説明

高効力組換え抗体およびその産生法

【課題】高結合速度定数および任意の高親和性を持つ、免疫学的活性断片を含む高効力抗体を提供する。
【解決手段】高効力抗体は、特定の選択アミノ酸配列を持つ一つあるいはそれ以上の枠組み構造およびまたはCDRを含む重鎖および軽鎖可変部より成る、免疫学的活性断片を含有する組換え抗体の産生、組換え抗体が試験管内で選択された抗原に反応した場合の高結合速度定数に対する前記組換え抗体のスクリーニング、および前記高結合速度定数を持つ抗体の選択からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2000年3月1日出願された合衆国暫定特許出願番号60/186252号の優先権を主張し、その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている。
【0002】
本発明は、高効力抗体、抗体効力を強める方法、そして疾病の予防および処置にこのような抗体を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体は、今までも、そして現在においても種々の疾病、特にウイルスなどの感染性微生物によって引き起こされる疾病の予防および処置のために開発されている。
【0004】
その方法の一つは、特異性の高い中和活性を持つ抗体、特に中和モノクローナル抗体の開発である。この方法の一つの欠点は、マウスあるいはラットの抗体よりもヒト抗体を産生する必要があり、したがって、ヒト抗マウスあるいは抗ラット抗体応答の発生を最小限にしなければならず、その結果更なる免疫異常を引き起こす可能性があるということであった。
【0005】
一つの代替方法は、キメラ、あるいはハイブリッド抗体を産生するために、マウス重鎖および軽鎖可変部をコード化する遺伝子がヒト重鎖および軽鎖定常部の遺伝子と結合したヒト−マウスキメラ抗体を産生することである。例として、ヒト化抗RSV抗体が調製され、現在販売されている(ジョンソン、アメリカ合衆国特許番号5824307号参照)。
【0006】
いくつかの場合において、マウス相補性決定領域(CDR)は、いわゆる“ヒト化”抗体を提供するために、同様の特異性を持ったヒト抗体から相対的に置かれたアミノ酸に置換されるマウス枠組み構造アミノ酸(抗体の可変部内であるがCDR以外のアミノ酸)のいくつかを伴って、ヒト定常部および枠組み構造領域に移植される(例として、クィーン、アメリカ合衆国特許番号5693761号および5693762号参照)。しかし、このような抗体は完全なマウスCDR領域を含み、混合効果および10から10−1より低い親和性の提示が見出されている。
【0007】
標的抗原に対する超高親和性を持つ抗体を含む高効力抗体(すなわち抗原中和能力などの高い生物学的活性を持つ抗体)の産生は、より少ない量の抗体で望ましい臨床効果を得て、それにより費用を削減することを要求するより実践的な見地からだけでなく、そのような抗体の中和能力の観点からも望ましいであろう。
【0008】
抗体親和性は、抗体の特定抗原に対する結合定数により測定され、この結合定数はしばしば、抗原抗体複合体解離の速度定数(“Koff”値と示す)に対する抗原抗体複合体形成の速度定数(“Kon”値)の割合によって算出される。本発明にしたがって、抗体効力は、特異性に関係なくKon値の関数であると定められている。したがって、本発明は、Kon値が高いほど抗体効力が高い高抗体効力の獲得、それによる高効力抗体の産生およびそれを産生する方法の問題に対する解決法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】アメリカ合衆国特許番号5824307号
【特許文献2】アメリカ合衆国特許番号5693761号
【特許文献3】アメリカ合衆国特許番号5693762号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一見地にしたがって、疾病の処置およびまたは予防に有益な高効力抗体が提供される。もう一つの見地において、抗体の効力は、抗原抗体複合体形成の速度定数(“Kon”値)の増加により強まる。
【0011】
一見地において、本発明はビタキシン以外の高効力抗体に関し、前記抗体は免疫学的活性を持つ部位、断片あるいは分節を含み、最低2.5×10−1−1、好ましくは最低約5×10−1−1、最も好ましくは最低約7.5×10−1sec−1のKon値を持つ。この抗体はまた高い親和性(最低約10−1)を持つであろう。
【0012】
もう一つの見地において、本発明は高効力中和抗体に関し、前記抗体は免疫学的活性を持つ部位、断片あるいは分節を含み、最低2.5×10−1−1、好ましくは最低約5×10−1−1、最も好ましくは最低約7.5×10−1sec−1のKon値を持つ。この抗体はまた高い親和性(最低約10−1)を持つであろう。
【0013】
本発明の更なる目的は、抗体が結合するエピトープを変化させることなく特定の抗原に対するKon値を増加させることにより中和抗体の効力を高める方法を提供することである。
【0014】
本発明のまた更なる目的は、望ましい抗原に対する高効力を確保し、前記効力が既知の抗体の最低2から10倍であるように調製するための、抗体をスクリーニングする方法を提供することである。
【0015】
より特異的には、本発明の一つの目的は、最低2.5×10−1sec−1、好ましくは最低5×10−1sec−1、そして最も好ましくは7.5×10−1sec−1のKon値を持つ抗体を産生することである。
【0016】
本発明のまたもう一つの目的は、感染性微生物(あるいは細菌)、特に呼吸器系の感染を引き起こすもの、最も特にはウイルスにより提示される一つあるいはそれ以上の抗原に対する高い特異性を持つ高親和性、高効力抗体を提供することである。
【0017】
一つの実施例において、本発明は、実質上図1に開示された抗体の可変鎖枠組み構造領域(FR)を持つ(この抗体と同一の特異性を持つ)抗体を提供する。しかしここで、そのポリペプチド構造は、一つあるいはそれ以上のCDR(あるいは相補性決定領域)内に一つあるいはそれ以上の異なるアミノ酸を含む。一つの好ましい実施例において、本発明の抗体は、L1、L2、L3、H1、H2およびH3を含む一つまたはそれ以上のCDRの配列においてのみ、図1または2の抗体(これ以降、“基本構造”あるいは“参照構造”)とは異なる。一つの好ましい配列は図3に示す。
【0018】
本発明の別の目的は、ここに開示された抗体から成る合成物を提供することである。ここで前記抗体は薬理学的許容担体、希釈剤あるいは賦形剤中に懸濁される。
【0019】
本発明のまた更なる目的は、ウイルス、特に呼吸器合胞体ウイルスにより引き起こされるような疾病を予防およびまたは処置する方法を提供することである。前記方法は、前記疾病の危険にある、あるいはそれに苦しむ患者に、治療上効果的な量のここに開示された抗体を含む合成物を投与することより成る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】その効力を本発明の方法により大きくすることができる高親和性モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖可変部のアミノ酸配列を示す図。参考として、この抗体は、ジョンソン他、J.Infect.Dis.、176巻:1215から1224ページ(1997年)に開示されたMEDI−493抗体配列である。ここで、CDR領域は下線部であり、一方下線部以外の残基は、各ポリペプチド構造の可変部の枠組み構造領域を形成する。この構造において、CDRはマウス抗体から得られ、一方枠組み構造領域はヒト抗体から得られる。定常部(不図示)もまたヒト抗体から得られる。軽鎖および重鎖それぞれについて、図1Aは軽鎖可変部(配列識別番号:1)を示し、図1Bは重鎖可変部(配列識別番号:2)を示す。
【図2】別の基本あるいは参照ポリペプチド配列の重鎖および軽鎖可変部を示す図。同様に、CDR領域は下線部である。この配列は軽鎖のCDR L1の最初の4残基、軽鎖の残基103および重鎖の残基112が図1と異なる。本発明の全ての高効力中和Fab構造(表2に示すCDR構造)が、この参照あるいは基本構造の枠組み構造配列を用いる。図2Aは軽鎖(配列識別番号:3)可変部を示し、図2Bは重鎖(配列識別番号:4)可変部を示す。
【図3】本発明の好ましい実施例の、重鎖(配列識別番号:36)可変部および軽鎖(配列識別番号:35)可変部を示す図。この好ましい抗体は、いくつかの高KonCDR(あるいは高効力CDR)を持ち、図2の基本あるいは参照抗体よりも高い結合速度定数(すなわちKon)を生じ、したがってより高い効力を持つ。この好ましい抗体は図2の配列と同一の枠組み構造アミノ酸配列を持ち、本開示に用いるにあたって、以下の表2および3において“クローン15”と記された。これらの配列は、ここに開示された方法により容易に産生され、その全てはこの分野における通常の知識を有する者が容易に知ることができる。反応速度定数は実施例1の方法に従って測定され、効力は実施例2に示されたように測定された。
【図4】本発明にしたがったFab断片の産生のためのファージM13の使用、および精製を容易にするためのヒスチジン タグ配列(6ヒスチジン残基)の使用の模式図を示した図。
【図5】本発明の抗体に用いたスクリーニング方法の模式図を示した図。“SPE”は単一点ELISAを示す。“H3−3F4”は表2および3のクローン4の名称である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一見地にしたがって、疾病の処置およびまたは予防に有益な高効力抗体が提供される。もう一つの見地において、抗体の効力は、その抗体のCDR配列を高効力CDR配列と置き換えることによる抗原抗体複合体形成の速度定数の増加により強まり、それは“Kon”値として示される。
【0022】
一見地において、本発明はビタキシン以外の高効力抗体に関し、前記抗体は免疫学的活性を持つ部位、断片あるいは分節を含み、最低2.5×10−1−1、好ましくは最低約5×10−1−1、最も好ましくは最低約7.5×10−1sec−1のKon値を持つ。この抗体はまた高い親和性(最低約10−1)を持つであろう。
【0023】
一見地において、本発明は高効力中和抗体に関し、前記抗体は免疫学的活性を持つ部位、断片あるいは分節を含み、最低2.5×10−1−1、好ましくは最低約5×10−1−1、最も好ましくは最低約7.5×10−1sec−1のKon値を持つ。この抗体はまた高い親和性(最低約10−1)を持つであろう。
【0024】
本発明は、高効力あるいは生物学的活性を持ち、好ましくは最低約10−1の親和性および最低約2.5×10−1sec−1、好ましくは最低約5×10−1sec−1、最も好ましくは最低約7.5×10−1−1のKon値を持つ中和あるいは非中和抗体を産生する方法に向けられる。
【0025】
分子生物学方法および組換えDNA技術の到来に伴い、現在では組換え法により、その活性断片を含む抗体を産生することが可能であり、それにより、抗体のポリペプチド構造中に見られる特異的なアミノ酸配列をコード化する遺伝子配列を発生させることができる。これは、異なる種あるいは源由来の中和抗体に特有の配列を持つ抗体の迅速な産生を可能にしてきた。
【0026】
それらがどのように構成されたかに関係なく、抗体は、通常Lと表示される同様の全体的な3次元構造を持つ。ここで、通常その分子は、2本の軽(L)アミノ酸鎖および2本の重(H)アミノ酸鎖から成る。両鎖は、構造において相補的な抗原標的と相互作用可能な領域を持つ。標的と相互作用する領域は“可変”あるいは“V”領域と示され、抗原特異性の異なる抗体とはアミノ酸配列が異なるという特徴を持つ。
【0027】
H鎖あるいはL鎖の可変部は、抗原標的と特異的に結合することが可能なアミノ酸配列を含む。これらの配列内には、特異性の異なる抗体間での極端な可変性のために“超可変”と呼ばれる小配列がある。この超可変領域は、“相補性決定領域”あるいは“CDR”領域と呼ばれる。これらのCDR領域は、特定の抗原性決定構造に対する抗体の基本特異性をもたらす。
【0028】
CDRは可変部内におけるアミノ酸の非連続の一続きであるが、重鎖および軽鎖可変部内のこれらの重要なアミノ酸配列の位置は、免疫グロブリン構造のアミノ酸配列内において同様の位置をとることが知られている。すべての抗体の可変重鎖および軽鎖がそれぞれ3つのCDR領域を持ち、重鎖および軽鎖それぞれにおいて、その他(L1、L2、L3、H1、H2、H3と称す)のCDR領域と非連続である。認識されたCDR領域は、カバット他、J.Biol.Chem.252巻:6609−6616ページ(1977年)に示されている。番号の付された配列表は図1から3に示され、CDRは下線が引かれ、番号はカバットの配列表に従う。
【0029】
全ての哺乳動物種において、抗体ポリペプチドは、定常部(すなわち高度に保存された部位)および、CDRおよびいわゆる“枠組み構造領域”の双方から成る可変部を含み、枠組み構造領域は可変部内のCDR以外のアミノ酸配列を構成する。
【0030】
通常抗体あるいはその断片を特徴付けるために用いる特性のうちの一つは、抗体の特異性および親和性である。特異性は、抗体が強く、あるいは最も強く結合する特定のリガンドすなわち抗原構造を示す。親和性は、特定のリガンドに対する抗体の結合の強さの量的な程度を示し、“親和定数”という用語で表示される。この親和定数は、結合あるいは解離定数のどちらかとして測定することが可能であり、抗体−リガンド複合体に対する遊離リガンドおよび遊離抗体の平衡濃度の割合で示す。ここで用いられたように、親和性は結合定数として得られる。
【0031】
この定数は通常、Konとして示される複合体を形成するための結合の速度定数と、Koffとして示される解離の速度定数を用いた、抗原抗体複合体形成の反応速度論により測定される。この定数の測定は、この分野における通常の知識を有する者が十分に行うことができる。抗体および対応する抗原は、複合体を形成するために以下のように結合する:

ここで、親和定数は結合定数として得られるため、したがって以下のように表す:

ここで、K=結合(あるいは親和)定数であるが、角括弧は括弧内の物質のモル濃度を表す。温度、圧力およびイオン強度などの特定の条件下では、反応物質の濃度の積に対する複合体の濃度の割合は一定である。抗体あるいは抗原(リガンド)が飽和状態に達しない間は、各結合物質の濃度の変化が、上記反応式(サインKが一定)により規定された量まで、複合体(Ab−Ag)の濃度を変化させる。この相互作用は、質量作用の法則に従って作用する。
【0032】
加えて、この関係は濃度に依存し、存在する物質の絶対量には依存しない。したがって、全体量もまた親和性の測定に関する。したがって、半分量に反応が起こった場合には、二倍量の複合体が形成されるであろう。これは各反応物質(AbおよびAg)が2倍濃度であり、それによりほとんど4倍の複合体が形成されるためである。逆に、希釈によりAb−Ag複合体の濃度は大きく減少し得る。一般的に、抗原抗体相互作用の反応速度論は、この分野における通常の知識を有する者に十分に知られている。
【0033】
この抗体抗原反応は、力学的平衡として反応速度論的に示すことができる。ここで親和定数は、複合体の形成および解離に対する個々の速度定数の割合として測定することができる:

【0034】
したがって、Kon値は、前記の速度定数あるいは特異的反応速度であり、すなわち単位:M−1sec−1で測定される複合体形成反応である。Koff値は、Ab−Ag複合体の解離に対する速度定数あるいは特異的反応速度であり、単位sec−1で測定される。
【0035】
本発明の抗体およびその活性断片についてのKon値は、実施例に開示されたBIAcoreプロトコルおよび装置を用いて測定された。
【0036】
前記にしたがって、本発明は高効力中和抗体に関し、前記抗体は免疫学的活性を持つ部位、断片およびまたは分節を含み、最低2.5×10−1−1、好ましくは最低約5×10−1−1、最も好ましくは最低約7.5×10−1−1のKon値を持つ。
【0037】
ここで用いられたように、“部位”、“断片”および“分節”という用語は、ポリペプチドに関して用いられる場合には、アミノ酸残基などの残基の連続した配列を示し、前記配列はより大きい配列の集合を形成する。例として、ポリペプチドが、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン等などの一般的なエンドペプチダーゼで処置された場合には、この処置で生じたオリゴペプチドは、当初のポリペプチドの部位、分節あるいは断片を示すであろう。このプロテアーゼは通常、ここに開示されたような抗体の断片を産生するために用いられるが、その断片は、現在では産生したい特定ポリペプチドの直接クローニングあるいは合成により、より容易に産生することができる。
【0038】
本発明の抗体は高効力抗体であり、通常高Kon値を提示する。本開示において用いられるにあたって、“高効力”という用語は、約6nM(ナノモルあるいは10−9モル)以下のEC50(すなわち以下に開示された微小中和分析において、OD450において最低50%の減少を示す有効濃度)による影響を受ける効力を示す。本発明にしたがった抗体は中和することができる(ウイルスなどの標的種の破壊を引き起こし、それによりウイルスによる負担を減少させる)。一つの用法において中和をしない抗体は、別の異なる用法において中和することができる。
【0039】
本発明の高効力抗体は、微生物上に見られる抗原決定基に対して特異性を持ち、前記微生物に結合することで、前記微生物を中和することができる。本発明にしたがって、前記微生物は、最も多くはウイルス、バクテリアあるいは菌類であり、特に呼吸器疾患を引き起こす生物、最も好ましくはウイルスである。ここに示された実施例において用いられる一つの特異的な例は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)であり、別の例はパラインフルエンザウイルス(PIV)である。
【0040】
本発明の高効力抗体は、ガン細胞の表面上に提示される抗原に対する特異性をも持ち得る(しかし通常、非中和性のビタキシンなどの抗体を含まない)(参照:ウー他、Proc.Natl.Acad.Sci.95巻:6037から6042ページ(1998年))。本発明の抗体はまた、その他の非中和反応に対する抗体をも含む。
【0041】
本発明の高効力抗体はまた、毒性物質などの化学物質あるいは毒素、もしくは前記毒素の生体代謝により産生される産物を含むがこれに限定されない、毒素産物に対する特性を持つ。例として、本発明の高効力抗体は、コカインなどの習慣性薬物の影響を無効にするか、あるいはそうでなければ改善することにおいて有益であり得る。
【0042】
本発明の高効力抗体はまた、RSVのF抗原などの特異的な抗原に対する高親和性を持ち、そしてここで前記高親和性は前記抗体の親和定数(K)で表され、前記親和定数(K)は最低10−1、好ましくは最低約1010−1、最も好ましくは最低約1011−1である。
【0043】
本発明の抗体は、例として実施例2に開示された微小中和分析で測定された場合に、高効力を示す。この分析において、高効力はEC50値により測定され、通常約6.0nM(ナノモルあるいは10−9M)以下、好ましくは約3.0nM以下、もっとも好ましくは約1.0nM以下のEC50を持つ。通常、EC50が低いほど、効力あるいは生物学的活性は高い。
【0044】
本発明の高効力抗体は、その高Kon値に起因する高効力を示すが、ここで前記高効力は、枠組み構造領域(FR)および相補性決定領域(CDR)を構成するアミノ酸配列により決定する。これらの抗体あるいはその活性断片は、そのアミノ酸配列内に高効力相補性決定領域(CDR)を持つ。本発明の高効力中和抗体は、最低2つの高効力CDRあるいは3つの高効力CDR、もしくはさらに4つの高効力CDRあるいは5つの高効力CDRより成り、そしてさらに6つの高効力CDRより成ることもあり得る。もちろん、後者の場合は、抗体あるいはその活性断片の6つのCDR全てが高効力CDRである。これにしたがって、このような本発明の高効力中和抗体は、軽鎖CDRL1(CDRL1)、L2(CDRL2)、およびL3(CDRL3)と重鎖CDRH1(CDRH1)、H2(CDRH2)およびH3(CDRH3)それぞれのうちの一つから成る高効力CDRを持つ。
【0045】
この高効力抗体の特異的な実施例において、前記高効力CDRは、CDRL1については配列番号:11、12、13および56、CDRL2については配列識別番号:14、15、16、17、18、19、20、21、22、57および58、CDRL3については配列識別番号:23、CDRH1については配列識別番号:24および25、CDRH2については配列識別番号:26、27、28、29、30および55、CDRH3については配列識別番号:31、32、33および34から成るグループから選択されたアミノ酸配列を持つ。
【0046】
好ましい実施例において、本発明の高効力中和抗体は、配列識別番号:35および36から成るグループから選択されたアミノ酸配列を持つ可変部重鎖および軽鎖より成る。
【0047】
本発明はさらに、高効力抗体を産生するためのプロセスに関し、
(a)哺乳動物抗体から得られた重鎖および軽鎖定常部と、前選択アミノ酸配列を持つ一つあるいはそれ以上の枠組み構造領域およびまたは相補性決定領域(CDR)を含む重鎖および軽鎖可変部より成る、免疫学的活性断片を含む組換え抗体の産生、
(b)前記抗体が試験管内で、選択された抗原に反応した場合の高Kon値に対する前記組換え抗体のスクリーニング、および、
(c)前記高Konを持つ抗体の選択
から構成される。
【0048】
本発明にしたがって産生された抗体は、通常高親和定数および高Kon値を持ち、後者は高生物学的活性をもたらす。特異的な実施例において、本発明に従って産生された高効力抗体は、通常最低約2.5×10−1−1、好ましくは最低約5×10−1−1、最も好ましくは最低約7.5×10−1−1のKonを持つ。
【0049】
一つの実施例において、本発明のプロセスは高効力抗体を産生し、ここで高Konをもたらす(およびその結果高効力を生じる)前選択アミノ酸配列は、抗体の枠組み構造領域および最低2つあるいは3つのCDR領域、場合によっては全6つのCDR領域の両方、もしくはCDR領域のみに限定されて存在する。
【0050】
他の実施例において、高Konをもたらす前選択アミノ酸配列は、抗体の枠組み構造領域および最低3つのCDR領域の両方、もしくはCDR領域のみに限定されて存在する。
【0051】
一つの追加の実施例において、高Konをもたらす前選択アミノ酸配列は、抗体の枠組み構造領域および最低4つのCDR領域の両方、もしくはCDR領域のみに限定されて存在する。
【0052】
加えて、本発明にしたがって産生された抗体は、H構造を有する完全4量体構造、あるいは、単鎖抗体もしくはFabあるいはF(ab)′断片などの断片を含む前記抗体構造の断片であり得る。
【0053】
本発明にしたがって、抗体が特異的に結合する抗原は、しばしば、しかし常にではなく、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)あるいはパラインフルエンザウイルス(PIV)などのウイルスが発現する抗原である。
【0054】
本発明はまた、高効力抗体を産生するためのプロセスに関し、哺乳動物抗体から得られた重鎖および軽鎖定常部と、枠組み構造領域およびまたは、最低1つのCDRが、本来見られないアミノ酸配列を持つ高Kon(あるいは高効力)CDRである相補性決定領域(CDR)を含む重鎖および軽鎖可変部より構成される組換え抗体を産生することより成る。ここで前記CDRの存在が、結果として高Konを生じる。
【0055】
特異的な実施例において、本発明のプロセスは高効力組換え抗体を産生し、ここで組換え高Kon抗体は、最低2つの高KonCDR、あるいは3つの高KonCDR、そしてさらには4つの高KonCDR、および5つあるいは6つの高KonCDRより成る。このCDR配列の存在が、結果として抗体あるいは断片に高Konを示し、それにより高効力をもたらす。
【0056】
本発明の方法のさらなる実施例において、前記の本発明の方法により産生された抗体の高結合定数は、最低約2.5×10−1−1、好ましくは最低約5×10−1−1、最も好ましくは最低約7.5×10−1−1である。
【0057】
本発明はさらに、高効力抗体を産生するためのプロセスに関し、
(a)哺乳動物抗体から得られた重鎖および軽鎖定常部と、前選択アミノ酸配列を持つ一つあるいはそれ以上の枠組み構造領域およびまたは相補性決定領域(CDR)を含む重鎖および軽鎖可変部より成る、免疫学的活性断片を含む組換え抗体の産生、
(b)前記抗体が試験管内で、選択された抗原に反応した場合の高効力および高Konの両方に対する前記組換え抗体のスクリーニング、および、
(c)前記高効力および高Konの両方を持つ抗体の選択
から構成される。
【0058】
本発明の好ましい実施例において、ここに開示されたプロセスは、高親和性および高Konの両方を持つ高効力抗体を産生する。ここで親和定数は最低10−1、Konは最低2.5×10−1−1であり、特にここで前記親和性は最低1010−1、前記Konは最低2.5×10−1−1であり、最も特には、前記親和定数は最低1011−1、前記Konは最低2.5×10−1−1である。超高親和定数およびKonを持つ最も好ましい実施例においては、特にここで前記親和性は最低10−1、前記Konは最低5×10−1−1であり、最も特には、親和定数は最低1010−1、Konは最低2.5×10−1−1である。最も特に好ましい実施例の一つは、高効力抗体を産生する本発明のプロセスであり、ここで親和定数は最低1011−1、Konは最低7.5×10−1−1である。考慮すべきことは、高親和性はまた試みられ、前記親和性(K)および速度性結合(Kon)値の任意の組み合わせが本発明中にあるということである。
【0059】
本発明のこれらの実施例はまた、高Konをもたらす前選択アミノ酸配列が枠組み構造領域およびCDR領域の両方、あるいはCDR領域のみに存在し、配列識別番号:11から34および55から58より選択された前記配列が、1、2、3、4、5あるいは全6つのCDR領域に存在し、個々のCDR配列がここに開示された個々の配列より選択されるプロセスを含む。これを行う方法は、この技術の属する分野における通常の知識を有する者の間でよく知られており、ここではさらなる開示は行わない。
【0060】
本発明の方法は、単に、特定の抗原に対して特異的であり、既に存在する免疫原性分子および構造物に無関係に産生される新規高親和性抗体を産生することに限定されない。したがって、ここに開示された方法は、既知の抗体分子の構造に対する選択的な修飾と、それにより前記抗体のKonの増加をもたらし生物学的活性の増加を伴う方法を提供する。これは、ここに開示された高効力CDR配列の選択的取り込みにより達成される。
【0061】
本発明の別の実施例において、効力を高めることが可能な抗体は、最低10−1、好ましくは最低約1010−1、最も好ましくは最低約1011−1の初期のおよびまたは最終的な親和定数を持つ。
【0062】
本発明にしたがって、本発明の方法にしたがって産生された抗体は、本発明の高効力配列を産生するためのアミノ酸変換後に、より高いKon定数を持ち、前記アミノ酸変換の結果、特に前記アミノ酸変換後のKon値は、(特定の親和定数(k)に関わらず)最低2.5×10−1sec−1、特に最低約5×10−1−1、最も特に最低約7.5×10−1−1である。
【0063】
本発明の方法の適用において考慮するべきは、抗体あるいはその活性断片の効力を高めるために用いられるアミノ酸配列における前記変換、もしくは高効力抗体あるいはその活性高効力断片を産生するための選択アミノ酸配列の使用が、高Kon値の産生を通して、前記高効力あるいは効力の増加を獲得するということである。親和定数はKoffに対するKonの数値割合であるため、同一因子によりKoffが変換されなかった場合には、増加したKonは結果的に親和性の増加となり得る。したがって、本方法にしたがって産生された抗体の高効力は、Kon値の作用であり、k値(親和定数)の作用ではない。例えば、抗体分子のCDRにおける選択アミノ酸配列の使用は、結合(Kon)および解離(Koff)速度定数の両方において相当な増加を生じさせ、同一因子によって両方が増加した場合には、その結果は、(より高いKonに起因する)高い、あるいはより高い効力となるが、kの増加とはならない(Koffに対するKonの割合が同じであるため)。逆に、高効力抗体のCDR内における前記前選択アミノ酸配列の使用が、Koffを減少させるがKonは増加させない場合には、その結果は、より高い親和性を伴うが効力がほとんど増加していないかあるいはまったく増加していない抗体あるいはその活性断片となる。このように、Koff値が単独で変化するが、Kにおける数的変化にも関わらずKonが一定のままである(KはKoffに対するKonの割合であるため)状態で、効力がほとんど変換されないかあるいはまったく変換されないことが知られている。
【0064】
本発明にしたがって、いくつかの簡便な方法が、Fab断片などの抗体あるいはその活性断片の効力の測定に利用できる。そのような方法の一つはコットンラットモデルを用い、その詳細は以下に提供された実施例に開示される。別の一つは、微小中和分析である(実施例2参照)。
【0065】
また、本発明にしたがって、疾病を予防または処置するためのプロセスが提供され、前記プロセスは前記疾病の危険にある、あるいは前記疾病に苦しむ患者に、治療上(あるいは予防上)効果的な量の、ここに開示された、あるいはここに開示された方法に従って産生されたポリペプチド配列を持つ高効力抗体あるいはその活性断片を投与することより成る。好ましい実施例において、前記疾病はウイルス、特に呼吸器合胞体ウイルスおよびパラインフルエンザウイルスのグループから選択された一つにより引き起こされる。
【0066】
本発明の高効力中和抗体は、適切なヌクレオチド配列を配列し、適した細胞系列中でこれらを発現させることにより、適切な抗体遺伝子配列、すなわちアミノ酸配列を産生することによって獲得される。望ましいヌクレオチド配列は、例として合衆国特許番号5264563および5523388(その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている。)に開示されたコドンベースの突然変異誘発法を用いて産生することができる。前記方法は、オリゴヌクレオチド内の望ましいコドン部位に、任意のおよび全ての頻度のアミノ酸残基の産生が可能である。これは、望ましい部位あるいはこれらの特異的なサブセット内への任意の20アミノ酸の完全ランダム置換を含み得る。あるいはこのプロセスは、本発明したがった新規CDR配列などのアミノ酸鎖内の望ましい部位に、特定のアミノ酸を獲得するために実施することができる。要約すると、望ましいアミノ酸配列を発現させるための適切なヌクレオチド配列は容易に獲得でき、前記方法を用いることで、本発明の新規CDR配列は複製することができる。これは、結果的に望ましいアミノ酸配列を持つ、抗体などのポリペプチドを合成する能力を生じさせる。例として、現在、選択した抗体の望ましいドメインのアミノ酸配列を決定することおよび、付随して、一連の置換類似体を得るために、他の望ましいアミノ酸に置換された一つあるいはそれ以上のアミノ酸を伴う相同性鎖を調製することが可能である。
【0067】
前記方法を用いるにあたって認識すべきことは、遺伝子コードの縮重によって、ランダムオリゴヌクレオチド合成および部分的縮重オリゴヌクレオチド合成としての前記方法は、特定部位における特定アミノ酸残基に特性を持たせるコドンの重複性を含むが、前記方法は、可能性のある全アミノ酸配列の親組を提供し、これらを抗体構造体としての最適な機能あるいはその他の目的についてスクリーンするために用いることができるということである。前記方法は、スワ―ラ他、Proc.Natl.Acad.Sci.87巻:6378から6382ページ(1990年)およびデブリン他、サイエンス 249巻:404から406ページ(1990年)に開示されている。あるいは、前記抗体配列は、化学的に合成することが可能であり、あるいはこの技術の属する分野における通常の技術を有する者が十分に知っているその他の方法において産生することが可能である。
【0068】
ここに開示された発明にしたがって、増強抗体変異体は、単一ポリペプチド構造体に、それぞれが増強した効力あるいは生物学的活性を生じさせる、ここに開示された1つ、2つあるいはそれ以上の新規CDR配列(例として、配列識別番号:11から34を参照)を結合させることにより産生することができる。この方法において、複数の新規アミノ酸配列が、望ましい水準の生物学的活性を持つ抗体を産生するために、一つの抗体中の同一あるいは異なるCDRに結合することが可能である。前記の望ましい水準は、しばしばKon値が最低約2.5×10−1sec−1の抗体を産生することより生じる。
【0069】
限定されない例として、3つの前記新規CDR配列が使用され、その結果生じた抗体は、ここに開示されたコットンラットプロトコルあるいは微小中和プロトコルを用いて、効力あるいは生物学的活性についてスクリーンされ、ここで前記抗体はRSVのF抗原などの特定の抗原構造に対して高親和性を示す。このように全体的な結果は、着実な方法における種々の単一アミノ酸置換体の結合およびその結果生じた抗体の抗原親和性および効力についてのスクリーニングの反復プロセスであり、それによって、望ましくは高い、あるいは最低でも最低限値の親和性を犠牲にすることなく、確実に効力を増加する。
【0070】
本発明の新規配列および方法の使用にあったて、前記方法は、最大の効力を持つ抗体を発見する試みにおいて、可能性のある全ての抗体構造の置換および結合を産生しスクリーニングする時間と費用を回避し得る。逆に、単一10アミノ酸残基CDRの完全無作為化は、事実上スクリーン不可能な数である、10兆以上の変異体を産生し得る。
【0071】
この反復方法は、より高い効力を持つ抗体の検出に絞るための、段階的なプロセスにおける2重および3重アミノ酸置換体を産生するために用いることができる。
【0072】
逆に、種々の抗体ドメインの配列内の全ての部位が同一ではないことは認識しなければならない。特定部位におけるある種の置換は有用あるいは有害であり得る。加えて、特定の部位における特定の種類のアミノ酸の置換は、親和性に関して同様にプラスあるいはマイナスであり得る。例えば、特定の部位に可能性のある全ての疎水性アミノ酸を試みることは、必要ないであろう。任意の疎水性アミノ酸を試みる方が良いであろう。逆に、特定の部位における酸性あるいは塩基性アミノ酸は、測定される親和性の大きな増加を提供し得る。したがって、前記置換を行うことの“規定”を知ることはまた必要であるが、前記“規定”の決定は、可能性のある全ての結合および置換についての研究を必要とせず、傾向は最大数の置換より少数の置換を調べた後に明らかになるであろう。
【0073】
本発明にしたがって、前記規定は、高親和性を獲得するための、必ず抗体のCDR領域内で行われるアミノ酸変換、あるいは完全新規に調製されたアミノ酸配列および合成抗体ポリペプチドを決定する。しかし現在では、高親和性はしばしば治療上の使用において有益な抗体の特性である一方、前記抗体は前記使用において実施上利益をもたらす十分な効力を常に持つわけではないということが発見されている。
【0074】
すでに開示したように、親和性はKon定数およびKoff定数の割合により測定される。例として、10−1sec−1のKonおよび10−5sec−1のKoffは、組み合わさって1010−1の親和定数となる(表3の値を参照)。しかし、前記高親和性を示す抗体は、有益な治療薬となるために必要な効力を欠いたままである。本発明にしたがって、抗体効力は、抗体結合反応に対するKon速度の値に依存する。したがって、抗体は、各抗原に対する親和性とは無関係に効力の増加を示し(中和抗体など)、ここで前記抗体はkあるいはKoffとは無関係に、より高いKon値を持つ。
【0075】
本発明の方法にしたがって、現行の抗体の増強効力は、その抗原親和性とは無関係に、前記抗体の一つあるいはそれ以上のCDR領域中に存在する一つあるいはそれ以上のアミノ酸の選択変換を通して獲得される。これは前記アミノ酸変換が、好ましくは抗体親和性における増加を伴う、前記抗体に対するKonの増加をもたらす効果を持つためである。親和性が変化しないあるいは多少減少したとしても、より高い効力はより高いKon値を伴って獲得される。前記抗体は、適切に処理された細胞内での合成を通した必要とされるポリペプチド鎖の合成により、最も有益に産生される。前記細胞は、細胞中に、変換されたCDR分節を含む望ましいポリペプチド鎖をコードした適切なヌクレオチド配列を組込まれたものである。また本発明の方法にしたがって、望ましい水準の効力あるいは生物学的活性を持つ新規抗体は、ここに開示された遺伝子操作された細胞を用いて、あるいは完全に必要とされるポリペプチド鎖の化学合成と続いて起こる必要なジスルフィド結合の形成を通して、前記抗体ポリペプチド鎖のCDR領域内における選択部位への選択アミノ酸の組込みにより新規に調製することができる。
【0076】
この点において、本発明の方法にしたがって産生された抗体は4量体、2量体あるいは単量体構造を持つ抗体であり得ることは、明確に意識すべきである。したがって、ここで用いられる“抗体”という用語は、L、LH、Fab、F(ab′)およびその他の断片を含む部位および断片だけでなく、自然界に通常見られるような4量体抗体分子全体も含み、前記構造体に必要なのは、ここに開示された分析およびプロトコルにより測定される生物学的活性を保持していることだけである。
【0077】
前記にしたがって、本発明の抗体は高親和性モノクローナル抗体である。しかし、前記抗体は、それらが単一細胞型のクローンから得られるという意味においてのみモノクローナルである。しかし、これは、それらを特定の起源に限定することを意味するのではない。前記抗体は、CHOあるいはCOS細胞などの通常抗体を産生しない細胞中で容易に産生することができる。加えて、前記抗体は、抗体産物を形成するポリペプチド軽鎖および重鎖を発現し組み立てるように細胞を遺伝子操作することにより、その他の型の細胞、特に哺乳動物細胞そして更には植物細胞中でも産生される。加えて、前記鎖は化学的に合成することができるが、それらは特定の抗原決定基に対して特異的であるため、その用語が用いられるところの特質としての、“モノクローナル”抗体を構成し得る。したがって、ここで用いられたように、モノクローナル抗体という用語は、前記抗体の産生のために用いられる単なる機構に比べて、ここに開示された方法により産生された抗体分子の方が特異性および精製度が高いことを示すことを意図する。
【0078】
また、ここで用いられたように、効力という用語は、意図された目的のために用いられた場合に、抗体濃度に対する抗体の効果の依存性を示すことを意図する。したがって、効力は特定抗原に対する生物学的活性を意味する。限定しない例として、効力あるいは生物学的活性もしくは生物学的効果は、方法の項で開示されたようなコットンラット法あるいは微小中和方法により、抗RSV抗体に対して測定される。逆に、抗原に対する抗体の親和性は、単純にKoffに対するKonの割合の数字上での測定である。
【0079】
加えて、本発明の方法にしたがって産生された抗体の親和性(K)は、概して1010−1の範囲内にある。例として、この範囲は1010−1の上下10倍、あるいは1010−1より10倍以上大きく、あるいは更には数字上1010−1と同等であり得る。抗原に対する抗体の親和性はこの定数の値と比例する(すなわち、定数が高いほど、複合体の濃度がより高いことにより親和性はより高くなる−親和定数に対する反応式を参照)。前記定数は、(実施例1に開示されたような)抗体反応に対する標準反応速度方法論により測定される。
【0080】
一つの実施例において、本発明の方法にしたがって産生された抗体(ここで“抗体”という用語が活性部位、断片あるいは分節を意味する他に、本開示の目的のための全てのものが抗体という用語の意味の中に含まれると考慮される)は、通常哺乳動物、好ましくはヒトの定常部および可変部から成り、前記可変部は重鎖および軽鎖枠組み構造領域と重鎖および軽鎖CDRから成り、ここで重鎖および軽鎖枠組み構造領域は哺乳動物抗体、好ましくはヒト抗体の特性を有する配列を持ち、そしてここでCDR配列はヒト以外の種、好ましくはマウスの抗体のCDR配列と類似する。ここで枠組み構造アミノ酸配列は、非ヒト枠組み構造アミノ酸配列の特徴を持ち、後者は好ましくはマウスである。
【0081】
他の実施例において、抗体はヒト抗体であり、ここで抗体は、改良された効力を提供するためにここに開示されたようなKon値を持つ。
【0082】
加えて、本発明にしたがって産生された抗体は、通常、ここに開示されたKon値を増加させるための方法の適用前と同一のエピトープに結合し得る。したがって本発明の方法の適用後、抗体は、ここに開示された方法の適用前のCDR配列と同様の、しかし完全に同一ではない、CDR配列を持ち得る。ここで、抗体がRSVなどのウイルスを中和するために用いられる場合には、前記抗体のCDRの最低一つは、配列識別番号:11から34から選択された一つ等の高効力アミノ酸配列を含み得る。
【0083】
前記の内容を持ち続けながら、またRSVに対するヒト化抗体に関する本発明にしたがって開示された配列をより良く記載するために、効力が増加され得る抗体あるいはその断片の軽鎖および重鎖可変部の基本配列あるいは開始配列が図1A(軽鎖可変部−配列識別番号:1)および図1B(重鎖可変部−配列識別番号:2)あるいは前記抗体のFab断片(例えば、図2aの配列(軽鎖可変部−配列識別番号:3))および図2B(重鎖可変部−配列識別番号:4)に示される。また本発明にしたがって、これらの開始配列のものとは異なる特異的アミノ酸は、まず第一に、組換え細胞中に発現した場合に、前記アミノ酸配列を産生するように設計されたヌクレオチド配列を調製する組換え法により産生される。前記細胞産物は、本発明のモノクローナル抗体である。代わりに、前記抗体は、本発明の属する分野においてよく知られた合成法により遺伝子操作された細胞あるいは組換え細胞を使用することなく産生することができる。
【0084】
本発明の一つの実施例において、効力は、Kon値を最低2.5×10−1sec−1に増加させることにより、(RSVのF抗原に対して)最低10−1、および好ましくは最低1010−1の親和定数を持つ、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対する中和抗体を用いて、高められる。前記Fab断片のCDR中に存在するアミノ酸は表3に示される(例えば、クローン5)。
【0085】
一般的に、Kon値を増加させるための本発明の方法の適用前後における抗体の親和定数および反応速度定数を決定するために用いられる手法は、(本発明にしたがって)望ましい抗体鎖を発現する遺伝子に対するヌクレオチド配列を産生し、これらを、標準プロトコルによりCOS−1細胞を形質転換させるために用いられるベクターに挿入するためのものである。細胞はウェル中で成育され、上清が抽出され、標準ELISA技術を用いて抗原結合について測定される。これらのポリヌクレオチドは、CDRにおける一つあるいはそれ以上のアミノ酸置換を提供するために設計され、前記CDRはその後、親和性の増加のために選択的に結合した有益な置換(これらがKon値の増加をもたらす)を伴う増加したKon値についてスクリーンされる。これらはその後続いて、基本構造あるいは参照構造に対する、RSVのF抗原などの各々の抗原への結合親和性についてスクリーンされ、それにより、Kon値の増加の結果生じた親和性に大きな変化が無いことを確認する。
【0086】
特異的な実施例において、本発明は、最低10−1、好ましくは最低1010−1、そして最も好ましくは最低1011−1の親和定数より成る単離された抗体に関し、ここでKonは、最低約2.5×10−1sec−1、好ましくは最低約5×10−1sec−1、最も好ましくは最低約7.5×10−1sec−1である(その組み合わせの全てを含む)。
【0087】
また本発明にしたがって、前記単離抗体は、既知のあるいは新しく合成された新規の抗体であり得る。したがって、本発明の方法にしたがって産生された抗体は、自然発生哺乳動物抗体、自然発生ヒト抗体、自然発生マウス抗体、単一鎖抗体、(一つの種の抗体の定常部および異なる種の抗体の可変部を持つ)キメラ抗体、(一つの種の抗体のCDR領域と異なる種の抗体の定常部およびあるいは枠組み構造領域を持つ)CDR移植抗体、ヒト化抗体(可変枠組み構造領域およびまたはCDR領域の選択アミノ酸が、前記配列の大部分がマウスなどの異なる種から得られたものであるにも関わらず、ヒト抗体と類似するように変換されている)、好ましくはヒト化マウス抗体、好ましくはマウス、最も好ましくはヒトの変換哺乳動物抗体(ここで、既存の抗体の選択アミノ酸は、通常基本となる抗体構造と類似した抗体構造をもたらすための遺伝子操作技術を通して、ポリペプチド鎖のいくつかの点で変換されている)、および完全合成新規抗体より成るグループから選択された抗体を含む。後者は自然には存在しないものである。
【0088】
本発明はまた、特定抗原に対する前記抗体の測定Kon値を増加させるための、抗体の可変部内のアミノ酸の選択的変換より成る、(前記のように)前記の抗体型の一つの効力を高める方法に関する。もちろん、Kon値は、同一のアミノ酸変換に続く同一抗体と異なり得る。ここで反応は、異なる抗原あるいは抗原決定基を用いて測定される。しかし、そのような場合において、親和性はまた、抗原決定基の同一性が変換するにつれて変換する可能性がある。
【0089】
また本発明の方法にしたがって、前記抗体のポリペプチドの配列内に導入されたアミノ酸変換は、好ましくは抗体の可変部のCDR部位に限定されるが、これらは枠組み構造領域に対する変換も含み得る。
【0090】
しかし、最も有益なCDR配列は、通常ここに開示された方法により効力を高めることができる抗体の修飾クローンのスクリーニングにより同定されるけれども、前記高効力クローンは同定されると、その結果生じた抗体は、必要とされるヌクレオチド配列を設計するための遺伝子コードを利用して、望ましいアミノ酸配列に一致する適切なDNA配列を含む適当なベクターの動物あるいは植物細胞への導入に続き、このような細胞内での適当な重鎖および軽鎖ポリペプチドの合成を通して、その後最も有益に産生される。この手法の結果として、高効力完全新規抗体は、修飾するための既存抗体配列の選択を必要とすることなく、本発明の方法により示されたアミノ酸配列同定を用いて最初から産生することができる。したがって、ここに開示された方法は、完全新規構造の高効力抗体の産生を容易にする。ここで前記高効力抗体のCDR配列は、前記抗体の予定された抗原標的に対する特異性および親和性を損なうことなく、計画的に前記抗体のKon値を増加させるためにここに開示された方法により決定されたように、高効力CDRである。
【0091】
本発明の方法の一つの実施例において、既存抗体は、Kon値を増加させることによりその効力を高めるために修飾される。好ましい実施例において、抗体は、例えば最低約10−1あるいは1010−1の高親和性を伴う抗体である。抗体は、前記抗体の重鎖およびまたは軽鎖ポリペプチド内へのアミノ酸変換の導入のために、クローンあるいは遺伝子操作動物あるいは植物細胞を用いて産生される。好ましくはここで、抗体効力の増加を伴って前記抗体の特定抗原に対する結合についてのKon値を増加させるために、前記抗体変換は前記ポリペプチド鎖の相補性決定領域(CDR)内へ導入される。したがって、本発明の方法は、抗体分子を産生するために有益に用いられる。ここで、配列、好ましくは前記配列の可変部、最も好ましくはCDR部位のアミノ酸変換を伴う前記抗体のKon値は、Kon値が同一抗原に対して測定された場合に、前記アミノ酸変換前の前記抗体が示すKon値よりも高い。
【0092】
通常、本発明の方法は、既知の抗体に対して適用され、前記抗体のKon値は、最低2倍、好ましくは最低5倍、そして最も好ましくは最低10倍増加され得る。より特異的には、前記抗体のKon値は、最低約2.5×10−1sec−1、好ましくは最低5×10−1sec−1、最も好ましくは最低7.5×10−1sec−1まで増加する。
【0093】
ここに開示された方法は、未知の新規組換え高効力抗体の設計に対して同様に有効であるため、本発明はまた、ポリペプチド配列が選択部位、特にCDR配列内に選択アミノ酸を含む抗体を調製し、その後最低2.5×10−1sec−1のKon値を、あるいは最低5×10−1sec−1あるいは更に7.5×10−1sec−1のKon値を持つことについて、前記抗体をスクリーニングすることより成る、最低2.5×10−1sec−1のKon値を持つ抗体を産生する方法に関する。前記抗体は、一つあるいはそれ以上のここに開示された高効力CDRの存在の結果生じ得る。前記抗体は高Kon値について容易に検査される。
【0094】
本発明の方法は、望ましい抗原に対する親和性を持つ、高効力抗体あるいは効力増加抗体の産生に対しても利用することができるが、前記抗原は、好ましくはバクテリア、ウイルスあるいは菌類、好ましくはウイルス(例として、呼吸器合胞体ウイルス(RSV))などの微生物に特有の抗原である。
【0095】
他の実施例において、本発明は、前記疾病の危険にあるあるいは前記疾病に苦しむ患者に、ここに開示された方法により調製された治療上有効な量の抗体を投与することより成る、疾病を予防あるいは処置する方法に関する。したがって、前記抗体は、本発明の方法の適用により増加した効力を持つ完全新規抗体あるいは既知の臨床上有効な抗体であり得る。ここに開示された方法により調製された抗体により予防あるいは処置された疾病は、通常バクテリアおよびウイルス、好ましくはウイルス、そして最も好ましくはRSVなどの微生物により引き起こされる疾病である。
【0096】
このように開示された抗体はまた、通常ヒト抗体より得られた、そうでなくとも好ましくはマウスから得られた枠組み構造領域を持つ。
【0097】
クローンの産生において、基本あるいは参照抗体(図1および図2に示された重鎖および軽鎖可変部(CDRプラス枠組み構造領域))は、本発明の抗体の新規CDR配列を産生するための“鋳型”として用いられ、後者はより高いKon値を与える。単一突然変異の6個のCDRライブラリーの特性を示し、そして合成するための標準方法が用いられた(ウー他、Proc.Natl.Acad.Sci.95巻:6037−6042ページ(1998年)参照、その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている)。標的CDRは、ヌクレオチドのアニーリングの前に、最初に各ライブラリーから削除される。ライブラリーの合成のために、参照抗体(図2参照)のCDRは表1のように定義された。(上記のように)本発明のCDR配列を産生するためのオリゴヌクレオチド合成のためにコドンベースの突然変異誘発が用いられた。
【0098】
ライブラリーは、最高親和性変異体を同定するために、キャプチャーリフトにより最初にスクリーンされた。続いて、これらのクローンは更に、キャプチャーELISAの使用および固定抗原に対する滴定により特徴付けられた。前記スクリーニングに続いて、抗体は個々のKon値についてスクリーンされ、その陽性の効果はその後、効力の測定により測定される。図4および5は、ここで用いられる調製およびスクリーニング法に対する補助的な詳細を示す。
【表1】

【0099】
本発明にしたがって、最高Kon変異体由来のDNAは、有益なあるいは高効力の置換体の性質を確認するために配列決定された。スクリーニング後、前記置換体の効果を最大にし、それにより高効力も示す高親和性抗体を産生するために、抗体は、単一あるいは種々の組み合わせにおいて、高Konアミノ酸置換体について調製される。
【0100】
通常、最も有益な高KonCDRは、6個のCDRにおけるアミノ酸置換の結果生じることが分かっている。したがって、ここに開示された高効力(すなわち高Kon)中和抗体は、相補性決定領域L1(あるいはCDRL1)、L2(あるいはCDRL2)、L3(あるいはCDRL3)、H1(あるいはCDRH1)、およびH3(あるいはCDRH3)においてのみ[原文通り]、(例として、図1および2に示された)基本あるいは参照抗体とは異なるアミノ酸配列を含む。
【表2】

【0101】

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】
したがって、図3のアミノ酸配列のために、図2の配列の選択アミノ酸は、図2に示された重鎖および軽鎖配列を持つ抗体の効力を増加させるための手段として置換された。
【0106】
ここに開示された方法によって生じた選択高Kon抗体(およびその活性断片)は、表2に示される(その全てが図2の枠組み構造配列を持つ)。ここで参照クローンは、図2に示された重鎖および軽鎖可変部配列(軽鎖および重鎖配列それぞれに対して配列識別番号:3および4)を持つクローンである。
【0107】
表2は、ここに開示された方法にしたがって調製された高効力抗体に用いられる高KonCDRのアミノ酸配列(標準アミノ酸一文字アルファベットコードで表記された全配列)を示す。表2において、対応する表1のCDRにおいてなされた主要なアミノ酸置換の部位(すなわち、アミノ酸においてCDRの異なる部位)は、太文字および下線で示される。
【0108】
本発明にしたがって、同一抗体分子に一つ以上起こる前記アミノ酸置換を組み合わせることにより、ここに開示された抗体の効力を大きく増加させることが可能となった。
【0109】
通常、抗体のKonおよび効力間には相互関係があり、前記抗体は一つ以上の有益なあるいは高いKonCDRを持つ全てのより高いKon変異体を伴い、全6個のCDRが置換された変異体も含む。
【0110】
一つの実施例において、増加したKonを持つように調製された抗体は、最低10−1および好ましくは最低1010−1の親和性を伴うRSV中和抗体であり、また重鎖および軽鎖についてのヒト定常部および枠組み構造を含むヒト化抗体である。ここで少なくとも枠組み構造の一部分はヒト抗体から(あるいはヒト抗体枠組み構造の共通配列から)得られる。
【0111】
他の実施例において、枠組み構造の全てがヒト抗体(あるいはヒト共通配列)から得られる。
【0112】
他の実施例において、本発明にしたがって産生された抗体は、最低10−1および好ましくは最低1010−1の親和性を伴い、ヒト定常部、最低一つのCDRにおける最低一つのアミノ酸が変換された非ヒト抗体から得られた一つあるいはそれ以上のCDRおよび枠組み構造の全てあるいは一部分がヒト抗体(あるいはヒト抗体枠組み構造の共通配列)から得られたものを持つ移植抗体である。
【0113】
望ましいCDR配列と定常部および枠組み構造配列が既知であるならば、望ましい配列を持つ遺伝子は、組み立てられそして種々のベクターを用いて、機能的4量体抗体分子の発現のために適切な細胞中に挿入することができる。これとすでに開示された方法論の組み合わせにより、単一突然変異ライブラリーの組立てが可能となる。ここで抗体は対応する移植抗体と同一の配列を所有し、それにより同一の構造および結合親和性を持つ。
【0114】
表2に開示されたCDR配列の組み合わせは、完全4量体抗体分子あるいはFab断片などの活性断片において存在し得る。表3に示されたクローン1から15に対する効力データはFab断片に対するものであり、一方表3のクローン16および17に対するデータは完全抗体分子に対するものである(クローン16は、ジョンソン他(1997年)に開示された配列を持つMEDI−493である)。
【0115】
本発明に基づく完全抗体分子は、配列識別番号:37、39、41、43、45、47、49、51および53より成るグループから選択された重鎖配列(可変部プラス定常部)を持ち、配列識別番号:38、40、42、44、46、48、50、52および54より成るグループから選択された軽鎖配列(可変部プラス定常部)を伴う抗体分子を含む。
【0116】
本発明の比較的高いKonの抗体は、比較的精製あるいは単離された状態として、同じくウェル中であるいはプレート上で生育された細胞から抽出した上清として存在し得る。したがって本発明の抗体はまた、本発明の抗体より成る組成物の形状として存在し得る。そしてここで前記抗体は、薬理学的許容希釈剤あるいは賦形剤中に懸濁される。本発明の抗体は、濃縮された組成物あるいは、疾病の処置あるいは予防(例として、感染に伴って発症するぜん息およびぜん鳴のより高い発生率を伴うRSVの予防)において治療上あるいは薬理学上の有益な価値を持つ量として存在し得る。前記抗体はまた、より希釈された状態の組成物として存在し得る。
【0117】
続いて、本発明はまた、疾病、特にウイルス疾病、最も特に呼吸器合胞体ウイルス感染を予防およびまたは処置する方法の提供に指向する。前記方法は、前記疾病の危険のある患者あるいは前記疾病に苦しむ患者に、治療上有効な量のここに開示された抗体組成物を投与することより成る。
【0118】
一つの特定の実施例において、本発明の高効力中和抗体は、図3(表2に特定されたクローン15のCDRを持つクローン15に対する配列識別番号:101および102)の配列を持つ。
【0119】
本発明の増加Kon抗体は、アミノ酸分節のスプライシングにより、実際の中和抗体から得られたCDR領域および非CDR領域から組み立てることができる(そして組み立てられた抗体はここに開示された発明内の範囲内にある)一方、本発明の抗体は、適切な遺伝子配列を、遺伝子操作された細胞による組み立てられた抗体分子の最終的な発現のために、処理後適切な細胞系列に形質移入されるベクター内に、遺伝子操作することにより最も容易に調製されることは、考慮されるべきである。実際、前記組換え方法は、ここに開示された抗体を調製するために用いられる。加えて、高親和性抗体鎖の配列がここでの開示から公知であるため、前記抗体はまた、適切な鎖の直接合成により組み立てることができ、その後4量体抗体構造への自己組み立てが可能である。
【0120】
一般材料および方法
モノクローナル抗体
MEDI−493は、マウスMAb1129の抗原結合決定基を含むIgG(COR)/カッパ(K102)ヒト化MAb(図1に示された重鎖および軽鎖可変部配列)である(ジョンソン他、J.Infect.Dis.、176巻、1215から1224ページ(1997年);ベーラーとヴァン ウィック コーリン、J.Virol.、63巻、2941から2950ページ(1989年))。
【0121】
RSV融合抑制分析
細胞へのウイルス付着後のRSVの引き起こす融合を妨げる抗体の能力は、融合抑制分析において測定された。この分析は、細胞が抗体の添加前に4時間、RSV(ロング)に感染されることを除いて、微小中和分析と同一である(テーラー他、J.Gen.Virol.、73巻、2217から2223ページ(1992年))。
【0122】
BIAcore分析
MAbsのエピトープ分析は、プラスミン共鳴微小流体素子工学システムと共に、BIAcoreバイオセンサー(BIAcore、ピスケータウェイ、ニュージャージー)を用いて行われた(カールソン他、J.Immunol.メソッズ、145巻、229から240ページ(1991年);ジョン、Mol.Biotechnol.、9巻、65から71ページ(1998年))。この分析のために用いられる抗原は、バキュロウイルスで発現する切端RSV(A2)Fタンパク質(アミノ酸1から526)である。精製RSV Fタンパク質は、製造プロトコルにしたがって、N−ヒドロキシスクシニミド/l−エチル−3−〔3−ジメチルアミノプロピル〕−カルボジイミド−活性化CM5センサーチップと共有結合し、未反応活性エステルグループは、1Mエタノールアミンで反応させた。1μMあるいは10μMのMEDI−493の初期注入の後に、HBSS洗浄段階が続き、その後MEDI−493あるいはRHSZ19の2次注入が続く。センサーグラムは、BIA数値算出ソフトウェアを用いて分析した。
【0123】
等温滴定熱量測定
各RSV Fタンパク質に対するMAbの分解親和性は、等温滴定熱量測定により測定された(ワイズマン他、Anal.Biochem.、179巻、131から137ページ(1989年))。4.5μM RSV Fタンパク質の溶液1.4mLが、26μM MEDI−493あるいはRSHZ19の5.5μLの注入で滴定された。MAbの各注入後、結合の量と比例する熱放出量が測定された。用いられた抗原は、ショウジョウバエ細胞中で発現するRSV(A2)Fタンパク質切端(アミノ酸25−524)である。滴定は、ノイズに対する最適シグナルを獲得するために44℃および55℃で行われた。これらの温度におけるMAbsおよびFタンパク質の熱安定性は、円偏光二色性変性実験により示された。親和性は、生体内データとの比較のため、完全なファントホッフの式を用いて37℃に調整された(ドイルとヘンスリー、メソッズ Enzymol.、295巻、88から99ページ(1998年))。ファントホッフ調整は、熱量測定により直接測定されたFタンパク質結合エンタルピー変化にのみ基づく。MEDI−493およびRSHZ19に対する結合エンタルピー変化は非常に類似していることが発見されたため、それらのKdsに対する温度調節はほぼ同一であった。
【0124】
コットンラット予防法
生体内効力はコットンラットモデルを用いて測定される(プリンス他、J.Virol.、55巻、517から520ページ(1985年))。コットンラット(Sigmodon hispidus、平均体重100グラム)は、メトキシフルランで麻酔され、放血され、投与量5、2.5、1.25、0.625mg/kg体重の精製MAbあるいは5mg/kg体重のウシ血清アルブミン(BSA)コントロールの0.1mLが、筋肉内注射(i.m.)により注入された。24時間後、動物は再び麻酔され、血清MAb濃度測定のために放血され、10PFUのRSVのA(ロング)あるいはB(18537)変種の鼻腔内点滴注入(i.n.)により、免疫有効性が試験された。4日後、動物は犠牲となり、その肺は回収された。肺は、ハンクス調整塩溶液の10パーツ(wt/vol)中でホモジネートされ、その結果生じた懸濁液は、プラーク分析による肺疾患ウイルス力価を測定するために用いられた。免疫有効性試験時の血清抗体力価は、抗ヒトIgG ELISAにより測定される。
【実施例】
【0125】
(実施例1)
BIAcoreTMによるヒト化RSV Mabsの反応速度分析
高親和性坑RSV MabsおよびRSV Fタンパク質の間の相互作用の反応速度は、ファルマシアBIAcoreTMバイオセンサーを用いて、表面プラスモン共鳴により研究された。C末端切端Fタンパク質を発現する組換えバキュロウイルスは、反応速度試験に対する抗原の豊富な源を提供した。分泌されたFタンパク質を含む上清は、コンカナバリンAおよびQセファロースカラムでの連続クロマトグラフィーにより、おおよそ20倍に濃縮された。プールされた分画は、10mMクエン酸ナトリウム(pH5.5)に対して透析され、おおよそ0.1mg/mlに濃縮された。典型的な実験において、Fタンパク質の一部(100ml)は、BIAcoreセンサーチップにアミン結合した。(合衆国特許番号5824307(その開示は引用例としてここに組み込まれている)において調製された)H1129あるいはH1308Fで飽和した場合において、固定された量は、シグナルのおおよそ2000反応単位(Rmax)であった。これは、結合方法を伴うFタンパク質調製において、同数の“A”および“C”抗原部位が存在することを示す。2つの関連のないMabs(RVFV 4D4およびCMV H758)は、固定されたFタンパク質と相互作用を示さなかった。典型的な反応速度試験は、0.05%Tween−20を含むPBS緩衝液(PBS/Tween)中の異なる濃度(25−300nM)での35mlのMabの注入を伴う。流出速度は5ml/minに維持され、7分間の結合段階を与えた。Mabの注入に続いて、解離速度を測定するために、流出は30分間PBS/Tween緩衝液に変換された。センサーチップは、10mM HClの2分間のパルスでのサイクル間で再生された。再生段階は、固定Fタンパク質の結合能力の損失を最小限にした(サイクル当たり4%の損失)。この微量の減少は、(それぞれKonおよびKoffとも呼ばれる)結合および解離の速度定数の算定値を変化させなかった。
【0126】
より特異的には、Kassoc(あるいはKon)の測定のために、Fタンパク質は、EDC/NHS法(EDC=N−エチル−N′―〔3−ジエチルアミノプロピル〕−カルボジイミド)により直接固定された。要約すると、10mM NaOAc、pH4.0におけるFタンパク質の4μg/mlは調製され、約30μl注入が、上記条件下で約500RU(反応単位)の固定Fタンパク質を生じた。ブランク流出細胞(VnR固定CMデキストラン表面)は、反応速度分析のために差し引かれた。カラムは100mM HCl(完全再生に必要な72秒の一定時間を伴う)を用いて再生することができた。この処置は、固定抗原を損傷させること無く完全に結合Fabを除去し、40超の再生に用いることができた。Kon測定に対して、Fab濃度は、12.5nM、25nM、50nM、100nM、200nMおよび400nMであった。解離段階は、230秒(解離段階の開始後30秒)から900秒まで分析された。反応速度は、1:1ラングミュアフィッティング(グローバルフィッティング)により分析された。測定は、HBS−EP緩衝液(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%(v/v)サーファクタントP20)中で行われた。
【0127】
無作為配列クローンの測定については、ここに開示されたように、KonおよびKoffは別々に測定された。Konは、単一突然変異クローンについての場合と同一条件で測定され、同様に分析された。
【0128】
off(あるいはKdissoc)の測定のために、以下の条件が適用された。要約すると、4100RUのFタンパク質は、ブランクとして用いられるCM−デキストランに(上記のように)固定された。ここで、3000RUのFabが(装置誤差を相殺するには十分高い解離Fabで)結合した。HBSプラス5nM Fタンパク質(KdissocあるいはKoff−解離平衡定数よりも約350から2000倍高い)は、緩衝液として用いられた。解離段階は、5μl/minの流出速度で6から15時間であった。ここで用いられた条件下において、解離Fabの再結合は最小であった。更なる詳細については、バイオセンサー付属の操作説明書を参照されたい。
【0129】
ここに開示された、Fタンパク質あるいはRSV上のその他のエピトープ部位に対する高親和性抗RSV抗体の結合は、結合についての二次次数速度定数に対する解離についての一次次数速度定数の割合(K=Kdiss/Kassoc)から算出された。Kassocの値は、以下の速度式に基づいて算出された:
dR/dt=Kassoc[Mab]Rmax−(Kassoc[Mab]+Kdiss)R
ここで、RおよびRmaxは、それぞれ時間tおよび無限大における反応単位である。Rの関数としてのdr/dtのプロットは、(Kassoc[Mab]+Kdiss)の傾きを与える。これらの傾きは[Mab]と比例の関係にあるため、Kassoc値は、傾き対[Mab]の再プロットから得ることができる。新しい直線の傾きは、Kassocに等しい。Kdiss値は、Y切片から推定することができるが、より正確な値がKdissの直接測定により測定された。Mabの注入段階に続いて、PBS/Tween緩衝液は、センサーチップを横断して流出する。この時点から[Mab]=0である。したがってdR/dtに対する上記の式は、次のように縮小される:
dr/dt=KdissR あるいは dR/R=Kdissdt
この式の積分は次のようになる:
In(R/R)=Kdiss
ここで(R/R)は、それぞれ0時(解離段階の開始)およびt時における反応単位である。最後に、tの関数としてのIn(R/R)のプロッティングは、Kdissの傾きを与える。ここでの好ましい実施例において、前記抗体変異種から得た数値は表3に示される。
【0130】
表2および3におけるクローンについて、参照クローンは、図2に示された配列および表1に示されたCDRを持つFab断片である。クローン1から15は、図2の枠組み構造配列および、表2(ここで“X”は、高効力CDR(すなわち、参照配列に対するその存在が、高い効力および参照Fabよりも高い効力をもたらすCDR)を示す。)に表示されたクローン1から15のCDR結合を持つFab断片である。ここで表2のCDRの項の次に“X”が無いものは、(表1および図2の)参照Fabに相当する配列である。
【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
表4における結果は、IC50値(あるいは、表3と同様のコントロールと比較して50%の抑制を生じるμg/ml濃度)に関して、Fab断片と完全4量体抗体分子を比較する。表のクローン16は、表2に開示されたCDRを持つ参照抗体である。
【0134】
表3のクローン16および17は、図1の枠組み構造配列およびジョンソン他(1997年)に開示された定常部を持つ、事実上のモノクローナル抗体である。これらの抗体の枠組み構造配列は、Fab断片がわずかに異なりうる。
【0135】
表4のクローン18から26は、クローン16および17と類似するが、高効力CDR配列を持つ4量体抗体分子である。抗体クローン21は、Fabクローン9と同一のCDR配列を持ち、抗体クローン22は、Fabクローン10と同一のCDR配列を持ち、抗体クローン23は、Fabクローン11と同一のCDR配列を持ち、抗体クローン24は、Fabクローン12と同一のCDR配列を持ち、抗体クローン25は、Fabクローン13と同一のCDR配列を持ち、そして抗体クローン26は、Fabクローン15と同一のCDR配列を持つ。表3の抗体クローン18、19および20は、表2に特定されたCDR結合を伴う全長4量体抗体である。これらの抗体の枠組み構造配列は、Fab断片がわずかに異なり得る。
【0136】
表2のCDR配列の下線のアミノ酸は、本発明の方法により産生される高効力抗体の高効力CDR内の主要部位に位置するアミノ酸残基を表す。例えば、より高いKon値をもたらすことにより抗体の効力を高めるために、参照抗体についての表1において、太文字および下線の残基としてここで示唆された主要部位に位置するアミノ酸は、表2においてCDRの下に表記された(そしてまた太文字と下線の引かれた)アミノ酸により置換され得る。したがって、これらの一文字コードは、効力を高めることができる参照抗体についての図2に示されるCDRの主要部位(あるいは決定的な部位)(表2の配列における太文字で示された残基)において、参照アミノ酸を置換するアミノ酸を表す。
【0137】
表4のクローンについては、クローン18は、配列識別番号:41(重鎖)および42(軽鎖)により特定される全長配列を持ち、クローン19は、配列識別番号:45(重鎖)および46(軽鎖)により特定される全長配列を持ち、クローン20は、配列識別番号:47(重鎖)および48(軽鎖)により特定される全長配列を持ち、クローン21は、配列識別番号:51(重鎖)および52(軽鎖)により特定される全長配列を持ち、クローン22は、配列識別番号:53(重鎖)および54(軽鎖)により特定される全長配列を持ち、クローン23は、配列識別番号:49(重鎖)および50(軽鎖)により特定される全長配列を持ち、クローン24は、配列識別番号:43(重鎖)および44(軽鎖)により特定される全長配列を持ち、クローン25は、配列識別番号:37(重鎖)および38(軽鎖)により特定される全長配列を持ち、そしてクローン26は、配列識別番号:39(重鎖)および40(軽鎖)により特定される全長配列を持つ。
【0138】
ここで、クローン18(IgG)およびクローン27(Fab)は同一CDRを持ち、クローン19(IgG)およびクローン29(Fab)は同一CDRを持ち、クローン20(IgG)およびクローン28(Fab)は同一CDRを持ち、クローン21(IgG)およびクローン9(Fab)は同一CDRを持ち、クローン22(IgG)およびクローン10(Fab)は同一CDRを持ち、クローン23(IgG)およびクローン11(Fab)は同一CDRを持ち、クローン24(IgG)およびクローン12(Fab)は同一CDRを持ち、クローン25(IgG)およびクローン13(Fab)は同一CDRを持ち、クローン26(IgG)およびクローン15(Fab)は同一CDRを持つ。したがって、表4のデータは、Fab断片の活性と完全抗体分子の活性との関連性を示す。
【0139】
したがって、本発明は完全4量体高効力中和抗体を含み、ここで前記抗体は、配列識別番号:37、39、41、45、47、49、51および53より成るグループから選択された重鎖アミノ酸配列および、配列識別番号:38、40、42、44、46、48、50、52および54より成るグループから選択された軽鎖アミノ酸配列を持ち、好ましくはここで前記抗体は、クローン18−26の抗体である。
【0140】
(実施例2)
微小中和分析
本発明の抗体の中和は、微小中和分析により測定された。この微小中和分析は、アンダーソン他により開示された方法(“酵素免疫測定法に基づく呼吸器合胞体ウイルスに対する微小中和試験”、J.Clin.Microbiol.22巻、1050から1052ページ(1985年)、その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている)の改良法である。ここで用いられた方法は、ジョンソン他(J.インフェクシャス ディジージーズ、180巻、35から40ページ(1999年)、その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている)に開示されている。抗体希釈は、96ウェルプレートを用いた三つ組み中で行われた。呼吸器合胞体ウイルス(RSV−ロング株)の10TCID50は、96ウェルプレートのウェル中で、37℃で2時間試験するために、種々の抗体(あるいはFab)希釈濃度でインキュベートされた。RSV感受性HEp−2細胞(2.5×10)が、その後各ウェル中に添加され、37℃、5%二酸化炭素濃度で5日間培養された。5日後、培地は吸引され、細胞は洗浄され、80%メタノールおよび20%PBSでプレートに固定された。RSV複製は、その後Fタンパク質の発現により測定された。固定細胞は、ビオチン接合抗Fタンパク質モノクローナル抗体(panFタンパク質、C部位特異的MAb 133−1H)と共にインキュベートされ、洗浄された。そして西洋ワサビペルオキシダーゼ接合アビジンが、ウェルに添加された。ウェルは、再び洗浄され、基質TMB(チオニトロ安息香酸)の代謝量は、450nmで測定された。中和力価は、450nmの吸光度(OD450)において、ウイルス単独コントロール細胞に対して最低50%の減少を引き起こす抗体濃度として表された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫学的活性部位、断片あるいは分節を含有する、ビタキシン以外の一つの高効力抗体であって、最低2.5×10−1−1のKonを持つ抗体。
【請求項2】
請求項1記載の高効力抗体であって、ここで前記Konが最低約5×10−1−1であることを特徴とする抗体。
【請求項3】
請求項1記載の高効力抗体であって、ここで前記Konが最低約7.5×10−1−1であることを特徴とする抗体。
【請求項4】
請求項1記載の高効力抗体であって、ここで前記抗体が中和抗体であることを特徴とする抗体。
【請求項5】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が微生物上に検出される抗原決定基に対して特異性を持つことを特徴とする抗体。
【請求項6】
請求項5記載の高効力中和抗体であって、ここで前記微生物がウイルス、バクテリアおよび菌類より成るグループから選択されることを特徴とする抗体。
【請求項7】
請求項5記載の高効力中和抗体であって、ここで前記微生物がウイルスであることを特徴とする抗体。
【請求項8】
請求項7記載の高効力中和抗体であって、ここで前記ウイルスが呼吸器合胞体ウイルス(RSV)およびパラインフルエンザウイルス(PIV)より成るグループから選択されることを特徴とする抗体。
【請求項9】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体がガン細胞上に検出される抗原に対して特異的であることを特徴とする抗体。
【請求項10】
請求項1記載の高効力抗体であって、ここで前記抗体が毒性物質あるいは毒性物質の産物に対して特異的であることを特徴とする抗体。
【請求項11】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が最低約10−1の親和定数(K)を持つことを特徴とする抗体。
【請求項12】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が最低約1010−1の親和定数(K)を持つことを特徴とする抗体。
【請求項13】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が最低約1011−1の親和定数(K)を持つことを特徴とする抗体。
【請求項14】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が6.0nM以下のEC50を持つことを特徴とする抗体。
【請求項15】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が3.0nM以下のEC50を持つことを特徴とする抗体。
【請求項16】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が1.0nM以下のEC50を持つことを特徴とする抗体。
【請求項17】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が一つあるいはそれ以上の高効力相補性決定領域(CDR)より成ることを特徴とする抗体。
【請求項18】
請求項17記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が最低2つの高効力CDRより成ることを特徴とする抗体。
【請求項19】
請求項18記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が最低4つの高効力CDRより成ることを特徴とする抗体。
【請求項20】
請求項19記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が6つの高効力CDRより成ることを特徴とする抗体。
【請求項21】
請求項19記載の高効力中和抗体であって、ここで前記高効力CDRが、軽鎖CDRL1(CDRL1)、L2(CDRL2)、L3(CDRL3)および重鎖CDRH1(CDRH1)、H2(CDRH2)、H3(CDRH3)それぞれのうちの一つより成ることを特徴とする抗体。
【請求項22】
請求項17記載の高効力中和抗体であって、ここで前記高効力CDRが、CDRL1に対しては配列識別番号:11、12、13および56、CDRL2に対しては配列識別番号:14、15、16、17、18、19、20、21、22、57および58、CDRL3に対しては配列識別番号:23、CDRH1に対しては配列識別番号:24および25、CDRH2に対しては配列識別番号:26、27、28、29、30および55、CDRH3に対しては配列識別番号:31、32、33および34より成るグループから選択されたアミノ酸配列を持つことを特徴とする抗体。
【請求項23】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が、配列識別番号:37、39、41、45、47、49、51および53より成るグループから選択された重鎖アミノ酸配列および配列識別番号:38、40、42、44、46、48、50、52および54より成るグループから選択された軽鎖アミノ酸配列を持つことを特徴とする。
【請求項24】
高効力中和抗体を産生するための一つのプロセスであって、(a)前選択アミノ酸配列を持つ一つあるいはそれ以上の枠組み構造およびまたは相補性決定領域(CDR)を含む重鎖および軽鎖可変部より成る、免疫学的活性断片を含有する組換え抗体の産生、(b)前記抗体が試験管内で選択された抗原に反応した場合の高結合速度定数(Kon)に対する前記組換え抗体のスクリーニング、および(c)前記高結合速度定数(Kon)を持つ抗体の選択、より成るプロセス。
【請求項25】
請求項24記載のプロセスであって、ここで前記Konが最低3×10−1−1であることを特徴とするプロセス。
【請求項26】
請求項24記載のプロセスであって、ここで前記Konが最低10−1−1であることを特徴とするプロセス。
【請求項27】
請求項24記載のプロセスであって、ここで高Konをもたらす前選択アミノ酸配列が、抗体の枠組み構造領域および最低一つのCDR領域の両方に存在することを特徴とするプロセス。
【請求項28】
請求項24記載のプロセスであって、ここで高Konをもたらす前選択アミノ酸配列が、抗体の枠組み構造領域および最低2つのCDR領域の両方に存在することを特徴とするプロセス。
【請求項29】
請求項24記載のプロセスであって、ここで高Konをもたらす前選択アミノ酸配列が、抗体の枠組み構造領域および最低4つのCDR領域の両方に存在することを特徴とするプロセス。
【請求項30】
請求項24記載のプロセスであって、ここで高Konをもたらす前選択アミノ酸配列が、抗体の枠組み構造領域および6つのCDR領域の両方に存在することを特徴とするプロセス。
【請求項31】
請求項24記載のプロセスであって、ここで前記抗体が、段階(b)において最低10−1の親和定数について更にスクリーンされることを特徴とするプロセス。
【請求項32】
請求項24記載のプロセスであって、ここで前記抗体が、段階(b)において最低1010−1の親和定数について更にスクリーンされることを特徴とするプロセス。
【請求項33】
請求項24記載のプロセスであって、ここで前記抗体が、段階(b)において最低1011−1の親和定数について更にスクリーンされることを特徴とするプロセス。
【請求項34】
請求項24記載のプロセスであって、ここで前記高親和定数が最低1010−1であり前記高結合定数が最低5×10−1−1であることを特徴とするプロセス。
【請求項35】
高効力中和抗体を産生するための一つのプロセスであって、枠組み構造領域およびまたは最低一つのCDRが高KonCDRであり、前記CDRの存在が結果的に高Konをもたらす相補性決定領域(CDR)を包含する重鎖および軽鎖可変部より成る組換え抗体を産生することより成るプロセス。
【請求項36】
請求項35記載のプロセスであって、ここで前記組換え高Kon抗体が最低2つの高KonCDRを包含することを特徴とするプロセス。
【請求項37】
請求項35記載のプロセスであって、ここで前記組換え高Kon抗体が最低4つの高KonCDRを包含することを特徴とするプロセス。
【請求項38】
請求項35記載のプロセスであって、ここで前記組換え高Kon抗体が6つの高KonCDRを包含し、ここで前記高効力CDRが軽鎖CDRL1(CDRL1)、L2(CDRL2)、L3(CDRL3)および重鎖CDRH1(CDRH1)、H2(CDRH2)、H3(CDRH3)それぞれのうちの一つより成ることを特徴とするプロセス。
【請求項39】
請求項35記載のプロセスであって、ここで前記Konが最低5×10−1−1であることを特徴とするプロセス。
【請求項40】
請求項35記載のプロセスであって、ここで前記Konが最低7.5×10−1−1であることを特徴とするプロセス。
【請求項41】
請求項35記載のプロセスであって、ここで前記抗体がまた最低10−1の親和定数(K)を持つことを特徴とするプロセス。
【請求項42】
請求項35記載のプロセスであって、ここで前記抗体がまた最低1010−1の親和定数(K)を持つことを特徴とするプロセス。
【請求項43】
請求項35記載のプロセスであって、ここで前記抗体がまた最低1011−1の親和定数(K)を持つことを特徴とするプロセス。
【請求項44】
抗体の効力を高めるための一つのプロセスであって、前記抗体の測定されたKon値を増加させるために、抗体の可変部枠組み構造領域およびまたはCDR領域内の一つあるいはそれ以上のアミノ酸を選択的に変換することより成るプロセス。
【請求項45】
請求項44記載のプロセスであって、ここでアミノ酸変換が前記可変部のCDR部位に限定されることを特徴とするプロセス。
【請求項46】
請求項44記載のプロセスであって、ここで前記アミノ酸変換前の前記抗体の親和性が最低10−1であることを特徴とするプロセス。
【請求項47】
請求項44記載のプロセスであって、ここで前記アミノ酸変換前の前記抗体の親和性が最低1010−1であることを特徴とするプロセス。
【請求項48】
請求項44記載のプロセスであって、ここで前記アミノ酸変換前の前記抗体の親和性が最低1011−1であることを特徴とするプロセス。
【請求項49】
請求項44記載のプロセスであって、ここで前記アミノ酸変換後のKon値が最低5×10−1sec−1であることを特徴とするプロセス。
【請求項50】
請求項44記載のプロセスであって、ここで前記アミノ酸変換後のKon値が最低10−1sec−1であることを特徴とするプロセス。
【請求項51】
疾病を予防あるいは処置するための一つのプロセスであって、前記疾病の危険にあるあるいは前記疾病に苦しむ患者に、治療上効果的な量の請求項1、24、35および44の抗体より成るグループから選択された抗体あるいはその断片を投与することより成るプロセス。
【請求項52】
請求項51記載のプロセスであって、ここで前記疾病がウイルスにより引き起こされることを特徴とするプロセス。
【請求項53】
請求項52記載のプロセスであって、ここで前記ウイルスが呼吸器合胞体ウイルスおよびパラインフルエンザウイルスより成るグループから選択されることを特徴とするプロセス。
【請求項54】
請求項51記載のプロセスであって、ここで抗体あるいはその活性断片が、配列識別番号35のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変部および配列識別番号36のアミノ酸配列を持つ重鎖可変部を持つことを特徴とするプロセス。
【請求項55】
請求項51記載のプロセスであって、ここで前記抗体がFab断片であることを特徴とするプロセス。
【請求項56】
請求項4記載の高効力中和抗体であって、ここで前記抗体が最低約10−1の親和定数(K)を持つことを特徴とする抗体。
【請求項57】
最低一つの軽鎖および最低一つの重鎖を持つ高効力中和抗体であって、ここで前記軽鎖が配列識別番号:38、40、42、44、46、48、50、52および54より成るグループから選択され、前記重鎖が配列識別番号:37、39、41、43、45、47、49、51および53より成るグループから選択されることを特徴とする抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−162025(P2010−162025A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26290(P2010−26290)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【分割の表示】特願2001−564244(P2001−564244)の分割
【原出願日】平成13年3月1日(2001.3.1)
【出願人】(504333972)メディミューン,エルエルシー (108)
【出願人】(502274174)アプライド モレキュラー エボルーション,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】