説明

高効率の変換LED

白色を形成する本発明の変換LEDは、LuAGaGタイプの第1の発光材料と、ニトリドシリケートタイプの第2の発光材料とを有する発光材料混合物を有する。これにより、極めて高い効率が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載した変換LEDを出発点とする。このような変換LEDは、殊に一般照明に適している。
【0002】
従来技術
US 6 649 946からは、白色LEDを得るためにSr2Si5N8:Euと共に青色チップを使用する変換LEDが公知であり、ここでは色の再現を改善するため、付加的な発光材料としてYAG:Ceも使用される。しかしながらこれでは、あまり効率的ではないLEDしか実現することができない。
【0003】
US-B 7 297 293からは、白色LEDを得るために(Sr,Ca)2Si5N8:Euと共に青色チップを使用する変換LEDが公知であり、ここでは色の再現を改善するため、付加的な発光材料としてYAG:Ceならびに類似の発光材料も使用される。この類似の発光材料では、YがGdによって部分的に置換されるか、ないしはAlがGaによって部分的に置換される。しかしながらこれでは、あまり効率的ではないLEDしか実現することができない。
【0004】
EP-A 1 669 429からは、白色LEDを得るため、(Sr,Ba)2Si5N8:Euタイプの特殊な発光材料と共に青色チップを使用することが公知であり、ここでは色の再現を改善するために付加的な発光材料としてLu−AG:Ce、ならびにCeおよびPrによってコドーピングされた類似の発光材料も使用される。
【0005】
発明の説明
本発明の課題は、高い効率を備えた変換LEDを提供することであり、ここでこの変換LEDにより、殊に長い有効寿命が得られる。
【0006】
この課題は、請求項1の特徴部分に記載した構成によって解決される。
【0007】
殊に有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明により、今や高効率の変換LEDが提供される。例えば少なくとも250mA、有利には少なくとも300mA、特に有利には少なくとも350mAの大電流において動作するLED、いわゆる高出力LEDにおいて、すべての発光材料が安定しているわけではない。この問題は殊に、ニトリドシリケートM2Si5N8:Euなどの窒化物または酸窒化物の発光材料に当てはまる。例えば付活剤としてDを有するM2Si5N8:Dタイプの窒化物などの上記のような多くの発光材料では、LEDにおける動作時に大きな変換損失が問題である。700mAまでの連続電流による耐久テストでは、上記のような発光材料を有する白色LEDでは、短時間(ふつう1000時間)で50%までの変換効率が失われてしまう。このことは、色位置の著しい不安定さに結び付いてしまうのである。
【0009】
白色LEDは、一般照明においてますますその重要度が増している。例えば、有利には2900ないし3500Kの範囲にあり、殊に2900ないし3100Kである低い色温度と、例えばRaが少なくとも93、有利には少なくとも96である良好な色再現と、同時に高い効率とを有する温白色LEDに対する要求は、増大している。この目標はふつう、青色LEDと、黄色および赤色発光材料とを組み合わせることによって達成される。上記のすべての解決手段のスペクトルは、青色−緑色のスペクトル領域に、極めて少ないビームしか放射されない領域(青色−緑色−ギャップ)を有しており、これによって色再現性が不完全になってしまうのである。補償を行うため、ふつうは極めて波長の長い青色LEDを使用する(約460nm)。しかしながらチップ技術の側から有利であるのは、一層チップ波長の短いLEDを使用することである。それは、このようなチップは、各段に効率が良いからである。望ましいのは430ないし455nm、殊に435ないし445nmの波長(ピーク)である。
【0010】
比較的波長の長い青色LEDと、黄色および赤色発光材料とからなる従来の組み合わせの場合のように、全体スペクトルの青色−緑色の部分が実質的に青色LEDだけで定まる場合、この白色LEDの全体CRIは、使用するチップ波長に大きく依存する。しかしながら技術的な理由から、実際には1つの製品においてチップ波長の比較的幅広い領域がつねに使用されるため、CRIにおいて大きな変動が発生することになる。さらに上記の発光材料は、例えば、酸素、湿気、注形材料との相互作用などの化学的な影響に対し、ならびにビームに対して高い安定性を有しなければならない。さらにシステム温度が上昇した場合に、安定した色位置を保証するため、極めて温度消光が小さい発光材料が必要である。
【0011】
これまでの最も効率の高い温白色の解決手段は、YAG:Ce、またはAlおよびGaを同時に含むYAGaG:Ceなどの黄色のガーネット発光材料と、(Ba,Sr,Ca)2Si58:Euなどのニトリドシリケートとの組み合わせをベースにしている。十分に良好な色再現性を達成するため、ここでは極めて波長の長い青色LED(約455ないし465nm)を使用することが必要であるが、これによってシステム効率は、格段に制限されてしまう。しかしながら従来の発光材料を用いて430ないし450nmの比較的短いチップ波長を使用する際、有利には445nmのチップ波長を使用する際には、色再現性は、殊に青色−緑色のスペクトル領域において不十分である。さらにCRIが青色波長に大きく依存することにより、製品内でCRIの大きな変動が発生ししまう。上記のLEDにおける従来の解決手段の安定性は、かろうじて間に合っているという状態である。ここでは、例えば少なくとも250mA、有利には少なくとも300mA、殊に有利には少なくとも350mAである大電流時において上記の安定性は危機的である。それは、熱負荷がますます増大するからである。
【0012】
この新しい解決手段は、緑色ないし緑−黄色を放射するガーネット発光材料と、波長が短く狭帯域の橙色−赤色を放射するニトリドシリケート発光材料との組み合わせからなる。上記の緑色ガーネット発光材料は、従来使用されていた黄色(YAG)ないしは緑色−黄色(YAGaG)ガーネットに比べて、緑色に大きくシフトされた放射を示し、同時に励起最適値は波長の短い方に大きくシフトしている。ガーネットがこのように緑色にシフトすることにより、白色スペクトルにおいて上記の青色−緑色ギャップが格段に小さくなるのである。
【0013】
このような特性に起因して、格段に波長の短いLED(これまでの解決手段における455nmではなく約435nmないし445nmピーク波長)を使用することができ、さらに同時に80を上回る白色LEDのCRIを達成することができる。さらに新たに開発した発光材料混合物の固有のスペクトル特性により、CRIは、青色LED波長の幅広い領域にわたってほぼ一定のままであり、これにより、1つの"LED−Bin"内で均一な色品質が保証される。さらに新たに開発した、発光材料の上記の組み合わせは、極めて高い化学的安定性およびフォト化学的安定性と、極めて小さい温度消光とが優れている。
【0014】
この決定的な進歩の本質は、応用的な観点から中心的である一層多くの特性が同時に改善されたことにある。すなわち、経年変化安定性、効率、使用可能なチップ波長領域および発光材料の温度安定性などの特性が同時に改善されたのである。有利には2900ないし3500Kの範囲、殊に2900ないし3100Kの範囲の色温度が低い従来公知の温白色解決手段と、この新しい解決手段と違いは、つぎの通りである。すなわち、
− 緑色に極めて大きくシフトさせられたガーネット発光材料。これによってつぎのような利点が得られる。すなわち、CRI,目による評価、温度安定性;λdomは、有利には552ないし559nmにあるようにし、(435nmにおける励起を基準にして)FWHMは、有利には105ないし113nmにあるようにする。
【0015】
− 430ないし450nmピーク波長の極めて短いチップ波長。これにより、高い効率性の観点から大きな利点が得られる。
【0016】
− 短い波長で放射しかつ狭帯域幅の赤色発光材料;λdomは有利には596ないし604nmにあるようにし、(435nmにおける励起を基準として)FWHMは有利には100nmよりも小さく、殊に有利には90nmよりも小さくなるようにする。これによって上記のLEDの寿命、目による評価という利点が得られるのであるし。
【0017】
本発明の重要な特徴は、番号の付いたリストの形成で示すと、
1. 1次ビームを放射するチップと、このチップに前置されかつ発光材料を含む層と有する変換LED。ここでこの層は、チップの1次ビームの少なくとも一部を2次ビームに変換し、ここではガーネットタイプA3B5O12:Ceの黄色−緑色を発光する第1の発光材料と、ニトリドシリケートタイプM2X5Y8:Dの橙色−赤色を発光する第2の発光材料とが使用され、上記の1次ビームのピーク波長が、430ないし450nmの領域、殊に445nmまでの領域にあるのに対し、第1の発光材料は、カチオンA=Luを有するガーネット、またはYの割合が30%までのLuとYとの混合物であり、BはAlおよびGaの成分を同時に有しているのに対し、第2の発光材料は、ニトリドシリケートであり、該ニトリドシリケートには、カチオンMとしてBaとSrとが同時に含まれており、上記のドーピングはEuからなり、上記の第2の発光材料には、成分Mにおいて35ないし75モル%のBaが含まれており、残りはSrであり、ただしX=SiおよびY=Nが成り立つ。
【0018】
2. 請求項1に記載の変換LEDにおいて、上記の第1の発光材料は、成分Bが10%から、有利には15%から、40モル%のGaを含み、有利には35%までのGaを含み、殊に20ないし30%のGaを含み、残りはAlである。
【0019】
3. 請求項1に記載の変換LEDにおいて、上記の第1の発光材料は、成分Aにおいて1.5%ないし2.9モル%のCe、殊に1.8ないし2.6モル%のCeが含まれており、残りはA、殊にLuまたは25%までのY成分を有するLuである。
【0020】
4. 請求項1に記載の変換LEDにおいて、上記の第2の発光材料には、成分Mにおいて35ないし65モル%のBaが、殊に40ないし60%のBaが含まれており、残りはSrであり、ただしX=SiおよびY=Nが成り立つ。
【0021】
5. 請求項1に記載の変換LEDにおいて、第2の発光材料には、成分Mにおいて1ないし20モル%のEuが、殊に2ないし6%のEuが含まれており、残りは(Ba,Sr)である。
【0022】
6. 請求項1に記載の変換LEDにおいて、上記の第2の発光材料は、(Sr0.48Ba0.48Eu0.04)2Si5N8である。
【0023】
7. 請求項6に記載の変換LEDにおいて、上記の第1の発光材料は、A3B5O12であり、ただしA=75ないし100%のLu、残りはYおよび1.5%ないし2.5%のCeが含有されており、B=10ないし40%のGa、残りはAlである。
【0024】
8. 請求項7に記載の変換LEDにおいて、上記の第1の発光材料は、A3B5O12であり、ただしA=80ないし100%のLu、残りはYおよび1.5%ないし2.5%のCeが含有されており、B=10ないし40%のGa、残りはAlである。
【0025】
9. 請求項8に記載の変換LEDにおいて、上記の第1の発光材料は、(Lu0.978Ce0.022)3Al3.75Ga1.25O12である。
【0026】
以下では、複数の実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】変換LEDを示す図である。
【図2】緑色を放射する種々異なる発光材料の温度依存性の比較を示す線図である。
【図3】赤色を放射する種々異なる発光材料の温度依存性の比較を線図である。
【図4】種々異なるEuのドーピング含有率に対し、Baの割合の関数としてニトリドシリケートの効率損失の比較を示す線図である。
【図5】種々異なる負荷シナリオの下で、Baの割合の関数としてニトリドシリケートの効率損失の比較を示す線図である。
【図6】種々異なる発光材料に対し、負荷を与える前および与えた後の変換損失の比較を示す線図である。
【図7】種々異なる発光材料に対し、変換器損失の時間依存性の比較を示す線図である。
【図8】種々異なる発光材料混合物に対し、1次励起の波長がシフトした場合のCRIの比較を示す線図である。
【図9】種々異なる1次放射における変換LEDの全体放射の比較を示す線図である。
【図10】1次放射(Ex)の種々異なるピーク位置において、LuAGaGないしはYAGaGないしは混合SiONの放射の比較を示す線図である。
【図11】1次放射(Ex)の種々異なるピーク位置において、LuAGaGないしはYAGaGないしは混合SiONの放射の比較を示す別の線図である。
【図12】1次放射(Ex)の種々異なるピーク位置において、LuAGaGないしはYAGaGないしは混合SiONの放射の比較を示すさらに別の線図である。
【図13】離れて取り付けられた発光材料混合物を有するLEDモジュールを示す図である。
【図14】種々異なる含有率でYを含むLuガーネットにおける放射の比較を示す線図である。
【0028】
本発明の有利な実施形態
図1には、RGBベースの白色光用の変換LEDの構造が示されており、この構造はそれ自体公知である。この光源は、動作電流350mAの大電流形InGaNタイプの青色発光チップ1を有する半導体素子である。このチップは、430ないし450nmピーク波長、例えば435nmのピーク放射波長を有しており、また凹部9の領域において光非透過ベースケーシング8に埋め込まれている。このチップ1は、ボンディングワイヤ14を介して、第1の接続部3に接続されており、また第2の電気的な接続部2に直接接続されている。凹部9は、注型材料5で充填されており、この注型材料は、主成分として(70ないし95重量%の)シリコーンおよび(30重量%より少ない)発光材料顔料6を含有する。第1の発光材料は、緑色を放射するLuAGaG:Ceであり、第2の発光材料は、赤色を放射するニトリドシリケートSrBaSi5N8:Euである。凹部は壁部17を有しており、この壁部は、チップ1ないしは顔料6からの1次ビームおよび2次ビームに対する反射器として使用される。
【0029】
図2には黄色−緑色を放射する種々異なる発光材料の温度消光特性が示されており、これらは基本的に図1のチップによって良好に励起することができる。発光材料A3B5O12:Ceは、温度消光が極めて小さいという特徴を有する。ここでAは主にLuであり、この実施形態において、成分Bに対して約25%の割合のGa(有利には10ないし40%のGaの割合、殊に有利には15ないし30%のGaの割合)と、約2.2%のCe(有利には1.5ないし2.9%のCe,殊に有利には1.8ないし2.6%のCeそれどれ成分Aを基準にしたもの)とを有する有利な組成LuA−GaG、すなわちLu3(Al,Ga)5O12:Ceを有する。有利な発光材料は、(Lu0.978Ce0.022)3Al3.75Ga1.25O12である。これについては曲線1を参照されたい。このグラフには、格段に悪い温度消光特性を示す別の黄色および緑色の発光材料との比較が示されている。オルトシリケート(曲線3,4)は全く不適切であるが、YA−GaG(曲線2)も使用できない。
【0030】
図3には、橙色−赤色を放射する種々異なる発光材料の温度消光特性が示されており、これらは、基本的に図1のチップによって良好に励起することができる。有利な組成(Sr,Ba)2Si5N8:Euを有するニトリドシリケートタイプM2Si5N8:Euの上記の新たな発光材料の特徴は、極めて温度消光が低いことであり、ここでこの発光材料は、約50%のBa((x=0.5);一般的には有利にはx=0.35ないし0.75,殊に有利にはx=0.4ないし0.6)および約4%のEu((y=0.04);一般的にはMにおけるEuの割合はx=0.01ないし0.20であり、殊に有利にはx=0.02ないし0.06を有する。適しているのは、x=0.4ないし0.6を有する(Sr1-x-y/2Bax-y/2Euy2Si58のタイプのニトリドシリケートであり、これについては曲線1を参照されたい。このグラフには、別の橙色/赤色の発光材料との比較が示されている。明らかに適していないのは、x=0.25およびx=0.75を有するニトリドシリケートであり、これについては曲線2および3を参照されたい。Caニトリドシリケート(曲線4)とオルトシリケート(曲線5)は適していない。
【0031】
図4には酸化−安定性テストの結果が示されている。ここでは、Ba含有量を変化させて系(Sr,Ba)2Si5N8:Euの安定性を求めた。このためにまず試料の特性を決定し、引き続いて空気中で150℃において68時間だけ焼成し、続いて再度特性を決定した。異なる時点における2つの効率の差分により、効率損失が得られる。最良の発光材料は、測定誤差の枠内で完全に安定している。ここでは、Eu割合がMの約4%である場合において、約45ないし53%のBaを有する発光材料、例えば発光材料(Sr0.48Ba0.48Eu0.04)2Si5N8が有利である。
【0032】
図5にはLED経年変化テストの結果が示されている。ここでは、Ba含有量xを変化させて系(Sr,Ba)2Si5N8:Euの安定性を求めた。ここでは、各発光材料を分散させた(約435nmにおけるλpeak)青色高出力LEDをシリコーンに注形して、これを350mAにおいて1000分間動作させた。上記のテストのはじめおよび終わりに、発光材料ピークならびに1次放射の青色LEDピークの相対強度を測定し、ここから青色LEDピークの強度に対する変換効率の損失を求めた。図5(四角の測定点)においてバリウム含有量が増大するのに伴って安定性が一義的に増大することがわかる。約50%のBaおよび約4%のEuを有する、最適であることが判明した発光材料((Sr0.48Ba0.48Eu0.04)2Si5N8,L358)は、測定誤差の枠内で完全に安定している。別のテスト(1000時間,10mA,85%の相対湿度,85℃)において同じ傾向(三角形の測定点)が示された。
【0033】
図6には、LED経年変化テスト(1000時間,10mA,85%の相対湿度、85℃)においてλdom<605nmの狭帯域放射を有する3つの赤色発光材料系の比較が示されている。第1のバーは、Sr成分を有するCalsinを示しており、第2のバーは、本発明による最もよい発光材料を示しており、これは、同じ割合SrおよびBaを有する混合ニトリドシリケートであり、また第3のバーは、純粋なSr−ニトリドシリケートの特性を示している。このニトリドシリケートは、測定誤差の枠内で完全に安定であるのに対し、上記の比較対象の系は、極めて大きく経年変化する。
【0034】
図7には、黄色−緑色成分の安定性が示されている。LED経年変化テストにおいて、有利な組成(約25%のGaおよび約2.2%のCeを有するLu−AGaG(Lu0.978Ce0.022)3Al3.75Ga1.25O12))を有する上記の新たな緑色発光材料の安定性を求め、別の公知の黄色/緑色発光材料と比較した。ここでは、各発光材料が分散された青色高出力LED(λpeak=435nm)をシリコーンにポッティングして、これを350mAにおいて1000分間動作させた。青色LEDピークならびに発光材料ピークの相対強度をはじめおよび終わりに測定して、ここから変換効率の損失を求めた。この新たなLuAGaG発光材料は、測定誤差の枠内で完全に安定であるのに対し(四角の測定点)、相応する条件下でオルトシリケートは、はっきりとした経年変化現象を示す(丸の測定点)。
【0035】
橙色−赤色を伴う黄色−緑色の本発明による新たな発光材料混合物を有する温白色LEDの色再現は実質的には、使用したLED波長には依存しない。青色波長を9nmだけシフトすることにより、1ポイントのCRI損失しか生じない。従来の混合物のこれに対応する例では、青色波長が7nm違っただけで5ポイントが損失される(表1を参照されたい)。CRI損失を1ポイントだけ低減するため、第3の発光材料を添加しなければならないが、このことは上記の効率および色操作(Colour-Steerging)にマイナスに影響する。
【0036】
【表1】

表1:ここでCRIは、演色指標を表す。
【0037】
図8には種々異なる系に対して演色指数(CRI)Ra8が示されている。本発明による新たな発光材料混合物(パターン1および2)を有する温白色LEDの色再現は実質的には、使用するLED波長には依存しない。青色波長を9nmだけシフトすることにより、1ポイントのCRI損失しか生じない(四角の測定点)。従来の混合物の比較例では、すでに青色波長が7nmだけの違った場合に5ポイントを損失する(丸の測定点、表のVGL1およびVGL3を参照されたい)。CRI損失を1ポイントだけ低減するため、第3の発光材料を添加しなければならない(VGL2)が、このことは上記の効率および色操作(Colour-Steerging)にマイナスに影響する。別の比較例(菱形の測定点)は、Sr−Baニトリドシリケートを有する黄色−緑色成分としてのYAGに関するものである。驚いたことにも、この系は本発明による類似の系よりも格段に不良であり、3発光材料変形形態と同様に不良である(VGL2)。
【0038】
図9には、演色指数CRIが(ほぼ完璧に)青色波長に依存しないことの原因が説明されている。本発明による系において発光材料の放射は、驚いたことにも励起波長が短くなるのに伴い、短い波長の方に大きくシフトする。これにより、スペクトル全体において所定の補償が行われる。波長の短いLEDを使用することによって欠落していた青色−緑色部分は、シフトされた発光材料の放射の青色−緑色部分が増強されることにより、ちょうど補償される。
【0039】
図10には、430ないし470nm(Ex430ないし470)の可変の励起波長を有する緑色−黄色発光材料の発光材料スペクトルがシフトする際の相対強度が、YAGaG:Ce(図11)および黄色の(Sr,Ba)Si2O2N2:Eu(図12)と比較して示されている。
【0040】
驚いたことにも上記の新たな緑色LuAGaGガーネットは、比較対象の発光材料とはまったく異なる振る舞いをする。ここでは励起波長が低くなるのに伴って緑色の方に大きくシフトすることが示されている。比較対象の発光材料はほぼ一定のままである。ここでは上記の3つの発光材料の放射スペクトルが、LED応用に対して関心対象となる430ないし470nmの青色波長において比較されて示されている。
【0041】
図12の複数の曲線は実際上すべて重なっているため、1つの曲線だけが示されている。
【0042】
場合によっては混合物としてYを30モル%まで含有するルテチウム−ガーネットを使用するにより、(放射スペクトルの形状が変わることに起因して)全体的に色再現性に大きくプラスに作用する。Yガーネットを使用することにより、Luガーネットによって実現可能な色再現性のこのような高い値は得られない。種々異なる混合物の詳細は、表2に示されている。Gdは、基本成分としてはまったく不適正であり、TbまたはLaと同様にせいぜい微調整を行うため、成分Aの5モル%までの少量で添加すべきである。これに対して約30%までのY成分、有利には10ないし25%の割合を有するY成分は、Luに対する良好な補足物である。その原因は、LuおよびYのイオン半径が相対的に類似していることである。Yの値をより一層高くすると、上記の発光材料の放射は、全体系の所望の性能を損ない得る領域に再びシフトしてしまうことになる。類似の発光材料放射波長を有するイットリウム−ガーネットとの比較において(パターンVGL1ないしVGL4)、また驚いたことにも類似の発光材料主波長においても(パターンVGL3およびVGL4)、パターン1ないし3において格段に大きい色再現値Ra8が得られる。これについては表2を参照されたい。これにより、また短い波長において良好に励起が行われることにより、高効率かつ波長の短い青色LEDをはじめて変換LEDに使用することができるのである。
【0043】
【表2】

表2
【0044】
基本的には上記の発光材料混合物を分散剤、薄膜などとして上記のLEDに直接に使用することも、またそれ自体公知のように別個でありかつLEDに前置接続された支持体に使用することも可能である。図13には、基体プレート21上に種々異なる複数のLED24を有するこのようなモジュール20が示されている。この基体プレートの上には側壁22およびカバープレート12を有するケーシングが取り付けられている。ここでは上記の発光材料混合物が層25として上記の側壁上にも、殊に、透明であるカバープレート23上にも付け加えられている。
【0045】
ニトリドシリケートタイプM2Si5N8:Euの発光材料という表記には、単純なニトリドシリケートの変種も含まれており、ここではSiは部分的にAlおよび/またはBによって置換することができ、Nは部分的にOおよび/またはCによって置換することができるため、このような置換によって電荷中立性が保証される。変性させたこのようなニトリドシリケートはそれ自体公知であり、これについては、例えばEP-A 2 058 382を参照されたい。形式的にはこのようなニトリドシリケートをM2X5Y8:Dと書き表すことができ、ただしM=(Ba,Sr)およびX=(Si,A,B)およびY=(N,O,C)でしあり、またD=Eu単独であるかまたはコドーピングを有する。
【0046】
表3には、(Lu,Y)から選択されたAを有する系A3B5O12:Ceからなる種々異なるガーネットが示されている。ここで判明したのは、A=70%Luまででありかつ残りがYであるA=Luに対し、良好な値を得ることができることである。同時に成分Bに対しては、AlとGaとの比を注意深く選択しなければならない。Gaの割合は、10ないし40モル%、殊に10ないし25%の間になければならない。表7では種々異なる(Lu,Y)−ガーネットA3B5O12:Ceが示されており、付活剤Ceの濃度はそれぞれAの2%であり、A=Lu,Y(Luの割合が示されており、残りはYである)またB=Al,Ga(Gaの割合が示されており、残りはAlである)が選択されている。純粋なLuAG:CeまたはYAG:Ceは適切でない。またはPrの添加は、上記の発光材料の効率を大きく損なうため、できる限り回避すべきである。
【0047】
図14には、Yの割合を変化させた種々異なるガーネットに対する放射スペクトルが示されている。ここに示されているのは、割合の小さなYに対してこの放射が、ほとんど一定のままであることである。
【0048】
表4には、段階的にGaの割合を高めた純粋なLuAGAG発光材料が示されている。別の複数の表もそうであるが、これらの表の値はつねに基本的に460nmにおける同じ1つの基準励起についてものである。
【0049】
表3:(Lu,Y)−ガーネットA3B5O12:Ce
【表3】

【0050】
表4:Lu(Al,Ga)−ガーネットA3B5O12:Ce(いわゆるLuAGAG)
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換LEDであって、
当該変換LEDは、
青色の1次ビームを放射するチップと、
当該チップに前置されかつ発光材料を含む層と有しており、
当該層は、前記チップの1次ビームの少なくとも一部を2次ビームに変換する層であって、
ガーネットタイプA3B5O12:Ceの黄色−緑色を発光する第1の発光材料と、ニトリドシリケートタイプM2X5Y8:Dの橙色−赤色を発光する第2の発光材料とが使用される、変換LEDにおいて、
前記1次ビームのピーク波長が、430ないし450nmの領域、殊に445nmまでの領域にあるのに対し、前記第1の発光材料は、カチオンA=Luを有するガーネット、またはYの割合が30%までのLuとYとの混合物であり、
Bは同時にAlおよびGaの成分を有しているのに対し、前記第2の発光材料は、ニトリドシリケートであり、該ニトリドシリケートには、カチオンMとして同時にBaとSrとが含まれており、ドーピングはEuからなり、
前記第2の発光材料には、成分Mにおいて35ないし75モル%のBaが含まれており、残りはSrであり、ただしX=SiおよびY=Nが成り立つことを特徴とする
変換LED。
【請求項2】
請求項1に記載の変換LEDにおいて、
前記第1の発光材料は、成分Bにおいて10%から、有利には15%から、40モル%まで、有利には35%までのGaを含み、殊に20ないし30%のGaを含み、残りはAlであることを特徴とする、
変換LED。
【請求項3】
請求項1に記載の変換LEDにおいて、
前記第1の発光材料は、成分Aにおいて1.5%ないし2.9%のCe、殊に1.8ないし2.6モル%のCeが含まれており、残りはA、殊にLuだけ、または25%までのY成分を有するLuであることを特徴とする
変換LED。
【請求項4】
請求項1に記載の変換LEDにおいて、
前記第2の発光材料には、成分Mにおいて35ないし65モル%のBaが、殊に40ないし60%のBaが含まれており、残りはSrであり、ただしX=SiおよびY=Nが成り立つことを特徴とする
変換LED。
【請求項5】
請求項1に記載の変換LEDにおいて、
前記第2の発光材料には、成分Mにおいて1ないし20モル%のEuが、殊に2ないし6%のEuが含まれており、残りは(Ba,Sr)であることを特徴とする、
変換LED。
【請求項6】
請求項1に記載の変換LEDにおいて、
前記第2の発光材料は、(Sr0.48Ba0.48Eu0.04)2Si5N8であることを特徴とする、
変換LED。
【請求項7】
請求項6に記載の変換LEDにおいて、
前記第1の発光材料は、A3B5O12であり、
ただし
A=75ないし100%のLu、残りはY
1.5%ないし2.5%のCeが含有されており、
B=10ないし40%のGa、残りはAlであることを特徴とする
変換LED。
【請求項8】
請求項7に記載の変換LEDにおいて、
前記第1の発光材料は、A3B5O12であり、
ただし
A=80ないし100%のLu、残りはY
1.5%ないし2.5%のCeが含有されており、
B=15ないし30%のGa、残りはAlであることを特徴とする
変換LED。
【請求項9】
請求項8に記載の変換LEDにおいて、
前記第1の発光材料は、(Lu0.978Ce0.022)3Al3.75Ga1.25O12であることを特徴とする
変換LED。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−502710(P2013−502710A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525134(P2012−525134)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061674
【国際公開番号】WO2011/020751
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(508096703)オスラム アクチエンゲゼルシャフト (92)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM AG
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Str. 1, 81543 Muenchen Germany
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】