高吸着性超撥水基板及びそれを用いた微少量の液滴操作
【課題】高吸着性で、吸着性の制御が可能で、かつ簡便なプロセスで製造可能な超撥水基板を用いた微少量の液滴操作、並びにその基板の製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【解決手段】基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする、高吸着性超撥水性基板、及びそれを用いて液滴を操作する方法。
【解決手段】基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする、高吸着性超撥水性基板、及びそれを用いて液滴を操作する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム状多孔質フィルムを利用した高吸着性超撥水基板、及びそれを用いた微少量の液滴操作、およびその基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の自己組織化により構造を作製する試みがなされている。特に溶液をキャストし、溶液表面上に結露した水滴を鋳型として多孔質膜を得るハニカム構造化フィルムの作製は、様々な材料から数百nm〜数十μmの孔径を持つフィルムを得ることが簡単に出来るため、生体適合性材料などから細胞培養基板などへの応用が研究されている(非特許文献1)。特許文献1には、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムから成る鋳型にパターン転写用材料を充填することによって、ハニカム状多孔質フィルムのパターンを該パターン転写用材料に転写することを含む、メゾ構造体の作製方法が記載されている。
【0003】
撥水性基板に関する公知技術では、超撥水構造をもつ蓮の葉の構造を模した凹凸構造をつくることで、接触角178度(完全な撥水状態は180度)とほとんど濡れない表面が作製されている(非特許文献2)。また、超撥水表面の機能化を目指し、光や電気などの外部エネルギーにより撥水状態から親水状態へ変化させる試みがなされている(光触媒など)。
【0004】
また、液滴操作に関連する報告としては、特許文献2で、親水領域をマイクロメートル以下にして細胞単離をしているが、液滴自体の操作を行うものではない。また、特許文献2では、親水領域で液滴を保持している。特許文献3は、撥水表面での光ピンセットによる液滴操作を記載し、疎水領域に親水領域のパターンを作製しているが、液滴操作を試みるものではない。
【0005】
【非特許文献1】T. NishikawaR. Ookura, J. Nishida, K. Arai, J. Hayashi, N. Kurono, T. Sawadaishi, M. Hara, M. Shimomura, Langmuir, 2002, 18(15), 5734
【非特許文献2】E. Hosono et, al., J. Am. Chem. Soc., 127, 13458 (2005)
【特許文献1】特開2004−330330号公報
【特許文献2】特開平11−304666号公報
【特許文献3】特開平11−218691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高吸着性で、吸着性の制御が可能で、かつ簡便なプロセスで製造可能な超撥水基板、並びにその製造方法を提供することを解決すべき課題とした。特に本発明は、微量の液体を液滴として操作し、輸送・移動、分離、混合することが可能な超撥水基板、並びにその製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、先ず、自己組織化により作製した、疎水性高分子と両親媒性高分子とから成るハニカム状多孔質フィルムを鋳型とし、その表面の親水疎水性を利用した選択的な無電解めっきにより、表面に一層の金属膜を析出させた。その後、高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定し、次いで高分子−金属複合フィルムの上面を剥離することによって、ハニカム状多孔質フィルムの柱構造を切断し、金属膜状に多数のポリマーの突起物が存在する複合基板を作製した。得られた基板は、疎水性高分子から成るピラー構造由来の超撥水性と、親水性である金属基板由来の吸着性の両方を併せもつ機能性基板として利用できる。このような高吸着性超撥水基板は、微少水滴スケールでのセンシングや化学反応場や水滴操作場として利用可能であることを見出した。特に、本発明のマイクロメートルスケールの親水性部が点在した超撥水基板表面は、その親水性部に吸着性をもたせることが可能であり、その親水性部の割合で吸着力を制御できる。その結果、非常に弱い力で液滴操作が可能となる。本発明は親水部でのみ液滴を操作するものではなく、基板全体がマイクロリットルスケールの液滴を操作可能であるという特徴を有している。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0008】
即ち、本発明によれば、基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする、高吸着性超撥水性基板が提供される。
さらに本発明によれば、基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする高吸着性超撥水性基板を用いた微少量の液滴を操作する方法が提供される。
好ましくは、本発明の高吸着性超撥水性基板は、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させ、次いで上記で得られた高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定し、次いで高分子−金属複合フィルムの上面を剥離することにより得られる。
【0009】
本発明の別の側面によれば、(1)自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる工程、(2)上記工程(1)で得られた高分子−金属複合フィルム高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定する工程、及び(3)上記工程(2)で得られた高分子−金属複合フィルムの上面を剥離する工程を含む、上記した本発明の高吸着性超撥水性基板を製造する方法が提供される。
【0010】
好ましくは、ハニカム状多孔質フィルムの孔内に析出させる金属は、ニッケル/リン、ニッケル/ホウ素、ニッケル/コバルト、ニッケル/銅、ニッケル/フッ素、コバルト、銅、銀、スズ、金、白金、チタン、亜鉛、鉛、クロム、鉄、クロムを含む合金、鉄を含む合金、鉛を含む合金、あるいは上記した金属又は合金の酸化物又は硫化物である。
好ましくは、パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる。
好ましくは、パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に析出させる金属は、ニッケル/リンである。
【0011】
好ましくは、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液に浸し、次いで塩化パラジウム酸性水溶液に浸すこと、より好ましくは、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液と塩化パラジウム酸性水溶液の混合溶液に浸すことによって、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちでパラジウムが配位している高分子薄膜を形成、次いで、この高分子薄膜を無電解ニッケルめっき液に浸漬して金属を析出させる。
【0012】
好ましくは、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムは、両親媒性を有する単独のポリマー又はポリマーと両親媒性ポリマーとから成るポリマー混合物の疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム状多孔質フィルムである。
【発明の効果】
【0013】
従来の液滴操作は、基板全面で液滴をはじいたり、吸い取ったり、外部エネルギーに応答させて濡れ性を変えたりしていた。そのため、基板全面の物性が変化してしまうので、撥水状態を保ったまま液滴を操作するなど、高度な機能化は困難であった。そこで本発明では、基板全面が外部応答してしまうという問題点に着目し、撥水表面の一部に親水性部位を点在させ、電気や温度などの簡便に得られる外部エネルギーによって、撥水状態を保ったまま、点在する親水性部位のみの物性を変化させることを課題とした。
【0014】
従来技術と比較して、導電性、磁性、熱伝導性などの特性をもつ金属膜であるため、電場、磁場などの外部刺激によって、吸着質の吸着性を制御可能である。また、鋳型に使用したハニカム状多孔質フィルムの構造は、作製時の条件によって容易に変えられるため、間接的に複合基板の構造を変えることが可能である。
【0015】
本発明の高吸着性超撥水基板は、疎水性高分子から成るピラー構造由来の超撥水性と、親水性である金属基板由来の吸着性の両方を併せもつ機能性基板として利用できる。本発明の高吸着性超撥水基板は、微少水滴スケールでのセンシングや化学反応場や水滴操作場として利用可能である。従来技術と比較して、導電性、磁性、熱伝導性などの特性をもつ金属膜であるため、電場、磁場などの外部刺激によって、吸着質の吸着性を制御可能である。また、鋳型に使用したハニカム状多孔質フィルムの構造は、作製時の条件によって容易に変えられるため、間接的に複合基板の構造を変えることが可能である。本発明の高吸着性超撥水基板を用いることにより、数マイクロリットルの液滴のみならず、1マイクロリットル以下の微小液滴についても、目減りすることなく、かつ、エネルギーを使わずに移動・分離などの操作ができる。このような微小液滴操作は、液滴の制御・操作が活用されるマイクロフルイディクスデバイスや、コーティング技術などでの利用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の高吸着性超撥水基板は、基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする。
【0017】
本明細書に記載の実施例では、鋳型に用いたハニカム状多孔質フィルムの作製は、公知文献に従った。高吸着性超撥水基板の作製スキームを図2に示す。Capおよびポリスチレンの重量比1:10のハニカム状多孔質フィルムを、0.01wt%の窒素原子やリン原子を単位ユニットにもつ水溶性高分子(例えば、ポリアリルアミン塩酸塩;Mw 70,000)水溶液(A液)と0.01Mのパラジウム塩水溶液(例えば、塩化パラジウム酸性溶液)(B液)の混合溶液に浸し、ハニカム状多孔質フィルムの表面および空孔を覆うように、パラジウムの配位した高分子薄膜を形成させた。A液とB液の割合を変え、高分子濃度を調節することで、空孔に形成された高分子薄膜の被覆率を制御することが可能である。その後、無電解金属めっき液(例えばニッケルめっき液 pH 5.5:0.10M Ni(H2PO2)2・6H2O、0.19M H3BO3、0.03M CH3COONa、0.014M (NH4)2SO4)に浸漬し、上記操作で形成させた高分子薄膜上にのみ金属を析出させた。よく水洗後、接着テープによる剥離操作により、ハニカム状多孔質フィルムの柱構造を切断し、多数のピラー構造をもつ金属−高分子複合材料を作製した。ピラー構造の間隔や高さは、作製条件によって容易に制御可能なハニカム状多孔質フィルムの構造によって制御可能である。また、無電解めっきの金属種は、金、銀、銅、ニッケルなど多種に対応可能である。
【0018】
(A)ハニカム状多孔質フィルム
本発明で用いるハニカム状多孔質フィルムは、自己組織化により作製したものであり、例えば、溶液をキャストし、溶液表面上に結露した水滴を鋳型として多孔質膜を得ることによって作製することができる(本明細書中上記した非特許文献1〜3、及び特許文献1を参照)。自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムの一例としては、両親媒性を有する単独のポリマー、又は(両親媒性ポリマー以外の)ポリマーと両親媒性ポリマーとから成るポリマー混合物の疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム状多孔質フィルムを使用することができる。このようなハニカム状多孔質フィルムは、例えば、特開2001−157574号公報、特開2002−347107号公報又は特開2002−335949号公報に記載の方法に準じて作製することができる。具体的な製造方法について以下に説明する。
【0019】
ポリマーとしては、両親媒性を有する単独のポリマーを使用してもよいし、あるいは、(両親媒性ポリマー以外の)ポリマーと両親媒性を有するポリマーから成る複数のポリマーの混合物を使用してもよい。
【0020】
(両親媒性ポリマー以外の)その他のポリマーとしては、ポリスチレンやポリスチレン−ポリブタジエンエラストマー等のポリスチレン系エラストマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系エラストマー、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル系エラストマー、並びにポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ビスフェノールA等の脂肪族ポリカーボネート系エラストマー等が、有機溶媒への溶解性の観点から好ましい。
【0021】
両親媒性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体、アクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基或いはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、或いはヘパリンやデキストラン硫酸、核酸(DNAやRNA)などのアニオン性高分子と長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオンコンプレックス、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン等の水溶性タンパク質を親水性基とした両親媒性ポリマー等を利用することが望ましい。
【0022】
また、両親媒性を有する単独のポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体、ポリε−カプロラクトン−ポリエチレングリコールブロック共重合体、ポリリンゴ酸−ポリリンゴ酸アルキルエステルブロック共重合体などが挙げられる。
【0023】
本発明で用いるハニカム構造体を作成するに当たってはポリマー溶液上に微小な水滴粒子を形成させることが必要であることから、使用する有機溶媒としては非水溶性(疎水性)であることが必要である。疎水性有機溶媒の例としてはクロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトンなどの非水溶性ケトン類、二硫化炭素などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても、又、これらの溶媒を組み合わせた混合溶媒として使用してもよい。疎水性有機溶媒に溶解するポリマーと両親媒性ポリマーの両者の合計のポリマー濃度は、好ましくは0.01から10重量%であり、より好ましくは0.05から5重量%である。ポリマー濃度が0.01重量%より低いと得られるフィルムの力学強度が不足し望ましくない。また、ポリマー濃度が10重量%以上ではポリマー濃度が高くなりすぎ、十分なハニカム構造が得られない。
【0024】
また、ポリマーと両親媒性ポリマーを使用する場合、その組成比は特に限定されないが、好ましくは99:1〜50:50(wt/wt)の範囲内である。両親媒性ポリマー比が1以下の場合には、均一なハニカム構造が得るのが困難となる場合があり、又、両親媒性ポリマー比が50以上では得られるハニカム構造体の安定性、特に力学的な安定性が低下する場合がある。
【0025】
先ず、上記ポリマー有機溶媒溶液を基板上にキャストしハニカム構造体を調製する。基板としてはガラス、金属、シリコンウェハー等の無機材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン等の耐有機溶剤性に優れた高分子などを使用できる。
【0026】
ハニカム構造が形成される機構は次のように考えられる。疎水性有機溶媒が蒸発するとき、潜熱を奪う為に、キャストフィル表面の温度が下がり、微小な水の液滴がポリマー溶液表面に凝集、付着する。ポリマー溶液中の親水性部分の働きによって水と疎水性有機溶媒の間の表面張力が減少し、このため、水微粒子が凝集して1つの塊になろうとするに際し、安定化される。溶媒が蒸発していくに伴い、ヘキサゴナルの形をした液滴が最密充填した形で並んでいき、最後に、水が飛び、ポリマーが規則正しくハニカム状に並んだ形として残る。
【0027】
従って、該フィルムを調製する環境としては、
(1)疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、高湿度空気を吹き付けることで該有機溶媒を徐々に蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させる方法;並びに
(2)疎水性有機溶媒溶液を、相対湿度50〜95%の大気下で基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させる方法;
などが好ましい。
【0028】
このようにしてできるハニカム構造体のひとつひとつ(個々)の大きさは、特には限定されないが、好ましくは0.1から100μmであり、より好ましくは0.1から10μmである。
【0029】
(B)ハニカム状多孔質フィルムへの金属の析出
ハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させるためには、めっき法を採用することができる。本発明においては、例えば、パラジウム触媒による無電解めっき、無電解めっきによって析出したニッケルとの置換めっき、又は無電解めっきによって析出したニッケルを電極とした電気めっきによって、ハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させることができる。パラジウム触媒による無電解めっきとしては、ニッケル/リン、ニッケル/ホウ素、ニッケル/コバルト、ニッケル/銅、ニッケル/フッ素、コバルト、銅、銀、スズなどを金属として析出することができる。無電解めっきによって析出したニッケルとの置換めっきとしては、金、白金、又はチタンなどを金属として析出することができる。また、無電解めっきによって析出したニッケルを電極とした電気めっきとしては、金、白金、亜鉛、鉛、クロム、鉄、クロムを含む合金、鉄を含む合金、鉛を含む合金、および、上記した金属又は合金の酸化物又は硫化物などを金属として析出することができる。なお、酸化物は酸素下で加熱することにより得られ、硫化物は酸化物と硫黄化合物の反応に得られる。
【0030】
上記した無電解めっきのための触媒としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウム、硫酸パラジウムなど、水または酸性水に可溶なパラジウム化合物を用いることができる。また、無電解ニッケル/リンめっきや無電解銅めっきのような自己触媒の作用をもつ金属めっきであれば、ニッケル化合物や銅化合物も触媒となりうる。
【0031】
パラジウム触媒による無電解めっきにおいては、例えば、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液と塩化パラジウム酸性水溶液の混合溶液に浸すことによって、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちでパラジウムが配位している高分子薄膜を形成し、次いで、この高分子薄膜を無電解ニッケルめっき液に浸漬して金属を析出させることができる。パラジウムは、フィルム表面での酸化還元反応により金属を析出させるための触媒である。
【0032】
ここで使用可能な水溶性高分子としては、水溶性、且つ、無電解めっきの触媒(例えばパラジウム)の配位する部位(例えば窒素原子、リン原子、カルボキシル基、水酸基)をもつ高分子であれば、共重合体でもかまわない。例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、エポキシ系高分子、ホルマリン系高分子、セルロース等の天然高分子、部分的にアルキル4級化したポリ4ビニルピリジン等のカチオン性高分子、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性高分子が挙げられる。
【0033】
(C)ピラー構造の作製
上記(B)で得られた高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定し、さらに高分子−金属複合フィルムの上面を剥離することによって、基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする本発明の高吸着性超撥水性基板を製造することができる。
【0034】
本発明で用いることができる基板としては、アクリル基板やPET基板などの高分子基板、ガラス基板、アルミ板や銅板などの金属基板などを用いることができ、素材や形状は特に限定されない。粘着剤が使用可能な基板であれば任意の基板を用いることができる。
【0035】
本発明で用いることができる粘着剤としては、エポキシ系硬化剤や木工用ボンドなどの接着剤、両面テープや耐震用シリコンゲルシートなどの粘着剤など、金属被膜と支持基板を破壊しないものであれば特に限定されない。
【0036】
(D)高吸着性超撥水基板の用途
近年の医療業界では、血液などを利用したバイオ試験がなされている。また、多くの試験を同時に行う必要がある。一つひとつの検出解像度は高いが、サンプルの操作量に限界があるため、多量のサンプルが必要になる場合がある。本発明による高吸着性超撥水基板は、ごく微量の水滴のマニピュレーションを可能とするため、より効率よく、且つ、微量でのバイオ試験を可能とする材料として期待できる。また、バイオ試験に限らず、様々なマイクロリアクターとしても十分期待できる。
【0037】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
親水部をもつ超撥水基板は、疎水性高分子からなるハニカム状多孔質フィルムの一部の孔内に親水性金属を無電解めっきにより析出させ、その金属面を基板に固定後に、ハニカム状多孔質フィルムを2枚に割くことで作製した。作製スキームを図1に示す。以下に詳細な作製法を示す。
【0039】
(1)ハニカム状多孔質フィルムの作製
ハニカム状多孔質フィルムの作製は文献(T. Nishikawa, R. Ookura, J. Nishida, K. Arai, J. Hayashi, N. Kurono, T. Sawadaishi, M. Hara, M. Shimomura, Langmuir, 2002, 18(15), 5734.)に従い、CapとPSの混合クロロホルム溶液(1:10)を用いた。Capは、以下の化1に示したカプロン酸誘導体とアクリレートの共重合体を用い、PSはポリスチレン(Mw 〜200,000、Aldrich)を用いた。
【0040】
【化1】
【0041】
1.0 g/L 〜 10 g/Lの混合クロロホルム溶液を個体基板上(主にガラス)に10μL 〜
10mL滴下し、高湿度(40 〜 70%)の空気を吹き付けた。溶液は次第に白濁、干渉色が観察され、完全に溶媒、水滴が蒸発した後に光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)で構造を観察すると、ハニカム状の多孔質膜が形成されているのが観察された(図2)。膜の孔は膜内でお互いが連結しており、膜の中心を通る平面に関して上下がほぼ対象となっており、三次元的に結合した構造を持っていた。特開2004-330330号公報によると、孔径はキャスト量を変えることによって、200 nm 〜 15 μmまで調節することが可能である。
【0042】
(2)触媒核を含む高分子薄膜の形成
上記(1)で作製したハニカム状多孔質フィルムを、窒素原子もしくはリン原子を単位ユニットにもつ水溶性高分子(例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、Aldrich;Mw 70,000)の0.01重量%水溶液(A液)と0.005重量%のパラジウム塩水溶液(例えば、塩化パラジウム塩酸水溶液)(B液)の混合溶液に液温25度で5分間浸した。塩化パラジウム酸性水溶液は、1 g/Lの塩化パラジウム(Aldrich)水溶液を用いた。このとき、ハニカム状多孔質フィルムの孔内に満たされている空気が、混合溶液の浸入を妨げるため、混合溶液は孔内へ浸入していない。混合溶液中の水が蒸発すると、ハニカム状多孔質フィルムの空孔の一部を覆うかたちで、パラジウムの配位している高分子薄膜が形成された。ハニカム状多孔質フィルムへの浸漬時の液温を上昇させると、ハニカム状多孔質フィルムの濡れ性が向上して一部の孔内へ混合溶液が浸入し、高分子薄膜による空孔の覆う割合が少なくなる。60度まで上昇させた場合は、空孔を覆う割合は全体の孔数に対して約70%である。つまり、混合溶液の空孔へ浸入する割合を、混合溶液の液温で0〜30%まで調節可能である。
【0043】
(3)無電解金属めっき
析出させる金属としてニッケル/リン合金を用いた。上記(2)で作製した空孔を覆うかたちでパラジウムの配位している高分子薄膜をもつハニカム状多孔質フィルムを、液温70度の無電解ニッケルめっき液に浸漬した。無電解ニッケルめっき液は7.4 g/Lの次亜リン酸ニッケル六水和物(関東化学)、5.9 g/Lのホウ酸(関東化学)、1.2 g/Lの酢酸ナトリウム(関東化学)、0.65 g/Lの硫酸アンモニウム(関東化学)の水溶液を用いた。純水でよく洗浄し、室温で乾燥すると、部分的に空孔をもつ金属被覆ハニカム状多孔質フィルムが得られた。これは、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちで形成されたパラジウムの配位している高分子薄膜上の、パラジウムを触媒とした酸化還元反応により、ニッケル/リン合金が高分子薄膜上にのみ析出して得られた構造である。
【0044】
(4)親水部をもつ撥水性基板
ハニカム状多孔質フィルムからの撥水性表面の作製は、文献(H. Yabu, M. Takebayashi, M Tanaka, and M. Shimomura, Langmuir, 2005, 21(8), 3235)を参考にした。上記(3)で得られた部分的に空孔をもつ金属被覆ハニカム状多孔質フィルムの金属面をエポキシ樹脂系接着剤などの粘着剤(例えばハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社のアラルダイト・ラピッド)でアクリル基板などの支持基板へ固定し、ハニカム状多孔質フィルムを2枚に割くと、支持基板側の表面に、ドーム状の金属が点在した高分子の剣山構造が得られた(図3)。この表面は、高分子の剣山構造の撥水性とドーム状金属の親水性の両方の性質を有する。撥水性の度合いは剣山構造の間隔や高分子の素材などで調節でき、親水性の度合いは全体の空孔に対するドーム状金属の割合で調節できる。この剣山構造の間隔や高分子の素材は、上記(1)のハニカム状多孔質フィルムの作製時に容易に制御でき、ドーム状金属の割合は、上記(2)の触媒核をもつ高分子薄膜によるハニカム空孔の覆う割合を制御することで間接的に制御可能である。従って、親水性と撥水性の割合を自在に制御可能な撥水性基板を作製することが可能である。
【0045】
(5)液滴移動
撥水性基板の親水部の割合を調節し、そのために発現する水滴吸着力の違いを利用して、基板移動にかかるエネルギー以外の動力不要な液適量の減損のない液滴移動を提供する。
【0046】
(5−1)液滴吸着力の異なる撥水性基板を用いた場合
水滴を強力にはじく撥水性基板A(ドーム状金属の割合が5%)上に作製した5マイクロリットルの水滴に、5マイクロリットルの水滴を吸着可能な撥水性基板B(ドーム状金属の割合10%)を上方から接触させる。接触後に引き上げると、水滴は水滴形状を保持した状態で撥水性基板Bへ吸着している。その後、移動させたい基板へ水滴を接触させると、水滴は撥水性基板Bから脱着して、移動させたい基板へ移る。移動させたい基板は、撥水性基板Bと同等の水滴吸着性をもつ上記撥水性基板か、それ以下の水滴吸着性をもつ上記撥水性基板C(例えばドーム状金属の割合15%)(図4)、または、ガラス基板などの親水性基板を使用可能である。輸送可能な液適量は、吸着できる液適量と同等であり、その量は撥水性基板の構造で制御でき、最大10マイクロリットルである。
【0047】
(5−2)液滴吸着力の同じ超撥水基板を用いた場合
5マイクロリットルの水滴を吸着可能な撥水性基板B(ドーム状金属の割合10%)上に、5マイクロリットルの水滴を作製する。基板Bを反転させ、水滴が重力に対して逆向きに吸着している状態で、同じ物性をもつ別の撥水性基板B'へ上方から接触後に引き上げると、水滴は水滴形状を保持した状態で撥水性基板B'へ吸着している。これは、重力に対して逆向きに液滴を吸着する力が重力と同じ向きで吸着する力よりも小さいためにおこる。同様の操作で、撥水性基板B'から撥水性基板Bへの移動もでき、繰り返し、水滴を量の変化無く移動させることが可能である(図5)。輸送可能な液適量は、吸着できる液適量と同等であり、その量は撥水性基板の構造で制御でき、最大10マイクロリットルである。上記操作(1)と組み合わせることで、基板の移動時にかかる動力のみが必要な省エネルギーな液滴移動が可能となる。
【0048】
(6)液滴ピッキング
基板と液滴が1点で接触している場合には液滴の自重により落下する撥水性基板を
用い、2点で挟むことで液滴の落下を防ぎ、その後、接点を1点以下にすることで落下
させることができる、基板移動にかかるエネルギー以外の動力不要なピッキングによる
液適量の減損のない液滴操作を提供する。
【0049】
20マイクロリットルの水滴を接点が1点では吸着できない撥水性基板D(ドーム状金属の割合18%)を2枚用い、20マイクロリットルの水滴を2点で挟むことで、その接点で液滴状態を保持したまま吸着させる。液滴を落下させたい場所へその状態を保ったまま移動し、その後、2枚の基板の距離を離していくと、接点が1点以下になったところで液滴が脱着し落下する(図6)。操作可能な液適量は、吸着できる液適量と同等であり、その量は撥水性基板の構造で制御でき、最大50マイクロリットルである。
【0050】
(7)液滴分離
2ボルト程度の微小な電気エネルギーにより吸着性を変化させ、一方の液滴のみを超撥水状態を保持したまま基板に固定し、他方を落下させることで分離する技術を提供する。
熱エネルギーなどの電気エネルギー以外のエネルギーでも本発明で得られる撥水性基板をもちいると、同様の液滴操作が可能である。また、液適量の違いによっても吸着の度合いに違いが生じ、分離することができる。
【0051】
(7−1)電気エネルギーで固定化することによる液滴分離
10マイクロリットルの電解質を含む液滴(例えば0.05重量%のNaCl)を撥水性基板Aへ2個作製し、一方のみに2ボルト程度の小さい電気エネルギーを与える。電気エネルギーを与えた液滴のみ、基板との接着点における吸着力が著しく向上し、その後、基板を傾けても脱着しない。電気エネルギーを与えてない液滴は基板から脱着し、2つの微量液滴を分離できる(図7)。分離可能な液適量は、吸着できる液適量と同等であり、その量は撥水性基板の構造で制御でき、最大50マイクロリットルである。
【0052】
(7−2)吸着できる液適量の違いによる液滴分離
10マイクロリットルの水滴と5マイクロリットルの水滴を、5マイクロリットルの水滴を吸着可能な撥水性基板Bへ作製する。その後、基板を傾けると10マイクロリットルの液滴は脱着するが、5マイクロリットルの水滴は脱着しないため、2つの微量水滴をその液量の違いにより分離できる(図8)。分離可能な液適量は、吸着できる液適量と同等であり、その量は撥水性基板の構造で制御でき、最大10マイクロリットルである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、親水部をもつ超撥水基板の作製スキームを示す。
【図2】図2は、ハニカム状多孔質フィルムを示す。
【図3】図3は、親水部をもつ撥水性基板の構造を示す。
【図4】図4は、液滴吸着力の異なる撥水性基板を用いた場合の液滴移動を示す。
【図5】図5は、液滴吸着力の同じ超撥水基板を用いた場合の液滴移動を示す。
【図6】図6は、液滴ピッキングを示す。
【図7】図7は、電気エネルギーで固定化することによる液滴分離を示す。
【図8】図8は、液適量の違いによる液滴分離を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム状多孔質フィルムを利用した高吸着性超撥水基板、及びそれを用いた微少量の液滴操作、およびその基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の自己組織化により構造を作製する試みがなされている。特に溶液をキャストし、溶液表面上に結露した水滴を鋳型として多孔質膜を得るハニカム構造化フィルムの作製は、様々な材料から数百nm〜数十μmの孔径を持つフィルムを得ることが簡単に出来るため、生体適合性材料などから細胞培養基板などへの応用が研究されている(非特許文献1)。特許文献1には、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムから成る鋳型にパターン転写用材料を充填することによって、ハニカム状多孔質フィルムのパターンを該パターン転写用材料に転写することを含む、メゾ構造体の作製方法が記載されている。
【0003】
撥水性基板に関する公知技術では、超撥水構造をもつ蓮の葉の構造を模した凹凸構造をつくることで、接触角178度(完全な撥水状態は180度)とほとんど濡れない表面が作製されている(非特許文献2)。また、超撥水表面の機能化を目指し、光や電気などの外部エネルギーにより撥水状態から親水状態へ変化させる試みがなされている(光触媒など)。
【0004】
また、液滴操作に関連する報告としては、特許文献2で、親水領域をマイクロメートル以下にして細胞単離をしているが、液滴自体の操作を行うものではない。また、特許文献2では、親水領域で液滴を保持している。特許文献3は、撥水表面での光ピンセットによる液滴操作を記載し、疎水領域に親水領域のパターンを作製しているが、液滴操作を試みるものではない。
【0005】
【非特許文献1】T. NishikawaR. Ookura, J. Nishida, K. Arai, J. Hayashi, N. Kurono, T. Sawadaishi, M. Hara, M. Shimomura, Langmuir, 2002, 18(15), 5734
【非特許文献2】E. Hosono et, al., J. Am. Chem. Soc., 127, 13458 (2005)
【特許文献1】特開2004−330330号公報
【特許文献2】特開平11−304666号公報
【特許文献3】特開平11−218691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高吸着性で、吸着性の制御が可能で、かつ簡便なプロセスで製造可能な超撥水基板、並びにその製造方法を提供することを解決すべき課題とした。特に本発明は、微量の液体を液滴として操作し、輸送・移動、分離、混合することが可能な超撥水基板、並びにその製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、先ず、自己組織化により作製した、疎水性高分子と両親媒性高分子とから成るハニカム状多孔質フィルムを鋳型とし、その表面の親水疎水性を利用した選択的な無電解めっきにより、表面に一層の金属膜を析出させた。その後、高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定し、次いで高分子−金属複合フィルムの上面を剥離することによって、ハニカム状多孔質フィルムの柱構造を切断し、金属膜状に多数のポリマーの突起物が存在する複合基板を作製した。得られた基板は、疎水性高分子から成るピラー構造由来の超撥水性と、親水性である金属基板由来の吸着性の両方を併せもつ機能性基板として利用できる。このような高吸着性超撥水基板は、微少水滴スケールでのセンシングや化学反応場や水滴操作場として利用可能であることを見出した。特に、本発明のマイクロメートルスケールの親水性部が点在した超撥水基板表面は、その親水性部に吸着性をもたせることが可能であり、その親水性部の割合で吸着力を制御できる。その結果、非常に弱い力で液滴操作が可能となる。本発明は親水部でのみ液滴を操作するものではなく、基板全体がマイクロリットルスケールの液滴を操作可能であるという特徴を有している。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0008】
即ち、本発明によれば、基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする、高吸着性超撥水性基板が提供される。
さらに本発明によれば、基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする高吸着性超撥水性基板を用いた微少量の液滴を操作する方法が提供される。
好ましくは、本発明の高吸着性超撥水性基板は、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させ、次いで上記で得られた高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定し、次いで高分子−金属複合フィルムの上面を剥離することにより得られる。
【0009】
本発明の別の側面によれば、(1)自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる工程、(2)上記工程(1)で得られた高分子−金属複合フィルム高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定する工程、及び(3)上記工程(2)で得られた高分子−金属複合フィルムの上面を剥離する工程を含む、上記した本発明の高吸着性超撥水性基板を製造する方法が提供される。
【0010】
好ましくは、ハニカム状多孔質フィルムの孔内に析出させる金属は、ニッケル/リン、ニッケル/ホウ素、ニッケル/コバルト、ニッケル/銅、ニッケル/フッ素、コバルト、銅、銀、スズ、金、白金、チタン、亜鉛、鉛、クロム、鉄、クロムを含む合金、鉄を含む合金、鉛を含む合金、あるいは上記した金属又は合金の酸化物又は硫化物である。
好ましくは、パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる。
好ましくは、パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に析出させる金属は、ニッケル/リンである。
【0011】
好ましくは、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液に浸し、次いで塩化パラジウム酸性水溶液に浸すこと、より好ましくは、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液と塩化パラジウム酸性水溶液の混合溶液に浸すことによって、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちでパラジウムが配位している高分子薄膜を形成、次いで、この高分子薄膜を無電解ニッケルめっき液に浸漬して金属を析出させる。
【0012】
好ましくは、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムは、両親媒性を有する単独のポリマー又はポリマーと両親媒性ポリマーとから成るポリマー混合物の疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム状多孔質フィルムである。
【発明の効果】
【0013】
従来の液滴操作は、基板全面で液滴をはじいたり、吸い取ったり、外部エネルギーに応答させて濡れ性を変えたりしていた。そのため、基板全面の物性が変化してしまうので、撥水状態を保ったまま液滴を操作するなど、高度な機能化は困難であった。そこで本発明では、基板全面が外部応答してしまうという問題点に着目し、撥水表面の一部に親水性部位を点在させ、電気や温度などの簡便に得られる外部エネルギーによって、撥水状態を保ったまま、点在する親水性部位のみの物性を変化させることを課題とした。
【0014】
従来技術と比較して、導電性、磁性、熱伝導性などの特性をもつ金属膜であるため、電場、磁場などの外部刺激によって、吸着質の吸着性を制御可能である。また、鋳型に使用したハニカム状多孔質フィルムの構造は、作製時の条件によって容易に変えられるため、間接的に複合基板の構造を変えることが可能である。
【0015】
本発明の高吸着性超撥水基板は、疎水性高分子から成るピラー構造由来の超撥水性と、親水性である金属基板由来の吸着性の両方を併せもつ機能性基板として利用できる。本発明の高吸着性超撥水基板は、微少水滴スケールでのセンシングや化学反応場や水滴操作場として利用可能である。従来技術と比較して、導電性、磁性、熱伝導性などの特性をもつ金属膜であるため、電場、磁場などの外部刺激によって、吸着質の吸着性を制御可能である。また、鋳型に使用したハニカム状多孔質フィルムの構造は、作製時の条件によって容易に変えられるため、間接的に複合基板の構造を変えることが可能である。本発明の高吸着性超撥水基板を用いることにより、数マイクロリットルの液滴のみならず、1マイクロリットル以下の微小液滴についても、目減りすることなく、かつ、エネルギーを使わずに移動・分離などの操作ができる。このような微小液滴操作は、液滴の制御・操作が活用されるマイクロフルイディクスデバイスや、コーティング技術などでの利用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の高吸着性超撥水基板は、基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする。
【0017】
本明細書に記載の実施例では、鋳型に用いたハニカム状多孔質フィルムの作製は、公知文献に従った。高吸着性超撥水基板の作製スキームを図2に示す。Capおよびポリスチレンの重量比1:10のハニカム状多孔質フィルムを、0.01wt%の窒素原子やリン原子を単位ユニットにもつ水溶性高分子(例えば、ポリアリルアミン塩酸塩;Mw 70,000)水溶液(A液)と0.01Mのパラジウム塩水溶液(例えば、塩化パラジウム酸性溶液)(B液)の混合溶液に浸し、ハニカム状多孔質フィルムの表面および空孔を覆うように、パラジウムの配位した高分子薄膜を形成させた。A液とB液の割合を変え、高分子濃度を調節することで、空孔に形成された高分子薄膜の被覆率を制御することが可能である。その後、無電解金属めっき液(例えばニッケルめっき液 pH 5.5:0.10M Ni(H2PO2)2・6H2O、0.19M H3BO3、0.03M CH3COONa、0.014M (NH4)2SO4)に浸漬し、上記操作で形成させた高分子薄膜上にのみ金属を析出させた。よく水洗後、接着テープによる剥離操作により、ハニカム状多孔質フィルムの柱構造を切断し、多数のピラー構造をもつ金属−高分子複合材料を作製した。ピラー構造の間隔や高さは、作製条件によって容易に制御可能なハニカム状多孔質フィルムの構造によって制御可能である。また、無電解めっきの金属種は、金、銀、銅、ニッケルなど多種に対応可能である。
【0018】
(A)ハニカム状多孔質フィルム
本発明で用いるハニカム状多孔質フィルムは、自己組織化により作製したものであり、例えば、溶液をキャストし、溶液表面上に結露した水滴を鋳型として多孔質膜を得ることによって作製することができる(本明細書中上記した非特許文献1〜3、及び特許文献1を参照)。自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムの一例としては、両親媒性を有する単独のポリマー、又は(両親媒性ポリマー以外の)ポリマーと両親媒性ポリマーとから成るポリマー混合物の疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム状多孔質フィルムを使用することができる。このようなハニカム状多孔質フィルムは、例えば、特開2001−157574号公報、特開2002−347107号公報又は特開2002−335949号公報に記載の方法に準じて作製することができる。具体的な製造方法について以下に説明する。
【0019】
ポリマーとしては、両親媒性を有する単独のポリマーを使用してもよいし、あるいは、(両親媒性ポリマー以外の)ポリマーと両親媒性を有するポリマーから成る複数のポリマーの混合物を使用してもよい。
【0020】
(両親媒性ポリマー以外の)その他のポリマーとしては、ポリスチレンやポリスチレン−ポリブタジエンエラストマー等のポリスチレン系エラストマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系エラストマー、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル系エラストマー、並びにポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ビスフェノールA等の脂肪族ポリカーボネート系エラストマー等が、有機溶媒への溶解性の観点から好ましい。
【0021】
両親媒性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体、アクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基或いはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、或いはヘパリンやデキストラン硫酸、核酸(DNAやRNA)などのアニオン性高分子と長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオンコンプレックス、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン等の水溶性タンパク質を親水性基とした両親媒性ポリマー等を利用することが望ましい。
【0022】
また、両親媒性を有する単独のポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体、ポリε−カプロラクトン−ポリエチレングリコールブロック共重合体、ポリリンゴ酸−ポリリンゴ酸アルキルエステルブロック共重合体などが挙げられる。
【0023】
本発明で用いるハニカム構造体を作成するに当たってはポリマー溶液上に微小な水滴粒子を形成させることが必要であることから、使用する有機溶媒としては非水溶性(疎水性)であることが必要である。疎水性有機溶媒の例としてはクロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトンなどの非水溶性ケトン類、二硫化炭素などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても、又、これらの溶媒を組み合わせた混合溶媒として使用してもよい。疎水性有機溶媒に溶解するポリマーと両親媒性ポリマーの両者の合計のポリマー濃度は、好ましくは0.01から10重量%であり、より好ましくは0.05から5重量%である。ポリマー濃度が0.01重量%より低いと得られるフィルムの力学強度が不足し望ましくない。また、ポリマー濃度が10重量%以上ではポリマー濃度が高くなりすぎ、十分なハニカム構造が得られない。
【0024】
また、ポリマーと両親媒性ポリマーを使用する場合、その組成比は特に限定されないが、好ましくは99:1〜50:50(wt/wt)の範囲内である。両親媒性ポリマー比が1以下の場合には、均一なハニカム構造が得るのが困難となる場合があり、又、両親媒性ポリマー比が50以上では得られるハニカム構造体の安定性、特に力学的な安定性が低下する場合がある。
【0025】
先ず、上記ポリマー有機溶媒溶液を基板上にキャストしハニカム構造体を調製する。基板としてはガラス、金属、シリコンウェハー等の無機材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン等の耐有機溶剤性に優れた高分子などを使用できる。
【0026】
ハニカム構造が形成される機構は次のように考えられる。疎水性有機溶媒が蒸発するとき、潜熱を奪う為に、キャストフィル表面の温度が下がり、微小な水の液滴がポリマー溶液表面に凝集、付着する。ポリマー溶液中の親水性部分の働きによって水と疎水性有機溶媒の間の表面張力が減少し、このため、水微粒子が凝集して1つの塊になろうとするに際し、安定化される。溶媒が蒸発していくに伴い、ヘキサゴナルの形をした液滴が最密充填した形で並んでいき、最後に、水が飛び、ポリマーが規則正しくハニカム状に並んだ形として残る。
【0027】
従って、該フィルムを調製する環境としては、
(1)疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、高湿度空気を吹き付けることで該有機溶媒を徐々に蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させる方法;並びに
(2)疎水性有機溶媒溶液を、相対湿度50〜95%の大気下で基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させる方法;
などが好ましい。
【0028】
このようにしてできるハニカム構造体のひとつひとつ(個々)の大きさは、特には限定されないが、好ましくは0.1から100μmであり、より好ましくは0.1から10μmである。
【0029】
(B)ハニカム状多孔質フィルムへの金属の析出
ハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させるためには、めっき法を採用することができる。本発明においては、例えば、パラジウム触媒による無電解めっき、無電解めっきによって析出したニッケルとの置換めっき、又は無電解めっきによって析出したニッケルを電極とした電気めっきによって、ハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させることができる。パラジウム触媒による無電解めっきとしては、ニッケル/リン、ニッケル/ホウ素、ニッケル/コバルト、ニッケル/銅、ニッケル/フッ素、コバルト、銅、銀、スズなどを金属として析出することができる。無電解めっきによって析出したニッケルとの置換めっきとしては、金、白金、又はチタンなどを金属として析出することができる。また、無電解めっきによって析出したニッケルを電極とした電気めっきとしては、金、白金、亜鉛、鉛、クロム、鉄、クロムを含む合金、鉄を含む合金、鉛を含む合金、および、上記した金属又は合金の酸化物又は硫化物などを金属として析出することができる。なお、酸化物は酸素下で加熱することにより得られ、硫化物は酸化物と硫黄化合物の反応に得られる。
【0030】
上記した無電解めっきのための触媒としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウム、硫酸パラジウムなど、水または酸性水に可溶なパラジウム化合物を用いることができる。また、無電解ニッケル/リンめっきや無電解銅めっきのような自己触媒の作用をもつ金属めっきであれば、ニッケル化合物や銅化合物も触媒となりうる。
【0031】
パラジウム触媒による無電解めっきにおいては、例えば、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液と塩化パラジウム酸性水溶液の混合溶液に浸すことによって、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちでパラジウムが配位している高分子薄膜を形成し、次いで、この高分子薄膜を無電解ニッケルめっき液に浸漬して金属を析出させることができる。パラジウムは、フィルム表面での酸化還元反応により金属を析出させるための触媒である。
【0032】
ここで使用可能な水溶性高分子としては、水溶性、且つ、無電解めっきの触媒(例えばパラジウム)の配位する部位(例えば窒素原子、リン原子、カルボキシル基、水酸基)をもつ高分子であれば、共重合体でもかまわない。例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、エポキシ系高分子、ホルマリン系高分子、セルロース等の天然高分子、部分的にアルキル4級化したポリ4ビニルピリジン等のカチオン性高分子、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性高分子が挙げられる。
【0033】
(C)ピラー構造の作製
上記(B)で得られた高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定し、さらに高分子−金属複合フィルムの上面を剥離することによって、基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする本発明の高吸着性超撥水性基板を製造することができる。
【0034】
本発明で用いることができる基板としては、アクリル基板やPET基板などの高分子基板、ガラス基板、アルミ板や銅板などの金属基板などを用いることができ、素材や形状は特に限定されない。粘着剤が使用可能な基板であれば任意の基板を用いることができる。
【0035】
本発明で用いることができる粘着剤としては、エポキシ系硬化剤や木工用ボンドなどの接着剤、両面テープや耐震用シリコンゲルシートなどの粘着剤など、金属被膜と支持基板を破壊しないものであれば特に限定されない。
【0036】
(D)高吸着性超撥水基板の用途
近年の医療業界では、血液などを利用したバイオ試験がなされている。また、多くの試験を同時に行う必要がある。一つひとつの検出解像度は高いが、サンプルの操作量に限界があるため、多量のサンプルが必要になる場合がある。本発明による高吸着性超撥水基板は、ごく微量の水滴のマニピュレーションを可能とするため、より効率よく、且つ、微量でのバイオ試験を可能とする材料として期待できる。また、バイオ試験に限らず、様々なマイクロリアクターとしても十分期待できる。
【0037】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
親水部をもつ超撥水基板は、疎水性高分子からなるハニカム状多孔質フィルムの一部の孔内に親水性金属を無電解めっきにより析出させ、その金属面を基板に固定後に、ハニカム状多孔質フィルムを2枚に割くことで作製した。作製スキームを図1に示す。以下に詳細な作製法を示す。
【0039】
(1)ハニカム状多孔質フィルムの作製
ハニカム状多孔質フィルムの作製は文献(T. Nishikawa, R. Ookura, J. Nishida, K. Arai, J. Hayashi, N. Kurono, T. Sawadaishi, M. Hara, M. Shimomura, Langmuir, 2002, 18(15), 5734.)に従い、CapとPSの混合クロロホルム溶液(1:10)を用いた。Capは、以下の化1に示したカプロン酸誘導体とアクリレートの共重合体を用い、PSはポリスチレン(Mw 〜200,000、Aldrich)を用いた。
【0040】
【化1】
【0041】
1.0 g/L 〜 10 g/Lの混合クロロホルム溶液を個体基板上(主にガラス)に10μL 〜
10mL滴下し、高湿度(40 〜 70%)の空気を吹き付けた。溶液は次第に白濁、干渉色が観察され、完全に溶媒、水滴が蒸発した後に光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)で構造を観察すると、ハニカム状の多孔質膜が形成されているのが観察された(図2)。膜の孔は膜内でお互いが連結しており、膜の中心を通る平面に関して上下がほぼ対象となっており、三次元的に結合した構造を持っていた。特開2004-330330号公報によると、孔径はキャスト量を変えることによって、200 nm 〜 15 μmまで調節することが可能である。
【0042】
(2)触媒核を含む高分子薄膜の形成
上記(1)で作製したハニカム状多孔質フィルムを、窒素原子もしくはリン原子を単位ユニットにもつ水溶性高分子(例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、Aldrich;Mw 70,000)の0.01重量%水溶液(A液)と0.005重量%のパラジウム塩水溶液(例えば、塩化パラジウム塩酸水溶液)(B液)の混合溶液に液温25度で5分間浸した。塩化パラジウム酸性水溶液は、1 g/Lの塩化パラジウム(Aldrich)水溶液を用いた。このとき、ハニカム状多孔質フィルムの孔内に満たされている空気が、混合溶液の浸入を妨げるため、混合溶液は孔内へ浸入していない。混合溶液中の水が蒸発すると、ハニカム状多孔質フィルムの空孔の一部を覆うかたちで、パラジウムの配位している高分子薄膜が形成された。ハニカム状多孔質フィルムへの浸漬時の液温を上昇させると、ハニカム状多孔質フィルムの濡れ性が向上して一部の孔内へ混合溶液が浸入し、高分子薄膜による空孔の覆う割合が少なくなる。60度まで上昇させた場合は、空孔を覆う割合は全体の孔数に対して約70%である。つまり、混合溶液の空孔へ浸入する割合を、混合溶液の液温で0〜30%まで調節可能である。
【0043】
(3)無電解金属めっき
析出させる金属としてニッケル/リン合金を用いた。上記(2)で作製した空孔を覆うかたちでパラジウムの配位している高分子薄膜をもつハニカム状多孔質フィルムを、液温70度の無電解ニッケルめっき液に浸漬した。無電解ニッケルめっき液は7.4 g/Lの次亜リン酸ニッケル六水和物(関東化学)、5.9 g/Lのホウ酸(関東化学)、1.2 g/Lの酢酸ナトリウム(関東化学)、0.65 g/Lの硫酸アンモニウム(関東化学)の水溶液を用いた。純水でよく洗浄し、室温で乾燥すると、部分的に空孔をもつ金属被覆ハニカム状多孔質フィルムが得られた。これは、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちで形成されたパラジウムの配位している高分子薄膜上の、パラジウムを触媒とした酸化還元反応により、ニッケル/リン合金が高分子薄膜上にのみ析出して得られた構造である。
【0044】
(4)親水部をもつ撥水性基板
ハニカム状多孔質フィルムからの撥水性表面の作製は、文献(H. Yabu, M. Takebayashi, M Tanaka, and M. Shimomura, Langmuir, 2005, 21(8), 3235)を参考にした。上記(3)で得られた部分的に空孔をもつ金属被覆ハニカム状多孔質フィルムの金属面をエポキシ樹脂系接着剤などの粘着剤(例えばハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社のアラルダイト・ラピッド)でアクリル基板などの支持基板へ固定し、ハニカム状多孔質フィルムを2枚に割くと、支持基板側の表面に、ドーム状の金属が点在した高分子の剣山構造が得られた(図3)。この表面は、高分子の剣山構造の撥水性とドーム状金属の親水性の両方の性質を有する。撥水性の度合いは剣山構造の間隔や高分子の素材などで調節でき、親水性の度合いは全体の空孔に対するドーム状金属の割合で調節できる。この剣山構造の間隔や高分子の素材は、上記(1)のハニカム状多孔質フィルムの作製時に容易に制御でき、ドーム状金属の割合は、上記(2)の触媒核をもつ高分子薄膜によるハニカム空孔の覆う割合を制御することで間接的に制御可能である。従って、親水性と撥水性の割合を自在に制御可能な撥水性基板を作製することが可能である。
【0045】
(5)液滴移動
撥水性基板の親水部の割合を調節し、そのために発現する水滴吸着力の違いを利用して、基板移動にかかるエネルギー以外の動力不要な液適量の減損のない液滴移動を提供する。
【0046】
(5−1)液滴吸着力の異なる撥水性基板を用いた場合
水滴を強力にはじく撥水性基板A(ドーム状金属の割合が5%)上に作製した5マイクロリットルの水滴に、5マイクロリットルの水滴を吸着可能な撥水性基板B(ドーム状金属の割合10%)を上方から接触させる。接触後に引き上げると、水滴は水滴形状を保持した状態で撥水性基板Bへ吸着している。その後、移動させたい基板へ水滴を接触させると、水滴は撥水性基板Bから脱着して、移動させたい基板へ移る。移動させたい基板は、撥水性基板Bと同等の水滴吸着性をもつ上記撥水性基板か、それ以下の水滴吸着性をもつ上記撥水性基板C(例えばドーム状金属の割合15%)(図4)、または、ガラス基板などの親水性基板を使用可能である。輸送可能な液適量は、吸着できる液適量と同等であり、その量は撥水性基板の構造で制御でき、最大10マイクロリットルである。
【0047】
(5−2)液滴吸着力の同じ超撥水基板を用いた場合
5マイクロリットルの水滴を吸着可能な撥水性基板B(ドーム状金属の割合10%)上に、5マイクロリットルの水滴を作製する。基板Bを反転させ、水滴が重力に対して逆向きに吸着している状態で、同じ物性をもつ別の撥水性基板B'へ上方から接触後に引き上げると、水滴は水滴形状を保持した状態で撥水性基板B'へ吸着している。これは、重力に対して逆向きに液滴を吸着する力が重力と同じ向きで吸着する力よりも小さいためにおこる。同様の操作で、撥水性基板B'から撥水性基板Bへの移動もでき、繰り返し、水滴を量の変化無く移動させることが可能である(図5)。輸送可能な液適量は、吸着できる液適量と同等であり、その量は撥水性基板の構造で制御でき、最大10マイクロリットルである。上記操作(1)と組み合わせることで、基板の移動時にかかる動力のみが必要な省エネルギーな液滴移動が可能となる。
【0048】
(6)液滴ピッキング
基板と液滴が1点で接触している場合には液滴の自重により落下する撥水性基板を
用い、2点で挟むことで液滴の落下を防ぎ、その後、接点を1点以下にすることで落下
させることができる、基板移動にかかるエネルギー以外の動力不要なピッキングによる
液適量の減損のない液滴操作を提供する。
【0049】
20マイクロリットルの水滴を接点が1点では吸着できない撥水性基板D(ドーム状金属の割合18%)を2枚用い、20マイクロリットルの水滴を2点で挟むことで、その接点で液滴状態を保持したまま吸着させる。液滴を落下させたい場所へその状態を保ったまま移動し、その後、2枚の基板の距離を離していくと、接点が1点以下になったところで液滴が脱着し落下する(図6)。操作可能な液適量は、吸着できる液適量と同等であり、その量は撥水性基板の構造で制御でき、最大50マイクロリットルである。
【0050】
(7)液滴分離
2ボルト程度の微小な電気エネルギーにより吸着性を変化させ、一方の液滴のみを超撥水状態を保持したまま基板に固定し、他方を落下させることで分離する技術を提供する。
熱エネルギーなどの電気エネルギー以外のエネルギーでも本発明で得られる撥水性基板をもちいると、同様の液滴操作が可能である。また、液適量の違いによっても吸着の度合いに違いが生じ、分離することができる。
【0051】
(7−1)電気エネルギーで固定化することによる液滴分離
10マイクロリットルの電解質を含む液滴(例えば0.05重量%のNaCl)を撥水性基板Aへ2個作製し、一方のみに2ボルト程度の小さい電気エネルギーを与える。電気エネルギーを与えた液滴のみ、基板との接着点における吸着力が著しく向上し、その後、基板を傾けても脱着しない。電気エネルギーを与えてない液滴は基板から脱着し、2つの微量液滴を分離できる(図7)。分離可能な液適量は、吸着できる液適量と同等であり、その量は撥水性基板の構造で制御でき、最大50マイクロリットルである。
【0052】
(7−2)吸着できる液適量の違いによる液滴分離
10マイクロリットルの水滴と5マイクロリットルの水滴を、5マイクロリットルの水滴を吸着可能な撥水性基板Bへ作製する。その後、基板を傾けると10マイクロリットルの液滴は脱着するが、5マイクロリットルの水滴は脱着しないため、2つの微量水滴をその液量の違いにより分離できる(図8)。分離可能な液適量は、吸着できる液適量と同等であり、その量は撥水性基板の構造で制御でき、最大10マイクロリットルである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、親水部をもつ超撥水基板の作製スキームを示す。
【図2】図2は、ハニカム状多孔質フィルムを示す。
【図3】図3は、親水部をもつ撥水性基板の構造を示す。
【図4】図4は、液滴吸着力の異なる撥水性基板を用いた場合の液滴移動を示す。
【図5】図5は、液滴吸着力の同じ超撥水基板を用いた場合の液滴移動を示す。
【図6】図6は、液滴ピッキングを示す。
【図7】図7は、電気エネルギーで固定化することによる液滴分離を示す。
【図8】図8は、液適量の違いによる液滴分離を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする、高吸着性超撥水性基板。
【請求項2】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させ、次いで上記で得られた高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定し、次いで高分子−金属複合フィルムの上面を剥離することにより得られる、請求項1に記載の高吸着性超撥水性基板。
【請求項3】
ハニカム状多孔質フィルムの孔内に析出させる金属が、ニッケル/リン、ニッケル/ホウ素、ニッケル/コバルト、ニッケル/銅、ニッケル/フッ素、コバルト、銅、銀、スズ、金、白金、チタン、亜鉛、鉛、クロム、鉄、クロムを含む合金、鉄を含む合金、鉛を含む合金、あるいは上記した金属又は合金の酸化物又は硫化物である、請求項2に記載の高吸着性超撥水基板。
【請求項4】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる、請求項2又は3に記載の高吸着性超撥水基板。
【請求項5】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に析出させる金属が、ニッケル/リンである、請求項4に記載の高吸着性超撥水基板。
【請求項6】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液と塩化パラジウム酸性水溶液の混合溶液に浸すこと、または、水溶性高分子の水溶液に浸し、次いで塩化パラジウム酸性水溶液に浸すことによって、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちでパラジウムが配位している高分子薄膜を形成し、次いで、この高分子薄膜を無電解ニッケルめっき液に浸漬して金属を析出させる、請求項2から5の何れかに記載の高吸着性超撥水基板。
【請求項7】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムが、両親媒性を有する単独のポリマー又はポリマーと両親媒性ポリマーとから成るポリマー混合物の疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム状多孔質フィルムである、請求項2から6の何れかに記載の高吸着性超撥水基板。
【請求項8】
(1)自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる工程、(2)上記工程(1)で得られた高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定する工程、及び(3)上記工程(2)で得られた高分子−金属複合フィルムの上面を剥離する工程を含む、請求項1に記載の高吸着性超撥水性基板を製造する方法。
【請求項9】
ハニカム状多孔質フィルムの孔内に析出させる金属が、ニッケル/リン、ニッケル/ホウ素、ニッケル/コバルト、ニッケル/銅、ニッケル/フッ素、コバルト、銅、銀、スズ、金、白金、チタン、亜鉛、鉛、クロム、鉄、クロムを含む合金、鉄を含む合金、鉛を含む合金、あるいはその酸化物又は硫化物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に析出させる金属が、ニッケル/リンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(1)において、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液と塩化パラジウム酸性水溶液の混合溶液に浸すこと、または、水溶性高分子の水溶液に浸し、次いで塩化パラジウム酸性水溶液に浸すことによって、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちでパラジウムが配位している高分子薄膜を形成し、次いで、この高分子薄膜を無電解ニッケルめっき液に浸漬して金属を析出させる、請求項8から11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムが、両親媒性を有する単独のポリマー又はポリマーと両親媒性ポリマーとから成るポリマー混合物の疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム状多孔質フィルムである、請求項8から12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする、高吸着性超撥水性基板を用いた微少量の液滴を操作する方法。
【請求項15】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させ、次いで上記で得られた高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定し、次いで高分子−金属複合フィルムの上面を剥離することにより得られる、高吸着性超撥水性基板を用いる、請求項14に記載の微少量の液滴を操作する方法。
【請求項16】
ハニカム状多孔質フィルムの孔内に析出させる金属が、ニッケル/リン、ニッケル/ホウ素、ニッケル/コバルト、ニッケル/銅、ニッケル/フッ素、コバルト、銅、銀、スズ、金、白金、チタン、亜鉛、鉛、クロム、鉄、クロムを含む合金、鉄を含む合金、鉛を含む合金、あるいは上記した金属又は合金の酸化物又は硫化物である、請求項15に記載の微少量の液滴を操作する方法。
【請求項17】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる、請求項15又は16に記載の高吸着性超撥水基板を用いた微少量の液滴を操作する方法。
【請求項18】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に析出させる金属が、ニッケル/リンである、請求項17に記載の微少量の液滴を操作する方法。
【請求項19】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液と塩化パラジウム酸性水溶液の混合溶液に浸すこと、または、水溶性高分子の水溶液に浸し、次いで塩化パラジウム酸性水溶液に浸すことによって、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちでパラジウムが配位している高分子薄膜を形成し、次いで、この高分子薄膜を無電解ニッケルめっき液に浸漬して金属を析出させる、請求項15から18の何れかに記載の微少量の液滴を操作する方法。
【請求項20】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムが、両親媒性を有する単独のポリマー又はポリマーと両親媒性ポリマーとから成るポリマー混合物の疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム状多孔質フィルムである、請求項15から19の何れかに記載の微少量の液滴を操作する方法。
【請求項1】
基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする、高吸着性超撥水性基板。
【請求項2】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させ、次いで上記で得られた高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定し、次いで高分子−金属複合フィルムの上面を剥離することにより得られる、請求項1に記載の高吸着性超撥水性基板。
【請求項3】
ハニカム状多孔質フィルムの孔内に析出させる金属が、ニッケル/リン、ニッケル/ホウ素、ニッケル/コバルト、ニッケル/銅、ニッケル/フッ素、コバルト、銅、銀、スズ、金、白金、チタン、亜鉛、鉛、クロム、鉄、クロムを含む合金、鉄を含む合金、鉛を含む合金、あるいは上記した金属又は合金の酸化物又は硫化物である、請求項2に記載の高吸着性超撥水基板。
【請求項4】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる、請求項2又は3に記載の高吸着性超撥水基板。
【請求項5】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に析出させる金属が、ニッケル/リンである、請求項4に記載の高吸着性超撥水基板。
【請求項6】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液と塩化パラジウム酸性水溶液の混合溶液に浸すこと、または、水溶性高分子の水溶液に浸し、次いで塩化パラジウム酸性水溶液に浸すことによって、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちでパラジウムが配位している高分子薄膜を形成し、次いで、この高分子薄膜を無電解ニッケルめっき液に浸漬して金属を析出させる、請求項2から5の何れかに記載の高吸着性超撥水基板。
【請求項7】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムが、両親媒性を有する単独のポリマー又はポリマーと両親媒性ポリマーとから成るポリマー混合物の疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム状多孔質フィルムである、請求項2から6の何れかに記載の高吸着性超撥水基板。
【請求項8】
(1)自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる工程、(2)上記工程(1)で得られた高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定する工程、及び(3)上記工程(2)で得られた高分子−金属複合フィルムの上面を剥離する工程を含む、請求項1に記載の高吸着性超撥水性基板を製造する方法。
【請求項9】
ハニカム状多孔質フィルムの孔内に析出させる金属が、ニッケル/リン、ニッケル/ホウ素、ニッケル/コバルト、ニッケル/銅、ニッケル/フッ素、コバルト、銅、銀、スズ、金、白金、チタン、亜鉛、鉛、クロム、鉄、クロムを含む合金、鉄を含む合金、鉛を含む合金、あるいはその酸化物又は硫化物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に析出させる金属が、ニッケル/リンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(1)において、自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液と塩化パラジウム酸性水溶液の混合溶液に浸すこと、または、水溶性高分子の水溶液に浸し、次いで塩化パラジウム酸性水溶液に浸すことによって、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちでパラジウムが配位している高分子薄膜を形成し、次いで、この高分子薄膜を無電解ニッケルめっき液に浸漬して金属を析出させる、請求項8から11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムが、両親媒性を有する単独のポリマー又はポリマーと両親媒性ポリマーとから成るポリマー混合物の疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム状多孔質フィルムである、請求項8から12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
基板上に、疎水性高分子で形成された超撥水性のピラー構造を有し、上記ピラー構造は基板上に粘着剤で固定されており、上記ピラー構造中に親水性の金属を部分的にもつことを特徴とする、高吸着性超撥水性基板を用いた微少量の液滴を操作する方法。
【請求項15】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させ、次いで上記で得られた高分子−金属複合フィルムの金属面を基板に粘着剤で固定し、次いで高分子−金属複合フィルムの上面を剥離することにより得られる、高吸着性超撥水性基板を用いる、請求項14に記載の微少量の液滴を操作する方法。
【請求項16】
ハニカム状多孔質フィルムの孔内に析出させる金属が、ニッケル/リン、ニッケル/ホウ素、ニッケル/コバルト、ニッケル/銅、ニッケル/フッ素、コバルト、銅、銀、スズ、金、白金、チタン、亜鉛、鉛、クロム、鉄、クロムを含む合金、鉄を含む合金、鉛を含む合金、あるいは上記した金属又は合金の酸化物又は硫化物である、請求項15に記載の微少量の液滴を操作する方法。
【請求項17】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に金属を析出させる、請求項15又は16に記載の高吸着性超撥水基板を用いた微少量の液滴を操作する方法。
【請求項18】
パラジウム触媒による無電解めっきによりハニカム状多孔質フィルム上に析出させる金属が、ニッケル/リンである、請求項17に記載の微少量の液滴を操作する方法。
【請求項19】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムを、水溶性高分子の水溶液と塩化パラジウム酸性水溶液の混合溶液に浸すこと、または、水溶性高分子の水溶液に浸し、次いで塩化パラジウム酸性水溶液に浸すことによって、ハニカム状多孔質フィルムの空孔を覆うかたちでパラジウムが配位している高分子薄膜を形成し、次いで、この高分子薄膜を無電解ニッケルめっき液に浸漬して金属を析出させる、請求項15から18の何れかに記載の微少量の液滴を操作する方法。
【請求項20】
自己組織化により作製したハニカム状多孔質フィルムが、両親媒性を有する単独のポリマー又はポリマーと両親媒性ポリマーとから成るポリマー混合物の疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることにより得られるハニカム状多孔質フィルムである、請求項15から19の何れかに記載の微少量の液滴を操作する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−110690(P2010−110690A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285002(P2008−285002)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年5月8日 高分子学会予稿集 57巻1号にて発表 平成20年5月30日 第57回高分子学会年次大会にて発表 平成20年6月4日 日経産業新聞にて発表 平成20年6月11日 化学工業日報にて発表 平成20年9月9日 高分子学会予稿集 57巻2号にて発表 平成20年9月25日 第57回高分子討論会にて発表
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年5月8日 高分子学会予稿集 57巻1号にて発表 平成20年5月30日 第57回高分子学会年次大会にて発表 平成20年6月4日 日経産業新聞にて発表 平成20年6月11日 化学工業日報にて発表 平成20年9月9日 高分子学会予稿集 57巻2号にて発表 平成20年9月25日 第57回高分子討論会にて発表
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]