説明

高周波ランプおよび高周波ランプの駆動方法

低圧適用および高圧適用のための高周波ランプ(10)の新規の構造ならびにその駆動方法が開示される。この高周波ランプないし駆動方法は、効率、放射スペクトル、コストおよび寿命の点で特性を改善するのに適する。この改善は、電力増幅器(20)に後置接続されたインピーダンス変換器(26)が存在するので、高周波電力が非常に小さい場合でも点弧ユニッが不要であることにより達成される。なぜならインピーダンス変換により、可能な最高電圧がイオン化室(16)に印加されるからである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による高周波ランプ(以下略してHFランプと称する)に関する。本発明はさらに、請求項9の上位概念によるこのような高周波ランプの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の高周波ランプは一般に公知である。
【0003】
ランプ、ひいては高周波ランプの役目はできるだけ効率的に光を放射することである。ランプは、ある程度の効率でエネルギーを光に変換する。しばしば変換の際に大きな損失熱が発生する。
【0004】
ランプのさらなる役目は多種多様である。放射される光スペクトルが使用目的に対して非常に重要であることが多い。同様にいくつかの適用、例えば自動車前照灯およびスポットライトでは、できるだけ点状の光源を有するランプが必要である。
【0005】
以下の従来技術の説明は電気ランプに限定する。この説明は大まかに発光ダイオードと、ガラス体を有するランプとに分けられる。ここでは後者のグループについて述べる。このグループは白熱ランプとガス放電ランプに分けられる。
【0006】
白熱ランプはガラス体の中に(例えばタングステン製の)フィラメントと不活性ガスを有する。融点が3000℃以上のフィラメントは、典型的には2500℃にまで加熱される。したがってプランクの放射法則によれば、白熱ランプは日光に相当する光スペクトルではなく、黄赤色に発光する。白熱ランプは、直流電圧または周波数がkHz領域までの交流電圧により駆動される。白熱ランプは電子バラスト回路を必要としない。
【0007】
本発明に関連するガス放電ランプはガス放電を使用する光源であり、原子または分子の電子的移行による自然の放射と、放電により形成されたプラズマの再結合ビームを利用する。水晶ガラス管(イオン化室)に含まれるガスは、金属蒸気(例えば水銀)と希ガス(例えばアルゴン)および場合によりハロゲンのような他のガスの混合気であることが多い。ガス放電ランプは、低圧放電ランプと高圧放電ランプの2つのクラスに分けられる。前者はグロー放電を使用し、後者はアーク放電を使用する。このランプは一般的にバラスト装置を必要とする。バラスト装置はスタータを含み、スタータはkV領域の電圧パルスによってガスをイオン化する。さらに持続動作のために、周波数がkHz領域に変換されることがある。したがってこのようなランプは、MHzまたはGHz領域の高周波信号によって駆動されるランプではない。
【0008】
ガス放電ランプの特別の形態は、硫黄ランプである。硫黄ランプは、硫黄とアルゴンが充填された水晶ガラス球をイオン化室として有する。ガラス球の中では高周波照射によってプラズマが形成される。従来のガス放電ランプとの相違は、硫黄ランプは導波管を使用するため電極を必要としないことである。球の水晶ガラスに発生する温度が極端に高いため、硫黄ランプは回転され、これにより冷却される。これは、タービンブレード状の羽根を有する下方の脚部に作用する。硫黄ランプは、マグネトロン(約1500Wの高周波電力源)内のベンチレータにより形成される空気流中で回転する。この冷却が停止すると、ガス球は20秒後に溶融する。
【0009】
硫黄ランプは、省エネランプ(発光物質ランプ)のように高い発光効率を有する。硫黄ランプは、色温度が約5700Kから6000Kであるバランスのとれた発光スペクトルを有し、したがって非常に効率的は白色光源である。マグネトロンの電力を制御することによって硫黄ランプは良好に調光することができるが、その色スペクトルは安定したままである。光束が大きいため、このランプは通例、使用個所に直接設置されない。その代わりに光は光導体によって室内に導かれる。このことは、このランプ形式のメンテナンスを楽にする。
【0010】
機器コスト(マグネトロン用の電流供給、マイクロ波のシールド、温度)が比較的高いため、このランプは長い間、市販されていなかった。2006年から、LG電子が硫黄ランプを「パワー・ライティング・システム」(PLSランプ、硫黄プラズマランプ)として製造している。このランプはテレビジョンスタジオの照明として、または植物用の人工照明としてしばしば使用される。
【0011】
非特許文献1ならびに非特許文献2から、小さな高周波電力(30〜100W)で動作する高周波ランプが公知であり、導波管結合の代わりにTEM線路(同軸線路)を介した内部電極との結合部を有する。このランプはガス放電ランプの長いワイヤをアンテナとして利用するから、このランプを以下、HFアンテナランプと称する。
【0012】
しかしこのランプは、硫黄ランプと同じようにインピーダンス変換器を備えていない。したがってこのランプでは、高周波発生器の周波数安定性への要求が小さい。
【0013】
しかしこの公知のガス放電ランプの欠点は、このランプに対する技術が非常に面倒で、したがい高価なことである。とりわけこのランプは、電力が約1500Wのランプとしてのみ使用可能である。さらにこれまで公知のガス放電ランプはすべて、プラズマを点弧するために別個の回路を必要とする。ここではkV領域の電圧が必要である。これまで公知の、点弧用回路なしの高周波ランプには、非常に大きな電力(30W以上のマイクロ波電力)を必要とするという欠点がある。さらにガス放電ランプはアンテナとして機能する。このことは実際には重大な欠点であり、大量の高周波ビームが放射される。この種のランプはこの放射のため許可されない。
【0014】
エネルギーランプとして使用されるガス放電ランプは調光不能であり、このことは実際の使用上、大きな欠点である。
【0015】
これまでの高周波ランプはインピーダンス変換器を高抵抗領域に有していないから、非常に大きな電流が電極を流れる。電極はタングステンのような表面品質の悪い材料からなるから、抵抗損失が非常に大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】ドイツ共和国特許公開第1020040564443号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】"Emission Properties of Compact Antenna-Excited Super-High Pres-sure Mercury Microwave Discharge Lamps", T. Mizojiri, Y. Morimoto, and M. Kando in Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 46, No. 6A, 2007
【非特許文献2】"Numerical analysis of antenna-excited microwave discharge lamp by finite element method", M. Kando, T. Fukaya and T. Mizojiri; 28th IC-PIG, July 15-20, 2007, Prague, Czech Republic
【非特許文献3】"Experimente mit Hochfrequenz" von H. Chmela, Franzis-Verlag
【非特許文献4】"A Novel Spark-Plug for Improved Ignition in Engines with Gasoline Direct Injection (GDI)" von K. Linkenheil ら, IEEE Transactions on Plasma Science, Vol. 33, No. 5, Oct. 2005
【非特許文献5】"Hochfrequenztechnik" von H. Heuermann, Vieweg-Verlag
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、上記の欠点を回避し、または少なくともその作用を低減し、高圧ガス放電ランプとしても、低圧ガス放電ランプとしても使用可能な高周波ランプの構造を提供し、さらに効率、放射スペクトル、コストおよび寿命のような特性を改善することである。本発明のさらなる課題は、このような高周波ランプの駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は本発明により、一方では請求項1の特徴を備える高周波ランプによって解決される。このために高周波ランプが、高周波信号を発生するための信号発生部と、この信号発生部に後置接続されたイオン化室とを備え、前記信号発生部は、切り換え可能な高周波発振器と、この高周波発振器の出力端での高周波信号の電力を増幅するための電力増幅器とを有し、前記イオン化室はガス充填された少なくとも1つのガラス球と少なくとも1つの電極を有し、前記電力増幅器にはインピーダンス変換器が後置接続されており、このインピーダンス変換器の出力端は電極と接続されている。
【0020】
方法に関してこの課題は本発明により、請求項9の特徴によって解決される。ここでは冒頭に述べ、以下に説明する形式の高周波ランプを駆動するために高周波信号が高周波発振器により発生され、この高周波信号の電力が、後置接続された電力増幅器により増幅され、この高周波信号が、前記電力増幅器に後置接続されたインピーダンス変換器によって高電圧領域に変換され、変換された高周波信号が電極に供給される。
【0021】
本発明の利点は、高周波ランプの信号発生部に、電圧により調整され、安価なモジュールとして市販されている高周波発振器を使用できることである。典型的にはmW領域にある高周波発振器の出力信号は、高効率であり、かつ安価な電力増幅器によって1桁から2桁のW領域に増幅される。できるだけ高い電圧をイオン化室に印加するためにインピーダンス変換器を使用すれば、高周波出力が非常に小さい場合でも、点弧ユニットの使用が不要になる。さらに持続的に発生する大きな電界強度によって格段に高いイオン率が達成され、したがって効率が大きくなる。インピーダンス変換器によって高周波出力に高電圧が持続的に入力結合されるから、導電性の悪い材料から作製された電極先端での抵抗損失が小さくなり、これにより効率が上昇する。高周波領域で動作するので、多数の回路手段をインピーダンス変換器として使用することができる。そのためコンデンサおよびコイルのような安価な素子によりインピーダンス変換器を実現することができる。
【0022】
さらにこのような信号発生部を備える高周波ランプの構造は、高周波ランプの外で高周波放射が行われず、したがって信頼性が高いという点で有利である。
【0023】
イオン化室に配属された電極に対しては、種々異なる材料と形状を使用することができる。これにより同様に効率と適用領域が改善される。
【0024】
本発明の有利な構成は従属請求項の対象である。ここで使用される引用請求項は、独立請求項の対象をそれぞれの従属請求項の特徴によってさらに構成することを示唆する。しかしこれは、引用された従属請求項の特徴組合せに対する自立的な保護の達成を放棄するものではないと理解されたい。さらに後続の請求項における特徴を詳細に具体化する際の請求項の解釈に関しては、この種の制限がそれぞれの先行する請求項には存在しないことを前提とする。
【0025】
高周波ランプの有利な実施形態によれば、信号発生部は付加的に、電力増幅器に後置接続され、電力増幅器とインピーダンス変換器との間に配置されたカップラ、高周波検知器、および処理ユニットを有し、高周波ランプの動作時に電極で反射された高周波信号が、前記カップラを介して高周波検知器に供給され、高周波検知器の出力信号に基づき処理ユニットにより発生された制御信号または調整信号が高周波発振器に、反射された信号に基づき高周波信号を最適化するために供給される。反射された高周波信号を検出することによって、高周波ランプの点弧後に高周波信号の周波数をできるだけ低減するために高周波信号を最適化することができる。それに加えて、またはその代わりに、反射された高周波信号に基づき高周波発振器を制御することもできる。
【0026】
高周波発振器に第1と第2の信号分配出力端を備える信号分配器が後置接続されており、電力増幅器が第1の信号分配出力端に接続されており、第2の信号分配出力端に、位相シフトのための手段(以下、移相器と称し、例えば180°位相シフトさせる線路の形態に実現可能である)と、第2の電力増幅器と、第2のインピーダンス変換器と、第2の電極とが順番に接続されるように高周波ランプが構成されていれば、高周波発振器によりイオン化室に逆相の信号を印加することができる。この実施形態を以下では、冒頭に述べた1つの電力増幅器、1つのインピーダンス変換器および1つの電極を備える実施形態と区別するために対称構造と称する。
【0027】
さらに有利にはインピーダンス変換器、または対称構造の高周波ランプの場合にはインピーダンス変換器および/または第2のインピーダンス変換器が、変換器として作用する単段または多段の部分を有する。この単段の変換器の利点はそのコンタクトさと頑強性にあり、一方、多段の変換器によりインピーダンス変換器の効率の改善が達成される。
【0028】
電極が誘電性であり、誘電材料から作製されていれば、とりわけ誘電性のジャケットにより包囲された金属コアにより形成されていれば、優秀な効率と最高の色温度が達成される。
【0029】
電極がストライプ状に構成されていれば、不所望の空洞モードの発生が回避される。このことは対称構造の高周波ランプに対してはさらに強く当てはまる。ガラス球に少なくとも2つのガスの混合気、より正確には放射スペクトルの異なる3つのガスが充填されていれば、高周波信号の周波数を適切に変更することによって異なる色がイオン化される。高周波信号が、1つ以上のガスのイオン化に適する周波数スペクトルを有していれば、放射され、知覚される光に対して相応の色混合が生じる。このようにして2つ、3つ、またはそれ以上の色を、狭帯域の高周波信号によって直接イオン化することができる。一方、相応に選択された広帯域の高周波信号により、複数の色のイオン化と、その複数の色の重畳により混合色を形成することができる。この高周波ランプの実施形態は、例えば自立発光広告手段での光効果、または表示計器に適する。
【0030】
前に説明した実施形態にとは択一的であるが、同様に好ましい実施形態では、イオン化室が少なくとも2つのガラス球、とりわけ3つのガラス球を有し、これらのガラス球にはそれぞれ放射スペクトルの異なるガスが充填されており、各ガラス球には高周波信号を供給するための電極が配属されている。この実施形態では、各ガラス球がその中に含有されるガスのイオン化の際に、それぞれ特徴的な放射スペクトルを出力する。簡単に表現すれば、各ガラス球は正確に1つの色を放射する。したがってそれぞれのガラス球に配属されている電極を制御することによって、高周波ランプに対して全体で、第1の色または第2の色(または第3の色および場合によりさらなる色)の放射が達成される。または複数の色を同時に放射する場合には色混合が達成される。高周波ランプのこの実施形態も、光効果の形成に適する。ここではモニタの形式の表示装置における画像形成素子としての適性がある。後者の場合に対しては通常、3つのガラス球が設けられる。これらのガラス球は、公知のRGBモデルに相応して、赤、緑、および青の光を放射するように規定されている。
【0031】
本発明のこの側面と関連して、行および列に配置された多数のこの種の高周波ランプを、1つの表示装置、すなわちモニタ、テレビジョン等に組み合わせることができる。本発明は、このような表示装置の駆動に適する方法にも関する。この方法では、この表示装置に含まれる各高周波ランプにおいて、高周波発振器により少なくとも2つの高周波信号が生成され、少なくとも1つの電極に供給されるか、または高周波発振器により少なくとも2つの高周波信号が生成され、各高周波信号は少なくとも2つの電極のそれぞれ1つに供給される。このようにして、表示装置により生成可能な可視画像において1つの画素、すなわち1つのピクセルに相応する高周波ランプが個別に制御され、それぞれの画素/ピクセルに対して所望の色混合、すなわち所望の色値が達成される。
【0032】
上に述べた本発明の方法に関して本発明の実施形態によれば、高周波ランプのそれぞれの発展形態の駆動方法が提供される。
【0033】
高周波ランプの好ましい実施形態を駆動するために、高周波検知器が、高周波ランプの点弧の際に電極で反射され、カップラを介してさらに導かれた高周波信号を検知し、処理ユニットが高周波信号の最適化のために、高周波検知器の出力信号に基づいて制御信号を適合し、これにより制御信号が所定の正または負の値だけ変化される。
【0034】
高周波信号の適合の側面で有利には、高周波ランプの点弧前または点弧時に、イオン化室が大きな並列抵抗を備える小さなキャパシタのように作用し、イオン化の直後(発光モード)にキャパシタが増大し、並列抵抗が減少し、したがって点弧が行われた後に、高周波信号に使用される周波数の共振周波数が変化する。この理由からランプの点弧が行われた後、信号発生部は急速な一度だけの周波数ジャンプを実行できなければならない。このようにして高周波信号は発光モードの状況に適合される。カップラと高周波検知器に対してこのことは、高周波ランプが点弧する限り、格段に大きな高周波電力が電極で反射されることを意味する。この電力はカップラに達し、このカップラを介して減衰されて高周波検知器に供給される。高周波検知器の出力信号の変化は処理ユニットで検知され、これにより発光モードのための周波数ジャンプが実行される。
【0035】
高周波信号の変化の側面で有利には、小さな正または負の値だけ高周波信号が変化する場合に、反射された電力が複数の周波数ポイント、例えば中央周波数、低減された周波数、上昇された周波数について測定され、反射された電力の最小の値が高周波信号に対する新たな出発値として使用される。この制御は連続的に行われるか、または所定の時点で反復される。このようにして可及的に大きな高周波電力がイオン化室に常に供給され、熱損失への変換が可及的に小さいことが保証される。
【0036】
対称構造の高周波ランプを駆動するためには相応に、信号分配器が高周波信号から第2の高周波信号を導出し、ここで高周波信号として残る高周波信号と、前記第2の高周波信号とは少なくとも同じであり、位相シフト手段が前記第2の高周波信号の位相をシフトし、後置接続された第2の電力増幅器が位相シフトされた第2の高周波信号の電力を増幅し、後置接続された第2のインピーダンス変換器が生じた第2の高周波信号を単段または多段に変換し、第2の電極にさらに供給する。
【0037】
高周波ランプの別の構成に対しては、高周波発振器により少なくとも2つの高周波信号が生成され、少なくとも一方の電極に供給されるか、または高周波発振器により少なくとも2つの高周波信号が生成され、各高周波信号が少なくとも2つの電極のそれぞれ1つに供給される。
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。相互に相応する対象または素子にはすべての図面で同じ参照符合が付してある。
【0039】
各実施形態は、本発明の限定として理解すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】高周波ランプのいわゆる調整モードのための簡略ブロック回路図。
【図2】高周波ランプの制御モードのための簡略ブロック回路図。
【図3】差動制御(対称構造)を行う高周波ランプの簡略ブロック回路図。
【図4】単段のインピーダンス変換器、すなわち単段で変換を行う部分を備えるランプヘッドの概略図。
【図5】3段のインピーダンス変換器、すなわち3段で変換を行う部分を備えるランプヘッドの概略図。
【図6】円形導波管でのE01モードを示す概略図(Eフィールド破線、Hフィールド実線)。
【図7】非対称励起においてE01モードを励起するための単段インピーダンス変換器を備える空洞共振器ランプの概略図。
【図8】HE11基本モードを励起するための誘電電極の結合を示す概略図。
【図9】E01モードを励起するための誘電電極の結合を示す概略図。
【図10】アース皿を介して点光源発生のために片面を対称制御する高周波ランプの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、全体が10により示された本発明の高周波ランプの実施形態の構造を概略的に示す。この高周波ランプは、高周波信号14を発生するための信号発生部12と、この信号発生部12に後置接続されたイオン化室16を有する。前記信号発生部12は、高周波発振器18と、この高周波発振器の出力端での高周波信号14の電力を増幅するための電力増幅器20とを有する。イオン化室はさらに、ガスの充填された少なくとも1つのガラス球(ガス24、場合により金属蒸気および/またはハロゲンが補充されている)を有し、このガラス球には任意に構成可能な少なくとも1つの電極28が配属されている。信号発生部12については、電力増幅器20にインピーダンス変換器26が後置接続されており、このインピーダンス変換器の出力端は電極28と接続されている。信号発生部12の外部シールドはアース30を形成する。このアースとは、引込み電極として高周波信号14をイオン化室16の内部に導く電極28が容量的に接合されている。
【0042】
このようにして、比較的狭帯域の高周波信号14(3桁のMHzおよびGHz領域を含む)と任意に構成可能な光アーク領域に基づく高周波ランプ10(HFランプ)の構造が可能となる。前記高周波信号14はインピーダンス変換器26によって高電圧領域に変換される。前記光アーク領域はアース30までは達していない。なぜなら光アーク領域はガラス球22の内側表面、例えばその製作に使用した水晶ガラスで終端しているからである。
【0043】
設けられたインピーダンス変換器26は、高周波電力が非常に小さい場合でも、これまで高周波ランプ10に必要であった点弧ユニットを不要にする。さらに持続的に発生する大きな電界強度によって格段に高いイオン率が達成され、したがって効率が大きくなる。高電圧の高周波電力が持続的に入力結合されるから、導電性の悪い材料を有する電極28の先端での抵抗損失が低減される。このことも効率を向上させる。インピーダンス変換器26の簡単な実施形態はコイルとコンデンサを有する。0402SMD素子を使用する場合、必要スペースは2mm以下であり、コストは4円以下である。
【0044】
高周波信号14の周波数を高く選択すれば、それだけ電極28に印加される電圧を低くすることができる。すでにGHz領域以下でも(この領域に対しては多数の安価な電子構成素子が存在する)、電圧を所望の光アーク長に応じて、下方領域にある1桁のkV値に低減することができる。最大電圧をこのように低減することにより、格段に安価な材料と素子による実現が可能となる。
【0045】
狭帯域の高周波信号14によって動作するから、高周波に適した構造が非常に簡単に可能となる。例えばλ/2線路のすべての利点が使用される。すなわち線路は所要の反復インピーダンスを有する必要がない。このことは高周波ランプ10の高周波に適した設計を簡単にする。
【0046】
電極28はエネルギーを、複数の経路または1つの大きな面を介して放射する。電磁エネルギーは、イオン化領域に電極28の周囲で高周波電流を形成する。この高周波電流は加熱により、光学領域にある光アーク状のビームエネルギーを放射する。したがって電極28からのエネルギー放出は電流としてではなく、電磁界として行われる。電極28は、電流によってもはや負荷されない。測定により、物質は放出されないことが示された。したがって高周波ランプ10を、比較的長期の寿命にわたって使用することができる。
【0047】
電力増幅器20として、GSM移動無線適用およびハンドセット用の安価な集積高周波電力増幅器を使用することができる。この電力増幅器は60%以上の効率を有する。80%の効率も前記のクラスEモードで達成可能である。
【0048】
短い線路が、下方のGHz領域でほぼ損失なしで実現される。したがって高周波バラストユニットとして機能する信号発生部12に、同様に非常に高い効率と高集積率での実現可能性が与えられる。この信号発生部12は好ましくは高周波ランプの脚部(ランプ脚部)に組み込むことができる。
【0049】
電極構造に対する材料選択により、金属の他に誘電材料も使用することができる。例えば電極28を、高い誘電率と非常に高い融点を備えるセラミック材料から作製することができる。この構成は、色温度およびしばしば達成しようとする昼間の光に相当するスペクトルに関して非常に重要なポイントである。これによって格段に改善された効率も達成される。
【0050】
すべての省エネランプに対するこのランプの付加的利点は、ここに提案された高周波ランプが調光可能なことである。
【0051】
物理の基本教科書から、ガスのイオン化は電子衝突イオン化、すなわち電子ビーム衝突によってのみ励起され、この電子ビーム衝突は非常に高い温度(106K)での熱的イオン化または紫外線光による光子イオン化により行われることが知られている。さらに本明者は、GHz領域での実験物理的構造を実現した。この実験物理的構造によってイオン化された領域が、比較的低い高周波エネルギーの供給で発生した。この結果は、非特許文献3の結果と一致するが、この実験はMHz領域で実施された。このことを以下では、高周波イオン化と称する。非特許文献4でもこの高周波イオン化が証明され、付加的なUVビームによりこのイオン化が小さな電界強度でも可能になることが強調されている。
【0052】
イオン化されたガスが同数の電子とイオンを有していれば、これは平均として空間電荷のないガスであり、プラズマと称される。
【0053】
マクスウェルの方程式に基づき、イオン化されたガスに対しては次の数学的関係が成り立つことが示された。
【0054】
比誘電率:
=1−(Ne)/e/m/(u+w) (1)
比導電率:
k=(Ne u)/m/(u+w) (2)
プラズマ周波数:
wp=e(Ne/m/e) (3)
ただしパラメータは:
N:容積当たりの電子数
e:電子の電荷
m:電子の質量
0:電界定数
u:電子とガス分子との衝突頻度
w:高周波信号の周波数
である。
【0055】
詳細な研究により、プラズマ周波数以下では電磁エネルギーが伝播せず、プラズマに損失が発生しないことが示された。これに対して空間は、プラズマ周波数より上では実数の波動インピーダンスZを有する。Zは周波数が高くなると低下し、約377Wの自由空間インピーダンスZに指数的に近似する。すなわち周波数が比較的高ければ、同じ電力を変換するのに周波数が低い場合よりも低い電圧で間に合う。前記式(2)は、(小さな)抵抗および損失が周波数の上昇とともに増大することを示す。結果として、周波数が比較的に高ければ、ガスがより良好に加熱される。
【0056】
高周波信号の伝達特性に対する大気分析から、2桁から3桁のMHz領域ではビームがほとんど吸収されず、一方、50GHzではビーム全体が分子吸収として水素ないし酸素に蒸発することが示された。MHz領域の下方ではいわゆるテスラ変換が、5kVの出力電圧を備える100W発電機を製作するために使用され、これにより10cm長の無線区間が空気中に形成される。すでに上に述べた非特許文献3参照。本発明者は、2.5GHzにおいて10W送信器と2kVの電圧を用いて、すでに1cm長の無線区間を形成した。
【0057】
以下では、高周波ランプ10における信号形成を説明する。出発状態(点弧モード)では、イオン化室16が高抵抗の並列抵抗を有する小容量のキャパシタンスのように作用する。イオン化が生じると直ちに(発光モード)、キャパシタンスが増大し、並列抵抗が減少する。したがって点弧が行われると共振周波数fが変化する。この理由から、信号発生部12が高周波ランプ10の点弧後に、高速に一度だけfr1からfr2へ周波数ジャンプできると有利である。重要なことは、信号発生部12の出力インピーダンスZausがイオン化室16の入力インピーダンスZeinに点弧後に相当するか、または共役複素的に適合されることである。
【0058】
いわゆる3D−HFシミュレータによって、電磁界と入力インピーダンスZeinがランプの点弧時点前に計算される。シミュレータは、高周波イオン化と点弧をもちろん考慮しない。点弧後に変化する入力インピーダンスZeinを検出すべき場合、このことはいわゆるホットな制御パラメータの測定により可能である。これは電力トランジスタの電気特性測定から公知である。
【0059】
上記の周波数ジャンプは、電圧を介して可変の発振器18、例えば実施形態ではいわゆるVCO(電圧制御発振器)により、または2つの固定発振器を高速に電子的に切り換えることにより実現される。GHz領域で下方のVCOは非常に安価にモジュールとして市販されているから、これが好ましい。図1には高周波発振器18が切り換え可能な高周波発振器18として図示されている。この高周波発振器には制御信号32が印加される。高周波信号14、すなわち発振器18の出力信号は点滴にはmW領域にあり、これが電力増幅器20によって1桁から2桁のW領域に増大される。1桁GHzの下方にある高集積電子電力増幅器20は60%以上の効率を有し、非常に安価であり、したがって決定的である。
【0060】
イオン化室16でできるだけ大きな電圧が印加されるように、インピーダンス変換器26によってインピーダンス変換が行われる。そのために高周波の場合には、回路に非常に大きなスペクトルが存在する。安価な回路はコンデンサとコイル(多段のガンマ変換器)からなり、非特許文献5に示されている。インピーダンス変換器26は単段または多段に構成することができる。インピーダンスレベルおよび電圧の高変換の他に、インピーダンス変換器26に含まれる回路もイオン化室16の電極28に適合すべきである。出力インピーダンスZausは、できるだけ2桁のΩ領域または1桁のkΩ領域またはそれ以上であるべきである。
【0061】
イオン化室16の電極28における電圧は、増幅器20の出力電力Poutと出力インピーダンスZausから直接計算される。
【0062】
U=e(Pout*Zaus) (4)
したがって動作点は、プラズマ周波数wpより格段に上に選択すべきである。
【0063】
できるだけ良い効率を達成するために、本発明の好ましい実施形態では反射される高周波電力ができるだけ小さくなるようにする。これには、図2に概略的に示した回路が適する。信号発生部12に含まれる回路は、制御信号32(図1参照)により作動される。マイクロプロセッサの形式の処理ユニット34が高周波発振器18を、点弧モードのための周波数fr1に調整する。このための処理ユニット34により発生される制御信号は、制御信号32と区別するための調整信号35と称する。生成された高周波信号14は増幅器20により電力が増幅され、低損失のカップラ36を通過して、インピーダンス変換器26を介してイオン化室16の電極28に達する。イオン化室16には、ガラス球22の水晶ガラス外套により混合ガス24が封鎖されている。高周波ランプ10が点弧すると、格段に大きな高周波電力が電極28で反射される。この電力はカップラ36に達し、このカップラ36を介して減衰されて高周波検知器38に供給される。ここで変化した高周波検知器38の出力信号が処理ユニット34により検出され、この処理ユニット34は高周波発振器18を周波数fr2へ調整することにより、発光モードのための周波数ジャンプを行わせる。
【0064】
この発光モードに対して次の最適化が存在する。処理ユニット34は高周波信号14の周波数を、周波数fr2を中心に小さな正の値と小さな負の値fだけ変化させ、相応の調整信号35を出力する。反射された電力が3つの周波数ポイントfr2−f、fr2、fr2+fについて測定される。もっとも小さい反射された電力値が次に新たな出発値となる。この制御は絶え間なく繰り返される。このようにして可及的に大きな高周波電力がイオン化室16に常に供給され、熱損失への変換が可及的に小さいことが保証される。
【0065】
図3には高周波ランプ10の好ましい実施形態が示されている。この実施形態は対称構造を特徴とする。ここで高周波発振器18には、第1と第2の信号分配出力端42、44を備える低損失の信号分配器10が後置接続されている。電力増幅器20(図1または図2参照)が第1の信号分配出力端42に接続されており、これにすでに図1と図2で説明した回路素子が接続されている。第2の信号分配出力端44には位相シフト手段46が接続されており、この位相シフト手段46には第2の電力増幅器48、第2のインピーダンス変換器50および第2の電極52が順次接続されている。高周波発振器18により形成された高周波信号14は信号分配器40により、2つの同じ大きさの成分、すなわち第1の高周波信号14と第2の高周波信号14’に分配される。
【0066】
増幅器20、変換器26を介し第1の電極28(左)に至る「上方の」信号経路は、図1または図2に基づき説明した状況と変化していない。「下方の」信号経路にはまず位相シフト手段46として、180°の位相回転を行う位相シフタが存在する。この位相シフタは例えば180°長の線路の形態に実現することができる。その後、逆相の信号が第2の増幅器48により電力増幅され、インピーダンス変換器50により昇圧され、最終的に第2の電極52(右)に供給される。
【0067】
この構成の利点は、2つの増幅器20、48の増幅が付加的な回路なしで単純に加算され、プラズマがイオン化室16内で点状に中央となり、アース(図1または図2の参照符合30参照)をガラス球22に導く必要のないことである。
【0068】
図示の調整モードを備える高周波ランプ10は、もちろん制御モードでも使用することができる。すなわち図2に示し、これと関連して説明した実施形態でも使用することができる。
【0069】
信号発生部におけるインピーダンス変換器の数に関係なく(図1、図2では1つのインピーダンス変換器26;図3では2つのインピーダンス変換器26と50)、図4に示すようにインピーダンス変換装置が有利である。図4はランプ頭部として、ガラス球22と圧力絶縁領域54(ガラスブッシュ)を備える高圧ガス放電ランプ10(図1参照)のイオン化室16を示す。インピーダンス変換器26、50を形成する給電線路56が短い場合、反復インピーダンスが50Ωの純粋な同軸線路とすることができる。この給電線路56は、この分割された回路の残りと同じように円形パイプ58内に存在する。この円形パイプ58は、孔部62を備えるキャップ60を有し、このキャップ60は座金に類似する。このパイプは、非対称に分割されたこの回路に対するアースを形成し、キャップ60は電極28に対するアースを形成する。給電線路56は、第1および第2の線路湾曲部64、66と接続されている。第1の線路湾曲部64は、ガラスブッシュ54に配置された内部導体68と接続されている。この内部導体は例えばモリブデンから作製される。この内部導体68はさらに高周波信号14(図1参照)を、ガスまたはガス金属蒸気混合気により包囲された極28に導く。
【0070】
回路技術的に第2の線路湾曲部66は、アースに対して接続された小さなインダクタンスである。第1の線路湾曲部64と内部導体68は、格段に大きなインダクタンスを形成する。電極28と所属のアースからなる頭部は、小さなコンデンサとこれに並列に接続された高抵抗の負荷抵抗によって表すことができる。したがってこの回路は、インダクタンスが接続された並列共振回路を形成する。このインダクタンスはキャパシタンスと共振しなければならない。給電線路56の始端領域にある結合点の電圧が、電極28に対して著しく高く変換される。
【0071】
この単段のインピーダンス変換器は非常に小型、単純かつ頑強である。これに相当する単段の変換作用部分は少なくとも1つの給電線路56と、第1および第2の線路湾曲部64、66を有する。内部導体68を第1および第2の線路湾曲部64、66を介してアースに直接接続することは、電極28の温度を低下させる。機械的構造は安定しており、小型である。しかし圧力が非常に高い場合、および/または電力が非常に小さい場合、または効率の改善のためには多段の変換が有利である。例えば非特許文献5から公知の集積素子による変換は、Qが比較的低く、したがって損失が大きい。この観点でさらに改善された実施形態が図5に示されている。
【0072】
図5の回路は図4に示した回路とは、直列インダクタンスを実現するために設けられた短い給電線路56の代わりに高抵抗の延長された線路区間70が使用されることと、この延長された線路区間70がパイプ58により形成されたアースに純粋に容量的に結合されている点で異なる。さらに第1と第2の線路湾曲部64、66の線路幾何形状に基づき、2つの小さなコンデンサ72、74が生じる。後者は直列に接続された2つのガンマ変換器である(非特許文献5参照)。図5に示された、多段に作用する変換区間を備えている回路は、延長された線路区間70と、2つのコンデンサ72、74ならびに64、66と、第1および第2の線路湾曲部64、66とを有する。第1の変換器は、延長された線路区間70と、線路幾何形状により生じたコンデンサ72の、アースに接続されたキャパシタンスとの直列インダクタンスにより形成される。第2の変換器は、線路幾何形状により生じたコンデンサ74と、第2の線路湾曲部のアースに接続されたインダクタンス64との直列キャパシタンス60により形成される。インピーダンス変換器の第3の段は例のとおりである。このやや面倒な回路の利点は、変換比が比較的に大きく、帯域幅も大きいことである。この2つの実施形態(図4と図5)では、高周波信号がシールドされた導波体構造(具体的にはパイプ58)を介してガラス球22に供給される。この導波体構造は、内部導体56、64、68;70、64、66、68の幾何形状によりインピーダンス変換が行われるように成型されている。この構成は高周波アンテナランプに対して、高周波輻射が発生せず、したがってランプが認可されるという利点を有する。さらに効率も上昇する。高周波負荷(短い引込み電極28を備える充填されたガラス球22)は非常に高抵抗であるため、適合の際には非常に大きな電界強度が小さな電力の下で生じる。
【0073】
空洞モードは科学的および技術的によく研究されており、高周波フィルタのような多くの素子に実現されている。下方のいわゆるカットオフ周波数より下では、このモードが存在し得る。空洞モードは技術的には好んで使用される。なぜなら金属における損失が非常に小さいからである。図6は可能な空洞モード(E01)を示す。この空洞モードは、空間照明用の高周波ランプ10(図1、2、3)の実現およびその他の適用に対して非常に興味深い。なぜなら電界(およびプラズマも)が巨球の理想形を有しているからである。比較的大きなイオン化室16には、アース面に対して平行にのみ伝播する電界線だけが存在する。この非常に強力な電界は付加的に、最大の照明球を保証するリングを形成する。
【0074】
01モードを励起するための空洞共振器ランプ76(略してHRランプ)としての高周波ランプ10(図1、2、3)の可能な実施形態が図7に示されている。図7は、HRランプ76が非対称の回路技術(図1と2参照)に構成された場合に対する配置を示す。2つの可能な回路技術に対して、磁界がループ状の電極78により励起される。ここで対称性の解決手段(図3)は、非対称の解決手段よりもさらに良好に、他の不所望の空洞モードの発生を阻止する。したがってHRランプ76のループ状電極78は、ガラス球22の金属化面を制限することだけで形成される共振器に対する結合素子である。さらに調整可能な結合k(非特許文献5参照)によって、電圧変換を実現することができる。この(弱い結合によって大きな変換が形成される)変換は、非特許文献5ではガンマ変換と称されており、共振周波数を容易に離調する。返還値が増大すると、帯域幅が減少する。
【0075】
01モードが想定される場合、イオン化室16に形成されたプラズマ球(プラズマ中で電流が最大の領域)は空洞にのみ存在し、このループ状電極78(図3による対称性解決手段の場合の電極78は図示されていない)にもアースにも接触しない。もちろんここでもイオン化室16の中味全体がイオン化される。イオン化区間は1次近似でオーム性抵抗(負荷)と見なすことができる。このイオン化区間は、反応性共振器領域を「縮小」し、したがってここでも周波数ホッピングが有益である。
【0076】
モードの選択と電極の幾何形状は、最大プラズマ領域と、HRランプ76の生じる入力インピーダンスZeinに影響する。3D高周波フィールドシミュレーションによって、ガラス球22内部の電磁界の配向と大きさが示された。電界強度のもっとも大きい領域は、最大のプラズマ電流が流れる領域である。したがってこのもっとも熱い領域が電極78により分離される。
【0077】
これまでの電極配置構成は、金属電極28、52、78の使用にのみ関連するものであった。本発明の非常に有利な構成では、金属電極28、52、78の代わりに、純粋な誘電電極または金属コアと誘電外套とのハイブリッド構造を使用する。比較的に大きな誘電率を有する誘電体だけが電極として使用される場合、これを高周波技術では、誘電ワイヤまたは誘電性共振器と呼ぶ。誘電ワイヤの場合、好ましくはハイブリッド基本波HE11が線路モードとして選択される。誘電性共振器に対しては、結合に応じて別の低損失のモードを使用することができる。これに対して金属コアと誘電外套とのハイブリッド構造が使用される場合、G表面線路(G高調波線路)が発生する。このG線路は、2桁MHz領域からGHz領域への非常に低損失の移行を可能にする。
【0078】
この2つの構造形式(一般的に誘電電極)は、金属電極28、52の代わりに、または結合素子つぃて機能するループ状電極78の代わりに使用することができる。ここでは例えば図4の実施形態で説明した素子、すなわち電極28、圧力絶縁領域/ガラスブッシュ54および内部導体68の結合構造が変化する。所望の高周波モードに依存して、大きなスペクトルを機械的構造に適用することができる。0Hz以上で伝播することのできる基本モードの励起例が図8に示されている。図9には、E01モードを励起するための別の例が示されている。このモードの実現は非常に有利である。図8に含まれるテキストはHE11波とλ/2である。図9に含まれるテキストは、HE01波、ε1=81ε0、ε2=ε0、λ/2およびλ=14.4α<λc=23.6αである。
【0079】
すでに述べたように誘電電極を、高周波ランプおよびHRランプ10、76(図1、2、3ないし図7)の通常の電極28、52、78の代わりに使用することができる。HRランプ776の場合、空洞モードでは何も変化しない。誘電ワイヤの幾何形状だけを、入力結合条件に応じて最適化しなければならない。したがって同軸モードから誘電導体のモードそして最後に球空洞モードに移行する。高周波ランプ10の場合はやや異なる。ここでは光学的にはほとんど変化しない。図10は例として高周波ランプ10を示す。この高周波ランプ10は使用される誘電電極および誘電ランプとして示されており、対称制御の場合に、アース皿80(ガラス球22は図示されていない)を介して一方の側から点光源を発生するために、2つの電極82、84を備えている。この電極は実施形態では、純粋な金属電極材料、ハイブリッド電極材料、または純粋な誘電電極材料によって実現することができる。しかし金属電極の場合はLC共振回路であり、誘電電極の場合は誘電性共振器のモードである。図10に示された実現形態は、両方の場合とも2つの電極82、84の間にある点光源の発光体を形成する。この構成は、高圧適用のための高周波ランプに対して有利である。
【0080】
電界を高めるために、ここに提案した手段に加えて、またはその代わりに共振器電圧をさらに上昇させることができる。これは「負荷されたQ」が改善される場合に当てはまる。特許文献1には、ここでも使用することのできる多数の回路技術的解決手段が示されている。特許文献1の開示内容をすべて本発明の説明に取り入れる。
【0081】
以下では本発明の別の構成または実施可能形態を簡単に紹介する。磁石を使用することによってイオン化区間の形状を簡単に調整することができる。電極形状の形と大きさが基本的に任意であるので、高周波ランプ10を効率の良い広告ランプのための発光手段としても使用することができる。適切な周波数選択により種々異なるイオン化経路を高速に制御することができる。このことはランプ構成に新しい道を開く。とりわけ発光物質(蛍光体)の種々異なる領域、したがって色の種々異なる領域をイオン化することができる。これによりプラズマテレビジョンの形式の表示装置の変形実施形態が可能である。
【0082】
古典的なプラズマテレビジョンコンセプトも高周波励起と置換することができる。低周波制御信号の代わりに、逆相で駆動される2つの高周波制御信号が使用される。インピーダンス変換によりここでも、非常に小さな電力の下で大きな電圧を達成することができる。さらに1つのピクセルの3色が、3×2データ線路を介し制御される。それとは異なり周波数マルチプレクス法により、1つのピクセルを2つの線路だけを介して制御することができる。この構成はとりわけ画像解像度を改善するであろう。これにより前記すべてのプラズマテレビジョン変形実施形態の応答時間も、効率とともに改善することができる。
【0083】
まとめると本発明は次のように短く述べることができる。低圧適用および高圧適用のための高周波ランプ10の新規の構造ならびにその駆動方法が開示される。
この高周波ランプないし駆動方法は、効率、放射スペクトル、コストおよび寿命の点で特性を改善するのに適する。
【0084】
この改善は、電力増幅器20に後置接続されたインピーダンス変換器26が存在するので、高周波電力が非常に小さい場合でも点弧ユニッが不要であることにより達成される。
なぜならインピーダンス変換により、可能な最高電圧がイオン化室16に印加されるからである。高周波ランプ10は高圧ガス放電ランプとしても低圧ガス放電ランプとしても使用することができる。古典的なスタータは不要である。高周波ランプ10は設計に応じて、小さな点状のイオン化領域または球状のイオン化領域を有し、これにより光出力を任意に調整することができる。このイオン化領域の電流は大きく、色温度は高く、数dmまでを網羅する。この調光可能性と改善された光スペクトルは、高周波ランプ10を内部照明に適したものにする。長い寿命、日光スペクトル、低価格および大きな電力消費性は、点状高電流領域を有する高周波ランプ10を、自動車前照灯ランプとしてのいわゆるスポットライトおよびプロジェクタなどの機器での使用に適したものにする。優れた効率および高い色温度は、この高周波ランプ10においてとりわけ誘電電極を使用することにより達成される。高周波ランプ10は、通信市場で非常に安価に提供されている高周波電子構成素子と通常のガス放電ランプ技術によって非常に安価に作製され、とりわけ古典的なスタータ回路と比較して高電圧への要求が非常に小さい。
【符号の説明】
【0085】
10 高周波ランプ
12 信号発生部
14 高周波信号
14’ 高周波信号
16 イオン化室
18 高周波発振器
20 電力増幅器
22 ガラス球
24 ガス
26 インピーダンス変換器
28 電極
30 アース
32 制御信号
34 処理ユニット
35 調整信号
36 カップラ
38 高周波検知器
40 信号分配器
42 信号分配出力端
44 信号分配出力端
46 位相シフト
48 電力増幅器
50 インピーダンス変換器
52 第2の電極
54 圧力絶縁領域
56 給電線路
58 パイプ
60 キャップ
62 孔部
64 第1の線路湾曲部
66 第2の線路湾曲部
68 内部導体
70 線路区間
72 コンデンサ
74 コンデンサ
76 空洞共振器ランプ
78 ループ状電極
80 アース皿
82 電極
84 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号(14)を発生するための信号発生部(12)と、後置接続されたイオン化室(16)とを備える高周波ランプ(10)であって、
前記信号発生部(12)は、高周波発振器(18)と、該高周波発振器の出力端での高周波信号(14)の電力を増幅するための電力増幅器(20)とを有し、
少なくとも1つのガス充填されたガラス球(22)を有するイオン化室(16)には少なくとも1つの電極(28)が配属されており、
前記電力増幅器(20)にはインピーダンス変換器(26)が後置接続されており、該インピーダンス変換器の出力端は前記電極(28)と接続されている高周波ランプ。
【請求項2】
請求項1記載の高周波ランプ(10)であって、
前記信号発生部(12)は付加的に、前記電力増幅器(20)に後置接続され、該電力増幅器(20)と前記インピーダンス変換器(26)との間に配置されたカップラ(36)、高周波検知器(38)、および処理ユニット(34)を有し、
前記高周波ランプ(10)の動作時に前記電極(28)で反射された高周波信号が、前記カップラ(36)を介して前記高周波検知器(38)に供給され、
前記高周波検知器(38)の出力信号に基づき前記処理ユニット(34)により発生された調整信号(35)としての制御信号が前記高周波発振器(18)に、前記反射された信号に基づき高周波信号()14)を最適化するために供給される高周波ランプ。
【請求項3】
請求項1記載の高周波ランプ(10)であって、
前記高周波発振器(18)には、第1および第2の信号分配出力端(42、44)を備える信号分配器(40)が後置接続されており、前記電力増幅器(24)が前記第1の信号分配出力端(42)に接続されており、
前記第2の信号分配出力端(44)には、位相シフト手段(46)、第2の電力増幅器(48)、第2のインピーダンス変換器(50)および第2の電極(52)が順次接続されている高周波ランプ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の高周波ランプ(10)であって、
前記インピーダンス変換器(26)および/または前記第2のインピーダンス変換器(50)は単段または多段に変換に作用する区間(56、66、64;70、74、66、64)を有する高周波ランプ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の高周波ランプ(10)であって、
前記電極(28)は誘電性であり、誘電性外套により包囲された金属コアによって形成されている高周波ランプ。
【請求項6】
ループ状電極(78)を備える請求項1から5までのいずれか1項記載の高周波ランプ(10)。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の高周波ランプ(10)であって、
前記ガラス球(22)には、放射スペクトルの異なる少なくとも2つのガス、とりわけ3つのガスが充填されている高周波ランプ。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の高周波ランプ(10)であって、
前記イオン化室(16)は少なくとも2つのガラス球(22)、とりわけ3つのガラス球(22)を有し、該ガラス球には放射スペクトルの異なるガスがそれぞれ充填されており、
各ガラス球(22)には、高周波信号(14)を供給するための電極(28)が配属されている高周波ランプ。
【請求項9】
請求項1記載の高周波ランプ(10)の駆動方法であって、
高周波信号(14)が高周波発振器(18)により生成され、
該高周波信号(14)の電力が、後置接続された電力増幅器(20)により増幅され、
該高周波信号(14)が、前記電力増幅器(20)に後置接続されたインピーダンス変換器(50)によって高電圧領域に変換され、
変換された高周波信号(14)が電極(28)に供給される駆動方法。
【請求項10】
請求項2記載の高周波ランプ(10)の、請求項9記載の駆動方法であって、
高周波検知器(38)が、前記高周波ランプ(10)の点弧の際に前記電極(28)で反射され、カップラ(36)を介してさらに導かれた高周波信号を検知し、
処理ユニット(34)が前記高周波信号(14)の最適化のために、前記高周波検知器(38)の出力信号に基づいて制御信号(32)を適合し、これにより該制御信号が所定の正または負の値だけ変化され、
相応の調整信号(35)が、前記制御信号(32)と前記高周波検知器(38)の出力信号とに基づいて生成される駆動方法。
【請求項11】
請求項3記載の高周波ランプ(10)の、請求項9または10記載の駆動方法であって、
信号分配器(40)が前記高周波信号(14)から第2の高周波信号(14’)を導出し、ここで高周波信号(14)として残る高周波信号と、前記第2の高周波信号とは少なくとも同じであり、
位相シフト手段(46)が前記第2の高周波信号(14’)の位相をシフトし、後置接続された第2の電力増幅器(48)が位相シフトされた前記第2の高周波信号(14’)の電力を増幅し、
前記後置接続された第2のインピーダンス変換器(50)が、生じた第2の高周波信号(14’)を単段または多段で変換し、前記第2の電極(52)にさらに導く駆動方法。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか1項記載の駆動方法であって、
前記インピーダンス変換器(26;50)は単段または多段で前記高周波信号を変換する駆動方法。
【請求項13】
請求項7記載の高周波ランプ(10)の、請求項9から12までのいずれか1項記載の駆動方法であって、
前記高周波発振器(18)により少なくとも2つの高周波信号(14)が生成され、少なくとも一方の電極(28)に供給される駆動方法。
【請求項14】
請求項8記載の高周波ランプ(10)の、請求項9から12までのいずれか1項記載の駆動方法であって、
前記高周波発振器(18)により少なくとも2つの高周波信号(14)が生成され、各高周波信号(14)が少なくとも2つの電極(28)のそれぞれ1つに供給される駆動方法。
【請求項15】
請求項7または8記載の高周波ランプ(10)が行および列に複数配置された表示装置。
【請求項16】
請求項15記載の表示装置の駆動方法であって、
各高周波ランプ(10)が請求項13または14記載の方法により駆動される駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−505060(P2011−505060A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535383(P2010−535383)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066352
【国際公開番号】WO2009/068618
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(509131362)ドリッテ パテントポートフォーリオ ベタイリグングスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】Dritte Patentportfolio Beteiligungsgesellschaft mbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Berliner Strasse 1, D−12529 Schoenefeld/Waltersdorf, Germany
【Fターム(参考)】