説明

高周波センサ装置

【課題】比較的簡単な構成でアナログ的なスイッチ入力が可能とされマン・マシン・インタフェースとして使いやすい高周波センサ装置を提供する。
【解決手段】送信波を発生する発振回路と、前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波回路と、前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、を備え、前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の周波数が第1の所定値以上であり且つ前記ドップラー信号の振幅が所定の閾値を越えるたびにパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波などが人体にあたると反射波あるいは透過波を生じる。この反射波または透過波を受信し人体の有無を検出するのが高周波センサ装置であり、自動ドア、機器のリモートコントロール、便器洗浄装置などに使用できる。さらに、移動物体を検出する高周波センサ装置もあり、例えば水洗便器の自動洗浄などに有用である。
【0003】
人体を含む移動物体を検知するには、ドップラー効果を利用することができる。すなわち、電波や音波が移動物体に当たり反射すると、反射波の周波数がドップラーシフトする。反射波及び送信波の差分周波数スペクトラムを求めることにより移動物体が検知される。さらにドップラー周波数は物体の移動速度に比例するので、移動速度を知ることもできる。
【0004】
送信波として電波を用いる場合、センサを構成するアンテナからの電波放射方向を目的物に向けて精度良く制御することが重要である。給電素子及びこれを取り囲む無給電素子をパッチ電極で構成し、高周波スイッチにより電気的にスキャンを行うアンテナにおいては、高周波スイッチのオン及びオフを切替えるために設ける制御線が、アンテナの接地特性に影響を及ぼし、電波ビームの放射方向を精度良く制御することを困難にすることがある。
【0005】
無給電素子が基板内のスルーホール式の制御線を通じて基板の背面上に設けられた高周波スイッチに接続され、電波ビームの放射方向を切替えるマイクロストリップアンテナ及びこれを用いた高周波センサに関する技術開示例がある(特許文献1)。電波ビームの放射方向をスキャンさせると、例えば高周波センサ装置のアンテナに向かって人がどの方向から接近してきたかなどを検知することができる。
【特許文献1】国際公開番号WO2006/035881A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人の身体や手などの動きを検出し、そのドップラー信号に基づいてアナログ的な制御をする場合、ドップラー信号をそのまま処理すると制御が複雑化し、処理速度が高い高性能のCPU(central processing unit)などが必要とされる。
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、比較的簡単な構成でアナログ的なスイッチ入力が可能とされマン・マシン・インタフェースとして使いやすい高周波センサ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、送信波を発生する発振回路と、前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波回路と、前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、を備え、前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の周波数が第1の所定値以上であり且つ前記ドップラー信号の振幅が所定の閾値を越えるたびにパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、送信波を発生する発振回路と、前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波回路と、前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、を備え、前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の振幅が所定の期間内に所定の閾値を超えた回数に対応する長さを有するパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、送信波を発生する発振回路と、前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波回路と、前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、を備え、前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の振幅が所定の期間内に所定の閾値を超えた回数に対応する数のパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、送信波を発生する発振回路と、前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波回路と、前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、を備え、前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の周波数が第1の所定値以上の時に、その周波数に基づいて信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、送信波を発生する発振回路と、前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波回路と、前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、を備え、前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の振幅が所定の閾値を越えた期間に対応するパルス長を有するパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
【0013】
また、本発明の他の一態様によれば、送信波を発生する発振回路と、前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波回路と、前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、を備え、前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の振幅が所定の閾値を越えた期間に対応する数のパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、比較的簡単な構成でアナログ的なスイッチ入力が可能とされマン・マシン・インタフェースとして使いやすい高周波センサ装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる高周波センサ装置のブロック図である。
高周波センサ装置は、高周波部10と制御部20とを有する。高周波部10は、給電素子102及び無給電素子104、106などからなるアンテナ100と、高周波回路12と、を有する。高周波回路12には、送信波を発生する発振回路14と、受信波からドップラー信号を取り出す検波回路16と、が設けられている。
【0016】
アンテナ100から放射された送信波は、人体などの物体に当たり反射波を生じ、給電素子102で受信される。アンテナ100は送受信共用でもよいし、送信用と受信用とを別にしてもよい。人体検知用の高周波センサ装置において使用可能な送信波の周波数は、10.525及び24.15GHzである。
【0017】
移動物体の場合、ドップラー信号が高周波部10の検波回路16から出力される。このドップラー信号は、制御部20の増幅器22を介して制御判断回路26へ入力される。また、増幅器22の他の出力は、比較器24を介して制御判断回路26へ入力される。その出力は、負荷制御回路30へ入力される。また、制御判断回路26は、無給電素子104、106の電波ビームの放射方向を変える制御信号を出力する。なお、本発明においては、電波ビームの放射方向を変える機能は、必ずしも必須ではない。
図2は、本実施形態の高周波センサ装置に設けられるマイクロストリップアンテナの一例を表す平面図である。
また、図3は、図2のA−A断面図である。なお、図2以降の図については、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0018】
このアンテナは、セラミックスや樹脂などの絶縁性の材料からなる基板101の前面に矩形状の導電体薄膜からなる3つのアンテナ素子102、104、106が一直線上に併設された構造を有する。中央のアンテナ素子102は、マイクロ波信号源から直接的に(すなわち、電線を通じて)マイクロ波電力の供給を受ける給電素子である。給電素子102の両側に設けられた2つのアンテナ素子104、106は、直接的な給電は受けない無給電素子である。給電素子102の励振方向は、図2において上下の方向であり、3つのアンテナ素子104、102、106の配列方向は励振方向と直交する方向とされている。この実施例では一例として左右の無給電素子104、106は、中央の給電素子102を中心として線対象の位置、すなわち給電素子102から等距離の位置に配置されており、サイズも同一とされている。無給電素子104、106のサイズは、給電素子102のサイズとほぼ同一とすることができるが、異なるものとしてもよい。なお、励振方向にみた長さは、用いるマイクロ波の波長に応じて最適な範囲があるので変えることができる範囲は狭いが、励振方向に対して垂直な方向の長さはより広い範囲で変えることができる。
【0019】
給電素子102の背面の所定箇所(以下、「給電点」という)に給電線108の一端が接続されている。図3に表したように、給電線108は、基板101を貫通する導電線であり、給電線108の他端は、基板101の背面上に位置された高周波回路12のマイクロ波出力端子に接続されている。なお、高周波回路12は、例えばワンチップICとして形成することができる。給電素子102は、高周波回路12に設けられた発振回路14(図1参照)から出力される特定周波数(例えば、10.525GHz、24.15GHz、または76GHzなど)のマイクロ波電力を給電点に受けて励振される。
【0020】
図3に表したように、基板101は多層基板であり、その内部には1つの層として、薄膜状のアース電極116が、基板101の全面にわたって設けられている。アース電極116は、接地線115を介して高周波回路12のグランド端子に接続されている。
【0021】
図2及び図3に表したように、無給電素子104、106のそれぞれの背面の所定箇所(以下、「接地点」という)にも、制御線110、112の一端がそれぞれ接続されている。制御線110、112の他端は、基板101の背面上に配置されたスイッチ120、124の一側端子にそれぞれ接続されている。スイッチ120、124の他側端子は、接地線118、122をそれぞれ介して、アース電極116に接続されている。スイッチ120、124は個別にオン・オフ操作が可能とされている。左側のスイッチ120のオン・オフ操作により、左側の無給電素子104がアース電極116に接続されるか、フローティング状態になるかが切り替えられる。右側のスイッチ124のオン・オフ操作により、右側の無給電素子106がアース電極116に接続されるか、フローティング状態になるかが切り替えられる。
【0022】
スイッチ120、124には、高周波スイッチを用いることが望ましいが、使用するマイクロ波周波数に対するインピーダンスが所定の適正値に調整されている必要は特になく、高周波信号を遮断するスイッチのオフ特性(アイソレーション)が良好であればよい。 図2に表したように、給電素子102の給電点の位置は、一例として、給電素子102の励振方向(上下方向)において、使用するマイクロ波の基板101上での波長λgに応じた最適アンテナ長 (ほぼ、λgである)だけ給電素子102の下側エッジ(または上側エッジ)から上側(または下側)に離れた位置であって、励振方向(上下方向)と直交する方向(左右方向)において、給電素子102の中央位置とされている。一方、無給電素子104、106のそれぞれの接地点の位置は、一例として、励振方向(上下方向)において、各無給電素子104、106の中央を中心とした幅L/2の範囲より外側の位置であって、直交する方向(左右方向)において、それぞれの無給電素子104、106の中央の位置とされている。ここで、Lは、無給電素子104、106の励振方向にみた長さである。
【0023】
このように構成されたマイクロストリップアンテナにおいて、スイッチ120、124を操作して無給電素子104、106をアース電極116に接続(接地)するかを切り替えることにより、このマイクロストリップアンテナから出力されてる電波ビームの放射方向を複数の方向のいずれかに切り替えることができる。給電素子102と無給電素子104、106との位置関係により放射方向が決定されるため、波長よりも極端に短い給電線108を介して給電素子102と高周波回路12とを接続することが可能であり、よって、伝送損失が少なく効率がよい。また、制御線に接続されるスイッチが1つで電波ビームの放射方向を変化させることができるため、このマイクロストリップアンテナは基板サイズ小型化や製造の低コスト化に適している。
【0024】
図4は、スイッチ120、124の操作による電波ビームの放射方向の変化を表す模式図である。
図4において、楕円は放射される電波ビームを模式的に表し、横軸の角度は基板101の主面に対して垂直な方向からみた電波ビームの放射方向の角度(放射角度)を表し、プラスの角度は放射方向が図2において右側に傾いていることを表し、マイナスの角度は左側に傾いていることを表す。
【0025】
図4に表したように、両方のスイッチ120、124がオンの場合(すなわち、両方の
無給電素子104、106が接地されている場合)、電波ビームは点線で表したように、基板101の主面に対して垂直な方向に放射される。両方のスイッチ120、124がオフの場合(すなわち、両方の無給電素子104、106がフローティング状態の場合)も、電波ビームは一点鎖線で表したように、基板101の主面に対して垂直な方向に放射される。
【0026】
一方、左側のスイッチ120がオンで右側のスイッチ124がオフの場合(すなわち、左側の無給電素子104だけが接地されている場合)は、電波ビームは破線で表したように、左側(条件によっては右側)に傾いた方向に放射される。また、左側のスイッチ120がオフで右側のスイッチ124がオンの場合(すなわち、右側の無給電素子106だけが接地されている場合)は、電波ビームはもうひとつの破線で表したように、右側(条件によっては左側)に傾いた方向に放射される。
このように、接地される無給電素子104、106を選択することにより、電波ビームの放射方向を変えることができる。
【0027】
図5は、本実施形態の高周波センサ装置において実行される動作を例示するフローチャートである。
また、図6は、このフローチャートに対応したドップラー信号の波形や信号のタイミングなどを表すグラフ図である。
また、図7及び図8は、高周波センサ装置の動作を説明するための模式図である。
【0028】
本実施形態においては、例えば、図5に表したように、高周波センサ装置は人体検知モードを実行する(ステップS102)。これは例えば、図7(a)〜(c)に表したように、アンテナ100から放射する電波ビームの方向を順次切り替えて走査(スキャン)させるモードである。図7(a)〜(c)に表した具体例の場合、電波ビームD1→D3→D1→D3・・の順に交互に切り替えてスキャンしている。なお、この際のスキャンの速度は、人の動きを検知するために適した速度であることが望ましく、例えば、それぞれの周期d1、d2を10〜50ミリ秒程度とすることができる。
【0029】
そして、例えば、図7(b)に矢印Aで表したように、アンテナ100から向かって右側から被検知体900が接近し、図7(c)に表したように電波ビームD3による検知範囲内にはいると、図6に表したようにドップラー信号Aが生ずる。すると、制御判断回路26は、被検知体900を検知する(ステップS104:yes)。なお、図6に表した具体例の場合、電波ビームD3を放射する期間d1と電波ビームD1を放射する期間d2とが交互に繰り返され、期間d1におけるドップラー信号Aが閾値を越えるとともに、期間d2におけるドップラー信号Bよりも大きい。制御判断回路26は、このように各期間に得られるドップラー信号の振幅により、被検知体900がどちらの方向に存在するかを特定することができる。
【0030】
被検知体900を検知すると(ステップS104:yes)、制御判断回路26は、アナログ的な入力が可能なスイッチ入力モードを開始する(ステップS106)。スイッチ入力モードにおいては、制御判断回路26は、制御信号を出力して電波ビームのスキャンを例えば停止させ、電波ビームを被検知体900の方向に固定させる。この状態で、被検知体900は、例えば、図8に表したように右手を前方に伸ばすことによりアナログ的なスイッチ入力を実行できる(ステップS108:yes)。すなわち、被検知体900の動きに応じて、図6に表したようにドップラー信号Cが発生する。制御判断回路26は、このドップラー信号Cを検知し、その波形に応じた情報を判定し、負荷制御回路30を介して外部に所定のスイッチ信号を出力する。
【0031】
ドップラー信号Cに基づく、スイッチ信号の生成の方法としては、後に詳述するように、例えば、ドップラー信号Cの周波数が所定値以上であり且つドップラー信号Cの振幅が所定の閾値を越えるたびにパルス信号を出力する方法がある。または、ドップラー信号Cの振幅が所定の期間内に所定の閾値を超えた回数に基づいてパルス信号を出力してもよい。または、ドップラー信号Cの周波数が所定値以上の時に、その周波数に基づいて信号を出力してもよい。
【0032】
ドップラー信号Cが検出され、波形に応じた情報に基づいて外部にアナログ的なスイッチ信号を出力した後に、例えば、ドップラー信号の周波数が所定値を下回ったり、あるいはドップラー信号の振幅が所定値を下回ったような場合に、スイッチ入力モードを終了して人体検知モード(ステップS102)に戻る。
また、スイッチ入力モードが実行されている時に、高周波センサ装置またはこれに接続された機器から被検知体900に対して、スイッチ入力が可能であることを知らせる報知信号を出力してもよい。報知信号としては、例えば、音や光、またはディスプレイへの表示や、高周波センサ装置により制御される機器の所定の動作などを挙げることができる。使用者である被検知体900は、この報知信号により、高周波センサ装置に情報を入力可能であることを確認できる。
なお、本発明においては、人体検知モードは必ずしも必須ではなく、スイッチ入力モードのみが実行可能とされていてもよい。
【0033】
図9及び図10は、本実施形態の高周波センサ装置の動作のもうひとつの具体例を表す模式図である。
本具体例においても、人体検知モード(ステップS102)においては、高周波センサ装置から放出される電波ビームは、図9(a)〜(c)に表したようにD1→D3→D1・・と順次切り替えてスキャンしている。そして、被検知体900が接近し、左手を伸ばして、これが電波ビームD3による検知範囲内にはいると、ドップラー信号が発生し検知が確定される(ステップS104:yes)。すると、スイッチ入力モード(ステップS106)が開始され、電波ビームがD3に固定される。しかる後に、図10に矢印Bで表したように、被検知体900が左手を左から右に振ると、この動作に応じたドップラー信号C(図6)が発生し、その動作に応じた所定の情報を入力することができる。
【0034】
このようにしてスイッチ入力が実行されると(ステップS108:yes)、再び人体検知モードに戻る(ステップS102)。人体検知モードにおいては、スイッチ入力はできないので、被検知体900が例えば別の目的で手などを動かしても、その動作により高周波センサ装置が誤検知をすることを防止できる。
【0035】
本実施形態によれば、例えは、高周波センサ装置を部屋の壁などに設置し、照明や窓の開閉を制御することができる。すなわち、使用者である被検知体900が高周波センサ装置の前に近づき、手を振ると、その方向に応じて照明の照度が変化したり、窓が開閉するように制御できる。また、例えば、自動ドアを開閉させることもできる。
【0036】
そして、本実施形態によれば、スイッチ入力モードにおいて、電波ビームを被検知体900に向けて固定することにより、被検知体900のスイッチ入力動作を確実に検知することが可能となる。特に、被検知体900の動作が遅いような場合、電波ビームをスキャンさせていると確実に検知できない場合もありうる。これに対して、本実施形態においては、電波ビームを被検知体900の方向に固定してその動作を検知するので、ゆっくりとした動作でも確実に検知することが可能となり、マン・マシン・インタフェースとして使いやすい高周波センサ装置を実現できる。
【0037】
なお、本実施形態において、人体を検知した(ステップS104:yes)後、制御判断回路26は、直ちにスイッチ入力モードを開始するのではなく、所定時間(例えば、1〜5秒間)の経過後に電波ビームの走査(スキャン)を停止して電波ビームを固定するようにしてもよい。所定時間の経過を待つのは、その間に使用者である被検知体900が入力のための準備をする場合があるからである。例えば、被検知体900が右手を右側から左側に振る動作により高周波センサ装置に情報を入力しようとする時に、その入力動作に先だって、右手を側方に持ち上げたりする場合がある。このような準備動作を誤検知しないためである。
【0038】
なお、このような誤検知を防止する方法としては、本具体例のように電波ビームのスキャンの停止を遅延させる方法の他にも、例えば、トリガー信号と同時に電波ビームは固定するが、制御判断回路26において検知信号を無効とするような方法であってもよい。また、このような所定の待ち時間を設けず、スイッチ入力モードが開始されると、直ちにスイッチ入力が可能とされてもよい。
【0039】
ここで、スイッチ入力モードにおける信号のアナログ的な入力の方法としては、例えば、ドップラー信号の周期から信号を得る方法がある。図6に表した具体例の場合、ドップラー信号Cが所定の基準値(振幅の中心値)からみてプラス側にある期間をハイレベル(H)とするパルスを生成して、これを判定信号として出力する。この判定信号に基づき、高周波センサ装置に接続された機器をアナログ的に制御することが可能となる。
【0040】
例えば、図9及び図10に表した具体例において、アンテナ100の前の被検知体900が左手を差し出すと、電波ビームD3がこれを検知しスキャンが停止されて電波ビームが固定される。ここで例えば、高周波センサ装置が部屋の照明を制御するものとすると、電波ビームD3により被検知体900を検知した場合には照度を上げるスイッチ入力を可能とし、電波ビームD1により被検知体900を検知した場合には、照度を下げるスイッチ入力を可能とすることができる。
【0041】
そして、例えば図10に表したように被検知体900が左手を右に振った時、その速度に応じて照度の増加量を制御してもよい。例えば、被検知体900が左手を振る速度が高い場合には照度の増加量を大きくし、速度が低い場合には照度の増加量を小さくすることなどが可能となる。左手の速度が高い場合には、ドップラー信号の周波数が高くなるので、例えば図6に表した判定信号のパルス数が大きくなる。したがって、判定信号のパルス数により、被検知体900の動作の速度を判定することができる。そして、判定信号のパルス数やパルス長などに応じて、外部の機器をアナログ的に制御することが可能となる。人間の手の動く速度は、通常、300Hz(=3.3ミリ秒の周期)以下である。従って、判定信号をパルス信号で出力する場合、1ミリ秒以下のパルス長で出力すれば良い。
【0042】
図11は、スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
本具体例においては、電波ビームを固定してスイッチ入力モードに入った後に得られたドップラー信号Cについて、所定の基準値(振幅の中央値)からみてマイナス側からプラス側に遷移した瞬間にパルスを生成する。このようにして得られたパルスの数または間隔に基づいて、アナログ的な制御信号を生成することができる。例えば、所定の時間間隔におけるパルスの数が多いほど、アナログ制御信号を大きくするような制御が可能となる。また例えば、パルスの間隔が短いほどアナログ制御信号を大きくしてもよい。
【0043】
またここで、例えば、被検知体である人体がアンテナの前で手を横に振った場合や手を差し出した場合など、アンテナに対する手の相対的な動作としては、アンテナに対して手が近づく接近動作と、アンテナから遠ざかる離遠動作とがある。そして、一般的に、アンテナから遠い位置においては相対的な速度は大きくなり、アンテナに近づくほど相対的な速度は小さくなる。つまり、ドップラー信号Cの周波数は、最初は高く、その後低下し、その後再び高くなる傾向がある。
【0044】
そして、一般に、タッチレス型の入力装置に対して使用者が手を振って情報を入力するような場合には、入力装置(すなわち、アンテナ)に対して手を近づける動作により入力するほうがより自然な入力が可能である。つまり、入力装置から手を遠ざける動作まで入力の対象に含めたくない場合が多い。
【0045】
そこで、このような場合には、手が接近する動作のみを抽出するためには、ドップラー信号Cの前半の部分のみに基づいて制御信号を出力すればよい。このようにすれば、周波数が低下する前のドップラー信号Cに基づいて、接近動作のみを抽出できる。あるいは、スイッチ入力モードにおけるドップラー信号Cの周波数が所定値以下となったら、その後のドップラー信号は無効とし、振幅が閾値を越えても周波数が所定値以上になっても制御信号を出力しないようにしてもよい。
【0046】
図12は、スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
本具体例においては、所定の閾値を設定し、ドップラー信号がこの閾値を越えた期間をハイレベル(H)とする閾値判定信号を生成し、閾値判定信号のそれぞれのハイレベルに対応したパルス信号を生成する。パルス信号を構成するパルスのパルス長は、同一とされている。このようなパルス信号を用いても、アナログ的な制御を実行することが可能である。なお、閾値判定信号のハイレベルとパルス信号のパルスとは必ずしも一致させる必要はなく、例えば、図13に表したように、閾値判定信号のハイレベル2回毎にひとつのパルスを生成してもよい。また、これとは逆に、閾値判定信号のハイレベル1回毎に、ふたつあるいはそれ以上のパルスを生成してもよい。またさらに一般的に、閾値判定信号のハイレベルの回数をJとして(J×n:nは整数)回毎にひとつのパルスを生成してもよい。
【0047】
また一方、ドップラー信号が閾値を越えた時間、すなわち閾値判定信号のパルス長に対応したパルス長を有するパルス信号を生成してもよい。つまり、閾値判定信号のパルス長が長い時には、パルス長の長いパルス信号を生成し、閾値判定信号のパルス長が短い時には、パルス長の短いパルス信号を生成する。この場合、閾値判定信号のパルス長と、生成されるパルス信号のパルス長とは同一でもよく、異なるものでもよい。
【0048】
また一方、ドップラー信号が閾値を越えた時間に対応する数のパルス信号を生成してもよい。例えば、ドップラー信号が閾値を越えた時間が長い場合には、それに対応して多数のパルス信号を生成し、ドップラー信号が閾値を越えた時間が短い場合には、それに対応して少数のパルス信号を生成する。この場合には、それぞれのパルス信号のパルス長は同一とすることができる。
【0049】
図14は、スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
本具体例においては、ドップラー信号の振幅の中心値を基準値として、ドップラー信号がこの基準値をマイナス側からプラス側に越える毎にパルスを生成して閾値判定信号を生成し、閾値判定信号の間隔Tが所定の幅よりも小さい時に、パルスを生成する。つまり、ドップラー信号の周波数が所定値よりも大きい場合に、パルス信号を生成する。このようにすれば、被検知体のスイッチ入力の動作の速度が大きいほどパルス数が増加し、これに対応してアナログ的な制御が可能となる。
なお、本具体例においてパルスを生成する際に、ドップラー信号の振幅が所定値以上でないとパルスを生成しないようにしてもよい。また、より単純に、ドップラー信号の周期をTとして、(T×n:nは整数)回毎にひとつのパルスを生成してもよい。
【0050】
図15は、スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
本具体例においては、ドップラー信号の振幅の中心からみてプラス側とマイナス側にそれぞれ閾値R1、R2を設定し、ドップラー信号がこれらの閾値を越える毎にパルスを生成して閾値判定信号を生成する。そして、閾値判定信号の間隔T1に対応するパルス長を有するパルス信号を生成する。つまり、ドップラー信号の周波数が低いほど、パルス長の長いパルス信号を生成する。このようなパルス信号を用いても、被検知体のスイッチ入力の動作の速度に応じてアナログ的な制御が可能となる。
【0051】
図16は、本実施形態の変型例を説明するための模式図である。
本変型例においては、スイッチ入力モードにおいてタイマT1による時間管理を実行する。すなわち、スイッチ入力モード(ステップS106)が開始されると、まずタイマT1がカウントを開始する(ステップS110)。そして、スイッチ入力の判定(ステップS108)の後に、時間T1が経過したか判断し、経過した場合(ステップS112:yes)には、スイッチ入力モードを終了して自動的に人体検知モード(ステップS102)に戻る。このようにすれば、スイッチ入力モードの時間を制限でき、その後に使用者である被検知体900が意図しない動作をした場合でも誤検知されることを防止できる。なお、本変型例において、時間T1は、高周波センサ装置の使用態様により適宜決定することができるが、例えば10〜60秒程度に設定することができる。
【0052】
図17は、本実施形態の第2の変型例を説明するための模式図である。
本変型例においては、スイッチ入力モードにおいて、タイマT1とともにタイマT2による時間管理も実行する。すなわち、スイッチ入力が実行されると(ステップS108:yes)、タイマT2のカウントが開始される。そして、時間T2が経過すると、スイッチ入力モードは終了し、人体検知モード(ステップS102)に自動的に戻る。
このようにすれば、時間T1の経過前であっても、スイッチ入力が実行された後に所定時間T2が経過すれば、スイッチ入力モードを終了できる。その結果として、例えば、スイッチ入力をしたと安心した使用者である被検知体900が意図しない動作をしたような場合でも、誤検知されることを防止できる。なお、本変型例においても、時間T2は、高周波センサ装置の使用態様により適宜決定することができるが、例えば1〜10秒程度に設定することができる。
【0053】
図18は、ドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
人間の手の接近速度に応じてアナログ制御をする場合、手が接近し始める速度が例えば200Hzや100Hz、あるいは50Hzと違いがあっても、動作の終了点に近づくほど周波数は同程度に低下する傾向がある。そのため、手が接近し始めてから所定の周波数(例えば10〜30Hz)以下になるまでの時間とそのときの速度を抽出し、手の移動距離を算出すれば、アナログスイッチ(高周波センサ装置)を操作(接近)する手の速度や移動時間が使用者により異なっていても、変化させたい物理量の増加減を同一に揃えることができる。
【0054】
しかし、手の動きが小さく移動時間が短いと電波方向を固定した後に判定信号が出力されないケースが生じる。これに対して、電波の放射方向が固定されてからのドップラー信号の状態だけで判定するのではなく、人体検知した時からドップラー信号が所定の周波数以下(所定の周期以上)になるまでの時間と、その間の速度と、から移動距離を算出すれば手が接近する動作が小さく移動時間が短い場合でも移動距離を認識でき、応答性に優れたアナログ的な制御ができる。つまり、図18に表したように、人体検知モードにおいて周波数が所定の閾値を超えた検知信号が得られた時点から、ドップラー信号が所定の周波数以下になるまでの期間を「判定期間」として、この間の被検知体(例えば、手である)の速度に基づいて、被検知体の移動距離を特定できる。すなわち、手を早く動かしたら物理量の変化が大きくなるように制御するのではなく、手の移動距離に応じて物理量の変化の大きさを制御するようにすることができる。
【0055】
一方、高周波センサ装置のアンテナに対する手の動作には、アンテナに近づく接近動作(または、入力するための手の動作)と、アンテナから遠ざかる離遠動作(または、手を戻す動作)とがある。これら動作のうちで、接近動作(すなわち、入力動作)のみを抽出したい場合には、スイッチ入力モードにおいて、「電波スキャン待機時間」を設けるとよい。電波スキャン待機時間は、ドップラー信号によるスイッチ入力を無効(あるいは無視)として人体検知モードを再開するまで待機する期間である。つまり、スイッチ入力モードに入り、電波の放射方向が固定され、ドップラー信号の周波数が所定の周波数(例えば、10〜30Hz)以下になった後、電波スキャンを再開するまでの所定期間(例えば、100ミリ秒〜1秒)「電波スキャン待機時間」として、その期間のドップラー信号は判定せず、その経過後に電波スキャン(人体検知モード)を再開するようにすれば、手の接近方向(入力動作)に応じて入力するための動作だけを抽出しアナログ制御できる。すなわち、入力した後に手を元に戻す動作を誤検知することを防止できる。
【0056】
電波スキャン待機時間、すなわち、入力したドップラー信号を無効にする時間は、例えばタイマにより管理してもよく、ドップラー信号の変化により管理してもよい。すなわち、判定期間の終了後に所定の時間が経過するまでの間は、ドップラー信号を無効とすることができる。
【0057】
または、判定期間の終了後に、ドップラー信号の周波数が上昇し、振幅が減少して閾値以下となるまでの間は、ドップラー信号を無効としてもよい。これは、入力動作の後に手を元に戻す動作(離遠動作)に対応する。図18に表した具体例においても、離遠動作においては、周波数が低い状態から高い状態に変化し、且つ、その振幅は小さくなっている。
【0058】
本願においては、人体検知モードは必須ではなく、スイッチ入力モードのみを実行してもよい。このような場合、使用者が高周波センサ装置に所定の情報をアナログ的に入力した後に、再び、同一人物または別の使用者が、次の入力をすることがある。このような場合に、最初の使用者がアナログ入力した後、その手を戻す動作(離遠動作)を無視することにより誤検知を防止できる。そして、その後に、次の入力動作に備えて、再び検知可能な状態とする必要がある。このような場合、上述したように、所定の時間や、ドップラー信号の変化に基づいて、スイッチ入力動作を再開することができる。
【0059】
また、スイッチ入力モードに入り、電波の放射方向が固定され、且つドップラー信号の周波数が所定の周波数以下となった時に判定信号を出力する「判定信号出力期間」を設け、図6〜図15に関して前述したような方法によりドップラー信号の周波数(周期)をもとにパルス出力するようにしてもよい。このようにすると、変化させたい物理量の増加減だけでなく、増加減させるときの速度も同時に制御可能となりスイッチを操作する使用者の意思に連動したアナログ的な制御ができる。判定信号出力期間は、電波スキャン待機時間と同じ、またはその時間内に設定すれば良い。
【0060】
次に、本実施形態の高周波センサ装置の応用例として、高周波センサ装置を備えた照明装置について説明する。
図19は、この照明装置の動作を説明するためのグラフ図である。
【0061】
本実施例においては、電波の放射方向は常に固定され、高周波センサ装置に接近する手の速度に応じて照明の明るさを切り替えることができる。すなわち、高周波センサ装置が周期T0以上で振幅が所定の閾値を越えたドップラー信号を検知すると、照明が最大の光量で点灯する。その後、高周波センサ装置が周期T0よりも長い周期T1で振幅が所定の閾値を越えたドップラー信号を検知すると、照明の照度を一段階だけ下げる。なお、図19には照度が2段階の場合を例示したが、照度を3段階以上としてもよい。この場合には、周期T1のドップラー信号を受信する度に照度が一段階下がるようにすることができる。
【0062】
一方、高周波センサ装置が、周期T0よりも周期が短い周期T2でその振幅が所定の閾値を越えたドップラー信号を検知すると、照明が消灯する。このように、照明の点灯、照度の調整、消灯などの各操作をそれぞれ異なる周波数(手の速度)により制御できる。
【0063】
また、本具体例において、最初に照明を点灯させる際に検知した周波数T0に応じて、それ以外の周波数T1、T2を可変とすることができる。すなわち、高周波センサ装置に手が接近する速度は、使用者の年齢や性別、高周波センサ装置の設置位置により様々であるが、センサ装置の設置位置が固定された場合、同一使用者の手がセンサ装置に接近する標準的な速度は常にほぼ同じである。従って、最初に照明を点灯する制御信号を受信した時に、その信号の周波数(f0)または周期(T0)に対して最大に明るくなる光量を割当て、照明を点灯する。そして、次回以降に受信する制御信号の周波数(fn)または周期(Tn)のf0またはT0に対する変化度合に応じて、光量を調節する。つまり、照明を最初に点灯させる時の手の速度に応じて、その後に光量を調整するため必要な手の速度を設定する。そうすれば、使用者の年齢や性別、センサ装置の設置位置によりセンサ装置に手が接近する速度は様々であっても、どのような使用者でも同程度の光量制御ができる。
【0064】
また、人が意識して手を動かす速度を細かく変えることは困難である。従って、最大の光量で点灯する周波数および最大の光量から減少させる周波数には、ある程度の幅を持たせることが望ましい。最初に照明を点灯させるための信号の周波数の中心値をf0とすれば、f0に対してプラスマイナス10%〜プラスマイナス30%程度の範囲(例えば、f0が70Hzの場合、50Hz〜90Hz)では最大の光量で点灯させ、それ以下もしくはそれ以上になった時、最大の光量から減少させる。そうすれば人が殆ど意識しなくても、直感的に手を動かす速度が変化させることにより光量を変化させることができる。
【0065】
また、制御信号に応じて明るさが切り替ってから所定期間のドップラー信号を無効にするか、または制御信号に応じて明るさが切り替ってからドップラー信号の電圧振幅値が閾値よりも低下するまでのドップラー信号を無効にすると、その間の手の動きを検知することによる照明の誤動作を防止できる。
またこの時、光や音などにより、高周波センサ装置が手の動作を検知して照明を制御可能な状態にあるか否かを使用者に報知すると、使用者にとってより使いやすく操作性が向上する。
【0066】
また、図19に表した実施例の場合、T0<T1の時に照度を下げ、T0>T2の時に消灯する。このように周波数が高い動きに対して消灯する設定にすると、人のゆっくりとした動きを誤検知して照明を消灯することを防止できる。
【0067】
なお、図19には照明を制御する具体例を表したが、本発明はこれには限定されず、その他、冷暖房器具の熱量や送風機や乾燥機の風量、水栓器具の吐水量などの制御についても同様に適用して同様の効果が得られる。
【0068】
次に、本実施形態の高周波センサ装置の第2の応用例として、高周波センサ装置を備えた水栓装置について説明する。
図20は、この水栓装置の動作を説明するためのグラフ図である。
この水栓装置は、例えばキッチンなどに設け、水栓の左右にそれぞれ電波ビームを放射して、吐水の開閉と、水量の制御を可能としたものである。すなわち、図2〜図4に関して前述したようなアンテナを用い、図6及び図7に関して前述したように、スイッチ1(SW1)とスイッチ2(SW2)とを交互に切り替えて、電波ビームを2方向にスキャンする。具体的には、例えば、水栓を中心として、その左右前方に向けて電波ビームを交互に放射する。
【0069】
そして、このように電波ビームを切り替えてスキャンしている時に、例えばスイッチ1(SW1)がオンの状態の時に振幅が所定の閾値を越えたドップラー信号を検知すると、スイッチ1をオンの状態に固定する。つまり、使用者が水栓の前で例えば右手を差し出すとこれが検知され、電波ビームがこの方向に固定される。この状態において、周期T0以上で振幅が所定の閾値を越えたドップラー信号を検知すると、例えば水量を「中」レベルとして吐水が開始される。つまり、使用者が水栓の前で右手を所定の速度で差し出すと、電波ビームが固定され、さらにドップラー信号が検知されて水栓から吐水が開始される。
【0070】
電波ビームは、固定が開始されてから所定の時間、またはドップラー信号が閾値を下回ってから所定の時間、固定された後、再びスイッチSW1とスイッチSW2とを交互に切り替えてスキャンされる。そして、使用者は、水量を変えたい時には、例えば右手を振る。すると、スイッチ1(SW1)に対応する電波ビームがこれを検知し、電波ビームが固定される。そして、使用者の右手の動きに対応したドップラー信号を検知する。この時、高周波センサ装置が周期T0よりも短い周期T1で振幅が所定の閾値を越えたドップラー信号を検知すると、例えば、吐水の水量を一段階だけ下げる。つまり、使用者が吐水を開始させた時の手の速度(周期T0)よりも速い速度(周期T1)で右手を振ると、吐水の水量を一段階だけ下げることができる。一方、図示は省略したが、周期T0よりも長い周期T2で振幅が所定の閾値を越えたドップラー信号を検知すると、例えば、吐水の水量を一段階だけ上げる。すなわち、使用者が吐水を開始させた時の手の速度(周期T0)よりも遅い速度(周期T2)で右手を振ると、吐水の水量を一段階だけ上げることができる。
【0071】
なお、手の速度(周期)と水量の上下の関係はこれとは反対であってもよい。すなわち、使用者が最初に吐水を開始させた手の速度(周期T0)よりも速い速度で右手を振った時に水量を下げ、速い速度で右手を振った時に水量を上げるように設定してもよい。
【0072】
このようにして、電波ビームを固定しドップラー信号を検知して水量を変化させた後に、再びスイッチSW1とスイッチSW2とを交互に切り替えてスキャンする。そして、使用者がまた右手を振ると、この動作に応じて電波ビームが固定され右手の速度に応じて吐水の水量を増加または減少させることができる。
【0073】
一方、使用者が反対側の手を差し出すと、図20に表したようにスイッチ2(SW2)がオンの状態に対応する電波ビームがこれを検知し、その方向に電波ビームが固定される。そして、さらに閾値を越えたドップラー信号を検知した時には、吐水を停止する。つまり、使用者が左手を差し出すことにより、吐水を停止できる。
その後、再びスイッチSW1とスイッチSW2とを交互に切り替えて電波ビームがスキャンされ、スイッチ1(SW1)の方向において所定の周期(T0)のドップラー信号を検知すると、再び吐水を開始する。
【0074】
なお、吐水の止め忘れを防止するためには、例えば、吐水している状態において、スイッチ1(SW1)の方向にもスイッチ2(SW2)の方向にも所定時間の間、ドップラー信号を検知しない場合には、自動的に吐水を停止するようにしてもよい。
また、吐水の開始に際しては、スイッチ1とスイッチ2のいずれにおいてドップラー信号を検知した場合でも吐水を開始するようにしてもよい。
【0075】
以上説明したように、本実施例によれば、水栓の左右(または上下でもよい)に電波ビームを放射させ、これら電波ビームのいずれかまたは両方に、吐水の開始、水量の調整、吐水の停止などの入力を割り当てることができる。
【0076】
なお、本実施例においても、図19に関して前述した実施例と同様に、水量を調整するための手の速度を可変にすることができる。すなわち、水栓を操作する使用者の手の速度は、使用者の年齢や性別、高周波センサ装置の設置位置により様々であるが、センサ装置の設置位置が固定された場合、同一使用者が手を振る標準的な速度は常にほぼ同じである。従って、最初に吐水を開始する制御信号を受信した時に、そのドップラー信号に基づいて周波数(f0)または周期(T0)を割当て、吐水を開始する。そして、次回以降に受信する制御信号の周波数(fn)または周期(Tn)のf0またはT0に対する変化度合に応じて、水量を調節する。つまり、吐水を最初に開始させる時の手の速度に応じて、その後に水量を調整するため必要な手の速度を設定する。そうすれば、使用者の年齢や性別、センサ装置の設置位置によりセンサ装置に手が接近する速度は様々であっても、どのような使用者でも同程度の水量制御ができる。
【0077】
また、本実施例においても、人が意識して手を動かす速度を細かく変えることは困難である。従って、吐水を開始させる周波数および水量を調節させる周波数には、ある程度の幅を持たせることが望ましい。最初に吐水を開始させるための信号の周波数の中心値をf0とすれば、f0に対してプラスマイナス10%〜プラスマイナス30%程度の範囲(例えば、f0が70Hzの場合、50Hz〜90Hz)では吐水を開始させ、それ以下もしくはそれ以上になった時、水量を変化させる。そうすれば人が殆ど意識しなくても、直感的に手を動かす速度が変化させることにより水量を変化させることができる。
【0078】
また、水栓装置の吐水制御の他にも、冷暖房器具の熱量や送風機や乾燥機の風量、照明器具の光量などの制御について適用しても同様の効果が得られる。また、電波ビームをスキャンする方向や速度、人体(手)検知を判断する周波数や電圧振幅値の閾値、判定信号の出力形態は、用途に応じてそれぞれ最適な値を設定すれば良い。例えば、電波ビームをスキャンする方向によりアンテナゲインが異なる場合は、スキャンする方向に応じて閾値を変えればよい。高周波センサ装置に基づいて複数の負荷を駆動し、高周波センサ装置から出力される判定信号を直接、アクチュエータやLED、ヒータ等の負荷駆動に使用する場合は、それぞれの負荷の制御方法に応じた出力形態で判定信号を出力すればよい。
【0079】
以上、説明したいずれの具体例においても、電波の放射方向を切替える際にスイッチングノイズが生ずることがある。スイッチングノイズの発生時間を考慮しないで被検知体の検知判定をすると誤検知につながる。これに対しては、電波の放射方向が切り替わった瞬間からのドップラー信号をもとに被検知体の検知判定をするのではなく、スイッチングノイズの発生時間を考慮して検知判定までに「待ち時間」を設けるとよい。この場合、電波の放射方向を切り替えるタイミング(速度)は、検知判定までの「待ち時間」と被検知体の検知判定に要する時間とで決まる。被検知体の検知判定に要する時間は、人体や手の移動速度を考慮すると1ミリ秒〜50ミリ秒とすることが望ましく、例えば、10ミリ秒に設定すれば、50Hz(=半周期10ミリ秒)以上の動きに対して精度良く人体や手を検知できる。
【0080】
以上、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。
しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。例えば、図5〜図7などには電波ビームの方向をスキャンする人体検知モードを実行する具体例を表したが、本発明においては、電波ビームのスキャンは必ずしも必須ではなく、アナログ的な制御が可能なスイッチ入力モードを備えればよい。また、高周波センサ装置を構成するアンテナ、高周波スイッチ、発振回路、検波回路、制御部などの形状、サイズ、配置などに関して当業者が設計変更を行ったものであっても本発明の主旨を逸脱しない限り本発明の範囲に包含される。また、前述した各具体例のふたつまたはそれ以上を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態にかかる高周波センサ装置のブロック図である。
【図2】本実施形態の高周波センサ装置に設けられるマイクロストリップアンテナの一例を表す平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】スイッチ120、124の操作による電波ビームの放射方向の変化を表す模式図である。
【図5】本実施形態の高周波センサ装置において実行される動作を表すフローチャートである。
【図6】ドップラー信号の波形や信号のタイミングなどを表すグラフ図である。
【図7】高周波センサ装置の動作を説明するための模式図である。
【図8】高周波センサ装置の動作を説明するための模式図である。
【図9】本実施形態の高周波センサ装置の動作のもうひとつの具体例を表す模式図である。
【図10】本実施形態の高周波センサ装置の動作のもうひとつの具体例を表す模式図である。
【図11】スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図12】スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図13】スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図14】スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図15】スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図16】本実施形態の第2の変型例を説明するための模式図である。
【図17】本実施形態の第3の変型例を説明するための模式図である。
【図18】ドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図19】照明装置の動作を説明するためのグラフ図である。
【図20】水栓装置の動作を説明するためのグラフ図である。
【符号の説明】
【0082】
10 高周波部、 12 高周波回路、 14 発振回路、 16 検波回路、 20 制御部、 22 増幅器、 24 比較器、 26 制御判断回路、 30 負荷制御回路、100 アンテナ、101 基板、102 アンテナ素子(給電素子)、104、106 アンテナ素子(無給電素子)、108 給電線、110 制御線、115 接地線、116 アース電極、118 接地線、120、124 スイッチ、130、132 無給電素子、900 被検知体、SW1〜SW4 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を発生する発振回路と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する検波回路と、
前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、
を備え、
前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の周波数が第1の所定値以上であり且つ前記ドップラー信号の振幅が所定の閾値を越えるたびにパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項2】
送信波を発生する発振回路と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する検波回路と、
前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、
を備え、
前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の振幅が所定の期間内に所定の閾値を超えた回数に対応する長さを有するパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項3】
送信波を発生する発振回路と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する検波回路と、
前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、
を備え、
前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の振幅が所定の期間内に所定の閾値を超えた回数に対応する数のパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項4】
送信波を発生する発振回路と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する検波回路と、
前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、
を備え、
前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の周波数が第1の所定値以上の時に、その周波数に基づいて信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項5】
送信波を発生する発振回路と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する検波回路と、
前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、
を備え、
前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の振幅が所定の閾値を越えた期間に対応するパルス長を有するパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項6】
送信波を発生する発振回路と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する検波回路と、
前記検波回路から出力される信号に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、
を備え、
前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の振幅が所定の閾値を越えた期間に対応する数のパルス信号を出力することを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項7】
前記制御判断回路は、前記アンテナから放射される電波の方向を変化させつつ被検知体の接近を検知する人体検知モードと、前記アンテナから放射される電波の方向をひとつの方向に維持させつつ前記被検知体が前記アンテナの前で実行する動作を検知するスイッチ入力モードと、を実行可能であり、
前記スイッチ入力モードにおいて前記パルス信号を出力することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに高周波センサ装置。
【請求項8】
前記制御判断回路は、前記人体検知モードを終了して前記スイッチ入力モードを実行する際に、前記人体検知モードにおいて前記被検知体を検知した方向に前記電波の方向を維持させることを特徴とする請求項7記載の高周波センサ装置。
【請求項9】
前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の周波数が第2の所定値以下となるまでの期間のドップラー信号に基づいて前記信号を出力することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の高周波センサ装置。
【請求項10】
前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の周波数が前記第2の所定値以下になってから所定の時間は、その時間内に得られたドップラー信号に基づいて前記信号を出力しないことを特徴とする請求項9記載の高周波センサ装置。
【請求項11】
前記制御判断回路は、前記ドップラー信号の周波数が第2の所定値以下になってから前記ドップラー信号の周波数が上昇しその振幅が所定の閾値以下となるまでに得られたドップラー信号に基づいて前記信号を出力しないことを特徴とする請求項9記載の高周波センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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