.1gと共にテトラヒドロフラン(THF)200mLに溶解させ、24時間還流させた。その後、前記反応混合物を常温まで冷却させた後、テトラヒドロフランを蒸留させて除去し、トルエン/水酸化ナトリウム溶液で抽出して分離した。分離したトルエン層をMgSOを利用して乾燥させ、トルエンを蒸留させて50mLに濃縮した。結果物をエタノールに沈殿させて下記化学式21の化合物を白色の結晶性固体と8.2g収得した(収率:76%)。
【0103】
【化26】

【0104】
【化27】

【0105】
前記のように製造した化学式21の化合物(固体酸前駆体)5gを硫酸15mLに完全に溶解させた後、発煙硫酸(SO 60%)5mLを添加し、80℃で12時間反応させた後にエーテルで沈殿を形成させた。沈殿物を濾過した後、水に溶解させて透析メンブレインに入れて精製して、下記化学式22の化合物を収得した。
【0106】
【化28】

【0107】
前記化学式22の化合物の質量平均分子量は、14,600であった。
【0108】
(比較例1)
120時間PEEKをスルホン化して製造したSPEEK 12.5質量%と溶媒としてジメチルホルムアミド87.5質量%とを混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した。前記高分子電解質膜形成用の組成物をスピンコーティングし、これを90℃で約10分間予備熱処理した。
【0109】
次いで、前記結果物を約150℃で窒素雰囲気下で約2時間熱処理を実施して高分子電解質膜(膜厚さ:約34μm)を製造した。以後、製造された膜を2Mの薄い硫酸水溶液に浸漬して80℃で2時間プロトネーションを行った後、フィルムを取り出して脱イオン化した蒸溜水で数回洗浄して電解質膜を準備した。
【0110】
(比較例2)
SPEEK及び製造例3で合成した固体酸を5:1の質量比で混合し、溶媒としてジメチルホルムアミドを使用して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、前記比較例1と同じ方法で高分子電解質膜を製造した。
【0111】
(比較例3)
商業的に入手可能なナフィオン(DuPont社製)膜を準備した。以後、前記比較例1と同じ方法で高分子電解質膜を準備した。
【0112】
(比較例4)
スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)及び製造例1で合成されたスルホン化されたSiO2ゾルを2:1(8質量%:4質量%)の質量比で混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いては、前記比較例1と同じ方法で高分子電解質膜(膜厚さ:約22μm)を製造した。このとき、溶媒としてジメチルホルムアミドをSPEEK 100質量部を基準として88質量%使用した。
【0113】
(比較例5)
SPEEK及び製造例1で合成されたスルホン化されたSiOゾルを1:1(6質量%:6質量%)の質量比で混合し、溶媒としてジメチルホルムアミド88質量%を使用して高分子電解質膜形成用の組成物を製造した点を除いて、前記比較例1と同じ方法で高分子電解質膜(膜厚さ:約14μm)を製造した。
【0114】
(比較例6)
SPEEK、製造例1で合成されたスルホン化されたSiOゾルを4:7(4質量%:7質量%)の質量比で、そして、溶媒としてジメチルホルムアミドを89質量%混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造したことを除いては、前記比較例1と同じ方法で高分子電解質膜(膜厚さ:約10μm)を製造した。
【0115】
(比較例7)
SPEEK及び製造例2で合成されたスルホン化されたTiOゾルを2:1(8質量%:4質量%)の質量比で、そして溶媒としてジメチルホルムアミドを88質量%混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造したことを除いては、前記比較例1と同じ方法で高分子電解質膜(膜厚さ:約10μm)を製造した。
【0116】
(比較例8)
SPEEK及び製造例2で合成されたスルホン化されたTiOゾルを1:1(6質量%:6質量%)の質量比で、そして、溶媒としてジメチルホルムアミドを88質量%混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造したことを除いては、前記比較例1と同じ方法で高分子電解質膜(膜厚さ:約43μm)を製造した。
【0117】
(実施例1)
SPEEK、製造例1で合成されたスルホン化されたSiOゾル及び製造例3で合成された固体酸を8:4:1(8質量%:4質量%:1質量%)の質量比で、そして、溶媒としてジメチルホルムアミドを87質量%混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造したことを除いては、前記比較例1と同じ方法で高分子電解質膜(膜厚さ:約17μm)を製造した。
【0118】
(実施例2)
SPEEK、製造例2で合成されたスルホン化されたTiOゾル及び製造例3で合成された固体酸を6:6:1(6質量%:6質量%:1質量%)の質量比で、そして、溶媒としてジメチルホルムアミドを87質量%混合して高分子電解質膜形成用の組成物を製造したことを除いては、前記比較例1と同じ方法で高分子電解質膜(膜厚さ:約62μm)を製造した。
【0119】
図1Aから図1Cは、前記製造例1によって合成されたスルホン化されたSiOゾルのFESEMイメージである。また、図2A及び図2Bは、前記製造例2によって合成されたスルホン化されたTiOゾルのFESEMイメージである。前記製造例1及び2で合成されたゾル組成物から溶媒を揮発させた後、FESEMイメージを撮り、特別に粒子が塊になることを防止する処理をしなかったので、実際に合成された粒子よりFESEMイメージ上の粒子サイズは、さらに大きくなったと予想されるにもかかわらず、何れもナノサイズの粒子を形成しているということが確認できた。
【0120】
前記のように製造した実施例1、2及び比較例1から8の高分子電解質膜について、プロトン伝導性及びメタノールクロスオーバーを測定して、その結果を下記表1に表した。
【0121】
【表1】

【0122】
比較例1での高分子電解質膜は、SPEEKのみを含み、比較例2は、SPEEK及び固体酸を含み、比較例3は、ナフィオン膜である。これらに比べて、プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子としてスルホン化されたSiOゾルをSPEEKに対してそれぞれ異なる比率で製造した比較例4から6の結果を表1で参照すれば、まずプロトン伝導性が比較例1から3より増加した。特に、比較例3のナフィオン膜よりも比較例4及び6で優秀な結果を示した。これにより、プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子が添加されてプロトン伝導性を向上させるということが分かる。
【0123】
実施例1は、スルホン化されたSiOゾル及び固体酸を何れも含む場合であって、プロトン伝導性は、前記比較例1から6に比べて数等向上した。すなわち、固体酸のみを含む場合の比較例2より高く、スルホン化されたSiOゾルのみを使用した比較例4から6より高い値を示していて、スルホン化されたSiOゾル及び固体酸を何れも含んでプロトン伝導性を顕著に向上させるということが分かる。一方、実施例1のメタノールクロスオーバーは、比較例4を除外した比較例1から6より数等低い値を示すところ、実施例1の高分子電解質膜のメタノールクロスオーバーの減少効果を確認できる。
【0124】
比較例7及び8は、プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子としてスルホン化されたTiOゾルをSPEEKに対してそれぞれ異なる比率で製造したものである。実施例2は、スルホン化されたTiOゾル及び固体酸を何れも含む場合であって、プロトン伝導性が前記比較例1から6に比べて数等向上した。実施例1と同様に、実施例2の高分子電解質膜でもスルホン化されたTiOゾル及び固体酸を何れも含んでプロトン伝導性を顕著に向上させうるということが分かる。一方、実施例2のメタノールクロスオーバーは、比較例1から3及び比較例7及び8より最も低い値を示すところ、実施例2の高分子電解質膜のメタノールクロスオーバーの減少効果も確認できる。
【0125】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、高分子電解質膜及びこれを含む燃料電池関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1A】本発明の一実施形態による高分子電解質膜に含まれるスルホン化されたSiOゾルのFESEMイメージである。
【図1B】本発明の一実施形態による高分子電解質膜に含まれるスルホン化されたSiOゾルのFESEMイメージである。
【図1C】本発明の一実施形態による高分子電解質膜に含まれるスルホン化されたSiOゾルのFESEMイメージである。
【図2A】本発明の他の実施形態による高分子電解質膜に含まれるスルホン化されたTiOゾルのFESEMイメージである。
【図2B】本発明の他の実施形態による高分子電解質膜に含まれるスルホン化されたTiOゾルのFESEMイメージである。
【図3】本発明の一実施形態による燃料電池の膜電極接合体の構成を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子、固体酸及びプロトン伝導性高分子を含むことを特徴とする、高分子電解質膜。
【請求項2】
前記プロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子は、金属前駆体とプロトン伝導性基を含む化合物とを反応させた結果物であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項3】
前記金属前駆体は、下記化学式1または2の化合物であることを特徴とする、請求項2に記載の高分子電解質膜。
【化1】

前記式で、
Mは、Si、TiまたはZrであり、
、R、R及びRは、それぞれ独立的に、炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から20のアルコキシ基、炭素数7から20のアルキルアリール基、炭素数7から20のアリールアルキル基、炭素数2から20のアルケニル基、炭素数8から20のアリールアルケニル基、炭素数2から20のアルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、またはアミノ基であり、
但し、R、R、R及びRのうち少なくとも一つ以上は、炭素数1から20のアルコキシ基である。
【化2】

前記式で、
Mは、AlまたはBであり、
、R及びRは、それぞれ独立的に、炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から20のアルコキシ基、炭素数7から20のアルキルアリール基、炭素数7から20のアリールアルキル基、炭素数2から20のアルケニル基、炭素数8から20のアリールアルケニル基、炭素数2から20のアルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、またはアミノ基であり、
但し、R、R及びRのうち少なくとも一つ以上は、炭素数1から20のアルコキシ基である。
【請求項4】
前記プロトン伝導性基を含む化合物のプロトン伝導性基は、−SOH、−COOH、−POH、−OH、−OSOHまたは−OPO(OH)であることを特徴とする、請求項2に記載の高分子電解質膜。
【請求項5】
前記プロトン伝導性基を含む化合物のプロトン伝導性基は、−SOHであることを特徴とする、請求項2に記載の高分子電解質膜。
【請求項6】
前記固体酸は、
(a)10から70の重合度を有する主鎖と、
(b)前記主鎖の反復単位に結合され、下記化学式3の構造を有する側鎖と、
を有することを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【化3】

ここで、EからEn−1内のEは、それぞれ独立的に下記化学式4から化学式8の有機グループのうち何れか一つであり、
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

前記化学式6から化学式8で、各Ei+1は、相互独立的なものであって、同一または異なり、
(i)世代であるEと結合する(i+1)世代Ei+1の数は、Eに存在する可能な結合の数と同じであり、
nは、分枝単位の世代を表し、2から4の整数であり、
は、−SOH、−COOH、−OH、または−OPO(OH)のうち何れか一つである。
【請求項7】
前記反復単位は、スチレン、エチレン、イミド、アミド、アクリル酸、アミックエステル、またはアニリンの反復単位であることを特徴とする、請求項6に記載の高分子電解質膜。
【請求項8】
前記側鎖は、下記化学式12から化学式17のうち何れか一つであることを特徴とする、請求項6に記載の高分子電解質膜。
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

化学式12から化学式17で、Rは、−SOH、−COOH、−OH、または−OPO(OH)のうち何れか一つである。
【請求項9】
前記プロトン伝導性高分子は、ポリイミド、ポリアルキルエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ナフィオン(登録商標)、ポリビニルアルコール及びその共重合体からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項10】
前記プロトン伝導性高分子100質量部を基準として、プロトン伝導性基が結合された前記無機ナノ粒子1から90質量部及び前記固体酸0.1から50質量部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項11】
触媒層と拡散層とを備えるカソードと、触媒層と拡散層とを備えるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に位置する電解質膜と、を備える燃料電池において、
前記電解質膜は、請求項1から10のうち何れか1項に記載の高分子電解質膜を含むことを特徴とする、燃料電池。
【請求項12】
(a)下記化学式1または2の化合物にプロトン伝導性基を含む化合物を添加、攪拌した後、その結果物に水を添加してゾル状態のプロトン伝導性基が結合された無機ナノ粒子を準備する工程と、
(b)前記(a)工程の結果物であるゾル状態の無機ナノ粒子、プロトン伝導性高分子、固体酸及び溶媒を含む高分子電解質膜形成用の組成物を提供する工程と、
(c)前記高分子電解質膜形成用の組成物を塗布する工程と、
(d)前記塗布された高分子電解質膜形成用の組成物を乾燥する工程と、
を含むことを特徴とする、高分子電解質膜の製造方法。
【化15】

前記式で、
Mは、Si、TiまたはZrであり、
、R、R及びRは、それぞれ独立的に、炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から20のアルコキシ基、炭素数7から20のアルキルアリール基、炭素数7から20のアリールアルキル基、炭素数2から20のアルケニル基、炭素数8から20のアリールアルケニル基、炭素数2から20のアルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、またはアミノ基であり、但し、R、R、R及びRのうち少なくとも一つ以上は、炭素数1から20のアルコキシ基である。
【化16】

前記式で、
Mは、AlまたはBであり、
、R及びRは、それぞれ独立的に、炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から20のアルコキシ基、炭素数7から20のアルキルアリール基、炭素数7から20のアリールアルキル基、炭素数2から20のアルケニル基、炭素数8から20のアリールアルケニル基、炭素数2から20のアルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、またはアミノ基であり、但し、R、R及びRのうち少なくとも一つ以上は、炭素数1から20のアルコキシ基である。
【請求項13】
前記(a)工程でのプロトン伝導性基を含む化合物は、ClSOHであることを特徴とする、請求項12に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項14】
前記高分子電解質膜形成用の組成物のうち、溶媒がN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、メチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド及びN,N’−ジメチルアセトアミドからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項12に記載の高分子電解質膜の製造方法。

【図3】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2008−91342(P2008−91342A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260226(P2007−260226)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】