説明

高分解能コヒーレント光画像化のための方法及び装置

【課題】既存の生体内または生体外OCT/OCMシステムに現在実施されているようなシリアル走査の代わりに、複数本のファイバ(すなわちチャネル)を採用して画像の様々な部分のパラレル走査を可能にするOCTを有する内視顕微鏡を提供する。
【解決手段】複数の光放射源からの光(21,22,23)が第1の光路に沿って進行する。第1の光路において、装置はそれぞれの光源からの光を第1の光路に沿う複数の焦点(21a,22a、23a)のそれぞれに集束させて、第1の光路の選ばれた部分の実質的に連続な覆域を提供する。次いで、試料内に延び込む選ばれた長さの範囲内にある第1の光路上の試料が、第1の光路の選ばれた範囲に沿って走査される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分解能光画像化のための方法及び装置のいずれにも関する。さらに詳しくは、本発明は内視鏡への組込に適する高分解能画像化の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の医用画像化手法は、健康管理への応用に重要になっている。X線コンピュータ連動断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)及び超音波画像法のような手法は、現代の医療センターのほとんどで利用できる主要な断層撮影法である。可視光内視鏡検査法は、気管支鏡検査または結腸鏡検査のような処置に広く用いられる別の主要な画像化手法である。これらの手法のそれぞれは、様々な物理的原理を採用し、検査下の生物学的組織の様々な特性を様々な分解能で測定する。さらに、これらの手法は生体内で普通に実施できる。第3のタイプの画像化手法である光学顕微鏡検査法も、未だに診療医学において広く利用されている。しかし、現時点では光学顕微鏡検査法は切除または摘出試料の詳細な検査に限られ、生体内では用いられていない。多くの情況において、光学顕微鏡検査法によって与えられる優れたコントラスト及び分解能は、生体組織摘出及びこれに続く光学顕微鏡による組織検査が診断に対する黄金律的標準と見なされるほどである。
【0003】
低分解能断層撮像手法を、高分解能画像化、生体組織検査法または介入処置とともに使用するような、上記の手法の併合が絶えず研究され、評価されている。そのような手法の評価は、技術上の実行可能性、臨床上の恩恵及び費用に基づいている。
【0004】
光コヒーレンス断層撮影法(OCT)は、生物学的組織のような混濁した高散乱性の媒質において高分解能深度プロファイル測定を可能にする、電磁放射の低コヒーレンス特性に基づく比較的新しい画像化手法である。生物医学的画像化におけるOCTの利用は、現在いくつかの公立及び私企業の研究所で研究されている。OCTの主要な利点は、組織の表面下部位からの反射深度を局限化できるという能力にある。この局限化は用いられる光源のコヒーレンス特性により本質的に決定され、選択された近赤外線(IR)源(例えば、レーザまたは増幅自然放出発光装置)に対して2から20μmもの狭い範囲とすることができる。このことから、OCTで達成し得る深度分解能の尺度が与えられる。コヒーレンス性とは無関係に、横方向分解能は画像化深度におけるビーム断面積及び取得データの横方向間隔により決定される。文献における横方向間隔の一般値は5から30μmの範囲にある。この混濁組織を損なわない優れた断層画像化能力に対して払われなければならない代償は、多重散乱及び吸収により光のコヒーレンス及び侵入深度がともに低下して、OCT画像化深度がほぼ2ないし3mmになるので、画像化深度が制限されることである。
【0005】
現在のOCTの実施態様のほとんどは、入射コヒーレント光ビームをミラーをもつ基準光路(すなわち基準アーム)及び被検試料をもつ試料光路(すなわち試料アーム)に導く50/50ビームスプリッタによる、マイケルソン干渉法に基づく。この方式の自由空間光学系及びファイバ光学系実施態様のいずれもが現在用いられている。基準アームのミラーからの反射ビーム及び試料アームの組織からの反射ビームが同じスプリッタで結合されて、生じる光エネルギーの1/2が検出器に当たる。2本のビームの光路長が光源のコヒーレンス長の範囲内で一致する場合を除いては、一般に2本の光束の非コヒーレントな重畳がおこる。この限界距離内では、2本の光束のコヒーレントな重畳により、特定の深度における組織の反射率に比例する強さの干渉縞をもつ干渉パターンが得られる。次いで、試料の深度プロファイル測定が、基準アーム長を走査することにより、さらに正確には、基準アームにおいて時間遅延を用いて(これは基準アームを長くすることと等価である)基準アームの光路長を走査することにより、達成される。大きな背景拡散反射に埋もれている上記のかすかな振幅変調を測定して定量するために、ダイナミックレンジがほぼ70から110dBの、様々な検出方法が開発されている。さらに、ビームの横方向並進及び基準ミラーの軸方向移動により、所望の視野にわたる2次元反射率画像を構成することが可能になる。デコンボリューションによる画像処理の実施のような、最終画像の品質を向上させる手段も研究されてきた。
【0006】
上述は通常の反射率OCT画像化の簡単な説明である。その他の変形には、例えば、フロー(ドップラー)画像化及び(OCT光学系及び/または信号処理手法がさらに複雑化するという犠牲は払うものの)偏光画像化がある。これらの別の手法による画像は普通、通常のOCTによる画像とともに得られ、よっていくつかの画像の重ね合わせまたは融合が可能である。技術開発及び/または臨床への実施がさらに進めば、医学におけるOCTの臨床上の有用性を高めるに十分な情報内容を付け加えることができる。
【0007】
しかし、研究開発され実験室ではうまくはたらいたOCTシステムの構成及び手法の多くは、そのままでは胃腸または気管支の内視鏡検査のような生体内画像化に適していない。むしろ、そのようなOCTシステムは、皮膚科、眼科及び歯科での応用により適するといえる。対照的に、生体内OCT画像化は、速度、分解能、コントラスト、侵入深度及び機器寸法の課題に取り組まなければならない。画像は患者の動きの影響を無視できるに十分に迅速に得られなければならず、それでも適切な軸方向及び横方向分解能が得られ、内視鏡として有用であるに十分に小さい機器寸法が維持されなければならない。生体内内視鏡検査に課せられた困難な課題を克服するための、強力な近IR源、基準アーム長を高速で変化させる手段及び特注の遠端光学装置の開発が行われ、成功している。
【0008】
最新のOCT技術は、単一モード光ファイバを従来の白色光内視鏡のアクセサリーチャネルに組み入れられた遠端断層観察光学系とともに採用している。画像を構成するため、OCTファイバの観察方向がほぼ2mmの距離にわたり前後に直線的に走査され、また柔軟なガイドワイヤまたはインターロック付歯車機構によって毎秒数回転で回転される。この並進または回転と同時に、深度方向走査(すなわちA−走査)をおこさせるために内視鏡の外にある基準アームの長さが光位相遅延により迅速に変えられる。現在、これらのOCTシステムは通常のビデオレートまでのフレームレートで動作するが、より一般的には毎秒4から8フレームで動作し、1フレームは2から3mmの深度までの十分な周辺観察像を提供する。得られる分解能値は、深度(軸)方向でほぼ5から25μmであり、横方向ではほぼ20から40μmである。さらに、横方向分解能は一般に、等比発散により、OCT装置のファイバチップからの距離が大きくなるにつれて低下する。これらのOCTシステムは、雑音レベルが高く、画像化速度が速いために、ダイナミックレンジが生体外システムに対応するダイナミックレンジより若干低い。
【0009】
最新のOCT技術に基づくと、コヒーレント生体内OCTシステムが臨床画像化に成功するに十分であるかは疑問である。画像は確かに有用であるが、“光生検”という逃げ水のような目標が実現されるべきであるならば、かなりの改善が必要である。例えば、軸方向及び横方向の分解能は改善できる。軸方向分解能の改善には通常、より良好な低コヒーレンス光源(すなわちCW(連続波)及びパルス光源)の使用が含まれるが、最適に近い、深度可変の、横方向分解能の問題は処理が一層困難である。体外システムでは、速度及び物理的寸法の制限が緩和され、横方向解像度は高NA(開口数)対物レンズを用いてビームを数μmまで集束させることにより改善される。従来のOCT走査とは対照的に、この場合には、光路長差の振動を小さくしてあらかじめ選択された深さで横(面内)方向に画像化を行い、続いて深度を必要なだけ少量増分して次の画像化を行うことができる。高NA対物レンズは屈折率整合液を介して組織に結合されることが多い。OCTを高NA遠端光学レンズとともに用いる手法は総じて光コヒーレンス顕微鏡法(OCM)として知られる。しかし、ビームウエスト位置における改善された横方向解像度は、強集束ビームの焦点深度が非常に浅いため、他の深度においては横方向ぼけという犠牲を払うことになる。したがって、様々な深度に集束させるためにレンズ−表面間隔を変えなければならない。さらに、動的トラッキング方式では、コヒーレンスゲート(コヒーレンスゲート内では試料アームからの光ビームと基準アームからの光ビームとの間でコヒーレント干渉が可能である)の位置とビームウエストの位置が同じ深度に保たれる必要がある。横方向分解能改善のための上記の手法は、寸法及び速度要件のため、生体内内視鏡については試みられてこなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以降内視顕微鏡と称することとする、顕微的分解能をもつ内視鏡光コヒーレンス断層撮影(OCT)装置を提供するという概念に基づく。内視顕微鏡の考え得る臨床上の応用の考察の結果、以下のパラメータ及び特徴が、現在の生体内OCTシステムと同時にこれらのパラメータ及び特徴を達成することは困難であることから、弁別された。
【0011】
1.高分解能
細胞レベル及び細胞より小さいレベルの分解能を達成するためには、内視顕微鏡は、好ましくは軸方向及び横方向のいずれにおいても5μmより小さい構造を解像すべきである。既存の生体内OCTシステムのほとんどとは対照的に、等比発散による、画像化されている組織の深度にともなう横方向分解能の実質的な低下が生じてはならない。
【0012】
2.大視野
内視顕微鏡の適切な視野は、光軸の軸方向及び横方向においてほぼ2mm×2mmである。この視野で臨床上の応用には十分であると考えられる。画像全体にわたり軸方向及び横方向のいずれにおいても5μm分解能を達成するためには、それぞれのフレームに対して800回をこえるA−走査(すなわち深度走査)が行われなければならない。得られる画像は、640,000をこえる画素をもつであろう。この画素数は既存の生体内OCTシステムより数桁大きい。
【0013】
3.小寸法内視鏡チップ
既存の生体内OCTシステムのほとんどは、既存の内視鏡の計装チャネルの制約に基づいて設計されている。この結果、そのようなシステムの外径はほぼ2から3mmに抑えられ、このため撮像システムの開口数が制約される。このことから、生体内条件下で高い横方向分解能を得ることが困難になる。このような制約は技術上不要であり得るし、考察している臨床上の応用におけるOCT/OCMの恩恵の十全な活用を制限し得る。したがって、例えば3mmないしそれ以上のような、より大きな外径を、20mmより短い硬質チップ長とともに、内視鏡に用いることができる。
【0014】
4.高画像化速度
内視顕微鏡は生体内条件下で高分解能の大面積画像化に用いられるであろうから、生理学的運動による組織の運動があるので、運動アーティファクトが考慮されなければならない。これらの運動アーティファクトは良好な画像品質を保証するために除去されるべきである。したがって、内視顕微鏡は、典型的な生理学的運動速度が5mm/秒であるとすれば、画像1フレームを好ましくは12.6ミリ秒以内に取得できるべきである。これは、毎秒63,000回のA−走査に相当する。この画像化速度は現在の生体内OCTシステムに比べて1桁より大きい。
【0015】
5.現在利用可能な内視鏡画像化法との統合
臨床上の有用性を向上させるため、好ましくは従来の白色光画像化が内視顕微鏡に統合されるべきである。さらに、好ましくは、内視顕微鏡の誘導の下に切除生検が行われ得るように、計装チャネルが設計されるべきである。おそらくは、水及び空気の送配のための計装チャネルも利用可能にされることも好ましい。
【0016】
上に略述した内視顕微鏡のための高等な要件は既存のOCT/OCM設計とは相容れない。例えば、内視顕微鏡に6mmの外径が許容され、G.J.ティアニー(Tearney),M.E.ブレジンスキー(Brezinski),B.E.ボウマ(Bouma),S.A.ボッパート(Boppart),C.ピトリス(Pitris),J.F.サザーン(Southern),及びJ.G.フジモト(Fujimoto)(「光コヒーレンス断層撮影法による生体内内視鏡光生検」,サイエンス(Science),1997年6月27日,第276巻,p.2037〜2039)により説明されるような単一回転ファイバに基づく、遠端光学系構造が用いられれば、5μmの横方向分解能が走査のどの1つにおいても組織内の1つの特定の深度で達成され得るが、そのような横方向分解能は他の深度ではビーム発散により低下するであろう。さらに、所要の小寸法ビームウエストをつくるには高NAシステムが必要となるであろうから、L.M.シュミット(Schmitt),S.L.リー(Lee),及びK.M.ユン(Yung)(「厚い組織における分解能が高められた光コヒーレンス顕微鏡」,Optics Communications,1997年,第142巻,p.203〜207)により説明されるようなある種の動的補償を実施しなければ、かなりの(例:2mm)距離にわたる深度においてコヒーレンスゲートと焦点とが一緒にとどまることはないであろう。したがって、上述した内視顕微鏡の要件の内のいくつかを達成するためには、(プローブ/組織間隔を変化させる)動的集束及び(光路長差を変化させる)動的補償が用いられなければならない。しかしこれらの集束及び補償手法では、実用装置の実現が面倒になり、高画像化速度要件を満たすことが一層困難になり得る。画像化速度を初めに満たすことを試みると、A.M.ローリンズ(Rollins),M.D.クルカーニ(Kulkarni),S.ヤズダンファー(Yazdanfar),R.ウング−アルニャウィー(Ung-arnyawee),及びJ.A.イザット(Izatt)(「生体内ビデオレート光コヒーレンス断層撮影法」,Optics Express,1998年9月14日,第3巻,第6号,p.219〜229)によって説明されるように、画像分解能、特に横方向分解能が、装置の臨床上の有用性が損なわれる程度まで低下する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、既存の生体内または生体外OCT/OCMシステムに現在実施されているようなシリアル走査の代わりに、複数本のファイバ(すなわちチャネル)を採用して画像の様々な部分のパラレル走査を可能にするOCTを有する内視顕微鏡を提供する。それぞれのチャネルが非常に狭い軸方向範囲にかけてだけ高分解能OCTデータを収集する、組織内の様々な深度に集束される多パラレルチャネルを使用すれば、動的集束または動的補償を用いずに、視野全体にわたる密配置焦点列を得ることができる。これにより装置の構造が大いに簡素化され、この場合には、使用される光コンポーネントのほとんどを固定型とすることができて、高速動作を容易化することができる。さらに、ファイバ光学ベースのOCT手法では寸法が本質的に小さいから、多チャネル概念を屈曲性内視鏡装置で実施することが可能になり、一方で、患者の外部にある内視鏡の近端部には、光源、検出器及びその他の装備のための余裕ができる。
【0018】
本発明の第1の態様にしたがえば試料の光検のための装置があり、本装置は:
複数の個別光放射源を提供するための光源手段;
光源手段から延びる第1の光路;及び
第1の光路の選択された範囲の実質的に連続な覆域を提供するために光放射源からの光を第1の光路内の面上に位置する複数の焦点のそれぞれに集束させ、使用時には、試料の少なくとも一部を前記選択された範囲内に配置することができ、よって試料内の複数の点を同時に走査することを可能にするための、第1の光路内の集束手段;
を備える。
【0019】
本発明の第2の態様にしたがえば試料の光検のためのNチャネル装置があり、本Nチャネル装置は複数の光ネットワーク及び1つの基準アームを備え、光ネットワークのそれぞれはNチャネル装置のための1チャネルを提供し、基準アームを共有する。
【0020】
本発明の第3の態様にしたがえば試料の光検のための方法が提供され、本方法は:
(a) 第1の光路に沿う、複数の個別光放射源からの光を提供するステップ;
(b) 第1の光路内に集束手段を提供するステップ;
(c) 第1の光路の選択された範囲の実質的に連続な覆域を提供するために、光放射源からの光を第1の光路内の面に沿う複数の焦点のそれぞれに集束させるステップ;
(d) 第1の光路内に少なくとも一部が配置された試料を提供するステップ;及び
(e) 試料内の複数の点を同時に走査するステップ;
を含む。
【0021】
本発明とともに使用するための試料がいかなる生物学的組織も、あるいはその他の適当な材料も含み得ることは当然である。
【0022】
本発明のさらなる目的及び利点は、添付図面とともになされる、以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1a】光路を示し、空気−組織界面の反射効果を無視する、本発明にしたがう装置のチップの平面図である
【図1b】光路を示し、空気−組織界面の反射効果を無視する、本発明にしたがう装置のチップの側面図である
【図1c】光路を示し、空気−組織界面の反射効果を無視する、本発明にしたがう装置のチップの端面図である
【図1d】光路を示し、空気−組織界面の反射効果を無視する、図1aの装置のチップの別の実施形態である
【図2a】図1のファイバ束チップを示す
【図2b】ファイバ束チップの拡大平断面図である
【図2c】ファイバ束チップの端面の拡大断面図である
【図3a】図1のファイバ束チップの撮像ファイバの内の3本の焦点を示す
【図3b】相異なる深度にある焦点の詳細を示す図3aの焦点の拡大図である
【図4a】図1のファイバ束チップから光ビームを向ける様々な方向を示す略図である
【図4b】図4aの方向A及びCにおける光ビームの平面図である
【図4c】図4aの方向A及びCにおける光ビームの端面図である
【図4d】図4aの方向B及びDに向けられる光ビームの平面図である
【図4e】図4aの方向B及びDに向けられる光ビームの側面図である
【図4f】方向B及びDにおける光ビームの斜視図を示す
【図5a】多焦点域近傍の電場強度分布を示す、5チャネルファイバ束チップのビームスポット図である
【図5b】多焦点域近傍の電場強度分布を示す、15チャネルファイバ束チップの中央5チャネルのビームスポット図である
【図5c】図5aのファイバ束チップのビームスポット径対焦点域距離のグラフである
【図5d】図5bのファイバ束チップのビームスポット径対焦点域距離のグラフである
【図6】本発明にしたがう装置の簡略なレイアウトである
【図7a】本発明の装置に用いられる光遅延発生器の平面図である
【図7b】図7aの光遅延発生器に用いられる走査ミラーの前面図である
【図8a】ミラー及び図1aのファイバ束チップの内の3本の撮像ファイバからの焦点の端面図である
【図8b】本発明の撮像ファイバの1本から放射された光に対する、結合された、A−走査及び2次元輝度モード(B−モード)走査の経路を示す
【図9】本発明の単一撮像ファイバの1本から放射されている光に対する、空気−組織界面による、コヒーレンスゲートと焦点との間の不一致を示す図である
【図10】図9に示される不一致を解消させるための、本発明の装置の適応トリガ印加を示す図である
【図11a】従来技術の単チャネル光コヒーレンス断層撮影装置の略図である
【図11b】2チャネル光コヒーレンス断層撮影装置の略図である
【図11c】Nチャネル光コヒーレンス断層撮影装置を構成するために用いられ得る光ネットワークの略図である
【図12a】光サーキュレータをもつ単チャネル光コヒーレンス断層撮影装置の略図である
【図12b】光サーキュレータを採用する2チャネル光コヒーレンス断層撮影装置の略図である
【図12c】光サーキュレータを採用するNチャネル光コヒーレンス断層撮影装置を構成するために用いられ得る光ネットワークの略図である
【図13a】光チャネル共有コンポーネント間のクロストークを調べるために用いられた実験装置構成の略図である
【図13b】図13aの構成で実施した実験による実験結果である
【図13c】図13aの構成で実施した実験による別の実験結果である
【図14】本発明にしたがうGI内視鏡コヒーレント光顕微鏡の端面図である
【図15】生検チャネルを示す図14のGI内視鏡コヒーレント光顕微鏡の破断側面図である
【図16】本発明の装置により得られると考えられるヒトの結腸上皮のシミュレーション画像である
【図17a】それぞれが人の皮膚の汗腺管の顕微鏡像を示す2枚の写真を示す
【図17b】それぞれが人の皮膚の汗腺管の生体内OCT像を示す3枚の写真を示す
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一層の理解のため及び本発明がどのようにしてに実行され得るかを示すため、例として、本発明の好ましい実施形態を示す図面がここで参照される。
【0025】
以下の説明においては、撮像源により用いられる波長及び装置に用いられる光コンポーネントの物理的寸法のような、様々な特定の寸法及びその他のパラメータが記述される。これらの寸法及びパラメータは説明のためでしかなく、本発明を制限するものでないことは当然である。特定のパラメータ、寸法等は目的とする本発明の応用に依存して選択することができる。
【0026】
図1を参照すれば、本発明は、多束単一モードファイバ10,ファイバ束チップ12,集束レンズ14及びミラー16を有する内視鏡コヒーレント光顕微鏡を備える装置を提供する。多束単一モードファイバ10及び集束レンズ14は静止しており、一方ミラー16は回転可能である。したがって、ミラー16は回転のために既知の態様で取り付けられている。ミラー16のための回転機構の詳細はこれ以上説明されないが、従来の機構とすることができる。(ほぼ50本のファイバとすることができる)多束単一モードファイバ10は、ファイバ束チップ12においてアレイを形成する。このアレイは開豁されて、図2に示されるように、“階段”パターンに配列される。ファイバ束チップ12から放射される光は集束レンズ14で集束され、ミラー16で反射される。集束レンズ14は、直径を5mm(すなわちφ=5mm)とし、焦点距離を5mm(すなわちf=5mm)とすることができる。ミラー16は、5mmの直径及び45°で開豁された前面を有することができる。ファイバ束チップ12の焦点の拡大像が図3に示される。
【0027】
図1aは、多束単一モードファイバ10から例として任意に選ばれた3本のファイバからの3本のビーム21,22及び23を示す。多束単一モードファイバ10が順次にずらされている、すなわち階段配列になっているという性質により(図2参照)、ビーム21,22及び23のそれぞれが相異なる点から発し、したがってミラー16が用いられていないときには、表面18上の相異なる点21a,22a及び23aに集束レンズ14により集束される。ファイバ束チップ12の多束単一モードファイバ10の全てが表面18上の相異なる点に集束されるビームを生じるという、同じ効果が得られることは理解されよう。参照数字24で示されるように(また図3に示されるように)、多束単一モードファイバ10が50本の光ファイバからなっており、それぞれのファイバからの光がほぼ40μmの狭い範囲内に集束され、焦点が(集束レンズ14の軸20に沿って測定して)40μmずつ間隔をおくように、それぞれのファイバの末端がずらして配置されていれば、合わせて2mmの範囲すなわち深度がカバーされる。集束レンズ14の軸20は第1の光路の一部である。
【0028】
ミラー16が存在すると、光ビーム21,22及び23は図1b及び1cに示されるように集束される。すなわち、3つの焦点21b,22b及び23bは第1の光路の外延を形成する軸26に沿って垂直方向すなわち深度方向に間隔をおいて配される。図1cの端面図が示すように、3つの焦点21b,22b及び23bは、ミラー16の運動に対して円周方向にも間隔をおいて配される(すなわち、3つの焦点は横方向に間隔をおいて配される)。3つの焦点21b,22b及び23bは表面27上に落ちて、第1の光路の選択された範囲の画像化を容易にする。表面27は複雑な表面であっても、平坦な表面であってもよい。多束単一モードファイバ10が50本の個別ファイバからなっていれば、ファイバ束チップ12からの全ての個別ファイバの焦点は、相応した間隔をおいて配されることになろう。あるいは、反射された焦点21b,22b及び23bは必ずしも軸20に垂直である必要はなく、軸20に対して大角をなしていればよい。
【0029】
ミラー16の回転の結果、表面27は移動する。これにより、図1cに示されるように、好ましい2mm×2mmの大きさの正方形の走査領域28をカバーする、2次元B−走査画像30を得ることが可能になる。このB−走査画像30は走査領域28に対して得ることができる画像の例を示す。
【0030】
例えば多束単一モードファイバ10のコア及びクラッド層の直径を変えることにより、多束単一モードファイバ10の構造を変えれば、表面27が変化する。さらに、多束単一モードファイバ10の代わりに光導波路ウエハを用いることもできる。
【0031】
代替実施形態において、図1dに示されるように、集束レンズ14及びファイバ束チップ12と結合して直線的に移動するミラー16'でミラー16を置き換えることができる。直線並進には逆進運動を組み入れ得ることが好ましい。力学用語を用いれば、図1aに描かれるファイバ束チップ12は動径走査運動を利用する。動径走査運動は、食道または大腸のような、寸法がより大きい器官の走査に適切である。しかし、動径走査に必要な駆動機構は複雑であるため、ファイバ束チップ12の直径が大きくなり、血管のような内径の小さい器官の内視顕微鏡観察はできないであろう。したがって、動径走査の代わりに直線並進走査を行うように適合された、同様のファイバ束チップ12'を備える、図1dに示される代替実施形態が用いられることになろう。
【0032】
図1dに示されるように、上記の2つの走査方法の間の主要な違いは、ミラー16'が回転せず、ファイバ束チップ12'の全体が水平軸に沿って、例えば4mmの範囲にわたり、好ましくは可逆運動で並進されなければならないことである。機械的には、直線並進走査運動は動径走査運動ほど複雑ではない。さらに、直線並進走査は血管のような内径の小さい器官内の内視顕微鏡観察により一層適する。しかし、大腸のような、より大きないくつかの器官に対しては、直線並進走査は位置決めが困難なためそれほど適切ではない。
【0033】
別の代替実施形態において、上記の走査運動の両者を組み合せてヘリカル走査を行う内視顕微鏡観察装置を作成することができる。ヘリカル走査運動は、ミラー16,集束レンズ14及びファイバ束チップ16の直線並進と組み合された、ミラー16の回転運動を含むことになろう。そのような内視顕微鏡観察装置は、ヒトの大腸のような、ある種の器官の画像化により一層適し得る。ヘリカル走査内視顕微鏡観察装置は、図1aに示される装置を直線並進させることにより実施できる。
【0034】
また別の代替実施形態において、ファイバ束チップ12をミクロ機械加工電気機械システム(MEMS)駆動機構を用いるように変更することができる。上述した実施形態ではミラー16の何らかの形態の運動が必要であるから、機械的駆動機構が全実施形態で必要となる。したがって、内視鏡外部にモーターが配備され、機械的連結駆動機構またはワイヤが内視鏡の全長に沿って配置される。しかし、多チャネルファイバ光学構造は、そのような機械的駆動手段に束縛されない。実際、多チャネルシステムで実現可能な空間分解能は極めて高いため、機械的駆動手段が用いられる場合には、振動誘起偏光依存性のような、機械的駆動手段からの悪影響が本発明の十全な潜在能力を制限しかねない。したがって、電気的駆動型マイクロマシン光学装置を用いて走査を容易にする、MEMS電気的駆動機構を採用することができる。MEMS実施態様はミラー16のような並進させられる物体の近傍を除いて装置軸に沿う振動を低減するから、本実施態様は、機械的駆動機構により生じ得る悪影響をおそらくは回避し得る。MEMS実施態様は、小形化及び性能に関する利点も提供し得る。
【0035】
別の代替実施形態においては、ファイバ束チップがミラー16を必要としないようにすることができる。ファイバ束チップ12及び集束レンズ14の結合体を軸回転可能なように取り付けることができる。そうすれば、軸回転運動により、試料内に広がる複数の面の各部分に沿って複数の焦点を導き、走査領域28のB−走査画像30を構成するように、ファイバ束チップ12と集束レンズ14との結合体を適合させることができる。
【0036】
また別の実施形態において、ミラー16をプリズム表面とすることができる。装置の他のコンポーネントは、図1aから1dで先に説明され、示された装置にしたがうことになろう。
【0037】
光路を、直線、彎曲線、及び曲線とし得ることもまた当然である。さらに、光路を、長さ、幅及び高さを有する3次元光路とすることができる。走査運動(すなわち、動径、直線またはヘリカル走査)に依存して、その上に焦点が乗る面の方位も変化し得る。さらに、光路は1つの光放射源または複数の光放射源(すなわち、複数の光源またはそれぞれが光を伝送する複数本のファイバ)からの光を含むことができる。
【0038】
次に図2b及び2cを参照すれば、多束単一モードファイバ10からなるファイバ束チップ12の拡大図が示される。多束単一モードファイバ10のそれぞれのファイバは、直径が、例えば、それぞれ5μm及び40μmの、コア10b及びその周りのクラッド層10aからなる。多束単一モードファイバ10のそれぞれの末端は、それぞれのファイバを通る光の焦点が間隔をおいて配されるように、40μmずつ段差を付けることができる。但し、40μm以外の段差を用いることもできる。
【0039】
次に図3を参照すれば、ファイバ束チップ12における、多束単一モードファイバ10のそれぞれのファイバについて、A−走査が、2mmの画像化深度のほぼ全体にわたってとられるが、ビーム径がほぼ最小(参照数字34に示される)であって軸上の位置に対して実質的に変化しない、それぞれのファイバの焦点近傍におけるほぼ40μmの短い軸方向範囲だけにとどめられる。本例の構造における、この40μmという範囲は、参照数字31で示される。A−走査は、ファイバ束チップ12内の多束単一モードファイバ10のそれぞれのファイバにより同時に行われる。事実上、多重A−走査は様々な動径方向において試料組織内の2mmの深度全体をカバーするが、多束単一モードファイバ10のそれぞれのファイバについては、40μmの焦点深度31に対応するそれぞれのA−走査区画だけが画像の構成に用いられる。焦点域31に示されるように、ビーム21b,22b及び23bのそれぞれは、焦点38,37及び36について明瞭な“砂時計”形を既知の態様で示す。ビーム21b,22b及び23bのそれぞれに対して、遠視野ビーム広がりが線32で示され、近視野ビーム広がりが線34で示される。
【0040】
ミラー16を回転させる目的は、B−走査(すなわち図1の走査領域28の)画像を生成するために、A−走査方向に垂直な方向における動径(すなわち横方向)走査を生じさせることである。得られる、多束単一モードファイバ10の個々のファイバの焦点の動径走査パターンが、図4に示される。ミラー16の開豁面がB−走査画像がとられるべき位置“A”及び“C”の方向に実質的に向けられているときにだけ連続走査面が存在することは、注目に値する。動径走査パターン上の他の位置においては、個々のA−走査間の“デッドスペース”が非常に大きいため、組織の十分なサンプリングができない。したがって、本発明は、2mm×2mmの画像が得られる範囲内で、実質的に“A”または“C”位置において、約20°のセクター角でセクター走査を行うために、セクター走査画像化装置を備える。本例においては、与えられた形状寸法により、セクター角をさらに大きくすると適切な断層画像を形成するには大きすぎる“デッドスペース”が生じるであろう。
【0041】
図4bおよび4cはそれぞれ、ビーム焦点36,37及び38を平面図及び端面図で示す。図示されるように、また先に示した図に対応して、個々の焦点36,37及び38は軸20に垂直な動径平面において間隔がとられている。図4cに示されるように、軸26に沿う端面図において、焦点36,37及び38は深度に関して間隔がとられているが、重なり合って連続走査面すなわち走査領域28を形成している。
【0042】
走査面すなわち走査領域28に垂直な、図4aで“B”及び“C”で表示される位置の方向に、実質的にミラー16の開豁面が向けられると、図4d(パターンの平面図)及び図4e(パターンの側面図)に示されるパターンが得られる。ここで、焦点は参照数字40,41及び42で表示される。図4dに示されるように、焦点40,41及び42はそれぞれ、ファイバ束チップ12におけるファイバ間隔に対応する間隔がとられる、個別の面40',41'及び42'にある。面40',41'及び42'は軸20に垂直である。図4bから4eにおいて、矢印44は動径走査方向を示す。
【0043】
図1dに示される直線並進システムについては、“デッドスペース”がなく、したがって直線並進システムは大きさがほぼ2mm×2mmの画像に適する画像化を行うことができる。
【0044】
内視顕微鏡システムの例示的構成においては、生体内画像化に対して、生理学的運動による組織運動の最大速度を5mm/秒に選んだ。近回折限界集束レンズ(すなわち、非常に小さな焦点を結ぶことで理想レンズに近いレンズ)を集束レンズ14として選んだ。近回折限界集束レンズはメレス・グリオ社(Melles Griot Inc.)から入手した。さらに、複数の単一モードファイバ10のそれぞれの単一モードファイバには、コア径が5μm(すなわちφ〜5μm)であり、動作波長が0.86μmのファイバを用いた。さらに、本構成では、ほぼn=1.447のコア屈折率及びΔn=0.005のコア−クラッド層間屈折率差を組み入れている。これらの値を用いれば、ファイバのNAは式(1):
【数1】

で与えられ、ファイバの許容角θは式(2):
【数2】

で与えられる。
【0045】
本構成ではさらに、複数本の単一モードファイバ10からの光を集束するために用いられる、倍率1対1及び遠視野ビーム発散角がθと同等の、理想レンズの概念を導入する。したがって、中心波長がλの光ビームに対して、焦点におけるビーム径φは式(3):
【数3】

で与えられる。スポット径φはコア径(φ=5μm)とほぼ等しく、よって効率的な光結合が得られる。焦点深度は2(πw020)=27.2mmであり、焦点36,37及び38に対する焦点域の末端におけるビーム径φ'は式(4):
【数4】

で与えられる。パラメータφ及びφ'は軸方向における焦点位置の40μmの範囲内における振幅に関して定められるから、光強度(すなわち光振幅の2乗)に基づくビーム径は、実際上、5μmより小さくなり得る。
【0046】
上記の計算は主光軸上で有効な理想光学に基づく。φ=5mm,f=5mmで作動距離が8.2mmの、市販のレンズ系を用いれば、2mm×2mmの画像をカバーするに必要なオフアクシス角は約5°であることが市販のレイトレーシングソフトウエアを用いてわかった。集束レンズ14のフィルファクターをほぼ80%としたレイトレーシング結果は、オンアクシスRMS焦点が半径5.3μmにあり、5°オフアクシスRMS焦点が半径10.3μmにあることを示す。特注レンズ系はより優れた性能を有するはずである。
【0047】
図1に示されるように、全光学系の作動距離、すなわち集束レンズ14から装置の焦点までの距離は、レンズ系の焦点距離、集束レンズ14の直径及び集束レンズ14とミラー16との間の間隙長により定まる。上で論じた市販レンズ系を用いれば、作動距離は約2.35mmである。画像の中心からミラー16の回転軸までの距離は約5.47mmである。動径方向で2mmの走査を達成するためには、セクター走査角は、光学系の形状寸法により定まり、ほぼ±10.4°、すなわち全体で約20°になるはずである。
【0048】
現時点で既存の生体内OCTシステムは、生物学的に許容し得る毎秒4ないし8フレームを得るために4ないし8回転/秒(RPS)で動径走査を行う。本実施形態の構成については、回転速度として4.4RPSが選ばれる。回転速度はA−走査の繰返しレート及び5μmの横方向解像度を得るに必要なA−走査回数に依存する。したがって、本発明の装置の画像化速度は4.4フレーム/秒であるが、様々なエンドユーザの用途によっては別の画像化速度が選択されることもあり得る。個々のフレームのそれぞれの画像化時間は、回転速度及びセクター走査角により定まり、12.6ミリ秒である。したがって、与えられたフレームに対して、システムは12.6ミリ秒間信号を取得し、その間にデータ処理が行われるフレーム間時間は約215ミリ秒である。これらのパラメータは、本システムに用いられる(後に説明される)光遅延発生器の性能に依存する。
【0049】
上記の計算は光波長860nmで動作する光源及び特注単一モードファイバに基づいてなされたが、1300nmのような別の波長で動作する光源及び市販ファイバを用いる実施態様も可能であり得る。図5aは、波長1300nmで動作する、市販ファイバ(コーニング(Corning)SMF−28)を用いた、この5チャネルファイバ束チップに対するビームスポット図を示す。ファイバ束チップのファイバ段差は125μmである。これらのファイバからの光ビームは、直径が5mmで焦点距離が4.5mmのレンズにより集束されて、ほぼ0.65mmの焦点域をカバーする。得られる横方向画像化分解能はほぼ10μmである。図5bは、波長890nmで動作する、コア径が5μmでクラッド層径が40μmの特注ファイバを用いた、15チャネルファイバ束チップに対するビームスポット図を示す。このファイバ束チップのファイバ段差は40μmである。中央の5チャネルのビームスポットだけが示される。得られる横方向画像化分解能はほぼ0.65mmの焦点域にわたりほぼ5μmである。
【0050】
図5cは、図5aの5チャネルファイバ束チップに対する、ビームスポット径対焦点域に沿う距離を示す。図5cは、0.65mmの焦点域全体にわたりビームスポット径が一様に15μmより小さいことを示す。図5dは、図5bの15チャネルファイバ束チップに対する、ビームスポット径対焦点域に沿う距離を示す。図5dは、0.65mmの焦点域全体にわたりビームスポット径がほぼ5μmであることを示す。
【0051】
次に図6を参照すれば、本発明の装置の基本光学素子の概略の全体的レイアウトには、複数の光源50,複数のツリー型結合器52,複数の3dB結合器54,ファイバ束チップ56,複数の検出器58,複数の復調器60及び光遅延発生器64が含まれる。レーザとすることができる複数の光源50は、複数のツリー型結合器52に結合される。チップ56のファイバ(すなわちチャネル)のそれぞれに十分な光を確実に与えるためには1つより多くのレーザが必要となり得る。ツリー型結合器52のそれぞれは複数の3dB結合器54の内のいくつかにそれぞれの光源50を結合する。複数の3dB結合器54は、複数の光源50からの光のほぼ1/2を前方に伝送するためにファイバ束チップ56に結合される。ファイバ束チップ56は図1のファイバ束チップ12及びその他の光学素子(すなわち、集束レンズ14及びミラー16)を備える。複数の光源50からの光のもう一方の1/2は検出器58に後方反射され、検出器58は続いて、サンプリングされたデータを処理してB−走査画像30を生成するために機能する、コンピュータ62に復調器60を介して結合される。光遅延発生器64は、遅延反射信号を検出器58に与えるために、3dB結合器54により用いられる。チップ56で検査されている試料は参照数字65で表示される。
【0052】
図6に示されるレイアウトにおいては、3dB結合器54の代わりに、1dBまたは10dB光結合器等を用いることができる。さらに、ツリー型結合器52により3dB結合器54のそれぞれに、したがってそれぞれのファイバに伝送される光の強度は同じである必要はなく、実際には、3dB結合器がファイバ(すなわちチャネル)に深い組織内走査を容易にする光を与えるかまたは浅い組織内走査を容易にする光を与えるかに依存して選ばれる。組織内深くを走査するためには高強度光が必要である。したがって、組織内深くを走査する光をファイバに送るツリー型結合器52及び3dB結合器54は、より多くの光を与えるように適合される。
【0053】
図7a及び7bは光遅延発生器64をさらに詳細に示す。既存の生体内OCTシステムにおけるものと同様の光遅延発生器64は、個別のファイバのそれぞれのコヒーレンスエンベロープを用いるA−走査を行うために用いられる。光遅延発生器64は、回折格子66,レンズ67,走査ミラー68及びミラー69を備える。高速深度走査は、ファイバ束チップ12の多束単一モードファイバ10からの擬単色光を回折格子66上に分散させ、分散光を振動ミラー69上に集束させることによって、光遅延発生器64により達成できる。このことは、G.J.ティアニー、B.E.ブーマ及びJ.G.フジモト(「回折格子ベース位相制御線による高速位相及び群遅延走査」,Nature Medicine,1998年,第4巻,第7号,p.861〜865)により説明されるように、周波数すなわちフーリエドメインにおいて線形ランプを印加する効果を有する。回折格子66における反射波長の再結合により、実空間時間遅延がつくられる。走査ミラー68の角度が数°の範囲の回転により急速に振動して基準アームにおける時間遅延を急速に変化させ、試料の高速繰返し深度操作を可能にする。
【0054】
多束単一モードファイバ10の内の1本のファイバからの光70が図7aに示される。光70は、回折格子66により、スペクトル成分71,72及び73で表されるスペクトル成分に分散される。スペクトル成分71は光70の最短波長を表し、スペクトル成分73は光70の最長波長を表し、スペクトル成分72は光70の中心波長を表す。光70のこれらのスペクトル成分は光遅延発生器64内で垂直方向に配列される。同様な態様で、多束単一モードファイバ10の他のファイバからの光も分散され、それぞれのファイバからの分散光には垂直方向に間隔がとられて、垂直方向に配列される。多束単一モードファイバ10のそれぞれのファイバからの分散光の位相変調を容易にする、与えられたファイバについての、走査ミラー68のピボット軸からの分散光の中心波長のオフセットはxで表わされる。あるいは、xがゼロである場合には、多束単一モードファイバ10のそれぞれのファイバからの光を位相変調するため、多束単一モードファイバ10のそれぞれのファイバに対して位相変調器が必要になる。このことには、走査ミラー68の大きさを縮小でき、したがってより高いフレームレートを用い得るという利点がある。さらに、位相変調器は電気的に制御され、よって非常に安定な信号が生成され得る。
【0055】
次に図7bを参照すれば、多束単一モードファイバ10のそれぞれのファイバからの分散光が走査ミラー68上に75,76,77及び78のように縦列をなして垂直方向に配置されるように、多束単一モードファイバ10がファイバ束チップ12に配列される。あるいは、横列のような、別の順序配置を多束単一モードファイバ10のそれぞれのファイバからの光のスペクトル成分に対して用いることもできる。
【0056】
図6に示されるように、単一の光遅延発生器を多束ファイバに遅延を導入するために用いることができる。単一の光遅延発生器に結合され得るチャネルの数の決定における制限要因は走査ミラーの物理的大きさであり、したがってチャネル数は光遅延発生器の共鳴周波数により制限される。市販の共鳴光走査器は16kHzまで動作可能である。したがって、4mm×5mmの大きさの走査ミラー68を用いることができる。ファイバ束アレイの大きさは約2mmであるから、1つの光遅延発生器にアレイ全体を適合させることができる。したがって、本発明の実施形態に対し、光走査角αを±2°として、f=16kHzで動作する光走査器を有する単一の光遅延発生器が用いられる。本実施形態には、ピッチがp=3.33μm、中心周波数がλ=0.86μm、焦点距離がf=21mmの回折格子も組み込まれる。したがって、自由空間群光路長差Δlgは式(5):
【数5】

で与えられ(ローリンズ等(1998年)による)、またピーク対ピーク値は1.24mmである。式(5)において、x=1mmはλスペクトル線と共鳴ミラーのピボット軸との間の変位である。ピークA−走査速度VA最大は式(6):
【数6】

で与えられ、A−走査速度Vは式(7):
【数7】

にしたがって変化する。コヒーレンス長lが5μmでガウス型発光スペクトルをもつ光源を選べば、等価発光帯域幅Δλは式(8):
【数8】

で与えられ、ここでガウス型エンベロープに対してはb=0.66である。
【0057】
共鳴ミラーの大きさが次に決定される。一次回折を有する回折格子をもつ光遅延発生器に対して、回折角θ(λ)は式(9):
【数9】

で与えられる。レンズのフーリエ面における(λ−Δλ/2)から(λ+Δλ/2)までのスペクトルの広がりΔxは式(10):
【数10】

で与えられる。
【0058】
ミラー幅は4mmであるから、変位xの値をほぼ1mmとして共鳴ミラーの一辺上にスペクトルを適合させることができる。このことが図7a及び7bに示されている。システムの個々のチャネルのキャリア周波数fは式(11):
【数11】

で与えられ(ローリンズ等(1998年))、最大で16.3MHzである。
【0059】
干渉像(すなわち干渉縞パターン)の帯域幅Δfは式(12):
【数12】

で与えられ、最大で8.4MHzである。
【0060】
(t)>Δf(t)であるから、急峻な周波数カットオフは必要であるが、通常の整流及び低域フィルタ方式によって適切な復調を行うことができる。(単一チャネルで行われるA−走査深度)D=40μmが最高キャリア周波数に一致し、よってDにわたるキャリア周波数変動が最小化されるように、システムの個々のチャネルを設定することが好ましい。キャリア周波数は時間に関して正弦的に変動し、変動Δfは式(13):
【数13】

によって与えられ、fの約0.2%である。
【0061】
別の位置においても、信号を適切に復調することはできるが、キャリア周波数の変動はより大きくなるであろう。信号を復調するため、アナログ高速整流器及び10極低域フィルタを復調器60に組み込むことができる。実際上は、信号の中心がDCにおかれ、帯域幅がΔfになるように、信号周波数が下方偏移される。復調エンベロープ信号は次いで適切なサンプリングレートでデジタル化される。現時点で既存のデータ取得(DAQ)カードは、約60dBのSNR(信号対雑音比)で、毎秒30メガサンプル(MS/秒)で動作する。Δf=8.4MHzの干渉像スペクトルに対してガウス型形状を選べば、60dB点は約14.5MHzにある。したがって、そのような信号のデジタル化に対するナイキストレートはほぼ29MS/秒である。したがって、現時点で既存のDAQカードはエイリアシングを生じずにエンベロープ信号をデジタル化できるであろう。
【0062】
最高キャリア周波数においてエンベロープ信号をデジタル化するためのサンプリングレートを30MS/秒とすれば、軸方向における空間サンプリング間隔はΔ軸方向=VA最大/S=2.07μmである。試料を通って上下を繰り返すA−走査を示す走査経路80が図8に示される。サンプリング点が参照数字82で表示される。2.07μmの軸方向間隔が参照数字84で表示される。横方向における空間サンプリング間隔は、横方向すなわちB−走査速度及び光遅延発生器64の光走査器の共鳴周波数により決定される。ミラーの回転軸からの動径距離rが5.47mmである画像の中心において、動径サンプリング間隔Δ動径は式(14):
【数14】

により与えられる。図8に、この間隔が参照数字86で表示される。最浅深度を走査するファイバについての横方向空間サンプリング間隔は3.86μmであり、最深チャネルについての横方向空間サンプリング間隔は5.59μmである。したがって、画像中心における画素寸法は、軸方向2.07μm×横方向4.73μmである。横方向画素寸法は画像の深度にわたって3.86μmから5.59μmまで変化する。ミラー16の回転速度を変えることにより、フレームレートを犠牲にして、横方向サンプリング間隔を変えることができる。共鳴周波数がより高い光走査器を用いても、サンプリング間隔を縮小することができる。
【0063】
パルス光源(例えば波長860nmで発光する15ないし20フェムト秒パルスレーザ)に対しては、コヒーレンス長はほぼ4.5μmないし6μmであろう。軸方向空間サンプリング間隔は約2μmであり、これはコヒーレンス長の1/2より小さいから、画像は軸方向で問題なくサンプリングされる。集束レンズ14として近回折限界集束レンズを用いれば、ビームスポット径は約5μmになるはずである。横方向空間サンプリング間隔が3.86μmから5.59μmまで変化するから、ビームウエスト径が約5μmであるとすれば、画像の分解能はサンプリング分解能を若干下回る。しかし、空間サンプリング間隔は最終画像分解能と等価ではなく、最終画像分解能は局所的コントラスト及び雑音レベルの影響も受ける。局所的コントラストは画像において隣接画素として表れる試料の2点の間の反射率の差である。これらの2つの点の反射率が同様であれば、すなわち局所的コントラストが低ければ、これらの点を分解することは困難であろう。
【0064】
画像化速度は運動ぶれを小さくするに十分に高速であるべきである。標的速度(すなわち組織運動)が一般に5mm/秒であるとすれば、1フレーム時間(経過時間12.6ミリ秒)内に標的は特定の方向に63μmまで移動することができ、これは5μmの設計分解能よりかなり大きい。本実施形態においては、コヒーレンスゲートを40μmの距離にかけて走査するに必要な時間である0.6マイクロ秒内に画像の1本の線が形成されるようにして、A−走査が全てのチャネルにおいて同時に行われる。2つの連続するA−走査間の時間は、システムのミラー16の回転速度及び1画像当りのA−走査数で定まる、約16マイクロ秒である。すなわち、16マイクロ秒間の移動量は0.08μmであり、これは分解能よりかなり小さいから、得られる画像は鮮明になるはずである。したがって、画像には運動ぶれがないはずであるが、それでも運動アーティファクトは存在し得る。生じる運動アーティファクトはおそらく、組織構造の寸法及び標的速度に依存して63μmもの大きさになり得る、画像化される組織構造の形状寸法上の変形であろう。この運動アーティファクトは、空気−組織界面が複数の光源50からの光に及ぼす効果による。
【0065】
図9に示されるように、画像化される組織内部の、装置の個々のファイバの焦点は、組織内の焦点の位置の距離d、組織表面の屈折率が1であるか否か、及び(一般にほぼ1.4である)組織の実屈折率にしたがって変化し得る。したがって、実焦点は組織表面下の距離dにあり、dは式(15):
【数15】

で与えられる。ここで、θは個々のファイバの許容角θに等しいとされ、θは組織外部(すなわち空気)の屈折率n=1及び組織内部の屈折率n=1.4により定まることになろう。
【0066】
コヒーレンスゲート位置dは式(16):
【数16】

にしたがって変化する。したがって、光の進行速度は媒質の屈折率が大きくなるほど遅くなるという事実により、n=1の(すなわち組織が存在しない)媒質内では一致する、焦点と光ビームのコヒーレンスゲートとの間に、光路の不一致が存在する。この不一致の大きさΔdは式(17):
【数17】

で表される。組織の屈折率n=1.4から、Δd=0.97dが得られる。この不一致問題は高NA−OCMシステムに対して共通であり、既存の高NA−OCMシステムの多くは何らかの形態の動的補償、すなわち基準光路長を動的に変えることによるΔdの補償を用いるが、高画像化速度でのそのような動的補償は困難である。したがって、本発明の実施形態の一態様は、検出された干渉像信号の‘適応トリガ印加’を用いることである。
【0067】
上に示したように、自由空間群光路長差はピーク間で2Δl=1.24mmであり、これは40μmでしかない有用なA−走査範囲よりかなり大きい。このため、コヒーレンスゲートが焦点を通過するときにだけトリガをかけて干渉像を得ることができるから、上記の不一致を処理する余裕が残される。
【0068】
図9に示されるように、それぞれのファイバチャネルに対する作動距離dはnにしたがって変化するが、nはほぼ一定である。したがって、どこに組織表面があるかがわかれば、dを決定することができ、続いてΔdを決定することができる。
【0069】
組織表面の斜視図及び任意の軸線90を示す図10を参照すれば、組織表面を走査するように指定されたチャネル1が、走査領域28において軸線90を最初に通過するチャネルである。チャネル1及び2の焦点が、軸線90を通過する多束単一モードファイバ10(すなわち複数のチャネル)からの光の概略表示94に参照数字91及び92で表示される。最終チャネル、すなわち本例ではチャネル50の焦点は参照数字95で表示され、画像における最深層を走査するように指定される。表示94の全体のプロファイルは、その範囲内ではコヒーレンスゲートと焦点距離を一致させることができる、適応トリガ域を定める。50のチャネルの内の1つ、すなわちチャネル“v”は、空気−組織界面が擬似的にミラーとしてはたらき、入射光を反射するから、強く判然とした正反射を受けることになろう。組織表面の下では、組織が入射光を散乱させ、吸収する混濁媒質としてはたらく。すなわち、チャネル“v”が、チャネル“v”より前のチャネルは全て雑音レベルにある信号を返すであろうから、この特定の軸線90に対するdを決定するであろう。したがって、“適応トリガ印加”法は‘隣りの’チャネルに比較して反射の大きな増加があるチャネルを識別することにより組織表面の位置を突き止めるために、隣接するチャネルについて検出された反射光を比較するステップを含む。次いでこの情報が引き続くチャネルのそれぞれに順次伝えられ、焦点とコヒーレンスゲートとの間の不一致を小さくするために、それぞれのチャネルに対するトリガ点が前記情報にしたがって設定される。
【0070】
例として、チャネル“v”が13チャネルであれば、チャネル1から12は組織表面より上の自由空間の走査に設定され、チャネル13は組織表面の走査に設定され、引き続くチャネルは、それぞれのチャネルの光ビームの焦点とコヒーレンスゲートとの間の不一致は生じずに組織内部の走査に設定されるように、装置が較正される。画像化の間、図10に参照数字96で表示されるように、組織表面の位置についてΔd=±0.5mmの許容範囲を設けることができる。この許容範囲は、次に説明されるように、A−走査性能及びエンベロープ検出器の周波数応答に関係する。
【0071】
Δd=0.5mmとすれば、補償を必要とする不一致Δd'は式(18):
【数18】

で与えられる。このことは、最高キャリア周波数において干渉像信号をトリガする代わりに、実キャリア周波数f'が式(19):
【数19】

で与えられなければならないことを意味し、この実キャリア周波数は最高キャリア周波数の約83%であり、これにともなって干渉像信号帯域が変わる。エンベロープ検出器の周波数応答は動的に調整できるとしても、エンベロープ検出器の応答は固定するが、カットオフ周波数に17%の許容差をもつように設計する方が、より簡単であり、高速である。このようにすれば、適応トリガ印加方式全体が固定型コンポーネントだけを含み、補償の全てが電気的に行われて高速画像化要件を満たす。
【0072】
図6に示される光コンポーネントは、以下のように選ぶことができる。S.A.ボッパート,B.E.ボウマ,C.ピトリス,J.F.サザーン,M.E.ブレジンスキー,及びJ.G.フジモト(「生体内細胞光コヒーレンス断層撮像」,Nature Medicine,1998年7月,第4巻,第7号,p.861〜865)に基づけば、ほぼ2mmないし3mmの深度までの画像化を可能にするために、2mWの組織入射パワーを用いる非内視鏡OCTシステムにおいて、100dBをこえるSNRを達成することができる。用いられた光源は、コヒーレンス長が5.1μmの、中心波長1280nmで動作する、カーレンズ−モードロック固体Cr4+:フォルステライトレーザである。しかし、本発明の実施形態はこのタイプの光源にも、広帯域超発光ダイオードのような、その他のいかなるタイプの光源にも限定されない。例えば、別の可能性には、ほぼ4.5μmないし6μmのコヒーレンス長を提供するであろう、860nmを中心としてほぼ100nmの帯域をもつ、白色発光Cr:LiSAF光源がある。このダイオードポンピング型モードロック固体レーザは、860nmで動作させたときに、繰返レート約100MHz及び平均パワー30mWで動作するはずである。パルスエネルギー変動は1%未満になるはずである。図6に参照数字50で表示される、いくつか(例えば2つまたは4つ)の上記レーザは、50チャネルの所要パワーを全て供給する必要がある。組織のより深い部分を走査するチャネルにはチャネル当たりほぼ1ないし2mWの入射パワーが必要であろうし、より浅い部分を走査するチャネルにはそれほどのパワーは必要ではないであろう。ツリー型結合器52は、光源パワーを上記要件に合せて分割するように構成することができる。最高キャリア周波数は16.3MHzであるから、それぞれの干渉縞は少なくとも6つのレーザパルスを含むであろう。したがって干渉縞パターンは十分にサンプリングされるはずである。
【0073】
それぞれのチャネルに対して、個別の光受信器すなわち検出器58を用いて、干渉縞を検出することができる。最大検出器帯域幅は125MHzであるが、本発明の装置では、検出器帯域幅は、キャリア周波数及び干渉像の帯域幅により定まるように、30.8MHzで十分であり得る。
【0074】
本発明の代替実施形態は、装置の複雑性を軽減し、コストを低減するために光コンポーネントを共有するという概念に関わる。図11aを参照すれば、干渉像のAC成分が干渉像のDC成分から分離されてAC成分だけが増幅される、一般的な平衡検波型単チャネル干渉計150が示される。単チャネル干渉計150は、光ファイバ及び3dB結合器140,142及び144のネットワークを介して接続される、広帯域IR(赤外)光源L,可視波長案内光G,平衡検波器BD,偏光制御器PC,位相変調器φMOD及び光遅延発生器ODGを備える。“x”はファイバネットワークのデッドエンドを表す。可視波長案内光Gは単チャネル干渉計150が指し示している方向を示す(すなわち画像化される方向を示す)緑色レーザとすることができる。単チャネル干渉計150は試料Sに結合される。
【0075】
図11aの構成を拡張して、図11bに示されるような、2チャンネル干渉計160を構成することができる。下付添字は2本のチャネルにおけるコンポーネントを表す。下付添字のないコンポーネントはそのコンポーネントが両チャネルに用いられていることを示す。2チャネル干渉計160は、レーザL',可視波長案内レーザG',2対1ツリー型結合器TC1,偏光制御器PC,PC及び位相変調器φMOD',可変遅延素子VD及びVD,光遅延発生器ODG',検出器BD及びBD,並びに3dB結合器162,164,166,168,170及び172を備える。可変遅延素子VD及びVDはそれぞれのチャネルに対してコヒーレンスゲート位置を調節するために組み込まれる。2本のチャネルは、組織試料の相異なる位置にある2つの点とすることができる、試料S及びSに結合される。本例において、光源L'は2本のチャネル間で共有され、チャネル1の光パワーはチャネル2の光パワーの2倍である。したがって、チャネル1はチャネル2より深い組織領域を走査するために用いられるべきである。2対1ツリー型結合器TC1は、両チャネルが(位相変調器φMOD'及び光遅延発生器ODG'を含む)同じ基準アームを共有できるように用いられる。同じ基準アームを共有できるという能力により、1つの位相変調器を多束単一モードファイバ10(すなわち全チャネル)からの光の位相変調を行うために用いることができる。2本のチャネルからの光がツリー型結合器TC1により1本のファイバに結合されて同じ位相変調器φMOD'に送られることに注意されたい。したがって、2チャネル干渉計160のコストが低減され、複雑性が軽減される。
【0076】
図11bに基づけば、汎用光ネットワークを図11cに示される光ネットワーク180のようなNチャネルOCTシステムを構成するために用い得ると考えられる。光ネットワーク180は、第nチャネル182のための光ネットワーク及びn本のチャネルの全てに共有される基準アーム184を備える。第nチャネル182のための光ネットワークは、検出器BD,3dB結合器194,196及び198並びに偏光制御器PC及び、試料Sに結合された、可変遅延素子VDを含む試料アームを備える。第nチャネル182のための光ネットワークは、第(n−1)チャネルから光源光186を受け取り、3dB結合器194を介して光源光188を第(n+1)チャネルに送り出す。第nチャネル182のための光ネットワークは、第(n−1)チャネルから案内光パワー190を受け取り、3dB結合器196を介して案内光パワー192を第(n+1)チャネルに送り出す。本実施形態において、光源(図示せず)は、等比級数的または別の適切なパワー分割方式にしたがうパワー配分によりN本のチャネルのそれぞれの間で共有することができる。N対1ツリー型結合器TC,位相変調器φMOD”及び光遅延発生器ODG”を含む基準アーム184は、N本のチャネルのそれぞれの間で共有される。
【0077】
図11a,11b及び11cに示される構成図のそれぞれでは、検出器に結合された3dB結合器から送られる試料及び基準アームからの反射光の間の干渉による干渉パターンの光の一部が失われるという事実を問題としてかかえている。本例では、3dB結合器が用いられているから、干渉パターンの光の50%が失われる。例えば、図11aにおいては、干渉パターンの光の50%だけが3dB結合器140及び142から検出器BDに送られる。このため、低強度の干渉パターンに対しては特に、干渉パターンの検出が一層困難になる。これを処理するため、光サーキュレータのような非相反光素子を、3dB結合器だけが用いられた場合には失われていた部分光を検出器に送るために用いることができる。
【0078】
図12a,12b及び12cを参照すれば、単チャネルOCT装置200,2チャネルOCT装置210及び、NチャネルOCT装置220のための光ネットワークの、光サーキュレータを備える代替実施形態が示される。図12a,12b及び12cにおいては、検出のためにより強度の高い干渉信号を与えるため、干渉パターンの光を回収して検出器BD,BD,BD及びBDのそれぞれに導くため、光サーキュレータC,C,C及びCが用いられる。3つの実施形態の残りのコンポーネントは、図11aから11cに示される、単チャネルOCT装置150,2チャネルOCT装置160及び,NチャネルOCT装置180のための光ネットワークのコンポーネントと同様である。光を回収して回収光を検出器に与えるために光サーキュレータを用いるという概念は図6の装置にも適用でき、この場合、光サーキュレータは3dB結合器と検出器との間に配することができる。
【0079】
図11c及び12cに示される構成図によりエレガントな設計が導かれるが、コンポーネント(すなわち位相変調器)を共有する並列干渉計では、非常に大きなチャネルクロストークを生じることがあり、そのようなクロストークは結果として画像劣化を引き起し得る。しかし、チャネル間のファイバ長を一致させないことで、クロストークを効果的に処理できる。電気的クロストークは標準的な遮蔽及び接地法を用いて処理できる。以下で光クロストークを説明する。
【0080】
次に図13aを参照すれば、チャネルクロストークを調べるために組み上げた2チャネルOCTシステム230が示される。2チャネルOCTシステム230は、レーザL,検出器D及びD,ビームスプリッタBS及びBS,1対2ツリー型結合器TC,位相変調器PM,光遅延発生器ODG,ビームコリメータBC及びBC,並びに試料をシミュレートする2つのミラーS及びSを備える。2チャネルOCTシステム230では、所望の画像化信号はチャネル1光路及びチャネル2光路からくる。チャネル1に対する所望の画像化信号は、光路:
→BS→S→BS→D (20)
からの光が、光路:
→BS→ODG→BS→D (21)
からの光とコヒーレントに干渉するときに生じ、検出器Dで検出される。チャネル2に対する所望の画像化信号は、光路:
→BS→S→BS→D (22)
からの光が、光路:
→BS→ODG→BS→D (23)
からの光とコヒーレントに干渉するときに生じ、検出器Dで検出される。さらに、2本のチャネルにおけるOCT画像化は、BS→S光路長がBS→ODG光路長に等しく、BS→S光路長がBS→ODG光路長に等しいときに限りおきる。そうでなければ、上述した所望の画像化経路ではない2つ(またはさらに多く)の様々な経路からの反射光の強めあう干渉により画像劣化がおこり得る。
【0081】
図13aに示される光ネットワークに基づけば、2種類の主要なクロストーク源があり得る。一次クロストーク源はおそらく、(ミラーまたは試料により)一方のチャネルのビームスプリッタから他方のチャネルのビームスプリッタ及び検出器に反射されるコヒーレント光であろう。そのようなクロストークは画像化信号強度に等しい強度を有し、おそらくかなりの画像劣化を生じさることになろう。一方のチャネルから他方のチャネルへの反射は、光遅延発生器ODGあるいは試料SまたはSでおこり得る。したがって、光路:
→BS→S→BS→D (20)
からの光が、光路:
→BS→ODG→BS→D (24)
からの光と干渉し得る。あるいは、光路:
→BS→S→BS→D (22)
からの光が、光路:
→BS→ODG→BS→D (24)
からの光と干渉し得る。
【0082】
試料アーム1及び2は通常、試料アームが組織試料の相異なる点(すなわち相異なる深度)に向けられるであろうから、図13aに示されるように分離されていることはないであろう。試料アームが分離されていない場合には、チャネル1からチャネル2に、及びこの逆に、反射がおこることになろう。そのような場合には、光路:
→BS→S→BS→D (26)
からの光が、光路:
→BS→ODG→BS→D (21)
からの光と干渉し得る。あるいは、光路:
→BS→S→BS→D (27)
からの光が、光路:
→BS→ODG→BS→D (23)
からの光と干渉し得る。
【0083】
ビームスプリッタ及びコネクタ挿入点のような望ましくない位置においても反射がおこり得ることを想起するべきである。そのような反射は、これらの経路からの光がかなりの強度を有する干渉縞を生じれば、画像雑音に寄与し得ると考えられる。しかし、この種の雑音は低強度であるから、おそらくは、先に説明したチャネルクロストークに対しては二次的であろう。
【0084】
システムの解析により、そのような後方反射の干渉に対する最悪事態のシナリオにはコネクタからの一回反射が関わることが明らかになった。例えば、以下の光路:
→BS→S→BS→D (20)
からの光が、光路:
→BS→ODG→PM→ODG→BS→D (28)からの光と干渉し得る。
【0085】
いずれか2つの経路からの光の干渉に対しては4つの帰結が考えられ、帰結は光路長差に依存する。第1に、光路長が同じであれば、検出器における干渉縞の強度は試料の反射率だけに基づく真の信号強度より高くなるであろう。この種の画像雑音は雑音として検出できず、画像全体にわたり測定される試料強度を変えることになろう。幸いにして、光路長が正確に一致することはほとんどあり得ない。第2の可能性は、光路長が光源のコヒーレンス長の範囲内で一致し得ることである。この状況では、干渉縞エンベロープの幅が広がり、したがって軸方向分解能が低下することになるであろう。この状況はおこりそうもないが、鏡面深度プロファイルの半値幅を測定することにより検出できる。第3の可能性には、光源Lのコヒーレンス長より大きく、光遅延発生器ODGの走査深度より小さい距離だけ異なっている、光路長が関わる。この状況は、光遅延発生器ODGによる1回の深度掃引内の分離した2つのコヒーレンスエンベロープとして現れ得る。最後の、最もありそうな可能性は、光路長が光遅延発生器ODGの走査深度より大きく異なり、雑音すなわち無関係な干渉縞はシステムで検出されないであろうことである。
【0086】
上記の一次型のチャネルクロストークは、ファイバ光学系の製作上おこりそうもないはずである。BS→ODG光路長及びBS→ODG光路長は本質的に、ビームスプリッタBS及びBSから至るファイバピグテイルの長さにより、あらかじめ定められる。BS→S光路長及びBS→S光路長は計画的に、あらかじめ定められた対応する基準アーム長に一致させられる。一般的に製作されたファイバ長は数10mm異なっており、これは光遅延発生器ODGの走査深度より少なくとも1桁大きい。したがって、この種のクロストークが2チャネルシステムで問題となるはずはない。
【0087】
挿入点反射の場合には、PM→ODG光路長が光路BS→Sと光路BS→ODGとの間の光路長差に一致すれば、干渉縞及び画像劣化が生じ得る。この場合も、ファイバ長が約300mmであり、一方光遅延発生器ODGの走査深度は2mmしかないから、この種の二次雑音はおこりそうもないはずである。さらに、そのような干渉縞強度はシステム雑音で見えなくなってしまうであろう。第2に、用いられる装置は最大で0.6dBの挿入損失(言い換えれば、最大で0.6dBの反射)を有し、したがって、そのような信号は図13aの構成に用いられる検出限界より小さい。
【0088】
2本のチャネルに同じファイバ及び光コンポーネントを用い得ることを示すため、OCTシステム230を評価した。試料アーム光路長及び光遅延発生器ODG基準アーム光路長がそれぞれのチャネルで一致し、干渉縞列が検出器D及びDのそれぞれで見られるように、試料アームミラーS及びSを配置した。位置合せのため及び光が、チャネル1からチャネル2を含むファイバに、及びこの逆に、反射する可能性を排除するため、試料S及びSに対する試料アームは分離したままにした。光遅延発生器は位相変調及び群遅延のいずれの生成にも用いることができる(ティアニー等(1997年))が、図13aに示した構成では、光遅延発生器ODGを群遅延(すなわち深度走査)に用い、基準アームの位相変調器PMを位相遅延を生じさせるために用いた。
【0089】
図13aの実験構成では、AFCテクノロジーズ社(AFC Technologies Inc.)製の1310nm,9mW光源(モデルBBS1310)を、光源Lに備えた。光源Lの中心波長は1310nmであり、測定したスペクトル広がりは±40nmであった。測定した光源Lのコヒーレンス長は10μmであった。検出帯域中心が1310nmにあり、帯域幅が100nm以上の、155Mbpsパーキン・エルマー(Perkin Elmer)InGaAs光ダイオード受信器を検出器D及びDに用いた。JDSユニフェーズ(JDS Uniphase)43MHz位相変調器を位相変調器PMに用いた。ビームスプリッタBS及びBSには、メトロテック(MetroTek)社製を用いた。ビームコリメータBC及びBCには、オズ・オプティックス(OZ Optics)社製を用いた。上記またはその他の部品製造業者からの、代わりの適当なコンポーネントを用いることもできる。
【0090】
光遅延発生器ODGは、CVIスペクトラル・プロダクツ(CVI Spectral Products)社製の1310nm用150本/mmブレーズド回折格子を用いて、コリメート光を分散させた。光を振動ミラー上に集束させるため、直径が30mmで焦点距離が100mmのメレス・グリオ社製ガラスダブレットレンズを用いた。8kHzで動作し、±1°の機械角すなわち±2°の光学角にわたって走査する共鳴走査器には、EOPC(エレクトロ−オプティカル・プロダクツ・コーポレーション(Electro-Optical Products Corporation))社製を用いた。この角度設定は試料S及びSに対する試料アームにおける約1mmの深度走査に対応する。走査深度は2本のチャネルの光路長の不一致に関して重要な要件である。例えば、光路長が1mmより大きく異なれば、2本のチャネル間のクロストークは最小になるはずであり、適切な遮蔽及び接地法により電気的クロストークも処理されるはずである。
【0091】
図13b及び13cは、図13aに示される構成上で行われた実験の結果を示す。図13bは、チャネル1及びチャネル2の検出器D及びDからのオシロスコープトレースを示す。図13bは、光遅延発生器ODGの周期内において2本のチャネルが若干異なる位置に配されていること、すなわち、相異なる深度における画像化をシミュレートするために試料アームミラーS及びSを少量だけ計画的にオフセットさせたことを反映する、光遅延発生器ODGの周期内の相異なる点において、干渉縞が生じていることを示す。図13bは、それぞれのチャネルに強い画像化信号があり、いかなるクロストークの形跡もないことを示す。矢印232及び234は、組織試料の2つの相異なる点に相当させ得る、2つの相異なる試料からの反射を示す。さらに、それぞれの検出パルスのエンベロープの半値幅は光源Lのコヒーレンス長に相当しており、このことはそれぞれのチャネルの光信号が光源Lから発したことを示す。図13cは、試料点の内の一方を他方の試料点に対して移動させた場合の実験結果を示す。この場合にも、クロストークは観測されなかった。
【0092】
本発明の別の実施形態においては、多チャネルOCT法を診療に用い得るように、本明細書で先に開示された光ファイバネットワークが内視鏡に組み込まれる。本装置のファイバ束チップ12の大きさのため、ファイバ束チップ12は、(大径の治療用内視鏡には組み込み得るが)従来の診断用内視鏡の作業チャネルには適合しないであろう。したがって、別の設計手法がとられた。ファイバ束チップ12を従来の診断用内視鏡の作業チャネルに収容するように設計する代わりに、従来の診断用内視鏡の機能の全てをファイバ束チップ12の周りに配するように設計した。図14に示されるように、本発明の内視顕微鏡を組み込んでいる(図6のチップ56に相当する)GI内視鏡300の一実施形態は、直径がほぼ11mmである。これは、直径が8〜9mmの従来の診断用内視鏡より若干大きい。GI内視鏡300は、従来の前面観察白色光画像化に加えて、上で開示された内視顕微鏡撮像能力を有する。したがって、GI内視鏡300の使用者は図16に示されるような2mm×2mm断層画像を得ることができるはずである。
【0093】
GI内視鏡300は2.7mm径の吸引/生検チャネル302を備える。吸引/生検チャネル302の末端は、注目する組織領域306に向けられた開口304を提供するように曲げられる。吸引/生検チャネル302の軸は、注目する組織領域306の中心から約6.7mmにおくことができる。2本のチャネル308及び310が白色光照明のために設けられ、チャネル312が白色光内視鏡前面観察のために設けられる。チャネル308,310及び312のそれぞれの直径は、2.7mmとすることができる。空気または水ノズルのための細チャネル314も設けられる。
【0094】
本発明にしたがえば、断層観察内視鏡コヒーレント光顕微鏡(ECOM)316がGI内視鏡300に設けられる。断層観察ECOM316は(図14及び15には示されていない)ミラー16を回転させるための駆動機構318を備える。先に述べたように、動径、並進またはヘリカル走査を用いることができる。さらに、先に述べたように、機械的駆動機構の代わりにMEMS駆動機構を用いることができる。断層観察ECOM316は、境界320で設定される深度及び境界322で設定される角度範囲を有する、注目する組織領域306にわたって走査するように構成される。さらに、光透過窓324を断層観察ECOM316に設けることができる(図15参照)。
【0095】
前面観察白色光チャネル312は30フレーム/秒のレートで更新される。断層観察ECOM316で得られる断層画像は4.4フレーム/秒で更新される。全ての画像チャネルが同時に表示される。GI内視鏡300で生成され得る画像が図16及び17に示される。図16は、断層観察ECOM316で達成できることが期待される空間分解能を組み入れた、ヒトの結腸上皮のシミュレーション画像である。図17a及び17bは、顕微鏡像と生体内OCT画像との比較である。図17aには、それぞれがヒトの皮膚の汗腺管の顕微鏡像を示す、2枚の写真がある。図17bには、それぞれがヒトの皮膚の汗腺管の生体内OCT画像を示す、3枚の写真がある。生体内OCT画像は波長1300nmで動作する光源により生成した。
【0096】
内視鏡医によるGI内視鏡300の典型的な操作または使用には、以下の:
a) 一般的な内視鏡法の手順に続いて、従来の前面観察白色光チャネル312の 案内の下にGI内視鏡300が挿入されるステップ;この操作は現時点で利 用できるGI内視鏡の操作と異なることはないはずである;
b) 内視鏡医が顕微鏡検査を行う必要がある場合、彼/彼女がGI内視鏡300 を押し込んで図13に示されるように内腔壁に接触させるステップ;光学系 は、GI内視鏡300が組織に接触しているときに、光学系全体の正しい作 動距離が得られるように設計される;GI内視鏡300は壁に接触している が、図15に示されるように、顕微鏡検査下にある組織部分は接触しない; したがって、組織の表面構造が接触圧で変形することはない;しかし、この ことはGI内視鏡300が接触モードでのみ動作し得ることを意味しない; 実際上、GI内視鏡300は、画像が形成される限り非接触モードで動作す ることができ、これは先に述べた動的トリガ印加アルゴリズムが空気−組織 界面を見いだすか否かにより規定される;空気−組織界面がシステムの作動 距離内にあれば、先に‘適応トリガ印加’法で説明したように、検出された 光パターンに界面が明瞭なピークを生じさせるから、界面は明確かつ容易に 検出されるはずである;
c) 内視鏡医がステップ(b)で画像化した領域に隣接する領域を検査する必要が あれば、内視鏡医がGI内視鏡300をひねり、視野を回転させて新しい位 置におくことができるステップ;
が取り入れられるであろう。
【0097】
胃腸(GI)管の映像化のための使用に現時点で最良の手法には、内視鏡超音波検査法(EUS)及び拡大内視鏡(ME)がある。ほぼ70から100mmの高周波EUSの分解能は、組織の微細構造を擾乱する状況の多くの識別、とりわけGI管の浅層(粘膜及び粘膜下組織)内に生じる潜行性病理変化の識別には不十分である。倍率が×170までのMEは微細な浅層粘膜パターンの優れた画像を提供するが、表面下構造及び病変期分類は決定できない。したがって、組織生検及び組織学が、現時点でも依然としてGI管に関わる顕微的疾患の検出のための医療標準である。
【0098】
本明細書に開示された断層観察ECOM316によれば、軸次元及び横断(横)次元のいずれにおいても5μmの分解能でGI壁の実時間2mm深度断層画像を得ることができる。参考のために、胃腸上皮細胞の大きさは平均して7から10μmであり、これは異形成または新形成変化がおこるにつれてさらに増大する。GI管においては、2mmの視深度であっても、粘膜起因疾患及びいかなる下層粘膜下組織への新形成浸潤のいずれの検出にも十分であり、このことは予後判定及び治療のために重要である。断層観察ECOM316の画像分解能は、×100(総倍率)顕微鏡の下での無染色組織検査スライド観察に相当し得る。したがって、異形成(細胞性新形成変化)のような重要なエンティティーの多くあるいは粘膜固有層または粘膜筋板のような構造の新形成浸潤を、断層観察ECOM316により識別可能とすることができる。
【0099】
本発明により、多様な顕微的粘膜病理及び病変期分類のその場診断が可能になり得る。基本的に、本“光生検”法は、標準的な生検及び組織学の方法の代わりになるか、最小限でも、手引きになり得る。これは、不必要な生検試料及び組織処理を減らし、患者のリスクを小さくし、サンプリングレート及び診判定率を高めて即時の診断フィードバックを医師にも患者にも提供し、(ある場合にはそれ自体が治療処置になり得る)生検を目標とすると言い直すことができる。少数の例を挙げれば、バレット食道、慢性潰瘍性大腸炎、初期扁平腺腫、または迷走結腸窩の病巣のような、前新形成GI状況には、断層観察ECOM316が適用可能であり得る。現時点では、上記状況内での新形成進行の検出及びサーベイランスは、それらの顕微的性質により、最善とは言えない。
【0100】
第2に、断層観察ECOM316は、新形成及び非新形成の組織変化を時間を追って監視することを可能にする、機能性画像化システムとして役立ち得る。例えば、小さな腸絨毛の構造の回復及び炎症性細胞の減少を、グルテン過敏腸症、熱帯性スプルー及び腸インフェステーションのような、多様な腸の吸収不良性障害において、断層観察ECOM316で監視できる。顕微レベルにおける多くの粘膜疾患の自然発達も、侵襲性を最小限に抑えた態様で評価できる。時間とともに生体内で進行している構造的細胞変化を監視できる能力は、細胞機能に関する重要な生理学的情報及び細胞の病理学的トランスフォーメーションに関する洞察を提供できる。
【0101】
第3に、断層観察ECOM316は予後治療組織監視に使用できる。ガン切除の外科切除限界またはその予後治療サーベイランス中の処置限界または粘膜の前新形成状況の光力学治療の妥当性の評価の、生体内顕微的標定は、いくつかの例に過ぎない。
【0102】
その他の医学専門分野における応用も可能である。皮膚科学、血液学、(薬物及び放射線)腫瘍学、眼科学、泌尿器科学、外科学、呼吸器科学及び胃腸病学のような非常に多くの医学専門分野に、本明細書に開示された多チャネルOCT装置が応用され得ることは、当業者には当然である。
【0103】
本明細書に開示された多チャネルOCT装置は、システム性能をさらに向上させるために改変することができる。例えば、なされ得る改善には、光源から発せられる光に対するコード化伝送の採用があろう。この手法により、SNRが劣悪なチャネルで得られる干渉パターンの光のSNRを高めることで、画像分解能を高めることができる。
【0104】
本明細書に説明され図示された好ましい実施形態に、本発明を逸脱することなく様々な改変がなされ得ることは当然であり、本発明の範囲は特許請求の範囲で定められる。例えば、本明細書に開示された構成図のそれぞれにおいて、3dB結合器の代わりに他の光結合器を用いることもできる。
【符号の説明】
【0105】
10 多束単一モードファイバ
12 ファイバ束チップ
14 集束レンズ
16 ミラー
18 表面
20 軸
21,22,23 ビーム
21a,22a,23a 集束点
24 画像化深度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の光検のための装置において、前記装置が:
複数の個別光放射源を提供するための光源手段;
前記光源手段から延びる第1の光路;
前記第1の光路の選択された範囲の実質的に連続な覆域を提供するために、前記光放射源からの光を前記第1の光路内の表面の上に位置する複数の焦点のそれぞれに集束させるための、前記第1の光路にある集束手段であって、使用においては、前記選択された範囲内の少なくとも一部に試料を配置することができ、よって前記試料内の複数の点の同時走査を可能にするものである集束手段;
ことを特徴とする装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13a】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図5a】
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【図5b】
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【図13b】
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【図13c】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−145588(P2012−145588A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45571(P2012−45571)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2002−509751(P2002−509751)の分割
【原出願日】平成13年7月10日(2001.7.10)
【出願人】(503020529)ユニヴァーシティー ヘルス ネットワーク (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY HEALTH NETWORK
【Fターム(参考)】