説明

高効率常温熱エネルギーの回収法及び回収装置

【課題】常温のあらゆる熱源から従来の熱機関よりも効率的に熱エネルギーを回収できるようにすること。
【解決手段】従来の熱機関では高熱源より熱エネルギーを回収し、低熱源へ排熱しその過程で熱エネルギーの一部を運動エネルギーや電気エネルギーに変換していたが、本発明は常温の熱源から気化潜熱を回収し力学的エネルギーに変換し、その過程でエントロピーの増大を極力防ぐ工夫をし、従来の熱機関よりも効率よく熱エネルギーを力学的エネルギーや電気エネルギーに変換する再生可能エネルギーの回収法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生可能エネルギーの回収法、および熱機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自然の熱エネルギーの回収法としては身近なものにヒートポンプエアコンやエコ給湯や太陽熱温水器などがある。
【0003】
又、再生可能エネルギーの回収法で且つ大規模な熱機関であるものは、海洋温度差発電、太陽熱発電などがある。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2011年3月11日の大地震は原子力発電の脅威を全世界に知らしめ、又化石燃料の使用による地球温暖化は、人類のみならず地球に住む生物全体に大きな影響を与えてきている。人類は今こそ地球にやさしいクリーンで安全な再生可能エネルギーの開発が急務である。
【従来の技術的な問題点】
【0006】
熱機関においてエネルギーの回収法として代表的なものに火力発電や原子力発電などがあるが、これらは火力や原子力で高温高圧の水蒸気を作りその蒸気でタービンを回し発電する方法であるが、熱エネルギーをいったん運動エネルギーに変換し仕事をさせ、電気エネルギーとして回収しているが、物理的に束縛された系から内部エネルギーを解き放ち運動エネルギーに変換する際エントロピーの増大などにより、今までの技術では熱エネルギーの回収効率を上げる事が困難であった。通常の火力発電や原子力発電では熱エネルギーの30パーセントから40パーセント程度の回収効率でしかない。
【0007】
また、自然界に存在する常温の熱エネルギーを回収する方法として海洋温度差発電があるが、火力発電や原子力発電と比べると熱エネルギーの回収効率はさらに悪く、低温低圧な蒸気圧と高熱源と低熱源両方の海水の供給に大きなエネルギーロスが発生し、実質回収効率はかなり低く火力発電や原子力発電にとって代わるものでない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
地球上には毎日膨大な量の熱エネルギーが太陽から供給されている。そしてその熱エネルギーは大気や海水の循環により地球上に満弁なく分布し、熱エネルギーとして保存されている。電気エネルギーは保存するのに電池など特別な装置が必要となり、小型の電池は開発がかなり進んではいるが、大量に使用する電気を蓄電する技術は難しく費用もかさむ。しかし、熱エネルギーを容易に力学的エネルギーや電気エネルギーに変換することが可能な装置を作れば、大型の電池などを作らなくても熱エネルギーのままいくらでも自然界に保存しておくことができるのである。
【0009】
本発明はこの地球上どこにでも存在する大気や海水、湖水、地下水、砂、大地など自然に存在する常温の熱エネルギーを従来の熱機関とは比較にならないほどエントロピーの増大を抑えるよう工夫された熱エネルギー変換装置で熱エネルギーを直接力学的エネルギーに変え回収し、電気エネルギーや運動エネルギーとして非常に効率よく供給ができるようにした点である。
【0010】
又、通常の熱機関では高熱源より熱エネルギーを吸収し作動流体を気化させ、その過程で熱エネルギーの一部を運動エネルギーに変換して回収し、仕事を終えた作動流体を低熱源へ排熱し再び液化させることによりサイクルを一巡させていたが、本発明は常温の熱源から作動流体の気化潜熱を吸収し、その過程で熱エネルギーを力学的エネルギーに変換し効率よく回収し、仕事を終えた作動流体を加圧しながら冷却して熱エネルギーを常温へ放出し易くする方法により、常温へ液化潜熱を放出させサイクルを一巡する仕組みを考案した点である。
【0011】
このことにより他の再生可能エネルギーの欠点である自然環境に左右されることなく安定した熱エネルギーをいつでもどこでも回収できるようにしたことである。
【0012】
又、常温で気体になり加圧冷却すると容易に液体になる作動流体は常温での蒸気圧は火力発電や原子力発電などの蒸気圧と比べると格段に低く、タービンなどによるエネルギー変換装置では熱エネルギーの持つエントロピー増大の法則により、エントロピーの増大が避けられずに、エネルギーの回収効率を大きく落としていた。
【0013】
本発明はこの点にも着目し、気体の持つ熱エネルギーを従来なら熱エネルギーから運動エネルギーへ変換してさらに電気エネルギーに変換して回収していたが、本発明は熱エネルギーから直接力学的エネルギーに変換し、その後運動エネルギーや電気エネルギーに変換することにより、エントロピーの増大をできるだけ小さく抑えるように工夫し、従来の熱機関より熱エネルギー変換効率を格段に良くし、常温熱の低圧力の作動流体でもトルクの大きいエネルギー変換装置を作ることができ、装置の小型化も可能にした点である。
【発明の効果】
【0014】
本発明を従来の火力発電所や原子力発電所に併設や置き換えることにより、新たなインフラ整備をしなくても、熱エネルギー回収効率を大幅に引き上げることができ、燃料費の負担もなく安全な電力供給が可能となる。
【0015】
又、本発明は小型化も可能なので太陽光発電のように家庭用から工業用まで電源の分散化ができ電力供給の分散化の面でも有効で、電力会社に大きく依存しなくても安定した電力が供給でき、従来の再生可能エネルギーのように天候に大きく左右されない安定した電力供給ができる点で他の再生可能エネルギーの回収法より優れた点が多くある。
【0016】
又、自然界に存在する常温の熱源だけでなく、人間活動で生み出される排熱の回収にも利用できるので、今までの熱機関と併設すれば今までの熱機関で捨てていた排熱を大きく回収することができる。火力発電所や原子力発電所でも50パーセントほどの排熱が海などに捨てられているので、これを回収するだけでも大きなメリットがある。
【0017】
又、水力発電などと併設すれば位置エネルギーの回収と共に湖水の熱エネルギーの回収も同時にでき、従来の設備に加えて格段に発電効率を上げることができる。
さらに風力発電や太陽光発電なども蓄電が難しいのでいったん熱エネルギーや位置エネルギーに変換をして保存すれば、今までの再生可能エネルギーの不安定供給が平準化される。
【0018】
回収した熱エネルギーは発電だけでなく船や列車、自動車などの交通機関の動力源としても利用でき、又、工場や商業施設、一般家庭の動力源としても利用できる。海水の熱エネルギーを動力源とした船などはどこまでも走ることができる。
【0019】
本発明は熱力学の第2種の永久機関のように思われがちであるが、第2種の永久機関とは「他に何の変化も残さずにただ一つの熱源から熱を取り出し、それをすべて仕事に変え周期的に動く機械」と定義してあるので、本発明は明らかに熱力学の第2種の永久機関ではなく、「他に何の変化も残さずに」の部分に大きな工夫がなされているので、第2種の永久機関ではないことが証明できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 図1はこの発明を実施するための基本的な構成図である。
【0021】
【図2】 図2は熱源水を高位置に置くことにより、位置エネルギーを利用しシステム全体で消費されるエネルギーを大幅に削減する構造図である。
【0022】
【図3】 図3は断熱シリンダーを複式にし、熱供給シリンダーをタービン発電と膨張室に置き換えた構造のものである。
【0023】
【図4】 図4は大気熱を熱源とした回収法で気化器や凝縮器に空冷の物を使用した構造図である。
【発明の実施例1】
【0024】
図面1において本発明の作動工程を説明する。
【0025】
自然界における常温熱源の回収時には常温常圧下で気体であるが、加圧や冷却することにより液化する作動流体であるフロン、代替フロン、プロパン、ブタン、アンモニアなどの作動流体(1)を使い実施する。
【0026】
まず作動流体(1)は液送ポンプ(2)循環パイプ(3)を通り蒸発器(4)に送りこまれ海水などの常温熱源より気化潜熱を吸収する。
【0027】
気化潜熱を吸収しエンタルピーの増加した作動流体ガス(1)は蒸発器(4)内で気液平衡状態になっており、気化した高圧の作動流体ガス(1)は開閉バルブ1(5)を通ってエネルギー変換装置の断熱シリンダー(6)内に導かれ、蒸発器(4)から送り込まれた作動流体ガス(1)の体積×蒸気圧の力学的仕事をし、断熱シリンダー(6)内のピストン(8)を押す。
【0028】
次に開閉バルブ1(5)と開閉バルブ2(14)は閉じられ断熱シリンダ内の作動流体(1)の内部エネルギーにより、熱供給シリンダー(7)内で熱エネルギーの供給を外部から受けながら膨張し、ピストン(8)を押してさらに力学的仕事をする。
【0029】
ピストン(8)に連動したピストン連結軸(9)はその仕事をギアボックス(10)に伝え、さらに発電機又は動力源機(11)に伝え運動エネルギーや電気エネルギーに変換してエネルギーを外部へと供給する。
【0030】
仕事を終え減圧された作動流体(1)は開閉弁2(14)が開かれ作動流体加圧ポンプ(15)に導かれ、圧縮されながら凝縮器(16)へと送られる。
【0031】
凝縮器(16)に入った作業流体ガス(1)は加圧冷却されながら再び液化する。
【0032】
液化した作動流体(1)は開閉弁3(17)を通り作動流体液体タンク(18)へと戻され一巡する。
【0033】
熱源水(21)の循環は熱源水循環ポンプ1(19)によってまず蒸発器(4)に送られ、作動流体(1)に気化潜熱を吸収され、温度が低下した状態で凝縮器(16)へ送られる。凝縮器(16)へ送られた熱源水(21)は作業流体(1)の液化潜熱を吸収し排出される。
【0034】
又、熱供給シリンダー(7)内への熱源水(21)の供給は、作動流体ガス(1)の膨張時に作動流体ガス(1)の自己冷却に伴う圧力低下や体積の減少を防ぐために行われるが、これは熱供給シリンダ(7)内でエントロピーの増加を抑える働きがあり、また熱源水(21)は熱供給シリンダ(7)内を循環する間に冷却され、冷熱源として回収される。
【0035】
これで一つの循環サイクルが終了するが、実際にはこのサイクルを複数並列に設置し、連動することにより連続した安定運転となり安定したエネルギー供給ができる。
【発明の実施例2】
【0036】
図1のシステム運用の問題点としては、大量に使用される熱源水(1)の循環の為のエネルギーである。海洋温度差発電でも温水と冷水の循環の為に多くのエネルギーを消費し回収エネルギーをロスしている。
【0037】
図2はこの問題を解決するために高位置にある熱源水(21)を使用するか、位置エネルギーの高い場所に熱源水(21)を配置し、システム全体で消費するエネルギーを大幅に削減したシステム図である。その為、熱源水循環ポンプ(12)(19)を必要としない構造となっている。
【0038】
熱源水(21)の位置エネルギーの確保は水力発電のように大きな高低差は必要としないので河川での高低差や潮位差を利用したり、また他の再生可能エネルギーで揚水したり、下水道の処理水を利用したり身近にまだ未利用の方法がたくさんある。
【0039】
又、水力発電と併設すれば位置エネルギーと熱エネルギーが同時に回収でき、さらにシステム内での消費エネルギーを大幅に減らすこともできる。
【0040】
位置エネルギーの利用による熱源水(21)の循環以外の動作は実施例1と同じである。
【発明の実施例3】
【0041】
実施例3も実施例2と基本動作は同じだが、図3は断熱シリンダー(6)内のピストンの仕事をより軽快にするために断熱シリンダー(6)内のピストン(8)を往復型にし、また内部エネルギーの回収の為の熱供給シリンダー(7)をタービン発電機(25)と作動流体膨張室(26)に置き換えた構造の物である。
【0042】
タービン式は作動流体(1)の膨張時のエントロピーの増大を防ぐ働きができないので、エネルギーの回収効率はこの部分では多少落ちるが、膨張室を設けることにより、冷熱の回収ができるし、システム全体を構成する上で多様性が広がる。
【発明の実施例4】
【0043】
図1から図3においては熱源に水や海水などを使用してきたが、図4においては大気熱を熱源とするため、気化器(28)や凝縮器2(30)を空冷の構造とした。他の動作は同じである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
化石燃料の使用増加による温暖化、原子力による環境破壊など、人類は大きなエネルギーの変換点に来ている。また日本は資源のない国だという認識があった。しかし本発明の高効率常温熱エネルギー回収法は今までの常識を覆し、日本を資源国に変え大きく産業を発展させていく牽引約になるだろう。
【0045】
エネルギーコストが下がれば物流のコストが大きく低減され、生産コストも大きく下がります。国際競争力が増し、工場、企業が日本に戻って来る。雇用が増加し人々の暮らしが豊かになり、将来への希望が見えてくる。原油など外国に払ってきたエネルギーコストが年金など国民福祉に使われれば安心した老後も約束される。
【0046】
再生可能エネルギーの改革は日本のみならず、世界中の産業の発展に寄与し、人々の暮らしを豊かにしながら地球の環境を守るエネルギーの救世主になるだろう。
【符号の説明】
(1)作動流体 (2)液送ポンプ (3)作動流体循環パイプ (4)蒸発器 (5)開閉弁1 (6)断熱シリンダー (7)熱供給シリンダー (8)ピストン (9)ピストン連結軸 (10)ギアボックス (11)発電機又は動力源機 (12)熱源水供給ポンプ2 (13)熱源水循環パイプ2 (14)開閉弁2 (15)作動流体加圧ポンプ (16)凝縮器 ‘(17)開閉弁3 (18)作動流体液タンク (19)熱源水供給ポンプ1 (20)熱源水循環パイプ1 (21)熱源水 (22)水力タービン (23)発電機 (24)複式断熱シリンダー (25)タービン式発電機 (26)作動流体膨張室 (27)熱源供給ファン (28)気化器 (29)作動流体ガスタンク (30)凝縮器2 (31)空冷ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温及び常温付近において気体且つ圧力をかけると液体になる作動流体を使い、この液体が気化する際、常温及び常温付近の熱源から気化潜熱を吸収し気化して増加した内部エネルギーである熱エネルギーを力学的エネルギーに変換して回収し、仕事を終えた作動流体を加圧冷却することにより、液化潜熱を常温および常温付近に放出させ液化するサイクルにより、自然界の熱エネルギーを高効率に回収する回収法及び回収する装置。
【請求項2】
常温及び常温付近において気体且つ圧力をかけると液体になる作動流体を使い、この液体が気化する際、常温及び常温付近の熱源から気化潜熱を吸収し気化して増加した内部エネルギーである熱エネルギーを力学的エネルギーに変換して回収し、仕事を終えた作動流体を加圧冷却することにより、液化潜熱を常温および常温付近に放出させ液化するサイクルを一巡とする熱機関。
【請求項3】
常温及び常温付近において気体且つ圧力をかけると液体になる作動流体を使い、この液体が気化する際、常温及び常温付近の熱源から気化潜熱を吸収し気化して増加した内部エネルギーである熱エネルギーを力学的エネルギーに変換して回収し、仕事を終えた作動流体を加圧冷却することにより液化潜熱を常温および常温付近に放出させ液化するサイクルの熱機関を動力源とする船、列車、自動車、飛行機などの交通機関や工場及び商業施設、一般家庭のエネルギー供給装置。
【請求項4】
常温及び常温付近において気体且つ圧力をかけると液体になる作動流体を使い、この液体が気化する際、あらゆる熱源及び排熱、保存熱から気化潜熱を吸収し気化して増加した内部エネルギーである熱エネルギーを力学的エネルギーに変換して回収し、仕事を終えた作動流体を加圧冷却することにより液化潜熱を常温、および常温付近に放出させ液化するサイクルの熱機関を併設及び複合した、水力発電装置、火力発電装置、原子力発電装置、太陽熱発電装置、地熱発電装置、太陽光発電装置、風力発電装置、波力発電装置、潮位差発電装置、海洋温度差発電装置、潮力発電装置、潮流発電装置、燃料電池発電装置など。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−40606(P2013−40606A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192100(P2011−192100)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(594166041)
【Fターム(参考)】