説明

高周波センサ装置

【課題】使用条件などに応じてスキャン速度を可変とした高周波センサ装置を提供する。
【解決手段】送信波を発生する発振回路と、前記送信波を複数の方向に放射可能とし、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波回路と、前記検波回路により検知されたドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、を備え、前記制御判断回路は、前記アンテナから放射される電波の方向を複数の方向のいずれかに第1の速度で順次切り替える第1のスキャンモードと、前記アンテナから放射される電波の方向を複数の方向のいずれかに前記第1の速度とは異なる第2の速度で順次切り替える第2のスキャンモードと、を実行可能であることを特徴とする高周波センサ装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波などが人体にあたると反射波あるいは透過波を生じる。この反射波または透過波を受信し人体の有無を検出するのが高周波センサ装置であり、自動ドア、機器のリモートコントロール、便器洗浄装置などに使用できる。さらに、移動物体を検出する高周波センサ装置もあり、例えば水洗便器の自動洗浄などに有用である。
【0003】
人体を含む移動物体を検知するには、ドップラー効果を利用することができる。すなわち、電波や音波が移動物体に当たり反射すると、反射波の周波数がドップラーシフトする。反射波及び送信波の差分周波数スペクトラムを求めることにより移動物体が検知される。さらにドップラー周波数は物体の移動速度に比例するので、移動速度を知ることもできる。
【0004】
無給電素子が基板内のスルーホール式の制御線を通じて基板の背面上に設けられた高周波スイッチに接続され、電波ビームの放射方向を切替えるマイクロストリップアンテナ及びこれを用いた高周波センサに関する技術開示例がある(特許文献1)。電波ビームの放射方向をスキャンさせると、例えば高周波センサ装置のアンテナに向かって人がどの方向から接近してきたかなどを検知することができる。
【特許文献1】国際公開番号WO2006/035881A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被検知体の移動速度が遅い場合には、ドップラー信号による検知にも時間がかかる。従って、電波ビームを複数の方向に順次スキャンさせて検知を行う場合、被検知体の移動速度に応じて、最適なスキャン速度は異なる場合が多い。例えは高齢者のように歩行速度が遅い被検知体を対象とする場合にはスキャン速度を遅くしないとドップラー信号による検知が困難となる。一方、歩行速度が速い被検知体を対象とする場合にはスキャン速度を速くしてどの方向から接近する被検知体も確実に検知することが望ましい。
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、使用条件などに応じてスキャン速度を可変とした高周波センサ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、送信波を発生する発振回路と、前記送信波を複数の方向に放射可能とし、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波回路と、前記検波回路により検知されたドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、を備え、前記制御判断回路は、前記アンテナから放射される電波の方向を複数の方向のいずれかに第1の速度で順次切り替える第1のスキャンモードと、前記アンテナから放射される電波の方向を複数の方向のいずれかに前記第1の速度とは異なる第2の速度で順次切り替える第2のスキャンモードと、を実行可能であることを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、使用条件などに応じてスキャン速度を可変とした高周波センサ装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる高周波センサ装置のブロック図である。
高周波センサ装置は、高周波部10と制御部20とを有する。高周波部10は、給電素子102及び無給電素子104、106などからなるアンテナ100と、高周波回路12と、を有する。高周波回路12には、送信波を発生する発振回路14と、受信波からドップラー信号を取り出す検波回路16と、が設けられている。
【0010】
アンテナ100から放射された送信波は、人体などの物体に当たり反射波を生じ、給電素子102で受信される。アンテナ100は送受信共用でもよいし、送信用と受信用とを別にしてもよい。人体検知用の高周波センサ装置において使用可能な送信波の周波数は、10.525及び24.15GHzである。
【0011】
移動物体の場合、ドップラー信号が高周波部10の検波回路16から出力される。このドップラー信号は、制御部20の増幅器22を介して制御判断回路26へ入力される。また、増幅器22の他の出力は、比較器24を介して制御判断回路26へ入力される。その出力は、負荷制御回路30へ入力される。また、制御判断回路26は、無給電素子104、106の電波ビームの放射方向を変える制御信号を出力する。
図2は、本実施形態の高周波センサ装置に設けられるマイクロストリップアンテナの一例を表す平面図である。
また、図3は、図2のA−A断面図である。なお、図2以降の図については、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
このアンテナは、セラミックスや樹脂などの絶縁性の材料からなる基板101の前面に矩形状の導電体薄膜からなる3つのアンテナ素子102、104、106が一直線上に併設された構造を有する。中央のアンテナ素子102は、マイクロ波信号源から直接的に(すなわち、電線を通じて)マイクロ波電力の供給を受ける給電素子である。給電素子102の両側に設けられた2つのアンテナ素子104、106は、直接的な給電は受けない無給電素子である。給電素子102の励振方向は、図2において上下の方向であり、3つのアンテナ素子104、102、106の配列方向は励振方向と直交する方向とされている。この実施例では一例として左右の無給電素子104、106は、中央の給電素子102を中心として線対象の位置、すなわち給電素子102から等距離の位置に配置されており、サイズも同一とされている。無給電素子104、106のサイズは、給電素子102のサイズとほぼ同一とすることができるが、異なるものとしてもよい。なお、励振方向にみた長さは、用いるマイクロ波の波長に応じて最適な範囲があるので変えることができる範囲は狭いが、励振方向に対して垂直な方向の長さはより広い範囲で変えることができる。
【0013】
給電素子102の背面の所定箇所(以下、「給電点」という)に給電線108の一端が接続されている。図3に表したように、給電線108は、基板101を貫通する導電線であり、給電線108の他端は、基板101の背面上に位置された高周波回路12のマイクロ波出力端子に接続されている。なお、高周波回路12は、例えばワンチップICとして形成することができる。給電素子102は、高周波回路12に設けられた発振回路14(図1参照)から出力される特定周波数(例えば、10.525GHz、24.15GHz、または76GHzなど)のマイクロ波電力を給電点に受けて励振される。
【0014】
図3に表したように、基板101は多層基板であり、その内部には1つの層として、薄膜状のアース電極116が、基板101の全面にわたって設けられている。アース電極116は、接地線115を介して高周波回路12のグランド端子に接続されている。
【0015】
図2及び図3に表したように、無給電素子104、106のそれぞれの背面の所定箇所(以下、「接地点」という)にも、制御線110、112の一端がそれぞれ接続されている。制御線110、112の他端は、基板101の背面上に配置されたスイッチ120、124の一側端子にそれぞれ接続されている。スイッチ120、124の他側端子は、接地線118、122をそれぞれ介して、アース電極116に接続されている。スイッチ120、124は個別にオン・オフ操作が可能とされている。左側のスイッチ120のオン・オフ操作により、左側の無給電素子104がアース電極116に接続されるか、フローティング状態になるかが切り替えられる。右側のスイッチ124のオン・オフ操作により、右側の無給電素子106がアース電極116に接続されるか、フローティング状態になるかが切り替えられる。
【0016】
スイッチ120、124には、高周波スイッチを用いることが望ましいが、使用するマイクロ波周波数に対するインピーダンスが所定の適正値に調整されている必要は特になく、高周波信号を遮断するスイッチのオフ特性(アイソレーション)が良好であればよい。 図2に表したように、給電素子102の給電点の位置は、一例として、給電素子102の励振方向(上下方向)において、使用するマイクロ波の基板101上での波長λgに応じた最適アンテナ長 (ほぼ、λgである)だけ給電素子102の下側エッジ(または上側エッジ)から上側(または下側)に離れた位置であって、励振方向(上下方向)と直交する方向(左右方向)において、給電素子102の中央位置とされている。一方、無給電素子104、106のそれぞれの接地点の位置は、一例として、励振方向(上下方向)において、各無給電素子104、106の中央を中心とした幅L/2の範囲より外側の位置であって、直交する方向(左右方向)において、それぞれの無給電素子104、106の中央の位置とされている。ここで、Lは、無給電素子104、106の励振方向にみた長さである。
【0017】
このように構成されたマイクロストリップアンテナにおいて、スイッチ120、124を操作して無給電素子104、106をアース電極116に接続(接地)するかを切り替えることにより、このマイクロストリップアンテナから出力されてる電波ビームの放射方向を複数の方向のいずれかに切り替えることができる。給電素子102と無給電素子104、106との位置関係により放射方向が決定されるため、波長よりも極端に短い給電線108を介して給電素子102と高周波回路12とを接続することが可能であり、よって、伝送損失が少なく効率がよい。また、制御線に接続されるスイッチが1つで電波ビームの放射方向を変化させることができるため、このマイクロストリップアンテナは基板サイズ小型化や製造の低コスト化に適している。
【0018】
図4は、スイッチ120、124の操作による電波ビームの放射方向の変化を表す模式図である。
図4において、楕円は放射される電波ビームを模式的に表し、横軸の角度は基板101の主面に対して垂直な方向からみた電波ビームの放射方向の角度(放射角度)を表し、プラスの角度は放射方向が図2において右側に傾いていることを表し、マイナスの角度は左側に傾いていることを表す。
【0019】
図4に表したように、両方のスイッチ120、124がオンの場合(すなわち、両方の
無給電素子104、106が接地されている場合)、電波ビームは点線で表したように、基板101の主面に対して垂直な方向に放射される。両方のスイッチ120、124がオフの場合(すなわち、両方の無給電素子104、106がフローティング状態の場合)も、電波ビームは一点鎖線で表したように、基板101の主面に対して垂直な方向に放射される。
【0020】
一方、左側のスイッチ120がオンで右側のスイッチ124がオフの場合(すなわち、左側の無給電素子104だけが接地されている場合)は、電波ビームは破線で表したように、左側(条件によっては右側)に傾いた方向に放射される。また、左側のスイッチ120がオフで右側のスイッチ124がオンの場合(すなわち、右側の無給電素子106だけが接地されている場合)は、電波ビームはもうひとつの破線で表したように、右側(条件によっては左側)に傾いた方向に放射される。
このように、接地される無給電素子104、106を選択することにより、電波ビームの放射方向を変えることができる。
【0021】
図5は、本発明の第1の実施の形態の高周波センサ装置において実行される動作を例示するフローチャートである。
また、図6は、本実施形態におけるドップラー信号の波形や信号のタイミングなどを表すグラフ図である。
また、図7は、高周波センサ装置の動作を説明するための模式図である。
【0022】
本実施形態においては、例えば、図5に表したように、高周波センサ装置は第1のスキャンモードを実行する(ステップS102)。これは例えば、図7(a)及び(b)に表したように、電波ビームD2と電波ビームD1とを交互に放射して、移動体によるドップラー信号を監視するモードである。この時、図6に表したように、スイッチ1(SW1)とスイッチ2(SW2)とを順次切り替える。それぞれのスイッチがオンとなる時間TS1、TS2は、例えば、比較的速く移動する人体を対象とするような場合に、例えば10〜50ミリ秒程度とすることができる。
【0023】
そして、第1のスキャンモードが実行されている時(ステップS102)に、制御判断回路26がトリガP(図6参照)を入力すると(ステップS104:yes)、第2のスキャンモードが開始される(ステップS106)。トリガPは、例えば、高周波センサ装置を現場に取り付ける施工業者が高周波センサ装置に設けられたスイッチ(図示せず)を操作することにより入力することができる。ただし、トリガPの入力はスイッチ操作には限られず、制御判断回路26に対して有線または無線により所定の信号を送信して実行させてもよい。あるいは、後に詳述するように、被検知体を検知したことにより、制御判断回路26が自発的にトリガPsを発生させてもよい。これは、その後のトリガについても同様である。
【0024】
第2のスキャンモードにおいては、第1のスキャンモードとは異なる速度で電波ビームD1、D2が切り替えられる。図6に表した具体例の場合、それぞれの電波ビームD1、D2がオンとなる時間TS3、TS4は、例えば、50〜200ミリ秒程度とすることができる。電波ビームをこの程度の時間放射すると、図7(c)に表したように、歩行速度が比較的遅い高齢者などの被検知体900が接近してきたような場合でも、ドップラー信号により確実に検知することが可能となる。
【0025】
そして、第2のスキャンモードが実行されている時(ステップS106)に、制御判断回路26がトリガP(図6参照)を入力すると(ステップS108:yes)、第1のスキャンモードが開始される(ステップS102)。
【0026】
以上説明したように、本実施形態においては、第1のスキャンモードと、これとはスキャン速度が異なる第2のスキャンモードと、が選択的に実行可能とされている。こうすることにより、例えば移動速度が遅い被検知体を検知するような場合と、移動速度が比較的速い被検知体を検知するような場合と、にそれぞれ適したスキャンモードを実行させることができ、いずれの場合も被検知体をより確実に検知することが可能となる。例えば、工場において高周波センサ装置を製造する際に、要求される仕様あるいは用途に応じてスキャンモードの切り替えて出荷することができる。または、高周波センサ装置を取り付ける現場において、その用途や使用態様に応じて施工業者がスキャンモードを適宜切り替えることもできる。あるいは、高周波センサ装置の設置後に、状況に応じて使用者がスキャンモードを切り替えるようにしてもよい。
【0027】
なお、図5〜図7においては、第1のスキャンモードと第2のスキャンモードを選択的に実行可能な具体例を表したが、本発明はこれには限定されず、3つあるいはそれ以上のスキャンモードのいずれかを選択的に実行可能としてもよい。
【0028】
図8は、本実施形態におけるスキャンモードの第2の具体例を表す模式図である。
電波ビームD1を放射する時間と、電波ビームD2を放射する時間と、は必ずしも同一である必要はない。図8に表した具体例の場合、第2のスキャンモードにおいて、スイッチSW1をオンにする時間TS3は、スイッチSW2をオンにする時間TS4よりも長く設定されている。
【0029】
図9に表したように、電波ビームD1とD2とを交互に放射する場合、高周波センサ装置を設置する現場の条件によっては、電波ビームD1の方向から被検知体902が接近する確率と、電波ビームD2の方向から被検知体904が接近する確率と、が同一ではない場合も多い。例えば、高周波センサ装置が部屋の隅や廊下のつきあたりなどに設置される場合などは、電波ビームD1とD2のいずれか一方の方向から専ら被検知体が接近することも多い。このような場合に、スキャン速度を変えるだけでなく、デューティも変えることにより、現場の状況により適合した動作をさせることが可能となる。
【0030】
図10は、スキャンのデューティも変化させるスキャンモードを例示する模式図である。
図10(a)に表した第1のスキャンモードにおいては、スイッチSW1とSW2がオンとなる時間TS1、TS2は、いずれも短く且つ同一とされている。これに対して、図10(b)に表した第2のスキャンモードにおいては、スイッチSW1、SW2がオンになる時間TS3、TS4は、いずれも第1のスキャンモードよりも長く、且つ、TS3のほうがTS4よりも長く設定されている。一方、図10(c)に表した第3のスキャンモードにおいては、スイッチSW1、SW2がオンになる時間TS5、TS6は、いずれも第1のスキャンモードよりも長く、且つ、TS6のほうがTS5よりも長く設定されている。
これら3つのスキャンモードのいずれかを製造現場、施工現場、または設置後に、適宜切り替えることにより、使用状況に適合した動作をさせることができる。
【0031】
図11は、本実施形態におけるスキャンモードの第4の具体例を表す模式図である。
また、図12及び図13は、本具体例における高周波センサ装置の動作を説明するための模式図である。
【0032】
本具体例においては、スイッチSW1、SW2、SW3を順次切り替えることにより、電波ビームD1、D2、D3を順番に切り替えて放射する。そして、第1のスキャンモードにおいては、それぞれの電波ビームの放射時間TS1、TS2、TS3は短く設定されている。これら放射時間TS1、TS2、TS3は同一としてもよく、互いに異なるものとしてもよい。
【0033】
一方、図12(b)及び図13(b)に表したように、被検知体900を検知すると、第2のスキャンモードが開始される。第2のスキャンモードにおいては、これら3つの電波ビームのうちの少なくともいずれかの放射が休止される。例えば図12に表した具体例の場合、被検知体900は、電波ビームD1の方向から接近する。制御判断回路26がこれを検知すると、第2のスキャンモードを開始する。そして、電波ビームD3の放射を休止し、電波ビームD1とD2を交互に放射する。この際にそれぞれの電波ビームD1、D2が放射される時間TS4、TS5は、第1のスキャンモードにおける時間TS1、TS2、TS3よりも長く設定されている。
【0034】
このようにすると、高周波センサ装置に接近する被検知体900の動作をより具体的に把握することが可能となる。
例えば、高周波センサ装置により自動ドアの開閉を制御するような場合、図12(b)及び(c)に表したように、高周波センサ装置が付設された自動ドアに対して被検知体900が接近する時には、被検知体900の移動速度はドアに近づくにつれて低下する傾向がある。一方、図13(b)及び(c)に表したように、被検知体900が自動ドアの前を通り過ぎるような場合には、被検知体900の移動速度はドアの前でも低下しない場合が多い。従って、電波ビームの方向を限定し、且つ電波ビームの放射時間を長く設定することにより、被検知体900が図12に表したように接近しているのか、それとも図13に表したように通過するだけであるのか、を判別することができる。その結果として、例えば、通過する被検知体900に対して自動ドアを無用に開くことを抑制できる。
【0035】
図14は、本実施形態におけるスキャンモードの第5の具体例を表す模式図である。
本具体例においては、第1のスキャンモードと第2のスキャンモードとを交互に繰り返す。すなわち、例えば周波数の低い動きに合わせてスキャン速度を遅いモードに固定してしまうと、周波数が高い動きに対して、どの方向に被検知体が存在するかの検知が困難となる場合がある。またこれとは逆に、周波数の高い動きに合わせてスキャン速度が速いモードに固定してしまうと、周波数が低い動きに対して、どの方向に被検知体が存在するかの検知が困難となる場合がある。
【0036】
これに対して、本具体例においては、スキャン速度が速いスキャンモードと、スキャン速度が遅いスキャンモードと、を繰り返すことにより、周波数の高い動きに対しても、周波数の低い動きに対しても、確実に検知することが可能となる。なお、図14に表した具体例においては、第1のスキャンモードと第2のスキャンモードとをそれぞれ1サイクルずつ交互に繰り返すが、本発明はこれには限定されない。すなわち、第1のスキャンモードと第2のスキャンモードとを複数サイクルずつ繰り返してもよい。
【0037】
図15は、本実施形態におけるスキャンモードの第6の具体例を表す模式図である。
本具体例においては、相対的に速い速度でスキャンを実行中に被検知体を検知すると、スキャン速度を相対的に遅くする。
すなわち、図15に表したように、第1のスキャンモードにおいては相対的に速い速度でスキャンを実行する。そして、ドップラー信号の振幅が所定の閾値を越えると、トリガ(図6参照)が発せられ、第2のスキャンモードに移行する。第2のスキャンモードにおいては、第1のスキャンモードよりも相対的に遅い速度でスキャンが実行される。図15に表した具体例の場合、第1のスキャンモードにおいても第2のスキャンモードにおいても、スイッチ1(SW1)がオンの時に被検知体を検知している。このように、スキャン速度が速い第1のスキャンモードと、スキャン速度が遅い第2のスキャンモードにおいてそれぞれ被検知体を検知したら(すなわち、ドップラー信号が閾値を越えたら)、検知を確定するようにすることができる。検知を確定すると、例えば図15に表したように、判定信号を外部に出力し、例えば自動ドアを開くなどの所定の制御が実行される。
【0038】
本具体例によれば、まず速いスキャン速度でスキャンを実行(第1のスキャンモード)し、被検知体を検知すると、遅いスキャン速度でスキャンを実行(第2のスキャンモード)することにより、被検知体をより確実に検知することが可能となる。
【0039】
すなわち、人体検知までがスキャン速度が速い、人体検知後にスキャン速度を遅くすることによって周波数の高い動きと低い動きを検知できる。スキャン速度が速いモード(第1のスキャンモード)を検知の確定前に実行する理由としては、スキャン速度が遅いモードを実行すると、人体そのものを検知できない場合がある(人の通り過ぎるような早いうごきを拾えない)からである。これに対して、スキャン速度が速いモードを実行した場合は、人体の遅い動きなどに対して、どちらの方向にいるのかを誤検知することはあり得るが、人体などの被検知体の有無は確実に検知できる。よって、本具体例においては、人体などの被検知体の検知前にスキャン速度が速いスキャンモード(第1のスキャンモード)を実行し、人体などの被検知体の検知後にスキャンモードが遅いスキャンモード(第2のスキャンモード)を実行し、検知を確定するようにしている。
【0040】
通常は、スキャン速度を速くしてスキャンし、人体などの被検知体を検知した時のみ、スキャン速度を遅くすれば、ドップラー信号の電圧振幅値と周波数をより認識し易くなり、周波数が低い動き(ゆっくりとした動き)に対しても、どの方向に人などの被検知体がいるのか応答性を損なうことなく検知でき検知精度を向上できる。
【0041】
また、本発明の高周波センサ装置を操作スイッチとして使用するしてもよい。この場合、電波スキャン時に得られたドップラー信号の周波数に基づいて、所定の周波数以上の信号が得られた時のみスイッチとして機能させれば、センサ装置付近をスイッチ操作しないで通り過ぎる人の動きで誤動作することを防止できる。
【0042】
また、図15に表した具体例の場合、第2のスキャンモードにおいて検知を確定すると、電波ビームの方向をスイッチ1(SW1)の方向に固定している。この状態で、例えば被検知体の手の動く速度などに応じて所定の情報を入力させることも可能である。すなわち、本具体例の高周波センサ装置を、操作スイッチとして使用することもできる。この場合、電波スキャン時に得られたドップラー信号の周波数に基づいて、所定の周波数以上の信号が得られた時のみスイッチとして機能させれば、例えば、高周波センサ装置の付近をスイッチ操作しないで通り過ぎる人の動きで誤動作することを防止できる。
【0043】
さらに、所定の周波数以上の信号が得られた時に電波方向を固定しその時のドップラー信号に基づいて判定信号を出力する構成にすれば、速度だけでなく距離や時間のパラメータを抽出して、よりアナログ的なスイッチとして使用することも可能である。なお、図15に表した具体例においては、電波ビームの固定は必ずしも必須ではなく、第2のスキャンモードで検知を確定し、所定の動作を実行させるようにしてもよい。
【0044】
以上、電波ビームを2方向または3方向にスキャンする具体例について説明したが、本発明はこれら具体例には限定されない。すなわち、本発明は、電波ビームを4方向またはそれ以上の方向にスキャンする場合にも同様に適用することができる。
【0045】
図16は、4方向以上に電波ビームをスキャンできる高周波センサ装置のアンテナ100の模式平面図である。
また、図17は、このアンテナ100においてスイッチ操作により放射ビームの方向が変化することを表した模式図である。
このアンテナ100は、給電素子102の上下左右に無給電素子130、132、104、106が配置された形態を有する。これら無給電素子は、制御線110、112、134、136を介して接続されたスイッチSW1〜SW4により、それぞれ接地状態とフローティング状態のいずれかにすることができる。無給電素子104、106、130、132のいずれか1つのみを選択的に接地状態とすることにより、メインビームの放射方向を上下左右に傾斜させることができる。また、無給電素子104、106、130、132は給電素子102により励起され、同一方向に励振されるため、左右の無給電素子104、106のうちのいずれかと上下の無給電素子130、132のいずれかをそれぞれ接地することにより、メインビームの方向を平面視で45度程度の方向に傾斜させることもできる。このように接地される無給電素子104、106、130、132を選択することにより、メインビームの方向を45度間隔で変えることもできる。
【0046】
このように、スイッチSW1〜SW4を適宜切り替えることにより、4方向またはそれ以上の方向に電波ビームを放射できる。そして、本実施形態によれば、複数のスキャンモードを設け、それぞれのスキャンモードにおいて電波ビームを放射する時間及びそれらのデューティを適宜変えたり、いずれかひとつ以上の電波ビームの放射を休止させることにより、設置する現場や使用態様、被検知体の移動状況などに適合した動作をする高周波センサ装置を提供することができる。
【0047】
以上、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。
しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。例えば、高周波センサ装置を構成するアンテナ、高周波スイッチ、発振回路、検波回路、制御部などの形状、サイズ、配置などに関して当業者が設計変更を行ったものであっても本発明の主旨を逸脱しない限り本発明の範囲に包含される。また、前述した各具体例のふたつまたはそれ以上を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態にかかる高周波センサ装置のブロック図である。
【図2】本実施形態の高周波センサ装置に設けられるマイクロストリップアンテナの一例を表す平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】スイッチ120、124の操作による電波ビームの放射方向の変化を表す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の高周波センサ装置において実行される動作を例示するフローチャートである。
【図6】本実施形態におけるドップラー信号の波形や信号のタイミングなどを表すグラフ図である。
【図7】高周波センサ装置の動作を説明するための模式図である。
【図8】本実施形態におけるスキャンモードの第2の具体例を表す模式図である。
【図9】図8に表した具体例の動作を説明するための模式図である。
【図10】スキャンのデューティも変化させるスキャンモードを例示する模式図である。
【図11】本実施形態におけるスキャンモードの第4の具体例を表す模式図である。
【図12】第4具体例における高周波センサ装置の動作を説明するための模式図である。
【図13】第4具体例における高周波センサ装置の動作を説明するための模式図である。
【図14】第5具体例における高周波センサ装置の動作を説明するための模式図である。
【図15】第6具体例における高周波センサ装置の動作を説明するための模式図である。
【図16】4方向以上に電波ビームをスキャンできる高周波センサ装置のアンテナ100の模式平面図である。
【図17】アンテナ100においてスイッチ操作により放射ビームの方向が変化することを表した模式図である。
【符号の説明】
【0049】
10 高周波部、 12 高周波回路、 14 発振回路、 16 検波回路、 20 制御部、 22 増幅器、 24 比較器、 26 制御判断回路、 30 負荷制御回路、100 アンテナ、101 基板、102 アンテナ素子(給電素子)、104、106 アンテナ素子(無給電素子)、108 給電線、110 制御線、115 接地線、116 アース電極、118 接地線、120、124 スイッチ、130、132 無給電素子、900 被検知体、SW1〜SW4 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を発生する発振回路と、
前記送信波を複数の方向に放射可能とし、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する検波回路と、
前記検波回路により検知されたドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回路と、
を備え、
前記制御判断回路は、
前記アンテナから放射される電波の方向を複数の方向のいずれかに第1の速度で順次切り替える第1のスキャンモードと、
前記アンテナから放射される電波の方向を複数の方向のいずれかに前記第1の速度とは異なる第2の速度で順次切り替える第2のスキャンモードと、
を実行可能であることを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項2】
前記第1のスキャンモードにおいて前記複数の方向のうちの第1の方向に電波を放射する時間と、前記複数の方向のうちの第2の方向に電波を放射する時間と、の割合と、
前記第2のスキャンモードにおいて前記第1の方向に電波を放射する時間と、前記第2の方向に電波を放射する時間と、の割合と、
が異なることを特徴とする請求項1記載の高周波センサ装置。
【請求項3】
前記制御判断回路は、前記第1のスキャンモードにおいて被検知体を検知すると、その方向に電波を放射する割合を、前記第2のスキャンモードにおいて大きくすることを特徴とする請求項2記載の高周波センサ装置。
【請求項4】
前記第1のスキャンモードにおける前記複数の方向の数と、前記第2のスキャンモードにおける前記複数の方向の数と、が異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の高周波センサ装置。
【請求項5】
前記制御判断回路は、前記第1のスキャンモードと前記第2のスキャンモードとを交互に繰り返すことを特徴とする請求項1記載の高周波センサ装置。
【請求項6】
前記制御判断回路は、前記第1のスキャンモードにおいて前記被検知体を検知すると、前記第1のスキャンモードを終了し前記第2のスキャンモードを開始することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の高周波センサ装置。
【請求項7】
前記第1の速度は、前記第2の速度よりも大きく、
前記制御判断回路は、前記第1のスキャンモードにおいて被検知体を検知すると、前記第1のスキャンモードを終了し前記第2のスキャンモードを実行し、前記第2のスキャンモードにおいても被検知体を検知すると検知を確定することを特徴とする請求項1記載の高周波センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−202979(P2008−202979A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36852(P2007−36852)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】