説明

高周波トランスポンダを有するビザの最適化された読取り方法、適合化されたビザのセットおよびこれらを含む文書

【課題】読取り装置と数多くの高周波トランスポンダとの非接触通信を全体的に改善する。
【解決手段】文書(A、B、C)内に配置された電子ビザ(V1a、V1b、V2a、V2b)を読取り装置によって読み取る場合において、電子ビザが、各々マイクロ回路に接続されたアンテナ(13、13i、13j)を担持する支持体(24)を備えており、文書(A、B、C)はヒンジ(32)の周囲に連結された規定フォーマットのシート(P1、P2)を備えており、アンテナ(13、13i、13j)の寸法はシート(P1、P2)の半分よりも小さいフォーマットに決定されている。また、アンテナ(13、13i、13j)がシートの長手方向軸(XF)に沿って互いに離隔されるように、シート一枚に最大二つずつ電子ビザ(V1a、V1b、V2a、V2b)が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波トランスポンダRFを有する電子ビザの最適化された読取り方法、この最適化された読取りに適合化されたトランスポンダ付きビザのセットおよび、かかるビザを伴ってレイアウトされたパスポートなどの文書のレイアウトに関するものである。
【0002】
より詳細には、本発明は、複数のトランスポンダにとり囲まれる可能性のあるトランスポンダとの通信の改善に関するものである。これは特に、これらのトランスポンダが文書のシートのセットに固定されている場合に起こることである。
【0003】
本発明の好ましい利用分野は、電子パスポートのような非接触タイプの電子旅券の読取りにあり、ここでトランスポンダは電子ビザの形で、この文書内に共に配置されている。特に、これらの文書およびビザは、ICAO(英語の「International Civil Aviation Organization」の略語)およびISO/IEC14443規格の規定に適合している。このような理由から、明細書では、「ビザ」または「電子ビザ」という用語を区別せずに、高周波トランスポンダを含むか、または高周波トランスポンダであり得るものとして理解する。同様に、「パスポート」という用語は、あらゆる文書またはシートのセット、さらには支持構造またはトランスポンダのセットをまとめるその他のデバイスを区別せずに示すことができる。
【背景技術】
【0004】
電子パスポートおよび/または電子ビザといった旅券は、一方では前記文書の所持者に関する情報が記入されている紙製文書と、他方ではこの同じ所持者に関する情報を安全な形で同様に含んでいる非接触電子チップとを備えているか、または、それらで構成されている。
【0005】
未解決の問題は、電子パスポートタイプの旅券がいくつもの電子ビザを備えなければならない場合に発生する。
【0006】
実際、これらの非接触電子チップが利用している原理自体が原因で、文書内の電子ビザの数が増加すると、それらを瞬時に読取ることがその増加に伴って増々困難になり、ビザ数が4つまたは5つを上回った時点でその機能が不可能にさえなってしまう。
【0007】
公知の通り、仏国特許出願公開第2887712号明細書では、受動アンテナおよび周波数同調の詳細な調節を行なうトランスポンダの最適化された読取り方法が記述されている。この文書は同様に文書のページに対応するページ上に、全体においてほとんど、またはできるかぎり最小限にしか重ならないような形で、トランスポンダをランダムに位置づけすることも想定されている。予めランダムに作成されたビザの支持体まとまり、つまり一つのセットは、同じ要領でまたは互いに重なり合ってセットされたビザを備えることができる。
【0008】
国際公開第2005/104024号パンフレットでは、高周波トランスポンダおよび電磁遮蔽要素を担持する文書について記述されている。トランスポンダは、文書が閉じられた場合に、別のシート上に配置された遮蔽要素によって保護されるような形で文書のシート上に配置される。
【0009】
電子旅券で示されたニーズは、前記文書が非接触読取り装置に由来する磁場にさらされた際に、最大数の同時に機能する非接触電子ビザを含むことができるというものである。読取り装置および旅券は、ISO/IEC14443規格に適合し、好ましくは修正が容易であることが必要であり、ビザの使用は単純なものでなくてはならない。
【0010】
一つまたは複数の非接触電子ビザの仕様書は、一方では、各々のビザが、非接触読取り装置由来の磁場を最低限しか消費しないこと、そして該磁場とできる限り弱くしか相互作用しないこと、他方では、その各々のビザが、読取り装置への応答の際にISO/IEC14443規格が課す条項に適合する変動を前記磁場に発生させることを求めている。
【0011】
ISO/IEC14443規格に由来する非接触技術では、非接触製品間の衝突防止原理の実施を可能にするメカニズムについて記述されている。これらの原理は、複数の非接触製品が同じ磁場にさらされている際に、それらのうちから一つを抽出することを可能にする論理的な仕組みを提案している。これらの原理の優れた機能に必要な条件は、読取り装置が、自ら生成している磁場に存在する全ての製品に給電すること、そしてそれら全てを検出することである。
【0012】
特に、非接触衝突防止メカニズムは、複数の非接触トランスポンダの合計によって誘発される磁荷および消費量によって制限されている。このことは、電子パスポートの内部でまたは外部で読取り可能な電子ビザの数を制限する。
【0013】
一方、ISO/IEC14443規格は、非接触製品が、1.5A/mおよび7.5A/mの間に含まれる磁場の領域で機能することを課す条項を含んでいる。この条項により、非接触製品は少なくとも1.5A/m以上の磁場から機能することが可能になっている。
【0014】
したがって、規格に適合した読取り装置は、規格を適合させつつも旅券の存在下で1.5A/mの磁場しか生成させなくてもよい。ISO/IEC14443規格は、読取り装置が検出できるような非接触製品の応答の最小振幅も同様に課している。この最小振幅は、磁場の振幅をHとして、少なくとも30/H1.2(つまり18.6mV)である。この値は、読取り装置の磁場の振幅変調の結果生成された側波帯の振幅に基づいて定義されるものであり、該磁場の周波数は、847Khzに調整されたその副搬送波のペースを受けて、非接触製品によって13.56MHzとなる。
【0015】
これらの条件が満たされたならば、規格に適合した非接触読取り装置は、非接触チップのデータを受理できるはずであると思われる。
【0016】
現行技術によれば、旅券に最大数の複数の電子ビザが位置づけされると直ちにこれらの条件を全てを満たすことが可能である。現在、トランスポンダの応答曲線から見て、ビザの最大数は5つのようである(図3は、ISO/IEC JTC1/SC17/WG8の公文書N1088の抜粋である)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者は、規格に適合する五つ以上の非接触製品を別個に利用すると、それらが同じ旅券内にまとめられた際に、それらの間での電磁結合のため、全体としてはもはやISO/IEC14443規格に適合しなくなるということを見出した。適合する非接触読取り装置では、もはやこれらに給電することもこれらを検出することもできないと考えられる。
【0018】
本発明者は、トランスポンダの数を五つにするという制限を、電子パスポートの開発においてだけではなく、一般的に考えられる利用分野の如何に関わらず、まとめて配置された複数のトランスポンダの読取りにおいても不都合となりうるものと考えた。
【0019】
したがって本発明者は、現行技術に比べてサービスの保証を提供するような形で、定電力の読取り装置の、数多くのトランスポンダとの非接触通信を全体的に改善することを提案した。すなわち、ビザの特殊な設計と特別なレイアウトによって、適切な条件下でのトランスポンダの読取りを保証することが可能である。
【0020】
本発明は同様に、ICAO、特にICAO9303そして特にISO/IEC14443の仕様に適合する、電子パスポートの利用分野において、まとめて読取り可能なトランスポンダの数の最適化を提案することをも目的としている。このため、トランスポンダの新しい特徴が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このために、本発明者によって、本発明の原点である以下のような条件または事項が開示された。パスポートは、ICAOに適合した電子パスポートであってもなくてもよい(内部チップ有りまたは無し)。電子ビザはパスポートのページの表、裏または両面に接着されていてもよい。電子ビザの存在によって電子パスポートの機能性が変更されてはならない。
【0022】
次のような物理的制約も以下で考慮される。電子パスポートの、読取り装置のインフラストラクチャとの相互運用性は保たれなくてはならない。各々の非接触コンポーネントは互いに作用し合う。各々の非接触コンポーネントは給電されなくてはならない。読取り装置は、各々の非接触コンポーネントを読取るかまたは聞き取ることができなくてはならない。この読取り装置は衝突を解消しなければならない。
【0023】
以下では、論理的制約が考慮される。電子ビザ(e−Visa)は電子パスポートと区別されなくてはならない。アプリケーションソフトウェア「電子ビザ」は、パスポートのものと同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
システムの制約も同様に考慮され、読取り装置は電子ビザの存在を検索しなければならない。
【0025】
非接触コンポーネント間の相互作用に関係する制約が考慮される:非接触コンポーネント間の相互作用は、それ自体アンテナの循環電流に左右される各々のアンテナ間の相互結合(k)、アンテナ間の距離、アンテナの被覆、アンテナの寸法、巻回数に左右される。
【0026】
読取り装置と電子ビザの間の相互作用は、電子ビザ由来のグローバルアンテナ(global antenna)、読取り装置と電子ビザ由来のグローバルアンテナの間の同調に左右される。
【0027】
特に磁場の出力、信号のインタフェースについて、ISO/IEC14443の最も重要な仕様が考慮される。
【0028】
前述した不都合および制約に対処するため、本発明は、特に、ビザまたはトランスポンダのアンテナのみならず、それらの重なりを削減してそれらの過結合(sur−couplage)を大幅に削減することからなる。これにより、チップの応答は改善され、衝突防止の管理が容易になる。
【0029】
これらの措置によって、本発明は、一枚のシートの表/裏にあるビザについて確認された過結合現象を大幅に削減し、さらには一枚の文書シートの表および裏に配置されたアンテナ間の重なりが無くなる範囲で、該現象を消滅させることを可能にする。かくして、ビザ間でのおよび/または電子パスポートのアンテナとの過結合が回避され、このようにして「電子ビザ」の機能性が保証される。
【0030】
本発明は、特に、電子ビザの通信用アンテナをも含む電子パスポートへの干渉を最小限にするという利点を有する。本発明の利点は、「電子ビザ」の発行および審査の容易さにある。
【0031】
第一の態様によると、本発明は、電磁場の読取り装置で電子ビザを読取るための方法に関するものであり、前記ビザは、各々マイクロ回路に接続されたアンテナを担持する支持体を備え、そして文書内に配置されており、文書は、ヒンジの周囲に連結された規定のフォーマットのシートを備えており、アンテナの寸法がシートの半分よりも小さいフォーマットに規定されている。
【0032】
この方法は、シート(P2)一枚に最大二つずつ配置されるように、かつアンテナ(13i、13j)がシートの長手方向軸(XF)に沿って互いに離隔されるように、ビザ(V1a、V1b、V2a、V2b)の体系的な文書内のレイアウトを採用することが想定されていることによって特徴づけられる。
【0033】
その他の特徴によると、ビザは文書のシートのフォーマットよりわずかに小さいかまたはこれに等しいフォーマットの支持体を有しており、この方法は、横方向中央軸の両側にビザの支持体の二つの半部分を画定し、そしてアンテナを、どのビザにおいても常に同じである一部分の内部に位置づけ、次にシートの表と裏にビザを固定し、ビザがシートの長手方向自由縁部に対して同一の要領でレイアウトされる過程を含んでいる。
【0034】
本発明は同様に、複数のシート備える文書向けの、一つのセットの電子ビザまたはトランスポンダをも目的としており、前記ビザは、文書のシートのフォーマットよりわずかに小さいかまたはこれに等しいフォーマットを有し、かつマイクロ回路に接続されたアンテナを担持する支持体を備えるものであり、ビザの支持体は、横方向垂直二等分線の両側に配置された二つの半部分を画定している。
【0035】
一つのセットのビザまたはトランスポンダは、ビザのアンテナが、全て支持体の同じ側に位置づけられる半部分に配置されていることを特徴とする。
【0036】
本発明は同様に、複数のシートと、シート上にレイアウトされたアンテナを具備する電子ビザとを備える文書を目的とするものであり、ビザのアンテナは、シートの半分の表面積内に含まれるような寸法に決められている。
【0037】
文書は、シートの長手方向軸に沿ってビザのアンテナを互いに離隔させるようにして、シートの横方向中央軸の両側にビザが最大二つ配置されていることを特徴とする。
【0038】
その他の特徴によると、ビザは文書のシートのフォーマットよりもわずかに小さいかまたはこれに等しいフォーマットの支持体を有し、ビザの支持体は横方向中央軸の両側に二つの半部分を画定しており、このとき文書は、支持体がどのビザでも常に同じである一部分の内部にアンテナを備えていること、そしてビザがシートの表と裏に固定され、シートの長手方向自由縁部に対して同一の要領でレイアウトされていることで特徴づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明のその他の特徴および利点は、非限定的な例として示された説明を読むこと、ならびに添付図面を参照することによって明らかになる。
【図1】従来技術に係る電子パスポートの読取りシステムを示す図である。
【図2】従来技術の電子パスポートおよび異なる複数のビザを示す図である。
【図3】従来技術のトランスポンダの数に応じた応答電圧曲線を示す図である。
【図4】本発明の第一の実施態様または実施形態に適合した、シート上のトランスポンダまたは電子ビザのレイアウトを示す図である。
【図5】図5は、表と裏から見た第二の実施態様に適合した電子ビザを示す図である。
【図6】図6は、表と裏から見た第二の実施態様に適合した電子ビザを示す図である。
【図7】トランスポンダまたは電子ビザの第一の実施態様に適合した文書の二つの変形例を示す図である。
【図8】図8は、第二の実施形態に適合した、各々、一枚のページの表と裏にある二つの電子ビザをレイアウトした旅券を示す図である。
【図9】図9は、第二の実施形態に適合した、各々、一枚のページの表と裏にある二つの電子ビザをレイアウトした旅券を示す図である。
【図10】好ましい寸法での、より詳細なビザのためのトランスポンダアンテナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1において、高周波(RF)タイプのトランスポンダの形状をした電子パスポートおよび電子ビザの既存の読取りシステム1は、発出アンテナ2を介して問合せ磁場(champ d’interrogation)を発し、この磁場にさらされたトランスポンダの応答を受け取ることのできる読取り装置を備える。
【0041】
パスポート3(PICI0)および各々のビザ4(PICI1−PICI5)は、同じタイプのトランスポンダ、すなわちアンテナ(4a−4b)に接続されたRF−ID(高周波識別)タイプの電子回路(5a、5b)を備える。
【0042】
図2において、パスポートのトランスポンダは、パスポート7の表紙6に埋め込まれ、電子ビザの各々のトランスポンダはシート8に埋め込まれている。
【0043】
図3において、ID1フォーマット(現在のパスポートフォーマット)のトランスポンダの電圧応答曲線図(10)は、35ボルトを超えて頂点に達し、一方で、まとめて配置された5つのPICIの電圧応答は、5ボルトに近い。トランスポンダが5個を超えると、電圧は著しく下降し、13.56MHzの周波数では、5個を越えるトランスポンダを検出して読取ることはもはや不可能になる。
【0044】
一般的に本発明の範囲内では、以下の記述の範囲内のトランスポンダとは、電磁場を利用した検出または通信を用いたあらゆる識別のための電子回路を意味する。より詳細には、コンデンサまたは集積回路またはその他の電子コンポーネントにつながれたコイルを備える電磁トランスポンダが関心の対象である。
【0045】
トランスポンダは、特に、アンテナに接続された集積回路チップのような電子コンポーネントを備える。これらのトランスポンダは、あらゆるタイプの支持体に挿入または組合せることができる。例えばこれらのトランスポンダは、粘着電子ラベル、非接触カードの形状をとる。これらのトランスポンダは、包装材、文書の表紙、シートまたはその他のものに埋め込むこともできる。
【0046】
トランスポンダは、銀行(電子マネー)、通信、輸送、身分証明(電子パスポート、IDカード)といった異なる経済分野において利用される。特に身分証明においては、RFIDタイプの非接触携帯電子機器との高周波通信による人物の身分証明を行なうことが公知である。
【0047】
図4において、パスポートまたはさまざまなアクセスのための電子ビザの形状をし得るトランスポンダの最適化された読取りのための、本発明の方法による実施形態の実施過程が見られる。この読取り最適化から、以下で記述する通りのトランスポンダおよび電子ビザの構造および/またはレイアウトおよび/または製造方法が得られる。
【0048】
この過程によると、旅券と呼ばれるパスポートのような文書(図示せず)のページP1に、最大二つの電子ビザV1aおよびV1bが配置される。
【0049】
トランスポンダまたはラベルの最終的な支持体または文書のその他の形態、例えばリーフレット(feuillets)、カードロット(lots de cartes)などが企図され得る。
【0050】
本方法の特徴によると、電子ビザV1a、V1bは、図示されているようにシートP1の同じ面に二つ同時に存在してよいが、アンテナ13がシートの長手方向軸Xに沿って互いに離隔されるように、またはアンテナがシート中央軸または垂直二等分線Yの両側に配されたままとなるようにして、表および裏に配置されてもよい。
【0051】
ビザは、各々、マイクロ回路15に接続されたアンテナ13(図面では、単純化を理由として一つの巻回により概略的に図示されている)を備える。一方、文書A、B、C(図7)は、ヒンジの周囲に連結された、複数の規定のフォーマットシートを備えることができる。
【0052】
本発明の特徴によると、アンテナ13の寸法は、文書のシートの半分のフォーマットよりも小さいフォーマットに決定される。このように、特に図7に示されているような予め定められた、または前もって同意されたその場所または位置にビザが適切にセットされると、アンテナは重なることができず、過結合が生じることはない。
【0053】
したがって、本発明の特徴によると、図7にあるようなパスポートタイプの文書は、図4にあるような複数のシート、ならびに、特に接着によってシートに配置された電子ビザを備え得る。ビザのアンテナは、シートの半分の表面積内に含まれるような形の寸法に決められている(図4)。
【0054】
本発明の実施形態によると、ビザはこの文書において、アンテナがシートの長手方向軸Xに沿って互いに離隔されるようにシート上に最大二つずつ配置される。以下の二つの変形形態がこの処理方法を示している。
【0055】
この図7では、パスポートの変形形態が、例えば協定または税関管理規則により、一枚のシートの表および裏に最大二つを割り振るような形で、ビザの予め定められた位置を想定している。
【0056】
文書Aの変形例では、ページの下の位置18は禁止されているため右ページ16dの上に、半ページを占める位置17が存在する。「ビザ位置」「ビザ禁止またはバツ印」の標示により、税関吏に対しビザのためにパスポートで順守すべき割り振りの様式を喚起することができる。左ページ16gは、これと対照的に、下方位置19のビザの位置とバツ印によって示されるページの上部の禁止位置20とを標示している。この配置は、右ページ16dの裏などに移動させることができる。
【0057】
文書Bの変形例では、二つのビザを収容するために、各々のシートの二面のうちの一面を利用する。この場合、文書の各々の左ページ20gは、図4にあるように、このページにおいて互いに上下にある二つのビザ位置21、22を備え、各々の位置はおよそ半ページを占めている。
【0058】
一方、左ページ16gの表に対応する右ページではビザは禁止されている。
【0059】
同じ原理に基づいて、一つの平面または一枚のページにおいてアンテナの投影に沿って重なり合う位置にアンテナを配置することが回避されるため、文書にまとめて存在する全てのトランスポンダの全体的な過結合、または文書の表ページ(右)と裏ページ(左)に配置されたトランスポンダ間の少なくとも一つの過結合を考慮に入れた、電子ビザの予め定められた位置を既に有する文書を想定することができる。
【0060】
ページの表にn個のアンテナ表面を割り振った場合、n個のトランスポンダについての重なりは全く起こらない。前述のものと同じフォーマットの2n個のアンテナについては、これらの2n個のアンテナは、これらが複数のページに割り振られていたとしても、投射によって一度重なった状態となる。実施例にあるように、一枚のページを占める2個のアンテナについては、文書に2×4個のアンテナをセットする場合、これらのアンテナは、閉じられた文書全体で4度互いに重なりあった状態となる。
【0061】
文書が開かれ、一つの面のみが読取り装置の磁場にさらされると、このページおよびこのページの裏にあるトランスポンダのみが重なった状態または過結合状態になるおそれがある。
【0062】
図5において、電子ビザV2は、前述のものよりも大きく、かつ付随すべき文書のシートのフォーマットよりもわずかに小さい(例えば5〜30%小さい)かまたはこれに等しいフォーマットの自己接着可能な支持体24を有する。支持体のフォーマットは例えばID1フォーマットである。
【0063】
一つの実施態様の特徴によると、この方法は、横方向中央軸Yの両側にビザの支持体の二つの半部分(m、n)を画定し、アンテナをどのビザにおいても常に同じである一部分の内部に位置づけする過程を含んでいる。実施例において、この部分(n)は、図面のとおりビザの右側にあり、写真26が左側にあり得る。
【0064】
ビザはここでは、支持体の後ろに固定されたアンテナ13を有する。アンテナは、エッチング、埋込みワイヤ、シルクスクリーン、導電性材料の被着、刺しゅうなどといった公知の異なる技術によって製作されてよい。アンテナは支持体の右半分部分においてほぼセンタリングされており、どのような場合でも、長手方向軸Xに沿って中央軸Yからずれた状態で支持体の半部分(n)に配されている。
【0065】
特にMRZタイプの情報が、支持体の下部の余白に記され、ビザの下部の余白に長手方向に向けられている。MRZは、光学読取り装置によって読取り可能であり、パスポートまたはビザのマイクロ回路にアクセスするためのパスワードを演繹することを可能にする、ICAO勧告に適合した符号化されたデータである。
【0066】
左側には、所持者の写真26がある。さらに表紙シートを支持体に加え、特にグラフィック印刷およびオーダメイド印刷および/または安全要素を受けることができる。
【0067】
図6においてアンテナは裏に見られ、粘着フィルム27は、取外し可能な保護フィルム28を上に備えることができる。
【0068】
このために、使用中、図5、6のビザは、文書Cのシートの表および/または裏(図8、9)に固定または仮接着される。ビザV2a、V2bは、シートの長手方向自由縁部30に対して同一の要領でレイアウトされる(ページまたはシートP2の長手方向自由縁部30に隣接して、または文書のヒンジ32と反対側にMRZがある)。
【0069】
かくして、図8および9に示された他の実施態様によると、前述のものと同じように文書Cが得られるが、該文書Cは、文書のシートのフォーマットよりもわずかに小さいかまたはそれと等しいフォーマットの支持体を有するビザを備えており、ビザの支持体は横方向中央軸Yの両側で二つの半部分(m、n)を画定している。該文書Cはここでもまた、表紙34を備えている。この表紙は、それ自体、電子パスポート用のアンテナを備えていてもいなくてもよい。
【0070】
そして一つの特徴によると、支持体はどのビザについても常に同じである一部分(n)の内部にアンテナを備える。図8にある実施例においては、ビザV2aは、文書のシートP2の右ページつまり表面FRに固定されている。ビザは、文書のページの右余白または長手方向自由縁部30に沿って、情報、特にMRZを有するような形で配置されている。
【0071】
好ましくは、一つの特徴によると、ビザのアンテナ13iは(その最大長さの方向に)長手方向軸AZを有しており、アンテナは、この長手方向軸AZを支持体の横方向垂直二等分線Yに対してほぼ平行または支持体の長手方向中央軸Xに対してほぼ垂直に有しながら、支持体24内に配置される。
【0072】
シートP2上の所定の位置において、アンテナ13iは、アンテナの軸AZが、支持体の軸に平行またはそれと共線であるシートの長手方向軸XFに対してほぼ垂直になるように、支持体内に配置されている。
【0073】
一つの特徴によると、ビザV2a、V2bは、文書のシートの表および裏にそれぞれ固定され、シートの長手方向自由縁部30に対して同一の要領でレイアウトされる。図9の実施例では、第二のビザV2bは、前述のものと同じ文書のシートP2に属し、かつ該文書シートの裏または右ページ(表)に既に第一のビザV2aを含む文書の左ページFV(裏)に配置される。
【0074】
ビザV2bの方向づけは、この第二のビザのアンテナ13jがシートの長手方向軸XFまたは支持体の長手方向軸Xに沿って第一のV2aのアンテナ13iからずれてまたは離隔されるようにして行なわれる。ビザV2bの情報MRZは、前述のビザV2aの場合のようにシートの自由縁部30の余白または近傍に配置された状態にある。
【0075】
かくして、このずれによって、二個のアンテナのうちの一方によってもう一方のアンテナに対して起こされた、過結合の影響が回避される。MRZが常にシートの長手方向自由縁部または外縁部上にあることから、電子ビザの位置づけに間違いが無い。
【0076】
ビザのアンテナは、ビザのより良い読取りに好都合な側に容易に位置づけられた状態になる。
【0077】
これらのビザは、例えばパスポートの表紙34または内部のページに収納されたアンテナを備えたパスポート、または備えないパスポートの両方に適したものであり得る。
【0078】
製造に関しては、構造または形態が全て同一である電子ビザのセットまたはロットを製造することは容易である。そして使用に関しては、この一つのセット(1、2、3、n)のビザは、複数のシートまたは少なくとも一枚のシートを備える旅券と組合わされる。これらのビザは、文書のシートのフォーマットよりもわずかに小さいかまたはそれと等しいフォーマットを有する支持体を備え、かつ、マイクロ回路に接続されたアンテナを各々担持する。ビザの支持体は、その横方向垂直二等分線Yの両側に配置された二つの半部分(m、n)を画定する。
【0079】
支持体内にランダムに電子ビザを配置することができた従来技術とは異なり、一つの特徴によると、この一つのセットのビザアンテナは全て、どのビザにおいても、支持体の同じ側に位置づけられている支持体の半部分(n)内に配置される。
【0080】
好ましくは、ビザのアンテナが、後方に置かれ、かつ構成要素(MRZ、写真…)が同じ方向に向けられることになる(同じシートまたは別のシートにある)他のビザに対して最善のアンテナの距離を維持することを目的として、アンテナは、その長手方向軸AZを横方向垂直二等分線に対してほぼ平行にして、この半部分(n)内に配置される。かくして、軸XFに沿ったアンテナはさらに大きく離隔されることから、過結合のおそれは一層削減される。
【0081】
図10では、電子ビザ(チップは図示せず)V1aは、支持体11を備えており、優れた通信性能を得るために本発明の特徴にしたがった好ましい特殊性を備えている。これらの好ましい特徴によると、トランスポンダは、3〜6巻回、好ましくは5巻回を有する、ここではエッチングによって製作されたアンテナ13を備えることができる。外部巻回の内側の表面積は、17×65mm〜37×95mmの間に含まれていてよいが、ここでは好ましくはおよそ27×80mmに等しい。巻回の幅は0.22〜0.58mmの間に含まれていてよいが、ここでは好ましくは0.32mmと0.48mmの間に含まれる。巻回の間の間隔は0.2と0.8mmの間に含まれていてよいが、ここでは好ましくは0.4と0.6mmの間である。
【0082】
有利な配置では、各々の電子ビザは、支持体内、例えば文書のフォーマットに等しいかまたはそれよりもわずかに小さいフォーマットのシート内に配置されている。しかしながら、パスポートの利用分野においては、支持体は、ID1フォーマットかまたはそれよりわずかに小さいフォーマットである。好ましい実施態様にしたがって重要なのは、文書内にビザを固定または仮接着する際にユーザーに必要以上の選択肢を残さないことである。シート(または最終的な支持体)の縁部に対するビザの長手方向の距離が、アンテナとビザ24の軸Yとの間の距離よりも小さいことが重要である。かくして、シートの横方向中央軸とアンテナを近づける傾向にある位置にビザを固定する場合でも、重なるおそれは無い。
【0083】
かくして、本発明によって、五つを超える数の電子ビザを有する電子ビザの適用を可能にすることができる。図10に記し、上述で述べた好ましい特徴によって、ICAOの仕様にしたがって少なくとも8個または10個のトランスポンダを読取ることが可能となった。
【0084】
本発明の方法は、電子ビザの最適な読取りを行なうために、万人が採用または順守するよう、規格または規則の対象となり得るものである。
【符号の説明】
【0085】
1 読取りシステム
2 発出アンテナ
3 パスポート
4 ビザ
4a、4b アンテナ
5a、5b 電子回路
6 表紙
7 パスポート
8 シート
13、13i、13j アンテナ
15 マイクロ回路
24 支持体
26 写真
27 粘着フィルム
28 保護フィルム
32 ヒンジ
34 表紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2887712号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/104024号パンフレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁場の読取り装置で電子ビザ(V1a、V1b、V2)を読取るための方法であり、前記ビザは、各々マイクロ回路(15)に接続されたアンテナ(13、13i)を担持する支持体(24)を備え、そして文書(A、B、C)内に配置されており、文書は、ヒンジの周囲に連結された規定のフォーマットのシート(P2)を備えており、アンテナの寸法がシートの半分よりも小さいフォーマットに規定されており、
シート(P2)一枚に最大二つずつ配置されるように、かつアンテナ(13i、13j)がシートの長手方向軸(XF)に沿って互いに離隔されるように、ビザ(V1a、V1b、V2a、V2b)の体系的な文書内のレイアウトを採用することが想定されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
ビザが文書のシートのフォーマットよりわずかに小さいかまたはこれに等しいフォーマットの支持体を有しており、
−横方向中央軸(Y)の両側にビザの支持体(24)の二つの半部分(m、n)が画定され、そしてアンテナが、どのビザにおいても常に同じである一部分(n)の内部に位置づけられ、
−シート(P2)の表と裏にビザを固定し、ビザがシートの長手方向自由縁部(30)に対して同一の要領でレイアウトされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ビザが支持体の余白部に長手方向に配置されたMRZタイプの情報を備えており、各々のビザは、文書のシートの長手方向自由縁部(30)の近傍にMRZを有するような形で配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ビザのアンテナが長手方向軸(AZ)を有し、アンテナは、その長手方向軸(AZ)を支持体および/またはシートの横方向垂直二等分線(Y)に対してほぼ平行に有しながら支持体内に配置されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
複数のシート(P2)を備える文書に組合せるための一つのセットの電子ビザ(V1a、V1b、V2)であり、前記ビザは、文書のシート(P2)のフォーマットよりわずかに小さいかまたはこれに等しいフォーマットを有し、かつマイクロ回路に接続されたアンテナ(13、13i)を担持する支持体(24)を備えるものであり、ビザの支持体は、横方向垂直二等分線(Y)の両側に配置された二つの半部分(m、n)を画定し、
ビザのアンテナが、全て支持体の同じ側に位置づけられる半部分(n)に配置されていることを特徴とする、電子ビザのセット。
【請求項6】
アンテナが、支持体の横方向垂直二等分線(Y)に対してその長手方向軸(AZ)をほぼ平行に有しながら、半部分(n)内に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の電子ビザのセット。
【請求項7】
−外部巻回の内側の表面積が約27×80mmであること、
−アンテナが5個の巻回を備えること、
−巻回の幅が0.32mmと0.48mmの間に含まれること、
−巻回の間の間隔が0.4と0.6mmの間に含まれること
を特徴とする、請求項5または6に記載の電子ビザのセット。
【請求項8】
複数のシート(P2)と、シート上にレイアウトされたアンテナ(13、13i)を具備する電子ビザ(V1a、V1b、V2)とを備える文書であり、ビザのアンテナは、シートの半分の表面積内に含まれるような寸法に決められており、
ビザがシートの長手方向軸に沿ってビザのアンテナを互いに離隔させるようにして、シート(P2)の横方向中央軸(Y)の両側に最大二つずつ重ならないように配置されていることを特徴とする文書。
【請求項9】
ビザが文書のシートのフォーマットよりもわずかに小さいかまたはこれに等しいフォーマットの支持体を有しており、ビザの支持体が横方向中央軸(Y)の両側に二つの半部分(m、n)を画定しており、
支持体(24)がどのビザでも常に同じである一部分(n)の内部にアンテナを備えており、
−ビザ(V2a、V2b)がシートの表と裏に固定され、シート(P2)の長手方向自由縁部(30)に対して同一の要領でレイアウトされていることを特徴とする、請求項8に記載の文書。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−532032(P2010−532032A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513886(P2010−513886)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058005
【国際公開番号】WO2009/003871
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(509069331)
【氏名又は名称原語表記】GEMALTO S.A.
【Fターム(参考)】