説明

高効率熱交換器およびそれを含んだ空気調和装置

【課題】 熱交換器の熱交換効率を向上せしめ、より高い温度にて外界などに放熱することができる高効率熱交換器を提供する。
【解決手段】 冷媒が通過する伝熱管10に放熱フィン30を接触させて熱交換を行う熱交換器100において、放熱フィン30の表面に高い熱伝導性と放熱性を兼ね備えた性質を持つ熱伝導・放熱性塗布膜20を塗布し、冷媒との間の熱交換効率を向上した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒との間で高効率に熱交換を行う高効率熱交換器に関する。また、圧縮機と、多数の放熱フィンを持つ熱交換器を備えた室外熱交換器と、減圧装置と、多数の放熱フィンを持つ熱交換器を備えた室内熱交換器とをそれぞれ配管にて環状に接続して冷凍サイクルを構成した空気調和装置の技術分野に関する。冷房のみの空気調和装置、冷暖房兼用の空気調和装置に適用可能であり、また、家庭用、業務用、カーエアーコンディショナー、冷蔵庫など、冷凍サイクルを用いて冷暖房を行う多様な機器や製品に適用できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部の電力消費量のうち、空気調和装置に関する電力消費が大きいと言われている。省エネルギー型の空気調和装置の開発にしのぎが削られている。現在の空気調和装置における課題として、圧縮機の省電力化と並んで室外熱交換器および室内熱交換器における熱交換効率の向上が挙げられる。室外熱交換器および室内熱交換器における熱交換効率を向上させることにより冷凍サイクルに投入する電気エネルギーを低減することができる。
【0003】
以下、室内の冷房を例に説明する。
従来の空気調和装置では、圧縮機により冷媒が高温高圧ガス状態となり、室外熱交換器内の熱交換器(室内冷房の場合「凝縮器」または「エバポレーター」と呼ばれる)において冷媒の熱が奪熱され、室外に放熱され、冷媒は液体状態となる。例えば、圧縮機により冷媒が80℃程度の高温ガスとなり、室外温度が40℃程度とした場合、室外熱交換器内の熱交換器(凝縮器)より排気される空気は50℃から60℃程度、室外熱交換器内の熱交換器(凝縮器)を通過した冷媒は50℃程度になるとされている。
【0004】
従来の室外熱交換器内の熱交換器においては、受け入れた冷媒の熱から奪熱して室外へ放熱する効率を向上させる手段として、例えば薄手のアルミシートを放熱フィンとして多数枚設け、冷媒の通る管を細かく分岐した細管と冷媒が外気と触れる面積をできるだけ大きくし、放熱性を高める工夫をしている。この放熱フィンの放熱効率が高くなれば、室外熱交換器における熱交換効率が向上することとなる。
【0005】
従来の放熱フィンの放熱効率向上は、放熱フィンの素材を熱伝導率の高い金属を使用することと、放熱フィンの面積をできるだけ大きくすることにより、冷媒と外気との間の熱交換を促進せしめるものであった。つまり、従来技術の熱交換器では、放熱フィンをアルミニウムなどの熱伝導性の高い金属を用いることにより、冷媒の通る管から放熱フィン全体へ熱を素早く拡散させるとともに、放熱フィンの総面積をもって外気と熱交換を行うため、冷媒と外気との間の熱交換効率を向上せしめるものであった。
【0006】
従来技術の室外熱交換器および室内熱交換器の放熱フィンとして汎用的に用いられているものは、1枚1枚がアルミニウムなどの熱伝導性の高い金属を薄く延ばしたシート状の形状をしており、それらシート状の放熱フィンを所定間隔(例えば2mmから3mm)を開けて多数枚を並べた構造をしている。
従来技術において、放熱フィンの熱交換効率の向上を図る技術として以下のものがある。
【0007】
例えば、特開平08−320192号公報には、伝熱管に伝熱フィンを接触させて熱交換を行う熱交換器において、間隔をおいて配置された前記伝熱管と、前記伝熱管の複数に螺旋状に巻き付けた細線によって構成された伝熱フィンが開示されている。つまり、冷媒の通過する細管に対して熱伝導率の高い金属でできた金属線を螺旋状(網目状)に設ける工夫を施している。この特開平08−320192号公報に開示された技術は、熱交換に供する金属の表面積を大きくすることよりも空気の流れる隙間を増やすことを狙ったとも評価できるものである。
【0008】
また、例えば、特開平06−11210号公報には、凝縮器に上下方向に冷媒が通過する細管に対して波状の波状フィンを各細管の間において上下方向に進行するように設けたものが開示されている。つまり、つまり、冷媒の通過する細管に対して熱伝導率の高い金属でできた一枚一枚の放熱フィンを平板のままではなく波状にすることにより、さらに放熱フィンの表面積を増やすことをねらったものである。
【0009】
【特許文献1】特開平08−320192号公報
【特許文献2】特開平06−11210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の熱交換器では、放熱フィンの表面積を増やすことにより熱交換効率を向上することをねらったものである。放熱フィンの表面積を増やすことは熱交換器の熱交換効率を向上する手段として有効である。
【0011】
しかし、従来技術においてはまだ熱交換器の熱交換効率を向上する余地がある。
上記従来技術では、例えば、室外温度が40℃程度とした場合、熱交換器(凝縮器)を通過する冷媒は、通過前に80℃程度の高温ガスであったものが熱交換器(凝縮器)を通過後に50℃程度の液体になるものであり、熱交換器より排気される空気は50℃から60℃程度のものである。熱交換器の熱交換効率を向上させ、少しでも熱交換器通過前の冷媒温度(例えば80℃)に近い温度にて放熱できれば機器の省電力化が実現できる。
【0012】
また、従来技術における熱交換器の放熱フィンは通常はアルミニウム基材であるが、放熱効率を重視するためにアルミニウムの放熱フィンの厚さは0.1mm程度の非常に薄いものであったため腐食に弱く、容易に腐食していた。従来技術ではこの腐食に対応するためその表面にエポキシ樹脂をコーティングする技術が用いられていたが、エポキシ樹脂は紫外線に弱いため室外機に用いられる熱交換器に用いられている放熱フィンには適用することができなかった。また、エポキシ樹脂は疎水性であるため水滴ができてしまい、この水滴が放熱フィンの間隙を埋めてしまい、熱を系外に運ぶための空気の流れを阻害してしまうため、放熱効率の低下を招くという問題があった。
【0013】
上記問題点に鑑み、本発明は、熱交換器の熱交換効率を向上せしめ、より高い温度にて外界などに放熱することができる高効率熱交換器を提供することを目的とする。
また、本発明は、高い熱交換効率を持つ高効率熱交換器を適用し、省電力化を実現した高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の高効率熱交換器は、冷媒が通過する伝熱管に放熱フィンを接触させて熱交換を行う熱交換器において、前記放熱フィンの表面に高い熱伝導性と放熱性を兼ね備えた性質を持つ熱伝導・放熱性塗布膜を塗布し、前記冷媒との間の熱交換効率を向上したことを備えたことを特徴とするものである。
【0015】
上記構成により、熱交換器の放熱フィンからの熱の放熱性を向上させ、外界に対して効率的に放熱することができる。このように熱交換器の放熱フィンに高い熱伝導性と高い放熱性とを兼ね備えた性質を持つ熱伝導・放熱性塗布膜を塗布して放熱フィンの法熱効率を向上させる概念は従来技術にはない画期的な技術である。
【0016】
また、本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置は、圧縮機と、多数の放熱フィンを持つ熱交換器を備えた室外熱交換器と、減圧装置と、多数の放熱フィンを持つ熱交換器を備えた室内熱交換器とをそれぞれ配管にて環状に接続して冷凍サイクルを構成した空気調和装置において、前記室外熱交換器の前記熱交換器の前記放熱フィンの表面に高い熱伝導性と放熱性を兼ね備えた性質を持つ熱伝導・放熱性塗布膜を塗布し、前記冷媒が有する熱の室外への放熱を効率化したことを特徴とするものである。
また、上記構成において、前記圧縮機表面にも前記熱伝導・放熱性塗布膜を塗布し、前記圧縮機で発生する熱の室外への放熱を効率化することも好ましい。
【0017】
上記構成により、空気調和装置の熱交換器の放熱フィンや圧縮機からの熱の放熱性を向上させ、外界に対して効率的に放熱することができる。このように空気調和装置の熱交換器の放熱フィンに高い熱伝導性と高い放熱性とを兼ね備えた性質を持つ熱伝導・放熱性塗布膜を塗布して放熱フィンや圧縮機の法熱効率を向上させる概念は従来技術にはない画期的な技術である。
【0018】
本発明は、冷暖房兼用型の空気調和装置であっても適用することができる。
上記高効率熱交換器を含んだ空気調和装置の構成に加え、暖房運転時と冷房運転時におけるガスの流れを変える四方弁を備え、前記室内熱交換器の前記放熱フィンの表面にも前記熱伝導・放熱性塗布膜を塗布し、室内暖房モードにおいて前記冷媒が有する熱の室内への放熱を効率化したことを特徴とする。
【0019】
上記構成により、暖房時には室内熱交換器の放熱フィンからの熱の放熱性を向上させ、室内に対して効率的に放熱することができる。
【0020】
ここで、前記熱伝導・放熱性塗布膜は、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた塗料を塗布・乾燥することにより形成された塗布膜であって、前記アルコキシド化合物の加水分解後、シラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される被膜により前記熱伝導性と前記放熱性とを発揮せしめたものであることが好ましい。
【0021】
上記構成により、膜自体にはSi−Oネットワークが全体を全通しているのでSi−Oネットワークを伝わることにより熱が効率よく運搬され、高い熱伝導率が得られる。さらに、無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が落ちることはない。基板が熱伝導率の良い素材であれば、熱が素早く基板全体に拡散し、空気調和装置全体から熱を系外に放出することができる。
【0022】
また、上記構成において、前記放熱フィンがアルミニウム基材でできており、
前記バインダーのアルコキシド化合物に含まれるSi−OH基と、前記放熱フィンのアルミニウム基材の表面に存在するAl−OH基との脱水縮合により、前記熱伝導・放熱性塗布膜が前記放熱フィンの前記アルミニウム基材とSi−O−Alの化学結合を備えた膜として形成されていることが好ましい。
上記構成により、熱伝導・放熱性塗布膜と放熱フィンのアルミニウム基材とがSi−O−Alの化学結合により強固に結ばれるため、放熱フィンの表面に非常に安定した膜が形成される。放熱フィンのアルミニウム基材はそのままでは腐食により4〜5年程度で熱交換効率が3〜4割程度低下するという問題が発生するおそれがあるが、この強固に安定している熱伝導・放熱性塗布膜により防汚性向上、防食性向上という効果ももたらしてくれる。
【0023】
なお、熱伝導・放熱性塗布膜の成分は以下のものとすることができる。
まず、前記アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーの第1の構成として、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合で配合することにより、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行ったものが好ましい。
【0024】
次に、前記アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーの第2の構成として、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランとジアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行ったものが好ましい。
【0025】
上記の熱伝導・放熱性塗布膜用塗料により、塗料中に存在する強靭なSi−Oネットワーク素材の形成とシラノール基の残存量を制御することができ、放熱性、耐熱性、基材への強い付着性、靭性を同時に得ることができる。また、Si−Oネットワーク素材をある程度まで形成しておくことにより膜が形成される過程における収縮率が小さくなり残留応力が小さくなり基材への付着力が向上する。
【0026】
ここで、本発明の高効率熱交換器またはそれを含んだ空気調和装置の熱伝導・放熱性塗布膜用塗料のバインダーにおいて塗布前に液中で十分に分子成長を熟成せしめたものを用いることが好ましい。
上記構成により、塗布環境に対して安定でかつ作業性の高いものとすることができ、熱交換器のそれぞれの放熱フィンにおいて安定した熱伝導・放熱性塗布膜を得ることができる。
【0027】
さらに、本発明の高効率熱交換器またはそれを含んだ空気調和装置の熱伝導・放熱塗布膜用塗料のバインダーにアミノ基、エポキシ基、アクリル基などを備えた反応性変性オルガノシロキサンを加えることが好ましい。
上記構成により、熱交換器のそれぞれの放熱フィンの熱伝導・放熱性塗布膜を常温乾燥にて得ることができ、製作の作業性が向上する。
【0028】
ここで、反応性変性オルガノシロキサンの例として、アミノ基(アミノエチル-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルメチルメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルメチルエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン)、エポキシ基(グリドキシプロピルトリメトキシシラン、グリドキシプロピルトリエトキシシラン、グリドキシプロピルメチルメトキシシラン、グリドキシプロピルメチルエトキシシラン)、アクリル基(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルエトキシシラン)などがある。
【0029】
次に、前記熱伝導・放熱性塗布膜を形成する塗料における顔料の第1の構成として、シリカ(SiO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含むものとすることが好ましい。
【0030】
また、前記熱伝導・放熱性塗布膜を形成する塗料における顔料の第2の構成として、前記第1の顔料に加え、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含むものとすることが好ましい。
上記熱伝導・放熱性塗布膜用塗料により、これら顔料により遠赤外線放射波長領域において高温領域から低温領域まで効率良い変換を得ることができる。
【0031】
また、前記熱伝導・放熱性塗布膜を形成する塗料における顔料として、酸化チタンを含有するものであることが好ましい。
また、前記酸化チタン粒子の周囲に前記遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめたものとすることが好ましい。
【0032】
ここで、酸化チタンは活性度の高いアナタース型が好ましい。光触媒作用により防汚性が向上するので放熱フィンの腐食による熱交換効率の低下を招くことがない。なお、酸化チタンを顔料に含有させると、熱伝導・放熱性塗布膜の表面積に酸化チタンが表出するので表面積に占める遠赤外線放射顔料が表出する割合が減少するが、酸化チタン粒子の周囲に遠赤外線放射顔料の化合物によりコーティングしておくことにより防汚性を確保するとともに放射率を低下させることがなくなる。
【0033】
次に、前記溶媒は、沸点が常温より高い温度のアルコール類であり、前記熱伝導・放熱性塗布膜形成の際に前記溶媒を揮発させることによりポーラス構造を形成せしめるものとすることが好ましい。
【0034】
上記のように膜中にポーラス構造を作り込むことにより膜全体としてさらに優れた靭性を得ることができる。
【0035】
なお、本発明の高効率熱交換器および高効率熱交換器を含んだ空気調和装置は多様な製品に適用することができる。
例えば、本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用した家庭用エアーコンディショナーを提供することができる。
例えば、本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用した業務用エアーコンディショナーを提供することができる。
例えば、本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用したカーエアーコンディショナーを提供することができる。
例えば、本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用した冷蔵庫を提供することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の高効率熱交換器によれば、熱交換器の放熱フィンに塗布された熱伝導・放熱性塗布膜という機能性膜により放熱性を向上させ、系外に対して効率的に放熱することができる。
また、本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置によれば、熱交換器の放熱フィンに塗布された熱伝導・放熱性塗布膜という機能性膜により放熱性を向上させ、系外に対して効率的に放熱することができる。
本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置は冷暖房兼用型の空気調和装置であっても適用することができる。
なお、熱伝導・放熱性塗布膜にはSi−Oネットワークが全体を全通しているのでSi−Oネットワークを伝わることにより熱が効率よく運搬され、高い熱伝導率が得られる。さらに、無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が落ちることはない。
また、アルコシキシドバインダーの組成を工夫することにより、塗料中に存在する強靭なSi−Oネットワーク素材の形成とシラノール基の残存量を制御することができ、放熱性、耐熱性、基材への強い付着性、靭性を同時に得ることができる。また、Si−Oネットワーク素材をある程度まで形成しておくことにより膜が形成される過程における収縮率が小さくなり残留応力が小さくなり基材への付着力が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明の空気調和装置およびその形成方法の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0038】
実施例1にかかる本発明の高効率熱交換器の例を示す。
図1は、本発明の高効率熱交換器100の構成例を模式的に示した図である。
図1の構成例では、高効率熱交換器100の放熱フィン30は薄手のシート状をしており、左が放熱フィン30を水平に見た場合の高効率熱交換器100の側面図、右が放熱フィンを平面に見た場合の高効率熱交換器100の平面図を示している。
冷媒が通過する多数の伝熱管10が放熱フィン30を貫いており、冷媒の熱が伝熱管10から放熱フィン30に伝わり、放熱フィン30から系外に熱が放出される仕組みである。
【0039】
伝熱管10は、熱伝導率の高い金属材料、例えば銅などからなり、冷媒の熱を伝導する熱伝導路12を提供する。
【0040】
放熱フィン30は、熱伝導率の高い金属材料、例えばアルミニウムからなり、伝熱管10に多数設けられている。なお、放熱フィン30の形状は特に限定されないが、例えば、板状やシート状のものがある。
【0041】
本発明の高効率熱交換器100の表面に高い熱伝導性と放熱性を兼ね備えた性質を持つ熱伝導・放熱性塗布膜20を塗布し、冷媒との間の熱交換効率を向上したものとなっている。
この構成例では、放熱フィン30の表面全体に熱伝導・放熱性塗布膜20が形成されている。
この熱伝導・放熱性塗布膜20の組成などについては詳しくは後述する。
【0042】
上記構成の高効率熱交換器100では、熱は以下のように放熱される。
冷媒の熱は伝熱管10の受熱面から伝熱管10に伝わり、さらに放熱フィン30に伝わる。放熱フィン30の表面に塗布されている熱伝導・放熱性塗布膜20に対して熱が伝導される。放熱フィン30および熱伝導・放熱性塗布膜20は熱伝導性が高く熱は素早く拡散しゆく。
熱伝導・放熱性塗布膜20は後述するように高い放熱性を備えているので、熱伝導・放熱性塗布膜20の表面全体から系外に放出される。
図1(c)は、熱伝導・放熱性塗布膜20からの放熱の様子を模式的に示している。
このように、本発明の高効率熱交換器100は熱を効率よく系外に放出できる仕組みとなっている。
【0043】
次に、上記の高効率熱交換器を含む空気調和装置200について説明する。
図2は、本発明の高効率熱交換器を含む空気調和装置200の構成例を模式的に示す図である。
【0044】
図2に示すように、圧縮機210と、多数の放熱フィン30を持つ熱交換器100を備えた室外熱交換器220と、減圧装置230と、多数の放熱フィン30を持つ熱交換器100を備えた室内熱交換器240とをそれぞれ配管にて環状に接続して冷凍サイクルを構成した空気調和装置となっている。ここで、室外熱交換器220熱交換器100の放熱フィン30の表面には熱伝導・放熱性塗布膜20が塗布されており、冷媒が有する熱の室外への放熱を効率化したものとなっている。
【0045】
なお、圧縮機210表面にも熱伝導・放熱性塗布膜20を塗布しておく構成も可能であり、圧縮機210で発生する熱の室外への放熱が効率化され、高効率熱交換器を含む空気調和装置200の放熱効率も向上する。
なお、冷暖房対応の空気調和装置であれば、暖房運転時と冷房運転時におけるガスの流れを変える四方弁を備え、室内熱交換器240の熱交換器の放熱フィンの表面にも熱伝導・放熱性塗布膜20を塗布したものとしておけば、室内暖房モードにおいて冷媒が有する熱の室内への放熱を効率化することがかのうとなる。
【0046】
次に、熱伝導・放熱性塗布膜20を詳しく説明する。
熱伝導・放熱性塗布膜20用の塗料は、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーを用いる。バインダーはまずアルコキシド化合物の加水分解によりシラノール基が生成され、その後シラノール脱水縮合反応が進んでSi−Oネットワークが形成されて行く。このシラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される被膜により熱伝導性と放熱性とが発揮される。また、顔料が高効率熱放射性物質を含んでおり顔料による放熱性も発揮される。
【0047】
アルコキシドの加水分解は速やかに促進された方が良いが、その後にシラノールの脱水縮合が進みすぎるおそれに注意する必要がある。塗料の状態でシラノールの脱水縮合が進みすぎると塗布前にSi−Oネットワークが多数形成され、塗布後に乾燥して形成された塗布膜が脆くなったりクラックが入りやすくなったりして基材への付着力が小さくなってしまうという問題が発生するからである。
【0048】
一方、シラノールの脱水縮合反応が十分ではない場合、つまり、塗料状態においてシラノールリッチの状態では、塗布後に膜が形成されてゆく過程で多くの脱水縮合が進んで行くこととなり、脱水縮合が進むと膜が収縮して行くこととなり収縮率が大きくなってしまい、塗布した膜が剥がれ落ちるという不具合が起こる。
【0049】
以上から、熱伝導・放熱性塗布膜20を形成する塗料は、アルコキシドの加水分解は完全に終了せしめ、シラノール脱水縮合反応は適切量進めた後に脱水縮合反応を抑止することにより、脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行ったものとすることが好ましい。これにより塗布前に適切量のSi−Oネットワーク素材を形成しておき、塗布後に新たに脱水縮合により形成されるSi−Oネットワーク量を少なくして収縮率が大きくなることを抑え、残存するSi−OH基により基材との付着力を確保せしめる。
【0050】
バインダーの組成の例について述べる。
第1の熱伝導・放熱性塗布膜用塗料のバインダー組成は、アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっている。
その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合が好ましい。
第2の熱伝導・放熱性塗布膜用塗料のバインダー組成は、アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとジアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっている。
その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合が好ましい。
【0051】
Si−OH官能基を4つ備えたテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
Si−OH官能基を3つ備えたトリアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルプロポキシシランなどが挙げられる。
Si−OH官能基を2つ備えたジアルコキシシランとしては、ジチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0052】
アルコキシド化合物としてこれらを組み合わせて用いる。組み合わせで好ましいのはジメチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン及びテトラメトキシシランの組合せ、またはジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン及びテトラエトキシシランの組合せである。
【0053】
本発明では、アルコキシド化合物の加水分解後の脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行い、熱伝導・放熱性塗布膜20の熱伝導性と放熱性を確保する。
次に、本発明の熱伝導・放熱性塗布膜20が、熱伝導性と放熱性を兼ね備えたものとなっていることを説明する。
【0054】
Si−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御の原理は以下の通りである。
アルコキシド化合物同士は加水分解によりシラノール基(Si−OH官能基)が生成され、Si−OH官能基の脱水縮合によりSi−Oネットワークの形成が進行してゆく。Si−OH官能基を4つ持つテトラアルコキシシランはSi−OH官能基を多く持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成進行が速く、早期にゲル化する。テトラアルコキシシランのみでバインダーを形成するとほぼ完全にSi−OH官能基が消費され、Si−Oネットワークが形成される。Si−OH官能基を3つ持つトリアルコキシシランもSi−OH官能基を持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成が進行し、ゲル化する。トリアルコキシシランのみでバインダーを形成すると粒子間のSi−OH官能基の存在が均等になるので、ほぼ完全にSi−OH官能基が消費された状態でSi−Oネットワークが形成される。
【0055】
Si−OH官能基を2つ持つジアルコキシシランもSi−OH官能基を持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成が進行し、ゲル化する。ジアルコキシシランのみでバインダーを形成すると同様にほぼ完全にSi−OH官能基が消費された状態でSi−Oネットワークの形成が形成される。しかし、ジアルコキシシランはSi−OH官能基が2つしかなく、脱水縮合によって直鎖状にSi−Oネットワークが形成されてしまい、堅牢性が小さくなる。
【0056】
本発明では、Si−Oネットワークによる堅牢な膜形成を目指すだけではなく、Si−Oネットワークの形成を進行させつつもSi−OH官能基をすべては消費させずに残存させるように制御する。残存したSi−OH官能基により金属プレートなどの基材のOH基との間の結合エネルギーにより基材と強力な付着力をもたらす。
つまり、Si−OH官能基を2つ持つアルコキシド化合物、Si−OH官能基を3つ持つアルコキシド化合物、Si−OH官能基を4つ持つアルコキシド化合物を、所定割合で混ぜ合わせると、アルコキシド分子間でSi−OH官能基の数に不均衡があるため、反応する相手となるSi−OH官能基がなく、いわば浮いてしまうSi−OH官能基が多数出てくるので脱水縮合が一気には進まなくなる。
【0057】
ただし、長期間放置していると、浮いているSi−OH同士の脱水縮合反応が進んでくるので残存するSi−OH官能基の量は漸減して行くが、上記のように2官能のアルコキシド化合物、3官能のアルコキシド化合物、4官能のアルコキシド化合物の割合を調整すれば、当初、脱水縮合は早期に進むもののSi−OH官能基の数が不均衡状態に陥ってからは脱水縮合に急速にブレーキがかかることとなる。
【0058】
後述するように、良好な付着性、熱伝導性、放熱性を備えた膜が形成される配合について実験を重ねて2官能のアルコキシド化合物、3官能のアルコキシド化合物、4官能のアルコキシド化合物の配合割合を見出した。
【0059】
ここで、バインダーにおいて塗布前に液中でアルコキシドバインダーの加水分解後のシラノール反応による十分な分子成長を熟成せしめることが好ましい。十分に熟成させて適切量のSi−Oネットワークを得ておくことで塗布環境に対して安定でかつ作業性の高いものとなり、一液性としてより安定した塗料となるからである。
【0060】
また、本発明では、放熱フィンがアルミニウム基材であるため、熱伝導・放熱性塗布膜20がアルミニウム基材に対して強固に結合するように、Si−O−Alの化学結合も利用する。上記のように、放熱フィン30はアルミニウム基材でできている場合、バインダーのアルコキシド化合物に含まれるSi−OH基と、放熱フィン30のアルミニウム基材の表面に存在するAl−OH基とが脱水縮合を起こすことができる。この脱水縮合反応により、熱伝導・放熱性塗布膜20と放熱フィン30のアルミニウム基材との間でSi−O−Alの強固な化学結合が生じる。このため、本発明の高効率熱交換器100の放熱フィン30は極めて強固で安定した熱伝導・放熱性塗布膜20がコーティングされた状態となる。
このように極めて強固で安定した熱伝導・放熱性塗布膜20のコーティングにより、本発明の高効率熱交換器100は、高い熱伝導・放熱効率を得られるだけでなく、腐食しやすい薄いアルミニウム板である放熱フィンの防汚性、防食性を得ることもできる。
【0061】
次に、バインダーに対する他の工夫として、また、バインダーにアミノ基、エポキシ基、アクリル基などを備えた反応性変性オルガノシロキサンを加えておくことにより常温乾燥に適したものとする工夫がある。
たとえば、反応性変性オルガノシロキサンの例として、アミノ基(アミノエチル-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルメチルメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルメチルエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン)、エポキシ基(グリドキシプロピルトリメトキシシラン、グリドキシプロピルトリエトキシシラン、グリドキシプロピルメチルメトキシシラン、グリドキシプロピルメチルエトキシシラン)、アクリル基(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルエトキシシラン)などがある。
【0062】
以上の成分に調整した熱伝導・放熱性塗布膜用の塗料を用いて形成した、熱伝導・放熱性塗布膜20について、実際に塗料を形成し、種々の性能実験を行った。
まず、熱伝導・放熱性塗布膜20の付着性試験を行い、熱伝導・放熱性塗布膜20が安定して基板上に付着している条件について実験し、次に、熱伝導性試験、放熱性試験を行い、熱伝導・放熱性塗布膜20が良好な熱伝導性、放熱性を備えていることを検証する。
【0063】
[付着性実験]
付着性実験に用いた熱伝導・放熱性塗布膜用塗料のバインダー組成
実験に用いた熱伝導・放熱性塗布膜用塗料のバインダー組成は、4官能基を備えたテトラアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のテトラメトキシシランを用いた。また、3官能基を備えたバインダーのトリアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のトリメチルメトキシシランを用いた。また、2官能基を備えたジメトキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のジメチルメトキシシランを用いた。テトラメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルメトキシシランの配合を変えてそれぞれ製作した。
【0064】
加水分解に用いた水の量は、アルコキシド化合物1モルに対して水0.8〜1.4モルとした。水が0.8モル以下ではSi−OH基の発生が十分でなく膜の硬度が上がらず、1.4モル以上ではSi−OH基が多くなり、シラノールの分子結合が大きくなり、ゲル化が進展し、クラックが生じやすくなるからである。触媒としての酸の量は有機酸、無機酸何れの場合も、加水分解を起こすのに十分な量を用いた。
サンプルのそれぞれに含まれるジメチルメトキシシラン(2官能)、トリメチルメトキシシラン(3官能)、テトラメトキシシラン(4官能)の配合を[表1]に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
−熱伝導・放熱性塗布膜を形成する基材
ブラスト処理を行ったアルミプレートを用いた。
【0067】
−付着性実験の手法
付着性実験は、JIS−K5600−5−6の手法により碁盤目テストを行った。実験は3回行った。ブラスト処理を行ったアルミプレートに対する付着実験結果を[表2]に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
注1:その他のアルコキシドとしてエトキシ基、フェニル基もあるが、エトキシ基はメトキシ基と反応スピードの違いなので省略し、フェニルは硬度が劣るので省略し、メチル基のみでテストを実施した。
注2:反応はアルコキシド1モルに対して水2.5〜4.5モル、望ましくは3.3モル、酸の量を十分入れ、顔料比率70%とし、膜厚を25μ±3μにして実施。
注3:分散溶媒はエタノール、イソプロピルアルコールを配合した物を使用した。
注4:分散は0.7mmのガラスビーズを使用した。分散後粒度はD50で0.35ミクロン。
注5:焼成条件は180℃で20分。基板はアルコール脱脂のみのアルミ板を使用した。試験片は7.5mmw×15.0mml×1.0mmtを各3枚。(評価は全数クリアー)
注6:塗布方法はスプレーコート。
注7:膜厚は15μ〜20μ、測定方法はマイクロメーター。
【0070】
上記付着性実験から、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランを混合したバインダーである配合1から配合3の実験結果より、混合割合は配合1から配合2の混合割合が良いことが実証できた。つまり、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合が好ましい。
【0071】
また、上記付着性実験から、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとジアルコキシシランを混合したバインダーである配合4から配合9の実験結果より、混合割合は配合4から配合5の混合割合が良いことが実証できた。つまり配合6のように3官能基の割合が減ると付着性が劣り、また、配合7から配合9のように2官能基の割合が増えても付着性が劣る。つまり、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合が好ましい。
【0072】
以上、本発明の熱伝導・放熱性塗布膜20用の塗料のバインダーの組成を上記の割合となるように工夫すれば、熱伝導・放熱性塗布膜20の付着性が大きくなるように、Si−Oネットワークと残存するSi−OH基の量を制御できる。
【0073】
[熱伝導試験]
熱伝導・放熱性塗布膜20において、高い熱伝導率が得られていることを確認した。
−熱伝導試験に用いた塗料のバインダー組成
熱伝導・放熱性塗布膜20用塗料のバインダー組成は、付着性実験に用いた塗料のバインダー組成と同じものとした。
【0074】
−熱伝導・放熱性塗布膜20を形成する基板
アルミブラスト処理を行ったアルミプレート(150mm×75mm×1.0mm)を用いた。
−熱伝導性試験の手法
アルミプレートの半分に熱伝導・放熱性塗布膜20を形成し、残り半分は熱伝導・放熱性塗布膜20は形成せずアルミプレートが剥き出しのままとする。アルミプレートの裏面から加熱し、アルミプレートの表面の温度分布を測定した。
【0075】
本発明の熱伝導・放熱性塗布膜20では、Si−Oネットワークが膜全体を全通しているので熱伝導率が高く、ポーラス構造にかかわらずコージライト、アルミナ、シリカ、ジルコニアという無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が高い。実際に熱伝導・放熱性塗布膜2の試料片を用いて熱伝導率を計測したところ、2W/mK以上の熱伝導率が得られていた。
【0076】
[放熱性試験]
次に、放熱膜としての機能、つまり、発熱体から受けた熱エネルギーの遠赤外線エネルギーへの変換効率について検証する。本発明の熱伝導・放熱性塗布膜用塗料において、含有されている顔料は形成した膜において遠赤外線放射機能を与えるものである。それゆえに顔料の配合が重要である。
高い熱放射率を実現するためには、熱線波長領域の全範囲にわたって、放射率が100%に近く、さらに放射輝度が当該温度における黒体輻射に近い放射スペクトルを持つこと必要がある。
【0077】
第1の顔料として、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含むものとする。これらは、熱拡散性が高く放熱性を有する上、熱膨張率が5×10−6〜10.5×10−6であり、比較的大きいので、顔料として含有させてシート状に成形しても、膜も金属の挙動と同様な挙動をする。それゆえ、膜中に引っ張り応力が発生せず、高温域でも安定した放熱性が得られる。なお、カーボンを一定量以上入れることにより容易に導電性が得られる。特に450℃までの大気中、または高温真空炉、或いは不活性ガス等の雰囲気炉中で従来不可能とされていたカーボンの面状発熱体が使用可能となる。
【0078】
上記の第1の顔料に対して、以下の第2の顔料を加える工夫も好ましい。第2の顔料は、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含むものである。
【0079】
なお、顔料の粒度は、膜の平滑性や綴密性、強度を考慮して、顔料の粒度は溶媒分散後で平均粒度で0.5μ以下が望ましい。
アルコキシドと顔料の割合は、15〜45体積%が妥当である。15%以下では膜の靭性が低下し堅牢さが失われる。45%を超えると、脱水縮合による乾燥収縮量が多く、高温下でクラックが発生しやすく、所望の放熱性が得がたい。
【0080】
膜の厚みは、基材や発熱体と膜が強固に付着し、且つ、両者の熱膨張差が非常に近い場合でも、膜が厚くなりすぎると、クラックが発生する。それは、Si−OHが脱水縮合するときに起こる収縮現象が原因である。膜厚は、バインダーの含有量にもよるが、30μ以下が望ましい。特にアルコキシド化合物の脱水縮合物の全固形物(即ちSi−OHから生じるSiO2と混合したときの無機顔料成分の合計)にしめる割合が45体積%の場合、800℃でクラックの発生を防ぐ為には10μ前後が好ましい。膜厚が30μを超えると、膜が脆くなり、長時間の使用に耐えられなくなる。そのため、アルコキシド化合物の脱水縮合物の割合は30体積%以下が望ましい。
【0081】
サンプルとして顔料を[表3]のように配合した熱伝導・放熱性塗布膜用塗料2を作製し、遠赤外線放射実験を行った。
焼成条件は180℃で20分間焼き付けた。
膜厚はマイクロメーターの測定により20μ〜26μのものが焼成できた。
測定は遠赤外線応用研究会によった。
測定温度は60℃とした。
測定機種はJIR−E500を用いた。
測定条件は、分解能16cm−1、積算回数200回
検知器はMCTである。
【0082】
【表3】

【0083】
本発明の第1の顔料である、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)のうち、熱伝導・放熱性塗布膜2ではシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)とした。酸化チタンは光触媒反応による防汚性・防食性を与える顔料として配合した。バインダーは3官能基を備えたトリメチルメトキシシランと4官能基を備えたテトラメトキシシランを配合した。
【0084】
上記構成の組成を持つ熱伝導・放熱性塗布膜を用いて放射率と放射輝度測定を行った。
図3は熱伝導・放熱性塗布膜の放射率である。
図4は熱伝導・放熱性塗布膜の放射輝度スペクトルである。
放射輝度は、540.06kcal/m2・hrであった。
図4に見るように、低温の波長領域から高温の波長領域まで良好な放射輝度スペクトルが得られており、放熱性は、4μ〜24μの波長域での放射率は85%以上の放射率を有することが分かった。高い遠赤外線変換効率が得られていることが実証できた。
【0085】
[耐熱性試験]
熱伝導・放熱性塗布膜を800℃に熱し、水で急冷却するという処理を繰り返して、クラックが入るか否かを試験した。
加熱はバーナーで800℃まで加熱した。冷却は冷水にて急速に冷却した。この加熱・冷却を5回繰り返した。
結果を[表4]に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
[表面硬度試験]
本発明の熱伝導・放熱性塗布膜の耐摩耗性を調べるために熱伝導・放熱性塗布膜を用いて表面硬度テストも行った。
硬度テストの方法は、JIS−K−5−4に準じた。
実験にはアルミプレートに焼成したものを用いた。
表面硬度テストの結果を[表5]に示す。
【0088】
【表5】

【0089】
なお、上記において、アルコキシド化合物と顔料の割合は、15〜45体積%が妥当であると指摘したが、実験にて実証した。バインダーであるアルコキシド化合物は熱伝導・放熱性塗布膜用塗料2と同様、トリメチルメトキシシランとテトラメトキシシランの混合とし、顔料の体積%を変えたサンプルを製作し、表面硬度テストを行うことにより妥当な割合を検証した。
【0090】
【表6】

【0091】
注1:アルコキシド化合物は代表例としてトリメチルメトキシシラン66.7重量%、テトラメトキシシラン33.5重量%、ジメチルメトキシシラン4,8重量%でテスト。
注2:各反応条件、分散条件、縮合脱水条件、膜厚、基材は前記テストに準じる。
注3:使用顔料は平均1次粒子径0.15μのアルミナ(Al2O3)、平均1次粒子径0.5μのカオリン、10〜20nのシリカ(SiO2)をそれぞれ30体積%、65体積%、5体積%配合したものを使用した。
注4:分散溶媒はエタノール、イソプロピルアルコールを配合した物を使用した。
注5:分散は0.7ミリ径のガラスビーズを用いたビーズミルで1時間実施した。その時の平均粒皮は0.35μであった。
注6:○は硬度7H以上、曲げ20R可、碁盤目テスト問題なし、△は硬度7Hまで、碁盤目テスト間題なし、Xは、膜が脆くクラック発生。
以上、アルコキシド化合物と顔料の割合は15〜45体積%が妥当であると実証できた。
【0092】
[耐腐食性試験]
本発明の熱伝導・放熱性塗布膜の耐腐食性も調べるために熱伝導・放熱性塗布膜を用いて塩水噴霧試験と水浸試験も行った。
塩水噴霧試験の方法は、JIS−K5600−7−1に準じた。
測定はステンレスプレートのものを用いた。
塩水噴霧の放置時間は500時間とした。
塩水噴霧試験の結果を[表7]に示す。
【0093】
【表7】

【0094】
水浸試験の方法は、JIS−K5600−6−2に準じた。
測定はアルミプレートのものを用いた。
水浸の放置時間は500時間とした。
水浸試験の結果を[表8]に示す。
【0095】
【表8】

【0096】
以上、塩水噴霧試験と水浸試験の結果から、本発明の熱伝導・放熱性塗布膜の耐腐食性が大きいことが実証できた。
【0097】
以上、実施例1にかかる本発明の熱伝導・放熱性塗布膜および熱伝導・放熱性塗布膜により塗布・形成した熱伝導・放熱性塗布膜は、バインダーの付着力が大きく、顔料も遠赤外線放射効率が高く、表面硬度が大きく、耐腐食性、耐熱性に優れたものである。また、本発明の熱伝導・放熱性塗布膜用塗料は1液性でありながらアルコキシド系バインダーの脱水縮合反応を制御することがき、ポットライフが長くかつ取り扱いが容易な1液性塗料として提供できる。
【実施例2】
【0098】
実施例2は、熱伝導・放熱性塗布膜20の顔料において、防汚性・防食性を与えるために酸化チタンを含有させるとともに、酸化チタン粒子の周囲に遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめたことを特徴とするものである。
【0099】
酸化チタンは光触媒作用により防汚性を持つことが知られている。本発明の空気調和装置の室外機は室外で外光を受け得る箇所に設置されるが、放熱フィン30上に形成する熱伝導・放熱性塗布膜20の顔料として酸化チタンを含有しておくことにより放熱フィン30に防汚性、防食性を与えることが可能となる。放熱フィン30が防汚性、防食性を備えることにより熱交換器100の交換効率の低下を招くことがない。
ここで、用いる酸化チタンは活性度の高いアナタース型が好ましい。光触媒作用が高いとされており高い防汚性が期待できる。
なお、酸化チタンを顔料に含有させると、熱伝導・放熱性塗布膜の表面積に酸化チタンが表出する。遠赤外線放射性物質である顔料は熱源から受けた熱エネルギーを遠赤外線エネルギーに変換して放射する。
【0100】
この場合、着色用に配合された酸化チタンや酸化亜鉛などの顔料粒子が、遠赤外線への変換効率に寄与するものでなければ熱伝導・放熱性塗布膜の放熱機能を低下させる要因となりうる。
【0101】
実施例1の遠赤外線放射実験で製作した熱伝導・放熱性塗布膜用塗料2に用いられている酸化チタン(石原産業製 A−100)は、特に表面に何もコーティングが施されていないものであった。図5は、熱伝導・放熱性塗布膜用塗料2を用いて形成した熱伝導・放熱性塗布膜の表面の様子を模式的に拡大して示した図である。顔料粒子を模式的に大きく示している。図5に見るように、熱伝導・放熱性塗布膜の表面には遠赤外線放射性物質である顔料とともに酸化チタン粒子が表出している。この酸化チタン粒子が表出している部分は遠赤外線放射機能を発揮しないので遠赤外線放射効率が低下することとなる。実際、図3、図4に見るように、高温領域(5〜8μm)においてスペクトルが低下している部分が見られる。
【0102】
実施例2にかかる本発明の熱伝導・放熱性塗布膜用塗料は、着色顔料として酸化チタンを含有させるとともに、酸化チタン粒子の周囲に遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめている。後述する熱伝導・放熱性塗布膜用塗料3に用いられている酸化チタン(石原産業製 R−95)は、表面に粒度の細かいシリカがコーティングされているものである。
【0103】
図6は、熱伝導・放熱性塗布膜用塗料3を用いて形成した熱伝導・放熱性塗布膜の表面の様子を模式的に拡大して示した図である。熱伝導・放熱性塗布膜用塗料3においてその表面に酸化チタン粒子が表出している部分からもその酸化チタン粒子の表面にコーティングされた遠赤外線放射性顔料の働きにより遠赤外線放射機能が発揮されることとなる。なお、酸化チタン粒子の表面にコーティングするためにコーティングする遠赤外線放射性顔料は酸化チタンの粒度よりも十分に細かい粒度とする必要がある。つまり、着色用の顔料が酸化チタンのコーティング処理をしているか否か以外の諸条件は実施例1とまったく同じ条件にて実験した。
【0104】
つまり、焼成条件は180℃で20分間の焼き付け、膜厚は20μ〜26μ、測定温度は60℃、測定機種はJIR−E500、測定条件は、分解能16cm−1、積算回数200回、検知器はMCTである。
サンプルとして顔料を[表9]のように配合した熱伝導・放熱性塗布膜用塗料3を作製し、遠赤外線放射実験を行った。
【0105】
【表9】

【0106】
遠赤外線放射顔料としては、本発明の第1の顔料である、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含む第1の顔料のうち、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)を顔料とした。
着色用顔料としては、表面に粒度の細かいシリカがコーティングされている酸化チタン(石原産業製 R−95)を用いている。
バインダーは3官能基を備えたトリメチルメトキシシランと4官能基を備えたテトラメトキシシランを配合した。
【0107】
上記構成の組成を持つ熱伝導・放熱性塗布膜を用いて放射線測定を行った。
図7は熱伝導・放熱性塗布膜を用いた放射線測定結果である。
図8は熱伝導・放熱性塗布膜が発する放射スペクトルである。
図3、図4と、図7、図8を比べるとあきらかに、高温領域(5〜8μm)においてスペクトルが改善されている部分が見られる。
【0108】
このスペクトル改善は、酸化チタンの表面のシリカのコーティングの有無によりもたらされているので、着色用の顔料を配合する場合、当該着色用の顔料の表面に遠赤外線放射顔料をコーティングせしめることにより、熱伝導・放熱性塗布膜において遠赤外線放射機能が改善されることが実証できた。
【実施例3】
【0109】
実施例3にかかる熱伝導・放熱性塗布膜用の塗料は、遠赤外線放射顔料として、スペクトル波長領域において高温領域から低温領域まで効率良い変換を得るため、低温領域にて放射能率が高い第1の遠赤外線顔料に加え、特に高温領域にて放射能率が高い第2の遠赤外線顔料を添加したものである。
【0110】
第1の顔料が、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含む顔料である。
第2の顔料が、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)の少なくとも一つの単体またはそれらの化合物を含む顔料である。
【0111】
このように、低温領域にて放射能率が高い第1の遠赤外線顔料に加え、特に高温領域にて放射能率が高い第2の遠赤外線顔料を添加することにより、スペクトル波長領域において高温領域から低温領域まで効率良い変換効率を達成することができる。
【実施例4】
【0112】
本発明の高効率熱交換器および空気調和装置は多様なものに適用できる。
例えば、本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用した家庭用エアーコンディショナーを提供することができる。
例えば、本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用した業務用エアーコンディショナーを提供することができる。
例えば、本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用したカーエアーコンディショナーを提供することができる。
例えば、本発明の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用した冷蔵庫を提供することができる。
【0113】
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明は、熱交換器を利用した機器に広く適用することができる。
本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の高効率熱交換器100の構成例を模式的に示した図
【図2】本発明の高効率熱交換器を含む空気調和装置200の構成例を模式的に示す図
【図3】熱伝導・放熱性塗布膜を用いた放射線測定結果を示す図
【図4】熱伝導・放熱性塗布膜が発する放射スペクトルを示す図
【図5】熱伝導・放熱性塗布膜を用いて形成した熱伝導・放熱性塗布膜の表面の様子を模式的に拡大して示した図
【図6】熱伝導・放熱性塗布膜を用いて形成した熱伝導・放熱性塗布膜の表面の様子を模式的に拡大して示した図
【図7】熱伝導・放熱性塗布膜を用いた放射線測定結果を示す図
【図8】熱伝導・放熱性塗布膜が発する放射スペクトルを示す図
【符号の説明】
【0115】
10 伝熱管
20 熱伝導・放熱性塗布膜
30 放熱フィン
100 高効率熱交換器
200 空気調和装置
210 圧縮機
220 室外熱交換器
230 減圧装置
240 室内熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が通過する伝熱管に放熱フィンを接触させて熱交換を行う熱交換器において、前記放熱フィンの表面に高い熱伝導性と放熱性を兼ね備えた性質を持つ熱伝導・放熱性塗布膜を塗布し、前記冷媒との間の熱交換効率を向上したことを備えたことを特徴とする高効率熱交換器。
【請求項2】
圧縮機と、多数の放熱フィンを持つ熱交換器を備えた室外熱交換器と、減圧装置と、多数の放熱フィンを持つ熱交換器を備えた室内熱交換器とをそれぞれ配管にて環状に接続して冷凍サイクルを構成した空気調和装置において、
前記室外熱交換器の前記熱交換器の前記放熱フィンの表面に高い熱伝導性と放熱性を兼ね備えた性質を持つ熱伝導・放熱性塗布膜を塗布し、前記冷媒が有する熱の室外への放熱を効率化したことを特徴とする高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項3】
前記圧縮機表面にも前記熱伝導・放熱性塗布膜を塗布し、前記圧縮機で発生する熱の室外への放熱を効率化したことを特徴とする請求項2に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項4】
暖房運転時と冷房運転時におけるガスの流れを変える四方弁を備え、
前記室内熱交換器の前記熱交換器の前記放熱フィンの表面にも前記熱伝導・放熱性塗布膜を塗布し、室内暖房モードにおいて前記冷媒が有する熱の室内への放熱を効率化したことを特徴とする請求項2又は3に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項5】
前記熱伝導・放熱性塗布膜が、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた塗料を塗布・乾燥することにより形成された塗布膜であって、前記アルコキシド化合物の加水分解後、シラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される被膜により前記熱伝導性と前記放熱性とを発揮せしめたものであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項6】
前記放熱フィンがアルミニウム基材でできており、
前記バインダーのアルコキシド化合物に含まれるSi−OH基と、前記放熱フィンのアルミニウム基材の表面に存在するAl−OH基との脱水縮合により、前記熱伝導・放熱性塗布膜が前記放熱フィンの前記アルミニウム基材とSi−O−Alの化学結合を備えた膜として形成されていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項7】
前記熱伝導・放熱性塗布膜を形成する塗料において、前記アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合で配合することにより、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項8】
前記熱伝導・放熱性塗布膜を形成する塗料において、前記アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランとジアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項9】
前記熱伝導・放熱性塗布膜を形成する塗料として、前記バインダーにおいて塗布前に液中で十分に分子成長を熟成せしめることにより、塗布環境に対して安定でかつ作業性の高い塗料を用いたものとした請求項6から8のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項10】
前記熱伝導・放熱性塗布膜を形成する塗料として、前記バインダーにアミノ基、エポキシ基、アクリル基などを備えた反応性変性オルガノシロキサンを加えることにより常温乾燥を可能とせしめた塗料を用いたものとした請求項6から9のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項11】
前記熱伝導・放熱性塗布膜を形成する塗料における顔料が、シリカ(SiO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含む第1の顔料を備えた請求項2から10のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項12】
前記熱伝導・放熱性塗布膜を形成する塗料における顔料が、前記第1の顔料に加え、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含む第2の顔料を備えた請求項11に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項13】
前記熱伝導・放熱性塗布膜を形成する塗料における顔料として、酸化チタンを含有する請求項2から12のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項14】
前記酸化チタン粒子の周囲に前記遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめたことを特徴とする請求項13に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項15】
前記溶媒が、沸点が常温より高い温度のアルコール類であり、
前記熱伝導・放熱性塗布膜形成の際に前記溶媒を揮発させることによりポーラス構造を形成せしめることを特徴とする請求項2から14のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置。
【請求項16】
請求項2から15のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用した家庭用エアーコンディショナー。
【請求項17】
請求項2から15のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用した業務用エアーコンディショナー。
【請求項18】
請求項2から15のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用したカーエアーコンディショナー。
【請求項19】
請求項2から15のいずれか1項に記載の高効率熱交換器を含んだ空気調和装置を適用した冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−150636(P2009−150636A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209403(P2008−209403)
【出願日】平成20年8月17日(2008.8.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(506160215)マイクロコーテック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】